第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営の基本方針

当社130年の歴史において、繊維産業は幾度となく大きな変化を経験しました。その中にあって、社是である「終始一誠意」を規範とし、時代と社会の変化に機敏に対応しながらビジネスを展開してまいりました。

変革の時代といわれる今日においても、既存の領域にとらわれない新たな価値の創出やそれを通じた競争力の強化が求められており、この「終始一誠意」を規範に、新しい価値の創造とグローバルな挑戦を行い、人々の生活によろこびを与え豊かな社会に貢献していくことを、当社は経営の基本方針としております。

(2)経営環境及び対処すべき課題、中長期的な経営戦略

当社グループを取り巻く事業環境は、日本国内におけるインバウンド需要は引き続き比較的安定的に推移すると見込まれる一方で、長期化する為替変動や物価上昇、米国による関税政策の影響などにより、不透明な状態が継続しております。また、消費マインドの多様化、DX推進による事業構造の効率化や、SDGs達成へ向けた社会的価値への対応など構造的な変化も進展しております。

このような状況の下、当社グループは、1893年の創業以来固く守り抜いてきた社是「終始一誠意」を規範とし、経営の効率性を高めながら、新しい価値を創造するリーディングカンパニーを目指し、2026年3月期を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画「Heritage to the future」の「事業」「グローバル」「グループ経営」「人材」「ESG」の5つの基本戦略をもとに持続的成長の基盤づくりに取り組んでまいります。

 基本戦略の概要は次のとおりです。

a.事業戦略

(a)セグメントグループでの収益力強化

(b)ポートフォリオでの選択と集中

b.グローバル戦略

(a)サステナブル・ブランド・デジタルの3つの視点でグローバル展開

c.グループ経営戦略

(a)グループマネジメントの進化

(b)グループ内のDX基盤の構築

d.人材戦略

(a)グループ人材や組織制度の連携強化

(b)人材活性化環境の整備

e.ESG戦略

(a)CSV経営の実践

(b)コーポレートガバナンスの強化

(3)目標とする経営指標

これらにより、2026年3月期の当社グループの通期の業績予想につきましては、売上高は90,000百万円、営業利益は3,600百万円、経常利益は3,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は2,650百万円となる見込みであります。

なお、本資料に記載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。

今後におきましても、1893年の創業以来、固く守り抜いてきた社是「終始一誠意」を規範とし、当社グループ一丸となって経営の効率性向上を進め、新しい価値を創造できるリーディングカンパニーを目指し努力を重ねてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

1.サステナビリティ全般に関する考え方

(1)ガバナンス

 当社グループは、社是である「終始一誠意」を規範とし、新しい価値の創造とグローバルな挑戦を行い、人々の生活に喜びを与え、豊かな社会の実現に貢献していくことを定めた「経営理念」に基づいてサステナビリティを意識した経営を行っています。法令や社会規範を守り、業務を有効かつ効率的に行い、財務報告の信頼性を確保しながら、取締役会を戦略決定機関及び業務監督機関と位置づけ、コーポレート・ガバナンスの強化に努めています。

 

サステナビリティ推進体制

 代表取締役を委員長とした「サステナビリティ委員会」を当社のサステナビリティ方針に基づき設置しております。また、ステークホルダーの期待や要請に対応するために特定した重点課題(マテリアリティ)の解決及びコンプライアンスのさらなる徹底に資する事業活動を推進するために、同委員会傘下に具体的な施策の検討・推進を担う下部組織として4つのワーキンググループ(環境、社会、ガバナンス、SDGs推進)を設け、課題の解決並びに未然防止に取り組んでおります。傘下のワーキンググループの活動状況は、サステナビリティ委員会において報告を受けて指導・改善を図るとともに、各グループ会社との連携の強化を図っており、必要に応じて経営会議、取締役会等の会議体において決裁する体制をとっております。

 

 

  サステナビリティ推進体制図

0102010_001.png

 

(2)リスク管理

リスク管理規程の制定

 当社グループは、当社グループの経営活動に潜在するリスクを特定し、平常時よりリスクの低減と危機管理に努めるとともに、当社グループの経営活動に重大な影響を及ぼす恐れのある危機発生時の体制を定め、迅速かつ的確な対応をとり、事態の拡大防止及び速やかな収拾・正常化を図ることを目的として、リスク管理委員会とリスク管理規程を定め、運用しております。

 

 サステナビリティ委員会では、当社グループを取り巻く環境を踏まえたサステナビリティに関する課題が報告され、サステナビリティ関連のリスクを幅広く特定しています。そこで特定したリスクについては、発生可能性と、実際に発生した際に当社グループにもたらす損害のインパクトの二軸で評価し、各リスクの重要度を決定します。重要と判断したリスクに関しては経営会議及び取締役会へ報告する体制をとっています。また、重要と判断されたサステナビリティ関連のリスクについては、サステナビリティ委員会において目標の設定や進捗管理を行い、定期的に取締役会へ報告することで定期的なリスクのモニタリングを実施し、対応状況の評価や重要リスクの見直しにつなげています。さらに、サイバーセキュリティ及びデータセキュリティに係るリスクについては、リスク管理委員会において報告されたリスク及び機会を識別し、その管理方法を定め、各部門に適切な助言を行っております。重要なものについては経営会議に報告するとともに、定期的に取締役会に活動状況を報告し、全社的なリスクマネジメントの一環として検討しております。従業員の安全衛生等に関するリスクについては、定期実施しているストレスチェックや健康診断の結果、エンゲージメント・サーベイの結果などからリスクを特定し、安全衛生委員会で対応目標を定め、対応状況の進捗管理を行っております。従業員の腐敗防止・贈収賄防止策に関しては、各種コンプライアンス研修の実施、外部の第三者である弁護士を窓口とする内部通報窓口の設置などのリスク低減策を実施しております。

