第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

アルフレッサグループは、「グループ理念」および「サステナビリティ基本方針」等として次のように位置づけております。


(注) 2026年3月期の期首より従来の医療関連事業を調剤薬局等事業に改称し、その他事業セグメントを新設しております。

 


 

 


 


 

 

(2) 中期経営計画

アルフレッサグループは、2028年3月期を最終年度とする「25-27 中期経営計画 Vision2032  Stage2 ~総合力で未来を切り拓く~」を策定しております。

① 「25-27中期経営計画」グループ経営方針

 


 

 


 


 

グループ全体で、医薬品等の導入・開発、製造から物流・販売、市販後調査、ラストワンマイルまでをシームレスに提供し、限定流通品の獲得、CDMO事業の拡大、安定的なサプライチェーン運営を目指してまいります。

 

 


 


 

成長が期待されるモダリティに、グループとして一元対応できるように機能を充実してまいります。

 

 


 


 

持続的成長に向けて新たな収益モデルを構築するため、各事業セグメントならびにTSCS、再生医療関連事業、医療周辺事業、海外事業に積極的に投資をしてまいります。

 

 


 


 

グループ価値向上に向けて基盤事業の収益力向上を図ってまいります。

 

 


 


 

物流費や人件費等の上昇、毎年薬価改定の環境の中、コストコントロールの徹底を進めてまいります。

 

 


 


サステナビリティ基本方針については、グループ理念に加え、持続可能な社会と企業価値向上を目指す姿勢をより詳しく表現し、サステナビリティ重要課題も新たに特定いたしました。

 

 

② セグメント別の重点施策

(A) 医療用医薬品等卸売事業

 


 

 

(B) セルフメディケーション卸売事業

 


 

(C) 医薬品等製造事業

 


 

(D) 調剤薬局等事業

 


 

 

(3) 目標とする経営指標

25-27中期経営計画の最終年度である2028年3月期の経営目標を次のとおり設定しております。

目標とする経営指標

2028年3月期

売上高(連結)

3兆3,000億円

営業利益(連結)

435億円

ROE(3年平均)

7%水準

投資計画(累計)

1,200億円

株主還元

DOE(注) 2.5%以上かつ累進配当

 

 

(注)DOE:連結純資産配当率

 

〈投資計画(累計)〉

2026年3月期から2028年3月期までの3か年累計で1,200億円規模の投資を予定しております。

 


 

 

(4) 経営環境

当社グループを取り巻く経営環境は、今後大きく変化することが予想されております。

 


 


 

 

 

(5) 優先的に対処すべき事業上の課題

① 企業価値の向上に向けた取り組み

アルフレッサグループでは、グループ理念に基づいて、健康寿命の延伸、地域医療への貢献、ヘルスケア・イノベーションの社会価値を創造するため、2032年度を目標年度とする「アルフレッサグループ中長期ビジョン」を策定しております。

中長期ビジョン達成に向けた第2ステージとして、2026年3月期から2028年3月期までの25-27中期経営計画を位置付け、①グループの経営資源を有機的に一体活用する「トータルサプライチェーンサービス(TSCS)進化拡大のためのグループ総合力発揮」、②新しい収益モデルの構築に必要な「成長事業・新規事業への戦略的投資」、③競争優位性を更に高めるための「基盤事業のさらなる競争力強化」、④足元の経営環境の変化に対応した「コストコントロールの徹底」、⑤中長期的な企業価値向上につながる「サステナビリティ経営の推進」の5つの方針の下、下記のグループ経営目標に取り組んでおります

 


 

(A) 事業戦略 ~トータルサプライチェーンサービスの取り組み~

医薬品開発・製造の世界では、医薬品のスペシャリティ化、新興バイオベンチャーの台頭等が急速に進行しており、医薬品メーカーの戦略的なパートナーとして、医薬品の導入・開発、製造から物流・販売、市販後調査まで、シームレスなサプライチェーンを提供できる企業が求められております。

当社グループは、25-27中期経営計画の主要方針として、グループ全体で保有する様々な経営リソースを一体活用して「トータルサプライチェーンサービス(TSCS)」を提供し、限定流通品の獲得、受託製造事業の拡大、および安定的なサプライチェーン運営を目指し、製造から流通まで一気通貫できるTSCSモデルを確立してまいります。

(B) 財務・資本戦略

「25-27中期経営計画」の財務資本戦略として、資本効率(ROE)の向上と財務健全性を意識しつつ、持続的企業価値向上のための積極的成長投資と安定した株主還元に取り組んでまいります。3年間の主要な指標として、累計営業利益額1,190億円、平均ROE7%水準、投資1,200億円規模、政策保有株式の連結純資産比率10%未満(28年3月期)、DOE2.5%以上かつ累進配当を掲げております。

(C) 非財務(ESG)戦略

グループ理念に基づいて「サステナビリティ基本方針」を策定しております。社会環境課題の解決に取り組み、持続可能な社会と企業価値の向上を目指しております。

25-27中期経営計画の策定にあたり、サステナビリティ重要課題を見直し、地球環境保全、医薬品・サービス等の安定供給、地域医療への貢献、ヘルスケア産業発展への貢献、人財の活躍推進、コンプライアンス、リスクマネジメント、コーポレートガバナンスの8項目を選定いたしました。今後、この重要課題への取り組みを推進してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティに対する考え方

アルフレッサグループは、グループ理念の“私たちの思い”である「すべての人に、いきいきとした生活を創造しお届けします」と、“私たちのめざす姿”である「健康に関するあらゆる分野の商品・サービスを提供できるヘルスケアコンソーシアム®をめざします」に基づき、「自社が社会・環境に与える影響」と「社会・環境課題が財務に与える影響」の両面から評価を行い、直面する課題を多角的に捉え、8つの重要課題(マテリアリティ)を特定しております。

マテリアリティに対応する施策を戦略的に実施することで、グループ理念である「すべての人に、いきいきとした生活を創造しお届けします」の実践を通じて、医療・ヘルスケア領域における社会・環境課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献し、持続的な企業価値の向上を目指しております。

 

 


 

<特定プロセス>


 


課題の抽出

 

 

① 以下から事業活動とそのインパクトをバリューチェーン分析し、31項目の課題を抽出いたしました。

(A) アルフレッサグループの事業活動のバリューチェーン状況/リスク・機会/長期的なビジョン・戦略

(B) 国際的なガイドライン、経済・社会・環境の外部環境、および社会的要請

※ 各事業セグメントを代表するグループ会社5社とともに、各事業におけるリスクや機会を洗い出し、取り組むべき優先課題を抽出いたしました。

 

