第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは、「北海道に根ざした総合ヘルスケア企業グループとして健康を願う人々を支えつづけます」を基本理念に掲げ、地域社会のニーズに応じたヘルスケアサービスの提供を通じて、持続的な成長と社会への貢献を目指しています。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

① 会社の経営の方針

 医薬品卸売事業、医療機器卸売事業、薬局事業、介護事業、ICT事業の連携を強化し、地域の実情に合わせた社会保障基盤の構築を推進します。各事業の専門性を活かし、切れ目のないヘルスケアサービスを提供することで、「健やかな地域社会」の実現へ貢献してまいります。

 

② 中期経営計画(第6次中期計画)

 当社グループの理念を実現するために第6次中期計画では3つのビジョンを掲げております。

1)北海道に根ざした、地域包括ヘルスケアグループになる。

2)健康に関するすべてのサービスを切れ目なく提供できるグループになる。

3)地域固有のニーズに貢献できるようグループで連携する。

 

 これらのビジョンを実現する3つの重点戦略としてa.エリアサミット、b.DXの推進、c.従業員力の最大化を実施してまいります。

 

a.エリアサミット

 今後、「在宅医療へのシフト」「医療と介護の連携」が北海道内のすべての地域で進むことが予想されます。各地域固有の状況を的確に分析し、最適なニーズを把握するため、2024年3月期から当社社長はじめ道内各地域の事業会社の責任者がその地域で一堂に会して実施するエリアサミットの体制を強化しております。当社グループでは医療機関および調剤薬局向けの医薬品卸売事業と、医療機関向けの医療機器卸売事業に加えて、薬局事業および介護事業を通じて地域社会の一人ひとりに直接つながる事業を展開しています。この強みを生かし、地域固有のニーズを迅速に捉えることが可能です。地域ごとのニーズを的確に把握し、地域戦略の立案・実行を強化します。

b.DXの推進

 当社グループは、DXを戦略の重要な柱と位置づけ、4つの重点分野でDXを推進します。①地域包括ケアを目指した事業連携の支援、②業務プロセスの構造改革による効率化、③経営データの可視化とデータベース化、④厚生労働省の医療DXへの対応。これらの柱に共通する目的は、「デジタルでつながる」ことであり、人材・モノ・組織、さらには地域をつなぐことで、新たな価値創造とサービス向上を目指します。

c.従業員力の最大化

 従業員の能力を最大限に引き出すことが、人的資本に関する戦略の重要な目標です。グループ全体の強みの実現、効率的な運営を目指してDX推進と生産性向上、市場変化への対応、情報共有、役割の明確化、自ら考え求めて役割を果たし課題に挑戦する組織風土作りを進めております。その実現のテーマとして、「自らの課題形成による変化への挑戦」、「グループ交流による人材の多様性確保、教育、育成」、「職場環境の改善」を推進してまいります。

 

③ 2025年度について

 当社グループは、人的資本を競争力の源泉と捉え、従業員の意欲と能力を最大限に引き出す人的資本経営を推進してまいります。この方針は、来期以降も継続し、グループ全体の持続的な成長を目指します。具体的には、以下の施策を通じて、組織の活性化と競争力強化を図ります。

・エリアサミットの開催 :グループ全体の事業競争力を高めるため、各地域の特性を活かした戦略を共有し、連携を強化します。

・「万機公論会議」の実施:全社横断的な議論の場を設け、自由闊達な意見交換を促進することで、組織全体の活性化を図ります。

 

 これらの取り組みを通じて風通しの良い職場環境と企業文化を醸成し、結果として経営高度化を実現し、グループ全体の競争優位性を維持してまいります。

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 2040年頃に向けた医療の課題として、特に85歳以上の高齢者の増加に伴い、医療・介護の複合ニーズが増加すると予測されています。これにより、救急搬送や在宅医療の需要も一層増大する見込みです。地域別に見ると生産年齢人口はほぼ全地域で減少する一方、高齢者人口には顕著な地域格差が出てまいります。こうした地域差が拡大する中、各地域に求められる医療体制も多様化することが予想され、医療従事者の確保はさらに深刻な課題となると認識しています。

 

 厚生労働省の社会保障審議会医療部会は、2024年12月に2040年に向けた医療提供体制改革の方向性として、「新たな地域医療構想の策定」を提言しました。この提言は、入院医療のみならず、外来・在宅医療、介護との連携、人材確保など、地域医療提供体制全体の課題解決を包括的に目指すものです。特に、医療DXの推進とオンライン診療の普及、そして医療偏在対策が重要な柱として挙げられています。

 

 当社グループは、これまで「地域包括ヘルスケア企業」として、地域医療、介護、福祉の連携を重視した事業を展開してきました。今後、地域に根ざした医療・介護・福祉のシームレスな連携が不可欠となる市場環境において、当社グループは、各事業間の連携を強化し、地域固有のニーズに合わせたサービスを一体的に提供することで、その役割をさらに拡大していきます。

 

 中期計画では、グループ各社がDXロードマップに基づきDXを強力に推進します。具体的には、モバイル端末の活用、クラウド技術の導入、オープンソースの利用を原則とし、地域包括ケアの実現に向けた事業連携、業務プロセス改革による効率化、経営データの可視化とデータベース化、そして厚生労働省の医療DXへの対応を加速させます。

 

 2024年2月に設置したサステナビリティ委員会では、持続可能なサービス提供体制の維持・拡大と企業価値向上を目指し、当社グループの戦略・方針に影響を与える重要課題(マテリアリティ)を特定しました。今後は、特定した4つの重要課題(マテリアリティ)に対し、リスクと機会の両面からグループ全体の活動を再検証し、課題への認識を深めていきます。

 

 このように、当社グループは、変化の激しい社会環境に迅速かつ柔軟に対応し、事業の継続性を高めるための諸施策を着実に実行していくことが、事業上および財務上の課題と認識しています。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当社が有価証券報告書提出日現在において合理的と判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループを取り巻く環境は、人口動態や社会保障制度など様々な変化が続く中、地域に根ざす医療・介護・福祉の垣根のない連携がさらに必要となる市場へと変貌しております。医療機関の機能分化と連携、医療・介護の総合確保、デジタル化が同時並行で進行する中、グループ各社が専門性を強化することに加え、これまで以上にグループが一体となって地域固有のニーズに対応するサービスの展開が必要となります。

