第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)運営方針及び中長期的な経営戦略

当社を取り巻く事業環境は、ロシアのウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化等によるエネルギー・原材料価格の高止まり、中国経済の低迷等、目まぐるしく変化し、その変化の速度は年々加速化しております。また、当社は、生産機能の具備、新用途・新機能の開発、新規事業の探索強化が経営課題であると認識しております。

かかる状況下、経営陣とグループ従業員が同じ目線で目指す姿・目標・課題を共有し、グループ一丸となって業務への取組みを推進し、企業価値の向上を実現するため、「長期ビジョン:OZU Innovation2034」を作成いたしました。

 

   「長期ビジョン:OZU Innovation2034」の骨子

1.目標

  ・わたしたちは「より清潔・より快適」を提供する会社を目指します。

・わたしたちは、社会のニーズに応え、お客さまの利便性、快適性、生産性の向上に寄与する「製品・サービス」を生み出し、提供することによって、社会の発展に貢献します。

 

   2.目指す姿・事業像

お客さまのニーズに具体的に応え一層の深耕を図るため、かつお客さまへの適切な提案を可能にするため、「自ら製品を企画・開発・生産する機能を備えた商社」への発展を目指します。

 

   3.数値目標

 ・連結売上高:150億円(現状の1.5倍の規模を目指します)

   事業拡大戦略1:新規のお客さま開拓、新用途・新機能開発による拡大目標 30億円

   事業拡大戦略2:新規事業による拡大目標 20億円

 

   4.戦略推進上の基本的な考え方

     ・事業拡大戦略1:現在の商品、現在のお客さまを軸とした展開

      ⇒既存事業分野の一層の深耕、新用途・新機能開発による拡大を目指します。

       当該戦略への取組みから新規事業への発展も視野に入れております。

      <注力分野>

       産業分野:製造現場 機構部品・ユニット品

       医療・美容分野:衛生材料 フェムケア ウェルネスケア

     ・事業拡大戦略2:新規事業の探索

      ⇒当該戦略への取組みから現在の商品のブラッシュアップも想定しております。

  <着目する領域(第一次候補)>

   分野(市場・業界):農漁業 予防医療 在宅医療 防災 先端技術 環境対策

 ・1、2とも効率よく着実な事業成長に向け、提携・買収を積極的に活用してまいります。

 

「第一次中期経営計画2027」の骨子

1.「第一次中期経営計画2027」基本方針

   ・「長期ビジョン:OZU Innovation2034」で掲げた目標達成、発展のための土台づくりと位置付けます。

     ⇒着手準備、体制構築、経営基盤の再構築、調査重点設定、展開推進判断等を行います。

     ・発展を支える地道な活動を実施します。

     ⇒お客さまニーズ等の情報収集活動の展開や、外部環境変化に的確・迅速に対応してまいります。

 

2.数値目標

・売上高:105億円 営業利益:3億円

「第一次中期経営計画2027」は、当該長期ビジョンで掲げた目標達成に向け、人材確保、市場調査、研究開発費等に戦略的に予算を充当してまいります。また、結実までのタイムラグもあることから、第一次中期経営計画期間中の業績寄与は限定的であると見込んでいます。

 

 

   3.事業拡大への取組み

    (1)事業拡大戦略1:現在の商品、現在のお客さまを軸とした展開

     新規のお客さまの開拓、新用途・新機能開発による拡大を目指します。

     注力する分野(産業分野:製造現場 機構部品・ユニット品 医療・美容分野:衛生材料 フェムケア ウェルネスケア)を中心に、お客さまの顕在したニーズのみならず、潜在的なニーズをも取集・蓄積・共有化することによって、お客さまのニーズを充たす用途や機能の開発を図ります。

    (2)事業拡大戦略2:新規事業の探索

     新規事業による拡大を目指します。

     着目する領域に、農漁業 予防医療 在宅医療 防災 先端技術 環境対策を選定いたしました。

     既存の事業領域の知見、取引先、人脈を活用し探索を進め、事業化を目指します。

 

   4.業績推進等への取組み

    (1)営業部再編効果の発揮

      各営業部の役割課題を明確にし、従来以上に効果的な営業活動を実施することを目的に、2024年6月1日付にて営業部の再編を実施しております。再編効果を発揮し、業績推進を図ります。

