当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2014年を第三の創業とする新体制の発足以降、持続的な成長に向けて事業基盤の整備・強化や機能・サービス力の強化・拡大に取り組んでまいりました。2014年から2016年の「Next Stage Plan G」、2017年から2019年の「PLG 2019」と、2回の中期経営計画により事業基盤の整備と機能強化を図り、2020年から2022年の[D.C. 2022]の3年間では、過去の施策による効果創出として収益力の向上を実現しました。これらの結果、連結営業利益は2014年度の80.3億円から、2022年度には202.8億円まで大きく伸長しました。
一方、不透明かつ急激な変化を伴う環境下で、持続的かつ長期的な未来志向による企業価値の向上を実現するために、当社グループは2023年5月に長期ビジョンを見直すとともに、新たな中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]を策定し、具体的な成長戦略と、この実行により実現を目指す経済価値・社会価値両面の指標と目標を定めました。さらに、2024年1月には、サンゲツグループの新たな企業理念を発表しました。企業活動における最上位概念としてPurpose(存在意義)を位置づけ、それにより実現する未来像をDream、Purposeを形づくる企業としての信念をBelief、社員の姿勢をWayとして新たに定義しました。企業理念の詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 1.サステナビリティ全体に関する基本的な考え方及び取組」をご参照ください。
サンゲツグループは、この企業理念に基づき、現中期経営計画[BX 2025]に掲げる施策を着実に実行することで、力強く持続的な成長を実現し、さらなる企業価値向上を目指してまいります。
■Sangetsu Group長期ビジョン[DESIGN 2030]
1.目指す企業像
サンゲツグループはスペースクリエーション企業へ
人的資本とデジタル資本を基盤としたデザイン力とクリエイティビティによる4機能、すなわち
・それぞれの市場に最適なコンセプトに基づく魅力的な空間デザイン提案機能
・高度な企画・開発・調達力を持ち、広範囲な商品を提案するスペース材料提供機能
・品切れなく広域に即時配送を可能とする在庫・配送・物流機能
・さまざまな事業、人的関係、企業連携を通じての規模と総合性・機動性のある施工機能
を有機的にインテグレートしたソリューション力により、グローバルにスペースクリエーションに関する高い
価値を提供する企業を目指します。
2.長期ビジョン達成の基本戦略
この基本戦略によるビジョンの達成を通じ、私たちは、次の社会的価値の実現を目指します。
[サンゲツグループが実現を目指す社会的価値]
サンゲツグループは、
|
Inclusive |
(みんなで) |
:誰もが安心して快適に過ごせるインクルーシブな社会の実現 |
|
Sustainable |
(いつまでも) |
:地球環境を守るサステイナブルな社会の実現 |
|
Enjoyable |
(楽しさあふれる) |
:より豊かでエンジョイアブルな社会の実現 |
社会の実現に貢献します。
3.定量目標
|
2030年3月期 |
連結売上高 |
2,500億円 |
|
|
|
連結営業利益 |
270億円 |
|
[スペースクリエーション企業の先の展開を目指して]
2020年以降、「スペースクリエーション企業」への転換に向けた取り組みを通じ、私たちはこの新たな事業モデルの将来性や有効性を確認しました。その一方で、さらに大きな経済・社会価値の創出を目指すためには、スペースクリエーション企業の先を見据えた、より長期的な事業展開を描く必要性を認識しました。その可能性の一つが「スペースオペレーション」です。「スペースクリエーション企業」として、さまざまな空間のニーズを捉えた提案・提供を行うためには、その空間での人々の過ごし方を考え、構想することが必要です。すなわち、より意義のある「スペースクリエーション」とは、どのような空間を提供し、どのように人々に使っていただくかを考えることであり、これは空間の「オペレーション」の考察につながります。その意味において、スペースクリエーション事業の先の展開にはスペースオペレーション事業の可能性があると考えており、「空間の運用」を通じてより長期的に人々とつながり価値を提供する、スペースオペレーション事業への展開の可能性を検討していきます。
■中期経営計画(2023-2025)[BX 2025] ※BX=Business Transformation
前中期経営計画(2020-2022)[D.C. 2022]期間中にさまざまな施策を進めた結果として、2022年度には収益の大幅な伸長を達成いたしましたが、前中期経営計画の施策の進展以上の収益の拡大となったとも理解をしております。その意味において、中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]の3年間は前中期経営計画を引き継いで収益基盤を堅固なものとし、次の飛躍に備える期間と位置付けております。長期ビジョン[DESIGN 2030]にて明確化した、目指すべきスペースクリエーション企業像の確実な実現に向けての諸施策を実行するとともに、スペースクリエーション事業のプラットフォームにおいて、従来の主要商品・主要市場での拡張のみならず、商品面での拡充、提案・物流・施工の各機能の強化による事業領域の拡大、海外事業の強化・拡大・収益化、エクステリア事業の拡大・高度化を実行いたします。この中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]の基本方針、施策、資本政策、定量目標は以下のとおりです。
1.基本方針
中期経営計画(2023-2025)
[BX 2025]
-次の飛躍に備える3年間-
スペースクリエーションの価値を高めるソリューション力を強化・拡充し、強固な収益力と成長力を持つスペースクリエーション企業へと転換、主要商品・市場の事業拡張に加え、商品の拡充、エクステリア事業・海外事業の拡大を実行する。
また、さらなる長期的成長を可能ならしめる事業を展開するべく、スペースオペレーション事業の可能性を検討する。
2.施策
3.資本政策
1)株主還元方針
・2026年3月末の自己資本を950~1,050億円とする
・株主還元は配当を主体とし、1株当たり年間配当金は130円を下限に、安定的な増配を目指す
・市場の状況により自己株式の取得も検討する
2)資金配分計画
|
中期経営計画期間中資金創出 |
|
資金配分 |
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||
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期初保有現金同等物 |
270億円 |
|
成長投資 |
200~250億円 |
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営業CF |
470~510億円 |
|
株主還元 |
250~350億円 |
|
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借入金増減 |
▲80~60億円 |
|
期末現金同等物 |
200~250億円 |
|
4.定量目標(2026年3月期目標)
1)経済価値
|
① 連結売上高 |
1,950億円 |
|
|
② 連結営業利益 |
205億円 |
|
|
③ 連結当期純利益 |
145億円 |
|
|
④ ROE |
14.0% |
|
|
⑤ ROIC |
14.0% |
|
|
⑥ CCC |
65日 |
|
2)社会価値
①地球環境
事業活動(Scope1&2)における環境負荷の低減
|
GHG排出量 |
連結 |
2021年度比 28%削減 |
|
|
GHG排出量 |
単体 |
2018年度比 60%削減 |
|
|
使用エネルギー量 |
単体 |
2018年度比 6%削減 |
|
|
リサイクル率(有効利用率) |
単体 |
90%以上 |
|
②人的資本
社員の健康と能力開発、風土改革
|
非喫煙率 |
単体 |
85%以上 |
|
|
人的資本投資額 |
単体 |
3年間合計 7億円 |
|
|
キャリア採用者数 |
単体 |
3年間合計 60~80名 |
|
|
エンゲージメントスコア(※) |
単体 |
58.0(A) |
|
※2023年度以降、株式会社リンクアンドモチベーション社の提供するサービス「モチベーションクラウ
ド」のスコアを使用しています。詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組
3.人的資本に関する考え方及び取組 (3)戦略、指標及び目標 6)エンゲージメント(企業風土の醸
成に関する取組)」をご覧ください。
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進
|
女性管理職比率 |
単体 |
25%以上(2026年4月時点) |
|
|
障がい者雇用率 |
単体 |
4%以上(2026年3月末時点) |
|
|
男性育休取得率 |
単体 |
2週間以上 100% |
|
③社会資本
コミュニティへの参画
|
児童養護施設改修活動 |
連結 |
50件/年間 |
|
|
マッチングギフト |
連結 |
18,000 S-mile(※) |
|
|
外部団体への寄付を含めた 社会貢献活動費 |
連結 |
年間経常利益の0.3%~0.5%を目途とし、 寄付は特定の団体に継続的に実施する |
|
※社会貢献活動の促進を目的とした「サンゲツグループマッチングギフトプログラム」において、社員
の社会貢献活動に対しスマイルポイント(S-mile)を付与し、そのポイントを金額換算して支援先の
NPO等の団体へ寄付しております。基準となる活動は、会社が主体となって実施する「サンゲツグルー
プボランティアクラブ」での活動に加え、社外での福祉施設支援・被災者支援・国際交流・地域活動・
青少年教育・NPO支援等の個人活動を対象とし、全国の社員が地域によらず積極的に参加できるよう活
動の支援を行っております。
なお、中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]の詳細につきましては、当社Webサイトにて、説明動画および資料を公開しております。
https://www.sangetsu.co.jp/company/ir/library/briefing_report.html
(2)経営戦略等、経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
経営環境における今後の見通しにつきましては、地政学的リスクの高まりや為替影響を一因とするエネルギー資源・一部原材料価格の高騰が継続することが予想されます。加えて、各国の金融引き締めの影響による景気の先行きに対する不透明性、不確実性が拡大しているなか、先進国での政治的混乱が加わることにより、実体経済にも大きな影響を与えることが懸念されています。当社事業に関連の深い国内建設市場では、住宅市場においては建築コスト上昇等を背景とした住宅需要の抑制により、特に新設住宅着工戸数・床面積は低調な状況が続くものと予想されます。非住宅市場においても新築需要は弱含みである一方、経済活動の再開を背景としたインバウンド需要によるホテル・宿泊施設等の回復や、主に首都圏におけるオフィスリニューアル市場の高まりが見込まれます。コスト面においては人件費や物流費、一部原材料価格等の高騰による継続的なコストアップの影響を見込むほか、スペースクリエーションを構成する空間デザイン提案機能・スペース材料提供機能、在庫・配送・物流機能、施工機能の強化をはじめとする戦略投資の費用発生を計画しています。2021年12月に発生した当社グループ会社であるクレアネイト株式会社の火災事故を発端とする壁紙の供給難は、壁紙業界の供給体制の不十分さを示すものでありました。これに対応すべく2022年11月に発表した東広島における新工場建設への投資は、壁紙の安定供給の実現を目指すものであります。また、国内の物流業界における2024年問題は、当社事業にも大きく関係するものであり、サービスクルー便をはじめとする物流の内製化の推進に加え、物流の効率化・省人化を目指してサプライチェーンマネジメントの見直しとともに設備投資を進めてまいります。これまで営業損失が継続していた海外事業においては、来期以降からの利益創出を目指します。北米では、主力のホテル分野を中心とする市場環境は引き続き堅調に推移すると予想しており、戦略的商品の投入、短納期供給力の強化策の実行による需要の取り込みを進めていきます。一方、東南アジアにおいては競争優位性を高めるためにM&Aや営業組織の改編、国別のニーズに応じたスペースクリエーション機能の強化を進めていくほか、不動産市場の低迷や消費意欲の低下などを背景に建設計画の遅れ・中止が発生する中国・香港市場では、今後の市場成長性や当社グループ全体における事業の方向性を慎重に見極めながら、事業体制の再構築を進めていきます。
このような状況の中、当社グループは、前述「(1)経営方針、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に掲げるSangetsu Group長期ビジョン[DESIGN 2030]及び3ヵ年の中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]を着実に実行することにより、商品販売だけでなく配送力・提案力・施工力といった機能をインテグレートしたソリューション力を強化し、国内を中心とした内装材の販売からグローバルに展開する「スペースクリエーション企業」への進化を図ります。そのために、人的資本の拡大・高度化・活躍支援や、デジタル資本の蓄積・分析・活用を進め、社会的価値の創造に努めるとともに、定量目標の達成を目指してまいります。
(その他の対処すべき課題)
1)東南アジアでの事業は、過去欧米品を中心にホテル関連の建設市場向けの販売をメインとしておりましたが、アジア市場における欧米品の競争力低下もあり、既存の事業モデルでの競争優位性が失われつつある状況です。この状況を受けて、アジア市場で安定的な収益を確保しつつ事業成長を達成するために、デザイン部門や施工部門を設置し機能強化に取り組むとともに、グループ会社であるクレアネイト社によるアジア市場向けの競争力のある商品の開発・販売、住宅市場向けの中小口取引拡大や非住宅市場の拡大に向けた営業体制の見直し、在庫・販売施策の推進等を進めています。一方、中国・香港での事業については、不動産市場の低迷や雇用環境の悪化による消費意欲の低下などを背景に、建設計画の遅れ・中止が発生するなど、厳しい状況が続いております。このような市場動向を注視しながらも、今後の市場成長性や当社事業における競争優位性を見極めながら、デザイン提案等の機能強化や事業体制の再構築を進めている状況です。
2)日本市場において、特定の仕入先からの壁装材の品質問題が発生しており、お客様相談室を設置の上、当該仕入先と連携しつつ、当該商品の施工先住居、施設等に対する補修対策を継続的に実施してまいります。この補修に係る費用は仕入先によって全額負担されており、当社において損失は計上されておりません。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.サステナビリティ全体に関する基本的な考え方及び取組
当社グループは2014年以来、新しい経営体制のもと事業体制・経営戦略の見直しや諸施策の実行を通じ、経済価値・社会価値両面での企業価値の向上に努めてきました。一方、新体制となって約10年が経過し、グループ会社の拡大や事業領域の拡張、新たなメンバーの参画が進む中で、今後の成長に向けた新たな課題認識を持つようになりました。そこで、これまで取り組んできた事業モデルの変革、そして次元を超えた成長の達成を目指すとともに、気候変動や生物多様性の棄損、人権侵害や貧困などの課題が拡大・深刻化していく社会に対して、当社グループの果たすべき役割を明確化し、ステークホルダーとともに具体的なアクションに結び付けていくためにはサンゲツグループの価値観を示す、企業理念の全面的な見直しが必要であるとの意見が高まりました。これに基づき、2022年12月以降、有志社員による「企業理念検討・浸透プロジェクト」を立ち上げ、グループ各社・各組織での議論ならびに取締役会においても検討を続け、2024年1月に新たな企業理念を公表いたしました。
新たな企業理念は、最上位の概念としてPurpose(存在意義)を置き、それにより実現する未来像をDreamとして掲げるとともに、Purposeを形づくる企業としての信念をBelief、社員の姿勢をWayとして定めました。2023年5月に公表した中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]においても、5つの施策の一つに「社会価値の向上」を定め、事業の中心である空間創造を通じた企業活動による経済価値と社会価値の創出を通じて「すべての人と共に、やすらぎと希望にみちた空間を創造する。」ことを目指しています。
(1)ガバナンス
当社は、2016年4月にCSR推進課を新設、2017年4月には社長を委員長として、全社を横断的に統括するCSR委員会を設置しました。2020年11月からはESG委員会に名称を変更し、ESGに関する国際的なガイドライン(ISO26000、GRI、SASB)などを参考に、実効的なESGマネジメントを行い、社会的課題解決に向けた取り組みを進めています。