 当社グループは「地域包括ヘルスケア企業」というビジョンを掲げ事業を推進しており、さらに「ほくたけのサステナビリティ方針」として「事業間連携により、地域の実状に沿った社会保障基盤の構築にむけて付加価値を創造し『健やかな地域社会』の実現をめざします」という方針を打ち出しました。当社グループは本方針においてサステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置付け、未来に向けて持続可能な経営を行います。

 

 当社グループは2024年1月よりサステナビリティに関する取り組み方針について討議を開始し、同年2月、持続可能なサービス提供体制を維持・拡大し、企業価値のさらなる向上を目指すサステナビリティ経営を推進すべく、「サステナビリティ委員会」を設置しました。サステナビリティ委員会は、代表取締役社長 眞鍋雅信を委員長とし、管理統括本部長、経営統括本部長、人事部長、リスク管理部長および関係部門の代表者によって構成され、年2~4回程度開催することとしています。委員会は当社グループにとって最もふさわしいサステナビリティに関する基本方針および活動計画を策定、計画の進捗について評価し、必要に応じて活動を修正してまいります。取締役会の監督を受け、活動計画およびその進捗を経営会議に対して報告し、強固なガバナンス体制の下で運営されております。

 

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 前期はサステナビリティ委員会の会合を、委員長である代表取締役社長以下各部門代表が参加し2024年7月22日に第1回、同年11月6日に第2回、2025年2月3日に第3回、同年3月25日に第4回の委員会を開催いたしました。検討内容については、第1回では「2024年度の取り組みテーマ・方針とゴールの設定」を中心に、第2回では「2025年6月の有価証券報告書情報開示に向けた取り組み」を中心に、第3回では「マテリアリティに準拠したグループ各社ごとのリスクと機会の情報収集について」を中心に、さらに第4回では「2025年度サステナビリティ情報開示の変更点の確認」を中心に討議が行われ、併せて各担当カテゴリでの進捗状況の確認等を実施いたしました。委員会は担当カテゴリごとの分科会に分かれて活動を継続しております。また、前期は4月、5月、9月、および12月の各経営会議に、4月、5月、および9月の各取締役会に、サステナビリティ情報開示の承認または活動状況の報告を行っております。今後も、委員会全体での会合は年2~4回程度を目処として開催し、その状況を経営会議および取締役会へ報告してまいります。

 

 当社は、コーポレート・ガバナンス体制の主たる機関として、取締役会、経営会議および監査役会を設置しております。原則として毎月1回定例の取締役会を開催し、必要に応じて臨時取締役会を開催しております。監督体制として取締役会は、月次の営業報告に加え、法令、定款および取締役会規程等(注)に定められた事項について審議を行い、取締役相互に質疑、提案ならびに意見を交換することにより、取締役の業務執行状況を監視・監督しております。また、監査役からも、質疑および意見を述べることにより、取締役の業務執行状況を監査しております。

 経営会議は代表取締役社長を議長とし、代表取締役会長、取締役8名、常勤監査役1名、上席執行役員3名で構成され、原則として毎月1回定例の経営会議を開催し、必要に応じて臨時経営会議を開催しております。執行体制として経営会議は、付議基準に定められた事項に加え、各本部およびグループ各社から上程された事項について審議を行い、質疑、提案ならびに意見を交換することにより経営の執行状況を確認しております。また、取締役会付議事項の事前協議も行っております。さらに、事業運営におきまして、経営会議が必要に応じグループ内から横断的に委員を招集し、時限的な事業運営委員会を設置する運営体制を採用しています。事業運営委員会には内規が定められ、事業運営における最重要課題に集中的に取り組んでおります。

 監査役会は、常勤監査役1名および社外監査役2名で構成され、原則として毎月1回定例の監査役会を開催し、必要に応じて臨時監査役会を開催しております。監査役会では、会計監査人、グループ各社の監査役および当社リスク管理部と連携し、取締役会の意思決定過程および取締役の業務執行状況について監査しております。

 2023年7月にはガバナンス体制強化の一環として、「法務本部」を新設し、その下に「リスク管理部」に加えて「法務部」を新設しました。法務部では、企業法務に関する事項と当社グループ全体の規程の作成、改廃等文書管理に関する指導を強化しました。今後は、リーガルマインドの充実強化を図ってまいります。

 前述のとおり、2024年2月に持続可能なサービス体制を維持・拡大し、企業価値のさらなる向上を目指すサステナビリティ経営を推進すべく「サステナビリティ委員会」を設置しました。

 「(5)サステナビリティ関連のリスク及び機会」に特定されているサステナビリティ関連のリスク及び機会については、サステナビリティ委員会が主体となり、当社グループ各社からサステナビリティに関連するリスクと機会の情報を収集し、当社グループ全体のリスクと機会として整理しました。これらのリスクと機会については、各社内における課題意識の浸透度を含め、経営会議および取締役会によって継続的に監視・管理され、統制されています。

 

(注)戦略・経営方針として重要なこと、業務・業績・プロジェクトの進捗状況、投資・出資・M&A・重要財産処分・合併・配当に関すること、人事に関すること、戦略・報酬・雇用条件に関すること、資金調達に関すること、未来へ向けた取り組みや提言に関すること、全般的話題の意見交換等について審議を行なっております。

 

 

(2)戦略

①事業環境の状況

 2040年頃に向けた医療の課題として、特に85歳以上の高齢者の増加に伴い、医療・介護の複合ニーズが増加すると予測されています。これにより、救急搬送や在宅医療の需要も一層増大する見込みです。地域別に見ると生産年齢人口はほぼ全地域で減少する一方、高齢者人口には顕著な地域格差が出てまいります。こうした地域差が拡大する中、各地域に求められる医療体制も多様化することが予想され、医療従事者の確保はさらに深刻な課題となるものと思われます。

