当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、常に時代の変化と要請を先取りし、健康で豊かな食生活創りを通じて消費者と社会に貢献することを企業理念としております。この企業理念の下、新中期経営計画「Transform 2025~創造と循環~」(2023年度~2025年度)の目指す姿である「食を中心とする領域での共有価値の創造と循環」に向けて、これまで取り組んできた新領域をさらに深化させ、消費者を含めたサプライチェーン全体での共有価値の創造を目指してまいりました。また、成長を支える基盤の構築を推し進めるとともに、事業を通じた社会課題解決への取り組みも引き続き進めてまいりました。
当連結会計年度における国内経済は、新型コロナウイルス5類への移行後、人流の活性化やインバウンド需要の拡大等による経済正常化が進み、景気は緩やかな回復基調にありますが、今後、国際情勢や金融動向等、不確実な要因による様々な影響だけでなく、人手不足やサプライチェーン再構築への対応等、急務な課題も散見され、持続的な景気回復に向けては引き続き不透明な環境が続くと予想されます。
食品流通業界においては、商品価格の値上げ等による消費マインドの低下から需要減退は見られるものの、賃金上昇や行楽需要の活発化により個人消費は徐々に回復してきました。一方で商品価格の高騰から、買上げ点数の減少や低価格・PB商品へのシフトが強まる反面、消費者ニーズを満たした付加価値商品が伸長するなど、消費動向の二極化もより一層進んでいるため、従来のビジネスモデルから、より消費者起点のビジネス構築が必要な局面に差し掛かってきていると言えます。
このような状況下、当社グループは、今期スタートさせた新中期経営計画「Transform 2025~創造と循環~」に基づき事業を推進してまいりました。重点分野として掲げた「情報」では、店頭への来店動機や商品の購買意欲の喚起を目的として、旬の食材の紹介や新商品情報の発信、プレゼントキャンペーンの実施など、デジタルサイネージ上で放映するコンテンツと売り場を連動させることで、売上拡大につながる魅力的な売り場づくりを取引先様と進めてまいりました。「商品開発」では、おせちやクリスマスケーキに加え、冷凍食品のオリジナルブランド「凍眠市場」のラインナップを充実させ、拡販に努めてまいりました。国産の高品質な素材を新鮮な状態で凍結することで、これまで生産地で限られた期間しか味わえなかった美味しさを消費者へ提供することができ、ギフトやふるさと納税の返礼品など幅広いシーンで需要が生まれております。「物流」においては、デジタル技術活用によるさらなる庫内作業の効率化に加え、トラックの積載効率改善やドライバーの労働負荷軽減など、2024年問題に対して自社のみならず業界全体での取り組みを推進し、サプライチェーン全体の効率化を図ってまいりました。また、これらの重点分野を支える基盤の強化として、人材育成の充実やダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進、働きがいのある職場環境の整備など、人的資本経営の高度化に加え、DXの推進も積極的に進めております。
新中期経営計画2年目にあたる次期(2025年3月期)の連結業績につきましては、売上高7,000億円、営業利益90億円、経常利益100億円、親会社株主に帰属する当期純利益70億円を見込んでおります。
当社グループの経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益であります。新中期経営計画「Transform 2025~創造と循環~」の目指す姿である「食を中心とする領域での共有価値の創造と循環~社会的価値と経済的価値の両立~」の実現に向けて「Catch the Market」をより意識し、「消費者起点」でのビジネスモデルを推進することで、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。
本項に記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
サステナビリティ全般
(サステナビリティ基本方針)
伊藤忠食品グループは、「常に時代の変化と要請を先取りし、健康で豊かな食生活創りを通じて消費者と社会に貢献します」という企業理念のもと、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
1.マテリアリティの特定と事業活動を通じた社会課題の解決への取り組み
社会の一員として、自社のみならず社会にとっても持続可能な成長につながるマテリアリティを策定し、事業活動を通じて企業価値向上を目指します。
2.社会との相互信頼づくり
正確で明瞭な情報開示及び開示情報の拡充に努め、ステークホルダーとの対話を通じて、社会からの期待や要請を受けとめ、それらを実践していくことで信頼される企業を目指します。
3.持続可能なサプライチェーンの強化
地球環境の保全や気候変動の緩和と適応、資源循環、人権と労働における基本的権利に対し、問題の未然防止及び継続的な配慮に努め、持続可能な事業活動を推進します。
4.サステナビリティ推進に向けた社員への教育・啓発
社員に対し重要課題に関する意識を醸成するための教育・啓発活動を行います。
(1)ガバナンス(推進体制)