ESG委員会では、ISO26000で示された中心課題を活動テーマとして、5つの分科会にて活動を推進しています。各分科会は、テーマにおける主管部署だけでなく、コーポレート部門やロジスティクス部門、事業部門、スペースプランニング部門、海外事業部門および社長直轄組織も含めた幅広いメンバーで構成し、議論の多様性を高めています。ESG委員会は、各マテリアリティに対して取り組み目標を設定し、実際に業務を行う社内各部門の業務計画に落とし込みます。また、取り組み状況については、年4回、四半期ごとに、分科会からの報告による進捗管理を行うとともに、課題解決のための意見交換や議論を行っています。組織体制においては、委員長を社長が、統括責任者を担当執行役員が務め、さらに監査等委員である社内取締役の出席のもと運営しています。
ESG委員会の活動内容に関する取締役会への報告は、年2回の定期報告を行う仕組みとしており、取締役会のより強い監督のもとでESG活動を展開しています。
ESG委員会体制図
■当社グループのサステナビリティに関する主な審議事項(2023年度)
|
取締役会 |
企業理念の策定 |
|
CEO後継課題 |
|
|
全社組織体制の議論、幹部人事 |
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|
ESG委員会、リスク管理委員会、コンプライアンス委員会など各委員会の進捗 |
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|
新工場に関する議論(BCP関連を含む) |
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事業活動における環境負荷低減について |
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|
社員の能力開発と健康増進について |
|
|
コミュニティへの参画について |
|
|
指名報酬委員会 |
次年度の取締役会構成メンバーおよび社長執行役員を含む経営執行体制 |
|
取締役(監査等委員である取締役を除く)のうち執行役員を兼務する者および執行役員の貢献度評価 |
|
|
次年度の役員報酬のあり方、報酬水準の妥当性 |
|
|
社長執行役員の中長期サクセッションプランの検討 |
|
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中長期的な執行役員や幹部社員候補の検討 |
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|
ESG委員会 ※各マテリアリティに基づく審議を実施 |
マテリアリティの見直し |
|
事業活動における環境負荷低減 |
|
|
見本帳リサイクル |
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社員の能力開発と健康増進 |
|
|
品質安定性 |
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|
コミュニティへの参画 |
|
|
コーポレートガバナンス強化 |
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コンプライアンスの徹底 |
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|
供給安定性 |
(2)戦略
当社グループは、社会的要請や当該業界の重要テーマを踏まえ、社会および長期投資家にとっての重要度と当社事業の持続的成長への影響からマテリアリティを特定しました。これらのテーマは、長期ビジョンの実現に向けた重要項目でもあり、事業計画と連動しながらPDCAサイクルを回しています。
抽出したマテリアリティは、社会および長期投資家にとっての重要度と当社事業の持続的成長への影響からマッピングを行うとともに(表①マテリアリティマップ)、長期ビジョンで実現を目指す社会価値や、関連するSDGsと紐づけています(表②マテリアリティ・社会的価値・SDGsとの関連性)。また、特筆すべきマテリアリティに関しては、リスクと機会から分析し、リスクの管理と機会の創出・獲得に向けた対応を行っています(表③特筆すべきマテリアリティ)。
なお、企業理念の策定に伴い、全社を横断的に統括するESG委員会を中心にマテリアリティの見直し・特定についての議論を進めており、適時適切なタイミングで改めて公表いたします。
マテリアリティの特定のプロセスは、以下のとおりです。
表①マテリアリティマップ
表②マテリアリティ・社会的価値・SDGsとの関連性
表③特筆すべきマテリアリティ
|
区分 |
マテリアリティ |
「リスク」と「機会」の考え方 |
|
リスク |
・調達面での供給安定性 |
商品を製造するメーカーの生産キャパシティは、業界全体の低収益構造を反映して年々逼迫している。主たる分野で大きなシェアを有するブランドメーカーとしては、製造設備の不具合などで計画どおりの生産ができず、顧客への商品提供に支障が出ることは、当社の収益に大きく影響するとともに、建設現場での納期遅延などの要因ともなり得る。業界全体のリスク要因として認識し、サプライチェーン全体での安定した調達・供給体制を維持・強化する必要がある。 |
|
・品質安定性 |
インテリア商品やエクステリア商品など、顧客が直接見て触れる商品を提供する立場として、品質の安定性は顧客要求事項の最上位の項目の一つである。全国に広く販売しシェアを獲得している状況下、品質の低下・劣化による貼り替えなどの対応は、ブランドイメージの棄損になるとともに、収益を圧迫する大きなリスク要因である。品質管理を担う組織的な管理体制と専門人材の増強に向けた取り組みを継続的に進めている。 |
|
|
・事業活動における環境負荷 (GHG、エネルギー、廃棄物) |
当社単体としては、GHGやエネルギーは事務所の照明・空調、ロジスティクスセンターの動力など、廃棄物は商品のカット端材や不良在庫、回収見本帳などにおいて負荷が発生しているが、サプライチェーン全体に対する環境負荷は相対的に小さい状況である。一方で、グループ全体では製造を担うクレアネイト、Korosealにおける製品製造面での環境負荷が大きく、気候変動や資源循環といった世界的な課題に向き合い、取り組みを進捗させていく必要がある。この取り組みが進展しない事態となることは、地球環境及び企業経営のサステナビリティに対しての大きなリスク要因となる。 |
|
|
機会 |
・デザインするよろこびの提供 |
長期ビジョン・中期経営計画に掲げるスペースクリエーション企業への転換に向けての重要課題であり、デザインはプラスアルファの価値を提供する源泉である。インテリアとエクステリアの双方をモノから取り扱う唯一の企業として、デザインを追求し提供することで、企業価値を高めることができる。また、デザインを通じた顧客とのコミュニケーションは、顧客と当社がwin-winな関係を築く結果となり、その実績の積み重ねがサンゲツグループとしての高いデザイン力の構築につながっている。 |
|
・サービスと価格の 適切なバランス |
顧客にとっては、商品群によって求めるサービスに違いがある。価格を訴求すべき商品や、受注・出荷・配送などのサービス機能を重視すべき商品などさまざまであるため、それぞれのサービス機能に価値を感じていただき、顧客の満足度を高めることは、適切な対価を得る重要な機会となる。 |
|
|
・社員エンゲージメントの向上 ・社員の健康と能力開発 ・従業員のダイバーシティ・ インクルージョン |
人材は最も重要な基盤の一つであり、社員のエンゲージメントの向上が、業績向上に加え、企業価値の向上につながる。中期経営計画(2017-2019)「PLG 2019」から取り組んでいる健康経営・働き方の見直し・社員の能力開発などに加え、専門性のある人材のキャリア採用拡大や、2022年4月からスタートした変革と組織強化を目的とする人事制度の導入によりさらなる人的資本の強化を進めている。これは当社グループの持続的な成長に大きく寄与する機会となる。 |
(3)リスク管理
当社では、「(2)戦略」に掲げるマテリアリティに対し、ESG委員会での活動を通じ、これらの改善に向けたPDCAサイクルを回しています。各分科会の取り組みの評価においては、年4回のESG委員会でのレビューを通じ、継続的な改善と課題の修正・追加を行っています。
(4)指標及び目標
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における施策と目標
■社会価値向上に向けた施策
[環境]
・連結および単体 GHG(Scope1&2)排出量削減
・GHG(Scope3)排出量の把握と削減方策の明確化
・低環境負荷商品の開発強化
・見本帳リサイクルセンターの拡大含めリサイクルの推進
[社会]
・ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下、DE&I)推進
・児童養護施設の住環境改善活動の推進
・支援が必要な子ども達、開発途上国、難民への継続的支援
■人的資本の拡大・高度化・活躍支援に向けた施策
・組織別人事担当者の配置
・多様性のあるキャリア採用の大幅増と新卒採用拡大
・専門性と事業構築力強化のための教育・研修拡充
・処遇改善と働く環境整備
・非正規社員比率の改善とダイバーシティの推進
■定量目標(2026年3月期目標)
①地球環境
事業活動(Scope1&2)における環境負荷の低減
|
GHG排出量 |
連結 |
2021年度比 28%削減 |
|
|
GHG排出量 |
単体 |
2018年度比 60%削減 |
|
|
使用エネルギー量 |
単体 |
2018年度比 6%削減 |
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リサイクル率(有効利用率) |
単体 |
90%以上 |
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②人的資本
社員の健康と能力開発、風土改革
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非喫煙率 |
単体 |
85%以上 |
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人的資本投資額 |
単体 |
3年間合計 7億円 |
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キャリア採用者数 |
単体 |
3年間合計 60~80名 |
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エンゲージメントスコア(※) |
単体 |
58.0(A) |
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※2023年度以降、株式会社リンクアンドモチベーション社の提供するサービス「モチベーションクラウド」のスコアを使用しています。詳細については、「
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進
|
女性管理職比率 |
単体 |
25%以上(2026年4月時点) |
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障がい者雇用率 |
単体 |
4%以上(2026年3月末時点) |
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男性育休取得率 |
単体 |
2週間以上 100% |
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③社会資本
コミュニティへの参画
|
児童養護施設改修活動 |
連結 |
50件/年間 |
|
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マッチングギフト |
連結 |
18,000 S-mile(※) |
|
|
外部団体への寄付を含めた 社会貢献活動費 |
連結 |
年間経常利益の0.3%~0.5%を目途とし、 寄付は特定の団体に継続的に実施する |
|
※社会貢献活動の促進を目的とした「サンゲツグループマッチングギフトプログラム」において、社員の社会貢献活動に対しスマイルポイント(S-mile)を付与し、そのポイントを金額換算して支援先のNPO等の団体へ寄付しております。基準となる活動は、会社が主体となって実施する「サンゲツグループボランティアクラブ」での活動に加え、社外での福祉施設支援・被災者支援・国際交流・地域活動・青少年教育・NPO支援等の個人活動を対象とし、全国の社員が地域によらず積極的に参加できるよう活動の支援を行っております。
また、当社では中期経営計画に掲げる指標以外にも、E(環境)S(社会)G(ガバナンス)の各項目で詳細なKPIを設け、進捗状況を管理しています。詳しい内容は当社Webサイトをご覧ください。
「ESGマネジメント」KPIと実績
https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/management.html
(5)その他、2023年度における具体的な取組
当社グループは、企業活動を通じて社会的責任を果たすべく、サステナビリティへの取り組みを最重要課題の一つと位置付け、持続可能な社会・企業を実現することを目指しています。2023年度における、主な取り組みは以下のとおりです。
■環境面における取組
持続可能な社会の実現に向けた商品開発を進めており、2023年6月に発刊した量産壁紙見本帳「SP」において、業界で初めて環境にやさしい非フッ素の撥水剤(PFCフリー)を使用した商品を収録しました。また、11月に発刊したカーペットタイル見本帳 「NT700」「DT」や2024年2月に発刊した椅子生地見本帳「UP」においても、糸などの原材料にリサイクル素材を使用した低環境負荷商品を拡充しました。これらの脱炭素社会や水資源保全などに貢献する低環境負荷商品を壁装材・床材・ファブリックそれぞれにおいて多数ラインアップし、持続可能な社会の実現に向けた商品開発を進めています。また、愛知県稲沢市にある当社物流施設に太陽光発電設備を新たに設置し、発電を開始しました。発電された電力は、当該施設で自家消費を行うとともに、その一部は愛知県名古屋市にある本社・中部支社へ送る自己託送を開始しました。これらの取り組みを通して、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなどに貢献していきます。
■社会面における取組
社会貢献への取り組みでは、2014年より実施している児童養護施設のリフォーム支援や開発途上国の子ども達を支援するNPOへの協力、産学連携のプロジェクトへの参画など社員が主体的に参加できる継続的な活動を実施しました。さらに、支援が必要な子ども達や、住まいに関する社会課題の解決に取り組むNPO4団体への継続的支援をはじめるとともに、災害・紛争等による人道危機に対する支援として、モロッコ王国における地震被害への支援と能登半島地震被害への支援を行いました。また、世界中の障がいのある表現者を対象として作品を表彰する「HERALBONY Art Prize 2024(ヘラルボニー・アート・プライズ 2024)」のゴールドスポンサーとして協賛するなど、当社単独の取り組みにとどまらず、社外のステークホルダーとの取り組みを拡大させています。
■人材価値の向上に向けた取組
人的資本への取り組みでは、中期経営計画の社会価値における定量目標に基づき、健康経営の推進や女性管理職の積極登用等の施策を実行し、性別や年齢に関係なく安心して快適に働くことのできる職場環境の整備を全社的に進めています。特に、2024年3月に新たな価値創造拠点として開設した東京日比谷の「PARCs Sangetsu Group Creative Hub」にて、働く社員と来訪者の“ウェルビーイング”につながる取り組みを推進しています。現在、「WELL Building Standard™ v2」の予備認証を取得しており、今後はゴールドレベルの本認証取得を目指して取り組みを進めています。さらに、当社の健康経営方針“健康に働き、人生を送る「従業員が生き生きと働くために」”に基づく長期的な取り組みが評価され、5年連続、通算で6度目となる「健康経営優良法人2024」に認定されました。また、「DE&I」の観点では、LGBTQ+への理解を深めるセミナーの継続開催や「同性パートナーシップ制度」導入などの取り組みが評価され、LGBTQ+に関する評価指標「PRIDE指標2023」において、当社としては初めてとなるゴールド認定を受けました。
当社グループは引き続き、事業の中心である「空間創造」を通じて社会課題の解決に取り組み、経済価値ならびに社会価値を創出し続けることで「すべての人と共に、やすらぎと希望にみちた空間を創造する。」ことを目指してまいります。
2.自然資本に関する考え方及び取組
当社は、環境保全に取り組んでいくことは、より良い住空間を提供する企業として当然の責務と考えており、自らの事業活動における環境負荷の低減はもとより、地球環境の保全に配慮しています。当社の事業活動においては、当社グループによるGHG排出や商品・見本帳の廃棄に加え、取引先でのGHG排出や建築現場での使用済み廃材などさまざまな状況・場所において環境負荷が発生しています。当社ではこのそれぞれの領域において環境負荷の状況を把握し、低減する取り組みを行っています。
■サンゲツグループを取り巻く環境影響図
■自然資本におけるガバナンス