 ほくやく・竹山ホールディングスは、これまで「地域包括ヘルスケア企業」として、地域医療、介護、福祉の連携を重視した事業を展開してきました。今後、地域に根ざした医療・介護・福祉のシームレスな連携が不可欠となる市場環境において、当社グループは、各事業間の連携を強化し、地域固有のニーズに合わせたサービスを一体的に提供することで、その役割をさらに拡大していきます。

 このような状況を踏まえ、当社グループの戦略・方針に影響を与える可能性がある重要課題(マテリアリティ)について次のような方法で特定を行いました。

 

②重要課題の特定方法

 当社グループでは、「医薬品卸売事業」「医療機器卸売事業」「薬局事業」「介護事業」「ICT事業」における各事業間の連携による、地域の実状に沿った社会保障基盤の構築を通じて付加価値を創造し、「健やかな地域社会」の実現へ貢献することを一番の使命と考えています。持続可能な社会の実現が求められる中、当社グループは事業を通じた社会課題の解決を重要なミッションと捉えた上で、自社の事業における課題の検討を行いました。その上で、中長期的な当社グループの経営戦略および社会課題、取引先をはじめとしたステークホルダーの置かれた環境をふまえてリスクと機会の分析を行いました。

 そこから社会的貢献度と自社における重要度のより高いものを「ほくたけの重要課題(マテリアリティ)」として特定いたしました。特定プロセスおよび特定マップについては以下をご参照ください。

 

 

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③重要課題の内容

 上記のプロセスの結果、以下の4項目を当社グループの重要課題(マテリアリティ)として特定いたしました。

 

a. 従業員の力を最大限に活かすべく多様性・公正性・包括性を推進し、職場における個々の成長が実感できる環境を整備する

 

b. ステークホルダー利益の最大化を主眼として、将来にわたり持続可能な事業としての基盤を築く

 

c. 事業間連携により、地域の実情に沿った社会保障基盤の構築に向けて付加価値を創造し「健やかな地域社会」の実現を目指す

 

d. 企業統治(ガバナンス)を強化し、事業活動の透明性を確保する

 

④事業戦略(「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(1)経営方針 ②中期経営計画(第6次中期計画)」「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ⑤経営戦略の現状と見通し」に同様の記載がございます。)

 

 今後、「在宅医療へのシフト」「医療と介護の連携」が北海道内のすべての地域で進むことが予想されます。各地域固有の状況を的確に分析し、最適なニーズを把握するため、2024年3月期から、当社社長はじめ道内各地域の事業会社の責任者がその地域で一堂に会して実施するエリアサミットの体制を強化しました。当社グループでは、医療機関および調剤薬局向けの医薬品卸売事業と、医療機関向けの医療機器卸売事業に加えて、薬局事業および介護事業を通じて地域社会の一人ひとりに直接つながる事業を展開しています。この強みを生かし、「在宅医療へのシフト」や「医療と介護の連携」における地域固有のニーズを迅速に捉えることが可能です。これまでのエリアサミットでは、グループ間の相乗効果を生むための相互理解活動から始まり、地域ごとにお客様にグループのサービスを認知していただく活動を通じて、医療機関との連携強化や地域とのコラボレーションを進めてきました。次期以降は、地域ごとの成果を評価し、DXを活用した新たな連携機会の創出など、グループとして貢献できる次なる展開を検討してまいります。

 

 一方、政府による医療DX工程表が公表されるなど、医療・介護業界におけるDXの進展も加速しております。当社グループは、DXを戦略の重要な柱と位置付け、①地域包括ケアを目指した事業連携の支援、②業務プロセスの構造改革による効率化、③経営データの可視化とデータベース化、④厚生労働省の医療DXへの対応、という4つの柱を中心に推進しております。これらの柱に共通する目的は、「デジタルでつながる」ことであり、人材・モノ・組織、さらには地域をつなぎ、新たな価値・製品・サービスを創造することにあります。

 

 DXの推進をさらに深め、グループ各社の事業に貢献するためには、1)自動化による省力化・効率化、2)業務プロセスの高度化による従業員のスキルアップとノウハウの蓄積、3)組織化による部門間の協働・連携・役割分担の明確化、4)可視化による業務・プロジェクトの業績・進捗管理の容易化、といったDXの効用を十分に検討する必要があります。2024年2月、当社グループは一部サーバーが外部からの不正アクセスによるランサムウェア攻撃を受け、データの一部が暗号化されるという被害に遭いました。この経験は、社内のICTに関する様々な側面を見直し、改善する契機となりました。今後、「デジタルでつながる」というDXの目標に向けて、情報共有などの取り組みを大きく前進させる機会と捉えております。

 

 エリアサミットとDX推進という戦略の実行には、サステナビリティに関するリスクと機会の両面からの検討が重要となります。これは、事業継続のための災害対策や地域ごとのBCP対策といった課題に加え、医療DXへの取り組みやDX推進による業務プロセス改善といった課題が、当社グループの戦略・方針に影響を与える重要課題(マテリアリティ)として特定されているためです。詳細は「(5)サステナビリティ関連のリスク及び機会」の「②リスクと機会に対する取り組み」をご参照ください。

 

 

⑤人的資本に関する戦略

 当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針は、グループ全体の強みの実現、効率的な運営を目指してシステム開発と生産性向上、市場変化の対応、情報共有、役割の明確化を実践するために、従業員一人ひとりが指示待ちではなく、自ら考え求めて組織での役割を果たし新たな課題へ挑戦する組織風土作りを進めております。

 

 そのための実現にあたっては下記の3つの柱をテーマに推進しています。

 

・「自らの課題形成による変化への挑戦」

・「グループ交流による人材の多様性確保、教育、育成」

・「職場環境の改善」

 

 「自らの課題形成による変化への挑戦」は1on1ミーティングを軸に社員意識の確認を行い、目標の設定、実行、確認、フィードバックを通じて自ら挑戦課題を決め実践していくことでエンゲージメントの向上と組織の活性化を進めております。

 「グループ交流による多様な人材の確保、教育、育成」においては、グループ共同研修によるコア人材の育成とシナジー創出、グループ全体で大切にしている考え方の共有を図ることを目的に地域大学と連携し「ビジネススクール」を実施し、全社的な視野で、今後の新たな戦略を考え具体化させる場を作り実践的なマネジメント力の習得、向上につなげております。

