第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、『食を通じて地域の皆様の健康で豊かな生活に貢献します』を企業理念に掲げ、「食」の楽しみや喜びを通じて、健康で豊かな地域社会の実現に貢献してまいります。また、『より新鮮でより美味しく安全な商品をお値打ち価格でお届けします』を経営理念とし、新鮮で美味しく、安全・安心な食材の提供が必要であるという信念に基づき、お客さまの期待を裏切ることのない品質と価格を追求してまいります。

 

(2) 経営環境及び経営戦略等

今後のわが国経済は、インバウンド需要の回復や賃金上昇による個人消費の持ち直し等により、景気は回復していくことが期待されるものの、原材料価格・電気料等の高留まり、世界的な金利上昇や為替相場変動の影響など、先行き不透明な状況が続くものと思われます。

食品小売業界におきましても、消費者の節約志向はさらに強まっていくことが想定される中、業種業態を超えた競争の激化や人件費の上昇、電気料・物流費等の高留まりなど、依然として厳しい経営環境が続くものと思われます。

このような状況の中、当社グループは、2024年度(第58期)をスタートとする「第四次中期経営計画」において、中期経営方針として「私のお店と言ってもらえるアルビスファンを増やす」を掲げ、「お客さまを笑顔にする商品の提供」「お客さまが楽しく快適に買い物できる店づくり」「働きがい、やりがいを感じられる職場環境の実現」「持続的な成長に向けた業務基盤の強化」「事業を通じた地域社会の課題解決」という5つの取り組みを重点施策として進めてまいります。

「お客さまを笑顔にする商品の提供」については、お客さまの来店目的となるような商品の開発に取り組むほか、デジタル活用の展開等により顧客接点を拡大してまいります。「お客さまが楽しく快適に買い物できる店づくり」については、お客さまに対するサービスレベルの向上を目指してまいります。「働きがい、やりがいを感じられる職場環境の実現」については、従業員が働きやすく、より成長できる環境を実現させ、従業員エンゲージメントを高めてまいります。「持続的な成長に向けた業務基盤の強化」については、これまでのバックシステムを最大限活用し、さらなる生産性の向上を実現するとともに、デジタルを活用して全社での業務効率化を推進してまいります。また、物流センターの再構築についても進めてまいります。「事業を通じた地域社会の課題解決」については、地域社会との関係性づくりを通じて、アルビスのブランド価値向上とアルビスファンの拡大を図ってまいります。

2024年度(第58期)の新店につきましては、2025年3月に岐阜県本巣郡に中京エリア4店舗目となる「北方町店(仮称)」を予定しております。また、2024年10月に「婦中速星店(富山県富山市)」の建て替えオープンを予定しております。

当社グループは、今後もお客様との信頼を大切にして誠実な企業を目指すとともに、これらの課題に取り組み、企業価値を向上させてまいります。

 

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 事業上の課題

当社グループは、第四次中期経営計画の策定において、今後の成長戦略を検討するにあたり、10年後のありたい姿として「笑顔あふれる幸せな食卓と健康をサポートし、地域と共に成長する価値創造企業」を設定いたしました。このありたい姿を実現するために、当社グループ従業員の成長を基盤とし、事業を通じて社会価値を向上させることが、経済価値を生み出すことに繋がり、これにより当社の企業価値を高めてまいります。

10年後のありたい姿を実現するため、当社は第四次中期経営計画の経営方針として「私のお店と言ってもらえるアルビスファンを増やす」を掲げ、対処すべき事業上の課題を以下の第四次中期経営計画の重点施策にまとめております。

 

a.中期経営計画

(a)商品:お客さまを笑顔にする商品の提供

 当社グループは、食のライフラインを守るため、安全・安心な商品の提供を通じ、お客さまに満足していただける店づくりを課題としております。お客さまの来店目的になる商品開発を継続的に実施し、多様化するお客さまのニーズに対応するとともに、デジタル活用の展開など、顧客接点を拡大してまいります。

  商品に関する重点施策の主な取り組みは以下のとおりです。

ⓐ 商品戦略

・商品開発の強化(同質化競争からの脱却)

・購買頻度の高い商品への価格対応

・あるべき品揃えの実現

ⓑ デジタルマーケティングの推進

・One to One マーケティングの実施

・アルビス公式アプリ、LINEミニアプリの活用

 

(b)店舗:お客さまが楽しく快適に買い物できる店づくり

 お客さまに支持される地域一番の店舗の実現を基本としながら、お客さまに対するサービスレベルを向上させ、より快適にお買い物できる店づくりを目指してまいります。

店舗に関する重点施策の主な取り組みは以下のとおりです。

ⓐ サービスレベルの向上

・顧客満足度(CS)の向上

・利便性の向上

・品質レベルの向上

ⓑ 新規事業の検討

・新規事業

・店舗開発

 

(c)人的資本:働きがい、やりがいを感じられる職場環境の実現

 従業員の働きやすい環境の実現を推進し、従業員エンゲージメントを高め、アルビスのブランド価値向上とアルビスファンの拡大を図ってまいります。

  詳細につきましては、2.サステナビリティに関する考え方及び取組 に記載しております。

  人的資本に関する重点施策の主な取り組みは以下のとおりです。

ⓐ 人材育成

・高度人材の育成

・若手社員の教育、育成

・成長・挑戦できる環境整備

ⓑ 働きやすい環境の整備

・労働時間の適正化

・心理的な安全性の高い組織づくり

 

ⓒ 人材採用

・中途採用の強化

・採用の多様化

 

(d)システム:持続的な成長に向けた業務基盤の強化

 これまでのバックアップシステムを最大限活用し、さらなる生産性の向上を実現するとともに、デジタルを活用して全社での業務効率化を推進してまいります。

システムに関する重点施策の主な取り組みは以下のとおりです。

ⓐ 店舗オペレーション標準化による生産性の向上

・作業の標準化・効率化(カイゼン)

・デジタルを活用した店舗オペレーションの見直し

ⓑ システム投資

・次世代システムの検討

ⓒ サプライチェーン全体の最適化

・物流の効率化と納品品質の向上

・プロセスセンターの再構築

・商品調達網の整備

 

