当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、我々の社会的な存在価値と目指す未来に向け、Purpose及びMission・Vision・Value(MVV)を定めております。また、MVVを実現するための社員の行動指針として、全20項目からなるCredoを定めております。
当社グループは、これらの新たな価値観に基づき、「日本の農業の発展」と「国民の健康増進」への貢献を目的に事業を展開しております。青果物加工流通分野において青果物の価値を追求することで、未来に向けた「持続可能な農業」と「食を通じた健康増進」を実現する付加価値創造企業として、お客様及び株主の皆様の信頼と期待にお応えし、企業価値の一層の向上を目指してまいります。

(2) 当社グループを取り巻く経営環境
いま、わが国農業は、担い手の減少、耕作放棄地の増加、外国産農産物との競争激化といった様々な課題に直面しています。一方、国内の青果物市場では、健康志向の高まりや少子高齢化、人手不足等を背景に小売・業務用ともにカット野菜・フルーツの需要が拡大するとともに、生産農家の減少や異常気象の頻発等により、消費者ニーズを捉えた青果物の流通加工と安定調達・供給がより重要になっています。さらに、コロナ禍を経て、ECビジネスやデリバリー需要の増大等、消費者の生活様式の変化に対応したビジネスモデルの変革も求められる状況となっております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
2024年5月に、長期ビジョンとして当社グループの「10年後のありたい姿」を改めて設定したうえで、その実現に向けた新たな成長フェーズへの転換点として、第五次中期経営計画「keep on trying 2027」を策定しました。
当該計画における基本方針は以下の通りです。
〔長期ビジョン〕
1.野菜の総合加工メーカーとしてのポジションを確立
2.持続可能な農業の実現
3.個人の幸福と会社の繁栄の両立を実現
〔第五次中期経営計画「keep on trying 2027」〕
①各種ポートフォリオの変革
今後の更なる成長に向け、3つのポートフォリオの変革に取り組みます。
a.事業ポートフォリオの変革
各事業のセグメント・ポートフォリオを見直し、グループ補完型の事業体から、それぞれの子会社が独自の事業を展開できるよう変革を図ります。
b.顧客ポートフォリオの変革
将来性・収益性・販売実績をもとに顧客ポートフォリオの見直しを実行。選択と集中を行い、取引口座数の適正化を図ります。
c.商品ポートフォリオの変革
将来性・収益性・販売実績をもとに商品ポートフォリオの見直しを実行。新規商品の開発を強化し、収益性の向上を図ります。
②青果物サプライチェーンの構造改革
a.輸入野菜の国産化
輸入依存度の高い原料において国産化を推進。特に中国産の原料において、栽培・加工・流通の国産化を図ります。
b.調達インフラの再構築
今後更に深刻化する調達・物流難に対し、持続可能なインフラの再構築を図ります。長期保存技術を確立し貯蔵集出荷拠点の設置計画を進めます。
c.青果物サプライチェーンの合理化
栽培・流通・加工における他企業とのアライアンス等を通じ、サプライチェーン全体の合理化による持続可能な農業と流通体制の構築を進めます。
③研究部門・開発部門への投資拡大
a.野菜を中身で評価
野菜の健康効果研究を推し進め、野菜の価値向上・消費拡大へとつなげていきます。また、効果成分にフォーカスした商品開発との連携により食材ロスの低減に貢献します。
b.貯蔵の長期化
物流の合理化、野菜の廃棄低減に向け、貯蔵技術の開発を推進します。また、鮮度保持技術と併せて、新たな流通の仕組みを構築します。
c.新規商品の開発
付加価値の高い商品開発を推進します。当社の加工施設・加工技術・ノウハウを最大限に活用し、競争力の高い商品で販路の拡大を目指します。
d.新規事業の開発
マーケティング(市場調査)部門を強化し、青果物を基軸とした新たな市場へのあくなき挑戦を行います。
(4) 対処すべき課題
①気候変動、天候不順がもたらす収益インパクトの低減
気候変動、天候不順に伴う野菜価格高騰の影響を低減することで収益の安定化を図ることは、当社にとって最大の経営課題の一つです。貯蔵能力の増強、野菜の長期保存技術の確立、川上である生産分野への寄与など、中期的な視野で抜本的な対策に取り組んでまいります。
②物流事業の拡大
当社独自の強みとして位置づけられる物流事業は、気候変動の影響を受けづらい安定性と、幅広い顧客層を展望できる成長性とを併せ持つ重点戦略分野であり、今後もグループ外への販路拡大を始めとする事業拡大に一層注力してまいります。
③質・量両面での人財の拡充
全従業員が志を高く持ち、活躍できる企業であることを目指し、「多様な人材の採用」「挑戦・イノベーションを起こす人財の育成」「次世代リーダーの育成」に取り組むことで、社会的課題を解決できる組織の醸成を進めてまいります。
④強固な財務基盤の構築
収益基盤の強化を継続的に推進するとともに、資金調達手段の更なる多様化も図りながら、財務体質の健全性確保と成長戦略の実現を両立してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは2024年5月23日に開示した第五次中期経営計画「keep on trying 2027」にて以下の通り「サステナブル宣言」を公表し、SDGsに貢献するとともにESG活動に関しても積極的に取り組んでおります。
