当社は、双日グループ企業理念、双日グループスローガンを掲げ、企業理念にある「豊かな未来」の創造に向け、当社グループの事業基盤拡充や持続的成長などの「双日が得る価値」と、国・地域経済の発展や人権・環境配慮などの「社会が得る価値」の2つの価値の実現と最大化に取り組んでいます。
(双日グループ企業理念)
双日グループは、誠実な心で世界を結び、
新たな価値と豊かな未来を創造します。
(双日グループスローガン)
New way, New value
(双日の価値創造モデル)

「豊かな未来」の創造、「2つの価値」の実現に向けて、当社では人材を最も重要な経営資源と考え、「人財」と表記し、価値創造モデルの中心に据えています。世界中のニーズを把握し、価値を生み出す人財力を高めていくことが、双日の価値創造の源泉です。
実効性の高い戦略と充実したコーポレート・ガバナンスのもと、常に新しい発想を持ち、トレーディング・権益投資・事業投資を通じた機能を発揮して、将来を見据え、外部環境の目まぐるしい変化やニーズの多様化に先駆けたスピード感あるビジネスを展開しています。
また、世界各国に広がる事業拠点やパートナーシップ、それぞれの地域で長年にわたり育んできたお客様との信頼関係やブランド力など、築き上げてきた確固たる事業基盤が、当社の持続的な成長を支えています。
当社が創造した価値は、「社会が得る価値」として還元され、ステークホルダーからの信頼獲得につながります。また、創造した価値は、「双日が得る価値」として、当社の人材基盤やビジネスノウハウといった各事業基盤を拡充するものとして還元され、当社の競争力強化や新たなビジネスチャンスの増加につながります。
また、このような企業理念のもと、2030年における「目指す姿」として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げており、総合商社としての使命である、必要なモノ・サービスを必要なところに届けつつ、マーケットニーズや社会課題に応える事業や人といった価値を創造し続けることにより、持続的な企業価値向上を実現しています。
(2) 「中期経営計画2026」の進捗状況
① 「中期経営計画2026 - Set for Next Stage -」について
当社は2030年の目指す姿として、「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げており、Next Stageとして当期利益2,000億円と時価総額2兆円に成長させることをターゲットとしております。本中計は、このNext Stageを見据えて、成長基盤と人的資本の強化に取り組む中期経営計画と位置づけています。Next Stageに到達するためのキーメッセージとなる「双日らしい成長ストーリー」の実現に向け、成長基盤と人材への積極投資を行っていきます。

本中計の具体的な定量目標として3点を掲げています。一つ目は、将来の成長に向けて、財務規律を堅持した上で6,000億円の投資を実行します。二つ目に、3ヶ年平均で当社が認識する株主資本コスト9~10%を超過するROE12%超・当期利益1,200億円超をそれぞれ確保し、企業価値と株主価値の向上を図ります。三つ目に、基礎的営業キャッシュ・フローの3割程度を株主還元に充当します。

(注) 1 基礎的営業キャッシュ・フロー:会計上の営業キャッシュ・フローから運転資金増減等を控除したもの
2 株主資本DOE:支払配当÷株主資本
3 株主資本:その他の資本の構成要素を除外した前期末自己資本
双日らしい成長ストーリーの実現並びに定量目標の達成のためには、当社の独自性や強みをさらに磨き上げ、競争優位を生み出すことが不可欠です。既存領域を核としてさらに磨き上げると共に、多数の事業である「点」を繋ぎ合わせ、掛け合わせることによって事業と収益の「カタマリ」構築を進めてまいります。また、全ての事業領域に必要不可欠な要素として「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「GX(グリーントランスフォーメーション)」領域を全社横断的に強化しています。
加えて、収益力の強化・競争優位の源泉として、継続して人的資本・ヒトの魅力(ちから)を強化してまいります。多様なスキル・経験を持つ自立した個の確立や、個の力を最大化する組織・カルチャーの組成に向けてヒトへの投資を積極的に進めています。
② 成長基盤の強化
「中期経営計画2026」の初年度では、双日の競争優位を活かせる新規投資の拡大と既存事業の磨きこみにより、双日らしい成長ストーリーの実現に向けた取り組みを進めております。
-新規投資の拡大-
豪州インフラ事業においては、豪州最大級のインフラ開発企業の買収を決定しております。新たな機能を獲得し、大規模プロジェクトを一貫して手がけると共に、Next Stageに向けたポートフォリオ変革を進めています。
エネルギー需要の拡大や脱炭素社会の実現に対応する省エネルギーサービス事業においては、前中計に続き米国・豪州で既存事業の拡充を狙いとしたボルトオン投資を実行することで、着実に収益のカタマリを構築しています。今後は、他成長市場へのスピーディーな面展開も視野に、収益のカタマリをさらに拡大していきます。
持続可能なサプライチェーンの構築を目指す水産事業においては、過去からの上流・中流での取り組みに、新たな投資により獲得した米国での小売機能を掛け合わせ、バリューチェーンの拡大を通じた収益のカタマリ化に取り組んでいます。今後はグループ間の更なる協業推進により、原料調達力や販売力を一層高めていきます。
-既存事業を磨く-
化学事業においては、広範なネットワークと提案力・実行力を武器に、収益力の拡大に取り組んでおります。引き続き新規投資による事業領域の獲得・拡大と併せ、収益力を拡大させていきます。
東南アジアの肥料事業においては、現地における長年の事業経営を通じて得たトップクラスの市場シェア、高い販売力に更なる磨きをかけることに加え、後述のとおりDX活用による新たな事業領域にも挑戦しております。
また、賃貸マンション事業や船舶事業においては、ベストオーナーとなりうる外部パートナーへ既存事業の一部をシェアアウトしつつ、双日の強みである機能の提供を継続することで、パートナーと共に事業を成長させ規模感を拡大し、持続的な成長を図る体制を整備しました。
他事業セグメントにおいても双日らしい成長ストーリーを実行することで、Next Stageに向けて加速度的な成長を実現します。
③ 本部別の成長戦略
<自動車>
自動車販売を中核とした既存事業の強みを活かし、持続的な成長を目指す戦略を展開しています。既に知見や実績のある領域の拡大を基盤に、「グローバル・ニッチトップ」「ドミナント」「バリューチェーン」の3つを成長戦略のキーワードとして、独自性による競争優位のあるビジネスモデルを追求します。これにより持続的な成長を実現すると共に、社会課題やニーズに対してソリューションや価値を提供し、豊かなモビリティ社会の実現へ寄与していきます。
<航空・社会インフラ>
航空・船舶・鉄道の3大輸送手段における長年の経験と豊富な知見を梯子に、変化する顧客やマーケットニーズを的確に捉え、オペレーションの最適化、ライフサイクル全般を見据えた周辺サービス事業といった新たな価値を提供してまいります。当社機能の先鋭化・多角化を推し進め、各事業を面として紡ぎ、社内外との共創を通じて、社会的な共感力と訴求力が高い事業を創出していきます。
<エネルギー・ヘルスケア>
エネルギー及びヘルスケア領域において、脱炭素、人口増加、高齢化などの社会課題解決に対応し、従来の「アセット型」インフラビジネスに加え、顧客へのサービス・ソリューション提供を行う「事業型ビジネス」を構築し、収益機会及び規模の拡大を目指します。また、投資先企業の顧客基盤・人脈やパートナー企業を通じたローカルネットワークを拡充し、当社の有形・無形の資産を活用することで双日ならではの競争優位を構築し、新たな価値を創造していきます。
<金属・資源・リサイクル>
既存の上流権益投資・トレーディング事業に加え、社会ニーズに応じた新たな価値を提供する新規事業の創出・推進に取り組んでいます。脱炭素の推進、高品位資源・グリーン素材・リサイクル原料の供給、重要鉱物のサプライチェーンの強化、デジタル化などを通じ、既存事業のビジネスモデルを変革することで、さらなる安定的な資源の供給体制を構築し、持続可能な社会の実現に向けて貢献していきます。
<化学>
国内外の化学業界でパラダイムシフトが進む中、市場ニーズの変化を先読みし迅速かつ柔軟に対応することでトレードの強靭化を図ります。また、知見ある領域での事業投融資を進めるとともに、脱炭素社会、カーボンニュートラルの実現といった次世代の市場ニーズに対応可能な環境対応事業への投資を推進していきます。
<生活産業・アグリビジネス>
継続成長が期待できるアジアの新興国を中心に、肥料・アグリビジネス事業、食料・飼料畜産事業、林産・バイオマス事業などの既存事業をさらに強化していきます。東南アジアでトップクラスの市場シェアを保有する肥料事業においては、デジタルを組み合わせることで新たなビジネスを構築、収益の拡大を進めています。また、ベトナムで取り組む畜産・食肉加工事業では、肥育から食肉加工、販売までの一貫体制を構築し、同国の食文化の発展に寄与するとともに収益化を図っていきます。
<リテール・コンシューマーサービス>
消費者との接点を多く持つことを強みとし、世界中の人々の「生活の豊かさ」と「利便性」を高めることを目標に、多様な事業を展開し続けています。小売から卸・流通、食品加工まで幅広く事業を行っているベトナムでは、DX投資によるサプライチェーンの効率化に取り組み、新たな価値を創出していきます。水産事業では、寿司種とマグロに強みを持つ複数の事業会社の調達・販売シナジーを創出し、北米の寿司市場を中心に海外売上の拡大に挑戦していきます。
④ DX
1) "Digital-in-All"の実現に向けて
当社は全ての事業とデジタルの一体化を前提とした"Digital-in-All"を掲げ、デジタル技術の徹底的な活用を経営戦略の中心として据えています。「中期経営計画2026」では、以下3つの柱を通じ、双日らしい成長ストーリーの実現による価値創造を図ります。
(a) デジタルビジネスの収益化
双日テックイノベーション、さくらインターネット、AIスタートアップ企業などのデジタルパートナーとの共創
(b) 既存ビジネスの価値向上・競争力強化
当社の独自性・強みに基づき蓄積してきた7営業本部の事業基盤とデジタルの掛け合わせによるビジネスの深化
(c) データ・AI活用のためのデジタル基盤の整備・構築
また、上記の推進役を担うデジタル人材育成について、「中期経営計画2026」の3ヶ年で応用レベルは総合職の50%(約1,000人)、うちエキスパートは10%(約200人)の育成を目指しています。初年度を終えた2025年3月末時点では、いずれも進捗率は約50%弱と順調に進んでいます。なお、これまでは、主に双日本社にてデジタル人材育成を進めてまいりましたが、応用基礎コースのグループ会社への展開も開始しており、グループ全体でのデジタルリテラシーの底上げとDXを牽引する人材の育成を進めています。
2) 双日らしい成長ストーリー実現のために取り組んでいるDX事例
(a) 成長市場への面展開
当社に知見があり、成長が期待できる市場にて、関連性のある事業・領域に集中的に事業創出を行うことで、点から線に、線から面に展開し、市場ニーズ・成長を取り込みます。例えばベトナムにおいては、小売店の受発注管理やキャッシュレス決済サービスなどを手掛けるSaaS企業へ出資し、ベトナム小売事業者向けにデジタル取引アプリケーション(ECO)を提供します。これにより、販売/流通在庫データをシームレスに連携し、営業/物流業務の効率性とコストを改善すると同時に、多様なトランザクションデータを活用し、マーケティング支援などの新たな価値提供を推進しています。タイの化成肥料製造会社であるThai Central Chemical Co. Ltdを肥料事業からアグリプラットフォーム事業への拡大を目指すアグリビジネス事業では、農業シミュレーションモデルを活用し、天候・苗・土壌データから単収を最大化するための施肥設計を行うプログラムを大学の研究機関とともに開発しました。同プログラムに当社が有する農家データを蓄積・活用することで双日独自のメソッドを構築しています。また、土壌の衛星画像をAI解析することによって、土壌成分や病害非感染農地を把握するシステムについて研究中で、これらを組み合わせることで農家の営農を支援するための総合的なサービス提供を実現し、さらにオフテイクまで繋げたプラットフォームを目指しています。
(b) ビジネスモデルの変革・深化
マーケットインの徹底により、社会ニーズに合わせた様々なビジネス変革に取り組んでいます。例えば、化学事業では化学物質データ、取引実績、業界ニュースなどの膨大な外部情報を蓄積し、情報同士の関係性をグラフ構造で表現する技術(Graph-RAG)を用いることで、生成AIがより文脈に即した高精度な出力を実現する取組を行っています。これにより、パラダイムシフトが化学製造フローの複雑な構造に与える連鎖的な影響を予見し、新たなビジネスチャンスへと繋げていきます。
(c) バリューチェーンの事業領域拡大
幅広い業界での知見・接点を活かし、付加価値の高い領域に積極展開することで、自らの事業ポートフォリオを変革し、事業価値の最大化を図っています。例えば、本マグロの養殖事業において、デジタルツインやAI画像解析、IoT技術を活用し、本マグロの遊泳シミュレーションによる尾数カウントや満腹状態を判断するシステムを開発中です。また、赤潮を予測するアプリを開発し、環境変動に迅速に対応できる体制を整えています。これらの取組により、迅速な経営判断やコスト削減、生産性向上など、養殖事業における経営管理高度化を推進しています。また、自動車販売事業では中古車スキャナーの開発を進めており、デジタルスキャン技術によって中古車を画像データ化しAI解析することにより、中古車の傷の状態などを正確に把握することが可能となります。この車体情報を価格予測モデルで分析することで、より透明性の高い車両査定の自動化・均一化を行い、これを基軸とした中古車の流通プラットフォームを構築していきます。
これらの取組が評価され、当社はDX銘柄2023、DX注目企業2024に引き続き、DX銘柄2025に選定されました。今後も"Digital-in-All"による価値創造の取り組みを推進します。
⑤ GX
GXに関しては、2050年に向けた長期ビジョン「サステナビリティ チャレンジ」での脱炭素目標に向けた取り組みを加速させています。この目標は、単に既存事業の温室効果ガス排出量を減らしていくだけではなく、時代の変化に合わせたソリューションを創造し、脱炭素社会の実現と当社の収益拡大を目指すものです。その実現に向けて、新エネルギー・脱炭素の領域における技術革新や社会への普及速度を注視し、当社としてどのような機能・知見を発揮できるかを見極め、そのステージに合ったソリューションを創造・提供していきます。
2024年度においては、ターコイズ水素に関する製造技術を開発する企業との協業を一層強化し、同社の技術を活用した国内外でのプロジェクトの組成を加速させるべく、追加投資を実行しています。そのほか、バイオ燃料事業や森林カーボンクレジットを活用したオフセットソリューションの取り組みを推進しています。今後も引き続きGXに資する事業に積極的に資源配分することで、脱炭素社会の実現と当社の企業価値向上の両立を目指します。
(詳細は「第2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ② 気候変動対応」を参照)
⑥ 人的資本の強化
「中期経営計画2026」では、当社グループの人材戦略基本方針として、双日らしい成長ストーリーの実現に向けた「事業創出力」と「事業経営力」の強化に取り組んでおります。多様な人材の強化とミドルマネジメントの強化を進め、機動的な人材配置により持続的に事業創出と経営ができる人材を育成します。
人的資本の強化を支える土台として、「双日らしいカルチャー」、「Digital-in-All」、「データを活用した対話」により、挑戦や思考の柔軟さといった双日らしい独自の風土・文化を深化させ、事業創出力、事業経営力の最大化を図っていきます。
(詳細は「第2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)人材戦略に関する基本方針」を参照)
(3) キャッシュフロー・マネジメント
基礎的営業キャッシュ・フローと資産入替を原資に、さらなる成長に向けた成長・ヒト投資と株主還元を実行します。基礎的営業キャッシュ・フローの7割程度を成長・ヒト投資に、3割程度を株主還元に充当します。
これを踏まえ、2024年度の実績は以下のとおりとなりました。

