第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループでは、会社の経営の基本方針として「社員憲章」を定めています。この「社員憲章」は、①事業のあり方、②組織のあり方、③メンバーのあり方、の3項目から構成され、当社グループのメンバーがよって立つべき企業理念を体現したものにもなっています。

また、国連の採択したSDGs(持続可能な開発目標)はこうした当社の経営方針と非常に親和性が高いため、その17項目のうち、「3. すべての人に健康と福祉を」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「8.働きがいも経済成長も」「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」「13.気候変動に具体的な対策を」「17. パートナーシップで目標を達成しよう」の6つを実現するように努めています。

当社グループは、絶えずサービスのイノベーションを図り、グループ会社間でのノウハウ共有とインフラ統合を進めていくとともに、新技術や独自のノウハウを持つ企業と幅広く連携・提携を進めていきます。

 

 

オルバグループ社員憲章

 

 

事業のあり方

○ ビジネスを通じて、医学・医療・介護の発展に貢献し、国民の健康長寿に寄与する

○ 革新的な新機能・新技術の恩恵を、患者と医療機関に速やかに適切に提供する

○ ステークホルダー(顧客、取引先、社員、地域社会、株主)の皆様に、誠実かつ継続的に価値を

  提供し、持続可能な経営を追求する

○ 業界の内外を問わず積極的に交わり、創造性を育み、グローバルな視点でフロンティアを探求する

 

組織のあり方

○ 人材育成を尊び、「マネジメント(人を通じて事を成す)」に重きをおく

○ ダイバーシティを重視し、多様な意見や価値観、働き方を認め合う

○ いかなるときも、フェアーな競争と取引を心掛ける

○ 競争によってもたらされた成果は、新たな価値を創造するために再投資する

○ メンバーが心身ともに健康で、貢献意欲を持つことのできる環境を整備する

 

メンバーのあり方

○ 自発的かつ主体的な成長意志を持つ

○ 過去の成果に安住せず、謙虚に学び続ける

○ 自身の貢献や努力なしに便益を得ようとするフリーライディングを善しとしない

○ 社内外のビジネス上のパートナーを尊重し、高い倫理観と誇りをもって業務に臨む

 

 

 

 

 

(2) 目標とする経営指標

当社は、企業集団の成長、ならびに業務プロセスの効率性を測定するうえで、売上高と営業利益を重視しています。2025年6月期を初年度とする中期経営計画においては、2027年6月期の連結売上高1,350億円、連結営業利益27億円を目標としていました。中期計画の初年度である2025年6月期は、連結売上高はおおむね予算通りでしたが、連結営業利益は予算を大きく下回る結果となりました。

この要因として、設備備品の需要減退、消耗品の利益率の低下が挙げられます。顧客である医療・介護施設においては、人員不足に伴う人件費の増大、物価高騰、補助金などの財政支援の減少といった外部環境の影響を受け、設備投資に慎重な姿勢が見られました。消耗品に関しては、物価高騰の影響で上昇した仕入価格を、販売価格へ十分に転嫁できませんでした。

今後は現業を強化すべく、手術関連、整形外科、循環器といった各専門領域におけるグループ内連携をさらに進めるとともに、新たな収益源の確立に向けて、自動精算機をはじめとする当社グループオリジナル製品の拡販も推進していきます。また、変わりゆく事業環境に適応し、持続可能な経営を実現していくためには、DX(Digital transformation:デジタル化によるビジネスモデル等の再構築)と給与ベースアップや人材育成を含む人的資本への継続的な投資も必要であると考えています。

これらの取り組みを基盤に、2026年6月期を初年度とする中期経営計画をあらためて策定し、2028年6月期に目指す経営指標を、連結売上高1,420億円、連結営業利益27億円としました。また、上記のような投資余力を保持するためには、ROEを現状水準程度に保ちながらも自己資本を充実させることが重要と考えています。(過去5年のROEの単純平均実績:14.2%)

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

厚生労働省が示した「地域医療構想」においては、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けてさまざまな取り組みが進められてきました。その後継策として2024年12月に取りまとめが行われた「新たな地域医療構想」においては、85歳以上の高齢者人口の増加や人口減少がさらに進む2040年頃を視野に入れ、全ての地域・全ての世代の患者が適切に医療・介護を受けながら生活し、必要に応じて入院し、日常生活に戻ることができ、同時に、医療従事者が持続可能な働き方を確保できる医療提供体制を整備することが課題に挙げられています。これらの課題に対応するためには、限られた医療資源を最適化・効率化しながら、「治す医療」を担う医療機関と「治し支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、地域完結型の医療・介護提供体制を構築することが必要とされています。一方で、ロボットを使用した手術や、がんゲノム等の遺伝子解析による個別化医療が一部で実現されるなど医療技術は目覚ましく進歩しています。もちろん、従前より当社グループが得意としてきた整形外科領域や循環器領域(循環器内科・心臓血管外科)、手術関連領域、またその他の領域においても、引き続き様々なサービス提供が医療現場より求められています。

