第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループでは、我々の社会的な存在価値と目指す未来に向け、「徳・体・智」という創業以来の経営理念を踏まえながら、新たな価値観としてのPurpose及びMission・Vision・Value(MVV)を定めております。また、MVVを実現するための社員の行動指針として、全20項目からなるCredoを定めております。

 当社グループは、これらの新たな価値観に基づき、「日本の農業の発展」と「国民の健康増進」への貢献を目的に事業を展開しております。青果物加工流通分野において青果物の価値を追求することで、未来に向けた「持続可能な農業」と「食を通じた健康増進」を実現する付加価値創造企業として、お客様及び株主の皆様の信頼と期待にお応えし、企業価値の一層の向上を目指してまいります。

 


 

(2) 当社グループを取り巻く経営環境

いま、わが国農業は、担い手の減少、耕作放棄地の増加、外国産農産物との競争激化といった様々な課題に直面しています。一方、国内の青果物市場では、健康志向の高まりや少子高齢化、人手不足等を背景に小売・業務用ともにカット野菜・フルーツの需要が拡大するとともに、生産農家の減少や異常気象の頻発等により、消費者ニーズを捉えた青果物の流通加工と安定調達・供給がより重要になっています。さらに、新型コロナウイルス感染症拡大は、外食店舗の時短・閉店、インバウンドの激減、大型イベントの自粛、ECビジネス・デリバリー需要の増大等の変化に伴う新たな生活様式を誕生させ、収束後もそうした変化に対応したビジネスモデルの変革が求められる状況となっております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

 2012年度の第一次中期経営計画スタート以来、当社は拠点拡大、物流会社新設、衛生管理体制強化、事業再編によるシナジー創出など、成長基盤の構築を進めてまいりました。そして、第四次中期経営計画を完遂することで、業界内の地位を確固たるものとし、競争力強化、収益体質の改善、経営基盤の安定化を実現いたしました。

 今般、新たな成長フェーズのスタートに当たり、中長期目線で時代の変化を見据え、社会における自社の存在意義を改めて明確化するため、新たにPurpose「野菜の未来を変える。野菜で未来を変える。」を設定しました。そして、Purposeを起点にした成長の先にある自社のありたい姿として、以下の長期ビジョンを策定しました。

 

〔長期ビジョン〕

1.野菜の総合加工メーカーとしてのポジションを確立

2.持続可能な農業の実現

3.個人の幸福と会社の繁栄の両立を実現

 

 当社を取り巻く経営環境は、世界経済の緩やかな回復基調はあるものの、コロナ禍後の生活様式の変化、常態化するインフレや金融不安、地政学リスクの増大など、大きな変化の渦中にあり、依然として予断を許さない状況です。

  そんな不確実性の時代において、デリカフーズグループは、青果物流通加工業界のトップランナーとして持てるリソースとノウハウをいかんなく発揮し、野菜の未来を変えてまいります。そして、お客様一人ひとりに笑顔をお届けすることから地球レベルの環境問題の解決に至るまで、野菜の力で未来を前向きに変えてまいります。

 

(4) 対処すべき課題

 今般、2024年度からの3年間を計画期間とする第五次中期経営計画「keep on trying 2027」を新たに策定いたしました。本計画は、Purposeを体現し続けた先にある長期ビジョンの実現に向けた第一歩、すなわち"つなぐ企業"から"変える企業"への転換点として位置づけられます。

 当該計画における基本方針は以下の通りです。

 

①各種ポートフォリオの変革

 今後の更なる成長に向け、3つのポートフォリオの変革に取り組みます。

a.事業ポートフォリオの変革

 各事業のセグメント・ポートフォリオを見直し、グループ補完型の事業体から、それぞれの子会社が独自の事業を展開できるよう変革を図ります。

b.顧客ポートフォリオの変革

 将来性・収益性・販売実績をもとに顧客ポートフォリオの見直しを実行。選択と集中を行い、取引口座数の適正化を図ります。

c.商品ポートフォリオの変革

 将来性・収益性・販売実績をもとに商品ポートフォリオの見直しを実行。新規商品の開発を強化し、収益性の向上を図ります。

 