(e)社会・地域:事業を通じた地域の課題解決

社会環境の変化に伴い、ライフラインとしての食品スーパーマーケットの重要性が高まっております。当社グループでは、事業を通じた地域社会の課題解決をさらに推進し、地域社会との関係づくりを通じて、アルビスのブランド価値向上とアルビスファンの拡大を図ってまいります。

詳細につきましては、2.サステナビリティに関する考え方及び取組 に記載しております。

 社会・地域に関する重点施策の主な取り組みは以下のとおりです。

  ⓐ 社会・地域への取り組み

・地域活性化の取り組み

・買い物機会の提供

  ⓑ 環境への取り組み

・3R+Renewable 活動への取り組み

・GHG排出量削減への取り組み

 

b.新型コロナウイルス感染症への対応

2023年5月に新型コロナウイルス感染症が第5類へ移行後、人の移動が大きく緩和され、社会経済活動は回復への動きが見られましたが、当社グループは、食のライフラインを守るために店舗の営業継続を最優先として捉えております。当社グループで多数の感染者が特定の店舗や部門で発生した場合、店舗休業やプロセスセンター生産停止等により商品が提供できず、ライフラインとしての機能を果たせなくなるため、引き続き感染症対策を継続しております。

 

② 財務上の課題

当社グループでは、事業の成長に必要な資金を安定的に確保するとともに、財務健全性を維持することを財務上の課題としております。店舗の出店及び改装に必要な設備投資は、営業キャッシュ・フローの範囲内に抑えることを基本的な考え方としており、過度に投資を行い有利子負債が増加しないよう配慮しております。

また、事業継続に必要な資金を確保するため、手元資金を厚くするとともに金融機関からの融資枠を確保しております。

 

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、営業収益、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益であります。

第四次中期経営計画において、最終年度となる2027年3月期には、店舗数77店舗、営業収益1,203億円、営業利益35億円、経常利益41億円を計画しております。

また、財務指標としてROE等を意識しております。当社グループにおいては、2027年3月期に連結売上高営業利益率3.0%、連結売上高経常利益率3.5%、ROE8.2%を目標としております。

 

 

(5) 企業価値向上に向けた取り組み

  東京証券取引所からの「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を受け、株価純資産倍率(PBR)改善に向けた取り組みを進めてまいります。

2024年3月期時点での当社のPBRは、0.75倍と1倍を下回っております。また、ROEも5.0%と低い水準になっております。

第四次中期経営計画において、下記の具体的な取り組みを推進していくことで、PBR1倍以上の実現を目指し、2027年3月期におけるROE8.2%を目標としております。

 


 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ基本方針

当社グループは、「食を通じて地域の皆様の健康で豊かな生活に貢献します」という企業理念のもと、現在、そして未来の人々に健康で豊かな生活を送っていただくため、サステナブルな社会(持続可能な社会)の実現を目指しております。「社会貢献」と「環境保全」を重点分野に掲げ、社員一人ひとりが日々の事業活動の中で取り組んでおります。

当社グループの事業目的は、鮮度・品質・美味しさで、暮らしをより豊かにする食品の提供と食卓への提案です。お客さまの信頼を事業活動の原点におき、時代や地域のニーズを把握し、それに応える商品やサービスを提供することが、社会のサステナビリティへの貢献につながると考え活動を推進しております。

 

(2) 具体的な取り組み

世界的に環境負荷軽減に対する意識が高まる中、人と社会、地球環境、地域にやさしい活動を行う「SDGs プロジェクト~つなぐアルビス~」をコミュニケーションメッセージに掲げ、お客様、行政、生産者、従業員等との連携を図り、地域社会の課題解決を進めるとともに、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努めております。

 


 

特に、食品スーパーマーケットの事業特性から、食品廃棄物の削減に継続して取り組んでいるほか、2022年12月には、新たにSDGs目標達成や2050年の脱炭素社会実現などの環境保全への貢献を目指す一環として、「albis Green Action」プロジェクトを発足いたしました。本活動は、環境負荷軽減に向けた意識を共有し、地域の皆さまと当社グループとの協働によって、地球環境を維持し、限りある資源を未来へつなぐ施策を実施するものです。サステナブルな生活提案や環境に配慮して作られた商品を通じて環境負荷軽減に寄与してまいります。具体的には、従来からのトレー・ペットボトル回収などのリサイクル活動に加え、プラスチック使用量削減、GHG(温室効果ガス)排出量削減に向けた取り組みを推進しております。

 

 

「albis Green Action」プロジェクトにより、取り組んでいる主な施策は以下のとおりです。

① 太陽光発電パネル設置の推進

当連結会計年度において、再生可能エネルギーの導入を推進するため、新たにプロセスセンターと6店舗に太陽光パネルを設置いたしました。

② レジ袋のバイオマス配合率を50%に引き上げ

レジ袋を環境にやさしい素材であるバイオマス50%使用のものへ変更することにより、プラスチック使用量の削減に取り組んでおります。

③ ペットボトルキャップの回収

全店舗で回収しており、回収したペットボトルキャップは「パレット(荷役台)」等に再利用しております。

④ 消滅型の生ごみ処理機の導入・設置

当連結会計年度において、微生物によって生ごみを分解・微細化し、水として排出できる消滅型の生ごみ処理機を10店舗に導入いたしました。これにより、食品廃棄物の発生を抑制するとともに、生ごみ処理にかかるCO2排出量も削減することが可能となります。

 


 

 

(3) TCFD提言に沿った情報開示

当社は、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」に基づき、気候変動が当社事業に与える潜在的な影響の評価について開示いたします。当社は、今後もTCFD提言に沿った情報開示を進めてまいります。

 

① ガバナンス

当社は、気候変動の重要性を認識しております。TCFD提言に沿ったガバナンス体制の早期確立に向けて検討・構築中ですが、現状、気候変動の課題は経営戦略推進部が経営会議を通じて経営陣に報告を行っており、その中でも重要な方針や事項については、取締役会への報告・審議を実施し、監督を受けております。

 

