文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社は経営理念として、①地域社会に対する貢献、②企業の持続的成長を目指す、③人的資源の尊重を掲げております。
(2)経営環境及び経営方針・戦略等
◆当社グループを取り巻く経営環境
米国では第2次トランプ政権に移行し、政策が大きく転換されました。足元では想定を上回る関税が示され、世界で経済の先行きに対する懸念が広がっています。エネルギー環境政策に関しては、化石資源の活用、パリ協定からの脱退といった、これまでのグリーン化を進める方向から大きな政策転換が打ち出されました。しかしながら、当社は、この政策の変更は一時的な揺り戻しであり、長期的には脱炭素社会を目指す取り組みを推進していくという世界の潮流は止められないと考えています。
エネルギー安全保障の観点では、ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の混迷に加えて、欧米の関係にも変化が見られることで、サプライチェーンの確保はより一層重要な課題となりました。また、国内のエネルギー事業では、少子高齢化による人手不足が続く中で、地球温暖化による販売量の伸び悩み、定着し始めたインフレーションへの対応など、事業者は多くの課題に直面しています。これら多くの課題は、人口のボーナスステージでエネルギー消費量が拡大していくモデルが転換期を迎えていることを示していると考えています。
◆社会課題の解決と業界集約
当社は、これらの社会的趨勢を見据え、エネルギーに関わる設備や人員が、効率的運用を求められる環境に備えてきました。LPガスの充填や配送インフラを整え、システムには汎用性と拡張性を持たせ、ITの活用で業務効率を高めてまいりました。LPガス業界では、全国の事業者数は10年前と比較して四分の三程度にまで減少しています。当社は、関東圏最大手のLPガス事業者として、社会的要請でもある業界の集約を牽引していく考えです。
2025年3月、千葉県、茨城県を中心に百余年にわたり事業を展開する株式会社門倉商店が当社グループに参加しました。LPガス業界が直面している事業環境を踏まえ、門倉商店が当社グループの一員となり、 最適化されたオペレーションを活用しながら共に事業成長を追求していくことが、両社および地域社会に対し最も良い形であると合意したためです。今後は、充填、配送、検針、保安、システム等の事業基盤を統合していくことで、物流網を効率化し、設備稼働率を向上させていきます。また、営業拠点の集約に加え、LPガス原料や関連機材等の共同仕入、電気とガスのセット販売、ソリューションサービスの提案など、業界集約を通じてシナジーを創出していきます。
◆共創のスケールアップ
新たな分散型エネルギーシステムの構築に向けて、1社でできること、1業界でできること、従来の知識や知見でできることには限界があります。近未来のエネルギーサービスをお客さまにお届けするには、同業他社との共創のみならず、会社の規模や業界の垣根を超えた共創も不可欠です。ニチガスグループは、エネルギー小売事業の更なる成長、インフラのシェアリング拡大、高い資本効率と成長する企業価値を基盤として、業界の集約化・効率化を牽引するとともに、東京電力グループとの協業やITベンチャー企業との連携など、同じゴールを目指す事業者との共創もスケールアップさせ、地域社会に貢献し、更なる飛躍を目指してまいります。
◆3か年計画(連続の成長)
当社は、グループ再編を通じ、これからの事業体制が定まったことを踏まえ、2024年3月期から2026年3月期までの3ヶ年計画を発表しております。2025年3月期までの2年間は、2年連続で過去最高益を更新すると同時に、資本効率も向上させてきました。
3年目となる2026年3月期は、ガス販売量の想定を慎重に見積もり、従来の営業利益計画220億を200億円に、同純利益計画150億を140億円に見直しました。ガスと電気に加えて、都市ガスとエナジー宇宙事業の利益を成長させることで、目標を上回る利益の達成を目指します。
ROE22%の目標については変更ありません。資産規模を大きく増やさずに利益を拡大していきます。
1株あたり当期純利益についても、2023年3月期92.6円から、2026年3月期には130.6円と約1.4倍に引き上げます。

◆資本政策
当社では、資金調達、資金配分、そして株主還元を行う際には、ROEの向上と純利益の増大を重視して立案し、実行しています。その中でもROEは、お預かりする株主資本と利益の比較であり、株主の皆さまにとって特に重要な収益性の指標であると考えております。3ヶ年で、2023年3月期の14%から2026年3月期に22%へと引き上げる計画です。
この大きなROEの改善は、①ROICの向上と②レバレッジの最適化で実現します。
①ROICは2023年3月期の9%から2026年3月期に12%に向上させる計画です。
3か年計画では、ガスと電気の顧客基盤の拡大により売上総利益をのばす一方、顧客密度を高め、経費効率を向上をさせてまいります。これにより、販管費の増加は抑制され、営業利益151億から200億へ伸ばします。この成長に必要なLPガスのインフラは既に整備済みであり、資産規模を拡大する不要であることから、ROICの向上を実現できると考えています。
②また、3ヶ年計画の中で、調達資本の最適化を進め、レバレッジを活用してまいります。
不必要な株主資本を持たないポリシーのもと、2026年3月までに最適な自己資本比率40%にすることで、ROICの向上を、最大限ROEの向上に繋げてまいります。

キャッシュフローの配分では、高収益資産への成長投資と、株主さまに対して高いレベルで還元することの二つを両立させております。これは、積極的な投資を行う一方、不要な資産を売却、資産を圧縮することで資産全体の規模を抑えているため、株主資本を積み増す必要がないからです。
3ヶ年計画の中では、自己資本比率を40%に最適化する還元も計画しており、実質的な総還元は100%超を想定、25年3月期の総還元性向は141%とにする予定です。
26年3月期は、投資の進捗を踏まえ、想定総資産を見直しをしております。結果、所要株主自己資本は引き下がり、自社株買いの拡大も予定しております。1株当たりの配当額を92.5円から103円に引き上げ、総還元性向145%を計画しております。


当社は、生活になくてはならないエネルギーを提供し地域社会に貢献するために、2050年以降も共創を拡大しながら進化を続け、企業価値向上、そして社会的責任を果たしていきます。この実現に向けて、環境や人的資本等のサステナビリティ課題への対応を重要な成長の機会として捉え、エネルギー小売からプラットフォーム、エネルギーソリューションへの進化を推進し、事業成長と地域社会への貢献を両立していきます。