(1)ガバナンス
当社では、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、サステナビリティ関連課題に対する具体的な取り組みについて、業務執行の意思決定機関である経営会議にて協議しております。これらの中で特に重要な事項については、月次の取締役会に報告され、取締役会において当該報告内容に関する管理・監督を行っております。今後は、取締役会における議題の選定にあたり、目先の短期的な課題だけでなく、サステナビリティに係る中長期的な課題について検討する議題を一定の頻度で上程してまいります。
デリカフーズホールディングス代表取締役社長は、「サステナブル宣言」を掲げ、トップマネジメントとして気候変動を含む全てのサステナブル関連活動を統括しております。経営会議、取締役会の長を担うと同時に、直轄の諮問委員会である危機管理委員会の委員長も担うことで、サステナビリティに関する経営判断の最終責任を負っています。
(2)リスク管理
当社グループでは、経営環境の変化やリスクの多様化に適切かつ柔軟に対応するとともに、潜在的なリスクが顕在化することによる事業への影響を速やかに最小限に抑える観点から、リスクマネジメント活動を進めています。
具体的には、高度化する企業リスクに対し、持株会社であるデリカフーズホールディングス株式会社による経営監督機能の下、6つのチームにより構成された危機管理委員会を中軸に、コンプライアンス委員会、ハラスメント防止対策委員会等も含めた万全の体制で対応、ガバナンスの強化を図っております。サステナビリティに係るリスク事象についても、グループ子会社や各事業所が参加する各種の全国会議(本会議、営業会議、仕入会議、品質管理会議、管理部門会議、現場会議)を通じて検知された問題事象・課題につき、関連する委員会において情報共有の上、解決に向けた議論を推し進めております。
(3)戦略
当社グループは、中長期的に会社の業績に大きな影響を与える6つの重要課題(マテリアリティ)を抽出しています。マテリアリティの抽出に当たっては、当社事業が社会に与える影響についてバリューチェーン全体で評価したうえで、SDGsの17の目標の中で当社ビジネスモデルとの関連性の高いものを選定し、経営理念・事業戦略に紐付けて整理いたしました。抽出した重要課題については、確実で効率的な対応を心がけつつ、第五次中期経営計画「keep on trying 2027」と、さらにその先の成長シナリオをイメージしながら事業の推進に役立てています。
6つのマテリアリティについての、主なリスクおよび機会・取り組みは以下の通りです。
(4)指標と目標
サステナビリティに対する「指標及び目標」については、第五次中期経営計画「keep on trying 2027」において以下の通り設定しており、当連結会計年度における実績は以下の通りであります。

(5)人的資本に関する戦略・方針
〔キャリア推進体制の拡充〕
当社グループは、青果物流通のリーディングカンパニーとして新しい人財育成体制の強化・拡充を進めております。2022年4月に、「個人の幸福」と「会社の繁栄」をつなぐ人財育成環境の構築を目的として設立された「キャリア推進室」では、新たに策定した経営理念・行動指針(Purpose, Mission, Vision, Value・ Credo)を共通認識として展開しております。また、従業員のキャリアプランに沿った研修制度につき若手育成のみならず、中堅~幹部候補向けまでも含め幅広く刷新、整備しております。
〔社内の多様性の確保〕
当社グループは、多様な価値観を持った人財の活躍が企業の持続可能な成長を実現する上で欠かせない要件であると認識し、第五次中期経営計画でも「優しさと強さを兼ね備えた人財育成」の理念のもと、以下の3項目を柱とする施策を実施し、ダイバーシティ&インクルージョンを継続的に進めております。
■Purpose・Mission・Visionの実現:
社会的課題解決組織の醸成、次世代リーダーの育成
■情熱と能力を磨き果敢にイノベーションを起こす:
女性管理職の育成、多様な働き方への制度拡充、成長意欲ある人財への投資
■個人の幸福と会社の反映を実現する人財が集結:
専門人財のキャリア採用、グローバル人財の採用、志高き人財の採用
(6)人的資本に関する指標及び目標
人的資本に対する「指標及び目標」については、第五次中期経営計画「keep on trying 2027」において以下の通り設定しており、当連結会計年度における実績は以下の通りであります。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、主に、国内産青果物を生産地取引や各地の市場で買い付け、お客様に販売しております。青果物の生産・収穫は天候や気象、自然災害に左右されます。特に近年は、異常気象に見舞われ世界的に農産物の収穫に悪影響を与えております。当社グループにおいては、過去の異常気象や自然災害を教訓として、そのような状況が発生した場合、輸入青果物の仕入や代替商品による納品をお客様の同意の下に行う体制を持っていることや、同じ天候や気象、自然災害の影響を受けない複数の国内産地を持つことで、リスクを分散した生産地取引も行っております。