サステナビリティ推進については、サステナビリティ担当役員を委員長とするサステナビリティ委員会が全社を統括しております。また、サステナビリティ委員会のもとには、「BCM(事業継続マネジメント)分科会」「環境分科会」2つの下部組織を設け、それぞれのテーマに即した全社施策の検討や推進に取り組んでおります。
サステナビリティ委員会ではマテリアリティ(重要課題)の取り組み状況の管理、各種サステナビリティに関する方針や目標、施策についての議論をしており、重要な方針及び施策、進捗状況については、取締役会にて承認、報告をしております。
<サステナビリティ体制図>
(2)戦略及びリスク管理(マテリアリティの特定と推進)
(サステナビリティ全般に関する戦略)
当社は、サステナビリティを推進するにあたり、自社のみならず社会にとっても持続可能な成長につながるマテリアリティを特定し、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでおります。
マテリアリティの特定プロセスは、サステナビリティ委員会にて、サステナビリティ開示に関する各種ガイドラインや、自社及び業界特性を加味し、サステナビリティ課題を抽出した後、社会にとっての影響度及び当社にとっての影響度を分析し、マテリアリティを特定しております。
また、特定されたマテリアリティに関するリスク・機会を認識し、事業リスクの低減及び機会の獲得のため、マテリアリティ毎に目標を設定しております。各マテリアリティについては、サステナビリティ委員会にて年1回以上取り組みの進捗状況を確認し、取締役会に報告しております。
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項目 |
マテリアリティ |
概要 |
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環境 |
環境型社会への取組推進 |
当社企業理念である「健康で豊かな食生活創り」は、持続可能な社会の実現が大前提であり、環境に配慮した事業推進が不可欠です。 気候変動への対応、資源の有効活用に積極的に取り組み、低炭素・循環型社会の形成に貢献いたします。 |
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社会 |
安心・安全な食の安定供給 |
食品流通の中核を担う卸売を生業とする当社にとって、消費者に安心・安全な食を安定的に届けることは責務です。 その使命を果たすためには、消費者が安心して購入できる商品品質の担保、災害リスクやサイバーリスク等の安定した供給を妨げるリスクの低減、安定した物流サービスの提供は必要不可欠であり、より強靭かつ高レジリエンスな体制構築に取り組んでまいります。 |
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豊かな食生活の実現 |
当社の持続的な成長・企業価値の向上のためには、ステークホルダーに対し経済価値・社会価値を提供し、社会に必要とされることが不可欠です。 既存の事業を確実に遂行することにとどまらず、当社ならではの様々な事業を通じて共有価値を創造してまいります。 |
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人的資本経営の高度化 |
「心身ともに健康で活力ある職場環境のもと、柔軟な発想をもち、失敗を恐れずチャレンジしながら自ら成長できる人財」こそ、不確実性が高い社会においても柔軟に対応しながら持続的な成長を継続するための原動力であり財産であるとの認識のもと、個々の多様性と創造性の活用(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)、自律型人財の育成、働きがいのある職場環境の整備を通じて人的資本経営の高度化に取り組んでまいります。 |
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ガバナンス |
コーポレートガバナンスの強化 |
当社がステークホルダーに信頼され持続的な成長・企業価値の向上を図るためには、ガバナンスの強化は必要不可欠です。プライム市場上場企業として、コーポレートガバナンス・コードに則り、透明性を保ち、適切な企業統治に取り組んでまいります。 |
(3)指標及び目標
サステナビリティ関連のリスク・機会を測る指標及び目標については、次の通りであります。
今後も、各目標達成に向けて、実効的な施策を推進してまいります。
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項目 |
テーマ/施策 |
指標※ |
目標※ |
23年度の状況 |
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環境 |
温室効果ガス排出削減 |
CO2排出量削減率 (2018年度比、Scope1,2) |
2030年度までに 40%削減 |
2018年度比 14.5%削減 |
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食品ロス削減 |
食品廃棄量削減率 (2018年度比) |
2030年度までに 50%削減 |
2018年度比 55.4%削減 |
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廃プラスチックの 1)排出削減 2)リサイクル推進※ |
