文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループはコーヒー等の飲料及び食品の専門商社として主に業務用の分野で事業を行っております。経営理念「ともに考え、ともに働き、ともに栄えよう」のもと、事業活動のミッションとして「世界の食の幸せに貢献する」ことを掲げております。当社グループは1906年創業とわが国にあって比較的長い業歴を有しておりますが、更に業歴を伸ばし「永く続く会社となること」に重点を置いております。その必要条件として以下を規定しております。
・社会に必要とされ続ける会社であること
社会と同じ方向を向いて事業を行うこと、利益とともに社会貢献にもしっかり取り組むこと
・顧客、取引先に必要とされ続ける会社であること
価値を共有するパートナーから信頼され、頼りにされ、よい顧客、よい取引先であり続けること
・株主に必要とされ続ける会社であること
ガバナンスを強化し、適切な還元と発信により株主に愛され、満足し続けていただくこと
・従業員に必要とされ続ける会社であること
従業員に適切に報いるだけでなく、働きやすさ、働きがいを追求し、従業員に愛され希望が宿る職場であり続けること
・変化に対応し続ける会社であること
変化に対する感度を高め、変化に対し常にしなやかに対応できる会社であり続けること
・利益を安定継続して出し続ける会社であること
社会や環境に配慮しながら事業や取扱商品の新陳代謝をすすめ、労働生産性・資本生産性を追求し続けること、適切な事業ポートフォリオを追求し続けること
そしてこれらの必要条件の充足を着実に進めていくため、継続的に新たな「商売の仕組み」「経営の仕組み」「人事の仕組み」「働く仕組み」の確立や改革改善等、さまざまな「仕組み化」を進めております。
また、当社グループは2022年度よりスタートさせている中期経営計画「SHINE2024」をもとに、GHG(温室効果ガス)を削減しながらの企業成長や、社会的課題解決のビジネス化等の土台作りに取り組み、2025年4月からは新たな中期経営計画「SHINE2027」をもとに変革と実践を掲げ、一層の経済的価値・社会的価値の追求を目指しております。
当社の事業はコーヒー・茶類事業、食品事業、農産事業、海外事業の4つに分類され、それぞれの取り組みは以下のとおりであります。
コーヒーや茶類の輸入、加工、販売を通じて「1杯の幸せ」をつくり、消費者の皆様にお届けしていきます。原料となる作物の特性上、発展途上国との関りが深く、長期間のパートナーシップの構築により、安定した雇用や技術の向上、生活の改善に貢献するとともに、生産国と共同で社会課題解決に向けて取り組んでいきます。
日本国内外で開発する業務用や中食等の食材の販売により「食の豊かさ」を支えていきます。さまざまな分野でのこだわり食材に加え、共働き世帯に役立つ食材、歳を重ねてもいつまでもおいしく食べられる食材、自然災害等による価格高騰から食卓を守るための食材等の提供により、世の中に貢献していきます。
「安全安心かつサステナブルな農産物で、世界のステークホルダーの幸せに貢献する。」をミッションとし、専門性を持って付加価値のある海外及び国内の生鮮野菜と加工野菜の安定供給に努めると同時に、雇用の創出、循環型農業の推進、環境や生態系への配慮等、社会課題を解決する商品の開発にも注力していきます。
日本の誇るべき文化と技術を「食」を通じて、多様化する世界の消費者ニーズに寄り添いながら広めていきます。また、海外グループ会社とのシナジーを活用することで、世界の食文化の発展に貢献していきます。
当社の企業構造については第1 企業の概況、3 事業の内容の事業系統図のとおりであります。
コーヒー・茶類事業、食品事業、農産事業、海外事業それぞれの市場環境・顧客動向は以下のとおりであります。
2024年は、国際コーヒー相場が引き続き高騰し、記録的な水準をつけました。わが国のコーヒー輸入量は微増したものの、国内消費量は微減となりました。世界的にはコーヒー消費量の増加が継続しており、近年では生産国においてもコーヒーの消費が伸びており、消費国として成長を遂げている点が注目されています。
わが国のレギュラーコーヒー市場においては、訪日外国人旅行客の増加もありホテル・レストラン・カフェなど業務用分野でのコーヒー需要はさらに回復傾向にありますが、一方で人手不足等の課題も顕著になっております。また昨今の平均気温上昇の影響もあり、アイスコーヒーの着目度も高くなっております。
サステナブルコーヒーへの関心は引き続き高まっており、2024年は温室効果ガス排出抑制に向けた焙煎技術のイノベーションが進展しました。消費者のコーヒーそのものへの興味も持続しています。さらに、健康意識の高まりからカフェインレスコーヒーの注目度も引き続き高くカフェインレス市場規模も拡大しております。
茶類市場に関しまして、家庭用品の市場につきましては数量ベースでは減少しているものの、市場に値上げが浸透し金額ベースでは増加しています。当社の主要な市場である工業用市場においてはRTD(Ready-to-Drink)のペットボトル飲料が大半を占めております。2024年におきましては大手メーカーの積極的なマーケティング及び夏の猛暑によりアイスティー需要が増加し、また麦茶飲料にも伸長が見られました。
コロナ禍を経て食の市場は外食へと一気にシフトし、その状況が今年も継続されております。その流れに沿って外食関連の市場規模は急速に拡大し、訪日外国人旅行客増加の後押しもあり、増勢は依然維持されております。まだ暫くこの傾向が継続されるものと思われますが、物流業界の2024年問題以降、慢性的な人材不足等が大きな問題として食品をはじめとする様々な業界に影響を及ぼしております。また、国内市場におきましては人口の減少に加え、高齢化の進展に伴い1人当たりの飲食量が減少することが見込まれ、さらには女性の社会進出、共働き世帯、単身世帯の増加による中食需要の高まりにより、中長期的には今の外食産業の市場規模拡大はいずれ転換点に達し、漸減に転じることも予想されております。
日常の食生活で健康の維持・向上を図り、健康寿命延伸やアンチエイジングにつなげたいという意識が広まっており、小売等でも健康訴求商品の取扱い意欲を高め、供給側からは減塩化や健康ニーズに対応した商品の投入が進んでおります。またそうした健康面からのこだわり食材に加え、1人あるいは2人世帯の増加や家族バラバラの食事が増えていることにより、小容量タイプや食べ切りタイプといった個食対応の需要が今後一層増加すると考えられます。さらにはより調理が簡便な商品を求める傾向が強まっており、現に容器ごと電子レンジで調理できるような商品が増加中です。そうした動向に対する鋭い観察力を働かせ、きめ細かな、先回りした対応が求められております。
分野別には、冷凍食品の分野で、近年、外食産業、給食業者、スーパー惣菜での人手不足により調理場、バックヤードの労働軽減のため調理のいらない自然解凍食品の需要が増えております。水産の分野では、わが国の漁船漁業が2010年代後半以降、地球温暖化や乱獲の影響で減少している一方、養殖量は中国やインドネシアやベトナムを中心に急速に伸びております。
近年気候変動による異常気象や自然災害の影響が拡大し、国産農産物の豊作・不作の振れが顕著になっております。加えて、国内の人口減少・高齢化による人手不足の問題は深刻化しており、この問題を解消するためにもオペレーションに優れた原料にて効率化を図る動きが強まっております。そのため、カット野菜や保存ができる輸入野菜での安定供給のニーズは今後さらに高まることが見込まれます。
また、長く続いたデフレから、コロナ禍を機に一転した原料価格の暴騰で食品製造業は大きなコストアップを強いられており、価格転嫁に苦慮している状況下において、コストメリットのある輸入野菜は問題解決の一役を担っております。
一方で、国内市場では価格だけではなく、品質管理の強化や社会課題解決型商品の開発が求められています。
世界における日本食事情は、輸出の増加と現地需要の拡大により引き続き成長を遂げています。健康志向や 食文化としてのブランド価値の高まりはもちろんのこと、日々増加している訪日外国人旅行客が、日本で体験した和食を帰国後に求めるという新しい需要も感じられるようになっています。また、世界の外食市場もコロナ前水準を上回る成長軌道にあり、この中で日本食レストランも増加を続けています。
農林水産省が発表している2024年の農林水産物・食品の輸出額は、1兆5,073億円となり、前年比3.7%の増加で、過去最高を更新しました。
なお当社輸出事業における主要顧客は日本食品の販売を手がける卸売業者となり、その内容は特定の商品を専門的に取扱う企業から広範に商品を取扱う企業まで幅広くあり、それぞれの事業規模も様々です。
そうした顧客に対し、当社グループの専門性を活かすとともに、国内のメーカー=パートナーと緊密に協働し、求められる商品を安定的に供給し、信頼に応えております。また顧客と連携し、現地の食品管理に係る諸規制や流通制度にも対応しております。
当社グループの事業について、グループ会社のコーヒー・飲料関連の加工工場資本設備を除き総じて比較的少額の資本により新規参入、あるいは川上・川下からの参入が可能であると目され、事実、相応の競合は存在しております。しかしながら事業遂行にあたっては、かなり高度な専門知識や経験に基づくノウハウ、顧客・取引先との相互の信頼関係が伴わなければならず、当社グループはそうしたソフト面の知見や基盤をもとに競争優位を図っております。コーヒー・茶類事業、食品事業、農産事業、海外事業それぞれの競争優位のポイントは以下のとおりであります。