 また、「職場環境の改善」として2016年からは、日本の労働安全衛生法に基づき実施しているストレスチェック制度を毎年継続して実施し、社内環境整備に努めています。

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、リスク管理を経営の重要な柱と位置付け、「コンプライアンス基本規程」を定め、法令等の遵守を経営方針としています。また、自然災害やデータセキュリティ関連の事態等へ迅速かつ的確に対応するため、「リスク管理規程」を定め、各種マニュアルの整備や訓練の実施を通じて、リスク対応の仕組みを構築しております。

 

《サステナビリティ方針》

 当社グループは、事業間連携により地域の実状に沿った社会保障基盤の構築を目指し、「健やかな地域社会」の実現を目指すことをサステナビリティ方針として掲げております。この方針に基づき、企業統治(ガバナンス)の強化、事業活動の透明性の確保、持続可能な事業基盤の構築、職場環境の整備を、重点課題(マテリアリティ)として事業活動に取り組んでおります。

 

《リスク管理体制》

 サステナビリティに関連するリスクにつきましては、サステナビリティ委員会において、事業リスク及び機会を識別・評価し、経営会議および取締役会に報告しています。これにより、リスクの早期発見と適切な対応を図っています。

 

《主な取り組み》

①コンプライアンスの推進

 当社グループでは、法令等の遵守を基盤とした公正な経営を実現するため、「コンプライアンス基本規程」を定め、全役員および従業員に適用しています。内部統制システムの確立や情報保護管理、内部通報制度の整備を通じて、企業倫理と調和した経営を推進しております。

 

②コンプライアンス違反の防止

 当社グループでは、法令等の違反に対する社内外からの通報を受け付け、早期に内部的に把握し、自浄作用をもってその是正を図るため、グループすべての役員および従業員を対象とした「法令等違反行為の認知時における報告・通報に関する規程」を定め運用しております。

 この制度は、公益通報者保護法及び労働施策総合推進法(通称「パワハラ防止法」)へ対応する通報者保護を徹底した「内部通報制度」および「ハラスメント相談」の窓口として運用し、違反行為の未然防止に努めています。

 

 

③なんでも相談ホットライン

 当社グループでは、内部通報窓口「なんでも相談ホットライン」を法務本部リスク管理部に設置し、当社グループのすべての現職社員のみならず、家族・委託事業者・退職した者も通報可能としています。通報内容は速やかに代表取締役社長に報告し、重要な問題は取締役会および監査役に報告しています。

 

④クライシスマネジメント

 当社グループでは「リスク管理規程」に基づき、経営に重大な影響を及ぼす事案を「経営危機」と定義し、社長を長とする対策本部を設置して迅速に対応しています。リスク管理部と関係部署が連携し、全役員・従業員への教育・訓練を継続的に推進しています。

 

⑤自然災害への備え

 当社グループは、毎年、事業継続マニュアル等を更新し、各拠点で年1回以上の災害訓練を実施しています。訓練の結果は経営会議に報告しております。また、自家発電装置、防災用通信機材、防災関連施設、防災備品の整備充実を進めております。

 生命関連商品・サービスを取り扱う当社グループは、大規模災害時に行政機関と迅速に連携することが求められます。当社グループの保有する多くの自動車を「緊急通行車両等」として、北海道公安委員会(北海道警察)へ事前に届出ており、災害時の交通規制下でも医薬品・医療機器を迅速かつ持続的に供給できる体制を整えております。

 

⑥パンデミックへの備え

 当社グループは、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、パンデミックの発生時にも事業を継続するための備えを行っています。

 当社グループは、医薬品・医療機器の供給や介護サービスの提供などを通じて、社会的責任を果たすため「新型インフルエンザ等対応マニュアル」を策定し、グループ全社に周知しています。新型コロナウイルス感染拡大時にもこの基準を運用しました。

 当社グループにおけるパンデミック対策の基本理念は、従業員とその家族の健康と命を守り、医療関連企業としての社会的使命を果たすことです。事前の備えから感染拡大時の措置までを明確に定め、常に見直しを行っています。

 

⑦プライバシー保護リスクへの備え

 当社グループは、災害やサイバー犯罪、情報漏洩に迅速に対応するため、「システム障害等発生時の対応マニュアル」を策定し、教育・訓練を実施しています。

 特に個人情報漏洩への対応については、法令等やマニュアルとの整合性を保つため、法改正や情勢変化に応じて見直しを行っております。

 

(4)サステナビリティに関する指標及び目標

 当社グループは、「地域包括ヘルスケア企業」というビジョンに基づき、「事業間連携により、地域の実状に沿った社会保障基盤の構築にむけて付加価値を創造し『健やかな地域社会』の実現をめざします」というサステナビリティ方針を掲げ、事業活動を推進しております。

 事業間連携は、当社グループの戦略およびサステナビリティに関する重要な柱の一つです。グループ内における事業間連携の実績として、連携実績数およびその内容などをモニターしており定期的に評価しています。中核的な取り組みであるエリアサミットにおいては、開催地区における成果活動の累計実績を重要な指標として把握しています。また、事業間の連携状況を測る指標として、成果活動報告率の推移を注視しています。今後もエリアサミットを通じて、地域ニーズに対応した新たな価値創造を目指し、具体的な数値目標に加えて定性的な目標の検討もしてまいります。

 

 当社グループは、サステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置付け、持続可能な経営を推進しています。サステナビリティに関連するリスクについては、サステナビリティ委員会が中心となり、グループ全体から情報を収集・分析し、事業リスク及び機会を識別・評価しています。これらの情報は、経営会議および取締役会に定期的に報告され、経営判断に活用されています。本年度より、当社グループの重要課題(マテリアリティ)ごとに、関連するリスク及び機会を明確に整理しました。これにより、より戦略的かつ効果的なサステナビリティへの取り組みを推進してまいります。今後も、事業活動を通じた社会課題の解決と企業価値の向上を目指し、サステナビリティに関する情報開示を充実させてまいります。

 