こうした対応にもかかわらず、青果物の生産・収穫が天候や気象、自然災害により著しく減少する状況に陥った場合には、仕入価格が高騰し、あるいは販売機会を逃すなど、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
食品の安全性と品質保証に関する消費者の関心は、残留農薬、偽装表示問題や異物混入事件等により高まっております。当社グループは、製・商品の品質、安全性を経営の最重要課題のひとつと考えており、安全で高品質の食品を供給するため、徹底した衛生管理と品質の向上に努めております。具体的には、当社グループの全ての工場において食品安全マネジメントシステムの国際規格ISO22000認証の取得を進めることにより、当該システムの継続的改善に取り組みながら、衛生管理・品質管理の改善に努め、食品安全確保ならびに品質保証・危機管理などのリスク管理体制の充実を目指すとともに、ISO22000による食品安全の内部監査を実施し、製品クレームや事故の発生防止活動、製品表示の適正化に取り組んでおります。加えてデリカフーズ株式会社東京FSセンター、西東京FSセンター、中京FSセンター、奈良FSセンター、九州FSセンターにおいては、昨今のフードテロリズム等への世間一般の関心の高まりに鑑み、より厳密な衛生管理基準やフードディフェンスが求められるFSSC22000認証を取得しております。また仕入業者と連携して品質向上のための情報交換を積極的に行っております。そのような結果、過去に食中毒事件等の問題が発生した事例はありません。
しかしながら、異物混入、健康被害を与える可能性のある欠陥製・商品、表示違反など、当社グループで生産する製品、あるいは仕入商品に万一事故が発生した場合には、当社グループの製・商品の販売に支障を来たし、この結果、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループに起因する食品の安全性問題だけでなく、無認可添加物の使用等による食品製造工程における消費者の不信、あるいは外食企業に起因する衛生管理問題による連鎖的風評など、社会全体的な食品の安全・衛生上の問題が発生した場合につきましても、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの従業員に新型コロナウイルス、インフルエンザ、ノロウイルス等の感染が拡大した場合、一時的に操業を停止するなど、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。当社グループではこれらのリスクに対応するため、予防や感染拡大防止に対して適切な管理体制を構築しております。特に今般世界的に感染が拡大した新型コロナウイルスに関しては、早期の段階で経営層と管理部門を中心として対策が検討され、全従業員に対し、官公庁の指針に則った適時適切な対応、毎日の検温、一部従業員に対しては在宅勤務や時差出勤等、従業員の安全と健康を最優先にした対応の徹底、受注・製造・販売・在庫・物流状況の日次単位での把握、感染者が発生した場合のBCP対策、資金管理、マスク等の物品調達等様々な施策を実行し、新型コロナウイルスの影響の極小化を図っております。
当社グループは、これまで主要取引先であった外食産業向けに加え、需要が増加している中食産業及び小売業向けの青果物卸売、カット野菜製造のために新工場(FSセンター)の建設を計画し、2024年4月からは大阪FSセンターの稼働が開始しております。また、継続的に事業を拡大していくうえで、新製品対応や技術革新、あるいは生産能力の増強等のため、新規または更新のための設備投資が必要となります。当社グループでは市場環境、競合他社動向、事業戦略及び当該投資の収益性等を総合的に勘案し、適時・適切に設備投資を実施していくように努めております。
しかしながら、新工場建設に伴う人件費・消耗品費増加等による立ち上げ費用、減価償却費等により過去の事業年度で生じたように一時的に当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、経営環境の急激な変化等により、売上が大きく減少し、使用設備の除却や減損が生じた場合、更なる悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、工場・物流センター等の設備投資資金を主に金融機関からの借入れにより調達しているため、総資産に占める有利子負債の割合が2025年3月決算期で40.0%(有利子負債残高(リース債務を含む)10,656百万円/総資産26,640百万円)と比較的高い水準にあります。したがって、今後有利子負債依存度が高い状態で金利が上昇した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが営んでいる青果物事業に関する主たる法的規制には、食品の規格・衛生監視・営業許可等を定めた「食品衛生法」、食品循環資源の再生利用等を促進するために再生利用等の量に関する目標を定めた「食品リサイクル法」、工場・事業場の排水規制を定めた「水質汚濁禁止法」、「水道法」、欠陥製造物からの消費者保護を目的とした「製造物責任法(PL法)」等があります。