(4) 剰余金の配当等の決定に関する方針
「中期経営計画2026」期間累計の基礎的営業キャッシュ・フローの3割程度を株主還元する方針です。
① 配当
・安定的かつ継続的な配当を行うため株主資本DOE4.5%を配当方針とし、業績変動や株価・為替による影響を最小限に抑える
・当期純利益による株主資本の積み上げが、株主還元による株主資本の減少幅を上回る限りにおいて、累進的に増配となる配当方針
② 自己株式取得
・キャッシュフロー・マネジメント方針に基づき、「中期経営計画2026」期間を通じて機動的に自己株式取得を実施
この方針に基づき、当期の期末配当金につきましては、1株当たり75円とします。1株当たり75円の中間配当を実施していますので、当期の年間配当金は1株当たり150円となります。
また、当期においては、2024年4月1日~2024年4月5日の期間中に自己株式773,200株を3,041,588,400円にて、2024年10月1日~2025年3月24日の期間中に自己株式6,500,000株を20,927,075,900円にて、それぞれ取得しました。加えて、2025年5月1日に公表の通り、2025年5月2日~2025年7月31日に100億円または2,800,000株を上限とする自己株式取得を決定しました。
なお、当社は2024年6月18日開催の第21回定時株主総会において、会社法第459条第1項の規定に基づき、剰余金の配当を取締役会決議により行うことを可能とするよう定款変更しています。

(1) サステナビリティに関する基本方針
① サステナビリティに関する考え方
双日グループにとってのサステナビリティとは、「双日グループ企業理念」に基づき、ステークホルダーと共に事業を通じた「2つの価値(双日が得る価値と社会が得る価値)」の最大化を図り、当社グループと社会の持続的な成長を目指すことです。
この「2つの価値」の最大化に向けて、当社は中長期的に取り組むべき「マテリアリティ(サステナビリティ重要課題)」を定めました。このマテリアリティの策定にあたってはパリ協定や持続可能な開発目標(SDGs)などを参照し、当社グループと社会の持続的な成長のために対処すべき普遍的な課題として「人権」「環境」「資源」「地域社会」「人材」「ガバナンス」を抽出、設定しました。
このマテリアリティの中から、優先的に取り組むテーマを特定し2050年に向けた長期ビジョンとして「脱炭素社会実現への挑戦」と「サプライチェーンを含む人権尊重」の2本柱からなる「サステナビリティ チャレンジ」を策定しました。この長期ビジョンは中期経営計画をはじめとする成長戦略を策定する上での基盤にもなっています。
当社は、ステークホルダーとの対話などを通じ、当社グループにとってのリスクと機会の把握に努め、脱炭素社会実現に向けた対策や人権関連方針などの各種個別方針を策定しています。また、それらを「中期経営計画2026」にも反映し、具体的なアクションにつなげています。当社グループは2018年8月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の最終提言に賛同し、そのフレームワークを活用して積極的な情報開示と透明性向上に努めています。


当社は、取締役会、経営会議、サステナビリティ委員会といった会議体から構成するガバナンス体制を敷いています。サステナビリティ委員会は社長CEOが委員長を務め、年に4回以上開催されています。
サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する方針や考え方の整理、サステナビリティ推進体制の構築、リスクと機会の特定・評価、指標や目標の策定、機会を始めとする各取り組み状況のモニタリングなどを行っています。また、執行役員の中から、サステナビリティ全般を管掌する担当役員が任命されており、IR・サステナビリティ推進部が事務局としてサステナビリティ委員会の執行の実務を担っています。
サステナビリティ委員会の活動については、取締役会による監督が適切に図られる体制となっており、サステナビリティ委員会における活動や検討・協議された方針、課題などは、定期的に経営会議及び取締役会に付議・報告されます。
経営会議は社長CEOが議長を務め、原則毎月2回開催され、サステナビリティに関する全社方針や戦略などの重要事項の審議・決裁を行うほか、サステナビリティ委員会の活動報告を受けて、必要に応じてサステナビリティ委員会に対応の指示を行っています。取締役会はこれらのプロセスを定期的に監督しています。
当社は、サステナビリティ委員会を軸として、企業の社会的側面における姿勢や活動に対する社会からの期待や要請に応えるべく、横断的に連携して、サステナビリティ関連活動を推進しています。
<サステナビリティ推進・実行体制図>

<2024年度サステナビリティ関連の会議体における主な承認・報告事項>
<ステークホルダーダイアログの開催>
当社は、サステナビリティ経営を推進するにあたり、さまざまなステークホルダーとの対話を行い、外部からの意見と視点を尊重した事業活動を実践することが重要と考えています。そのため、サステナビリティ課題について大学教授、投資家、NGO等の社外有識者と、双方向に対話する場として、2018年より毎年ステークホルダーダイアログを開催しています。
当社は、「中期経営計画2026」における成長戦略にて、GX(グリーン・トランスフォーメーション)を掲げており、ネットゼロ社会の実現に向けた「機会」を捉え、サステナビリティ経営と成長戦略の両面から企業価値向上を図るべく、主に、以下観点から有識者のみなさまと議論いたしました。
● 企業の成長フェーズを踏まえたサステナビリティ(気候変動)への向き合い
● 投資家の視点や、当社における脱炭素事業やサステナビリティ全般への取り組みに対する評価
<参考>
過去に開催したステークホルダーダイアログのテーマ
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/policy/stkholder/
IR・サステナビリティ推進部は、社内外の動向の把握、ステークホルダーとのコミュニケーション、外部専門家(弁護士や投資家等)や有識者からの助言・指摘等を通じて、当社グループにおけるサステナビリティに関するリスクの識別・特定・評価に関する情報を収集し、サステナビリティ委員会に報告しています。サステナビリティ委員会は、それらの報告を受けて、当社グループにおけるサステナビリティに関するリスクを特定・評価し、対応方針を検討・議論しています。
また、サステナビリティに関するリスクについては、「環境・気候変動リスク」、「人権リスク」を当社グループが認識するリスクとして特定しており、必要なリスク対応については、内部統制委員会が全社的リスク管理の枠組みの中で、その他のリスクと併せて対応状況のモニタリング、改善施策の協議、各担当部署への指示を行い、その結果については、定期的に経営会議、取締役会、監査等委員会に報告しています。加えて、当社グループの個別の投融資案件を審議する投融資審議会での審議過程において、サステナビリティに関するリスクの特定と評価を行っています。環境・社会に関するリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (2)」個別のリスクについて ⑧環境・気候変動リスク(53ページ) ⑨人権リスク(54ページ)を併せてご参照ください。
② 気候変動対応
脱炭素社会実現への挑戦
当社は、再生可能エネルギー事業やトランジション期間を支える事業である「エッセンシャルインフラ」及び「エネルギー・素材ソリューション」を注力分野として掲げています。その戦略の基盤となるのが、脱炭素ロードマップです。このロードマップでは、「技術・社会動向の見立て」を年代ごとに想定し、それに対応した当社の新エネルギー・脱炭素プロジェクトや事業を具体的に記載しています。技術動向は常に変化しているため、リスクと機会を定期的に見直し、対応方針を更新しながら、自社の持続可能な成長と脱炭素社会の実現に貢献していきます。
脱炭素ロードマップにおける当社の考え方は以下のとおりです。
■ 脱炭素社会に向けた年代ごとの技術や社会動向を「機会」と捉えています。
■ 再生可能エネルギーの利用は今後も拡大し、将来的には余剰再エネ電力を活用したグリーン水素の利用が見込まれますが、脱炭素社会への移行には、再生可能エネルギーの普及に伴う不安定さを補完し、需給を下支えするトランジション期間が必要です。当社は、高効率のガス火力発電や省エネルギーサービス事業を推進することで、トランジション事業を通じて脱炭素社会への移行を事業機会につなげていきます。
■ 一方で、バイオ燃料・合成燃料、クリーン水素やアンモニア等の新エネルギーは、脱炭素社会に向けた中長期的な技術革新及び燃料転換の中心的な役割を担うものとして位置づけていますが、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、技術開発・社会実装を進めていくことが不可欠です。
■ また、新エネルギー・脱炭素領域では、技術成熟度の違いや、収益化の時期も異なるため、それらの実情を踏まえながら、当社の強みを活かしたバリューチェーン構築やソリューション提供を目指すべく、最適な資源配分のポートフォリオを見極めながら推進していきます。
<脱炭素ロードマップ>

1) シナリオ分析
● 移行リスク
外部調査、内部分析も踏まえ、「リスク」と「機会」が、当社グループの経営戦略、事業活動、財務計画に対する影響がより大きいと考えられる事業分野について随時シナリオ分析を行い、財務への影響を分析しています。具体的には、GHG排出量の多いリスクのある箇所(サプライチェーン上のGHG排出量分析図(26ページ))の中で、特に影響が大きいと考えられる石炭権益事業と発電事業における移行リスクについてシナリオ分析を行いました。
<シナリオ分析>
● 物理的リスク
気候変動が抑制できず温暖化が進行した場合の物理的リスクについては、特に海岸洪水や河岸洪水などの水リスク(急性リスク)に注目して分析を行っています。具体的には、世界資源研究所(World Resources Institute)が提供する水リスク分析ツール「Aqueduct」の評価において、「Extremely High」及び「High」とされた地点に所在する事業・資産(製造・加工工場などの非オフィス)が水リスクにさらされていると考え、その2025年3月末現在の有形固定資産額(リース資産は除く)を財務影響額として分析しました。その結果、東南アジア地域を中心に、一部の事業拠点における海岸洪水・河岸洪水の水リスクが高いことを確認し、財務影響のある資産(有形固定資産)の額は約290億円になると算定しました。
2) Scope1、Scope2の削減
当社は、GHG排出の削減は脱炭素社会実現に向けた当社グループの責務であると考えています。そのため、当社グループはGHG排出(Scope1とScope2)の削減を加速し、脱炭素社会への耐性を高めると共に、この社会移行を新たな機会と捉え、幅広い分野におけるビジネスを進めていきます。2021年3月には、「サステナビリティ チャレンジ」を実践すべく脱炭素対応方針を策定し、Scope1とScope2の削減目標(後述)を設定しました。
中計2026では、Scope1とScope2の削減目標の達成に向けて、当社グループにおける脱炭素推進施策の実行と、それを後押しする仕組みを作りました。今後も脱炭素社会の実現に向けた取り組みの拡大を推進していきます。
3) Scope3、Scope4(削減貢献量)の計測と把握
脱炭素社会の実現には、当社グループのGHG排出(Scope1とScope2)削減に加えて、サプライチェーン全体のGHG排出(Scope3)削減が必要であると考えています。また、Scope3の多い産業とそのサプライチェーン上の工程においては現在または将来的に排出削減のストレスがかかる可能性が高いと考えています。一方で、当社は、国内外のネットワークを活用し、多岐にわたる分野で事業を展開していることから、Scope3の計測と把握は非常に複雑で困難です。その中で、外部専門家を起用して、当社のサプライチェーンにおいてScope3の多い箇所を、まずは特定しました。その結果、2021年3月期より当社グループへの影響が特に大きいと考えられた発電、製鉄分野から計測、その後順次計測セクターを拡大し、2024年3月期において全セクターの把握を実施完了しました。
その結果を示したものが26ページの<サプライチェーン上のGHG排出量分析図(Scope3、Scope4(削減貢献量))2025年3月期速報値ベース)>です。一方で、Scope3が多い所はGHG削減貢献を行う新たな事業創出の機会のある箇所でもあると捉え、削減貢献事業を推進し、その削減貢献量をScope4として定義し、計測と把握を行っています。
<参考>
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/sojitz_esg/e/data/
2025年3月期の実績値は、追って当社ウェブサイト及び統合報告書にて開示予定です。
<サプライチェーン上のGHG排出量分析図(Scope3、Scope4(削減貢献量)) 2025年3月期(速報値ベース)>
横軸に当社グループが関わる「GHG排出が多い産業」を、縦軸に「サプライチェーンの各工程」を配置し、当社にとってのリスクと機会を定性・定量的に分析・特定しています。
(下図の発電・製鉄セクターのScope3、Scope4(削減貢献量)は、有価証券報告書提出日現在の速報値)
リスク(Scope3):GHG排出が多い箇所ほど、濃いオレンジ色で示しています。一般的に「GHG排出削減の圧力」
や「代替される脅威」にさらされやすくなります。
機会(Scope4(削減貢献量)):最下段は代替となる新規事業の機会であり、当社は削減貢献量として積み上げていきます。
なお、WBCSDのガイダンス(注)に基づき、削減貢献量は、当社の脱炭素目標及びその進捗の排出量と相殺しておりません。
(注) World Business Council for Sustainable Development(持続可能な発展のための世界経済人会議)で公表された削減貢献量ガイダンスを指す。