 

 また、当社グループではROE(自己資本利益率)、PBR(株価純資産倍率)、PER(株価収益率)、配当性向およびキャッシュ・フロー等の指標を重要な経営課題と認識しております。特に配当性向を意識した安定配当を目指しておりますが、そのために十分な手元流動性資金を確保したうえで、積極的な設備投資を行い、資本効率の向上を図ることを基本方針としております。

 

 また、当社グループの4つの重要課題(マテリアリティ)のa.に該当する「従業員の力を最大限に活かすべく多様性・公正性・包括性を推進し、職場における個々の成長が実感できる環境を整備する」を目指し、併せて、女性活躍推進法の行動計画で掲げている「従業員の能力が十分に発揮できる環境を整備することにより、女性をはじめとするすべての従業員が働きがいをもっていきいきと働ける企業となること」を定性目標に、政府が掲げている「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合を30%程度」、「男性育休比率を2025年までに50%」を定量目標とし、当社グループ内の環境整備をはじめとした取り組みを行っていきます。

 

 また、当社グループにおける上記「(2)戦略」において記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針に基づく、多様性に関する指標は以下のとおりとなります。

セグメントの名称

男女間賃金差異 (注)4

女性管理職比率

(注)4

男性育児休業取得率

(注)5

正社員

非正規社員

すべての

労働者

目標

従業員への能力開発支援を通して、継続した上位役職への登用や昇給を実施することで、賃金差異の縮小に努める

30.0

50.0

全体

72.6%

56.1%

59.9

18.4

29.4

その他事業

(株)ほくやく・竹山ホールディングス

86.0%

32.2%

74.2%

43.8%

(注)2  -

医薬品卸売事業

(株)ほくやく

77.0%

55.0%

55.1%

15.3%

50.0%

医療機器卸売

事業

(株)竹山

75.2%

56.8%

60.3%

4.4%

0.0%

(株)ノバメディカル

94.0%

94.0%

0.0%

(注)2  -

薬局事業

(株)そえる

(注)3 66.6%

64.6%

68.3%

36.4%

50.0%

介護事業

(株)マルベリー

68.1%

67.7%

54.4%

32.5%

0.0%

(株)モルス

88.1%

59.8%

75.0%

50.0%

0.0%

ICT事業

(株)アドウイック

88.1%

71.6%

87.5%

22.2%

100.0%

(注)1.当社グループにおいて、賃金体系および制度上の男女差はありません。

2.男性の育児休業取得の対象となる従業員がいないことを示しております。

3.薬剤師に関しては、85.6%と男女間の賃金差異は小さくなります。

4.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

5.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

 

(5)サステナビリティ関連のリスク及び機会

①リスクと機会の特定のプロセス

 持続可能な社会の実現が求められる中、当社グループは事業を通じた社会課題の解決を重要なミッションと捉えた上で、自社の事業における課題の検討を行いました。その上で、サステナビリティ委員会を中心に、中長期的な当社の経営戦略および社会課題、取引先をはじめとしたステークホルダーの置かれた環境をふまえてリスク及び機会の分析を行いました。

 当社グループのステークホルダーが抽出したリスクと機会を、サステナビリティ委員会が中心となり、当社グループの重要課題(マテリアリティ)ごとに識別・評価し、関連するリスク及び機会を明確に整理しました。当社グループの特定したリスクと機会は以下(表1)のとおりです。ここに特定されているサステナビリティ関連のリスク及び機会については、サステナビリティ委員会をはじめ経営会議および取締役会により継続的に監視・管理され統制されております。

 

②リスクと機会に対する取り組み

 重要課題(マテリアリティ)ごとのリスク及び機会について、短期、中期および長期にわたり当社グループに影響を与えることを鑑み、以下(表1)に示す取り組みを代表事例として継続的に行ってまいります。

 

(表1)

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3【事業等のリスク】

当社グループでは、現時点で考えられるリスクとその発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対処に努めております。当社グループを取り巻く様々なリスクの要因の分析と対応に関しましては、経営会議において、事業に対する検討ならびに必要な意思決定とその推進に取り組んでおります。

なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を確認した上で、発生の回避および発生した場合の対処に努めております。

また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)国の医療費抑制策の影響について

 当社グループの主力商品である医療用医薬品ならびに医療機器の販売においては、引き続き国の医療費抑制策や税と社会保障の一体改革により大きな影響を受けております。これらによる薬価基準や償還価格の引き下げ等は、当社グループの売上や利益を左右する大きな要因になっております。

 このような事業環境において当社グループでは、市場の変化に耐え得る強靭な財務体質の構築が不可欠であるとの認識のもと、従来から財務体質の強化を図ってまいりました。今後もキャッシュ・フローを重視した経営を進め、全国トップレベルの経営効率を目指してまいります。

(2)債権管理について

当社グループの事業では、医療機関をはじめとしたお得意先に対し、多額の売上債権を持っております。そのお得意先においては、近年の医療費抑制政策等に伴う財務状況の悪化が懸念される先もあり、当社グループの債権管理にも悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し当社グループは、取引の信用リスクの最小化を目的に「与信管理システム」による個別売上債権の管理を強化しております。また、売上債権の保全を目的として、一部のお得意先から保証・担保を受け入れ、回収不能時に発生する損失の見積額については、個別状況に応じて貸倒引当金を計上しております。

当社グループでは、今後、債権管理を一層強化していく方針でありますが、お得意先の財務状況等の悪化により、売上債権回収不能が発生した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

(3)物流機能について

 当社の子会社である㈱ほくやくでは、お得意先に対する「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)をはじめとする法令に準拠した安定的かつ安全な物流機能が不可欠であるとの認識にもとづき物流管理を行っております。特に、同社内においては、インシデント(物流に関わる事故)や遅配・誤配が発生した場合には、同社に対するお得意先の信頼を損なう事態にもなりかねないとの認識をしております。このため、インシデントを毎月、物流安全委員会に報告して原因から経過までの問題を認識し、再発防止を社内で共有する管理体制を取っております。

 また、同社では自然災害を含めた有事に対して、地域の医療緊急体制への対応ならびにお得意先への医薬品の安定供給機能を維持することを目的とした「事業継続計画」をもって有事に備える体制を確立しております。