こうした環境に対応すべく、当社グループでは2028年6月期を最終年度とする中期経営計画のポイントを以下の図のようにまとめました。なお、中期経営計画は毎年見直し、常に最新の中期計画による目標管理を行ってまいります。


①OLBA-DX:DXによって、あらゆる業務のあり方を見直します。非生産業務をできるだけ効率化して顧客へのサービス提供時間の最大化を図ると同時に、ICTツールを用いて営業活動の質を向上させ、顧客満足度を高めていきます。社員のITスキルを向上させる取り組みにも注力します。

②生産性向上:現業の強化・効率化とロジスティクスの革新がポイントです。仕入交渉力の強化、業務合理化などをさらに進めるほか、グループ内連携の強化、医療機器の安定供給に向けたロジスティクス基盤の充実により、顧客提供価値の最大化を目指します。

③未来への投資:新規事業育成・外部連携促進・サステナビリティ確保がポイントです。新規事業として、タイ王国でのビジネス基盤の確立、カワニシバークメドによるクリニック向けビジネスの拡大、ならびに次世代ごみ処理機の開発・販売を通じて地球環境保護にも貢献する新会社「オルシード」の育成を進めていきます。また、業界内外を問わない業務連携、人的資本への投資も行っていきます。

 

なお、2030年に向けて当社グループが目指す姿として、2024年6月期に設定した「VISION2030」の内容は以下のとおりです。

1)国内最高の医療機器商社を目指す

2)営業利益の20%は、海外から獲得する

3)30以上の新製品・サービスを上市する

 

(4) 会社の対処すべき課題

当社は、「会社の経営の基本方針」に基づき、グループ各社に対する資金・人材・インフラ事業政策等をサポートすることで企業価値の向上に努めていきます。

また、コンプライアンスの徹底、適切なリスク管理並びに適正な情報の開示を行い、グループの社会的価値を高めていきます。

 

(5) その他、会社の経営上重要な事項

該当事項はありません。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) サステナビリティ全般

①ガバナンス

当社は企業理念である社員憲章において、「ステークホルダー(顧客、取引先、社員、地域社会、株主)の皆様に、誠実かつ継続的に価値を提供し、持続可能な経営を追求する」と謳っております。この精神を忘れることなく、以下のとおり明文化した「ESGに関する基本的な考え方」も踏まえながら、引き続き企業価値向上に向けた取り組みを進めてまいります。また、人的資本を含むサステナビリティ関連課題への具体的な対応方針はグループ各社の中期経営計画、年間計画、年度予算に反映されており、取締役会で承認・決定されます。また、グループ全体のサステナビリティの実現に向けた課題を含む重要な課題が発生した場合は、当社のコンプライアンス委員会に報告・審議され、取締役会に報告されます。コンプライアンス委員会には、業務執行取締役、主要事業部門責任者、内部監査室長、常勤監査役が参加しています。

 

『ESG経営の基本的な考え方』

当社は企業理念である社員憲章において、「ステークホルダー(顧客、取引先、社員、地域社会、株主)の皆様に、誠実かつ継続的に価値を提供し、持続可能な経営を追求する」と謳っており、これに基づき、ESG経営の基本的な考え方を次のように定めています。

 

E(環境)

環境問題への取り組みは、社会や企業が持続可能な社会活動を行っていくうえで必要不可欠であると認識しています。

当社グループは企業理念として定めた社員憲章を踏まえて、環境関連法令等の遵守はもとより、様々なステークホルダーの方々とともに環境負荷の低減と環境保全に配慮し、持続可能な社会の実現を目指していきます。

 

S(社会)

医療・介護をサポートするヘルスケア企業として、地域の医療・介護を止めないことが社会への一番の貢献であると考えています。また、社員憲章で「ダイバーシティを重視し、多様な意見や価値観、働き方を認め合う」「メンバーが心身ともに健康で、貢献意欲を持つことのできる環境を整備する」と定めているとおり、人材ならびに働き方の多様性を目指すとともに、社員が健康でいきいきと働き続けられるよう、働き方改革を進めています。

 

G(ガバナンス)

株式会社は株主から資本を委託され、事業活動を通じて利益を生み、企業価値を高め、株主利益の増大をはかることを期待されています。よって、株主の負託に応えることが株式会社の基本的使命であり、そのためには、広く公益にかない、社員、顧客、取引先、地域住民に対する責任を果たすことが必須だと考えています。

当社は、継続的かつ広範なご支持を頂ける企業として、経営の透明性、効率性、健全性を確保し、外部からの監査や提言を積極的に受け入れる努力を続け、そのための仕組みも整えてきました。

引き続き株主の期待に沿うべく、当社グループの中心に位置する持株会社として、人材、教育、資金、技術、情報システムなどのインフラをグループ各社に提供し、

1.法令遵守

2.社会的支持の獲得

3.経営の効率化と収益力の向上

4.グループとしての総合力の発揮

について実現を図っていきます。

 

②リスク管理

当社グループは「リスク管理規程」に基づき、定期的に「リスク管理委員会」を開催し、当社グループのリスク管理体制の整備、発生しうるリスクの識別・防止に係る啓発活動などを行っています。リスク管理委員会には、業務執行取締役、主要事業部門責任者、内部監査室長、常勤監査役が参加しています。