 


2つの観点での重要性評価

 

 

① 抽出した課題を「自社が社会・環境に与える影響度」と「社会・環境課題が財務に与える影響度」の2つの観点から重要性を評価、8つの重要課題(マテリアリティ)として特定いたしました。

② アルフレッサグループの重要課題の網羅、およびステークホルダー期待値の反映を精査し、最終化いたしました。


 

 


妥当性の検証・承認

 

 

① 社内および主要セグメント代表企業等による最終妥当性の検証を行い、外部有識者からの助言を受けて、必要な箇所を見直し、再度検証いたしました。

② 取締役会による承認を行っております。

 

 

当社グループの持続的成長を実現するにあたっての長期目標として、「健康に関するあらゆる分野の商品・サービスを提供できるヘルスケアコンソーシアム®」の実現を目指しております。その実現にあたり最も重要な資産は「人財」であり、「人財」こそが当社グループ成長の原動力と考えております。また、人々の健康に携わる事業活動を展開するアルフレッサグループにとって、環境保全は重要な課題であると認識しております。これらのことから「地球環境保全」および「人財の活躍推進」について、「戦略」、「指標・目標」を記載しております。

 

(2) ガバナンス

① 取締役会

社長が議長を務め、当社の取締役11名(うち社外取締役4名、男性9名・女性2名)で構成されており、監査役も出席しております。原則毎月1回の定時開催に加え、必要に応じて臨時開催しております。取締役会では、法令で定められた事項や経営に関する重要事項を決定するとともに、取締役の職務執行の状況を監督しております。

 

② コーポレートガバナンス委員会

社外取締役、社外監査役、常勤監査役、代表取締役および取締役会の決議によって選定される取締役で構成し、委員長は独立役員の中から互選により選出しております。

すべてのステークホルダーの立場を踏まえ、経営の透明性・公正性を高め、コーポレートガバナンスの継続的な充実を図ることを目的とし、コーポレートガバナンスや企業経営全般に関するビジョン・戦略および中期経営計画の進捗等について、長期的かつ多様な視点に基づく意見交換を行い、取締役会に対して助言・提言を行うこととしております。

 

③ CSR推進委員会

当社は、グループ全体のCSR活動を推進するCSR推進委員会を設置しております。

本委員会は、代表取締役の諮問機関として、取締役会で定めたアルフレッサグループ サステナビリティ基本方針等に則り、グループ全体のCSR活動を推進するため、グループ全体のCSR活動に関する方針等の検討およびグループ各社のCSR活動の報告・評価などを行い、その概要を代表取締役および取締役会に定期的(年2回)に報告しております。

 

④ コンプライアンス・リスクマネジメント会議

コンプライアンス・リスクマネジメント推進計画を策定し、グループ全社のコンプライアンス・リスクマネジメントに関する重要な方針等の検討ならびに当社およびグループ各社のコンプライアンス・リスクマネジメント活動を報告・評価する機会を設けており、代表取締役および取締役会に報告する体制を整備しております。全体的な会議のほか、専門性の高い特定事業の固有リスクへより適切かつ組織的に対応するために、事業セグメント等、業種・業態を限定した分科会を設置しております。

 

 

(3) 地球環境保全

アルフレッサグループは、健康関連領域で事業を展開する企業グループとして、人々の健康や暮らしに影響を与える地球環境問題を、経営上の重要課題の一つとして認識しています。2021年4月に制定したアルフレッサグループ環境方針に沿って、「カーボンニュートラルに向けた取り組み」、「資源循環の取り組み」、「環境汚染防止、生物との共生」等を推進しております。今後も、事業活動における環境負荷の低減に積極的に努め、環境課題解決へ貢献していくことにより、サステナブル社会構築へ貢献してまいります。すべての人々が健康に暮らせる社会の実現に向け、環境関連法令等の遵守はもとより、全国各地で地域に密着した事業活動を行い、地域社会と共生を図り、共に発展することを目指しております。

 

<TCFDに基づく情報開示>

アルフレッサグループにとって、気候変動はサステナビリティ経営に影響を及ぼす重要課題の一つであり、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言にある枠組みで取り組みを推進しております。

① ガバナンス

当社グループは気候変動に関連する戦略の立案・推進・モニタリングの実施および情報開示の充実のため、2022年5月、CSR推進委員会の下部組織としてTCFD分科会を設置いたしました。TCFD分科会は、グループのリスクマネジメントを統轄するコンプライアンス・リスクマネジメント会議と連携し、気候関連のリスクと機会の特定・重要性評価・対策の推進・モニタリングを実施いたします。その内容や進捗は、定期的(年2回)に取締役会に報告しております。

 


 

 

② 戦略

事業セグメント別にヒアリングを実施し、1.5℃シナリオと4℃シナリオを踏まえ、事業におけるリスク・機会を抽出いたしました。それらの財務的影響の大きさを5段階で定性的に評価し、重要度の高い項目について対応策を検討いたしました。気候変動への対応は、中長期の経営課題の一つとして検討し、事業戦略に反映してまいります。

※ 産業革命前と比較し、2050年に平均気温が1.5℃上昇するシナリオと4℃上昇するシナリオ

 


 


 

 

③ リスクマネジメント

2021年度、当社グループにおいて、気候関連のリスクを評価・特定し、マネジメントするプロセスの設定を行い、このプロセスをアルフレッサグループとしての総合的なリスクマネジメントにどのように統合するべきか、検討いたしました。今後は情報収集、リスク・機会の評価・特定、リスク管理の取り組み推進・進捗管理および取締役会への報告のプロセスを繰り返して、気候変動に関する事業活動への影響に対応いたします。

 


 

 

④ 指標・目標

当社グループでは、気候変動に関連する重要指標の一つであるCO排出量について、国内連結子会社を対象として、2050年度にCO排出量ネットゼロを目標として設定いたしました。2020年度のScope1+2におけるCO排出量を基準として、短期目標として2024年度末までに10%、中期目標として2030年度末までに30%の削減目標を設定し、再生可能エネルギーの使用や環境配慮型自動車への切替といった対応策に取り組んでまいります。なお、2023年度のScope1+2におけるCO排出量は、新規連結会社エーエル プラス株式会社分3,063t-COが含まれているため、71,843t-COとなっております。


 

 