 

(3)戦略

 当社グループは、中期経営計画2026において中核事業である繊維事業の競争力強化に加え、社会課題解決への貢献を重視しています。当社グループのサステナビリティを実現していくためのテーマとして、グループ全体で優先的に取り組む社会課題として17の重要課題を特定しました。これらの特定は、サステナビリティ委員会の前身となるSDGs推進事務局が中心となり、当社事業や活動をSDGsの17目標169ターゲットと紐づけ棚卸しを行いました。また、主要ステークホルダーへのアンケート調査や内部ヒアリングを通じて優先度の高いリスクと機会を特定しました。最終的に、役員の承認を経てこれらの重要課題が決定され、それぞれの重要課題に対応する成果指標・数値目標を定め、その一部を外部公開しています。

 

 これらのマテリアリティは、「持続可能な企業であるための環境改善」、「持続可能な未来のために環境問題を解決」、「未来のライフスタイルへの提案」、「企業の社会的責任」という4つの要素により構成されています。当社はマテリアリティの特定と対応を通じて、持続可能な社会の実現に貢献します。

 

マテリアリティ

0102010_002.jpg

 

当社のESG行動指針

 ENVIRONMENT(環境)

・原材料の調達から製品の製造・供給・廃棄など、あらゆる事業領域において、地球環境に配慮し、持続可能な

社会の実現に取り組む。

 

 SOCIETY(社会)

・国籍・宗教・年齢・性別などによる差別を行うことなく、基本的人権を尊重する。

・常に各国の法令と国際ルールを遵守し、公正な取引を徹底する。

・強制労働・児童労働・不当な低賃金労働を許容しない。

・製品の安全と品質を確保し、適切な情報提供に努め、信頼性の高い製品を供給する。

・サプライチェーン全体でのCSR調達を推進する。

・社員の成長支援や健康管理を推進し、安全で働きやすい職場作りを目指す。

 

 GOVERNANCE(企業統治)

・適切な情報開示のもと経営の透明性を確保し、公正公明な取引に徹する。

・リスクマネジメントを徹底し、堅実な企業経営管理体制の構築に努める。

 

(4)指標及び目標

当社グループは、サステナビリティへの対応を継続課題として認識し、中期経営計画2026「Heritage to the future」の重点戦略の一つに掲げる「ESG戦略」の実現に向けて、成果指標・数値目標を設定し取り組みを進めています。目標の進捗は以下の通りです。

[成果指標一覧表]

ESG

マテリアリティ

アクションプラン

2023年度実績

2024年度実績

中長期目標

SDGsゴール

目標値

目標年

E

⑨産地の活性化

⑩持続可能な資源の有効活用

糸・生地での環境配慮型素材の販売量増加

7.3%

9.4%

30%

2030

11.住み続けられる街づくりを

12.作る責任 使う責任

17.パートナーシップで目標を達成しよう

糸・生地の環境配慮型素材の使用率を50%まで引き上げ

7.3%

9.4%

50%

12.作る責任 使う責任

⑪サーキュラーエコノミーの実現

サーキュラーエコノミーに関する取り組み件数の増加、ファッションロス削減

0件/年

3件/年

15件

※通算件数

2030

12.作る責任 使う責任

13.気候変動に具体的な対策を

⑫サプライチェーン全体での温室効果ガスの排出削減

当社グループ全体で使用する電力の再エネ利用率

3%

9%

100%

13.気候変動に具体的な対策を

⑬パートナーシップで業界特有の課題解決

⑭DXの推進

⑮新技術の開発/研究への検討

パートナーシップの取り組み件数増加

3件

3件

10件(社)

2030

17.パートナーシップで目標を達成しよう

企業・大学等との環境対応型商品・サービスの研究・開発案件数の増加

2件/年

2件/年

20件

※通算件数

9.産業と技術革新の基盤をつくろう

17.パートナーシップで目標を達成しよう

S

③若手社員の働きがいの向上

ストレスチェックにおけるワークエンゲージメント指標の改善

50.2pt

49.6pt

55pt

(業界トップクラス)

2030

4.質の高い教育をみんなに

5.ジェンダー平等を実現しよう

8.働きがいも経済成

④多様な働き方の推進

⑥女性のリーダーシップ機会の確保

⑦女性が働き続けられる労働環境の整備

管理職層の女性比率

2.4%

7.7%

10%

2030

3.すべての人に健康と福祉を

5.ジェンダー平等を実現しよう

8.働きがいも経済成長も

男性の育休取得率の向上

10%

63%

85%

(政府目標)

4.質の高い教育をみんなに

5.ジェンダー平等を実現しよう

8.働きがいも経済成長も

G

⑧取引先の人権侵害の防止

⑰サプライチェーンマネジメントの推進

「持続可能な調達アンケート」の実施

273社

316社

アンケート:年1回

2030

16.平和と公正をすべての人に

17.パートナーシップで目標を達成しよう

アンケート結果に基づいた工場監査の実施

 

30件

50件

30件

⑯コーポレート・ガバナンスの強化

ESGレポートの作成と開示

-

サステナビリティ委員会の設置

開示初年度は2026年3月期目標

2026

16.平和と公正をすべての人に

脱炭素関連開示業務とそのマネジメント

GHG排出量の算定と開示

CDP質問書へ回答

脱炭素関連イニシアティブへの賛同(TCFD/CDP)

