第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、別段の記載のない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営環境

 当社グループを取り巻く環境は、世界規模での業界の垣根を越えた新たなビジネスモデル創出の動きやIoT・AI(人工知能)の活用といった新しい技術の台頭など、環境変化が激しい状況となっております。現況では、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い経済活動の正常化が進みましたが、世界的な金融引き締めや継続的な物価上昇による景気への影響、中国経済の先行き懸念、地政学的なリスクの発生など、世界並びに日本経済の先行きは不透明でありますが、当社グループにおきましては、主要顧客を中心に次世代のモビリティ社会の実現に向けたエレクトロニクス化、デジタル経営に向けた情報化投資や設備投資ニーズは引き続き伸長していくものと想定され、デバイス事業、ソリューション事業ともに、これまで以上に付加価値やスピード感を伴った対応が求められるとともに、カーボンニュートラルや自然との共生など社会課題にも経営視点を当てながら経営していくことが必要な環境となっております。

 

(デバイス事業)

 当社グループのデバイス事業は、トヨタグループを主体とした自動車関連企業を中心にルネサスエレクトロニクス株式会社製品を主体とした半導体や電子部品等の販売及び技術支援、組込システムのPoC(概念実証)開発支援や組込ソフトウエアを中心とした受託開発事業を行っております。

 当社グループの主要顧客の属する自動車業界は、「100年に一度の大変革の時代」にあり、CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)への取組が急速に進んでおります。その実現に向かって、自動車の電動化や電子化、企業活動全般における情報化がより一層進んでいくことが予測される中、当社グループの取り扱う半導体や電子部品は必要不可欠な製品であり、今後も需要拡大とビジネス機会の増大が期待されます。

 このような環境の中で、当社グループの主要顧客である自動車関連企業におきましては、高機能、高品質、高信頼のシステムをいかに低コストかつ効率的に開発、生産するかという課題を抱えております。当社グループは長年にわたる自動車関連企業とのビジネスの中で培った知見、ノウハウを活かし、顧客の企画段階より参画し、より顧客のニーズに合ったシステム提案を行うとともに、その実現のため、開発サポートも行っております。

 また、近年は車載組込ソフトウエアの重要性がますます高まる中、検証や開発支援をはじめとしたソフトウエア支援に対するニーズも強くなっており、当社グループにおける事業も拡大しております。そのようなビジネス機会の増大に対し、適切な人的投資やサービスの強化、グループ企業やパートナー企業との連携を図りながら、事業の更なる拡大を目指しております。

 海外での事業展開におきましては、当社グループでは、従来から主要顧客の海外生産をサポートしておりますが、近年はビジネスの現地化が進み、エレクトロニクスの高度化や現地開発に伴う顧客の技術支援のニーズは一段と高まっております。そのような事業機会の変化に対して、日本で培った知見と各拠点で得た有益な情報を活かして、その土地に合う確かな商品とサービスを展開するとともに、各拠点での開発や設計支援の間口を広げながら、事業の拡大を目指しております。

 

(ソリューション事業)

 当社グループのソリューション事業は、顧客社内で使用されるIT機器、組込機器及び計測機器の販売や、ITプラットフォーム基盤及びIoTシステムの構築に加え、自動化や省力化に貢献する各種FA(ファクトリーオートメーション)・特殊計測システムの設計・製造・販売及び産業用コンピュータの開発・製造・販売を行っております。

 近年、「第4次産業革命」とも呼ばれるIoT、AI、ビッグデータを活用した産業分野のデジタル化が急速に進むなか、当社グループが得意とするセキュリティ分野やFA分野でもそれらのIT技術を中心に市場が拡大しております。当社グループの主要顧客においても、IoTをはじめ最新技術や新製品を取り入れたITインフラ整備や工場内のデジタル化の推進、さらにはIT技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)によるビジネスモデル変革やイノベーション創出への期待が高まり、ソリューション事業におきましては、今後も需要拡大とビジネス機会増大が期待されます。

 

 ITソリューション領域では、製造業を中心に広い業種の顧客を持ち、情報システム部門や生産技術・開発部門を中心に、パソコン、サーバやストレージをはじめとするIT機器の販売、アプリケーションやプラットフォーム開発などのSIサービスを提供しており、近年はサイバーセキュリティ対策からのネットワーク再構築サービス、AIやRPA(Robotic Process Automation)によるデータ活用と業務オペレーションの自動化、エッジ、IoTシステムや生産管理システムなどのインフラ整備やシステム開発の需要が高まっております。製造現場の効率化などITインフラ構築に多くの実績を持つ当社グループは、中部地区トップクラスの契約数となる大手SⅠerやITベンダとのパートナー契約も活かし、多種多様に広がりを見せるITニーズに対して、豊富なアイテムと最新の技術トレンドも活用した最適なITソリューション・サービスを提案しております。

 

 組込領域では、工作機械、半導体製造装置、産業機械、物流搬送装置等の製造業を中心とした顧客の製品に組み込まれる制御コントローラや表示デバイスなどの情報機器や産業機器、自社製造の産業用コンピュータを提供しております。今後は、新技術の台頭や自動車、半導体産業における生産設備投資やシステムの刷新がよりいっそう進むものと見込まれ、物流・半導体搬送装置の需要増、5Gを活用したシステム構築の立ち上がりも期待されます。長年にわたるFA業界への対応、自社ブランドによる産業用コンピュータの開発、生産の経験を活かし、長寿命、FA用途の耐環境性能をもつ高信頼、高性能な製品を国内生産により長期供給できることを強みに、安定したモノづくりを支援し、高度化が望まれる生産現場のニーズに対して付加価値の高いソリューションを提供しております。

 

 FAソリューション領域では、自動車関連企業の技術部門や研究開発部門へ、性能検査や機能評価をはじめとした計測機器、検査装置やシステムを納入しております。自動車業界のCASEへの取組を背景に性能・機能評価の需要が高まっており、今後は、機器やシステムの高性能化のニーズ拡大、レガシーシステムの刷新需要も予想され、中部圏はもとより関東や関西での活動機会の増加が見込まれます。当社グループでは、電波計測設備、FA機器、モデルベース開発ツールを扱う商社機能と、特殊計測機器など内製でシステム化を手掛けるメーカー機能をあわせ持ち、製品の機能検討、試作、量産等、各段階の用途やニーズに応じた幅広い対応をしております。内製のシステムは、計測・制御モジュールのトップメーカーからアライアンスパートナーの認定を受け、システム設計やコード作成、他社製ソフトウエア・ハードウエアの統合、実装にいたるまで、顧客の個々のニーズに合わせたシステムを構築しており、自動車業界の高い品質基準を満たしながら成長市場での領域拡大を目指しております。

 また、2023年3月期に、ファインピッチ接合技術をコアとした効率的な生産ラインを具現化する生産システム構築技術や、お客様の多彩なニーズにスピーディーにお応えするカスタム化技術に強みを持つ「萩原エンジニアリング」を新たに当社グループに迎えたことにより、一貫対応による設備インテグレーターとしてきめ細やかでスピーディーなFAソリューションの提供が可能となっております。

 

(2) 経営の基本方針

 当社グループは、「創造と挑戦」を経営理念として掲げ、全従業員が変化に適応し、新たな価値を「創造」し続けるとともに、現状に満足することなく、更なる成長に「挑戦」し続けてまいります。

 2050年には世界の人口が95億人を突破すると予測されており、今後、近未来に向かって、エネルギー、衣食住、交通手段、通信手段など人々の生活に密着した領域は、多様な価値観や様々な技術革新を伴いながら発展していきます。ますます広がりを見せる領域に、当社グループの得意とするエレクトロニクスソリューションは必要不可欠です。今後も自動車業界をはじめとした製造業や、データ活用を中心に製造業にとどまらない他業種のお客様に対し、ソリューション志向の考え方により、社会やお客様の課題を解決し期待に応えていくことで、世界中の人々の生活をより快適により豊かにすることこそが、当社グループにできる社会貢献と考え、グループ一丸となって「創造と挑戦」を実践し、すべてのステークホルダーから選ばれる企業グループに成長していくことを目指してまいります。

