当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
1)価値創造の変遷
1849年の創業、1953年の会社設立以来、当社グループは内装に係る壁装材、床材、ファブリックなどのインテリア商品の卸売事業をコアビジネスとして業容を拡大し、1960年に1億円であった売上高が1997年には1,300億円に至り、高成長を遂げてきました。また、商品企画・開発、デザイン、物流、施工など各種機能の強化を進め、市場における確固たるポジショニングを構築してまいりました。
日本国内での建設投資のピークアウトとともにインテリア商品の卸売事業の成長は鈍化する一方、2000年代に入ってエクステリアや海外など新たな事業に参入し事業領域の拡大を進めてきました。
特にこの10年においては、成長投資を加速し、国内外でのM&Aの実行、重要な事業インフラである物流・ITなどへの投資、当社グループの価値創造の根幹となる人的資本の強化を積極的に進めています。
こうした施策が功を奏して、連結営業利益(率)は、2014年度80.3億円(6.1%)から2024年度181.7億円(9.1%)に大きく伸長しています。
持続的な成長と価値創造を目指し、2020年度よりスタートした10カ年の長期ビジョン[DESIGN 2030]では、「スペースクリエーション企業」への転換を掲げ、中核事業(インテリア、エクステリア、海外、空間総合の4事業)の深化・変革と、新規事業の探索・創出を積極的に進めることとしています。また、2023年度よりスタートした3カ年の中期経営計画[BX 2025]では、この3カ年を次の飛躍に備える期間と位置付け、人的資本、デジタル資本、ソリューション提供力、エクステリア事業と海外事業、社会価値の5つを重要施策として掲げています。
当社グループは、この長期ビジョンおよび中期経営計画に掲げる施策を着実に実行し、市場のニーズ、社会課題に真摯に取り組むことで、さらなる企業価値向上を目指しています。
2)サンゲツグループの企業理念
当社グループは、創業の精神を尊重しつつ、事業環境の変化に応じた組織体制や経営戦略の見直しおよび諸施策の実行を通じて、経済価値・社会価値両面での企業価値向上に努めてきました。その事業環境の変化は、デジタル化の進展、地政学リスク、環境問題や格差問題をはじめとする社会課題の複雑化などと合わせて、一段とドラスチックになっています。また、当社グループとして、事業規模・事業領域の拡大、国内外グループ会社数の増加など連結経営の深化、多様性の加速など、今後の成長に向けた具体的な打ち手が進み出しています。
こうした状況の下、新たな価値創造、次元を超えた成長の実現、社会課題の解決など、当社グループが果たすべき役割を明確化し、ステークホルダーの皆様とともに具体的なアクションに結び付けていくためには、当社グループの価値観を表す企業理念の全面的な見直しが必要と判断しました。2022年12月に「企業理念検討・浸透プロジェクト」を立ち上げ、グループ会社の社員を含めて中堅・若手社員も多数参加するボトムアップのプロセスで議論・検討がなされ、2024年1月に新たな企業理念を公表いたしました。
新たな企業理念では、最上位の概念としてPurpose(存在意義)を置き、それにより実現する未来像をDreamとして掲げるとともに、Purposeを形づくる企業としての信念をBelief、社員の姿勢をWayとして定めており、事業の中心である空間創造を通じた企業活動による経済価値と社会価値の創出を通じて「すべての人と共に、やすらぎと希望にみちた空間を創造する。」ことを目指しています。
・企業理念浸透プロジェクト
当社グループでは、社員一人ひとりが企業理念の理解を深め、自らの業務や企業活動との結びつきを実感してもらうために、企業理念の浸透に向けた活動を行っています。2024年には全国各支社でワークショップを開催し、グループ社員を含む有志社員が参加しました。企業理念が、当社グループで仕事を進める上での“考え方の指針”となり、社員一人ひとりが企業活動の変革を進める当事者となるように、ボトムアップでの取り組みが進んでいます。
(参考 ワークショップの様子)
3)価値創造プロセス
当社グループは、企業理念の実現を目指して、長期ビジョン[DESIGN 2030]、中期経営計画[BX 2025]のもと、「スペースクリエーション企業」への転換を進めています。価値創造プロセスでは、外部・内部環境やマテリアリティ等を踏まえて、当社が競争力を有する4つの機能の強化およびそれらの連携に裏付けられたソリューション提案力と、新たな成長機会となる次世代事業の探索・創出により、ビジネスモデルの変革を通じた「経済価値と社会価値の創出」を目指すというストーリーを示しています。
4)Sangetsu Group長期ビジョン[DESIGN 2030]
①目指す企業像
サンゲツグループはスペースクリエーション企業へ
人的資本とデジタル資本を基盤としたデザイン力とクリエイティビティによる4つの機能、すなわち
・それぞれの市場に最適なコンセプトに基づく魅力的な空間デザイン提案機能
・高度な企画・開発・調達力を持ち、広範囲な商品を提案するスペース材料提供機能
・品切れなく広域に即時配送を可能とする在庫・配送・物流機能
・さまざまな事業、人的関係、企業連携を通じての規模と総合性・機動性のある施工機能
の4つの機能の強化およびそれらの連携に裏付けられたソリューション提案力により、グローバルにスペースクリエーションに関する高い価値を提供する企業を目指します。
②外部・内部環境(前提となる環境認識)
長期ビジョン策定時点(2023年5月)に想定した外部・内部環境およびその課題は以下のとおりです。
一方、事業環境の変化は加速度的に進んでおり、本書提出日現在の外部・内部環境およびその課題については以下のとおり認識しております。
<外部課題>
・主力市場である日本では、人口減、高齢化等により新築住宅市場を中心に市場規模は想定よりも縮小傾向
・大都市圏におけるインバウンド・オフィス需要などをはじめ、半導体等新工場が立ち上がる地方など、特定の市場・地域では需要が伸長
・低環境負荷商品等の社会課題の解決に繋がる商品の需要は増加
・製造・物流・施工を担う人手の不足、原材料費・物流費・人件費等が継続的に上昇
<内部課題>
・国内インテリアセグメントの収益が着実に拡大する一方、国内エクステリア、海外の2セグメントの収益貢献が限定的である
・海外、エクステリア、空間総合の3事業における専門人材が不足している
・壁装材、床材に次ぐ、空間を構成する商品ポートフォリオの拡充が十分でない
・グループ会社を含め販管費の増大が先行していて、収益への貢献が遅れている
これら外部・内部課題の解決の根幹には、人的資本・デジタル資本の強化が最も重要であると認識しており、長期ビジョンおよび中期経営計画に基づくさらなる施策を展開してまいります。
③マテリアリティ
当社グループは、2024年に策定した新たな企業理念において、企業活動を通じて「空間」に係る経済価値、社会価値の双方を実現していくことを示しました。その実現には、現在の経営資本において足りない資本を高度化、付加していくことで、ビジネスモデルを変革していくことが必要です。そして、その変革を通じて、さまざまな社会課題の解決に取り組み社会貢献を実現していくことで、さらなる企業価値の向上に繋がっていくと考えています。
現在、そうした考え方や、事業環境の変化、ステークホルダーとの継続的な対話等を踏まえて、長期ビジョンを視野に入れた、経済価値、社会価値の創出に結びつく重要課題の見直しを進めています。
④長期ビジョン達成に向けた基本戦略
この基本戦略によるビジョンの達成を通じ、私たちは、次の社会的価値の実現を目指しています。
[サンゲツグループが実現を目指す社会的価値]
サンゲツグループは、
|
Inclusive |
(みんなで) |
:誰もが安心して快適に過ごせるインクルーシブな社会の実現 |
|
Sustainable |
(いつまでも) |
:地球環境を守るサステイナブルな社会の実現 |
|
Enjoyable |
(楽しさあふれる) |
:より豊かでエンジョイアブルな社会の実現 |
社会の実現に貢献します。
定量目標
|
2030年3月期 |
連結売上高 |
2,500億円 |
|
|
|
連結営業利益 |
270億円 |
|
⑤スペースクリエーション企業の先の展開(次世代事業)について
2020年以降、「スペースクリエーション企業」への転換に向けた取り組みを通じ、当社はこの新たな事業モデルの将来性や有効性を確認してきました。前述の通り、国内インテリアセグメントは計画通りに伸長した一方、国内エクステリア、海外の2セグメントの収益貢献は現時点で限定的なものに留まっています。また、国内インテリアセグメントにおける空間総合事業については、当初想定した時間軸での成長に至っておりません。当社としては、こうした現在向き合っている中核事業の深化・変革を一段と進め、収益基盤をより強固なものとしてまいります。同時に、今ある資産、組織、ビジネスモデルだけで長期的な成長が実現できる訳ではなく、未来の市場に備えるべく、次世代事業の探索・創出が必須となります。
現在の事業領域の周辺にあるさまざまな可能性と、当社グループの競争優位性のシナジー創出を見極めながら、企業理念の実現に資する事業展開を、ステークホルダーの皆さまと共創しながら構築していきたいと考えています。
5)中期経営計画(2023-2025)[BX 2025] ※BX=Business Transformation
市場における確固たるポジショニング、商品企画・開発、デザイン、物流、施工等の各種機能の継続的な強化、成長投資の実行等を背景に、そして、2021年から2022年までの3回に亘る商品取引価格の改定が重なり、前中期経営計画(2020~2022)[D.C.2022]最終年度の2022年度に利益の大きな伸長を果たしました。
2025年度を最終年度とする中期経営計画(2023~2025)[BX 2025]の3年間については、収益基盤をさらに強固なものとすべく成長投資を加速し、次の飛躍に備える期間と位置付けております。2025年度は、2020年度にスタートした10カ年の長期ビジョン[DESIGN 2030]の折り返しの年度であり、スペースクリエーション企業への転換を進めていく上で、インテリアをはじめとする中核事業の深化・変革、そして次世代事業の探索・構築に向けて各種施策を迅速に実行してまいります。
この中期経営計画(2023~2025)[BX 2025]の基本方針、施策、資本政策、定量目標は以下のとおりです。
なお、2025年5月14日に公表の通り、中期経営計画の最終年度となる2025年度(2026年3月期)の定量目標の一部を見直しております。詳細については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載の「(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」および「(4)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。
①基本方針
中期経営計画(2023-2025)
[BX 2025]
-次の飛躍に備える3年間-
スペースクリエーションの価値を高めるソリューション力を強化・拡充し、強固な収益力と成長力を持つスペースクリエーション企業へと転換、主要商品・市場の事業拡張に加え、商品の拡充、エクステリア事業・海外事業の拡大を実行する。
また、さらなる長期的成長を可能ならしめる事業を展開するべく、スペースオペレーションを含む次世代事業の可能性を検討する。
②施策
各施策に関する2025年3月期の進捗状況は、当社Webサイトにて説明動画および資料を公開しております。