② 戦略

TCFD提言に沿って当社事業とバリューチェーン全体にわたる潜在的な気候変動のリスク・機会を評価しております。

 

・気候変動リスクと機会の特定:

当社のバリューチェーンに及ぼす影響について定性的なシナリオ分析を実施いたしました。評価対象のリスク・機会の抽出方法については、「リスク管理」の項目をご参照下さい。

 

・定性的シナリオ分析:

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)等の国際機関が設定した温暖化のシナリオに基づき、抽出された合計16の物理的リスク(5つの大項目)及び移行リスク・機会(5つの大項目)を対象に、2030年及び2050年での当社事業への影響を定性的に評価いたしました。

 

 

a.シナリオ分析の結果

(a)物理的リスク

当社の事業が日本国内に集中していることから、当社の物理的リスクの評価は国内のみを対象としております。

IPCCによって提供されているシナリオから「気温が2℃上昇するシナリオ」及び「気温が4℃上昇するシナリオ」の2つを用い、2030年及び2050年時点の影響について評価を行いました。

 

リスク評価

 

非常に高い

 

 

 

 

不確実

 

 

リスク

リスク
区分

気候変動リスク及び
当社事業への潜在的影響

4℃シナリオ

2℃シナリオ

2030

2050

2030

2050

熱波

急性

熱波とそれに伴う冷房/冷却需要の増加により、冷房/冷却コストの増加、停電等により、休業等の発生

非常に
高い

豪雨

急性

豪雨とそれに伴う浸水、土砂崩れの発生により、サプライチェーン/流通経路の分断、休業等の発生

河川

氾濫

急性

河川氾濫により店舗の設備等が損傷し、休業等の発生

台風

急性

強力な台風の発生により、商品の調達に支障や遅延が生じたり、店舗が被害を受ける事で、休業等の発生

不確実

不確実

豪雪

急性

豪雪により、商品の調達に支障や遅延が生じたり、店舗が被害を受ける事で、休業等の発生

 

 

 

(b)移行リスクと機会

移行リスクと機会に関しては、世界の動向と日本固有の動きの両面を考慮し、IEAが提供している「1.5℃シナリオ」及び「各国表明済みの具体的政策を反映し、現行の取り組みから大きな変化がないSTEPS(2.8℃)シナリオ」を用いてそれぞれのシナリオ評価を行いました。

 

リスク評価

機会評価

 

非常に高い

 

非常に高い

 

 

 

 

 

 

 

不確実

 

 

移行リスク

/機会

リスク・機会の

分類

(TCFD区分)

気候変動リスク/機会及び
当社事業への潜在的影響

2.8℃

(STEPS)

1.5℃

2030

2050

2030

2050

包装技術への投資

エネルギー源

環境負荷のより低い包装技術、消費者志向、政策の急速な普及

省エネ技術への投資

エネルギー源

エネルギー効率の高い技術の急速な普及は、エネルギー関連コストとGHG排出量低減の機会を創出

エネルギー
関連法制

政策・法規制

エネルギー関連法制の急速な強化による、省エネ関連の課税とその対応によるコスト増加

不確実

不確実

炭素価格
関連法制

政策・法規制

炭素価格の上昇と対象範囲の拡大によるコスト増加

非常に
高い

非常に
高い

GHG報告
関連法制

政策・法規制

GHG報告関連法制の強化による、対応コスト増加

不確実

不確実

 

 

b.分析の前提条件

TCFD提言に基づき、当社はシナリオ分析に当たって以下の前提条件を用いました。

(a)シナリオ:物理的リスクを評価するためのシナリオと、移行リスク・機会を評価するためのシナリオをそれぞれ2つ設定し、評価しました。

 

物理的リスク

IPCCによって提供されているSSP(共通社会経済経路)及びRCP(代表的濃縮経路)を組み合わせた以下2つのシナリオです。

 

RCP 8.5(4℃シナリオ)

物理的な気候変動の観点から最も「極端な」シナリオであり、気候変動の緩和措置がほとんど取られず、排出量が現在のペースで増加し続け、世界の平均気温が産業革命前と比較して今世紀末までに4℃以上上昇する前提です。

 

RCP 4.5(2℃シナリオ)

強力な気候変動の緩和措置が取られ、世界の平均気温が産業革命前と比較して今世紀末までに約2℃程度上昇する前提です。

移行リスク

IEAによって提供されている以下2つのシナリオです。

 

2050年CO2排出量実質ゼロ(NZE) (1.5℃シナリオ)

世界のエネルギー部門のCO2排出量が2050年までに実質ゼロに達すると同時に、エネルギーへの普遍的なアクセスや大気汚染の改善など、他の持続可能な開発目標も考慮されています。このシナリオでは、2100年までに地球の気温は産業革命前と比較して1.5℃しか上昇しない前提です。

 

STEPS(現行の温暖化対策に大きな変化が起きないと想定した2.8℃シナリオ)

BAUシナリオでは、現況の対策から大きな変化がない前提のシナリオで、日本政府が表明している政策からの強化や弱体化は無い前提で評価しております。

 

 

(b)評価の時間軸:2030年(中期)及び2050年(長期)を用いております。

物理的リスクの影響は、中期よりも長期でより顕著となることが予想されます。一方で、移行リスク・機会は中期よりも長期の見通しの不確実性が高くなります。

 

③ リスク管理

当社は、当社事業に影響を与える可能性のある物理的及び移行リスク・機会を網羅的に洗い出し、社内関係者の知見に基づき、過去に実際に事業に影響を与えたもの、及び今後影響を与える可能性が高いと思われるリスク・機会を抽出しました。

抽出された各リスク・機会を、2030年と2050年の時間軸に基づき、「戦略」セクションで記載の前提条件を参照して、各リスク・機会の潜在的変化の程度を定性的に評価しました。評価結果は、気候変動が当社事業に及ぼす潜在的な影響を洗い出し、リスク低減・機会活用の方法を検討するための基礎情報として今後活用します。

 

