当社は、双日グループ企業理念、双日グループスローガンを掲げ、当社グループの事業基盤拡充や持続的成長などの「双日が得る価値」と、国、地域経済の発展や人権・環境配慮などの「社会が得る価値」の2つの価値の実現と最大化に取り組んでおります。
(双日グループ企業理念)
双日グループは、誠実な心で世界を結び、
新たな価値と豊かな未来を創造します。
(双日グループスローガン)
New way, New value
(双日の価値創造モデル)

(2) 今後の見通し及び対処すべき課題
「中期経営計画2023」について
当社グループは、2021年4月からの3ヶ年計画である「中期経営計画2023」~Start of the Next Decade~を策定し、2030年における当社グループの目指す姿として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げました。必要なモノ・サービスを必要なところに提供することを総合商社の使命と捉え、「マーケットインの徹底」、「社内外での共創と共有の実践」、「スピードの追求」により競争優位・成長を追求し、併せて必要となる組織や人材の変革を継続することで、持続的な価値創造を実現していきます。

「中期経営計画2023」で目標としている経営指標は次のとおりです。

当社の株主資本コストが8%程度であることを踏まえ、経営指標としてROE目標を10%超としています。この目標を達成するために、社内管理指標として投下資本に対する基礎的営業キャッシュ・フローの比率を示すキャッシュリターンベースでのROIC(CROIC)を導入し、各セグメントにおける達成すべきCROICの目線を価値創造ラインとして定めております。
成長の実現に向けて、以下に示す注力領域を中心として、戦略に裏付けられた規模感のある新規投資の実行と、既存ビジネスの収益構造の抜本的な変革の双方に取り組んでいます。新規投資については、キャッシュ・フローをマネージした規律を堅持しつつ、メガトレンドを踏まえた成長領域や新たな領域における投資を中期経営計画3ヶ年で合計3,300億円(うち300億円は人や組織改革に向けた非財務投資)程度を実行することにより、企業価値の着実な向上を実現しています。

当社は、株主の皆様に対して、安定的かつ継続的に配当を行うと共に、内部留保の拡充と有効活用によって株主価値を向上させることを基本方針としています。この基本方針のもと「中期経営計画2023」においては、 連結配当性向30%程度を基本とします。
また、下限配当について、PBR1倍に至るまでは時価DOE4%、PBR1倍到達後は簿価DOE4%と設定しました。つまり、PBR1倍に至るまでは、実質的に配当利回り4%をお約束し、PBR1倍到達時には当社が考える資本コスト8%程度の半分を還元することになります。
「中期経営計画2023」の詳細は、当社ウェブサイト(https://www.sojitz.com/)をご参照ください。
当期の取り組みについて
「中期経営計画2023」の初年度である2021年度の当社グループの業績は、石炭などの資源価格の上昇による金属・資源での増益に加え、「中期経営計画2017」以降において実行した新規投資の収益化などにより、当期純利益は823億円、ROEは12.2%となり、期初に公表した計画及び期中に修正した見通しを超過達成しました。新規投資については、中期経営計画における成長戦略に定めた領域を中心に、米国省エネルギーサービス事業会社、アフリカガス小売事業会社、水産食品加工会社、㈱JALUXへの公開買付など、1,500億円程度実行しました。また、既存事業の変革については、パートナーとの提携による不動産事業の構造改革に着手しました。
外部環境については、ロシアによるウクライナ侵攻を始めとした地政学リスクを含め、今後も著しい変化が続くと認識しており、多様な変化に伴うリスクを適切にマネージすると共に、自らの変革の機会と捉え、価値創造に向けた取り組みが必要と考えています。引き続き、2030年の当社の目指す姿に向けた施策、「マーケットインの徹底」、「社内外での共創と共有の実践」、「スピードの追求」により競争優位の獲得と事業の成長を追求し、併せてそれに必要な組織改革や人材の高付加価値化を継続することで、成長の実現を通じた持続的な価値創造を実践していきます。こうした取り組みに関する対話や情報の発信を社内外に対して拡充することにより、成長期待の醸成、さらにPBR1倍超の実現を目指します。
本部別成長戦略
自動車
自動車の卸売・組立事業と小売事業を中核とし、成長市場のアジア・ラテンアメリカなど、成熟市場の日本・米国などで展開しています。地域密着型のセールス・マーケティングとアフターサービスの強化、デジタル技術の活用などを通じた事業のバリューアップと共に、有望市場でさらなる事業領域の拡大を図ります。また、販売金融事業や時代の変化を捉えた自動車関連サービスにも積極的に取り組み、豊かなモビリティ社会に貢献していきます。
航空産業・交通プロジェクト
ボーイング社とのパートナーシップを活かした取り組みの深化に加え、ビジネスジェットや機内食などの航空関連事業の強化、空港運営事業での収益拡大に取り組んでいます。加えて、北米鉄道事業や新興国での交通インフラビジネス、船舶関連事業にも取り組み、空港・港湾、その間を移動する人・モノを融合したソリューションを創出すると共に、外部パートナーなどとの事業の「共創と共有」を積極的に推進し、バリューアップを図ります。
インフラ・ヘルスケア
新興国を中心としたインフラ・ヘルスケア関連の需要増や気候変動、デジタル化、価値観の多様化などのグローバルな社会課題に対し、エネルギー、通信、都市インフラ、ヘルスケアなどの事業領域において、当社ならではの機能・発想を複合的に組み合わせることで新たなソリューションを提供し、価値を創造していきます。
金属・資源・リサイクル
金属資源や鉄鋼分野における上流権益投資及びトレーディング事業に加えて、リサイクルを含むサーキュラーエコノミーの領域など、社会ニーズに対応した新規事業の創出・推進に取り組んでいます。資源関連ビジネスの変革を推進すると共に、近年の脱炭素に向けた潮流を踏まえて、省資源化、循環型社会の実現に向けたリサイクル事業を最注力テーマと位置づけ、市況に左右されない事業を構築していきます。
化学
メタノールをはじめとする基礎化学品、合成樹脂を中心とする機能性材料、工業塩・レアアースといった無機化学品などの幅広いトレードや事業の展開に加え、新規環境事業開発にも取り組んでいます。強みのある事業を伸ばすと共に、脱炭素・循環型社会の実現に向けた取り組みを強化し、優良な事業資産を拡充していきます。
生活産業・アグリビジネス
持続可能な消費と生産をテーマに、東南アジアなど成長著しい地域において、アグリビジネス事業、食料事業、飼料畜産事業、林産資源事業などの既存事業を強化すると共に、周辺事業の拡大に取り組んでいます。先進国における社会課題の解決からの価値創造をテーマに、日本の地域創生にも取り組み、優良な事業資産を拡充していきます。
リテール・コンシューマーサービス
食品や消費財の流通事業、商業施設運営事業、不動産事業など、消費者のニーズに応える事業を国内外で展開しています。ベトナムやインドなど成長が期待される新興国において、既存事業の変革を推進すると共に、人々に「生活の豊かさ」と「利便性」をもたらす新規事業を創出していきます。また、日本国内におけるリテール領域の強化にも取り組み、収益源の多様化と持続的な成長を目指します。
持続的成長に向けた取り組み
1) サステナビリティに関する取り組み
当社グループは、将来に亘り「2つの価値」を創造し続けるため、事業を通じて中長期的に取り組む6つのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を定め、グローバルな環境・社会課題の解決と企業活動との融合促進及びその体制の構築に取り組んでいます。

また、パリ協定や、持続可能な開発目標(SDGs)などのグローバル課題を踏まえ、「脱炭素社会実現」と「サプライチェーン上の人権配慮」を当社グループの責務と考え、当社の戦略へ反映させるべく2050年長期ビジョンである「サステナビリティ チャレンジ」を設定しています。