(1) サステナビリティ全般
①ガバナンス
企業の持続的成長には、利益成長に加え、環境、社会といった広範なステークホルダーとのバランスの取れた共栄が欠かせません。そのためには、社外からの客観的な意見が反映されるガバナンス体制が必要です。当社は、持続的成長に関わる重要事項として、マテリアリティの選定やTCFD・TNFDへの取り組み方針等について、社外役員が過半数を占め、かつ委員長が社外取締役である指名報酬・環境等委員会に諮問し、答申を受けた上で、取締役会が全体方針を決定しています。
<指名報酬・環境等委員会制>
②戦略
当社は、中長期の企業価値向上とサステナビリティ課題の解決に向けて、集中して取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しています。当社および全ステークホルダーにとっての重要性と解決のハードルの高さを軸に、課題の重要性を分析し、重点的に対応すべき項目をマテリアリティとして設定しています。当社のマテリアリティは、1)脱炭素社会への対応、2)地域社会の基盤づくり、3)人材の育成とDE&I、4)ガバナンスの強化としました。脱炭素社会への対応と地域社会の基盤づくりは、当社が中長期の成長戦略を通じて解決を目指す最重要課題であり、これを進めるための人材育成とDE&I、そしてガバナンスの強化も欠かせない項目です。これらの課題解決に向け、業務のデジタル化やスマートシティ、多様な人材が活躍できる環境の整備などを進めていきます。

<課題解決を通じた事業成長の強化>
マテリアリティへの取組みを通じて、エネルギー小売に加えて、以下の2つの事業成長に繋げていきます。
◆ プラットフォーム事業の拡大
当社がDXを導入した高効率オペレーションは、コスト競争力の向上だけでなく、環境負荷の低減にも繋がるものであり、競合他社とのシェアリング拡大による、業界全体のCO2削減と事業成長に貢献できます。
◆ エネルギーソリューション事業の拡大
ハイブリッド給湯器や、太陽光発電、蓄電池などの災害に強い自律分散型機器を普及させて、最適なエネルギー利用を実現することで、省エネ化やエネルギー安定供給等の社会課題に貢献できるサービスを提供し、顧客基盤拡大に繋げます。
③リスク管理
当社は、リスクとは事業を運営することで直面する不確実性と認識しております。グループリスク管理委員会を設置して発生頻度と事業に与える影響の大きさの観点からリスクの重要性を把握し、マイナスの影響を与えるリスクには適切な対策を講じ、プラスの機会には機動的な意思決定を行うことで新たな収益源創出を図っております。中長期で事業や業績に影響を与え得る課題については、指名報酬・環境等委員会で議論を行った上で、取締役会にてマテリアリティとして項目を特定、全社対応方針を決定しております。
④指標と目標
当社は、マテリアリティについての対応を推進するために、課題毎にKPIを設定し進捗を管理しています。

(2) 環境への取組み
当社は、エネルギーのラストワンマイルを担う企業として、自然資本に関する課題の解決と事業成長を両立させることが企業価値向上に繋がると考えています。脱炭素化を最優先課題としながら、その他自然資本の適切な活用も強化し、エネルギーソリューションとプラットフォーム事業を通じて、社会課題の解決と持続的な成長を実現します。
1)気候変動への対応
当社は2050年までのCO2ネットゼロを目標に、Safety(お客さま先の安全)とService(サービス向上)の2つのSを大前提に3つのEに取り組み、環境への対応を行いながら企業価値を向上させます。

①ガバナンス
気候変動関連のリスクや機会の評価、目標設定、その進捗について、指名報酬・環境等委員会において客観的な視点で議論しております。同委員会に諮問し、答申を受けた上で、取締役会が対応方針を決定しています。
②戦略
当社はエネルギーのラストワンマイルを担う企業として、2050年CO₂排出量ネットゼロを目標にCO₂排出量削減という社会課題の解決に取り組みます。地球温暖化が進行する中で、当社は事業環境の変化を新たな成長の機会として捉え、エネルギーソリューションとプラットフォーム事業を軸に戦略を展開します。エネルギーソリューションでは、分散型エネルギー機器を活用したエネルギーの最適利用を実現し、お客さま先のCO₂排出量削減に繋げます。プラットフォーム事業では、最適化された当社のプラットフォームを他社とシェアリングすることで、業界全体のCO₂排出量削減に貢献します。これらの取り組みを通じて、CO₂排出量の削減と利益成長を両立しながら、中長期の企業価値向上を目指します。
<シナリオ分析>
気候変動に関連するリスク・機会についてシナリオ毎の事業環境を想定し、指名報酬・環境等委員会での議論を経て、取締役会で特定しました。

<リスクと機会>
短期:今後3年程度、中期:2030年まで、長期:2050年までとして時間軸を分けて分類し、気候変動リスクの財務的影響額を算出しています。企業価値を向上しながら気候変動に対応するための戦略を検討しています。

<リスクの財務的影響>
◆ 炭素税の導入等によるコスト増(移行リスク):粗利5億円
炭素税などの規制強化により、ガスと電気の調達コストが上昇し利幅が1円/kg、0.1円/kWh減少した場合、粗利5億円程の減少に繋がります。当社は環境証書を活用しながらエネルギー調達の非化石化を進めています。
◆ 自然災害増による事業への影響(物理的リスク):粗利5億円
3日間、全世帯にガスが提供できなくなった場合、販売量は5~6千トン程減少し、粗利5億円の減少に繋がります。全世帯へのガス供給が一斉に停止する可能性はゼロに近いと考える一方、万が一に備え、社員教育を徹底し、有事に向けた体制を整備しています。
◆ 気温上昇によるガス需要の減少(物理的リスク):粗利22~27億円/1℃上昇
年間平均気温が1℃上昇した場合、給湯器などのガス需要に影響し、家庭用ガス販売量は約5%減少、年間で粗利22〜27億円の減少に繋がります。こうした販売量の減少に対し、当社はエネルギーの最適利用やレジリエンスの強化などに資するエネルギーソリューションサービスを拡大し、安定的な収益基盤の構築を進めています。
③リスク管理
気候変動に関するリスクについては、サステナビリティ全般に関するリスクと同様にグループリスク管理委員会で管理しています。
④指標と目標
当社は、2050年までのCO2ネットゼロに向けて、CO₂排出量を指標としています。中期目標としては、2030年までを目途とした3つのCO₂削減目標を設定しております。