(4) 人財の活躍推進

① 経営戦略と人財戦略の連動

当社グループは、健康に関するあらゆる分野の商品・サービスを提供するヘルスケアコンソーシアム®の実現を目指しております。22-24中期経営計画のグループ経営方針における事業に関する方針として、「事業モデルの強化」と「新たな価値の創造」、「グループ一体となった取り組み」による地域の健康・医療への貢献を実現していくことを掲げ、医療用医療品等卸売事業、セルフメディケーション卸売事業、医薬品等製造事業、医療関連事業の経営基盤強化およびグループ一体での取り組みを推進してまいりました。

これらの取り組みを進めていくためには、「高い専門性」を備えたプロフェッショナル人財の登用・配置が要となります。当社グループは、グループ経営方針の実現を目指した「グループ人財戦略」として目指す人財像に基づく各種人財関連施策を策定すると同時にグループ人事部門会議の定期開催を通じて人財戦略の実現に向けたグループ一体となった取り組みを推進してまいりました。

少子高齢化による人口減少は、働き手不足を招き、人財の活躍推進が重要と認識しております。特に「D&I」、「エンゲージメント施策」について推進することで共に働く人たちが「働きがい」を高め、離職率の低下、生産性の向上に寄与する事を目指しています。多様化する商品・サービスの流通を高品質で実現させていく取り組みは、当社グループだからこそ解決出来る課題と捉え、トータルサプライチェーンマネジメントの向上で今後の健康・医療を先進的に支え、再生医療、スペシャリティ医薬品など高度な流通を実現することを目指しております。

 

② 人財育成方針

当社グループはアルフレッサグループの求める人財要件として、未知なる領域への「挑戦心」、環境変化に対する「適応力」、信頼を得るための「高い倫理観」、生命を支える仕事への「強い使命感」、持続的成長を叶える「高い専門性」を定め、グループに向かって協働する強い「個」の集団を目指しております。

当社グループは、この求める人財要件の醸成を土台としたグループ研修を開催し、「専門性・スキルの育成(22-24中期経営計画を実現するための「高い専門性」を備えた人財の育成)」、「役員・管理職のマネジメント力の育成(グループ経営戦略を実践していく上で取締役・執行役員、将来経営を担う次世代リーダーの意識強化)」、「持続的成長に向けたグループ全体の取り組み意識向上」を強化しております。

同時に、グループの将来を担う人財を獲得していくために、グループ各社個別での採用活動とともにグループ合同採用活動を開催し、グループ一体での人財獲得活動を推進しております。

さらに、高い専門性を実現するためのキャリアパスの設定やグループ会社を横断した人財配置等を推進することにより、「動的人財ポートフォリオ」と「知・経験のD&I」を目指してまいります。


 

(A) 「動的人財ポートフォリオ」の取り組み

DX人財育成として育成レベルごとにコースを設け、基礎コースにあたる「DXリテラシー向上研修」を2023年度から2025年度までの間に、グループ全体の約半数にあたる6,000名を受講目標に設定しております。2024年度までに、自律的に学ぶ姿勢を重視した公募により延べ約3,300名が受講いたしました。社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要な意識や知識をグループ全体で向上させる取り組みをしております。

(B) 「知・経験のD&I」の取り組み

ダイバーシティを中心とした人財育成を22-24中期経営計画方針に掲げており、D&Iをイノベーション創出と人財の総活躍と捉え、グループ全体の女性管理職比率向上を目指し、女性リーダー候補者を対象にした「女性リーダー候補育成研修」を実施しております。2030年度末までにグループ全体で約100名超の女性管理職を創出し、女性管理職比率10.0%以上を目標としております。

2024年度にはグループ内で初めて「ダイバーシティフォーラム」を開催いたしました。テーマは「仕事と育児の両立」とし、育児休業を取得した男女社員、これから育児休業を取得したい男女社員の経験や職場での事例を取り上げ、パネルディスカッションやグループディスカッションを行うとともにありたい職場について検討し発表を行いました。本フォーラムの内容を編集したうえでグループ全社員向けに「ダイバーシティ動画研修」として実施し、職場風土の醸成に取り組んでおります。

 

<アルフレッサグループの求める人財要件>


 

 

③ 職場環境整備方針

当社グループでは、労働力人口減少等の環境変化を見据え、「アルフレッサグループ ダイバーシティ方針」のもと、働く全員の総力を結集し、各自の個性や才能を存分に発揮できる職場環境づくりの実現に向けた各種取り組みをグループ挙げて進めております。

また、グループ全体でのエンゲージメント向上を重要な経営課題として設定し、当社の取締役会によるモニタリングのもと、グループを挙げた従業員意識調査の実施および調査結果に基づく各種施策を進めてまいります。

さらに、グループ共通のタレントマネジメントシステムを導入し、持続的成長を支える人財の供給、適材適所の人財配置、人事業務の効率化を進めてまいります。


 

(A) 従業員エンゲージメント

2021年度より毎年グループ全社員(約15,000名)を対象に「eNPS」を指標とした従業員意識調査を実施しております。本調査を共に働く人たちとの対話の機会と捉え、忌憚のない意見を自律的に発信する場としております。多くの方に調査へ参加していただく目標として回答率を90%に設定(2024年度回答率:86%)し、回答データの分析結果を基にグループ各社での改善施策を実行し、共に働く人たちがより良い就業体験を得られる魅力的なグループとなることを目指しております。

※ eNPS(employee Net Promotor Score):従業員ロイヤリティ指標

(B) 働きやすい職場環境と健康増進

ワーク・ライフ・バランスの推進によりメリハリのある働き方を促し、労働生産性を高めて共に働く人々がいきいきと働き続けることを目指し、残業時間削減や有給休暇取得促進等に取り組んでおります。また、育児・介護休業制度を利用しやすい環境づくりに取り組むとともに、グループ各社において、ジョブリターン制度の導入や育児のための短時間勤務適用期間の延長、育児手当支給等、制度の充実を図っております。2025年3月においては、「健康経営優良法人2025」の認定を、大規模法人部門で10社、中小規模法人部門で5社の合計15社が取得しております。

 

 

④ 指標・目標


 

管理職に占める女性労働者の割合の目標については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異 ① 当社および国内連結会社 (A) 管理職に占める女性労働者の割合」に記載のとおりであります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 医療制度改革について

当社グループが主に事業を展開する医療用医薬品業界は、健康保険制度および医療行政の影響を強く受けます。そのため、制度の大幅な変更が行われた場合は経営成績等に重大な影響を与える可能性があります。

現在、高齢化の進展、生活習慣病の拡大により社会保障費は増加傾向にあります。しかし、医療保険財源の支払能力は低下しているため、診療報酬の包括払いの導入、自己負担の見直し、後発医薬品の普及促進策や薬価基準制度の見直しなどの医療費抑制を目的とした様々な医療制度改革が実施されております。当社グループは、2018年4月からスタートしました「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の遵守に重点的に取り組んでおります。また、仕入から売上債権回収までの一連の営業活動について適切な対応を進めるとともに、医療制度に影響を受けない商材やサービスの取り扱い拡大に取り組んでおります。