・原料、加工技術、品質管理等に関して、業界をリードする広範で深い知見、諸資格を有する人材の豊富さと、こだわりの原料から加工までお客様のニーズに合わせた商品価値創造力
・原料の生産者・輸出業者と長年かけて構築したパートナーシップとそれからもたらされる最新の情報や付加価値の創造力と提案力
・海外拠点(中国、タイ、インド、英国)との連携による広範で深い知見と多角的な視点
・グループ会社が有する東西の焙煎工場機能
・コーヒーや紅茶の商品特性からGHG(温室効果ガス)削減や多様性、生産国とともに生きるための社会課題解決型商品の提案とサステナブルな取組とその価値の提供
・食品原料、製品、それらの加工技術、品質管理等に関する広範で深い知見
・国内外の多数の食品原料供給元、製品の製造元とのつながり、他方、ニーズ先との接点とそれらの情報の結合
・商品ごとの高度な専門性を有した担当者による知見と対応力
・供給元との密接な連携により確立された、安定的な供給網
・食品に関する深く広範な知識と国内メーカーとの厚い信頼関係
・輸出先国の輸入食品管理に係る諸規制や流通制度に関する情報、輸出に係る貿易知識
当社グループは、事業の遂行にあたって、品質・衛生・表示面についてわが国の食品衛生法、JAS法及び食品表示法等を遵守しております。加えて海外との取引が盛んな当社は、輸出入を行う商品に関し対象国の法的規制も受けており、各国で法令の変更や新たな法令の施行等があった場合には、それを適切に受け入れ遵守していく必要があります。その上、わが国と輸出入先の国とで食品衛生等に関する基準が異なる場合には、そのどちらをも充足するように対応していくことが求められております。
当社グループは、ステークホルダーとの双方向での実りある関係の維持・発展、すなわち[a]顧客に提供する商品について満足をいただき収入を得る、[b]取引先に仕入れた商品や受けたサービスの対価を支払う、[c]従業員に適切に報い安心して働いてもらう、[d]金融機関等に対しサービスに応じた金利、手数料を支払う、[e]国・地方政府にきちんと税金を納める、[f]株主に配当等により適切に報いる、の関係の均衡の取れた拡大を経営の根幹に置き、それに基づくさまざまな事業活動と直接的にリンクする最終利益(親会社株主に帰属する当期純利益)の絶対額確保を最も重視しております。また事業面でその最終利益を特に大きく左右するものとして営業利益をキーとして捉え、その絶対金額及びその従業員1人当たり金額も注視しております。なお、ステークホルダーの満足度という点では従業員満足度等も考慮しております。
当社グループは、株主視線での効率化指標として自己資本当期純利益率(ROE)を重視しております。
自己資本当期純利益率の最近の状況は次のとおりであります。
(注)自己資本 = 純資産合計-新株予約権-非支配株主持分、期首・期末の平均により計算
わが国では広く自己資本当期純利益率8%が一つの基準とされておりますが、当社グループは長らくその水準に達しておりませんでしたが、徐々に改善が図られ、前連結会計年度はクリアしましたが、当連結会計年度は再び8%を下回っております。引き続き安定して適切な水準を確保できるよう運営してまいります。
なお近時わが国において株価純資産倍率(PBR)が1を割れている会社が多く存在し、改善への取り組みの必要性が指摘されております。当社グループも残念ながら1を割れております。PBRは本項のROEと株価収益率(PER)の積によって表され、当社グループのPBRとPERの最近の状況は次のとおりであります。
(注)純資産は上記の自己資本で、発行済株式数を8,000千株として計算
すなわちROEの改善はPBR引き上げのための重要なファクターであると認識され、当社グループは当連結会計年度を最終年度とする中期経営計画「SHINE2024」のなかで、業績向上の取り組み、IR活動の強化と適切な株主還元等により、ROEとPBRの両方の漸次引上げを図るよう努めてまいりました。しかしながら、当初目標として掲げていた数値には届かず、引き続き改善に向けて努めてまいります。
またROEが「売上高当期純利益率」と「売上高に対する総資産の回転率」と「自己資本比率の逆数」の積に分解されることはよく知られているところです。「売上高に対する総資産の回転率」の改善を構造的な課題として中長期的に取り組み、短期的には売上高に対する各利益の比率に焦点を当て、なかんずく次項の売上高営業利益率の引き上げを図るべく、事業の見直しや刷新を進めております。
売上高営業利益率の最近の状況は次のとおりであります。
当社グループは、自己資本当期純利益率の構成要素である総資産回転率や自己資本比率の過去の実績と実効税率等をもとに自己資本当期純利益率8%を達成するために必要な売上高営業利益率を概ね2.5%以上と算定し、事業全体としてこの2.5%を平均的・安定的にクリアすることを目標にしております。前連結会計年度はその目安を上回りましたが、当連結会計年度は仕入価格の上昇を直に転嫁することが難しく、売上総利益率は前連結会計年度に比べ減少し、また一部の海外子会社・関連会社で経済の停滞に伴う価格競争の影響等により収益環境が悪化したことにより、営業利益率は減少いたしました。その結果、当社グループ全体として再び目安の2.5%を下回りました。今後は収益の改善とROIC経営導入による投資効率管理の向上により安定的な売上高営業利益率の確保に努めてまいります。
当社グループでは、投資効率と価値創出の程度を把握するための指標として、ROICを用いております。ROICの重要性は以下2点にあります。
・投資効率の評価: ROICは、全ての投資資本(短期・長期の負債と自己資本)がどの程度効果的に使用されているかを評価するのに役立ちます。つまり、企業が投資した資本に対してどの程度のリターンを生み出しているかを示します。これは企業の資本配分の効率性を評価する上で非常に重要な指標となります。
・資本コストとの比較: ROICと資本コスト(WACC:加重平均資本コスト)を比較することで、企業が投資家から調達した資本のコストを上回るリターンを生み出しているかどうかを評価することができます。ROICが資本コストを上回っている場合、それは企業が投資家の期待を上回るリターンを生み出し、企業価値を創出していると解釈できます。
ROICは、全ての資本(負債と自己資本)をどの程度効率的に利益に変換できているかを示します。当社はこれらの数値を向上させることで、投資家に対するリターンを最大化し、企業価値を向上させることを目指しています。
事業によって使用する資本は異なり、前項の売上高営業利益率をそれぞれの事業の目標として一律に適用するのは必ずしも適切でないため、2025年3月期を最終年度とする中期経営計画「SHINE2024」のなかで、全社及び各事業の投下資本利益率を算定し、主要経営指標として注視することにしておりました。今後はこれをもとに的確に事業ポートフォリオマネジメントを行い、投資及び経営資源配分の最適化に繋げてまいります。
なお、全社の投下資本利益率の最近の状況は次のとおりであります。
(注)投下資本利益率の分子は営業利益×(1-実効税率)で、実効税率は30.5%とし、分母は期首・期末の平均で計算
WACCの計算に当たり、暫定的に負債コスト=1.25~1.65%
株主資本コスト(自社及び類似業種他社のCAPMをもとに、証券会社等の意見を参考に算定)=6.5%
以上のように、当社グループは株主資本コストと負債コストを織り込んで投下資本利益率をウォッチしながら、経営効率の向上を目指しております。
⑤ 運転資本関連項目の回転期間
当社グループは、グループ会社にコーヒー・飲料関連の加工工場を有しておりますが、主たる事業は商社として卸売業であり、健全にキャッシュフローを回していくとの観点で棚卸資産、売上債権等、運転資本関連項目の回転期間を重視しております。これは前項の投下資本利益率にも影響を与えるものであります。
当社グループは、長期経営計画実現のための橋渡しとして、中期経営計画をローリング方式により定め、実行しており、2023年3月期より中期経営計画「SHINE2024」(3か年計画)をスタートさせました。それはミッションに「世界の食の幸せに貢献する」を掲げ、永く続く会社=200年企業を目指し、「少しでも多くの、少しでも大きな食の幸せを創る」を目標にROIC経営、GHG(温室効果ガス)の削減と社会課題解決商品の開発に重点を置いた事業拡大、社内体制強化に積極的に取り組み、事業の持続的成長を目指そうとするものであります。
同計画途中では、当社グループを取り巻く事業環境が、当初計画策定時から著しく変化しており、足元の事業環境を踏まえ、中期経営計画の数値目標について上方に見直しを行うこととなりました。
当連結会計年度で「SHINE2024」は最終年度となりましたが、当初掲げた数値目標の達成だけでなく、次期中期経営計画とのつながりも意識して、GHG(温室効果ガス)を削減しながら、社会課題解決型商品の開発及び高利益率商品へのシフトに積極的に取り組み、事業の持続的成長を目指してまいりました。
当連結会計年度においては、新規開拓や値上げの浸透により売上高は概ね順調に推移しておりますが、利益につきましては原料価格の著しい変動を受け商売が低迷するお客様層もあり、そうしたところでは原料価格アップを直に転嫁することが難しく、また一部の海外子会社・関連会社で経済の停滞に伴う価格競争の影響等により収益環境が悪化し、営業利益以下において前年同期比で減益を余儀なくされました。
その結果、当連結会計年度における売上高は64,953百万円(計画値64,081百万円に対して1.4%プラス)、売上総利益は8,453百万円(計画値8,241百万円に対して2.6%プラス)、営業利益は1,557百万円(計画値1,404百万円に対して10.9%プラス)、経常利益1,336百万円(計画値1,396万円に対して4.3%マイナス)、親会社株主に帰属する当期純利益は888百万円(計画値939百万円に対して5.4%マイナス)となりました。