<CO2排出量実績>
2024年3月期の当社バリューチェーンにおけるCO₂排出量は290.5万t-CO₂です。うち99%がScope3によるもので、お客さま先でのガス使用に係るCO₂排出量、お客さまに販売するガスや電源の調達に係るCO₂排出量が含まれます。当社はエネルギーの最適利用を実現することで、お客さま先におけるCO₂排出量の削減に注力します。
※総排出量は、Scope1、Scope2(マーケット基準)、Scope3排出量の合計。
<2030年までのCO2削減目標>
◆目標1◆ LPガス業界のCO₂排出量(LPG託送による):約▲50%
当社の高効率なLPガスオペレーションは一般的な充填・配送・検針に比べ世帯あたりのCO₂排出量が半分です。業界でシェアリングすることで、業界全体のCO₂排出量を半減します。
◆目標2◆ 世帯あたりCO₂排出量:約▲50%
調達電源の非化石化や、ソリューション機器の普及によるお客さま先のエネルギー利用の最適化で、お客さまの世帯あたりCO₂排出量を削減します。電源の非化石化や高性能ガス機器の普及などにより、当社のガスと電気を使用した場合の世帯あたりCO2排出量を削減します。2024年3月期の世帯あたり排出量は3.1t-CO2と、2031年3月期までの削減目標に向けて計画通りに進捗しています。

◆目標3◆ 削減貢献量:約145万t-CO₂(2030年時点)
調達電源の非化石化、高効率なLPガスのボンベ配送、ソリューション機器の普及によるお客さま先のエネルギー利用の削減施策等の実施により、CO₂排出量を削減します。
2)自然資本への取組み
当社の事業活動は自然を重要な資本として活用しており、その活動を通じて自然環境に影響を与えています。地域社会に貢献しながら持続的に企業成長していくためには、事業のあり方を見直し、環境保全と収益拡大を両立する形へと変革することが必要と考えています。まずは事業における自然関連リスクの分析を進め、環境課題に対する取り組みを展開していきます。
①ガバナンス
自然資本関連のリスクや機会の評価について、指名報酬・環境等委員会において客観的な視点で議論しております。同委員会に諮問し、答申を受けた上で、取締役会が対応方針を決定しています。自然資本への取組みを推進させることを目的に、当社の自然資本への取組みについて「2024年 統合報告書」で初めて開示しました。
②戦略
当社は、お客さまとの接点という強みと小売事業で培った技術や経験を活かすために、当社のオペレーションおよび営業エリアでの取り組みを推進していきます。また、事業と接点のある自然資本の中で、気候変動への対応に最も注力しながら、リスクとなりうる水資源、土地、廃棄物についても取り組みを進める方針です。
<対象とする事業活動>
エネルギー供給に係るバリューチェーンにおいて、当社は海外から輸入されたエネルギーを国内で調達し、お客さまに販売するまでのオペレーションを担っていることから、原料調達からお客さま先での使用までを対象の事業活動としています。
<対象とする事業エリア>
BtoCのエネルギー小売会社である当社にとってお客さまとの接点が重要であることから、対象とする事業エリアは、当社がお客さまにガスと電気を提供している関東1都6県に山梨県、静岡県、長野県を加えた地域とします。
<当社事業と自然資本との依存・影響の関係>
B to Cのエネルギー小売会社である当社にとって、最も大きい関連性があるのは気候です。また、ガスの主な使用用途は水を温めてお湯にするという給湯であることから水資源にも依存しています。さらに、地中にガス導管を敷設することから土地の状況に依存し影響も与えます。その他には、廃棄物に関しても設備更新やガス・電気消費機器の交換に伴う処理が発生するため、関連性があります。

③リスクと影響の管理
本項目では、当社が大きく依存し影響を与える自然資本である水資源、土地、廃棄物について、リスクの内容と財務的な影響度を特定し、そのリスクへの取り組み内容を定めています。当社は自然資本に関するリスクの重要性を認識し、リスク軽減に向けた取り組みを強化していきます。

④指標と目標
当社は、リスクや取り組みの進捗を管理するための指標と目標については、今後、定量的な分析を進めた後に設定することを検討しています。財務的影響度が高い水資源については、オペレーション上で水使用量の削減に取組んでいます。
<水資源に関する取組み>
・水の再利用
夢の絆・川崎工場のガスボンベ検査施設では、水を最も使用する耐圧検査の工程において、水を再利用することで水使用量の削減に取り組んでいます。
・ペーパーレスの取り組み
製造時に水を消費する紙の利用削減を目指し、オペレーションのデジタル化を推進してペーパーレス化を進めています。会議資料(紙)の配布廃止、各種申込書や検針票の電子化、電子契約の導入などを進めています。
エネルギー使用量の多い拠点の水利用
※ 集計範囲:日本瓦斯(本社、町田営業所)、エナジー宇宙(夢の絆・川崎、千葉工場)。24/3期の電力使用量で47%をカバーしています。
(3) 人的資本、多様性に関する取り組み方針
当社の人材戦略は、人的資本の最大化を通じて、エネルギー小売を軸にエネルギーソリューションとプラットフォームという、新たな中長期の成長戦略を発展させることを目標としています。人的資本最大化のカギは、社員のモチベーション向上と必要なスキルの確保による社員一人ひとりの成長です。当社が目指す姿を社員全員と共有し、未経験でも挑戦できる機会を提供することで、自発的に成長するマインドを高め、社員それぞれの個性=強みを伸ばすことができると考えています。
◆ 戦略
1)社員のモチベーション向上
社員のモチベーションを高めることが、自発的な成長を促し、パフォーマンスの最大化に繋がると考えています。これは当然のことでありながら、実行の難易度は高く、多方面からの取り組みが必要です。当社は、①個人が主人公になる企業風土、②公平な評価制度、③働く環境の整備によって、これを実現します。
①個人が主人公になる企業風土
当社は、変革への挑戦を続けるために、自ら考え行動できる人材が必要と考えています。自ら考え行動するためには、自らの力で会社を変えることができると信じて、実行に移すことが重要です。当社は、個人が自らの力を信じ、主人公になれる企業風土を醸成しています。具体的には以下の3つの企業風土があります。
1. 裁量の大きさ
細かいマニュアルを設けず、一人ひとりに裁量を大きく持たせる文化が当社にはあります。これは、自ら考え実行する力を重視し、また従来の方法に捉われない新しい試みを推奨しているからです。成果に繋がる過程を自ら考え、新しいことに挑戦する人材を育成しています。
2. 失敗を受け入れ挑戦を促す