 同社は、今後とも、お得意先をはじめ地域の自治体等との連携に向けた物流機能の万全を期して行く方針でありますが、予測が出来ない事故等の発生は、同社の事業の業績に影響を与える可能性があります。

(4)カスタマーセンターの運用ならびに情報システムについて

 当社の子会社である㈱ほくやくでは、業務の効率化と標準化を目的として、医療機関等のお得意先からの電話による受注業務ならびに仕入先への発注業務について「カスタマーセンター」での一元管理を推進しております。この「カスタマーセンター」の業務は情報システムに大きく依存しております。

 同社の情報システムは、当社事業運営のインフラ(基盤)として、全ての業務の最適化と競争力強化を目的に構築しており、上記の受・発注業務のほか、物流業務、経理業務等についても活用しております。このため、予測不可能な災害や通信網提供業者による障害の発生等の事態が生じた場合には、一時的にも通常の業務が出来なくなる可能性があることも認識しております。

 同社では、その対策として、「カスタマーセンター」独自の通信網の二重化ならびに受注情報データのバックアップ体制を取っております。

(5)法律の規制について

当社グループの中心的な取扱商品は医薬品等であることから、日常の業務については「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)等の規制を受け、麻薬・向精神薬・劇薬や高度医療機器などについては厳重な管理を求められており、万一、紛失等の事故が起きた場合には社会的にも影響が出る可能性があります。そのため、このような医薬品等を保管する場所には、これらの法律に精通した管理薬剤師を常時配置し、厳格な対応を行っております。子会社の㈱ほくやくに薬事管理室を設置し、管理マニュアルに基づいた医薬品の管理体制を徹底するとともに、チェック体制におきましても、管理部門やリスク管理部による定期的な監督・指導を実施しており、その結果は物流安全委員会に報告され具体的な対策を講じております。また、社内教育として、全社員を対象とした薬事研修を実施するなど、全社を挙げて管理体制の充実を図っております。

 

(6)個人情報の管理について

当社グループが関わる事業においては、多くの患者様やご利用者様からの重要な個人データを取り扱っております。医療従事者をはじめ患者様やご利用者様に関する個人データは、その価値および高秘密性から、その取り扱いに不備があった場合、一般的な個人データの漏洩の場合に比べ、より重い責任を生ずる可能性があり、グループ全社を挙げて安全管理に努めております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概況

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国の経済は、一部で足踏みが見られるものの、全体として緩やかな回復基調にあります。北海道経済においては、生活活動や個人消費の改善、公共工事や民間設備投資の増加が見られる一方、物価上昇や米国の政策動向、地政学的リスクが地域経済に与える影響を引き続き注視する必要があります。

 このような事業環境の中、当社グループは、経営戦略の柱として「エリアサミット」と「DXの推進」を据えて、各事業を推進しております。

 当連結会計年度における「エリアサミット」の取り組みでは、全地域ごとに「より健やかな地域社会へ」の実現を目指して、当社グループ事業(医薬品、医療機器、介護、調剤、ICTのヘルスケア)の連携により地域の実状に沿った社会保障基盤の構築に向け付加価値を創造し各種施策を推進しております。事業連携としては、2024年5月に空知地域においてグループ内の4つの事業拠点(株式会社ほくやく空知支店、株式会社ほくやく空知SPDセンター、株式会社竹山空知支店、株式会社マルベリーさわやかセンター空知)を集約することで、お客様に当社グループのヘルスケア関連事業の物品とサービスをワンストップでご利用いただけるよう利便性の向上を図りました。

 「DXの推進」の取り組みでは、医薬品卸売事業の株式会社ほくやくは、業界をリードする物流DXを積極的に推し進めております。函館支店へのAIピッキングロボット「ラピュタPA-AMR」の導入に加え、道内唯一のクロスドックセンターである新川物流センターにおいて、自走式仕分けロボットと重量検品を組み合わせた独自のシステムを導入いたしました。物流面では、空知支店で、医薬品の適正流通基準に準拠した最新鋭の施設において、効率的な物流体制と高度なサービス提供体制を確立しました。これらの取り組みにより、庫内業務の大幅な効率化と物流精度の向上を実現し、医薬品の安定供給体制をより一層強化してまいります。このような最新技術の導入は従業員の働きやすい環境整備にも貢献しており、人的資本経営の観点からも重要な取り組みと位置づけております。

 その他の取り組みでは、医療機器卸売事業の株式会社竹山において、2024年7月に循環器外科領域における販路拡大と専門性の向上を目的に株式会社エイエックスを子会社化しました。また、災害や物流問題を見据えた新たな試みとして「ドローンプロジェクト」を発足させ、2024年6月に医療機器輸送に関する実証実験を伊藤忠商事株式会社、一般社団法人ドローン大学校と共同で実施いたしました。今後も、地域固有のニーズに対応するエリアサミットなどを活用し、事業を通じた社会課題の解決に貢献してまいります。

 介護事業の株式会社マルベリーは、厚生労働行政推進調査事業における支援機器の開発・普及のためのモデル拠点構築研究の委員に選任され、障害福祉分野における支援機器の利活用推進に向けた活動を開始いたしました。2024年10月には、同社主催の福祉用具展示研修会において障がい者向けの体験コーナーを新設するなど、これまで培ってきた介護分野のノウハウを活かし、今後ともより多くの方々の快適な生活をサポートできる体制を構築してまいります。さらに、北海道介護事業所生産性向上推進事業にも積極的に取り組み、福祉用具・介護ロボットの展示研修会を290カ所以上で開催して地域ごとの介護現場の業務改善を支援しております。

 なお、2024年2月に発生いたしましたランサムウェア被害につきましては、外部専門機関による調査の結果、データ漏洩等の痕跡は確認されなかったことを2024年5月に発表しております。再発防止に向け、外部専門機関の意見をふまえ、セキュリティ対策の強化を継続して実施しております。