2026

※上記成果指標は、当社単体での活用内容です。

※これらのマテリアリティと成果指標は、事業環境や社会情勢の変化に応じて定期的に見直しを行います。

 

2.気候変動への対応

当社は、気候変動が自社の事業活動や収益等に与える影響について、経営上の重要な課題の一つと認識しており、当社事業にかかるGHG排出量の測定と開示を進めております。現時点において、気候変動シナリオ分析は実施に至っておらず、その財務的影響を定量的に把握するには至っておりません。しかし、2026年度にはTCFD提言への賛同を検討しており、提言に沿った情報開示の拡充に向けたロードマップを策定中です。今後は、主要なシナリオに基づく分析を試行し、財務的な影響の定量化に取り組む予定です。なお、2024年には国際的な環境非営利団体CDPによる気候変動に関する調査に回答しており、当社のCDP回答のスコア及び詳細については、CDPのホームページにて公開されております。

① ガバナンス

1.サステナビリティ全体に対する考え方(1)ガバナンス」をご参照ください。

② リスク管理

1.サステナビリティ全般に対する考え方(2)リスク管理」をご参照ください。

③ 戦略

中期経営計画2026に掲げた「ESG戦略」におけるCSV経営の実践等により、繊維業界全体の効率化・環境負荷低減への貢献を目指してまいります。

GHG排出量測定

当社は、GHG排出量算定・可視化クラウドサービスを提供する株式会社ゼロボードとの協働により、GHG排出量の算定対象範囲、算定方法等についてGHGプロトコルに則り検討を重ねてきましたが、今回算定・推定したGHG排出量は次のとおりです。なお、温室効果ガスはすべてCO2(二酸化炭素)に換算しています。

(単位:t-CO2)

区分

2022年度

2023年度

2024年度

スコープ1

55

53

65

スコープ2

306

281

208

スコープ3

443,412

407,093

397,433

合  計

443,773

407,427

397,706

                  ※スコープ1、2 株式会社ヤギ 単体

                   スコープ3 株式会社ヤギ単体のサプライチェーン排出量(カテゴリ1~8・12に伴う排出)

※2024年度からスコープ3のカテゴリー2について新たに測定を実施したため、2023年度のスコープ3の合計値にもカテゴリー2の実績を加える修正をしています。

3.人的資本・多様性に関する考え方及び取組

(1)人的資本・多様性に関する「ガバナンス」と「リスク管理」

 当社グループの人材戦略に関しては、経営戦略の実現に必要なサステナビリティ全般の重要課題と連携しながら、取組方針及び成果指標・数値目標を策定するためのプロジェクトを進行させています。取締役専務執行役員が本プロジェクトオーナーを務め、各重要課題に大きく関わる部門の管掌役員がチームリーダーとなって部門横断で社員が参画し、多角的な視点で検討を進めています。

(2)人的資本・多様性に関する「戦略」と「指標及び目標」

 当社グループの人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は下記のとおりであり、中期経営計画2026において、人材の育成を中心とした人材戦略を基本戦略の一つとして以下の事に取り組んでまいります。

 なお、「指標及び目標」については、「1.サステナビリティ全般に関する考え方(4)指標及び目標」をご参照ください。

① 人材の質と量を中長期的に維持・向上できる仕組みづくり

 企業の持続的な成長を支えるのは人材であるという考えのもと、人材の質と量を中長期的に維持・向上できる仕組みづくりに取り組んでいます。中期経営計画2026を強力に推し進めるには、ヤギグループ全体でグローバル人材、DX人材の確保・育成を図る必要があり、具体的には人事制度の抜本的な刷新に加え、教育・研修プログラムの充実や新卒・中途採用の戦略見直しを行っており、多様なバックグランドを持った人材の確保と従業員一人ひとりの能力向上・組織力の強化を図っています。

② 長期的な競争優位性を実現させる組織力のステップアップ

 当社グループは、競争激化する市場環境において、長期的な競争優位性を確保するために、組織力のステップアップに力を入れています。グループ横断での情報共有やコミュニケーションの促進、人材交流、意思決定の迅速化などを通じて、迅速な変化に対応し、イノベーションを推進する組織文化を構築してまいります。

 

③ チャレンジできる環境整備

 当社グループでは、従業員が自らチャレンジできる環境整備を重視しています。積極的なアイデア出しや新しい取り組みへの参加を奨励し、フラットな組織風土を醸成しています。当社では意見交換や情報共有を促進するコミュニケーションプラットフォームの導入など、社内コミュニケーションの円滑化にも力を入れており、今後グループ各社の実情に合わせた展開を検討してまいります。

④ 働きやすい環境整備

 当社グループでは、性別や年齢、国籍、障害の有無、ライフイベント等に関わらず、多様な人材が安心して働き続けられる環境づくりを重視しています。当社では場所や時間にとらわれない柔軟な労働制度の導入やワークライフバランスの推進、職場環境の改善などを通じて、従業員の働きやすさと生産性の向上を追求しています。

⑤ 人事制度の刷新

 当社では、2024年度より人事制度を刷新しました。役割の明確化や評価の納得性向上、報酬体系の見直しなどを通じて、従業員一人ひとりが成長実感とチャレンジ意欲を育むことができる仕組みを目指しています。制度刷新により、従業員のエンゲージメントを高め、組織マネジメント力の強化を図っていくとともに、グループ横断での人材活用やグループ横断型研修の実施検討等、グループ内のノウハウや経験・情報共有化の動きを進めてまいります。

