当中間連結会計期間において、新たに発生した事業等のリスクはありません。
また、前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」について重要な変更はありません。
当社グループに関する財政状態、経営成績の状況の分析・検討内容は、原則として中間連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。
(1)業績の状況
当中間連結会計期間(2025年3月1日~2025年8月31日)における我が国の社会経済は、実質GDP、個人消費が4~6月期まで5四半期連続プラスとなるなど、底堅く推移しました。さらに、7月には実質賃金が前年同月比で7ヶ月ぶりにプラスに転換、8月には日経平均株価が史上最高値を更新するなど、資産効果も含めた足元の消費マインドは緩やかな回復がみられています。また、訪日外国人客数、消費額におきましても過去最高のペースで推移しており、国内景気を下支えしております。一方、アメリカの関税政策に端を発した貿易摩擦、中東などの地政学的リスクが、今後の金融市場(金利・為替・株価)や経済(物価・消費・インバウンド需要)にどのような影響を及ぼすか、楽観視できない状況は続いております。
当中間連結会計期間の連結業績につきましては、連結営業収益は235,362百万円(前年同期比3.3%減)、連結営業利益は23,653百万円(前年同期比17.8%減)、連結経常利益は22,010百万円(前年同期比27.2%減)となり、親会社株主に帰属する中間純利益は21,219百万円(前年同期比11.2%増)となりました。
事業のセグメント別業績は、次のとおりであります。
<国内百貨店業>
国内百貨店業での営業収益は146,401百万円(前年同期比6.1%減)、営業利益は9,571百万円(前年同期比33.6%減)となりました。
売上高について、前年度、円安を背景に拡大したインバウンド需要の反動による影響が大きく、売上高全体では減収となりましたが、国内顧客売上高は堅調に推移し、既存店対比で前年実績を上回りました。当社独自の諸対策は着実に進捗しております。
当社独自の対策として、商品力強化では、当社の強みの一つである東西大型5店を軸に重点お取引先と連携した取り組みを更に推進してまいります。地域特性に応じた品揃えの強化を図り、中小型店にも拡充していくことで、お客様ニーズの変化に即応してまいります。また、「アイテム平場」「自主編集売場」の再強化や「ライフスタイル」「文化」「社会性」を切り口とした独自性ある催事開発など新たなモノ・コト開発を進め、実店舗の強みをいかしたワンストップでの体験価値を提供してまいります。
顧客基盤強化では、4月から髙島屋の各種カードのポイントが「1ポイント単位で利用可能」となったことを契機に、カード戦略のリブランディングを始動いたしました。引き続き、ポイント利用やカード入会状況を踏まえ、既存顧客の満足度向上と次世代顧客獲得の両立に向けた取り組みを強化してまいります。また、タカシマヤアプリにおきましても、6月にリニューアルいたしました。オンラインストアとの会員ID連携、特典付与機能の強化に加え、デジタルでのアプローチなど、重要な顧客接点ツールとして魅力を高めてまいります。さらに、シンガポールなど優良な海外店舗を有する強みをいかした国内店舗との相互送客により、国境を越えた買い回りを促進していくことで、固定化を図ってまいります。
商品利益率について、百貨店店頭では前年実績を上回りました。利益率の低いラグジュアリーブランドなどの売上高が、インバウンドを中心に前年実績を大きく下回ったことによる売上構成比の変化が主要因です。重点お取引先と連携した取り組みを通じ、利益率の高い衣料品・雑貨などのファッションの強化により、本質的な商品利益率の改善につなげてまいります。
販売管理費について、ベースアップなど人的資本経営の推進に向けた費用は継続して配分しております。また、新たな催事の開発など、営業力強化につなげる費用は効果性を見極め、適正に投下しました。一方、コスト削減に向けた取り組みも同時に推進したことで、前年からの増加を最小限に抑制いたしました。今後も店舗運営体制の更なる効率化など状況に応じた追加対策を実行してまいります。
<海外百貨店業>
海外百貨店業での営業収益は16,093百万円(前年同期比3.3%減)、営業利益は3,790百万円(前年同期比3.2%減)となりました。
シンガポール髙島屋においては、長引くインフレ下での消費停滞やコストの増加に加え、円高にともなう為替影響もあり、減収減益となりました。ファッション関連商品や食料品など品揃えの再強化に加え、顧客基盤強化に向けた取り組みを推進することで、国内顧客売上高やツーリスト売上高の増大を図ってまいります。
上海高島屋においては、新たなテナントの誘致など収益基盤の強化に継続して取り組んでおりますが、景気低迷による消費減速の影響が大きく、減収・赤字となりました。
