第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営環境

当社グループを取り巻く経営環境については、DXやEVの普及、AIの応用拡大を背景として半導体市場の成長が見込まれる中、製品・サービスの多様化や新市場開拓を行う一方で、地政学的リスクへも注視が必要な状況が続くものと考えております。また、AIやEV 向けの需要の増加とともに技術革新が進み、半導体及び半導体製造装置市場も拡大基調で成長しつつある中、顧客のDX化とともにサイバーセキュリティが重要視され、AIや自動化技術の活用も求められてまいります。このような状況から、当社グループにおいても柔軟なソリューションの開発と顧客ニーズへの迅速な対応が引き続き不可欠なものとなってまいります。

 

(2) 経営方針

当社グループでは半導体や IT を中心とする最先端テクノロジーを通して社会課題に向き合い、期待を超える価値を持つ解決策を提供することで、社会の持続的発展に貢献することを経営方針としております。

 

(3) 中期経営計画

当社グループは、中期経営計画「VISION2030」(対象期間:2026年3月期~2030年3月期)を策定しており、半導体やITを中心とする最先端テクノロジーを通して社会課題に向き合い、期待を超える価値を持つ解決策を提供することで社会の持続的発展に貢献することをミッション(経営方針)に掲げ、そのVISIONとして「メーカーと技術商社の力で潜在的な社会課題を解決する会社」と制定しております。また、「VISION2030」達成に向けた全社方針といたしましては、当社グループが持つ「メーカー」と「技術商社」の力により潜在的社会課題である顧客課題の解決を図るとともに、ガバナンス体制の充実を重視した経営に取り組み、持続的な利益成長に資する行動を推進してまいります。

これらのミッション(経営方針)及びVISIONに基づく、各事業分野の主な事業戦略等は次のとおりとなります。

[半導体及び電子デバイス事業]

・産業機器、車載関連機器、クラウドサービス、OTセキュリティ分野などの成長マーケットに注力

・半導体の専門知識を生かし、ソリューション型ビジネスを展開

 

[プライベートブランド(PB)事業※]

・計測、検査技術を核に、ウェーハ検査装置を中心とした製品をグローバルに提供

・半導体関連技術と高品質な開発・製造基盤を生かし、医療ODM及び基板OEMのサービスを強化

※現在のセグメント区分上、プライベートブランド事業は半導体及び電子デバイス事業に含まれております。

 

[コンピュータシステム関連事業]

・顧客のニーズを理解し、DXを支えるソリューションとサービスを提供

・顧客のデジタル技術活用を支援し、顧客満足度を向上

 

なお、資本政策を含む当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容の詳細については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」をご参照ください。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

中期経営計画「VISION2030」(対象期間:2026年3月期~2030年3月期)における財務モデル及び事業ポートフォリオについては、次のとおり設定しております。

 

 

VISION2030

(2030年3月期)

   売上高

300,000~350,000百万円

 

(事業別構成比)

コンピュータシステム関連事業

15%

半導体及び電子デバイス事業

75%

プライベートブランド事業

10%

   経常利益率

≧  8%

 

(事業別経常利益率)

コンピュータシステム関連事業

12%

半導体及び電子デバイス事業

7%

 

プライベートブランド事業

10%

   ROE(株主資本利益率)

≧ 20%

 

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、IoT・ロボット・AI・ビッグデータといった先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れて経済発展と社会的課題の解決を両立していく高効率スマート社会(Society 5.0)の到来を見据え、デジタルトランスフォーメーション、即ち「データとデジタル技術を活用した製品やサービス、ビジネスモデルの変革等」に貢献していくための製品・サービスを提供してまいります。

この方針のもと、当社グループは中期経営計画「VISION2030」を策定しており、詳細は「(3) 中期経営計画」をご参照ください。

また、「VISION2030」におけるサステナビリティへの取組みに関して、「会社が培ってきたリソースを活かしたサステナブルな社会への貢献」、「基本的人権の尊重を根幹に据えた労働環境・人事制度の構築」及び「社会と会社の持続可能な関係を継続させていくための環境負荷の軽減」の3項目をマテリアリティ(重要課題)として設定し、「サステナビリティ委員会」を主軸として取り組んでおります。

人的資本・多様性の観点では、グローバルな視点で顧客満足を追求できる人材を育成し、社員の向上意欲を支援していくために個々の能力を伸ばす環境を整備することに加え、次世代リーダーの育成に注力してまいります。

気候変動関連については、関連リスク及び機会を踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(2℃シナリオ及び4℃シナリオ)を参照し、2050年までの長期的な当社グループへの影響を考察し、「半導体及び電子デバイス事業」、「プライベートブランド(PB)事業」及び「コンピュータシステム関連事業」それぞれにおけるシナリオ分析を実施いたしました。また、2050年度におけるカーボンニュートラルに向けて、2030年度の目標を2021年度対比で50%削減としております。この取組みの一環として、2023年10月よりエンジニアリングセンター(横浜市都筑区)及び2024年10月より新宿サポートセンター(東京都新宿区)において実質再生可能エネルギー由来の電力への切り替えを実施しております。また、2024年10月に実質再生可能エネルギー由来の電力を使用している渋谷サクラステージ SHIBUYAタワー(東京都渋谷区)に本社を移転しております。

今後も再生可能エネルギーの利用を促進することにより、2025年度中に2030年度の目標(2021年度対比で50%削減)を前倒して達成できる見込みです。

これらの課題の解決に取り組むことで会社の持続的な発展(企業価値の向上)を目指してまいります。当社グループにおけるサステナビリティへの方針及び取組みの詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

なお、メーカーへの進化を志向する上で将来的な事業成長に必要な投資を実行していくために、まずは収益性の向上により一定の内部留保を蓄積するとともに、資本構成を考慮した最適な調達手段による資金確保が課題であると認識しております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

(1) サステナビリティを巡る取組みの基本方針

当社グループが策定した中期経営計画「VISION2030」では、「半導体やITを中心とする最先端テクノロジーを通して 社会課題に向き合い 期待を超える価値を持つ解決策を提供することで 社会の持続的発展に貢献する」をミッションとして掲げました。