 

(3) 中期経営計画及び経営ビジョン

 当社グループは、新たな経営ビジョンとして「先進エレクトロニクスで人と社会とテクノロジーをつなぐエンジニアリングソリューションパートナー」を掲げ、2025年3月期から2027年3月期までの3か年を対象とする中期経営計画「Make New Value 2026」を推進しております。

 中期経営計画のもと、得意領域であるモビリティやモノづくり領域に加え、ロジスティクスやロボティクス等の隣接業界や、デジタル活用によるエネルギーやスマートシティ等のメガトレンドへの領域における課題に対し、その解決にお応えするソリューション志向を持ち、社内外でのビジネスイノベーション活動を通じて創造する最適なソリューションを提供し、持続可能な社会への貢献と企業価値向上を目指してまいります。

 

①重点方針及び重要経営指標

 当社グループでは、中期経営計画「Make New Value 2026」の重点方針を「稼ぐ力」の向上による企業価値向上と定めております。そして、計画期間を次なる成長ステージへの飛躍に向けた構造変革と事業基盤の確立を実行する期間と位置づけ、3つの構造改革を6つの重点戦略で推し進めることで、最終年度である2027年3月期に売上高3,000億円、営業利益110億円へと事業成長させるとともに、ROEは11%以上を達成することを目指しております。

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②構造改革

 当社グループが持続的に成長し続けるために、「稼ぐ力」の向上を実現する3つの構造改革に取り組みます。

 

(ビジネスモデル変革による提供価値の向上)

 社会や顧客課題への解決策を提案し、提供価値を高めることで「稼ぐ力」を強化いたします。

 既存のビジネスモデルである卸型ビジネス、システムインテグレーション、メーカービジネス等については、グループ全体でソリューション志向のもと、付加価値となる付帯開発やサービス事業を拡大してまいります。また、既存のビジネスモデルに加えて、データを価値化することで収益性が期待できるプラットフォーム事業等の新たなビジネスモデル作りに取り組むことで市場での存在感を示してまいります。

 

(資本生産性を意識したマネジメント改革)

 ビジネスモデル変革と併せて資本生産性を意識したマネジメントスタイルの変革に着手いたします。

 当社グループの株主資本コスト7~8%を踏まえた投下資本に対する利益に着目した社内マネジメントの仕組みを構築するほか、事業ポートフォリオへの戦略的アプローチを可能にする仕組みの構築と運用をすることで、タイムリーな資本生産性を意識したマネジメントの実現を目指してまいります。

 

(人的資本活用による従業員パワーの最大化)

 ソリューション志向によるビジネスモデル変革の推進を担う「創造と挑戦する人材」の育成と人材育成の基盤強化を加速させてまいります。

 従業員のパフォーマンスを最大化し、経営目標と達成に向けた従業員の活動をシンクロさせるため、専門性を活かす処遇や異動による経験値の獲得、そして会社目標と従業員目標がスケーラブルに連動した目標管理の仕組みを導入・強化し、次の成長ステージに向けた全従業員の経営参加意識を醸成し、全従業員で企業価値向上に取り組む企業運営を目指してまいります。

 

③重点戦略

 当社グループが培ってきたモビリティ領域への理解や知見などの当社グループらしさを活かしながら、ビジネス戦略とテクノロジー戦略を融合し、社内外の連携を強化することで、社会や顧客の課題を解決する最適なソリューション提供を目指してまいります。

 

(デバイス事業戦略)

 主力である半導体・電子部品の卸型ビジネスの規模を拡大する取組によって、これまで蓄積してきた車載・電装領域の知見の幅を広げ、活用し、モビリティ領域のソフト化に対応するエンジニアリング事業や、メーカーとしての事業等、付加価値の期待できる事業を社内外のパートナーとともに開拓することで、「稼ぐ力」の向上を目指してまいります。

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(ソリューション事業戦略)

 当社グループの強みであるITソリューション、組込ソリューション、FAエンジニアリングの3事業の事業規模拡大について、地域拡大、ソリューション拡大、パートナーとのアライアンス等により実現してまいります。

 また、これまで製造業を中心に取り組んできたソリューション事業を通じて得た知見、デバイス事業と共に培った車載・電装領域への知見を最大限活かして、データ収集やデータの価値化等、データを活用したライフサイクルマネジメント等のトータルソリューションの志向を以て、製造業向けにとどまらないデータプラットフォーム事業を拡大いたします。

 これらの4事業の融合により、ものづくりを基点に幅広い産業で通用するサービスと技術を育成し、新たな市場への挑戦と「稼ぐ力」の向上を目指してまいります。

 

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(ビジネスイノベーション戦略)

 当社グループ内での共創に加え、他社とのコラボレーションや技術協業によるイノベーションにより、新しい「稼ぐ力」の立上げを加速してまいります。

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(経営管理高度化戦略)

 ITやDXの推進によりオペレーションの効率化や経営資源の最適化を図り、資本生産性を意識したマネジメントスタイルへの転換に向けた取組を加速させてまいります。

 

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(人材戦略)

 当社グループらしい「ヒト」の強みを活かした人的資本経営で、全従業員の持てる力を最大化させてまいります。

 詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本・多様性に関する取組」に記載しておりますので、ご参照ください。

 

(ESG推進)

 社外からの要請に応えながら、気候変動や人的資本などの取組を向上させてまいります。

 情報開示を通じて幅広いステークホルダーの皆様とのコミュニケーションを充実させることで、環境価値・社会価値・経済価値を高め、サステナビリティの進化を目指してまいります。

 詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しておりますので、ご参照ください。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティの基本方針と取組

 当社グループは、「創造と挑戦」という理念のもと、中長期視点での事業活動の推進と社会適応力の向上によるサステナビリティ経営を推進し、SDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)の意識を高めながら、新たな価値の創造に努め、優れた商品・製品やサービスを社会に提供し、企業成長の実現と社会の持続的成長に貢献し、社会から必要とされる存在であるよう努めています。

 当社グループは、事業環境及びステークホルダーの双方の観点から様々な社会課題の重要度を調査・検討し、2021年度に4つのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。このたび、取り巻く環境の変化や中長期の経営戦略なども踏まえてマテリアリティの見直しを行い、2024年6月取締役会にて決議し、改めて4つのマテリアリティを設定しました。今後は、これまでの取組における活動基盤や活動成果を活かしつつ、新たなマテリアリティに紐づく主要テーマを設定し、中期経営計画の施策とも連携させながら、サステナビリティ活動の深化にチャレンジしてまいります。

 

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 活動体制については、2022年7月にサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長、経営会議メンバーを中心に構成)を設置し、コーポレート・ガバナンスやサステナビリティに関する取組の進捗状況や課題等についての議論を通じて実効性を高めています。サステナビリティ委員会は、3ヶ月に1回のペースで開催し、内容は取締役会に報告されます。下部組織には、リスク管理委員会、内部統制委員会、サステナビリティ推進委員会を置き、「コンプライアンスや内部管理体制の適切性・有効性の検証、問題点の改善・是正」「リスクマネジメントの強化」「SDGsやESGのさまざまな課題解決」等の活動のモニタリングや指導を担います。これらの主要な委員会を中心に関連する各委員会も含めて、相互連携することでより実効性のある体制を構築し、サステナビリティへの対応の質を高め、当社グループの中長期的な企業価値の向上を目指します。