ホーチミン髙島屋においては、成長分野である子供用品やお客様からの支持の高い化粧品などの品揃え強化とともに、コストの増加を最小限に抑制したことで、増収増益となりました。引き続き、商品カテゴリー・ブランドの再編や催・イベントの強化により、店舗の集客力を高め、売上高の増大につなげてまいります。
サイアム髙島屋においては、3月に発生いたしましたミャンマー地震や地政学的リスクの高まりによる国内顧客売上高、ツーリスト売上高低迷の影響もあり、減収・赤字となりました。今後、売場改装による効果最大化とコスト削減に向けた取り組みを両輪で推進してまいります。
<国内商業開発業>
国内商業開発業での営業収益は20,616百万円(前年同期比1.2%増)、営業利益は3,419百万円(前年同期比12.8%減)となりました。
東神開発株式会社においては、「玉川髙島屋S.C.」の改装工事にともなう賃料収入の影響がありましたが、他の施設も含め営業施策を強化したことで入店客数、売上高(歩合家賃・クレジット手数料収入等)の増大につながり、増収となりました。一方、人件費の上昇による外部委託費や光熱費など施設運営に関わる費用の増加もあり、減益となりました。
改装を進める「玉川髙島屋S.C.」では、4月西館ストリートに、フードコート「P.」が開業いたしました。多様な文化やスタイルを発信する4つの店舗で構成され、歩道と空間、地域をつなぐ、新たなお買物環境を創出しております。また、5月には、屋上庭園「フォレストガーデン」及び「ローズガーデン」が、環境省の令和6年度後期「自然共生サイト(※)」に認定・登録されました。当社グループが運営する区域が認定・登録されるのは初めてのこととなります。引き続き、地球環境を重要なステークホルダーと捉え、グループ全体で持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(※)「民間等の取り組みによって生物多様性の保全が図られている区域」として環境省の認定を受けた区域の名称
<海外商業開発業>
海外商業開発業での営業収益は7,544百万円(前年同期比3.6%減)、営業利益は2,683百万円(前年同期比14.5%減)となりました。
トーシンディベロップメントシンガポールPTE.LTD.において、改装工事にともなう空室区画の増加による賃料収入の影響や人的資本投資の強化、外部委託費など施設運営に関わる費用の増加もあり、減収・減益となりました。
成長ドライバーであるベトナム事業は、着実に進捗しております。首都ハノイにおける「ウエストレイクスクエアハノイ」開発計画におきましては、8月に起工式を執り行いました。第Ⅰ期計画では、地下1階から6階にハノイ初出店となる髙島屋(百貨店)と専門店からなる商業フロアに加え、7階から10階にはオフィスフロアを備える地下3階・地上10階建ての複合ビルを建設いたします。建設にあたっては、米グリーンビルディング協会が開発した建物の環境評価システム「LEED認証」で最高レベルの「プラチナ」の取得を目指した設計としております。2027年秋の開業に向け、リーシング活動・出店準備を進めてまいります。今後も海外商業開発業では、長期的に資産を保有し、持続的な成長を実現する基幹事業と短期回収型事業への投資を組み合わせ、資産規模をコントロールしながら資本効率を高めてまいります。
<金融業>
金融業での営業収益は10,056百万円(前年同期比12.0%増)、営業利益は2,688百万円(前年同期比17.3%増)となりました。
髙島屋ファイナンシャル・パートナーズ株式会社において、収益の柱であるカード事業における取扱高伸長や新規入会会員増加により、手数料及び年会費収入が増大し、増収増益となりました。
カード事業では、ポイント制度の変更を契機として、百貨店・専門店及びECサイトでの更なる新規会員の獲得強化と取扱高の拡大に向けた取り組みを推進しております。
ライフパートナー事業では、3月に住信SBIネット銀行株式会社を所属銀行とする銀行代理業の許可を取得し、ファイナンシャルカウンターにおいて銀行口座の開設と銀行商品のご案内を開始いたしました。証券・保険・相続・信託などに銀行商品を加え、ファイナンシャルカウンターでの取扱商品・サービスの幅の拡大により、総合的な金融相談への対応強化を図ってまいります。
投融資事業では、ソーシャルレンディグで培ったノウハウと企業とのネットワークをいかした法人融資を開始し、事業拡大への取り組みを進めております。
さらに、ヴァスト・キュルチュール株式会社において、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)市場における事業を拡大し、質の高いプライベートバンクサービスを提供していくことで、当社グループの顧客基盤の盤石化と金融業の利益増大を同時に実現してまいります。
<建装業>
建装業での営業収益は15,592百万円(前年同期比1.1%増)、営業利益は1,530百万円(前年同期比30.0%増)となりました。