当社グループは、「食品衛生法」をはじめとした法令の遵守を徹底するとともに、「食品リサイクル法」における食品廃棄物の再処理にも充分な取り組みを実施しております。しかしながら、今後「食品衛生法」、「食品リサイクル法」等の法的規制が強化された場合、新たな費用負担が発生する可能性があり、その場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、各子会社が直接配送できない地域につきましては、各子会社が業務委託先に製品の製造及び製・商品の配送を依頼しております。
委託先につきましては、納品する製・商品の品質には十分に気をつけるよう指導管理しておりますが、納品する製・商品の品質が悪い等の不測の事態が生じた場合等に、投資家及びその他一般の消費者等が当社グループにも同様の問題が生じていると誤解する可能性があります。また、業務委託先が当社グループの意に反して、食品の安全性に欠けるものを納品した場合、当社グループにも影響があり、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) 財務制限条項について
当社グループが金融機関との間で締結した一部の金銭消費貸借契約には、連結又は連結子会社の貸借対照表の純資産の部や、損益計算書の経常損益等に係る財務制限条項が定められております。
なお、当連結会計年度末において財務制限条項に抵触しておりません。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績
当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)におけるわが国経済は所得・雇用環境の改善などを背景に社会経済活動の正常化が進み、緩やかな回復傾向を続けました。その一方で、ウクライナ情勢の長期化や米国における新政権の誕生など地政学的リスクの高まりに加え、物価高や円安基調の継続、金融資本市場の変動の影響、個人消費の伸び悩みなど、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。
当社グループの主要顧客である外食産業においては、好調なインバウンド消費の寄与もあって需要は堅調な推移を続けていますが、慢性的な人手不足による人件費の上昇、原材料価格の高騰、物流費の高止まり、物価高に起因する消費者の節約志向が継続するなど、経営環境は依然厳しい状況が続いています。
こうした中、当社は、「青果物加工流通分野」において野菜の価値を追求し、未来に向けた「持続可能な農業」と「食を通じた健康増進」を実現する付加価値創造企業として、数々の施策を重ねております。2024年5月には、長期ビジョンとして当社の「10年後のありたい姿」を改めて設定した上で、「第五次中期経営計画 keep on trying 2027」を発表し、「各種ポートフォリオの変革」「青果物サプライチェーンの構造変革」「研究部門・開発部門への投資拡大」の基本方針の下、数々の具体的な施策展開を推進しているところです。
当連結会計年度において、当社グループは外食需要の堅調な推移や省力化ニーズの高まりを捉えることで、引き続き着実に売上を伸ばしました。主業である青果物流通事業を担うデリカフーズ㈱において、継続的に取引業種バランスの最適化を図りながら、新たなお取引先様ニーズへの積極的な対応を進めた他、消費者向けミールキットを手掛ける楽彩㈱を中心に、BtoC事業の拡充も推し進めました。また、物流子会社であるエフエスロジスティックス㈱も、「物流業界の2024年問題」をチャンスととらえ、新規開拓によるグループ外売上の拡大に努めました。以上の結果、当連結会計年度における売上高は、58,762百万円(前期比11.2%増)と3年連続で過去最高を更新しました。
一方、損益面では、正社員・パート従業員の処遇見直し、商品開発や研究開発への積極的且つ継続的な投資等に伴う経費増が先行的に発生する中、2024年4月に開設した大阪FSセンターの立ち上げにかかる一過性の諸経費が発生したこと、第3四半期までは天候不順(春先の長雨、夏場の猛暑、秋以降の少雨等)の影響で各種野菜の生育不良・品質不良が発生し、輸入商材を含め、過去に例を見ないレベルで急激に、また長期にわたり仕入価格が高騰したことが収益悪化要因となりました。しかし、第4四半期に入り野菜の価格が総じて落ち着く中、仕入・在庫の厳格管理、廃棄ロスの削減、人員配置・物流の最適化などの現場オペレーションの効率化を一層図ったことに加え、お取引先様への丁寧な説明を実施した上での売価改善などの効果もあり、売上高収益体質の強化が着実な成果として現れるようになりました。以上の結果、当連結会計年度の営業利益は805百万円(前期比29.0%減)、経常利益は884百万円(前期比29.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は542百万円(前期比46.5%減)と、いずれも減益となったものの、2024年10月に修正した業績予想を上回る着地となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
青果物事業
