第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)運営方針及び中長期的な経営戦略

当社グループは、2021年6月から2024年5月までの3ヵ年に亘る中期経営計画「中期経営計画2024(Leap into the Innovation)」を策定し取り組んでまいりました。中期経営計画の骨子は以下のとおりです。

 

「中期経営計画2024(Leap into the Innovation)の骨子

1.小津グループが中長期的に目指す事業像

製造商社機能の高度化、新規事業の創出、事業ポートフォリオ変革により、「価値創造企業」への飛躍を目指します。

 

2.「中期経営計画2024(Leap into the Innovation)」の基本方針

「紙と不織布」の技術力を基盤に、製造機能を拡充した商社として収益性の更なる向上を達成します。

 

3.基本戦略は以下の4項目です。

(1)製造基盤の強化

高度の開発機能を持つ生産拠点の確立を目指す事業像と位置付け、以下を具体的な施策としました。

①株式会社ディプロの設備の高度化・拡張

②除染材の製造基盤拡張

③生産・開発本部の新設・開発推進

④海外生産体制整備・拡張

 

(2)海外展開の拡充

販売・購買・生産の機能を考慮して海外拠点を再構築することを目指し、以下を具体的な施策としました。

①シンガポール:ASEAN・インドの販売拠点として人員拡張。過酢酸・コスメティック製品・人工皮革の市場探索

②上海:中国の販売・生産・購買拠点として体制拡充

 

(3)新規事業の確立

次世代の事業の柱となる事業の構築を目標に、以下を具体的な施策としました。

①過酢酸の食品分野での拡販

②電力会社における除染材の普及

③大学との共同研究・開発

④M&Aも視野に入れた新事業探索

 

(4)グループ経営基盤の強化

「グループ力を結集した価値創造企業へ」を目指し、以下を具体的な施策としました。

①グループ会社での営業連携

②製造工程のCO₂削減、環境対応商品開発

③ESG経営

 

公正・公平で迅速かつ透明性の高い経営を実践するため、コーポレート・ガバナンスの強化に引き続き取り組むとともに、株主の皆さまやその他のステークホルダーとの対話の強化を図るため、IR活動にも積極的に取り組んでまいりました。

 

これらの基本方針、基本戦略に基づき、2024年5月期は、売上高170億円、営業利益14億円、ROS8%・ROE8%を目指しておりました。

また、中長期的には売上高200億円、ROS10%・ROE10%を目指しておりました。

※数値目標は収益認識会計基準等の適用前の数値です。

 

 

「中期経営計画2024(Leap into the Innovation)」の中間総括

中期経営計画作成時に比べ、下記のような経営環境の変化が生じております。

1.新型コロナウイルス感染症の拡大長期化

経済活動・社会活動の制約の長期化により、海外展開をはじめとし、様々な分野で計画に遅延が発生いたしました。

2.資源価格、原材料価格の高騰

エネルギー・資源価格の高騰は、原材料価格の高騰へと繋がり、当社グループの仕入れコスト等の上昇要因となり、収益環境の悪化を招きました。

3.見通しの見誤り

原発再稼働の大幅な遅れ、安価な外国製WET製品の国内への大量流入、新規業者参入によるマスク製品の過当競争の発生等、中期経営計画作成時の目算に狂いが生じ、販売計画・利益計画に大幅な差異が発生いたしました。

4.新規事業探索(M&A、業務提携・資本提携)の遅れ

中期経営計画においては、新規事業の探索・実現を業績向上における推進力と位置付けました。情報収集の強化や、個別案件の検討等、鋭意取り組みを継続しておりますが、合意・具現化に至っておりません。

 

これらの結果、中期経営計画の進捗に多大な影響が発生しております。2024年5月期は新型コロナウイルス感染症の5類感染症への位置付け変更により、経済社会活動の一層の正常化が期待されるものの、不安定な国際情勢や、エネルギー・資源価格の高止まりは継続すると想定され、経営環境の先行きは依然として不透明なものとなっております。