https://www.sangetsu.co.jp/company/ir/library/briefing_report.html
なお、「人的資本の拡大・高度化・活躍支援」「社会価値の向上」に関する進捗の一部は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」もご覧ください。
③資本政策
<株主還元方針>
・2026年3月末の自己資本を950~1,050億円とする
・株主還元は配当を主体とし、1株当たり年間配当金は130円を下限に、安定的な増配を目指す
・市場の状況により自己株式の取得も検討する
<資金配分計画>
|
中期経営計画期間中資金創出 |
|
資金配分 |
|
||
|
期初保有現金同等物 |
270億円 |
|
成長投資 |
200~250億円 |
|
|
営業CF |
470~510億円 |
|
株主還元 |
250~350億円 |
|
|
借入金増減 |
▲80~60億円 |
|
期末現金同等物 |
200~250億円 |
|
④定量目標(2025年度(2026年3月期)目標)
<経済価値>
|
|
単位 |
目標 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
|
① 連結売上高 |
億円 |
2,100 |
1,898 |
2,003 |
|
② 連結営業利益 |
億円 |
190 |
191 |
181 |
|
③ 連結当期純利益 |
億円 |
130 |
142 |
125 |
|
④ ROE |
% |
11.5 |
14.1 |
11.4 |
|
⑤ ROIC |
% |
14.0 |
14.8 |
13.7 |
|
⑥ CCC |
日 |
70.0 |
71.5 |
72.0 |
2025年5月14日公表の「中期経営計画の目標見直しに関するお知らせ」において、一部目標を見直しております。
<社会価値>
・地球環境
事業活動(Scope1&2)における環境負荷の低減
|
|
単位 |
対象 |
目標 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
|
GHG排出量 |
t-CO2e |
連結 |
2021年度比 28%削減 |
26,836 (11.9%削減) |
23,592 (22.6%削減) |
|
GHG排出量 |
t-CO2e |
単体 |
2018年度比 60%削減 |
4,871 (40.0%削減) |
4,057 (50.0%削減) |
|
使用エネルギー量 |
GJ |
単体 |
2018年度比 6%削減 |
121,626 (17.9%削減) |
117,339 (20.8%削減) |
|
リサイクル率(有効利用率) |
% |
単体 |
90%以上 |
74.5 |
84.1 |
2024年度実績につきましては速報値であり、GHG排出量(連結・単体)と使用エネルギー量(単体)の正式な数値については第三者認証の取得が完了したのち、当社Webサイトにて開示させていただきます。
・人的資本
社員の健康と能力開発、風土改革
|
|
単位 |
範囲 |
目標 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
|
非喫煙率 |
% |
単体 |
85%以上 |
79.1 |
78.6 |
|
人的資本投資額 |
億円 |
単体 |
3年間合計 7億円 |
2.3 |
2.7 |
|
キャリア採用者数 |
名 |
単体 |
3年間合計 60~80名 |
49 |
39 |
|
エンゲージメントスコア※ |
- |
単体 |
58.0(A) |
53.7(BB) |
57.7(BBB) |
※2023年度以降、株式会社リンクアンドモチベーション社の提供するサービス「モチベーションクラウド」のスコアを使用しています。
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進
|
|
単位 |
範囲 |
目標 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
|
女性管理職比率※1 |
% |
単体 |
25%以上 (2026年4月時点) |
21.2 |
22.8 |
|
障がい者雇用率 |
% |
単体 |
4%以上 (2026年3月末時点) |
3.5 |
3.2 |
|
男性育休取得率※2 |
% |
単体 |
2週間以上 100% |
2週間以上 100% |
2週間以上 100% |
※1 人事異動の時期を鑑み、各年とも4月1日の数値で算定しております。
※2 男性育児休業2週間以上取得率は、子が1歳になるまでの取得予定者を含めています。
・社会資本
コミュニティへの参画
|
|
単位 |
範囲 |
目標 |
2023年度 実績 |
2024年度 実績 |
|
児童養護施設改修活動 |
件 |
連結 |
50件/年間 |
59 |
55 |
|
マッチングギフト |
S-mile (※) |
連結 |
18,000 |
13,238 |
18,289 |
|
外部団体への寄付を含めた 社会貢献活動費 |
千円 |
連結 |
年間経常利益の 0.3%~0.5%を目途とし、 寄付は特定の団体に 継続的に実施する |
43,985 |
32,234 |
※社会貢献活動の促進を目的とした「サンゲツグループマッチングギフトプログラム」において、社員の社会貢献活動に対しスマイルポイント(S-mile)を付与し、そのポイントを金額換算して支援先のNPO等の団体へ寄付しております。基準となる活動は、会社が主体となって実施する「サンゲツグループボランティアクラブ」での活動に加え、社外での福祉施設支援・被災者支援・国際交流・地域活動・青少年教育・NPO支援等の個人活動を対象とし、全国の社員が地域によらず積極的に参加できるよう活動の支援を行っております。
なお、中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]につきましては、当社Webサイトにて説明動画および資料を公開しております。
https://www.sangetsu.co.jp/company/ir/management/medium_term_plan.html
(2)経営戦略等、経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(経営環境における次期の見通し)
次期においては、世界経済は米国の関税政策による地政学的リスクの高まり、ならびに為替変動や金融政策などを一因とした各地域の需要環境の変化をはじめ、エネルギーや原材料価格、調達コストへの影響等に注視が必要であり、依然として不透明な状況が続く見通しです。
当社事業にもっとも影響が大きい国内建設市場は、住宅市場においては建築コストの高止まりや人手不足等を背景とした住宅需要の抑制により、新設住宅着工戸数・着工床面積は前年同期比で弱含みの状況が続くと予想されます。非住宅市場においては新築需要に力強い伸長は見込めないものの、インバウンド需要によるホテル・宿泊市場や、オフィスリニューアル市場の高まりが伸長要素になると考えられます。
こうした事業環境において、当社グループは競争優位性である空間デザイン提案、スペース材料提供、在庫・配送・物流、施工の4機能の一段の強化ならびに4機能の連携に裏付けられた、市場・顧客に応じた適正なソリューション提案活動を拡大させていくとともに、マーケットを起点にした市場ニーズ、社会課題に向き合う商品やサービスを投入していくことで、市場でのポジショニングをさらに高めていく考えです。また、当社グループの価値創造の根幹となる人的資本への投資や、変革と成長に向けた戦略投資を加速してまいります。
収益面においては、引き続き原材料費や物流費の増加が見込まれ、人件費をはじめとする販管費も上昇しますが、こうしたコスト増に対しては、2024年12月に実施した国内インテリアセグメントを対象とする価格改定効果の一巡と、優先順位や投資効果を見極めたコストコントロール等により吸収する考えです。
なお、当社仕入先工場の火災の影響により2025年2月以降受注停止している一部床材商品については、代替生産等による供給体制を再構築し、2025年度第2四半期ごろから段階的な販売再開を見込んでいます。
これまで営業損失が続いている海外セグメントにおいては、次期以降の黒字転換ならびに収益創出を目指して、各地域において以下の取り組みに臨みます。
増収増益基調が定着した北米では、主力のホテル分野をはじめとして市場環境は堅調に推移すると見込まれ、ホテル大手チェーン・大型物件などの案件獲得や、生産現場での原価低減活動の推進により、2024年度比で増収増益を見込んでいます。安定しつつある事業基盤をベースに、商品ポートフォリオの拡充や事業規模の拡大等に向けた成長投資を進めてまいります。
一方、東南アジア、中国・香港で展開しているインテリア商品の卸売事業については、経営体制の刷新をはじめとして組織体制やコスト構造の見直しを含め、事業基盤の再構築を進めています。また、2024年度に参画したシンガポールでの設計・施工事業においては、安定した受注による利益貢献が通期で反映されるとともに、卸売事業とのシナジーの創出や、当社グループにおける空間総合事業の起爆剤として各社との連携強化に努めてまいります。
2023年度および2024年度に収益が停滞している国内エクステリアセグメントについては、先行投資となった地域や領域の拡大が功を奏して、次期においては収益の回復が見込まれます。
(経営環境における中期視点の見通し)
長期ビジョン[DESIGN 2030]を視野に入れた時間軸において、国内の事業環境としては、オフィスやホテルなどの需要は堅調に推移する一方、人口減少、建設費高騰の影響を特に受ける住宅需要は弱含みになると予想されます。長期ビジョン策定時に想定した経営環境と比較しても、人口減少、高齢化などを背景とする人手不足、原材料費・物流費・人件費等コストの継続的な上昇は一段と顕著になっており、当社グループとして優先的に対処すべき課題として強く認識しております。
このような状況下、国内インテリアセグメントにおいては、競争優位性のある4つの機能を高度化し、新たな成長機会をとらえた商品ポートフォリオの拡充、空間総合事業の基盤強化を進めるべく、オーガニック、インオーガニックな戦略を遂行していきます。
国内エクステリアセグメントにおいては、ここ数年で実行してきた地理的拡大、事業領域の拡大を早期に収益に繋げるとともに、当社グループ一体としてのインテリア、エクステリアのシナジー創出を図ります。
海外セグメントにおいては、各地域の市場特性、市場ニーズに沿ったビジネスモデルを構築、強化するとともに、当社グループが有する各種機能を横展開、ローカライズすることで、事業基盤の確立と成長戦略の推進に臨んでまいります。
当社グループは中核事業であるインテリア、エクステリア、海外、空間総合の4事業の深化・変革を進めるとともに、未来の市場に備えるべく次世代事業の探索・創出を実現していくことで、「スペースクリエーション企業」への転換を図り、持続的な成長を目指していきます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.サステナビリティ全体に関する基本的な考え方及び取組