②青果物サプライチェーンの構造改革

a.輸入野菜の国産化

 輸入依存度の高い原料において国産化を推進。特に中国産の原料において、栽培・加工・流通の国産化を図ります。

b.調達インフラの再構築

 今後更に深刻化する調達・物流難に対し、持続可能なインフラの再構築を図ります。長期保存技術を確立し貯蔵集出荷拠点の設置計画を進めます。

c.青果物サプライチェーンの合理化

 栽培・流通・加工における他企業とのアライアンス等を通じ、サプライチェーン全体の合理化による持続可能な農業と流通体制の構築を進めます。

 

③研究部門・開発部門への投資拡大

a.野菜を中身で評価

 野菜の健康効果研究を推し進め、野菜の価値向上・消費拡大へとつなげていきます。また、効果成分にフォーカスした商品開発との連携により食材ロスの低減に貢献します。

b.貯蔵の長期化 

 物流の合理化、野菜の廃棄低減に向け、貯蔵技術の開発を推進します。また、鮮度保持技術と併せて、新たな流通の仕組みを構築します。

c.新規商品の開発

 付加価値の高い商品開発を推進します。当社の加工施設・加工技術・ノウハウを最大限に活用し、競争力の高い商品で販路の拡大を目指します。

d.新規事業の開発

 マーケティング(市場調査)部門を強化し、青果物を基軸とした新たな市場へのあくなき挑戦を行います。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは2024年5月23日に開示した第五次中期経営計画「keep on trying 2027」にて以下の通り「サステナブル宣言」を公表し、SDGsに貢献するとともにESG活動に関しても積極的に取り組んでおります。

 

 サステナブル宣言
  

 当社グループは「青果物の流通を通じて、日本の農業の発展と人々の健康増進に貢献する」ことを経営方針に掲げ、永続的な成長を志向するとともに農と健康をつなぐ創造企業」を経営方針に掲げ、永続的な成長を志向するとともに、持続可能な社会の実現に貢献いたします。

 

  その基盤となるSDGs(持続可能な開発目標)への貢献およびESG(環境・社会・企業統治)活動に関

 しても積極的に取り組んでまいります。

 

 今後、サステナビリティの精神とともに、我々の事業活動を通じて「未来の子供たちが安全でおいしい野菜をいつでも食べられる」持続可能なインフラを構築し、世界的目標の達成に貢献してまいります。

 

 

 

(1)ガバナンス

当社では、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、サステナビリティ関連課題に対する具体的な取り組みについて、業務執行の意思決定機関である経営会議にて協議しております。これらの中で特に重要な事項については、月次の取締役会に報告され、取締役会において当該報告内容に関する管理・監督を行っております。今後は、取締役会における議題の選定にあたり、目先の短期的な課題だけでなく、サステナビリティに係る中長期的な課題について検討する議題を一定の頻度で上程してまいります。

デリカフーズホールディングス代表取締役社長は、「サステナブル宣言」を掲げ、トップマネジメントとして気候変動を含む全てのサステナブル関連活動を統括しております。経営会議、取締役会の長を担うと同時に、直轄の諮問委員会である危機管理委員会の委員長も担うことで、サステナビリティに関する経営判断の最終責任を負っています。

 

(2)リスク管理

当社グループでは、経営環境の変化やリスクの多様化に適切かつ柔軟に対応するとともに、潜在的なリスクが顕在化することによる事業への影響を速やかに最小限に抑える観点から、リスクマネジメント活動を進めています。

具体的には、高度化する企業リスクに対し、持株会社であるデリカフーズホールディングス株式会社による経営監督機能の下、6つのチームにより構成された危機管理委員会を中軸に、コンプライアンス委員会、ハラスメント防止対策委員会等も含めた万全の体制で対応、ガバナンスの強化を図っております。サステナビリティに係るリスク事象についても、グループ子会社や各事業所が参加する各種の全国会議(本会議、営業会議、仕入会議、品質管理会議、管理部門会議、現場会議)を通じて検知された問題事象・課題につき、関連する委員会において情報共有の上、解決に向けた議論を推し進めております。