「中期経営計画2023」では、脱炭素社会や循環型社会を見据えたビジネスや、トランジション期間に必要なインフラ型ビジネス・サービスを強化すると共に、恒常的に人権尊重の取り組みを拡大していきます。
当社グループは、事業を通じた脱炭素社会の実現に向けて、当社グループのCO2排出量削減を加速し、将来の脱炭素社会への耐久性を高めると共に、この社会移行を新たな「機会」と捉え、幅広い分野におけるビジネス構築を進めています。
2021年3月には、「サステナビリティ チャレンジ」を実践すべく脱炭素方針を策定し、具体的な目標を設定しました。「中期経営計画2023」においては、方針の本格稼働に向け、各種施策を実行していくと共に、Scope3や削減貢献量(Scope4)の把握と計測を行います。
2021年度はサプライチェーン上でのCO2排出(Scope3)に関する定性分析及び一般炭と石油ガスに関する発電セクターの定量分析を実施しました。Scope4についても今後計測を行っていきます。

また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークを踏まえて、積極的な情報開示と透明性向上、ステークホルダーとの対話に努めています。
● 「サステナビリティ チャレンジ」“サプライチェーンを含めた人権尊重”に向けた取り組み
当社グループは、グローバルに事業を展開する総合商社として、多岐に亘る業界のサプライチェーンに関わっています。そのため、サプライチェーン上の人権尊重に努めるべく、環境・人権リスクの把握及び低減を図っています。
取り組みにあたっては、「国際人権章典」及び国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」を支持し、「ビジネスと人権に関する国連指導原則」のフレームワークに沿って推進しています。
<「ビジネスと人権に関する国連指導原則」が定める人権対応のフレームワーク>
・ 当社取り組みの全体観
前中期経営計画において、一般的な環境・人権リスクの高い「高リスク事業分野」における、グループの該当状況を特定し、各事業現場での対応状況を確認しました。「中期経営計画2023」では、この土台をより強固なものにしつつ、さらに当社グループ方針の周知・課題認識の徹底を図ります。

・ 方針の策定・周知
当社グループは、「国連グローバル・コンパクト」の10の原則などを踏まえて、「双日グループ サプライチェーンCSR行動指針※」を策定しています。サプライヤーやグループ会社に対して、当社方針の周知を行うと共に、以下に掲げる項目の理解と実践を求めています。

グループ内においては、「人権尊重が経営の最重要課題の1つである」という認識を徹底するため、各社から「人権尊重への理解と事業現場への認識徹底」を行う旨の確認書を取得しています。また、サステナビリティ推進室がこれらのグループ各社の責任者との直接対話を通じ、方針や取り組みの周知及び現場意見の聴取を行っています。
・ リスク評価
当社グループの事業は多岐に亘り、川上から川下までサプライチェーンに広く関わっています。英国NGO「ビジネスと人権リソースセンター」が保有する環境・人権リスクの発生事例データベースをもとに、当社グループの事業の中でも特にリスクが高い事業分野を特定すると共に、サプライチェーン全体において一般的にどの位置で環境・人権リスクが発生しやすいか、分析・確認をしています。


上記で特定した高リスク事業分野に対し、以下のPDCAによる確認を行う体制を構築しました。
①グループ内、取引先を対象とする網羅的なアンケートの実施
②グループ会社各社へのヒアリングを通じたモニタリング
③現地実査を含む人権デューデリジェンスの実施
・ 改善・救済/実績開示
特定した高リスク事業分野については、当社グループ会社のみならずサプライチェーンにおける対応について問題がないことを確認しました。その上で、外部専門家の意見も聴取し、さらに強化・改善すべき事項の洗い出しを行っています。これら高リスク事業分野において、PDCAサイクルを通じた継続的な改善を進め、適時・適切な開示を行います。
2) 組織や人材の変革に向けた取り組み
● 人材戦略に関する基本方針
当社グループでは、2030年の目指す姿として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げています。多様性と自律性を備えた個の成長が、企業の価値創造の源泉であると考え、人材戦略を支える3つの柱として「多様性を活かす」、「挑戦を促す」、「成長を実感できる」を据えています。「多様性を競争力に」をテーマに、社員の多様なバックグラウンドを活かし、多角的な視点からマーケットニーズを発掘すると共に、Hassojitzプロジェクト(後述)をはじめとする「挑戦」の機会を設け、所属本部外での海外トレーニーなど新たな経験を積み、「成長」を実感できるサイクルを繰り返すことで、社員の成長が当社の成長へとつながる仕組みづくりを推進しています。
<当社の成長に向けた人材戦略>

当社では、人事施策の浸透度を定量的に効果測定しながら当社の人づくりを実行するため、2021年6月に以下のとおり「人材KPI」を設定しました。外部環境や人事施策の浸透状況に応じて柔軟な見直しができるよう動的KPIとし、場合によっては具体的施策の見直しなども踏まえながら、モニタリングする体制を整えています。
<人材KPI(動的)と2021年度の実績>

〔人事施策の柱①「多様性を活かす」〕
当社では、人材の多様性を、変化の激しい市場環境に対応し、常に迅速に事業創造できる組織の力へと変えるため、女性、外国人、様々な経験を持つキャリア採用者など、多様な人材の採用、起用を積極的かつ継続的に行いつつ、それぞれの特性や能力を最大限活かせる職場環境の整備や管理職層の教育などの取り組みを進めてきました。これら多様な社員から、新たな着想や意見を多面的かつ効果的に取り込むことで、双日の価値創造につなげる環境づくりを目指しています。
○ 女性活躍推進
当社では、ダイバーシティマネジメントの専任組織を設け、人事部とも協調しながら、各種施策を実施しています。2030年代に女性社員比率50%程度を目指し、中長期の視点で、当たり前に女性が活躍する環境づくりを進めています。将来的に組織の意思決定に関わる女性社員を増やしていくために、各世代層のパイプライン形成と経験の蓄積、キャリア意識の醸成に注力しており、女性総合職の海外・国内出向経験割合を2023年度に40%とするKPIを設定するほか、女性課長職比率などについても、目標を設定しています。
2021年度には以下の取り組みを実施しました。
- 積極的な女性総合職の新卒採用及び中途採用の継続
- 女性管理職の登用促進
- 若手女性総合職の海外・国内出向経験割合の向上
- 30歳前後の女性総合職を対象とした経営陣によるメンタープログラムの実施
- 管理職層を対象にしたエグゼクティブプログラムなど外部研修への派遣