当社グループは、創業より内装材を中心に事業を展開し、壁紙、床材、ファブリックへと取り扱い商品を拡大させながらトータルインテリア企業としての挑戦を続けてきました。これらの企業活動の根底には、「事業を通じて日本のインテリアを良くし、人々の暮らしを豊かにすることで社会の発展に貢献したい」という思いがあり、これが当社グループの原点となっています。現在においては、この思いを当社グループ全体を見据えて再整理し、創出した経済価値を次なる社会価値の創出のため積極的に活用し、そのサイクルの中で社会と企業の持続的な成長を追求するという考え方を、企業理念や長期ビジョン、さらにマテリアリティに落とし込んでいます。今後も、社会課題を解決する企業活動を体系的にかつ高度に推進し、持続的な成長を目指しています。
(1)ガバナンス
当社グループは、持続的な成長の実現に向けて、サステナビリティの課題に対しても監督と執行が効果的に役割を果たせるよう、これらを管理・推進するマネジメント体系を構築しています。この体系は、企業理念の実現に向けて策定された各戦略に基づき、中長期的な視点でサステナビリティ施策について規律を持って運用していくことを目的としています。
当社のサステナビリティに関する戦略の要素には、主に長期ビジョン、中期経営計画、マテリアリティ、リスクマネジメントなどがあり、それぞれの運用においては、関連する主管部署がPDCAサイクルを回しています。また、取り組みの進捗や課題については、執行役員が参加する経営会議を中心に審議・報告され、全社活動のフォローアップを行っています。さらに、サステナビリティ施策の中で特に重要なマテリアリティに関しては、ESG委員会へ定期的に報告するとともに、リスクマネジメントについては、全社リスク管理委員会に報告し、それぞれの委員会を通じて議論を深め、フィードバックを受ける仕組みを整備しています。これにより、取り組み内容やプロセスの改善を図り、より高い基準での課題解決に取り組んでいます。
これらの活動状況や成果は取締役会にも報告され、取締役会がその進捗状況を監督しています。また、当社は株主や投資家をはじめとするステークホルダーに対して積極的に情報開示を行い、その評価を収集分析し社内に還元することで、経営における多様な視点の取り入れおよび情報開示の改善・拡充に向けた社内認識の醸成に努めています。
以上のマネジメント体系を通じて、当社グループはサステナビリティ課題に対処し、持続的な成長の実現を図っています。
サステナビリティ関連のマネジメント体系
■サステナビリティ関連の事項を取り扱う全社会議体
<経営会議>
当社は、業務の執行に関し必要な審議を行うとともに、意思決定に対する補助機関として経営会議を設置しており、執行役員、各部門長および常勤監査等委員をもって構成しております。原則毎月1回開催しており、長期ビジョンや中期経営計画といった中長期戦略に関する審議および進捗の確認についても主要なアジェンダとして取り扱っています。
<ESG委員会>
当社は、マテリアリティに関連する取り組みの決定やその進捗管理を行う会議体としてESG委員会を設立し、ISO26000で示された中心課題を活動テーマとして、5つの分科会(ガバナンス、人的資本、社会資本、社会参画、環境)にて活動を推進しています。各分科会は、テーマにおける主管部署だけでなく、コーポレート部門やロジスティクス部門、事業部門、スペースプランニング部門、海外事業部門および社長直轄組織も含めた幅広いメンバーで構成し、議論の多様性を高めています。ESG委員会は、各マテリアリティに対して取り組み目標を設定し、実際に業務を行う社内各部門の業務計画に落とし込みます。また、取り組み状況については、四半期ごとに、分科会からの報告による進捗管理を行うとともに、課題解決のための議論を行っています。組織体制においては、委員長を社長が、統括責任者を担当執行役員が務め、さらに監査等委員である社内取締役の出席のもと運営しています。
ESG委員会の活動内容に関する取締役会への報告は、年2回の定期報告を行う仕組みとしており、また、ESG委員会の議事録を社外取締役にも展開することで、取締役会のより強い監督のもとESG活動を展開しています。
<全社リスク管理委員会>
当社は、コーポレートガバナンスに係る各種委員会の一つとして、全社リスク管理委員会を設置し、事業活動におけるリスクを定期的に洗い出し、重要リスクの特定とその管理体制の強化を行っています。本委員会における管理項目においても、マテリアリティを含むその他サステナビリティに関するリスクが含まれており、それぞれの観点から、より多角的な管理を行っています。本委員会における管理内容の詳細については、「
<投融資委員会>
当社は、2025年4月に当社グループの成長戦略にとって重要な投資案件、融資案件の審議、フォローアップを多様な視点から討議する投融資委員会を設置しました。経営会議、取締役会に先立ち、各投融資案件の戦略的意義、経済性、リスクの所在と対応等を十分検証し、案件の実現可能性を審議する機関としての活動を開始しています。
(2)戦略
当社グループは、社会的要請や当該業界の重要テーマを踏まえ、社会および長期投資家にとっての重要度と当社事業の持続的成長への影響からマテリアリティを特定しました。これらのテーマは、長期ビジョンの実現に向けた重要項目でもあり、事業計画と連動しながらPDCAサイクルを回しています。
抽出したマテリアリティは、社会および長期投資家にとっての重要度と当社事業の持続的成長への影響からマッピングを行うとともに(表①マテリアリティマップ)、長期ビジョンで実現を目指す社会価値や、関連するSDGsと紐づけています(表②マテリアリティ・社会的価値・SDGsとの関連性)。また、特筆すべきマテリアリティに関しては、リスクと機会から分析し、リスクの管理と機会の創出・獲得に向けた対応を行っています(表③マテリアリティにおけるリスクと機会)。
なお、企業理念の策定に伴い、全社を横断的に統括するESG委員会を中心にマテリアリティの見直し・特定についての議論を進めており、改めて公表いたします。
マテリアリティの特定のプロセスは、以下のとおりです。
表①マテリアリティマップ
表②マテリアリティ・社会的価値・SDGsとの関連性
表③マテリアリティにおけるリスクと機会(抜粋)
|
マテリアリティ |
リスク |
機会 |
|
調達面での供給安定性 |
・製造設備の不具合や、災害等の影響により計画通りの生産および商品提供が困難になった際の売上減少・顧客の離反 |
・生産能力増強や、BCP体制の強化による、確実な商品提供および信頼性向上 |
|
品質安定性 |
・品質の低下による信頼性低下・顧客の離反および貼替対応による収益の圧迫 |
・品質の向上による信頼性向上・受注増加 |
|
事業活動における環境負荷 (GHG、エネルギー、廃棄物) |
・気候変動抑制のための政策が導入された際の、仕入価格の高騰 ・環境に配慮したエシカル消費の拡大による、環境負荷の高い製品のニーズ縮小および売上減少 |
・環境に配慮したエシカル消費の拡大による、環境負荷の低い製品のニーズ拡大および売上増加 ・省エネや廃棄物削減、リサイクルによるコストの削減 |
|
デザインするよろこびの提供 |
・顧客や社会のニーズに応じたデザインや商品開発ができないことによる競争力の低下、販売機会の減少 |
・顧客や社会のニーズに応じたデザインや商品開発による競合他社との差別化、販売機会の拡大 |
|
社員エンゲージメントの向上 社員の健康と能力開発 従業員のダイバーシティ・ インクルージョン |
・労働環境や組織風土が改善しないことによる社員エンゲージメントの低下および人材の社外流出・人材の確保困難 |
・労働環境や組織風土の改善による社員エンゲージメントの向上および人材の確保 ・ダイバーシティ・インクルージョンの推進による創造性の向上・競争力の強化 ・社員の能力開発による生産性の向上 |
■マテリアリティに対する目指す姿と取り組み状況(抜粋)
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分科会 |
マテリアリティ |
目指す姿 |
取り組み・トピックス |
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環境 |
事業活動における 環境負荷 |
・GHG排出量 連結:Scope1&2 2025年度28%減(2021年度比) 2029年度55%減(2021年度比) 単体:Scope1&2 2025年度60%減(2018年度比) 2029年度カーボンニュートラル |
・太陽光発電設備で発電した電力の、自家消費および自己託送の実施 ・製造拠点・ロジスティクス拠点における省エネ活動推進 ・再生可能エネルギー電力メニューの切替拡大 ・電力証書の購入 |
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見本帳リサイクル |
・2025年度目標 営業回収分全量リサイクル:30万冊 |
・分解作業の効率化 |
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人的資本 |
社員の健康と能力開発 |
・多様な従業員に対して、それぞれの雇用形態に関わらず、機会均等を尊重し、良好な職場環境の維持や健康維持増進支援を構築する |
・健康診断の内容拡充 ・女性の健康セミナー、がんに関する研修の実施 ・デジタル人材の育成 ・BX推進に向けた管理職研修 ・社内インターンシップの拡大 |
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従業員のダイバーシティ・ インクルージョン |
・グループのグローバル化とともに世界人権宣言に基づく人権尊重、ダイバーシティを推進・維持する ・障がい者雇用の職域拡大を推進し、雇用率目標4%超の維持向上と処遇・働き方の改善を促進する |
・障がい者雇用の職域拡大 ・男性育休取得拡大に向けた共育て風土の醸成 ・「GCNJコレクティブ・アクション2030宣言書」に署名、アクションプランを宣言 |
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分科会 |
マテリアリティ |
目指す姿 |
取り組み・トピックス |
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社会資本 |
品質安定性 |
・商品クレームの削減 ・品質向上に向けた意識改革 |
・仕入先との品質会議の実施 ・クレーム事例の社内共有、販売代理店へのクレーム研修実施 ・テストマーケティングによる実現場での検証 |
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調達面での供給安定性 |
・サプライチェーンの改善把握 ・CSR調達方針に基づく調達基準の策定 |
・訪問実査、WEB会議での、自己評価アンケート(SAQ)のフィードバックや設問ごとに回答状況を確認しながら改善提案を実施 |
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社会参画 |
コミュニティへの参画 |
・子ども支援 児童養護施設のリフォーム支援 50件 子ども食堂、教育支援についての支援方法の構築と実施 ・マッチングギフト 18,000S-mile |
・海外を含むグループ会社の参加 ・社会課題解決に取り組む団体への継続支援 ・主要営業ツールである見本帳を活用した、資源循環に関する体験学習の開始 |
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ガバナンス |
独立性・客観性・ 透明性のあるコーポレート ガバナンス |
・高水準のガバナンス体制整備 ・ステークホルダーとの建設的な対話 |
・有価証券報告書の一部英文開示開始 |
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コンプライアンスの 徹底による実力強化 |
・グループ全体で法令遵守体制を構築し、コンプライアンスを徹底 |