 サステナビリティ推進委員会には、4つのワーキング(環境推進、ソーシャル、財務・IR、事業)を設置、各テーマの主要部門からメンバーを構成し、各ワーキングリーダーにはそれぞれ職責者を任命し、各部門の年度計画や重点施策とSDGsやESGとの関連付けを行いながら、実行性のある目標やKPIを設定しています。

 サステナビリティ推進部を設置し、円滑な委員会運営やワーキング活動支援、サステナビリティに関する社内外の情報収集や案件創出、社員への活動の普及等、活動の幅や深みを広げていくための主管部署としております。

 

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(2)気候変動に対する取組(TCFD提言に基づく気候変動関連の情報開示)

 気候変動が社会に与える影響は大きく、当社グループとしても気候変動を取り組むべき重要な経営課題の1つとして認識し、TCFD提言へ賛同する企業や関連団体と協働しながら、TCFD提言のフレームに基づいた情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を行っています。2023年4月には、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同とTCFDコンソーシアムへの参加を行いました。株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーとの良好なコミュニケーションが図れるように、TCFDのフレームに基づいた情報開示の充実を進めるとともに、気候変動問題から生じ得る事業環境への影響を分析しながら、当社グループの企業活動と事業活動において進められる取組を検討し、パリ協定の目指す脱炭素社会の実現に貢献できるように活動してまいります。

 

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①ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティ推進委員会を3ヶ月に1回開催し、SDGsやESG推進に関する方針策定、重要課題に対する施策の議論や決定、その進捗モニタリングを行います。気候変動対応は、本委員会の重要テーマの一つに位置付けており、活動方針や推進施策の妥当性と進捗状況を評価しています。サステナビリティ推進委員会の指示・決定に基づき、環境推進ワーキンググループが中心となり、気候関連問題や環境課題に関する具体的な取組を当社グループ各社の関係部門や環境マネジメントシステム(EMS)の仕組みへ展開し、活動の促進を図ります。サステナビリティ推進委員会における主たる活動状況や重要事項は、定期的なサステナビリティ委員会や取締役会への報告や、重要度に応じた取締役会での協議・決議が行われるプロセスとし、取締役会による適切な監督や指導が図られる運用体制としております。

 

②戦略

 当社グループは、2050年までを考慮した定性定量のシナリオ分析を実施しています。当社グループの気候変動に関わる短・中・長期のリスクと事業機会を網羅的に分析し、シナリオに基づいて定量化した結果から影響度を大・中・小に振り分け、下記のとおり選定しました。

 事業及び企業活動に与える影響が大きいと考える事項を重要事項として抽出した結果、移行リスクについては、炭素税導入等の各種法規制の変更によるコストへの影響や情報開示ニーズの未対応リスクなどを抽出しました。また、物理リスクでは、異常気象甚大化によるサプライチェーン寸断や平均気温上昇による影響等の売上減少のリスク等を抽出しました。今後は、これらを踏まえて、リスクと機会から生じ得る影響とその対応策の定義を行い、中長期的な経営戦略へ組み込んでまいります。

 

(主なリスクと機会)

 

種類

要因項目

事業インパクト

政策・法規制

自動車関連顧客への生産・サービスへの命令及び規制

炭素税導入等の各種法規制の変更が、半導体製造やその他製造など、当社が商社機能として関わるサプライチェーンにおいて材料の供給や資材価格等へ悪影響を与えた場合、当社においても原価高騰による仕入れコストが増加

自動車業界への政策厳格化に伴う自動車関連顧客のEVシフトに伴い、ガソリン車関連の部品点数減少や部品構成変化による売上や利益の減少

排出規制の強化

運賃や輸送費の値上がりによる物流・輸送コスト増加による利益圧迫

技術

既存製品の低炭素技術への入れ替え、新規技術への投資失敗等

太陽光発電設備等、自家発電インフラの増設による設備投資コストが増加

環境配慮型の自社製品(産業用コンピュータ、検査装置等)の開発への投資費用が増加

評判

投資家、顧客の行動変化

環境情報開示ニーズ(ESG評価基準の厳格化、開示要請分野の拡大)への対応不十分によって当社への投資撤退や株価下落、人材獲得への影響、人材流出のリスクが発生

急性物理的リスク

異常気象甚大化

台風や洪水など異常気象の重大性と頻度の上昇によって、

サプライチェーン寸断やインフラの長期停止が発生するリスクが上昇(発生した場合は売上減少)

慢性物理的リスク

平均気温上昇

気温上昇による自社オフィスの空調エネルギーのコスト増加、気温上昇へ対応するための建物の省エネ改修や環境性能の高い物件への移転による改修費や賃料等のコスト増加

気温上昇に伴い、仕入れ先のエネルギーコストが上昇し、

当社においても原価高騰による仕入れコストが増加

主な機会

製品及びサービス

電動車の普及拡大

電動車関連の部品構成の変化(モーター・インバーター・バッテリー等)に伴う提案機会拡大、ソフトウェアの検証と開発におけるビジネス機会増大

EVシフトや省エネ対策に伴うビジネス変化

電動車推進政策に伴い、EV市場におけるバッテリー監視、モーターやインバーター関連の生産設備のビジネス機会拡大

環境負荷、省資源に対する意識の高まりに伴い、お客様の製造プロセスの効率化や生産性、省エネ性能を高めるITソリューションビジネス(最先端IT、DX推進、クラウド化等)、産業機器ビジネス(機器、インフラ、IoT、制御/解析等)の機会拡大

市場

市場、トレンド変化

カーボンニュートラル対応等の社会課題の解決に貢献するイノベーション創出、新規事業や領域拡大への参入機会の増加

 

 

種類

要因項目

事業インパクト

主な機会

レジリエンス

省エネ対策の推進

自社内環境負荷低減活動の推進、備品等、環境配慮製品の使用率向上、社員の環境意識向上によって、企業評価の向上、資産の呼び込みへの好影響

 

(注)1 時間軸は、短期(2025年頃まで)・中期(2030年頃まで)・長期(2050年頃まで)を表しております。

   2 影響度は、定量化した結果を、売上・利益・運用コストの軸ごとで勘案し、大・中・小で評価しており

     ます。

 

③リスク管理

 当社グループでは、サステナビリティ推進部が活動の主管部門となり、事業会社の主幹部門と連携しながら、TCFDの提言に基づいて気候変動にかかるリスクや機会の特定や分析を行っております。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)の外部シナリオ等を参考とし、シナリオ分析によるリスクの整理、また、各事業への影響度や業界動向も踏まえた特に重要度の高いリスクの特定により、それらのリスクへの適切な対応を進めてまいります。

 特定したリスクと機会は、サステナビリティ推進委員会で十分に検討した後に、サステナビリティ委員会や取締役会に報告し、協議を経て決定されます。また、サステナビリティ推進委員会の委員長は、リスク管理委員会に参加し、気候関連問題の観点を当社グループの全社リスクや事業リスクに反映します。気候関連リスクを管理するプロセスの強化、気候関連に関するリスク管理と当社グループの総合的なリスク管理を統合する仕組みの強化を進めてまいります。

 

 

④指標及び目標

 中長期的な温室効果ガス(GHG)の排出削減目標の達成に向けて、Scope1,2(2020年度以降)及び Scope3(2021年度以降)の算定を実施しています。結果を踏まえ、Scope1,2に対しては2027年度までの削減目標を設定し、削減に向けた具体的な取組を推進しております。

 

a.温室効果ガス(GHG)排出量実績

分類

排出量 [t-CO2](注)4,5

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度(注)6

Scope1(燃料の使用)

(注)1

335

296

288

299

Scope2(電気の使用)

