第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、別段の記載のない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営環境

 当社グループを取り巻く環境は、世界規模での業界の垣根を越えた新たなビジネスモデル創出の動きやIoT・AI(人工知能)の活用といった新しい技術の台頭等、環境変化が激しい状況となっております。現況では、世界的な金融引き締めや継続的な物価上昇による景気への影響、中国経済の先行き懸念、地政学的なリスクの発生等、世界並びに日本経済の先行きは不透明でありますが、当社グループにおきましては、主要顧客を中心に次世代のモビリティ社会の実現に向けたエレクトロニクス化、デジタル経営に向けた情報化投資や設備投資ニーズは引き続き伸長していくものと想定され、デバイス事業、ソリューション事業ともに、これまで以上に付加価値やスピード感を伴った対応が求められるとともに、カーボンニュートラルや自然との共生等の社会課題にも経営視点を当てながら経営していくことが必要な環境となっております。

 

(デバイス事業)

 当社グループのデバイス事業は、トヨタグループを主体とした自動車関連企業を中心にルネサスエレクトロニクス株式会社製品を主体とした半導体や電子部品等の販売及び技術支援、組込システムのPoC(概念実証)開発支援や組込ソフトウエアを中心とした受託開発事業を行っております。

 当社グループの主要顧客の属する自動車業界は、「100年に一度の大変革の時代」にあり、CASE(コネク テッド、自動化、シェアリング、電動化)を軸とした構造転換が急速に進展しております。その実現に向けた自動車の電動化や電子化、さらに企業活動全般における情報化がより一層進んでいくことが予測される中、当社グループの取り扱う半導体や電子部品は、車載システムの中核を担う必要不可欠な製品であり、今後も需要拡大とビジネス機会の増大が期待されます。

 このような環境の中で、当社グループの主要顧客である自動車関連企業におきましては、高機能、高品質、高信頼のシステムをいかに低コストかつ効率的に開発、生産するかという課題を抱えております。当社グループは長年にわたる自動車関連企業とのビジネスの中で培った知見、ノウハウを活かし、顧客の企画段階より参画し、より顧客のニーズに合ったシステム提案を行うとともに、その実現のため、開発サポートも行っております。

 また、近年は車載組込ソフトウエアの重要性がますます高まる中、検証や開発支援をはじめとしたソフトウエアに対する支援のニーズも強くなっており、当社グループにおける事業も拡大しております。そのようなビジネス機会の増大に対し、適切な人的投資やサービスの強化、グループ企業やパートナー企業との連携を図りながら、事業の更なる拡大を目指しております。

 海外での事業展開におきましては、当社グループでは、従来から主要顧客の海外生産をサポートしておりますが、近年はビジネスの現地化が進み、エレクトロニクスの高度化や現地開発に伴う顧客の技術支援のニーズは一段と高まっております。そのような事業機会の変化に対して、日本で培った知見と各拠点で得た有益な情報を活かして、その地域に合う確かな商品とサービスを展開するとともに、各拠点での開発や設計支援の間口を広げながら、事業の拡大を目指しております。加えて、成長著しいインド市場においては、従来の主要顧客に加え、現地ローカル企業との連携を強化し、車載分野における新たなビジネス機会の創出と事業基盤の拡充に注力しております。

 

(ソリューション事業)

 当社グループのソリューション事業は、業務コンサルティングやIoTソリューション提供及びITプラット フォーム構築提案、IT機器や計測機器及び組込機器の販売に加え、FA(ファクトリーオートメーション)システムや特殊計測システムの設計・製造・販売及び産業用コンピュータの開発・製造・販売を行っております。

 2025年4月時点におけるソリューション事業内の事業領域は、ITソリューション、データプラットフォーム、組込ソリューション、FAソリューションの4領域となります。

 近年、「第4次産業革命」とも呼ばれるIoT、AI、ビッグデータ等の先端技術を活用した産業分野のデジタル化が急速に進展しております。当社グループの主要顧客においても、ITインフラの高度化や工場内のスマート化、さらには業務プロセス全体のデジタル変革(DX)への取組が加速しており、企業の競争力強化に向けた技術投資が活発化しています。

 このような環境下において、当社グループは、システムインテグレーターとしての技術力と、商社としての製品調達・供給力を融合させ、顧客の課題解決に資するソリューションを提供しております。特に、セキュリティ分野やFA分野を強みに、業務自動化や、IoTによる設備・工程のリアルタイム監視、データ分析による生産性向上等、IT技術を核としたソリューションのニーズは年々高まっており、当社グループの事業機会の拡大を狙っております。

 ITソリューション領域では、製造業を中心に広い業種の顧客を持ち、情報システム部門や生産技術・開発部門を中心に、パソコン、サーバやストレージをはじめとするIT機器の販売、アプリケーションやプラットフォーム開発等のSIサービスを提供しており、近年はサイバーセキュリティ対策からのネットワーク再構築サービス、AIやRPA(Robotic Process Automation)によるデータ活用と業務オペレーションの自動化、エッジ、IoTシステムや生産管理システム等のインフラ整備やシステム開発の需要が高まっております。製造現場の効率化等の ITインフラ構築に多くの実績を持つ当社グループは、中部地区トップクラスの契約数となる大手SⅠerやITベンダとのパートナー契約も活かし、多種多様に広がりを見せるITニーズに対して、豊富なアイテムと最新の技術トレンドも活用した最適なITソリューション・サービスを提案しております。

 

 データプラットフォーム領域は、当社グループがこれまで製造業を中心に多様な業界の顧客に対してソリュー ションを提供してきた知見と実績を活かし、データ活用を軸とした新たな事業として強化している領域です。

 本事業は、2024年4月より本格的に立ち上げており、データの収集・蓄積・分析・可視化を一貫して実現する IoTアナリティクスプラットフォーム「BellaDati IoT Framework」を中核に据えています。

 2024年7月にグループ会社化したBELLADATI社の技術を活用した「BellaDati IoT Framework」は、IoTコントローラ、高度な分析機能、データウエアハウス、機械学習機能を標準搭載し、SDK/APIなどの提供により、短期間で高品質なサービスの構築を可能とするソリューションです。これにより、顧客は業務の効率化のみならず、新たな付加価値の創出を図ることが可能となります。当社グループは、こうしたデータ活用を通じて、顧客の競争力強化に貢献することを目指しております。

 当社グループは、BELLADATI社との技術融合を通じて、製造業にとどまらず、国内外の多様な業界に向けたデータ活用型ソリューションの提供を加速させております。

 

 組込ソリューション領域では、工作機械、半導体製造装置、産業機械、物流搬送装置等の製造業を中心とした顧客の製品に組み込まれる制御コントローラや、表示デバイスなどの情報機器や産業機器、自社製造の産業用コン ピュータを提供しております。今後は、新技術の台頭や自動車、半導体産業における生産設備投資やシステムの刷新がより一層進むものと見込まれ、物流・半導体搬送装置の需要増、5Gを活用したシステム構築の立ち上がりも期待されます。長年にわたるFA業界への対応、自社ブランドによる産業用コンピュータの開発、生産の経験を活かし、長寿命、FA用途の耐環境性能をもつ高信頼、高性能な製品を国内生産により長期供給できることを強みに、安定したモノづくりを支援し、高度化が望まれる生産現場のニーズに対して付加価値の高いソリューションを提供しております。

 

 FAソリューション領域では、自動車関連企業の技術部門や研究開発部門へ、性能検査や機能評価をはじめとした計測機器、検査装置やシステムを納入しております。自動車業界のCASEへの取組を背景に性能・機能評価の需要が高まっており、今後は、機器やシステムの高性能化のニーズ拡大、レガシーシステムの刷新需要も予想され、中部圏はもとより関東や関西での活動機会の増加が見込まれます。当社グループでは、電波計測設備、FA機器、モデルベース開発ツールを扱う商社機能と、特殊計測機器等の内製でのシステム化を手掛けるメーカー機能をあわせ持ち、製品の機能検討、試作、量産等、各段階の用途やニーズに応じた幅広い対応をしております。内製のシステムは、計測・制御モジュールのトップメーカーからアライアンスパートナーの認定を受け、システム設計やコード作成、他社製ソフトウエア・ハードウエアの統合、実装にいたるまで、顧客の個々のニーズに合わせたシステムを構築しており、自動車業界の高い品質基準を満たしながら成長市場での領域拡大を目指しております。

 また、2022年10月に、ファインピッチ接合技術をコアとした効率的な生産ラインを具現化する生産システム構築技術や、お客様の多彩なニーズにスピーディーにお応えするカスタム化技術に強みを持つ「萩原エンジニアリング」を新たに当社グループに迎えたことにより、一貫対応による設備インテグレーターとしてきめ細やかでスピーディーなFAソリューションの提供が可能となっております。

 

(2) 経営の基本方針

 当社グループは、「創造と挑戦」を経営理念として掲げ、全従業員が変化に適応し、新たな価値を「創造」し続けるとともに、現状に満足することなく、更なる成長に「挑戦」し続けてまいります。