・グループ会社へのコンプライアンス支援体制の強化 ・コンプライアンスサーベイの実施 |
(3)リスク管理
当社では、「(2)戦略」に掲げるマテリアリティに対し、ESG委員会での活動を通じ、これらの改善に向けたPDCAサイクルを回しています。各分科会の取り組みの評価においては、年4回のESG委員会でのレビューを通じ、継続的な改善と課題の修正・追加を行っています。
また、当社は、コーポレートガバナンスに係る各種委員会の一つとして、全社リスク管理委員会を設置し、事業活動におけるリスクを定期的に洗い出し、重要リスクの特定とその管理体制の強化を行っています。本委員会における管理項目においても、マテリアリティを含むその他サステナビリティに関するリスクが含まれており、それぞれの観点から、より多角的な管理を行っています。詳細については、「
(4)指標及び目標
サステナビリティに関する指標及び目標については、現中期経営計画において定量目標を設定しています。「
また、当社では中期経営計画に掲げる指標以外にも、E(環境)S(社会)G(ガバナンス)の各項目で詳細なKPIを設け、進捗状況を管理しています。詳しい内容は当社Webサイトをご覧ください。
「ESGマネジメント」KPIと実績
https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/management.html
(5)その他、2024年度における具体的な取組
当社グループは、企業活動を通じて社会的責任を果たすべく、サステナビリティへの取り組みを最重要課題の一つと位置付け、持続可能な社会・企業を実現することを目指しています。2024年度における主な取り組みは以下のとおりです。
■環境における取組
当社グループは低環境負荷商品の開発を重要課題の一つと位置付けております。2024年度においては、従来の塩ビ壁紙同等の施工性を維持しつつ、植物由来の可塑剤や非フッ素撥水剤を使用し環境負荷の低減を実現した壁紙「バイオクロス」の販売を開始し、グッドデザイン賞を受賞しました。この他にも脱炭素社会や水資源保全などに貢献する低環境負荷商品を各見本帳において多数ラインアップするなど、社会課題解決に向けた取り組みを加速させています。さらに、これらの取り組みはインテリアの領域だけでなく、エクステリアの領域にも拡大しており、2025年3月にはミサワホームグループとのパートナーシップによる、サプライチェーン全体の環境負荷低減に貢献する100%リサイクル原料の人工木ウッドデッキ「フォレストウッド™」の共同開発を公表しました。また、中期経営計画[BX 2025]に掲げるGHG排出量の削減目標に関しては、自社で発電した再生可能エネルギーの自己託送やビニル壁紙メーカーであるグループ会社クレアネイト㈱と協働し、設備使用時のエネルギーロスを削減する活動を開始するなど、サプライチェーン全体での取り組みも着実に進めています。
■人的資本経営の取組
中期経営計画の社会価値における定量目標に基づき、健康経営の推進や女性管理職の積極登用等の施策を実行し、性別や年齢に関係なく安心して快適に働くことのできる職場環境の整備を全社的に進めています。具体的には新たな価値創造拠点である「PARCs Sangetsu Group Creative Hub」が、人々の健康とウェルビーイングに焦点を当てた建築物のグローバルな評価指標「WELL Building Standard™ v2」においてゴールドランクを取得しました。さらに、当社の健康経営方針“健康に働き、人生を送る「従業員が生き生きと働くために」”に基づく長期的な取り組みが評価され、6年連続、通算で7度目となる「健康経営優良法人2025」に認定されました。また、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」の取り組みでは、サンゲツグループダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン基本方針に基づく各種取り組みが評価され、LGBTQ+への取り組みを評価する「PRIDE指標2024」において、2年連続で最高評価の「ゴールド」認定を受けました。当社グループはこれらの人的資本の強化を通した「社員の幸せ」と「会社の成長」の相互作用によって、企業としての持続的成長を目指します。
■社会貢献の取組
社会貢献の取り組みでは、2014年より実施している児童養護施設のリフォーム支援をはじめ、開発途上国の子ども達を支援するNPOへの協力、産学連携のプロジェクトへの参画など、グループ会社を含む社員それぞれが主体的に参加する活動を継続的に実施しています。具体的には、継続支援団体のうちの一つである認定NPO法人ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパンと協働した児童養護施設のリフォームや、株式会社乃村工藝社との協働による「空間」を通じた社会課題の解決を目指す共創プロジェクトなど、当社事業を起点に、さまざまなステークホルダーとの連携による積極的な社会参画活動を行っています。
当社グループは引き続き、事業の根幹である「空間創造」を通じて社会課題の解決に取り組み、経済価値ならびに社会価値を創出し続けることで「すべての人と共に、やすらぎと希望にみちた空間を創造する。」ことを目指してまいります。
2.自然資本に関する考え方及び取組
当社の事業活動は、主力製品の壁紙の木材資源使用や、製造・配送・施工の過程での化石エネルギー使用など自然資本と密接に関わっており、自然資本の保全および回復は、非常に重要な課題と認識しています。また、当社の事業と関連の深い建設業界においても、設計段階での調達物品の選定にあたり、CO2の排出削減や資源循環に貢献する商品を選ぶニーズは日増しに高まっており、長期的な企業価値の向上に向けて、この課題への対応は必須であると認識しています。
当社は、自然資本に関する課題において、気候変動、資源循環、自然共生を軸に、さまざまな施策を行っています。この3つは、それぞれがお互いに影響し合っているため、それぞれの取り組み間でのトレードオフを回避しつつ、相乗効果が出るよう統合的に推進することが重要です。例えば、太陽光発電を設置するために、当社にとって重要な自然資本である木材を伐採しては意味がありません。
環境問題は、社会にとって喫緊の課題であり、今後も商品企画・開発から製造・調達・提案・配送・施工・廃棄に至るまで事業活動のさまざまな点から課題解決に取り組んでまいります。
■環境負荷の状況
当社は、「空間」を通じた価値創造を行う企業として、環境保全への取り組みを社会に対する当然の責務と考えており、自らの事業活動における環境負荷の低減はもとより、より広いスコープでの地球環境の保全に配慮しています。当社の事業活動においては、当社グループによるGHG排出や商品・見本帳の廃棄に加え、取引先でのGHG排出や建築現場での使用済み廃材などさまざまな状況・場所において環境負荷が発生しています。当社ではこのそれぞれの領域において環境負荷の状況を把握し、自社だけではなくグループ・取引先とともに低減する取り組みを行っています。
環境影響図
■自然資本におけるガバナンス
自然資本への対応は、社長を委員長とするESG委員会のもとに設置した環境分科会が行っており、気候変動や資源循環についての取り組みを推進しています。環境分科会の構成は、環境施策の企画・立案を担うESG推進課、エネルギー使用を伴うファシリティや車両管理を担う総務課、商品開発を担う各プロダクトユニット、ロジスティクスセンターを運営するロジスティクス部門、営業を担う事業部門などさまざまな部署が参加しています。分科会では、事業活動によるGHG排出の環境負荷といったマテリアリティに対し、2030年3月期の当社単体でのカーボンニュートラル、グループ連結では2030年3月期55%削減(2021年度比)の達成に向けた目標を設定し、削減計画の策定、施策の検討や実行といった対応を進めています。これらの取り組みは四半期ごとに進捗状況をレビューし、取締役会にて年2回の進捗状況に関する管理・監督を行う仕組みとしています。取締役会においては、取締役に求められるスキルとして“サステナビリティ・ESG”を掲げ、気候変動をはじめとする環境分野に対する監督機能が発揮される体制を構築しています。
また当社は、ISO14001の認証を取得しています。環境マネジメントシステムを統括するISO管理責任者のもと、これを補佐するISO事務局を設置し、各事業所において環境活動を実施しています。
ESG委員会 体制図
Ⅰ.気候変動に関する考え方及び取組
地球温暖化による気候変動は、人間の生活や自然の生態系にさまざまな影響を与えています。その地球温暖化の主たる原因は温室効果ガス(以下、GHG)であり、GHG排出量を削減させることは企業における社会的責任であると考えています。
当社グループから排出されるGHGは、主に工場、事務所、倉庫にて使用する天然ガス・都市ガス・灯油、営業車両等で使用するガソリン・軽油等(Scope1)、また電気を起源とした温室効果ガス(Scope2)で構成されております。GHGを削減させるためには、エネルギーを最小限に無駄なく有効活用することが必要であり、エネルギー削減を推進することが地球温暖化防止や地球資源の有効活用に繋がると考えております。また、当社の事業活動に伴って排出されるGHGはScope3が9割以上を占めており、サプライチェーンを含めたGHG排出量削減の取り組みがより重要と認識しています。特に、全体の8割以上を占めるカテゴリ1(購入した製品、サービス)での排出状況を可視化すべく、仕入先へのエネルギー調査およびエンゲージメントを通じ、排出量削減に取り組んでいます。
(1)ガバナンス
気候変動におけるガバナンスについては、「
(2)戦略
■採用シナリオ
当社では、気候変動による将来への不確実な影響に対応するため、TCFDが提言するシナリオ分析を実施しました。シナリオの選定においては、気候変動による影響を幅広く考慮するため、気候政策の導入による移行リスクがもっとも高まる「1.5℃シナリオ」と、化石燃料依存型の発展のもと気候政策を導入せず物理リスクが高まる「4℃シナリオ」を選定しました。また、対象事業については当社グループの売上構成比の8割を占める、サンゲツ単体の国内インテリアセグメントとし、分析時間軸は長期ビジョン[DESIGN 2030]の対象期間にあたる2030年までとしました。
今後は、対象事業のさらなる拡大や、リスク・機会の網羅性の向上、シナリオ分析の精緻化などにも取り組んでいきます。
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気温上昇 推定値 |
採用シナリオ |
採用理由 |
対象事業 |
分析時間軸 |
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1.5℃ |
SSP1-1.9 |
当社グループ事業の大半を占める日本が掲げる2050年ネット・ゼロ(1.5℃目標)に整合したシナリオであり、移行リスクが高い |
サンゲツ単体の国内 インテリアセグメント ・壁装材 ・床材 ・ファブリック |
~2030年 |
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4℃ |
SSP5-8.5 |
最も極端な状況を想定するため、物理的な影響が最も大きいシナリオを採用 |
SSP:(Shared Socioeconomic Pathways)共通社会経済経路
■リスクと機会
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項目 |
内容 |
財務への影響※ |