 

(2) 薬価の改定について

当社グループの主要取扱商品である医療用医薬品の価格は、厚生労働大臣の告示によって公定されています。この公定価格が「薬価」(使用薬剤の公定価格)であります。実質的に販売価格の上限として機能している薬価については、市場における実勢価格や需要動向に応じて、定期的に引き下げ改定が行われており、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 法的規制および法令違反等について

当社グループは、医療用医薬品の卸・製造販売を主な事業としております。したがって、事業活動を行うにあたり、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」および関連法規等の規制により、免許・許可の登録および指定や、開発、製造、輸入に関し様々な承認許可が必要となります。監督官庁の許認可の状況により当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが遵守すべき法令(独占禁止法、下請法、不正競争防止法、金融商品取引法等)に十分留意した企業活動を行っておりますが、万一これらの違反を起こした場合、企業活動の制限や法令上の規制に対応するためのコストの増加、社会的信用の毀損等が発生する可能性があり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、グループ理念のもと、「コンプライアンスガイドライン」を制定し、グループコンプライアンス・リスクマネジメント会議や研修等を通じて、法令等の遵守の徹底を図っております。

 

(4) 医療機関・製薬企業との取引慣行について

当社グループが主に事業展開する医療用医薬品卸売業界においては、医薬品が生命関連商品であり納入停滞が許されないという性質上、薬価改定後の一定期間、価格未決定のまま医療機関に納品し、その後卸売業者と医療機関との間で価格交渉を行うという特有の慣行が旧来より続いております。交渉が難航した場合、当社グループでは合理的な見積りにより決定予想価格を算出して売上計上しております。価格交渉の長期化や当初予想と異なる価格での決定となった場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の遵守に重点的に取り組み、得意先である医療機関との価格交渉の早期妥結をはじめとした流通改革に継続して取り組んでおります。

 

 

(5) 製造事業に係るリスクについて

当社グループの医薬品等製造事業においては、医薬品原薬の開発、製造および販売ならびに医薬品等の開発、製造および販売を行っております。製品開発については全ての品目が発売できるとは限らず、途中で開発を断念しなければならない場合や他社からの導入等も行えない場合があります。また、製品および原材料の一部には特定の取引先にその供給、販売を依存している品目があります。何らかの理由により調達・製造・販売活動に遅延または停止するような事態が発生する可能性があります。

さらに、製品の開発から製造の段階において安全性、信頼性には万全を期しておりますが、予期しない副作用や異物混入などによる製品回収や販売中止等が発生し、訴訟を提起されるリスクがあります。このような場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、医薬品等製造事業において「安心・安全・誠実なモノづくり」を重点施策として掲げ、共通の品質管理システムを国内の連結子会社2社に導入し、製品等の安全性および信頼性の向上に連携して取り組んでおります。

 

(6) 医療関連事業(調剤薬局事業)に係るリスクについて

当社グループの医療関連事業における調剤業務は薬剤師(人)に負うところが大きく、調剤過誤が発生する可能性があります。医療用医薬品の場合、用法・用量に厳格な制限があり、他の薬剤との相互作用や中毒症状の発症など、医療トラブルが発生する可能性があります。発生した場合、損害賠償に加え、既存顧客の信用および社会的信用を失うこととなり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、薬剤師法第19条において薬剤師以外の調剤を禁じていることや、医薬品医療機器等法および厚生労働省令等によって、薬局への薬剤師の配置および配置人数を厳しく規制しております。したがって、営業時間を通じて薬剤師の必要人員数が確保されない場合には、当社グループの薬局の維持、新規開設に支障をきたし、経営成績等に影響を与える可能性があります。

当社グループは、処方箋の受入枚数等を適宜把握し、薬剤師・事務員の適正配置や必要に応じた増員再配置に取り組んでおります。また、調剤過誤につきましては、人員の適正配置、調剤業務のマニュアルの整備や調剤監査システムの導入・活用によりその防止に取り組んでおります。

 

(7) システムトラブルおよびサイバーリスクについて

当社グループの事業活動においては、コンピュータネットワークシステムに大きく依拠しており、災害や事故等によりシステムが機能停止した場合、リカバリーシステムによる復旧までに時間を要し、販売物流を中心とした営業活動の一部に支障をきたす可能性があります。また、近年のデジタル技術の著しい発展の一方で、サイバー攻撃手法の高度化・巧妙化も進んでおり、サイバー攻撃等外部からの不正アクセス、コンピュータウイルス等により、システムダウン、誤作動および不正利用を含む障害ならびに社外への情報漏洩等が発生する可能性があります。これらの要因により当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、災害等が発生した場合に備え、複数拠点にデータセンターを設置しております。また、システムの運用・保守等を行う連結子会社が、災害等のほか、様々な障害や事故等の防止および発生に備え、コンピュータネットワークシステムを監視しております。さらに、サイバーセキュリティにも常に留意し、適宜必要なシステムの導入を進めてまいります。

 

(8) 海外との取引について

当社グループは、中華人民共和国に医薬品等製造事業の生産拠点の一部や事業拠点を設けております。また、ベトナム社会主義共和国にも事業拠点を置いております。こうした海外における事業活動や日本と海外との間の製品・商品の輸出入取引において、政治的摩擦や為替の急激な変動等が当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(9) 情報流出について

当社グループは、重要な機密情報、顧客情報および各種の個人情報等を保有しておりますが、不測の事態によりこれらの情報が漏洩した場合、社会的信用の失墜や損害賠償や取引停止処分、流出の影響を受けた顧客その他関係者への補償等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、情報セキュリティ対策推進のため、法令等に基づいた社内規程の整備・運用の徹底を実施し、グループ全体で「情報セキュリティ体制」を構築することにより、グループ統一基準に基づいた教育・運用チェック等を行っております。保有する情報の外部への流出等を防止するため情報管理等の研修会を適宜開催し、情報漏洩等を防ぐための対策を講じております。

 

(10) 自然災害、パンデミック等について

当社グループは医薬品等卸売事業において、物流機能が大きな役割を果たしております。震災等の自然災害により物流機能が毀損した場合、販売物流活動に支障をきたす可能性があります。また、自然災害やパンデミック等の発生により事業活動を縮小せざるを得ない事態となった場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは,事業継続計画(以下「BCP」という。)および災害時の各種マニュアルを策定し、大規模災害時において、医薬品等を迅速かつ安定的に供給するため、備蓄が必要とされる医薬品等のリスト化や配送拠点が被災した場合の近隣拠点によるバックアップ体制等を整備し、重要な社会インフラである医薬品等の流通機能が停止しないように最大限の対策を構築しております。