このような環境変化、見通しを勘案して、中期経営計画の最終年度である2024年5月期の数値目標を売上高100億円、営業利益4億70百万円に修正いたしました。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

当社グループは、「中期経営計画2024」に掲げる「『紙と不織布』の技術力を基盤とした『価値創造企業』への飛躍」を目指し、以下を重点事項として取り組んでまいります。

 

①売上増強への取組み

 ディプロ製品、過酢酸製剤を重点販売製品と位置付け、グループを挙げて拡販を進めます。除染布に関しては、引き続き電力会社等への提案と用途開発を進めてまいります。また、得意先とのコミュニケーションを一層強化し、的確な販売機会の捕捉を行うとともに、ニーズ対応による製品ラインナップの拡充という「ものづくり」に軸足を置いた拡販を行います。

②外部環境変化への迅速な対応

 原材料価格の高止まりは継続すると想定されるなか、外部環境変化に迅速かつ的確な対応を行い、収益確保に努めます。

③海外展開の再構築

 近時の環境変化を受け、販売・製造・購買機能の拡充を目的に、海外販売拠点、海外加工場拠点の再構築の検討を鋭意進めてまいります。

 

 各事業分野における2024年5月期の見通し及び、取組み事項は以下のとおりです。

(不織布事業)

 エレクトロニクス分野におきましては、近い将来の自動車のEV化、自動運転化に備え、車載用電子部品、燃料電池分野へのアプローチ強化を図ります。また、食品分野での拡販を推進するとともに、従来以上に取引先とのコミュニケーションを強化し、シェアの拡大を目指してまいります。海外においても、製品ラインナップの拡充を図り、新販路の開拓を進めてまいります。

 メディカル分野におきましては、新型コロナウイルス感染症の5類への引下げにより、感染対策製品の需要減が予想されるなか、独自製品を軸に、お客さまニーズを的確に捉えた迅速な対応により、売上高の増強・新規顧客の開拓を推進してまいります。

 コスメティック分野におきましては、東アジアのコスメ市場の変化等の影響を受けるなか、ディプロの製造機能も活用し、新事業・新商品の創造に注力、新規顧客の開拓を目指してまいります。

 除染関連分野におきましては、電力会社等への提案活動を従来以上に強化するとともに、電力会社向けの消耗財の開発と拡販を推進します。また産学連携による用途開発を進めてまいります。

 株式会社ディプロにおきましては、小津産業との連携を一層強め、既存顧客における製品ラインナップの拡充や新規顧客の獲得を目指します。また、独自ブランド商品「ケアウィル」の拡販を推進してまいります。製造機能の活用・拡充を図り高機能商品の開発を進めるとともに、生産性向上策等にも積極的に取り組み、品質の向上と原価低減の実現を図ってまいります。

 日本プラントシーダー株式会社におきましては、天候不順、自然災害等の影響が懸念されるものの、シーダーテープ対象作物の拡大と拡販に注力してまいります。前期に実施した拠点の統廃合による、営業戦力の再配置を軸にお客さまニーズに従来以上に肌理細やかに対応し、売上高の増強と収益拡大に努めます。

(その他事業)

 除菌関連事業を営むエンビロテックジャパン株式会社におきましては、食品殺菌用途および、畜産分野の防疫対策用途として過酢酸製剤の販促活動を積極的に行うとともに、小津グループ各社との連携を一層強化し、販路の拡大に注力してまいります。

 

 当社を取り巻く環境は厳しいものの、中期経営計画で掲げる事業像を目指し、売上増強、収益確保のため、営業力強化等、戦略性を優先した予算運営を実施してまいります。

 

 今後も当社グループは、経営環境の変化に迅速に対応しつつ、中長期的な経営戦略に基づき経営資源の最適な配分を行い、企業価値の向上に全力で邁進するとともに、社会環境や安全性に十分配慮し、コーポレート・ガバナンスの充実に取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは次のとおりであります