当社には失敗を受け入れ、挑戦を促す文化があります。なぜなら、一番のリスクは失敗を恐れ、挑戦しないことだと考えるからです。失敗して生じた損失よりも、失敗して得た学び=利益の方が大きい。したがって、挑戦しないことこそが最大の損失と考えています。
3. 未経験からの活躍
当社には、年齢・経験にかかわらず新たな業務に挑戦できる文化があります。挑戦し変革を続けて成長していくためには、一つの分野で専門性を高めるよりも、異なる分野の知見や経験を融合させることが必要だと考えているからです。専門知識が必要な部署で未経験者が活躍している実例も多く、これが新しいことを学ぼうとする社員のモチベーション向上に繋がっています。
②公平な評価制度
当社は創業当時から実力主義を貫いてきました。なぜなら実力主義の評価制度は、より高い実績に向けて挑戦するという社員の成長意欲を高められるからです。成長に向けて常に変革を続ける当社にとっては、年功序列のように過去の経験や安定を重視した仕組みよりも、失敗を恐れず挑戦できる社員が育つ風土が必要不可欠だと考えています。この方針が会社全体に浸透しているため、経歴にかかわらず全ての社員が、実績をあげることや、挑戦するマインドを重視してモチベーション高く働いています。加えて、パフォーマンスに見合った報酬が得られる仕組みを整備し、社員のモチベーションをさらに向上させています。
<パフォーマンスに見合った報酬を得られる制度>
③働く環境の整備
創業以来、社員は重要なステークホルダーです。持続的な企業成長には、社員が心身に不安なく、安全かつ健康に働くことが重要です。安全・安心を前提に、社員の労働環境に対する満足度を向上させていくことで、社員のパフォーマンス最大化に繋げています。
1. 安全な職場環境の整備
安全は当社の最重要事項です。エネルギー資源を取り扱う会社として、お客さま先はもちろん、社員の安全も重視し、労働災害の防止や車両事故削減等に取り組んでいます。重要拠点であるLPガス充填基地では、外部機関により労災リスク、自然災害リスクの調査を定期的に実施し、環境を改善しています。直近の3年間の取り組みとしては、①熱中症対策として暑さ指数測定器を設置、②巻き込まれ防止対策として機械回転部の安全カバー設置、③転倒防止対策として床面のローラー部分に警戒用テープ貼付、などの改善策を導入し、結果、労災による負傷者数は、年々減少しています。
※労災による負傷者数÷従業員数(嘱託・パート含む)
2. 社員の健康管理
社員の健康を重視し、会社として社員の心身の健康サポートに力を入れています。毎年、全社員を対象に健康診断(38歳以上は人間ドック)、管理職以上を対象に脳ドックの受診を必須としており、それぞれ受診率は100%です。健康診断二次検査についても受診率100%を目標に掲げ、対象者の受診完了を確認するまで定期的に受診を促しています。要所見者には産業医が個別指導を行い、保健師がモニタリングしています。また、年に1度全社員を対象にストレスチェックを実施しています。高ストレス判定者には産業医が面談、働き方の改善を促しています。そのほか、スポーツを通じた交流を企画するなど、健康増進に加えて、社員間のコミュニケーションを活性化する取り組みも実施しています。
3. 社員のエンゲージメント
社員のエンゲージメント向上は、成長に不可欠な要素と考えています。エンゲージメント向上に向けて、特に給与のベースアップと労働時間の改善に注力しています。これは、エンゲージメント調査の結果、職場の人間関係、仕事の裁量などについて社員の満足度が高いことに対し、「ワークライフバランス」のスコアが低いことが理由です。社会のインフラを担う企業として、時間や休日を問わず緊急時に対応する必要があることや、ボンベなどの重量物運搬といった体力を必要とする業務があることに起因していると考えています。これを当社の課題と認識し、待遇や労働時間の改善などに取り組むことで、エンゲージメントを向上させていきます。 給与については、2024年3月期に営業社員のみなし残業手当を10時間分から20時間分に倍増、また2025年3月期の全体昇給率5%と、社員の所得向上に取り組んでいます。また、安全衛生委員会を通じた勤務時間の見直しを行っています。各拠点の安全衛生委員を中心に、振替休暇未取得の社員や長時間労働を行っている社員を把握し、休暇取得や長時間労働の改善を促すなどの取り組みを行っています。さらに、営業所長向けに労務研修を行い、各現場の労働環境整備を促しています。
4. DX導入による業務効率化
当社はDXを取り入れた業務の効率化を進めています。デジタル化によって紙を使用する業務を減らしたり、AI解析で充填・配送を効率化して生産性を向上させるなど、コスト削減だけでなく、社員の働き方改善やモチベーション向上にも繋げています。効率化によって削減した時間は、これまで担当できなかった業務を担うなど有効に活用し、社員の活躍の幅を拡げる取り組みを進めています。
2)必要なスキルの確保
当社の成長には、新たなスキルの確保による社員一人ひとりの成長が必要不可欠であり、この必要性はさらに高まっていると考えます。背景には、技術の進歩とともに既存のビジネスモデルの陳腐化が早くなっていることや、IT技術の発展に伴う業務効率化により社員のマルチタスクが前提となったこと等があります。当社は成長戦略を実際に進めるために必要なスキルを、社員の社内育成と社外との連携によって獲得しています。また、年齢や経歴にかかわらず未経験の仕事に挑戦できる機会を提供することで、社員の向上心を高めています。中長期的な企業価値向上の原動力は、内部・外部環境の変化に対応し、新たな取組みに挑戦し続ける一人ひとりの力です。当社の経営戦略である、エネルギーソリューション、プラットフォームの取組みの加速に向け、人的資本への投資を強化し、企業価値を最大化してまいります。
<これから必要となるスキル>
新たな中長期の成長戦略実現に向けて、以下のスキル取得を推進します。
当社社員はLPガスや都市ガスの専門知識を有し、お客さまのお困りごとへの対応に強みを持っています。今後、本格的にソリューションビジネスを発展させていくために、次世代エネルギーや最適なエネルギー利用の提案に関する知識・ノウハウを習得することが必要と考えています。
また、プラットフォーム事業の成長に向けては、当社の強みである地域の課題を解決していく能力に加えて、法人のお客さまの事業課題を理解し、その解決をテクノロジーに紐づけられるスキルや、当社サービスを導入していただくことによる財務的メリットを論理的に提案するスキルを伸ばしていく必要があります。デジタル/DX分野では、エネルギー小売事業で培った専門性を基盤として、分散型エネルギー社会への変革に挑戦するために技術の更なる高度化が必要となります。