髙島屋スペースクリエイツ株式会社において、ホテルなどの大型物件やラグジュアリーブランドを中心とした商業施設の受注が堅調に推移いたしました。さらに、コスト管理の強化により、利益率が改善したことも寄与し、増益となりました。引き続き、営業力とデザイン力を駆使した先行提案営業を強化し、安定的な収益基盤の構築につなげてまいります。
<その他の事業>
その他の事業全体での営業収益は19,058百万円(前年同期比4.0%増)、営業利益は804百万円(前年同期比2.7%増)となりました。
飲食業の株式会社アール・ティー・コーポレーション、人材派遣業の株式会社センチュリーアンドカンパニーが増収増益となったことから、その他の事業全体におきましては、増収増益となりました。引き続き、各事業で業界競争力を高めていく取り組みを推進していくことで、経営基盤の強化を図ってまいります。
本年度は、創業200周年の節目となる2031年のグランドデザイン実現に向け、「自立と共創のうねりによる成長加速~『グループのシームレス化』の始動~」を経営目標に掲げています。当社は、「店舗の立地特性」「優良なグループ会社」「幅広い顧客基盤」という3つの強みを有しています。この強みを更に昇華させるべく、お客様視点でグループの各事業が等距離にある状態、すなわちシームレス化を実現し、お客様にストレスなく、かつ感動を与える購買体験を創出してまいります。
シームレスの具現化に向けた取り組みを推進することで、更なる環境の変化にも柔軟に対応できる事業ポートフォリオの再構築、経営基盤の強化につなげ、持続的成長を実現してまいります。
(2)財政状態に関する説明
当中間連結会計期間末の総資産は、1,299,285百万円と前連結会計年度末に比べ3,273百万円増加しました。これは、現金及び預金の減少12,747百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の増加24,766百万円、海外子会社における為替換算影響等による使用権資産の減少9,617百万円、株価上昇や持分法適用関連会社の業績伸長等に伴う投資有価証券の増加748百万円が主な要因です。
負債については、790,916百万円と前連結会計年度末に比べ4,747百万円の減少となりました。これは、有利子負債(社債及び借入金)の増加5,449百万円、海外子会社における為替換算影響等によるリース債務の減少8,939百万円が主な要因です。
純資産については、508,368百万円と前連結会計年度末に比べ8,020百万円増加しました。これは親会社株主に帰属する中間純利益による利益剰余金の増加21,219百万円及び配当金の支払いによる利益剰余金の減少3,943百万円、自己株式の取得による減少4,866百万円、海外子会社における為替換算調整勘定の減少3,572百万円が主な要因です。
以上の結果、自己資本比率は37.1%(前連結会計年度末比0.6ポイント増)となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、14,560百万円の収入となり、前年同期が32,208百万円の収入であったことに比べ17,648百万円の収入の減少(支出の増加)となりました。主な要因は、売上債権の増減額が13,824百万円増加したこと、法人税等の支払額が4,011百万円増加したことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、13,487百万円の支出となり、前年同期が17,953百万円の支出であったことに比べ4,465百万円の支出の減少(収入の増加)となりました。主な要因は、有形及び無形固定資産の取得による支出が10,189百万円増加したものの、有形及び無形固定資産の売却による収入が17,459百万円増加したことなどによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、13,496百万円の支出となり、前年同期が12,687百万円の支出であったことに比べ808百万円の支出の増加となりました。主な要因は、長期借入れによる収入が17,000百万円増加したものの、長期借入金の返済による支出が6,920百万円増加、自己株式取得のための預託金の増減額が5,132百万円増加、自己株式の取得による支出が4,865百万円増加したことなどによるものです。
これらに換算差額を加えた結果、当中間連結会計期間末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ14,352百万円減少し、74,207百万円となりました。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当中間連結会計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について、重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(5)研究開発活動
該当事項はありません。
該当事項はありません。