(注)2

1,237

872

969

750

Scope3(カテゴリ1~7)(注)3

-

583,264

614,549

739,722

(注)1 燃料関係は、日本の環境省・経済産業省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」を使

    用しております。

  2 電力関係は、日本の環境省・経済産業省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」、地

    球温暖化対策の推進に関する法律に基づく電力事業者別の調整後排出係数を使用しております。海外拠点

    については各年度における電力供給会社が提供する最新の係数を使用しております。Scope2の値

    は、マーケット基準のScope2の値を記載しております。

  3 日本の環境省・経済産業省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」を使用しておりま

    す。また、当社グループの事業活動に該当し、かつ把握可能なカテゴリの合計値を記載しております。

    カテゴリ8,9,11,13,14,15は該当する活動がないと判断し、除外しています。カテゴリ10,12は軽微なた

    め除外しております。

  4 2021,2022年度の実績値の集計範囲については、主要な連結子会社及び一部の海外拠点を含み、一部の連

    結子会社は集計範囲から除いております。詳しくは当社グループWEBサイトにて開示の第三者検証「温

    室効果ガス排出量 検証報告書」をご確認ください。

  5 2023年度の実績値について、Scope1,2における集計範囲は連結子会社全てを算定対象に含んでお

    り、Scope3における集計範囲は主要な連結子会社及び一部の海外拠点を含み、一部の連結子会社は

    集計範囲から除いております。

    また、これに伴って、基準年である2020年度の集計範囲を2023年度と同様に見直しました。

  6 2023年度のScope1,2,3の排出量は有価証券報告書提出時点での暫定値であり、確定値は算定が

    完了次第、当社グループWEBサイトで開示する予定です。

 

b.温室効果ガス(GHG)削減に向けた取組

 当社グループでは2022年度より温室効果ガスの排出量削減を目的とした活動を計画し、順次活動を開始しております。具体的な活動と進捗につきましては以下のとおりです。

ⅰ.Scope1

・社用車のハイブリッド車両への計画的な入れ替え、社用車台数の削減及びカーシェアリングの促進

 社用車利用における燃料使用量を低減する活動に取り組んでいます。2023年度においては、パンデミックへの規制緩和や活動量の増加により、社用車の利用頻度やグループ会社全体での走行距離が増加しております。なお、上述の活動状況のなか、社用車利用に伴う燃料使用量は前年とほぼ同じ水準で推移しており、増加した走行距離以上に燃料使用量を抑えております。

ⅱ.Scope2

・自社所有の工場や物流拠点における蛍光灯のLED化、電力契約の見直し(再生可能エネルギー100%プラン)

 電力使用量の削減と再生可能エネルギー由来の電力メニュー導入によるCO2排出量の削減に取り組んでおります。2023年度においては照明のLED化により電力使用量を約17%削減(同拠点比)したほか、再生可能エネルギー100%の電力へ契約を切替えたことによってScope2の排出量を大幅に削減しております。特に、電力契約切替は当初予定よりも早期に進められたことで、削減目標値を上回る削減効果を得られております。

 

 これらの取組を継続していくほか、Scope1,2削減に向けた新たな施策の検討やScope3の削減を進めるべく、算定方法の見直し(1次データへの置き換えによる精緻化)、サプライチェーンへのエンゲージメント活動等へ取組を進めていきたいと考えております。

 

c.Scope1,2削減目標

指標

基準年

目標年

目標水準

Scope1,2

2020年度

2027年度

▲25%以上

 今後の継続活動における削減推移や新たな施策の検討等の状況を踏まえて、適切な目標水準の見直しも意識してまいります。

 

 

(3)人的資本・多様性に関する取組

①萩原電気グループらしい人的資本経営

 当社グループが更なる企業価値向上を目指すには、自立性・自律性を発揮してビジネスモデル変革を進めることが重要であり、それには、ソリューション提供を強化する必要があると考えております。

 ソリューションをこれまで以上に生み出すには、エンジニアリング力に加えて「新しいこととつながる・つなげること」、言い換えれば「イノベーション」が今後ますます重要になってまいります。

 そこで当社グループの財産である社員の持てる力を最大化し、当社グループらしいヒトの強みと2つのジリツの精神を発揮してイノベーションに挑戦することを目指してまいります。そして、イノベーションを通じたそれぞれの社員のシンカ(新化・進化・深化)によって企業価値を向上させることが、当社グループが目指す「萩原電気グループらしい人的資本経営」の骨子です。

 「2つのジリツ」とは、「自立」と「自律」を指します。「自立」とは、自ら環境の変化を感じ取って「つながる・つなげる」に取り組むこと、「自律」は、易きに流れずイノベーションに挑戦する、また、そのために職業倫理を高く保つことを指します。

 つながる・つなげる対象は、ビジネス・会社、技術、ヒト、仕事のやり方等幅広く捉えております。それは、「技術系商社」として、社員がモビリティ関連技術・ものづくりへの広く深い知見を持ち、顧客・パートナーとの深く長期にわたる信頼関係を築き上げ、モビリティ産業・顧客のニーズへの深い理解を持つこと、それが、「萩原電気グループらしさ」でもあります。そして、仕事の内容や影響の大きさ、範囲や役職を問わず、全ての役員・社員がイノベーションを自分事と捉えて全員参加にて「Myイノベーション」に取り組むことを目指してまいります。

 

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②人材戦略の方向性並びに人材育成・社内環境整備

 人的資本経営による企業価値向上を目指す上で、当社グループの人材戦略は「挑戦・変革の促進」、「ワークデザイン改革」の2つであり、経営・事業戦略との結節点となるKGIとして「人的資本生産性」、社員がやりがいを持ってイノベーションに挑戦できるよう人的資本に投資し、また、社員のモチベーションが高い状態を保つという観点からサブKGIとして「人的資本投資」「従業員エンゲージメント」を位置付け、常に注視してまいります。

 人材育成の観点では、タレントマネジメントにより社員の自律的なキャリア形成と人材育成を促し、DFIを通じた公正・公平でニーズに適した機会の提供、多様な視点や知見の融合等による共感協創、ひいてはイノベーションを促進してまいります。

 また、社内環境整備では、社員自らが状況に応じた働き方を選べるABW、イノベーションに挑戦する基盤となる健康経営とコンプライアンスの強化に取り組んでまいります。

 

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(注)ワークデザイン改革とは、効率的で生産性が高まるような働き方、アイデアが創出される場所、社員が安心・満足・充実感を持って働けるような環境や風土作りを行うことです。

 

a.タレントマネジメント

 新人事制度を皮切りに、社員の自律的なキャリア形成と人材育成を支援し、企業価値向上を目指してまいります。社員一人ひとりが多くの経験値や幅広い視点を養いながら成長していくことで組織が活性化し、イノベーションを起こしていくことができると考えております。

 

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・採用

新卒採用とキャリア採用を共に強化する中で、2023年に共創イノベーション活動の拠点として開設したHagiwara Innovation center TOKYO(通称HIT)をイノベーション人材の採用に活用してまいります。2023年10月から、人材の採用手段の1つとしてリファラル採用を開始しており、今後も採用ルートの多様化を通じて当社グループが求める人材の採用をおこなってまいります。

 

・配置

キャリア申告制度やキャリアビジョン研修を通じて自律的なキャリア形成を促すと共に、人事異動等による幅広い知見とスキルや、様々な経験をもった人材が流動する好循環の流れをつくってまいります。

また、新人事制度で新設したプロフェッショナルコースやエルダーコースの社員が活躍できる基盤を整え、経験値の底上げを狙いとした配置、適材適所、適所適材の実現を目指してまいります。

 

・評価

新しい中期経営計画が目指すところである企業価値向上と、社員の取組が強く連動することを目指して、2024年4月から一定層以上の社員に成果評価を導入し、より個人の成果を賞与にて反映する仕組みとしました。今後は、より明確な判断基準で客観的かつ公正・公平な評価と、処遇への反映を目指し、会社毎の業績評価の導入を検討してまいります。

 