この観点に基づく当社グループにおけるサステナビリティに関する取組みの基本方針は、次のとおりです。

 

(サステナビリティを巡る取組みの基本方針)

自らの企業価値の向上及び事業の継続性と社会の持続的な成長は相互に関連し合うものであるとの認識のもと、当社グループは、事業を通じて提供する様々なソリューションによって、豊かな暮らしと持続的な社会の発展へ貢献してまいります。また、ESGの視点やSDGsの目標を参照しつつ、次の内容をマテリアリティ(重要課題)として認識し、課題の解決に取組むことで当社グループの持続的な発展・企業価値の向上を目指します。

 

(マテリアリティ)

・当社グループが培ってきたエレクトロニクス及びITを中心としたリソースを活かし、持続的な社会の実現に貢献してまいります。

・基本的人権の尊重を根幹に据え、働きやすさ・働きがいを意識した労働環境と人事制度を構築し、会社の永続的な発展を目指します。

・企業活動により生じる環境負荷(環境リスク)を軽減し、社会と会社が持続可能な関係を継続できるように努めます。

 

(2) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループでは、事業を通じた持続的な社会の発展に貢献するため、CEO(最高経営責任者)直轄の組織として、サステナビリティ委員会を設置し、取締役会へ報告する体制を構築しております。全社的なリスク管理は、リスク管理委員会において行っておりますが、気候変動リスク対応を含むサステナビリティに関連する情報収集、リスクと機会の識別、事業戦略への反映及び推進活動についてはサステナビリティ委員会を中心に行い、取締役会へ報告することとしております。サステナビリティ委員会を含むコーポレート・ガバナンス体制の概要については、「第4 提出会社の状況」の「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(3) 重要なサステナビリティ項目

当社グループにおけるサステナビリティへの主な取組みは次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 気候変動関連

(ガバナンス)

気候変動に関わる基本方針や重要事項、リスク/機会等の検討については、2024年10月に新設したサステナビリティ推進室がTCFDワーキンググループ(※)から引き継ぎ、実施しております。

サステナビリティ推進室で検討した事項はサステナビリティ委員会にて審議を行い、取締役会に報告しております。

取締役会で審議・決定された議案は、各部門に展開され、それぞれの経営計画・事業運営に反映いたします。

※TCFDワーキンググループ:関連部門の代表者で構成され、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に則った情報開示及びリスク/機会の検討等を行っていたワーキンググループ。

 

(戦略)

中長期的なリスクの一つとして「気候変動」を捉え、気候変動に関連するリスク/機会を踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、当社グループはIEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(※2℃シナリオ及び4℃シナリオ)を参照し、2050年度までの長期的な当社グループへの影響を考察し、シナリオ分析を実施しております。詳細は後述の「気候変動に関する主なリスク/機会及び対策」をご参照ください。

※2℃シナリオ:気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化などの対策が取られるシナリオ

  4℃シナリオ:気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ

 

 気候変動に関する主なリスク/機会及び対策

 


 

(リスク管理)

サステナビリティ推進室において気候変動リスクに関するシナリオ分析を実施しております。気候関連リスクの優先順位付けとして、リスク/機会の発生可能性と発生した際の影響を踏まえ、特に優先度の高い事項に注力して取り組んでおり、サステナビリティ委員会において継続的に取組み状況の確認等を行っております。

気候関連リスクの管理プロセスとしては、サステナビリティ推進室において気候関連リスクに関する分析、対策の立案及び推進、サステナビリティ委員会において進捗管理等を行っております。サステナビリティ委員会で確認・検討した内容は取締役会に適宜報告し、全社で統合したリスク管理を行っております。

 

(指標及び目標)

当社グループでは、環境問題への対応等を考慮し、環境に優しい製品の提供及び汚染の予防をはじめとした各種取組みを実施しております。

当社グループは、気候変動対応を経営上の重要課題と認識し、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(GHG)の総排出量(Scope1・2)を指標として設定しております。

 

a.Scope1・2

2050年度のカーボンニュートラルを目指して、国内連結グループにおける2030年度の目標を「2021年度対比で50%削減」としております。国内連結グループにおける2021年度から2024年度のScope1・2総排出量の実績並びに2030年度及び2050年度の目標は次のとおりです。

 


 

2022年度において売上の拡大に伴いGHG排出量は上昇しましたが、2023年度以降は当社の事業所において実質再生可能エネルギー由来の電力へ切り替えを実施し、削減しました。

 

b.Scope3

2024年度より、国内連結グループにおけるScope3の算定をしております。

 

2024年度実績

Scope3 総排出量

1,043,315 t-CO2

 

2024年度のScope3総排出量につきましては、信頼性、正確性、透明性等を確保するため、第三者保証機関による検証を行う予定です。そのため、検証結果により2024年度のScope3総排出量は変更になる可能性があります。

 

② 人的資本/多様性

(戦略)

当社グループでは、人材育成の基本方針を次のとおり定めております。

 

・社員の成長が個人のやりがい、達成感に寄与するという前提に立った上で、グローバルな視点を持ちかつ顧客満足を得ることやニーズを満たすことができる人材を育成する

・社員の学びたいという向上意欲を重視した社員の能力開発を推進する

・個人の強みや専門性を伸ばすことで全社員が最大限に力を発揮できる環境作りを推進する

 

 

これらの方針に従い、教育プログラムを「階層別教育」と「目的別教育」の2軸構成とし、社員それぞれの役割に応じた研修を実施しております。加えて、将来的な社会価値を創出することのできるリーダー像を次のとおり定め、次世代のリーダー養成のため、「パーパス」「リーダーシップ」「イノベーション」「成果志向」「チームビルディング」「外部共感力」を経営に求められるコンピテンシーと定めて、「TEDユニバーシティ」と銘打った選抜式育成プログラムを実施しております。

 

・未来に向けた全社変革を推進できる人材

・メーカーと技術商社の力で潜在的な社会課題を解決する会社像を描き、事業変革を先導できる人材

・当社グループの強みを活かし、事業拡大を先導できる人材

 