 

 

(3)戦略

当社グループは、中長期的に会社の業績に大きな影響を与える6つの重要課題(マテリアリティ)を抽出しています。マテリアリティの抽出に当たっては、当社事業が社会に与える影響についてバリューチェーン全体で評価したうえで、SDGsの17の目標の中で当社ビジネスモデルとの関連性の高いものを選定し、経営理念・事業戦略に紐付けて整理いたしました。抽出した重要課題については、確実で効率的な対応を心がけつつ、第五次中期経営計画「keep on trying 2027」と、さらにその先の成長シナリオをイメージしながら事業の推進に役立てています。

6つのマテリアリティについての、主なリスクおよび機会・取り組みは以下の通りです。

マテリアリティ

リスク

機会・取り組み

天の恵みである野菜を

100%使い切る

●青果物流通量の減少

●残渣・廃棄物の環境への負荷

●残渣・廃棄物処理不十分の場合の

 レピュテーションリスク

●当社業績面にも影響

 (仕入利益率悪化、損失の計上)

 

○野菜残渣リサイクルの推進

○規格外野菜や端材を有効活用した自社 

製品の拡充

○鮮度保持技術の開発

地球環境問題への

取り組み

●天候不順、異常気象及びそれらに起因

 する自然災害が青果物のサプライチェ

 ーン(生産・収穫~配送)を阻害

○物流部門における配送ルート効率化に

よるCO2 排出量の削減

○デマンドコントロールによる使用電力

量削減

 

心身両面における健全性を実現する人的資本政策

●人財不足(質・量)の結果として、

 ・24時間365日稼働の青果物インフラ

 の維持が困難化

 ・従業員のモチベーション低下、

  スキル・専門性の不足が持たらす

  企業活力および競争力の低下

 

○従業員のエンゲージメント向上

○人財育成強化

○多様な人財の活躍とそこから生まれる

イノベーション

健康で住みやすい

社会の実現

●野菜の価値が正しく伝わらないことに

 よる生産者サイドの業績悪化

●地域社会における風評悪化等により、

 当社業績面に甚大な影響

 

○野菜の分析・中身評価による青果物の

価値向上

○総合的品質指標(デリカスコア)に基

づく双方向情報共有

○各種CSR活動の継続的な推進

堅確な食品安全マネジメントシステムの構築

●商品に関連する重大事故発生による

 消費者の健康被害発生

●風評被害、事故への損害賠償等に

 より、当社業績面に甚大な影響

 

〇食品安全文化の醸成

〇FSSC22000取得拠点数の増加

「損得の前に善悪」で

考える公正かつ堅確な

企業運営の実践

●不祥事、ハラスメント、不適切なルー

トからの原料調達等の発覚によりレピュテーションが悪化し、当社業績面に甚大な影響

〇予防に重点を置いた危機管理委員会運営

〇ヘルプライン、投稿箱など、従業員の

声を汲み上げる仕組みの活用推進

〇サプライチェーンガバナンスの徹底

 

 

 

(4)指標と目標

サステナビリティに対する「指標及び目標」については、第五次中期経営計画「keep on trying 2027」において、以下の通り設定しております。


 

(5)人的資本に関する戦略・方針

〔キャリア推進体制の拡充〕

 当社グループは、青果物流通のリーディングカンパニーとして新しい人財育成体制の強化・拡充を進めております。2022年4月に、「個人の幸福」と「会社の繁栄」をつなぐ人財育成環境の構築を目的として設立された「キャリア推進室」では、新たに策定した経営理念・行動指針(Purpose, Mission, Vision, Value・ Credo)を共通認識として展開しております。また、従業員のキャリアプランに沿った研修制度につき若手育成のみならず、中堅~幹部候補向けまでも含め幅広く刷新、整備しております。

〔社内の多様性の確保〕

 当社グループは、多様な価値観を持った人財の活躍が企業の持続可能な成長を実現する上で欠かせない要件であると認識し、以下の3項目を柱とする施策を実施し、多様性の確保を継続的に進めております。