(注) 1 2025年3月期データ(速報値ベース)。GHGプロトコルが定める、Scope3の15カテゴリーを簡略化して作成しています。
<詳細>
カテゴリー別
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/sojitz_esg/e/data/
2 Scope4(削減貢献量)の計算方法:(IEAが公表する2023年の世界火力発電原単位(843g/kWh)-当社発電原単位)×発電量
当社は、前項で説明した当社グループの気候変動における移行リスクとその機会を評価及び管理するための指標と目標を脱炭素対応方針として設定しています。2025年3月期における進捗は、Scope1とScope2で4割程度削減、一般炭権益はすでに9割程度削減を達成しています。Scope1とScope2の削減目標の達成に向けて、当社グループは脱炭素推進施策を策定し、事業会社での脱炭素に向けた取り組み(再エネ・省エネなど)を促進する仕組みを整備しました。
また、サプライチェーン上のGHG排出量(Scope3)については全セクターの計測を完了しました。Scope3は当社にとって「リスク」であると同時に、サプライチェーン全体での削減貢献による新たな事業創出の「機会」であると捉え、自社の成長と紐づけた取り組みを推進すると共に、これらの取り組みを通じて削減貢献したGHG排出量(Scope4)を積み上げることで、事業を通じた社会課題の解決を自社の強みと収益機会につなげていきます。今後も、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進していきます。
<脱炭素方針と進捗状況>

<Scope1、Scope2排出量の推移(2020年度以降の新規事業を含む総量)>
(注) 集計対象範囲の見直しの結果、過年度数値をリステートしています。
エネルギー起源CO2とは、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を燃焼する際に排出される二酸化炭素を指します。
現在当社の脱炭素方針における削減目標はCO2を対象としています。
なお、上記の目標は、現時点の将来見通しに基づいたものであり、社会動向や技術革新の状況の変化に応じて柔軟に見直しを行います。また、2024年度のScope1、Scope2排出量は現時点の集計値(速報)であり、第三者保証を取得した数値については当社ウェブサイト及び統合報告書にて開示いたします。
③ サプライチェーンを含む人権尊重
当社グループはグローバルに様々な事業を展開していますが、その事業に関わるサプライチェーン上のどの国・地域においても人権尊重に努めるべく、人権リスクの把握及び低減を図っています。「国際人権章典」及び国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」を支持し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則って人権尊重の対応を行っています。
対応にあたっては、ステークホルダーとの対話を行いながら「方針の策定・共有」「リスク評価」「改善・救済」「実績開示」というプロセスを踏んでいます。各プロセスの取り組み内容は、外部動向及び内部環境などを踏まえ、定期的に見直し、改善を図っています。また、リスク評価やグリーバンスメカニズムを中心として、一連のプロセスで改善すべき点が判明した場合は、速やかに是正を行っています。

当社グループは、「国連グローバル・コンパクト」の10の原則などを踏まえて、「双日グループ人権方針」や「双日グループ サプライチェーンCSR行動指針」などの方針を策定するとともに、定期的に見直し、必要に応じて改定を行っています。
また、サプライチェーン上の人権尊重においては、事業現場における認識と理解が重要であると考えています。そこで、グループ内でセミナーやeラーニングを実施するとともに、グループ各社の経営陣とIR・サステナビリティ推進部(サステナビリティ委員会事務局)間の対話を通じ、方針や取り組みの周知及び現場の対応状況の確認を行い、人権尊重意識の徹底と理解の浸透を図っています。また、取引先に対しても当社の方針を周知し、理解と実践を求めています。
<人権リスクセミナー>
2025年2月に、弁護士の大村恵実氏を招聘し、『「ビジネスと人権」の経営課題と対応』と題し、本部長向け勉強会を開催しました。営業本部及び職能組織の担当本部長15名が参加し、高リスク事業分野の留意点や日本企業が直面する取引先の人権課題などにつき受講しました。なお、同勉強会は、役職員約2,000名も動画で受講しています。
1) 新規事業投融資におけるリスク管理
新規投融資を行う際は、各事業分野における人権リスクの課題や対応のポイントに基づき、申請部署において強制労働、児童労働、先住民族への影響など想定されるリスクを洗い出し、対応策を策定しています。必要な場合はデュー・ディリジェンスを行い、人権リスクの洗い出しと対応策に漏れが無いように確認しています。
2) 既存事業及びサプライチェーンにおけるリスク管理
● 高リスク事業分野の特定
サプライチェーンを含む人権課題は様々であるため、特に人権対応が強く求められる事業分野を分析した上で、優先順位を付けて取り組むことが重要であると考えています。そのリスクベースアプローチの観点から、英国NGO「ビジネスと人権リソースセンター」が有する人権リスクの発生事例データベースをもとに、当社グループの事業の中でも特にリスクが高い高リスク事業分野を特定すると共に、サプライチェーン全体において一般的にどの工程で人権リスクが発生しやすいか、分析・確認をしています。高リスク事業分野は、最新の発生事例データベース、当社グループにおける事業環境・状況、外部専門家の意見などを踏まえ、定期的に見直しを行っています。

● リスク評価
リスク評価を効果的に行うため、高リスク事業分野における課題や対応のポイントを整理し、グループ内に周知しています。高リスク事業分野の事業を行う組織は、取引先に対してアンケート、ヒアリング、現地訪問などを行いながら対応状況を調査します。調査結果は、IR・サステナビリティ推進部と各組織の年次での対話にて共有し、重大な課題が発見された場合に備えて、現地訪問などによる調査体制を整備しています。対話やヒアリングで得られた気づきや、外部専門家の意見も取り入れ、課題や対応のポイントを随時更新しています。
● 現地訪問による調査
当社グループは、人権リスクを調査・確認するために、必要に応じて個々の取引や事業において取引や事業が行われている現場に赴き、調査を行っています。
例えば、木材の調達(輸入)について、合法性の確認、環境への配慮、社会への配慮の3本柱からなる木材調達方針を定めており、年次調査にてトレーサビリティ及び環境・社会配慮等について確認しています。年次調査では、必要に応じて、現地訪問による調査や、懸念サプライヤーに対して外部専門家の関与する詳細デュー・ディリジェンスも実施しています。2024年度は現地訪問による調査をインドネシアで4件、中国で4件、マレーシアで3件、タイで1件、ベトナムで9件行いました。
また、2024年12月には水産品の調達方針を策定しましたが、これに基づき2025年度からリスク評価を開始し、2026年度以降、現地デュー・ディリジェンスを行う予定です。
● 外国人技能実習生に対する人権尊重
当社では一部のグループ会社において外国人技能実習生を受け入れていますが、当該グループ会社に対しては、2022年度より毎年アンケート調査を実施して関連法令の遵守の確認に加え、受入現場を訪問して労働現場を確認し、経営層、及び技能実習生と対話を実施することで、技能実習生の労働・生活環境を把握し、問題がないことの確認と同時にリスクの低減に努めています。
技能実習生を受け入れている当社グループ会社は、人権尊重に配慮するとともに、日本語学習の機会の提供、旅行やレクリエーションを開催するなど、技能実習生との円滑なコミュニケーションを意識した取組を行っています。
また、グループ会社間での情報交換会や、外部専門家による講演の開催、受入れに当たっての課題などに関する意見交換を行うなど、グループ内での意識向上を図っています。
● 改善・救済
リスク評価において問題が発見された場合、事実を確認の上、取引先などの関連するステークホルダーに問題の改善対応を求めます。
2024年度の高リスク事業分野に対するリスク評価においては、重大な問題がないことを確認しました。
一連のリスク管理体制は毎年見直しを行っており、リスク評価の過程で見つかった課題や外部専門家の意見を、社内制度へ反映するなど改善を重ねています。
<グリーバンスメカニズム>
サプライチェーン上の負の影響を早期に発見し、是正・救済を行うため、当社サプライチェーン上を含む全てのステークホルダーの方から人権に関する苦情やお問い合わせを受け付ける体制を整備しています。
1) 木材調達
当社グループの人権に関するリスク評価において、高リスク事業分野の一つである木材分野においては木材調達方針を策定しています。2024年3月には改定を行い、森林破壊のない(注1)サプライチェーンの構築を目指すことを掲げました。その方針に基づき、海外から調達(輸入)する木材については、原産地までのトレーサビリティと、環境・社会(人権)へ配慮した森林管理の適切性に応じて以下の4つのレベルに分けて評価し、調達比率を指標とした目標を定めています。
レベルA:認証材(注2)
レベルB:トレーサビリティに加え、認証以外で環境・社会(人権)に配慮した森林管理の適切性を検証済みの木材
レベルC:トレーサビリティが確保されている木材
レベルD:トレーサビリティの確保が不十分な木材
(注) 1 自然林転換及び保護価値の高い森林の毀損がないことを指します。
自然林転換とは、2020年12月31日より後に、自然林が人工林や森林以外の土地利用に転換されることを指します。
2 FSC(R)、PEFCなどによる認証木材
<各レベルでの調達比率推移>

(注) 1 2020年度以降はレベルAを認証材のみとしております(2024年度のレベルA比率は18%)。
2 上表における調達比率は、WWFジャパンの「林産物調達チェックリスト」を用いて当社が実施した評価に
基づいて決定した[レベルごとの木材(輸入材)の調達金額]÷[調査対象とした木材(輸入材)総調達金額]で算定しています。また2024年度調査対象結果は、前年度の2023年度における木材調達金額を基に算出しています。なお、2020年度より第三者保証を取得しています。
上表のとおり、2024年度には2025年度目標(レベルA+B材 100%)を前倒しで達成しました。今後もこれを維持するために、取引開始前の調査、年次調査、現地詳細デュー・ディリジェンス、認証材の取扱量拡大、サプライヤーへの認証取得の奨励、需要家を巻き込んだ環境配慮材の取扱推進などに取り組んでいきます。
<詳細>
https://www.sojitz.com/jp/csr/supply/lumber/
2)水産品調達
当社グループは、水産品の生産・調達・加工・販売を、日本のみならずアジア、米国などにおいてグローバルに展開しています。近年では、米国にて寿司テイクアウトチェーンや寿司レストラン運営会社を設立するなど、より消費者に近いリテール領域に注力し、サプライチェーンを拡大しています。その過程で、持続可能で責任ある水産品の調達を実現するため、当社及び当社グループの水産事業会社を対象とした、水産品調達方針を2024年12月に定めました。
本方針では、サプライチェーンにおけるIUU(違法、無報告、無規制)漁業の排除に努めることや、トレーサビリティ確保に努めること等を掲げています。
特にマグロ類について、調達・養殖・加工・販売活動をグローバルに行っており、持続可能なサプライチェーンの実現に対して一定の影響力を有し、重要な役割を担っていることを踏まえ、以下の目標を掲げています。
<詳細>
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/policy/marine/
④ 自然資本・生物多様性への対応
● 生物多様性の基本的な考え方
当社グループは、事業活動において食料資源、水産資源、林産資源の取り扱いや資源開発、工場建設などを行っておりますが、これらの活動は森林、海洋、河川といった生態系に影響を与える可能性があります。また、事業活動・社会活動は自然資本に依存していることから、自然資本を棄損するとその恩恵を受けられなくなり、持続的な活動ができなくなる可能性があります。当社グループは、総合商社として広い地域で多岐にわたる事業を行っており、一部の事業においては直接的に自然資本を活用しているため、自然資本を尊重し、その恩恵を受け続ける必要があります。また、昨今の国際的な関心の高まりとともに、当社に対するステークホルダーの皆様の期待も高まっていることもあり、当社グループの持続的な事業活動及び企業価値向上には、生物多様性への配慮が欠かせません。双日グループはマテリアリティ(サステナビリティ重要課題)として「環境」と「資源」を定め、事業を通じた地球環境への貢献により、「社会課題の解決」を「自社の強み」に変え、事業基盤の拡充及び成長につなげていくことを目指しています。さらに、環境方針において、生物多様性への対応や事業に関わる環境負荷の最小化を掲げています。特に木材や水産品については、分野別のガイドラインを参照しながら考え方を整理し、個別の調達方針を策定しており、これらの方針に基づき、自然資本に配慮し、生物多様性の維持・保全を進めていきます。
当社グループは木材製品を取り扱う企業として、木材及び木材製品の合法性と環境及び社会への配慮を確保し、持続可能な社会の実現に貢献することが求められています。当社ではその重要性を強く認識し、合法性や環境・社会配慮を柱とする木材調達方針を制定しています。当社グループには約1,500社の木材関連の仕入先がありますが、その中でも特に原産地のカントリーリスクが高い国や、仕入金額が大きい仕入先の木材を特定しています。特定した木材に対して、原産地までのトレーサビリティと環境・社会への配慮を確認するために、WWFジャパンの『林産物調達チェックリスト』を採用しています。このチェックリストをカスタマイズして活用し、環境及び社会に配慮した適切な森林管理を確認しています。
上記取り組みに加えて、2024年度は、TNFD(注)ガイダンスを参照し、下図の手順に従って当社事業における自然への依存と影響を確認しました。
(注) Taskforce on Nature-related Financial Disclosuresの略。国連開発計画(UNDP)などによって設立された「自然関連財務情報開示タスクフォース」の略称であり、企業が投資家や市場に対して自然に関連するリスクや機会等を開示するためのフレームワークを策定しています。

