第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

①企業理念

一.私たちは信用を重んじ、社会の発展と豊かな環境づくりに貢献します。

一.私たちは時代のニーズに対応し、常に変貌する企業を目指します。

一.私たちは社員相互の信頼のもと、人材を育成し、希望に満ちた企業を創造します。

一.私たちは常に学ぶ姿勢を持ち、自己と企業の進歩、改善を目指します。

②経営ビジョン(あるべき姿)

業界に先駆けて高付加価値の製品・工法を開発し、持続的成長を可能にする企業グループ。

高度な社会インフラ整備の実現に向け、常に「オンリーワン」技術にチャレンジし、豊かな社会資本・インフラ整備に貢献する専門家集団としての責務を果たす。

将来的な建設DXへの接続とパラダイムシフトに備え、当社が強みとする開発から製造・施工までの長年のナレッジをデータドリブンできる可能性を模索する。

③経営基本方針

ファスニング分野の新しい価値を創造する専門家集団として、「持続的成長」、「新規事業の創出」、「業務の効率化」、「内部体制の強化」により経営基盤を強化し、リーディングカンパニーとしてのあくなき挑戦を実践する。

 当社グループは上記の企業理念、経営ビジョン(あるべき姿)及び経営基本方針のもと、社会インフラの整備・維持を担う企業として“ファスニング分野におけるエンジニアリングの専門家集団”を標榜し、技術力による新しい付加価値を提供することによって、活力ある国土づくりと社会の発展に貢献してまいる所存であります。

(2) 経営環境

 当社は1965年、日本初の「あと施工アンカー」の専門企業として設立され、建築構造物のファスナーに関する専門業者として、また、トンネルを掘削するためのファスナーいわゆるNATMの先駆者として、常に新技術の導入と普及に努めてまいりました。また、専門性の高い工事においても国内外より高い評価を得ており、企業規模も順調に拡大してまいりました。1997年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2015年3月には皆様のおかげをもちまして、会社設立50周年を迎えることもできました。

 しかしながら、社会全体の景気低迷や建設業界における需要の絶対量不足、受注競争の激化などにより、厳しい経営環境が続いております。建設業界におきましては、各種インフラ整備やリニア新幹線などの大型プロジェクト、インフラ補修等の受注環境は一時的には追い風ではありますが相対的には減少傾向にあり、工事の対象が新設から維持・補修にシフトすることも予想されます。また、原材料価格や労務単価の上昇、少子高齢化に伴う人材不足、若年層労働者の確保や働き方改革による労働環境の多様化など業界全体としては多くの課題を抱えている状況にあります。

 このような情勢のもとで当社は、公共事業を中心とした政府建設投資の需要に確実に応えるため、需要先のニーズを的確に捉えた技術提案型営業を推進し、商品の拡販と建設工事の受注に努めております。さらに、収益改善に向け、受注価格の見直しや総コストの低減に努めております。また、固有技術の一層の改良と新技術・新工法の開発を行うとともに、管理面では情報の一元管理と共有化を目的とした社内情報システムの導入やデジタルトランスフォーメーション(DX)など、将来へ向けての取り組みを積極的に行っております。新たな50年、100年を目指して、今一度当社グループの原点である“現場重視”に徹し、ビジネス環境の変化に対応しお客様のニーズや市場動向などの最先端情報をいち早く経営に反映できる体制づくりを行っております。

(3) 経営戦略

 上記のような経営環境の中で当社は、ファスニング分野のリーディングカンパニーとして、安全・安心を最優先とした社会インフラの新設・維持・補修を通じて社会の発展に貢献する企業を目指し2024年6月3日に「ケー・エフ・シーグループ中期経営計画(2025年3月期-2027年3月期)」を策定いたしました。本計画では、時代の要請に応え、起こりうる変化に適応し、持続的に成長可能な企業を目指して、前回までの中期経営計画で築いた土台をより強固にし、次の成長ステージの事業基盤を拡充する期間と位置付け、DX・人的資本経営・成長投資に取り組んでまいります。これらにより、資本効率を向上させ、さらなる組織力の強化と生産性の向上を図りながら、中長期的な企業価値向上に努めてまいります。また、経営課題にしっかりと向き合い安定した経営を目指すことによって、すべてのステークホルダーの皆様から高い信頼と評価を得ることができるよう役職員一同一丸となって本計画の目標達成に向けて取り組んでまいります。

 

 中長期的な経営戦略としましては、低成長が続く時代にあっても、景気動向に左右されない常に安定した収益基盤を確保するために、当社グループが永年培ってまいりました技術力・営業力を結集し、社会のニーズに対応した新商品、新工法の開発に力を入れるとともに、既存事業の活性化や固定費の圧縮に取組んでおります。また、更なる企業競争力、企業体質の強化を目指し、下記の基本戦略について、施策を積極的かつ継続的に推進してまいります。

ⅰ 収益力の向上

 当社は創業以来、付加価値の高い営業活動を行い今日に至っており、ユーザー・施主のニーズに対応した技術提案型営業を強化して他社との優位性を保ち「オンリーワン」企業を目指すとともに、各現場からの意見を取り入れた新しいコンセプトのあと施工アンカー及び特殊ボルト・ナット類や効率的な工法など、新商品・新工法の普及及び既存商品・工法の更なる改良を行い、「持続的な成長」を目指してまいります。

ⅱ 技術・開発力の強化

 建設業界においてはDX、技術者の不足、高齢化による技術の承継問題や環境負荷への配慮等の社会課題がある中で技術・開発力の強化に取り組み、当社の既存事業分野のみならず、新規事業分野においても積極的に研究開発を行っていき、社会課題の解決に向けて、技術部及び開発営業部を中心に「新規事業の創出」にチャレンジしてまいります。

ⅲ 働き方改革

 社内情報システムの導入や就労環境の整備により、職場環境の充実を図ることで、より良い人材の確保や従業員一人ひとりのワークライフバランスの向上を行い、従業員をはじめとしたステークホルダーの満足度を高める働き方改革を行ってまいります。その働き方改革により、従業員の生産性を高め、「業務の効率化」を推進してまいります。

ⅳ 経営基盤の再構築

 現在の厳しい市場環境やめまぐるしく変化する社会情勢に迅速かつ的確に対応するために、経営の効率化とスリムな経営を行い、環境や社会的責任に配慮した組織力の強化、人材の確保・育成・活用に努め、盤石な組織体制づくりを行うとともに、新たな投資戦略を通じて「内部体制の強化」に取り組んでまいります。