⑥ 健康経営の実践

 当社は、「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の認定を受けました。昨年に引き続き3年連続の認定となります。今後も従業員及びその家族の健康管理・維持増進に注力してまいります。定期的な健康診断の実施やストレスチェックの導入、健康教育プログラムの提供、イベントの企画などを通じて、従業員の健康状態の管理と改善を支援しています。健康な従業員の確保は、生産性の向上及び労働力の安定確保に繋がるとの考えのもと、今後グループ各社の実情に合わせた展開を検討してまいります。

⑦ ダイバーシティ環境整備

 当社グループでは多様性こそが商社の競争力の源泉と捉え、ダイバーシティ&インクルージョンの実現とその環境整備に力を入れています。多様な人材の活用や、2022年度から2024年度の3年連続でのハラスメント防止のための教育・啓蒙活動などを通じて、また「VISION」に掲げる互いを讃え合う文化風土の醸成を継続することで、全ての従業員が公平かつ平等な待遇を受けられる環境づくりに取り組んでまいります。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。

なお、表にある発生の可能性や影響度及び将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。また、以下はすべてのリスクを網羅するものではなく、本書提出日現在において予見できない、または重要と認識していないリスクの影響を受ける可能性があります。

以下のリスクのうち、喫緊のリスクに関しては、後方ページの「第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](1)[コーポレート・ガバナンスの概要]」に掲載しております会議体のうち適切な会議において常に報告と検討がなされ対応しております。緊急を要さない管理面上のリスクについては、毎年「リスク事項報告書」を作成し、本部長会議に報告がなされ検討を行い、対策を講じております。

 

(1)主要な事業等のリスクの発生可能性と影響度のまとめ

No.

リスク区分

リスク項目

発生の

可能性

影響度

企業イメージの低下

環境・社会に関するリスク

法令違反

法令・規程に違反するリスク

情報管理に関わるリスク

情報システム及び情報セキュリティに関するリスク

情報管理に関わるリスク

個人情報に関するリスク

企業買収問題

M&Aや事業投資に伴うリスク

自然災害

自然災害のリスク

その他

信用リスク、不良債権発生リスク

その他

訴訟等に関するリスク

法令違反

コンプライアンスリスク

国際問題

カントリーリスク

その他

想定を超える非常事態リスク

企業イメージの低下

ファッションにおけるCSRに関するリスク

急激な市場変化

生産・仕入価格変動リスク

規制強化・緩和

法規制、法改定等に関するリスク

その他

人材に関するリスク

急激な市場変化

株価等の変動リスク

急激な市場変化

在庫リスク

急激な市場変化

金利の変動や資金調達におけるリスク

注1.「リスク区分」は当社のリスク管理規程において定義されているリスクの一部です。

 2.「その他」は「その他、財務諸表に大きな影響を及ぼす事項」です。

 

(2)主要な事業等のリスクの内容等

区分

企業イメージの低下

リスク項目

環境・社会に関するリスク

発生の可能性:高

影響度:大

・リスクの内容

サステナビリティ経営の高度化が要求されるなか、当社の対応不足によりステークホルダーが離反し、株価への影響やブランド力の低下につながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

サステナビリティ委員会を発足し、社会的(非財務)価値と経済的価値の両方を同時に生み出す「価値創造型の事業活動」を展開しております。特に社会的価値の創造においては、ESG戦略の実践を通じ、数値目標を含むサステナビリティに関する基本理念や行動指針を策定・開示することで、ステークホルダーとの共創と信頼構築を図っております。

 

区分

法令違反

リスク項目

法令に違反するリスク

発生の可能性:高

影響度:大

・リスクの内容

当社グループは、国内外で様々な活動を展開しております。これらにはそれぞれ関連する法令・規制があり、以下に記載するような違反が行われる、あるいは看過されるリスクがあります。

a. 不正薬物や知的財産が侵害された商品の輸入等(関税法違反)

b. 規制対象の動植物の輸入(ワシントン条約違反)

c. 低価申告、加算要素申告漏れや原産地虚偽記載等(関税逋脱)

 d. その他法令違反(品質表示法、家畜伝染病予防法、食品衛生法、外国為替及び外国貿易法、商標法/意匠法、薬機法、労働基準法、人権関連法令 等)

これらの法令・規制に抵触すると事業活動に制限を受け、最悪の場合は信用の大幅低下にもつながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

当社グループでは「法令遵守は企業責任である」という意識を徹底し、コンプライアンスに関しては自律分散型組織(営業部門・管理部門・内部監査部門)となるべく、取締役及び全従業員がこれを意識し、その強化に努めています。

また、社内外にコンプライアンス通報窓口を設置するとともに、特にコンプライアンス違反が窺われる取引先との接触や取引は情報が入った時点で即座に回避・禁止・中止・撤退するよう日常的に各部署でのチェックと法務審査部門からの注意喚起を行い意識の徹底を図っております。

 

区分

情報管理に関わる危機

リスク項目

情報システム及び

情報セキュリティに関するリスク

発生の可能性:高

影響度:大

・リスクの内容

業務効率化や情報共有等のため、情報システムを構築・運用しておりますが、リスクとして以下の脅威を想定しております。

a. 意図的脅威

標的型攻撃やマルウェア感染、Webサイトの改ざんなど外部からの悪意のある行為によるリスク。

従業員や元従業員が機密データを持ち出す内部不正の行為によるリスク。

b. 偶発的脅威

従業員に貸与しているPCの盗難・紛失や、操作ミスにより機密情報を漏洩させてしまう行為によるリスク

c. 環境的脅威

自然災害等に伴うITシステム設備の被害、ハードウエアの故障、ソフトウエアのバグやアップデートの失敗等に

よる情報システムの停止によるリスク

これらの脅威が発生した場合、業務の停止や業務効率性の低下を招くほか、被害の規模によっては、将来の当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