・育成

新たな選択型教育の充実や、グローバル人材・幅広い知見とスキルを持ち合わせた経営人材の育成、ミドルマネジメントへの教育機会の拡充を強化し、イノベーションを加速させてまいります。またこれらの取組は、中核人材としての素養の醸成・育成に寄与することで、経営リーダーへと繋がる人材プールの構築にも寄与するものと考えております。若手社員においても階層別研修の取組の一環として、グループ会社問わず社員同士が対話する機会を設け、イノベーティブな人材の育成を強化してまいります。

 

 

b.ダイバーシティ・フェアネス・インクルージョン(DFI)

 当社グループではこれまでダイバーシティ・インクルージョンの推進を進めてまいりましたが、フェアネス(公正・公平・ニーズ)の考え方を加えたDFI(注)をさらに推進してまいります。すべての社員のニーズに適した公正・公平な機会を提供し、多様な視点や知見を出し合い、ぶつけ合い、融合することがイノベーションの源泉と考え、個人と組織が思いきり力を発揮して新しい価値が創発できる環境づくりに努めてまいります。

 

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・多様な視点

多様な知を摺合わせてイノベーションを創出する土壌の形成を進める観点より、女性活躍推進とキャリア採用強化に注力しております。女性活躍推進においては、採用戦略の見直しや、本人のキャリア希望等も考慮した計画的育成による総合職コースへの転換により、2023年3月期から2024年3月期において全女性労働者に占める総合職の割合が28%→41%に上昇しております。また、キャリア採用者が従来にない考え方・視点等を組織内にて発言・共有し、それを取り入れる人材・機会が増えることにも期待しており、管理職に占めるキャリア採用者の比率は上記同様に40%→42%となっております。今後も継続して新卒・キャリア採用における女性総合職を積極的に採用すると同時に、管理職候補者研修の実施やコース転換制度の推進をしてまいります。

 

・ニーズに適した公正・公平な機会

当社グループDFI方針において、公正・公平でニーズに適した機会の提供(フェアネス)を位置付けております。性別等を問わず誰もが当たり前に活躍できる環境づくりを進めております。また、年に1度実施しているキャリア申告制度を利用し、チャレンジを志す社員や適材適所を求める社員に対するオープンな機会提供を目指してまいります。

 

・組織・個人が共に成長

Hagiwara Innovation center TOKYO等の活用をはじめとした、多様な知を出し合い、対話しながら共有・共振する場を提供し、組織と個人が共に成長できる機会を設けていくことで、イノベーションの加速を促してまいります。また、対話重視型の社員座談会やタウンホールミーティングを通じて役員等とも対話するなど、会社や組織の垣根を超えた価値観共有の場を提供してまいります。

 

(注)萩原電気グループにおけるDFI方針

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c.アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)

 社員自らが状況に応じた自立的・自律的な働き方が行えるような取組を実施し、人的資本生産性の向上を目指してまいります。

 

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・自立した仕事の仕方

フルフレックスタイム制度、テレワーク、フリーアドレス化、コワーキングスペースの活用、TPOに応じた服装の自由化など、時間・場所・アピアランス等さまざまな角度から「この業務にとって最適な働き方」を常に社員一人ひとりが考え、実践することを促してまいります。

様々なライフイベントを経験しながら仕事と向き合う従業員のサポートも含め、社員一人ひとりが個々の能力や多様性を十分に発揮し、継続的にワークライフバランスを充実させながら働くことができるより良い職場環境と企業風土を実現してまいります。

 

d.健康経営

 社員が財産である当社グループにとって、社員の健康なくしてイノベーションもないと考えております。2022年6月に「萩原電気グループ健康宣言」を表明し、代表取締役社長を責任者に据えた健康経営推進体制を構築、社員及びその家族を含めた健康の維持・増進に取り組んでおります。取組の評価として2年連続で経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人」に認定されました。

 

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・経営、管理職、社員一体となった総労働時間の短縮

イノベーションへ使う思考・実践の時間創出も当社グループとして取り組むべき事項と位置付けております。時間当たりの生産性向上、並びにプレゼンティーイズム・アブセンティーイズム(注)の改善にも繋がるものであり、健康経営において最も重要な取組でもあります。

(注)プレゼンティーズムとは、何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力や生産性が低下している状態、アブセンティーイズムは病欠・病気休業を意味します。(厚生労働省「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」)

 

・一人ひとりのからだやこころの健康増進

からだとこころは密接に結び付いているため、当社グループはその両面における健康増進を重要視しております。からだについては、定期健康診断におけるフォローを充実させ、特に「気づかぬうちに進行する生活習慣病」の予防に取り組んでおります。常駐の社内保健師が、よりスピーディに・的確に・継続的にアドバイスすることで、きめ細やかな改善フォローを行い、社員一人ひとりの健康レベル向上を目指してまいります。また、禁煙サポートプログラム等も取入れ「共生」の観点からも力を入れております。

こころの面では、社員のメンタル不調を防いで健康なこころの状態を確保するために、当社グループでは未然防止に注力しております。具体的には、新入社員と管理職向けの研修に加え、全ての新入社員に対する年2回のフォロー、社内相談窓口の設置(保健師、人事)等を行っております。

 

・社内のつながり・かかわり合いの活性化

イノベーションに向けた環境整備として、社員間のつながり・かかわり合いを通じた心理的安全性の向上も欠かせません。当社グループでは、各々の国の文化等に合わせて社内のクラブ活動や社内イベント開催、共済会による社員どうしの企画旅行への補助金支給等の施策に取り組んでおります。

 

e.コンプライアンス

 挑戦や変革に取り組む前提として、当社グループのすべての社員が、社会の一員としての強い自覚を持ち、コンプライアンス遵守を徹底してまいります。

 

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・方針・施策の周知と理解度向上の取組

倫理観、公序良俗等の社会的規範に従う必要があることについて、継続的な方針・施策の周知と理解度向上のための教育等の活動に取り組んでまいります。

 

・ビジネスと人権の取組

2024年度からは人権デュー・ディリジェンス(人権DD)への対応を始める予定であり、引続き企業価値の向上に努めてまいります。

 

・コンプライアンス遵守の方針・施策の策定

贈収賄や腐敗行為防止の取組等の未然防止施策を、必要に応じて見直し及び周知し、コンプライアンス遵守を徹底します。

 

・ハラスメントのない職場づくり

コンプライアンス教育と同時に、内部通報制度やハラスメント窓口の周知を行い、万が一の事態が起こった場合にも速やかな事実確認及び対応・対策がとれる環境づくりをおこなっております。

 

 

③指標及び目標

 当社グループで定めている指標及び実績は以下のとおりです。

 人的資本の重要性の認識のもと、各指標の推移をモニタリングしながら、人的資本生産性の向上、ひいては企業向上を目指して、適切な値になるように取り組んでまいります。

 

指標(単位)

(注)1

2022年度実績

2023年度実績

エンゲージメントサーベイ総合スコア平均点

(注)2

64.5

64.5

管理職に占める女性労働者の割合

3.2

3.4

男性労働者の育児休業取得率

72.7

100.0

正規雇用労働者の男女の賃金差異

(注)3

67.3

67.9

障がい者雇用率

2.49

2.54

正規雇用労働者の外国籍雇用率()

0.68

0.81

有給休暇取得率(臨時雇用者含む)

(注)4

70.6

72.0

(注)1 当社グループにおいて、施策の推進とともに、指標及び目標の拡大に取り組んでいる中で、現時点で

     開示可能な提出会社(当社)及び主要な連結子会社2社(萩原エレクトロニクス株式会社、萩原テクノ

     ソリューションズ株式会社)の集計値を記載しております。

   2 エンゲージメントサーベイは年2回、ツール「Wevox」を利用して実施しており平均値を記載し

     ております。

   3 男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均の割合を記載しております。

   4 期初(4月1日)付与対象者より算出しております。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しております。ただし、以下は当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在し、かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、文中における将来に関する事項は、別段の記載のない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)リスク管理体制