1)排出量削減率 (2021年度比) 2)有効利用率 |
2030年度までに 1)40%削減 2)95% |
1)2021年度比 58.4%削減 2)81.8% |
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社会 |
安定した物流サービスの提供 |
1)待機車両30分超過率 2)店舗配送の積載率 |
1)5%以下 2)毎年改善 |
1)15.0% 2)80.6% |
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ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進 |
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2024年4月1日時点
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自律型人財の育成 (社員のパフォーマンス向上) |
労働生産性 (付加価値額÷従業員数) |
毎年改善 |
19百万円/人 |
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社員の健康力向上 |
健康経営優良法人認定 |
継続認定取得 |
健康経営優良法人2024認定取得 |
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働きがいのある職場環境の整備 |
1)社員エンゲージメント スコア 2) |
1)毎年改善 2) |
1)64.8 2) |
※上記の項目「環境」及び「社会」の「自律型人財の育成」に関しては連結会社の指標及び目標となっております。それ以外の項目に関しては当社(提出会社)の指標及び目標となっております。
※廃プラスチックのリサイクル推進に関する指標及び目標については、2023年度に見直しを行っております。
※女性管理職比率についての実績は、2024年4月1日時点の数値となっております。
気候変動対応
気候変動は当社事業活動の持続的な成長に影響を及ぼす重要な経営課題だと認識しております。2022年度より、
TCFDフレームワークに基づいた「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について、リスクと機会の対応策を開示しております。
(1)ガバナンス
気候変動に関するガバナンスについては、「サステナビリティ全般(1)ガバナンス」に含まれております。
(2)戦略
気候変動による短期のみならず中長期の事業リスクと機会の特定にあたり、2030年時点の当社への影響として、外部情報を参照し2つのシナリオを設定いたしました。シナリオでは主に温室効果ガス排出規制による影響と、炭素税導入による原材料・包材資源コストの増加に伴う仕入高・運送費高騰などの分析を実施しました。
その結果、当社における気候変動の影響のうち、温室効果ガスの価格付け(炭素税)の導入や、省エネ政策の強化として再生可能エネルギーの活用等を移行リスクとして、台風や洪水、平均気温の上昇からくるサプライチェーンの混乱などの変動を物理的リスクとして捉えております。これらのリスクに対しては、再生可能エネルギーへの切り替え等の対応を行っておりますが、今度も引き続き対応を推進してまいります。
(3)リスク管理
気候変動に関するリスク管理については、「サステナビリティ全般(2)戦略及びリスク管理(マテリアリティの特定と推進)」に含まれております。
(4)指標と目標
気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1,2の温室効果ガス排出量を特定しております。非財務目標にも掲げているとおり、温室効果ガスの排出抑制に向けて、2030年度までに温室効果ガスの排出量を2018年度比で40%削減することを目標としております。なお、実績につきましては「サステナビリティ全般(3)指標及び目標」に記載しております。
人的資本関係
当社は「人材」を持続的な企業価値向上の原動力となる財産であると捉え、「心身ともに健康で活力ある職場環境のもと、柔軟な発想をもち、失敗を恐れずチャレンジしながら自ら成長できる人財」を育成することを人的資本に関する基本方針としております。(1)個々の多様性と創造性の活用(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)、(2)自律型人財の育成、(3)働きがいのある職場環境の整備を通じ人的資本経営の高度化を目指しております。
(1)個々の多様性と創造性の活用
当社が持続的な企業価値向上を実現するには、社員一人ひとりがそれぞれの特性を生かして活躍していくことが重要であると認識しております。
2020年度にダイバーシティ推進室を設置以降、女性管理職・リーダー層の育成や仕事と育児の両立支援に関する各種施策を実行するなど、個々の多様性と創造性が充分発揮できるよう人材育成及び環境整備に努めております。
(2)自律型人財の育成
① メリハリのある人事制度の構築
社員の働きがいの向上の一環として、2022年7月より新たな人事制度を導入いたしました。「等級制度・評価制度・賃金制度」を大幅に刷新し、職責と成果に応じたメリハリのある制度を構築しております。