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①DXの推進

 「収益力の向上」、「技術・開発力の強化」、「働き方改革」、「経営基盤の再構築」を目指して、DXの推進に取り組んでまいります。確立したビジネスモデルについて、DXの目線で再検証・スリム化に取り組み、当社の強みである開発から製造・施工までできる体制により、長年蓄積してきた知見やノウハウなどのナレッジを情報化していきます。その情報に基づいて顧客にアプローチすること(データドリブン)ができる可能性を模索してまいります。社内情報システムも同様に再検証・再構築に取り組んでまいります。また、従業員のイノベーションマインドを醸成するために、経営層から若手従業員ごとの各階層別教育を行いながら、次世代に備えた組織力の向上や事業環境の変化に対応した柔軟な人材の育成を行ってまいります。

 具体的には、顧客の課題を可視化し、最適解を導き出し、顧客が満足するIT/IoT商品をはじめとした商品の開発に取り組んでまいります。また、社内情報システムの再検証・再構築のため、業務の見直しや新たな情報システムツールの導入により、生産性と業務効率の向上を行ってまいります。さらに、データを活用した人事評価制度の構築やDX人材の育成に努めてまいります。

②人材の活躍と成長

 「働き方改革」、「経営基盤の再構築」を目指して、人材の活躍と成長を推進してまいります。事業環境の変化に柔軟に対応できる組織風土の醸成と人材の育成を図るとともに、従業員一人ひとりが心身ともに健康で活き活きと働き、持てる力を発揮できる職場環境の整備を行ってまいります。

 具体的には、中長期的な視点で人材の採用を行い、女性の管理職登用やシニア人材の活躍機会の提供などを行っていき、ダイバーシティを推進してまいります。DXなどの専門人材育成に向けた研修、各階層別教育や協力企業も含めたコンプライアンス教育などにも取り組み、多様な人材の確保と育成を行ってまいります。また、安全衛生や健康経営への取り組みや人事評価制度の見直し、男性の育児休業制度の取得促進などの取り組みを通じて、働きがい・ワークライフバランスの向上を行ってまいります。

 

③投資戦略

 「収益力の向上」、「技術・開発力の強化」、「働き方改革」、「経営基盤の再構築」を目指して、投資戦略を実行してまいります。さらなる成長を目指して、安定した収益基盤の拡大と適切な事業投資による資本効率の向上を図り、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。

 具体的には、産官学や異業種との共同研究などの連携の強化やSDGsに関連した商品の開発の強化などの研究・技術開発、建設DXや省力化などの今後成長が予想される領域への投資などの成長分野への投資を行ってまいります。また、人的資本経営の強化や働き方改革への取り組みなどの人材投資、物流面での生産性向上や技術研究所の設備、機能増強などの設備投資を行ってまいります。

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 利益配分の基本方針に従い、安定的な配当を継続するとともに、上記中期経営計画に従い、企業価値の増大による利益還元及び当社グループとして持続的成長の実現を行うため、自己資本を基盤とした財務体質の強化が必要と認識しており、2022年3月期より自己資本当期純利益率(ROE)15%以上及び配当性向30%以上を目標とする経営指標としております。2025年3月期については、新たな中期経営計画(2025年3月期-2027年3月期)の1年目にあたり、売上高260億円、経常利益14億円及び配当性向40%以上を目標とする経営指標としております。毎期上記目標以上を達成できるよう企業努力を行ってまいります。

(6) 対処すべき課題

 今後の見通しにつきましては、世界的な物価上昇の影響を受けながらも、コロナ禍からの社会経済活動の再開で個人消費や設備投資、インバウンド消費などが活発化するものと見込まれますが、引き続き金融情勢、地政学リスクに注視が必要な状況にあります。

 一方、建設業界においては、公共建設投資は堅調なものの、自然災害等による工事発注の延期・進捗遅れなどの懸念のほか、建設資材価格や運搬費の高騰、建設技術者・技能労働者の慢性的不足や建設業におけるデジタルトランスフォーメーションの進展など、数多くの課題を抱えており、事業環境をめぐる見通しは今なお不透明な状況が続いております。

 このような状況のなか、当社は、建設DXの推進や多様な人材の確保と育成、働きがいやワークライフバランスなどの時代の要請に応えながら、次の成長ステージへの事業基盤を創出するとともに、環境・社会と共存できるサステナブルな事業体制を構築することに注力し、中長期的な視点で持続的に成長する企業を目指してまいります。

 また、常にオンリーワン技術にチャレンジする当社の精神を礎とし、豊かな社会資本・インフラ整備に貢献する「業界のリーディングカンパニー」としての企業体制を確立してまいります。

 これらの着実な積み重ねにより、いかなる市場環境においてもステークホルダーの皆様のご期待に応えることができる企業力を築いてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社グループは、企業理念の一つである「私たちは信用を重んじ、社会の発展と豊かな環境づくりに貢献します。」に基づき、これまで培ってきたファスニング技術と道路やトンネルなどの維持補修技術を活用し、事業を通じて環境・社会・経済の課題の解決を図る取り組みを行い、持続的成長と企業価値の向上を実現するとともに、SDGsへの貢献を目指してまいります。

 

(1) サステナビリティ

① ガバナンス

 当社グループは、トンネルや道路等のインフラ整備及び二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの削減など、環境・経済に関する事項、並びに人材の確保や育成など、社会に関する事項につきましては、経営会議において、リスク及び機会を認識しております。また、取引先との不適切な関係や法令をはじめとした社会的ルールの順守など、社会に関する事項につきましては、コンプライアンス委員会において、リスクを認識しております。経営会議及びコンプライアンス委員会で認識したリスク及び機会については、取締役会へ報告を行い、リスク及び機会を管理しております。

 なお、経営会議につきましては、社外取締役を含む取締役、執行役員及び各管理部門の部門長が出席する会議であります。

② リスク管理

 当社グループは、取締役会に報告されたサステナビリティに関するリスク及び機会について、議論を行い、担当の部門へ指示を行っております。指示された部門において、サステナビリティに関するリスク及び機会について、詳細な検討を行い、実行に移しております。検討や実行の結果につきましては、担当の取締役を通じて、取締役会へ進捗状況の報告を行うことにより、サステナビリティに関するリスク及び機会について、管理を行っております。

 

(2) 人的資本

① 戦略

 当社グループでは、事業運営上、サービスの品質及び効率の観点から、多くの質の高い人材を長期的に確保していくことが重要であります。少子高齢化による人手不足等により、これらの必要な人材が確保できない場合には、サービスの品質の低下、業務効率の悪化により当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、企業戦略を支えるのは人材であると認識しており、新卒採用活動の強化のほか、中途採用やカムバック採用等、採用制度の改定を行っており、安定的な人材確保にグループ全体で努めてまいります。また、中長期的な視点で人材を確保するために、ワーク・ライフ・バランス及び人材の多様性の実現を図り、働きやすい職場づくりに努めてまいります。