2026年3月期より新たに「SHINE2027」をスタートさせ、「変革と実践」をテーマに、ROICをもとにした事業・商品の見直しと今後の成長を見据えた必要投資、GHG(温室効果ガス)の削減と社会課題解決商品の開発等に引き続き重点を置いた事業拡大、社内体制強化に積極的に取り組んでまいります。
当社グループは、課題認識として、2010年代まで長きにわたり売上高及び利益が大きく成長しない状況が続いておりました。それは食品というわが国国内においては成熟した商品を取扱っていることに由来するものと考えられます。とは言え、わが国の食品業界において急成長を遂げている会社は存在しており、当社グループといたしましても、「永く続く」とともに成長の必要性を十二分に認識しております。その成長に関しましては、次の3点をテーマに取り組んでまいります。
・既存事業の枠組みのもとでヒット商品を生み出し、それを核に新規事業を発展させること
・成長余地のある海外事業を拡大させていくこと
・取扱商品に関し、GHG(温室効果ガス)削減等、プロセスやストーリーを含めた付加価値を創っていくこと
上記以外にも、ブルーオーシャンの新規事業分野に進出していくこと、M&Aを積極的に行うことが考えられないではありません。しかしながら前者は、果たしてブルーオーシャンかの見極めが難しく、また既存の当社グループの知見や強みを活かせる分野でないと著しくリスクが高いものと思料しております。また後者は、いわゆるPMI(M&A後の事業統合)が障害となることが多く、わが国では過去のM&Aの多くが失敗であったという事実も考慮し、あくまでも目的でなく手段の一つであるとの認識のもとに選別的に展開することとしております。
そうしたことから当社グループの今後の成長路線のためのテーマとして、上記の3つをまずは優先させております。
このような企業成長と歩調を合わせる形で、当社グループは収益体質の強化、企業としてのより一層の健全化にも取り組んでまいります。今後の経営環境につきましては、引き続き国内景気の回復が期待されるものの、世界がリーダー不在(Gゼロ時代)で安定性を欠く中、主要国間の自由貿易体制をめぐる対立の他、地球温暖化対策や人権等の問題も絡まり、引き続き先行き不透明な状況が続くことが予想されております。
そうしたなか、当社グループは、ミッションとして「世界の食の幸せに貢献する」を掲げ、永く続く会社=200年企業を目指しております。当社グループは2025年度から新たな中期経営計画「SHINE2027」(3ヶ年計画)をスタートさせ、「変革と実践」をテーマに、ROICをもとにした事業・商品の見直しと今後の成長を見据えた必要投資、GHG(温室効果ガス)の削減と社会課題解決商品の開発等に重点を置いた事業拡大、社内体制強化に積極的に取り組んでおります。今後も引き続き事業の持続的成長を目指すため、以下を課題として挙げ、対処してまいります。
① ビジネスモデル変革
・高利益率商品へのシフト
・今後の成長に向けた必要投資(特にグループ会社)
・グローバル展開の加速
・デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
・社会課題解決型商品の拡大
・GHG排出削減を踏まえた商品力強化
② 人財育成体制の再構築、エンゲージメント向上
・多様な人財の活躍による組織的人財力強化
・継続的な賃金ベースアップに向けた諸改革
・教育・研修費の適正化
・労働生産性の指標化
・企業風土の刷新…「一緒に、夢中に!」取り組む風土作り
・DE&Iの促進…「女性管理職比率の向上」「障がい者雇用率の向上」「男女の賃金格差縮小」
③ グループ経営深掘
・グループ全体でのシナジー効果追求、戦略人事推進によるグループ内の人財流動化促進
・グループ全体でのインフラ統合と効率化の推進
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
当社グループでは、以下の3つをマテリアリティとして認識しております。
「事業の成長とサステナビリティ」
「人財の成長とサステナビリティ」
「社会・環境の調和とサステナビリティ」
この中で社会・環境対策商品の販売による事業成長を基盤に、人財の成長、社会・環境の調和の3点が補完的関係を形成していきます。当社グループの全ての活動は「サステナビリティ方針」に則り、取締役会において承認のISO(ISO14001)に基づきリスク・機会を抽出します。リスクに関しては社長を委員長とした「リスク管理委員会」により管理体制を構築しサステナビリティ保持を構築しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
当社グループでは、サステナビリティに関する重要事項を主にサステナビリティ推進室で立案し、経営会議を経て、最重要事項は取締役会で審議・決議します。取締役会は気候関連課題をはじめサステナビリティに関する重要事項の監督を行い、サステナビリティ推進室によるリスク、機会、課題の報告に対し審議、精査も行います。なおサステナビリティ推進室による経営会議・取締役会への報告は、年に1回以上設けられます。
取締役には当社グループのサステナビリティを高いレベルで達成するための経験と専門性を求めております。各取締役は責任範囲を明確にし、四半期もしくは半期ごとに進捗を確認、評価することで業績連動型報酬制度に対応します。この業績連動型報酬は譲渡制限付株式報酬を取り入れ、市場評価と同じベクトルで判断するようにしております。
環境・社会的価値を付加した商品販売を事業の成長戦略として検討し、2030年度の金額に占める社会課題解決型商品の販売割合を40%として設定します。新たなポジショニング戦略として社会並びに収益性に貢献する戦略を進めます。ここでは電力消費、ゴミ削減、人権対策など環境・社会に対する法令の改正に対応した時事的な要請・ニーズに基づく原料並びに商品の開発が主体であり、事業成長と社会課題をトレードオンの状態にすることで解決を加速する仕組みを持っています。またグループ間で同じ方向性を示すことで原料の供給体制にシナジー効果が生まれ、市場でより競争力が増すことが可能となります。
当社グループの事業特性として、コーヒー、紅茶、農産品、水産資源、養鶏、エビ養殖など自然資本の依存度が高い点が挙げられ、脱炭素対策を含む環境問題と、人権、コミュニティなど社会的課題の大きく2つに分かれます。
環境問題の適合として、当社グループは2030年にScope1及びScope2のネットゼロ、Scope3 30%削減(2021年度対比)、長期目標として2050年バリューチェーン全体のGHG排出量ネットゼロを掲げています。農産品、飼料における最大の脱炭素対策課題は窒素成分の投入減量で、品質、収穫量維持をしながら窒素肥料の減量を行う策を構築することになります。当社グループではコーヒーが基幹商品であるため、コーヒーによる脱炭素対策の試験投入を2022年度より開始し、この結果を基に紅茶、農作物、養鶏、養殖への展開を予定しています。2022年度よりブラジルでコーヒーの脱炭素試験栽培は、2025年の大型農園の移行テストにより、コスト削減を加味した脱炭素商品開発へと進める予定で、同時に他の農作物の効果試験を並行して進めます。
社会的課題の対応では、多様性の尊重を1つのキーワードとし、障がい者をはじめ社会弱者との協創による価値創造に取り組んでいます。個々の集団が持つ強み、独創性、個性を商品ごとに価値変換することで高額な買付け金額に耐えるようにするものです。ボランティア的要素を排除した価値創造を基盤としており、現在コーヒーをはじめ野菜類で製品化し、商品数は増加傾向にあります。
一方地域社会のサステナビリティも重要視しており、産地の地域社会、国内の地域社会ともに醸成を協創しています。SNSなどを媒体に地域文化を価値として発信し、歴史的価値に加えて、楽しさなどを工夫して新たな市場の創造をしています。こうした活動により、地域社会、地域産業の維持につながり、当社グループへの収益面の持続性を確保していきます。
当社グループでは、事業を取り巻くさまざまなリスクに対し的確な管理・実践が可能となることを目的とした「リスク管理規程」を設け、リスク抽出から管理までの規程を行っています。
③-1.「リスク管理規程」管理概要
・当社グループ各事業に相当程度の影響を与えうる全てのリスクを早期に発見・特定し経営レベルで掌握する。
・各リスクが当社の経営に与える影響やシナリオを検討・予測し、対応の優先順位を想定する。
・リスク管理を統括する組織を明確にし、主要リスクの対応組織を、業務分掌をもとに想定する。
・主要なリスクについて、各リスク要因の現状を把握し、必要に応じ対応策を整備する。
・危機、緊急時、責任者(対応組織)と権限・責任を検討し、指揮命令系統が適切に維持されるよう努める。
・定期的な啓蒙活動、トレーニング等を通じ、全役職員がリスク管理の適切な理解と有事の役割を認識する。
③-2.「リスク管理規程」管理体制
全社的なリスク管理推進に関わる対応策を協議、承認する組織として、社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置しています(社長が委員長の任に就くことができない場合は適切な代行者を決定)。事務局を担う管理部長が招集し、原則として年2回以上開催し、緊急時や重大リスクが顕在化した際は、社長が随時招集します。
委員会構成メンバー
委員長:社長
副委員長:管理部長