② 研修制度の拡充
当社の人財戦略の基本方針に基づき、階層別・目的別に最適な研修の機会を提供し、知識・スキルの習得ならびにエンゲージメントの向上につなげております。階層別研修では、新入社員から管理職までそれぞれの職責上必要となる知識・スキル、行動力・判断力等を習得することに注力しており、目的別研修ではDXやダイバーシティなどテーマ別等の研修を網羅的に実施し、社員の基礎能力向上とマインド醸成を図っております。
また、社員の知識及びスキル取得を支援する取り組みとして、自律型オンライン動画学習の提供や自己啓発支援制度など社員自らが主体的に学び成長する環境を整備しております。
(3)働きがいのある職場環境の整備
① 健康経営の推進
当社は、社員一人ひとりが心身ともに健康であり個々の力を存分に発揮していくことが、当社の持続的成長に必要不可欠であり、食のライフラインを担う責任を果たすことにつながるとの考えから、2021年3月に健康経営宣言を行いました。代表取締役社長を最高健康責任者に任命し、心身ともに健康で、活力ある職場づくりを推進しております。その結果、2021年度より継続して健康経営優良法人(大規模法人部門)に認定されております。
② ワーク・イン・ライフの推進
当社は、社員が働く場所や時間の選択肢を増やす制度として2023年度より「エリア総合職」の新設や、「スライドワーク」「在宅勤務」の制度化を行うなど、多様な働き方を推進するための環境整備に取り組んでおります。
当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあり、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項と考えております。
なお、本項に記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)自然災害について
大規模な地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関するリスクは年々高まっております。このような大規模な自然災害の発生により従業員への被害、物流倉庫・設備損壊、在庫破損等により商品出荷が不能となる可能性があります。また、情報システム設備や通信インフラに被害が及んだ場合は、受発注データの送受信不能、資金決済遅延等の影響が考えられます。さらに、これらにより消費マインドが落ち込んだ場合、各種施設修繕に多額の費用を要する場合など、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、大規模な自然災害が発生した場合においても食品の安定供給を行えるよう、主要業務の早期復旧・継続のための事業継続計画を策定し、毎年訓練を行うことで、有事の対応力強化を図っております。
(2)気候変動について
気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減を目的とした取り組みが世界的に進められていますが、将来的に地球温暖化が進行した場合、台風や洪水被害の甚大化によるサプライチェーンの混乱等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、将来的に温室効果ガス排出規制の強化や、炭素税などの新たな法規制・政策が導入される可能性があり、当社としての対応コスト発生に加えて、取引先側の対応コスト発生により仕入価格や物流費等の負担が増加する可能性があります。当社グループは、持続可能な社会を実現していくためのマテリアリティ長期目標の中で、2030年までに温室効果ガス排出量を2018年度比40%削減することを目標と定め、目標達成のために再生可能エネルギーの導入・活用などを推進してまいります。
(3)感染症流行について
新型インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどによる感染症が流行・拡大した場合、当社グループのみならずメーカーの工場生産、入出荷並びに配送を担う物流業者や販売先を含め、サプライチェーン全体への影響が懸念されます。また、感染症流行抑制のため、長期間にわたる移動制限や都市封鎖等により大幅な経済活動停滞が発生するなどの影響により景気が悪化し消費マインドが落ち込んだ場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、感染症流行が発生した場合においても食品の安定供給を行えるよう、主要業務の継続のための事業継続計画を策定しております。実際に今般の新型コロナウイルス感染症拡大への当社グループの対応として、物流センターにおいては行政当局の指導・要請に基づく感染拡大防止策と安全配慮策を講じながら安定的に事業運営を行っております。
(4)法的規制について
当社グループは国内で事業を遂行していく上で、酒税法、食品衛生法、労働関連規制、下請法、環境関連法規等の適用を受けております。将来において予測のできない法律等の改正が行われた場合、当社グループの事業活動が制限され、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、法務・コンプライアンス部において、事業を遂行していく上で影響を与える法律等の改正を事前に把握し、また、関連部署において適切に対応を行うことで法令違反等の発生可能性を低減するように努めております。