自然資本への対応は、社長を委員長とするESG委員会のもとに設置した環境分科会が行っており、気候変動や資源循環についての取り組みを推進しています。環境分科会の構成は、環境施策の企画・立案を担うESG推進課、エネルギー使用を伴うファシリティや車両管理を担う総務課、商品開発を担う各プロダクトユニット、ロジスティクスセンターを運営するロジスティクス部門、営業を担う事業部門などさまざまな部署が参加しています。分科会では、事業活動によるGHG排出の環境負荷といったマテリアリティに対し、2030年3月期の当社単体でのカーボンニュートラル、グループ連結では2030年3月期55%減(2021年度比)の達成に向けた目標を設定し、削減計画の策定、施策の検討や実行といった気候変動への対応を進めています。これらの取り組みは四半期ごとに進捗状況をレビューし、取締役会にて年2回の進捗状況に関する管理・監督を行う仕組みとしています。
また当社は、ISO14001の認証を取得しています。環境マネジメントシステムを統括するISO管理責任者のもと、これを補佐するISO事務局を設置し、各事業所において環境活動を実施しています。
ISO14001推進体制図
※ESG委員会の体制については、「
Ⅰ.気候変動に関する考え方及び取組
地球温暖化による気候変動は、人間の生活や自然の生態系にさまざまな影響を与えています。地球温暖化の主たる原因は温室効果ガス(GHG)であり、このGHGを削減することは企業における社会的責任であると考えています。当社から排出されるGHGは、主に事務所、倉庫にて使用するガス・灯油、営業車両等で使用するガソリン・軽油等(Scope1)、また事務所、倉庫にて使用する電気を起源とした温室効果ガス(Scope2)で構成されております。GHGを削減させるためには、エネルギーを最小限に無駄なく有効活用することが必要であり、エネルギー削減を推進することが地球温暖化防止、地球資源の有効活用に繋がると考えております。
また、2021年10月には「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」提言に賛同を表明し、気候変動によるリスクと機会を特定しました。今後、シナリオ分析の実施と財務影響の把握を進めるとともに、さらなる開示の質と量の充実を進めてまいります。
・サンゲツ単体でのScope3を含めたGHG排出量(単体)
ファブレスを主とする当社において、事業活動により発生するGHG排出量は、Scope1&2(1.3%)と比較して、Scope3が大きな割合を占めています。Scope3の中でも、仕入先での製品製造に伴うカテゴリ1(購入した製品・サービス)が約9割となっており、サプライチェーン全体のGHG排出量削減を進めるには、仕入先と協業した削減の取り組みが不可欠であると考えています。
2022年度(※) Scope3を含めたGHG排出量(単体)
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分類 |
GHG排出量(t-CO2) |
構成比 |
|
|||
|
Scope1&2 |
5,668 |
1.3% |
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|||
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Scope3 |
|
|
|
98.7% |
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|
|
カテゴリ1(購入した製品・サービス) |
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394,333 |
|
90.2% |
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|
|
カテゴリ4(輸送・配送(上流)) |
|
21,619 |
|
5.0% |
|
|
|
その他 |
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15,347 |
|
3.5% |
|
|
合計 |
|
100.0% |
|
|||
※数値算出時期の都合上、2022年度数値を参考掲載しております。
・サンゲツグループ全体でのGHG排出量内訳(Scope1&2)(連結)
グループ全体のGHG排出量は、商品製造機能を持つ会社(クレアネイト・Koroseal)が総排出量の約8割を占めており、環境負荷低減を実現するためには、この製造部分の排出削減を進める必要があります。このために、グループ全体での2030年を見据えた具体的な目標・計画を立てるとともに、製造にかかるエネルギーにおいてはGHG排出係数の低い燃料への転換や省エネ設備への更新、事務所やオフィスの電力使用においては再エネ電力への切替といった、各社の事業の特徴に合わせた削減施策を実行しています。
2023年度 グループGHG排出量内訳(Scope1&2)(連結)
|
社名 |
GHG排出量(t-CO2) |
構成比 |
|
|
|
㈱サンゲツ |
4,871 |
18.6% |
|
|
|
クレアネイト㈱ |
(国内・製造会社) |
15,441 |
59.0% |
|
|
Koroseal Interior Products Holdings,Inc. |
(海外・製造会社) |
3,753 |
14.3% |
|
|
他グループ6社 |
(国内外・非製造会社) |
2,131 |
8.1% |
|
|
合計 |
|
100.0% |
|
|
(1)ガバナンス
気候変動におけるガバナンスについては、
(2)戦略
当社では、気候変動が与える影響を経営戦略に反映させるため、TCFDの枠組みに沿った戦略策定を進めており、最初のステップとして気候変動によるリスクと機会の特定を実施しました。気候変動リスクは全社重要リスクの一つと位置付けており、2022年度からは「全社リスク管理委員会」において「気候変動リスク部会」を設定し、組織的な管理体制を構築しました。社長を委員長とする「全社リスク管理委員会」では、当社グループ全体の企業価値の維持・向上に努め、リスク発生時の影響を最小化するとともに、当社の活動や社員に対して影響をおよぼす可能性があるさまざまなリスクに対し、マネジメントを行っています。当該部会のもと、気候変動に関する各リスクを政策や法規制、市場における移行リスクと異常気象や気温上昇に伴う物理的リスクの区分に沿って分析し、リスクの監視と対応を行っています。
今後は、シナリオ分析の実施と財務影響の把握を進めて、より具体的な戦略策定を進めていきます。
■気候変動によるリスクと機会
把握した環境負荷においては、要素ごとにリスクと機会を分析し、対応策を進めています。
|
リスク |
項目 |
|
|
移行リスク |
法規制 |
・GHG排出やプラスチックに対する規制強化による収益の圧迫 |
|
技術 |
・脱炭素・再生材使用・リサイクル技術の不足 |
|
|
市場 |
・脱炭素技術やリサイクル設備を導入することでの設備コスト増 ・リサイクル可能商品の回収にかかるコストの増加 |
|
|
・脱炭素(CO2フリー)・再生原材料への切換による原価アップ |
||
|
・事業活動に伴う排出のオフセットによるコスト増 |
||
|
・消費者行動の変化による販売機会の喪失 …既存製品のニーズ減退 …脱炭素ニーズ増加 (対応製品の不足) |
||
|
評判 |
・脱炭素製品、回収・リサイクルできる製品が提供できないことでの評判低下 ・サンゲツブランドの指名買いの低下・ESG投資家からの失望 |
|
|
物理リスク |
急性 |
・台風やゲリラ豪雨など自然災害(洪水や浸水、強風)の激甚化による、 安定供給(仕入~納品・施工迄)に資する各機能の棄損と停止 |
|
慢性 |
・平均気温上昇に伴う空調などの稼働コスト増大 |
|
|
機会 |
項目 |
|
|
機会 |
資源の効率性 |
・資源循環することで資源の効率性が向上する |
|
エネルギー源 |
・商品・見本帳を低炭素エネルギー(再エネなど)で製造ができる |
|
|
製品/サービス |
・商品・見本帳を低炭素化することによる環境配慮対応 ・資源循環することによる環境配慮対応 |
|
|
市場 |
・低炭素商品・見本帳の拡充により環境配慮のニーズに応える ・再生材使用/リサイクル可能商品の拡充により環境配慮のニーズに応える |
|
|
強靭性 (レジリエンス) |
・商品・見本帳の低炭素化といったニーズの変化に対しても、 よりサステイナブルな商品・サービスが提供できる ・バージン材が枯渇する事態が発生しても資源循環するフローを 構築していることでサステイナブルな商品・サービスが提供できる |
|
■マテリアリティ
当社では、環境面における重要課題を以下の4つと捉え、それぞれの課題に対して取り組みを行っており、各項目における具体的な取り組みは、当社Webサイトに公開しています。
|
事業活動における 環境負荷 |
GHG排出量・エネルギー使用量の削減、廃棄物の削減、リサイクル率の向上 [詳細] 気候変動への対応 https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/environment/climatechange.html 資源循環 https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/environment/recycling_society.html |
|
サプライチェーンの 環境負荷 |
グループ環境負荷の把握と低減プラン策定 [詳細]スコープ3への対応 https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/environment/climatechange.html#sec06 |
|
見本帳リサイクル |
リサイクル処理キャパシティの向上、リサイクル率の向上 [詳細]見本帳リサイクル https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/environment/recycling_society.html#sec03 |
|
環境商品の開発 |
低炭素、資源循環に資する商品の開発 [詳細]商品を通じた地球環境保全 https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/environment/product.html |
(3)リスク管理
当社では、マテリアリティを特定し、ESG委員会での活動を通じてこれらの改善に向けたPDCAサイクルを回しています。各分科会の取り組みの評価においては、年4回のESG委員会でのレビューを通じ、継続的な改善と課題の修正・追加を行っています。
特に、気候変動を含む環境に関するテーマに取り組む「環境分科会」では、①事業活動における環境負荷、②サプライチェーンの環境負荷、③低環境負荷商品の開発 をマテリアリティとして掲げ、当社グループの事業全体の環境負荷を把握し、地球温暖化防止や持続可能な資源循環に向けた体制の構築を目指しています。
(4)指標及び目標
当社では、中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]において、事業活動(Scope1&2)における環境負荷の低減に向けた定量目標を設け、取り組みを進めました。目標と2023年度までの進捗は、以下のとおりです。
■環境負荷低減に向けた定量目標と進捗
当社では、2023年度から2025年度までの中期経営計画[BX 2025]において、環境面における定量目標を定め、取り組みを進めてまいりました。この目標と実績の推移は以下のとおりです。
・2025年度目標(単体)
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目標 |
|
|
GHG排出量(Scope1&2) |
60%削減(2018年度比) |
|
|
使用エネルギー量 |
6%削減(2018年度比) |
|
・実績推移(単体)
|
|
単位 |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
GHG排出量(Scope1&2) |
t-CO2 |
|
|
|
|
4,871 |
|
使用エネルギー量 |
GJ |
127,178 |
127,681 |
125,355 |
123,021 |
120,349 |
|
|
|
■気候変動に関連する今後の目標と取組
長期ビジョン[DESIGN 2030]における目標:2030年カーボンニュートラル実現に向けて
当社では、長期ビジョン[DESIGN 2030]において、単体カーボンニュートラルを掲げています。当社のGHG排出量削減の取り組みは、これまでも営業車両のハイブリッド化やエコドライブの推進、CO2排出係数の少ない新電力への切替などを行ってきましたが、2029年度の目標達成に向けて、省エネ、創エネ、再エネ、オフセットの4つの施策を中心に削減に取り組んでいきます。設備更新などでの「省エネ」、太陽光発電設備導入による「創エネ」、再生エネルギー調達による「再エネ」、植林・電力証書・排出権などでの「オフセット」などを計画的に実行しています。
①定量目標
・2029年度目標
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目標 |
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|
GHG排出量(Scope1&2) |
連結 |
55%削減(2021年度比) |
|
単体 |
カーボンニュートラル |
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②GHG排出量実績推移(単体)
GHG排出量/使用エネルギー量の削減に向けた取組(2023年度)
企業活動における環境負荷低減のため、GHG排出量の削減に向けた取り組みとして、愛知県稲沢市にある当社物流施設に太陽光発電設備を設置し、総発電量の約半分を自家消費しています。また、発電された電力の一部を、愛知県名古屋市にある本社・中部支社へ送る自己託送を開始しました。また、電力調達における再生可能エネルギー電力メニューの切り替えを開始し、CO2フリー電力を使用した事業所は、2024年3月末時点で6拠点となりました。
当社の環境に関する取り組みの詳細は環境レポート「Environmental Report 2023」で開示しています。
https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/report/report_environmental.html
Ⅱ.資源循環に関する考え方及び取組
世界的に人口が増加し、経済発展や利便性の追求により、資源消費のスピードが上がっています。資源枯渇リスクを軽減するためには、原材料使用の削減は急務であり、事業活動での資源調達・廃棄における環境負荷を抑えるため、再生材の利用促進や、リサイクルしやすい環境配慮設計した商品の拡大により、持続可能な資源循環を目指します。
原材料調達、製造、流通、使用、廃棄・リサイクルの各プロセスにおいて、循環型システムの構築が必要です。当社においてもその構築を進め、サプライチェーン全体でサーキュラーエコノミーの社会の実現に向けて取り組んでいます。
(1)具体的な取組
・見本帳リサイクル
当社は壁紙や床材、ファブリック等約12,000点の内装材を企画・販売していますが、そのビジネスモデルの中核となるのが、約30種類の見本帳であり、各見本帳は、おおよそ2~3年のサイクルで改訂しています。使用後の見本帳に関しては、現状、自社回収できているものが全体の約20%程度であり、大部分は産業廃棄物として処理されています。
また、見本帳自体が、台紙(紙素材)、サンプルチップ(塩化ビニル樹脂・化学繊維)など、複数の素材で構成されていることから、資源として再生するマテリアルリサイクル(※)での対応ができず、最終的には、埋立処理やサーマルリサイクルに留まってしまうという課題がありました。
これらの環境課題に取り組み、より環境への負荷を低減するマテリアルリサイクルを中心とした資源循環を行うことを目的に、「sangetsu 見本帳リサイクルセンター」にてリサイクルの拡大を推進しています。
※マテリアルリサイクル:廃棄物を再び同じ製品、または別の製品の材料として再利用するリサイクル手法
(2)指標及び目標
・2025年度目標(単体)
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目標 |
|
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廃棄物総廃棄量(単純焼却・埋立処理) |
4%削減(2021年度比) |
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リサイクル率 (有効利用率) |
90%以上 |
|
・実績推移(単体)
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単位 |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
廃棄物総廃棄量 |
t |
4,195 |
4,098 |
4,283 |
4,134 |
4,021 |
|
リサイクル率 |
% |
80.1 |
81.5 |
85.0 |
86.4 |
77.6 |
|
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|
3.人的資本に関する考え方及び取組