② 指標及び目標

 当社グループは、従業員ひとりひとりが心身ともに健康で活き活きと働くことができ、その能力を最大限に発揮できるよう支援することで組織の活性化を図ってまいります。

 当社グループでは、上記「(2) 人的資本 ①戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の目標を用いております。なお、有給休暇の消化率については、前連結会計年度については2026年3月までに65%としておりましたが、2023年3月時点で達成したことから、目標を70%に引き上げ、目標達成の時期を1年延長しております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

新規雇用者の人数

毎期5以上

39

有給休暇の消化率(注)

2027年3月まで70.0

69.0

女性労働者の割合(注)

2027年3月まで20.0

16.7

(注)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

① 建設市場の動向を中心とした市場環境について

 当社グループの事業内容は、「あと施工アンカー」や「ロックボルト」などの建設資材の販売や道路、トンネルなどの設備工事を行っており、当然ながら公共投資の削減などの建設業界の動向や設備投資の動向によっては受注が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、中期経営計画で策定した各種戦略・重点施策を着実に推進し、確固たる収益基盤の柱を複数構築することを含め、事業のポートフォリオの強化を図っております。

② 事業内容の見直し

 当社グループでは安定した収益を確保するために付加価値の高い商品、工法の開発や市場投入及びコスト削減施策を実行することにより収益力の向上に努めております。「収益力の向上」を目指し、適宜既存事業の見直しも行っており、これにともなう損失が発生する可能性があります。

③ 法的規制について

 当社グループの事業及び主な取引先は建設業界に属しており、「建設業法」「建築基準法」等により法的規制を受けております。当社グループは販売・施工にあたり、建設業許認可及び登録をしており、これらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法令の遵守に努め、現状において当該許認可等が取り消しとなる事由は発生しておりません。しかし、法令違反等によりその許認可等が取り消された場合には、当社グループの運営に支障をきたし、財政状態及び経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
 また、これらの法律の改廃や新たな法的制度、基準が設けられる場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

④ 原材料等の市況変動及び労務費の高騰の影響について

 当社グループでは、原材料として主に鉄鋼、石油製品を使用しており、これらの原材料価格の高騰などにより当社グループの仕入調達価格が上昇する場合があります。その際に状況によっては価格上昇分を販売価格に転嫁できない場合があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、労務費につきましては着工時には手配をほぼ完了することとしておりますが、受注時から着工時までに時間を要することもあり、また、何らかの要因により工期が延長されることもあります。その間に著しい高騰があった時には、受注時点で予測された利益の確保が困難となる場合があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、国内外の複数の調達先や協力業者との取引関係を強化することで、常に最適かつ安定的な調達ができる体制を構築しております。

⑤ 製品の品質管理について

 当社グループでは、製品の品質を重視しており、主力事業所においてISO 9001の認証を取得する等、品質管理体制には万全を期しております。しかしながら、当社の予測を超えた事象により製品に欠陥が生じた場合、点検や回収等に伴う費用が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、独自の品質基準を設け商品の品質向上に取り組むとともに、関連法規の遵守に努めております。また、商品の不良等による万が一の重大なトラブルの発生に備え、賠償責任保険へ加入しリスクの低減を図っております。

⑥ 施工物件の瑕疵について

 当社グループでは、「あと施工アンカー」類の施工や道路、トンネルなどの設備工事を日本全国で行っており、工事の際には十分な現地調査、基礎設計、施工方法等の事前検討を行っておりますが、工事は予期せぬ障害物が現れることもあり、予見できない瑕疵によって施工品質の悪化や施工期間の延長が生じる可能性があります。瑕疵に伴う損害賠償請求等が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 労災事故災害について

 当社グループでは、全国で年間数百件もの工事を行っており、その作業現場は重機に囲まれた屋外作業が中心となっているため、他の産業に比べ重大な労災事故が発生する危険性が高いものと認識しております。仮に死亡事故等の重大災害が発生した場合は、人的損失はもちろんのこと、それに伴う社会的信用の失墜、補償等を含む災害対策費用、工期の遅れによる収益の悪化等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループとしては、専門部署を設置し、現場の安全教育の徹底や定期的なパトロールの実施等により事故の発生防止に全力を挙げております。また、事故が発生した場合の金銭的な損失に備え、各種損害保険に加入しております。

⑧ 売上の季節変動による影響について

 当社グループの得意先は建設業界となるため受注形態の特性上季節的な変動があり、とりわけ、公共事業関連の工事については、予算の執行上、年度末に向けて完工物件が多くなる傾向があるため、上期より下期に売上が計上される傾向にあり、場合によっては翌期にずれ込む可能性があるため、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

⑨ 取引先の信用リスクについて

 当社グループの与信管理は販売顧客の業容・財政状態に応じて与信枠の設定を行うとともに、一定期間ごとに継続して信用状態の把握を行い、不良債権の発生を防止しております。当社グループの主たる得意先はゼネコン、サブコン、商社及び代理店等が中心でありますが、景気動向等の要因により顧客の信用リスクが顕在化し倒産する懸念があります。また、建設業においては、工事完了まで長期間を要し、かつ取引先の取引額も大きく、建設等工事目的物引渡し時に多額の工事代金が支払われる条件で契約が締結されます。このため工事終了前に取引先が信用不安に陥った場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、徹底した与信管理を行うために複数の調査会社で調査するとともに、リスクヘッジの目的で、必要に応じ信用保証機関を利用しております。

⑩ 価格競争

 当社グループが販売及び施工している市場において近年競合他社との価格競争の激化が続き、適正価格の維持が困難になった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑪ 在庫のリスク

 当社グループでは、マーケットの急激な環境変化等により、当社グループの想定を上回る需要の変動があった場合、仕入商品が不稼働在庫となり、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、仕入先との連携強化による生産リードタイムの短縮、受注予測システムによる受注精度の向上等の対策を推進しております。

⑫ 物流コストの上昇リスク

 当社グループでは、配送パートナーの協力のもと最適な配送網を構築しております。しかしながら、原油価格の高騰による物流コストの上昇や配送ドライバーの人手不足問題等により、お客様からのご注文量の増加に対応した配送網の構築が間に合わない場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。

⑬ 特許権等について

 当社グループでは、多数の特許権等知的財産を有しており権利保護に努めているとともに第三者の知的財産侵害にも細心の注意を払っておりますが、仮に国内外において当社が把握できない範囲での第三者の知的財産を侵害している可能性もあり損害賠償等を請求された場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑭ 未知の感染症の拡大や大規模な自然災害等の異常事態リスク

 当社グループでは、複数の事業拠点、物流施設等を使用し事業運営をしております。新型コロナウイルス感染症拡大のようなパンデミックや巨大地震などの大規模な自然災害等の異常事態が当社の想定を超える規模で発生し、事業運営が困難になった場合、当社グループの財政状態や経営成績等に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、事業復旧の早期化・省力化を図るため、事業運営機能やオフィスの分散化、物流拠点の多拠点化を実施しております。また、有事の際には拠点別管理方針の発信により、テレワークや時差出勤等勤務体制の変更、従業員の行動基準の策定、異常事態発生時の対応マニュアル発動等、BCPの策定や事業リスクの最小化に向けた施策を推進します。