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1.5℃ |
4℃ |
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移行リスク |
法規制 |
◆GHG排出規制 ・炭素税の拡大によりGHG排出量に応じコストが増加する |
小 |
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市場 |
◆消費者行動の変化 ・環境に配慮したエシカル消費の拡大により、生産時のCO2排出量が高い製品や、使用時の省エネ効果の低い製品のニーズが減少し、売上が減少する |
中 |
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◆仕入コストの増加 ・仕入先への炭素税導入の影響や、脱炭素商品の開発コスト増加により、仕入コストが増加する |
大 |
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◆オフセットのコスト増加 ・各企業のカーボンニュートラル達成に向け、カーボンクレジットや電力証書の需要が高まり、オフセットのコストが増加する |
小 |
|
||
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物理リスク |
急性 |
◆供給機能の停止 ・台風やゲリラ豪雨など自然災害(洪水や浸水、強風)の激甚化により、納期通りに商品供給ができなくなる |
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小 |
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◆保有施設の改修・BCP対応コスト増加 ・台風やゲリラ豪雨など自然災害(洪水や浸水、強風)の激甚化により、保有施設が棄損し、改修するためのコストが増加する ・自然災害の激甚化に備えた保有施設の改修や、ある拠点の供給機能が停止した時に他の拠点でカバーするといったBCP対応コストが増加する |
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小 |
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機会 |
製品 |
◆低環境負荷商品の売上増加 ・生産時のCO2フリー商品のラインアップを拡充することで、Scope3の削減を目指す顧客や環境意識の高い顧客からの受注が増加する |
大 |
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※財務影響の程度:小(10億円未満)、中(10億円以上50億円未満)、大(50億円以上)
■シナリオ分析の結果
将来的に、今回分析したどちらのシナリオが訪れても、対応し、持続的な成長を実現できるよう、分析結果をもとに導き出した対策を実施していきます。
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シナリオ |
分析結果 |
対策 |
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1.5℃ |
・炭素税の導入による仕入コストの増加リスクが大きく、次いで消費者行動の変化により、生産時・使用時の環境負荷の高い製品の売上損失の影響が大きいことが分かった ・一方、機会は低環境負荷商品のラインアップ拡充による売上増加の影響が大きくなると試算された |
・省エネ、創エネの取り組み促進 ・サプライヤーと協働したGHG排出量の削減 ・低環境負荷商品の販売拡大 |
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4℃ |
・気温上昇に伴う台風やゲリラ豪雨により、供給機能の停止や保有施設の改修・BCP対応コスト増加のリスクが小さいながらもあると試算された |
・BCP体制の構築 (建物の災害対策実施、原材料購入先の複数社化等のサプライチェーンのリスクマネジメント強化) |
(3)リスク管理
当社では、気候変動への対応をマテリアリティとして選定し、ESG委員会での活動を通じてこれらの改善に向けたPDCAサイクルを回しています。各分科会の取り組みの評価においては、年4回のESG委員会でのレビューを通じ、継続的な改善と課題の修正・追加を行っています。
また当社は、コーポレートガバナンスに係る各種委員会の一つとして、全社リスク管理委員会を設置し、事業活動におけるリスクを定期的に洗い出し、重要リスクの特定とその管理体制の強化を行っています。本リスク管理体制の中に、気候変動リスクを主要リスクとして取り扱っており、詳細については、「
(4)指標及び目標
当社では、事業活動(Scope1&2)における環境負荷の低減に向けた定量目標を設け、取り組みを進めました。目標と2024年度までの実績推移は、以下のとおりです。
目標
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指標 |
対象 |
2025年度目標 |
2029年度目標 |
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GHG排出量 (Scope1&2) |
連結 |
28%削減(2021年度比) |
55%削減(2021年度比) |
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単体 |
60%削減(2018年度比) |
カーボンニュートラル |
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使用エネルギー量 |
連結 |
4%削減(2021年度比) |
- |
|
単体 |
6%削減(2018年度比) |
- |
実績推移
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指標 |
単位 |
対象 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度※ |
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GHG排出量 (Scope1&2) |
t-CO2e |
連結 |
|
|
|
|
|
|
単体 |
6,233 |
5,992 |
5,668 |
4,871 |
4,057 |
||
|
使用エネルギー量 |
GJ |
連結 |
495,641 |
532,410 |
588,235 |
580,869 |
535,701 |
|
単体 |
141,259 |
133,264 |
129,067 |
121,626 |
117,339 |
※2024年度実績につきましては速報値であり、正式な数値については第三者認証の取得が完了したのち、当社Webサイトにて開示させていただきます。
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当社の気候変動に関する取り組みや実績の詳細は当社Webサイトをご覧ください。
https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/environment/climatechange.html
Ⅱ.資源循環に関する考え方及び取組
世界的な人口増加に加え、経済発展や利便性の追求により、資源消費のスピードが加速する中、資源枯渇リスクを軽減するためには、資源循環の取り組みが重要です。当社は、これまで取り組んできた廃棄物・排出物最小化を継続しつつ、再生材の利用促進や、リサイクルしやすい低環境負荷商品の拡大といった資源循環の取り組みを強化しています。
当社商品の主素材の一つであるポリ塩化ビニル(塩ビ)は、優れた加工性・耐久性・経済性を併せ持つ素材として、建築業界において広く使用されていますが、複合的な素材として活用されていることによって、リサイクルが困難な状況となっています。塩ビのリサイクル化は当社だけでなく業界全体の課題であり、素材メーカーやリサイクル事業者と連携した取り組みを推進していきます。
(1)ガバナンス
資源循環におけるガバナンスについては、「2.自然資本に関する考え方及び取組 自然資本におけるガバナンス」をご参照ください。
(2)戦略
■資源循環に関するリスクと機会
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区分 |
リスク |
機会 |
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素材 |
・壁紙・床材の主要な原材料であるプラスチックの使用制限による収益圧迫 |
・再生材の利用促進や、リサイクルしやすい低環境負荷商品の拡大による売上増加とブランドイメージの向上 |
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廃棄物 |
・廃棄物の削減が進まないことによる処理費用の増加とブランドイメージの低下 ・廃棄物処理先不足に起因する処理費用の増加 |
・廃棄物の削減が進むことによる処理費用の減少とブランドイメージの向上 |
■見本帳リサイクル
当社見本帳は、約12,000点にもおよぶ多彩な商品をお客さまに効率的に選定いただくための重要なビジネスツールである一方、年間で約150万冊発刊されており、使用後の見本帳はさまざまな場所で、リサイクルされずに廃棄されています。この環境負荷に対する課題解決として、見本帳のリサイクルを行っています。2021年3月に設置した「見本帳リサイクルセンター」では、さまざまな素材が混在している当社見本帳を分別しマテリアルリサイクル(※)として資源循環を行っており、2024年度のリサイクル冊数は約5.5万冊になります。また、同センターにおける見本帳リサイクルの作業スタッフには、障がい者を雇用することで、障がい者の活躍を支援しています。今後、さらなる作業の効率化や紙・塩ビのマテリアルリサイクルに向けた関連事業者との連携を進めていきます。
※マテリアルリサイクル:廃棄物を再び同じ製品、または別の製品の材料として再利用するリサイクル手法
■カーテンリサイクル
当社では、環境保全への取り組みの一環として2000年10月より「サンゲツカーテン・エコプロジェクト」を進めています。専用タグラベルが付いているカーテンについては、当社が責任を持って回収し、資源循環の観点から、再び原料として商品に生まれ変わらせます。
(3)リスク管理
当社では、資源循環をマテリアリティとして選定し、ESG委員会での活動を通じてこれらの改善に向けたPDCAサイクルを回しています。各分科会の取り組みの評価においては、年4回のESG委員会でのレビューを通じ、継続的な改善と課題の修正・追加を行っています。
資源循環を含む環境に関するテーマに取り組む「環境分科会」では、①事業活動における環境負荷、②サプライチェーンの環境負荷、③見本帳リサイクル をマテリアリティとして掲げ、当社グループの事業全体の環境負荷を把握し、地球温暖化防止や持続可能な資源循環に向けた体制の構築を目指しています。
(4)指標及び目標
当社では、資源循環に関連した定量目標を設けて取り組みを進めました。目標と2024年度までの実績推移は、以下のとおりです。
・2025年度目標(単体)
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目標 |
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廃棄物総廃棄量(単純焼却・埋立処理) |