また、当社およびグループ会社での新型コロナウイルス感染拡大防止のための対策の検討等を実施し、必要に応じて当社およびグループ会社間で連携し対応するための体制を整えております。

 

(11) 事業投資に係るリスクについて

当社グループは、医薬品の流通を担う事業の運営上、物流センターや営業拠点等への設備投資(インフラ投資)が不可欠であります。これらのインフラ投資は多額かつその回収に長期間を要する傾向にあることから減損リスクを有しております。また、事業開発や事業拡大を視野に、医療関連領域のベンチャー企業への出資やM&A投資を実施することがありますが、これらも同様に減損リスクを有しており、これらの投資の成否によっては、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、一定規模以上の投資案件について事業投資委員会に諮り検証のうえ決定機関に答申することにより、減損リスクを低減する体制を構築しております。

 

(12) 気候変動リスクについて

当社グループにとって、気候変動はサステナビリティ経営に影響を及ぼす重要課題の一つと認識しており、当社グループ全体の気候変動に関する影響の評価等のためシナリオ分析を実施しております。事業におけるリスク・機会のうち、経営成績等に影響を及ぼす可能性の観点から重要度の高い項目については以下のとおりであります。

・移行リスク(1.5℃シナリオ) … 2050年カーボンニュートラルに向けて、政策・規制導入や市場変化が急速に進行することで、地球の平均気温上昇が産業革命前の水準に比べ1.5℃に抑えられる想定。 → 脱炭素化に向け、移行による影響が最大

・物理的リスク(4℃シナリオ) … CO排出削減に向けた政策・規制や社会の取り組みが進まず、地球の平均気温上昇が産業革命前の水準に比べ4℃となる想定。災害などの気候変動による影響が甚大化する。 → 脱炭素化に向けた移行は想定しないが、気候変動の影響が最大

当社グループでは、CSR推進委員会の下部組織としてTCFD分科会を設置し、リスクマネジメントを統轄するコンプライアンス・リスクマネジメント会議と連携して気候変動リスクと機会の特定・重要性評価・対策の推進・モニタリングを行い、取締役会へ報告する体制としております。これらのリスクマネジメントを通じてリスクの低減を図るとともに、積極的な環境負荷低減および環境課題解決に取り組んでおります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要については次のとおりであります。なお、経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容については、各項目に含めて記載しております。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)におけるわが国経済は、一部に足踏みが残るものの緩やかに回復している一方で、物価上昇の継続や通商政策など米国の政策動向による影響などが景気を下押しするリスクとなっております。

当社グループでは、当期を最終年度とする3か年の中期経営計画「22-24 中期経営計画 未来への躍進 ~進化するヘルスケアコンソーシアム®~(以下「22-24中計」という。)」に掲げた以下のグループ経営方針に取り組んでまいりました。

・『事業モデルの強化』と『新たな価値の創造』

・『グループ一体となった取り組み』による地域の健康・医療への貢献

・『環境保全への取り組み等』を通じたサステナブル社会への貢献

・『ダイバーシティ』を中心とした人財戦略の推進

・『コンプライアンス』を最重要とする企業風土の醸成

また、2023年5月に発表した2032年度までの中長期的な事業戦略および財務・資本戦略「アルフレッサグループ中長期ビジョン」に掲げた目標達成に向け取り組んでおります。

当連結会計年度における当社の主な『新たな価値の創造』への取り組みは以下のとおりであります。

2024年4月、非連結子会社のセルリソーシズ株式会社(本社:東京都千代田区)は、国立研究開発法人国立成育医療研究センターと、商用利用可能なヒト(同種)体性幹細胞原料※1の供給に関する契約を締結いたしました。同社は、国産の細胞原材料の安定供給に向けて体制の構築を進めており、高品質な細胞原材料の製造を進めるとともに細胞治療の産業化に貢献してまいります。

2024年5月、森久保CAメディカル株式会社(本社:神奈川県厚木市)とより強固な関係を構築するため資本提携契約を締結いたしました。なお、当社および連結子会社のアルフレッサ株式会社(本社:東京都千代田区、以下「アルフレッサ」という。)は、2022年11月に動物医療市場への進出に向け同社と業務提携契約を締結し、小動物医療の領域における共同での事業展開について検討を進めてまいりました。

2024年7月、当社が2023年12月に発行したソーシャルボンドにより資金調達し、群馬県太田市に新設予定である連結子会社のアルフレッサ ファーマ株式会社(本社:大阪市中央区、以下「アルフレッサ ファーマ」という。)群馬工場について建設工事を開始いたしました。工場内に3つの製造棟を建設し、当社グループのトータルサプライチェーンサービスにおける製造機能の強化と拡大を図ります。低分子医薬品の製造能力の増強、高薬理活性製剤の受託製造および無菌製剤の検査・包装・試験受託への本格参入に向けた体制を整備いたします。

2024年9月、株式会社インテージヘルスケア(本社:東京都千代田区)との間で、同社が行うCRO・PMS※2事業に係る会社分割(新設分割)により設立された新会社であるArkMS株式会社(本社:東京都豊島区)の全株式を取得いたしました。当社グループのトータルサプライチェーンにおける臨床開発、承認申請およびPMSの機能強化に大きく貢献するものと考えております。

2024年12月、当社および連結子会社の四国アルフレッサ株式会社(本社:香川県高松市)は、高知大学発のベンチャー企業でがんの放射線治療効果を高める放射線増感剤の開発を行うKORTUC INC.(本社:アメリカ合衆国)が発行する転換社債引受契約を締結するとともに、当社は同社と業務提携契約を締結いたしました。あわせて、当社は、希少疾患をはじめ治療選択肢の限られた疾患領域に特化した創薬ベンチャー企業である株式会社ジェクスヴァル(本社:神奈川県藤沢市)との間で、資本提携契約および業務提携に関する基本合意書を締結いたしました。いずれもアルフレッサ ファーマとのシナジー効果が期待され、日本国内における販売および流通に関する事業展開を目指してまいります。

また、2024年11月、資本効率の改善と株主還元の充実を図るため自己株式取得を決議し、2025年2月をもって5,113千株・109億99百万円の取得を終了いたしました。さらに、同年3月には11,540千株の自己株式消却を実施いたしました。