 当社グループの経営に重大な影響を及ぼす様々なリスクへの的確な対処が不可欠との考えのもと、想定しうるリスクの把握と防止及び万一リスクが顕在化した場合の損害を最小限に留めるため、リスク管理体制の整備と低減活動の充実に努めております。

 当社グループでは、サステナビリティ委員会の統括・管理のもと、リスクマネジメントの全社的推進を目的として「リスク管理委員会」を設置し、委員長を取締役会から選任しています。リスク管理委員会は、委員長から選任された委員を中心に、監査等委員や内部監査部門の職責者も参加し、四半期に1回開催しています。リスク管理委員会における主たる活動内容や重要事項は、サステナビリティ委員会での協議のうえ、重要度に応じて取締役会にて決議が行われるプロセスとし、取締役会による適正な監督や指導が図られています。

 また、情報セキュリティ、防災・BCPの重要性から部門横断型の個別活動体制を置き、専門的な視点でリスク認識や対応策について検討しています。それぞれの適切な活動と、委員会と各部門が相互連携した有機的な活動により、当社グループのリスクの網羅的な把握とリスク低減に向けた適正な対応を図りながら、当社グループのリスクマネジメントの実効性の強化を進めています。

 

 当社グループのリスク管理体制の概要は以下のとおりとなっております。

 

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(2)事業上の主要なリスク

①自動車産業に関するリスク

 当社グループの主要得意先は自動車関連企業であり、2024年3月期におけるグループ総売上高に占める自動車関連企業向け売上高は(約89%)であります。そのため経済環境の悪化に伴い主要得意先を中心とした自動車関連企業における生産台数が大幅に減少になった場合、また次世代のモビリティ社会の実現に向けたエレクトロニクス化、デジタル経営に向けた情報化投資や設備投資ニーズに対応できない場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える場合があります。

 なお、当社グループでは、ソリューション事業を中心に自動車産業以外の得意先に対しても積極的なビジネスを行う等、他業界への事業展開や事業領域の拡大に取り組んでおります。

 

②特定の得意先に依存するリスク

 当社グループの主要得意先は株式会社デンソーであり、2024年3月期におけるグループ総売上高に占める株式会社デンソー向け売上高は(約48%)であります。その内訳の主力商品は車載用の半導体や電子部品等であり、株式会社デンソーの生産動向・購買方針の変化に伴う売上高の減少及び収益性の悪化は、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、常に得意先のニーズを的確にとらえ、最適なソリューションを提供することを志向し、上記得意先との緊密な関係の構築に注力するとともに、自動車産業以外の顧客に対しても積極的なビジネスを行う等、リスクの低減を図っております。

 

③特定の仕入先に依存するリスク

 当社グループの主要仕入先は、ルネサスエレクトロニクス株式会社であり、2024年3月期におけるグループ総仕入高に占めるルネサスエレクトロニクス株式会社よりの仕入高は(約50%)であります。その内訳の主力商品は半導体であります。従いまして、ルネサスエレクトロニクス株式会社の技術開発動向と当社グループの得意先ニーズが大きく乖離した場合や、ルネサスエレクトロニクス株式会社の販売政策の変更、事業再編などの理由により商品ラインナップに制約が生じ、当社グループの商権が維持できない場合、また需要の急激な変化や、ルネサスエレクトロニクス株式会社の何らかの事情により製品等の供給が十分に得られない場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、新たな仕入先の開拓・拡大に積極的に取り組み、リスクの低減を図っております。

 

④商品の品質等に関するリスク

 当社グループが取り扱う商品について、不測の事態により不良補償等や知的財産権に関連した問題が発生した場合に、当社グループにおいて問題解決費用が発生する等、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、メーカーとの綿密な連携により、品質や信頼性の維持に努めております。

 

⑤新規事業等に関するリスク

 当社グループでは、変化する事業環境と顧客ニーズを的確にとらえ、新規商材、新規事業の拡大に継続的に取り組んでおります。新たなビジネスの立ち上げや投資、業務・資本提携等の実施にあたり、市場環境の急激な変化や不測の事態等により当初計画に乖離が生じた場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは新たなビジネスの立ち上げや投資におきましては、その内容に応じて取締役会で決定しております。また、業務・資本提携等の実施におきましては対象となる企業に関して、意思決定のために必要な情報を収集し、適切に評価を行っております。

 

(3)その他のリスク

①在庫評価損に関するリスク

 当社グループにおきましては、得意先との取引拡大に応じて災害発生時の生産活動を継続するための在庫や、仕入先の取扱製品の生産終了に伴う在庫が増加する可能性があります。そのため得意先の需要の大幅な減少等により滞留在庫となった場合、在庫評価損を計上する可能性があります。

 なお、当社グループでは、得意先の需要動向及び仕入先メーカーの生産状況・リードタイム等を加味し、各営業部門と関係部門にて適切な在庫調整に努めております。

 

②固定資産の減損に関するリスク

 当社グループは、2024年3月期末時点において含み損を抱えている土地を保有しておりますが、それらが属する事業グループには減損の兆候が見られません。しかしながら、今後当該事業グループにおいて減損の兆候が発生した場合、減損損失を計上する可能性があります。

 

③為替変動に関するリスク

 当社グループにおける取引の一部は、外貨建ての取引であり、為替変動による影響を受けます。なお、外貨建て取引には社内規程に従い為替予約を実施する等の対策を講じております。

 また、当社グループの海外事業会社の財務諸表を円貨に換算する際に、為替変動により当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 

④海外活動に潜在するリスク

 当社グループは、海外事業の拡大を図っており日本を起点に北米・欧州・アジアの世界4極でのネットワークを構築し、活動を展開しております。進出した国または地域において、経済状況、政治、社会体制等の著しい変化や法律・税制の改正、自然災害や致死率の高い強毒性の感染症の世界的な蔓延(パンデミック)、戦争、テロリストによる攻撃等が生じた場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、デバイス事業、ソリューション事業それぞれにおいて、海外事業に関する専門部署を設置し、海外事業会社と連携をとり適切な対応を行うよう努めております。

 

⑤自然災害等によるリスク

 当社グループが事業展開する国・地域において、自然災害や火災、気候変動に起因する異常気象(集中豪雨、洪水、水不足等)、致死率の高い強毒性の感染症の世界的な蔓延(パンデミック)、戦争、テロリストによる攻撃等が発生した場合、通信・交通網の遮断等が長期間にわたった場合、サプライチェーンの断絶が長期間に及んだ場合、システムトラブルが発生し復旧に時間を要する場合には当社グループの営業業務や物流業務に支障をきたし、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 また、当社グループでは事前の減災対策を行うとともに緊急時の復旧手順や行動要領等をまとめた事業継続計画(BCP)の策定、BCP在庫の確保、総合災害対策本部(旧BCM委員会)の設置と定期開催、社員安否確認システムの整備等を通じた対策や訓練・教育を実施しておりますが、大規模な災害の発生により、追加の対策コストが必要となった場合、当社グループの事業活動や財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、気候変動に関する主要なリスクについては、TCFDのフレームワークに基づいてまとめており、「第2

 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動に対する取組(TCFD提言に基づく気候変動関連の情報開示)」に記載しております。

 

⑥コンプライアンスに関するリスク

 当社グループにおきましては、コンプライアンス遵守を最優先事項として徹底するとともに、ガバナンス経営を強化し、内部統制・情報セキュリティ確保の徹底に取り組んでおります。しかしながら、国内外事業に関連した各種法規制の違反や、役員・従業員の不正行為等が発生した場合、社会的信用が低下・棄損し、当社グループの事業活動や財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、サステナビリティ委員会の統治・管理のもと、内部統制委員会を設置し、コンプライアンスや内部管理体制の適切性・有効性を定期的に検証し、問題点の改善・是正を行うとともに、内部統制及びコンプライアンスに関わるリスク管理等の充実に取り組んでおります。また、グループ全社員に対しコンプライアンス教育を実施し、法令遵守の徹底に努めております。