当社グループでは以下の対策を講じております。

a. 従業員へのセキュリティ講習等を通じた標的型攻撃メールへの対応方法等の周知徹底

b. ウィルス対策ソフトの常時最新化と、ファイルサーバーやアクティブディレクトリーへの許可されたアクション以外を制限するソフトの導入と運用

c. 記録媒体へのデータコピーの禁止、退職者のメールアカウントのパスワード変更等による従業員の不正・不注意に起因する機密データ漏洩の防止

d. 企業経営に関する主要なデータの強固な暗号化と、バックアップ機器及びクラウドスペースへの同期等によるランサムウェアや災害への対策

e. 基幹システムなどの重要なサーバーの耐震性が高いデータセンターでの稼働

なお、これらの対策を超越する高度なサイバー攻撃や、最大級の災害や戦争、そして規則を遵守しない従業員等による不正等が発生した場合は、防ぐことができないことが想定されます。

 

区分

情報管理に関わる危機

リスク項目

個人情報に関するリスク

発生の可能性:高

影響度:大

・リスクの内容

個人情報保護に関し、予期せぬ事由により外部に情報が漏洩し、社会的信用の低下や損害賠償責任が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

経営戦略部が主管となり情報の取り扱いや管理等につき安全管理体制を整え、リスクの発生防止に努めております。

主な対応策については以下のとおりであります。

a. メールサーバーでのウィルス、スパムメールチェック

b. 不適切なWebサイトへのアクセスを遮断するウェブフィルタリングとマルウエアブロッキング(外部の悪意のあるサーバーとの通信をブロック)

c. インターネットからの不正な侵入や、社内からの不要な通信を止めるファイアウォール

d. パソコンや社内のサーバーへのセキュリティ対策ソフトの導入

e. 許可しないパソコンの社内ネットワークへの接続禁止

f. 定期的な従業員へのセキュリティ教育や他社のセキュリティ事故を教訓とした注意喚起

 

区分

企業買収問題

リスク項目

M&Aや事業投資に伴うリスク

発生の可能性:高

影響度:大

・リスクの内容

M&Aや新規事業への投融資は、企業価値を高めるために、新市場・新領域への進出に必要なノウハウや技術・人脈を効率的に獲得し、事業基盤構築を速やかに行うために必要に応じて実施しております。しかしながら、事前の調査・検討にもかかわらず、市場環境や競争環境に著しい変化があった場合や、買収した事業が計画通りに進捗せず、投下した資金が回収の遅延や不能につながり、将来の回復可能性が見込めないときには、減損損失や貸倒引当金繰入を計上することとなり、その規模によっては当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

M&Aや新規事業への投融資にあたっては、様々な分野の専門部署で編成された投資決定体制の下、外部機関の助言を得ながら投資案件の獲得・審査・事業計画の策定、リスクの指摘、撤退基準の策定、投資案件のレビュー等を行っております。これらを基に投資決定会議でその内容について検討を行い、経営会議で最終意思決定を行っております。

 

 

 

区分

自然災害

リスク項目

自然災害のリスク

発生の可能性:高

影響度:大

・リスクの内容

地震、風水害などの自然災害により、従業員等とその家族や社屋・事務所・設備等に直接的または間接的な被害が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

リスク管理規程ならびに緊急事態対策規程により対応策を定め、従業員等安否確認システムの整備や、重要拠点の耐震化、2本社制の導入、データバックアップのクラウド化等によりリスクの低減を図っております。

 

区分

その他

リスク項目

信用リスク、不良債権発生リスク

発生の可能性:高

影響度:大

・リスクの内容

当社グループでは、国内外の様々な取引先に対し信用供与を行っておりますが、取引先の信用状況の悪化や経営破綻により、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

信用リスクを低減すべく与信管理規程を定め、規程に則って管理を行っております。販売の開始、継続にあたっては、限度枠と信用格付を設定し営業部との協業や当社において蓄積した調査会社の情報を基に販売先の経営状態を把握しております。また、必要に応じて担保を設定するなどリスクの回避に努めております。営業部には与信講習会を繰り返し実施することで従業員の意識向上を図っております。

 

 

区分

その他

リスク項目

訴訟等に関するリスク

発生の可能性:高

影響度:大

・リスクの内容

当社グループの事業活動において様々な事象が訴訟の対象となり得ます。特に取扱商品が第三者の知的財産を侵害し、権利者から損害賠償を請求される恐れがあります。これら訴訟の規模・内容によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

新規取引や新規事業に関しては開始前に、顧問弁護士を交えた契約関係のリーガルチェックを徹底し、考え得る訴訟リスクを回避するよう努めております。知的財産関連につきましては商標使用前に、法務担当への事前連絡、類似商標チェックを徹底しております。判別が難しい商標については、弁理士への調査を徹底し、知的財産を侵害しないよう努めています。特許などの知財についても同様の対応を行っており、従業員の意識向上のため不定期ですが社内講習を実施しております。また、万が一、訴訟が提起された場合、専門家と連携し、被害を最小限に抑えるように対応しております。

 

区分

法令違反

リスク項目

コンプライアンスリスク

発生の可能性:低

影響度:大

・リスクの内容

コンプライアンス違反が発生した場合、企業イメージの低下にとどまらず、企業イメージの棄損につながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼすことになります。