 

当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高2兆9,610億51百万円(前期比3.6%増)、営業利益380億80百万円(同1.0%減)、経常利益404億85百万円(同1.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益273億89百万円(同7.3%減)となりました。

※1

※2

ヒト(同種)体性幹細胞原料

CRO(Contract Research Organization)

PMS(Post Marketing Surveillance)

再生医療等製品の原料として利用可能なヒト(同種)細胞または組織

製薬企業や研究機関が行う臨床試験に関する一連の業務を支援する専門機関

医薬品や医療機器が販売された後に行われる品質、有効性および安全性の確保を図るための調査

 

 

セグメント別の業績は、以下のとおりであります。

 

① セグメント別の業績

(A) 医療用医薬品等卸売事業

医療用医薬品等卸売事業におきましては、スペシャリティ領域ならびにメディカル品へのリソース集中とDXによる事業変革を図るべく、「22-24中計」の重点施策として掲げた「既存事業の強化」「事業変革による収益化」「グループ全体での最適化・効率化・標準化」に取り組んでまいりました。

医薬品の供給不安が社会問題化するなか、社会インフラとしての使命を果たすべく流通改善ガイドラインを遵守し安定供給に努めてまいりました。

当連結会計年度における同事業の中核会社であるアルフレッサの主な取り組みは以下のとおりであります。

2024年6月、株式会社ヘリオス(本社:東京都千代田区)との間で、同社の取扱製品に関する業務提携基本契約および同社が発行する普通社債引受契約を締結いたしました。「再生医療サプライチェーン」の機能強化、取扱製品の拡充を推進し、両社の事業拡大を目指してまいります。

2024年9月、株式会社セールスフォース・ジャパン(本社:東京都千代田区)が提供する製品を導入し、接種希望者と医療機関の利便性向上および需要量に応じたワクチン供給を実現する「ワクチン供給最適化プラットフォーム(サービス名:ワクチンぷらっと)」を構築いたしました。この普及により、医療機関における予約管理の負担軽減や、接種希望者の利便性向上および接種希望者へのワクチン接種機会の提供につなげ、予防医療に貢献してまいります。

2024年11月、便失禁・尿失禁を対象とした再生医療等製品の開発を推進するイノバセル株式会社(本社:東京都品川区)との間で資本業務提携契約を締結いたしました。同社の研究開発および製品上市後の日本国内における流通体制の構築をサポートするとともに、当社グループの「再生医療サプライチェーン」の機能強化および取扱製品の拡充を引き続き推進してまいります。

2024年12月、アルフレッサと当社の完全子会社の株式会社宮崎温仙堂商店(本社:長崎県諫早市)は、アルフレッサを存続会社とする吸収合併に基本合意いたしました。両社の経営資源を有効かつ効率的に活用し、地域に密着した営業基盤の強化を図ることで、九州の地域医療へのさらなる貢献を目指してまいります。

2024年12月、ヤマトホールディングス株式会社(本社:東京都中央区)とともに、自動車運送事業者の従業員の健康管理と重症化予防に向けて、新たに株式会社MY MEDICA(本社:横浜市中区)を設立し、2025年2月からサービスの提供を開始いたしました。同サービスのオンライン医療を活用しながら医療アクセスの向上に取り組んでまいります。

2025年1月、デジタルツインの生成、デジタルツインを活用したソリューションおよび産業用ロボティクス向けソフトウェアの開発と販売を行うアセントロボティクス株式会社(本社:東京都渋谷区)との間で資本業務提携契約を締結いたしました。デジタルツイン技術を用いた新たなアプローチにより、医療分野における業務効率化や医療の質向上などを目指し、同社との協業を進めてまいります。

2025年2月、品質マネジメントシステムに関する国際規格「ISO9001」の認証をロジスティクス本部ロジスティクス業務部および3か所の物流センターにおいて取得いたしました。引き続きグループ全体でISO認証取得の取り組みを進め、お得意様・お取引先の満足度の向上に取り組んでまいります。

当セグメントの当連結会計年度の業績は、市場の伸長、なかでも特許品・新薬創出加算品等の販売増加および売上総利益率改善への取り組みの一方で、2024年4月に実施された薬価改定によるマイナス影響や仕入価格の上昇、人件費、物流費および減価償却費等のコスト増により、売上高2兆6,400億48百万円(前期比3.9%増)、営業利益330億55百万円(同0.1%減)となりました。

なお、売上高には、セグメント間の内部売上高189億85百万円(同5.3%増)を含んでおります。

 

 

(B) セルフメディケーション卸売事業

セルフメディケーション卸売事業におきましては、連結子会社のアルフレッサ ヘルスケア株式会社(本社:東京都中央区、以下「アルフレッサ ヘルスケア」という。)が、既存領域の高収益化と成長領域への挑戦を推進し、「22-24中計」の重点施策として掲げた「高収益化への取り組み」「グループ連携強化」「事業変革による収益力強化」に取り組んでまいりました。

2025年2月、アルフレッサ ヘルスケアは九州における物流体制の最適化を図るため、熊本市南区から熊本県御船町に九州物流センターを移転・稼働いたしました。同センターは九州全域に商品供給を行う中核物流センターであり、3次元ロボットピッキングシステムの導入により業務負担の軽減、労働環境改善および業務効率化を実現し、正確・迅速かつ安全な商品供給体制を強化してまいります。

また、2025年3月、アルフレッサ ヘルスケアはヘルスケア領域に特化した販促・マーケティング支援やセルフメディケーション推進ツールを提供するウィルベース株式会社(本社:東京都中央区)との間で資本業務提携契約を締結いたしました。同社が提供する各種サービスの普及拡大を推進するとともに、同社が保有する豊富なデータを活用した市場予測、新商品の企画および販促の最適化等を行い、データドリブン経営の強化を図ってまいります。

当セグメントの当連結会計年度の業績は、市場環境の変化に伴う競争の激化による減収や物流費を含む人件費等のコスト増があったものの、インバウンド需要回復による安定した市場成長、適正価格での販売への取り組みおよび販管費抑制等により、売上高2,657億48百万円(前期比1.1%増)、営業利益29億50百万円(同10.0%増)となりました。

なお、売上高には、セグメント間の内部売上高4億73百万円(同5.0%減)を含んでおります。

 

(C) 医薬品等製造事業

医薬品等製造事業におきましては、「次代の基盤創り」を目指し、「22-24中計」の重点施策として掲げた「安心・安全・誠実なモノづくり」「トータルサプライチェーンサービスの実現に向けた取り組み」「デジタルを活用した新たな取り組み」を推進してまいりました。