 

⑦情報セキュリティに関するリスク

 当社グループでは、事業活動を行うにあたり顧客や取引先に関する機密情報及び個人情報を有しており、サイバー攻撃による不正アクセスやコンピューターウイルス、人為的過失等により、当該情報の漏洩や改ざん・紛失、サービス停止等が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等が発生する可能性がある等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループでは、アンチウイルス等のシステム的な対策とともに、情報セキュリティ委員会の設置、グループ全社員を対象とする情報セキュリティ教育の実施と情報セキュリティ対策に取り組んでおります。

 

 

⑧人材確保に関するリスク

 当社グループでは、競争の激しい環境において、ますます高度化・複雑化する事業活動を的確に継続するとともに、また、当社グループの持続的成長に向けた既存事業の深化と新たなビジネスモデルの創出を行っていく優秀な人材の採用及び育成が重要であると認識しております。必要な人材を採用又は育成できなかった場合や、想定を超えて人材が流出した場合は、事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、事業戦略に必要な人材を明確にし、採用活動や選考手法の多様化を進めております。従業員の自律的なキャリア形成を支援し、従業員一人ひとりが適性や能力に応じたパフォーマンスを発揮でき、当社グループの人材の底上げを図るべく人事制度や教育制度の充実に尽力し続けるとともに、様々な考えを持った多様な人材が集まり、働きやすい労働環境、魅力ある組織風土づくりを目指した取組を進めております。企業価値向上にとって重要性が高まる人的資本への対応の強化に取り組み、優秀な人材の確保に努めてまいります。人的資本経営の考え方や取組については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本・多様性に関する取組」に記載しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中における将来に関する事項は、別段の記載のない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い経済活動の正常化が進みましたが、世界的な金融引き締めや継続的な物価上昇による景気への影響、中国経済の先行き懸念、地政学リスク等もあり、依然として不透明な状況が続きました。

当社グループの主要ユーザーである自動車関連企業では、半導体不足の緩和により自動車生産台数が回復したことに加えて、電動化領域を中心とした半導体・電子部品の需要が拡大する等引き続き堅調に推移いたしました。

このような環境のもと、当社グループは、お客様やパートナー様から選ばれる存在を目指し、新たな価値を創造、提供できる企業グループへの変革を加速させ、グローバルサプライチェーンの安定化やお客様、パートナー様との関係強化に努めました。

この結果、当連結会計年度の売上高は2,251億50百万円(前期比21.0%増)、営業利益は77億11百万円(前期比14.7%増)、経常利益は72億21百万円(前期比12.5%増)となり、売上高、営業利益、経常利益について過去最高を更新いたしました。また、前連結会計年度において特別利益に負ののれん発生益6億70百万円を計上した反動減もあり、親会社株主に帰属する当期純利益は44億21百万円(前期比10.0%減)となりました。

セグメントの業績は、次のとおりです。

 

(デバイス事業)

デバイス事業では、電子制御が進む自動車向けシステムLSIなどの半導体や電子部品の販売及び技術支援、組込システムのPoC(概念実証)開発支援や組込ソフトウェアを中心とした受託開発事業を行っております。

当連結会計年度におきましては、一時的な車両生産調整の影響がみられたものの、全体的には半導体不足の緩和や供給品の採用車種拡大などにより需要が好調に推移した結果、デバイス事業の売上高は1,961億26百万円(前期比23.4%増)、営業利益は56億70百万円(前期比26.3%増)となりました。

 

(ソリューション事業)

ソリューション事業では、IT機器、組込機器及び計測機器の販売や、ITプラットフォーム基盤及びIoTシステムの構築に加え、自動化・省力化に貢献する各種FA・特殊計測システムの設計・製造・販売及び産業用コンピュータの開発・製造・販売を行っております。

当連結会計年度におきましては、産業機器市場における受注調整の影響を受けつつも、ITプラットフォーム基盤やIT機器の更新、業務効率化を目的としたシステム構築、自動車の電動化領域を中心とした設備投資需要等を取り込んだ結果、ソリューション事業の売上高は290億23百万円(前期比7.4%増)、営業利益は20億40百万円(前期比8.7%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ36億1百万円増加し145億22百万円となりました。

a.営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が72億34百万円と前年同期と比べ1億23百万円(1.7%)の増益となったことやサプライチェーンの安定を目的とした在庫確保のための仕入債務の増加により、収入が51億34百万円(前年同期は130億20百万円の支出)となりました。

 

b.投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が3億68百万円と前年同期と比べ2億38百万円(184.8%)の増加となりましたが、前年同期において萩原エンジニアリング株式会社を連結子会社化したことによる連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が12億9百万円あったため、6億79百万円と前年同期と比べ支出が6億48百万円(48.8%)の減少となりました。

 

c.財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純減少額が12億5百万円と前年同期と比べ28億38百万円(70.2%)の減少となりましたが、長期借入による収入が26億50百万円と前年同期と比べ104億10百万円(△79.7%)の減少となったこと及び前年同期において社債の発行による収入が99億23百万円あったため、支出が11億85百万円(前年同期は164億21百万円の収入)となりました。

 

③生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

デバイス事業

2,803

+5.5

ソリューション事業

8,957

+23.2

11,760

+18.5

(注)金額は、販売価格によっております。

 

b.商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前期比(%)

棚卸資産残高

(百万円)

前期比(%)

デバイス事業

184,996

+24.9

39,113

+21.1

ソリューション事業

21,496

-1.3

5,559

+8.5

206,279

+21.6

44,673

+19.4

(注)金額は、仕入価格によっております。

 

c.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

デバイス事業

203,879

+24.1

29,402

+35.8

ソリューション事業

30,011

-0.6

10,572

+0.4

233,891

+20.3

39,974

+24.2

 

d.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

デバイス事業

196,126

+23.4

ソリューション事業

29,023

+7.4

225,150

+21.0

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

株式会社デンソー

86,719

46.6

107,802

47.9

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ391億49百万円増加し2,251億50百万円となりました。

新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行に伴い経済活動の正常化が進み、当社グループの主要ユーザーである自動車関連企業では、半導体不足の緩和により自動車生産台数が回復したことに加えて、電動化領域を中心に半導体・電子部品の需要が拡大し堅調に推移しました。

このような環境のもと当社グループでは、成長市場に向け技術力を活かした顧客視点での提案活動を継続してきたことに加え、自動車関連の顧客の好調な生産と設備投資需要に支えられ、過去最高の売上高となりました。

 

(デバイス事業)

デバイス事業におきましては、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ371億51百万円増加し、1,961億26百万円となりました。

当連結会計年度において、当社グループの主要ユーザーである自動車関連企業では一時的な生産調整の局面がありましたが、半導体不足の緩和により自動車の世界生産台数が前期と比較して増加したことで生産活動が活発になったことに加えて、採用品の新規立ち上げや車種展開による増加もあり、売上高は大きく増加いたしました。

今後も顧客及び仕入先との綿密な情報共有によりサプライチェーンの維持に注力するとともに、半導体や電子部品の供給及び受託ビジネスによる基盤事業の規模拡大とあわせ、車載・電装領域の知見を活かした高品質な技術サポートにより顧客の課題に寄り添うサービス提案や提供領域の拡大を図ることで、事業の成長を目指してまいります。

 

(ソリューション事業)

ソリューション事業におきましては、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ19億97百万円増加し、290億23百万円となりました。

当連結会計年度において、中国市況の影響等による産業機器市場の受注調整の影響を受けた組込領域の売上が伸び悩んだものの、自動車の電動化領域を中心とした設備投資需要や自動化や効率化を目的としたIT投資需要を取り込んだFA領域・IT領域の売上が好調だったことで売上は増加いたしました。