⑮ 減損会計の影響

 当社グループが所有する固定資産のうち、来期以降将来キャッシュ・フローが充分に見込めない資産又は資産グループが新たに存在すると判定された場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

⑯ 工事契約の収益認識について

 当社グループが行う工事契約については、一定の期間にわたり充足される履行義務と判断し、収益を計上しております。具体的には、工事出来高に対応して発生した見積工事原価に対する割合により算出した進捗率により完成工事高を計上しております。工事完了までに発生すると見込まれる総原価の見積りおよび代金の追加請求のための追加工事契約が合意に至る可能性の見積りについては、不確実性が高いため、実際の結果が、これらの見積りと異なる場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、利益管理プロセスとして工事契約ごとの収支管理や工期管理を行っており、工事原価総額の見積りにおいても内部統制を整備・運用しております。

⑰ 人材の確保におけるリスク

 当社グループでは、事業運営上、サービスの品質及び効率の観点から、多くの質の高い人材を長期的に確保していくことが重要であります。少子高齢化による人手不足等によりこれらの必要な人材が確保できない場合には、サービスの品質の低下、業務効率の悪化により当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、企業戦略を支えるのは人材であると認識しており、新卒採用活動の強化のほか、中途採用やカムバック採用等、採用制度の改定を行っており、安定的な人材確保にグループ全体で努めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍の終息傾向により経済活動が正常化に向かう中、企業の業況判断も一部において改善するなど、一定の回復傾向が見られました。

 しかしながら、依然として原材料価格の上昇や電子部品の供給不足、国際情勢に端を発するエネルギーコストの上昇などの諸要因が企業活動や消費動向に未だ不透明な影を落としており、今後も予断を許さない状況が続いております。

 当社グループの関連する建設業界においては、建設資材価格の上昇傾向が継続する中、慢性的な人員不足の問題に有効な解決策を見出すことが難しく、依然として厳しい事業環境が続いております。

 このような状況のもと当社グループは、当社の有する豊富な製品・工法群をベースとした最適なソリューションを提案し、需要先のニーズに応えることで、公共事業を中心とした政府建設投資を中心に商品の拡販と建設工事の受注に努めてまいりました。

 この結果、当連結会計年度の売上高は、250億70百万円(前年同期比10.8%増)で、その内訳は、商品売上高が104億52百万円(前年同期比8.9%増)、完成工事高は146億17百万円(前年同期比12.2%増)となりました。

 セグメント別の売上高は以下のとおりであります。なお、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。

〔ファスナー事業〕

 ファスナー事業部門においては、当社の主力製品である、あと施工アンカー類の販売額は、水処理施設等の改修工事に関連して順調に推移したものの、道路トンネル設備の落下防止対策製品の需要が一巡したことから、全体として若干の減少傾向となりました。一方で、上下水道施設をはじめとした耐震補強工事の増加により、当社独自の工法である「せん断補強RMA工法」が順調に推移した結果、売上高は77億31百万円(前年同期比9.2%増)となりました。

〔土木資材事業〕

 土木資材事業部門においては、当社の独自技術を活用したトンネル掘削補助工法の資材販売が、東日本を中心に順調に推移しました。また、技術提案による特殊ロックボルト及び当社独自技術を活かした防水シートの販売、更にトンネル補修工事等の受注も寄与し、売上高は81億96百万円(前年同期比20.9%増)となりました。

〔建設事業〕

 建設事業部門においては、当社の得意とするトンネル補修・補強工事や橋梁補修工事で大型物件を5件、環境対策工事で1件受注したほか、火災によって甚大な損傷を受けた尼子山トンネルの応急復旧工事をはじめとする大型元請物件が3件竣工いたしました。また、前連結会計年度に引き続き北陸自動車道の設備工事に付随した「フェイルセーフシステム(取付物落下防止対策商品)」の販売も寄与した結果、売上高は101億30百万円(前年同期比4.1%増)となりました。

 財政状態につきましては、当連結会計年度末の総資産は296億18百万円と前連結会計年度末に比べ、34億27百万円増加しました。これは主として完成工事未収入金が23億93百万円増加したためであります。負債は90億2百万円と前連結会計年度末に比べ23億67百万円増加しました。これは主として、電子記録債務の増加によるものであります。なお、純資産は206億16百万円となり、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ5.1ポイント減少しております。

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ6億30百万円減少し、53億59百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動における資金は、税金等調整前当期純利益17億10百万円(前年同期比12.0%増)を計上し、仕入債務は20億30百万円増加しましたが、売上債権が32億29百万円増加したことなどにより、3百万円の収入(前年同期比99.9%減)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動における資金は、有価証券及び投資有価証券の取得による支出などにより、2億63百万円の支出(前年同期は9億58百万円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動における資金は、長期借入れによる収入があったものの、長期借入金の返済による支出及び配当金の支払などにより、3億71百万円の支出(前年同期は5億20百万円の支出)となりました。

 

③受注工事高、完成工事高、繰越工事高、商品仕入及び販売の状況

イ.受注工事高、完成工事高及び繰越工事高

項目

工事別

期首繰越工事高

(千円)

期中受注工事高

(千円)

(千円)

期中完成工事高

(千円)

期末繰越工事高

手持工事高

(千円)

前連結会計年度

(自2022年4月1日

至2023年3月31日)

環境工事

1,225,738

142,257

1,367,995

824,342

543,653

リニューアル工事

2,156,140

5,683,652

7,839,792

4,210,396

3,629,395

トンネル及びその他の設備関連工事

2,230,599

1,654,847

3,885,447

2,717,554

1,167,892

耐震関連工事

2,499,323

4,982,410

7,481,734

4,991,151

2,490,582

その他の工事

36,232

270,347

306,579

287,987

18,591

8,148,034

12,733,515

20,881,549

13,031,433

7,850,115

当連結会計年度

(自2023年4月1日

至2024年3月31日)

環境工事

543,653

1,345,365

1,889,018

1,536,123

352,894

リニューアル工事

3,629,395

5,598,393

9,227,789

5,020,711

4,207,078

トンネル及びその他の設備関連工事

1,167,892

2,594,197

3,762,089

1,991,077

1,771,012

耐震関連工事

2,490,582

6,255,680

8,746,263

5,613,352

3,132,910

その他の工事

18,591

533,599

552,190

456,593

95,597

7,850,115

16,327,236

24,177,351

14,617,859

9,559,492

(注)1.前期以前に受注した工事で、契約の更新により請負金額に変更があるものにつきましては、期中受注工事高にその増減額を含んでおります。従って、期中完成工事高にもかかる増減額が含まれております。