2024年11月、アルフレッサ ファーマは、アドレナリン点鼻液の開発を行うARS Pharmaceuticals Operations, Inc.(本社:アメリカ合衆国)と日本国内での開発および販売におけるライセンス契約を締結し、開発を進めてきた蜂毒、食物および薬物等に起因するアナフィラキシーに対する補助治療剤であるアドレナリン(一般名)点鼻液の製造販売承認申請を行いました。アナフィラキシー補助治療剤として投与が簡便で患者様や介護者等の負担軽減が期待できるアドレナリン点鼻液を新たな選択肢として提供することで、アンメット・メディカル・ニーズに貢献してまいります。

当セグメントの当連結会計年度の業績は、原薬および受託製造ならびに医療機器の売上伸長に加えて販管費抑制に取り組んだものの、薬価改定および製造原価上昇等によるマイナス影響等により、売上高540億65百万円(前期比2.5%増)、営業利益12億94百万円(同31.6%減)となりました。

なお、売上高には、セグメント間の内部売上高163億75百万円(同8.1%増)を含んでおります。

※ 現在、国内のアドレナリンの医薬品はアドレナリン注射液自己注射キット製剤およびアドレナリン注射液がある。

 

(D) 医療関連事業

医療関連事業におきましては、調剤薬局事業を運営する連結子会社のアポクリート株式会社(本社:東京都豊島区)が、予防からターミナルケアまでライフジャーニーにおけるすべてのステージに対応する「かかりつけ薬局」を目指し、「22-24中計」の重点施策として掲げた「在宅医療への取り組みによる事業の成長」「DXによる事業変革」「未病予防への取り組み」を推進してまいりました。

当セグメントの当連結会計年度の業績は、市場伸長の影響により増収であった一方で、販管費抑制に取り組んだものの薬価改定によるマイナス影響、仕入原価上昇および租税公課(控除対象外消費税)増加等の影響により、売上高370億23百万円(前期比1.0%増)、営業利益5億96百万円(同16.3%減)となりました。

 

 

2025年3月期を最終年度とする中期経営計画「22-24 中期経営計画 未来への躍進 ~進化するヘルスケアコンソーシアム®~」で発表した経営指標目標の達成状況については以下のとおりであります。

2025年3月期

売上高
(連結)

営業利益率
(連結)

投資計画
 (連結<3年間累計>)

株主還元

22-24中期経営計画目標

2兆7,000億円

1.5%以上

1,200億円

DOE

2.4%以上

当期実績

2兆9,610億円

1.3%

960億円

DOE

2.4%

 

 

② 生産、受注及び販売の実績

(A) 生産実績及び受注実績

当社グループの生産実績および受注実績は、金額的重要性が乏しいため、記載を省略しております。

 

(B) 仕入実績

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医療用医薬品等卸売事業

2,490,740

104.3

セルフメディケーション卸売事業

238,036

100.3

医薬品等製造事業

20,664

130.9

医療関連事業

23,382

102.6

合計

2,772,824

104.1

 

 

(注)1.金額は実際の仕入額によっております。

2.セグメント間の内部仕入高は354億6百万円(前期比106.6%)であり、上記金額に含めております。

 

(C) 販売実績

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医療用医薬品等卸売事業

2,640,048

103.9

セルフメディケーション卸売事業

265,748

101.1

医薬品等製造事業

54,065

102.5

医療関連事業

37,023

101.0

合計

2,996,885

103.6

 

 

(注)1.セグメント間の内部売上高は358億34百万円(前期比106.4%)であり、上記金額に含めております。

2.主要な相手先別の販売実績および当該総販売実績に対する割合については、総販売実績の10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末における当社グループの総資産は、前期末比77億40百万円減少し、1兆4,398億85百万円となりました。

流動資産は、267億36百万円減少し、1兆944億96百万円となりました。これは主として、「商品及び製品」が101億27百万円増加した一方で、「現金及び預金」が366億71百万円減少および「未収入金」が28億6百万円減少したことによるものであります。

固定資産は、189億95百万円増加し、3,453億88百万円となりました。これは主として、物流センター等の設備投資などに伴い有形固定資産が108億34百万円増加、「投資有価証券」が96億87百万円増加および「繰延税金資産」が33億27百万円増加した一方で、製造販売権等の減損損失計上に伴い無形固定資産が51億8百万円減少したことによるものであります。

 

セグメント別の総資産は、以下のとおりであります。

 

医療用医薬品等卸売事業のセグメント資産は、前期末比20億円減少し、1兆2,380億91百万円となりました。これは主として、「現金及び預金」等の流動資産が減少した一方で、ベンチャー企業への出資等に伴い「投資有価証券」が増加したことによるものであります。

セルフメディケーション卸売事業のセグメント資産は、9億37百万円減少し、930億29百万円となりました。これは主として、棚卸資産等の流動資産が減少したことによるものであります。

医薬品等製造事業のセグメント資産は、56億38百万円増加し、730億7百万円となりました。これは主として、製造販売権等の減損損失計上に伴い無形固定資産が減少した一方で、医薬品製造棟等の設備投資に伴い有形固定資産が増加したことによるものであります。

医療関連事業のセグメント資産は、3億3百万円減少し、165億円となりました。これは主として、設備投資等に伴い固定資産が増加した一方で、「現金及び預金」等の流動資産が減少したことによるものであります。

当連結会計年度末における当社グループの負債は、前期末比101億29百万円減少し、9,576億37百万円となりました。

流動負債は、120億28百万円減少し、8,949億61百万円となりました。これは主として、「支払手形及び買掛金」が204億3百万円減少した一方で、未払金等の「その他」が86億72百万円増加したことによるものであります。

固定負債は、18億98百万円増加し、626億75百万円となりました。これは主として、「繰延税金負債」が19億91百万円増加したことによるものであります。

結果として、当連結会計年度末における当社グループの純資産は、23億88百万円増加し、4,822億47百万円となりました。これは主として、「利益剰余金」が151億43百万円増加および自己株式の取得・消却により「自己株式」が150億43百万円減少した一方で、自己株式の消却により「資本剰余金」が259億70百万円減少、保有株式の売却に伴い「その他有価証券評価差額金」が11億49百万円減少および「退職給付に係る調整累計額」が10億33百万円減少したことによるものであります。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物は、前期末比375億2百万円減少し、1,748億13百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、「税金等調整前当期純利益」が393億59百万円と前期と比べ44億35百万円の減益となったことに加えて、運転資本増減の影響等により、56億39百万円の増加(前期は863億79百万円の増加)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、物流センターの建設等の設備投資に伴う支出が増加した一方で、保有株式の縮減を目的とした投資有価証券の売却による収入が増加したこと等により、249億17百万円の減少(前期は142億17百万円の減少)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、株主還元の一環としての「自己株式の取得による支出」が減少したことに加えて、前期は「社債の発行による収入」および「長期借入れによる収入」があったこと等の影響により、235億34百万円の減少(前期は196億98百万円の減少)となりました。