当社グループは、ブランドステートメント“Joy of Design”のもと、さまざまな空間創造を通じた“デザインするよろこび”の提供を目指しています。豊かな感性が重要な価値を持つ「デザイン」を経営の軸とする当社にとっては、社員一人ひとりが自らの個性を多様性として活かし、互いに尊重しあいながら成長することが、事業における強い原動力となります。この力を最大限に生み出すために、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下、DE&I)や健康経営といった施策を通じ、社員が自らの仕事に誇りを持って生き生きと働き、社会に新たな価値を提供する企業を目指しています。
(1)ガバナンス
人的資本への取り組みについては、社長を委員長とするESG委員会のもとに設置した人的資本分科会が行っています。分科会では、多様な社員の活躍支援やダイバーシティを推進しており、これらの取り組みは四半期ごとに進捗状況をレビューし、取締役会にて年2回の進捗状況に関する管理・監督を行う仕組みとしています。
※ESG委員会の体制については、「
(2)リスク管理
当社では、マテリアリティを特定し、ESG委員会での活動を通じてこれらの改善に向けたPDCAサイクルを回しています。各分科会の取り組みの評価においては、年4回のESG委員会でのレビューを通じ、継続的な改善と課題の修正・追加を行っています。
特に、人的資本に関するテーマに取り組む「人的資本分科会」においては、①社員の健康と能力開発、②社員エンゲージメントの向上、③従業員のDE&Iを掲げています。この特定においては、GRIとSASBの定めるガイドライン等を参考に当社に特に関係するESG課題を特定し、社会及び長期投資家にとっての重要度や当社事業の持続的成長への影響を踏まえて評価しています。マテリアリティに対する進捗状況については、ESG委員会にて四半期ごとにレビューを行っています。
(3)戦略、指標及び目標
当社の人材に関する基本的な考え方は以下のとおりです。
・人材価値の向上に関する基本的な考え方
当社グループは、持続可能な企業価値の向上を追求しています。ここでの「企業価値」とは「人材価値の総和」に他なりません。経営において「人材価値の向上」は何よりも優先すべき課題と捉え、課題解決のためにさまざまな施策を実行しています。この基本的な考え方に基づき、長期ビジョン達成に向けた基本戦略においては経営・事業の基盤として「多様性のある人的資本」と、中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]ではスペースクリエーション企業への転換に向けた5つの施策の中でも最も重要な施策として「人的資本の拡大・高度化・活躍支援」を位置付けています。
具体的な取り組みとしては、「人権方針」や「企業理念」あるいは「長期ビジョン」など当社グループの共通の価値観を全従業員と共有しています。また職務・職責に応じた人事制度の導入、年齢・性差・国籍などによらない能力基準の配置・登用、専門性のある人材のキャリア採用拡大、教育・研修の拡充を行うとともに、よりきめ細やかな人材マネジメントを行うため、2023年度より組織別人事担当者を配置しています。
長期ビジョン達成に向けた基本戦略
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における施策
基本的な考え方に基づく、各方針や具体的施策、指標及び目標は以下のとおりです。
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における目標と実績(単体)
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項目 |
目標 |
2023年度実績 |
|
社員の健康と能力開発、風土改革 |
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3年間合計 |
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3年間合計60~ |
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ダイバーシティ、エクイティ& インクルージョンの推進 |
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2週間以上 |
2週間以上 |
※1 2023年度以降、株式会社リンクアンドモチベーション社の提供するサービス「モチベーションクラウド」のスコアを使用しています。詳細については、「
※2 男性育児休業2週間以上取得率は、子が1歳になるまでの取得予定者を含めています。
1)人材育成
①人材育成方針
自己変革に挑戦する社員を尊重し、成長・活躍・自己実現の場を提供する
・社員の人生設計・成長を促進する教育機会を提供する
・昇格昇進の拡大と早期化により現場での経験を積ませ、将来の管理職、経営層の育成を行う
・計画的に多様な仕事を経験させ、活力を生み出す人材配置を行う
②具体的な取組
ⅰ)キャリア採用
当社グループでは、中期経営計画(2023-2025)に掲げる「BX:Business Transformation」を起こすために高い専門能力を持つ人材が不可欠と考えています。専門能力には、積極的に取り入れるべき社外の知見と、当社グループでの長い経験によって培われる業界や商流、商品知識といった能力の2種類があります。スペースクリエーション企業を実現するためには、どちらも必要不可欠な能力であり、外部人材と既存人材の両面を高度化し、活躍の支援を行うことで新たな能力や企業風土を社内に育んでいきたいと考えています。多様な社外の視点を各現場に取り入れることにより、企業風土をこれまで以上に大きく変え、与えられた仕事に取り組むのではなく、自分自身が仕事を変える、新しいチャレンジを行うという文化・風土の強化を進めています。
ⅱ)組織別人事担当者の配置
「人材価値の向上」を推し進める上で、価値観の共有や人事制度の刷新、キャリア採用等の施策を実施するだけにとどまらず、これらの施策が機能し、社員一人ひとりが高い意欲を持って、能力を最大限発揮できる環境を整備することが重要となります。教育・研修、配置、異動等のキャリアデザイン全般について、きめ細かな人材マネジメントを行う人事担当者を各組織に配置し、社員一人ひとりを理解した上でのキャリアデザインサポートや適正な人材配置等を進めることで、組織全体の風土改革、意識改革のみならず、新たな事業機会の創出を目指しています。
ⅲ)人事制度改革
当社では「社員が経営を担う事業基盤の整備」を重要施策の一つとして人事制度改革を進めており、2022年4月には新たな人事制度の運用を開始しました。新人事制度では、管理職に対する任用を従来の「能力等級×役職」から「職務に対応するグレード制」へと変更することで、職務の目的・成果に応じた報酬体系を明確にしました。さらに、組織運営能力や経営力に特化した「マネジメント系」と高度専門的な能力を発揮する「プロ系」の2系統の職務グレードとすることで、キャリアの幅を広げ、専門人材の育成や強化、採用に備えます。
新たな制度は「職務型」の人事制度ですが、いわゆるステレオタイプのジョブ型とは異なります。新たな制度における「職務とそのグレード」は、時代に合ったもの、より競争力のある仕事・職務へと臨機応変に変えていく必要があり、基本的な部分はありつつも、常に変化していくものとしています。この新たな人事制度を活用し、さらに積極的な人材登用の機会を創出していきます。
また、報酬制度については2023年度には大卒初任給の3.5万円引上げをはじめとした全体のベースアップを実施しました。2024年度には大卒初任給を更に1.5万円引上げ、在籍社員にはグレード毎にメリハリをつけながらベースアップを行っており、市況の変化や役割に見合った処遇の実現に向けて、常に見直し・改善を進めています。
職務グレード・職能等級制度の全体像
ⅳ)教育・研修の拡充
教育・研修の拡充については、ビジネススキルや事業構築力・組織マネジメント力の強化を目的とした階層別研修のほか、デジタル人材育成、キャリアデザイン、職種別専門性強化などテーマに応じた研修を用意し、社員の成長意欲を高めるサポートをしています。2023年度からは、経営人材・次世代リーダー育成に向けた選抜研修、異業種交流の機会を大幅に増加させました。また、正社員と特別嘱託社員などを対象に、社員の自律的な学習を支援することを目的としたオンライン学習ツール「Udemy Business」を導入し、中期経営計画に掲げる人材活躍支援と専門性・事業構築力強化のための社員のリスキリングを促進させています。
主な研修テーマ(抜粋)
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研修テーマ |
対象者 |
|
経営執行力 事業構想・構築力 イノベーション力 |
役員・部門長(選抜) |
|
事業構想・構築力 発想力・イノベーション力 組織開発力 マネジメント力 |
部門長、課長(必須、一部選抜) |
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次世代リーダー育成 発想力・イノベーション力 |
課長、中堅社員(選抜) |
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キャリアデザイン テクニカルスキル ヒューマンスキル コンセプチュアルスキル |
新入社員、若手・中堅社員、昇格者など (必須、一部任意) |
テーマに応じた目的別研修(抜粋)
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研修名 |
対象者 |
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LGBTQ+研修 |
全員 |
|
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ハラスメント研修 (感情把握とコントロールのためのEQ研修) |
部門長、グループ会社マネージャー層 |
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メンタルヘルス研修 |
部署責任者 |
|
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キャリア研修 |
30歳・40歳・54歳到達時(任意) |
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職能別研修 |
各部門の対象者 |
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デジタル人材強化 |
全員、一部各役職における選抜 |
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その他、オンライン学習ツール(Udemy Business)をはじめ、資格取得の助成、表彰制度等により、社員が自ら主体的に学ぶ風土の醸成に努めております。
③指標及び目標
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における目標と実績(単体)
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項目 |
目標 |
2023年度実績 |
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社員の健康と能力開発、風土改革 |
人的資本投資額 |
3年間合計7億円 |
2.3億円 |
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キャリア採用者数 |
3年間合計60~80名 |
49名 |
現在、単体の正社員は1,238名(2024年3月末時点)で、2024年4月1日には総合職・ロジスティクス職掌で63名を新卒採用しました。キャリア採用においては2023年度で49名を採用し、中期経営計画の目標である3年間合計(2023~2025年度)60~80名に対して、順調に進んでいる状況です。また、採用対象としては空間デザイナー、施工管理技士等を含めた施工エンジニア、情報システム関係、ロジスティクス、コーポレート部門等でキャリア採用を拡大している状況です。
・キャリア採用の進捗状況
※退職者数は、キャリア採用者における退職者を指します。
・部門別キャリア採用割合
2)ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(社内環境整備)
①サンゲツグループダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン基本方針
サンゲツグループを取り巻く国内外の外部環境の変化がますます激しくなる中で、強固な事業基盤を築き持続的な発展に繋げていくためには、多様化する需要分野・地域・お客さまに対し、多様な機能や商品、深い専門性をもったサービスの提供が不可欠です。
サンゲツグループは、性別・年齢・国籍・人種・宗教・障がいの有無・性自認及び性的指向等にかかわらず、従業員一人ひとりの個性を多様性として活かし、挑戦・革新し続ける風土の醸成や仕組みの充実を推進します。
背景や感性、価値観などの違いによる新たな視点や発想を、豊かな創造性につなげるDE&Iを経営の中核に据え、多様化する市場の要請を捉えながら、成長実現に向けた重要施策として取り組んでいます。
②具体的な取組
ⅰ)多様な人材の活躍支援
当社では、従業員の多様性を活かすことで、一人ひとりの意欲や能力を最大限発揮することを目指し、新たな価値創造を組織にもたらすべく、経営戦略の一環としてさまざまな取り組みを行っています。多様な人材の活躍を支援するための施策として、柔軟な働き方を実現する各種制度をはじめ、障がい者雇用については、処遇改善や各組織でのトライアル雇用などに取り組んでいます。また、新卒の採用だけでなく、空間デザイナーや施工エンジニア、情報システム関係、ロジスティクス、コーポレート部門等において、キャリア採用を拡大し、人的資本を強化しています。
ⅱ)女性活躍支援
戦略的な人事制度改革の実践にあたり、女性活躍推進法に基づく自主行動計画を実行しています。女性社員が自身の強みを活かして活躍できる組織及びそれを支援する制度づくりを目的とし、人事部内にDE&I推進担当を配置し、目標達成に向け各種施策を展開しています。性別にかかわらず、社員の知見・経験や専門性を組織に活かすことを目指し、2021年度から3年間の行動計画に沿ってDE&Iを推進しました。なお、2024年4月1日以降においても新たな行動計画の策定を進めています。
女性活躍推進法に基づく行動計画(2021~2023年度)
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目的 |
女性社員が長く働き続け、自身の強みを活かし、活躍できる組織及びそれを応援する風土の実現 |
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計画期間 |
2021年4月1日~2024年3月31日までの3年間 |
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目標①(定量) |
管理職層に占める女性割合を2022年度までに20%とする |
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目標②(定量) |
正社員の有給休暇取得率を75%以上とする |
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目標③(定性) |
社員全体の長時間労働是正 |
実施策
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キャリア形成支援 |
・女性社員及び、上司に対するキャリア形成支援と支援スキル向上研修の導入 ・多様なキャリア選択が可能な人事制度検討 |
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男女格差の解消 |
・男性育児休職制度の整備と取得啓蒙 |
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働き方改革の継続実施 |
・テレワーク勤務等、柔軟な働き方に関わる制度の再整備と拡充及び、積極活用の促進 ・業務効率化のためのDX推進 |
ⅲ)LGBTQ+に関する取組
「サンゲツグループ人権方針」、「サンゲツグループダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン基本方針」を掲げ、性別、年齢、国籍、人種、宗教、障がいの有無、性自認及び性的指向などにかかわらず、従業員一人ひとりの個性を多様性として活かし、挑戦・革新し続ける風土の醸成や仕組みの充実を推進することを社内外へ周知しています。こうした考えからLGBTQ+を積極的に支援するためのヘルプラインの設置やALLY(※)ステッカー掲示による意志表明支援などに取り組んでいます。2023年度には、全正社員(グループ会社管理職やその他社員は任意参加)を対象としたLGBTQ+研修の開催や、「同性パートナーシップ制度」導入などの取り組みが評価され、LGBTQ+に関する評価指標「PRIDE指標2023」において、当社としては初めてとなるゴールド認定を受けました。
※ALLY(アライ):LGBTQ+を積極的に支援し、行動する人のこと。
サンゲツALLYステッカー
③指標及び目標
当社では、2023年度から2025年度までの中期経営計画[BX 2025]において、DE&Iにおける定量目標を定め、取り組みを進めてまいりました。この目標と実績の推移は以下のとおりです。