委員:常勤取締役もしくは経営役、常勤監査役、委員長・副委員長から指名された者、テーマに応じ関係部署の長もしくは幹部
主な役割と権限
・リスク管理の取組全体の方針・方向性の検討、協議、承認
・各リスクテーマ共通の仕組みの検討、協議、承認
・リスク管理に関する年次計画、予算措置、是正措置の検討、協議、承認
・必要に応じ社内外から必要なノウハウや協力の取付け検討、協議、承認
・ワーキンググループの組成指示、そのリスク管理推進の進捗管理
・各現場でのリスク状況の把握とリスク管理推進の指示、進捗管理
・情報の収集と社内外開示の実施策検討、協議、承認
③-3.リスク抽出に関して
現在当社グループのリスクは、生産国側にある環境問題(脱炭素対策・水資源問題)、人権問題(IUU・少数民族対策・児童労働・ジェンダー問題・強制労働)、生物多様性、遵法などで、国内では労働問題(残業・男女格差問題・ジェンダー問題)、環境問題(廃棄物・脱炭素対策・排煙対策)、法規など多岐にわたり、専門的な人材による適切なリスク抽出が「リスク管理」の上で重要になると考えています。ISOで管理する各部から提出された事業リスクの影響度を判断し、リスクの回避・低減化を目指します。
当社グループでは、上記「②戦略」において記載した指標については、2030年度までの目標として売上金額に占める社会課題解決型商品の販売割合を40%として設定し、一部において具体的な取組みが行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われてはいないため、記載が困難であります。
当社グループは2030年にScope1及びScope2のネットゼロ、Scope3 30%削減(2021年度対比)、長期目標として2050年バリューチェーン全体のGHG排出量ネットゼロの目標を掲げ、IPCC 第6次報告書(以下IPCCAR6)の科学的見地に基づき、GHGプロトコルに準じて実績の開示を進めます。また社会の調和に関しては、2025年度をめどに社会インパクト指数を用いた定量化目標の設定を目指します。
(2)サステナビリティに関する重点テーマの取組み
・気候変動への対応
2024年10月、当社グループ内で東京アライドコーヒーロースターズ㈱、関西アライドコーヒーロースターズ㈱が合併しました。将来的な環境変化に対応する体制構築を進めてまいります。また当社では各事業部の再編成を行い、基幹事業であるコーヒー、食品類の環境対策を進め、目標としている2050年カーボンニュートラルの実現に向け取組みを進めていきます。
当社では社会性・環境関連商品開発のビジネスモデル変革を急いでおります。このため気候変動による移行リスクを早期に捉え、新たな環境関連商品の開発が、事業成長と環境対策のトレードオンになると考えております。このため以下4点を柱とした機会創出を検討いたします。
1.環境施策:同一生産地、同一品種を守るために機材導入などにより対策を講じます。
2.品種改良:同一生産地で同一商品を作り続ける策として、各種商品で行っていきます。
3.生産地の移動:環境対応が難しくなった際、他国への技術移転を含め支援策を講じながら供給量確保に努めます。
4.代替生産物:需給バランスの崩れからビジネスとしての成立が難しくなるため、代替商品の模索をすることで収益確保に努めます。
以上により、サプライチェーン全体でリスクを回避し、機会の創出を進めてまいります。
①ガバナンス
前記「(1)サステナビリティ全般①ガバナンス」に記載の通りです。
②戦略
2024年度、当社グループではリスク・機会の抽出を明確化し、相当する事業インパクトを開示いたしました。シナリオ(1.5℃/2.0℃、4.0℃)、年度(2030年、2050年)の4項目を当社グループの各事業部でインパクト予想を行い、低・中・高の影響度で開示いたしました。低は概ね売上高換算5%未満の影響を受けると予想するもの、中は売上高換算5%以上10%未満、高は売上高換算10%以上といたしました。4.0℃シナリオの2050年では多くの項目でリスクが増える一方、機会も増加する傾向があります。当社グループでは、コーヒー、紅茶、農作物を主とした自然資本による事業を展開するため、今後とも環境リスクの軽減に努め、「世界の食の幸せ」に貢献することといたします。
影響度設定では、IPCCAR6の気候変動データを用い、変動内容と取り扱い主要産物の特性からインパクト予想をいたしました。ここでは従来の生産で事業継続を行った場合の影響度を示しており、実際にはさまざまな対応策を講じることでリスクが減少していくこととなります。
(2030年)
(2050年)
③リスク管理
前記「(1)サステナビリティ全般③リスク管理」に記載の通りです。
前記「(1)サステナビリティ全般④指標及び目標」に記載の通りです。
・自然資本への対応
自然資本への対応については、多くの企業が事業活動において「生物多様性」に影響を与えるとともに、自然(生態系)から得られる恵みに依存しております。当社グループは、コーヒーや紅茶、海産物など、自然資本に深く関連した商品を取り扱っております。今後、TNFDの枠組みに基づき、事業活動が自然及び生物多様性に及ぼすインパクト及び依存関係を評価・整理するとともに「ネイチャーポジティブ」の実現に向けた取り組みを進めてまいります。
①ガバナンス
環境対策同様、当社グループでは、サステナビリティに関する重要事項を主にサステナビリティ推進室で立案し、経営会議を経て、最重要事項は取締役会で審議・決議します。取締役会は自然資本関連課題をはじめサステナビリティに関する重要事項の監督を行い、サステナビリティ推進室によるリスク、機会、課題の報告に対し審議、精査も行います。なおサステナビリティ推進室による経営会議・取締役会への報告は、年に1回以上設けられます。
②戦略
自然資本・社会的価値を付加した商品販売を事業の成長戦略として検討し、2030年度の金額に占める社会性商品の販売割合を40%として設定します。環境対策品同様、新たなポジショニング戦略として環境、自然並びに収益性に貢献する戦略を進めます。ここでは自然の回復・維持、ゴミ削減、土中菌類の回復・維持に対応した時事的な要請・ニーズに基づく原料並びに商品の開発が主体であり、事業成長と社会課題をトレードオンの状態にすることで解決を加速する仕組みを持っていきます。またグループ間でのシナジー効果が高まる策を構築することで、市場で競争力が増すことが可能となります。
当社グループの基幹事業であるコーヒーでは、生産国ごとに生産特性を持っており、化学肥料による土壌の力の減退が課題の1つとなっています。このため科学的見地に立ち、自然の力で土中の菌類の回復が、自然に対する影響を持つと仮説を建て、自然課題へのアプローチを進めていくことにしております。
③リスク管理
当社グループの主要供給原料、商品の設定を行い、これらの原料、商品が持つ自然資本への影響をSBTN high impact commodity listで抽出いたします。これらによると当社グループでは農作物における生産活動が主体となるため一定の環境負荷が認められており、かつ地域的に水資源への影響が高くなっております。またコーヒー、紅茶など主要取扱商品は気候変化、気温上昇により生産量の減少も予測されているため、環境への負荷と同時に、現生産箇所での生産量減少などが同時に懸念材料として存在しております。こうした生物多様性と環境変化の2つの要因から、TNFD対策が財務視点で重要となり、明確な目標設定と、総合的な対策が重要となります。現在当社グループの自然資本リスクは、生産国側にある問題(化学肥料に頼る地力低下・水資源問題)、生物多様性の低下、生物数の低下、遵法など多岐にわたり、専門的な人材による適切なリスク抽出が「リスク管理」の上で重要になると考えております。ISOで管理する各部から提出された事業リスクの影響度を判断し、リスクの回避・低減化を目指します。
④指標及び目標
当社グループでは、上記「③リスクの管理」において記載した対応策を進め、2030年度までの目標として売上金額に占める社会性商品の販売割合を40%として設定し、長期目標として2050年バリューチェーン全体の「ネイチャーポジティブ」を目標に掲げ、IPCCAR6の科学的見地に基づき自然環境変化を予想しながら、実績の開示を進め、2025年度をめどに社会インパクト指数を用いた定量化目標の設定を目指します。
(3)人的資本
当社グループでは、人財の多様性確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針を次のようにしております。
①ガバナンス
人的資本の戦略及びその実行についての全般的な推進体制は、管理部が担っています。管理部は人的資本に関する多岐にわたる領域を統括し、戦略的な人財管理及び開発によって企業の目標達成を支援します。この役割には、労務管理、人財育成、パフォーマンス管理などが含まれ、組織の成長と個々の従業員の能力開発の両方を促進することが求められています。
人的資本に関わる経営の基本方針・計画・制度及び事業活動方針・戦略については、その重要性に応じ、社長及び役員を含む経営会議に付議・報告されます。重要事項については個別に取締役会にも付議・報告され、取締役会による監督が適切に図られる体制となっています。上記のようなガバナンス構造を通じて、人的資本の最大限の活用を目指し、組織全体の能力向上及びビジネスの持続的な成功を追求しています。
②戦略