 2050年には世界の人口が95億人を突破すると予測されており、今後、近未来に向かって、エネルギー、衣食住、交通手段、通信手段など人々の生活に密着した領域は、多様な価値観や様々な技術革新を伴いながら発展していきます。ますます広がりを見せる領域に、当社グループの得意とするエレクトロニクスソリューションは必要不可欠です。今後も自動車業界をはじめとした製造業や、データ活用を中心に製造業にとどまらない他業種のお客様に対し、ソリューション志向の考え方により、社会やお客様の課題を解決し期待に応えていくことで、世界中の人々の生活をより快適により豊かにすることこそが、当社グループにできる社会貢献と考え、グループ一丸となって「創造と挑戦」を実践し、すべてのステークホルダーから選ばれる企業グループに成長していくことを目指してまいります。

(3) 中期経営計画及び経営ビジョン

 当社グループは、経営ビジョンとして「先進エレクトロニクスで人と社会とテクノロジーをつなぐエンジニアリングソリューションパートナー」を掲げ、2025年3月期から2027年3月期までの3か年を対象とする中期経営計画「Make New Value 2026」を推進しております。

 中期経営計画のもと、得意領域であるモビリティやモノづくり領域に加え、ロジスティクスやロボティクス等の隣接業界や、デジタル活用によるエネルギーやスマートシティ等のメガトレンドへの領域における課題に対し、その解決にお応えするソリューション志向を持ち、社内外でのビジネスイノベーション活動を通じて創造する最適なソリューションを提供し、持続可能な社会への貢献と企業価値向上を目指しております。

 

①重点方針及び重要経営指標

 当社グループでは、中期経営計画「Make New Value 2026」の重点方針を「稼ぐ力」の向上による企業価値向上と定めております。そして、計画期間を次なる成長ステージへの飛躍に向けた構造変革と事業基盤の確立を実行する期間と位置づけ、3つの構造改革を6つの重点戦略で推し進めることで、最終年度である2027年3月期に売上高3,000億円、営業利益110億円へと事業成長させるとともに、ROEは11%以上を達成することを目指しております。

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②構造改革

 当社グループが持続的に成長し続けるために、「稼ぐ力」の向上を実現する3つの構造改革に取り組んでおります。

 

(ビジネスモデル変革による提供価値の向上)

 社会や顧客課題への解決策を提案し、提供価値を高めることで「稼ぐ力」を強化いたします。

 既存のビジネスモデルである卸型ビジネス、システムインテグレーション、メーカービジネス等については、グループ全体でソリューション志向のもと、付加価値となる付帯開発やサービス事業を拡大してまいります。また、既存のビジネスモデルに加えて、データを価値化することで収益性が期待できるプラットフォーム事業等の新たなビジネスモデル作りに取り組むことで市場での存在感を示してまいります。

 

(資本生産性を意識したマネジメント改革)

 ビジネスモデル変革と併せて資本生産性を意識したマネジメントスタイルの変革に着手しております。

 当社グループの株主資本コスト7~8%を踏まえた投下資本に対する利益に着目した社内マネジメントの仕組みを構築するほか、事業ポートフォリオへの戦略的アプローチを可能にする仕組みの構築と運用をすることで、タイムリーな資本生産性を意識したマネジメントの実現を目指しております。

 

(人的資本活用による従業員パワーの最大化)

 ソリューション志向によるビジネスモデル変革の推進を担う「創造と挑戦する人材」の育成と人材育成の基盤強化を加速させてまいります。

 従業員のパフォーマンスを最大化し、経営目標と達成に向けた従業員の活動をシンクロさせるため、専門性を活かす処遇や異動による経験値の獲得、そして会社目標と従業員目標がスケーラブルに連動した目標管理の仕組みを導入・強化し、次の成長ステージに向けた全従業員の経営参加意識を醸成し、全従業員で企業価値向上に取り組む企業運営を目指しております。

 

③重点戦略

 当社グループが培ってきたモビリティ領域への理解や知見等の当社グループらしさを活かしながら、ビジネス戦略とテクノロジー戦略を融合し、社内外の連携を強化することで、社会や顧客の課題を解決する最適なソリュー ション提供を目指しております。

 

(デバイス事業戦略)

 主力である半導体・電子部品の卸型ビジネスの規模を拡大する取組によって、これまで蓄積してきた車載・電装領域の知見の幅を広げ、活用し、モビリティ領域のソフト化に対応するエンジニアリング事業や、メーカーとしての事業等、付加価値の期待できる事業を社内外のパートナーとともに開拓することで、「稼ぐ力」の向上を目指しております。

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(ソリューション事業戦略)

 当社グループの強みであるITソリューション、組込ソリューション、FAソリューションの3事業の事業規模拡大について、地域拡大、ソリューション拡大、パートナーとのアライアンス等により実現してまいります。

 また、これまで製造業を中心に取り組んできたソリューション事業を通じて得た知見、デバイス事業と共に培った車載・電装領域への知見を最大限活かして、データ収集やデータの価値化等、データを活用したライフサイクルマネジメント等のトータルソリューションの志向を以て、製造業向けにとどまらないデータプラットフォーム事業を拡大いたします。

 これらの4事業の融合により、ものづくりを基点に幅広い産業で通用するサービスと技術を育成し、新たな市場への挑戦と「稼ぐ力」の向上を目指しております。

 

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(ビジネスイノベーション戦略)

 当社グループ内での共創に加え、他社とのコラボレーションや技術協業によるイノベーションにより、新しい「稼ぐ力」の立上げを加速してまいります。

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(経営管理高度化戦略)

 ITやDXの推進によりオペレーションの効率化や経営資源の最適化を図り、資本生産性を意識したマネジメントスタイルへの転換に向けた取組を加速させてまいります。

 

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(人材戦略)

 当社グループらしい「ヒト」の強みを活かした人的資本経営で、全従業員の持てる力を最大化させてまいります。

 詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本・多様性に関する取組」に記載しておりますので、ご参照ください。

 

(ESG推進)

 社外からの要請に応えながら、気候変動や人的資本などの取組を向上させてまいります。

 情報開示を通じて幅広いステークホルダーの皆様とのコミュニケーションを充実させることで、環境価値・社会価値・経済価値を高め、サステナビリティの進化を目指してまいります。

 詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しておりますので、ご参照ください。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティの基本方針と取組

  ①サステナビリティ基本方針

 当社グループは、「創造と挑戦」という理念のもと、中長期視点での事業活動の推進と社会適応力の向上によるサステナビリティ経営を推進し、SDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)の意識を高めながら、新たな価値の創造に努め、優れた商品・製品やサービスを社会に提供、企業成長の実現と社会の持続的成長に貢献し、社会から必要とされる存在であるよう努めています。

 

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②マテリアリティについて

 当社グループは、事業環境及びステークホルダーの双方の観点から様々な社会課題の重要度を調査・検討し、2021年度に4つのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。取り巻く環境の変化や中長期の経営戦略等も踏まえてマテリアリティの見直しを行い、2024年6月取締役会にて決議し、改めて4つのマテリアリティを設定しました。これまでの取組における活動基盤や活動成果を活かしつつ、新たなマテリアリティに紐づく「重要テーマ」を設定のうえ、それらを通じて「目指すサステナビリティな社会」や「当社グループの成長の姿」を整理し、中期経営計画の施策とも連携させながら、サステナビリティ活動の深化と磨き込みにチャレンジしてまいります。

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 「稼ぐ力の向上」においては、2つの視点で事業活動とサステナビリティ活動の関連性を捉え、事業活動を進めていくとともに、マテリアリティを適切かつ有機的に連携させながら、当社グループらしいサステナビリティの在り方を追求し、活動のシンカを目指していきます。

a.既存事業のビジネスモデルで支えるサステナビリティ

 当社グループでは、中核を担うデバイス事業とソリューション事業においてソリューション志向における価値

提供の拡大を進めており、「ソリューション志向による提供価値拡大と収益構造の改革」を重点テーマとして設

定しています。エンジニアリングサービスやデータ活用を活かし、従来のビジネスモデルを革新的にシンカさせ

ながら、適切に顧客のニーズに応えつつ、強靭なサプライチェーンの成長を安定的に支え、未来のモビリティ社

会やものづくり現場の実現、その応用領域の発展や進化を支えていきます。

b.当社グループの強みを活かした新たな領域で創出するサステナビリティ

 当社グループでは、モビリティ領域をはじめ、様々な知見やアセット等の強みを活かした「ビジネスイノベー

ションによる新たな価値の創出」を重点テーマとして掲げています。デバイス事業とソリューション事業の連携

領域、データ活用サービスやAI技術による成長市場での事業発掘、グループ内連携に留まらず他社コラボでの

事業創出に取り組むことで技術革新を実現し、持続可能な製品やサービスを生み出すことを可能とします。新事

業創出を通じた提供価値を拡大していくことで、社会課題への貢献領域を拡大し、持続可能な社会と当社グルー

プの成長を実現してまいります。

 

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③サステナビリティ推進体制

 活動体制については、サステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長執行役員、経営会議メンバーを中心に構成)を設置し、コーポレート・ガバナンスやサステナビリティに関する取組の進捗状況や課題等についての議論を通じて実効性を高めています。その直下に「リスク管理委員会」「内部統制委員会」「サステナビリティ推進委員会」を配置し、活動のモニタリングや活動の推進力向上を図っており、これらの主要な委員会を中心に関連する各委員会も含めて、相互連携することでより実効性のある体制を構築し、サステナビリティへの対応の質を高め、当社グループの中長期的な企業価値の向上を目指します。