 

ロ.受注工事高及び完成工事高について

 当社グループは、建設市場の状況を反映して工事の受注工事高及び完成工事高が平均化しておらず、最近3年間についてみても上半期は次のように季節的に変動しております。

期別

受注工事高

完成工事高

1年通期(A)

(千円)

上半期(B)

(千円)

(B)/(A)

(%)

1年通期(C)

(千円)

上半期(D)

(千円)

(D)/(C)

(%)

第58期

13,993,979

6,604,293

47.2

16,079,900

7,555,897

47.0

第59期

12,733,515

5,935,261

46.6

13,031,433

5,970,599

45.8

第60期

16,327,236

7,665,494

46.9

14,617,859

5,831,510

39.9

 

ハ.完成工事高

期別

区分

官公庁

民間

合計

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

環境工事(千円)

759,674

64,668

824,342

リニューアル工事(千円)

4,022,811

187,585

4,210,396

トンネル及びその他の設備関連工事(千円)

2,607,214

110,339

2,717,554

耐震関連工事(千円)

2,819,952

2,171,199

4,991,151

その他の工事(千円)

62,050

225,937

287,987

合計(千円)

10,271,704

2,759,729

13,031,433

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

環境工事(千円)

1,523,666

12,457

1,536,123

リニューアル工事(千円)

4,880,909

139,801

5,020,711

トンネル及びその他の設備関連工事(千円)

1,856,849

134,228

1,991,077

耐震関連工事(千円)

3,014,731

2,598,621

5,613,352

その他の工事(千円)

225,734

230,859

456,593

合計(千円)

11,501,891

3,115,967

14,617,859

(注)1.当社グループが総合建設会社等民間企業を通じて受注した官公庁発注工事につきましては、官公庁欄に計上しております。

2.完成工事高のうち主なものは、次のとおりであります。

前連結会計年度の完成工事のうち請負工事1億円以上の主な工事

工事名

発注社名

 首都圏中央連絡自動車道久喜遮音壁(外回り)工事

東日本高速道路株式会社

 福知山高速道路事務所管内南部地区橋梁補修工事

西日本高速道路株式会社

 中国自動車道(特定更新等)仏坂トンネル他2TN覆工補強工事

西日本高速道路株式会社

 令和3年度中国自動車道三次高速道路事務所管内構造物補修工事

西日本高速道路株式会社

 北陸自動車道敦賀トンネル補強工事のうち背面空洞注入工

中日本高速道路株式会社

 姫路高速道路事務所管内トンネル覆工補修工事(令和3年度)

西日本高速道路株式会社

 高松自動車道国分寺高架橋他5橋耐震補強工事

西日本高速道路株式会社

 関越自動車道山本山トンネル照明設備更新工事

東日本高速道路株式会社

 中央自動車道土岐IC~小牧東IC間コンクリート構造物補修工事

中日本高速道路株式会社

 北陸自動車道山王トンネル照明設備更新工事

東日本高速道路株式会社

 

当連結会計年度の完成工事のうち請負工事1億円以上の主な工事

工事名

発注社名

 R4中国道千代田高速道路事務所管内構造物補修工事

西日本高速道路株式会社

 中央自動車道土岐IC~小牧東IC間コンクリート構造物補修工事

中日本高速道路株式会社

 首都圏中央連絡自動車道幸手西遮音壁工事

東日本高速道路株式会社

 一般国道122号蓮田岩槻バイパス並木工区道路改良工事

さいたま市

 中国道山口高速道路事務所管内(西地区)構造物補修工事

西日本高速道路株式会社

 山陽自動車道尼子山トンネル覆工背面応急復旧工事

西日本高速道路株式会社

 北陸自動車道山王トンネル照明設備更新工事

東日本高速道路株式会社

 常磐自動車道R5仙台東管内構造物補修工事

東日本高速道路株式会社

 長崎497号松浦1号トンネル新設工事

長崎県

 高松自動車道国分寺高架橋他5橋耐震補強工事

西日本高速道路株式会社

 

ニ.手持工事高

(2024年3月31日現在)

 

区分

官公庁

民間

合計

環境工事(千円)

352,594

300

352,894

リニューアル工事(千円)

4,173,765

33,312

4,207,078

トンネル及びその他の設備関連工事(千円)

1,755,510

15,501

1,771,012

耐震関連工事(千円)

1,198,414

1,934,495

3,132,910

その他の工事(千円)

62,569

33,028

95,597

合計(千円)

7,542,855

2,016,637

9,559,492

(注)1.当社グループが総合建設会社等民間企業を通じて受注した官公庁発注工事につきましては、官公庁欄に計上しております。

 

2.手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。

手持工事(2024年3月31日現在)のうち請負金額1億円以上の主な工事

工事名

発注社名

完成予定年月

長野自動車道(特定更新等)岡谷トンネル覆工補強工事

中日本高速道路株式会社

2027年5月

中量軌道南港ポートタウン線耐震補強工事(その2)(ア)工事

大阪市高速電気軌道株式会社

2026年3月

仙台東部道路館腰橋補修工事

東日本高速道路株式会社

2025年11月

R4中国道千代田高速道路事務所管内構造物補修工事

西日本高速道路株式会社

2025年6月

横浜新道京浜管理事務所管内トンネル補修工事

東日本高速道路株式会社

2025年12月

山形自動車道笹谷トンネル照明設備更新工事

東日本高速道路株式会社

2025年12月

中国道山口高速道路事務所管内(西地区)構造物補修工事

西日本高速道路株式会社

2024年11月

首都圏中央連絡自動車道幸手西遮音壁工事

東日本高速道路株式会社

2024年6月

常磐自動車道R5仙台東管内構造物補修工事

東日本高速道路株式会社

2025年1月

東京外環自動車道西大和トンネル照明設備更新工事

東日本高速道路株式会社

2025年12月

 

ホ.商品仕入実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

ファスナー(千円)

1,657,122

1,620,358

土木資材(千円)

4,011,167

4,918,090

建設(千円)

1,637,831

1,330,343

合計(千円)

7,306,121

7,868,791

(注) 金額は、仕入価格で表示しております。

 

ヘ.売上実績

セグメントの名称

区分

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

比率

(%)

金額(千円)

比率

(%)

ファスナー

商品売上高

2,471,446

 

 

2,389,626

 

 

完成工事高

4,606,122

7,077,568

31.3

5,339,239

7,728,865

30.8

土木資材

商品売上高

6,273,069

 

 

7,428,110

 

 

完成工事高

506,243

6,779,312

29.9

768,789

8,196,899

32.7

建設

商品売上高

851,372

 

 

634,472

 

 

完成工事高

7,919,068

8,770,440

38.8

8,509,830

9,144,302

36.5

合計

商品売上高

9,595,887

 