当社グループは経営理念である「ともに考え、ともに働き、ともに栄えよう」のもと、「人」を中心に据えた経営を行ってきました。人を資本として捉え、その価値を高めていくことで企業を中長期的に成長させていくために、中期経営計画「SHINE2024」では土台づくりをテーマとして、「働きがい」の向上に取り組んでまいりました。2025年度からスタートする新中期経営計画「SHINE2027」では変革と実践をテーマに、「人事制度改革」、「人財育成体制」、「DE&I」の3つを柱として考え、経営陣を筆頭に、経営戦略室と管理部、新設されるBX推進本部が手を取り合い、推進してまいります。
社員一人ひとりにフォーカスし、個性や才能を伸ばすための施策を展開することで従業員エンゲージメントの向上を目指します。輝く個が集まることで組織力を高め、ともに考え、ともに働き、ともに栄え続ける、これからの当社グループを創ります。
a.人事制度改革
社員の個の力や才能を伸ばすため働きがいの向上を目指し、段階的に改革を推進しています。
当社の強みである専門性を高めることができる専門職制度の設計とそれに合わせて評価制度の見直しも実施しました。また、2024年度はキャリアビジョン研修を実施し、キャリア自立を促すことで、働きがいを高める取組みを進めています。
b.人財育成体制
会社の成長ドライバーである社員一人ひとりが成長できるように、教育や研修機会の提供や会社としてのフォローや管理を強化しています。
当社の経営理念や中期経営計画から求める人財像を「自分ごとで考え、ともに変化を楽しみ、成長する人財」と設定しました。求める人財像の実現に向けて、教育体系(カリキュラム)を策定し、2025年度から運用してまいります。また当社には、相互理解や新たな発見が期待できる海外グループ会社を含めた社内留学制度、語学やMBAなどの資格取得を支援する制度などがあります。人財投資にあたる教育費の集計をおこない、今後は投資効率や効果検証について検討を進めてまいります。
c.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)
年齢、性別、国籍などの属性に一切とらわれない体制づくり、学び続け、挑みつづけるために機会の提供を進めています。
人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針に係わる指標については、グループ間での格差もあるため、今後、管理職業務の整理や労働環境の改善、グループ間の人財交流などを通して目標の達成をめざします。障がい者雇用については、対象者へ就労満足度調査を実施し、その結果から就労環境の改善に取り組んでいます。また、多様性への理解促進のために研修やイベント、さまざまな活動を通して「正しく知ること」の機会を増やしています。
*サステナビリティに関する活動の内容など詳細については統合報告書2025にて開示いたします。
③リスク管理
a.全般的なリスク管理
コンプライアンスに関する職制ライン及び職制外の報告・相談ルートとして、内部通報規程に基づき、第三者機関の通報窓口を設置しています(匿名可)。当社役職員のほか、派遣社員、業務委託先を対象としており、電話、メール等を通じて受け付けています。受付けた通報に対して、通報者の秘匿性の保護に注意し、初期対応を迅速に行っています。調査については、中立的な第三者によって行われ、全ての関係者からの意見や証拠を平等に収集・評価します。調査結果については、コンプライアンス委員会に報告され、適切な対策を講じることとしています。
b.雇用に関わるリスク管理
当社は永く働ける企業を目指し、価値創造の源泉である人財が、仕事と家庭の両立に悩み退職してしまうことや、キャリアアップの機会を諦めざるを得ないこと等の「リスク」に対して、上記(3)人的資本②戦略に記載した人事制度改革、人財育成体制、DE&Iに取り組んでいます。また、2025年度には健康経営の推進を行い、人財の健康面リスクを取除くサポートを行う予定です。
④指標及び目標
当該目標は当社グループにおける主要な事業を営む提出会社のものであり、今後、以下のとおり進めていきます。
*1.2025年度専門職制度導入に伴う定義の変更と当社グループでの目標値の設定
*2.当社グループでの取得推進体制の整備と目標値の設定
*3.提出会社における分析と当社グループでの目標値の設定
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また各事項の発生可能性や影響度について、以下の分類を目安に考察を行っております。
[A] 発生の可能性:(イ)高(2~3年の期間に1度以上程度)、(ロ)中(3年~10年の期間に1度以上程度)、(ハ)低(10年以上の期間に1度以上程度)
[B] 影響度:(イ)大(売上高換算10%以上又は利益換算30%以上)、(ロ)中(売上高換算5%~10%又は利益換算15%~30%)、(ハ)小(売上高換算5%未満又は利益換算15%未満)、なお影響が表れる様相は売上高、利益といった業績のみならず、財産損失、事業遂行力低下、企業イメージダウン等が考えられますが、すべて業績に引き直して考察しております。
当社グループの根幹事業は商社であり、世界的に開かれた自由度の高い貿易体制が続いていくことが望ましい状況です。また国内向けの事業に関して主に輸入商品を取扱っており、その仕入価格は産地国・調達先国の気候・作柄状況、地場通貨の相場、政情等によって変動する国際商品相場及び為替レートの影響を受けます。このような相場リスクを回避する目的で為替予約取引及びコーヒー先物取引を行い、また、調達先国を複数持つとともに、販売価格への転嫁を行っております。しかしながら、相場の変動が著しく急激あるいは変則的で、リスク回避を含めたコスト上昇分を販売価格に転嫁しきれない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、リスク回避目的の為替予約取引やコーヒー先物取引の未実現分の評価については繰延ヘッジ損益に計上され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループのこれまでの業績推移を振り返り、発生の可能性は中位、影響度は中と認識しております。近時は主要国間で関税や貿易体制をめぐる議論がかまびすしく、予断を許さない状況ですが、緩みのない高感度の情報収集と注意深い状況観察をもとにマネジメント主導で適切に判断し、迅速な対応を図っております。
当社グループは、ITを活用し事業活動を効率的に進めるために、多くのITシステムを運用しています。これらを安全に運用するために権限責任の明確化、チェック体制、外部からの侵入対策、社員教育等情報セキュリティ体制の強化に努めております。しかしながら、サイバー攻撃を含む意図的な行為により、情報の漏洩、消失、各種障害等の影響を受け、信用低下や事業活動が一時的に中断することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。2024年9月に発生した外部から不正アクセスにより一部サーバーが暗号化されるランサムウェア被害では、当社グループが保有する個人情報の漏洩は確認されませんでしたが、事態を真摯に受け止め、セキュリティと監視体制のさらなる強化を実施し再発防止に取り組み、個人情報の管理についても改めて規程による厳重な見直しと運用を行っております。これまでの経験をもとに大事に至る当該リスクの発生の可能性は中位、影響度は中と認識しております。引き続ききめ細かく管理し、不測の事態が起きないよう努めてまいります。
当社グループは、需給バランス、作柄、国際相場等さまざまな調達リスクや市場の変化に素早く対応できるよう、取扱商品により産地を分散化し安定的に調達できるよう努めております。さらに、サプライチェーン全体においてどこで人権リスクが発生しやすいかを分析・確認することが重要であり予防・低減に努めております。しかしながら、世界的な需給バランスの変化や不作、調達国における法律等の変更や政治的混乱、国際紛争等により商品の大幅な価格上昇や調達量不足が生じた場合やサプライチェーンにおける児童労働、強制労働、外国人労働者の差別等による当社グループの社会的な信用低下により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。途上国・新興国等における人権状況等に鑑み発生の可能性は中位、影響度は、当社グループの一部の商品において代替が難しいものが含まれるため中と認識しております。それらの対策として、サプライチェーンにおけるリスクの該否及び対応について確認と継続的な対応改善を図ってまいります。
当社グループは、取扱商品の多くを海外から調達しており、その衛生管理に関し、専門部署による品質チェック、海外製造元に対する監査・指導等を通じ、万全な品質管理体制を敷き、十分な注意を払っておりますが、偶発的な事象等による商品事故や当社グループの取り組み範囲を超えるトラブルが発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。不断の管理により未然防止に努めているため、過去においてリスクは最小限に抑えてまいりましたが、食の安全安心の観点から慎重を期し発生の可能性は高位、影響度は、当社グループの取扱商品が多岐にわたることから個々の商品としては小と認識しております。引き続き事故に繋がるいかなる兆候も見逃さず、油断なく管理を行ってまいります。
(5) 感染症(パンデミック)のリスクについて
2020年に発生した新型コロナウイルスは世界中に拡散し、人々の社会生活や経済活動を一変させ、当社グループの主力マーケットである食品業界では、特に外食関連において深刻な打撃を与えてきました。
当社グループについて、感染症(パンデミック)に関して想定されている主要なリスクは次の通りであります。
① 国内外にて需要減少により販売が低下するリスク
② 販売ルートのいずれかで信用面の悪化が生じ連鎖するリスク