④ 指標と目標

TCFD提言に従い、下記のとおり当社グループのGHG排出量に関する指標と目標を設定しております。

 

a.スコープ1と2 GHG排出量

2021年度の当社グループのGHG排出量については、国際的に認められた企業の排出量算定基準であるGHGプロトコルに沿ってスコープ1と2 GHG排出量を算出いたしました。GHGプロトコルでは、排出量を「直接」排出と「間接」排出に分けており、前者は事業者が所有または管理する排出源から、後者は事業活動の結果として他の事業者から排出されたものを適用しております。各スコープの排出量は、使用されたエネルギー量にGHGプロトコルで規定された排出係数を乗じて算定しております。

 

 

2021年度GHG排出量

tCO2e(注1)

2022年度GHG排出量

tCO2e(注1)

増減率

固定燃料(ボイラー)

1,769

2,797

58.1%

冷媒の漏えい

8,317

9,309

11.9%

輸送用燃料、他

(施肥、農場)

318

490

54.1%

スコープ1合計

10,405

12,596

21.1%

スコープ2(マーケットベース)(注2)

45,129

47,907

6.2%

スコープ2(ロケーションベース)(注3)

39,477

37,834

△4.2%

合計(スコープ1+2(マーケットベース))(注4)

55,534

60,503

8.9%

 

 

スコープ1+2(マーケットベース)

55,534

60,503

8.9%

スコープ1+2(ロケーションベース)

49,882

50,430

1.1%

 

 

電力消費量(MWH)

91,169

87,176

△4.4%

 

 

 

(注) 1.四捨五入の関係上、記載されている数値の合計と一致しない場合があります。

2.マーケットベースは、企業が電力事業者より購入している契約内容を反映して算定しております。

3.ロケーションベースは、平均的な発電排出係数(グリッド平均排出係数)に基づいて算定しております。

4.合計は、スコープ1と2(マーケットベース)GHG排出量を合算して算定しております。

 

b.気候関連の目標

当社は、パリ協定が目指す1.5℃目標に合わせ、スコープ1と2 GHG排出量の短期排出削減目標を設定いたしました。最新の気候科学に基づき、2021年度を基準に、2030年度までにスコープ1と2 GHG排出量を46.2%削減することを目標としております。

 

 

c.気候関連の指標

当社では、GHG排出量削減を進めるにあたって、その進捗管理のための気候関連の指標を検討しています。今まで当社が取り組んできた環境・サステナビリティ関連の活動は、ペットボトル、缶、食品トレー、牛乳パックなどのリサイクルです。リサイクルは、持続可能な社会に向けて当社のお客様との関係を維持する為に重要な取組領域であり、以下のグラフに示すように回収率は年々向上しております。また、レジ袋削減のためマイバックやマイバスケットの持参を推奨しています。2009年より使い捨てレジ袋の無料配布を廃止し、50%植物由来のバイオマスポリエチレン袋(1袋6円で販売)に切り替えております。これらの活動により、2023年度のマイバック持参率は97.8%(前年度比11%増)と極めて高い状況となっております。

加えて、商品運搬時に流通容器として使用されている発泡スチロール箱を当社内で再資源化加工処理をしており、断熱材として再利用されています。他にも、当社内で発生する廃油、肉脂、魚の残渣(骨等)、段ボールを回収しており、廃油や肉脂は、主に石鹸等の油脂製品として、魚の残渣は肥料飼料として、それぞれ再利用されています。

 

 


 

県別マイバッグ・マイバスケット持参率(2023年度)

 


 

(4) 人的資本、多様性に関する取り組み

当社グループは、2024年4月30日に公表した第四次中期経営計画において、今後の成長戦略を検討するにあたり、10年後の「ありたい姿」を「笑顔あふれる幸せな食卓と健康をサポートし、地域と共に成長する価値創造企業」に設定いたしました。

この「ありたい姿」を実現するための基盤となるのが、当社従業員の成長であると考えております。本中期経営計画では「私のお店と言ってもらえるアルビスファンを増やす」という経営方針のもと、人的資本にかかる重点施策として「働きがい、やりがいを感じられる職場環境の実現」を掲げ、従業員の働きやすい環境の実現を推進し、従業員エンゲージメントを高め、アルビスのブランド価値向上とアルビスファンの拡大を図ることを目指しております。

当社グループにおける多様な人材の確保を含む人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります

 

① 多様な人材の確保に関する取り組み

 当社グループは、女性の活躍推進を含むダイバーシティの推進や中途採用者の積極的な採用等により、多様性のある企業風土の醸成を推進しております。また、採用環境、幹部社員の成長度、重点施策の進捗等を勘案し、必要な人材の確保・育成に優先的に取り組むとともに、様々な経験、知識、能力を有する外部人材を積極的に採用しております。

 

a.女性活躍に向けた取り組み及び管理職への登用

当社では、女性が職業生活で活躍できる環境を整備することを目的として、女性が就業を継続し、能力開発・キャリア形成ができるよう女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しております。

この中で、当社は2024年3月31日までに女性管理職の人数を15名以上にすることを目標としておりましたが、同日時点での女性管理職は13名と目標未達となりました。第四次中期経営計画終了までに女性管理職を25名とすることを新たな目標とし、社員研修の更なる充実を図り人材を育成していくとともに、中途採用等外部人材の登用も推進してまいります。また、管理職としての働き方について見直すなど、女性管理職がより働きやすい環境の整備も推進してまいります。

なお、女性役員については、東京証券取引所の定める目標にあわせ、2025年を目途に1名以上選任するよう努めるとともに(2024年3月31日時点:1名)、2030年までに役員全体(取締役及び監査役)に占める割合を30%以上とすることを目標としております(2024年3月31日時点:12.5%)。

 

b.中途採用の強化及び管理職への登用

当社では、業務遂行に必要な部門・施策に必要な人材を採用しております。また、経験・能力等に応じて採用形態に関わらず管理職への登用を行っているため、目標数値の設定は行っておりません。

 

c.障がい者雇用の推進

当社では、障がい者の方が長期安定的に活躍できる職場づくりに取り組んでおります。2011年には特例子会社「アルビスクリーンサポート(株)」を、2017年には「(株)アルビスファーム信州なかの」を設立し、障がい者雇用を推進しております。