 

10,452,208

 

 

完成工事高

13,031,433

22,627,321

100.0

14,617,859

25,070,067

100.0

(注)1.販売数量につきましては、販売品目が多岐にわたり表示が困難なため、記載を省略しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.当連結会計年度の経営成績について

① 売上高、受注工事高の状況

 当連結会計年度の売上高は、土木資材事業におけるトンネル掘削補助工法資材の商品売上高やファスナー事業の上下水道をはじめとした耐震補強工事の完成工事高の増加があったことなどにより、250億70百万円(前年同期比10.8%増)で、その内訳は、商品売上高が104億52百万円(前年同期比8.9%増)、完成工事高は146億17百万円(前年同期比12.2%増)となりました。また、当連結会計年度の受注工事高は163億27百万円(前年同期比28.2%増)となり、当連結会計年度末の手持工事高は95億59百万円(前年同期比21.8%増)となりました。

② 営業利益、経常利益の状況

 収益面につきましては、工事現場従事者への就労環境の整備に係る人件費の増加があったものの、売上高の増加や商品販売における利益率の向上などにより、営業利益16億21百万円(前年同期比26.9%増)、経常利益17億20百万円(前年同期比23.3%増)となりました。

③ 親会社株主に帰属する当期純利益の状況

 法人税、住民税及び事業税を計上した結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は11億77百万円(前年同期比11.9%増)となりました。

ロ.当連結会計年度の財政状態について

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて34億27百万円増加した結果、296億18百万円(前連結会計年度比13.1%増)となりました。

① 資産の部

 流動資産は、196億71百万円となり、前連結会計年度末に比べ33億37百万円(前連結会計年度比20.4%増)の増加となりました。これは主に、有価証券の償還による減少があったものの、工事の完了後に代金が支払われる元請工事が順調に進捗したことによる完成工事未収入金の増加や当連結会計年度末日が休日だったため電子記録債務等の手形債務が決済されなかったことによる現金及び預金の増加があったことなどによるものであります。固定資産は、99億47百万円となり、前連結会計年度末に比べ89百万円(前連結会計年度比0.9%増)の増加となりました。これは主に、退職給付に係る資産の増加によるものであります。

② 負債の部

 負債につきましては、前連結会計年度末に比べて23億67百万円増加した結果、90億2百万円(前連結会計年度比35.7%増)となりました。

 流動負債は、86億75百万円となり、前連結会計年度末に比べ22億93百万円(前連結会計年度比35.9%増)の増加となりました。これは主に、当連結会計年度末日が休日だったため電子記録債務等の手形債務が決済されなかったことによる増加及び工事が順調に進捗したことによる工事未払金の増加によるものであります。固定負債は、3億26百万円となり、前連結会計年度末に比べ74百万円(前連結会計年度比29.3%増)の増加となりました。これは主に、投資有価証券の時価評価に伴う繰延税金負債の増加によるものであります。

③ 純資産の部

 純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ10億59百万円(前連結会計年度比5.4%増)増加し、206億16百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加によるものであります。

ハ.セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。

〔ファスナー事業〕

 ファスナー事業の売上高は77億31百万円(前年同期比9.2%増)となりました。商品販売につきましては、処理施設等の改修工事や道路トンネル設備の落下物防止対策製品など順調に推移したものの、鋲螺・制作金物・定着材の売上高が減少したことから、商品売上高は23億91百万円(前年同期比3.2%減)となりました。また、工事につきましては、コロナ禍の終息傾向により、前期以前に発注が滞っていた物件が順次発注され、上下水道施設に関わる耐震補強工事や土木橋梁耐震工事の受注、進捗が順調に推移し、完成工事高は53億39百万円(前年同期比15.9%増)となりました。利益面につきましては資材・人件費の上昇による原価の増加があったものの、収益性の高い耐震関連工事が増加したことより経常利益は7億21百万円(前年同期比22.4%増)となりました。

 

〔土木資材事業〕

 土木資材事業の売上高は、81億96百万円(前年同期比20.9%増)となりました。商品販売につきましては、トンネル掘削補助工法資材や性能向上を目的に開発した特殊ロックボルトの販売が東日本地区において順調に推移し、商品売上高は74億28百万円(前年同期比18.4%増)となりました。また、ロックボルトの販売で得たノウハウを活かし、主に既設トンネルのリニューアル工事を請け負っております。それらの工事につきましては、主に西日本地区において工事の受注が増加したことなどにより、完成工事高は7億68百万円(前年同期比51.9%増)となりました。利益面につきましては、鋼材等の原材料価格は引き続き高止まりでの推移や工事労務費や物流における人件費の高騰があったものの、運搬発送費等が比較的かからない物流倉庫近県エリアへの納入が多かったことに加え、販売価格へ価格転嫁を推し進めた結果、経常利益は4億90百万円(前年同期比651.8%増)となりました。

〔建設事業〕

 建設事業の売上高は101億30百万円(前年同期比4.1%増)となりました。商品販売につきましては、引き続き安全対策への需要が継続しており、「フェイルセーフシステム(取付物落下防止対策商品)」の販売が順調に推移しましたが、商品売上高は16億12百万円(前年同期比10.8%減)となりました。リニューアル工事において当期の受注が堅調に推移し、大型元請物件も順調に竣工したことに加えて、トンネル火災復旧の緊急工事の受注及び当連結会計年度中に完成したことなどにより、完成工事高は85億17百万円(前年同期比7.5%増)となりました。利益面につきましては、売上高は増加したものの価格競争や人件費や原材料等のコストの増加などにより、経常利益は5億9百万円(前年同期比31.3%減)となりました。

ニ.経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりであります。

ホ.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成状況について

 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。

 当連結会計年度における自己資本当期純利益率(ROE)は5.9%(前年同期比0.5ポイント増加)となり、配当性向は37.5%(前年同期比2.5ポイント増加)となり、配当性向については目標達成となりましたが、ROEについては目標未達成となりました。当該目標を達成できるよう企業努力を行ってまいります。

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

イ.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容について

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローは3百万円の収入(前年同期比99.9%減)であり、投資活動によるキャッシュ・フローは2億63百万円の支出(前年同期は9億58百万円の支出)、財務活動によるキャッシュ・フローは3億71百万円の支出(前年同期は5億20百万円の支出)であります。フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は、2億60百万円の支出(前年同期は27億92百万円の収入)であります。また、当社グループは、複数年にわたる工事も受注していることから、単年でのキャッシュ・フローに加え、3年間累計のキャッシュ・フローも指標として考えております。3年間累計のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローは47億98百万円の収入であり、投資活動によるキャッシュ・フローは22億42百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは15億86百万円の支出であります。また、3年間累計のフリー・キャッシュ・フローは25億55百万円の収入であります。