リスク管理委員会では、想定されるリスクをその原因ごとに分類し、想定される発生確率と最大被害、判定時点での各リスクへの対策状況などを加味し算出した各リスクの判定値をもとに、リスク対策の優先度の評価、具体的なリスク対策の検討を行っています。また、リスク判定の状況や対策の状況などは、半期ごとに取締役会へ報告しています。取締役会では、その内容の分析及び事業活動の分析を基に機会の識別、評価を行い、サステナビリティに関連する取り組みについて議論し決定しています。さらに、リスク管理委員会は、コンプライアンス委員会と常に情報を共有し、グループ全体のサステナビリティの実現に向けた課題を含む重要な課題の発生、対応状況などについても常に情報共有され、コンプライアンス委員会での議論の内容は当社取締役会にて報告されています。

 

(2) 人的資本

① 戦略:人材育成及び社内環境整備に関する方針

当社グループでは、人材の価値を最大限に引き出し、企業の中長期的な成長につなげるため、社員憲章の「組織のあり方」と「メンバーのあり方」によって、人的資本への基本的スタンスを表現しています。

(ア)人材育成

社員憲章では、当社グループの教育環境および従業員のあり方を以下のように定めています。

<組織のあり方>
 ■ 人材育成を尊び、「マネジメント(人を通じて事を成す)」に重きを置く
<メンバーのあり方>
 ■ 自発的かつ主体的な成長意志を持つ
 ■ 過去の成果に安住せず、謙虚に学び続ける

 

 

従業員が「メンバーのあり方」に共感し、自律的に成長を続ける組織を目指し、社内スクールであるOLBA Academyを中心とした教育制度を以下のとおり整備しています。

『オルバグループの教育体系』


また、中期経営計画にある「OLBA-DX」を推進し、生産性向上、新たな価値の創出と顧客への提供に取り組んでいくために、従業員のITスキルの向上を重要課題に設定し、DX教育にも力を入れています。

DX教育

全従業員のITリテラシー向上を目的として、IT、デジタルトランスフォーメーション(DX)、および人工知能(AI)に関するeラーニングプログラムを提供しています。また、国家資格である「ITパスポート」の取得を奨励すべく資格取得支援制度を整備しており、従業員のITスキルの向上を後押ししています。さらに、ノーコードツールや生成AIに関するスキル向上を目的とした研修も実施し、DX人材の育成に注力しています。

 

 

(イ)社内環境整備

当社グループでは、一人ひとりの従業員が生き生きと働くために、社員憲章の「組織のあり方」において、「健康」と「多様性」を重要なテーマに挙げており、これに基づいて社内環境整備に努めています。

<組織のあり方>
 ■ メンバーが心身ともに健康で、貢献意欲を持つことのできる環境を整備する
 ■ ダイバーシティを重視し、多様な意見や価値観、働き方を認め合う

 

 

社内環境整備の代表的な施策は以下のとおりです。

健康経営

2024年に「健康経営ビジョン(わたしたちは、社員一人ひとりが心身ともに健やかに働きつづけることができる環境を整備することで、持てる力を充分に発揮できる会社を目指します。)」を掲げ、従業員の健康管理と健康増進に取り組んでいます。2025年には「健康経営戦略マップ(注)」を策定し、健康経営の施策と効果のつながりを分かりやすく示しました。

 

(注)当社ホームページに掲載しております。

(https://www.olba.co.jp/action/health_excellence.html)

働き方改革2.0

多様な働き方を選択できる組織を目指すべく「働き方改革2.0」と銘打って、フレックスタイム制、シフト勤務制度、在宅勤務制度、副業制度等を導入し、制度利用者の拡充に努めています。また、コミュニケーションの向上や業務効率化のため、スマートコミュニケーション運動(“さん”づけ、文書簡素化、コミュニケーションツール活用、会議効率化)を推進しています。

ダイバーシティの推進

①公正な採用

性別・年齢・出身・学歴・宗教・人種等を問わず、多様な価値観・能力を重視する人物本位の採用選考を行っており、公正な採用活動を基本方針としています。

②女性活躍

女性活躍推進法に基づく行動計画において、2030年6月期までに女性管理職比率を19%に引き上げることを目標に掲げています。2025年6月期より、女性社員のキャリア形成支援の一環として、社外メンターによるメンタリングプログラムを導入しました。今後も諸施策を講じ、女性管理職の登用を着実に進めていきます。

③男性の育児休業取得の促進

次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画において、2030年6月期までに男性社員の育児休業取得率を80%に引き上げることを目標に掲げています。育休を取得しやすい環境を整備するため、「産休育休ガイドブック」の配布、e-learningによる啓発、育休取得事例の社内報での紹介などを行っています。また、未消化の有給休暇を積み立てて育休として利用できる「積立有休制度」も2025年7月から開始しました。

エンゲージメントサーベイ

従業員の「働きやすさ」と「働きがい」に向けた施策の効果測定のため、2024年3月から「エンゲージメントサーベイ」を開始しました。半年ごとにサーベイを実施し、課題の分析、改善施策の立案を行っています。