 サステナビリティ推進委員会には、4つのワーキング(環境推進、ソーシャル、サステナ情報開示、事業)を設置、各テーマの主要部門からメンバーを構成し、各部門の年度計画や重点施策とSDGsやESGとの関連付けを行いながら、実行性のある目標やKPIを設定しています。

 サステナビリティ推進部を設置し、円滑な委員会運営やワーキング活動支援、サステナビリティに関する社内外の情報収集や案件創出、社員への活動の普及等、活動の幅や深みを広げていくための主管部署としております。

 

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会議体名

役割

開催頻度

サステナビリティ委員会

当社グループ全体の持続的成長と企業価値の最大化を図るため、サステナビリティ方針に基づくサステナビリティ経営戦略の議論と策定を行い、経営会議に報告します。

年4回

リスク管理委員会

当社グループの事業活動に関連する内外の様々なリスクを適切に管理するリスクマネジメントを推進します。

年4回

内部統制委員会

当社グループのコンプライアンスや内部管理体制を構築し、その適切性・有効性を定期的に検証し、問題の改善施策の推進を図ります。

毎月1回

サステナビリティ推進委員会

当社グループにおけるSDGsやESG対応に関するサステナビリティの重要テーマや課題を特定し、グループ活動への浸透を図ります。

年4回

 

 

(2)気候変動に対する取組(TCFD提言に基づく気候変動関連の情報開示)

 気候変動が社会に与える影響は大きく、当社グループとしても気候変動を取り組むべき重要な経営課題の1つとして認識し、TCFD提言へ賛同する企業や関連団体と協働しながら、TCFD提言のフレームに基づいた情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を行っています。2023年4月には、気候関連財務情報開示タスク フォース(TCFD)提言への賛同とTCFDコンソーシアムへの参加を行いました。株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーとの良好なコミュニケーションが図れるように、TCFDのフレームに基づいた情報開示の充実を進めるとともに、気候変動問題から生じ得る事業環境への影響を分析しながら、当社グループの企業活動と事業活動において進められる取組を検討し、パリ協定の目指す脱炭素社会の実現に貢献できるように活動してまいります。

 

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①ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティ推進委員会を3ヶ月に1回開催し、SDGsやESG推進に関する方針策定、重要課題に対する施策の議論や決定、その進捗モニタリングを行います。気候変動対応は、本委員会の重要テーマの一つに位置付けており、活動方針や推進施策の妥当性と進捗状況を評価しています。サステナビリティ推進委員会の指示・決定に基づき、環境推進ワーキンググループが中心となり、気候関連問題や環境課題に関する具体的な取組を当社グループ各社の関係部門や環境マネジメントシステム(EMS)の仕組みへ展開し、活動の促進を図ります。サステナビリティ推進委員会における主たる活動状況や重要事項は、定期的なサステナビリティ委員会や取締役会への報告や、重要度に応じた取締役会での協議・決議が行われるプロセスとし、取締役会による適切な監督や指導が図られる運用体制としております。

 

②戦略

 当社グループは、2050年までを考慮した定性定量のシナリオ分析を実施しています。当社グループの気候変動に関わる短・中・長期のリスクと事業機会を網羅的に分析し、シナリオに基づいて定量化した結果から影響度を大・中・小に振り分け、下記のとおり選定しました。

 事業及び企業活動に与える影響が大きいと考える事項を重要事項として抽出した結果、移行リスクについては、炭素税導入等の各種法規制の変更によるコストへの影響や情報開示ニーズの未対応リスク等を抽出しました。また、物理リスクでは、異常気象甚大化によるサプライチェーン寸断や平均気温上昇による影響等の売上減少のリスク等を抽出しました。今後は、これらを踏まえて、リスクと機会から生じ得る影響とその対応策の定義を行い、中長期的な経営戦略へ組み込んでまいります。

 

(主なリスクと機会)

 

種類

要因項目

事業インパクト

政策・法規制

自動車関連顧客への生産・サービスへの命令及び規制

炭素税導入等の各種法規制の変更が、半導体製造やその他製造等、当社グループが商社機能として関わるサプライチェーンにおいて材料の供給や資材価格等へ悪影響を与えた場合、当社グループにおいても原価高騰による仕入れコストが増加

自動車業界への政策厳格化に伴う自動車関連顧客のEVシフトに伴い、ガソリン車関連の部品点数減少や部品構成変化による売上や利益の減少

排出規制の強化

運賃や輸送費の値上がりによる物流・輸送コスト増加による利益圧迫

技術

既存製品の低炭素技術への入れ替え、新規技術への投資失敗等

太陽光発電設備等、自家発電インフラの増設による設備投資コストが増加

環境配慮型の自社製品(産業用コンピュータ、検査装置等)の開発への投資費用が増加

評判

投資家、顧客の行動変化

環境情報開示ニーズ(ESG評価基準の厳格化、開示要請分野の拡大)への対応不十分によって当社グループへの投資撤退や株価下落、人材獲得への影響、人材流出のリスクが発生

急性物理的リスク

異常気象甚大化

台風や洪水等の異常気象の重大性と頻度の上昇によって、

サプライチェーン寸断やインフラの長期停止が発生するリスクが上昇(発生した場合は売上減少)

慢性物理的リスク

平均気温上昇

気温上昇による自社オフィスの空調エネルギーのコスト増加、気温上昇へ対応するための建物の省エネ改修や環境性能の高い物件への移転による改修費や賃料等のコスト増加

気温上昇に伴い、仕入れ先のエネルギーコストが上昇し、

当社グループにおいても原価高騰による仕入れコストが増加

主な機会

製品及びサービス

電動車の普及拡大

電動車関連の部品構成の変化(モーター・インバーター・バッテリー等)に伴う提案機会拡大、ソフトウェアの検証と開発におけるビジネス機会増大

EVシフトや省エネ対策に伴うビジネス変化

電動車推進政策に伴い、EV市場におけるバッテリー監視、モーターやインバーター関連の生産設備のビジネス機会拡大

環境負荷、省資源に対する意識の高まりに伴い、お客様の製造プロセスの効率化や生産性、省エネ性能を高めるITソリューションビジネス(最先端IT、DX推進、クラウド化等)、産業機器ビジネス(機器、インフラ、IoT、制御/解析等)の機会拡大

市場

市場、トレンド変化

カーボンニュートラル対応等の社会課題の解決に貢献するイノベーション創出、新規事業や領域拡大への参入機会の増加

中~

レジリエンス

省エネ対策の推進

自社内環境負荷低減活動の推進、備品等、環境配慮製品の使用率向上、社員の環境意識向上によって、企業評価の向上、資産の呼び込みへの好影響

(注)1 時間軸は、短期(2025年頃まで)・中期(2030年頃まで)・長期(2050年頃まで)を表しております。

   2 影響度は、定量化した結果を、売上・利益・運用コストの軸ごとで勘案し、大・中・小で評価しており

     ます。

 

③リスク管理

 当社グループでは、サステナビリティ推進部が活動の主管部門となり、事業会社の主幹部門と連携しながら、TCFDの提言に基づいて気候変動にかかるリスクや機会の特定や分析を行っております。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)の外部シナリオ等を参考とし、シナリオ分析によるリスクの整理、また、各事業への影響度や業界動向も踏まえた特に重要度の高いリスクの特定により、それらのリスクへの適切な対応を進めてまいります。

 特定したリスクと機会は、サステナビリティ推進委員会で十分に検討した後に、サステナビリティ委員会や取締役会に報告し、協議を経て決定されます。また、サステナビリティ推進委員会の委員長は、リスク管理委員会に参加し、気候関連問題の観点を当社グループの全社リスクや事業リスクに反映します。気候関連リスクを管理するプロセスの強化、気候関連に関するリスク管理と当社グループの総合的なリスク管理を統合する仕組みの強化を進めてまいります。

 

④指標及び目標

 中長期的な温室効果ガス(GHG)の排出削減目標の達成に向けて、Scope1,2(2020年度以降)及び Scope3(2021年度以降)の算定を実施しています。結果を踏まえ、Scope1,2に対しては2027年度までの削減目標を設定し、削減に向けた具体的な取組を開始しておりましたが、2023年度までに前倒して目標を達成しました。従いまして、新たな削減目標として、2030年基準年比50%以上削減に目標を見直しました。新たな目標の達成に向けては、自助努力をベースとした本質的で有意義な低減活動を基本に取り組んでまいります。また、

Scope3に対しては、算定の精度を高め、適切に活動を反映するために算定ロジックの見直しに着手しております。

 

a.温室効果ガス(GHG)排出量実績

分類

排出量 [t-CO2](注)4,5

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度(注)6

Scope1(燃料の使用)

(注)1

335

296

288

299

299

Scope2(電気・熱の使用)

(注)2

1,122

872

969

718

588

Scope3(カテゴリ1~9)