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティに関する基本方針

当社は以下の品質方針を策定・開示しております。

小津グループの企業理念であるわたしたちは伝統とは継続的な開拓の歴史との認識のもとお客さまの満足や喜びを第一に考えた新しい付加価値を提案し豊かな暮らしと文化に貢献してまいります。」に則りコンプライアンスを重視し顧客満足の向上をはかってまいります

顧客のニーズに応えるとともに製品の信頼性と安全性を確保し、「伝統力」、「革新力」、「付加価値力の3つの柱を基軸に必要とされる企業を目指してまいります

あらゆる企業活動において自然環境の保全資源の保護を考慮して品質向上の継続的改善を図り地球環境と人にやさしい企業を目指します。

 

「環境スローガン」

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基本理念

小津グループは国際社会の一員として地球環境の保全が世界共通の課題であることを認識しあらゆる企業活動において自然環境の保全・資源の保護へ継続的改善をはかり地球環境と人にやさしい企業を目指します

環境方針

小津グループは、永年にわたる「和紙の小津」としての伝統を継承し、現在では和紙・洋紙から不織布製品の製造販売へと展開しています。その事業活動が環境に与える影響を認識し、地球環境の保全と資源保護に向け、以下の通り環境方針を定め、全従業員参加で取組みます。

・エコロジー製品の取組

新製品の開発・設計段階で環境負荷低減を配慮し、環境にやさしい製品(再生紙・不織布使用)の販売促進に積極的に取り組みます。

・使用資源の低減

社内活動に伴う資源、エネルギーの低減をはかるとともに、リサイクル活動を推進します。

物流・工場活動において廃棄物を削減し、汚染の予防に取組みます。

・環境関連の法規則等の順守

環境に関連する国、自治体の定める法律・条例及び関連団体等と同意した環境配慮事項を順守します。

・環境方針の公開

この環境方針は、全従業員に周知するとともに、社外に公表します。

 

(2)ガバナンス

2022年7月27日付にて、気候変動等をはじめとする諸課題への取組みを一層強化するため、小津産業社長を委員長とする「ESG委員会」を設立いたしました。「ESG委員会」は従来から存在する「CSR委員会」を発展的に統合したもので、小津グループのコンプライアンス遵守や労働環境の改善、社会貢献等を担う「CSRチーム」と、気候変動・環境問題対応を担う「サステナビリティチーム」で構成しております。

「ESG委員会」の取組み事項は以下のとおりであります。

・グループ全体のコンプライアンスの遵守に関する啓蒙、徹底、遵守状況の確認及び改善に関する事項

・労働環境の現状把握及び、改善に向けた施策の検討に関する事項

・人権の保護に関する事項

・社会貢献に関する事項

・情報セキュリティに関する事項

・環境問題に関する当社の基本方針のバージョンアップに関する事項

・環境問題に関する当社の取組み体制の整備及び、取組みの推進に関する事項

・気候変動に係るリスク及び収益機会が当社の事業活動や収益等に与える影響について必要なデータの検討、収集、分析に関する事項

 

(3)戦略

当社は、1653年の創業以来、その時代ごとの様々な要請に的確・迅速に対応し、持続可能な社会の構築に向けた役割を積極的に果たしてまいりました。当社の主力不織布製品「ベンコット」、「ハイゼ」は生分解・海洋生分解する環境負荷を軽減した製品であり、当該製品の拡販により、環境問題への貢献も行っております。また、グループ経営基盤の強化を主要な取組み課題と位置付け、製造工程のCO₂削減や環境対応 商品の開発等、ESG経営の実践を推進してまいります。

当社グループは、本来廃棄する脱綿を主原料とする油吸着剤(オイルテイカー)やフードロス防止効果が期待できる過酢酸製剤といった環境対応製品の販売を行っております。「環境スローガン、基本理念、環境方針」に基づき、新製品・新商品の開発にあたっては、「環境負荷が小さい」、「再生利用」をキーワードとして取り組んでおります。

 

(4)人的資本・多様性

 多様な人材の視点や独創性、個性や経験が最大限発揮される職場環境の形成が、会社の持続的な成長と企業価値向上に資すると当社は考えております。この考えのもと以下の取組みを実施しております。