内部通報窓口の整備

従業員が安心して働くことのできる環境を整備するために、公益通報者保護法にもとづきコンプライアンスに関する相談窓口を設置しています。窓口は社内と社外に複数設けており、従業員は、自分が利用しやすい窓口を選んで相談することができます。窓口の運用にあたっては、通報者等が通報したことを理由に不利益な扱いを行うことを禁止しています。

 

 

② 指標及び目標

当社グループでは、上記「①戦略」において記載した、人材育成及び社内環境整備に関する方針  について、以下の指標を設定し進捗を管理しています。なお、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1 企業の状況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しています。

 

指標

2023年6月

(実績)

2024年6月

(実績)

2025年6月

(実績)

2030年6月

(目標)

管理職に占める女性労働者の割合) (注)1

7.0

8.6

9.9

19.0

男性労働者の育児休業取得率)(育児目的休暇を除く)
(注)2

12.8

36.4

48.6

-

男性労働者の育児休業取得率)(育児目的休暇を含む)(注)3,4

-

-

-

80.0

新卒採用(大卒以上)における女性採用比率

38.7

29.4

40.6

-

中途採用(正規雇用)における女性採用比率

29.2

30.2

35.9

-

ITパスポート保有者数

11

34

62

-

ストレスチェック受検率

91.4

85.7

96.0

95.0

健康診断受診率

100.0

100.0

100.0

100.0

 

(注)1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。

3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものです。

4 2025年6月期まで当社グループでは、育児目的のために利用できる休暇制度を設けていなかったため、実績なしとして「-」で表示しています。2026年6月期からは育児目的休暇として使える積立有休制度を開始したことにともない、2030年6月期の目標を80.0%に設定しています。

5 提出会社及び国内連結会社を算出の対象としているため、THAI OLBA Healthcare Co., Ltd.は算出対象外としています。

 

3 【事業等のリスク】

投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存です。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

なお、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありません。

 

(1)償還価格制度について

健康保険法第76条第2項の規定に基づき厚生労働大臣が告示する診療報酬点数表の中に特定保険医療材料及びその材料価格基準(償還価格)が示されています。

医療制度改革の一環として、償還価格はおよそ2年ごとに見直しが行われていますが、実勢販売価格をもとに引き下げられる傾向にあります。これに連動して、当社グループの主な顧客である医療機関への販売単価も下落傾向にあり、収益性を圧迫する要因となっています。これに対処するため当社グループでは、仕入先との価格交渉力を高めたり、より付加価値の高い製品の取扱いを拡大したりなど収益改善に努めています。

 

(2)事業を継続するための法規制について

当社グループは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「医薬品医療機器等法」)をはじめとして、関連法規に基づく許可等を得て事業を継続しています。しかし、法令違反等により当該許可等が取り消された場合、当社グループの業績及び事業継続について重大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループでは統括部門を設置し、法令の遵守、適切な運用が行われるよう管理体制を整えています。また、定期的に役職員に対する教育研修を行うことで遵法意識の向上を図っています。

当社グループが取得している主な許可等とその内容は以下のとおりです。

 

①医療機器販売に係る届出及び許可について

当社グループは医療機器や医薬品の販売業として医薬品医療機器等法の規制を受けており、所在地都道府県知事の許可等が必要となります。

当社グループ各社の取扱商品には高度管理医療機器が含まれていますので、医薬品医療機器等法に定められた要件に準拠して管理者の設置やシステムの整備を進め、高度管理医療機器を取り扱っている全ての事業所で各都道府県知事より許可を取得しました。

当該許可は6年ごとに更新をする必要があります。また医療の安全は国民国家にとって重要な課題であるため、今後、医療機器に対する新たな法規制や許認可制度が制定される可能性もあります。

 

   (注)高度管理医療機器

多種多様な医療機器につき人体に与えるリスクに対応した安全対策を講ずるため、国際分類を踏まえ、医療機器は3つの類型(高度管理医療機器、管理医療機器、一般医療機器)に分類されています。このうち、高度管理医療機器を取り扱う販売業者については、都道府県知事の許可を得ることが必要です。なお高度管理医療機器とは、適正な使用目的にしたがって適正に使用したにもかかわらず、副作用又は機能障害が生じた場合に、人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある医療機器と定義されており、当社グループの取扱商品においては、人工呼吸器、人工関節、ステント、ペースメーカー等がこれに該当します。

 

②医療機器製造販売に係る許可について

当社グループは医療機器の製造販売業者として「医薬品医療機器等法」の規制を受けており、所在地都道府県知事の許可が必要となります。

当社グループでは管理医療機器の製造・販売を行うため「医薬品医療機器等法」に定められた要件に準拠して管理者の設置や品質管理ならびに製造販売後安全管理について体制を整備し、第二種医療機器製造販売業許可を受けています。

当該許可は5年ごとに更新をする必要があります。また医療の安全は国民や国家にとって重要な課題であるため、今後、医療機器に対する新たな法規制や許認可制度が制定される可能性もあります。