(注)3

-

583,264

614,549

739,719

1,035,375

(注)1 燃料関係は、日本の環境省・経済産業省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」を使

    用しております。

  2 電力関係は、日本の環境省・経済産業省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」、地

    球温暖化対策の推進に関する法律に基づく電力事業者別の調整後排出係数を使用しております。海外拠点

    については各年度における電力供給会社が提供する最新の係数を使用しております。Scope2の値

    は、マーケット基準のScope2の値を記載しております。

  3 日本の環境省・経済産業省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」を使用しておりま

    す。また、当社グループの事業活動に該当し、かつ把握可能なカテゴリの合計値を記載しており、2024年

    度の算定からカテゴリ9を算定対象に含めております。

    カテゴリ8,13,14,15は該当する活動がないと判断し、除外しています。カテゴリ10,11,12は後述の集計

    範囲の変更等により、算定方法の検討や見直し段階であるため、合計値に含めておりません。

  4 2021~2023年度の実績値の集計範囲については、主要な連結子会社及び一部の海外拠点を含み、一部の連

    結子会社は集計範囲から除いております。詳しくは当社グループWEBサイトにて開示の第三者検証「温

    室効果ガス排出量 検証報告書」をご確認ください。

  5 2024年度の実績値の集計範囲は、2024年度内に新たに子会社化したBELLADATI社を除く、連結子会社全て

    を算定対象に含んでおり、Scope3のみ一部の連結子会社は集計範囲から除いております。

    また、組織体制の変更等に伴って基準年である2020年度の集計範囲を2024年度と同様となるように見直し

    ております。

  6 2024年度のScope1,2,3の排出量は有価証券報告書提出時点での暫定値であり、確定値は算定が

    完了次第、当社グループWEBサイトで開示する予定です。

 

b.温室効果ガス(GHG)削減に向けた取組

 当社グループでは2022年度より温室効果ガスの排出量削減を目的とした活動を計画し、順次活動を開始しております。具体的な活動と進捗につきましては以下のとおりです。

ⅰ.Scope1

・社用車のハイブリッド車両への計画的な入れ替え、社用車台数の削減及びカーシェアリングの促進

  社用車利用における燃料使用量を低減すべく、社用車のハイブリッド車両への計画的な入れ替えやテレマ

 ティクスシステムからのデータ(稼働率等)を活用した社用車台数の削減及びカーシェアリングの促進を並行

 して実施しています。2024年度には、施策対象としている社用車のうち、ハイブリッド車両が占める比率が

 50%に到達し、社用車の平均燃費の数値として施策の推進効果が表れてきております。

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ⅱ.Scope2

・LED照明と再生可能エネルギーの導入

  電力使用量の削減と再生可能エネルギー由来の電力メニュー導入に取り組んでおり、エネルギー使用量と

 GHG排出量の両面でScope2の削減を目指しております。2024年度には再生可能エネルギー由来の電力

 を導入する拠点が国内5拠点まで増加し、電力使用における再生可能エネルギー使用率は約35%以上となり、

 Scope2の排出量削減に大きく貢献しております。

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(注)2021年度、2022年度は一部拠点を除いた集計値となっています。

   また、2020~2024年度の集計値に2024年度内に新たに子会社化したBELLADATI社は含んでおりません。

 

ⅲ.Scope3

・算定ロジックの見直し検討

 当社グループのScope3カテゴリ1排出量は、「仕入金額×排出係数」の式にて算定しており、事業活

動の拡大(仕入金額の増加)に伴って排出量も比例して増加する算定方法となっております。より精度の高い

算定を行うべく、サプライヤーの排出量の一次データをサンプル収集し、サプライヤーの削減努力を適切に反

映できる算定ロジックの検討活動を2024年度より開始しております。今後はカテゴリ4やほかのカテゴリにお

いてもトンキロ法等の適切な算定方法への切替を検討してまいります。

 

c.Scope削減目標

指標

基準年

目標年

目標水準

Scope1,2

2020年度

2030年度

△50%以上

 2027年度までを目標年としてScope1,2に対して基準年比25%削減の目標を設定しておりましたが、2023年度までに前倒して目標を達成しました。従いまして、新たな削減目標として、2030年基準年比50%以上削減に目標を見直しました。新たな目標の達成に向けては、自助努力をベースとした本質的で有意義な低減活動を基本に取り組んでまいります。

 

 

(3)人的資本・多様性に関する取組

 当社グループは「Make New Value 2026」の実現に向けて「人的資本活用による従業員パワーの最大化」を掲げ「人的資本」の強化を行い、イノベーションを通じた従業員のシンカによって「企業価値の向上」を推進しておりま

す。

 

①ガバナンス

 当社グループでは、人材戦略に関する協議やモニタリングの場として複数の会議体を設けております。マテリアリティに紐づく主要テーマの一つである人的資本経営推進に関する活動のモニタリングは、サステナビリティ委員会にて行い当社取締役会に報告しております。また、経営上必要な人材戦略や重要な課題は、当社及び主要連結子会社の社長をはじめとしたメンバーで構成する人事戦略会議を月に1回開催して共有や協議を行っており、その上で、重要事項は当社経営会議及び当社取締役会にて協議・決定しております。

 サステナビリティ全体の体制については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(1)サステナビリティの基本方針と取組」をご参照ください。

 

②戦略

 当社グループが更なる企業価値向上を目指すには、自立性・自律性を発揮してビジネスモデル変革を進めることが重要であり、それには、ソリューション提供を強化する必要があると考えております。

 ソリューションをこれまで以上に生み出すには、エンジニアリング力に加えて「新しいこととつながる・つなげること」、言い換えれば「イノベーション」がますます重要になります。

 そこで当社グループの財産である従業員の持てる力を最大化し、当社グループらしいヒトの強みと2つのジリツの精神を発揮してイノベーションに挑戦することを目指しております。そして、イノベーションを通じたそれぞれの従業員のシンカ(新化・進化・深化)によって企業価値を向上させることが、当社グループが目指す「萩原電気グループらしい人的資本経営」の骨子です。

 「2つのジリツ」とは、「自立」と「自律」を指します。「自立」とは、自ら環境の変化を感じ取って「つながる・つなげる」に取り組むこと、「自律」は、易きに流れずイノベーションに挑戦する、また、そのために職業倫理を高く保つことを指します。

 つながる・つなげる対象は、ビジネス・会社、技術、ヒト、仕事の進め方等幅広く捉えております。それは、「技術系商社」として、従業員がモビリティ関連技術・ものづくりへの広く深い知見を持ち、顧客・パートナーとの深く長期にわたる信頼関係を築き上げ、モビリティ産業・顧客のニーズへの深い理解を持つこと、それが、「萩原電気グループらしさ」でもあります。そして、仕事の内容や影響の大きさ、範囲や役職を問わず、全ての役員・従業員がイノベーションを自分事と捉えて全員参加にて「Myイノベーション」に取り組むことを目指してまいります。

 

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a.人材戦略の方向性並びに人材育成・社内環境整備

当社グループの人的資本経営の実行にあたり「挑戦・変革の促進」と「ワークデザイン改革」の実践及びグループ全体でのイノベーションへの挑戦により企業価値向上を目指し、3つの主要KGIと人材戦略を推し進める5つの重点戦略からなる人的資本ツリーの考え方にて人的資本マネジメントを行っております。

 

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(注)ワークデザイン改革とは、効率的で生産性が高まるような働き方、アイデアが創出される場所、従業員が

安心・満足・充実感を持って働けるような環境や風土を創出していくことです。

 

ⅰ.3つのKGI

当社グループでは、従業員一人あたりの人的資本投資(従業員等に支払う報酬や採用費、外注費等の一人あたりの額等)、従業員エンゲージメント(エンゲージメントサーベイの総合スコア)、及び生産性の3つの主要KGIを設定し、その3つのKGIをキーとした人的資本ツリーを利用してモニタリングを推進します。

KGIは、どれかひとつが増加・向上すればよいものではなく、バランスが重要であると考え、3つのKGIを同格に格付けし、総合的に判断してまいります。

 

ⅱ.5つの重点戦略テーマ

 「タレントマネジメント」により従業員の自律的なキャリア形成と人材育成を促進し、「DFI」を通じた

公正・公平でニーズに適した各種機会の提供、多様な視点や知見の融合等による共感・共創、ひいてはイノベーションを促進してまいります。また、従業員自らが状況に応じた働き方を選べる「ABW」を推進し、イノベーションに挑戦する企業基盤となる「健康経営」と「コンプライアンス」の強化に取り組みます。

 

ⅲ.ありたい姿

5つの重点戦略に対してありたい姿を以下のとおり定め、必要な取組を検討・実施しております。

 

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b.重点戦略と主要な施策

ⅰ.タレントマネジメント

<考え方や方向性>

 タレントマネジメントは「採用」「配置」「育成」「評価」の4つの視点で施策を検討・実施しております。当社グループが求める人材、Myイノベーションに挑戦する人材を採用し、従業員の自律的なキャリア形成支援やスキルやマインド面を含めた教育・人材育成、適材適所・適所適材の両立の実現により従業員一人ひとりが適正や能力に応じたパフォーマンスが発揮できる労働環境や組織風土づくりを進めてまいります。