アルビスクリーンサポート(株)では、店頭で回収したペットボトルや空き缶の選別・圧縮や牛乳パック・食品トレーの回収業務を実施しており、(株)アルビスファーム信州なかのでは、就労継続支援A型事業として、障がい者の方が農産物の生産を行っており、就労継続支援事業所として、一般企業への就職に必要なスキルを身につけるための訓練を受けながら就労しております。

 

 

当社の第三次中期経営計画において、2024年3月31日までに障がい者雇用率4.0%を目標としており、同日時点での実績は4.03%となりました。第四次中期経営計画においても、4.0%を維持していくことを目標としてまいります。


 

d.外国人人材の状況

当社では外国人実習生や特定技能外国人の受け入れを行っており、一部店舗やプロセスセンターにおいて、65名が就労(2024年3月31日時点)しております。

 

e.65歳定年制の実施

当社の定年は65歳ですが、その後も本人が希望すれば最大75歳まで勤務することが可能な制度を取り入れております。

健康寿命が長くなる中、当社において十分経験を積まれた従業員が、シニア世代になっても活躍していただけるような取り組みを実施しております。

 

② 人材育成に関する取り組み
a.階層別教育プログラムの実施

当社では、新卒入社時から数年間、技術的なスキルを身につけることに特化した育成プログラムを継続的に実施しております。また、マネジメント層に対しては、問題解決プログラムなど管理職に必要な教育プログラムを実施しているほか、中途採用者に対しても、専門スタッフが技術スキル習得を支援する個別研修を実施しております。

 

b.DX人材育成プログラムの実施

当社の成長には、DXを利用した機械化、省人化の検討が必要であると考えており、DX人材の育成に向けたカリキュラムを導入しております。

 

c.カフェテリア研修制度の導入

当社では、新入社員から経営者まで網羅した各階層別の研修プログラムや、職務や業務、ビジネス共通スキルなど、各分野約150プログラムの中から、社員が自由に受講可能なカフェテリア研修を導入しております。

 

③ 社内環境整備に関する取り組み
a.従業員のライフステージに合わせた働き方の選択制度

当社では、従業員が病気や介護、育児などさまざまな理由により、フルタイムで就労することが難しい状況になった際、自分の状況に応じた働き方を選択できる制度を取り入れております。2023年度は、この制度を43名が利用(うち男性8名 女性35名)しております。

 

b.育児支援制度

当社では、男女問わず育児休業を取得できる制度を取り入れており、従業員教育を通じて男性従業員も積極的に育児休業を取得するよう啓蒙活動に取り組んでおります。これにより、男性従業員の育児休業取得率は55.6%(2023年度実績)となっております。

 

c.ハラスメント窓口の設置

当社では、従業員がハラスメント行為を発見したときやハラスメントを受けたときの報告先として、通常の職制ルートとは異なるルートで報告・相談ができるような窓口を社内外に設置しております。

 

d.身だしなみ基準の見直し

当社では、2024年2月より、価値観が多様化し個人の意思が尊重される世の中の変化に対応し、従業員がより自分らしく働ける環境の実現に向けて、当社で働く従業員の髪型や髪の色などを原則として自由とする身だしなみ基準の見直しを行いました。

 

e.その他の取り組み

当社は、多様な働き方に対応するため、上記育児休暇制度、介護休暇制度に加え、連続6日間休暇制度を定めております。

さらに、従業員満足度の向上を図るため、従業員満足度調査・ストレスチェックを実施しており、そこで得られた結果をもとに人事施策の見直し等へ活かしております。

 

 

④ 指標及び目標

 当社グループでは、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に向け、以下の指標を設定しております。当該指標に関する当連結会計年度実績及び第四次中期経営計画最終年度(2027年3月末)目標は、以下のとおりであります。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

有給休暇取得率

75 

64.6% 

女性管理職数

25 

13名 

従業員満足度調査

75 

64.6% 

男性育児休業取得率

80 

55.6% 

 

 

 

(5) 知的財産への投資

当社は、長年にわたりスーパーマーケット事業を経営する中で培ってきた独自の店舗運営や北陸の食材を強みとしたマーチャンダイジング等のノウハウ、取引先との関係性、地元企業とのオリジナル商品の開発等、多くの無形資産を包含する当社独自の知的財産を有していると考えております。これらの知的財産を定量的な価値として示すことには難しい側面がありますが、今後も当社の有する知的財産を活かして、企業価値の向上に努めてまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の判断に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 店舗運営に関するリスク

① 食品の安全性について

当社グループは、主として食料品を取り扱っており、安全・安心な商品の調達・製造・販売に努めておりますが、食中毒や社会全般の食の安全に対し信頼感を損ねるような問題等が発生した場合、店舗売上高が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、「より新鮮で より美味しく 安全な商品をお値打ち価格でお届けします」という経営理念の下、食品安全方針を定め、商品調達時の品質確認、店舗での衛生管理の徹底、製造子会社におけるISO規格に基づいた食品安全管理体制の運用等、グループ全体で安全・衛生管理レベルの向上に取り組んでおります。万一、食中毒が発生した場合には、お客様の健康を最優先に配慮しつつ保健所と連携し、当該原因調査と再発防止策の策定を速やかに行い、各報告及び従業員への教育を再徹底いたします。

 

② 競争激化について

当社グループは、地域に密着した食品スーパーマーケットを北陸3県、愛知県及び岐阜県に店舗展開しております。その商圏内において、同業他社の食品スーパーマーケットのほか、コンビニエンスストアやドラッグストアなど異業態の参入が相次いでおり、業種・業態を超えた企業間競争が激化した場合、店舗売上高の減少や競争に係るコストが発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、地元の旬の食材を中心に鮮度の高い生鮮食品を強化し、他社よりも高い競争力を保持するほか、お客様ニーズに即した販売促進を実施することにより、業績の維持・向上を図っております。

 

③ 人材育成・確保について

当社グループは、店舗の積極的な出店やM&Aにより事業を成長させる方針であります。店舗の増加に対して人員の確保と人材の育成が不十分な場合、事業成長戦略に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