 

   (注)管理医療機器

多種多様な医療機器につき人体に与えるリスクに対応した安全対策を講ずるため、国際分類を踏まえ、医療機器は3つの類型(高度管理医療機器、管理医療機器、一般医療機器)に分類されています。このうち、管理医療機器を取り扱う製造販売業者については、都道府県知事の許可を得ることが必要です。なお管理医療機器とは、高度管理医療機器以外の医療機器で、副作用又は機能の障害が生じた場合において人の生命及び健康に影響を与えるおそれがあることからその適切な管理が必要なものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医療機器と定義されています。

 

③医薬品の販売に係る法的規制について

当社グループは医療機器に付帯する薬品、試薬、体外診断用検査薬等(以下、医薬品等)を卸売販売しています。当社グループにおいては、医薬品医療機器等法に基づき卸売販売業の管理者を設置し、保管設備等の整備を行い、医薬品等を取り扱っている全ての事業所で各都道府県知事より許可を取得しています。今後、何らかの理由により医薬品医療機器等法の基準に適合しなくなった場合は、その事業所は医薬品の卸売販売業の許可を取り消される可能性があります。

 

④毒物及び劇物取締法について

当社グループが販売している医薬品等の一部には、毒物及び劇物取締法に基づき毒物又は劇物の指定を受けている製品があります。当社グループにおいては、毒物及び劇物取締法に基づく取扱責任者の設置、保管場所等の整備を行い、毒物又は劇物を取り扱っている全ての事業所で各都道府県知事の登録を受けています。今後、何らかの理由により毒物及び劇物取締法の基準に適合しなくなった場合、その事業所は登録を取り消される可能性があります。

 
⑤特定・一般建設業に係る法的規制について

建設工事及び内装仕上工事と管工事等に係る工事を受注するため、建設業法第3条に基づき福島県知事より特定・一般建設業の許可を受けています。今後、法的規制の新設や適用基準の変更等があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥福祉用具販売事業に係る介護保険法について

介護保険法では、居宅介護福祉用具購入費の支給対象となる特定福祉用具(注1)は、都道府県知事より指定を受けた特定福祉用具販売事業者(注2)又は特定介護予防福祉用具販売事業者(注3)から購入されたものであると定められています。株式会社ライフケアでは、特定福祉用具の販売に当たり、全営業拠点に管理者及び福祉用具専門相談員を設置し安全管理体制を整備して、各都道府県知事より特定福祉用具販売事業者及び特定介護予防福祉用具販売事業者の指定を受けています。今後、何らかの理由により当該要件が満たせなくなった場合、その事業所に対し指定取り消し処分等が下されることにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (注) 1 居宅介護福祉用具購入費の支給対象となる特定福祉用具とは、腰掛便座、特殊尿器、入浴補助具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部分の5種目をいいます。

  2 特定福祉用具販売事業者とは、介護保険法の要介護度1~5の要介護者を対象に特定福祉用具を販売する事業者をいいます。

  3 特定介護予防福祉用具販売事業者とは、介護保険法の要支援度1~2の要支援者を対象に特定福祉用具を販売する事業者をいいます。

 

⑦福祉用具貸与事業に係る介護保険法について

介護保険法では、介護保険法の支給対象となる福祉用具を貸与する事業者は、都道府県知事より福祉用具貸与事業者(注1)又は介護予防福祉用具貸与事業者(注2)の指定を受けることが義務付けられています。株式会社ライフケアでは、福祉用具の貸与に当たり、全営業拠点に管理者及び福祉用具専門相談員を設置し安全管理体制を整備して、各都道府県知事より福祉用具貸与事業者及び介護予防福祉用具貸与事業者の指定を受けています。今後、何らかの理由により当該要件が満たせなくなった場合、指定取り消し処分等が下されることにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(注1)福祉用具貸与事業者とは、介護保険法の要介護度1~5の要介護者を対象に福祉用具を貸与する事業者をいいます。

(注2)介護予防福祉用具貸与事業者とは、介護保険法の要支援度1~2の要支援者を対象に福祉用具を貸与する事業者をいいます。

 

(3)商品に関する法規制について

当社グループでは、医薬品医療機器等法の規制を受ける商品の取り扱いが高い割合を占めているため、当該法規制に違反するなどして当社グループの商品の供給体制が機能しなくなった場合、業績及び事業継続について重大な影響を及ぼす可能性があります。想定される内容は以下のとおりです。

 

①医療機器及び医薬品の使用期限に係る法的規制について

当社グループの販売する医療機器及び医薬品の一部は、使用期限が設定されています。これは医療機器等が保健衛生上の危険を生じないように安全に使用出来る期限を定めたものです。

この使用期限を経過した医療機器等を販売することは医薬品医療機器等法に違反することとなり、この場合には、保健所等により医療機器販売業等の業務の停止などの処分を受ける可能性があります。

そのため当社グループでは、統括部門を設置し、使用期限を経過した医療機器等が流通しないよう手順を定め、適切な運用が行われるよう管理体制を整えています。また、定期的に役職員に対する教育研修を行うことで使用期限管理の徹底を図っています。