女性活躍の目標に掲げる女性総合職の新卒採用比率は2018年度以降継続して30%以上を維持(2022年4月入社の女性総合職比率は44%)しており、昨今では女性の中途採用も強化しています。加えて、積極的な女性の管理職登用を進めた結果、2022年4月時点で女性課長職比率は10.5%となり、2023年度の目標を前倒しで達成しました。また、ライフイベント前に海外トレーニーや海外駐在を経験できるようキャリアの早回しを積極的に進めており、女性総合職の海外・国内出向経験割合は34%まで向上しています。加えて、内部昇格および社外からの人材獲得により、女性の執行役員数は2022年6月現在で2名となっています。
このほか、当社は女性がキャリアを止めることなく活躍できる環境を整えることが重要であると考え、早期復職支援や柔軟な働き方の推進による仕事と育児の両立支援にも取り組んでいます。2022年4月には、男性社員の育児参加の促進を念頭に育児制度の改定を行いました。男性が積極的に育児参加することで、職場全体が育児への理解を深めると共に、育児を応援する職場環境の醸成にもつながると考え、管理職を含む全社員を対象に新たな育児制度の説明会を実施しました。人材KPIとして育児休暇取得率100%を設定し、性別に関わらず活躍できる職場、組織、会社を目指し、業務効率化やチームマネジメント力の強化にも取り組んでいます。また、多様な属性・価値観を持つ社員の個を活かし、組織の成果につなげるダイバーシティマネジメントの重要性を伝える施策として、部長研修ではアンコンシャスバイアスをテーマとした研修を行ったほか、全部課長向けにeラーニングでイクボス研修を実施し、「双日イクボス宣言」への賛同を確認しています。
これらの様々な女性活躍推進の取り組みにより、2022年3月には、女性活躍推進に優れた上場企業を表彰する「なでしこ銘柄」に6年連続6回目の選定をされました。
(ご参考)
■ 双日、なでしこ銘柄に6年連続で選定(2022年3月)
https://www.sojitz.com/jp/news/2022/03/20220323.php
■ 女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画(2021年度~2023年度)」
https://www.sojitz.com/jp/csr/employee/pdf/kodo2021.pdf
○ 中途採用者の活躍
当社では、経営人材、DXなどの専門人材、女性・外国人などの多様性を強化すべく、中途採用にも注力しています。2022年3月末時点で、管理職ポストにおける中途採用者の割合は約2割、役員ポストでは約3割を占めています。なお、2021年度の採用に占める中途採用者の比率は29%でした。今後も引き続き、毎年の新規採用者数の約3割を中途採用者としていく予定で、そのうち半数程度を女性とする方針です。また、2021年12月には、CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)として社外の女性人材を当社の執行役員に迎えました。これまでに他社で培った知見や女性ならではの視点などを経営や現場との対話に活かし、新規事業の創出と事業モデルの変革に繋がるデジタルの実装を加速していきます。(DXの取り組みについては、後述「3)DXの取り組み方針について」をご参照ください。)
○ 外国人人材の活躍
海外事業会社を起点に現地ネットワークに入り込み、事業領域の拡大や新規事業の創出につなげるため、外国人人材のCxOポストをさらに拡大し、2021年度時点で40%である海外事業会社の外国人CxO比率を、2025年度までに50%超に引き上げることを目指しています。また、今後は、こうした海外事業会社の外国人トップの経験知見を、海外地域の当社グループの運営にも生かし、域内での意見交換/情報共有を通じ共創と共有を促す仕組みも構築していきます。
〔人事施策の柱②「挑戦を促す」〕
変化が激しいこの時代に重要なことは、新たな視点によりユニークな発想を見出し、発想の実現に責任と覚悟を持つことと考え、とことんやり抜く探求心と自立心を持った社員の挑戦を促しています。未来の飛躍に向けた成長を続けるために、既存のビジネスや固定観念の枠を超えて価値創造できる人材の育成に取り組んでまいります。
○ 発想×双日 Hassojitz プロジェクト
当社における「さらなる成長」を考え、未来構想力や戦略的思考を定着させるべく、2019年に新規事業創出プロジェクト「発想×双日プロジェクト(通称:Hassojitz プロジェクト)」を開始しました。2020年には「起業家精神」をテーマに、対象を全社員へ広げ、「やる気があれば、誰でも挑戦できる。ただし、実現までコミットする覚悟はあるか。」というコンセプトのもと実施しました。このプロジェクトでeスポーツ関連の事業を考案したチームは、将来の事業化を見据えて2021年度に事業会社を設立し、当時チームリーダーを務めた2022年4月時点で入社5年目となる社員がその事業会社の社長に就任するなど人事施策の一環として着実な成果が見え始めております。2021年は「共創力」をテーマに、将来を見据えた上で自前主義から「共創と共有」をもとにした実現確度を高めた取り組みを目指し、プロジェクトを行いました。3年間の活動を踏まえ、発想を起点とした事業創出を加速させるべく、2022年度は案件検討段階でのインキュベーション体制をより充実させる予定です。
○ 双日アルムナイ
退職後も経済・社会活動を続ける当社OB/OGと当社役職員との人的ネットワークの形成・拡大により、当社のビジネス領域の拡大を促進するプラットフォームとして活用すると共に、緩やかな当社グループの形成を通じ、現状の事業領域に捉われない新たな事業機会の創出やオープンイノベーションを促進していきます。Hassojitzプロジェクト最終発表会の審査委員に双日アルムナイ幹部を招き、社外で培った知見をもとにしたフィードバックやアドバイスを得て、イノベーションの質を高めています。「退職しても双日と関わりたい」と思われる企業であり続け、外部知見を価値向上に活かしていきます。
○ 独立・起業支援制度
「独立・起業する社員を支援する制度(独立・起業支援制度)」を導入し、独立・起業を企図する社員のために当社のリソース(資金・情報・ネットワーク)を提供し、事業推進を支援します。なお、Hassojitz プロジェクトを通じて発案されたアイデアも、この制度を適用して事業化・独立・起業することが可能となります。「事業や人材を創造し続ける総合商社」として、当社は会社と独立・起業を目指す個人を含めた全社員の望むキャリアパスを支援すると共に、起業家精神を持ち積極的に挑戦し続ける人材の確保・育成、企業文化の変革を目指します。
○ 双日プロフェッショナルシェア株式会社
これからの時代を見据え、年功序列や終身雇用という概念にとらわれず、多様な価値観やキャリア志向を持つ全ての社員が、高いモチベーションを維持し、働き続ける環境を整えています。その施策の1つが、双日プロフェッショナルシェアの設立です。35歳以上の社員の多様なキャリア・ライフプランを支援するプラットフォームで、「70歳定年」「就業時間・場所の制限なし」「副業・起業」を可能とし、社員一人ひとりが新たなキャリアパスで活躍し続けられるよう支援します。実際に、当社グループ外からの業務受託もあり、当社の経験を社会への貢献につなげる事例も出始めています。
○ デジタル人材育成
当社では、デジタルは顧客・社会ニーズを価値創造につなげる上での大前提であり、全従業員が持つべき共通言語と位置づけています。DXを事業の変革・競争力強化を実行するための手段とし、事業モデル、人材、業務プロセス面での改革により、価値創造に貢献していきます。社内外のデータやデジタル技術を利活用することでビジネスモデルや業務プロセスの変革を実践できる人材を 「デジタル人材」と定義し、その育成に注力しています。具体的には、入門レベル、基礎レベル、応用レベルに分類し、5年以内に全社員が基礎レベルまで修了、このうち600名が応用レベルを修了することを目標に掲げています。2022年3月末時点では、入門レベルであるITパスポート試験は総合職の60%、事務職の40%が資格を取得しました。引き続き、攻め(DX)と守り(情報セキュリティ)の両輪を意識した基礎レベルコンテンツを拡充させていくと共に、応用レベルについても2022年夏に開講する予定です。
〔人事施策の柱③「成長を実感できる」〕
失敗を許容する風通しの良い風土の中で、社員が積極的に「挑戦」することで、「成長」を実感し、社員一人ひとりの「多様性」が育まれていく好循環が生まれています。当社では、社員自らが成長・貢献を実感できることが重要な報酬の1つと考え、社員と会社が選び合い、高め合う環境をこれからも築いていきます。
○ 指導員制度、メンター制度
当社では、新入社員を「現場が育てる」施策として、指導員制度とメンター制度を設けております。指導員は、新入社員と同じ部署の先輩社員が務め、1年間のOJTを通じて、所属部署での業務知識や社会人としての基礎知識を指導します。メンターは、新入社員とは異なる部署のベテラン社員が担当し、業務から離れた視点で、新入社員の視野を広げ、キャリアプラン形成のサポートとなるようメンタリングを行います。
○ 海外トレーニー制度
当社では、400社を超えるグループ会社を通じて多様なビジネスを展開しており、それぞれの事業会社の経営を担う人材の育成は重要な課題です。経営人材の育成・確保のため、海外トレーニー制度、MBAプログラムへの派遣制度、語学自己研鑽制度など、様々な研修を行っています。2021年度は20ヶ国に海外トレーニーを派遣(うち46%が女性社員)、日本とは異なる現場を早期に経験し、さらなる成長につなげていきます。
○ 研修プログラム
当社では、自ら考え、行動し、やり抜くことで、世界を舞台に「価値を創造することのできる人材」を育成すべく、各種研修を実施しています。全ての世代・階層に提供するデジタル人材育成プログラムなどのコンテンツのほか、新入社員向けや管理職向けの研修、役員向けの研修など、それぞれの世代・階層に合わせた様々な研修コンテンツを提供し、個の成長をチーム・組織の成長へつなげていく取り組みをしています。また、次世代経営幹部人材には、将来を見据えた戦略思考や行動変革につなげるため、エグゼクティブコーチングや他社とのワークショップなどの機会を設けています。このように、若年層から管理職層に対して幅広く育成機会を提供することにより、将来の経営人材層を計画的に育成していきます。
<研修プログラム>