ロ.資本の財源及び資金の流動性に係る情報について

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、持続的成長に向けた投資の継続と株主還元のためのフリー・キャッシュ・フローを創出することを基本としております。その創出されたフリー・キャッシュ・フローを財源として、成長投資や株主還元を行ってまいります。成長投資として、既存事業での投資と新規事業創出のための研究開発投資を行い、将来の成長を見据えた人材の確保・育成・活用のための投資を行ってまいります。また、株主還元として、盤石な財務体質を維持しつつ、安定的かつ継続的に配当を行ってまいります。

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、未成工事支出金、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、有形固定資産及び無形固定資産の取得等によるものであります。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債である借入金の残高は4億90百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は53億59百万円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、会計基準の範囲内で一定の見積りが行われている部分があり、資産・負債の数値、並びに報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える様々な要因・仮定に対し、継続して可能な限り正確な見積りと適正な評価を行っております。

 工事契約に該当するものについては、一定の期間にわたり充足される履行義務と判断しております。履行義務の充足に係る進捗率の見積りにあたっては、工事原価総額に対する実際発生原価の割合を合理的に見積る必要があります。工事契約に係る収益の計上の基礎となる工事原価総額は、契約ごとの実行予算を使用して見積りを行っておりますが、工事契約等の実行予算の策定にあたっては、工事等の完成のために必要となる作業内容及び工数の見積りに不確実性を伴うため、当社グループの業績を変動させる可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発は技術部を中心に行っておりますが、各事業部門、管理部門、子会社からの情報を基に各部門の担当者も研究開発活動に参加し、協力してスピーディに技術開発・改良を行い、社会的ニーズに応えることをモットーとしております。

現在の研究開発は、ファスナー事業、土木資材事業、建設事業の3事業分野における新製品開発のみならず、新規分野も含め、材料と施工は常に一体であるとの基本理念の下で、効率的な施工方法の研究、関連する施工機器開発、点検診断機器開発にまで及んでおります。

建設投資の軸足が新設からメンテナンスへと移行しつつある現実を踏まえ、当社グループは保有技術をベースにした、将来の核となるべき新技術・新工法の開発や知的財産の有効活用等も視野に入れ、全社を挙げた総合的な取り組みを行っております。特に、技術革新の必要性がより高まっている現状に対しては、従来から推進してまいりましたオープンイノベーションの活用が極めて重要との認識の下、優れた技術を保有する異業種企業、大学、研究機関、発注機関との技術交流・関係強化を図りつつ、製品、施工技術、点検及びモニタリング技術と建設分野のDX推進に役立つデジタル技術を組み合わせた技術開発を推進しております。

なお、当連結会計年度末におけるグループ全体の研究開発費は、141,631千円であります。

当連結会計年度末における主要な研究開発課題、研究成果及び研究開発費は、次のとおりであります。

 

(1)ファスナー事業

あと施工アンカーは、当社の基盤となる重要技術であり、アンカー単体はもとより、付属する部材や関連機材についても保有技術を応用した研究開発を行っております。その中でもコンクリート構造物せん断補強「RMA」に注力し「適用範囲を拡大し、かつ施工性や有効率を高めた」建設技術審査証明の更新取得を目指し、研究開発を継続しております。これまでに積み重ねてきた建設技術審査証明範囲の拡大によって着実に適用市場が広がり、競争力の高さも相まって、引き続き業績に貢献しております。公益社団法人日本水道協会(JWWA)が定めた新規格に適合した上水道施設向けのせん断補強用「RMA-AFカプセル」を幅広く営業展開しております。本カプセルは上水道施設や水門・堰などの河川構造物、農水事業関連施設等の今後も需要が見込めるせん断補強に最適な製品であります。

道路・鉄道トンネルの維持管理において、市場から求められている各種の安全対策(緩み止め機能、フェイルセーフ機能等)製品の開発・改良、施工性・確実性・長期耐久性に着目した研究開発とともに、アンカー点検診断機器開発や施工上のミスを未然に防ぐプリベンション機能付き製品の研究開発を継続しております。

アンカー点検診断機器開発においては、開発した機器による点検診断業務を鉄道事業者から継続して受注することができました。建設業界以外のお客様からも様々なお問い合わせをいただいており、ご要望にお応えするべく改良改善を進めてまいります。

高速道路の耐震強化策の一環として行われている落橋防止装置の設置に使用されている「SRインジェクションカプセル」は、2,000mlタイプが一般化、既存顧客からの満足度も高く継続してご使用頂いていますが、昨今の材料コスト高騰に対応し、さらなる競争力の向上を目指してカートリッジの改良を進めております。また、市場においてあと注入方式アンカーの採用事例が増加傾向にあることから、同方式も「SRインジェクションカプセル」の標準施工方式に加えるべく性能確認試験を進めており、61期上市を目指しております。

コンクリート構造物の小片はく落対策製品「ガイナメッシュ」の固定用アンカーとして上市した「ホーク・ガイナフィックス」のあと注入タイプを新たに開発し、61期の上市を進めてまいります。ガイナメッシュは道路、鉄道など様々なコンクリート構造物に使用できるため、定着するアンカーについても様々な基準・規格に合致する製品の開発を進めてまいります。

今後もあと施工アンカーに対する市場の声をいち早く製品に反映することに傾注し、順次新製品を上市してまいります。

(ファスナー事業研究開発費 36,381千円)

 

(2)土木資材事業

山岳トンネル新設工事におけるロックボルト、各種補助工法、防水シートの改良開発をプロジェクトごとの対応を中心に継続しております。これらは、施工現場のニーズに即応し、売上に直結した研究開発活動となります。

ロックボルト、補助工法の施工は、山岳トンネル新設工事において掘削断面である切羽に近い場所での作業となり危険度が高く、また作業員の高齢化や人材不足などの理由により、作業の自動化や省力化が求められております。60期は、注入式フォアポーリングの施工を簡略化し施工品質を向上させる「IPPATSU管」を上市しました。この製品を使うことで口元のコーキング作業が簡略化され、掘削直後の切羽作業の安全性向上にも寄与できます。

ロックボルト打設の自動化では、59期に開発したロックボルト連結時にドリルジャンボで簡単に接続できるシステムについて、ロックボルトと特殊ジョイントスリーブ双方の改良を行い、施工しやすくなりました。モルタル充填の自動化では、機械メーカーと共同でセメントカプセルの自動装填システムの開発に取り組んでいます。また、定着材が不要な鋼管膨張型ロックボルト「RPEロックボルト」の自動化では、施工技術のノウハウを活かしてドリルジャンボの大きな改造を伴わずに、コンパクトなユニットを取り付け、注水ポンプの改良を加えることで機械式打設が可能となるシステムの開発が完了しました。