出店やM&Aにより増加した店舗を早期に安定軌道へ乗せるためには、専門性の高い人材の確保と、経験豊かな店長や部門チーフ等を育成する必要があります。当社グループは、新卒社員の定期採用、一定のキャリアを有する中途社員の採用等により積極的に人材を確保するとともに、知識・経験の異なる等級別に適正な業務配置と教育研修を通じ、人材育成に努めております。

 

④ コンプライアンスについて

当社グループの事業活動は、食品衛生法、食品表示法、独占禁止法、JAS法、労働基準法及び働き方改革関連法等の法令・規制の適用、行政の許認可等を受けております。これらの法令に違反する事由が生じた場合や許認可等が取り消され、またはそれらの更新が認められない場合には、事業活動が制限され、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、コンプライアンスを企業行動指針に定め、定期的に研修を行うことでコンプライアンスの徹底に努めております。また、社内に法務担当部署とコンプライアンス委員会を設置し、随時コンプライアンスの状況を確認するほか、コンプライアンス違反が発生した場合には、速やかにコンプライアンス委員会を開催し、当該調査報告と再発防止策を講ずるとともに、従業員への教育を再徹底いたします。

 

 

⑤ 個人情報の保護について

当社グループは、お客様へのサービス向上を図るために会員カードを発行し、カード会員の個人情報を保有しております。また、贈答品や販売促進、イベント企画において、申し込みの際の個人情報を一定期間保有しております。万一、個人情報の流出が発生した場合、当社グループの信用が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

個人情報の管理につきましては、個人情報保護法に基づき、個人情報に関する規定の整備、個人情報を取り扱う部門の施設環境の確認、従業員への教育等を徹底しております。また、個人情報を保持する機会を減らすために、会員入会時に個人情報を電子化して申込用紙を廃止し、アクセス管理の厳格化等、情報システムのセキュリティ強化を図っております。

 

⑥ 情報システムのトラブルについて

当社グループは、自然災害や事故等により情報システムに被害が生じた場合や、不正アクセス等によりシステム障害が生じた場合、業務遂行に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、自然災害や事故等のリスクへの対応として、バックアップ体制を整備するとともに、重要な情報システムの管理については安全性を確認した上で専門業者に業務委託しております。また、不正アクセス等のリスクへの対応として、日常における運用管理を強化するとともに、適切なセキュリティ対策を実施しております。

 

(2) 出店戦略に関するリスク

① 出店に関する法的規制について

当社グループは、店舗の積極的な出店により事業を成長させる方針であります。当社グループの単独店舗及びショッピングモールの開発・運営に際しては、関連する法律や条例等の規制を受けることとなります。特に、規制対象となる場所・店舗規模の出店においては、各規制対応に一定期間を要するため、出店手続きが遅延した場合、事業成長の進捗に遅れが生じる可能性があります。

当社グループでは、店舗開発体制の強化を行い、立地条件や商圏分析の調査と合わせて法規制の内容を詳細に検討し、計画通りに出店するためのリスク管理と進捗管理を適切に実行しております。

 

② 固定資産の減損について

当社グループでは、店舗の収益性が悪化、保有資産の市場価格が著しく下落したこと等により減損処理が必要となった場合、減損損失の計上により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

店舗の収益性が悪化する要因には、出店計画時の需要予測の誤りや出店後の競争環境の変化等があり、当社グループでは、当該原因把握を早期に行うとともに、改善計画を策定・実行しております。改善計画の策定時において、各施策を講じても改善が見込めないと判断した場合、回収可能見込額まで固定資産の帳簿価額を減損処理しております。

 

③ 敷金及び保証金について

当社グループは、店舗の出店にあたり、敷金及び保証金の差入れを行っております。差入れ先の倒産等により、敷金及び保証金の全部または一部が回収不能となった場合、貸倒損失の計上により、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、敷金及び保証金の残高が大きい差入れ先について、定期的な財政状態の調査や担保等の保全を行うほか、回収不能額を見積もり貸倒引当金の設定を行っております。

 

 

(3) 外的要因に関するリスク

① 原油及び電気料の高騰について

当社グループでは、各店舗及び物流・プロセスセンターにおいて多くの電力を使用しているほか、トレー・フィルム等に石油製品を使用しております。そのため、原油価格の上昇や円安による為替変動により、想定以上の石油製品や電気料金の高騰が見られた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

ロシアによるウクライナ侵攻の長期化等による電気料金の高留まりを受け、当社グループでは、店舗における電力使用量の見える化や設定温度の適正化を進める一方、太陽光発電システムの導入やLED照明の導入等、様々な節電策を一層進めております。

 

② 金利変動による影響について

当社グループは、継続的に店舗の出店等に係る設備投資を行っており、主に金融機関から資金調達を行っております。そのため、資金調達において、景気動向、金融政策、海外情勢等により為替相場や海外金利の影響で、急激に金利が上昇した場合、支払利息が多額に計上され、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、金利変動リスクを回避するために、長期借入金は店舗に係る設備資金のみとし、金利動向を見ながら有利な条件で調達する方針としております。また、設備投資計画において、有利子負債が過度にならないよう配慮し、金利変動リスクが業績に与える影響を低減しております。

 

③ 自然災害による影響について

店舗、本社及びプロセスセンターの各所在地で大規模地震や風水害などの自然災害が発生し、被害を受けた場合、当社グループの事業活動に著しい支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、危機管理マニュアル、防災マニュアル及び事業継続計画を策定し、発生時の経営管理体制、現場でのお客様及び従業員の安全を最優先に確保するための措置、発生後の店舗営業再開に向けたプロセス等を規定しております。また、定期的に避難訓練やモバイルを使用した安否確認訓練を実施するなど、災害時の機能不全リスクを低減する取組みを行っております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の第5類へ移行後、人の移動が大きく緩和され、社会経済活動は回復への動きが見られました。一方、ウクライナ情勢の長期化、世界的な金融引き締め、資源価格・原材料価格の高留まり等、依然として経済の下振れリスクが存在し、先行き不透明な状況が続いております。