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における目標と実績(単体)
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項目 |
目標 |
2023年度実績 |
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ダイバーシティ、エクイティ& インクルージョンの推進 |
女性管理職比率 |
25.0%以上 |
21.2% |
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障がい者雇用率 |
4.0%以上 |
3.5% |
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男性育休取得率 |
2週間以上100% |
2週間以上100%(※) |
※男性育児休業2週間以上取得率は、子が1歳になるまでの取得予定者を含めています。
・女性管理職比率
当社では2025年度末までの女性管理職比率を25.0%以上とすることを目標として掲げています。2024年4月1日時点における女性管理職比率は21.2%となっています。
※人事異動の時期を鑑み、各年とも4月1日の数値で算定しております。
・障がい者雇用率
障がいを持つ方の雇用率は3.5%(2024年3月末時点)と、法定雇用率2.3%(~2024年3月)を超える結果となっています。2025年度目標4.0%以上に向け、引き続き取り組みを進めてまいります。
・男性育児休業取得率
性別問わず、誰もが仕事と育児を両立できる環境づくりと、会社・部署ぐるみで子育てをサポートする共育ての体制整備として、男性育児休業取得を促進しています。現在、女性社員の育児休業取得率は100%となっており、男性社員においても、2025年度の目標取得率100%(2週間以上)を目指してまいります。
厚生労働省の定める定義に基づいた2023年度の男性育児休業取得率は82.8%となります。一方、当社が中期経営計画において定量目標としている男性育児休業2週間以上取得率は、子が1歳になるまでの取得予定を含めて100%となります。
※男性育児休業取得率(育児休業には出生時育休を含む):
年度内に育児休業を取得した男性社員数÷年度内に配偶者が出産した男性社員数
④その他の参考指標(単体)
・平均勤続年数(各年度とも3月末時点)
社員一人ひとりが意欲を持って仕事にチャレンジできる、働きがいのある会社を目指しています。その結果を示す指標の一つとして、平均勤続年数は男女ともに安定した推移を示しています。
3)働き方の見直し(社内環境整備)
①働き方に関する方針
サンゲツでは、社員の多様性、人格、個性を尊重し、
社員一人ひとりが能力を最大限発揮できる人事制度の的確な運用と、
安全で働きやすい職場環境を確保する。
②具体的な取組
ⅰ)仕事と家庭の両立支援
社員が能力を十分に発揮できる雇用環境の整備を行うとともに、次世代の育成に貢献するため、社員の育児・介護を支援しています。介護に関するセミナーの実施、ベビーシッター・病児保育費用の助成、民間保育所との法人提携、また、子を持つ社員への理解促進や家庭内コミュニケーション促進のためのこども参観日の開催等、さまざまな施策で仕事と家庭の両立を支援しています。
育児・介護支援制度
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妊娠・出産 |
育休中 |
育児 |
介護 |
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産前・産後休業 |
・育児休業者支援プログラム (上司面接・ 育児サポートセミナー) ・育児休職の一部有給化 |
・育児短時間勤務制度 (小学2年生始期まで) ・民間保育所の法人提携 ・病児保育サービス費用助成 ・ベビーシッター費用補助制度 ・フレックスタイム制度 ・時間有給休暇制度 ・在宅勤務制度 |
・介護休業 (法定+最長1年まで延長可) ・フレックスタイム制度 ・時間有給休暇制度 ・在宅勤務制度 |
ⅱ)働き方の多様性
当社では、社員が生き生きと働ける「働きがい」のある職場を目指し、さまざまな労務管理の改善強化策を実施しています。フレックスタイムやテレワークなどの柔軟な勤務制度をはじめ、「Google Workspace(※)」などICT技術の活用、ベビーシッター費用の助成、民間保育所との業務提携など、社員のワークライフバランスを推進するための取り組みを多面的に行っています。また、当社グループの新たな価値創造の拠点として開設した東京日比谷の「PARCs Sangetsu Group Creative Hub」ではグループ機能の集約による事業の拡大だけでなく、働く社員と来訪者の“ウェルビーイング”につながる取り組みを推進しており、「WELL Building Standard™ v2」の予備認証を取得しました。現在は「ゴールド」レベルの本認証取得を目指し、働きやすい環境整備に向けた運用面などの調整を進めています。
※Googleが提供するクラウドコンピューティングで、生産性向上のためのグループウェアツール。
働きやすい環境づくりに向けた施策
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働き方の柔軟性 |
コアタイム無しのフレックスタイム勤務や在宅勤務、時差勤務や時間単位の有給休暇制度等、職種や職場環境に応じて活用しやすい制度を整備。サテライトオフィスやグループ会社のオフィス利用を可能とし、働く場所の選択肢を拡充。 |
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過重労働の防止 |
PCログによる労働時間の可視化やPC自動シャットダウン時間の設定、Google Workspaceを活用し、リモート会議やチャット機能による円滑なコミュニケーション、お互いの業務状況を共有することで、業務をシェアし過重労働を防止。保健師や産業医への相談窓口の設置。 |
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オフィス環境 |
敷地内の全面禁煙の実施、グループアドレスの推進やコミュニケーションエリアの設置等、働きやすいオフィス環境の整備。 |
③指標と目標
参考指標(単体)
・育児短時間勤務利用者数(各年とも4月1日時点)
仕事と家庭の両立を支援するための雇用環境の整備の一環である「育児短時間勤務」の利用者数は以下のとおりです。
・ワーキングマザー比率(各年とも4月1日時点)
子育て期間中の社員が継続して就業できる制度や環境づくりを推進しています。女性社員におけるワーキングマザー比率は、年々増加しています。なお、2022年より、ワーキングマザーの定義を「子のいる女性社員全員」から、「18歳未満の子のいる女性社員」へと変更しています。
※ワーキングマザー比率:ワーキングマザー人数÷女性正社員人数
・有給休暇取得率
4)健康経営(社内環境整備)
①健康経営方針
健康に働き、人生を送る 「従業員が生き生きと働くために」
・心身の健康づくり(本人やその家族)
心身の健康づくりに向けた体制の充実、健康の保持・増進活動に取り組みます
・人生をより豊かに
健康経営により、本人やその家族、地域社会全体への幸せづくりに貢献します
・働きやすい環境づくり
安全・健康・快適で働きやすい職場環境を確保します
当社では、サンゲツグループ企業倫理憲章5原則のひとつに「従業員が生き生きと働くために」を掲げ、従業員の多様性、人格、個性を尊重し、従業員一人ひとりが会社経営の主人公として能力を最大限発揮できる人事制度の的確な運営と、安全・健康・快適で働きやすい職場環境を確保することに取り組んでいます。引き続き、安全・健康・快適で働きやすい職場環境の確保と、心身の健康づくりに向けた推進体制の充実を図り、健康の保持・増進活動に努めてまいります。
②健康経営推進体制
代表取締役 社長執行役員を健康管理最高責任者とし、人事部健康経営推進室の健康経営推進担当・保健師が中心となり、快適な職場環境と心身の健康づくりを実践するため、各事業所の健康経営推進担当、産業医と連携して従業員の健康保持・増進活動を展開しています。
③具体的な取組
当社では、従業員が生き生きと働くために安全・健康・快適で働きやすい職場環境の整備と、心身の健康づくりに向けた推進体制の充実を図り、「計画年休の取得促進」「所定労働時間内全面禁煙実施」「全社員対象にしたストレスチェックの実施」など、健康の保持・増進活動に継続的に取り組んでいます。2019年には「サンゲツ健康保険組合」を設立し、健康経営に向けた組織体制を整備し、乳がん・子宮頸がん、前立腺がん(50歳以上男性)を含む人間ドックの全額補助開始および健康に関する情報発信や各種健康イベントの開催など、心身の健康づくりに向けた取り組みを強化しました。また、保険診療対象外である「先進医療制度」の治療を受ける社員の経済負担を軽減させる「がん先進医療補償制度」を導入し、従来進めている疾病予防・早期発見に向けた啓蒙活動と併せ、経済面からの「治療と仕事の両立」の支援制度を整えています。2023年度においては新たに胃カメラ受診の全額補助の開始や健康課題を健康保険組合と共有した上での、糖尿病予防プログラムの提供や歯科検診補助事業の開始、特定保健指導の積極的な推進といった「コラボヘルス事業」を進めています。また、2024年度からは脳健診や胸部CT、若年層向けの子宮頸がん検診への補助も開始しており、今後も安全・健康・快適で働きやすい職場環境の整備に取り組んでまいります。
これらの活動が評価され、当社は2020年以降5年連続で健康経営優良法人(大規模法人)に認定されました。
④指標及び目標
当社では、2023年度から2025年度までの中期経営計画[BX 2025]において、健康経営における定量目標を定め、取り組みを進めてまいりました。この目標と実績の推移は以下のとおりです。
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における目標と実績(単体)
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項目 |
目標 |
2023年度実績 |
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社員の健康と能力開発、風土改革 |
非喫煙率 |
85%以上 |
79.1% |
・非喫煙率
継続的な取り組みにより喫煙率は減少傾向にありましたが、新規採用者の喫煙率の影響等もあり、2024年3月末時点では79.1%となっております。改めて禁煙への取り組みを強化していきます。
当社では、この他にも定期健康診断における有所見率やがん検診受診率といった数値に定量目標を設け、健康経営を推進しております。詳しい情報は当社Webサイトをご覧ください。
健康経営
https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/social/health_management.html
⑤その他の参考指標(単体)
・退職者数(年間・定年除く)/離職率
社員一人ひとりの人権を尊重するとともに、不当な差別やハラスメントを禁止し、公正で明るい職場づくりに努めています。心身の健康が保てる職場環境の整備を推進しており、直近5年の離職率は低い水準を保っています。
・時間外労働時間の推移
多様な働き方を可能にするシステム・制度の積極的な導入、業務の見直しやアウトソーシングの推進により、時間外労働の低減を進めています。
・ストレスチェックの受検率と結果(高ストレス者比率)
直近年度においては、高ストレス者は10%程度となっています。定期的なストレスチェックにより、メンタルヘルス不調の未然防止・職場環境の改善に努めています。
5)労働安全衛生(社内環境整備)
①労働安全衛生基本方針
・社員の安全確保、健康増進を図り、安全で快適な職場づくりを推進する
・安全や心身の健康に関する法令、社内規定を遵守する
・労働災害、車両事故や交通違反の件数削減を推進する
②安全衛生管理体制
当社では、安全衛生担当取締役を、全社統括安全衛生管理者とし、全社の安全衛生を統括管理しています。全社統括安全衛生管理者の下に、全社安全衛生管理委員会をおき、その下に本社及び各支社とロジスティクスセンターの安全衛生管理委員会を設けています。安全衛生管理委員会では、総務部長または各支社長を委員長とし、衛生管理者、安全管理者、産業医、そして各部署から安全衛生委員を選出しており、当委員会での審議項目については、定期的に取締役会に報告しています。
さらに、身体的な作業が多く発生するロジスティクスセンター内における安全衛生活動は、別途定める「ロジスティクスマニュアル<安全衛生>」に基づき実施しています。また、同職場における請負会社への安全対応も、ロジスティクスセンター内の安全衛生活動の中で行っています。
なお、2024年度においては「東京支社・ロジスティクスセンター」から「PARCs・FIELDs・ロジスティクスセンター」に体制を見直しています。
③具体的な取組
・新入社員を対象とした安全衛生研修を行い、安全衛生の考え方や組織体制の理解、活動内容の周知、安否確認方法の訓練を行いました。(2023年度50名)
・労働災害が発生した場合には、該当部署が発生日を含め翌日までに「発生報告書」を作成、発生後1週間以内に「対策報告書」を作成し、対策会議を行った上で事務局に提出することで、発生状況の共有・管理と再発防止に努めています。
・国内で発生が懸念される地震などの大規模災害に向けた労働安全衛生の取り組みの一環として、2013年度より事業継続計画(BCP)の作成、飲料水・食料・トイレなどの備蓄品の整備に加え、全員参加型防災訓練や救命救急講習、AED講習会、安否確認サービスでの報告訓練などの対策を講じています。
・車両事故防止対策として、「ドライブレコーダー」と「SmartDrive Fleet」の全営業車両への設置、バックモニターや安全機能を標準装備した車両の段階的な導入を行うとともに、エコドライブの推進や交通違反に対する個別指導を行うなど危険運転の抑制を実施しています。
④参考指標(単体)
・労働災害度数率・強度率
当社では、従業員へ安全衛生教育を実施するとともに、労働災害などが発生した際には、速やかに発生状況を全社で共有し、各部署で再発防止対策を実施しています。2023年度の正社員の労働災害による死亡者数は0名でした。また労働災害による被災者数は4名で、そのうち休業被災者数は0名でした。
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2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
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0.84 |
0.84 |
1.63 |
0.0 |
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0.004 |
0.003 |
0.002 |
0.0 |
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・度数率:100万のべ実労働時間当たりの労働災害による死傷者数※(災害発生の頻度)
※休業1日以上及び身体の一部又は機能を失う労働災害による死傷者数
・強度率:1,000のべ実労働時間当たりの延べ労働損失日数(災害の重さの程度)
6)エンゲージメント(企業風土の醸成に関する取組)
企業の成長においては、社員が会社の方向性を理解・共感し、エンゲージメント高く働くことが必要不可欠であると考えています。当社では、全社員を対象とした「エンゲージメントサーベイ」を実施し、この結果を分析し組織・制度・風土等の改革に反映しており、中でも社員エンゲージメントに関する指標は、経営における重点項目として特に注視しております。
①具体的な取組
ⅰ)企業理念浸透プロジェクト
当社グループは2022年12月以降、希望者による「企業理念検討・浸透プロジェクト」を設け、グループ各社・各組織での議論ならびに取締役会においても検討を続けてきました。そして、2024年1月に最上位の概念としてPurpose(存在意義)を置き、それにより実現する未来像をDreamとして掲げるとともに、Purposeを形づくる企業としての信念をBelief、社員の姿勢をWayとする新たな企業理念を公表いたしました。
企業理念の策定後においても各部門、各社で企業理念の浸透プロジェクトが自発的に実施されており、企業理念が浸透していく過程で、企業風土や仕事の在り方を変えていき、ひいては企業活動の変革を進めるドライバーとなるよう取り組みが進んでいます。
ⅱ)社員エンゲージメント
エンゲージメントの醸成においては、経営層と社員、部署や役職、年代、地域を越えたコミュニケーションが欠かせませんが、当社では前社長の安田が、「YASUDAコラム」として決算業績やグループ会社の取得といった成長戦略に紐づくテーマから、時事・季節や趣味に関することまで、さまざまなメッセージを随時発信してきました。現社長の近藤においては、組織の根幹である人材が個人の能力とポテンシャルを最大限発揮し、部門、グループ会社などの枠組みを超えて共創する企業風土を醸成していくことを重要な課題として捉え、双方向性のある対話コンテンツとして「KONDO’s talk」を開始しました。また、社員との対話集会や新入社員・キャリア採用者との懇親会を開催するなど、多くの対話を通じて社員の意識の共有を図っています。