 以上の事業環境のもと、当連結会計年度における売上高は2,895億34百万円(前年同期比5.1%増)、営業利益は29億27百万円(同3.5%増)、経常利益は36億37百万円(同2.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、設備投資における補助金等もあり24億72百万円(同13.6%増)の増益となりました。

 

 

 セグメント別の状況は、次のとおりであります。

 

(医薬品卸売事業)

 医薬品卸売事業におきましては、2024年4月に薬価改定が実施され、2024年6月には診療報酬改定が行われました。後発医薬品における供給面での混乱は未だに継続している状況です。また、2024年10月からの選定療養制度導入の影響もあり長期収載品の売上が減少する傾向も依然として続いています。前年度と比較して新型コロナ治療薬の売上減少などマイナスの影響はあったものの、抗がん剤を中心とした新薬創出加算品の販売に積極的に取り組むとともに、2024年10月から接種開始となったコロナワクチンの販売、さらに冬季におけるインフルエンザなどの感染症拡大に伴う関連医薬品の需要増加もあり、過去最高の売上となりました。利益は、物流コストの削減など経費率の圧縮に全社で取り組んだことにより増益となりました。

 その結果、売上高は2,097億2百万円(前年同期比5.1%増)、営業利益は17億55百万円(同25.5%増)となりました。

 

(医療機器卸売事業)

 医療機器卸売事業におきましては、主要なお得意先における手術や検査などの症例件数は引き続き増加傾向となりました。加えて移転施設における新築備品案件の獲得や手術支援ロボットなどの大型医療機器案件の獲得もあり、売上は前年度を上回りました。利益につきましては商品仕入金額の上昇や販売コストの増加もあり、減益となりました。

 その結果、売上高は700億34百万円(前年同期比5.3%増)、営業利益は11億10百万円(同15.2%減)となりました。

 

(薬局事業)

 薬局事業におきましては、売上では薬価改定が2024年4月、調剤報酬の改定が同年6月と変則的になっておりましたが、処方箋単価は前年度と比較して4%程増加しました。内訳として薬剤料は3.7%増加し、技術料は2024年10月からの長期収載品選定療養制度導入の影響もあり6%以上増加しました。一方、処方箋枚数は、前年度の店舗の閉局や医療機関の閉院により5.0%減少しました。

 その結果、売上高は127億83百万円(前年同期比3.8%減)、営業利益は1億5百万円(同12.2%減)となりました。

 

(介護事業)

 介護事業におきましては、福祉用具のレンタル・販売部門および住宅改修と介護ロボットの普及推進各部門で営業員の増員・育成の強化を図りました。また、福祉用具サービス計画の作成提案から納品後のモニタリングの徹底まで、一貫した顧客重視の方針により、売上は安定的に推移しましたが、人件費およびレンタル資材費増加がありました。サービス付き高齢者向け住宅では、新規入居者数が計画通りに推移した一方で入院や退居の増加があり売上は前年水準に留まりました。

 その結果、売上高は43億88百万円(前年同期比2.2%増)、営業利益は3億19百万円(同2.0%減)となりました。

 

(ICT事業)

 ICT事業におきましては、一般企業や医療機関向けの大型機器販売案件を堅調に受注したほか、当社グループ各社からのICT投資案件も多数受注し、売上は前年を大きく上回りました。一方で、グループ会社における基幹システム構築案件の見直しに伴う費用を計上した結果、利益は前年を下回りました。

 その結果、売上高は23億75百万円(前年同期比48.4%増)、営業利益は18百万円(同52.8%減)となりました。

 

(その他事業)

 その他事業(子会社の経営指導等)におきましては、売上高は17億64百万円(前年同期比2.2%減)、営業利益は3億25百万円(同15.4%減)となりました。

 

② 財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は1,038億19百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億94百万円減少いたしました。これは主に、受取手形及び売掛金が13億70百万円および商品及び製品が12億90百万円増加した一方、現金及び預金で30億73百万円減少したことによるものであります。固定資産は436億32百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億45百万円増加いたしました。これは主に建物及び構築物が9億69百万円、土地が2億9百万円増加した一方、投資有価証券で6億81百万円減少したことによるものであります。

 この結果、総資産は、1,474億51百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億51百万円増加いたしました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は823億46百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億44百万円減少いたしました。これは主に電子記録債務が5億20百万円増加した一方、支払手形及び買掛金が10億20百万円、未払法人税等で2億17百万円減少したことによるものであります。固定負債は32億43百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億81百万円減少いたしました。これは主に繰延税金負債が1億20百万円、退職給付に係る負債が39百万円減少したことによるものであります。

 この結果、負債合計は、855億90百万円となり、前連結会計年度末に比べ10億25百万円減少いたしました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は618億61百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億77百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金が20億46百万円、および退職給付に係る調整累計額が1億15百万円増加した一方、その他有価証券評価差額金が5億50百万円、自己株式の取得により4億31百万円減少したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は41.9%(前連結会計年度末は41.2%)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ30億73百万円減少し、177億39百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は2億62百万円(前年同期は57億27百万円の資金の獲得)となりました。これは、資金の増加要素として税金等調整前当期純利益37億37百万円(前年同期比5.3%増)、減価償却費11億46百万円(同7.8%増)、未収入金の減少3億65百万円(前年同期は4億74百万円の増加)などがありましたが、減少要素として売上債権の増加13億72百万円(前年同期比41.3%減)、棚卸資産の増加12億71百万円(同185.3%増)、仕入債務の減少5億64百万円(前年同期は50億83百万円の増加)、未払消費税等の減少3億20百万円(前年同期は2億51百万円の増加)、法人税等の支払額13億67百万円(前年同期比29.8%増)などがあったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は18億21百万円(前年同期比10.7%減)となりました。これは資金の増加要素として、事業譲渡による収入1億円(前年同期は実績なし)、保険積立金の解約による収入1億63百万円(前年同期は実績なし)、補助金の受取額3億6百万円(前年同期比208.1%増)などがありましたが、減少要素として、有形固定資産の取得による支出20億4百万円(同11.0%減)、無形固定資産の取得による支出4億31百万円(同244.7%増)があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は9億90百万円(前年同期比10.3%増)となりました。これは主に自己株式の取得4億31百万円(同34.9%増)、配当金の支払い4億26百万円(同12.8%減)、リース債務の返済83百万円(同5.3%減)があったことによるものです。