③ 生産拠点あるいは物流、サプライチェーンにおいて何らかの支障が生じ、販売用の仕入れ商品の調達が滞るリスク
④ 顧客・取引先と対面商談ができないことによるリスク
⑤ 当社グループのいずれかのユニットで社内感染により業務が停止するリスク
⑥ リモートワークに伴う業務機能の低下、あるいは社員の精神的な不安、ストレス等のリスク
⑦ 金融市場の混乱、あるいは当社グループの不測の業績悪化により資金調達に支障が生じるリスク
例年、インフルエンザ等はありますが、今回の新型コロナウイルスほどのパンデミックは1920年代のスペイン風邪以来と言われており、発生の可能性は低位であると認識しております。しかしながら、感染症(パンデミック)が当社グループ商品の需要先の一つである国内外の外食関連に対し厳しい打撃を与える場合の影響度は大と考えられ、中食等影響を受けない分野の営業強化や新しい販売チャンネルの開拓等の必要性を認識し、継続して検討してまいります。
当社グループでは、国内外の取引先との商取引に伴い発生する売掛債権等の信用リスクが存在します。債権の回収不能という事態を未然に防ぐため、情報収集や与信管理等を徹底し、取引信用保険を付保して、債権の保全策を講じております。また、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を見積り、回収不能見込額を貸倒引当金に計上しております。しかしながら、取引先の予期せぬ事態により信用状況等が大きく悪化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。ここ約10年来、管理強化に取り組んできた結果、本件リスクが顕在化したことはほとんどありませんが、実際の貸倒引当金の計上事案等を鑑み、発生の可能性は高位、影響度は、与信先の分散により小と認識しております。引き続き緻密に管理を行ってまいります。
当社グループは、輸出入取引に係る貿易業務、常温もしくは冷蔵・冷凍保管、運送をそれぞれに強みのある取引先業者に委託し、それらを通じ様々な物流関連のインフラを利用しております。後述する自然災害のケースのみならず、突発的な電力等の供給不足、大規模ネット障害等によりインフラ機能に支障が生じ、その対応のため、一時的に、関連コストの増加を余儀なくされる場合があります。一方で、物流業界の慢性的な人手不足は、将来的に物流コストの上昇を招くものであり、現に当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼしておりますが、物流を担当する専門部署を設置し、物流の最適化を進めており、それをもとに発生の可能性は低位、影響度は中と認識しております。
当社グループは、専門商社として取扱商品をコーヒー焙煎業者、飲料メーカー、業務用食品問屋、量販店、外食チェーン等へ販売しており、競合他社に対する差別化を図るため主に商品の魅力、特性を訴求しております。今後、消費者の嗜好変化に伴う需要変動、新規参入、販売先の系列化等の影響により競争がさらに激化するような場合には収益性が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。流行商品は変遷し、販売先の事業見直しや合従連衡は起きていますが、大規模なものの発生の可能性は中位、影響度は小と認識しております。当社グループの商品開発力、営業力に磨きをかけ、一層の競争優位を図ってまいります。
当社グループにあっては人財が最重要の経営資源であり、新卒及び中途採用を通じて優秀な人財の獲得及び育成に力を入れております。しかしながら、これら優秀な人財の退職や日本国内における少子高齢化に伴う労働人口の減少、産業構造の変化等により人財の確保が計画どおりに遂行できなかった場合、あるいは予見し得なかった突発的な事情により相応に知見・技能を有した人財の手当てが相当期間できなかった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに当該リスクの発生の可能性は中位、影響度は小と認識しております。社員エンゲージメントを高めるために、各社員がモチベーションを持ってそれぞれの能力を伸ばしながら安心して働ける環境作り、ニューノーマルな働き方の採用、適切な待遇、加えて緻密で整合性のある事業計画と要員計画の実践、これらを通じ安定した要員体制を保持してまいります。
当社グループは、中長期的な視点で今後の国内需要の伸びに大きな期待をすることは難しいため、漸次、輸出事業の他、販売・製造拠点展開等、投資含め海外事業を拡大させております。それぞれの案件の採算を慎重に検証し、分散を図り、進捗ペースは既存の事業収益と適度なバランスが保たれるようコントロールしておりますが、対象国・地域に関して政治・経済情勢の変化、政策変更の他、自然災害、テロ、争乱等の予期し得ないリスクも存在しております。そうしたリスクの顕在化の程度が著しい場合、あるいは事前想定が困難なイレギュラー要因により計画とのギャップが顕著な場合には、減損の計上等を通じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに当該リスクの発生の可能性は中位、影響度は海外事業のボリュームが依然小さいため小と認識しております。きめ細かな情報収集と管理により、不測の事態が起きないよう努めてまいります。
当社グループは、グループ会社にてコーヒー・飲料関連の加工工場を有し、対象事業の維持と拡大を図るため、漸次、機械設備等の増強、保守・更新を行っております。そうした投資案件に関し、金額・内容の妥当性や損益・資金収支の見通し等を慎重に検討の上、金額に応じ取締役会等で決定し、適切に進めております。しかしながら予期せぬ事態の発生により需要が当初予測を大幅に下回った場合、対象資産に係る損益・資金収支に影響を与え、それが高じた際には減損を余儀なくされ、それらにより当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに当該リスクの発生の可能性は低位、影響度は中と認識しております。引き続き投資判断を厳正に行うとともに、投資後案件をマネジメントレベルで定期的にレビューすること、保有資産の稼働状況、需要及び損益の先行き見通しを適切に管理することにより、不測の事態が起きないよう努めてまいります。
当社グループは、運転資金及び設備投資資金等を主に金融機関からの借入れにより調達しており、総資産に占める有利子負債の割合が2025年3月決算期で31.5%(有利子負債残高(リース債務を含む)12,374百万円/総資産39,231百万円)といった水準にあります。収益力向上とキャッシュ・フロー重視の経営によりこの水準を引き下げ、金融機関とは円滑、安定的な関係維持を図っておりますが、金融環境の変化により金利が大きく上昇した場合、あるいは金融市場の動揺、当社信用力に係る評価の著しい悪化等で資金調達が制約を受けた場合、調達コストの増加等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまで本件リスクが顕在化したことはなく、発生の可能性は低位、影響度は小と認識しております。引き続き当社グループのバランスシートに万全の注意を払い、金融市場の状況を見ながら、円滑、安定した金融機関取引を継続してまいります。
気候変動や地球温暖化の原因とされるGHG(温室効果ガス)削減が世界的に叫ばれるなか、当社グループの主要取扱商品であるコーヒーに関しては、コーヒー豆の生産地が2050年まで半減するという「2050年問題」が注目され、当社グループとしても検討すべきリスクファクターに含めております。また、他の商品についても少なからず気候変動の影響を受けるものと考えられます。本件は長期的に取り組むべきテーマであり、現時点では発生の可能性は低位、影響度は小と認識しておりますが、目下、グループ全体としてGHG(温室効果ガス)排出量の合理的な算出に取り組んでおり、さらにScope1・2とScope3に分けそれぞれの具体的な削減に向けた活動を推進しております。同様の観点で、当社グループはSDGsへの取り組みをグループ挙げての方針に掲げており、その一環として、近畿大学との共同で開発を行いましたコーヒーグラウンズ(コーヒー残渣)由来のバイオ燃料により焙煎したコーヒーの製造が進んでおります。また、兵庫県小野市に建設予定の新工場ではサーキュラーエコノミーシステムを用いた「グリーン焙煎」構想に着手しており、神奈川・横浜工場でまずはグリーン焙煎機が本格稼働いたします。
当社グループでは、自然災害等により事業所や設備の損壊による事業活動の低下や停止等、不測の事態が発生する可能性があるため、リスク管理委員会において対応の整備を図っております。しかしながら、予期せぬ自然災害等により想定を著しく超える事態が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験や統計的な判断をもとに大事に至る当該リスクの発生の可能性は低位、影響度は小と認識しております。BCP(事業継続計画)の強化を図りながら、想定外に対応するような事前検討・準備を怠りなく行い、きめ細かな状況分析に基づく的確な判断により、著しい影響の回避を図ってまいります。
当社グループは、取扱商品の多くの需要期が冬場で、特にその一部は年末・年初に繁忙期を迎えるため、売上高・利益の計上が下半期、なかんずく第3四半期に偏っております。従前より夏場商品の開発等により平準化を試みておりますが、これまでのところ成果は捗々しくなく、もし需要期・繁忙期に突発的な自然災害、事変等が発生し、充分な需要を確保できないような事態が発生した場合、年度を通じた業績への影響等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに大事に至る当該リスクの発生の可能性は低位、影響度は小と認識しております。引き続き夏場商品の開発を進めるとともに、きめ細かな状況分析に基づく的確な判断により、著しい影響の回避を図ってまいります。