採用に関しては、毎年一定数の新卒採用を行うほか、人材補充や業容の拡大のため、中途採用を行っております。また、事業セグメントごとに前述のテーマに関する進捗や課題を把握し、適宜必要な対策(データサイエンス・画像認識・ロボティクス・AI/IoT及びセキュリティ等の先端技術など専門性を有する中途人材の獲得や社員の専門技術力向上プログラム推進)を講ずるPDCAサイクルを通じて、人材面の強化を図ってまいります。

人材配置の観点からは、毎年実施する異動希望申告制度をもとに、各事業セグメントを統括する責任者が参加する定期ローテーション会議において短・中・長期レンジでの適材適所を実現する枠組みを運営しております。当社グループは、文化・民族及び個人の人格などを尊重するとともに、国籍や性別、性的指向、障害、年齢などの区分によって活躍の場が制限されることなく、多様な視点や価値観に基づく社員の特性や経験など、各々の能力を最大限引き出すことが当社グループの持続的成長につながるものと考えております。

社員の役割に応じた処遇を実現する柔軟な報酬体系を構築し、社員が主体性をもって業務に取り組むことができる環境を提供することで、市場環境変化への柔軟な対応を推進しております。また、社員のワークライフバランスの向上などを目的として、利用制限のないテレワークを全社員に対して実施しております。

その他の人的資本/多様性に係る取組みは、次のとおりです。

 

・新規採用時における女性積極採用のPR活動

・会社独自の育児や介護に関する休暇・休業制度の支援

・各種ハラスメント、コンプライアンス教育

・業務効率化や有給休暇取得促進、ノー残業デー設定等による労働時間削減推進

・仕事と家庭の両立を支援する職場風土醸成として、男性社員の育児休業取得促進

 

(指標及び目標)

人的資本/多様性に係る実績及び目標は次のとおりであり、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

項目

2024年度目標

2024年度実績

2029年度目標

女性管理職比率

  (注1)

 12.0

15.0%

離職率

  3.0 以内

  1.9

3.0% 以内

リフレッシュ休暇利用率(注2)

 70.0 以上

 87.6

80.0% 以上

有給休暇消化率

 70.0 以上

 66.7

70.0% 以上

健康診断受診率

100.0

100.0

100.0%

ストレスチェック受検率

 95.2

100.0%

人材育成に関する社員満足度(注3)

 67.4

75.0% 以上

 

   (注) 1 女性管理職比率については、2025年度で10.0%以上、2029年度で12.0%以上を目標としております(2024年度スタート時点での目標)。

2 リフレッシュ休暇とは、勤続年数に応じて連続休暇を取得できる特別休暇制度であります。

3 正社員・嘱託社員を対象とした当社独自のアンケート結果に基づく数値であり、人材育成に関連する設問に対する肯定的な回答の割合をもとに算出しております。

 

 

③ サイバーセキュリティ/データセキュリティ

当社グループでは、顧客や取引先からお預かりした情報資産及び当社グループが保有する情報資産を守ることを重大な社会的責務と認識し、情報セキュリティに関連する法令、その他の社会的規範の遵守に努めるとともに、情報セキュリティ方針を策定・整備しております。当該方針に従い、技術的なセキュリティ対策の導入等、情報資産への不正なアクセスを未然に防ぐ対策のほか、メール誤送信対策、記録媒体の利用制限、機密情報・個人情報の棚卸等、情報資産の紛失・盗難・改ざん・漏洩等を防ぐための適切な情報管理を行っております。また、情報セキュリティインシデント発生時の対応手順、対応体制及び危機レベルの判定基準等を明確化した情報セキュリティインシデント対応マニュアルを整備するとともに、マルウェア被害、フィッシング詐欺メール等の注意喚起及びインシデント発生時の対処法等も含めた情報セキュリティ教育の継続的な実施や、サイバーインシデントを想定した訓練についても継続的に実施するなど、全役員及び従業員の意識の向上と徹底に努めております。

これらの取組みをコンプライアンス委員会において定期的にモニタリングを行い、取締役会へ報告することで、情報セキュリティの確保に必要な取組みを定期的に見直し、継続的な改善に努めております。

 

④ 腐敗防止/贈収賄防止

当社グループでは、役員及び従業員が遵守すべき行動の基準・規範を示した倫理方針、また、法令・規則及び社内ルールを正確に理解し、法令等に則した行動を継続的に実践することを目的としたコンプライアンス規程を策定、周知しており、コンプライアンス違反防止と企業倫理の向上に努めております。倫理方針において、「独占禁止法及び関連諸法の遵守」、「下請法及びフリーランス保護法の遵守」、「不正競争の禁止」、「香典、見舞金等の社会通念上相当と認められるものを除く金銭や金券の授受の禁止」及び「顧客、仕入先等との社会通念上認められた常識の範囲を超えた過剰な接待や贈答品の受贈等の禁止」等を行動指針として定めております。不正防止への取組みとして、贈答接待に関する取扱いを規定し、内容を精査する仕組みや、リスクを伴う取引の取扱基準に基づき、適否を確認することで、循環取引等の不正取引を防止する体制を構築しております。

また、違反となる事例等を示した社内教育を継続的に実施し、違反の未然防止に努めるとともに、倫理方針に反する行動の内部通報制度を整備し、腐敗、贈収賄等のコンプライアンスに逸脱した行動の早期発見、是正への取組みを推進しております。これらの取組みをコンプライアンス委員会において定期的にモニタリングを行い、取締役会へ報告することで、当社グループにおける腐敗、贈収賄防止等への監視体制の強化を図っております。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 業績の変動要因について

① 需要動向又は商品価格による影響

当社グループでは、主として大手エレクトロニクスメーカーに対し集積回路を中心とした半導体製品、ボード・電子部品、ソフトウェア・サービスの販売、プライベートブランド(PB)製品の製造・販売、ネットワーク関連製品、ストレージ関連製品、セキュリティ関連製品の販売及び保守・監視サービス等を行っております。半導体及び電子デバイス事業では、顧客が大手エレクトロニクスメーカー等であることから、半導体需要や設備投資動向に影響を受ける可能性があります。コンピュータシステム関連事業では、顧客がネットワークやシステムの構築・整備に関連した企業や団体等であることから、IT投資等の設備投資に係る動向に影響を受ける可能性があります。