 

採用(採用拡大と採用者の定着戦略)

    新卒一括採用や通年採用、リファラル採用等、採用活動を強化するとともに、定着戦略として入社社員

   への面談やメンタルヘルスケア支援等のオンボーディングにも注力。

 

配置(適材適所・適所適材の両立)

        人事異動等を活用して、幅広い知見とスキル、様々な経験をもつ人材が流動する好循環をつくり、従業

       員の仕事の幅を拡大。また、複線型の役割等級制度等、各ポジション役割の明確化と様々な従業員が活躍

       できる基盤を整え、経験値の底上げを狙った配置、適材適所・適所適材の両立と組織活性化を目指す。

 

育成(挑戦・創造する人材)

        キャリア自律を促進するための選択型教育の充実、グローバル人材や幅広い知見とスキルを持ち合わせ

       た経営人材の育成、ミドルマネジメントへの教育機会及び全社的なスキル向上研修(アップスキル・リス

       キル)の充実に取り組む。

 

評価(挑戦を推奨する人事制度)

        役割に対する達成度を評価する仕組みを導入。また、企業価値向上と持続的な成長を目指し、従業員の

       取組を強く連動させるため、一定層以上の社員に成果評価を導入し、個人の成果・挑戦への結果を賞与に

       て反映。その他、成果をより明確な判断基準で客観的かつ公正・公平に評価し、挑戦を認め合う風土構築

       や形骸化させないための取組も実施。

 

<主な施策と実績>

主な施策

内容や実績

複線型の役割等級制度

(2024年4月導入)

・管理職及びその手前の中堅社員を対象に、マネジメントコース・プロフェッショナルコースを新設。入社初期からキャリア志向の醸成や動機づけを行い、会社の期待と本人の希望をすり合わせた上で、各コースを選択。

・再雇用者を対象にエルダーコースを新設。期待役割やミッションを基準とした処遇を行い、成果に応じた一時金を支給。

手上げ選択型研修

(2024年4月導入)

従業員一人ひとりの学ぶ意欲を重視し、主体的・継続的に学べる機会を提供。

・2024年度に次世代リーダー研修を刷新し、本人の意欲と会社の期待の両面を考

 慮した人選制度へと変更。初回は約25名の管理職が受講。

グローバル教育

・ネイティブ講師とのWEB形式による英会話教育支援プログラムの提供。

・TOEIC® IPテストの通年開催を開始。(希望受験者)

・海外事業会社への短期留学プログラムをリニューアルして再開。(コロナ禍は中断)

イノベーティブ思考を

学ぶ会

従業員のアイデアや新しい発想の具体化に役立つイベント等の機会の創出。

・2024年度は専門家や大手商社等の社外有識者を招いた講演会を開催。

考課者研修

定量的に成果を判断する方法や部下との関わり方、効果的なコミュニケーション

スキルを習得し、公正・公平な評価を実現するための取組を実施。

・継続的な考課者訓練やフィードバック研修の実施。

・評価調整会議の定期開催。

チャレンジを称える

仕組み

業務における前例にとらわれない新しいチャレンジや、組織の活性化・風土改革

につながる取組を促進。

・2023年度より社長賞におけるチャレンジ賞の新設。

 

 

 

ⅱ.ダイバーシティ・フェアネス・インクルージョン(DFI)

<考え方や方向性>

 当社グループでは従来からダイバーシティ・インクルージョンの推進を進めてまいりましたが、フェアネス

(公正・公平・ニーズ)の考え方を加えたDFI(注)をさらに推進しております。多様な知をすり合わせてイ

ノベーションを創出する土壌の形成を進める観点から、女性活躍とキャリア採用強化に注力し、公正・公平な

機会の提供の観点からは、性別等を問わず誰もが当たり前に活躍できる環境づくりを進め、そして、萩原電気

グループの共創イノベーション活動拠点であるHagiwara Innovation center TOKYOの活用等を通じて、多様な

知を出し合い、対話しながら共有・共振する場を提供しております。引き続き、チャレンジを志す社員や適材

適所を求める社員に対して、オープンな機会や、会社や組織の垣根を越えた価値観共有の場の提供により、組

織と個人の成長とイノベーションの加速を促してまいります。

 

<主な施策と実績>

主な施策

内容や実績

公正・公平な人事制度

(2025年4月導入)

職群(コース)転換制度及び管理職登用制度の年齢制限を廃止し、期待役割の達成度、キャリア志向、適性等を総合的に評価して合否を判断する制度に改定。

女性活躍推進

継続的な新卒・キャリア採用における女性総合職の積極的な採用と、管理職候補者向けの研修の実施や職群(コース)転換制度の推進により、キャリア機会の創出と職場環境づくりを推進。さらに、下記の取組を通じて、女性社員のキャリア形成と交流を支援。

・管理栄養士による「女性の健康とキャリアセミナー」の開催

・部署横断型の女性社員座談会の開催

 ・本人のキャリア希望も踏まえた計画的な人材育成の推進

<数値実績>2024年3月期から2025年3月期

・全女性労働者に占める総合職の割合:40%→43%

・正社員における女性の割合:20%(変化なし)

・管理職手前の一般社員における女性社員の割合:3.5%→5%

 

(注)萩原電気グループにおけるDFI方針

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ⅲ.アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)

<考え方や方向性>

 従業員自らが状況に応じた自立と自律を併せ持った働き方が行えるような取組を実施し、様々なライフイベ

ントを経験しながら仕事と向き合う従業員のサポートも含め、従業員一人ひとりが個々の能力や多様性を十分

に発揮し、継続的にワークライフバランスを充実させながら働くことができるより良い職場環境と企業風土を

実現してまいります。

 

<主な施策と実績>

 時間・場所・アピアランス等さまざまな角度から「この業務にとって最適な働き方」「生産性が高まる働き

方」を常に従業員一人ひとりが考え、選択して、実践することを促してまいりました。その成果もあり徐々に

従業員の働き方の変化が見え始めております。

主な施策

内容や実績

場所の整備と普及活動

集中エリアやコミュニケーションエリア等の設置・改善を進めるとともに、その普及や理解促進を目的として社内向けに「ABW通信」を発信。

アピアランス面

2024年度はTPOに応じた服装の自由化に関するトライアルを実施。

 

ⅳ.健康経営

<考え方や方向性>

 従業員が財産である当社グループにとって、従業員の健康なくしてイノベーションもないと考えております。2022年6月に「萩原電気グループ健康宣言」(注)を表明し、代表取締役社長執行役員を責任者に据えた健康経営推進体制を構築、従業員及びその家族を含めた健康の維持・増進に取り組んでおります。取組の評価として3年連続で経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人」に認定されました。今後も、従業員一人ひとりが、心身ともに健康に安心して働ける職場環境づくりを推進してまいります。

     (注)当社グループ健康宣言は当社サステナビリティサイトをご参照ください。

 

<主な施策と実績>

主な施策

内容や実績

過重労働への対策

労働時間の適正化

経営層への労働状況の適切な共有や、組織長への啓蒙活動を通じて、当社グループ全体で労働時間適正化の取組を実施。過重労働対策にとどまらず、イノベーション創出に向けた思考・実践のための時間創出も、重要な施策と位置付け。時間当たりの生産性向上に加え、プレゼンティーイズム・アブセンティーイズムの改善効果も期待。

<実績>

・産業医面談や面談に基づく残業規制

・市民開発促進活動等の業務改善や効率化、DX推進等

からだとこころの健康増進活動

健康状態の改善や疾病の未然防止に加え、個人の健康意識の向上と周囲への健康配慮の重要性にも注力し、常駐の社内保健師によるきめ細かな健康支援を行うとともに、継続的かつ自発的な健康行動ができるような施策に取り組む。

<実績>

・管理栄養士監修「健康弁当キャンペーン」の実施

・運動習慣の定着や食生活改善を目的にイベントやオンラインセミナーを開催

・40歳未満で生活習慣病予備群とされる社員を対象とした「健康チャレンジ支

 援活動」の展開

・禁煙サポ―トプログラムの提供

・新入社員に対する年2回の保健師面談の実施や社内相談窓口の設置

 

 

ⅴ.コンプライアンス

<考え方や方向性>

 挑戦や変革に取り組む前提として、当社グループのすべての従業員が、社会の一員としての強い自覚を持

ち、コンプライアンス遵守を徹底してまいります。

 具体的には、倫理観、公序良俗等の社会的規範の遵守や贈収賄や腐敗行為防止の取組等の未然防止策として、継続的な方針・施策の周知と理解度向上のためのコンプライアンス教育等の活動を行っております。また、コンプライアンス教育と同時に、内部通報制度やハラスメント窓口の周知を行い、万が一の事態が起こった場合にも速やかな事実確認及び対応・対策がとれる環境づくりを行っております。

 

<主な施策と実績>

主な施策

内容や実績

ビジネスと人権の取組

(人権方針の作成)

国際的な人権規範に則した形で人権尊重に取り組むことを目的として、「萩原電気グループ人権方針」を2025年4月に策定。人権デュー・ディリジェンス(人権DD)への対応等、実効性のある人権マネジメント体制の構築に着手し、従業員をはじめとするすべてのステークホルダーの人権保護に努めるとともに、活動の定着を図っていく。