■女性活躍の推進:女性管理職の積極的な育成・登用、女性活躍推進プロジェクトによる各種社内提言

■国籍問わず働きやすい企業風土の形成:国際人財室が外国人労働者等の教育や生活相談に対応

■各種制度の刷新:半日単位(0.5日)の有給休暇取得制度の導入、女性の育児時短規定改定、

          賃上げの実施(2024年3月期=平均上昇率8.7%)

 

 

(6)人的資本に関する指標及び目標

上記(5)の戦略・方針の実践を通じ、以下の各指標につき目標値の達成を目指してまいります。


 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 青果物の生産・収穫に影響を及ぼす天候や気象、自然災害について

当社グループは、主に、国内産青果物を生産地取引や各地の市場で買い付け、お客様に販売しております。青果物の生産・収穫は天候や気象、自然災害に左右されます。特に近年は、異常気象に見舞われ世界的に農産物の収穫に悪影響を与えております。当社グループにおいては、過去の異常気象や自然災害を教訓として、そのような状況が発生した場合、輸入青果物の仕入や代替商品による納品をお客様の同意の下に行う体制を持っていることや、同じ天候や気象、自然災害の影響を受けない複数の国内産地を持つことで、リスクを分散した生産地取引も行っております。

こうした対応にもかかわらず、青果物の生産・収穫が天候や気象、自然災害により著しく減少する状況に陥った場合には、仕入価格が高騰し、あるいは販売機会を逃すなど、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 食品の安全性について

食品の安全性と品質保証に関する消費者の関心は、残留農薬、偽装表示問題や異物混入事件等により高まっております。当社グループは、製・商品の品質、安全性を経営の最重要課題のひとつと考えており、安全で高品質の食品を供給するため、徹底した衛生管理と品質の向上に努めております。具体的には、当社グループの全ての工場において食品安全マネジメントシステムの国際規格ISO22000認証の取得を進めることにより、当該システムの継続的改善に取り組みながら、衛生管理・品質管理の改善に努め、食品安全確保ならびに品質保証・危機管理などのリスク管理体制の充実を目指すとともに、ISO22000による食品安全の内部監査を実施し、製品クレームや事故の発生防止活動、製品表示の適正化に取り組んでおります。加えてデリカフーズ株式会社東京FSセンター、西東京FSセンター、中京FSセンター、奈良FSセンター、九州FSセンターにおいては、昨今のフードテロリズム等への世間一般の関心の高まりに鑑み、より厳密な衛生管理基準やフードディフェンスが求められるFSSC22000認証を取得しております。また仕入業者と連携して品質向上のための情報交換を積極的に行っております。そのような結果、過去に食中毒事件等の問題が発生した事例はありません。

しかしながら、異物混入、健康被害を与える可能性のある欠陥製・商品、表示違反など、当社グループで生産する製品、あるいは仕入商品に万一事故が発生した場合には、当社グループの製・商品の販売に支障を来たし、この結果、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループに起因する食品の安全性問題だけでなく、無認可添加物の使用等による食品製造工程における消費者の不信、あるいは外食企業に起因する衛生管理問題による連鎖的風評など、社会全体的な食品の安全・衛生上の問題が発生した場合につきましても、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 新型感染症等の蔓延が及ぼす影響について

当社グループの従業員に新型コロナウイルス、インフルエンザ、ノロウイルス等の感染が拡大した場合、一時的に操業を停止するなど、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。当社グループではこれらのリスクに対応するため、予防や感染拡大防止に対して適切な管理体制を構築しております。特に今般世界的に感染が拡大した新型コロナウイルスに関しては、早期の段階で経営層と管理部門を中心として対策が検討され、全従業員に対し、官公庁の指針に則った適時適切な対応、毎日の検温、一部従業員に対しては在宅勤務や時差出勤等、従業員の安全と健康を最優先にした対応の徹底、受注・製造・販売・在庫・物流状況の日次単位での把握、感染者が発生した場合のBCP対策、資金管理、マスク等の物品調達等様々な施策を実行し、新型コロナウイルスの影響の極小化を図っております。