当社は、これらのスキルを①グループ再編による人材の再配置、②スキルの再開発、③外部からの取り込みによって確保します。
①グループ再編による人材の再配置
当社は新たな事業への変革を推進するために、2024年1月に当社およびグループ都市ガス3社を統合し、総合エネルギー小売会社(ニチガス)、エネルギープラットフォーム会社(エナジー宇宙)、システム会社(雲の宇宙船)に分ける組織再編を実施しました。
総合エネルギー小売会社(ニチガス)では、グループの営業を集約化することで、LPガス、電気、都市ガスと総合エネルギーの提案が可能な人材を育成しています。また、個人の強みを活かした人材の再配置によって、社員のパフォーマンス向上にも繋げています。再配置の効果に加えて、競争市場で培ったLPガスの営業マインドがグループ全体で共有されたこともプラスに影響しています。
エネルギープラットフォーム会社(エナジー宇宙)では、プラットフォーム営業の専門部署を設立し、BtoB営業を強化しています。この部署は、ニチガスの営業マインドと法人顧客の要望に応えるスキルを融合しながら、プラットフォーム営業を強化しています。また、充填、配送、保安、導管など各社のインフラを担う人材を集約したことで、多角的な視点でインフラ事業を見直すことができ、コスト削減や保安の効率化などの効果を得られています。また、インフラ事業会社としてサービスを提供する意識が高まり、プラットフォーム事業の成長に繋がっています。
②スキルの再開発
IT技術の発展により社員のマルチタスクが前提となったことに加え、急速に変化する外部環境に対応するため、スキルの再開発の必要性が高まっています。当社は、成長戦略の実現に必要なソリューションの提案力やデジタル/DXのスキルの習得に向け、研修やジョブローテーション等の取り組みを実施し、社員のスキル再開発に注力していきます。また、年齢や経歴に関係なく未経験でも新たな仕事に挑戦できる環境を整備することで、社員の自発的な成長意欲を高めています。
③外部からの取り込み
脱炭素などの社会課題の解決と持続的な成長を両立していくためには、エネルギーの地産地消を実現する分散型エネルギーシステムの構築が重要と考えています。これを実現するには、AIをはじめとする最先端のIT技術との融合が避けられません。当社は、最先端技術を活用するために専門性を持った他社との連携を強化します。そして、多様な人材が活躍できる環境を整備(DE&I)し、他社人材を含む多様な考えや意見を取り込む風土を醸成していきます。当社はこれらに取り組み、中長期的な企業成長を実現します。
1. 他社との連携
当社はこれまで、外部パートナーとの協業を通じて、高度なIT技術を取り込みながらDXを推進してきました。今後はプラットフォームとエネルギーソリューションの成長に向けて、IT技術の活用だけでなく、エネルギー業界という枠を超えた多様な視点を取り入れることが重要と考えています。
これまでの実績として、当社はIoTプラットフォーム企業のソラコム社との提携を通じて、ガスメーターをオンライン化し自動検針等を可能とするスマートメーター(スペース蛍)を共同開発しました。また、東京電力グループとの交流により電力事業のノウハウを学び、電力事業部を立ち上げました。東京電力グループとの連携では、東京電力エナジーパートナーと折半出資で設立した東京エナジーアライアンス社(TEA)において、都市ガス小売事業参入を志向する異業種企業の受け皿となるプラットフォーム事業を展開しています。これらの提携企業に当社の選抜社員を派遣し、新たな技術やノウハウを習得させる「武者修行プラン」も行っています。
今後も業種や会社規模にかかわらず、当社が現状有していないスキルを外部との連携により培い、企業成長に繋げていきます。
2. 多様な人材が活躍できる環境の整備(DE&I)
当社は、多様な人材が活躍できる環境を整備することで、個々のスキルや意見を取り入れ、企業成長に繋げます。外部環境の変化に対応し、新たな取り組みに挑戦し続けるためには、他社を含む多様な人材が持つ考えや知識を積極的に取り込むことが重要と考えるからです。経歴、性別、年齢、人生の目的やステージが異なるすべての社員が、それぞれの能力を充分に発揮して活躍できる環境整備に取り組んでいきます。
<キャリア採用者の活躍>
当社ではキャリア採用者の活躍が進んでおり、2024年3月末時点のキャリア採用者比率は57%、管理職におけるキャリア採用者比率は53%とバランスの取れた比率となっています。その背景には、多様な経歴を持った社員のスキルや考えを積極的に取り入れる企業文化や、経歴にかかわらず実績や挑戦する姿勢を評価する実力主義の文化が根付いていることがあります。今後も採用活動でスキルの確保を進めながら、経歴にかかわらず活躍できる環境の整備を進めていきます。
<女性活躍の推進>
スキルを持った社員の活躍が性別によって制限されることは、企業成長の妨げになると考えています。当社グループの2025年3月末時点の女性管理職比率は2.6%、また正社員の平均年間賃金は男性を100%とした場合女性71.8%と、女性活躍の推進には課題があると認識しています。この背景には、社員数の多い営業職において緊急時にボンベ配送等の力仕事が求められるなど、女性が働きにくい業務の存在があります。社員の活躍を推進するために、業務の分業化や配置の工夫、多様な働き方を可能にする制度の導入等により、性別を問わず個人の能力を最大限発揮できる環境を整備し、企業価値向上に繋げていきます。
<ダイバーシティ>
当社は、社員一人ひとりが持つスキルや意見を大切にしています。人生の目的やステージ、生活スタイルなど、多様な社員が自らのパフォーマンスを最大化しながら活躍できる環境を整備することで、個々のスキルや意見を取り入れ、企業成長に繋げています。
◆指標と目標
当社グループでは、人的資本および多様性に関する取組みについて、以下の指標を設定し進捗を管理しています。
女性社員の活躍を推進するために、業務の分業化や配置の工夫、多様な働き方を可能にする制度の導入等により、性別を問わず個人の能力を最大限発揮できる環境を整備しています。
2020年からは、女性社員向けの研修を実施、2025年3月期は係長以上の女性社員を対象に、女性リーダー研修を行いました。研修ではチームで課題に取り組み、チーム内における自身の役割を考えるワーク等を通じて自分らしいリーダー像を明確化することで、女性のキャリアプラン形成に繋げています。
ダイバーシティの推進では、指名報酬・環境等委員会にて、ダイバーシティの定量目標や具体的施策を議論し、取締役会で方針を決定しております。