特に当社グループの主要市場である国内、アジア及び北米地域における市況変動が大きくなった場合、業績に影響を及ぼすリスクが高くなります。

これらのリスクに対して当社グループでは従来より、付加価値が高く、価格変動が比較的少ない商品の取り扱いを増やすこと、及び将来の販売可能性低下に備え長期滞留商品の簿価を切り下げることなどを通じ、業績への影響を回避する方策を採っております。

 

② 事業環境変化及び人材の確保による影響

当社グループの属するエレクトロニクス業界は、技術革新及び事業環境の変化のスピードが速く、高度な開発力、技術力、サポート力が必要とされます。当社グループにおいても、このような環境変化に対応すべく、社内の技術力を高め、販売活動・技術サポート・設計開発ビジネス・保守サービス等における付加価値の向上によって競争力の強化に努めております。しかしながら、会社が望む人材の獲得が困難になった場合や想定を超えて人材が流出した場合、商品やサービスを事業計画どおりに提供することが困難となり、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

これに対して当社グループでは、新卒採用においてはインターンシップの活用、中途採用においては人材紹介サービスの利用等による採用活動強化のほか、個々の役割や成果に応じた公平な報酬制度の導入、教育制度の充実等、社員一人一人のモチベーション向上のための環境構築に努めております。

 

③ 販売先の海外生産移管による影響

当社グループは、顧客の生産拠点が海外へ移管することに伴い、アジア及び北米地域を中心に営業拠点を展開することで、現地におけるマーケティングや販売促進活動に取り組んでおりますが、当社グループの営業拠点がない地域への顧客の生産移管、現地における生産・販売に係る制約等により販売活動が困難になった場合には、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

これに対して当社グループでは、顧客との情報交換を通じて最新の生産・所要動向等を注視し、状況に応じて新たな営業拠点の開設(または既存営業拠点の廃止)の要否を判断する等、顧客に密着した営業体制の強化に努めております。

 

 

(2) 為替及び金利変動の影響について

当社グループは、エレクトロニクス商品の輸出入取引及び一部の国内顧客との外貨建取引につき為替変動リスクに晒されています。外貨建取引のほとんどは米ドル建てであり、米ドル/円相場に短期間で急激な変動が生じる等の場合、当社グループの業績に影響を及ぼすリスクが高くなります。

これに対して当社グループでは、一定の方針に基づく為替予約を実施することや為替変動による仕入価格の変動を勘案した販売価格の改定を行う等の方策により、為替変動が業績に与える影響を最小限とするオペレーション体制を構築しております。

また、当社グループは、運転資金の一部を金融機関からの借入れやコマーシャル・ペーパーの発行等により調達しており、金利変動リスクに晒されています。日本円又は米国ドルの金利が急激に変動した場合、当社グループの業績に影響を及ぼすリスクが高くなります。

これに対して当社グループでは、借入金の一部を長期固定化する等資金調達手段の多様化により金利変動リスクを軽減するよう努めております。

 

(3) 仕入先の依存度について

当社グループの主要な仕入先は、インフィニオンテクノロジーズ社、テキサス・インスツルメンツ社及びNXP Semiconductors社であり、2025年3月期における当社グループの総仕入実績に対する割合はそれぞれ22.3%、20.2%、17.3%となっております。各社との販売代理店契約は非独占となっており、他の有力な販売代理店が当社グループに代わる取引先として指定される場合や仕入先の製品需要の動向、仕入先の統合再編等により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

これに対して当社グループでは、各社との良好で安定的な取引関係の構築に努める一方、最先端製品のマーケティング活動を強化する等、製品の仕入先やラインアップの拡充を図ることにより多様な収益源の確保に努めております。

 

(4) 売上債権等の貸倒れの影響について

当社グループでは、国内外の顧客に対して製品販売及びサービスの提供後に代金回収を行うことがほとんどであり、顧客の信用不安等により債権の貸倒損失等が発生した場合には、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

これに対して当社グループでは、外部信用調査機関の情報活用による徹底した与信管理を行うとともに、債権保証サービスの利用や営業保証金の受入等によりリスク低減を図っております。

 

(5) 固定資産の減損による影響について

当社グループは、M&Aによる株式取得や事業譲受に伴うのれん及び無形資産を計上しております。今後、当初の想定に比べ事業展開が計画どおり進まない場合、のれん等の減損処理を行うことにより当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

また、事業上必要と判断した会社の株式保有や出資等に伴う投資有価証券等を計上しております。これらの資産について、収益性の悪化等による価値の毀損により、当該投資有価証券等の減損処理を実施する場合は、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

 

(6) その他の事項について

① 法的規制による影響

当社グループは、国内外に事業を展開しており、国内及び事業を展開する諸外国の輸出入に関する規制、独占禁止法等の様々な法令・規制を受けております。これらの法令・規制を遵守できなかった場合、当社グループの活動が制限され、業績に影響が及ぶ可能性があります。

これに対して当社グループでは、法令・規制に関する最新の情報を入手するなど対応を行い、従業者への周知や教育活動等を含め、法令等の遵守に努めております。

 

② 各国税務による影響

当社グループは、各国の税法に準拠し適正な納税を行っておりますが、税務申告における税務当局との見解の相違等により、追加での税負担が生じ業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対して当社グループでは、特に移転価格税制等の国際税務リスクについて注意を払い、外部専門家の助言を仰ぎ移転価格文書を整備する等の対策に努めております。

 

③ 情報漏洩・流出による影響

当社グループは、顧客や取引先に関する機密情報及び個人情報を有しております。万が一情報漏洩等の問題が発生した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償責任のために多額の費用負担が発生する可能性があり、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

これに対して当社グループでは、これらの情報を守ることを重大な社会的責務と認識し、情報の適切な取扱い・管理・保護・維持に努めております。

 

④ 自然災害等による影響

当社グループは、地震等の災害に備え、事業継続計画の策定や防災訓練等の対策に取り組んでおりますが、想定外の大規模地震や洪水等の自然災害が発生した場合、業務の全部又は一部の停止、若しくは仕入先・販売先の生産機能及び物流機能不全等により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