 

②生物由来製品の販売に係る法的規制について

医薬品医療機器等法により、生物由来製品の販売業者は、生物由来製品を販売した際、販売先の住所・氏名その他厚生労働省令で定める事項に関する情報を、当該生物由来製品の製造承認取得者等に提供することが義務付けられています。そのため、上記法令に従って、生物由来製品の販売情報を製造承認取得者等に通知しています。

 

(注)生物由来製品

人その他の生物(植物を除く)に由来するものを原料又は材料として製造(小分けも含む)される医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器のうち、保健衛生上特別の注意を要するものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するものを言います。当社グループの取扱商品の中には、生物由来成分を使用しているものがあるため、当該製品は生物由来製品に指定されています。

 

③商品の回収、販売の停止等について

医療機器及び医薬品は、医薬品医療機器等法の定めにより、その使用において保健衛生上の危害が発生し、又は拡大する恐れがあることを知った場合は、これを防止するために廃棄、回収、販売の停止、情報の提供等の措置を講じなければならないとされています。

当社グループは、グループ外部の医療機器製造販売業者より仕入れた商品を販売するため、直接的にはこれらの義務を負うことはありませんが、間接的には、販売する商品が不具合等により回収、販売の停止等の事態になった場合には、販売業者である当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、当社グループでは、特定の商品が販売不能になった場合でも代替可能な商品を供給できるよう、多様な仕入先との取引関係を維持することに努めています。

  

(4)医療機器業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約(以下、医療機器業公正競争規約)について

医療機器業公正競争規約は、1998年11月に公正取引委員会の認定を受け、1999年4月に施行された、景品類提供の制限に関する公正競争規約です。事業者団体(医療機器業公正取引協議会)の自主規制ルールではありますが、不当景品類及び不当表示防止法(以下、景品表示法)に基づいて制定されており、医療機器業公正競争規約に違反することは、そのまま景品表示法違反となります。

当社グループでは、営業活動において医療機器業公正競争規約を遵守し、社員への教育啓発にも努めていますが、今後当局との間で認識の違いが生じ、医療機器業公正競争規約に違反した場合は、景品表示法違反に問われ、違約金が課される等の罰則を受ける場合があります。

 

(5)個人情報の管理について

当社グループでは、個人情報の管理の徹底を図っており、現在まで個人情報の流出による問題は発生していませんが、今後個人情報の流出により問題が発生した場合、当社グループへの損害賠償請求や信用低下等により、当社グループの経営成績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)情報セキュリティについて

当社グループは、外部からのサイバー攻撃やウィルス感染の侵入における対策としてIT環境の整備を行っていますが、想定外のリスクは、完全になくならないと考えています。その為、以下の3つのポイントでリスク軽減を図っています。

・情報セキュリティ基本方針及び情報セキュリティ管理規程を定め、コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を整備

・従業員のセキュリティ教育や標的型攻撃メール訓練といった、セキュリティーリテラシーの向上

・感染被害拡大を防ぐため、24時間PCのモニタリングと感染時の迅速な検知と駆除、及び従業員向けの24時間セキュリティ問い合わせ窓口の設置

 

(7)企業再編、企業買収、合併等について

当社グループは今後も事業の拡大や統廃合に際して、関係会社の設立や売却、合併・分割・買収・提携の手法を用いる可能性があります。そのため、これらにかかる費用等が、一時的に当社グループの経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。

また、当該事業が当初の計画どおりに進捗しない場合、投資価値の減損損失を行う必要が生じるなど、当社グループの経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)固定資産の減損について

当社グループが保有する、土地・建物等の事業用資産や投資有価証券等について、価格下落等による資産価値の低下、外部環境の変化による事業収益・キャッシュ・フローの悪化等によって減損損失が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)海外事業について

当社グループはアジア地域において海外事業を展開しています。各国においては、為替リスクに加え、政治・経済情勢の変化、法規制の変更、商習慣の違い等に起因する予測不可能な事態が発生する可能性があります。これらの事象により事業計画が想定通りに進まない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)自然災害、感染症の拡大について

当社グループは国内の数多くの仕入先から医療機器等の商品を仕入れ、各地域の医療機関等へ販売をしています。大規模な地震、風水害等の自然災害が発生した場合、国内各地の物流網に影響が生じることで当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、感染症の拡大に対し、医療機関において当該感染症への対応のため、緊急性の低い治療、手術の見送り、延期などの対策が取られた場合、当該治療、手術において使用が見込まれていた医療機器などの販売機会が失われ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは事業継続計画(BCP計画)の策定・見直しを進め、これらの自然災害等が発生した際に速やかに行動が出来るように対策をとっています。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1) 財政状態及び経営成績の分析

①経営成績の分析

2027年6月期を最終年度とする当社グループの中期経営計画では「現業強化・生産性向上」、「SDGs推進・ESG経営」、「新規事業探索・育成」、「DXの推進」を重点ポイントに定め、各種施策を推進しています。そして、さらに長期的な視点で経営を行うべく、2030年に向けて当社グループが目指す姿として、「国内最高の医療機器商社」、「営業利益の20%を海外から獲得」、「30以上の新製品・サービスを上市」という3本柱からなる「VISION2030」を制定し、実現に向けた基盤づくりを開始しています。