 

 

(4) 設備投資について

当社グループは、これまで主要取引先であった外食産業向けに加え、需要が増加している中食産業及び小売業向けの青果物卸売、カット野菜製造のために新工場(FSセンター)の建設を計画し、2024年4月からは大阪FSセンターの稼働が開始しております。また、継続的に事業を拡大していくうえで、新製品対応や技術革新、あるいは生産能力の増強等のため、新規または更新のための設備投資が必要となります。当社グループでは市場環境、競合他社動向、事業戦略及び当該投資の収益性等を総合的に勘案し、適時・適切に設備投資を実施していくように努めております。

しかしながら、新工場建設に伴う人件費・消耗品費増加等による立ち上げ費用、減価償却費等により過去の事業年度で生じたように一時的に当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、経営環境の急激な変化等により、売上が大きく減少し、使用設備の除却や減損が生じた場合、更なる悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 有利子負債依存度について

当社グループは、工場・物流センター等の設備投資資金を主に金融機関からの借入れにより調達しているため、総資産に占める有利子負債の割合が2024年3月決算期で47.8%(有利子負債残高(リース債務を含む)13,787百万円/総資産28,848百万円)と比較的高い水準にあります。したがって、今後有利子負債依存度が高い状態で金利が上昇した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 

 

(6) 法的規制について

当社グループが営んでいる青果物事業に関する主たる法的規制には、食品の規格・衛生監視・営業許可等を定めた「食品衛生法」、食品循環資源の再生利用等を促進するために再生利用等の量に関する目標を定めた「食品リサイクル法」、工場・事業場の排水規制を定めた「水質汚濁禁止法」、「水道法」、欠陥製造物からの消費者保護を目的とした「製造物責任法(PL法)」等があります。

当社グループは、「食品衛生法」をはじめとした法令の遵守を徹底するとともに、「食品リサイクル法」における食品廃棄物の再処理にも充分な取り組みを実施しております。しかしながら、今後「食品衛生法」、「食品リサイクル法」等の法的規制が強化された場合、新たな費用負担が発生する可能性があり、その場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 業務委託について

当社グループでは、各子会社が直接配送できない地域につきましては、各子会社が業務委託先に製品の製造及び製・商品の配送を依頼しております。

委託先につきましては、納品する製・商品の品質には十分に気をつけるよう指導管理しておりますが、納品する製・商品の品質が悪い等の不測の事態が生じた場合等に、投資家及びその他一般の消費者等が当社グループにも同様の問題が生じていると誤解する可能性があります。また、業務委託先が当社グループの意に反して、食品の安全性に欠けるものを納品した場合、当社グループにも影響があり、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 財務制限条項について

当社グループが金融機関との間で締結した一部の金銭消費貸借契約には、連結又は連結子会社の貸借対照表の純資産の部や、損益計算書の経常損益等に係る財務制限条項が定められております。

なお、当連結会計年度末において財務制限条項に抵触しておりません。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの「5類」への移行に伴う行動制限の緩和による社会・経済活動正常化の動きが進展し、個人消費が持ち直したほかインバウンド需要も旺盛に推移し、景気は緩やかな回復基調が続きました。その一方で、ロシア・ウクライナ情勢、イスラエル・パレスチナ情勢といった地政学上のリスク顕在化に起因した物価上昇、世界的な金融引締めに伴う影響など、景気を下押しするリスクもあることから、先行きは依然として不透明な状況にあります。

当社グループの主要顧客である外食産業でも、上記のとおり人流の増加から足許の需要は堅調に推移、価格改定のプラス影響も相まって、コロナ前の水準まで回復が進んだ先が多く見られました。一方、慢性的な人手不足に加え、為替の円安基調もある中での資源価格・原材料価格の高止まり、物流費・人件費の上昇傾向、物価高による節約志向の高まりが継続するなど、経営環境は予断を許さない状況が続いています。