(5)事業環境変化について
食品流通業界においては、少子高齢化による労働人口減少やEC取引増加などによる宅配便の増加等の影響もあり、トラックドライバーの需給ギャップの拡大が予想されます。これらの事業環境の変化により、物流費の高騰のみならず適切な費用の範囲内での物流確保ができず当社グループの事業運営が滞り、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、国土交通省・経済産業省・農林水産省が推進する「ホワイト物流」推進運動への賛同表明など、トラックドライバー等の労働環境改善を推し進めるとともに、物流センターにおける省人化や受発注システムの見直しなどによる効率化を推進することで、適切な費用の範囲内における物流の確保に努めてまいります。
(6)競合企業について
当社グループが事業展開をしている食料品卸売業界は、大規模な設備投資や仕入先、得意先との関係性など比較的参入障壁が高く、新規参入により業界の勢力図が変化するリスクは少ないとみております。しかしながら、業界内部においては、総人口の減少、得意先である小売業間の競争激化や物流費の高騰などにより食料品卸売事業者間の競争も激化しており、同業他社に対する競争力が低下した場合、中長期的には業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(7)親会社及びそのグループ会社との関係について
当社は、伊藤忠商事㈱(2024年3月31日現在、間接保有を含め、当社議決権の52.3%を保有)が親会社であります。同社及びそのグループ企業と取引を行う際には、当社株主全体の利益の最大化を図るべく、当社グループの企業価値向上を最優先して決定することとしております。重要性が高い取引については、取締役会において十分審議の上、承認を得て実施しております。伊藤忠商事㈱グループ各社との主な取引関係は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」における「関連当事者情報」をご参照下さい。なお、伊藤忠商事㈱との資本関係に変化が生じ経営方針・事業展開等に大幅な転換があった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)投資について
当社グループは、事業領域拡大のために様々な投資を行っておりますが、経営環境の変化や投資先の業績不振などに伴い期待した効果が得られないリスクがあります。また、時価の下落や企業価値の低下により当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらの投資の実施にあたっては、慎重に検討を行い、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合に限り実行し、また、一定規模以上の投資については、定期的に進捗をレビューするなど、リスクの低減に努めております。
(9)情報システムについて
当社グループは全国に事業所・物流拠点を配し、コンピュータセンターで集中処理する全国的なネットワークを構築しております。また、拠点を結ぶ全ての回線にはバックアップ回線を整備する等セキュリティには万全の体制をとっておりますが、大規模な災害が発生した場合の物理的障害、あるいは想定外のウイルスやなりすましメール、サイバー攻撃等によるシステム障害、個人情報・機密情報の漏洩などが発生した場合は、業務全体への影響、セキュリティ対策費用の増大、また損害賠償請求などにより当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10)コンプライアンスについて
当社グループは事業の遂行に際して、法令・規則等を遵守し、コンプライアンス経営を推進しております。しかしながら、役員・従業員等による不祥事の発生や法令・社会規範に反した行動等により、法令による罰則・訴訟の提起、またステークホルダーの信用を失うことにより当社の企業価値を毀損し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、「企業行動基準」を定めるとともに、コンプライアンス担当役員を委員長とする「コンプライアンス委員会」を設置し、その管下に「独占禁止法分科会」「モニタリングチーム」「コンプライアンス責任者会議」「ISC グループコンプライアンス連絡会」を設置するなどの体制整備を行っております。また、定期的な研修等による社員教育を通じてコンプライアンスのレベルを高め、法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するように努めております。
(11)食品安全管理について
食への安全・安心が大きく問われている中で、当社グループが取扱う酒類・食品等の品質管理を今まで以上に徹底させることは、最重要事項の一つと認識しております。当社は専門知識を有する専任者を品質保証部に配置し、当社グループの商品表示の調査・確認、委託製造先の工程調査・衛生管理及び物流センターの品質保全状況に対する監査・点検・指導等、品質管理体制の整備強化に取り組んでおります。しかしながら、外的要因による不測の事故等の発生により、当社グループの営業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)債権回収について