    (2)海外拠点の見直し

     海外拠点の見直しとして、以下の事項に取組みます。

     ①小津(上海)貿易有限公司を軸とした購買機能の拡充

     ②海外加工場の再配置と安定運用

     ③ASEANを見据えた海外販売拠点の再配置の検討

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

ロシアのウクライナ侵攻の長期化、中東情勢の緊迫化等の地政学リスクは、エネルギー・原材料価格の高止まり等、様々な経済活動に影響を及ぼす恐れがあります。また中国においても景気低迷が長引く可能性があり、依然として経営環境は不透明な状況が続くものと思われます。

2025年5月期は、当該長期ビジョンの達成、発展のための土台づくりと位置付ける「第一次中期経営計画2027」の初年度にあたります。経営基盤の体制整備並びに、事業拡大に向け、新用途・新機能の開発による新規のお客さまの開拓と、新規事業の探索をグループ一丸となって推進してまいります。

 

各事業分野における2025年5月期の見通しと取組み内容は以下のとおりです。

 

(不織布事業)

クリーンサプライ営業部に海外営業部を統合いたしました。国内外ともエレクトロニクス分野の拡大基調は継続すると予測されるなか、半導体、電子部品、食品分野等での拡販に引き続き注力してまいります。国内企業から在外日系企業へのアプローチ強化を実施し、国内外一体となった営業活動を実施してまいります。

メディカルサプライ営業部とコスメサプライ営業部を統合し、ウェルネスケア営業部を新設いたしました。メディカル商材を美容分野に、コスメティック商材を医療・介護分野に展開し新たな顧客を獲得するとともに、ニーズの掘り起こしを行いカテゴリーに拘らず、人々のウェルネスケア(心身両面の健康)に寄与する新製品の開発に繋げてまいります。

ライフサプライ営業部を核に幅広く環境対策製品の企画・販売を担うエコプロダクツ営業部を新設しました。環境対策製品であるオイルテイカー(油吸着剤)を軸とした拡販を推進するとともに、環境に優しい商品の幅広い分野への拡販や、除染布事業も推進してまいります。「エコ」をキーワードとした新製品開発に向けた活動にも注力してまいります。

機能素材開発室衛生材料開発担当を主体にコンシューマー営業部を新設しました。株式会社ディプロ製造のウェット製品、マスク製品の販売を軸に一般消費者向け製品の開発、拡販を行ってまいります。

株式会社ディプロにおきましては、当社との連携を一層強め、既存顧客における製品ラインナップの拡充や新規顧客の獲得を目指します。製造機能の活用・拡充を図り高機能商品の開発を進めるとともに、生産性向上策等にも積極的に取り組み、品質の向上と原価低減の実現を図ってまいります。

日本プラントシーダー株式会社におきましては、天候不順、自然災害等の影響が懸念されるものの、きめ細かいお客さま対応による主力製品の拡販を推進するとともに、シーダー農法対象作物および新製品の開発のスピードアップを図り、売上高の増強と収益拡大に努めてまいります。

(その他事業)

除菌関連事業を営むエンビロテックジャパン株式会社におきましては、食品殺菌用途および、畜産分野の防疫対策用途として過酢酸製剤の販促活動を積極的に行うとともに、小津グループ各社との連携を一層強化し、販路の拡大に注力してまいります。

今後も当社グループは、経営環境の変化に迅速に対応しつつ、中長期的な経営戦略に基づき経営資源の最適な配分を行い、企業価値の向上に全力で邁進するとともに、社会環境や安全性に十分配慮し、コーポレート・ガバナンスの充実に取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び、取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティに関する基本方針

当社は以下の品質方針を策定・開示しております。

小津グループの企業理念である「わたしたちは、伝統とは継続的な開拓の歴史との認識のもと、お客さまの満足や喜びを第一に考えた新しい付加価値を提案し、豊かな暮らしと文化に貢献してまいります。」に則り、コンプライアンスを重視し、顧客満足の向上をはかってまいります。