食品小売業界におきましては、一部で名目賃金の増加が見られる一方、これを上回る物価上昇が生じており、生活防衛的な節約志向が継続しているほか、業種業態を超えた競争激化や人件費上昇、原材料価格・電気料等の高騰により、厳しい経営環境が続いております。

また、2024年1月1日に発生しました能登半島地震では、当社においても複数の店舗で被害が発生したものの、懸命な復旧作業を行い、多くの店舗では翌日から営業を開始することができました。一方、「ルミネス店(富山県富山市)」においては建物の被害が大きく、閉店し建て替えすることといたしました。

 

このような環境の中、当社グループは、「食を通じて地域の皆様の健康で豊かな生活に貢献します」の企業理念のもと、「第三次中期経営計画(第55期~第57期)」では、「地域一番のお客様満足の実現」を中期経営方針に掲げ、「お客様の多様なニーズへの対応」「従業員が挑戦できる環境の実現」「業務基盤の活用による生産性の向上」「事業を通じた地域社会の課題解決」を重点課題として取り組んでまいりました。

「お客様の多様なニーズへの対応」については、健康志向・時短ニーズに応える商品拡充、節約志向に対応するPB商品の販売強化施策実施のほか、同質化競争からの脱却を図る施策として特徴ある名物商品の開発に取り組み、付加価値の高い商品を拡充することにより、売上総利益率の改善を推進いたしました。また、客数を増やす施策として食卓応援企画を継続して実施しており、ナショナルブランドも含め合計300品目をお値打ち価格で提供しております。加えて、2024年3月には小商圏向け戦略店舗として「albis KULA*SU (アルビスくらす)」を立ち上げ、売り場面積300坪を基準としたローコストオペレーションの実現により、地域のお客様の毎日の便利店となることを目指す新業態の店舗として、2店舗(泉が丘中央店(石川県金沢市)、内灘店(石川県河北郡内灘町))を改装オープンいたしました。

「従業員が挑戦できる環境の実現」への取り組みとして、これまで実施してきた新入社員から経営幹部までの各階層に応じた教育プログラムに加え、DX人材の人材の育成に向けた研修やカフェテリア研修を実施するなど、社員自らがキャリアプランを描ける環境を創出し、次世代の人材発掘に取り組んでおります。また、2024年2月には従業員の身だしなみ基準を見直し、従業員が自分らしく働ける環境づくりにも取り組んでおります。

「業務基盤の活用による生産性の向上」については、一部店舗において試験的に導入したキャッシュレスセルフレジ・電子棚札の効果を検証し、当期中に8店舗に電子棚札を導入いたしました。また、プロセスセンターにおいては、継続的に品質の安定化と製造原価の低減に努めております。物流面では、積載率向上・配送便体制の見直しによるトラックの稼働台数の削減を図っております。また、「2024年問題」への対応としては、持続可能な安定した調達ルートの確保に向け、物流体制の再構築に努めております。

「事業を通じた地域社会の課題解決」については、「つなぐアルビス」をコミュニケーションメッセージに掲げ、地域・行政と連携し、地域社会の課題解決に取り組んでおります。当社では食品ロス削減への活動に注力し、リレーフードドライブ活動を継続して毎月実施しており、店舗常設型の無人フードドライブボックスを10店舗に設置しております。また、お買物支援と地域の見守りに取り組む「移動スーパー」は当期末現在23台で運行しております。

2050年の脱炭素社会実現の一環として、GHG(温室効果ガス)の測定のほか、SDGs目標達成へ向けた環境保全への活動を「albis Green Action」と総称し取り組んでおります。本活動では、従来からのトレー・ペットボトル回収などのリサイクル事業に加え、レジ袋を環境にやさしい素材であるバイオマス50%使用のものへ変更したほか、再生可能エネルギーの導入として太陽光パネルを当期中に新たにプロセスセンターと6店舗に設置するなど、環境負荷低減に取り組んでおります。また、新たに微生物によって生ごみを分解、微細化し、水として排出できる消滅型の生ごみ処理機を10店舗に導入し、食品廃棄物の削減にも取り組んでおり、サステナブルな生活提案と環境負荷軽減に寄与しております。

店舗投資については、新店としては、2023年11月末に愛知県名古屋市において中京エリア3店舗目となる「北区金田店」をオープンいたしました。改装としては、既存店の6店舗に加え、「albis KULA*SU (アルビスくらす)」として2店舗を改装オープンするなど、合計8店舗で実施いたしました。

 

以上の結果、当連結会計年度は、能登半島地震の影響により「ルミネス店」を閉店するなどの影響はあったものの、既存店の売上が堅調に推移したことに加え、前期新店2店舗による売上増及び新店1店舗の売上増、改装8店舗の売上増の効果により、営業収益97,798百万円(前年同期比3.4%増)となりました。利益面では、前期第2四半期から高騰した電気料の影響を受けたものの、売上増による売上総利益額の増加に加え、高利益商品の販売拡大とプロセスセンターの生産性向上により売上総利益率が改善(前年同期比0.4%増)し、営業利益2,142百万円(前年同期比10.5%増)、経常利益2,671百万円(前年同期比8.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益については、積極的な従業員の賃上げを実施したことにより賃上げ促進税制の適用を受け法人税が減額したものの、「婦中速星店(富山県富山市)」の閉店にかかる費用及び能登半島地震により建物に著しい損傷が発生した「ルミネス店」の閉店など災害関連費用を特別損失に計上したことにより、1,545百万円(前年同期比8.2%減)となりました。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ1,640百万円増加し、49,644百万円となりました。

この主な要因は、現金及び預金の減少額457百万円、売掛金の増加額389百万円、リース資産(純額)の増加額245百万円、機械装置及び運搬具(純額)の増加額181百万円等によるものであります。

 

(負債)

当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ763百万円増加し18,197百万円となりました。

この主な要因は、買掛金の増加額336百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少額400百万円、災害損失引当金の増加額167百万円、長期借入金の減少額1,330百万円等によるものであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ876百万円増加し、31,446百万円となりました。

この主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益1,545百万円の増加、配当金の支払いによる608百万円の減少、自己株式の取得による236百万円の減少等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ557百万円減少し、5,587百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は4,473百万円(前連結会計年度は4,029百万円)となりました。