当社グループは、多数の得意先に対して、後払い条件で商品・サービスの販売(与信供与)を行っており、経済情勢悪化の影響を含めた与信先の財政状態悪化により債権回収が滞る可能性があります。また、今般の新型コロナウイルス感染症拡大影響のように経済活動が大きく停滞する場合、そのリスクは増大するものと考えております。債権回収が滞る、もしくは、回収不能になった場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、これらのリスクに対し「与信管理規程」を定めそれを適切に運用するとともに、信用保証や担保を取得するなどの回収リスクの低減に努めております。
(13)固定資産について
当社グループは、有形固定資産及び無形資産等の固定資産を保有しておりますが、経営環境の著しい変化や収益性の低下などに伴い、十分なキャッシュ・フローの創出が見込めなくなった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらの設備投資の取得等にあたっては、慎重に検討を行い、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合に限り実行し、また、一定規模以上の投資については、定期的に進捗をレビューするなど、リスクの低減に努めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状況、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス5類への移行後、人流の活発化やインバウンド需要の拡大等により経済正常化が一層進み、景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。
食品流通業界におきましては、商品価格の値上げ等により消費マインドが低下し、需要減退は見られるものの、賃金上昇や行楽需要の活発化により個人消費は徐々に回復しました。外食業界やコンビニエンスストアでは、本格的な人流回復に加え、価格上昇による客単価の向上により回復・拡大が見られました。スーパーマーケットにおきましては、買上げ点数の減少や低価格・PB商品の人気が高まる一方で、消費者ニーズを満たした付加価値商品が伸長するなど、消費の二極化が一層進んでおります。
このような状況下、当社グループは今期スタートさせた中期経営計画「Transform 2025~創造と循環~」に基づき事業を推進してまいりました。重点分野として掲げた「情報」では、店頭への来店動機や商品の購買意欲の喚起を目的として、デジタルサイネージを活用した売り場作りを積極的に推進いたしました。旬の食材の紹介や新商品情報の発信、プレゼントキャンペーンの実施など、デジタルサイネージ上で放映するコンテンツと売り場を連動させることで、売上拡大につながる魅力的な売り場づくりを進めてまいりました。「商品開発」では、おせちやクリスマスケーキに加え、冷凍食品のオリジナルブランド「凍眠市場」のラインナップを充実させ、拡販に努めました。国産の高品質な素材を新鮮な状態で凍結することで、これまで生産地で限られた期間しか味わえなかったおいしさを消費者に提供することができ、ギフトやふるさと納税の返礼品など幅広いシーンで需要が生まれております。「物流」においては、デジタル技術活用によるさらなる庫内作業の効率化に加え、トラックの積載効率改善やドライバーの労働負荷軽減など2024年問題に対して自社のみならず業界全体での取り組みも推進し、サプライチェーン全体の効率化を図りました。また、これらの重点分野を支える基盤の強化として、人材育成の充実やダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進、働きがいのある職場環境整備などの人的資本経営の高度化に加え、DXの推進も積極的に進めております。
サステナビリティへの取り組みでは、2020年度に公表したマテリアリティ(重要課題)の見直しを行うとともに、2030年度までの長期目標に加え、マテリアリティと連動した非財務目標を設定いたしました。また、2023年10月には「コーポレートレポート2023」を発行し、中期経営計画「Transform 2025~創造と循環~」の考え方や重点分野及びマテリアリティごとの取り組みなど、非財務情報を含めた情報開示の充実を進めております。引き続き温室効果ガス排出量の削減、食品廃棄量の削減、健康経営推進など、各マテリアリティに掲げた項目への取り組みを推進し、持続的な成長を目指してまいります。
当連結会計年度の売上高は商品価格上昇により収益面では総じて好調に推移しており、コンビニエンスストアやスーパーマーケット向けにおける新規取引の獲得、ドラッグストア向け取引の拡大、外食・業務用取引の需要回復等により、前期比29,498百万円(4.6%)増収の672,451百万円となりました。
利益面では、取引拡大及び採算改善努力等による増収により売上総利益増、コンビニエンスストアの市況好調による物流事業の収入増等により、営業利益は前期比153百万円(2.0%)増益の7,660百万円、経常利益は前期比277百万円(3.1%)増益の9,220百万円となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比1,756百万円(36.3%)増益の6,598百万円となりました。