顧客のニーズに応えるとともに製品の信頼性と安全性を確保し、「伝統力」、「革新力」、「付加価値力」の3つの柱を基軸に「必要とされる企業」を目指してまいります。

あらゆる企業活動において自然環境の保全、資源の保護を考慮して、品質向上の継続的改善を図り地球環境と人にやさしい企業を目指します。

このため、当社は以下の「環境スローガン」「基本理念」「環境方針」を定めております。

 

「環境スローガン」

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「基本理念」

小津グループは国際社会の一員として、地球環境の保全が世界共通の課題であることを認識し、あらゆる企業活動において自然環境の保全・資源の保護へ継続的改善をはかり、地球環境と人にやさしい企業を目指します。

「環境方針」

小津グループは、永年にわたる「和紙の小津」としての伝統を継承し、現在では和紙・洋紙から不織布製品の製造販売へと展開しています。その事業活動が環境に与える影響を認識し、地球環境の保全と資源保護に向け、以下の通り環境方針を定め、全従業員参加で取組みます。

・エコロジー製品の取組

新製品の開発・設計段階で環境負荷低減を配慮し、環境にやさしい製品(再生紙・不織布使用)の販売促進に積極的に取り組みます。

・使用資源の低減

社内活動に伴う資源、エネルギーの低減をはかるとともに、リサイクル活動を推進します。

物流・工場活動において廃棄物を削減し、汚染の予防に取組みます。

・環境関連の法規則等の順守

環境に関連する国、自治体の定める法律・条例及び関連団体等と同意した環境配慮事項を順守します。

・環境方針の公開

この環境方針は、全従業員に周知するとともに、社外に公表します。

 

 

(2)ガバナンス

2022年7月27日付にて、気候変動等をはじめとする諸課題への取組みを一層強化するため、当社社長執行役員を委員長とする「ESG委員会」を設立いたしました。「ESG委員会」は従来から存在する「CSR委員会」を発展的に統合したもので、小津グループのコンプライアンス遵守や労働環境の改善、社会貢献等を担う「CSRチーム」と、気候変動・環境問題対応を担う「サステナビリティチーム」で構成しております。

「ESG委員会」の取組み事項は以下のとおりであります。

・グループ全体のコンプライアンスの遵守に関する啓蒙、徹底、遵守状況の確認及び改善に関する事項

・労働環境の現状把握及び、改善に向けた施策の検討に関する事項

・人権の保護に関する事項

・社会貢献に関する事項

・情報セキュリティに関する事項

・環境問題に関する当社の基本方針のバージョンアップに関する事項

・環境問題に関する当社の取組み体制の整備及び、取組みの推進に関する事項

・気候変動に係るリスク及び収益機会が当社の事業活動や収益等に与える影響について必要なデータの検討、収集、分析に関する事項

 

(3)戦略

当社は2034年をターゲットとする「長期ビジョン:OZU Innovation2034」を策定いたしました。

当該長期ビジョンでは、以下を目標として掲げております。

・わたしたちは、「より清潔・より快適」を提供する会社を目指します。

・わたしたちは、社会のニーズに応え、お客さまの利便性、快適性、生産性の向上に寄与する「製品・サービス」を生み出し、提供することによって社会の発展に貢献します。

当社は、1653年の創業以来、その時代ごとの様々な要請に的確・迅速に対応し、持続可能な社会の構築に向けた役割を積極的に果たしてまいりました。当社の主力不織布製品「ベンコット」は生分解・海洋生分解する環境負荷を軽減した製品であり、当該製品の拡販により、環境問題への貢献も行ってまいりました。

当該長期ビジョンにおける目標は、当社の事業活動を更に進化・発展させ、社会の発展に貢献しようとするものです。当社が推進する新用途・新機能の開発や新規事業の探索にあたっては、「社会的要請」「環境対策」等をキーワードとして取り組んでおります。

当社は、今後も事業活動を通じ、持続可能な社会の構築に向けた役割を積極的に果たしてまいります。

 

(4)人的資本・多様性

 多様な人材の視点や独創性、個性や経験が最大限発揮される職場環境の形成が、会社の持続的な成長と企業価値向上に資すると当社は考えております。この考えのもと以下の取組みを実施しております。

①人材育成

2022年6月より、従業員の成長を促すことを目的に従来の階層別教育プログラムを見直し、新しい「社員研修制度」を制定いたしました。新しい研修制度は、「階層別研修」、「ビジネススキル研修」と、ハラスメント防止やキャリアデザイン等の「その他研修」で構成しております。また、自己啓発を支援するための補助金制度「学びの場」も導入し、自主性をもって十分に能力を発揮できる環境づくりに取り組んでおります。