当社グループは、事業の遂行にあたって、品質・衛生・表示面について食品衛生法、JAS法及び食品表示法等を遵守しております。しかしながら、海外との取引が盛んな当社は、日本のみならず海外各国の法的規制も受けており、各国で法令の変更や新たな法令の施行等があった場合には、当社グループの事業活動が制限される可能性があります。またこれらにより、各種規制事項を遵守するためのコストが増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに大事に至る当該リスクの発生の可能性は低位、影響度は小と認識しております。引き続き、きめ細かな状況分析に基づく的確な判断により、不測の事態が起きないよう努めてまいります。
当社グループは、良好な取引関係を維持する目的で一部の取引先企業の株式を保有しております。これらの保有 株式に関し定期的に取引関係、保有メリットが資本コストに見合っているかを精査し、保有の適否を見直すことと しておりますが、景気や市場動向、発行体の信用状況等の急激な変化により保有している有価証券の価格が著しく下落した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに大事に至る当該リスクの発生の可能性は低位、影響度は小と認識しております。引き続き、きめ細かな精査と見直しにより、著しい影響の回避を図ってまいります。
当社グループは、わが国において一般的に通用する会計規則に則り、将来の課税所得を合理的に見積もり、回収可能性を検討した上で繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得の見積もり等に大きな変動が生じた場合には、繰延税金資産を取り崩すことにより税金費用が計上され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これまでの経験をもとに大事に至る当該リスクの発生の可能性は低位、影響度は小と認識しております。引き続ききめ細かく管理し、不測の事態が起きないよう努めてまいります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、一部に足踏みが見られたものの、景気は緩やかに回復しております。しかしながら、2025年1月に発足した米国の新政権の政策による影響や物価の継続的な上昇による消費マインドの低下により景気を下押しするリスクも見られております。
海外に関しては、米国では景気の拡大が続いておりますが、諸外国に対する関税引き上げ等による景気を下押しするリスクをかかえております。
中国に関しては、各種政策の効果もあって景気は一時的に持ち直しているものの、米国による関税政策の影響もあり先行き不透明な状況となっております。
当社グループの主力マーケットである食品業界におきましては、幅広い食品における値上げの影響から消費者の節約志向が強まっており、厳しい経営環境が続いておりますが、外食産業においては引き続きインバウンド需要等に支えられ、売上は昨年に比べて増加しております。
当社グループの業績に影響を与える為替相場におきましては、期初1ドルあたり151円台で始まり、年度を通じ日米金利差や米国の大統領選挙、新政権の政策をめぐっての思惑から大きく上下しましたが、最初はドル高円安傾向が強まり一時161円台まで円安が進みました。その後反転し、9月には140円台まで円高が進みましたが、そこから再びドル高円安傾向が強まり150円台のレンジで推移し、3月末では149円台となりました。
コーヒー業界におきましては、コーヒー相場は期初1ポンド当たり191.80セントからスタートし、投機筋主導の強含み基調の中、4月に240セントをつけ、その後修正により190セント台に落ち着く場面もありました。しかしながら、ブラジルの天候懸念やベトナムを主要産地とするロブスタ種の需給逼迫もあり徐々に上昇しました。年末にかけてはブラジルアラビカ種の収穫量落ち込みの懸念が浮上したことを受け12月初旬には334.5セントと歴史的な水準を記録し、さらに2025年2月には過去最高値の425.1セントまで上昇しました。その後は、売り圧力が強まり3月末時点では379.75セントまで下落しました。
このような状況のなか、当社グループは、2022年度からスタートさせた中期経営計画「SHINE2024」が当連結会計年度で最終年度となりますが、当初掲げた数値目標の達成だけでなく、次期中期経営計画とのつながりも意識して、GHG(温室効果ガス)を削減しながら、社会課題解決型商品の開発及び高利益率商品へのシフトに積極的に取り組み、事業の持続的成長を目指しております。
当連結会計年度においては、新規開拓や値上げの浸透により売上高は概ね順調に推移しておりますが、利益につきましては原料価格の著しい変動を受け商売が低迷するお客様層もあり、そうしたところでは原料価格アップを直に転嫁することが難しく、また一部の海外子会社・関連会社で経済の停滞に伴う価格競争の影響等により収益環境が悪化し、営業利益以下において前年同期比で減益を余儀なくされました。
一方、経営資源の有効活用及び経営体制の強化等を通じ、当社グループの収益基盤の強化を図ることを目的に、連結子会社である東京アライドコーヒーロースターズ株式会社と関西アライドコーヒーロースターズ株式会社の合併を2024年10月1日付けで行い、名称をアライドコーヒーロースターズ株式会社といたしました。これを機に当社グループは更なる企業価値の向上と持続的な成長を目指してまいります。
以上の結果、当連結会計年度においては、売上高は64,953百万円(前年同期比4.7%増加)、売上総利益は8,453百万円(前年同期比3.3%増加)、営業利益は1,557百万円(前年同期比5.9%減少)、経常利益は1,336百万円(前年同期比23.2%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は888百万円(前年同期比15.4%減少)となりました。
各事業別の状況は次のとおりであります。
コーヒー・茶類事業
コーヒー生豆は、これまでのコーヒー相場の高騰及び円安傾向により販売価格は上昇しておりますが、著しい価格競争を避けていること、海外顧客に関し市場の停滞による販売数量の減少、一部顧客の売上計上方法の変更により売上高が減少いたしました。
飲料原料は、飲料メーカー向けの販売が好調だったことに加え、円安傾向により販売価格が上昇したことで売上高が増加いたしました。
その結果、コーヒー飲料原料の売上高は前年同期比4.0%減少いたしました。
家庭用製品の新規開拓の成果、並びに近年のコーヒー相場の高騰に伴う原料調達コスト上昇を踏まえた販売価格の改定を進めていることから、売上高は増加いたしました。
その結果、コーヒー飲料製品の売上高は前年同期比15.1%増加いたしました。
これらの理由により、コーヒー・飲料事業の売上高は24,633百万円と前年同期比7.6%の増加となり、売上総利益は3,497百万円と前年同期比1.3%の増加となりました。
食品事業
ドライ商品は量販グロサリー向け野菜缶詰・パック、製造メーカー向け原料、産業給食、老健向けへのフルーツ缶詰等の販売が増加し、各商品群の価格改定も進み、売上高は前年同期比7.4%増加いたしました。
フローズン商品は中国産ポテトの販売減少の影響により、売上高は前年同期比7.7%減少いたしました。
メーカー商品は、新規開拓が進みましたが、顧客の商流変更の影響もあり、売上高は前年同期比5.2%減少いたしました。
その結果、加工食品全体の売上高は前年同期比0.3%の微減となりました。
主力のエビ関連は、伸ばしエビ、寿司エビについて値上げ以降販売が伸び悩んだものの、エビフライ等が伸長したため売上高を確保いたしました。イカ関連は、引き続き工場原料向けの販売好調により、売上高が増加いたしました。水産調理冷食関連は、中食業態へのアジフライ等の出荷が順調に推移したことにより、売上高が増加いたしました。タコ関連は、他社と比較して供給体制が整った事で売上高が増加いたしました。
その結果、水産の売上高は前年同期比3.5%増加いたしました。
タイ産の中食業態向けの骨無しフライドチキン、ロースト製品の販売量が増加した事により売上高が増加いたしました。また中国産の外食業態向けは、インバウンドの影響によりビジネスホテルなどで使用する価格訴求品の引き合いが強く、鶏もも肉唐揚げなどを中心に売上高が増加いたしました。
その結果、調理冷食の売上高は前年同期比15.5%増加いたしました。
これらの理由により食品事業の売上高は22,396百万円と前年同期比4.7%の増加となり、売上総利益は3,026百万円と前年同期比5.0%の増加となりました。
生鮮野菜では、中国産牛蒡の相場高が続いたため、販売単価が上昇し、売上高は増加いたしました。また国産葉物野菜の不作による高騰が続き、中国産葉物野菜の販売が増加いたしました。
農産加工品では、主要商品である筍・蓮根の相場が安定したことに加え、新規開拓の成果により生姜加工品の販売が伸長したため、売上高が増加いたしました。
その結果、農産事業の売上高は7,189百万円と前年同期比12.1%の増加となり、売上総利益は826百万円と前年同期比20.8%の増加となりました。
海外事業