①人材育成

2022年6月より、従業員の成長を促すことを目的に従来の階層別教育プログラムを見直し、新しい「社員研修制度」を制定いたしました。新しい研修制度は、「階層別研修」、「ビジネススキル研修」と、ハラスメント防止やキャリアデザイン等の「その他研修」で構成しております。また、自己啓発を支援するための補助金制度「学びの場」も導入し、自主性をもって十分に能力を発揮できる環境づくりに取り組んでおります。

新しい研修制度等の導入効果は次のとおりです。

(円)

 

2022年5月期

2023年5月期

教育研修費総額

718,583

2,591,513

一人あたり教育研修費

6,532

23,995

 

 

②社内環境整備

新しい「社員研修制度」や自己啓発支援のための補助金制度「学びの場」を「キャリア型人材」創出のために有効に機能させるために、適切な見直し・改善を実施しております。(2023年6月に制度や研修メニューに更新を実施いたしました。)今後も、適切な改善を実施し、急速に変化する社会情勢においても、適切に対応し着実な成長を遂げる人材となるべく、継続的な支援(キャリアサポート)に取組み、多様な人材が能力を発揮し活躍できる職場環境づくりを推進してまいります。

多様な働き方を促進するため、一般職から総合職への職種変更(キャリアチェンジ制度)も推奨しています。2023年6月1日現在、女性総合職16名中2名がキャリアチェンジ制度の利用者です。

また、働きやすい職場づくりのため、時差出勤の継続実施や、在宅勤務制度の制定を2022年11月に実施いたしました。在宅勤務制度は、1日単位で月3回まで利用できる「在宅デイワーク」と、7日以上で最長連続3ヵ月利用できる「在宅タームワーク」の2種類としています。「在宅タームワーク」においては時短勤務の選択も可能としております。当社の在宅勤務制度は、子育て、介護、傷病等の場合に利用でき、休業か退職かという選択肢に、在宅しながら働き続けるという選択肢を加えることとなりました。従業員は収入面の心配をすることなく就業を続けることが可能となり、休業等による業務引継の必要もないことから、他の社員の負担も軽減されることとなります。

多様な人材の視点や独創性、個性や経験が最大限発揮される職場環境の形成を目指し、今後も取組みを推進してまいります。

 

③多様性

女性・外国籍社員・中途採用社員の管理職への登用、中核人材の採用における多様性を確保するための環境整備、社内体制・制度の充実を図ります。

変化の激しい社会情勢、市場環境に対応し、常にスピードを持って事業創造できる組織へと変革すべく、女性・外国籍社員・中途採用社員の様々な職歴、多様なスキル等を最大限活かせるよう組織整備やマネジメント層へ経営視点を持たせる教育等の取組みを実行してまいります。

当社の女性社員・外国籍社員・中途採用社員の管理職に占める割合は次のとおりです。

(%)

 

女性社員

外国籍社員

中途採用社員

2022年5月末時点

0.0

5.0

65.0

2023年5月末時点

4.8

9.5

81.0

 

(5)リスク管理

小津産業社長を委員長とするESG委員会主導のもとリスクへの対応と最小化を目指しデータの収集や分析に取組み取締役会への報告を行っております

 

(6)指標及び目標

当社グループが重要課題と認識する次世代の核となる新規事業の探索においては、多様な視点や独創性が極めて重要であり、特に女性の活躍促進が必要不可欠と認識しております。女性の活躍をサポートする社内体制の整備と教育体制の充実を図り、中長期的に女性の中核人材・経営幹部人材の育成を目指します。指標、目標、実績は次のとおりです。

指標

目標

実績(2023年5月末時点)

管理職に占める

女性労働者の割合

2030年5月末までに

25%以上

4.8%

(注)連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため提出会社の指標及び目標を記載しております

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、財政状態等に影響を与える可能性のあるリスク、および投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下のとおり記載いたします。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)株式会社小津商店との関係