当連結会計年度における販売実績を業態別、商品分類別に示すと次のとおりであります。
(業態別売上高)
|
業 態 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
増 減 |
|||
|
金 額 |
構成比 |
金 額 |
構成比 |
金 額 |
率 |
|
|
|
百万円 |
% |
百万円 |
% |
百万円 |
% |
|
卸売業 |
34,335 |
5.3 |
35,504 |
5.3 |
1,170 |
3.4 |
|
百貨店 |
18,437 |
2.9 |
17,734 |
2.6 |
△703 |
△3.8 |
|
GMS・SM |
345,826 |
53.8 |
357,467 |
53.2 |
11,641 |
3.4 |
|
CVS |
73,955 |
11.5 |
76,001 |
11.3 |
2,046 |
2.8 |
|
ドラッグストア |
66,572 |
10.3 |
75,340 |
11.2 |
8,768 |
13.2 |
|
その他小売業 |
75,611 |
11.8 |
81,349 |
12.1 |
5,737 |
7.6 |
|
その他 |
28,216 |
4.4 |
29,056 |
4.3 |
840 |
3.0 |
|
合 計 |
642,953 |
100.0 |
672,451 |
100.0 |
29,498 |
4.6 |
(注)1 GMSはゼネラル・マーチャンダイズ・ストアであります。
2 SMはスーパーマーケットであります。
3 CVSはコンビニエンスストアであります。
(商品分類別売上高)
|
商 品 分 類 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
増 減 |
|||
|
金 額 |
構成比 |
金 額 |
構成比 |
金 額 |
率 |
|
|
|
百万円 |
% |
百万円 |
% |
百万円 |
% |
|
ビール類 |
150,722 |
23.4 |
154,328 |
22.9 |
3,605 |
2.4 |
|
和洋酒 |
102,871 |
16.0 |
106,322 |
15.8 |
3,451 |
3.4 |
|
調味料・缶詰 |
104,370 |
16.2 |
110,446 |
16.4 |
6,075 |
5.8 |
|
嗜好品・飲料 |
154,854 |
24.1 |
167,805 |
25.0 |
12,951 |
8.4 |
|
麺・乾物 |
45,797 |
7.1 |
48,129 |
7.2 |
2,332 |
5.1 |
|
冷凍・チルド |
26,283 |
4.1 |
27,786 |
4.1 |
1,504 |
5.7 |
|
ギフト |
34,618 |
5.4 |
33,587 |
5.0 |
△1,031 |
△3.0 |
|
その他 |
23,438 |
3.7 |
24,048 |
3.6 |
610 |
2.6 |
|
合 計 |
642,953 |
100.0 |
672,451 |
100.0 |
29,498 |
4.6 |
(注) 発泡酒及び第3のビールの売上高は「ビール類」に含んでおります。
② 財政状態及びキャッシュ・フローの状況
財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は274,496百万円となり、前連結会計年度末に比べ27,879百万円の増加となりました。これは、取引拡大、飲料・調味料の需要増、期末休日要因による売上債権が14,364百万円、グループ預け金が7,100百万円、未収入金が1,803百万円、それぞれ増加したことなどによるものであります。
負債は、165,228百万円となり、前連結会計年度末に比べ18,392百万円の増加となりました。これは、資産の増加と同様の要因により仕入債務が13,480百万円増加したことによるものであります。
純資産は、109,268百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,487百万円の増加となりました。これは、利益剰余金が5,457百万円、その他有価証券評価差額金が3,786百万円増加したことなどによるものであります。
キャッシュ・フローの状況
|
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
増 減 (百万円) |
|
金額(百万円) |
金額(百万円) |
||
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
7,679 |
10,531 |
2,852 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△2,424 |
△1,657 |
766 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△2,157 |
△1,723 |
434 |
|
現金及び現金同等物の増減額 |
3,098 |
7,150 |
4,052 |
|
現金及び現金同等物の期首残高 |
7,667 |
10,765 |
3,098 |
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
10,765 |