 

 

〈資本の財源および資金の流動性〉

アルフレッサグループは、日本の社会インフラである医薬品サプライチェーンを製造、卸売、調剤薬局等の各事業領域で支え、必要な時に、必要な医薬品を、必要な場所へ、安定的に供給することに貢献しております。

社会的責任の遂行と持続的な企業価値の向上には、財務の健全性、資本効率の向上、安定的・継続的な株主還元の最適バランスを追求し、さらなる企業価値を追求することが当社グループの財務・資本戦略の基本となっております。

当連結会計年度末における純資産のうち当社の持分は、親会社株主に帰属する当期純利益の積み上がり、配当金の支払い、自己株式の取得やその他の包括利益の増減により、4,817億88百万円(前期末比21億88百万円増加)となり、この結果、自己資本比率は33.5%となりました。

また、株式会社格付投資情報センターの発行体格付は「A+」(2024年8月格付)を2025年5月末時点で維持しております。

財務健全性のさらなる向上には財務基盤・収益基盤の強化が不可欠であるため、当社グループの資本配分計画に基づき、事業拡大投資・事業強化投資を実行してまいります。

株主還元を含むこれら資本配分の財源(資金の調達方法)は、主に営業活動により得られるキャッシュ・フローを源泉とした自己資金のほか、必要に応じて金融機関からの借入、社債の発行によっております。なお、当連結会計年度における主要な使途等については前記「(3) キャッシュ・フロー」を、翌連結会計年度以降については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

当連結会計年度末における「現金及び預金」残高は1,770億85百万円であり、連結ベースの流動比率は122.3%、総資産に対する流動資産の比率は76.0%、流動負債の比率は62.2%であることから、十分な流動性を確保しているものと認識しております。また、当社グループは、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)により、グループ内の資金需要と運用の最適化および資金の効率的な活用を図っております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。

連結財務諸表の作成にあたって用いた、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定について検討いたしましたが、当該見積り等に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【重要な契約等】

(1) 販売提携契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

対価

契約期間

アルフレッサ
ファーマ㈱

(連結子会社)

住友ファーマ㈱

日本

「マイスタン®」販売提携

一定料率のロ
イヤリティの
支払

2000年5月25日から
10年間(以降1年毎自
動更新)

田辺三菱製薬㈱

日本

「モディオダール®」共
同販売および適応症拡大
に関する共同開発

開発費の按分
負担

2006年3月27日から
一定期間

 

 

(2) 共同開発契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

対価

契約期間

アルフレッサ
ファーマ㈱

(連結子会社)

サノフィ㈱

日本

抗てんかん薬「ビガバト
リン」の共同開発

なし

2011年9月30日から
一定期間

 

 

(3) 開発権・製造販売権許諾契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

対価

契約期間

アルフレッサ
ファーマ㈱

(連結子会社)

㈱ケイファーマ

日本

ロピニロール塩酸塩を
活用したALS治療薬の
開発権・製造販売権許諾

契約一時金、
開発マイルス
トンペイメン
ト、売上に応
じたロイヤリ
ティの支払

2023年3月1日から
一定期間

 

 

(4) 業務提携契約

契約会社名

相手先の名称

契約内容

契約締結日

アルフレッサ
ホールディングス
㈱ (当社)

アルフレッサ
ヘルスケア㈱

(連結子会社)

㈱あらた

㈱日本アクセス

 

食品、日用品および一般用医薬品等の卸売事業に関連する営業、物流、事業開発等の分野において、それぞれの企業グループが保有する経営資源を有効に活用し連携する体制を構築し、総合生活提案卸連携として、以下の対象分野について業務提携

(1) 営業機能におけるクロスマーチャンダイジングを含む共同売場提案、店頭販促提案、情報分析・提供等による得意先満足度の向上

(2) 物流機能における共同物流、一括物流、共同配送等経営資源の有効活用による物流の効率化

(3) マーケティング機能における各社リテールサポート機能の共同活用による得意先の店頭活性化

(4) 生活消費関連分野での共同商品開発

(5) 中国を中心とする海外での共同事業展開の検討

(6) その他合意する分野

2010年3月26日

アルフレッサ
ホールディングス㈱ (当社)

遼寧成大股份有限公司
(中華人民共和国)

伊藤忠商事㈱

中国におけるヘルスケア事業領域において、各社事業シナジーの向上による事業拡大および本当事者の発展・創造を図ることを目的とする以下の項目についての包括的業務提携

(1) 遼寧成大傘下の薬局チェーンである遼寧成大方円医薬連鎖有限公司の競争力強化

(2) 中国における医薬品物流・卸事業展開の検討

(3) 中国政府における「新医療改革」の及ぼす影響の研究およびその対応策の検討

(4) 人事交流

 

2011年3月10日

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループにおきましては、製品の開発管理体制、評価体制を強化・整備して領域を絞り込んだ自社開発を行うとともに、他社からの導入開発および他社との共同開発に積極的に取り組んでおります。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は1,896百万円であり、医薬品等製造事業が研究開発活動を行っており、主にアルフレッサ ファーマ株式会社が、医療用医薬品分野、診断薬分野、医療機器分野において研究開発を進めております。

医療用医薬品分野では中枢神経系疾患を主要領域とする研究開発を行っており、アナフィラキシーに対する補助治療薬の開発を進めており、2024年11月に製造販売承認申請を行いました。また、指定難病である筋萎縮性側索硬化症の治療薬の開発を進めております。

診断薬分野においては、呼吸器感染症を主領域とした迅速診断キット(POCT)や大腸がん検診等に使用する便潜血機器試薬システム、さらに同システムを使用した炎症性腸疾患の診断や病態把握に使用する便中カルプロテクチン検査試薬等消化器疾患領域での開発を進めております。

医療機器分野においては、主として外科領域における製品の研究開発を進めており、2024年5月にアルフレッサ ファーマ株式会社のマイクロターゼを用いた「マイクロ波凝固による経皮的前立腺癌病巣標的化焼灼術」が先進医療に採択されました。また、2024年9月に胸骨閉鎖用「ネスプロン®ケーブルシステム」の販売を開始いたしました。