● 自然への依存と影響の重要度が高い事業・分析対象を特定
TNFDのガイダンスを参照し、分析ツールのひとつであるENCORE(注)を活用し、まずは世の中一般の事業が自然資本にどのように依存し、また、どのような影響を及ぼす可能性があるかを確認しました。その結果、ENCOREで依存・影響の重要度が高いと評価されている25事業を特定し、さらに「依存」「影響」ともに水に関する項目のスコアが一般的に高い傾向を確認しました。特定した事業のうち、当社が注力領域として掲げている水産バリューチェーン(マグロの養殖を行う双日ツナファーム鷹島、水産品加工を行うマリンフーズとトライ産業など)をTNFDのLEAP(Locate、Evaluate、Assess、Prepare)アプローチによる分析の対象としました。
(注) 民間企業による自然関連の依存や影響の大きさを把握することを目的に、国連環境計画・自然資本金融同盟(UNEP-NCFA)などが共同開発した分析ツール
<詳細>
ENCOREを用いた当社ポートフォリオにおける概観分析図及びその抜粋(依存・影響ヒートマップ)
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/sojitz_esg/e/biodiversity/
● 水産バリューチェーンのLEAP分析を実施
Locate 自然との接点の発見
双日ツナファーム鷹島の自社養殖、上流の飼料・種苗調達、及び下流のトライ産業やマリンフーズといった国内加工工程を対象とし、生物多様性や生態系サービスの質の低下につながるリスクが大きい箇所を優先地域として特定し、各地域の特徴を整理しています。

Evaluate (自然との依存・影響の診断)
Locateで特定した優先地域について、リスク要素や分析ポイントを洗い出しました。さらにそれらポイントについて、まずは自社養殖である双日ツナファーム鷹島における自然の状態の確認や規制の調査、及び事業会社へのヒアリングによる実態把握を実施しました。
Assess (重要なリスク・機会の評価)
以上を踏まえ、TNFDのセクター別ガイダンスに沿ったリスク・機会の洗い出しを実施した結果、重要性が高いと評価されたリスク・機会と当社グループの取り組みは次のとおりです。
(注) Integrated Biodiversity Assessment Tool(IBAT): IUCNレッドリスト、保護地域、生物多様性上重要地域(KBA)などのデータベースへのアクセスが可能な地理空間データを提供するツール。
Prepare (対応と報告の準備)
双日ツナファーム鷹島では、飼育にICTを積極的に導入し、「国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)」との産学連携によるスマート養殖システムの構築を進めています。また、国立大学法人九州大学と赤潮の発生予測アプリの開発及び実証を開始しました。これらの技術を双日ツナファーム鷹島に限らず、他の養殖場が抱える課題の解決にも活用し、サステナブルな海洋資源の保全に取り組んでいます。
今後は、LEAPアプローチによる分析を通じて得た知見を個別事業の運営に活用していくとともに、分析対象を上流の飼料・種苗調達、及び下流のトライ産業やマリンフーズといった加工工程に拡大します。また引き続き、自然資本(生物多様性・水リスク)を注視し、事業ポートフォリオに対する依存・影響を見極めていきます。
● その他取り組み
当社グループは鉱山などの上流資源の開発や採掘に当たって、自然資本の毀損や生態系への影響を想定した適切な環境・社会影響評価、管理やモニタリング計画に加え、閉山計画も含めた事業計画を策定し、国や地方自治体の定める法令の順守や必要な許認可取得を通じ、環境保全に配慮した活動を行っています。
開発段階では対象地域の生物多様性への影響を最小限に抑えるように環境負荷の低減に努めながら進め、操業段階への移行後では採掘域内に流れる小川の水流を維持すべく移転工事を実施するなど、定期的な環境影響のモニタリングと共に万が一に備えた防止策なども十分に講じた上で活動しています。終掘後のリハビリテーションにおいては、閉山を待たず採掘活動と並行しながら植林や緑化活動をすべての鉱山において徹底することで、自然資本の毀損リスクの顕在化や拡大の未然防止を図り、環境負荷の低減と環境保全を進めています。
具体的には、豪州に保有するグレゴリー炭鉱や、ミティオ・ダウンズ・サウス炭鉱の露天掘操業では、採掘の為に剥がした表土を別の場所で一時保存し、採掘終了に併せて再度その表土で覆い被せながら再緑化を行うことで、採掘前の状態に回復させる取り組みを行っております。さらに、両炭鉱の敷地内や周辺地域において、開発・操業活動で影響を受けかねないライチョウバトやキンググラスなどの希少動植物の生息区域を関連法令に則って確保し、かつ承認された計画通りの保全活動を行っています。
2004年に制定した双日グループ環境方針において、気候変動防止に向けたCO2をはじめとする温室効果ガスの削減、生物多様性への対応など、事業にかかわる環境負荷の最小化に取り組むことを掲げています。以下については、個別の指標と目標を定めています。
・木材調達
③サプライチェーンを含む人権尊重の指標と目標をご参照ください。
・水産事業
上述の評価結果を踏まえて、必要に応じて、追加の分析や指標と目標を検討していきます。
<参考>
生物多様性
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/sojitz_esg/e/biodiversity/
(ご参考) 外部評価の推移
当社グループの事業を通じた当社のサステナビリティ課題解決の取り組みは、外部評価機関にも継続的に高く評価されています。2024年度は前年度に引き続いて、S&P Global Sustainability Award(サステナビリティ格付)において、Trading Companies & Distributorsセクターにおいて「Top 1%」に選定されました。
(注) CDPでは、企業からの申請に基づきスコアアピールの制度が設けられており、当社は2024年度気候変動スコア
「B」に対して現在アピールを行っています。本スコアは見直しの結果、変更される可能性があります。
<参考>
Sojitz ESG Book
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/sojitz_esg/
(2) 人材戦略に関する基本方針
全社方針として掲げる2030年の目指す姿「事業や人材を創造し続ける総合商社」の実現に向け、価値創造の源泉である多様性と自律性を備えた個の成長を、組織の成長、会社の成長につなげています。
「中期経営計画2026」を支える人材戦略
「中期経営計画2026」の人材戦略では、当社グループの人材戦略基本方針として、双日らしい成長ストーリーの実現に向けた「事業創出力」と「事業経営力」の強化を目指します。
「中期経営計画2026」基本方針に掲げるNext Stage(当期利益2,000億円、ROE15%超)に向けた基盤の確立には、強みある事業群への進化、高い収益性の確保が不可欠であり、既存事業の拡大と新規事業投資を通じたグループの拡大、ネットワーク活用による共創の促進を中心に「グループ・グローバルへの取り組み」を強化していきます。自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個の強化とそれを組織力向上につなげるミドルマネジメントの強化、環境変化を先読みした機動的な人材配置・抜擢の加速により、「事業創出できる」「事業経営できる」ヒト(組織・人材)を持続的に創出していきます。
持続的な価値創造に向けた「事業基盤」と「人的資本」の強化を支える土台として、「双日らしいカルチャー」の醸成、「Digital-in-All」の実践、「データを活用した対話」の浸透により、新たな事業創出や生産性向上につなげ、当社スローガン"New way, New value"を体現していきます。挑戦や思考の柔軟さといった双日らしい独自の風土・文化を深化させ、社員が徹底的に対話することを通じて、事業創造につなげていきます。
2030年の目指す姿の実現に向け、Next Stageを実現していくために重要なのは人材のギアチェンジです。社員一人ひとりがどこよりも挑戦・成長できる環境を目指して、報酬の引き上げを含む人事制度(役割等級・評価など)の見直しを実施し、新たな人事制度を2024年4月から導入しています。双日らしい成長ストーリーを実現するヒトの魅力(ちから)を強化し、社員一人ひとりの成長が、組織の成長・活性化につながり、会社の成長・企業価値向上を実現させるという当社らしい人的資本経営を加速させていきます。

(注) 1 ミドルマネジメント:対話を通じて個の力を組織力に変える本社課長(及び候補)、海外・グループ会社キーポジション(及び候補)
を対象とするもの
2 人材マネジメント: 人材の計画的な育成を通じて事業創出(Value creation)・事業経営(Value up)につなげる
商社にとって価値創造の中核であり最も重要な資本は「人材」です。自ら変革し新たな価値を創造し続けられる「個」の集団を形成し、価値創造につなげる「人的資本経営」を次の実行体制のもとで推進しています。
人的資本経営の実行体制として、取締役会で経営視点で方針を議論し、重要な人事事項は、社長が議長を務める人事審議会で審議・決裁しています。具体的な取り組みである人材KPIの進捗状況や人事施策の効果・課題などは経営会議と取締役会で定期的に議論・決定しながら進めています。
リスクの早期発見・対処のため、コンプライアンスホットラインや社内目安箱の設置に加え、エンゲージメントサーベイや360度サーベイなどからも現場の意見を吸い上げ、モニタリングする体制を整え、持続的な企業価値向上の推進力を高めていきます。
<人的資本経営 実行体制図>

人的資本価値の毀損「リスク」と、価値向上のための「機会」という「攻めと守り」の両面から各重要課題にアプローチすることによって、企業価値向上につなげています。また、2030年の目指す姿の体現に向け、足元の課題のみならず、将来を見据えて今着手すべき課題に対しても取り組みを開始しています。

1) 人材KPI(動的)
2030年の目指す姿に向けて双日らしい成長ストーリーを実現するためには、「事業創出力」と「事業経営力」を備えるとともに、"Digital-in-All"を実践できるヒト(組織・人材)の育成・強化が必要となることから、人材KPIを設定し、各種施策の効果を測っていきます。
具体的には、「事業創出力」「事業経営力」の向上に向けた「双日らしいカルチャーの醸成(挑戦指数、風通し指数)」、「多様な人材活躍(女性総合職 海外・国内出向経験割合、海外グループ会社CxO(現地人材)比率、デジタル応用人材)」に取り組んでいきます。また、一部KPIでは、定期的に実施しているエンゲージメントサーベイ(注)の回答率を用いることで社員の声を定点観測し施策につなげていきます。