<実績>

・2025年4月「萩原電気グループ人権方針」(注)を策定。

・内部通報制度に加え、社外の方向けの通報・相談窓口を開設。

(注)「萩原電気グループ人権方針」は当社サステナビリティサイト参照

 

 

③リスク管理

 当社グループでは、人材確保に関するリスクを事業等のリスクの一つとして特定しております。人に関するリスク及び機会に関する課題に対して、全社的な視点から戦略的に取り組んでおり、具体的には、リスク管理委員会にてリスクの特定・評価・対応策の策定や管理を行い、人的資本経営の施策を講じることで、リスクの低減や機会の最大化に努めております。

 これらの活動は主管部門を中心に推進しており、サステナビリティ推進委員会やリスク管理委員会等での定期的なモニタリングや協議を行いながら、持続可能な成長の実現を目指しております。当社グループの人材確保に関するリスクは「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (3)その他のリスク ⑧人材確保に関するリスク」をご参照ください。

 

 

④指標及び目標

 当社グループで定めている指標及び実績は以下のとおりです。

 人的資本の重要性の認識のもと、各指標の推移をモニタリングしながら、人的資本生産性の向上、ひいては企業向上を目指して、適切な値になるように取り組んでまいります。

 

指標(単位)

(注)1

2022年度実績

2023年度実績

2024年度実績

エンゲージメントサーベイ総合スコア平均点

(注)2

64.5

64.5

65.5

管理職に占める女性労働者の割合

3.2

3.4

1.9

男性労働者の育児休業取得率

72.7

100.0

100.0

正規雇用労働者の男女の賃金差異

(注)3

67.3

67.9

67.5

障がい者雇用率

2.49

2.54

2.78

正規雇用労働者の外国籍雇用率()

0.68

0.81

1.61

有給休暇取得率(臨時雇用者含む)

(注)4

70.6

72.0

68.0

(注)1 当社グループにおいて、施策の推進とともに、指標及び目標の拡大に取り組んでいる中で、現時点で

     開示可能な提出会社(当社)及び主要な連結子会社2社(萩原エレクトロニクス株式会社、萩原テクノ

     ソリューションズ株式会社)の集計値を記載しております。

   2 エンゲージメントサーベイは年2回、ツール「Wevox」を利用して実施しており平均値を記載し

     ております。

   3 男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均の割合を記載しております。

   4 期初(4月1日)付与対象者より算出しております。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しております。ただし、以下は当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在し、かかるリスク要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、文中における将来に関する事項は、別段の記載のない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)リスク管理体制

 当社グループの経営に重大な影響を及ぼす様々なリスクへの的確な対処が不可欠との考えのもと、想定しうるリスクの把握と防止及び万一リスクが顕在化した場合の損害を最小限に留めるため、リスク管理体制の整備と低減活動の充実に努めております。

 当社グループでは、サステナビリティ委員会の統括・管理のもと、リスクマネジメントの全社的推進を目的として「リスク管理委員会」を設置し、委員長を取締役会から選任しています。リスク管理委員会は、委員長から選任された委員を中心に、監査等委員や内部監査部門の職責者も参加し、四半期に1回開催しています。リスク管理委員会における主たる活動内容や重要事項は、サステナビリティ委員会での協議のうえ、重要度に応じて取締役会にて決議が行われるプロセスとし、取締役会による適正な監督や指導が図られています。

 また、情報セキュリティ、防災・BCPの重要性から部門横断型の個別活動体制を置き、専門的な視点でリスク認識や対応策について検討しています。それぞれの適切な活動と、委員会と各部門が相互連携した有機的な活動により、当社グループのリスクの網羅的な把握とリスク低減に向けた適正な対応を図りながら、当社グループのリスクマネジメントの実効性の強化を進めています。

 

 当社グループのリスク管理体制の概要は以下のとおりとなっております。

 

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(2)事業上の主要なリスク

①自動車産業に関するリスク

 当社グループの主要得意先は自動車関連企業であり、2025年3月期におけるグループ総売上高に占める自動車関連企業向け売上高は、約85%であります。そのため経済環境の悪化に伴い主要得意先を中心とした自動車関連企業における生産台数が大幅に減少になった場合、また次世代のモビリティ社会の実現に向けたエレクトロニクス化、デジタル経営に向けた情報化投資や設備投資ニーズに対応できない場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える場合があります。

 なお、当社グループでは、付加価値と収益性を意識した事業構造への変革を目指しており、既存事業におけるソリューション志向による提供価値拡大、収益性を狙った新たなビジネスモデルの構築、ビジネスイノベーションの活性化による共創促進を柱に置いた重点活動を進め、自動車産業の持続的な成長への貢献度を高めていくとともに、ソリューション事業を中心に自動車産業以外の得意先に対しても積極的なビジネスを行う等、他業界への事業展開や事業領域の拡大に取り組んでおります。

 

②特定の得意先に依存するリスク

 当社グループの主要得意先は株式会社デンソーであり、2025年3月期におけるグループ総売上高に占める株式会社デンソー向け売上高は、約43%であります。その内訳の主力商品は車載用の半導体や電子部品等であり、株式会社デンソーの生産動向・購買方針の変化に伴う売上高の減少及び収益性の悪化は、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、常に得意先のニーズを的確にとらえ、最適なソリューションを提供することを志向し、上記得意先との緊密な関係の構築に注力するとともに、自動車産業以外の顧客に対しても積極的なビジネスを行う等、リスクの低減を図っております。

 

③特定の仕入先に依存するリスク

 当社グループの主要仕入先は、ルネサスエレクトロニクス株式会社であり、2025年3月期におけるグループ総仕入高に占めるルネサスエレクトロニクス株式会社よりの仕入高は、約49%であります。その内訳の主力商品は半導体であります。従いまして、ルネサスエレクトロニクス株式会社の技術開発動向と当社グループの得意先ニーズが大きく乖離した場合や、ルネサスエレクトロニクス株式会社の販売政策の変更、事業再編等の理由により商品ラインナップに制約が生じ、当社グループの商権が維持できない場合、また需要の急激な変化や、ルネサスエレクトロニクス株式会社の何らかの事情により製品等の供給が十分に得られない場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、新たな仕入先の開拓・拡大に積極的に取り組み、リスクの低減を図っております。

 

④商品の品質等に関するリスク

 当社グループが取り扱う商品について、不測の事態により不良補償等や知的財産権に関連した問題が発生した場合に、当社グループにおいて問題解決費用が発生する等、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、メーカーとの綿密な連携により、品質や信頼性の維持に努めております。

 

⑤新規事業等に関するリスク

 当社グループでは、変化する事業環境と顧客ニーズを的確にとらえ、新規商材、新規事業の拡大に継続的に取り組んでおります。新たなビジネスの立ち上げや投資、業務・資本提携等の実施にあたり、市場環境の急激な変化や不測の事態等により当初計画に乖離が生じた場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは新たなビジネスの立ち上げや投資におきましては、その内容に応じて取締役会で決定しております。また、業務・資本提携等の実施におきましては対象となる企業に関して、意思決定のために必要な情報を収集し、適切に評価を行っております。

 

(3)その他のリスク

①在庫評価損に関するリスク

 当社グループにおきましては、得意先との取引拡大に応じて災害発生時の生産活動を継続するための在庫や、仕入先の取扱製品の生産終了に伴う在庫が増加する可能性があります。そのため得意先の需要の大幅な減少等により滞留在庫となった場合、在庫評価損を計上する可能性があります。

 なお、当社グループでは、得意先の需要動向及び仕入先メーカーの生産状況・リードタイム等を加味し、各営業部門と関係部門にて適切な在庫調整に努めております。

②固定資産の減損に関するリスク

 当社グループは、物流拠点や生産設備、情報システム等を事業用資産として計上しております。当該資産は、固定資産の減損に係る会計基準に従い、将来的な収益性やキャッシュ・フロー等を算定し、減損損失の認識及び測定を行っております。経営環境の著しい変化等により収益性が著しく低下した場合、対象資産に減損損失を計上する必要が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループでは、各事業での事業採算を的確に把握し、事業環境の変化に応じて柔軟に対応することにより、リスクの最小化に努めております。

 

③為替変動に関するリスク

 当社グループにおける取引の一部は、外貨建ての取引であり、為替変動による影響を受けます。なお、外貨建て取引には社内規程に従い為替予約を実施する等の対策を講じております。

 また、当社グループの海外事業会社の財務諸表を円貨に換算する際に、為替変動により当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 

④海外活動に潜在するリスク

 当社グループは、海外事業の拡大を図っており日本を起点に北米・欧州・アジアの世界4極でのネットワークを構築し、活動を展開しております。進出した国または地域において、経済状況、政治、社会体制等の著しい変化や法律・税制の改正、自然災害や致死率の高い強毒性の感染症の世界的な蔓延(パンデミック)、戦争、テロリストによる攻撃等が生じた場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、デバイス事業、ソリューション事業それぞれにおいて、海外事業に関する専門部署を設置し、海外事業会社と連携をとり適切な対応を行うよう努めております。