4%削減(2021年度比) |
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リサイクル率 (有効利用率) |
90%以上 |
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・実績推移(単体)
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単位 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
|
廃棄物総廃棄量(単純焼却・埋立処理) |
t |
793 |
685 |
605 |
973 |
727 |
|
リサイクル率 |
% |
77.6 |
81.7 |
83.7 |
74.5 |
84.1 |
|
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3.人的資本に関する考え方及び取組
当社グループは、持続的な企業価値向上のための重要施策として「人的資本の強化」を掲げており、積極的かつ 計画的な投資と強化策を実行しています。当社が推進する「人的資本の強化」は、「社員の幸せ」と「会社の成長」の相互作用によって企業としての持続的成長を実現することを目的としています。この相互作用を実現するための土台となるのは、「社員一人ひとりの成長意欲」です。人的資本強化においては、キャリア採用の拡大とともに、社員自らが成長しようとする意欲を「成長・活躍支援プログラム」や「能力を発揮できる環境整備」により支え、個と組織の力の最大化を図ります。
(1)ガバナンス
人的資本への取り組みについては、人事部および組織別人事担当が中心となり実行しています。その状況は、取締役会および社長を中心とするESG委員会の人的資本分科会にて継続的にモニタリングおよび評価しております。ESG委員会の体制については、「
(2)リスク管理
当社では、マテリアリティを特定し、ESG委員会での活動を通じてこれらの改善に向けたPDCAサイクルを回しています。各分科会の取り組みの評価においては、年4回のESG委員会でのレビューを通じ、継続的な改善と課題の修正・追加を行っています。
特に、人的資本に関するテーマに取り組む「人的資本分科会」においては、①社員の健康と能力開発、②社員エンゲージメントの向上、③従業員のDE&Iを掲げています。この特定においては、GRIとSASBの定めるガイドライン等を参考に当社に特に関係するESG課題を特定し、社会及び長期投資家にとっての重要度や当社事業の持続的成長への影響を踏まえて評価しています。人的資本を含むマテリアリティの進捗状況については、ESG委員会にて四半期ごとにレビューを行っています。
(3)戦略
「3.人的資本に関する考え方及び取組」の冒頭に記載している基本的な考え方に基づき、長期ビジョン達成に向けた基本戦略においては、経営・事業の基盤として「多様性のある人的資本」を位置付けるとともに、中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]では、スペースクリエーション企業への転換に向けた5つの施策の中で、最も重要な施策として、「人的資本の拡大・高度化・活躍支援」を掲げています。
長期ビジョン達成に向けた基本戦略
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における施策
各施策に関する2025年3月期の進捗状況は、当社Webサイトにて説明動画および資料を公開しております。
https://www.sangetsu.co.jp/company/ir/library/briefing_report.html
1)人材育成
人材育成方針
自己変革に挑戦する社員を尊重し、成長・活躍・自己実現の場を提供する
・社員の人生設計・成長を促進する教育機会を提供する
・昇格昇進の拡大と早期化により現場での経験を積ませ、将来の管理職、経営層の育成を行う
・計画的に多様な仕事を経験させ、活力を生み出す人材配置を行う
①キャリア採用
当社グループでは、中期経営計画(2023-2025)に掲げる「BX:Business Transformation」を実現するために、高い専門能力を持つ人材が不可欠と考えています。専門能力には、積極的に取り入れるべき社外の知見と、当社グループでの長い経験によって培われる業界や商流、商品知識といった能力の2種類があると認識しています。スペースクリエーション企業への転換を実現するためには、どちらも必要不可欠な能力であり、外部人材と既存人材の両面を高度化し、活躍の支援を行うことで、新たな能力や企業風土を社内に育んでいきたいと考えています。多様な社外の視点を各現場に取り入れることにより、ビジネスモデルの革新・変革にむけた企業風土を育み、与えられた仕事に取り組むのではなく、自分自身が仕事を変える、新しいチャレンジを行う文化・風土の強化を進めています。また、2022年度に行った人事制度改定では、組織運営能力や経営力を保有する「マネジメント系」だけでなく、高度専門的な能力を発揮する「プロ系」においても職務に応じた処遇ができる制度としており、社内の専門人材育成やキャリア採用市場における高度専門人材の獲得につなげています。
現在、当社単体の正社員は1,298名(2025年3月末時点)であり、2025年4月1日には総合職・ロジスティクス職掌で58名を新卒採用しました。キャリア採用においては、中期経営計画で設定した3年間合計(2023~2025年度)採用者数目標60~80名に対して、2023年度に49名、2024年度で39名を採用しています。対象職種としては空間デザイナー、設計・施工管理等を含めた空間総合事業専門職を中心に、情報システム関係、ロジスティクス、コーポレート部門等でもキャリア採用を拡大しています。
・キャリア採用の進捗状況(単体)
※退職者数は、キャリア採用者における退職者を指します。
・部門別キャリア採用割合(単体)
②組織別人事担当者の配置
「人材価値の向上」を推し進める上で、価値観の共有や人事制度の刷新、キャリア採用等の施策を実施するだけにとどまらず、これらの施策が機能し、社員一人ひとりが高い意欲を持って、能力を最大限発揮できる環境を整備することが重要となります。2023年度より教育・研修、配置、異動等のキャリアデザイン全般について、きめ細かな人材マネジメントを行う人事担当者を各組織に配置し、社員一人ひとりを理解した上で、キャリアデザインサポートや適正な人材配置等を進めることで、組織全体の風土改革、意識改革のみならず、新たな事業機会の創出を目指しています。
③教育・研修の拡充
教育・研修の拡充については、ビジネススキルや事業構築力・組織マネジメント力の強化を目的とした階層別研修のほか、デジタル人材育成、キャリアデザイン、職種別専門性強化などテーマに応じた研修を用意し、社員の成長意欲を高めるサポートをしています。2023年度からは、経営人材・次世代リーダー育成に向けた選抜研修、異業種交流の機会を大幅に増加させました。また、正社員と特別嘱託社員などを対象に、社員の主体的な学習を支援することを目的としたオンライン学習ツール「Udemy Business」を導入し、中期経営計画に掲げる人材活躍支援と専門性・事業構築力強化のための社員のリスキリングを促進させています。
教育研修による個々人の能力向上に加え、社員の意欲を高め、キャリアオーナーシップを醸成するための支援も進めています。2024年度は所属以外の部署を経験する「社内インターン」を実施し、約130名が参加しました。また、オンラインを活用した部署紹介イベントや社内公募制度を活用したプロジェクトを実施する等、キャリア目標やその実現に向けて必要な能力、課題について考える機会を積極的に設け、キャリア自律を支援しています。
教育体系図
2)社内環境整備(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)
サンゲツグループダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン基本方針
サンゲツグループを取り巻く国内外の外部環境の変化がますます激しくなる中で、強固な事業基盤を築き持続的な発展に繋げていくためには、多様化する需要分野・地域・お客さまに対する多様な機能や商品、深い専門性をもったサービスの提供が不可欠です。
サンゲツグループは、性別・年齢・国籍・人種・宗教・障がいの有無・性自認及び性的指向等にかかわらず、従業員一人ひとりの個性を多様性として活かし、挑戦・革新し続ける風土の醸成や仕組みの充実を推進します。
背景や感性、価値観などの違いによる新たな視点や発想を、豊かな創造性につなげる「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」を経営の中核に据え、多様化する市場の要請を捉えながら、成長実現に向けた重要施策として取り組んでいます。
①多様な人材の活躍支援
当社では、従業員の多様性をいかすことで、一人ひとりの意欲や能力を最大限発揮することを目指し、新たな価値創造を組織にもたらすべく、経営戦略の一環としてさまざまな取り組みを行っています。多様な人材の活躍を支援するための施策として、柔軟な働き方を実現する各種制度をはじめ、障がい者雇用については、処遇改善や各組織でのトライアル雇用などに取り組んでいます。また、新卒採用だけでなく、事業領域の拡大を目指して取り組む空間デザイナーや施工エンジニアのキャリア採用のほか、情報システム関係、ロジスティクス、コーポレート等においても人的資本の強化に取り組んでいる状況です。
・障がい者雇用率(単体)
障がいを持つ方の雇用率は3.2%(2025年3月末時点)と、法定雇用率2.5%を超える結果となっています。2025年度目標4.0%以上に向け、引き続き取り組みを進めてまいります。
②女性活躍支援
戦略的な人事制度改革の実践にあたり、女性活躍推進法に基づく自主行動計画を実行しています。女性社員が自身の強みを活かして活躍できる組織及びそれを支援する制度づくりを目的とし、人事部内にDE&I推進担当を配置し、目標達成に向け各種施策を展開しています。性別にかかわらず、社員の知見・経験や専門性を組織に活かすことを目指し、2024年度から2年間の行動計画に沿ってDE&Iを推進しています。
女性活躍推進法に基づく行動計画(2024~2025年度)
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目的 |
女性社員が長く働き続け、自身の強みを活かし、活躍できる組織及びそれを応援する風土の実現 |
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計画期間 |
2024年4月1日~2026年3月31日までの2年間 |
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目標①(定量) |
管理職層に占める女性割合を2025年度までに25%とする |
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目標②(定量) |
男性社員における2週間以上の育休取得率を100%とする |
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目標③(定性) |
女性特有の健康課題に対し、環境整備を行い働きやすく生産性の高い職場を目指す |
実施策
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キャリア形成支援 |