代表例としては以下のとおりです。

a. 社内、関係取引先でのハラスメント行為。

b. 架空取引、循環取引などの不正取引を行う、あるいは不正取引に加担する。

・対応策

コンプライアンスは事業活動における根本であり、当社グループ全役員、従業員に意識向上のためコンプライアンスマニュアルを周知徹底し、創業以来の社是である「終始一誠意」と経営理念に掲げる精神に則り、一人ひとりが法令・社内規則・諸規程を遵守することの重要性を認識させております。また、社内通報窓口と社外通報窓口を設置しており、諸問題の早期発見と適切な対応に努めております。

a. に関しては「ハラスメント防止規程」を社内ポータルサイトに掲載するとともに、社内研修を実施し、従業員に周知しています。

b. に関しては営業部門・管理部門に対しマニュアルや社内ルールを徹底させるとともに内部監査部門により内部統制評価を実施し、適切な業務が遂行できているかを検証し、不正取引に巻き込む、巻き込まれることへの対策に努めております。

 

区分

国際問題

リスク項目

カントリーリスク

発生の可能性:中

影響度:大

・リスクの内容

当社グループはアパレル製品の生産を主に中国や東南アジアをはじめとする海外で行っております。生産国において政策や法令の変更、テロ、戦争、パンデミック等の予測を超えた事象が発生すると、生産活動や輸送に制限が加わることで遅延が発生し、場合によっては生産ができない状況に陥る恐れもあります。また、生産国以外でも、金利の急激な上昇や収拾のつかない国際紛争等による急激な円安や原油価格の高騰によりコストが大幅に上昇し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

当社グループは、生産体制において特定地域への依存を回避するため、複数の国・地域に生産拠点を分散し、地政学的リスクや自然災害等の不測の事態に備えており、物流網の多様化を進め、代替ルートの確保にも注力することで、サプライチェーン全体の強靭化を図っております。また、為替変動や原油価格の高騰といったコスト上昇リスクについては、取引先との継続的な協議を通じて価格調整や取引条件の見直しを行い、影響の最小化に努めております。

なお、国際情勢の変化などについては、関係当局や業界団体、専門機関等からの情報収集を通じて早期に把握し、迅速かつ柔軟に対応できる体制を整えております。

 

区分

その他

リスク項目

想定を超える非常事態リスク

発生の可能性:中

影響度:大

・リスクの内容

感染症拡大によるパンデミックや大規模な国際紛争、テロ等の重大な犯罪行為、天災など、想定の規模をはるかに超える非常事態が起こると、商品の生産、供給及び販売体制や経営管理体制に問題が発生し当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

当社グループでは非常事態発生時には、人命の保護・救出、会社の存続、雇用の維持を最優先としております。リスク管理に関する事項や非常事態発生時の指揮命令系統、連絡網は社内規程において明確に規定しており、迅速かつ効果的な対策を講じられる体制と運用の準備をしており、リスクの軽減を図っております。

 

 

区分

企業イメージの低下

リスク項目

ファッションにおける

CSRに関するリスク

発生の可能性:低

影響度:大

・リスクの内容

CSR関連の人権問題・コンプライアンスなどから、不買運動やアパレルからの指導へと発展すると、場合によっては取引停止等になるなど、当社グループの経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

当社調達ガイドラインを整備し周知を行っており、また、品質管理室による工場監査を実地に行うことでリスクの軽減を図っております。

 

 

区分

急激な市場変化

リスク項目

生産・仕入価格変動リスク

発生の可能性:高

影響度:中

・リスクの内容

当社グループは、海外生産の多くを外貨建てで行っており為替の急激な変動、原料の高騰、国内労働力の減少による工賃アップ、国内外の物流経費の高騰などによりコストが大幅に上昇し、価格転嫁をすることができない場合、利益率の低下や、商売機会の逸失を招き、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、これら上昇分を抑えるために生産背景を変えると品質の低下を招き、顧客離れやクレームに発展し、企業イメージの低下を招くなどのリスクがあります。

・対応策

国内外の優秀な生産背景を新規開拓し、従来の生産背景については選択し集中させコスト上昇を極力抑える努力をすることでリスクの低減を図っています。なお、海外生産に関しては約定後に遅滞なく為替予約を締結することで将来の為替変動リスクを最小限に留めるべく努力をしています。

 

区分

規制強化・緩和

リスク項目

法規制、法改定等に関するリスク

発生の可能性:高

影響度:中

・リスクの内容

会計基準や税制の改正があった場合には、財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは海外子会社も有しており、とりわけアジア各国の税制改正や税務当局による税務執行内容によって、影響が及ぶ可能性があります。

・対応策

外部の専門家の協力を得ながら、会計基準や税制の改正の情報を早期に収拾し、必要な対策を適切に行うように努めております。

 

区分

その他

リスク項目

人材に関するリスク

発生の可能性:高

影響度:中

・リスクの内容

当社の持続的な成長には、より多様で有能な人材の確保が必要となります。しかし、少子化や人材需要の増加により国内労働市場は逼迫し、必要とするスキルや折衝能力のある人材を確保することや、逆に他社より競争力のある就労条件を整備できないために多様で有能な人材の確保と定着が困難となる可能性があります。

・対応策

当社では多様で有能な人材を確保するため、新しい採用手段導入による人材確保と、継続的な能力開発及び働きがいのある職場環境の整備を通じて、適材適所の配置を実現しております。専門人材についてはキャリア採用の比重を拡大することで、戦略実現のスピードを高めていきます。
また、目標管理制度に基づいた納得感の高い評価制度や健康経営、福利厚生の充実により、社員のエンゲージメントを高め、人材の定着を図っております。