このような状況の中、当社グループにおきましては、外食産業における売上回復傾向や省力化ニーズの高まりを捉えることで、着実に売上を伸ばしました。また、中期経営計画「Transformation 2024」での基本方針のひとつである「事業ポートフォリオの変革」として取引業種の裾野拡大を推進し、新たなお取引先様ニーズへの積極的な対応を進めた他、消費者向けミールキットを手掛ける楽彩株式会社、デリカフーズ長崎株式会社を中心に、BtoC事業の拡充も推し進めました。加えて、国産冷凍野菜のほか、国産冷凍加工商品として冷凍焼き芋の大手外食チェーン向け納入や輸出を手掛けるなど、新たな商材の取扱拡大にも積極的に取り組みました。

損益面では、諸経費が増加傾向にある中、仕入・在庫の厳格管理、廃棄ロスの抑制等に一層注力し、また人員配置・物流の最適化などの効率運営にも努めるなど、収益体質の強化を継続的に図りました。第2四半期には、当社連結子会社デリカフーズ株式会社の奈良事業所における近隣からの類焼、夏場の記録的な猛暑の下、トマトを始めとする各種野菜の仕入価格急騰といった特殊要因がありましたが、第3四半期以降は天候が安定する中、野菜も良好な状態を維持、お取引先様への丁寧な説明を実施したうえでの売価改善の効果とも相まって、着実に収益を積み上げることができました。

この他、中期経営計画におけるその他の基本方針である「青果物流通インフラの構築」では製造拠点、物流拠点の新設を進め、2024年3月の大阪FSセンター竣工をもって当社グループ独自のコールドチェーンである「FSセンター」の全国展開が完成、直営20拠点体制を計画どおりに構築いたしました。「サステナビリティ経営の推進」についても、野菜の端材等を活用したサステナブルな自社商品の展開、次世代人財の育成を目的とした人的資本投資の強化など、幅広く具体的な施策を推し進めております。

以上の結果、当連結会計年度における売上高は、過去最高の52,823百万円(前期比10.2%増)となりました。また、利益につきましても、営業利益は1,134百万円(前期比78.4%増)、経常利益は1,258百万円(前期比63.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,013百万円(前期比44.3%増)と前年対比で大きく伸長、いずれもコロナ禍前の2020年3月期も上回り、過去最高益を更新しております。

 

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 

青果物事業

当セグメントの売上高は、コロナ禍後の外食需要の回復基調、人手不足を背景とするカット野菜需要の高まりに加え、「事業ポートフォリオの変革」を推進し新規・深耕の営業活動で顧客の裾野拡大を図った結果、売上高は52,115百万円と前期比4,766百万円(10.1%)の増収となりました。当セグメントの利益につきましては、増収効果のほか、引き続き徹底した効率化等の施策を講じながら売価の改善にも注力したことで、セグメント利益(経常利益)は1,155百万円と前期に比べ439百万円(61.5%)の増益となりました。

 

物流事業

当セグメントの売上高は、主要な荷主であるデリカフーズ株式会社向けの売上高が順調に推移し、加えてグループ以外への販売も強化したことから、4,303百万円と前期に比べ523百万円(13.9%)の増収となりました。セグメント利益(経常利益)は、各種コスト削減をはじめとする効率化に努めたことから87百万円と前期に比べ49百万円(130.2%)の増益となりました。

 

研究開発・分析事業

当セグメントの売上高は、大手企業からの検証試験の受注など受託分析事業の売上が増加、定期コンサルティングの増加などコンサルティング事業も順調に推移した一方、補助事業の獲得が進まなかったこと、グループ内の研究委託が減少したことなどの結果、105百万円と前期と比べ5百万円(5.7%)の増収となりました。また、セグメント利益(経常利益)は、人員減等による人件費減少の影響が大きく、2百万円(前期は10百万円のセグメント損失(経常損失))となりました。

 

持株会社

当セグメントの売上高は、806百万円と前期と比べ147百万円(22.4%)の増収となりました。セグメント利益(経常利益)は、144百万円と前期と比べ40百万円(38.7%)の増益となりました。

 

② 生産、受注及び販売の実績

a.仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(千円)

前年同期比(%)

 