(注) 2025年3月期の数値は現時点の集計値であり、第三者保証を取得した数値については当社ウェブサイト及び統合報告書で開示いたします。
<参考>
エンゲージメントサーベイ
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/sojitz_esg/s/human_resources/
Next Stageに向けた「中期経営計画2026」における当社グループの人材戦略基本方針として、「自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個」「多様な個の力を最大化するミドルマネジメントの強化」「環境変化を先読みした機動的な人材配置・抜擢」の3点を掲げています。
1) 人材戦略基本方針①「自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個」
「多様性を競争力に」をテーマに、人材の多様性を、変化の激しい市場環境に対応し、常にスピード感をもって事業創造できる組織の力へと変えることで、「事業や人材を創造し続ける総合商社」を目指しています。ジェンダー、現地人材、高い専門性を持つキャリア採用者など、多様な人材の獲得と活躍機会の提供を積極的かつ継続的に行いながら、それぞれの特性や能力を最大限に活かせる職場環境整備、マネジメント層の教育など様々な取り組みを実施しています。
● 女性活躍推進
組織の意思決定に関わる女性社員を増やすため、ダイバーシティマネジメントを担う組織を中心に人材パイプライン拡張や、ライフイベントを見越した「キャリアを止めない」環境作りに取り組んでいます。2030年代には男女間の差がなく適所適材が実現している状態を目指します。
多様性をイノベーションの創出といった競争力につなげていくために、女性活躍推進を人材戦略の最重要テーマの1つと位置づけています。「中期経営計画2026」の最終年度には課長に占める女性の比率を20%程度とし、2030年代には、これを50%程度へ引き上げていきます。2016年度以降、女性の採用人数を増やしてきた結果、すでに20代の社員比率は約半数を女性が占めている中、パイプライン形成に向けて、成長機会の提供やキャリア支援に取り組んでいます。
将来、意思決定を担う人材を育成するための施策として、2021年度から「キャリアの早回し」として、ライフイベントと重なりにくいタイミングで若手社員を国内外の事業会社にトレーニーとして派遣し、挑戦の機会を提供しています。さらに、管理職に求められるミッション遂行や意思決定など難易度の高い経験を積むことを目的に、2024年度から「駐在・出向経験割合」を新たなKPIに設定し、国内外の事業会社において役員などを担う女性社員を増やしています。
2024年7月には、人材パイプライン強化のために、会長を含む経営と現場が一体となり施策を議論、提案を行う会議として「女性活躍推進コミッティ」を創設しました。社外有識者を招聘し、「ワークとライフの両立の難しさ」などの女性活躍を巡る課題や施策を多角的に議論しています。また、自らの意思で挑戦・成長する意欲のある社員の活躍を後押しするために、女性執行役員が主催するラウンドテーブルを開催し、社長も参加して、女性社員との直接対話を行いました。また、女性活躍推進を含む人材施策の進捗は取締役会や経営会議に報告しています。

- 女性課長比率は、2026年度20%程度とした目標に対し、2025年3月31日現在で10%
- 女性総合職の新卒採用比率は2018年度以降継続して30%以上を維持 (2025年度入社:40%)
- (ご参考)女性総合職の海外・国内出向経験割合については、人材KPI(40ページ)をご参照ください。
- (ご参考)取締役11名のうち4名が女性取締役(2025年3月31日現在で女性取締役比率:36%)
- (ご参考)女性執行役員は3名、うち1名は取締役 専務執行役員(2025年3月31日現在で女性役員比率:18
%)
これらの女性活躍の取り組みにより、当社は女性活躍推進に優れた上場企業として「なでしこ銘柄2025」に選定されました(2017年3月以降、8度目)。
<参考>
双日、「なでしこ銘柄」に8回目の選定 ~女性活躍をさらなる競争力に
https://www.sojitz.com/jp/news/article/topics-20250324.html
ジェンダーに関わらず仕事と育児を両立することについて、職場全体が理解・応援できる環境を整えることは、女性がライフイベントを経てもキャリアを中断することなく活躍できる企業風土醸成のために重要であり、男性社員を含めた育児休暇取得率100%の維持を目指しています。その中で、業務効率化やチームマネジメント力の強化に向けた取り組み、早期復職支援や両立支援策の推進により、社員のキャリア形成を支援しています。
男性の育児休業取得率については、
● ビジネスへのデジタル実装に向けたデジタル人材育成
当社は社内外のパートナーと共にデジタルを活用することで、ビジネスモデルや業務プロセスの変革を実践できるデジタル人材を育成するため、スキル分野・スキルレベルの設計と研修カリキュラムの独自開発を行いました。既に、入門・基礎による全社員のリテラシーレベルの底上げが完了し、上位の応用人材も「中期経営計画2023」の目標であった300人の育成を24年3月末時点に達成(実績:321人、そのうちエキスパート:60人)しました。これらのデジタル人材(注)を活用することで、鉱物取引における価格最適化、水産事業会社の商品販売戦略などのデータ分析や、本マグロ養殖事業のデジタルツインによる尾数推定方法の特許出願など、ビジネス課題への実践を着実に進めています。また、エキスパートとなった管理職を営業本部・コーポレートの各組織内のデジタル専門部隊のマネジメントに抜擢し、"Digital-in-All"の実現に向けて強固な体制を築いています。
「中期経営計画2026」においては、全社のデジタルリテラシーの更新・底上げを継続しつつ、応用人材の研修カリキュラムの強化と育成人数のさらなる拡大を進めていきます。応用基礎では、データとテクノロジーをビジネスモデルにどのように組み入れるかを構想するためにビジネスアーキテクチャ研修(約20時間程度)を24年8月に新設しました。応用人材は全総合職の50%程度(約1,000名)、そのうち全総合職の10%程度(約200名)はエキスパートとして育成することで、全組織に応用人材が配置され、同人材を基軸とした全社レベルでの"Digital-in-All"の実現を目指します。詳細は17~18ページをご参照ください。
(注) 当社ではデジタル人材の育成において、独自の5段階レベル(入門、基礎、応用基礎、エキスパート、ソートリーダー)と2つのスキル分野(データ分析、ビジネスデザイン)を設定しています。
<参考>
DX戦略
https://www.sojitz.com/jp/corporate/strategy/dx/
● キャリア採用者の活躍
当社では、経営人材、DXなどの専門人材、ジェンダー、現地人材などの多様性強化に向けたキャリア採用に注力しています。2025年3月末現在で、管理職ポストにおけるキャリア採用者の割合は24%、役員ポストにおいては39%を占めています。なお、2024年度の採用に占めるキャリア採用者の比率は26%でした。今後も、年間の新規採用者数の30~40%程度をキャリア採用者としていく予定です。また、2030年代の女性社員・課長職比率目標を50%程度に引き上げたことを踏まえ、新卒・キャリアともに女性の採用目標も50%へ引き上げました。キャリア入社の活躍としては、2025年4月に営業本部で初の部長職に女性キャリア採用者が就任しました。また、社外から迎えた専務執行役員 CDO 兼 CIO 兼 デジタル推進担当本部長は、2024年6月に取締役に就任しており、今後も他社で培った経験を経営や現場との対話に活かし、双日グループの新規事業の創出と事業モデルの変革につながるデジタルの実装を加速していきます。
● 現地人材の活躍
海外事業会社を起点に現地ネットワークに入り込み、事業領域の拡大や新規事業の創出につなげるため、現地人材のCxOポストをさらに拡大し、2022年3月末に40%だった海外事業会社の現地人材CxO比率が、2025年3月末現在で48%となりました(注)。2025年度までに50%と設定していた目標値を、「中期経営計画2026」では60%に引き上げ、さらなる現地化を目指しています。域内での意見交換/情報共有によるマーケットイン・事業機会発掘の強化、共創と共有を推進するための海外地域における取り組みとして、海外事業会社CxOで構成するアドバイザリーボードを米国で開催しており、当時の社長も参加し、米州の事業会社のCxOと今後の成長戦略に関して積極的に議論しました。2024年度は他地域でも同様の会議が拡大しており、このような交流を通じ、当社グループが持つ多種多様な事業と掛け合わさることにより、事業拡大につなげ、グループ力強化を目指しています。
(注) 2024年度の数値は現時点の集計値であり、第三者保証を取得した数値については当社ウェブサイト及び統合報告書にて開示いたします。
● トレーニー制度
当社では、400社を超えるグループ会社を通じて多様なビジネスを展開しており、それぞれの事業会社の経営を担う人材の育成は重要な課題です。将来の経営人材の育成・確保のため、トレーニー制度を設け、若手社員を国内外へ派遣しています。2020年度からは所属部署とは異なる分野の事業会社に社員をトレーニーとして派遣する制度を開始しました。社員が新たな経験を通じて、多角的な視野を身に付け、知識や人脈に加え社員の幅出しのきっかけとなる成長の機会となっています。また、エンゲージメントサーベイの結果から、女性は20代のうちに海外を経験することで、30代以降、海外経験に対する意欲が低下しづらくなることがわかったことから、「キャリアの早回し」を促す派遣も行っています。2024年度は18ヶ国に派遣した海外トレーニーのうち47%が女性社員です。今後も活躍の場を広げる機会を提供し、社員一人ひとりのさらなる成長を後押しします。
<参考>
女性総合職海外・国内経験割合について(人材KPI)統合報告書2024 51ページ
http://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/sojitz-doc/pdf/jp/ir_202405/reports/annual/ar2024j_all.pdf
● 発想×双日プロジェクト(通称:Hassojitzプロジェクト)
当社における「さらなる成長」を考え、未来構想力や戦略的思考を定着させるべく、2019年に新規事業創出プロジェクト「発想×双日プロジェクト」を開始しました。第1回目に社長賞を受賞した「ワイヤレス充電」案件は、2023年3月より公道での実証実験を開始しています。開始から6年目となる2024年度は「先を読み、新たなKATI(カチ)を共に創る」をテーマに、外部の有識者やアルムナイメンバーとのディスカッションを行い、発想を起点とした事業創出力の強化を継続(発想の実現に主眼を置き実施)しています。Hassojitzプロジェクトでは起業家精神の醸成と自律的に事業創出ができる人材の育成を促進しています。
<参考>
ワイヤレス充電事業
https://www.sojitz.com/jp/newway_newvalue/article/nwnv_post_11.html
● 多様な個の力を競争力に変える企業風土・文化醸成
当社グループの価値創造の源泉である人材同士の活発なタテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーションは、多角的な意見・情報共有(風通し)による意思決定の質向上、自由な発想や組み合わせによるイノベーション創出、目標達成に向けた挑戦・貢献意欲・組織エンゲージメント向上など、会社・組織の成長と発展に重要な役割を果たすと考えています。
多様性と自律性を備える「個」それぞれが当社らしさを考え、行動に変えていくことが人的資本経営の先にあるべき姿と考え、2023年4月、全社を巻き込んだ対話型プロジェクト“双日らしさの追求プロジェクト”を立ち上げました。社内外へのヒアリングを通じた現状認識、全組織から選抜されたコアメンバーによるワークショップや経営陣とのラウンドテーブルで意見交換・議論を繰り返し、将来と現在、会社と個人などの観点から、当社らしさやありたい姿を言語化しています。2030年の目指す姿の実現について社員一人ひとりが“自分ごと”として言語化することにより、社員の日々の行動と経営目標の方向性を合致させ、挑戦意欲を高め人材の力が会社の力につながるよう、全社をあげて取り組んでいます。
● 双日アルムナイ
<詳細>
双日アルムナイ活動内容
https://sojitz-alumni.com/page
● 多様なキャリアプラン実現に向けた支援(双日プロフェッショナルシェア株式会社)
<詳細>
双日プロフェッショナルシェア
https://www.sojitz.com/jp/corporate/strategy/jinzai/
2) 人材戦略基本方針②「多様な個の力を最大化するミドルマネジメントの強化」
多様性と自律性を備える「個」の成長(Will/Can)を組織と会社の成長(Shall)、企業価値向上につなげるためには、経営層と現場社員の結節点・橋渡し役として戦略遂行とエンゲージメント向上を担うミドルマネジメント層の強化が不可欠と考えています。
● ミドルマネジメントの強化による組織力向上
当社の価値創造の源泉である人材の力を最大化するため、対話を通じて社員の力を引き出し組織力の向上につなげるマネジメント力の強化が重要であると考えています。エンゲージメントサーベイ結果(2024年度回答率99%)を分析し、部課長の中で最も現場に近い課長職が組織エンゲージメントに大きな影響を与えることがわかりました。組織エンゲージメント向上においては、部長職と比べて課長職の影響力が高いため、課長職を中心としたミドルマネジメント層の強化に取り組んでいます。
また対話力の高い課長職の組織は、「風通し」「挑戦意欲」「成長実感」が高い傾向にあることがデータから明らかになりました。当社におけるミドルマネジメントの強化は「対話力向上が最重要」と位置づけ、研修の実施など強化施策を実行しています。今後、対話の質をより向上させ、組織の統率力向上、「事業創出力・事業経営力」の強化につなげます。
<参考>
統合報告書2024>双日らしい人的資本経営の追求>組織力向上につなげるミドルマネジメントの強化
https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/sojitz-doc/pdf/jp/ir_202405/reports/annual/ar2024j_all.pdf
● 活躍し続けられる人材育成(研修プログラム)
<詳細>
研修プログラム
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/sojitz_esg/s/human_resources/
3) 人材戦略基本方針③「環境変化を先読みした機動的な人材配置・抜擢」
テクノロジーの発展や地政学リスクなどの著しい環境変化や多様な顧客ニーズに対応し続けるため、機動的かつ計画的な人材配置や育成・抜擢を行い、2030年の目指す姿の実現に向け事業創出力と事業経営力を高めていきます。
● 多様な経験機会による人材育成(ジョブローテーション制度、社内公募制度)
<詳細>
ジョブローテーション制度、社内公募制度
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/sojitz_esg/s/human_resources/
● 機動的・計画的な人材配置や育成を支える人材の可視化
「個」と「組織」の強化をさらに進めるべく、人材データを活用(データサイエンス)しています。エンゲージメントサーベイや360度サーベイなど、定期的に実施する全社サーベイや人事データを多角的・多面的に分析しデータドリブンな人材戦略の遂行につなげています。また、全社でタレントマネジメントシステムを活用し、タテ・ヨコ・ナナメの対話促進、適所適材の実現、公正・公平な評価フィードバック、社員の成長を可視化するなど、社員個人と組織をデータでつなぎ、人的資本経営の基盤を充実させていきます。また24年度から管理職向けに実施しているアセスメント結果を用いて、事業本部ごとにキーポジションの人材を見える化し、経営と議論を開始しました。
4) 多様な人材の活躍を支える制度・取り組み
当社グループの成長は社員と共にあると考え、多様な価値観やキャリア志向を持つ全ての社員が、挑戦・成長を積み重ねることで、高いモチベーションを維持しながら自律的に働き続けられる環境を整えていきます。
● グループ全体で企業価値向上を加速させる取り組み(従業員持株会・株式の付与)
当社は、グループ全体で持続的な企業価値向上及び株価上昇に向けた意識醸成を企図し、株主への利益還元だけではなく、当社を支える社員への株式の付与を通じて社員一人ひとりの会社への帰属意識と企業価値向上に向けたモチベーションを高めていきます。2023年5月には、従業員持株会の会員である社員に対して、特別報酬として1人あたり100株を付与しました。2025年3月現在で、当社における社員の持株会加入率は90%程度となり、収益の拡大による資金の循環を人や事業の成長につなげるべく、グループ全体で企業価値向上に向けた取り組みを加速させていきます。「中期経営計画2026」の数値目標を双日グループ一丸となって達成した際は、社員に対して特別報酬を付与する予定です。
● 健康経営
当社グループにとって最大の資本である社員とその家族が心身共に健康であり、社員が働きやすさと働きがいを持てる健全な職場環境づくりは、会社の重要な責任の1つと考え、『双日グループ健康憲章 “Sojitz Healthy Value”宣言』を策定しています(2018年3月)。疾病の未然予防・健康増進に加え、仕事と治療の両立を図るべく、健康推進担当の組織体制を強化し、各健康関連施策を実施しています。2022年度に策定した健康経営戦略マップをもとにフィジカルヘルス対策/メンタルヘルス対策/女性の健康対策を主軸として健康施策を実行し、それらの取り組みが評価され、「健康経営銘柄」に2年連続3度目の選定を受けています。定期健康診断の一次受診率100%を継続しつつ、疾病の早期発見・予防を目指し、2023年度まで二次健診受診率を人材KPIとして定め、目標の70%を上回る77%まで向上しました。2024年度以降は、引き続き社内でのモニタリングを継続し、84%となっています。
<参考>
Sojitz ESG BOOK 労働安全衛生(「双日グループ健康憲章」)
https://www.sojitz.com/jp/sustainability/sojitz_esg/s/health/
健康経営戦略マップ
https://www.sojitz.com/pdf/jp/sustainability/sojitz_esg/s/health/strategymap.pdf
フィジカルヘルス対策では、健康に対する社員の意識と行動の変容を促すことを目的に、2023年度に引き続き、「双日健康フェス」を開催しました。2024年度は「睡眠」をメインテーマとし、「睡眠×運動」、「睡眠×食事」など睡眠に関するセミナー、その他体力測定会など10種類の施策を実施し、社長を含む経営層も参加しました。