これに対して当社グループでは、テレワークの推進や衛生管理の徹底を行う等の対策を行い、また顧客の生産・所要動向や物流機能の混乱等について常に情報収集に努め、適宜対応を行っております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善に伴う個人消費の持ち直しやインバウンド需要の増加等により、緩やかな回復基調で推移しました。一方で資源価格の高止まりや中国経済の減速のほか、地政学リスクの高まり、米国の政策動向の影響懸念等により、景気の先行きは依然として不透明な状況で推移しました。

当社グループにおける当連結会計年度の経営成績については、売上高216,379百万円(前期比10.9%減)、営業利益12,457百万円(前期比19.3%減)、経常利益11,415百万円(前期比18.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益8,874百万円(前期比11.1%減)となりました。

 

当社グループにおける報告セグメントに係る業績については、次のとおりであります。

[半導体及び電子デバイス事業]

中国市場の停滞やサプライチェーンにおける在庫調整の影響が長期化している中、当社グループにおいては車載向け半導体製品の販売が顧客商権の拡大もあり堅調に推移し、ウェーハ検査装置事業も業績に寄与しました。一方で、産業機器向け半導体製品の販売が減少したことに加え、通信機器向け及び民生機器向け半導体製品の販売も低調に推移したことなどから、当連結会計年度は外部顧客への売上高179,051百万円(前期比14.7%減)、セグメント利益(経常利益)6,149百万円(前期比41.2%減)となりました。

 

[コンピュータシステム関連事業]

デジタル変革の推進に伴うデータ量の急増やクラウド化が進展する中、クラウド移行やセキュリティ対策へのIT投資は引き続き堅調であり、当社が取り扱うネットワーク関連製品、ストレージ関連製品、セキュリティ関連製品及びサブスクリプション型ライセンスの販売が好調に推移しました。また、製品の販売に付随する設計・構築サービス及び保守・監視サービス需要も拡大したことなどから、当連結会計年度は外部顧客への売上高37,327百万円(前期比13.2%増)、セグメント利益(経常利益)5,266百万円(前期比52.0%増)となりました。

 

当連結会計年度末の流動資産は前期末に比べ7,150百万円減少し144,186百万円となりました。これは主に、前払費用が6,535百万円増加した一方、受取手形、売掛金及び契約資産が8,008百万円減少したことに加え、商品及び製品が2,994百万円減少したことによります。
 固定資産は前期末に比べ1,424百万円増加し12,655百万円となりました。
 この結果、総資産は前期末に比べ5,726百万円減少し156,841百万円となりました。
 流動負債は前期末に比べ14,430百万円減少し74,605百万円となりました。これは主に、短期借入金が14,201百万円減少したことによります。
 固定負債は前期末に比べ5,890百万円増加し33,232百万円となりました。これは主に、長期借入金が6,960百万円増加したことによります。
 純資産は前期末に比べ2,813百万円増加し49,004百万円となりました。以上の結果、自己資本比率は30.5%となり、前連結会計年度末に比べ2.8ポイント向上いたしました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前期末に比べて1,627百万円増加し、8,384百万円となりました。

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は18,915百万円(前期は301百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益や売上債権及び契約資産の減少等による資金増加要因が、前払費用の増加等の資金減少要因を上回ったためであります。

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は2,068百万円(前期は2,695百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出によるものであります。

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は15,251百万円(前期は2,529百万円の収入)となりました。これは主に、短期借入金の返済によるものであります。

 

③ 仕入、受注及び販売の状況

a.仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

仕入高 (百万円)

前期比 (%)

半導体及び電子デバイス事業

152,992

△21.8

コンピュータシステム関連事業

25,894

9.8

合計

178,887

△18.4

 

   (注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前期比
(%)

受注残高
(百万円)

前期比
(%)

半導体及び電子デバイス事業

129,360

△21.4

71,511

△41.0

コンピュータシステム関連事業

46,411

38.7

44,958

25.3

合計

175,771

△11.3

116,470

△25.9

 

   (注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高 (百万円)

前期比 (%)

半導体及び電子デバイス事業

179,051

△14.7

コンピュータシステム関連事業

37,327

13.2

合計

216,379

△10.9

 

   (注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において当社グループが判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、当社グループは特に以下の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表作成において行われる判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

a.収益の認識

当社グループの売上高は通常、注文書に基づき顧客に対して商品を引渡した時点、またはサービスが提供された時点で計上されます。なお、仕入先から顧客への商品直納販売については顧客受領時、預託在庫販売については顧客使用時、受託開発取引等検収確認が必要な取引については顧客検収完了時に計上されます。

b.貸倒引当金

当社グループは、顧客の債務不履行等により発生する損失の見込額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の支払能力低下による入金遅延が生じ、その後速やかに回収が見込まれない等の場合は、当該顧客への債権金額の50%以上引当金設定を行うことを原則としています。また、その他一定の信用悪化が認められた顧客に対する債権については個別に評価を行い、保守的な見積もりに基づく引当金設定を行う方針としています。

c.棚卸資産の評価

当社グループは、棚卸資産の評価について原則として原価法(貸借対照表価額については収益性の低下に基づく簿価切下げの方法)を採用しております。販売価格の低下や販売が困難と認められる棚卸資産については個別に簿価の切り下げを行う他、仕入日から一定期間を経過した棚卸資産が陳腐化したものと仮定し、期間の経過に応じ機械的に簿価の切り下げを行う等、早期に評価減を実施する方針としています。なお、期間の経過に応じた機械的な簿価切り下げ額は、当社グループが定めた商品の一般的なライフサイクル期間(5年~6年)での均等償却により算定していますが、当該期間よりも早く陳腐化等が進む棚卸資産が発生した場合は追加的な切り下げが必要となります。

d.固定資産の減損

当社グループは、減損会計の対象となる建物及び構築物、工具、器具及び備品、のれん、技術資産、顧客関連資産、ソフトウェア等を有しております。現状、減損損失の認識が必要な資産はありませんが、今後、受注状況や市場動向に基づき見積られた将来キャッシュ・フローの総額の見積りが帳簿価額を下回った場合に、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