また、中期経営計画[BX 2025]において、「社内意識調査」を指標の一つとして掲げていましたが、データの見える化によるエンゲージメント構成要因の明確化やサーベイ結果に基づく具体的な改善策の実行等を目的として、2023年度以降については新たに「エンゲージメントサーベイ」を導入し、中期経営計画[BX 2025]における指標を「エンゲージメントスコア」に変更いたしました。2025年度の目標においては、2023年度実績であるエンゲージメントスコア「BB(スコア55.0未満)」を2段階上の「A(スコア61.0未満)」にすることを目指しています。
②指標及び目標
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における目標と実績(単体)
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|
項目 |
目標 |
2023年度実績 |
|
社員の健康と能力開発、風土改革 |
エンゲージメントスコア(※) |
58.0(A) |
53.7(BB) |
※2023年度以降、株式会社リンクアンドモチベーション社の提供するサービス「モチベーションクラウド」のスコアを使用しています。
なお、中期経営計画[BX 2025]発表時(2023年5月12日)の目標と過去の推移は以下の通りです。
・中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における目標(単体)
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|
項目 |
目標 |
|
社員の健康と能力開発、風土改革 |
やりがい指数(※) |
77%以上 |
※社内意識調査における仕事のやりがい肯定率
・2023年度までの分析及び取組方針
社員エンゲージメントにおいて、この基本となる「自分の仕事にやりがいがあるか」という指数は、個人からチームへと営業目標を変更する中で、「個人」のやりがいが見えづらくなっていること等が一因となり低下傾向にありましたが、改善に向けたさまざまな働きかけにより、2023年度は74.3%へ改善いたしました。また、「チャレンジする風土」は継続して上昇しており、今後も継続的にこれらの数値を把握しながら、社員エンゲージメントの向上を目指してまいります。
設問「現在の自分の仕事にはやりがいがある。」
設問「課内には失敗を恐れずにチャレンジする雰囲気がある。」
4.情報セキュリティに関する考え方及び取組
当社は業務上取り扱う顧客や取引先および自社の情報資産、ネットワークシステムを各種サイバー攻撃の脅威から適切に保護し、正常かつ円滑な事業活動を維持・継続する情報・サイバーセキュリティの確保を経営上の重要事項と捉えています。事業活動における情報の機密性、完全性及び可用性を維持し、かつコンピュータ、サーバー、モバイルデバイス、電子システム、ネットワーク及びデータなどの情報資産並びに提供するサービスを悪意の攻撃(意図的行為)から守るため、情報・サイバーセキュリティリスクの低減に取り組んでいます。
情報・サイバーセキュリティポリシー
https://www.sangetsu.co.jp/security_policy/
(1)ガバナンス
当社は2022年7月にサイバーセキュリティ担当役員を選任し、同8月にサイバーセキュリティ統括室を新設しました。2022年度下期からは社長執行役員、サイバーセキュリティ担当執行役員をはじめ、各部門の責任者が参加するサイバーセキュリティ委員会を半年に一度定例開催し、情報セキュリティ課題を抽出、その対応に関する議論をしています。また、2023年4月からは情報セキュリティ教育訓練システムを導入し、日常的に使っている電子メールなどが「攻撃ツール」として利用される事例などを用いてe-ラーニングによる教育を行い、一人ひとりの知識や意識向上に取り組んでいます。当社事業において情報・データを効果的・効率的に活用していく事は、事業運営において極めて重要であるため、それを支えるセキュリティレベルの向上も順次進めています。
(2)リスク管理
情報セキュリティにおけるリスク管理につきましては、「
※当社グループにおける成長戦略の進捗状況やサステナビリティの取り組みに関しては、当社WEBサイトをご覧ください。
サステナビリティサイト
https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/
統合報告書「SANGETSU REPORT 2023」
https://www.sangetsu.co.jp/company/ir/library/report.html
なお、最新の統合報告書につきましては、2024年9月末頃に当社WEBサイトにて公開予定です。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業環境について
(リスクの内容)
当社グループは、壁装材・床材・ファブリック(カーテン・椅子生地)等のインテリア商材の企画・販売及び壁紙の製造等に加え、設計・デザイン提案から内装・建築施工を行う国内インテリアセグメント、門扉・フェンス・テラス等のエクステリア商品の販売及び施工を行う国内エクステリアセグメント、米国での壁紙製造及び北米、中国・香港、東南アジアの環太平洋地域においてインテリア商材の販売を行う海外セグメントにて事業を展開しております。これらの事業は建設需要に左右されるため、国の経済全体の景気動向や政府の住宅に関する政策、税制の変更及び人口減少などに伴う住宅・非住宅の新設着工戸数の減少、景気の後退によるコントラクト市場の減少等により、ビジネス機会を損失するリスクが存在します。
(リスク対策)
事業基盤である国内市場において、住宅・非住宅分野における新築や改築は、少子高齢化が進むなか、将来的に大きく成長していくことは期待しにくいと予想しており、国内における様々な事業基盤の整備拡充を背景に、シェアの拡大と価格修正による収益改善を中期的戦略とし、長期的戦略としては国内エクステリア事業の拡大と海外事業の収益化・拡大に注力しています。調達面ではメーカーからの安定的な供給と中長期目線での商品開発を行えるよう製造部門へ経営資源を投入することにより、リスクの回避に努めております。また、現在の事業の長期的な展開の可能性を踏まえた上で、さらなる成長の為の事業展開の可能性を検討・実行すべく、2024年4月に事業創造推進室を立ち上げております。
(2) 仕入価格の変動について
(リスクの内容)
当社グループの取扱商品は、石油化学製品、アルミ、ガラス等を原料とするものが多く、原油、鉱産物価格の高騰などにより商品仕入価格に極端な変動がある場合や、海外からの調達において海上輸送に関わるコストが高騰する場合、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。また、国内においては昨今の人件費・物流費・エネルギー費の上昇による仕入価格への影響も懸念されます。
(リスク対策)
主要原材料の価格推移を常時観察し、材料調達における複数購買化や生産量の調整を行っていますが、2021年以降塩ビ・可塑剤・ナイロン・ポリエステル等の主要原材料価格が高騰し、壁装材・床材・カーテン用ファブリック・椅子生地・接着剤・縫製費等の仕入価格が大幅に上昇したため、競合他社の動きも注視しつつ、商品の安定供給と物流サービスレベルの維持並びにインテリア業界の健全な発展のため、2021年9月に壁装材、床材、ファブリックそれぞれ13~18%、2022年4月に18~24%、2022年10月に壁装材、床材、椅子生地それぞれ7~12%の値上げを実施しました。
今後も仕入先だけではなく、原油価格や原材料メーカーの価格変動動向及び人件費や物流費といった社会情勢に起因する内容も注視し、仕入価格の交渉や販売価格の値上げに関する適切な判断を行うための情報収集等の準備を常時実施してまいります。
(3) 商品の供給について
(リスクの内容)
当社グループでは、取扱商品のうち主力商品である壁装材や床材について、商品サンプルを掲載した見本帳を配付することで、営業及び販売活動を行っております。見本帳掲載商品の企画開発は自社で行っておりますが、一部の商品を除き、製造は外部仕入先のメーカーが行い、商品の供給を受けております。見本帳有効期間内は安定供給を維持することが強く求められる業界であるため、生産トラブル、原材料調達等の予期せぬ要因によって商品の供給が中断した場合、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
なお、当社子会社であるクレアネイト株式会社は、国内最大手の壁紙メーカーであります。今後当社が壁装事業を拡大する上で、競争力強化、量的確保のみならず、製販一貫体制の確立による事業の効率化を通じ、更なる発展が可能になるものと位置付けており、工場の安定稼働と商品の安定供給を維持することはグループ全体で取り組むべき課題と認識しております。また、2022年11月に発表したクレアネイト社による新工場建設により、さらに安定供給力を高めていく計画です。
(リスク対策)
メーカーから商品を安定的に調達できるよう、仕入の前段階としてメーカーの工場内の実査や適正な製造工程の確認を行い、万が一調達が困難な状況に陥った際のバックアップ体制として、主要商品については十分な在庫の確保、代替となる商品の準備等、有事に備えた環境整備を行っております。
また、当社からお客様への持続的な商品供給ついては、入荷から受注・出荷に至るまで、あらゆる場面で関連するシステム連携の強化に加え、各地区の在庫拠点であるロジスティクスセンターの安定稼働の阻害が想定されるリスクに対して、対処すべき行動計画の検証を定期的に行い、対応策の有効性の確認と改善を図っております。
(4) 設計・施工事業について
(リスクの内容)
当社グループは、インテリア商材やエクステリア商材の販売のみならず、それら商材をいかした設計・空間デザイン提案を行い、その施工までを事業としております。設計・施工事業においては建築業法を始めとした各法規に則った事業活動が必要であり、違反と判断された際の事業継続とレピュテーションに対するリスクがあります。
(リスク対策)
専門知見を持つキャリア人材の採用を進め、業務フローの見直しやシステム化の検討及び社内の法務面での監督を徹底すべく、随時改善に取り組んでおります。2024年4月には設計・施工事業を所管する部署としてコンストラクションユニットを立ち上げ、事業拡大のみならずグループ全体の施工機能に関するリスク管理を徹底する体制を整えております。
(5) 物流機能について
(リスクの内容)
当社グループは、商材を在庫し、出荷及び配送する事業を展開しております。日本全国への配送網の維持は事業の継続はもちろん、当社の強みと言える機能ですが、物流2024年問題に起因するドライバーの確保、ひいては配送力の確保は重要な課題と認識しております。
(リスク対策)
物流機能のさらなるサービス強化、想定される配送力の不足への懸念から、ドライバーの内製化と物流会社とのアライアンス強化を進めており、2022年9月には九州を事業エリアとする物流会社である有限会社クロス企画(2023年4月に株式会社化)を子会社化しました。また積込み・荷下ろしを人力に頼った体制から、効率的な体制へと転換するべく、システム化・省人化に向けた施策を検討しており、2024年度より順次実行してまいります。
(6) 知的財産について
(リスクの内容)
当社グループでは、“Joy of Design”をブランドステートメントとして、さまざまな空間創造を通じた“デザインするよろこび”を提供し得る、デザイン性と機能性に優れた商品開発に努めておりますが、類似した商品が他社に製造されるおそれがあります。
また、第三者より知的財産権を侵害しているという主張を受け、訴訟が提起された場合には、係争費用や損害賠償等の損失が発生し、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
(リスク対策)
リスクの低減を図るため、下記のような様々な取り組みを行っております。
・当社事業に関連する特許、意匠及び商標の出願・権利取得を行う等、知的財産の創造・保護・活用に努めております。
・競合他社の知財情報を常にモニタリングし、社内に最新の情報(特許、意匠、商標等)を共有しております。
・外部の専門家である弁理士・弁護士等と緊密に連携し、直ちにリスク対策を講じる体制を構築しております。
(7) 法的規制について
(リスクの内容)
予期せぬ法令等の改正があった場合、事業を展開していく上で、製造物責任、知的財産、環境、労務など様々な法的規制の適用を受けている当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対策)
内外の法規制を常時観察して法対応が行えるようにしております。また、コンプライアンスの遵守を企業にとっての最低必要条件と位置付け、管理体制を構築し、社員教育の強化に努めるなどの体制をとっております。
(8) 自然災害について
(リスクの内容)
商品開発、製造、調達、ロジスティクス、販売、サービスに係る当社グループの施設は、国内全域、海外(北米、中国・香港、東南アジア各国)に点在しており、地震・洪水・暴風雨・大雪等の自然災害に伴うインフラの停止、建物・設備の損壊、故障による混乱状態に陥り、当社グループの経営成績や財務状況等に影響を与える可能性があります。
(リスク対策)
当社グループでは、自然災害による事業活動への影響を最小限にとどめるため、災害発生時の事業継続計画書(BCP)を策定しております。非常時の初期対応、報告方法、対策本部の設置と役割について明記し、災害発生の際に適切な対応が取れる仕組みを構築し、定期的な訓練や設備の点検を行っております。また毎年、災害の状況に合わせて事業継続計画を見直しております。これらの他、商品の安定的な調達と供給を実行するため、仕入先などのサプライチェーンや当社グループの各地の事業拠点の被災時に、代替拠点での商品調達・配送が可能な体制を構築しております。
(9) 気候変動について
(リスクの内容)
気候変動リスクへの関心が高まる中、2015年に国連で「パリ協定」が採択され、同年に開催された国連サミットではSDGs(持続可能な開発目標)が採択されるなど、2030年をターゲットにした目標の設定が進展しました。一方、金融機関に関連した動きとして、国連環境計画と国連グローバル・コンパクトのパートナーシップが打ち出した「責任投資原則(PRI)」では投資家に対してサステナビリティ投資が要請され、それに呼応して日本では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名するなど、日本の金融においてもESG投資がメガトレンドとなっています。また、気候変動関連の情報開示については、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言において、企業に対して「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目についての財務的な影響を開示するよう求められています。
このように気候変動に関連する環境変化が大きく進展する中、当社では、事業活動におけるGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)排出量を低減できないリスク、商品・見本帳を低炭素化できないリスクや回収・リサイクルできないリスク、及び急性・慢性的に起こりうる物理的なリスクが想定され、当社グループの経営成績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、GHG排出量を低減できないことでの炭素税の負担増加による財務影響や評判の低下や、商品・見本帳を低炭素化できないことで市場からのニーズに対応できず、信用の低下及びビジネス機会の損失などに繋がることが考えられます。
(リスク対策)
当社は、気候変動リスクへの対応として、社長を委員長とする全社リスク管理委員会のもとに気候変動リスク部会を設置し、組織的な管理体制を構築しております。この気候変動リスク部会のもと、気候変動に関する各リスクを、法規制・技術・市場・評判などの移行リスクと、急性・慢性的などの物理リスクといった区分に沿って分析し、スペースプランニング部門、ロジスティクス部門、事業部門及びコーポレート部門が緊密に連携し、具体的な管理指標を設定した上で、リスクの監視と対応を行っております。
また、当社はSangetsu Group長期ビジョン[DESIGN 2030]において、地球環境を守るサステイナブルな社会の実現を掲げており、2029年度の事業活動(Scope1&2)におけるGHG排出目標を、当社単体ではカーボンニュートラル(排出実質ゼロ)、グループ全体では55%削減(2021年度比)とするなど、気候変動リスクの原因となるGHG排出量の削減に努めてまいります。
(10) 情報セキュリティについて
(リスクの内容)
当社グループは、事業活動を通じ、個人情報を含む様々な機密情報を適切に管理するため、多くの投資を行っております。また、こうしたシステムの運用並びに導入・更新に際しては、システムトラブルや情報の外部漏洩が発生しないよう最大限の対策を講じております。しかしながら、外部からのコンピュータウイルスやハッキングの被害、ホストコンピュータ・ネットワーク機器の障害、ソフトウェアの不備等によるシステム障害、災害によるシステムの一部損壊による業務停止、情報の外部漏洩等の事態が発生するおそれがあり、これらの予期せぬトラブルの発生に伴い、社会的信頼を損なうとともに多額の費用負担が生じ、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対策)
・サーバー、ネットワーク機器は、適性に応じクラウド及びデータセンターへの移行・利用を推進しております。
・外部からの不正アクセスやマルウェア等の対策として、不正侵入検知・監視サービスやセキュリティ対策ソフトを導入しております。