 

 

 

区分

急激な市場変化

リスク項目

株価等の変動リスク

発生の可能性:中

影響度:中

・リスクの内容

当社グループでは、事業戦略上の効果や経済合理性を勘案した上で、主に取引金融機関、重要取引先等の市場性のある株式を中長期的に保有しております。これらの株式は保有先企業の業績や業界動向だけでなく、経済情勢、金融情勢、国際情勢等による株価変動リスクを常にはらんでおり、保有株式の時価が大きく変動した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

保有先企業との関係や取引状況、当該企業の経営成績や株価動向等、定期的な検証を行うことでリスクの低減に努めております。

 

区分

急激な市場変化

リスク項目

在庫リスク

発生の可能性:中

影響度:中

・リスクの内容

当社グループでは原料・生地・アパレル製品・その他の様々な商品を取り扱っており、また商売形態や契約内容も多岐にわたり、当社グループが主導して商品在庫をする形態も含まれています。商品在庫に関しては適正化に向け需要予測を行うなど手段を講じていますが、外部環境の悪化や天候不順等により販売需要が著しく低下すると、見切り販売損や在庫評価損の計上により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・対応策

当社グループは取引先との取り組みを強化することで適正な生産数を把握し、またQR生産によるタイムリーな供給体制を構築することで、適正な在庫水準の確保と需要変動への対応等の強化に努めています。また、月に一度、業務部主催で在庫推移の進捗会議を開き状況の把握をするとともに、内部監査を実施しリスクの低減に努めております。

 

区分

急激な市場変化

リスク項目

金利の変動や資金調達におけるリスク

発生の可能性:中

影響度:中

・リスクの内容

当社グループは営業活動や投資活動に係る資金調達の多くを金融機関からの借入にて行っています。今後の金融施策の動向により金利の上昇が進むことがあれば当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与えるリスクがあります。

・対応策

長短の借入を併用し、また借入のタイミングを分散させることでバランスを取り、金利の変動スピードを緩和させ金利上昇に備えています。その為に週単位で預金残高を管理し借入を実行しています。またグループ間の余剰資金を有効活用し、外部からの有利子負債を抑えることも行っています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における我が国経済は、企業収益や雇用・所得環境の改善、昨年からのインバウンド需要の継続などを背景に緩やかな回復基調で推移しました。一方で、世界的な政情不安や経済減速の懸念、長期化する為替変動や物価上昇の影響などにより、企業活動を取り巻く環境は依然として不透明な状態が続いております。

このような経営環境のもと当社グループは、2026年3月期を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画2026「Heritage to the future」の2期目として、持続的成長の基盤づくりに注力し、「事業」「グローバル」「グループ経営」「人材」「ESG」の5つを基本戦略として取り組んでおります。

これらの結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

①財政状態及び経営成績の状況

(ア)財政状態

当連結会計年度末における総資産は前連結会計年度末と比べ5,129百万円増加し、79,196百万円となりました。流動資産は前連結会計年度末と比べ104百万円増加し55,969百万円、固定資産は前連結会計年度末と比べ5,025百万円増加し23,227百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は前連結会計年度末と比べ1,992百万円増加し、36,020百万円となりました。流動負債は前連結会計年度末と比べ612百万円増加し24,649百万円、固定負債は前連結会計年度末と比べ1,379百万円増加し11,370百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は前連結会計年度末と比べ3,136百万円増加し、43,176百万円となりました。

(イ)経営成績

当連結会計年度の当社グループの業績は、売上高83,376百万円(前期比0.6%増)、営業利益3,572百万円(前期比12.3%増)、経常利益3,766百万円(前期比17.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,625百万円(前期比26.5%増)となりました。

当連結会計年度におけるセグメント別の経営成績は次のとおりであります。

なお、各セグメントの経営成績につきましては、セグメント間の内部取引高を含めて表示しております。

[マテリアル事業]

中国、東南アジア等からの輸入製品の依存が高くなったことで、国内製品の需要が減少しました。

こうした中、天然繊維については、引き続き国内産地の需要が減退したことなどにより売上高は減少しましたが、在庫水準の適正化を進めたことなどにより利益は増加しました。合成繊維については、車両関連素材は取引先の在庫調整などにより売上高が減少しましたが、作業手袋関連素材の販売数量増加や高付加価値商材の販売拡大が利益の増加に貢献しました。

また、生地については、海外販売などの増加により売上高が伸長したことに加え、仕入コスト上昇分の適切な価格転嫁や在庫水準の適正化が進み増益となりました。

この結果、売上高は,22,986百万円(前期比7.1%減)、セグメント利益(経常利益)は496百万円(前期比19.1%増)となりました。

[ライフスタイル事業]

主力であるダストコントロール商材については、新製品供給の一巡による生産調整の影響が長引いたことで売上高は減少しました。一方、タオルや化粧雑貨などの生活資材については、為替の影響で苦戦したものの、製造コストの見直しや価格改定を行いながら、高付加価値商材の販促を進めたことで利益の増加に貢献しました。

この結果、売上高は7,356百万円(前期比9.5%減)、セグメント利益(経常利益)は667百万円(前期比9.9%増)となりました。

[アパレル事業]

インバウンド需要の継続や賃上げなどが国内需要を下支えし、アパレル市場における消費意欲は底堅く推移しました。

こうした中、主力であるOEM事業については、主要な取引先への提案や取り組みの深耕を図り、中高価格帯の商材取り扱いに注力したことにより、売上高は増加しました。また、円安の影響が長引いているものの、生産背景の集約や仕入先との関係構築により原価や物流経費などのコスト削減に取り組むなど効率化を図ることで利益についても増加しました。