 カット野菜部門

9,641,959

10.2

 

 ホール野菜部門

15,122,515

11.7

 

 その他

5,421,015

△13.5

青果物事業計

30,185,490

5.7

物流事業

研究開発・分析事業

持株会社

合計

30,185,490

5.7

 

(注) 1.金額は、仕入価格によっております。

2.「その他」は野菜外商品(卵、豆腐、冷凍食品等)の仕入高、委託販売先を通じた仕入高等であります。

 

b.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

 

 カット野菜部門

24,142,672

11.3

 

 ホール野菜部門

20,535,991

9.9

 

 その他

7,428,775

6.5

青果物事業計

52,107,439

10.1

物流事業

630,357

29.0

研究開発・分析事業

86,201

△2.3

持株会社

合計

52,823,998

10.2

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.「その他」は野菜外商品(卵、豆腐、冷凍食品等)の販売高、委託販売先を通じた販売高等であります。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの経営成績等は、以下のとおりであります。

・経営成績の分析
(売上高)

当連結会計年度における売上高は52,823百万円となり、前連結会計年度の47,925百万円に対し、4,898百万円の増収(前期比10.2%増)となりました。

当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウィルスの「5類」への移行に伴う行動制限の緩和による社会・経済活動正常化の動きが進展し、個人消費が持ち直したほかインバウンド需要も旺盛に推移し、景気は緩やかな回復基調が続きました。当社グループの主要顧客である外食産業でも、上記の通り人流の増加から足許の需要は堅調に推移、価格改定のプラス影響も相まって、コロナ前の水準まで回復が進んだ先が多く見られました。

当社グループにおきましては、外食産業における売上回復傾向や省力化ニーズの高まりを捉える事で、着実に売上を伸ばしました。また、中期経営計画「Transformation 2024」での基本方針のひとつである「事業ポートフォリオの変革」として取引業種の裾野拡大を推進し、新たなお取引先様ニーズへの積極的な対応を進めた他、消費者向けミールキットを手掛ける楽彩株式会社、デリカフーズ長崎株式会社を中心に、BtoC事業の拡充も推し進めました。加えて、国産冷凍野菜のほか、国産冷凍加工商品として冷凍焼き芋の大手外食チェーン向け納入や輸出を手掛けるなど、新たな商材の取扱拡大にも積極的に取組みました。

(売上総利益)

売上原価は、前連結会計年度の36,220百万円に対し、3,399百万円増加(同9.4%増)の39,619百万円となりました。また、売上総利益は前連結会計年度の11,704百万円に対し、1,499百万円増加(同12.8%増)の13,204百万円となりました。これは主として、売上高の増加によります。 

(営業利益)

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度の11,069百万円に対し、1,000百万円増加(同9.0%増)の12,069百万円となりました。これは主として、売上高の増加に伴う人件費・物流費・その他の経費の増加によります。その結果、営業利益は前連結会計年度の635百万円に対し、498百万円増加(同78.4%増)の1,134百万円となりました。 

(経常利益)

営業外収益は、前連結会計年度の185百万円に対し、11百万円減少(同6.0%減)の174百万円となりました。これは主として、物品売却益や受取賃貸料が増加したものの、助成金収入が減少したこと等によります。営業外費用は、前連結会計年度の52百万円に対し、1百万円減少(同2.5%減)の51百万円となりました。これは主として、支払利息が増加したものの、株式交付費や営業外費用の「その他」が減少したこと等によります。その結果、経常利益は前連結会計年度の769百万円に対し、488百万円増加(同63.5%増)の1,258百万円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

特別利益は、補助金収入1,347百万円や受取保険金53百万円を計上したこと等により1,435百万円となり、特別損失は、固定資産圧縮損1,347百万円や火災損失32百万円を計上したこと等により1,415百万円となりました。その結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度の738百万円に対し、540百万円増加(同73.2%増)の1,279百万円となりました。

税効果会計適用後の法人税等の負担額は、前連結会計年度の36百万円に対し、229百万円増加の265百万円となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度の702百万円に対し、311百万円増加(同44.3%増)の1,013百万円となりました。