・女性社員に対する早期からのキャリア形成支援研修の導入 ・上司に対するキャリア形成支援スキル向上研修の導入 |
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男女格差の解消 |
・管理職社員に対し育児休職取得促進に向けた研修を実施し、受講率を100%にする。 ・男性育休取得者へのアンケート実施と結果開示、面談等の実施 |
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働く環境の整備 |
・社内トイレに生理用品の設置、生理休暇の見直しを検討し取得しやすい環境をつくる ・不妊治療に対応する制度の導入検討 |
・女性管理職比率(単体)
当社では2025年度末までの女性管理職比率を25.0%以上とすることを目標として掲げています。2025年4月1日時点における女性管理職比率は22.8%となっています。
※人事異動の時期を鑑み、各年とも4月1日の数値で算定しております。
・男性育児休業取得率(単体)
性別問わず、誰もが仕事と育児を両立できる環境づくりと、会社・部署ぐるみで子育てをサポートする共育ての体制整備として、男性育児休業取得を促進しています。現在、女性社員の育児休業取得率は100%となっており、男性社員においても、2025年度の目標取得率100%(2週間以上)を目指してまいります。
厚生労働省の定める定義に基づいた2024年度の男性育児休業取得率は116.7%となります。なお、当社が中期経営計画において定量目標としている男性育児休業2週間以上取得率は、子が1歳になるまでの取得予定を含めて100%となります。
※男性育児休業取得率(育児休業には出生時育休を含む):
年度内に育児休業を取得した男性社員数÷年度内に配偶者が出産した男性社員数
なお、過年度に配偶者が出産した男性社員が、当事業年度に育児休業を取得することがあるため、取得率が100%を超えることがあります。
・平均勤続年数(各年度とも3月末時点)(単体)
社員一人ひとりが意欲を持って仕事にチャレンジできる、働きがいのある会社を目指しています。その結果を示す指標の一つとして、平均勤続年数は男女ともに安定した推移を示しています。
③LGBTQ+に関する取組
「サンゲツグループ人権方針」、「サンゲツグループダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン基本方針」を掲げ、性別、年齢、国籍、人種、宗教、障がいの有無、性自認及び性的指向などにかかわらず、従業員一人ひとりの個性を多様性としていかし、挑戦・革新し続ける風土の醸成や仕組みの充実を推進することを社内外へ周知しています。こうした考えからALLY(※)イベントへの継続的な参加や、全社員を対象とした定期的なLGBTQ+研修の実施をはじめ、「同性パートナーシップ制度」導入などの制度面の拡充に取り組んできました。これらの取り組みが評価され、LGBTQ+に関する評価指標「PRIDE指標 2024」においては、2年連続で最高評価の「ゴールド」認定を受けています。
※ALLY(アライ):LGBTQ+を積極的に支援し、行動する人のこと。
3)社内環境整備(働き方の見直し)
働き方に関する方針
サンゲツでは、社員の多様性、人格、個性を尊重し、社員一人ひとりが能力を最大限発揮できる人事制度の的確な運用と、安全で働きやすい職場環境を確保する。
①仕事と家庭の両立支援
社員が能力を十分に発揮できる雇用環境の整備を行うとともに、次世代の育成に貢献するため、社員の育児・介護を支援しています。介護に関するセミナーの実施、ベビーシッター・病児保育費用の助成、民間保育所との法人提携、また、子を持つ社員への理解促進や家庭内コミュニケーション促進のためのこども参観日の開催等、さまざまな施策による共育ての風土醸成、仕事と家庭の両立を支援しています。
育児・介護支援制度
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妊娠・出産 |
育休中 |
育児 |
介護 |
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産前・産後休業 |
・育児休業者支援プログラム (上司面接・ 育児サポートセミナー) ・育児休職の一部有給化 |
・育児短時間勤務制度 (小学2年生始期まで) ・民間保育所の法人提携 ・病児保育サービス費用助成 ・ベビーシッター費用補助制度 ・フレックスタイム制度 ・時間有給休暇制度 ・在宅勤務制度 |
・介護休業 (法定+最長1年まで延長可) ・フレックスタイム制度 ・時間有給休暇制度 ・在宅勤務制度 |
②働き方の多様性
当社では、社員が生き生きと働ける「働きがい」のある職場を目指し、さまざまな労務管理の改善強化策を実施しています。フレックスタイムやテレワークなどの柔軟な勤務制度をはじめ、「Google Workspace(※)」などICT技術の活用、ベビーシッター費用の助成、民間保育所との業務提携など、社員のワークライフバランスを推進するための取り組みを多面的に行っています。2025年1月には、一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(以下、GCNJ)が主催する、GCNJコレクティブ・アクション2030「GCNJサミット2025 ~Social Change by Equity~」に賛同企業として参加し、2030年目標として「ライフデザインに応じた多様な働き方を選択し、安心して能力を発揮できる環境を整える」、「全該当社員の育休1カ月取得を実現し共育てを支援する」という具体的なアクションを宣言し、社員が安心して生き生きと働ける「働きがい」のある職場づくりに取り組んでおります。
また、当社グループの新たな価値創造の拠点として開設した東京日比谷の「PARCs Sangetsu Group Creative Hub」では、グループ機能の集約による事業の拡大だけでなく、働く社員と来訪者の“ウェルビーイング”につながる取り組みを推進し、「WELL Building Standard™ v2(WELL認証)」のゴールドランクを取得しました。
※Googleが提供するクラウドコンピューティングで、生産性向上のためのグループウェアツール。
働きやすい環境づくりに向けた施策
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働き方の柔軟性 |
コアタイム無しのフレックスタイム勤務や在宅勤務、時差勤務や時間単位の有給休暇制度等、職種や職場環境に応じて活用しやすい制度を整備。サテライトオフィスやグループ会社のオフィス利用を可能とし、働く場所の選択肢を拡充。 |
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過重労働の防止 |
PCログによる労働時間の可視化やPC自動シャットダウン時間の設定、Google Workspaceを活用し、リモート会議やチャット機能による円滑なコミュニケーション、お互いの業務状況を共有することで、業務をシェアし過重労働を防止。保健師や産業医への相談窓口の設置。 |
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オフィス環境 |
敷地内の全面禁煙の実施、グループアドレスの推進やコミュニケーションエリアの設置等、働きやすいオフィス環境の整備。 |
・ワーキングマザー比率(各年とも4月1日時点)(単体)
子育て期間中の社員が継続して就業できる制度や環境づくりを推進しています。なお、2022年より、ワーキングマザーの定義を「子のいる女性社員全員」から、「18歳未満の子のいる女性社員」へと変更しています。
※ワーキングマザー比率:ワーキングマザー人数÷女性正社員人数
・有給休暇取得率(単体)
計画的な取得の推進により、有給休暇取得日数ならびに取得率は上昇傾向にあります。
4)社内環境整備(健康経営)
健康経営方針
健康に働き、人生を送る 「従業員が生き生きと働くために」
・心身の健康づくり(本人やその家族)
心身の健康づくりに向けた体制の充実、健康の保持・増進活動に取り組みます
・人生をより豊かに
健康経営により、本人やその家族、地域社会全体への幸せづくりに貢献します
・働きやすい環境づくり
安全・健康・快適で働きやすい職場環境を確保します
当社では、サンゲツグループ企業倫理憲章5原則のひとつに「従業員が生き生きと働くために」を掲げ、従業員の多様性、人格、個性を尊重し、従業員一人ひとりが会社経営の主人公として能力を最大限発揮できる人事制度の的確な運営と、安全・健康・快適で働きやすい職場環境を確保することに取り組んでいます。引き続き、安全・健康・快適で働きやすい職場環境の確保と、心身の健康づくりに向けた推進体制の充実を図り、健康の保持・増進活動に努めてまいります。
健康経営推進体制
代表取締役 社長執行役員を健康管理最高責任者とし、人事部健康経営推進室の健康経営推進担当・保健師が中心となり、快適な職場環境と心身の健康づくりを実践するため、各事業所の健康経営推進担当、産業医と連携して従業員の健康保持・増進活動を展開しています。
具体的な取組
当社では、従業員が生き生きと働くために安全・健康・快適で働きやすい職場環境の整備と、心身の健康づくりに向けた推進体制の充実を図り、「計画年休の取得促進」「所定労働時間内全面禁煙実施」「全社員対象にしたストレスチェックの実施」など、健康の保持・増進活動に継続的に取り組んでいます。2019年には「サンゲツ健康保険組合」を設立し、健康経営に向けた組織体制を整備し、乳がん・子宮頸がん、前立腺がん(50歳以上男性)を含む人間ドックの全額補助開始および健康に関する情報発信や各種健康イベントの開催など、心身の健康づくりに向けた取り組みを強化しました。また、保険診療対象外である「先進医療制度」の治療を受ける社員の経済負担を軽減させる「がん先進医療補償制度」を導入し、従来進めている疾病予防・早期発見に向けた啓蒙活動と併せ、経済面からの「治療と仕事の両立」の支援制度を整えています。2023年度においては新たに胃カメラ受診の全額補助の開始や健康課題を健康保険組合と共有した上での、糖尿病予防プログラムの提供や歯科検診補助事業の開始、特定保健指導の積極的な推進といった「コラボヘルス事業」を進めています。また、2024年度からは脳健診や胸部CT、若年層向けの子宮頸がん検診への補助も開始しました。
中期経営計画[BX 2025]においては、健康経営における定量目標として社員の健康と能力開発、風土改革の目標として「非喫煙率」を定めており、今後も安全・健康・快適で働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。なお、これらの活動が評価され、当社は2020年以降6年連続で健康経営優良法人(大規模法人)に認定されました。
・非喫煙率(単体)
継続的な取り組みにより喫煙率は減少傾向にありましたが、新規採用者の喫煙率の影響等もあり、2025年3月末時点では78.6%(目標85%以上)となっております。改めて禁煙への取り組みを強化していきます。
当社では、この他にも定期健康診断における有所見率やがん検診受診率といった数値に定量目標を設け、健康経営を推進しております。詳しい情報は当社Webサイトをご覧ください。
健康経営
https://www.sangetsu.co.jp/company/sustainability/social/health_management.html
・その他の参考指標(単体)
・退職者数(年間・定年除く)/離職率