女性、中途採用人材、外国籍の社員の活躍に加え、男性の育休取得率についても重要な指標として定めております。これは、当社が推進する女性活躍には、男性による育児と家事への積極的な参加が欠かせないと考えるためです。2022年10月に同比率について30%を目標値に定めましたが、男性社員の育休が取得しやすい制度導入・風土醸成により2023年3月期の実績は36.1%、2025年3月期実績は72.1%と大幅に向上し、2026年3月までの目標50%を1年前倒しで達成しております。
当社が目指す人的資本を整えていく上での適切な指標・目標につきましては、指名報酬・環境等委員会(取締役会の諮問委員会)で議論を行った上で、取締役会にて、議論・決定してまいります。
(1)リスク管理体制
当社は、リスクとは事業を運営することで直面する不確実性と認識しております。グループリスク管理委員会を設置して発生頻度と事業に与える影響の大きさの観点からリスクの重要性を把握し、マイナスの影響を与えるリスクには適切な対策を講じ、プラスの機会には機動的な意思決定を行うことで収益の創出を図っております。中長期的に事業や業績に影響を与え得る課題については、指名報酬・環境等委員会(取締役会の諮問委員会)でトピックを絞って議論し、その上で取締役会にてマテリアリティとして項目を特定、全社対応方針を決定しております。
<ガバナンス体制>

(2)主要なリスク
①原料等の安定調達
当社はラストワンマイルでお客さまにエネルギーをお届けする事業に特化し、輸入等の上流事業は行っておらず、他社からガスや電源等のエネルギーを調達する必要があります。原料調達において、ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の混迷に加えて、米国関税措置による原料・為替相場の変動等、安定したサプライチェーンの確保はより一層重要な課題となりました。これに対して当社は、エネルギー毎にパートナーと調達関係を構築し、各エネルギーを安定的に調達しております。
■LPガス:LPガスの調達は輸入を前提としており、需給や原産国の政情、地政学リスク等に起因する原料価格や為替レートの変動の影響を受けます。これに対して、当社は複数の取引先から調達を行ってリスクを分散し、安定的に調達しております。また原料価格と為替の変動に対し、原則として販売価格の変更で対応します。これにより、原料と為替相場の変動は中長期的に業績に大きな影響を与えません。
■都市ガス(LNG):当社は広範なアライアンス関係にもとづき、東京電力グループから都市ガスの原料を安定的に調達しております(一部除く)。原料費の変動は、原料費調整制度により、最大5ヶ月後にはガス料金に反映されます(会計年度を超えて料金に反映される場合があるため年度によっては原料費の変動が利益に影響する場合があります。また、季節により販売量に変動があるため、売上や利益には一定のブレが生じます。所謂、スライドタイムラグ)。
■電源:当社は、電源についても、その全量を東京電力グループから安定調達しております。電源の仕入れ価格は、主に電源を構成する原料価格などにより変動します。この仕入れ価格の変動は、燃料費等調整制度により、毎月の小売料金に反映しております。
②エネルギー利用の変化
気候変動、原料調達難等による原料価格の高騰、お客さまの省エネ・節エネ意識の高まりなどにより、お客さまのエネルギー利用が変化する可能性があります。この状況に対し当社は、今後も徐々にお客さま先のエネルギー消費量が減少することを前提に、お客さまが主体的にエネルギー利用の在り方を決定できるよう、需要側(消費者)からのアプローチで対応します。電気とガスのセットを前提に、お客さまのエネルギーの最適利用を実現するエネルギーソリューション事業を推進し、いち早く新たなエネルギー価値を提供します。ハイブリッド給湯器や、太陽光発電、蓄電池等の分散型エネルギーを普及させ、お客さまご自身でエネルギーを作り、貯め、賢く使うというご家庭でのエネルギーの最適利用を提案、さらに地域コミュニティ全体のエネルギーの最適利用を提案します。
③大規模災害
大規模地震や豪雨災害等の自然災害が激甚化しており、大規模災害が発生した場合、エネルギーの安定供給に支障をきたす恐れがあります。これに対して当社は、下記の各観点で対策を講じております。
■災害への事前対策
LPガスではマイコンメーター(※1)の100%設置、感震遮断弁設置のほか、張力式放出防止ホース(グラピタ)(※2)を標準仕様としております。都市ガスでもマイコンメーターを100%設置しております。LPガス、自社のガス管で供給する都市ガスの全ガスメーターにスマートメーター「スペース蛍」を設置、ガス漏れ等の異常を常時監視することで、ガス漏洩等の即時対応を可能としております。また旧式のガス管を耐震性に優れたポリエチレン製のガス管に入れ替えるなど、災害時への事前対策を進めております。
またハザードマップにもとづき、洪水浸水想定が1m以上の地域におけるLPガスのお客さま先を対象に、ボンベの転倒や流出防止としてボンベを固定するベルトの二重掛けを行っております。平時より災害マニュアルを作成し、災害発生時に備えた緊急対応要員、資機材整備等、迅速かつ安全な対応をなし得る体制を整えております。災害時用に数日分の食料を常に備蓄しております。防災訓練ではGoogle Meetで映像を映しながら有事を見据えた指示出し訓練を行っております。社員が現場に急行できるよう近隣の宿泊施設と事前協議を行い、有事の際の宿泊施設の確保にも努めております。
※1 地震発生等の異常発生時に自動でガスを止める機能を持つガスメーターのこと
※2 ボンベが転倒した際等に外部へのガス放出を防止する高圧ホースのこと
■災害発生時
大規模地震発生時はガスを自動停止、ガス供給設備の安全を確認し、異常が確認された場合は速やかに対応します。震度5弱以上では社員が出動し、建物やガス設備等の被害状況、ガス漏洩状況等を自主点検をしております。災害時にはコールセンター要員や優先電話等を確保し、お客さまからの連絡に対応します。スマホや衛星電話等で被害情報を迅速に共有し、集めた情報にもとづき災害対策本部からの人員配置指示のもと災害時緊急対応を行っております。迅速な復旧対応への準備として、工事会社やメーカー等の協力会社と復旧対応の協力体制も確立。昨今の豪雨被害増加に伴い、ドローンによる上空からの設備点検の仕組みも導入しております。有事のエネルギー源の確保では主要拠点にLPガスで稼働する自家発電機を設置、太陽光発電設置営業所ではEVバイク用交換式バッテリーを緊急時の電源とし、地域の皆さまにご利用いただける体制を整備しております。
■分散型エネルギーの普及