新しい研修制度等の導入効果は次のとおりです。

(千円)

 

2022年5月期

2023年5月期

2024年5月期

教育研修費総額

718

2,591

2,685

一人あたり教育研修費

6

23

24

 

②社内環境整備

新しい「社員研修制度」や自己啓発支援のための補助金制度「学びの場」を「キャリア型人材」創出のために有効に機能させるために、適切な見直し・改善を実施しております。(2024年6月に制度や研修メニューに更新を実施いたしました。)今後も、適切な改善を実施し、急速に変化する社会情勢においても、適切に対応し着実な成長を遂げる人材となるべく、継続的な支援(キャリアサポート)に取組み、多様な人材が能力を発揮し活躍できる職場環境づくりを推進してまいります。

多様な働き方を促進するため、一般職から総合職への職種変更(キャリアチェンジ制度)も推奨しています。2024年6月1日現在、女性総合職17名中2名がキャリアチェンジ制度の利用者です。

 

また、働きやすい職場づくりのため、時差出勤の継続実施や、在宅勤務制度の制定を2022年11月に実施いたしました。在宅勤務制度は、1日単位で月3回まで利用できる「在宅デイワーク」と、7日以上で最長連続3ヵ月利用できる「在宅タームワーク」の2種類としています。「在宅タームワーク」においては時短勤務の選択も可能としております。当社の在宅勤務制度は、子育て、介護、傷病等の場合に利用でき、休業か退職かという選択肢に、在宅しながら働き続けるという選択肢を加えることとなりました。従業員は収入面の心配をすることなく就業を続けることが可能となり、休業等による業務引継の必要もないことから、他の社員の負担も軽減されることとなります。

当社は、2025年6月1日からの適用開始を目指し、人事制度の改定に取組んでいます。人事制度は、「長期ビジョン:OZU Innovation2034」で掲げた目標・目指す姿・事業像を実現するための重要な基盤と認識しています。新しい人事制度は、変化を起こす人材を育成し、適正に評価する制度とし、「働きやすい職場」と「やりがいのある業務」の両立を図ります。当社は、多様な人材の視点や独創性、個性や経験が最大限発揮される職場環境の形成を目指し、今後も取組みを推進してまいります。

 

③多様性

女性・外国籍社員・中途採用社員の管理職への登用、中核人材の採用における多様性を確保するための環境整備、社内体制・制度の充実を図ります。

変化の激しい社会情勢、市場環境に対応し、常にスピードを持って事業創造できる組織へと変革すべく、女性・外国籍社員・中途採用社員の様々な職歴、多様なスキル等を最大限活かせるよう組織整備やマネジメント層へ経営視点を持たせる教育等の取組みを実行してまいります。

当社の女性社員・外国籍社員・中途採用社員の管理職に占める割合は次のとおりです。

(%)

 

女性社員

外国籍社員

中途採用社員

2022年5月末時点

0.0(0/20)

5.0(1/20)

65.0(13/20)

2023年5月末時点

4.8(1/21)

9.5(2/21)

81.0(17/21)

2024年5月末時点

4.5(1/22)

4.5(1/22)

77.3(17/22)

(注)( )内には、各々の実数を記載しております。

 

(5)リスク管理

当社社長執行役員を委員長とするESG委員会主導のもと、リスクへの対応と最小化を目指し、データの収集や分析に取組み、取締役会への報告を行っております。

 

(6)指標及び目標

「長期ビジョン:OZU Innovation2034」において事業拡大戦略とした新用途・新機能の開発、新規事業の探索においては、多様な視点や独創性が極めて重要であり、特に女性の活躍促進が必要不可欠と認識しております。女性の活躍をサポートする社内体制の整備と教育体制の充実を図り、中長期的に女性の中核人材・経営幹部人材の育成を目指します。

指標、目標、実績は以下のとおりです。

指標

目標

実績(2024年5月末時点)