双日健康フェスの様子
メンタルヘルス対策では、精神科産業医をはじめ、社内・社外カウンセラーなど複数の相談窓口を設置し、メンタル不調者の早期発見・早期治療に取り組んでいます。所属長が産業医からアドバイスを受け、不調者のケアや職場復帰を支援するなど、産業保健スタッフと所属組織が連携して行っています。ストレスチェックの組織分析の結果、課題のある組織に対しフィードバックを実施していますが、これらの組織はエンゲージメントサーベイの積極肯定回答率が低いという傾向も見られ、働く環境の改善に取り組んでいます。加えて、国内と比較して負荷のかかりやすい海外勤務者に対しては、毎月ヘルスチェックを実施する事で、自身の健康状態を振り返り、必要に応じて産業医や外部相談窓口に相談する機会とし、早期発見や発症予防につなげています。
女性の健康対策については、2022年4月以降、子宮頸がん・乳がん検診の対象の全年齢への拡大、社内診療室への婦人科嘱託医の配置、不妊治療に関わる相談窓口の設置、外部企業と契約し、医師や専門家による女性の健康に関するオンラインセミナーの配信など、施策を強化しています。不妊治療と仕事との両立の難しさなど、本人のみならず、所属組織の理解を深める事に加え、女性社員が自身の健康やキャリア形成についてのリテラシーを向上させることを目的としたセミナーを実施するなど、一人ひとりの社員が活躍できる環境整備を進めています。
エンゲージメントサーベイの結果から、「健康施策に対する社員の満足度」、「社員のヘルスリテラシー」に対する肯定回答率(注)も上昇しており、着実に健康経営が社内に浸透しています。今後も健康経営を推進し、社員一人ひとりが心身健康な状態を維持し、誰もが挑戦を当たり前にする環境づくりを進めていきます。
(注) 回答選択肢6択のうち、「①とてもそう思う」「②そう思う」「③どちらかといえばそう思う」の回答割合
<多様な人材の活躍を支える主な制度・取り組み一覧>

(1) 当社グループのリスク管理
① リスク管理の考え方
当社グループは、総合商社としてグローバルかつ多角的に事業を行っており、展開する事業の性質上、様々なリスクに晒されております。
このため、リスクを「事業戦略及びビジネス目標の達成に影響を与える不確実性」と定義し、経営環境の多面的な分析とリスクの把握、戦略的対応を通じて企業価値向上に資するよう、全社的リスク管理の高度化に取り組んでおります。また、リスクの重要性を評価のうえ、適切かつ合理的な方法でリスク管理を推進しています。
② 全社的リスク管理体制
当社グループが取り組む全社的リスク管理においては、社長・CFOがメンバーを務める「内部統制委員会」(事務局:内部統制統括部)が、各種社内委員会(88ページ)とも連携しながら、方針の協議と策定、業務執行組織(第1線及び第2線)が実行するリスク管理の状況の全体俯瞰とモニタリング、並びに関係先への指示など、その枠組みを有効に機能させる主体となります。
また、監査部は第3線として独立した立場で、第1線・第2線が運用しているリスク管理についての客観的な検証を行います。
これらを踏まえ、内部統制委員会は、経営会議・取締役会・監査等委員会に対して、全社的リスク管理の状況について定期的に報告を行います。
全社的リスク管理体制の概要は下図のとおりです。
図1:全社的リスク管理の体制

全社的リスク管理のプロセス
当社グループにおける全社的リスク管理のプロセスは以下となっております。
図2:全社的リスク管理のプロセス

当社グループでは、第1線(営業本部など)・第2線(コーポレート)の各部署において、外部環境、経営戦略、業務プロセスなど、将来予想によるものも含めて網羅的にリスクを検討、識別しています。識別されたリスクについては、影響度と発生可能性による2軸評価によって重要度を測定し、内部統制委員会における協議と取締役会への報告を経て、リスク対応方針を決定しています。
このリスク対応方針に沿って、第1線(営業本部など)では、業務執行におけるリスクについての自律的コントロールを行う一方、第2線(コーポレート)では、担当するリスクに関連して経常的に実施する管理業務のほか、第1線への支援やモニタリング、PDCA管理も含めた継続的レビューを行います。第1線及び第2線が行うリスク管理活動については、内部統制委員会がモニタリングし、リスクの重要度に応じて有効性評価を実施したうえで、経営会議・取締役会・監査等委員会に報告を行います。
昨今の外部環境や事業領域の変化を踏まえ、個々のリスクをサプライチェーン全体で捉え、突発的なリスク発現時の影響度合いの把握や、機動的な対応を通じた、レジリエンス(回復力)強化に取り組んでおります。地政学リスク、災害リスクそれぞれについては想定するシナリオを策定し、営業本部・コーポレートとの対話並びに経営会議での議論を通じて、リスク発現時の対応策などを確認しております。また、不正なアクセスやサイバー攻撃への対策の強化にも重点的に取り組んでおります。
さらに、リスク・リターンを踏まえた事業投資マネジメントを行うことで、当社グループのバランスシートの劣化を防ぎ、企業価値の維持・向上につなげております。
(2) 個別のリスクについて
当社グループの事業に関しては以下のようなものがあります。
このほか、当社グループ資産が晒されるリスクを「リスクアセット」として計測管理し、この結果をリスクに対する収益性や、財務の健全性を維持するための指標として活用し、リスクをコントロールしています。リスクアセットは自己資本の1倍以内に収めることを目標としており、2025年3月末のリスクアセットは自己資本の0.7倍であります。
なお、将来事項に関する記述につきましては、当期末現在において入手可能な情報に基づく当社の判断、一定の前提又は仮定のもとでの予測などであります。
① マクロ経済環境の変化によるリスク
当社グループは、グローバルにビジネスを展開し、事業活動は多岐にわたっており、当社グループの業績は、日本及び関係各国の政治経済状況や世界経済全体の影響を受けます。そのため、世界的あるいは特定地域における経済動向は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② カントリーリスク
当社グループは、カントリーリスク発現時の損失の発生を最小化するためには、特定の国・地域に対するエクスポージャーの集中を避ける必要があると考えております。また、カントリーリスクが大きい国との取り組みでは、貿易保険などを活用し案件ごとにカントリーリスクヘッジ策を講じることを原則としております。
カントリーリスクの管理にあたっては、各国・地域ごとにカントリーリスクの大きさに応じて客観的な手法に基づく9段階の国格付けを付与すると共に、国格付けと国の経済規模に応じてネットエクスポージャー(エクスポージャーの総額から貿易保険などのカントリーリスクヘッジを差し引いたもの)の上限枠を設定し、各々の国のネットエクスポージャーを上限枠内に抑制しております。
しかしながら、これらのリスク管理やヘッジを行っていても、当社グループの取引先所在国や当社グループが事業活動を行う国の政治・経済・法制度・社会情勢の変化によって計画どおりの事業活動を行えない可能性や損失発生の可能性を完全に排除することはできません。このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 地政学リスク
当社グループは、グローバルにビジネスを展開しており、特定国・地域における社会的、政治的、軍事的な緊張の高まりにより、従業員、物資、資本、情報などの経営資源が危険に晒されたり、貿易・投資、その他の自由な経済活動が阻害されたりする可能性があります。
こうした地政学リスクの高まりによる不確実な情勢に対応するため、特定国・地域における取引内容やビジネスへの影響を確認するとともに、調査・分析及び研修を通じて、有事の際に適切な対応がとれるよう努めております。また、安全保障貿易管理委員会を中心に各国の外交政策、制裁措置、武力紛争などの外部環境変化へ柔軟に対応しております。
しかしながら、全ての地政学リスクを回避することは困難であり、経営資源に影響を与える事象が発生した場合には当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 市場リスク
当社グループは、貿易業や事業投資を通じた外貨建の取引などに伴う為替変動リスク、資金の調達や運用などに伴う金利変動リスク、営業活動における売買契約・在庫商品などに伴う商品価格変動リスク並びに上場有価証券の保有などに伴う価格変動リスクなどの市場リスクに晒されております。当社グループは、これらの市場リスクを商品の売買残高などの資産・負債のマッチングや先物為替予約取引、商品先物・先渡取引、金利スワップ取引などのヘッジ取引によって極小化することを基本方針としております。
1)為替リスク
当社グループは、外貨建の輸出入取引・外国間取引を主要な事業活動として行っており、その収益・費用などは主に外国通貨による受払いとして発生する一方、当社グループの連結決算上の報告通貨が日本円であることから、外国通貨の対日本円での為替変動リスクに晒されております。この為替変動リスクに伴う損失の発生又は拡大を未然に防ぐために、先物為替予約などのヘッジ策を講じておりますが、これらの対応を行っても為替変動リスクを完全に回避できる保証はなく、予期せぬ市場の変動により当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、海外の事業会社からの受取配当金、海外連結子会社・持分法適用関連会社の損益の多くが外貨建であり、日本円に換算する際の為替変動リスクを負っています。さらに、当社グループは、海外に多くの現地法人・事業会社などを保有しており、財務諸表を日本円に換算する際の為替変動により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、為替の収益感応度(米ドルのみ)は、1円/米ドル変動すると、売上総利益で年間8億円程度、当期純利益(当社株主帰属)で年間3億円程度、自己資本で20億円程度の影響があります。
2)金利リスク
当社グループは、営業債権などによる信用供与・有価証券投資・固定資産取得などのため金融機関からの借入又は社債発行などを通じて資金調達を行っております。資産・負債を金利感応度の有無により分類し、金利感応度のある資産と負債との差額を金利ミスマッチ金額と捉え、固定・変動調達比率を調整することで金利変動リスクを管理しておりますが、金利変動リスクを完全に回避できるものではなく、金利水準の急上昇による調達コスト増大が当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、2025年3月末の当社グループの有利子負債残高は1兆864億73百万円であり、平均利率につきましては、短期借入金は3.35%、1年内返済予定の長期借入金は2.43%、長期借入金(1年内返済予定のものを除く)は1.80%となっております。
3)商品価格リスク
当社グループは、総合商社として様々な事業分野において多岐にわたる商品を取り扱っており、相場変動などによる商品価格変動リスクにさらされております。取扱い商品については、社内組織単位ごとにポジション(ロング・ショート)限度額と最大損失額を設定の上、ポジション・損失管理を行うと共に、損切りルール(評価額を含む損失額が最大損失額の90%に抵触した場合、最大損失額の範囲内に収めるべく速やかにポジションを解消するルール)を設定し運用しておりますが、これらの対応を行ってもリスクを完全に回避できる保証はなく、予期せぬ市場の変動などにより当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、各商品ポジションに関しては、モニタリングの上、本部別に増減内容の分析を行うなど、適正水準にコントロールするための施策を行っております。
4)上場有価証券の価格リスク
当社グループは、市場性のある有価証券を保有しております。保有する上場株式については、受取配当金や関連する収益が資本コスト(WACC)を上回っているかを定量的に検証するとともに、当社企業価値の向上に寄与しているかといった定性面についても精査し、個別銘柄ごとの保有意義見直しを継続していく方針です。
保有上場株式の株価が大幅に下落した場合、有価証券の公正価値の変動によって、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 信用リスク
当社グループは、多様な商取引を行う中で国内外の取引先に対し信用供与を行っております。これらの商取引においては、販売先の業績不振や経営破綻などにより、当社の債権が回収できないリスクが存在します。
これらのリスクについて、取引先に対し11段階の信用格付けを付与し、当該格付や当社が負うリスクの類型により取引先ごとに取引限度を設定し、債権残並びに契約残を設定された限度の範囲内でコントロールしております。また、定期的に取引先信用状況やサプライチェーン全体を俯瞰し取引条件を見直し、かつ取引先の信用状況やその変化に応じ、担保・保証の取得や保険の付保など保全措置を講じ、信用リスクが顕在化した場合に、予想される損失の軽減にも努めております。さらに、債権査定制度を導入し、回収に懸念のある債権については、当該取引先の信用状況、債権回収実績、保全内容などを基に回収可能性について査定を行い、回収が難しいと判断する債権額を算定し適時に貸倒引当金を計上しております。
また仕入先において、経営不振などにより仕入契約どおりに当社商品供給がなされない場合、当社グループが主契約者として販売先に販売契約の義務を果たせず、契約履行責任を問われるなどのリスクも存在します。
しかしながら、こうした信用リスクの管理を行った場合でもリスクを完全に回避できる保証はなく、取引先の破綻などにより債権の回収不能などの事象が発生した場合には当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 事業投資リスク
当社グループは、様々な事業領域において事業投資を行っております。事業投資は、事業計画どおりに収益獲得ができないリスク、投下資本回収リスク、事業撤退時に損失が発生するリスクが存在します。事業投資から発生する損失の予防と抑制を目的として、当社グループは事業投資案件の実行の判断時、また投資実行後の管理や撤退に関して事業投資基準を設けて、管理しております。
新規事業投資案件の実行時においては、取り組み意義やキャッシュ・フロー計画を含めた事業計画を厳格に評価しております。特に収益性の評価に関しては内部収益率(IRR)を指標とし、これに対しハードルレートを設定した上で、これを上回る案件を取り上げることとしており、事業投資実行の判断において、当社グループの株主価値を向上させ、かつリスクに見合う収益が得られる案件を選別する仕組みを構築しております。
実行済の事業投資案件については、毎年、モニタリング・撤退該否判定として、ROIC(Return on Invested Capital)や、キャッシュリターンベースでのROICであるCROIC(Cash-Return on Invested Capital)が資本コストを超えているかを測定し、定期的に事業性を評価しながらそれぞれの事業の問題点を早期に把握し、適時適切に改善策の実行、あるいは撤退を進めることで当社グループのバランスシートの劣化を防ぎ、企業価値の維持・向上につなげております。モニタリング・撤退該否判定に関する概要は下図のとおりです。
図:モニタリング・撤退該否判定