○ ジョブローテーション制度、社内公募制度
当社では、管理職登用までに2つ以上の異なる業務(出向や海外駐在を含む)を経験して多様な専門知識とスキルを身に付けるジョブローテーション制度や自らが思い描くキャリアを切り拓く機会としての社内公募制度など、社員の育成促進とキャリアの幅を広げる制度を導入しています。当社は、社員とキャリアプランを共有するために定期的に面談を実施するほか、異動して約半年後のタイミングでアンケートを行うなど、社員のモチベーションをモニタリングできる体制を整え、必要に応じて面談を実施しています。また、2020年度からは昇格要件として求める経験年数を短縮し、経験を積むスピードを早めています。
〔多様な人材の活躍を支える制度〕
当社グループの成長は社員と共にあると考え、多様な価値観やキャリア志向を持つ全ての双日パーソンが、挑戦・成長を積み重ねることで、高いモチベーションを維持しながら自律的に働き続けられる環境を整えていきます。
○ 健康経営
当社グループにとって最大の財産である社員一人ひとりとその家族が心身共に健康であり、社員が働きやすさと働きがいを持てる健全な職場環境づくりは、会社の重要な責任の1つと考えています。社員が仕事に対する高い意欲を持ち、最大限の力を発揮することが組織力向上につながり、当社が掲げる「新たな価値と豊かな未来の創造」を実現するという考えに基づき、2018年3月に健康維持・増進に関する『双日グループ健康憲章 "Sojitz Healthy Value"』を策定しました。疾病の未然予防・健康増進に加え、仕事と治療の両立を図るべく、健康推進室の体制を強化し、各健康関連施策を実施すると共に、定期健康診断の一次受診率100%を継続しながら、早期発見・疾病予防を高めることを目指し、二次検診受診率を人材KPIとして定め、2022年3月末時点では49%まで向上しています。
2022年4月からは、女性活躍推進の取り組みを健康面でも後押ししています。子宮頸がん・乳がん検診の対象を全年齢に拡大し、思わぬ疾病によりキャリアが長期に亘り中断されることを防ぎます。月経や更年期症状などによる影響を低減し、日頃から心身共に健康で安定的に力が発揮できるよう、社内に気軽に相談ができる婦人科嘱託医を配置、不妊治療に関わる相談窓口も設けています。また、外部企業と契約し、医師や専門家によるオンラインセミナーの開催や、同社が提供するサービスを通じて社員やその配偶者の不妊治療の支援も開始しました。今後も、女性社員のキャリアとライフを支援する取り組みを整えていきながら、全社員が心身健康な状態を維持し活躍し続けられる環境を整備していきます。
<健康経営>

<多様な人材の活躍を支える主な制度・取り組み一覧>

3) DXの取り組み方針について
当社は、デジタルを顧客・社会ニーズを価値創造につなげる上での大前提であり、全従業員が持つべき共通言語と位置づけております。「中期経営計画2023」のもと、2030年に「事業や人材を創造し続ける総合商社」であるという目指す姿に基づき、デジタルを活用して事業モデル・人材・業務プロセス面での変革を進め、企業価値の向上を目指しています。事業モデルについては、デジタルの実装・活用による既存事業モデルの変革と、新しい柱となる事業の創出の2軸で進めています。多数の異なる業種の事業が存在する総合商社業態では、全社一律のやり方ではDXの推進が困難であり、デジタル企業への変革に向け、事業毎の個別実装を推進すると共に、個別事業毎にDXを推進する人材を育成しています。
2021年4月より社長を委員長とするDX推進委員会を設置し、全社一体となった推進体制としています。DX実装の最高責任者であるCDOを社外より招聘すると共に、情報セキュリティの最高責任者であるCISOを設置することで、DX実装の加速化とデータ活用の加速に向けたセキュリティの強化を両輪で推進し、新規・既存事業双方のデジタル化を推進しています。
こうした体制及び人材育成といったDXを推進する上での土台は整備されてきており、今後、具体的な個別実装による事業変革・創出を実現していきます。

(3) 利益配分に関する基本方針
当社の利益配分に関する基本方針につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照下さい。
※将来情報に関するご注意
本資料に掲載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、業績を確約するものではありません。実際の業績等は、新型コロナウイルス感染症の収束時期や、内外主要市場の経済状況や為替相場の変動など様々な要因により大きく異なる可能性があります。重要な変更事象等が発生した場合は、適時開示等にてお知らせします。
有価証券報告書に記載しております、事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、将来事項に関する記述につきましては、当期末現在において入手可能な情報に基づく当社の判断、目標、一定の前提又は仮定のもとでの予測などであります。
事業上のリスク
当社グループは、総合商社としてグローバルかつ多角的に事業を行っており、展開する事業の性質上、様々なリスクにさらされております。また、世界情勢の不確実性の高まり、デジタル化の加速、価値観・ニーズの多様化など、外部環境は著しく変化し続けており、常に、新たなリスクへの対応をする必要があると考えております。
このようなリスク・著しい変化を機会と捉え、事業やビジネスモデルを変革し続けることを目指し、当社グループは、2023年度を最終年度とする「中期経営計画2023」において企業価値向上に向けた各種施策に取り組んでおります。
こうした中で、「リスク管理基本規程」に則り、当社を取り巻くリスクを分類・定義した上で各々のリスク項目毎に任命されたリスク管理責任者が年度初めに「リスク管理運営方針・運営計画」を策定します。リスク管理運営の進捗、改善状況及びモニタリング結果は、四半期毎にCFOが委員長を務める内部統制委員会を介し、経営会議、取締役会に報告され、取締役会では、リスク管理に関する重要事項の付議、定例報告などを通じてリスク管理運営状況の監督を行っています。また、期中で新たなリスクが識別された場合には、リスク体制、対応状況の確認を行うことで、リスク対応の検証を実施しています。分類したリスクのうち、定量化が可能なリスク(市場リスク、信用リスク、事業投資リスク、カントリーリスク)に関しては、リスク量(リスクアセット)を四半期毎に計測し、算出したリスクアセットの数値に基づいて管理しております。また、定量化が困難なリスク(資金調達リスク、環境・社会(人権)リスク、コンプライアンスリスク、法務リスク、システム・情報セキュリティリスク、災害等リスク、ウェブサイト・SNSを介した企業情報発信に関するリスク、品質に関するリスクなど)についても、四半期のモニタリングの対象として管理しております。当社グループは、こうした様々なリスクに対処するため、必要なリスク管理体制を整備し、リスク管理にあたっておりますが、これらの全てのリスクを完全に回避できるものではありません。