当セグメントの売上高は、インバウンドを含めた外食需要の堅調な推移、人手不足を背景とするカット野菜需要の高まりに加え、グループ総合力を活かした提案型営業の強化を図った結果、売上高は57,842百万円と前期比5,727百万円(11.0%)の増収となりました。当セグメントの利益につきましては、主に天候不順に起因する仕入価格の高騰の影響から、セグメント利益(経常利益)は827百万円と前期に比べ327百万円(28.4%減)の減益となりました。
物流事業
当セグメントの売上高は、主要な荷主であるデリカフーズ株式会社の売上高が順調に推移し、加えてグループ以外への販売も強化したことから、4,896百万円と前期に比べ593百万円(13.8%)の増収となりました。セグメント利益(経常利益)は、各種コスト削減をはじめとする効率化に努めたことから141百万円と前期に比べ54百万円(61.9%)の増益となりました。
研究開発・分析事業
当セグメントの売上高は、大手企業からの検証試験の受注など受託分析事業の売上が増加、定期コンサルティングの増加などコンサルティング事業も順調に推移した一方、補助事業の獲得が進まなかったこと、グループ内の研究委託が減少したことなどの結果、89百万円と前期と比べ15百万円(15.0%減)の減収となりました。また、セグメント利益(経常利益)は、収益性の高い案件の獲得や人件費抑制の影響が大きく、12百万円と前期に比べ9百万円(363.5%)の増益となりました。
持株会社
当セグメントの売上高は、858百万円と前期と比べ51百万円(6.4%)の増収となりました。セグメント利益(経常利益)は、98百万円と前期と比べ45百万円(31.8%減)の減益となりました。
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、仕入価格によっております。
2.「その他」は野菜外商品(卵、豆腐、冷凍食品等)の仕入高、委託販売先を通じた仕入高等であります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.「その他」は野菜外商品(卵、豆腐、冷凍食品等)の販売高、委託販売先を通じた販売高等であります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社グループの経営成績等は、以下のとおりであります。
当連結会計年度における売上高は58,762百万円となり、前連結会計年度の52,823百万円に対し、5,938百万円の増収(前期比11.2%増)となりました。
当社グループは外食需要の堅調な推移や省力化ニーズの高まりを捉えることで、引き続き着実に売上を伸ばしました。主業である青果物流通事業を担うデリカフーズ㈱において、継続的に取引業種バランスの最適化を図りながら、新たなお取引先様ニーズへの積極的な対応を進めた他、消費者向けミールキットを手掛ける楽彩㈱を中心に、BtoC事業の拡充も推し進めました。また、物流子会社であるエフエスロジスティックス㈱も、「物流業界の2024年問題」をチャンスととらえ、新規開拓によるグループ外売上の拡大に努めました。
売上原価は、前連結会計年度の39,619百万円に対し、4,787百万円増加(同12.1%増)の44,407百万円となりました。また、売上総利益は前連結会計年度の13,204百万円に対し、1,150百万円増加(同8.7%増)の14,355百万円となりました。これは主として、売上高の増加によります。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度の12,069百万円に対し、1,480百万円増加(同12.3%増)の13,549百万円となりました。これは主として、売上高の増加に伴う人件費・物流費・その他の経費の増加によります。その結果、営業利益は前連結会計年度の1,134百万円に対し、329百万円減少(同29.0%減)の805百万円となりました。
営業外収益は、前連結会計年度の174百万円に対し、0百万円増加(同0.1%増)の174百万円となりました。これは主として、物品売却益が減少したものの、助成金収入や受取利息が増加したこと等によります。営業外費用は、前連結会計年度の51百万円に対し、45百万円増加(同88.4%増)の96百万円となりました。これは主として、支払利息や営業外費用の「その他」が増加したこと等によります。その結果、経常利益は前連結会計年度の1,258百万円に対し、374百万円減少(同29.7%減)の884百万円となりました。
特別利益は、固定資産売却益3百万円を計上したことにより3百万円となり、特別損失は、解約違約金12百万円や固定資産売却損7百万円を計上したこと等により22百万円となりました。その結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度の1,279百万円に対し、414百万円減少(同32.4%減)の864百万円となりました。
税効果会計適用後の法人税等の負担額は、前連結会計年度の265百万円に対し、57百万円増加(同21.8%増)の322百万円となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度の1,013百万円に対し、471百万円減少(同46.5%減)の542百万円となりました。
・財政状態の分析