このように、事業投資の実行時、実行後の仕組みを整備しておりますが、期待どおりの収益が上がらないリスクや事業計画を達成できないリスクを完全に回避することは困難であり、想定どおりに事業が進まない場合、当社グループが保有するのれん及び固定資産などの価値が毀損し、減損損失が発生する、又は当該事業からの撤退などに伴い損失が発生する可能性があります。これらの場合において、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 資金調達リスク
当社グループは、事業資金を金融機関からの借入金又は社債発行などにより調達しております。金融機関との取引関係の維持、一定の長期調達比率の確保などによる安定的な資金調達を行っておりますが、金融市場の混乱や格付会社による当社グループの信用格付けの大幅な引下げなどの事態が生じた場合には、資金調達が制約されると共に、調達コストが増加するなどにより、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 環境・気候変動リスク
当社グループの事業活動及びサプライチェーンにおいて、環境・気候変動などにかかわる問題が発生した場合、又は環境団体を含む様々な主体から環境にかかわる問題に関与していると批判を受けた場合に、当社グループの社会的評価の低下、事業活動の停止・中止、訴訟や損害賠償などの負担、サプライチェーンからの除外などが生じるリスクがあります。
また、気候変動を抑制できずに温暖化が進行した場合に、当社事業の収益や資産価値に影響を及ぼす可能性のあるリスクとして、気候変動抑止のために法規制が強化されるなどの移行リスクと、気温上昇により洪水などの災害が発生し、被害が生じる物理的リスクがあります。
当社グループは、6つのマテリアリティのうち環境・人権を優先的に取り組むテーマとして長期ビジョン「サステナビリティ チャレンジ」を策定し、環境・気候変動への対応の一環として脱炭素社会への実現に取り組んでおります。
(詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティに関する基本方針 リスク管理(23ページ)」を併せてご参照ください。)
⑨ 人権リスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、事業活動とそのサプライチェーンは多岐・広範にわたっております。当社グループの事業活動及びサプライチェーンにおいて、労働安全衛生、人権などにかかわる問題が発生した場合、又は人権保護団体などから労働安全衛生、人権などにかかわる問題に関与していると批判を受けた場合に、事業活動の停止・中止、被害・損害の補償、訴訟や損害賠償などの負担が発生するリスク、当社グループがサプライチェーンから外される、又は当社グループの社会的評価に悪影響を及ぼすリスクがあります。
当社グループは、6つのマテリアリティのうち環境・人権を優先的に取り組むテーマとして長期ビジョン「サステナビリティ チャレンジ」を策定し、人権方針や人権にかかわる個別方針を策定・実行するなどサプライチェーンを含む人権尊重に取り組んでおります。
(詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティに関する基本方針 リスク管理(23ページ)」を併せてご参照ください。)
⑩ コンプライアンスリスク
当社グループは、様々な事業領域で活動を行っており、事業活動に関連する法令・規制は、会社法、税法、汚職など腐敗行為防止のための諸法令、ハラスメント防止のための諸法令、独占禁止法、関税法、外為法を含む貿易関連諸法令や化学品規制などを含む各種業界法など広範囲にわたっております。これらの国内外の法令・規制を遵守するため、当社グループではコンプライアンスプログラムを制定し、コンプライアンス委員会を設け、グループ全役職員にコンプライアンスマインドを浸透・定着させるための取り組みを、全社をあげて実施しております。また、安全保障貿易管理委員会を中心とした安全保障貿易に関する実行体制の整備・運用にも取り組んでおります。しかしながら、このような取り組みによっても事業活動におけるコンプライアンスリスクを完全に排除することはできるものではなく、関係する法律や規制の大幅な変更、予期しない解釈の適用などが当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 法務リスク
事業活動に関連して、当社グループが国内又は海外において訴訟、仲裁などの法的手続きの被告又は当事者となることがあります。訴訟などには不確実性が伴い、その可能性の程度や時期、結果を現時点で予測することはできませんが、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑫ システムリスク
コンピュータシステムの品質不良や運用トラブルによるビジネス遂行の支障や損失、並びにITリソースやシステムの統合管理の不十分さなどによるシステムリスクが存在します。
当社グループは、システムを適切に保守・運用するため、チーフ・インフォメーション・オフィサー(CIO)を中心とした管理体制を構築しております。重要な情報システムやネットワーク設備について、これらの機器設備を二重化するなど障害対策を施すと共に、グループ全体のIT資産・脆弱性の一元的な管理を行い、システムの安定運用を図っております。
このように総合的なシステムの強化と事故防止に努めておりますが、予期できない自然災害や障害を原因として情報通信システムが不稼働の状態に陥る可能性は排除できません。
なお、本社含めグループ連結会社でシステムリスクが顕在化した際には、予想される損失については、保険の付保による軽減に努めております。しかしながら、被害の規模によっては当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑬ 情報セキュリティリスク
不正なアクセスやサイバー攻撃、情報資産(紙媒体を含む)の管理ミスなどによる情報の漏洩、改ざん、破壊、紛失などにより、損失を被り、社会的評価が悪影響を受ける情報セキュリティリスクが存在します。
当社グループは、情報資産を適切に保護・管理するため、各種規程を整備し、チーフ・インフォメーション・セキュリティ・オフィサー(CISO)を議長とする情報・ITシステムセキュリティ委員会を中心とした管理体制を構築し、情報セキュリティに係る体制を強化しております。
ファイアウォールによる外部からの不正アクセスの防止、システムの脆弱性を悪用するウイルス対策、暗号化技術の採用などによる情報漏洩対策の強化にも努めております。
その他、グループ全体のセキュリティガバナンス強化に重点的に取り組んでおり、サイバー攻撃を早期に検知し影響を抑え込むソフトウエアの導入、不審メールに対する訓練など、セキュリティ対策をグループ全体に展開しております。
また、定期的なセキュリティリスクアセスメントを通じて当社グループが抱えるセキュリティ上の課題・リスクを可視化し、優先度をつけた中長期的なセキュリティ対策を実施しております。
このように総合的な情報セキュリティの強化と事故防止に努めておりますが、近年急増しているサイバー攻撃やコンピュータへの不正アクセスなどにより、個人情報を含めた重要な情報資産が漏洩又は毀損する可能性は排除できません。なお、本社含めグループ連結会社でセキュリティリスクが顕在化した際には、対応にかかる費用や取引先・顧客への補償費用といった予想される損失については、保険の付保による軽減に努めております。しかしながら、被害の規模によっては当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑭ 災害等リスク
地震、風水害などの自然災害や感染症の大規模な流行により事務所・設備・従業員とその家族などに被害が発生し、当社グループに直接的又は間接的な影響を与える可能性があります。災害対策マニュアル並びに感染症マニュアルの作成、防災訓練、従業員の安否確認システムの整備、事業継続計画(BCP)の策定などの対策を講じております。
大規模な災害時における取引上のサプライチェーン維持の取り組みとして、代替取引先・代替商品の検討を行い取引継続の強靭化に取り組むと共に、保険の付保を行うなどして被災した場合の損害の低減を講じております。
しかしながら、被害を完全に回避できるものではなく、サプライチェーン寸断により当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑮ 人的資本リスク
当社グループは、人材を会社の資本、価値の源泉と捉え、価値創造できる人材を輩出し続ける人的資本経営を推進しており、経営戦略・事業戦略の実現に向けた人材の確保・育成に努めております。人材確保に関しては、多様性の推進、イノベーションの創出、機能強化を目指し、M&Aやデジタル人材など専門性の高い人材の獲得に注力するなど、人材ポートフォリオを意識した採用を推進しています。また、キャリア採用の強化を通じて、当社社員の年齢構成の適正化を図るほか、新卒・キャリア採用ともに女性比率の目標を設定し、ジェンダーに関わらず適材適所で活躍できる環境の整備に取り組んでいます。
人材育成に関しては、「自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個」、「多様な個の力を最大化するミドルマネジメントの強化」、「環境変化を先読みした機動的な人材配置・抜擢」を重点テーマと置き、経営人材、デジタル人材、外国人人材など、事業戦略の実現に必要となる人材の育成を強化しています。重要テーマについては人材KPIを設定し、進捗や効果を定量的にモニタリングする体制を整備しています。
このように人材戦略に基づいた様々な取り組みを行っていても、高齢化に伴う労働人口の減少や、人材の流動化により必要な資質・能力を有した人材の確保・育成が十分にできない場合、事業計画の進捗に遅れが生じる可能性があります。
人的資本リスクについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 人材戦略に関する基本方針 リスク管理(39ページ)」を併せてご参照ください。
⑯ 品質に関するリスク
当社グループは、総合商社として様々な事業を展開しています。近時、事業領域が拡大・多様化するなか、製造業やサービス業への進出も増加しています。それに伴い、品質管理体制強化の目的で、全社共通の品質管理基本方針である「双日グループ・品質管理ポリシー」を制定し、現場での自律的、主体的な品質管理を推進しております。また、全社横断組織として品質管理委員会を設置し、事業現場で提供するモノ・サービスの品質管理状況を網羅的にモニタリングする体制を整えております。体制の概要は下図のとおりです。
図:品質管理モニタリング体制図