 株式会社小津商店は、1653年創業の「紙商小津屋」を嚆矢としております。同社の紙事業分野が分離し発展してきたのが当社グループです。長い歴史の過程において、株式会社小津商店と当社グループは、別々の事業を営んでまいりました。更に当社グループの上場を経て、株式会社小津商店の当社持株比率は、低下してまいりましたが、現在、当社の議決権の29.3%を保有する主要株主となっております。

 当社グループは独立性、自主性に基づき企業運営を行っておりますが、株式会社小津商店の当社に対する基本方針等に変更が生じた場合には、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(株式会社小津商店との取引)

 現在、株式会社小津商店との間で不動産の賃借取引があります。当該取引に関して取引条件の経済合理性を保つため、市場原理に基づく取引条件としております。今後は同社との取引は順次減少すると見込まれます。同社と新規に取引が発生する場合についても市場原理に基づく条件を基本としてまいります。しかし同社の当社グループに対する取引方針や条件等に大きな変更が生じた場合には、代替不動産の確保に費用を要するため、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(株式会社小津商店との棲み分け)

 当社グループは不織布、除菌製剤等を扱う事業会社、株式会社小津商店は不動産事業と和紙文化事業・和紙販売事業に特化した会社との棲み分けになっております。この棲み分けは、今後も継続する方針であります。

(2)販売先が属する業界の需要動向、市況による影響および業績の季節変動

 当社グループの不織布事業における主力製品は、エレクトロニクス・半導体業界、医療業界およびコスメティック業界向けであり、これらの業界の需要動向、市況などは業績に大きな影響を与えます。また、日本プラントシーダー株式会社において第2四半期である6月~8月の夏場に販売がピークになることから、不織布事業の営業利益は第2四半期に集中して計上される傾向があります。

(3)製品品質

 当社グループの不織布製品の多くは、素材を旭化成株式会社より仕入れ、当社グループの加工関係会社3社およびマレーシアの協力工場で製品化しております。

 各加工場では充分な品質管理を行っておりますが、製品やサービスに関する不良欠陥が発生しないという保証はなく、大規模な製品クレームが発生した場合、製品回収や製造物責任賠償などに関する費用が発生し、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4)災害による影響

 当社グループが保有する物流センターのほか、素材の主要仕入先である旭化成株式会社、または当社グループの加工関係会社3社もしくはマレーシアの協力工場が、大規模な地震などの災害により損害を被った場合、物流センターの稼働率が一時的に低下したり、加工場における製品の生産能力が減退することにより、売上高、利益が減少いたします。

 また、設備の修復のための費用の増加により、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 アグリ分野を担当する日本プラントシーダー株式会社においては、天候不順・自然災害が発生した場合には、売上高・利益が減少いたします。

(5)海外市場の動向

 不織布事業におけるエレクトロニクス用ワイパーは、国内の加工関係会社3社以外にマレーシアの協力工場においても生産を行い、中国、台湾、その他の東南アジア地区などを中心に販売を行っております。

 従いまして、当社が販売を行っている各国において政治、経済、社会情勢の変化などの予期せぬ事象が発生し、販売活動に支障が生じた場合、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6)為替相場の変動による影響

 当社グループは、大きな市場であるアジア地区における仕入および販売体制の確立と強化を図っており、今後も海外取引の比重は高まる傾向にあります。輸出または輸入取引の一部は外貨建で行っているため、為替相場の変動による影響を受けます。

(7)新型コロナウイルスの影響

 当社グループにおきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により需要の減少が予想される販売先と、需要の増加が予想される販売先が併存しております。このような事業特性から新型コロナウイルス感染症が、当社グループの業績に与える影響は軽微であると判断しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症が、当社の想定を超える規模で拡大、長期化した場合、人の移動制限や事業活動の制限による経済活動の停滞は、当社グループの製品・商品需要の減少を招く可能性があります。また、原材料等サプライヤーも同様の理由で制限を受けることにより、製品・商品等の調達面に不都合が生じる可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 当連結会計年度(2022年6月1日~2023年5月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症対策の緩和により経済活動の正常化が進んだものの、不安定な国際情勢や原材料価格の高騰等により、国内経済の先行きは不透明なものとなっております。