有価証券等への投資につきましては、株式、ベンチャーキャピタルへの投資及びゴルフ会員権の保有があります。金融商品の投資価値の下落がその時点の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれない場合には投資の減損又は貸倒引当金の計上を行っております。なお、将来の市況悪化等により、投資の減損又は貸倒引当金の計上が必要となる可能性があります。

e.繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について、入手可能な情報や資料に基づき将来の課税所得の発生の可能性を毎決算期に見積もり、回収可能性を検討した上で計上しております。今後、業績の悪化等により繰延税金資産の全部又は一部の回収可能性に懸念が生じた場合、繰延税金資産の取崩額が費用として計上される可能性があります。

なお、評価性引当額の設定は主に、関係会社株式評価損及びゴルフ会員権評価損及び貸倒引当金に対して行っております。

 

f.退職給付に係る負債又は資産

当社グループの退職給付に係る負債又は資産については、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。割引率は、期末における安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しております。長期期待運用収益率は、年金資産が投資されている資産の種類毎の長期期待運用収益率の加重平均に基づいて計算しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合には、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の業績に関し、半導体及び電子デバイス事業では中国市場の停滞やサプライチェーンにおける在庫調整の影響が長期化する中、車載向け半導体製品が顧客商権の拡大により堅調に推移し、ウェーハ検査装置事業も業績に貢献いたしました。しかしながら、産業機器向け半導体製品の販売減少に加え、通信機器向け及び民生機器向けも需要が低調であったことなどから、売上高は前期比で減少いたしました。また、半導体及び電子デバイス事業におけるプライベートブランド事業ではウェーハ検査装置の納入が本格化したことにより売上高は増加いたしましたが、産業機器向けの設計・量産受託サービスは低調に推移いたしました。コンピュータシステム関連事業ではデジタル変革の推進に伴うデータ量の急増やクラウド化の進展を背景に、クラウド移行やセキュリティ対策へのIT投資が引き続き堅調であり、当社の取り扱う製品類やサブスクリプション型ライセンスの販売が総じて好調に推移し、製品販売に付随する技術サービス及び保守・監視サービスの需要も拡大いたしました。以上の結果、グループ全体としては売上高216,379百万円(前期比10.9%減)、経常利益11,415百万円(前期比18.0%減)、経常利益率5.3%(前期は5.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益8,874百万円(前期比11.1%減)となり、ROE(株主資本利益率)については20.1%(前期は25.1%)となりました。

2025年3月期を最終年度とする中期経営計画「VISION2025」(2022年3月期が計画初年度)では、世界全体の経済成長率が逓減していく一方で高効率スマート社会(Society 5.0)の到来を事業環境として予測・想定し、デジタルトランスフォーメーションを実現する製品・サービスの提供によって社会の持続的な発展への貢献を当社グループのミッションとして掲げておりました。この計画のミッションを全うするためにもメーカー機能を持つ技術商社から技術商社機能を持つメーカーへの移行を推し進め、技術商社機能としては、データ・サービス・ストックビジネスを利益の源泉とするビジネスモデルを確立し、安定的な利益の基盤構築を図ってまいりました。また、メーカーへの移行に向け、当社グループでは以下の内容を重点ポイントとしておりました。

a.データサイエンス・画像処理・ロボティクスを駆使した モノづくりシステムメーカー

b.設計量産受託サービスで培われた技術に基づくODMメーカー

c.強力なシステム開発力・提案力を有する 設計開発部門

d.マスカスタマイゼーション対応の 高効率スマート工場

この中期経営計画に関しては、当初設定した以下の財務モデルである目標値を2023年3月期~2025年3月期までの3期連続で達成いたしました。

 

 

(2025年3月期を最終年度とした中期経営計画「VISION2025」における当初の財務モデル)

 

VISION2025財務モデル

(2025年3月期)

売上高

200,000百万円±10%

 

(事業別構成比)

コンピュータシステム関連事業

20%

半導体及び電子デバイス事業

70%

プライベートブランド事業

10%

経常利益率

>  5%

 

(事業別経常利益率)

コンピュータシステム関連事業

> 13%

半導体及び電子デバイス事業

>  2%

 

プライベートブランド事業

> 10%

ROE(株主資本利益率)

> 15%

 

 

新たな中期経営計画「VISION2030」では、そのミッションとして「半導体やITを中心とする最先端テクノロジーを通して社会課題に向き合い、期待を超える価値を持つ解決策を提供することで、社会の持続的発展に貢献すること」を掲げており、持続的な社会課題に対峙し、顧客の期待を超える解決策を提供してまいります。また、VISIONとして「メーカーと技術商社の力で潜在的な社会課題を解決する会社」への進化を目指してまいります。中期経営計画「VISION2030」の対象となる2026年3月期からの向こう5年間において、メーカーと技術商社の両面を活かし、特にAI等の新たな課題に対応する取組みを強化してまいります。全社方針としては当社グループが持つ「メーカー」と「技術商社」の力により潜在的社会課題である顧客課題の解決を図るとともに、持続的な利益成長に資する行動を推進してまいります。

資本政策に関しては、持続的な成長への投資として、技術開発・事業拡大に向けた積極的な投資を行い、競争力の強化を目的とした社内DX・社外DXへの投資のほか、人材育成へも積極的な投資を行ってまいります。株主還元については業績に応じて実施するとともに、持続的な利益成長により企業価値向上を図っていくことで長期的な高リターンを目指してまいります。また、自己資本比率40%以上・ROE20%以上を目指し、適正な在庫水準を維持することで財務の健全性を高めてまいります。

これらに加え、サステナビリティにも注力し、社会の発展と企業価値向上を目指してまいります。

以上を踏まえた中期経営計画「VISION2030」にて設定する財務モデル及び事業ポートフォリオは次のとおりであり、目標とする経営指標の達成を目指してまいります。

 

 

(中期経営計画「VISION2030」の最終年度(2030年3月期)における財務モデル及び事業ポートフォリオ)

 

VISION2030

(2030年3月期)

売上高

300,000~350,000百万円

 

(事業別構成比)