 

・財政状態の分析

 (流動資産)

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ8.9%増加し、12,510百万円となりました。これは、主として、現金及び預金が1,252百万円減少した一方、売掛金が1,076百万円、流動資産の「その他」が1,226百万円増加したことなどによります。

 

(固定資産)

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ22.1%増加し、16,338百万円となりました。これは、主として、建物及び構築物が2,071百万円、機械装置及び運搬具が773百万円増加したことなどによります。

 

 これらの結果、資産合計は、前連結会計年度末に比べて16.0%増加し、28,848百万円となりました。

 

(流動負債)

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ9.3%増加し、9,746百万円となりました。これは、主として、1年内返済予定の長期借入金が382百万円、買掛金が224百万円増加したことなどによります。

 

(固定負債)

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ25.7%増加し、10,351百万円となりました。これは、主として、長期借入金が1,820百万円、資産除去債務が204百万円増加したことなどによります。

 

 これらの結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ17.2%増加し、20,097百万円となりました。

 

(純資産)

 純資産合計は、前連結会計年度末に比べ13.4%増加し、8,750百万円となりました。これは、主として、利益剰余金が883百万円、その他有価証券評価差額金が160百万円増加したことなどによります。

 

 

・キャッシュ・フローの分析

当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、3,966百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,252百万円減少しました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの内容は概ね次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、1,686百万円の収入(前期は1,695百万円の収入)となりました。これは主に、売上債権の増加額1,076百万円、法人税等の支払額318百万円があったものの、税金等調整前当期純利益1,279百万円、減価償却費1,002百万円、仕入債務の増加額224百万円、未払金の増加額112百万円、補助金の受取額111百万円などがあったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、4,874百万円の支出(前期は976百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出4,894百万円などがあったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、1,935百万円の収入(前期は289百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出1,697百万円、リース債務の返済による支出136百万円があったものの、長期借入れによる収入3,900百万円などがあったことによるものです。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入れを基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入れを基本としております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は13,787百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,966百万円となっております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループのデザイナーフーズ㈱は主にコンサルティング業務を、㈱メディカル青果物研究所は主に受託分析業務・研究開発業務を行っております。

 

・コンサルティング

外食産業をはじめ食業界全般にわたり、栄養学をもとにした食べ方や食材の組み合わせを中心としたメニュー提案、開発部門の社員教育、販売提案を行うと共に、異分野においてもWEBも活用しながら、食の重要性に関するセミナー・講演活動、コラムの執筆などを行い、健康寿命の延伸や疾病予防へ貢献しております。

また研究開発部門と連携して、青果物や食品の分析で得た結果を活用した商品価値の表現について、当社グループの楽彩㈱をはじめ、生産者や小売業へ提案を行っております。

 

・研究開発

長年の研究開発のデータは約3万検体にのぼり、指定野菜14品目を中心に世界屈指の分析データベースを構築・維持し、「野菜の旬」の素晴らしさを科学的に検証し、学術論文として発表しています。さらに、消費者/実需者ニーズに基づき、「野菜の健康診断(中身評価)」を主体として、食品安全・栽培手法・中身評価・流通管理に関した19項目からなる野菜品質評価指標「デリカスコア」を構築し、運用しています。これまでの分析成果を発展させて、トマトのBrix(おいしさ)・栄養素(リコピン)・抗酸化力を計測/選果できる非破壊選別装置や、レモンの内部障害(中腐れ)を検出する非破壊選果装置の開発を行っています。

 

・受託分析

研究開発で得られた約3万検体の青果物のデータベースをもとに、農業生産者(契約産地等)や実需者(取引先等)、食品メーカー、小売・流通企業から、農産物(野菜・果物・米など)の分析を受託し、「野菜の健康診断」をはじめとした野菜の中身評価を行い、青果物ブランドの構築にも貢献しています。当連結会計年度における研究開発費の総額は99百万円であります。

なお、当社グループでの研究開発活動は、概ね報告セグメントである研究開発・分析事業(デザイナーフーズ株式会社、株式会社メディカル青果物研究所)で行っております。