 このような状況のもと、当社グループでは、「中期経営計画2024(Leap into the Innovation)」で掲げる「『紙と不織布』の技術力を基盤に、製造機能を拡充した『価値創造企業』への飛躍」を実現すべく、営業活動を実践してまいりました。

 これらの結果、当連結会計年度の売上高は103億68百万円(前期比1.8%減)、経常利益5億90百万円(前期比16.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3億83百万円(前期比31.1%減)となりました。

 当連結会計年度におけるセグメント別の状況は以下のとおりであります。

(不織布事業)

 売上高は101億63百万円(前期比1.7%減)、セグメント利益は4億9百万円(前期比25.7%減)となりました。

 エレクトロニクス分野では、テレワーク需要の収束、中国経済の混乱、半導体不足の影響から国内販売が伸び悩みました。また、海外においては、円安の恩恵があったものの下期以降、工場稼働率が低下したため、前期に比べ、売上高、利益面とも微減となりました。

 メディカル分野では、新型コロナウイルス感染症対策の衛生材料が堅調推移したものの、マスク需要が減退したため、前期に比べ、売上高、利益面とも微減となりました。

 コスメティック分野では、国内販売、東アジア市場向けの販売とも低調推移したため、売上高、利益面とも前期を下回りました。

 除染関連分野につきましては、今期の採用実績が少なく、売上高、利益面とも前期を下回りました。

 小津(上海)貿易有限公司では、中国政府の新型コロナウイルス感染症政策による社会的・経済的混乱等の影響を受け、前期に比べ、売上高は増加、利益面は減少しました。

 ウエットティシュ等の製造販売を営む株式会社ディプロでは、原材料価格高騰の影響はあるものの、前年の新型コロナウイルス感染症拡大による需要増からの反動減より徐々に回復傾向を示し、売上高、利益面とも前期を上回りました。

 アグリ分野を担う日本プラントシーダー株式会社では、国内外ともに販売が伸び悩んだため、売上高、利益面とも前期を下回りました。

(その他の事業)

 除菌関連事業を営むエンビロテックジャパン株式会社では、過酢酸製剤の知名度を上げる地道な活動と、販売代理店への販促活動ならびに食品殺菌用途および防疫対策用途に向けた拡販に注力したことにより、売上高、利益面とも前期を上回りました。不動産賃貸事業につきましては、テナントの退去があったため、売上高、利益面とも前期を下回りました。

これらの結果、売上高は2億4百万円(前期比3.8%減)、セグメント利益は48百万円(前期比7.9%減)となりました。

 

(注)日本プラントシーダー株式会社の決算期は2月末日のため、当連結会計年度には2022年3月から2023年2月までの実績が、株式会社ディプロおよびエンビロテックジャパン株式会社の決算期は3月末日のため、当連結会計年度には各社の2022年4月から2023年3月の実績が反映されております。

 

②財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は、「現金及び預金」4億10百万円の増加等により、前期比4億2百万円増加の125億86百万円となりました。固定資産は、「投資有価証券」18億36百万円の増加等により、前期比16億79百万円増加の120億43百万円となりました。

 この結果、資産合計は前期比20億81百万円増加の246億30百万円となりました。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は、「支払手形及び買掛金」61百万円の増加、「未払法人税等」54百万円の減少等により、前期比7百万円増加の35億73百万円となりました。固定負債は、「繰延税金負債」6億1百万円の増加等により、前期比6億2百万円増加の30億35百万円となりました。

 この結果、負債合計は前期比6億9百万円増加の66億9百万円となりました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は、前期比14億71百万円増加の180億20百万円となりました。これは「その他有価証券評価差額金」12億62百万円の増加、「利益剰余金」1億90百万円の増加等によるものであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ4億10百万円増加し、74億83百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの増減の要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は8億15百万円(前期比78百万円減)となりました。収入の主な内訳は、「税金等調整前当期純利益」5億89百万円、「減価償却費」3億86百万円、支出の主なものは、「法人税等の支払額」1億89百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は2億23百万円(前期比12百万円増)となりました。支出の主なものは、「有形固定資産の取得による支出」2億23百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は1億92百万円(前期比53百万円減)となりました。支出の主なものは、「配当金の支払額」1億92百万円であります。