管理職に占める
女性労働者の割合

2034年5月末まで

30以上

4.5

新規採用における
女性労働者の割合

50以上維持

50.0

年次有給休暇取得率

2034年5月末まで

毎年90以上

84.2

(注)1.連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の促進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76条)の規定による公表義務の対象ではないため、提出会社の指標及び目標を記載しております。

2.様々な視点、知見、経験を有する女性の活躍を推進するため、「新規採用における女性労働者の割合」を目標指標といたしました。

3.「働きやすい職場」と「やりがいのある業務」の両立を図るため、「年次有給休暇取得率」を目標指標といたしました。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、財政状態等に影響を与える可能性のあるリスク、および投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下のとおり記載いたします。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)株式会社小津商店との関係

 株式会社小津商店は、1653年創業の「紙商小津屋」を嚆矢としており、同社の紙事業分野が分離し発展してきたのが当社グループです。株式会社小津商店の当社持株比率は、低下してまいりましたが、現在、当社の議決権の28.9%を保有する主要株主となっております。

 当社グループは独立性、自主性に基づき企業運営を行っておりますが、株式会社小津商店の当社に対する基本方針等に変更が生じた場合には、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは不織布、除菌製剤等を扱う事業会社、株式会社小津商店は不動産事業と和紙文化事業・和紙販売事業に特化した会社との棲み分けになっております。この棲み分けは、今後も継続する方針であります。

(2)販売先が属する業界の需要動向、市況による影響および業績の季節変動

 当社グループの不織布事業における主力製品は、エレクトロニクス・半導体業界、医療業界およびコスメティック業界向けであり、これらの業界の需要動向、市況などは業績に大きな影響を与えます。また、日本プラントシーダー株式会社において第2四半期である6月~8月の夏場に販売がピークになることから、不織布事業の営業利益は第2四半期に集中して計上される傾向があります。

(3)素材調達

 当社グループは、国内外の多くの取引先から不織布製品の素材を仕入れ、加工し製品化しております。

 取引先からの素材の仕入が、何らかの理由で滞った場合、製品やサービスを得意先に提供できないという事態が発生し、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4)製品品質

 当社グループの不織布製品は、素材を国内外の多くの取引先から仕入れ、当社グループの加工関係会社3社および海外の協力工場で製品化しております。

 各加工場では充分な品質管理を行っておりますが、製品やサービスに関する不良欠陥により、大規模な製品クレームが発生した場合、製品回収や製造物責任賠償などに関する費用が発生し、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(5)災害による影響

 当社グループが保有する物流センターのほか、素材の仕入先、または当社グループの加工関係会社3社もしくは海外の協力工場が、大規模な地震などの災害により損害を被った場合、物流センターの稼働率が一時的に低下したり、加工場における製品の生産能力が減退することにより、売上高、利益が減少いたします。

 また、設備の修復のための費用の増加により、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 アグリ分野を担当する日本プラントシーダー株式会社においては、天候不順・自然災害が発生した場合には、売上高・利益が減少いたします。

(6)海外市場の動向

 不織布事業におけるエレクトロニクス用ワイパーは、国内の加工関係会社3社以外に海外の協力工場においても生産を行い、中国、台湾、その他の東南アジア地区などを中心に販売を行っております。

 従いまして、当社が販売を行っている各国において政治、経済、社会情勢の変化などの予期せぬ事象が発生し、販売活動に支障が生じた場合、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(7)為替相場の変動による影響

 当社グループは、大きな市場であるアジア地区における仕入および販売体制の確立と強化を図っており、今後も海外取引の比重は高まる傾向にあります。輸出または輸入取引の一部は外貨建で行っているため、為替相場の変動による影響を受けます。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 当連結会計年度(2023年6月1日~2024年5月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行による行動制限の緩和に伴い、個人消費やインバウンド需要の回復等による経済活動の正常化に向けた動きが進展いたしました。一方で世界経済は、ロシアのウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化等から、エネルギー・原材料価格の高止まりが継続しております。また、中国においても経済の低迷が継続する等、景気の下振れリスク懸念が強く、依然として先行き不透明な状況が継続しております。