当社グループの事業に関しては、以下のようなリスクがあります。
① マクロ経済環境の変化によるリスク
当社グループは、グローバルにビジネスを展開し、事業活動は多岐に亘っており、当社グループの業績は、日本及び関係各国の政治経済状況や世界経済全体の影響を受けます。そのため、世界的あるいは特定地域における経済動向は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 市場リスク
当社グループは、貿易業や事業投資を通じた外貨建の取引などに伴う為替変動リスク、資金の調達や運用などに伴う金利変動リスク、営業活動における売買契約・在庫商品などに伴う商品価格変動リスク並びに上場有価証券の保有などに伴う価格変動リスクなどの市場リスクにさらされております。当社グループは、これらの市場リスクを商品の売買残高などの資産・負債のマッチングや先物為替予約取引、商品先物・先渡取引、金利スワップ取引などのヘッジ取引によって極小化することを基本方針としております。
(a)為替リスク
当社グループは、外貨建の輸出入取引・外国間取引を主要な事業活動として行っており、その収益・費用などは主に外国通貨による受払いとして発生する一方、当社グループの連結決算上の報告通貨が日本円であることから、外国通貨の対日本円での為替変動リスクにさらされております。この為替変動リスクに伴う損失の発生又は拡大を未然に防ぐために、先物為替予約などのヘッジ策を講じておりますが、これらの対応を行っても為替変動リスクを完全に回避できる保証はなく、予期せぬ市場の変動により当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、海外の事業会社からの受取配当金、海外連結子会社・持分法適用関連会社の損益の多くが外貨建であり、日本円に換算する際の為替変動リスクを負っています。さらに、当社グループは、海外に多くの現地法人・事業会社などを保有しており、財務諸表を日本円に換算する際の為替変動により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、為替の収益感応度(米ドルのみ)は、1円/米ドル変動すると、売上総利益で年間5億円程度、当期純利益(当社株主帰属)で年間3億円程度、自己資本で15億円程度の影響があります。
(b)金利リスク
当社グループは、営業債権などによる信用供与・有価証券投資・固定資産取得などのため金融機関からの借入又は社債発行などを通じて資金調達を行っております。資産・負債を勘定科目毎に金利感応度の有無により分類し、金利感応度のある資産と負債との差額を金利ミスマッチ金額と捉え、固定・変動調達比率を調整することで金利変動リスクを管理しておりますが、金利変動リスクを完全に回避できるものではなく、金利水準の急上昇による調達コスト増大が当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、2022年3月末の当社グループの有利子負債残高は1兆527億24百万円であり、平均利率につきましては、短期借入金は0.71%、1年内返済予定の長期借入金は1.80%、長期借入金(1年内返済予定のものを除く)は0.97%となっております。
(c)商品価格リスク
当社グループは、総合商社として様々な事業分野において多岐に亘る商品を取り扱っており、相場変動などによる商品価格変動リスクにさらされております。取扱い商品については、社内組織単位毎にポジション(ロング・ショート)限度額とロスカットポイントを設定の上、ポジション・損失管理を行うと共に、損切りルール(評価額を含む損失額がロスカットポイントに抵触した場合、速やかにポジションを解消し、以降の当該年度中の新規取引を禁止するルール)を制定し運用しておりますが、これらの対応を行ってもリスクを完全に回避できる保証はなく、予期せぬ市場の変動などにより当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、各商品ポジションに関しては、モニタリングの上、本部別に増減内容の分析を行うなど、適正水準にコントロールするための施策を行っております。
(d)上場有価証券の価格リスク
当社グループは、市場性のある有価証券を保有しております。「中期経営計画2023」において、より一層の政策保有株式の縮減を進めることとしており、2020年12月末比で2024年3月末までに政策保有株式を半減させるという方針のもと、実行時期も含めた具体的な売却計画を策定し、計画に基づく着実な売却を実行しております。また、引き続き保有する上場株式については、個別銘柄毎の保有意義の見直しを毎年実施しております。保有上場株式の株価が大幅に下落した場合、有価証券の公正価値の変動によって、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 信用リスク
当社グループは、多様な商取引により国内外の多数の取引先に対して信用供与を行っており、信用リスクを負っております。こうしたリスクに対処するために、当社グループは、信用供与を行っている取引先毎に客観的な手法に基づく11段階の信用格付けを付与すると共に、信用格付けを参考に取引先毎の取引限度を設定し、信用供与額を取引限度に収めることにより信用リスクをコントロールしております。また、取引先の信用状態に応じて必要な担保・保証などの保全措置を講じております。さらに、債権査定制度により、当社グループが営業債権を有する取引先の中から一定の基準により査定先を抽出した上で、その信用状態と当社グループの債権、保全などの状況を点検することで、信用リスクの状況把握と個別貸倒引当金算定の厳格化に努めております。
しかしながら、こうした与信管理を行った場合でもリスクを完全に回避できる保証はなく、取引先の破綻などにより債権の回収不能などの事象が発生した場合には当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 事業投資リスク
当社グループは、主要な事業活動の1つとして様々な事業に対して投資活動を行っておりますが、事業投資や権益投資などにおいて投資価値が変動するリスクを負っております。さらに、事業投資の多くがもつ流動性の低さなどの理由により、当初意図していた採算で投資を回収できないリスクがあります。
事業投資から発生する損失の予防・抑制を目的として、当社グループは事業投資案件の審議における厳格なスクリーニング、事後管理並びに撤退について各々基準を設け、管理を行っております。
新規事業投資案件のスクリーニングでは、キャッシュ・フロー計画を含めた事業計画を精査し事業性を厳格に評価すると共に、キャッシュ・フロー内部収益率(IRR)のハードルを設定し、当社グループの株主価値を向上させ、かつリスクに見合った収益が得られる案件を選別できる仕組みを整えております。
既に実行済みの事業投資案件については、問題事業を早期に発見し適切な措置を講じることで株主価値の向上及び損失を極小化するために、定期的に事業性を評価するなどプロセス管理を徹底しております。また、事業投資案件の問題点を早期・事前に把握し、株主価値を創造し続け、撤退・整理損を最小化する目的で、モニタリング・撤退基準に基づき、資本コストを超過していない事業を選別し、適時適切に撤退するための意思決定に活用しております。
このように、新規事業投資実行時のスクリーニングの仕組み及び案件の事後管理に係る手続きを整備してはおりますが、期待どおりの収益が上がらないリスクや事業活動そのものを計画どおりに行えないリスクを完全に回避することは困難であります。当該事業からの撤退などに伴い損失が発生する可能性や、当該事業のパートナーとの関係など個別の事由により当社が意図したとおりの撤退ができない可能性があり、これらの場合において、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ カントリーリスク
当社グループは、カントリーリスク発現時の損失の発生を最小化するためには、特定の国・地域に対するエクスポージャーの集中を避ける必要があると考えております。また、カントリーリスクが大きい国との取り組みでは、貿易保険などを活用し案件毎にカントリーリスクヘッジ策を講じることを原則としております。
カントリーリスクの管理にあたっては、各国・地域毎にカントリーリスクの大きさに応じて客観的な手法に基づく9段階の国格付けを付与すると共に、国格付けと国の経済規模に応じてネットエクスポージャー(エクスポージャーの総額から貿易保険などのカントリーリスクヘッジを差し引いたもの)の上限枠を設定し、各々の国のネットエクスポージャーを上限枠内に抑制しております。
しかしながら、これらのリスク管理やヘッジを行っていても、当社グループの取引先所在国や当社グループが事業活動を行う国の政治・経済・法制度・社会情勢の変化によって計画どおりの事業活動を行えない可能性や損失発生の可能性を完全に排除することはできません。このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 固定資産に係る減損リスク
当社グループが保有する不動産、機械装置・運搬具、のれん、鉱業権などの固定資産及び使用権資産については、減損リスクにさらされております。当社グループでは、対象資産に対し当期末時点において必要な減損処理を行っております。しかしながら、今後価格下落などによりこれらの対象資産の価値が著しく減少した場合、必要な減損処理を行う結果として当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 資金調達リスク
当社グループは、事業資金を金融機関からの借入金又は社債発行などにより調達しております。金融機関との取引関係の維持、一定の長期調達比率の確保などによる安定的な資金調達を行っておりますが、金融システム・金融資本市場の混乱や格付会社による当社グループの信用格付けの大幅な引下げなどの事態が生じた場合には、資金調達が制約されると共に、調達コストが増加するなどにより、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 環境・社会(人権)リスク
当社グループは、サステナビリティ重要課題(人権、環境、資源、地域社会、人材、ガバナンス)を特定すると共に、2050年に向けた長期ビジョン「サステナビリティ チャレンジ」を掲げ、脱炭素社会実現への貢献、サプライチェーン上の人権配慮に取り組んでいます。このほか、環境方針、サプライチェーンCSR行動指針、人権方針などを定め、グループ内での遵守・徹底、サプライヤーへの当社方針の周知を行っています。
事業活動に伴い生ずる環境・社会(人権)リスクについては、国連のビジネスと人権に関する指導原則のフレームワークに基づき、商材や事業形態の特性を踏まえたリスク評価を行い低減に努めています。
当社グループの事業の中でも特にリスクが高い事業分野を特定すると共に、一般的に、サプライチェーン全体においてどこで環境・人権リスクが発生しやすいかを分析・確認することが重要であり、商材や事業形態の特性を踏まえたリスク評価を行い低減に努めています。特定した高リスク事業分野については、当社グループ会社のみならずサプライチェーンにおけるリスクの該否及び対応について確認し、その上で、外部専門家の意見も聴取し、さらに強化・改善すべき部分の洗出しを行うなど、PDCAを通じた継続的な対応改善を図っています。
加えて、投融資案件の審議過程においては、当該事業の環境・社会(人権)リスクの確認に加え、そうしたリスクが、将来の事業の持続性に及ぼす影響についても議論しています。
また、地球環境や生物多様性、ひいては社会システムや企業活動にも大きな影響を及ぼす気候変動リスクについては、パリ協定を踏まえた国内外の脱炭素に向けた政策や規制などの動向のほか、産業別の温室効果ガス排出量の多寡、代替的な技術動向などを注視すると共に、当社グループの各事業におけるCO2排出リスクを把握、評価しています。
なお、気候関連の「リスク」と「機会」が当社事業に与える影響についてはサステナビリティ委員会などで討議・確認すると共に、TCFDの提言に沿って分析を行った上で、方針・目標を策定し、当社グループのみならず、サプライチェーン上のCO2量(Scope3)などの把握にも取り組んでおり、積極的な情報開示と透明性向上に努めています。気候変動抑止のために法規制が強化されるなどの「移行リスク」については、CO2排出リスクが高いと想定され、当社グループの事業活動、経営戦略、財務計画にもたらす影響がより大きいと考えられる事業分野についてシナリオ分析を順次行い、財務への影響を分析した上で、方針を策定し、具体的な対応を行っております。また、気温上昇により洪水などの被害が増加する「物理的リスク」については、まず、洪水や干ばつなど、主に「水」に関するリスクに注目し精査を行っています。
<脱炭素対応方針>
●既存事業
(1)Scope1とScope2の目標
・Scope1、Scope2の合計:2030年までに6割削減、2050年までにネットゼロ *1
(うち、Scope2は、2030年までにネットゼロ *2)
・石炭火力発電:現在保有無し。今後も保有しない。