コンピュータシステム関連事業

15%

半導体及び電子デバイス事業

75%

プライベートブランド事業

10%

経常利益率

≧  8%

 

(事業別経常利益率)

コンピュータシステム関連事業

12%

半導体及び電子デバイス事業

7%

 

プライベートブランド事業

10%

ROE(株主資本利益率)

≧ 20%

 

 

2026年3月期の業績見通しについては、国内外の経済情勢が依然として不透明な状況が続く中、当社グループを取り巻く事業環境も不確実性が高いものであると認識しております。半導体及び電子デバイス事業では、在庫調整期間の長期化によってサプライチェーンにおける在庫水準の適正化が遅れていることなどから、2026年3月期の前半まで調整期間が続き、回復基調への転換は期の後半からになるものと想定しております。産業機器の市況は需要面での回復が見込まれるものの、顧客ごとに在庫状況のばらつきが見受けられます。また、車載機器の市況は長期的には自動車の電装化やソフト化を背景に高い成長が期待されますが、こちらも2026年3月期後半からの回復を見込んでおります。新規顧客の商権獲得も引き続き想定している一方で、半導体及び電子デバイス事業における受注の回復は第2四半期以降であり、売上高等の業績への寄与は第3四半期以降になると考えております。プライベートブランド事業についても、設計・量産受託サービス、検査装置ビジネスともに第3四半期以降の回復を想定しております。コンピュータシステム関連事業は、企業のIT投資がクラウド移行やセキュリティ対策を中心に堅調に推移すると予想されることから、引き続き底堅い業績を見込んでおります。

当社グループは、引き続きメーカー機能とサービス型ビジネスの強化に取り組み、業績回復に取り組んでまいります。

 

(2026年3月期における通期連結業績予想)

売上高

経常利益

経常利益率

200,000百万円

10,000百万円

5.0%

 

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの事業活動における主な資金需要は商品の仕入代金、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。その他、プライベートブランド事業におけるメーカー機能の強化を図るための設備投資や研究開発投資、M&A投資等があります。上記、運転資金については内部資金、銀行からの短期借入金、コマーシャル・ペーパーの発行及び売上債権の流動化により調達を行い、投資資金については内部資金及び銀行からの長期借入金により調達を行うことを基本としております。一方、銀行借入金の一部を長期固定金利契約とすることにより、金利変動リスクの軽減を図っております。

日常的な手元流動性は金利費用削減のため必要最小限の残高で運用する方針としております。なお、取引銀行6行と当座貸越契約(2025年3月31日現在、極度額合計60,841百万円)を締結しており、資金の流動性は十分確保されております。

今後につきましては、安定的な内部留保の蓄積等により財政状態の健全化を図るとともに、資本効率を高めてまいります。

 

5 【重要な契約等】

(1) 仕入先との主要な契約

当社が締結している仕入先との主要な契約は次のとおりであります。

 

契約の名称

相手先

契約の概要

契約期間

DISTRIBUTION AGREEMENT

インフィニオン・テクノロジーズ社

代理店 (非独占) として製品を販売するため

なし

DISTRIBUTOR AGREEMENT

テキサス・インスツルメンツ社

代理店 (非独占) として製品を販売するため

1年

DISTRIBUTOR AGREEMENT

NXP Semiconductors社

代理店 (非独占) として製品を販売するため

1年

(自動更新)

 

 (注) インフィニオン・テクノロジーズ社との契約については、事前通知や解除事由に該当する等により終了する

   まで有効となります。

 

(2) 重要な金銭消費貸借契約の締結

 

取引先

契約締結日

使途

契約期間

借入金額

担保

㈱三井住友銀行

2021年12月28日

運転資金

2021年12月30日から

2025年12月30日まで

800百万円

特段の定めは

ありません。

㈱横浜銀行

2021年12月30日

運転資金

2021年12月30日から
2026年2月27日まで

800百万円

特段の定めは

ありません。

㈱肥後銀行

2021年12月30日

運転資金

2021年12月30日から
2025年12月30日まで

500百万円

特段の定めは

ありません。

㈱みずほ銀行

2021年12月30日

運転資金

2021年12月30日から
2025年12月30日まで

300百万円

特段の定めは

ありません。

㈱山梨中央銀行

2021年12月30日

運転資金

2021年12月30日から
2025年12月30日まで

300百万円

特段の定めは
ありません。

㈱三井住友銀行

2022年12月28日

運転資金

2022年12月30日から
2026年12月30日まで

4,500百万円

特段の定めは
ありません。

㈱三菱UFJ銀行

2022年12月30日

運転資金

2022年12月30日から
2029年12月28日まで

3,000百万円

特段の定めは
ありません。

㈱三菱UFJ銀行

2022年12月30日

運転資金

2022年12月30日から
2026年12月30日まで

2,500百万円

特段の定めは
ありません。

㈱横浜銀行

2022年12月30日

運転資金

2022年12月30日から
2026年12月30日まで

2,000百万円

特段の定めは
ありません。

㈱横浜銀行

2022年12月30日

運転資金

2022年12月30日から
2027年12月30日まで

2,000百万円

特段の定めは
ありません。

㈱肥後銀行

2022年12月30日

運転資金

2022年12月30日から
2027年12月30日まで

500百万円

特段の定めは
ありません。

㈱山梨中央銀行

2022年12月30日

運転資金

2022年12月30日から
2027年12月30日まで

500百万円

特段の定めは
ありません。

㈱三井住友銀行

(注1)

2024年4月10日

運転資金

2024年4月15日から
2028年4月17日まで

2,500百万円

特段の定めは

ありません。

信用金庫等の複数金融機関(注2)

2024年4月10日

運転資金

2024年4月15日から
2028年4月17日まで

2,000百万円

特段の定めは

ありません。

地方銀行等の複数金融機関(注3)

2024年4月10日

運転資金

2024年4月15日から
2029年4月16日まで

2,000百万円

特段の定めは

ありません。

㈱肥後銀行

2024年4月15日

運転資金

2024年4月15日から
2028年4月14日まで

500百万円

特段の定めは
ありません。

 