 このような状況のもと、当社グループでは、2024年5月期は下記を重点事項として事業活動を展開してまいりました。

①的確な販売機会の捕捉と、ニーズ対応による製品ラインナップの拡充・ものづくりを軸とした売上増強

②原材料価格の高止まりが継続するなか、収益確保に向けた外部環境変化への迅速かつ的確な対応

③販売・製造・購買の機能拡充を目的とした、海外販売拠点、海外加工場の再構築検討および実施

 これらの結果、当連結会計年度の売上高は101億25百万円(前期比2.3%減)、経常利益7億4百万円(前期比19.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5億46百万円(前期比42.3%増)となりました。

 

 当連結会計年度におけるセグメント別の状況は以下のとおりであります。

(不織布事業)

 売上高は99億22百万円(前期比2.4%減)、セグメント利益は4億88百万円(前期比19.3%増)となりました。

 エレクトロニクス分野では、中国をはじめとする世界経済の減速によりスマホ・PC向けの需要が低迷するものの、自動車関連、プリンター、内視鏡関連需要は堅調に推移しました。また、食品分野等への拡販に取組んだ結果、売上高、利益面とも前期比横ばいとなりました。

 メディカル分野では、得意先ニーズに合致した新製品の開発や新規販路の拡大を進めるものの、新型コロナウイルス感染症の5類感染症の移行により、感染対策用の消耗品やマスクの需要が減少したため、売上高、利益面とも前期を下回りました。

 コスメティック分野では、新規販路の拡大を実現したものの、東アジアにおけるコスメ市場の変化により、海外販売が低調に推移しました。比較的堅調に推移していた国内販売も中国景気の鈍化の影響から伸び悩み、売上高、利益面とも前期を下回りました。

 除染関連分野につきましては、国内電力会社等への営業活動を継続して実施した結果、採用実績がありました。

 小津(上海)貿易有限公司では、コスメティック分野において販売が減少したこと、中国の工場稼働率が低調で

あったことから、売上高、利益面とも前期を下回りました。

 ウェットティシュ等の製造販売を営む株式会社ディプロでは、販売価格の適正化や原材料費の低減に努めた結果、売上高、利益面とも前期を上回りました。

 アグリ分野を担う日本プラントシーダー株式会社では、海外販売が低調に推移するものの、国内販売が比較的堅調に推移したことや、販売価格の適正化や経費削減に努めた結果、前期に比べ、売上高は横ばい、利益面は増加いたしました。

(その他の事業)

 除菌関連事業を営むエンビロテックジャパン株式会社では、過酢酸製剤の知名度を上げる地道な活動と、販売代理店への販促活動ならびに食品殺菌用途および防疫対策用途に向けた拡販に注力したことにより、売上高、利益面とも前期を上回りました。不動産賃貸事業につきましては、テナントの退去があったため、売上高、利益面とも前期を下回りました。

これらの結果、売上高は2億3百万円(前期比0.4%減)、セグメント利益は38百万円(前期比19.8%減)となりました。

 

(注)1.日本プラントシーダー株式会社の決算期は2月末日のため、当連結会計年度には2023年3月から2024年2月の実績が、株式会社ディプロおよびエンビロテックジャパン株式会社の決算期は3月末日のため、当連結会計年度には各社の2023年4月から2024年3月の実績が反映されております。

(注)2.第3四半期連結会計期間において、株式会社旭小津の株式を追加取得したため、当連結会計年度におきましては、株式会社旭小津の実績は、第3四半期までを持分法適用会社として、第4四半期を連結子会社として反映しております。

 

 

②財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は、「売掛金」2億61百万円の増加、「電子記録債権」2億34百万円の増加等により、前期比3億7百万円増加の128億94百万円となりました。固定資産は、「土地」3億87百万円の増加、「投資有価証券」3億87百万円の減少等により、前期比2億1百万円減少の118億42百万円となりました。

 この結果、資産合計は前期比1億6百万円増加の247億36百万円となりました。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は、「未払法人税等」29百万円の増加、「支払手形及び買掛金」30百万円の減少等により、前期比27百万円増加の36億1百万円となりました。固定負債は、「繰延税金負債」1億8百万円の減少等により、前期比1億3百万円減少の29億32百万円となりました。