・ITシステムに影響を及ぼす不正なマルウェア等は導入しているEDR(Endpoint Ditection and Response)にて即時検知、隔離するとともに、SOC(Security Operation Center)と連携して迅速に対処しております。
・情報セキュリティに関する社員の教育(個人情報を含む機密情報保護と情報管理の重要性)や訓練を定期的に実施しております。
・重要なシステム機器については二重化しております。
・サイバーセキュリティ損害保険に加入しております。
・改正個人情報保護法の施行に合わせ、新たに個人情報保護規定を制定しております。
・サイバーセキュリティ統括室を設置し、当社グループ全体のサイバーセキュリティ体制構築を進めております。
(11) 与信管理について
(リスクの内容)
当社グループは、取引先に対して与信供与を行っており、経済情勢悪化の影響や不測の事態を含めた取引先の財政状態悪化により債権の回収が困難となった場合、貸倒れによる損失が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して下記の取り組みを実施し、債権の回収不能による損失発生の予防として与信管理体制強化を図り、貸倒れによる損失回避に努めております。
(リスク対策)
・与信管理規程の適切な運用
・取引先の信用状況を勘案した与信限度額の年次更新
・重要な取引先の業況ヒアリング、財務諸表の定期的な把握
・取引先との今後の展開を見据えた取引条件の見直し
・債権回収状況のタイムリーなモニタリング
・売上債権回転期間の見直し
・与信不安先に対する会計上の貸倒引当金の設定
・与信不安先に対する管理強化や営業施策支援の実施
・取引先の信用状況に応じた担保、保証、取引信用保険付保等の債権保全策の実施
(12) 海外事業活動について
(リスクの内容)
当社グループは、北米、中国・香港、東南アジア各国を中心に事業を展開しており、以下の場合、当社グループの経営成績や財務状況等に影響を及ぼすリスクがあります。
・感染症の蔓延、政情不安、経済動向の不確実性、宗教・文化・商習慣の相違、戦争・内戦、テロ、投資・海外送金・輸出入規制等が発生した場合。
・固定資産の減損に係る会計基準等に従い、定期的に保有資産の将来キャッシュ・フロー等を算定し、減損損失の認識・測定を行った結果、固定資産の減損損失を計上する場合。
・製造部門を持つグループ会社の事業において、原油や鉱産物価格の高騰などにより原材料や商品仕入価格に極端な変動がある場合。
・日本からの輸送並びに海外グループ各社が海外から商品を調達する場合の輸送に関わるコストが高騰する場合。
(リスク対策)
・当社グループでは、平時より政治的又は経済的な障害となりうる問題に関する情報の収集や、不測の事態に対するBCPの策定など、グループ内で有事に備えた環境整備を行っております。
・当社グループでは投資後の事業を管理する体制を整備しております。
・原材料等が高騰した場合には、市場や競合の状況を判断しながら適切な値上げを実施します。仕入先だけではなく、原油価格や原材料メーカーの価格変動動向にも注視し、仕入価格の交渉や販売価格の値上げに関する適切な判断を行うための情報収集等の準備を常時実施しております。
・より効率の良い輸送方法の選択と、販売先への輸送運賃の適切な請求を行っております。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態の状況
当連結会計年度末における資産合計は170,750百万円であり、前連結会計年度末に比べ6,295百万円増加しております。流動資産は107,463百万円と前連結会計年度末に比べ2,619百万円増加しました。これは主に、売上の増加による現金及び預金の増加並びに売上債権の増加によるものです。固定資産は63,287百万円と前連結会計年度末に比べ3,676百万円増加しました。これは主に、当社の連結子会社であるクレアネイト株式会社の新工場建設に伴う有形固定資産の増加によるものです。
負債合計は64,040百万円であり、前連結会計年度末に比べ4,588百万円減少しております。これは主に、法人税等の支払による未払法人税等の減少及び借入金の返済による減少によるものです。
純資産合計は106,709百万円であり、前連結会計年度末に比べ10,884百万円増加しております。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益による利益剰余金の増加及び配当金の支払による利益剰余金の減少によるものです。
これらにより当社グループの流動比率は201.7%、自己資本比率は62.5%となり、その他の要素も含め、健全な財政状態を維持しております。
(2) 仕入及び販売の状況
①仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
|
国内インテリア |
(百万円) |
113,187 |
107.7 |
|
国内エクステリア |
(百万円) |
4,298 |
108.5 |
|
海外 |
(百万円) |
13,702 |
96.5 |
|
調整額 |
(百万円) |
△52 |
- |
|
合計 |
(百万円) |
131,135 |
106.4 |
(注)セグメント間の取引については調整額欄で相殺消去しております。
②販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
|
国内インテリア |
(百万円) |
159,157 |
107.6 |
|
国内エクステリア |
(百万円) |
6,462 |
102.7 |
|
海外 |
(百万円) |
24,292 |
111.5 |
|
調整額 |
(百万円) |
△53 |
- |
|
合計 |
(百万円) |
189,859 |
107.9 |
(注)1.セグメント間の取引については調整額欄で相殺消去しております。
2.総販売実績の10%以上の割合を占める主要な取引先はありません。
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症5類移行等による行動制限の緩和が進み、経済活動の正常化を受けた国内需要には緩やかな回復が見られました。一方、エネルギーコストや電気代、物流費などの高騰に伴う物価上昇等により、個人消費には足踏みが見られたほか、持家及び分譲住宅などの住宅投資は引き続き低調に推移しました。海外経済においては、米国では良好な雇用情勢などを背景として個人消費の堅調さが継続した一方、中国では景況感の悪化に一服感はあるものの、広く関連産業を抱える不動産市場の低迷により経済全般は力強さを欠いた動向となりました。先行きの見通しについては、世界的な金融引き締めの影響による景気の減速をはじめ、地政学的リスクや為替による輸入価格の上昇を通じたインフレの再燃懸念など、経営環境は依然として不透明な状況が予想されます。
当社事業収益に直接的影響を与える国内建設市場においては、住宅市場では主に住宅価格の上昇が需要の抑制要因となり、新設住宅着工戸数や着工面積が低迷しました。その一方、非住宅市場では経済活動の正常化を受けて一部で回復の兆しがみられるものの、依然として力強い動きには至っておりません。さらに、業界全体における人件費や物流コストの上昇、原材料価格の高止まりの影響等が収益面での下押し圧力となっており、今後も引き続きコストアップ要因となる見通しです。
このような経営環境において、当社グループは2023年5月に見直した長期ビジョン[DESIGN 2030]に基づき、長期的な成長を達成するべくさまざまな積極的施策を準備・推進しています。また、同時発表した中期経営計画[BX 2025](BX=Business Transformation)では、2023年度から2025年度までを「次の飛躍に備える3年間」と位置づけ、人的資本やデジタル資本の強化による基盤拡充を進め、商品・物流・施工・空間デザイン機能を活用したソリューション提案力を強化し、従来の主要商品・市場での拡張のみならず、今後成長が見込まれる商品群の拡充と販売戦略の強化、エクステリア分野の事業領域・地理的拡大、海外事業の強化・収益力向上を目指しています。
2023年7月には、これらの施策を着実に進めるために、従来の「商品軸」から「地域軸」へと組織の改編を実行し、「事業部門」「海外事業部門」を立ち上げ、国内・海外において事業を展開する地域単位での組織体制に改めて再編しました。さらに、機能面を支える組織として、「コーポレート部門」「ロジスティクス部門」「スペースプランニング部門(商品開発・調達・空間デザインなど)」を設置しました。
当社の主要商品である壁紙・塩ビシート等の出荷数量は、前述した国内市場全体の動きに影響を受けつつも概ね好調を維持し、市場シェアは着実に上昇しました。四半期ごとの推移としては、第1四半期は前年同期に第2次値上げ後の大幅な反動減があったことからの揺り戻し需要増があったのに対して、第2四半期は前年同期に第3次値上げ前の駆け込み需要があったことから出荷数量は前年同期比で減少しました。第3四半期は、第1四半期と同様に前年同期における第3次値上げ後の反動減に伴い、前年同期比では揺り戻し需要増が見られました。第4四半期には、前年同期比での反動増減はなく、新設住宅着工戸数が前年同期比で厳しい状況であったものの、着実にシェアを拡大しました。また、価格面では2022年4月・10月に実行した値上げ効果により、上期までの販売単価は前年同期比で上昇したものの、第3四半期以降においては前年同期比でほぼ同等となりました。その一方、仕入先における物流コスト及び人件費の増加や一部の原材料価格の上昇による仕入コストの増加が、売上総利益の減少要因となっています。また、中期経営計画に基づく成長戦略の施策として、ベースアップ等の処遇改善策を昨年4月に実行し、さらにキャリア採用を含めた専門人材の拡充やグループ会社と連携した室内外の空間提案力、物流・施工機能等の強化策、当社グループの新たな価値創造拠点の開設・準備等を進めた結果、当社単体を中心に販売費及び一般管理費が増加しました。海外セグメントにおいては、中国・香港事業は不動産市場の低迷による回復遅れ、東南アジア事業はシンガポールを中心に機能強化策によるコスト先行の状況となっているのに対して、当セグメント内において事業規模の大きい北米事業の黒字化により、セグメント損失は前年同期比で改善いたしました。
これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高189,859百万円(前年同期比7.9%増)、営業利益19,103百万円(同5.8%減)、経常利益19,695百万円(同4.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は14,291百万円(同2.0%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。なお、当連結会計年度より報告セグメントを以下のとおり3区分に変更し、前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
(国内インテリアセグメント)
国内インテリアセグメントにおいては、当社グループが目指す「スペースクリエーション企業」を実現するため、北日本・関東・中部・西日本・九州の5つの地域軸で構成する事業部門が中心となり、商品・物流・施工・空間デザイン機能を担う各部門と連携し、地域の顧客特性やニーズ、市場環境を踏まえた事業戦略の立案・実行を着実に進めています。施工機能については、事業部門内に新たに「コンストラクションユニット」を立ち上げ、表装施工を含め総合内装施工への取り組みを強化するとともに、建設業界の大きな課題である職人不足への対策の検討など、施工に関するさまざまな課題に取り組んでまいります。ロジスティクス部門においては、物流2024年問題も見据え、サプライチェーンマネジメントの強化、拠点間輸送をはじめとする地域別でのきめ細かい配送体制の構築、配送サービスを行う「サービスクルー」の拡充等を進めました。スペースプランニング部門においては、企画開発ユニットでの各地域における空間提案活動の拡大に加え、商品ユニットでは粘着剤付化粧フィルム見本帳「リアテック」や椅子生地見本帳「UP」を発刊したほか、当期に発刊した住宅用壁紙見本帳「FINE」やカーペットタイル見本帳「NT700」「DT」、ビニル床タイル見本帳「FLOOR TILE」等において、事業部門と連携して市場浸透を図りました。これらの活動に加え、従来から注力してきた各機能の強化も奏功し、中期経営計画においてシェアや市場の拡大を見込む「中型商品」と位置づけた、リアテックやガラスフィルム、椅子生地、フロアタイル、カーペットタイル等の売上が堅調に推移しました。
これらの結果、国内インテリアセグメントにおける売上高は159,157百万円(前年同期比7.6%増)、営業利益は19,489百万円(同7.6%減)となりました。なお、壁装ユニットの売上高は77,236百万円(同6.4%増)、床材ユニットの売上高は56,356百万円(同9.3%増)、ファブリックユニットの売上高は9,505百万円(同0.7%増)、デザインフィー・施工を含むその他の売上高は16,058百万円(同11.8%増)となりました。
今後も市場の低調や仕入価格の上昇等、厳しい事業環境が見込まれる中で、壁紙や塩ビシート等の主要商品及び前述の中型商品のシェアアップを着実に進めてまいります。また、中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]で掲げる施策のとおり、顧客のニーズに応じた空間デザイン提案機能の強化を進めるとともに、現状の事業基盤をベースに、将来を見据えた収益性の高い次世代事業を創出することも重要な課題と認識しております。
(国内エクステリアセグメント)
国内エクステリアセグメントにおいては、新設住宅着工戸数の低迷によりエクステリア市場全体は厳しい状況が継続しました。このような状況下、住宅・非住宅のリフォーム物件や公共工事をはじめとする新設住宅市場以外への提案活動に努め、受注件数が増加しました。また、従来の商品販売だけでなく、外構の空間設計・施工を含めた提案や、グループ会社の株式会社サングリーンと当社との協業によるエクステリアとインテリアの共同提案の取り組みは着実に進展し、設計事務所やゼネコンなどへの営業活動に加えて、エクステリアのオリジナル商品の開発に向けた連携を進めました。一方、成長戦略に基づく人員の拡充や専門人材の採用とそれに伴う諸経費、関東地域への地理的拡大に向けた施策に関する先行投資などを進めた結果、販売費及び一般管理費が増加し、国内エクステリアセグメントの売上高は6,462百万円(前年同期比2.7%増)、営業損失は77百万円(前年同期は営業利益450百万円)となりました。
当セグメントを担う株式会社サングリーンにおいては、既存のビジネスが停滞気味である状況下で、中長期的な成長に向けた戦略が課題であると認識しております。関東エリアにおけるシェア獲得といった地理的・規模的拡大を目指すとともに、今後新たな商品の投入や、当社との協業による「ナカソト提案」を強化することで収益基盤を固め、当社グループにおけるエクステリア事業としての機能の高度化を目指してまいります。
(海外セグメント)
海外セグメントでは、海外関係会社の2023年1月から12月までの実績を、当連結会計年度の業績に算入しております。
北米市場では、メイン市場であるホテル分野の需要回復による中・大型規模物件の受注増に加え、自社製造壁紙をはじめとする高単価商品の売上が堅調に推移しました。また、利益面では生産量増加に伴う生産効率の向上、前期に実施した不採算商品からの撤退などによる原価低減の効果もあり、通期においても営業利益の黒字化を実現しました。
東南アジア市場においては、各国で差はあるものの、ホテル分野などを中心とした建設需要が総じて回復基調となる中、タイやベトナムを筆頭に売上が伸長しました。こうした状況下、当社グループの壁紙メーカーであるクレアネイト社製の海外向け見本帳「goodwall SEED」の市場浸透や、ウェブサイトリニューアルによる商品・サービスのブランドイメージ向上に引き続き取り組みました。また、スペースクリエーションの機能整備としては、人材の最適配置による組織体制の強化に取り組むなど、国別の状況にあわせた各機能の基盤強化を進めました。
中国・香港の市場動向は、不動産市場の低迷や雇用環境の悪化による消費意欲の低下などを背景として、特に住宅分野を中心に引き続き厳しい状況が続いています。このような状況下、より安定的で強固な事業基盤の構築に向けて、顧客・販路の拡大や市場別の営業体制の整備、デザイナーの採用による空間デザイン提案機能の強化、出荷体制の見直しなどに取り組みました。
これらの結果、海外セグメントにおける売上高は24,292百万円(前年同期比11.5%増)、営業損失は311百万円(前年同期は営業損失1,273百万円)となりました。
当セグメントの売上高の約8割を占める北米市場の黒字化については、2022年以降Koroseal Interior Products Holdings,Inc.の経営体制の刷新による様々な改革が進み、課題であった生産性・品質管理の改善等が奏功した結果であり、更なる収益性の拡大に向けて、デザイン人材の拡充・設備能力の増強・商材の多様化といった成長戦略を進めてまいります。また、東南アジア市場においては、施工やデザイン、配送を含めたスペースクリエーション機能を拡大するための事業変革を目指します。中国・香港市場においては、先行きが不透明であるものの、潜在的なマーケットには大きな可能性があります。海外3地域の中で最も注力すべき課題がある市場として、引き続き事業体制の再構築等を進めてまいります。