 

⑤自然災害等によるリスク

 当社グループが事業展開する国・地域において、自然災害や火災、気候変動に起因する異常気象(集中豪雨、洪水、水不足等)、致死率の高い強毒性の感染症の世界的な蔓延(パンデミック)、戦争、テロリストによる攻撃等が発生した場合、通信・交通網の遮断等が長期間にわたった場合、サプライチェーンの断絶が長期間に及んだ場合、システムトラブルが発生し復旧に時間を要する場合には当社グループの営業業務や物流業務に支障をきたし、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 また、当社グループでは事前の減災対策を行うとともに緊急時の復旧手順や行動要領等をまとめた事業継続計画(BCP)の策定、BCP在庫の確保、総合災害対策本部(旧BCM委員会)の設置と定期開催、社員安否確認システムの整備等を通じた対策や訓練・教育を実施しておりますが、大規模な災害の発生により、追加の対策コストが必要となった場合、当社グループの事業活動や財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、気候変動に関する主要なリスクについては、TCFDのフレームワークに基づいてまとめており、「第2

 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動に対する取組(TCFD提言に基づく気候変動関連の情報開示)」に記載しております。

 

⑥コンプライアンスに関するリスク

 当社グループにおきましては、コンプライアンス遵守を最優先事項として徹底するとともに、ガバナンス経営を強化し、内部統制・情報セキュリティ確保の徹底に取り組んでおります。しかしながら、国内外事業に関連した各種法規制の違反や、役員・従業員の不正行為等が発生した場合、社会的信用が低下・棄損し、当社グループの事業活動や財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、サステナビリティ委員会の統治・管理のもと、内部統制委員会を設置し、コンプライアンスや内部管理体制の適切性・有効性を定期的に検証し、問題点の改善・是正を行うとともに、内部統制及びコンプライアンスに関わるリスク管理等の充実に取り組んでおります。また、グループ全社員に対しコンプライアンス教育を実施し、法令遵守の徹底に努めております。

 

⑦情報セキュリティに関するリスク

 当社グループでは、事業活動を行うにあたり顧客や取引先に関する機密情報及び個人情報を有しており、サイバー攻撃による不正アクセスやコンピューターウイルス、人為的過失等により、当該情報の漏洩や改ざん・紛失、サービス停止等が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等が発生する可能性がある等、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループでは、アンチウイルス等のシステム的な対策とともに、情報セキュリティ委員会の設置、グループ全社員を対象とする情報セキュリティ教育の実施と情報セキュリティ対策に取り組んでおります。

 

⑧人材確保に関するリスク

 当社グループでは、競争の激しい環境において、ますます高度化・複雑化する事業活動を的確に継続するとともに、また、当社グループの持続的成長に向けた既存事業の深化と新たなビジネスモデルの創出を行っていく優秀な人材の採用及び育成が重要であると認識しております。必要な人材を採用又は育成できなかった場合や、想定を超えて人材が流出した場合は、事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 なお、当社グループでは、事業戦略に必要な人材を明確にし、採用活動や選考手法の多様化を進めております。従業員の自律的なキャリア形成を支援し、従業員一人ひとりが適性や能力に応じたパフォーマンスを発揮でき、当社グループの人材の底上げを図るべく人事制度や教育制度の充実に尽力し続けるとともに、様々な考えを持った多様な人材が集まり、働きやすい労働環境、魅力ある組織風土づくりを目指した取組を進めております。企業価値向上にとって重要性が高まる人的資本への対応の強化に取り組み、優秀な人材の確保に努めてまいります。人的資本経営の考え方や取組については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本・多様性に関する取組」に記載しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中における将来に関する事項は、別段の記載のない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当社グループは、経営ビジョンに「先進エレクトロニクスで人と社会とテクノロジーをつなぐエンジニアリングソリューションパートナー」を掲げ、2025年3月期から2027年3月期の3か年を対象とする中期経営計画「Make New Value 2026」を推進しております。

中期経営計画の下、得意領域であるモビリティやものづくり領域に加え、ロジスティクス・ロボティクス等の隣接業界や、デジタル活用によるエネルギーやスマートシティ等のメガトレンド領域における課題に対し、社内外でのビジネスイノベーション活動を通じて最適なソリューションを創造・提供し、持続可能な社会への貢献と企業価値向上を目指しております。

当連結会計年度における当社グループを取り巻く環境は、主要ユーザーである自動車関連企業において完成車の生産調整や、中国市況の停滞等に伴う産業機器関連企業の在庫調整の動きがみられたほか、急激な為替変動等、不透明な状況が続きました。

このような環境下において、当社グループは、中期経営計画に基づく構造変革と事業基盤の確立に向けて、半導

体・電子部品及び受託ビジネスの顧客拡大による事業機会発掘の取組や、新規事業の確立及び強化を目的とした

M&Aの実行、また人的投資及びシステム投資等の成長投資を活発化させました。

この結果、当連結会計年度の売上高は2,587億42百万円(前期比14.9%増)、営業利益は71億12百万円(前期比7.8%減)、経常利益は62億10百万円(前期比14.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は36億99百万円(前期比16.3%減)となりました。

セグメントの業績は、次のとおりです。

 

(デバイス事業)

デバイス事業では、電子制御が進む自動車向けシステムLSI等の半導体や電子部品の販売及び技術支援、組込システムのPoC(概念実証)開発支援や組込ソフトウエアを中心とした受託開発事業を行っております。

当連結会計年度におきましては、車両生産調整の影響を受け半導体や電子部品の需要が伸び悩んだものの、新たな商流の獲得や円安による増収効果等により、デバイス事業の売上高は2,263億19百万円(前期比15.4%増)となりました。一方で、前期に発生したスポット利益の反動減や、人的投資等の成長投資や商流移管に伴う移管補償金の増加等により、営業利益は56億88百万円(前期比0.3%増)と前期並みとなりました。

 

(ソリューション事業)

ソリューション事業では、業務コンサルティングやIoTソリューション提供及びITプラットフォーム構築提

案、IT機器や計測機器及び組込機器の販売に加え、FAシステムや特殊計測システムの設計・製造・販売及び産業用コンピュータの開発・製造・販売を行っております。

当連結会計年度におきましては、産業機器関連企業を主要顧客に持つ組込ソリューション領域において顧客の在庫調整の動きに影響を受けつつも、製造設備増強等の需要を取り込んだFAエンジニアリング領域の売上増加が牽引し、ソリューション事業の売上高は324億23百万円(前期比11.7%増)となりました。一方で、新しい領域の製造ライン構築で一時的なコスト増となる案件の受注があったことや、人的投資や自社製品の次世代機開発の成長投資等により、営業利益は14億23百万円(前期比30.2%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ9億88百万円減少し135億34百万円となりました。

a.営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が59億22百万円と前年同期と比べ13億12百万円(△18.1%)の減益となったことや仕入債務の減少により、支出が66億83百万円(前年同期は51億34百万円の収入)となりました。

 

b.投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは、BELLADATI PTE.LTD.を連結子会社化したことによる連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が29億47百万円あったため、36億85百万円と前年同期と比べ支出が30億5百万円(△442.2%)の増加となりました。

 

c.財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増加額が38億1百万円(前年同期は12億5百万円の純減少額)、長期借入による収入が112億円と前年同期と比べ85億50百万円(322.6%)の増加となったことにより、収入が90億14百万円(前年同期は11億85百万円の支出)となりました。

 

③生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

デバイス事業

2,952

+5.3

ソリューション事業

9,114

+1.7

12,066

+2.6

(注)金額は、販売価格によっております。

 

b.商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前期比(%)

棚卸資産残高

(百万円)

前期比(%)

デバイス事業

215,781

+16.6

46,341

+18.5

ソリューション事業

24,033

+12.9

4,810

-13.5

239,814

+16.3

51,151

+14.5

(注)金額は、仕入価格によっております。

 

c.受注実績

当連結会計年度において受注残高が著しく減少しております。

これは主に、デバイス事業において、前連結会計年度は新たな商流の獲得に伴う一時的な受注残高の増加があったことによるものであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

デバイス事業

212,867

+4.4

15,950

-45.8

ソリューション事業

33,019

+10.0

11,168

+5.6

245,886

+5.1

27,118

-32.2

 

 

d.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

デバイス事業

226,319

+15.4

ソリューション事業

32,423

+11.7

258,742

+14.9

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

株式会社デンソー

107,802

47.9

110,186

42.6

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ335億92百万円増加し2,587億42百万円となり、過去最高となりました。

主要顧客である自動車関連企業において完成車の生産調整や中国市場の停滞に伴う産業機器関連企業の在庫調整といった逆風がありつつも、当社グループは成長市場に向けた技術力を活かした提案活動を継続してまいりました。加えて、半導体・電子部品及び受託ビジネスにおける顧客基盤の拡大の取組の中で新たな商流を獲得したことや、自動車関連顧客の堅調な生産活動および設備投資需要に支えられたことが、売上高の大幅な増加に寄与いたしました。

 

(デバイス事業)

デバイス事業におきましては、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ301億92百万円増加し、2,263億19百万円となりました。