一方、顧客である医療・介護施設では、人員不足や物価高騰に伴う人件費の増加、補助金などの財政支援の減少によって設備投資に慎重になりつつあり、当期の設備備品は例年を下回る結果となりました。しかしながら、ロボット手術や不整脈治療など、新技術へのニーズが高い領域では、引き続き積極的な設備投資が行われています。

 

<医療器材事業>

医療器材事業の商品分類別売上高は下記のとおりです。ただし、当該商品分類別売上高については、管理会計に基づく集計値を元に分析を行っています。そのため、商品分類別売上高の合計は医療器材事業の売上高と一致していませんが、これによる分析の正確性への影響は軽微であると判断しています。また、各商品分類における前期比の記載においては、今期から一部商品の集計区分を変更したため、前期実績も同じ区分で再集計して比較しています。

 <医療器材事業 商品分類別売上高>                             単位:百万円

 

前期

当期

増減

 

金額

構成比(%)

金額

構成比(%)

金額

増減率(%)

手術関連消耗品

48,567

42.5

50,457

42.7

1,890

3.9

整形外科消耗品

26,122

22.9

28,885

24.5

2,762

10.6

循環器消耗品

22,460

19.6

24,083

20.4

1,623

7.2

消耗品 小計

97,150

85.0

103,425

87.6

6,275

6.5

設備備品

17,172

15.0

14,687

12.4

△2,485

△14.5

商品分類別売上高 合計

114,322

100.0

118,113

100.0

3,791

3.3

調整額

△2,158

△2,235

△77

医療器材事業 合計

112,164

115,878

3,714

3.3

 

 

医療器材事業の成長の軸は消耗品の売上高です。特に近年は関西地方を重点エリアとした営業活動を推進してきましたが、顧客獲得に一定の見通しがついたことにより、今期から連結子会社である株式会社カワニシの神戸営業所を関西支店に昇格させ、営業基盤の強化を図りました。また、世界的な物価高騰に伴う医療機器の仕入価格上昇は現在も継続していますが、我々は顧客ニーズを満たした安価な代替品提案を織り交ぜながら、可能な限り販売価格に転嫁する交渉を行っています。

これらの結果、医療器材事業の消耗品の売上高は前期比6.5%増となりました。その内訳は以下のとおりです。

 

手術関連消耗品の売上高は、前期比3.9%増となりました。主力の外科関連製品が同5.2%増と堅調に推移したことに加え、従来から重点的に営業活動を行っている糖尿病関連製品を含む内科関連製品が同12.3%増と業績を牽引しました。また、2023年4月より始まった福島県におけるオリンパスマーケティング社の代理店としての活動により、消化器内視鏡関連製品が同5.1%増となりました。

 

整形外科消耗品の売上高は、前期比10.6%増となりました。前期に開業した医療機関の本格稼働や、今期新たに獲得した施設の影響により、人工関節関連製品が同10.5%増、外傷・スポーツ・関節鏡(※1)関連製品が同8.3%増となり、医療器材事業の業績を牽引しました。また、2024年6月の償還価格改定の影響などにより減少傾向にあった脊椎関連製品も、第3四半期には増加に転じ、前期比1.2%増となりました。なお、人工関節の分野において普及しているロボット手術については、前期に引き続き、その導入支援を積極的に行っています。

(※1)膝や肩などの関節内にカメラを挿入して行われる低侵襲手術

 

循環器消耗品の売上高は、前期比7.2%増となりました。昨年まで増加を続けていた心臓血管外科領域はTAVI(※2)の症例数の伸びが落ち着いてきたことから、前期比3.1%減となったものの、新規獲得施設の影響により、カテーテルアブレーション(※3)関連製品が同13.4%増、心臓虚血治療関連製品が同8.8%増と業績拡大に寄与しました。

(※2)心臓の大動脈弁を低侵襲に人工弁へ置換する治療

(※3)頻脈の原因となる心筋組織を焼灼もしくは凝固する治療

 

設備備品の売上高は、各種補助金による需要が一段落したことに加え、医療機関の設備投資意欲が見込みよりも減退したことで前期比14.5%減となりました。その一方で新規領域の開発を進めており、クリニック向け自動精算機テマサックは順調に販売台数を伸ばしています。また、2025年1月6日に設立した株式会社オルシードでは、環境に配慮したサーキュラーエコノミー(循環経済)による持続可能な社会の実現を目指し開発した、次世代型ごみ処理機「低熱分解型アップサイクルユニット OLSTECH®(オルステック)」の販売も開始し、売上実績を計上しています。

 

その結果、医療器材事業は、売上高1,158億78百万円(前期比3.3%増)となりました。しかしながら、設備備品の需要減少により売上総利益が伸び悩んだことに加え、人的資本への投資としての給与ベースアップ、組織体制の強化に向けた人員補強、OLBA-DX推進のためのシステム投資などにより販売管理費が前年を上回ったことから、営業利益は17億74百万円(前期比12.9%減)となりました。