当セグメント全体としては、前年に引き続き営業損失となったものの、各施策の実行により着実に収益性が改善していると認識しております。将来的な国内市場の数量限界は避けられず、海外における事業展開の必要性は更に高まっているため、海外セグメントの各社において、各地域に応じて他社と差別化した機能や価値を提供できる事業モデルを構築し、収益化実現に取り組んでまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ47百万円減少し、24,717百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因と分析・検討内容は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は12,818百万円(前年同期は17,373百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益20,116百万円、減価償却費3,236百万円、仕入債務の増加額1,626百万円、法人税等の支払額9,089百万円及び売上債権の増加額2,810百万円などによるものです。
物流コストや一部原材料の値上げの影響により仕入価格が上昇したものの、国内市場において着実にシェアを拡大したことにより利益が堅調に推移したことが寄与し、将来の成長戦略に向けた必要な資金を継続して確保できていると認識しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は1,846百万円(前年同期は408百万円の使用)となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入2,812百万円及び有形固定資産の取得による支出4,386百万円などによるものです。
当社グループは長期ビジョン[DESIGN 2030]及び中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]に掲げる成長戦略に基づき、強固な収益力と成長力を持つスペースクリエーション企業へと転換することで、長期持続的な成長の実現を目指すこととしており、将来を見据えた必要な投資は着実に行う方針です。この方針のもと、新たな価値創造の拠点として東京日比谷に「PARCs Sangetsu Group Creative Hub」を開設したほか、壁紙の持続的な安定供給を実現するためにクレアネイト株式会社の新工場設立に向けた投資を引き続き実行しました。
一方で、コーポレートガバナンス・コードに基づき、保有意義がなくなった政策保有株式の売却を進めて資本効率の改善を進めており、当該株式の売却による収入が発生しました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は11,249百万円(前年同期は9,355百万円の使用)となりました。これは主に、資金の借入れによる収入7,669百万円及び返済による支出10,739百万円、配当金の支払額7,624百万円などによるものです。
配当金につきましては、前中期経営計画(2020-2022)[D.C.2022]及び現中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における資本政策に基づき、安定増配を実施しました。
当社グループは、連結キャッシュ・フロー計算書における現金及び現金同等物に換金性の高い金融資産を加えた資金を、現金及び現金同等物として認識しております。現金及び現金同等物をベースに、営業キャッシュ・フローの獲得による資金創出及び借入による外部資金調達で得られた資金を財源とし、様々な成長投資及び資本政策を通じた株主還元に使用しております。また、手許資金と有利子負債のバランスを維持するため、ネットキャッシュ残高にも留意しております。当連結会計年度末における現金及び現金同等物、ネットキャッシュの状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (2023年3月31日) |
当連結会計年度 (2024年3月31日) |
|
(1)連結キャッシュ・フロー計算書における現金及び現金同等物 |
24,765 |
24,717 |
|
(2)預入期間が3ヶ月を超える定期預金 |
52 |
379 |
|
(3)有価証券 |
300 |
300 |
|
(4)投資有価証券(株式除く) |
1,885 |
- |
|
現金及び現金同等物 残高 |
27,002 |
25,396 |
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (2023年3月31日) |
当連結会計年度 (2024年3月31日) |
|
(1)現金及び現金同等物 |
27,002 |
25,396 |
|
(2)短期借入金 |
△801 |
△5,711 |
|
(3)1年内返済予定の長期借入金 |
△7,801 |
- |
|
(4)長期借入金 |
- |
- |
|
ネットキャッシュ 残高 |
18,400 |
19,685 |
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における3年間の資金配分の計画は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。Sangetsu Group長期ビジョン[DESIGN 2030]を見据え、将来の事業拡大に向け必要な成長投資及び資本政策に基づく株主還元は着実に実施する方針であります。原資となる資金については収益拡大による営業キャッシュ・フローの最大化を図るとともに、成長投資における資金需要に応じて外部借入を柔軟に活用します。
(4) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、ROE(自己資本当期純利益率)を重要な経営指標と位置付けております。中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]におけるKPI(定量目標)として、2026年3月期の連結売上高1,950億円、連結営業利益205億円、連結当期純利益145億円、ROE14.0%、ROIC14.0%、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)65日の達成を目指します。
当連結会計年度におけるROEは14.1%となりました。主に、当初計画より利益が伸長したことに加えて、保有株式の時価上昇や円安による為替換算調整勘定のプラス推移で自己資本が増加した影響で、前年同期比で1.2ポイント低下しましたが、成長戦略や人的資本等への必要な投資を実施しながらも収益性が維持できていると認識しており、引き続き戦略投資と株主還元のバランスを踏まえてROEの維持向上に取り組んでまいります。
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]進捗状況
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2023年3月期 (実績) |
2024年3月期 (実績) |
2026年3月期 (目標) |
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連結売上高 |
176,022百万円 |
189,859百万円 |
195,000百万円 |
|
連結営業利益 |
20,280百万円 |
19,103百万円 |
20,500百万円 |
|
連結当期純利益 |
14,005百万円 |
14,291百万円 |
14,500百万円 |
|
ROE |
15.3% |
14.1% |
14.0% |
|
ROIC |
16.5% |
14.8% |
14.0% |
|
CCC |
77.1日 |
71.5日 |
65.0日 |
特記すべき事項はありません。
当社グループの研究開発活動においては、企業理念のPurposeに掲げる「すべての人と共に、やすらぎと希望にみちた空間を創造する。」の実現に向けた商品開発に取り組んでいます。2024年3月には当社グループの商品・空間デザイン機能、多岐にわたるスペースクリエーション提案、営業機能等のさまざまな機能を集約し、新たな価値の創出を目指すための価値創造拠点として「PARCs Sangetsu Group Creative Hub(以下、PARCs)」を開設しました。また、当拠点の開設以外にも商品開発力・調達力の強化として、主力メーカーとのアライアンス強化に継続的に取り組んでいるほか、国内最大手のビニル壁紙メーカーである当社子会社クレアネイト株式会社においては、海外子会社と連携した海外市場向けのフリースバック壁紙や、環境に配慮した非フッ素系撥水剤を使用した壁紙といった戦略的な商品開発活動を行うだけでなく、壁紙需要の高まりに対応する供給体制の強化に向けた取り組みも進めています。
品質については、取扱商品の品質管理体制を強化するために、品質管理技術室を設置し、独自の評価項目に沿って仕入先を多面的に評価し、品質改善を働きかけることで品質管理を徹底しています。商品開発の各段階においては、検証体制プロセスとして「デザインレビュー」を整備し、商品開発を担うスペースプランニング部門と、品質管理技術室をはじめとする関係部局が連携して審議を重ね、品質の担保に努めています。さらに、従来の東京支社(品川)を再設計・再整備し、当社グループが有する商品開発・製造・品質管理・技術開発の拠点「FIELDs」の開設も計画しています。従来から保有するデザインアーカイブスや商品サンプル、デジタルプリンターやカーペットタフト機などの試作製造機を集約するとともに、物性試験機をはじめとする品質管理や施工テストなど、さまざまな機能や機器を結集・連携することで、これまで以上にデザイン・開発・試作機能の開発・拡充を進めていきます。
これらの結果、当連結会計年度における研究開発費の総額は
(国内インテリアセグメント)
国内インテリアセグメントにおいては、壁装材、床材、ファブリック(カーテン・椅子生地)等、合わせて約12,000点の商品をサンゲツブランドで企画開発・販売し、毎年、主要見本帳約30冊のおよそ3分の1を更改に向けて開発しています。商品開発においては、最新のインテリアトレンドを捉えるために、国内外への市場調査を強化するとともに、第一線で活躍する外部のデザイン顧問からも情報収集を進め、「市場起点」での商品開発・研究活動を行っております。
当連結会計年度は、イギリスを代表する老舗インテリアメーカーSanderson Design Groupと共同で開発した、ライセンスブランド「MORRIS CHRONICLES(モリスクロニクルズ)」といった世界的なブランドとのコラボレーションや国内外のトレンドを取り入れた商品をはじめ、脱炭素社会の実現に貢献する低環境負荷商品や、デフレに対応する低価格帯商品の開発・拡充にも取り組みました。
こうした商品開発が外部にも評価され、樹脂の端材やお米の籾殻、ヒノキの端材といった、廃棄処分されることが多い素材を再利用した低環境負荷商品の壁紙「MEGUReWALL(メグリウォール)」が、国際的に権威のあるデザイン賞「iF デザインアワード 2024」を受賞したほか、海外のカラートレンドや、国内のプロユーザーへのヒアリングにより得た意見をもとに市場起点での開発を進めた不燃認定壁紙見本帳「FAITH」の巻頭企画である「Naturescape(ネイチャースケープ)」が、「2023年度グッドデザイン賞」を受賞しました。
これらの結果、国内インテリアセグメントにおける当連結会計年度の研究開発費の総額は
(壁装ユニット)
壁装ユニットでは、2023年5月に発売した壁紙見本帳「FINE」において、フィンランドのデザインハウスであるマリメッコや、Morris & Co.のデザインをもとに共同開発したライセンスブランド「MORRIS CHRONICLES(モリスクロニクルズ)」といった世界的なブランドをはじめ、国内外の最新トレンドを取り入れた個性あふれる商品をラインアップしました。また、6月に発刊した壁紙見本帳「SP」ではニーズの高いストレッチ壁紙などの機能性商品を大幅拡充したほか、当社初となる環境負荷低減を目的とした、非フッ素系の撥水剤(PFCフリー)を使用した商品も収録しました。さらに、中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]において、「中型商品」と位置づけた、当社のシェアが低く、市場の成長性が見込まれる戦略商品である粘着剤付化粧フィルム「リアテック」についても、2024年1月に新作見本帳を発刊しました。平面はもちろん曲面への施工が可能である同商品は、壁面や柱のほか、建具や家具にも幅広く使用でき、不燃仕上げを求められるオフィスや商業・宿泊施設のほか、近年では手軽にリフォームができる内装材として賃貸・戸建て住宅での需要が高まっています。これらのニーズを捉え、木種・柄・色・仕上がりの質感や、トレンドや市場の開発要望を取り入れた商品を多数収録しました。
また、2017年から継続開催し、今回で7回目となった「サンゲツデザインアワード2023」では、壁紙に留まらず、より間口を広げた“壁面のデザイン”を募集対象として、今まで以上に自由で新しいデザインを広く募集しました。今回も、国内外からコンセプトやデザインに優れた多くの作品が集まり、壁装の新しい可能性を広げる活動となりました。
(床材ユニット)
床材ユニットでは、オフィスを中心に商業施設や宿泊施設などでも幅広く使用されるカーペットタイル見本帳「NT350」を2023年9月に発刊しました。働き方改革やコロナ禍を経て変化するオフィス市場のニーズを取り込み、建築コストを抑えながら高いデザイン性を持つ商品ラインアップとしたほか、バッキングにリサイクルパウダーを一部配合し、全点が低環境負荷商品となっています。また、11月には社会的なニーズが高まるオフィス空間の“WELLNESS(幸福感)”に注目した商品を、多数収録したカーペットタイル見本帳「NT700」「DT」を発刊しました。意匠性と繊細な質感表現といったデザイン面のアプローチだけでなく、耐久性・耐候性・耐薬品性に優れた原着ナイロン糸を使用するなど、機能性に優れた商品も収録しています。さらに、環境配慮に向けた取り組みとしては、自社基準の環境配慮ランク「エコグレード ver.2023」を再設定しました。商品1㎡あたりのライフサイクルにおけるCO₂排出量と環境に配慮した原材料の使用率を検証・評価し、商品選定の参考指標となる低環境負荷商品のランクを表示するなどカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを推進しています。
一方、非住宅市場のみならず、近年は賃貸住宅や戸建てリフォームにおいてもフロアタイルの需要が高まっています。このようなニーズを受け、商業施設やオフィスなどのトレンドを取り入れた木目・石目デザインに加え、リビングや寝室など住宅空間全体にもおすすめできる商品を多数収録し、フロアタイルでつくる心地の良い暮らしや住空間を提案しました。
(ファブリックユニット)
ファブリックユニットでは、2024年2月に住宅から商業施設・オフィス等の非住宅分野まで幅広く使用される椅子生地総合見本帳「UP」を発刊しました。中でも、圧倒的なコストパフォーマンスを両立したビニル製の新商品「カラーレザー」シリーズは、さまざまな空間での使用用途を想定した業界最多色150色のカラーバリエーションとしました。また、ファブリック商品においても、水だけで簡単にお手入れできるメンテナンス性の高い「アクアクリーン」をはじめとする機能性商品の点数を拡充したほか、漁網やカーペット廃材などを再利用した100%リサイクル糸「ECONYL®(エコニール)」の採用や再生糸を100%使用した「ムーモル」といった低環境負荷商品も前見本帳から増点しました。
また、2024年3月にオープンした当社グループの新たな価値創造拠点「PARCs」の植栽エリアに、本来廃棄されるはずの当社カーテン生地を回収・アップサイクルし、ポリエステル繊維をリサイクルして生まれた土「TUTTI®(トゥッティ)」を採用しました。本取り組みでは、スタイレム瀧定大阪株式会社と協働し、「サンゲツカーテン・エコプロジェクト」により回収されたポリエステル製のカーテン生地を原材料の約20%に使用しています。カーテン生地を使用した同製品の製造は初めてであり、廃棄物を活用し新たな価値ある製品に再生する、アップサイクルとしての可能性を持つ試みです。当社グループは引き続き、持続可能な社会の実現に向けた新たな価値創造につながる共創を進めてまいります。
※「TUTTI」はスタイレム瀧定大阪株式会社の登録商標です。
(国内エクステリアセグメント)
研究開発活動は行っておりません。
(海外セグメント)
海外セグメントにおいては、北米市場では、Koroseal Interior Products Holdings,Inc.が、顧客のニーズに基づく製品開発活動を行っております。開発プロセスにおいては、デザイン開発部署が、多様なアイデアを市場動向やトレンド、品質といった多角的な視点から検証・評価を重ね、製品開発を行っております。当連結会計年度においては、自社製造壁紙における新商品の継続的な開発・発売に努め、市場の高い評価を受けました。中でも、日本の伝統工芸をモチーフとした海外向けコレクション「TAKUMI」では、当社グループ共通の新ブランドとして、グローバルな展開を目指した商品の拡充を進めております。
東南アジア市場、中国香港市場においては、グループシナジーをいかした商品戦略の強化として、Goodrich Global Holdings Pte., Ltd.と当社グループの壁紙メーカーであるクレアネイト株式会社、及び当社の3社を中心としたプロジェクトチームを立ち上げ、アジア圏向けの新ブランド「goodwall SEED」を発売しました。規格面はもちろん、デザインやカラーといった細部にまでこだわった日本らしいコレクションとして、市場浸透を図っております。
これらの結果、海外セグメントにおける当連結会計年度の研究開発費の総額は、