LPガス事業では、ご家庭ごとに供給設備を設けてガスを供給しております。そのため災害発生時は、個別に点検を行い、異常がないことが確認でき次第、早期復旧が可能です。病院や学校等、災害発生時に速やかな復旧が求められる重要施設は、あらかじめ把握し、優先的に供給再開します。通常、各お客さま宅にはボンベが2本設置されており、ガスが備蓄されている状態です。そのため、万が一の場合もガスボンベを備蓄エネルギーとして使用いただけます。中長期では太陽光や蓄電池、EV等の分散型電源を普及して広く分散型エネルギーネットワークを構築し、地域社会のエネルギーの最適利用を実現してまいります。
④保安上のリスク
■需要家保安
当社は、ガス及びガス機器の販売・工事をするにあたり、保安を最重要視して、法令に基づき、ガス漏洩検査や供給設備や消費機器の点検等の保安責任を果たしています。しかしながら、点検時の確認不足が原因で、ガス漏洩を起因とするガス爆発事故や、機器の経年劣化や施工上の欠陥(給排気不備)による不完全燃焼が引き起こすCO中毒事故が発生した場合、直接的な損害のみならず、顧客からの信頼を喪失、社会的評価の低下など、当社の事業収支に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対し、当社はスマート保安という保安業務に特化したシステムを開発、必要な点検項目を自動的に提示される仕組みを構築することで、調査のモレを排除するよう務めています。また、自社開発したスマートメーターで毎時、ガスの使用状態を把握、ガスの漏洩についても検知しております。ガス漏洩が疑われる際には速やかに出動し、事故の未然防止に努めております。お客さまが当社から購入頂いたガス器具は、データベース化して管理しており、点検や緊急時対応の保安措置にも繋げております。保安教育は、毎月実施、研修の充実により、保安業務に携わる社員は、第二種販売主任者や液化石油ガス設備士等の資格を取得しています。
■供給者保安
当社は、都市ガスの供給をするにあたり、ガス導管の保安責任を負っております。道路陥没などでガス管が損傷した場合、ガス漏洩やガス供給の支障が広範囲におよぶ恐れがあります。このような事態は、社会的責任を問われるだけではなく、地域社会からの信頼を失う可能性があります。当社は被害を最小限に抑えるために、導管に一定区間ごとにバルブを設置する計画をすすめております。
⑤レピュテーションリスク
当社に関する誹謗中傷等の拡散により、ステークホルダーの皆さまからの信頼を低下させる可能性があります。問題が生じた際にはグループリスク管理委員会で対応方針を協議し、情報を開示するとともに、再発防止策を講じます。コンプライアンス遵守については、グループ役職員に教育を行い、その重要性を認識して業務にあたるよう行動規範を制定しております。コンプライアンス意識調査(年に1度実施)とその遵守状況は適宜開示し、内部監査の対象としております。
営業領域では、全ての外部委託先に対して、弁護士が監修しながらも座学ではない実践的な研修を行っております。テストへの合格が必須であり、2023年からは、〇×の2択から複数選択肢の中から正解を選択する難易度の高い形式に変更しました。コンプライアンスを遵守しない委託先とは契約を解除し厳格に対応しております。加えて、訪問販売や電話を通じてお申込みいただいた全てのお客さまに、その意思と内容に間違いがないか確認するため契約後の再確認電話を実施しております。また、グループリスク管理委員会のもとで、本部長が直轄する営業品質会議を開催し、お客さまからのお問合せ対応の評価や再発防止に向けた営業品質改善指導等を行っております。
また、当社の事業活動において、従業員による車両事故は重大なレピュテーションリスクとなり得ます。車両事故が発生した場合、企業イメージの低下、顧客からの信頼喪失、社会的評価の毀損など、当社の事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。このリスクに対応するため、当社ではコンプライアンス委員会を中心に、安全運転に関するヒアリングの実施、事故事例の分析と全社への周知、安全運転講習会の開催などの取り組みを積極的に推進しています。また、運転記録の管理体制を強化し、リスクの早期発見と未然防止に努めています。
⑥人材の確保・育成
少子高齢化を背景に労働力不足が深刻化しております。LPガス事業の根幹である物流における働き方改革(2024年問題)、物価上昇等に伴う他社の大幅な賃上げ実施等は、当社の人員確保に影響する可能性があります。これに対して当社は、ITの導入で人が行う業務の生産性を向上させ、省力化を図っております。例えば、通常は各家庭に訪問して実施する保安業務について、遠隔から実施できる仕組みを構築することで、一人あたりの保安実施数を増加させております。また待遇面では、当社が魅力的な勤務先となるよう、一人あたり給与を上げております。2025年は、平均4.5%の賃上げを実施いたしました。また、多様な働き方や人事制度を設け、様々なバックグラウンドを持つ個人が、意欲を持って個人の能力を最大限発揮できる環境の整備に注力しております。
25年3月期の業績は以下の通りです。 (単位:百万円)
25年3月期は全ての利益段階で増益となりました。高気温の影響等でガス販売量が伸びず、ガス事業は厳しい環境でしたが、電気事業とプラットフォーム事業の成長がガス事業のマイナスを上回り、売上総利益で増益となりました。
粗利増益の一方で、販管費は前年比で減少しました。これは、顧客密度の高まりによる経費効率の向上に加えて、液石法改正省令の施行に伴い顧客獲得経費を適切に抑えたためです。システムの除却などによって特別損失を計上しましたが、純利益でも増益の過去最高益を計上しております。合わせて、ROIC向上に努めながら、不要な株主資本はお預かりしない資本政策を徹底することで、ROEは16.5%と前年より1.8%伸長させております。
<セグメント別の状況>
◇ LPガス事業
LPガス事業による売上総利益は455億49百万円(前年同期比96百万円減)、LPガス機器・工事事業並びにプラットフ
ォーム事業による同利益が41億83百万円(同3億75百万円増)となりました。
LPガス事業は、ガス事業の売上総利益が前期比で微減、業務用の利幅の改善を進めたものの、高気温の影響により
家庭用・業務用ともにガス販売量が伸びませんでした。一方、プラットフォーム事業は、労働力不足を背景に他社か
らの保安受託が拡大、エネルギーソリューションではハイブリット給湯器の販売が好調でした。