 

④ 仕入及び販売の実績

a.商品仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

医薬品卸売事業(百万円)

199,275

105.1

医療機器卸売事業(百万円)

63,491

104.9

薬局事業(百万円)

814

115.3

介護事業(百万円)

727

106.4

ICT事業(百万円)

1,463

162.1

その他事業(百万円)

合計(百万円)

265,772

105.3

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

b.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

医薬品卸売事業(百万円)

201,932

105.6

医療機器卸売事業(百万円)

69,498

105.3

薬局事業(百万円)

12,772

96.2

介護事業(百万円)

4,377

102.2

ICT事業(百万円)

895

150.5

その他事業(百万円)

57

100.4

合計(百万円)

289,534

105.1

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 「(1)経営成績等の状況の概況」に記載のとおりであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フロー

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.財務政策

 当社グループは、これまでキャッシュ・フロー重視の経営を行ってきており、運転資金および設備資金につきましては、基本的には手元流動資金により賄うことを基本方針としております。この方針は今後も継続することとしておりますが、子会社個々の資金ポジションや拠点設備の狭窄化・老朽化に伴う設備投資など新たな投資計画の集中化も予想され、一時的に運転資金が不足することも考えられます。そうした場合には、当座貸越など、金融機関からの一時的な借入も合わせて検討していく予定であります。

 

c.資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等によるものであります。また、株主還元については、財務の健全性等に留意しつつ、会社業績と配当政策に基づき実施してまいります。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、主力事業である医薬品卸売事業、医療機器卸売事業、薬局事業の経営における、国の医療費抑制策や診療報酬改定と薬価や償還価格の引き下げなどは、当社グループの売上や利益を左右する大きな要因となっております。また、国より薬価制度の抜本改革に向けた基本方針が示され薬価の毎年調査・改定と国主導で医療用医薬品の流通改善に継続した取り組みが必要となっております。さらに「医薬品の供給と品質管理に関する実践規範(JGSP)」改定に伴い物流品質の保証をする監視・監査の機関の設置や医薬品販売情報提供活動ガイドライン施行に伴って医薬品販売情報を監視・監査することで適正に推進する必要があります。

⑤ 経営戦略の現状と見通し

 当社グループを取り巻く環境は、地域に根ざす医療・介護・福祉の垣根のない連携がさらに必要となる市場へと変貌していきます。医療機関の機能分化と連携、医療・介護の総合確保、デジタル化が同時に進行する中で、グループ各社はそれぞれの専門性を強化するだけでなく、グループ全体として地域固有のニーズに対応するサービス展開が求められています。

 

 今後、「在宅医療へのシフト」と「医療と介護の連携」が北海道内の各地域で進んでまいります。各地域の状況を的確に分析し、最適なニーズを把握するため、エリアサミットの体制を強化しました。当社グループでは、医療機関および調剤薬局向けの医薬品卸売事業と、医療機関向けの医療機器卸売事業に加えて、薬局事業および介護事業を通じて地域社会の一人ひとりに直接つながる事業を展開しています。この強みを生かし、「在宅医療へのシフト」や「医療と介護の連携」における地域固有のニーズを迅速に捉えることが可能です。これまでのエリアサミットでは、グループ間の相乗効果を生むための相互理解活動から始まり、地域ごとにお客様にグループのサービスを認知していただく活動を通じて、医療機関との連携強化や地域とのコラボレーションを進めてきました。次期以降は、地域ごとの成果を評価し、DXを活用した新たな連携機会の創出など、グループとして貢献できる次なる展開を検討してまいります。

 

 一方、政府による医療DX工程表が公表されるなど、医療・介護業界におけるDXの進展も加速しております。当社グループは、DXを戦略の重要な柱と位置づけ、①地域包括ケアを目指した事業連携の支援、②業務プロセスの構造改革による効率化、③経営データの可視化とデータベース化、④厚生労働省の医療DXへの対応、という4つの柱を中心に推進しております。これらの柱に共通する目的は、「デジタルでつながる」ことであり、人材・モノ・組織、さらには地域をつなぎ、新たな価値・製品・サービスを創造することにあります。

 

 DXの推進をさらに深め、グループ各社の事業に貢献するためには、1)自動化による省力化・効率化、2)業務プロセスの高度化による従業員のスキルアップとノウハウの蓄積、3)組織化による部門間の協働・連携・役割分担の明確化、4)可視化による業務・プロジェクトの業績・進捗管理の容易化、といったDXの効用を十分に検討する必要があります。2024年2月、当社グループは一部サーバーが外部からの不正アクセスによるランサムウェア攻撃を受け、データの一部が暗号化されるという被害に遭いました。この経験は、社内のICTに関する様々な側面を見直し、改善する契機となりました。今後、「デジタルでつながる」というDXの目標に向けて、情報共有などの取り組みを大きく前進させる機会と捉えております。

 

 今後の戦略および方針として、医療機関の分化と連携、地域包括ケアシステムの推進に対応し、当社グループは医療・介護業界に貢献できると確信しております。具体的には、1)医薬品卸売事業においては、在宅医療を含む地域医療を支える選ばれる卸として、物流体制への投資と整備を進め、コストの最適化を図り、医療環境の変化に対応するインフラ機能とその継続性を高めます。2)医療機器卸売事業においては、医療機関の新たな変化に対応するとともに、医療機器メーカーの適正な商材物流管理のニーズを支援し、北海道内でのシェア拡大を目指します。さらに、3)薬局事業および介護事業においては、地域社会の皆様と直接的なつながりを築くことができる強みを生かし、ブランド価値の向上、人材育成、組織力の強化に取り組みます。4)ICT事業においては、前述のDXを推進し、「デジタルでつながる」ことを目指します。

 

 ほくやく・竹山ホールディングスは、2024年度から始まった第6次中期経営計画が終了する2026年度に設立20周年を迎えます。医療・介護業界のインフラを支える企業グループとして、地域医療・介護に貢献できる事業の継続性をさらに高める課題に真摯に取り組んでいく所存です。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。