トンネル工事のICT化では、防水シートの加圧試験、負圧試験の省力化と計測の自動化、無線化を目的とした試験システムの開発に取り組んでいます。防水シートの溶着の施工品質を確保するために、温度管理が可視化できる溶着機を開発しました。

ロックボルトの頭部に作用する力を自動計測できる「ZIKMO」を上市しました。本体が薄いため設置後ロックボルトの突出がこれまでの計測器よりも少なくなります。また、データを自動で無線通信しパソコンに保存できるため、ケーブルの設置作業が不要となりケーブル切断などの懸念もないため、取り扱いやすい計測器となっています。

新しい取り組みとして、今までは補助工法の資材販売のみでしたが、59期に開発した「クローラドリル」を用いたAGF工法の打設工事にも挑戦し、無事に工事を終えることができました。

既設トンネルの補強工事では、定着材が不要なロックボルト「セイバーEX」の高耐力タイプ、小断面でも打設可能な連結タイプの開発も進めており適用範囲の拡大に努めています。

新規事業分野においては、建設工事に伴って発生する重金属を含むずり処理対策製品として上市した吸着層工法用シート「パデムシート」は、NETIS登録が完了して多くのお問い合わせをいただいており、採用実績も増えています。一方、着手8年を経過した「微生物を用いたセレンの無害化工法開発」においては、「微生物利用指針」の審査が環境省・経済産業省との面談まで進展致しました。61期中の「微生物利用指針」の認証を目指し、製品上市に向けて研究開発に取り組んでまいります。

また、新規事業分野として、斜面の防災・補強もターゲットとして研究開発を進めております。これまでに優れた耐食性能を有する「IBO-Zロックボルト」を斜面安定工法にも適用できるよう施工システムの開発に取り組んでおり、小型の施工機械により狭隘な箇所でも施工できる工法「ホーク・ネイリング」が完成しました。NETIS登録の申請も同時に進めております。

今後も、各種の新設・補修補強プロジェクトにおいて求められる技術開発、既製品の改良に加え、新規事業分野の有望技術の研究開発に取り組んでまいります。

(土木資材事業研究開発費 61,021千円)

 

(3)建設事業

トンネル内装工、耐火工、背面空洞充填工、コンクリート補修・補強工法等に適用する材料、工法、機器の改良開発、トンネル維持管理補修工事の安全対策ソリューション開発のほか、点検診断の省力化につながるシステムの研究開発を継続しております。

従来から保有していたフレキシブルPV(太陽電池)の各種被着体への接着技術を再検討し、環境対策製品を含めた新たな可能性を追求するべく研究開発に取り組んでまいりました。小規模ながら工事を受注することができ、61期は本工事を滞りなく完工し、新たな工事受注と販売の両面で積極的に取り組んでまいります。

矢板トンネルの上・下半打ち継ぎ目地からの漏水を樋材で受け水平方向に導水する「水平導水樋」の開発が完了、期末に上市することができました。本製品についてもスペックイン・PR活動に積極的に取り組んでまいります。

59期に上市した「ガイナトンネル内装シート」の粘着技術を応用した視線誘導ラインシートと再帰性反射材を用いて施工する視線誘導ライン反射材について、試験施工及び本施工により得られた様々な知見を基にシート及び反射材の改良を進めております。早い段階で市場への供給体制を整えられる見込みです。本格採用に向けて積極的なPR活動を進めてまいります。

はく落対策工法では、現場の安全・作業環境の改善を図るため、既存開発製品の皮膚感作性樹脂の低減や、冬季施工など寒冷化の気象条件に左右されないSGA樹脂を構成材料に加え、上市しました。本製品についても鋭意スペックイン活動を進めてまいります。

新幹線大規模改修工事に向けた各種の製品開発を進めております。トンネル目地部のはく落対策製品「ガイナメッシュ」シリーズに新たなフェイルセーフ機能を追加し、61期の上市に向け、供用中のトンネル等において試験施工を進めております。

高目付繊維補強材料である「SHシート」について、改良や詳細な性能評価を進めてまいりました。その結果、新たに「SHシートボード工法」として上市しました。コンクリート構造物だけでなく鋼構造物にも適用可能な高目付繊維補強工法として、NETIS登録が完了し技術資料などの販売ツールを整備しました。61期よりスペックイン活動を本格化してまいります。

また、トンネル分野以外の道路付帯施設、橋梁等の補修補強工事、点検診断維持管理技術、解析技術に総合的に取り組む事業体制をさらに強化するための研究開発のほか、橋梁下部工や、斜面、盛土等の「基礎分野」の補修補強、維持管理技術等の新規分野においても、研究開発・保有技術の応用展開を継続しております。

既設基礎の補強や構造物の支持力対策、地盤・斜面の補強、橋梁下部工耐震補強に適用できる小口径鋼管杭「STマイクロパイル工法」は、国土交通省土木研究所と当社を含めた民間企業との共同研究開発からほぼ20年となり、現在でも着実な売り上げを堅持していますが、さらなる発展のため現在の技術動向に合わせた建設技術審査証明の取得およびマニュアル改定に向け、検証、さらに追加実験の計画、実施を進めてまいります。また、工法としての信頼性を高めるためセンサを利用した「支持層地盤探査システム」の研究開発を進めており、学会発表、特許取得と並行して実際の現場での支持層管理に使用し、今後はより幅広い展開に取り組んでまいります。

また、新たな事業分野となる橋梁モニタリングシステムの開発に取り組んでおります。全国に2m以上の橋梁は約70万橋ありますが、2023年には約17万橋、10年後の2033年には約27万橋が建設後50年を経過します。昨今、点検技術者も不足する中、多数の橋梁の維持管理を効果的、かつ効率よく行うには、劣化の進行程度を把握するモニタリングシステムが必要とされています。

当社が開発中の橋梁モニタリングシステムは、MEMS(微小電気機械システム)を用いた小型加速度センサを活用し、独自の分析手法により、あらゆる状況下において的確に橋梁の卓越振動数を算出することで、橋梁の劣化進行度の把握を可能にするシステムとなっております。また、橋梁の劣化進行程度のみならず、メンテンス後の効果検証および被災した橋梁の状態把握等を簡便に判断することを可能としております。59期には、地方自治体等発注機関の協力を得て、多種多様な構造の橋梁の試験モニタリングを実施し、評価検証を行いました。引き続き産官学連携のもと、当モニタリングシステムの確立を目指してまいります。

新工法開発、工法改良、各種安全対策ソリューション等の成果が、トンネル補修補強工事の元請け受注や他社への技術提供につながることから、今後も施工品質と長寿命化をキーワードに研究開発に取り組むとともに、長期的なインフラ維持管理に欠かせないIoT技術とその活用に必要なAIの適用研究にオープンイノベーションを通じて取り組み、建設分野のDX推進に貢献してまいります。

(建設事業研究開発費 44,228千円)