 

<SPD事業>

SPD事業は、仕入価格の上昇分を販売価格に転嫁する活動を継続したことと、物価上昇に伴う管理料の値上げ交渉を粘り強く継続した結果、売上高は57億17百万円(前期比9.4%増)となりました。また、販売管理費は給与ベースアップなどの影響により増加しましたが、仕入改善に努めたことにより、営業利益は1億13百万円(前期比9.0%増)となりました。

 

<介護用品事業>

介護用品事業は、在宅医療・居宅介護の需要が引き続き高く、主力のレンタル事業が前期比4.7%増と順調に推移しました。また、レンタルに付随する物品販売についても、提案営業を強化したことにより同10.8%増となりました。その結果、売上高は27億77百万円(前期比5.2%増)となりました。営業利益が2億5百万円(前期比1.8%減)となっているのは、四国地方における新規出店に伴う経費の増加によるもので、今後の営業活動拡大への先行投資と位置づけています。

 

以上の結果、当期の連結売上高は1,227億2百万円(前期比3.5%増)、連結営業利益19億79百万円(前期比11.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益14億30百万円(前期比4.7%減)となりました。

 

 

(仕入及び販売の状況)

(1) 仕入実績

区分

金額(千円)

前期比(%)

医療器材事業

104,765,115

104.1

SPD事業

2,749,549

107.5

介護用品事業

1,492,686

104.3

合計

109,007,351

104.2

 

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

(2) 販売実績

区分

金額(千円)

前期比(%)

医療器材事業

114,336,640

103.2

SPD事業

5,588,730

109.8

介護用品事業

2,777,092

105.3

合計

122,702,463

103.5

 

(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

エム・シー・ヘルスケア株式会社

12,886,541

10.9

14,817,157

12.1

 

2 セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

 ②財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産は458億71百万円となり、前連結会計年度末と比べ26億34百万円増加しました。主な要因は、現金及び預金が7億38百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が6億71百万円、商品が4億73百万円、工具、器具及び備品が3億61百万円、建設仮勘定が10億12百万円それぞれ増加した一方で、電子記録債権が4億15百万円、リース資産が1億93百万円それぞれ減少したことによるものです。

 また、負債は336億15百万円となり、前連結会計年度末と比べ17億52百万円増加しました。主な要因は、支払手形及び買掛金が5億84百万円、電子記録債務が2億58百万円、1年内返済予定の長期借入金が4億円、長期借入金が15億16百万円それぞれ増加した一方で、短期借入金が6億円、未払法人税等が2億22百万円それぞれ減少したことによるものです。

 純資産は122億55百万円となり、前連結会計年度末と比べ8億81百万円増加しました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益により14億30百万円増加した一方で、退職給付に係る調整累計額が27百万円、配当金により4億88百万円それぞれ減少したことによるものです。

 この結果、自己資本比率は、0.4ポイント増加し、26.7%となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は前連結会計年度末に比べ7億38百万円増加し、34億20百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。

営業活動による資金の増加は、16億26百万円(前期は20億84百万円の増加)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益により19億19百万円、減価償却費により6億28百万円、仕入債務の増加により8億43百万円それぞれ増加した一方で、売上債権の増加により2億56百万円、棚卸資産の増加により3億99百万円、法人税等の支払額により7億97百万円それぞれ減少したことによるものです。

投資活動による資金の減少は、16億35百万円(前期は6億73百万円の減少)となりました。主な要因は、投資事業組合からの分配による収入により9百万円増加した一方で、有形固定資産の取得による支出により14億45百万円、無形固定資産の取得による支出により1億63百万円、投資有価証券の取得による支出により39百万円それぞれ減少したことによるものです。

財務活動による資金の増加は、6億86百万円(前期は10億89百万円の減少)となりました。主な要因は、長期借入れによる収入により20億円、自己株式の処分による収入により1億39百万円それぞれ増加した一方で、短期借入金の返済による支出により6億円、長期借入金の返済による支出により83百万円、リース債務の返済による支出により1億56百万円、自己株式の取得による支出により1億35百万円、当社の配当金の支払により4億88百万円それぞれ減少したことによるものです。
 また、当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりです。
 当社グループの事業活動における運転資金需要は、商品仕入代金並びに販売費及び一般管理費の支払など、日常の運転資金が主なものです。これに対する資金は、顧客への販売代金の回収及び金融機関からの短期借入金で賄います。また運転資金に加えて、設備・システム・M&A等の投資資金需要が随時発生します。これに対する資金は、上記の方法に加えて、金融機関からの長期借入金により賄います。これらの資金調達方法により、毎月末のグループ全体の現預金残高は、概ね20億円程度確保することを方針としています。

 

(3) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りを合理的な基準に基づいて実施していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があることから、これらの見積りと異なる場合があります。なお、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものはありません。

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しています。

これらのリスクに対して継続的にモニタリングを行って現状把握に努めるとともに、平時から対応策を検討し、リスクの最小化・分散化を図っていきます。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。