今後は、データ収集やデータ価値化などデータプラットフォーム事業を第4の柱として拡大し、既存のIT、組込、FAの3事業の強みを活かした融合ビジネスを確立することで、新たな市場と高付加価値事業のさらなる拡大に挑戦し、事業の成長を目指してまいります。

 

b.売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益

当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べ373億59百万円増加し2,051億46百万円となりました。これはデバイス事業及びソリューション事業において売上高の増加に伴い売上原価が増加したことによるものです。

また、当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ8億3百万円増加し122億92百万円となりました。

半導体製品を中心とした商品の輸送方法の見直しの取り組み等により輸送コストを低い水準に抑制することができましたが、IT・DXの推進に伴うシステム関連費用の増加や、業容拡大による人員増加により人件費が増加しました。

この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ9億86百万円増加し77億11百万円となりました。

 

c.営業外収益、営業外費用、経常利益

営業外収益は、受取補償金が30百万円減少したこと等により、前連結会計年度に比べ75百万円減少し89百万円となりました。

営業外費用は、為替の変動が当社グループの外貨建て取引に対し有利な状況であったため為替差損が94百万円減少しましたが、機動的かつ安定的な資金調達枠確保のため支払手数料が1億98百万円増加したこと等により、前連結会計年度に比べ1億6百万円増加し5億79百万円となりました。

この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ8億4百万円増加し72億21百万円となりました。

 

d.特別利益

特別利益は、前連結会計年度において萩原エンジニアリング株式会社を連結子会社化した際に負ののれん発生益を計上したことや、当連結会計年度において輸送事故による補償金の受取が発生したこと等により、前連結会計年度に比べ5億32百万円減少し1億70百万円となりました。

 

e.特別損失

特別損失は、輸送事故による損失が発生したこと等により、前連結会計年度に比べ1億48百万円増加し1億57百万円となりました。

 

f.親会社株主に帰属する当期純利益

税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ1億23百万円増加し72億34百万円となりました。

税効果会計適用後の法人税等負担額は、主に課税所得の増加の影響によって前連結会計年度に比べ6億10百万円増加し27億66百万円となりました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ4億91百万円減少し44億21百万円となりました。

 

②財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.資産

資産合計は、前連結会計年度末に比べて131億28百万円増加し1,197億6百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べて122億74百万円増加し1,115億72百万円となりました。これは主に、売上債権回転率の改善への取り組み等により電子記録債権が35億97百万円減少した一方で、自動車関連企業の需要拡大等により、商品及び製品が70億35百万円増加したこと等によるものであります。また、売上高の増加に伴い売掛金が32億89百万円増加しております。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて8億54百万円増加し81億34百万円となりました。

 

b.負債

負債合計は、前連結会計年度末に比べて62億99百万円増加し693億45百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べて73億36百万円増加し451億11百万円となりました。これは主に、短期借入金が12億5百万円減少した一方で支払手形及び買掛金が72億87百万円、電子記録債務が8億6百万円、契約負債が1億76百万円、未払法人税等が1億98百万円増加したこと等によるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて10億37百万円減少し242億34百万円となりました。これは主に、長期借入金が12億52百万円減少したこと等によるものであります。

 

c.純資産

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて68億29百万円増加し503億61百万円となりました。これは主に、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ17億38百万円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は40.3%(前連結会計年度末は38.8%)となりました。

 

③資本の財源及び資金の流動性

a.当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析

当連結会計年度のキャッシュ・フロー状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.財務政策

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。投資活動に関する資金需要としては、業容拡大に伴う事業所設備や社内システム等の設備投資等であります。

必要な資金については、内部資金のほか、調達コストと財務体質とのバランスを勘案しながら、借入金、売掛債権の流動化による調達に加え、資本増強等を組み合わせて調達しております。

また、不測の事態に備え、機動的かつ安定的な資金調達枠の確保のため、取引金融機関とコミットメントライン契約を締結しております。

株主還元につきましては、財務の健全性等を総合的に勘案しながら、業績に裏付けられた成果の配分を基本方針として実施しており、連結配当性向30%~40%を目途としております。

 

④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成状況

 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標である中期経営計画の目標値の達成状況は以下のとおりであります。

 

2022年3月期

(実績)

2023年3月期

(実績)

2024年3月期

(実績)

2024年3月期

(目標値)

売上高

1,584億円

1,860億円

2,251億円

2,275億円

営業利益

  43億円

   67億円

77億円

   83.5億円

ROE

 8.0%

  12.5%

9.9%

 10.0%以上

 2021年4月22日に公表した中期経営計画の目標値(売上高1,700億円、営業利益50億円、ROE8.0%)は2023年3月期に達成いたしました。2023年11月10日に公表した新たな目標値(売上高2,275億円、営業利益83.5億円、ROE10.0%以上)については、中国市況等の外部環境の変化により未達となっております。

 

⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」にて記載しておりますが、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

a.収益の認識基準

 当社グループの売上高は、履行義務を充足した時点で収益を認識しております。また、保守等のサービス業務のうち履行義務が一定期間にわたり充足されるものについては、サービス提供期間にわたり定額でまたは進捗度に応じて収益を認識しております。

 

b.棚卸資産の評価基準

 当社グループは、将来における需要や市場状況等に基づき、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合には収益性の低下があるものとし売価評価減を、棚卸資産の保有日数に応じて一定金額まで帳簿価額を切り下げる滞留評価減や将来の販売可能性の見積りに基づく個別評価減を計上しております。

 

c.繰延税金資産の回収可能性の評価

 当社グループは、繰延税金資産について、将来の回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しておりますが、繰延税金資産は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積り額が減少した場合には繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

d.固定資産の減損処理

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候が見られる資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上します。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

e.貸倒引当金の計上基準

 当社グループは、債権の貸倒による損失に備えるため、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。将来、顧客の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

仕入の提携

契約会社名

提携先

取扱商品

契約の種類

萩原エレクトロニクス株式会社

(連結子会社)

日本航空電子工業株式会社

コネクタ、入力デバイス、

インターフェース機器等

販売特約店契約

株式会社トーキン

キャパシタ、EMC部品、

圧電デバイス、電子材料等

販売特約店契約

ルネサスエレクトロニクス

株式会社

マイコン、システムLSI、

アナログ&パワーデバイス等

Distribution Agreement

萩原テクノソリューションズ

株式会社

(連結子会社)

日本電気株式会社

ビジネスPC、サーバ、

周辺機器、ネットワーク製品等

販売特約店契約

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動領域は、車と繋がる世界を意識した自動車関連ビジネスであり、成長分野として、ADAS・自動運転に関わるデバイスからモジュール、サブシステム、クラウド、IoTを対象と考えています。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は190百万円であります。

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1) デバイス事業

デバイス事業では、特殊車両向けに人や物体の検知、大学と連携した画像AIアルゴリズムの研究、一般財団法人日本自動車研究所の外部委託業者として培った走行データの活用研究、パワーデバイス需要の急増に備えるためのパワーエレクトロニクスの技術獲得等を継続して行っております。

また、モビリティ向けのアプリケーション開発を容易にする環境構築や、コネクテッド・カーにとって重要となるセキュリティ技術のソリューション構築に向けて、自社製品をPFとした技術獲得を行っております。

デバイス事業に係る研究開発費は、102百万円であります。

 

(2) ソリューション事業

ソリューション事業では、産業用装置や社会インフラ市場で培った組込みコンピュータ技術に基づき、従来どおり組込み用CPUボード、パネルコンピュータ等の技術に関する研究開発活動を行っております。

IoT/AI市場を含めたプラットフォーム製品の信頼性向上強化のため、従来製品より耐久性を向上させたリチウムイオンキャパシタ応用技術の調査・研究を行っております。

ソリューション事業に係る研究開発費は、88百万円であります。