また、個々の事業においては、品質に起因したリスク発現に対して、事業特性も考慮しながら、顧客対応を実践しており、品質管理委員会では、その実践状況を議論・研究し、成果や気付きを全社に共有の上、他事業への応用・品質改善につなげる取り組みをしております。とりわけトレード事業においては、個々の商流のサプライチェーン全体を見据えた品質起因のリスクの洗い出しとリスク対応の点検を行っております。
しかしながら、品質問題の発生を完全に抑制することは困難であり、当該問題により生じた損害について、当社グループが責任を負う可能性があります。このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑰ レピュテーションリスク
当社グループにおいて、製品やサービスの品質問題、コンプライアンス違反、情報漏洩やセキュリティ侵害などの事象が発現した場合に、発生した事実はもとより、情報開示の適時性や開示内容の客観性などの不備不足により、ステークホルダーからの当社グループへの信用やブランド価値が毀損する可能性があります。
対外発信においては、開示における透明性・適時性・公平性などを確認し、一貫性のある適切な発信が行われるよう努めていますが、報道やSNSなどの情報により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループのウェブサイト・SNSは、システムの脆弱性に起因する掲載情報の改ざんリスクや収集した個人情報の流出リスクに晒されております。システムの脆弱性に関しては、上記⑬の「情報セキュリティリスク」に記載のとおり、可能な限りの安全対策に努め、運用に関しては、グループ共通のSNS運用ポリシーや運用規程を定め、当社グループからの適切な情報発信を行う体制を整えておりますが、このように情報発信内容と運用における対策をもちましても、運用に起因する批判・非難の集中や意図しない著作権・商標権・肖像権の侵害、取引先や顧客に限らない第三者による外部サイトやSNSに当社グループを特定しての投稿が為されるケースもあり得ます。情報の真贋によらず、その内容と発信媒体あるいは時期により影響度は異なり、それを事前に予測することはできないものの、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
当連結会計年度は、日本を除く各国中銀が金融引き締めから緩和に転じ始めました。一方、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、予断を許さない状況が続く中東情勢、中国における景気の低迷に加え、2025年1月以降、米国の新政権の政策変更など、地政学的な不確実性が増しています。
当社グループがビジネスを展開する地域を概観すると、米国ではFRBが2024年9月~12月において3回、計1.0%の利下げを実施し、政策金利は4.25~4.5%になっています。消費・雇用は堅調に推移していますが、関税政策を含む新政権の政策変更に伴い、今後の経済環境は不透明感が強まっています。
EU経済圏では、個人消費は底堅く推移していますが、製造業の不振が長期化しており、低成長が続いています。ECBは2025年3月にインフレ圧力の鈍化と景気指標の下振れを受け、5会合連続の利下げを行い、政策金利は2.65%となっています。
中国は、内需の低迷や不動産不況が課題であるものの、2024年後半からの金融緩和策などにより、2024年1~12月の実質GDP成長率は政府目標の+5.0%前後を達成しました。一方で、米中の貿易摩擦は激化する方向にあり、先行きは不透明な状況となっています。
ベトナムでは、米国などへの輸出が経済成長をけん引し、2024年1月~12月の実質GDP成長率は前年比+7.09%と大幅に上昇しました。2025年初めも輸出は増加傾向にありますが、米国新政権の保護主義的政策の影響が懸念されます。
インドでは、民間消費や輸出が好調で、景気は堅調に推移しています。足元のインフレ率は中央銀行が想定範囲内とする2~6%で推移しています。また、中央銀行は2025年2月に政策金利を6.5%から6.25%に約5年ぶりに引き下げ、景気を下支えする方針を示しています。
日本では、日銀が2024年7月に続いて2025年1月にも利上げを行い、政策金利を0.5%程度としました。国内の景気は緩やかに回復していますが、米国新政権の政策変更による影響には注視していく必要があります。
当期の当社グループの業績につきましては、次のとおりであります。
収益は、米国電気設備工事事業会社の取得及び米国省エネルギーサービス事業会社の取引増加によるエネルギー・ヘルスケアでの増収に加え、パナマ自動車販売事業会社の前期取得による自動車での増収などにより、2兆5,097億14百万円と前期比3.9%の増収となりました。
売上総利益は、米国省エネルギーサービス事業会社の取引増加及び米国電気設備工事事業会社の取得によるエネルギー・ヘルスケアでの増益に加え、ベトナム業務用食品卸売事業会社の前期取得、冷凍マグロ加工販売事業会社の利益率改善によるリテール・コンシューマーサービスでの増益により、前期比208億38百万円増益の3,467億93百万円となりました。
税引前利益は、売上総利益の増益に加え、資産入れ替えに伴うその他の収益・費用の増加などにより、前期比98億2百万円増益の1,353億円となりました。
当期純利益は、税引前利益1,353億円から、法人所得税費用211億1百万円を控除した結果、当期純利益は前期比111億39百万円増益の1,141億99百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期純利益は前期比98億71百万円増益の、1,106億36百万円となりました。
当期包括利益は、当期純利益にFVTOCIの金融資産や在外営業活動体の換算差額などを計上した結果、当期包括利益は前期比668億40百万円減少し、1,064億43百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期包括利益は前期比650億78百万円減少し、1,032億39百万円となりました。
連結純損益計算書
(単位:億円)
(注) 基礎的収益力=売上総利益+販売費及び一般管理費(貸倒引当金繰入・貸倒償却を除く)+金利収支
+受取配当金+持分法による投資損益
(注) 販売費及び一般管理費のうち貸倒引当金繰入・貸倒償却金額は、前期比 △2億円(△2→△4)
(2) 資本の財源と資金の流動性及び調達状況について
当期末の資産合計は、連結子会社の新規取得などにより、前期末比2,003億79百万円増加の3兆872億52百万円となりました。
負債合計は、新規調達による有利子負債の増加などにより、前期末比1,483億91百万円増加の2兆796億36百万円となりました。
資本のうち親会社の所有者に帰属する持分合計は、配当金の支払いや、自己株式の取得があったものの、当期純利益の積み上がりなどにより、前期末比448億80百万円増加の9,689億56百万円となりました。
この結果、当期末の自己資本比率は31.4%となりました。また、有利子負債総額から現金及び現金同等物、及び定期預金を差し引いたネット有利子負債は前期末比1,900億円増加の8,872億90百万円となり、ネット有利子負債倍率は0.92倍となりました。
(注) 自己資本比率及びネット有利子負債倍率の算出には、親会社の所有者に帰属する持分を使用しております。また、有利子負債総額にはリース負債を含めておりません。
連結貸借対照表
(単位:億円)
(注) 自己資本は、資本のうち「当社株主に帰属する持分」とする
当期のキャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローは166億88百万円の支出、投資活動によるキャッシュ・フローは941億6百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは1,063億88百万円の収入となりました。これに現金及び現金同等物に係る換算差額を調整した結果、当期末における現金及び現金同等物の残高は1,922億99百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当期の営業活動による資金は、営業収入や配当収入があったものの、一時的な運転資金の増加などにより166億88百万円の支出となりました。前期比では1,288億75百万円の支出増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当期の投資活動による資金は、米国電気設備工事事業会社への出資や有形固定資産の取得などにより941億6百万円の支出となりました。前期比では1,065億35百万円の支出増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当期の財務活動による資金は、配当金の支払い及び自己株式の取得などの支出があったものの、借入金による調達などにより1,063億88百万円の収入となりました。前期比では2,929億11百万円の収入増加となりました。
③ 資金の流動性と資金調達について
当社グループは、資金調達構造の安定性維持・向上を財務戦略の基本方針とし、一定水準の長期調達比率の維持や、経済・金融環境の変化に備えた十分な手元流動性の確保により、安定した財務基盤の維持に努め、当期末の流動比率は159.8%、長期調達比率は81.6%となりました。
また、資金調達の機動性及び流動性確保の補完機能を高めるため、円貨1,000億円(未使用)及び25.75億米ドル(11.54億米ドル使用)の長期コミットメントライン契約を有しております。
セグメント別の成長戦略、及び経営成績に係る変動要因の分析については以下のとおりです。
当社グループは、2024年4月1日付にて「航空産業・交通プロジェクト」、「インフラ・ヘルスケア」の一部事業領域を再編し、「航空・社会インフラ」、「エネルギー・ヘルスケア」、「その他」へ変更しております。
(単位:億円)
(単位:億円)
(単位:億円)
(単位:億円)
(単位:億円)
(単位:億円)
(単位:億円)
IFRS会計基準に準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を用いております。実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直しております。会計上の見積りの見直しによる影響は、見積りを見直した会計期間及び将来の会計期間において認識しております。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重大なものは以下のとおりであります。
当社グループは、資産又は負債の公正価値を測定する際に、入手可能な限り、市場の観察可能なデータを用いております。公正価値の具体的な算定方法は次のとおりであります。
(a) 資本性金融商品
上場株式については、取引所の価格によっております。非上場株式については、割引将来キャッシュ・フローに基づく評価技法、類似会社の市場価格に基づく評価技法、純資産価値に基づく評価技法、その他の評価技法を用いて算定しております。非上場株式の公正価値測定に当たっては、割引率、評価倍率等の観察可能でないインプットを利用しており、必要に応じて一定の非流動性ディスカウント、非支配持分ディスカウントを加味しております。非上場株式の公正価値の評価方針及び手続の決定はコーポレートにおいて行っており、評価モデルを含む公正価値測定については、個々の株式の事業内容、事業計画の入手可否及び類似上場企業等を定期的に確認し、その妥当性を検証しております。
(b) デリバティブ金融資産及びデリバティブ金融負債
通貨関連デリバティブ
為替予約取引、直物為替先渡取引、通貨オプション取引及び通貨スワップ取引については、期末日の先物為替相場に基づき算出しております。
金利関連デリバティブ
金利スワップについては、将来キャッシュ・フローを満期日までの期間及び信用リスクを加味した利率で割り引いた現在価値により算定しております。
商品関連デリバティブ
商品先物取引については、期末日現在の取引所の最終価格により算定しております。商品先渡取引、商品オプション取引及び商品スワップ取引については、一般に公表されている期末指標価格に基づいて算定しております。また、電力関連デリバティブについては発電量や価格見通しを踏まえた将来キャッシュ・フローの割引現在価値により算定しております。
当社グループは期末日において、資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額を見積っております。のれん及び耐用年数の確定できない無形資産については毎期、さらに減損の兆候がある場合には都度、減損テストを実施しております。個別資産又は資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、当該資産を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。
回収可能価額は、個別資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額としております。公正価値は市場参加者間の秩序ある取引において成立し得る価格を合理的に見積もって算定しております。使用価値は、貨幣の時間価値及び個別資産又は資金生成単位に固有のリスクに関する現在の市場の評価を反映した税引前の割引率を用いて、見積将来キャッシュ・フローを割引いて算定しております。将来キャッシュ・フロー見積りにあたって利用する事業計画は原則として5年を限度としております。なお、当社グループは、使用価値及び公正価値の算定上の複雑さに応じて外部専門家を適宜利用しております。
過年度にのれん以外の資産について認識した減損損失については、期末日において、認識した減損損失がもはや存在しない又は減少している可能性を示す兆候があるか否かを判定しております。このような兆候が存在する場合には、回収可能価額の見積りを行い、当該回収可能価額が資産の帳簿価額を上回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで増額し、減損損失の戻入れを認識しております。のれんについて認識した減損損失は、以後の期間において戻入れておりません。
なお、持分法適用会社に対する投資の帳簿価額の一部を構成するのれんは区分して認識しないため、個別に減損テストを実施しておりません。持分法適用会社に対する投資が減損している可能性が示唆されている場合には、投資全体の帳簿価額について回収可能価額を帳簿価額と比較することにより単一の資産として減損テストを行っております。
当社グループでは、固定資産の減損会計等の会計上の見積りについて、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき実施しております。
引当金は、過去の事象の結果として現在の債務(法的債務又は推定的債務)を有しており、当該債務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高く、当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合に認識しております。
貨幣の時間的価値の影響に重要性がある場合、当該負債に特有のリスクを反映させた現在の税引前の割引率を用いて割引いた金額で引当金を計上しております。
確定給付制度は、確定拠出制度以外の退職給付制度であります。確定給付制度債務は、制度ごとに区別して、従業員が過年度及び当年度において提供したサービスの対価として獲得した将来給付額を見積り、当該金額を現在価値に割り引くことによって算定しております。制度資産の公正価値は当該算定結果から差し引いております。
割引率は、当社グループの確定給付制度債務と概ね同じ満期日を有するもので、かつ支払見込給付と同じ通貨建ての、主として報告日における信用格付けAAの債券の利回りであります。
過去勤務費用は、即時に純損益で認識しております。
当社グループは、確定給付制度から生じるすべての確定給付負債(資産)の純額の再測定を即時にその他の包括利益で認識しており、直ちに利益剰余金に振り替えております。
⑤ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産及び繰延税金負債は、資産及び負債の帳簿価額と税務基準額との差額である一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除について認識しており、期末日における法定税率又は実質的法定税率、及び税法に基づいて、資産が実現する期又は負債が決済される期に適用されると予想される税率又は税法で算定しております。
繰延税金資産は、将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産の帳簿価額は期末日において再検討しており、繰延税金資産の便益を実現させるだけの十分な課税所得を稼得する可能性が高くなくなった範囲で繰延税金資産の帳簿価額を減額しております。
(目標とする経営指標の達成状況等)
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 「中期経営計画2026」の進捗状況(15~19ページ)」をご参照ください。
(販売、仕入及び成約の状況)
① 販売の状況
「(1) 当連結会計年度の経営成績の分析」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記5 セグメント情報」をご参照下さい。
② 仕入の状況
仕入は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
③ 成約の状況
成約は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
(注) 将来情報に関するご注意
本資料に掲載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、業績を確約するものではありません。実際の業績等は、内外主要市場の経済状況や為替相場の変動など様々な要因により大きく異なる可能性があります。重要な変更事象等が発生した場合は、適時開示等にてお知らせします。
一部の銀行借入等に係る契約では、財務制限条項により連結純資産水準等の一定の財務内容の維持が求められておりますが、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により、当該契約に係る記載を省略しております。
特記事項はありません。