流動資産は、前連結会計年度末に比べ15.3%減少し、10,594百万円となりました。これは、主として、現金及び預金が532百万円、流動資産の「その他」が1,351百万円減少したことなどによります。
(固定資産)
固定資産は、前連結会計年度末に比べ1.8%減少し、16,046百万円となりました。これは、主として、機械装置及び運搬具が155百万円、投資有価証券が94百万円減少したことなどによります。
これらの結果、資産合計は、前連結会計年度末に比べて7.7%減少し、26,640百万円となりました。
(流動負債)
流動負債は、前連結会計年度末に比べ13.9%減少し、8,391百万円となりました。これは、主として、短期借入金が1,550百万円減少したことなどによります。
(固定負債)
固定負債は、前連結会計年度末に比べ10.9%減少し、9,219百万円となりました。これは、主として、長期借入金が1,116百万円減少したことなどによります。
これらの結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ12.4%減少し、17,610百万円となりました。
(純資産)
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ3.2%増加し、9,030百万円となりました。これは、主として、利益剰余金が346百万円増加したことなどによります。
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、3,533百万円となり、前連結会計年度末に比べ432百万円減少しました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの内容は概ね次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、3,797百万円の収入(前期は1,686百万円の収入)となりました。これは主に、利息の支払額79百万円、法人税等の支払額263百万円があったものの、税金等調整前当期純利益864百万円、減価償却費1,171百万円、仕入債務の増加額233百万円、未払金の増加額472百万円、補助金の受取額1,347百万円などがあったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、812百万円の支出(前期は4,874百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出882百万円などがあったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、3,417百万円の支出(前期は1,935百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出2,002百万円、短期借入金の純減額1,550百万円などがあったことによるものです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入れを基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入れを基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は10,656百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,533百万円となっております。
該当事項はありません。
当社グループの受託分析業務・研究開発業務を行っておりました㈱メディカル青果物研究所は、2024年4月1日をもってコンサルティング業務を行うデザイナーフーズ㈱に統合いたしました。
・コンサルティング
外食産業をはじめ食業界全般にわたり、栄養学をもとにした食べ方や食材の組み合わせを中心としたメニュー提案、開発部門の社員教育、販売提案を行うと共に、異分野においてもWEBも活用しながら、食の重要性に関するセミナー・料理教室、講演活動、コラムの執筆などを行い、健康寿命の延伸や疾病予防へ貢献しております。
また研究開発部門と連携して、青果物や食品の分析で得た結果を活用した商品価値の表現について、当社グループの楽彩㈱をはじめ、生産者や小売業へ販売提案を行っております。
・研究開発
長年の研究開発のデータは約4万検体にのぼり、指定野菜14品目を中心に世界屈指の分析データベースを構築・維持し、「野菜の旬」の素晴らしさを科学的に検証し、学術論文として発表しています。昨今の異常気象に対応すべく、野菜の鮮度保持技術の開発、さらに、人手不足の解消と持続可能な外食・中食の運営のために、消費期限の延長技術の開発等、グループ全体の業務に関わる技術開発を行っています。
・受託分析
研究開発で得られた約4万検体の青果物のデータベースをもとに、農業生産者(契約産地等)や実需者(取引先等)、食品メーカー、小売・流通企業から、農産物(野菜・果物・米など)の分析を受託し、「野菜の健康診断」をはじめとした野菜の中身評価を行い、青果物ブランドの構築にも貢献しています。当連結会計年度における研究開発費の総額は
なお、当社グループでの研究開発活動は、概ね報告セグメントである研究開発・分析事業(デザイナーフーズ株式会社)で行っております。