*1 *2 2019年度を基準年として、単体及び連結子会社が対象。証書などによるオフセットを含む。取り組みを加速するために、インターナルカーボンプライスの導入を検討。
(2)Scope3(資源権益事業)関連の目標
・一般炭権益 :2025年までに半分以下、2030年までにゼロ *3
・石油権益 :2030年までにゼロ
・原料炭権益 :2050年までにゼロ
*3 2018年度末を基準とした権益資産の簿価ベース。公表済みの「2030年までに半分以下にする」
目標を前倒し。
(3)Scope4/削減貢献量
・脱炭素社会への移行を「機会」と捉え、Scope4の増加を図る。まずは計測と把握に努め、将来の目標の設定を
検討。
●新規事業
今後手掛ける新規事業においても2050年までのネットゼロを目指します。
しかしながら、当社グループの事業活動及びサプライチェーンにおいて、環境や労働安全衛生、人権などに係る問題が発生した場合、又は地域住民や環境・人権保護団体などからそれら問題に関与していると批判を受けた場合に、事業活動の停止・中止、汚染除去・浄化への対応、訴訟の発生や損害賠償の負担、当社グループの社会的評価の低下などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑨ コンプライアンスリスク
当社グループは、様々な事業領域で活動を行っており、事業活動に関連する法令・規制は、会社法、税法、汚職など腐敗行為防止のための諸法令、ハラスメント防止のための諸法令、独占禁止法、関税法、外為法を含む貿易関連諸法令や化学品規制などを含む各種業界法など広範囲に亘っております。これらの国内外の法令・規制を遵守するため、当社グループではコンプライアンスプログラムを制定し、コンプライアンス委員会を設け、グループ全役職員にコンプライアンスマインドを浸透・定着させるための取り組みを、全社をあげて実施しております。また、安全保障貿易管理委員会を中心とした安全保障貿易に関する実行体制の整備・運用にも取り組んでおります。しかしながら、このような取り組みによっても事業活動におけるコンプライアンスリスクを完全に排除することはできるものではなく、関係する法律や規制の大幅な変更、予期しない解釈の適用などが当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 法務リスク
営業活動に関連して、当社グループが国内又は海外において訴訟、仲裁などの法的手続きの被告又は当事者となることがあります。訴訟などには不確実性が伴い、その可能性の程度や時期、結果を現時点で予測することはできませんが、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑪ システム・情報セキュリティリスク
当社グループは、情報資産を適切に保護・管理するため、各種規程を整備し、情報セキュリティ分科会(2022年4月より情報・ITシステムセキュリティ委員会に改組)などを中心とした管理体制を構築しているほか、当期よりチーフ・インフォメーション・セキュリティ・オフィサー(CISO)を設置し、情報セキュリティに係る体制を強化しております。また、重要な情報システムやネットワーク設備については、これらの機器設備を二重化するなど障害対策を施すと共に、ファイアウォールによる外部からの不正アクセスの防止、システムの脆弱性を悪用するウイルス対策、暗号化技術の採用などによる情報漏洩対策の強化にも努めております。特に、リモートワークが一定程度定着した当期においては、サイバー攻撃を早期に検知することで影響を抑え込むためのソフトウエアの導入、不審メールに対する訓練の国内・海外の子会社への実施拡大など、セキュリティ対策に重点的に取り組んでおります。また、当社グループが抱えるセキュリティ上の課題・リスクを可視化した上で、優先度をつけた中長期的なセキュリティ対策計画を策定するため、外部専門機関とも協力し、本社・子会社のセキュリティリスクアセスメントを実施しました。
このように総合的な情報セキュリティの強化と事故防止に努めておりますが、近年急増しているサイバー攻撃やコンピュータへの不正アクセスなどにより、個人情報を含めた重要な情報資産が漏洩又は毀損、予期できない自然災害や障害を原因として情報通信システムが不稼働の状態に陥る可能性は排除できません。その場合に被害の規模によっては当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 災害等リスク
地震、風水害などの自然災害や感染症の大規模な流行により事務所・設備・従業員とその家族などに被害が発生し、当社グループに直接的又は間接的な影響を与える可能性があります。災害対策マニュアル並びに感染症マニュアルの作成、防災訓練、従業員の安否確認システムの整備、事業継続計画(BCP)の策定などの対策を講じておりますが、被害を完全に回避できるものではなく、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
新型コロナウイルス感染症に関しては、社内外における感染予防・感染拡大防止とグループ従業員・ステークホルダーの皆様の安全確保を最優先に、政府の方針・行動計画・要請に基づき各種対応策を講じております。具体的には、時差通勤・テレワークの実施、有給休暇取得の推奨、出張規制の強化、会議・イベント実施に関する規制強化、海外から日本への渡航者に対する自宅待機措置、事業所内の感染防止策の周知、健康推進室でのグループ従業員の健康状態の把握・管理、感染者が発生した場合の対策の周知を実施し、グローバルネットワークを通じた動向の把握と各地の状況に応じた退避指示などの対策を行っております。
⑬ ウェブサイト・SNSを介した企業情報発信に関するリスク
当社グループのウェブサイト・SNSは、システムの脆弱性に起因する掲載情報の改ざんや収集した個人情報の流出リスク及び運用に起因する批判・非難の集中や著作権・商標権・肖像権の侵害リスクにさらされております。システムの脆弱性に関しては、上記⑪にて記載のとおり、合理的な範囲内で可能な限りの安全対策に努めております。運用に関しては、投稿に関する事前承認やウェブサイトの定期見直しなどのルール化を義務付け、ウェブサイト・SNSを保有する組織毎に明文化し運用しておりますが、リスクを完全に排除できるものではなく、当社グループの信用やブランド価値に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑭ 品質に関するリスク
当社グループは、事業投資の実行に伴い、事業領域を拡大・多様化しており、製造業やサービス業への進出も増加しています。こうした中、当社では品質管理委員会を設置し、提供するモノ・サービスの品質を全社横断的に管理する体制を整えております。また、多岐に亘る事業領域があり個々に取り組む管理手法が多様であっても、全社に共通する品質管理の基本方針を「双日グループ・品質管理ポリシー」として制定し、グループ全役職員の品質管理意識の醸成に取り組み、実践しています。しかしながら、品質問題の発生を完全に抑制することは困難であり、当該問題により生じた損害について、当社グループが責任を負う可能性があります。このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を設定することが義務付けられております。実際の業績はこれらの見積りと異なる場合があります。
見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直しております。会計上の見積りの見直しによる影響は、見積りを見直した会計期間及び将来の会計期間において認識しております。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
当社グループは、資産又は負債の公正価値を測定する際に、入手可能な限り、市場の観察可能なデータを用いております。 公正価値の具体的な算定方法は次のとおりであります。
(a) 資本性金融資産
上場株式については、取引所の価格によっております。非上場株式については、割引将来キャッシュ・フローに基づく評価技法、類似会社の市場価格に基づく評価技法、純資産価値に基づく評価技法、その他の評価技法を用いて算定しております。非上場株式の公正価値測定に当たっては、割引率、評価倍率等の観察可能でないインプットを利用しており、必要に応じて一定の非流動性ディスカウント、非支配持分ディスカウントを加味しております。非上場株式の公正価値の評価方針及び手続の決定はコーポレートにおいて行っており、評価モデルを含む公正価値測定については、個々の株式の事業内容、事業計画の入手可否及び類似上場企業等を定期的に確認し、その妥当性を検証しております。
(b) デリバティブ金融資産及びデリバティブ金融負債
通貨関連デリバティブ
為替予約取引、直物為替先渡取引、通貨オプション取引及び通貨スワップ取引については、期末日の先物為替相場に基づき算出しております。
金利関連デリバティブ
金利スワップについては、将来キャッシュ・フローを満期日までの期間及び信用リスクを加味した利率で割り引いた現在価値により算定しております。
商品関連デリバティブ
商品先物取引については、期末日現在の取引所の最終価格により算定しております。商品先渡取引、商品オプション取引及び商品スワップ取引については、一般に公表されている期末指標価格に基づいて算定しております。
当社グループは期末日において、資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額を見積っております。のれん及び耐用年数の確定できない無形資産については毎期、さらに減損の兆候がある場合には都度、減損テストを実施しております。個別資産又は資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。
回収可能価額は、個別資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額としております。公正価値は市場参加者間の秩序ある取引において成立し得る価格を合理的に見積もって算定しております。使用価値は、貨幣の時間価値及び個別資産又は資金生成単位に固有のリスクに関する現在の市場の評価を反映した税引前の割引率を用いて、見積将来キャッシュ・フローを割引いて算定しております。将来キャッシュ・フロー見積りにあたって利用する事業計画は原則として5年を限度としております。なお、当社グループは、使用価値及び公正価値の算定上の複雑さに応じて外部専門家を適宜利用しております。
過年度にのれん以外の資産について認識した減損損失については、期末日において、認識した減損損失がもはや存在しない又は減少している可能性を示す兆候があるか否かを判定しております。このような兆候が存在する場合には、回収可能価額の見積りを行い、当該回収可能価額が資産の帳簿価額を上回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで増額し、減損損失の戻入れを認識しております。のれんについて認識した減損損失は、以後の期間において戻入れておりません。
なお、持分法適用会社に対する投資の帳簿価額の一部を構成するのれんは区分して認識しないため、個別に減損テストを実施しておりません。持分法適用会社に対する投資が減損している可能性が示唆されている場合には、投資全体の帳簿価額について回収可能価額を帳簿価額と比較することにより単一の資産として減損テストを行っております。
当社グループでは、固定資産の減損会計等の会計上の見積りについて、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき実施しております。新型コロナウイルス感染症の影響は、事業や地域によってその影響や程度が異なるものの、今後徐々に回復するという仮定に基づき会計上の見積りを行っております。
引当金は、過去の事象の結果として現在の債務(法的債務又は推定的債務)を有しており、当該債務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高く、当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合に認識しております。
貨幣の時間的価値の影響に重要性がある場合、当該負債に特有のリスクを反映させた現在の税引前の割引率を用いて割引いた金額で引当金を計上しております。
確定給付制度は、確定拠出制度以外の退職給付制度であります。確定給付制度債務は、制度ごとに区別して、従業員が過年度及び当年度において提供したサービスの対価として獲得した将来給付額を見積り、当該金額を現在価値に割り引くことによって算定しております。制度資産の公正価値は当該算定結果から差し引いております。
割引率は、当社グループの確定給付制度債務と概ね同じ満期日を有するもので、かつ支払見込給付と同じ通貨建ての、主として報告日における信用格付けAAの債券の利回りであります。
過去勤務費用は、即時に純損益で認識しております。