この結果、売上高は43,567百万円(前期比3.9%増)、セグメント利益(経常利益)は2,957百万円(前期比8.3%増)となりました。

 

[ブランド・リテール事業]

年間を通して天候要因の影響がありましたが、円安によるインバウンド需要は継続している中で、新規出店や商品カテゴリの拡充などに努めました。

こうした中、主力であるブランド事業については、旗艦店を含む新規出店店舗が好調に推移したことに加え、適正な販売価格の設定及び在庫水準の見直しによる機会損失の低減などにより売上高は増加しました。

この結果、売上高は10,655百万円(前期比14.0%増)、セグメント利益(経常利益)は1,036百万円(前期比0.3%減)となりました。

[不動産事業]

賃貸事業において、新規テナントの成約増により売上高は増収となりましたが、テナント撤退に伴う損失を計上したことなどにより利益は減少しました。

この結果、売上高は867百万円(前期比11.6%増)、セグメント利益(経常利益)は300百万円(前期比9.2%減)となりました。

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益の計上等により、前連結会計年度末に比べ、1,750百万円(17.4%)増加し、当連結会計年度末には11,789百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動により資金は4,561百万円増加しました。これは主に税金等調整前当期純利益の計上等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動により資金は3,371百万円減少しました。これは主に投資有価証券の取得による支出によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動により資金は436百万円増加しました。これは主に長期借入れによる収入によるものであります。

③生産、受注及び販売の実績

(ア)生産実績

生産金額は売上高と概ね連動しているため、記載は省略しております。

(イ)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

自 2024年4月1日

至 2025年3月31日

 

金額(百万円)

前年同期比(%)

マテリアル事業

22,986

92.9

ライフスタイル事業

7,356

90.5

アパレル事業

43,567

103.9

ブランド・リテール事業

10,655

114.0

不動産事業

867

111.6

合計

85,433

100.6

(ウ)仕入実績

仕入高は売上高と概ね連動しているため、記載は省略しております。

(エ)成約実績

成約高と売上高との差額は僅少であるため、記載は省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

①財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(ア)経営成績等

a.財政状態

流動資産

当連結会計年度末における流動資産の残高は、前連結会計年度末に比べ104百万円増加し、55,969百万円となりました。これは、現金及び預金が増加したことが主な要因であります。

固定資産

当連結会計年度末における固定資産の残高は、前連結会計年度末に比べ5,025百万円増加し、23,227百万円となりました。これは、投資有価証券が増加したことが主な要因であります。

流動負債

当連結会計年度末における流動負債の残高は、前連結会計年度末に比べ612百万円増加し、24,649百万円となりました。これは、未払法人税等が増加したことが主な要因であります。

固定負債

当連結会計年度末における固定負債の残高は、前連結会計年度末に比べ1,379百万円増加し、11,370百万円となりました。これは、長期借入金が増加したことが主な要因であります。

純資産

当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ3,136百万円増加し、43,176百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益が2,625百万円計上されたことが主な要因であります。

b.経営成績

営業損益

当連結会計年度における営業利益は、前連結会計年度に比べ391百万円増加し、3,572百万円となりました。これは、売上総利益が2,170百万円増加したことが主な要因であります。

営業外損益

営業外収益は、前連結会計年度に比べ2百万円減少し、479百万円となりました。

営業外費用は、貸倒引当金繰入額の減少等により前連結会計年度に比べ172百万円減少し、285百万円となりました。

この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ560百万円増加し、3,766百万円となりました。

特別損益

特別利益は、投資有価証券売却益261百万円の計上により261百万円となりました。

特別損失は、投資有価証券評価損45百万円の計上等により127百万円となりました。

この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ686百万円増加し、3,900百万円となりました。

(イ)経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.事業全体及び分野別の経営成績の現状

当連結会計年度の事業全体及び分野別の経営成績に対する認識及び分析等につきましては、「[経営成績等の状況の概要]の(イ)経営成績」に記載のとおりであります。

b.当連結会計年度の経営計画の達成状況

2025年3月期

(百万円)

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主

に帰属する

当期純利益

計 画

83,000

3,400

3,500

2,200

実 績

83,376

3,572

3,766

2,625

計 画 比

376

(0.5%)

172

(5.1%)

266

(7.6%)

425

(19.3%)

 

上記の表の計画は、2024年11月8日に公表した、連結業績予想の数値であります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(ア)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「[経営成績等の状況の概要]の②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

(イ)契約債務

2025年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(百万円)

 契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

 短期借入金

4,240

4,240

 長期借入金

9,100

900

5,000

3,200

上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。

また、当社グループの第三者に対する保証は、関係会社の借入金等に対する債務保証であります。保証した借入金等の債務不履行が保証期間に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2025年3月31日現在の債務保証額は、9百万円であります。

(ウ)財務政策

当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金または金融機関からの借入金により資金調達することにしております。また、国内子会社とのグループファイナンスの実施などにより、グループとしての資金効率を高めるようにしております。

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用された重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

なお、連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示情報に影響を与える見積り及び予測が必要となります。この点、当社グループは、過去の実績や状況等を勘案し、合理的と判断される見積り及び予測を継続的に行っておりますが、実際の結果については、これらの見積りと異なる場合があります。

ただし、今後の状況の変化によって判断を見直した結果、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において重要な影響を与える可能性があります。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループでは、マテリアル事業において、新製品の開発を目的とした試作・検査等を行っております。なお、当連結会計年度における研究開発費は20百万円であります。