17,915 |
7,150 |
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の期末残高は17,915百万円となり前連結会計年度末と比べ7,150百万円増加いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は10,531百万円となりました。主な要因はスーパーマーケットの取引の拡大及びドラッグストアの売上好調等による営業取引収入の堅調な推移等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は1,657百万円となりました。主な要因はシステム関連の無形固定資産の取得による支出等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は1,723百万円となりました。主な要因は配当金の支払いならびにリース債務の返済による支出等によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
イ.販売実績
当連結会計年度における販売実績を商品分類別に示すと次のとおりであります。
|
商 品 分 類 |
金額(百万円) |
前年増減率(%) |
|
ビール類 |
154,328 |
2.4 |
|
和洋酒 |
106,322 |
3.4 |
|
調味料・缶詰 |
110,446 |
5.8 |
|
嗜好品・飲料 |
167,805 |
8.4 |
|
麺・乾物 |
48,129 |
5.1 |
|
冷凍・チルド |
27,786 |
5.7 |
|
ギフト |
33,587 |
△3.0 |
|
その他 |
24,048 |
2.6 |
|
合 計 |
672,451 |
4.6 |
(注)1 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
㈱セブン-イレブン・ジャパン |
73,955 |
11.5 |
76,001 |
11.3 |
|
㈱コスモス薬品 |
- |
- |
67,518 |
10.0 |
(注)2 発泡酒及び第3のビールの売上高は「ビール類」に含んでおります。
(注)3 前連結会計年度の㈱コスモス薬品の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が10%未満であるため記載を省略しております。
ロ.仕入実績
当連結会計年度における仕入実績を商品分類別に示すと次のとおりであります。
|
商 品 分 類 |
金額(百万円) |
前年増減率(%) |
|
ビール類 |
149,163 |
1.7 |
|
和洋酒 |
101,562 |
3.2 |
|
調味料・缶詰 |
104,273 |
5.3 |
|
嗜好品・飲料 |
158,627 |
8.0 |
|
麺・乾物 |
45,099 |
4.7 |
|
冷凍・チルド |
24,221 |
6.2 |
|
ギフト |
30,540 |
△3.1 |
|
その他 |
19,554 |
4.4 |
|
合 計 |
633,039 |
4.3 |
(注) 発泡酒及び第3のビールの仕入高は「ビール類」に含んでおります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、本項に記載の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討結果
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討結果につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載をしております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資金の流動性にかかる情報
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態及びキャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品仕入費用及び物流センター運営費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要は事業領域拡大のための物流センター等にかかる設備投資、システム開発投資等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保しており、運転資金及び設備投資等の資金需要については、自己資金の充当、もしくはリースによる資金調達を基本としております。
なお、当連結会計年度末におけるリース債務等を含む有利子負債の残高は4,673百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は17,915百万円となっております。
当連結会計年度においては、基幹システムの一部稼働開始と、システム更改に係る投資を継続的に実施しており、その資金調達は自己資金を充当しております。引き続き基幹システム更改や成長に向けた投資を行ってまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載の通りであります。
特に記載すべき事項はありません。
特に記載すべき事項はありません。