当社グループは、確定給付制度から生じるすべての確定給付負債(資産)の純額の再測定を即時にその他の包括利益で認識しており、直ちに利益剰余金に振り替えております。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産及び繰延税金負債は、資産及び負債の帳簿価額と税務基準額との差額である一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除について認識しており、期末日における法定税率又は実質的法定税率、及び税法に基づいて、資産が実現する期又は負債が決済される期に適用されると予想される税率又は税法で算定しております。
繰延税金資産は、将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産の帳簿価額は期末日において再検討しており、繰延税金資産の便益を実現させるだけの十分な課税所得を稼得する可能性が高くなくなった範囲で繰延税金資産の帳簿価額を減額しております。
当連結会計年度(以下、当期という。)は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始や、これに対する各国制裁の影響も相まって、世界経済への下押し圧力が拡大しました。資源価格の高騰、サプライチェーンの混乱に伴う供給制約とインフレの進行、さらには各国中銀の金融引き締めによる急激な金利上昇と円安進行など、新型コロナウイルス感染症の再拡大の可能性と共に、引き続き警戒が必要です。
米国では、2022年3月にFRBが利上げを開始したことに加え、量的引き締めへの移行に伴う資産縮小プロセスが進行しています。ウクライナ情勢の影響もあり、インフレ率の高止まりは長期化が予想されていることから、今後も積極的なインフレ対策の実施が見込まれます。政府、民間に関わらず利払い負担が増大することによる景気への影響に注意が必要です。
欧州ではECBがインフレへの対応をこれまで以上に重視する姿勢に転換しています。また、対露制裁を強化しつつある一方で、同地域における原油・ガスの対露依存度も大きいため、製造業を含めた幅広いバリューチェーンに悪影響が出ることが懸念されます。
中国では、依然として新型コロナウイルス感染症の影響によるロックダウンが各地で行われており、また、「共同富裕」をスローガンとした一部の自国企業への規制強化の動きも続く中、投資減少などの影響も懸念されます。一方、11月に予定されている共産党大会に向け、インフラ投資、中小企業向け減税といった景気対策の動きについても、引き続き注目されます。
アジアでは、新型コロナウイルス感染症の影響から経済が回復しつつある中、2022年は実質5%台のGDP成長が予想されています。ワクチン接種が進展し、各国における入国規制緩和や堅調な輸出・力強い内需の回復に支えられる見込みですが、一方で、今回のウクライナ危機によるインフレ長期化や通貨安、資金繰り悪化などが懸念されています。
日本では、サプライチェーンの混乱長期化など、主力工業製品の生産・輸出の回復を左右するリスクには留意が必要です。日銀は3月の金融政策決定会合において、他国とは異なり、従来の緩和的な金融政策を維持しており、今後も日米金利差の拡大傾向の継続及び日本の経常収支の構造的変化によるさらなる円安進行が懸念されます。
当期の経営成績を分析しますと、次のとおりであります。
収益は、石炭価格や貴金属価格の上昇による金属・資源・リサイクルでの増収に加え、合成樹脂取引の増加やメタノール価格の上昇による化学での増収、海外自動車事業での販売台数増加による自動車の増収などにより、2兆1,007億52百万円と前期比31.1%の増収となりました。
売上総利益は、石炭価格の上昇による金属・資源・リサイクルの増益に加え、メタノール価格の上昇や合成樹脂取引の増加による化学での増益、海外自動車事業での販売台数増加による自動車での増益などにより、前期比831億99百万円増加の2,713億19百万円となりました。
税引前利益は、売上総利益の増益に加え、持分法による投資損益の増加などにより、前期比798億75百万円増加の1,172億95百万円となりました。
当期純利益は、税引前利益1,172億95百万円から、法人所得税費用318億24百万円を控除した結果、当期純利益は前期比560億54百万円増加の854億71百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期純利益は前期比553億31百万円増加し、823億32百万円となりました。
当期純利益にFVTOCIの金融資産や在外営業活動体の換算差額などを計上した結果、当期包括利益は前期比856億21百万円増加し、1,485億88百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期包括利益は前期比833億18百万円増加し、1,424億29百万円となりました。
次に、これをセグメント別に分析しますと、以下のとおりであります。
当社グループは、2021年4月1日付にて「機械・医療インフラ」、「エネルギー・社会インフラ」及び「産業基盤・都市開発」の一部事業領域を再編し、「インフラ・ヘルスケア」へ変更しており、「食料・アグリビジネス」、「リテール・生活産業」及び「産業基盤・都市開発」の一部事業領域を再編し、「生活産業・アグリビジネス」、「リテール・コンシューマーサービス」へ変更しております。また、「金属・資源」の名称を「金属・資源・リサイクル」へ変更しております。
なお、従来の「自動車」、「航空産業・交通プロジェクト」、「機械・医療インフラ」、「エネルギー・社会インフラ」の区分に属していた四輪・二輪部品、舶用機械、産業機械、先端産業、軸受及び原子力産業関連機器事業の事業区分を「その他」へ変更しております。
(以下「当期純利益」は「親会社の所有者に帰属する当期純利益」を指しております。)
収益は、海外自動車事業での販売台数増加などにより、2,430億51百万円と前期比35.1%の増収となりました。売上総利益の増益などにより、当期純利益は、前期比59億89百万円増加し、70億83百万円となりました。
収益は、航空機関連取引における増収や船舶市況の回復などにより、700億20百万円と前期比175.7%の増収となりました。売上総利益の増益などにより、当期純利益は、前期比28億47百万円増加し、46億87百万円となりました。
収益は、ガス販売事業会社での増収があったものの、海外火力発電事業での減収などにより、617億94百万円と前期比0.9%の減収となりました。持分法による投資損益の増加があったものの、売上総利益の減益に加え、海外通信インフラ事業会社の関係会社整理損などにより、当期純利益は、前期比15億96百万円減少し、66億24百万円となりました。
収益は、石炭価格や貴金属価格の上昇などにより、5,604億60百万円と前期比57.3%の増収となりました。売上総利益の増益に加え、鉄鋼事業会社の増益による持分法による投資損益の増加などにより、当期純利益は、前期比358億29百万円改善し、340億68百万円となりました。
<化学>
収益は、合成樹脂取引の増加やメタノール価格の上昇などにより、5,382億99百万円と前期比32.3%の増収となりました。売上総利益の増益などにより、当期純利益は、前期比68億61百万円増加し、126億30百万円となりました。
収益は、木材取引や海外肥料事業の価格上昇などにより、2,917億55百万円と前期比23.7%の増収となりました。売上総利益の増益などにより、当期純利益は、前期比17億82百万円増加し、63億85百万円となりました。
収益は、食肉取引の価格上昇などにより、2,145億86百万円と前期比8.0%の増収となりました。前期における商業施設の売却の反動によるその他の収益・費用の減少があったものの、売上総利益の増益などにより、当期純利益は、前期比1億31百万円増加し、50億40百万円となりました。
当期末の資産合計は、営業債権及びその他の債権が化学や建材により増加したことや、新規取得に伴う持分法で会計処理されている投資の増加などにより、前期末比3,615億65百万円増加の2兆6,616億80百万円となりました。
負債合計は、営業債務及びその他の債務が化学や建材により増加したことや、新規借入による有利子負債の増加などにより、前期末比2,523億26百万円増加の1兆8,978億2百万円となりました。
資本のうち親会社の所有者に帰属する持分合計は、当期純利益の積み上がりや、為替や株価の変動によるその他の資本の構成要素の増加により、前期末比1,089億1百万円増加の7,280億12百万円となりました。
この結果、当期末の自己資本比率は27.4%となりました。また、有利子負債総額から現金及び現金同等物、及び定期預金を差し引いたネット有利子負債は前期末比1,596億13百万円増加の7,702億91百万円となり、ネット有利子負債倍率は1.06倍となりました。
※自己資本比率及びネット有利子負債倍率の算出には、親会社の所有者に帰属する持分を使用しております。
また、有利子負債総額にはリース負債を含めておりません。
次に、これをセグメント別に分析しますと、以下のとおりであります。
当期末のセグメント資産は、米国自動車小売事業の新規取得や、海外自動車事業での取扱数量増加などにより、前期末比403億81百万円増加の1,918億9百万円となりました。
当期末のセグメント資産は、航空機関連取引の増加による営業債権及びその他の債権の増加などにより、前期末比650億56百万円増加の2,180億35百万円となりました。
当期末のセグメント資産は、関連会社の取得による持分法で会計処理されている投資の増加などにより、前期末比838億20百万円増加の4,210億50百万円となりました。
当期末のセグメント資産は、石炭価格の上昇による営業債権及びその他の債権の増加などにより、前期末比352億89百万円増加の5,114億64百万円となりました。
当期末のセグメント資産は、合成樹脂取引の増加による営業債権及びその他の債権の増加などにより、前期末比481億77百万円増加の3,204億76百万円となりました。
当期末のセグメント資産は、木材取引の価格上昇による営業債権及びその他の債権の増加などにより、前期末比347億28百万円増加の2,450億47百万円となりました。
当期末のセグメント資産は、水産食品加工会社の新規取得などにより、前期末比835億1百万円増加の4,205億27百万円となりました。
当期のキャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローは650億84百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは1,388億19百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは468億98百万円の収入となりました。これに現金及び現金同等物に係る換算差額を調整した結果、当期末における現金及び現金同等物の残高は2,716億51百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当期の営業活動による資金は、営業収入及び配当収入などにより650億84百万円の収入となりました。前期比では198億88百万円の収入減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当期の投資活動による資金は、航空機関連取引及び米国省エネルギーサービス事業や水産食品加工会社への投資などにより1,388億19百万円の支出となりました。前期比では1,031億43百万円の支出増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当期の財務活動による資金は、配当金の支払い及び自己株式の取得などの支出があったものの、借入金による調達などにより468億98百万円の収入となりました。前期比では875億19百万円の収入増加となりました。
「中期経営計画2023」におけるキャッシュ・フローマネジメントにつきましては、引き続き営業活動と資産入替により創出されたキャッシュの範囲内で成長投資と株主還元をマネージしていくこととしております。中でも、短期の運転資金増減の影響を受けない基礎的キャッシュ・フローを、「中期経営計画2020」から「中期経営計画2023」の6年間累計で黒字とする計画です。加えて、継続したBSマネジメントにより、優良資産から質の高い利益とキャッシュを創出し、キャッシュ・フローマネジメントによる成長モデルを実現していきます。
当期は、インフラ・ヘルスケアでの米国省エネルギーサービス事業への投資やリテール・コンシューマーサービスでの水産食品加工会社の取得などの投資を1,500億円程度実行しました。また、株主還元では連結配当性向を30%程度とする「中期経営計画2023」における配当に関する基本方針に基づき、配当を行いましたが、石炭価格の上昇などによる基礎的営業キャッシュ・フローの積み上がりに加え、金属・資源・リサイクルでの非鉄精錬会社の売却や政策保有株式の売却などによる資産入替が順調に進んだことにより、基礎的キャッシュ・フローは黒字となりました。