輸出事業に関して、英国及びEUにおける日本食市場の伸長により、売上高の増加に繋げることができました。また、米国向け輸出においては、当社が注力している小売製品の消費が拡大し、売上高が順調に推移いたしました。また、台湾顧客向けPB製品については、コンビニエンスストアや量販店等への販路拡大が売上高の増加を後押ししております。
海外現地法人に関して、特に中国の現地法人が、国内の経済不況・競争激化の影響により売上高が減少いたしました。
その結果、海外事業の売上高は10,734百万円と前年同期比5.2%の減少となり、売上総利益は1,102百万円と前年同期比5.2%の減少となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,153百万円減少し、4,059百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果使用した資金は1,029百万円(前連結会計年度に得られた資金は3,811百万円)となりました。その主な内容は、コーヒー相場高騰等の影響による棚卸資産の増加1,936百万円に対し、税金等調整前当期純利益1,397百万円です。
投資活動の結果使用した資金は1,122百万円(前連結会計年度に比べ使用した資金は324百万円増加)となりました。その主な内容は、有形固定資産の取得による支出1,085百万円です。
財務活動により得られた資金は1,001百万円(前連結会計年度に使用した資金は2,926百万円)となりました。その主な内容は、借入金及び社債の収支による収入1,525百万円です。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は単一セグメントに該当するため、事業別に生産、受注及び販売の状況を記載しております。
当社グループのうち連結子会社において飲料製品(レギュラーコーヒー・インスタントコーヒー)の生産を行っておりますが、グループ事業全体における重要性が低いため、生産実績及び受注状況については記載しておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高64,953百万円(前年同期比4.7%増加)、売上総利益8,453百万円(前年同期比3.3%増加)、営業利益1,557百万円(前年同期比5.9%減少)、経常利益1,336百万円(前年同期比23.2%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益888百万円(前年同期比15.4%減少)となりました。
為替相場は年度を通じ日米金利差などの思惑から大きく上下し、食品業界におきましては、幅広い食品における値上げの影響から消費者の節約志向が強まっておりますが、外食産業においては引き続きインバウンド需要等に支えられ、売上は昨年に比べて増加しております。
当連結会計年度におきましては、グループ全体として新規開拓が進み、また値上げの浸透により売上高は概ね順調に推移しておりますが、利益につきましては原料価格の著しい変動を受け商売が低迷するお客様層もあり、そうしたところでは原料価格アップを直に転嫁することが難しく、また一部の海外子会社・関連会社で経済の停滞に伴う価格競争の影響等により収益環境が悪化し、営業利益以下において前年同期比で減益を余儀なくされました。
このような状況のなか、2022年度からスタートさせた中期経営計画「SHINE2024」が当連結会計年度で最終年度となり、当初掲げた数値目標の達成だけでなく、次期中期経営計画とのつながりも意識して、GHG(温室効果ガス)を削減しながら、社会課題解決型商品の開発及び高利益率商品へのシフトに積極的に取り組み、事業の持続的成長を目指してまいりました。加えて2024年10月には経営資源の有効活用及び経営体制の強化等を通じ、当社グループの収益基盤の強化を図ることを目的に、連結子会社である東京アライドコーヒーロースターズ株式会社と関西アライドコーヒーロースターズ株式会社の合併を行い、名称をアライドコーヒーロースターズ株式会社とし、更なる企業価値の向上と持続的な成長を目指してまいりました。
今後は、将来の目標とする姿からのバックキャストによって描かれるルートにしたがってビジネスモデルの変革や事業ポートフォリオの改革を進め、社会的課題・環境課題に対する高度な取り組みや新たなフィールドへのチャレンジ等を行うことにより事業の持続的成長を目指してまいります。
(単位:百万円)
連結会計年度の財政状態に関しては、コーヒー相場高騰等の影響による棚卸資産が増加しております(1,949百万円増加)。また、子会社において生産施設の建設準備に着手したことから、有形固定資産が増加(850百万円増加)しており、それに伴い借入金が大きく増加(1,591百万円増加)しております。当連結会計年度末の現預金の残高は月商の0.77ヶ月と当社グループとしては特に問題ない水準ですが(前連結会計年度末は1.03ヶ月)、引き続き財務の効率化と健全化を意識して取り組んでまいります。
事業別の経営成績の状況は次のとおりであります。
コーヒー・茶類事業 ・・・ 売上高: 24,633百万円 (前年同期比 7.6%増加)
売上総利益: 3,497百万円 (前年同期比 1.3%増加)
食品事業 ・・・ 売上高: 22,396百万円 (前年同期比 4.7%増加)
売上総利益: 3,026百万円 (前年同期比 5.0%増加)
農産事業 ・・・ 売上高: 7,189百万円 (前年同期比12.1%増加)
売上総利益: 826百万円 (前年同期比20.8%増加)
海外事業 ・・・ 売上高: 10,734百万円 (前年同期比 5.2%減少)
売上総利益: 1,102百万円 (前年同期比 5.2%減少)
コーヒー・茶類事業は増収増益となっておりますが、コーヒー相場の高騰及び円安傾向により生じた原価アップを販売価格の改定により吸収し、一部新規開拓が実ったことが主な要因であります。
食品事業は増収増益となっておりますが、中食業界への販売が順調に推移したこと加え、外食業界でもインバウンドの影響により販売が順調に推移したことが主な要因であります。
農産事業は増収増益となっておりますが、生鮮野菜における相場高騰の影響により販売価格が上昇しており、加えて新規開拓が進んだことが主な要因であります。
海外事業は減収減益となっておりますが、日本からの輸出事業に関して、英国で設立した合弁会社の効果も相まって、欧州向け等の輸出が増加した一方、中国現地法人において同国内の経済不況・競争激化の影響により売上高が大きく減少したことが主な要因であります。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、現金及び現金同等物において期末残高は、前連結会計年度末に比べ1,153百万円減少し、4,059百万円となりました。また営業活動によるキャッシュ・フローは営業活動の結果使用した資金は1,029百万円となり、これは、主にコーヒー相場高騰等の影響による棚卸資産の増加(1,936百万円)が大きく影響しております。当社が特に重視している運転資本関連項目の回転期間の推移は以下のとおりです。業態を勘案すれば特に問題ない水準と考えており、引き続きキャッシュ・コンバージョン・サイクルを注視しながら適切な運営を行ってまいります。
当社グループは適切な自己資本比率を維持しつつ、外部からの資金調達の制約を考慮しながら、円滑、安定的な資金繰り運営と手許流動性の維持を行っております。2002年の株式店頭登録以降、資本(エクイティ)による資金調達の実績はなく、調達の源泉は基本的に金融機関からの借入金に依存しております。その最近の推移は以下のとおりであります。当社グループは、前項の適切なキャッシュ・コンバージョン・サイクル、金融機関との密接な取引関係、不測の事態へのクッションとしての相応の自己資本の3つを資金流動性維持の根幹に据え、運営を行っております。今後も安定・効率的な資金調達と資本コストを意識した事業運営により、健全な財政状態が維持されるよう努めてまいります。
(単位:百万円)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。ただし見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果がこれらの見積りと異なる場合があります。それに関連する主な項目は以下のとおりであります。
当社グループは、債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒が懸念される特定の債権については個別に回収可能性を検討し、債権の回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。
繰延税金資産は、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を検討し計上しております。
当社グループは、投資案件に関し、金額・内容の妥当性や損益・資金収支の見通し等を慎重に検討の上、金額に応じ取締役会等で決定し、適切に進めております。
当社グループは、保有株式に関し定期的に資本コストに見合っているか等を精査し、保有の適否を見直すこととしております。
当社グループは、従業員に対する賞与支給に充てるため、業績を鑑み、支給見込額を見積り計上しております。
当社グループは、棚卸資産を主として移動平均法による原価法(貸借対照表価額については収益性の低下に基づく簿価切り下げの方法)で評価しておりますが、収益性の低下による簿価の切り下げは、一定の仮定及び販売可能性の判断に基づいております。
該当事項はありません。
特記すべき研究開発活動はありません。