 

④生産、受注及び販売の実績

イ.生産の実績

 該当事項はありません。

ロ.受注の実績

 該当事項はありません。

ハ.販売の実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

前年同期比(%)

不織布(千円)

10,163,718

98.3

報告セグメント計(千円)

10,163,718

98.3

その他(千円)

204,372

96.2

合計(千円)

10,368,090

98.2

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当連結会計年度における経営成績の分析は、以下のとおりであります。なお、本項に記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

①経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度の売上高は、前期比1.8%減の103億68百万円となりました。

不織布事業につきましては、エレクトロニクス分野及び、メディカル分野の販売が前期比微減、コスメティック分野の販売が、国内、東アジア市場向けとも低調推移したことにより売上高が減少いたしました。

除染関連分野につきましては、国内電力会社等への営業活動を継続して実施しましたが、今期の販売実績は減少いたしました。

小津(上海)貿易有限公司の販売は増加いたしました。

株式会社ディプロにつきましては、前年に除菌ウエット製品の販売が急増していた反動から徐々に回復傾向を示し販売は増加いたしました。

日本プラントシーダー株式会社につきましては、国内外ともに販売が伸び悩みました。

これらの結果、不織布事業の売上高は、前期比1.7%減の101億63百万円となりました。

その他の事業において除菌関連事業を営むエンビロテックジャパン株式会社につきましては、地道な営業活動を展開した結果、売上高は前期比増加いたしました。

不動産賃貸事業につきましては、テナントの退去があり、売上高は前期比減少いたしました。

これらの結果、その他の事業の売上高は、前期比3.8%減の2億4百万円となりました。

 

(営業利益)

 当連結会計年度の営業利益は、前期比24.1%減の4億58百万円となりました。売上高営業利益率は、4.4%となりました。

 不織布事業につきましては、エレクトロニクス分野および、メディカル分野の販売が前期比微減となったこと、コスメティック分野の販売が前期比減少したことにより、営業利益は前期比減少いたしました。

 除染関連分野では、今期の販売実績が少なかったため、営業利益は前期比減少いたしました。

 小津(上海)貿易有限公司では、販売が増加したものの、営業利益は前期比減少いたしました。

 株式会社ディプロでは、販売が増加したこと等により、営業利益が前期比増加いたしました。

 日本プラントシーダー株式会社につきましては、販売が伸び悩んだため、営業利益は前期比減少いたしました。

 これらの結果、不織布事業のセグメント利益は、前期比25.7%減の4億9百万円となりました。

 その他の事業において除菌関連事業を営むエンビロテックジャパン株式会社につきましては、売上高が増加したこと等により、営業利益が前期比増加いたしました。

 不動産賃貸事業につきましては、売上高が減少したこと等により、営業利益は前期比減少いたしました。

 これらの結果、その他の事業のセグメント利益は、前期比7.9%減の48百万円となりました。

 

(注)報告されている事業セグメントの会計処理の方法は、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」における記載と概ね同一であり、報告セグメントの利益は、営業利益ベースの数値であります。

 

(経常利益)

 当連結会計年度の経常利益は、前期比16.7%減の5億90百万円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比31.1%減の3億83百万円となりました。

 

②資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品及び製品、原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要は、主に設備投資等によるものであります。運転資金及び設備投資資金は、自己資金及び金融機関からの借入等により調達しております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及び社債を含む有利子負債の残高は25億70百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は74億83百万円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

不織布事業におきましては、連結子会社である日本プラントシーダー株式会社で、食の安全に対する関心の高まりを背景に、国内外の農業の省力化と効率化という課題に取り組んでおります。シーダーテープを使用した農法の精度向上、関連する機械の技術開発を継続して市場の拡大を図っております。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、41百万円であります。