 この結果、負債合計は前期比75百万円減少の65億33百万円となりました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は、前期比1億82百万円増加の182億3百万円となりました。これは「利益剰余金」3億36百万円の増加、「その他有価証券評価差額金」2億41百万円の減少等によるものであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ45百万円減少し、74億38百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの増減の要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は5億30百万円(前期比2億84百万円減)となりました。収入の主な内訳は、「税金等調整前当期純利益」7億36百万円、「減価償却費」3億58百万円、支出の主な内訳は、「売上債権の増減額」3億89百万円、「法人税等の支払額」1億61百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は4億3百万円(前期比1億80百万円増)となりました。支出の主なものは、「有形固定資産の取得による支出」4億45百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は2億9百万円(前期比16百万円増)となりました。支出の主なものは、「配当金の支払額」2億9百万円であります。

 

④生産、受注及び販売の実績

イ.生産の実績

 該当事項はありません。

ロ.受注の実績

 該当事項はありません。

ハ.販売の実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日)

前年同期比(%)

不織布(千円)

9,922,175

97.6

報告セグメント計(千円)

9,922,175

97.6

その他(千円)

203,516

99.6

合計(千円)

10,125,691

97.7

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当連結会計年度における経営成績の分析は、以下のとおりであります。なお、本項に記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度の売上高は、前期比2.3%減の101億25百万円となりました。

不織布事業につきましては、エレクトロニクス分野の販売が前期比横ばいであったものの、メディカル分野およびコスメティック分野の販売が、低調に推移したことにより売上高が減少いたしました。

除染関連分野につきましては、国内電力会社等への営業活動を継続して実施した結果、採用実績があり、今期の販売実績は増加いたしました。

小津(上海)貿易有限公司の販売は減少いたしました。

株式会社ディプロにつきましては、販売が増加いたしました。

日本プラントシーダー株式会社につきましては、販売が前期比横ばいとなりました。

これらの結果、不織布事業の売上高は、前期比2.4%減の99億22百万円となりました。

その他の事業において除菌関連事業を営むエンビロテックジャパン株式会社につきましては、地道な営業活動を展開した結果、売上高は前期比増加いたしました。

不動産賃貸事業につきましては、テナントの退去があり、売上高は前期比減少いたしました。

これらの結果、その他の事業の売上高は、前期比0.4%減の2億3百万円となりました。

(営業利益)

 当連結会計年度の営業利益は、前期比15.1%増の5億28百万円となりました。売上高営業利益率は、5.2%となりました。

 不織布事業につきましては、エレクトロニクス分野の販売が前期比横ばいであったものの、メディカル分野およびコスメティック分野の販売が前期比減少したことにより、営業利益は前期比減少いたしました。

 除染関連分野では、今期の販売実績が増加したため、営業利益は前期比増加いたしました。

 小津(上海)貿易有限公司では、販売が減少したため、営業利益は前期比減少いたしました。

 株式会社ディプロでは、販売が増加したことや販売価格の適正化および原材料費の削減等により、営業利益が前期比増加いたしました。

 日本プラントシーダー株式会社につきましては、販売は前期比横ばいであったものの、販管費が減少したため、営業利益は前期比増加いたしました。

 これらの結果、不織布事業のセグメント利益は、前期比19.3%増の4億88百万円となりました。

 その他の事業において除菌関連事業を営むエンビロテックジャパン株式会社につきましては、売上高が増加したこと等により、営業利益が前期比増加いたしました。

 不動産賃貸事業につきましては、売上高が減少したこと等により、営業利益は前期比減少いたしました。

 これらの結果、その他の事業のセグメント利益は、前期比19.8%減の38百万円となりました。

 

(注)報告されている事業セグメントの会計処理の方法は、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」における記載と概ね同一であり、報告セグメントの利益は、営業利益ベースの数値であります。

 

(経常利益)

 当連結会計年度の経常利益は、前期比19.5%増の7億4百万円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比42.3%増の5億46百万円となりました。

 

②資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品及び製品、原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要は、主に設備投資等によるものであります。運転資金及び設備投資資金は、自己資金及び金融機関からの借入等により調達しております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及び社債を含む有利子負債の残高は25億70百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は74億38百万円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

不織布事業におきましては、連結子会社である日本プラントシーダー株式会社で、食の安全に対する関心の高まりを背景に、国内外の農業の省力化と効率化という課題に取り組んでおります。シーダーテープを使用した農法の精度向上、関連する機械の技術開発を継続して市場の拡大を図っております。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、37百万円であります。