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローの内訳は、税金等調整前当期純利益が2,245百万円、減価償却費2,063百万円、支払債務の増加額885百万円等による資金の増加と、売上債権の増加額389百万円、法人税等の支払額703百万円等による資金の減少であります。

 

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は2,312百万円(前連結会計年度は1,591百万円)となりました。

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローの内訳は、有形固定資産の取得による支出2,214百万円、定期預金の預入による支出100百万円等による資金の減少、投資有価証券の売却による収入168百万円、敷金及び保証金の回収による収入141百万円等による資金の増加であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は2,718百万円(前連結会計年度は3,221百万円)となりました。

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローの内訳は、長期借入金の返済による支出1,731百万円、リース債務の返済による支出441百万円、配当金の支払額608百万円、自己株式の取得による支出236百万円等による資金の減少であります。

 

④ 販売及び仕入の実績

a.販売実績

当連結会計年度における販売実績を部門ごとに示すと、次のとおりであります。

部門別

金額(百万円)

前年同期比(%)

生鮮食品

47,982

103.0

非生鮮食品

48,325

103.9

スーパーマーケット部門売上高計

96,307

103.5

その他

416

97.9

売上高合計

96,724

103.5

 

(注) 1.生鮮食品は、青果・海産・精肉・惣菜等を含みます。

2.非生鮮食品は、日配・グロサリー等を含みます。

3.その他は、外販部門売上高等であります。

4.売上高合計には、不動産賃貸収入を含めておりません。

 

b.仕入実績

当連結会計年度における仕入実績を部門ごとに示すと、次のとおりであります。

部門別

金額(百万円)

前年同期比(%)

生鮮食品

29,399

102.5

非生鮮食品

36,293

103.3

スーパーマーケット部門仕入高計

65,693

103.0

その他

145

89.3

仕入高合計

65,838

102.9

 

(注) 1.生鮮食品は、青果・海産・精肉・惣菜等を含みます。

2.非生鮮食品は、日配・グロサリー等を含みます。

3.その他は、外販部門仕入高等であります。

4.惣菜・日配の金額には、原材料仕入高が含まれております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、営業収益97,798百万円(前年同期比3.4%増)、営業利益2,142百万円(前年同期比10.5%増)、経常利益2,671百万円(前年同期比8.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,545百万円(前年同期比8.2%減)となりました。

営業収益の増加(前年比3,204百万円)の主な要因は、前期に出店した新店の売上高が前期比459百万円増加したこと、当期に出店した新店の売上高が881百万円増加したこと、既存店の売上高が1,892百万円増加したことなどであります。

営業利益の増加(前期比203百万円)の主な要因は、新規出店及び店舗改装費用及び人件費等の増加の影響を受け、販売費及び一般管理費が前期比1,124百万円増加したものの、プロセスセンターの原価改善やPB商品等を中心とした高利益商品の販売拡大の取り組みにより、売上総利益が1,355百万円増加したこと等によるものであります。

経常利益の増加(前期比216百万円)の主な要因は、営業利益の増加203百万円によるものであります。

親会社株主に帰属する当期純利益の減少(前期比138百万円)の主な要因は、経常利益の増加216百万円のほか、能登半島地震による災害損失が364百万円発生したことであります。なお、この結果、自己資本利益率は前連結会計年度5.61%から当連結会計年度4.99%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが4,473百万円の収入となり、前連結会計年度と比較して444百万円の増加(前連結会計年度は4,029百万円)となりました。増加の主な要因は、税金等調整前当期純利益の減少210百万円、売上債権の増減額の減少259百万円、棚卸資産の増減額の増加401百万円、支払債務の増減額の増加601百万円等であります。

店舗の出店や改装等により投資活動によるキャッシュ・フローは2,312百万円(前連結会計年度は1,591百万円)の支出となり、借入金の返済が進んだことなどにより財務活動によるキャッシュ・フローは2,718百万円(前連結会計年度は3,221百万円)の支出となりました。

この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末における残高は、前連結会計年度末より557百万円減少し、5,587百万円となっております。

 

b.財務に関する基本的な考え方

当社グループは、事業の成長を重要な戦略として位置付けており、当該基盤となる財務健全性を維持することを基本方針としております。

当社グループは、食品スーパーマーケットを多店舗展開しており、回収した売上金を日々蓄積することにより手元資金の流動性が確保されております。一方で、当該流動性を高め多くの資金を確保するためには、店舗数増加による事業の成長が重要と考え、積極的に店舗へ投資しております。

財務健全性に関する具体的な目標指標は設定しておりませんが、当連結会計年度末の総資産借入金比率5.6%、売上高借入金比率2.9%であり、同業他社と比較して財務健全性は確保されているものと判断しております。

財務基盤の安定化は、安定した株主還元を維持するために重要と考えており、適切な設備投資と資金調達のバランスを保ち、今後も資本コストの低減に努めてまいります。

 

 

c.資金需要の主な内容

当社グループの運転資金の需要は、商品代金、人件費、販売費、設備費、その他店舗経費等であり、日々蓄積している売上金回収額から支払っているため、資金の手元流動性は十分に確保されております。一方で、キャッシュレス比率の高まりによる現金回収の遅れや、納税資金、賞与資金等の一時金の支払いにおいて資金需要が生じております。

また、当社グループは事業の成長のため継続的に出店及び改装に係る設備資金需要が生じております。

 

d.資金調達

当社グループの事業活動のために必要な資金は、運転資金については内部資金または短期借入金で行い、出店及び改装等の設備資金については、内部資金または長期借入金による資金調達を基本としております。設備資金の調達に際しては、金利動向を見ながら有利な条件で調達する方針としております。

また、緊急の資金需要が生じる場合を想定し、複数の金融機関に対して当座貸越契約を締結しております。

今後の事業拡大に伴う、店舗運営に必要な運転資金、設備資金の調達に関して、問題なく調達可能と認識しております。なお、投資案件によっては、営業キャッシュ・フローを上回る場合も想定されますが、この場合は、財務健全性の維持を優先し、種々の方法を検討してまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

特記事項はありません。