当連結会計年度において、当社グループの主要顧客である自動車関連企業では一時的な生産調整の局面がありましたが、新たな商流の獲得や円安による増収効果、並びに採用品の新規立ち上げや車種展開による増加もあり、売上高は大きく増加いたしました。

今後も、顧客及び仕入先との緊密な情報共有を通じてサプライチェーンの安定維持に努めるとともに、半導体・電子部品の供給体制強化及び受託ビジネスの拡大を図ってまいります。さらに、車載・電装領域における知見を活かした高品質な技術サポートを通じて、顧客課題に寄り添ったサービス提案及び提供領域の拡大を推進し、持続的な事業成長を目指してまいります。

 

(ソリューション事業)

ソリューション事業におきましては、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ33億99百万円増加し、324億23百万円となりました。

当連結会計年度において、中国市況停滞の影響による産業機器市場の受注調整により、組込領域の売上は伸び悩みましたが、自動車の電動化を背景とした設備投資需要や、製造現場の自動化・効率化を目的としたIT投資需要を的確に捉えたことにより、FA領域およびIT領域の売上が堅調に推移いたしました。

引き続き、データ収集・価値化を軸としたデータプラットフォーム事業を第4の柱として育成し、IT、組込、FAの強みを融合させた新たなビジネスモデルの確立を目指します。これにより、新市場の開拓および高付加価値事業の拡大を推進し、さらなる成長を図ってまいります。

 

b.売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益

当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べ322億28百万円増加し2,373億75百万円となりました。これは、デバイス事業及びソリューション事業において売上高の増加に伴い売上原価が増加したことによるものです。

また、当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ19億62百万円増加し142億55百万円となりました。

業容拡大による人員体制の強化により人件費が増加したほか、IT・DXの推進に関連するシステム費用の増加など、成長に向けた戦略的な支出を積極的に実施いたしました。

この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ5億99百万円減少し71億12百万円となりました。

 

c.営業外収益、営業外費用、経常利益

営業外収益は、受取補償金が41百万円増加したこと等により、前連結会計年度に比べ1億8百万円増加し1億98百万円となりました。

営業外費用は、前連結会計年度において機動的かつ安定的な資金調達枠確保のための支払手数料を計上したことや、当連結会計年度において為替の変動が当社グループの外貨建て取引に対し不利な状況であったため為替差損が5億69百万円増加したこと等により、前連結会計年度に比べ5億21百万円増加し11億円となりました。

この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ10億11百万円減少し62億10百万円となりました。

 

d.特別利益

特別利益は、当連結会計年度において固定資産売却益が1億25百万円発生したものの、前連結会計年度において輸送事故による補償金の受取が1億64百万円発生したこと等により、前連結会計年度に比べ21百万円減少し1億49百万円となりました。

 

e.特別損失

特別損失は、投資有価証券評価損を計上したこと等により、前連結会計年度に比べ2億79百万円増加し4億36百万円となりました。

 

f.親会社株主に帰属する当期純利益

税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ13億12百万円減少し59億22百万円となりました。

税効果会計適用後の法人税等負担額は、主に課税所得の減少の影響によって前連結会計年度に比べ5億98百万円減少し21億68百万円となりました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ7億21百万円減少し36億99百万円となりました。

 

②財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.資産

資産合計は、前連結会計年度末に比べて104億55百万円増加し1,301億61百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べて67億51百万円増加し1,183億23百万円となりました。これは主に、売上

債権回転率の改善への取り組み等を行ったことにより売上債権(受取手形、売掛金、契約資産及び電子記録債権)が11億37百万円減少した一方で、自動車関連企業の需要拡大等により商品及び製品が69億15百万円増加したこと等によるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて37億3百万円増加し118億37百万円となりました。これは主に、のれんが25億78百万円発生したこと等によるものであります。

 

b.負債

負債合計は、前連結会計年度末に比べて78億38百万円増加し771億83百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べて26億84百万円増加し477億95百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金が45億79百万円、電子記録債務が11億83百万円減少した一方で短期借入金が38億1百万円、その他のうち返金負債が24億63百万円、1年内返済予定の長期借入金21億50百万円が増加したこと等によるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて51億53百万円増加し293億87百万円となりました。これは主に、長期借入金が50億73百万円増加したこと等によるものであります。

 

c.純資産

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて26億17百万円増加し529億78百万円となりました。

この結果、自己資本比率は39.0%(前連結会計年度末は40.3%)となりました。

 

③資本の財源及び資金の流動性

a.当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析

当連結会計年度のキャッシュ・フロー状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.財務政策

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。投資活動に関する資金需要としては、業容拡大に伴う事業所設備や社内システム等の設備投資等であります。

必要な資金については、内部資金のほか、調達コストと財務体質とのバランスを勘案しながら、借入金、売掛債権の流動化による調達に加え、資本増強等を組み合わせて調達しております。

また、不測の事態に備え、機動的かつ安定的な資金調達枠の確保のため、取引金融機関とコミットメントライン契約を締結しております。

株主還元につきましては、財務の健全性等を総合的に勘案しながら、業績に裏付けられた成果の配分を基本方針として実施しており、連結配当性向30%~40%を目途としております。

 

④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成状況

 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標である中期経営計画の目標値の達成状況は以下のとおりであります。

 

2024年3月期

(実績)

2025年3月期

(実績)

2026年3月期

(予想)

2027年3月期

(目標値)

売上高

2,251億円

2,587億円

2,700億円

3,000億円

営業利益

77億円

   71億円

75億円

  110億円

ROE

9.9%

  7.5%

-

 11.0%以上

配当性向

40.3%

49.8%

46.1%

30%~40%

 2025年3月期から2027年3月期までの3か年を対象とする中期経営計画「Make New Value 2026」を策定しております。本計画における重要な経営指標として、2027年3月期において、売上高3,000億円、営業利益110億円、 ROE11.0%以上の達成を目標として掲げております。

また、2025年3月期~2027年3月期の配当政策につきましては、連結配当性向30%~40%を目途とし、連結純資産配当率も勘案したうえで、安定配当をベースに業績に応じた利益配当を行うこととしております。

 

⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」にて記載しておりますが、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

a.収益の認識基準

 当社グループの売上高は、履行義務を充足した時点で収益を認識しております。また、保守等のサービス業務のうち履行義務が一定期間にわたり充足されるものについては、サービス提供期間にわたり定額でまたは進捗度に応じて収益を認識しております。

 

b.棚卸資産の評価基準

 当社グループは、将来における需要や市場状況等に基づき、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合には収益性の低下があるものとし売価評価減を、棚卸資産の保有日数に応じて一定金額まで帳簿価額を切り下げる滞留評価減や将来の販売可能性の見積りに基づく個別評価減を計上しております。

 

c.繰延税金資産の回収可能性の評価

 当社グループは、繰延税金資産について、将来の回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しておりますが、繰延税金資産は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積り額が減少した場合には繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

d.固定資産の減損処理

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候が見られる資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上します。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

e.貸倒引当金の計上基準

 当社グループは、債権の貸倒による損失に備えるため、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。将来、顧客の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

5【重要な契約等】

(1)仕入の提携

契約会社名

提携先

取扱商品

契約の種類

萩原エレクトロニクス株式会社

(連結子会社)

日本航空電子工業株式会社

コネクタ、入力デバイス、

インターフェース機器等

販売特約店契約

株式会社トーキン

キャパシタ、EMC部品、

圧電デバイス、電子材料等

販売特約店契約

ルネサスエレクトロニクス

株式会社

マイコン、システムLSI、

アナログ&パワーデバイス等

Distribution Agreement

萩原テクノソリューションズ

株式会社

(連結子会社)

日本電気株式会社

ビジネスPC、サーバ、

周辺機器、ネットワーク製品等

販売特約店契約

 

(2)株式譲渡契約

当社は、2024年6月26日開催の取締役会において、当社の連結子会社である萩原テクノソリューションズ株式会社がBELLADATI PTE. LTD.の全株式を取得して子会社化することについて決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動領域は、車と繋がる世界を意識した自動車関連ビジネスであり、成長分野として、 ADAS・自動運転に関わるデバイスからモジュール、サブシステム、クラウド、IoTを対象と考えています。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は217百万円であります。

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1) デバイス事業

デバイス事業では、特殊車両向けに人や物体の検知を可能にするECU-PF開発、大学と連携した画像AIアルゴリズムの研究、データサイエンティストの育成、パワーデバイス需要の急増に備えるためのパワーエレクトロニクスの技術獲得等を継続して行っております。

また、モビリティ向けのアプリケーション開発を容易にする環境構築や、コネクテッド・カーにとって重要となるセキュリティ技術のソリューション構築に向けて、自社製品をPFとした技術獲得を行っております。

デバイス事業に係る研究開発費は、94百万円であります。

 

(2) ソリューション事業

ソリューション事業では、産業用装置や社会インフラ市場で培った組込コンピュータ技術に基づき、従来どおり組込用CPUボード、パネルコンピュータ等の技術に関する研究開発活動を行っております。

産業用オートメーションやスマートファクトリーの実現に不可欠なモーション制御のリアルタイム性能向上に関する調査・研究を行っております。

ソリューション事業に係る研究開発費は、122百万円であります。