業容では、LPの顧客純増数が伸長しております。新規獲得の伸長、解約の減少の他、商圏買収を積み上げ、21年3月期以来、4年ぶりに純増数が3万件を超えました。これにより、お客さま数は、前年同期末から3万3千件増の103万件となりました。営業施策では、集合住宅から戸建へシフト、ニチガス本来の強みを活かし、獲得経費を抑えながら、高使用量のお客さま層へアプローチしています。
また、25年3月に、中堅事業者である門倉商店が当社グループ入りしました。インフレや労働力不足が進む中、大
手・中堅企業の事業撤退が本格化しております。今後は、グループ化した門倉商店の卸機能をプラットフォーム事業
に取り込む等、利益成長に繋げるとともに、本件のノウハウを活かし、業界集約をさらにすすめてまいります。
※ 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。
◇ 電気事業
電気事業セグメントの売上総利益は、大幅増益の52億26百万円(前年同期比15億39百万円増)となりました。
電気契約数の増加に加え、料金改定効果が通年で寄与したためです。営業面では、二人暮らしなどの中使用量世帯も商品のターゲット層に拡大したことで、新規の契約獲得は加速、お客さま数は前年同期末より3万5千件増加の38万1千件、電気のセット率は前期末21.6%から当期末に23.5%に上昇しました。
26年3月期も引き続き顧客基盤の拡大期と位置づけます。安定した電源の確保を背景に適切な利幅を確保しつつも、
撤退する事業者や料金が割高な事業者のお客さまへ料金提案など、積極的に事業規模を拡大します。
※ 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。
◇ 都市ガス事業
都市ガス事業セグメントの売上総利益は、都市ガス事業による売上総利益が184億96百万円(前年同期比9億67百
万円減)、都市ガス機器・工事事業による同利益が10億97百万円(同85百万円増)となりました。
都市ガス事業の売上総利益が減少いたしましたのは、スライドタイムラグ(※)のプラス影響が減少したことに加え、入札案件の利益規模が縮小、小売の顧客数が減少したためです。一方、足許では、入札案件の利益縮小に底打ちが見込まれ、また、減少を続けてきた小売の顧客数は反転、純増に転じており、来期、都市ガス事業は好転する見通しです。東京ヴェルディや宇都宮ブレックス等のコーポレートパートナーを務めるスポーツチーム運営費に、ガス・電気料金の一部が充てられるメニューを提供する等、コミュニティと関わりを強めることで、顧客基盤の拡大に繋げております。
※スライドタイムラグとは、都市ガスの原料費調整制度によるもので、原料価格の変動が先に売上原価、後に遅れて売価(料金)に反映されることから発生するタイムラグのことで、原料価格が下降基調である時に、プラスの影響があります。
※1 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。
※2 お客さま件数は、小売件数(供給している件数)を記載しております。
(2)キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、株主資本の収益率「ROE」を財務上の最重要KPIと設定し、株主価値の増大に向け、ROEを2026年3月期には22%に向上させていく方針です。ROEを向上させる方策として、資産の収益性を高めるべく、投下資本利益率(ROIC)をKPIとして設定し、その向上に努めております。収益性の高い資産(LPガスとIT)に集中して資本を投下しながら、一方で低収益資産の売却等をしてバランスシートの中身を入れ替えることにより、必要以上に総資産規模を膨らますことなく資産の収益力を高めています。また、資本の調達サイドでは、有利子負債の調達能力を検証し、最適な自己資本比率を45~50%から見直しを実施し、2026年3月期には40%まで引き下げることを計画しております。最適な自己資本比率に向けて不要な株主資本は持たず、適切に借入を活用することで、ROICの向上をダイレクトにROEにつなげてまいります。
・25/3期末の資産の部は、1,560億円と前期末とほぼ同水準(2.0%減)となりました。資産が若干減少したのは、保
有システムの除却や、有価証券の評価減によるものです。
・同期末の負債の部は、こちらも885億円と前期末とほぼ同水準(2.4%増)、純資産の部は674億円と前期末から52億
円(7.3%減)減少しております。
負債の部が微増したのは、当期から負担を開始した電力原価(容量拠出金)の支払サイトが長いことに起因した債務増や未払消費税が増加したためです。一方、純資産の部が減少いたしましたのは、当期純利益115億円に対し、配当93億円、自己株式の取得67億円の株主還元を実行し、資本調達の適正化を進めたためです。
デッドエクイティレシオは0.7倍、株主資本比率は43.2%と、財務基盤の安定性を確保しながらも、最適な資本構成を心掛け、調達コスト(WACC)を意識した資本調達を行なっております。
(単位:億円)
当期は、営業キャッシュフロー279億円に対し、投資キャッシュフローとして88億円を支出、フリーキャッシュフロー191億円を生み出し、161億円を株主に還元、22億円を借入返済に充当、現金及び現金同等物は、前期末と比べ7億円増加の194億円といたしました。
(営業活動によるキャッシュフロー)
営業活動によるキャッシュフローは、279億円の収入(前年同期比44億円増加)となりました。増加した主な要因は、営業利益が増加したことに加え、消費税の支払が縮小したこと、前期には再編費用に係る支出があったことによるものです。消費税の支払の縮小は、小売事業をニチガスに集約した結果、一時的に支払を先送りできたことによるものです。当期から負担する容量拠出金(電力の供給力を確保する目的で小売事業者等が負担する費用)を長い支払サイトで調達する等、キャッシュ・コンバージョン・サイクルも良化しております。
(投資活動によるキャッシュフロー)
投資活動によるキャッシュフローは、88億円の支出(前年同期比3億円減少)となりました。当期は、システム開発は一服、前期よりICT投資を9億円減らした一方、グループ会社(門倉商店)への出資及び貸付投資を増加させました。
(財務活動によるキャッシュフロー)
財務活動によるキャッシュフローは、183億円の支出(前年同期比96億増加)となりました。支出が増加した要因は、フリーキャッシュフローが増加したためです。最適資本構成にむけて、自己株式取得や配当の還元を161億円(30億円増加)実施し、また、有利子負債の返済を22億円いたしました。
(単位:億円)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。