③ 資金の流動性と資金調達について
当社グループは、当期を初年度とする「中期経営計画2023」におきまして、従来と同様に資金調達構造の安定性維持・向上を財務戦略の基本方針とし、一定水準の長期調達比率の維持や、経済・金融環境の変化に備えた十分な手元流動性の確保により、安定した財務基盤の維持に努めており、当期末の流動比率は155.3%、長期調達比率は78.0%となりました。
長期資金調達手段のひとつである普通社債につきましては、2021年5月に100億円を発行いたしました。引き続き金利や市場動向を注視し、適切なタイミング、コストでの起債を検討してまいります。
また、資金調達の機動性及び流動性確保の補完機能を高めるため、円貨1,000億円(未使用)及び2022年3月に2.25億米ドルを追加した20.25億米ドル(14.2億米ドル使用)の長期コミットメントライン契約を有しております。
(目標とする経営指標の達成状況等)
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 今後の見通し及び対処すべき課題」をご参照下さい。
(販売、仕入及び成約の状況)
① 販売の状況
「(2) 当連結会計年度の経営成績の分析」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 5 セグメント情報」をご参照下さい。
② 仕入の状況
仕入は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
③ 成約の状況
成約は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
※将来情報に関するご注意
本資料に掲載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、業績を確約するものではありません。実際の業績等は、新型コロナウイルス感染症の収束時期や、内外主要市場の経済状況や為替相場の変動など様々な要因により大きく異なる可能性があります。重要な変更事象等が発生した場合は、適時開示等にてお知らせします。
特記事項はありません。
特記事項はありません。