(注) 1 「(3) シンジケートローン契約の締結」におけるトランシェAに該当いたします。

   2 「(3) シンジケートローン契約の締結」におけるトランシェBに該当いたします。

   3 「(3) シンジケートローン契約の締結」におけるトランシェCに該当いたします。

 

 

(3) シンジケートローン契約の締結

当社は、2024年4月4日開催の取締役会の決議に基づき、株式会社三井住友銀行をアレンジャー兼エージェントとするシンジケートローン契約を締結いたしました。

 ① 契約締結日          2024年4月10日
 ② 使途             運転資金
 ③ 実行時期           2024年4月15日
 ④ 借入金額及び期末残高     トランシェA: 2,500百万円

                  トランシェB: 2,000百万円

                  トランシェC: 2,000百万円
 ⑤ 満期日            トランシェA: 2028年4月17日

                  トランシェB: 2028年4月17日

                  トランシェC: 2029年4月16日

 ⑥ アレンジャー兼エージェント  株式会社三井住友銀行

 ⑦ 参加金融機関         計12金融機関

 ⑧ 担保             特段の定めはありません。

 ⑨ 財務制限条項         本契約においては、以下の財務制限条項が付されております。

                     a.2024年3月期末日及びそれ以降の各年度の決算期の末日における単体及

                      び連結の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、2023年3月

                      期末日における単体及び連結の貸借対照表に記載される純資産の部の合

                      計金額の75%に相当する金額、又は直近の決算期の末日における単体及

                      び連結の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の75%に相当す

                      る金額のうち、いずれか高いほうの金額以上にそれぞれ維持すること。

                     b.2024年3月期末日及びそれ以降の各年度の決算期の末日における単体及

                      び連結の損益計算書に記載される経常損益がそれぞれ2期連続して損失

                      としないこと。

 

(4) 完全子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)契約の締結

当社は、2024年7月31日開催の取締役会において、2025年1月1日を効力発生日として、当社の完全子会社である株式会社ファーストを吸収合併することを決議し、2024年8月1日付で合併契約書を締結いたしました。この契約に基づき、当社は2025年1月1日付で株式会社ファーストを吸収合併しております。

詳細につきましては、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」をご参照ください。

 

 

6 【研究開発活動】

[半導体及び電子デバイス事業]

当社グループは、高付加価値ビジネスを志向し、メーカー事業を拡充させるための継続的な研究開発投資を行っております。1985年に開設した設計開発センターの豊富な経験を活かした設計開発力に加え、2017年にグループ企業となった東京エレクトロン デバイス長崎株式会社の開発部門と連携することで、付加価値の高いプライベートブランド「inrevium(インレビアム)」製品の開発に引き続き注力しております。なお、2018年にグループ企業となった株式会社ファーストにつきましては、これまで当社の子会社として密に連携しながら研究開発活動を行ってまいりましたが、人的資本経営の視点から、より効率的な人材活用を目指し2025年1月1日をもって当社へ吸収合併いたしました。現在は両社の技術部門を一にして新たな組織体制で技術開発を行っております。また、中期経営計画「VISION2030」においては、当社のビジョンを「メーカーと技術商社の力で潜在的な社会課題を解決する会社」と定め、持続的な収益性向上に向けてメーカー機能をより強靭なものにするための研究開発活動の推進に努めております。

当社の研究開発活動の内容として、お客様のニーズにマッチした新規製品の開発、他社との差別化を図るコア技術の研究、既存製品のラインアップ拡充・機能強化に注力しております。また自社工場において高品質の製品を低コスト、短納期で製造することを目指した生産技術の研鑽にも取り組んでおります。

当社が開発・販売する主な装置製品として、半導体の材料となるシリコンウェーハ並びに炭化ケイ素やタンタル酸リチウムをはじめとする化合物系ウェーハの製造欠陥を高速高感度に検出することが可能な画像検査装置「RAYSENS」、液晶・有機ELディスプレイパネル向け画像検査システム「FV-pixellence」、不定形対象物のピッキング・搬送を自動化する知能化ビジョンロボットシステム「TriMath」を開発し販売を行っております。主なソフトウェア関連製品としては画像処理ライブラリ「WIL」、ロボットビジョン関連ライブラリ「3Dpackage」、「Dispense checker」を開発し、その他汎用画像処理装置、各種画像入力ボード等を販売しています。画像検査分野では従来のルールベースの検査手法に加えて、AI技術を併用して検査精度を向上させる手法が注目されるようになり、お客様のAI開発からインライン展開までをワンストップで支援する「AIプラットフォーム」の開発、及び機能拡張を行っております。また、従来から拡販に取り組んでおります産業機器の異常検知・予知保全を目的としたデータ収集・AI分析を自動化する「CXシリーズ製品」の機能拡張を図り、お客様の製造現場の生産性向上、デジタルトランスフォーメーションの推進に貢献したいと考えております。これらの自社ブランド製品の競争優位性をより高めるため、研究開発活動を推し進め、性能改善や機能拡張に取り組んでおります。

連結子会社である東京エレクトロン デバイス長崎株式会社が販売する主な製品としては、IVR(電話の自動音声応答)システムやFAXサーバなど様々なCTIシステムを構築できるネットワーク対応型の「CT-BOX・CTカードシリーズ」、データセンターや通信事業者局舎のセキュリティ対策、遠隔監視、電力測定を実現する「RMSシリーズ GoriRack(TM)」、太陽光・風力発電等の再生可能エネルギーを効率よく電力変換、蓄電、系統連系を行う「SmartPowerシリーズ」があり、性能改善、機能強化を行っております。特にSmartPower製品に関しては、停電や緊急事態における電力の継続供給システムに活用され、お客様のBCPを強力にサポートしています。この研究開発を通して、SDGsの重要課題であるカーボンニュートラル達成に向けて再生可能エネルギーの活用を促し、社会に貢献したいと考えております。

当連結会計年度における研究開発費は409百万円となっております。今後も引き続き、当社グループ連携による新製品の開発、既存主力製品を軸としたラインアップの拡充を行うとともに、成長市場へ向けた新たな事業拡大とイノベーションの実現を目指して、マーケティング活動、研究開発活動を推進していく計画であります。

 

[コンピュータシステム関連事業]

該当事項はありません。