社員一人ひとりの人権を尊重するとともに、不当な差別やハラスメントを禁止し、公正で明るい職場づくりに努めています。心身の健康が保てる職場環境の整備を推進しており、直近5年の離職率は低い水準を保っています。
・1人あたりの年間時間外労働時間の推移
新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた2020年度をきっかけに、多用な働き方を可能にするシステム・制度の積極的な導入、業務の見直しやアウトソーシングの推進に注力しており、時間外労働の低減を進めています。
・ストレスチェックの受検率と結果(高ストレス者比率)
直近年度においては、高ストレス者は10%程度となっています。定期的なストレスチェックにより、メンタルヘルス不調の未然防止・職場環境の改善に努めています。
5)エンゲージメント(企業風土の醸成に関する取組)
企業の成長においては、社員が会社の方向性を理解・共感し、エンゲージメント高く働くことが必要不可欠であると考えています。当社では、全社員を対象とした「エンゲージメントサーベイ」を実施し、この結果を分析し組織・制度・風土等の改革に反映しており、中でも社員エンゲージメントに関する指標は、経営における重点項目として、特に注視しております。中期経営計画[BX 2025]においては、「社内意識調査」を指標の一つとして掲げていましたが、データの見える化によるエンゲージメント構成要因の明確化や、サーベイ結果に基づく具体的な改善策の実行等を目的として、2023年度に新たに「エンゲージメントサーベイ」を導入し、これに伴い中期経営計画[BX 2025]における指標を「エンゲージメントスコア」に変更いたしました。2025年度の目標においては、2023年度実績であるエンゲージメントスコア「BB(スコア52.0以上)」を2段階上の「A(スコア58.0以上)」にすることを目指しています。
また、エンゲージメントの醸成においては、経営層と社員、部署や役職、年代、地域を越えたコミュニケーションが欠かせません。当社では「組織の根幹である人材が、個人の能力とポテンシャルを最大限発揮し、部門やグループ会社などの枠組みを超えて共創する企業風土を醸成すること」を経営の重要な課題として捉えており、さまざまな機会を通じたメッセージの発信を行っています。この一環として、社会の動きやグループ内のトピック等に関する社長の考えを伝えるコミュニケーションコンテンツ「KONDO’s talk」を開始したほか、社員との対話集会や新入社員・キャリア採用者との懇親会を開催するなど、多くの対話を通じて社員との意識・ビジョンの共有を図っています。
(4)指標及び目標
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における目標と実績は以下の通りです。
社員の健康と能力開発、風土改革
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単位 |
範囲 |
目標 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
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単体 |
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79.1 |
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単体 |
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2.3 |
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単体 |
60~ |
49 |
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‐ |
単体 |
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53.7(BB) |
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※2023年度以降、株式会社リンクアンドモチベーション社の提供するサービス「モチベーションクラウド」のスコアを使用しています。
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進
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単位 |
範囲 |
目標 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
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単体 |
( |
21.2 |
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単体 |
( |
3.5 |
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単体 |
2週間以上 |
2週間以上 100% |
2週間以上 |
※1 人事異動の時期を鑑み、各年とも4月1日の数値で算定しております。
※2 男性育児休業2週間以上取得率は、子が1歳になるまでの取得予定者を含めています。
4.情報セキュリティに関する考え方及び取組
当社は情報セキュリティの強化に努め、情報資産を各種サイバー攻撃の脅威から適切に保護し、正常かつ円滑な事業活動を維持・継続することを経営上の重要事項と捉えています。
事業活動における情報の機密性、完全性および可用性を維持し、コンピュータ、サーバ、モバイルデバイス、電子システム、ネットワークおよびデータなどの情報資産、ならびに提供するサービスを悪意ある攻撃(意図的行為)から守るため、情報・サイバーセキュリティリスクの低減に取り組んでいます。
情報・サイバーセキュリティポリシー
https://www.sangetsu.co.jp/security_policy/
(1)ガバナンス
当社ではサイバーセキュリティ担当役員を選任し、サイバーセキュリティ統括室を設けております。サイバーセキュリティ担当執行役員は、サイバーセキュリティ委員会を主導し、委員会には社長執行役員をはじめ、各部門の責任者が参加し、半年ごとに情報セキュリティに関する課題を抽出し、対策を議論しています。
また、CSIRT(セキュリティ事故対応チーム)を構築し、グループ全体のインシデント管理に取り組むとともに、セキュリティ資格所持者の拡充に努めております。
(2)リスク管理
情報セキュリティにおけるリスク管理につきましては、「
(3)戦略
①情報システムセキュリティ対策
当社は、情報セキュリティの三要素である「機密性」「完全性」「可用性」を維持するため、包括的な施策に取り組んでいます。内部脅威に対しては、特権ID管理システム導入によるアクセス制御強化や、メール誤送信対策システム導入による情報漏洩リスク低減を図っています。また、マルウェアを始めとする外部からの脅威に対しては、多方面において対策を実装・整備・運用し、事業への悪影響を軽減できる環境構築を進めています。さらに、インターネット公開資産についてはグループ全体で監視し、セキュリティレベル向上に努めています。社外との連携においては、セキュリティベンダーとの月次情報共有に加えて、2024年からは日本シーサート協議会にも参加し、最新のサイバーセキュリティリスクの動向調査や対策の整備・運用に注力しています。
②情報セキュリティ教育の徹底
2024年より情報セキュリティ教育訓練システムを導入し、定期的なeラーニングによるセキュリティ教育と、電子メールを悪用したサイバー攻撃を想定した標的型メール訓練を実施しています。これらにより、社員一人ひとりの情報セキュリティに関する知識と意識の向上に取り組んでいます。また、当社事業において情報・データを効果的・効率的に活用していくことは、事業運営において極めて重要であり、これを支えるセキュリティレベルの継続的な向上に努めています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.リスクマネジメントに関する考え方及びリスク管理体制
当社グループは、多様なリスクに対し、適切かつスピード感のある対応を行うことで、企業価値の最大化と経営や業務への影響の最小化を図っています。
当社のリスク管理体制は、社長を最高責任者とする全社リスク管理委員会を設置して管理を行っています。当社グループ全体の企業価値の維持・向上に努め、リスク発生時の影響を最小化するとともに、当社の活動や社員に対して影響をおよぼす可能性があるさまざまなリスクに対し、マネジメントを行っています。全社リスク管理委員会は四半期に1回開催しており、リスク管理全体の基本方針および体制等を定めるとともに、必要に応じてタスクフォースを編成する等の機能を有します。活動状況は半年に一度取締役会で報告され、経営層は存在するリスクを的確に把握したうえで、経営判断ができる体制となっています。既に一部顕在化しているリスクから、今は顕在化していないものまでさまざまな観点から、継続的に注視・対応すべきリスクを洗い出し、明確に定義しています。各リスク管理部会では、予測されるリスクを抽出し、マッピングによる評価を行ったうえで、重点的に対策を推進していくリスクを明確にしています。
<体制図>
<リスク管理のPDCA>
2.当社グループの主要なリスク
(1) 事業環境について
(リスクの内容)
当社グループは、壁装材、床材、ファブリック(カーテン・椅子生地)等のインテリア商材の企画・販売及び壁紙の製造等に加え、設計・デザイン提案から内装・建築施工を行う国内インテリアセグメント、門扉・フェンス・カーポート等のエクステリア商品の販売及び外構の空間提案・施工等を行う国内エクステリアセグメント、米国での壁紙製造及び北米、中国・香港、東南アジアの環太平洋地域においてインテリア商材の販売ならびに東南アジアにおける空間デザイン・総合施工等を行う海外セグメントにて事業を展開しております。これらの事業は建設需要に左右されるため、国の経済全体の景気動向や政府の住宅に関する政策、税制の変更及び人口減少などに伴う住宅・非住宅の新設着工戸数の減少、景気の後退によるコントラクト市場の減少等により、ビジネス機会を損失するリスクが存在します。
(リスク対策)
事業基盤である国内市場において、住宅・非住宅分野における新築や改築は、少子高齢化が進むなか、将来的に大きく成長していくことは期待しにくいと予想しており、国内における様々な事業基盤の整備拡充を背景に、シェアの拡大と価格修正による収益改善を中期的戦略とし、長期的戦略としては国内エクステリア事業の拡大と海外事業の収益化・拡大に注力しています。調達面ではメーカーからの安定的な供給と中長期目線での商品開発を行えるよう製造部門へ経営資源を投入することにより、リスクの回避に努めております。また、現在の事業の長期的な展開の可能性を踏まえた上で、さらなる成長の為の事業展開の可能性を検討・実行すべく、2024年4月に事業創造推進室を立ち上げ、新規事業の創出に注力しております。
(2) 品質管理について
(リスクの内容)
当社グループは、「すべての人と共に、やすらぎと希望にみちた空間を創造する」ために、顧客ニーズを的確に把握し、生活空間を構成する重要な要素であるインテリア商材として、壁装材、床材、ファブリック等の魅力ある商品企画、開発、販売を行っています。一部の商品を除き、製造は外部仕入先のメーカーが行い、商品の供給を受けておりますが、その品質の担保は、顧客が製品に求める「価値」そのものであり、ブランドメーカーとしての信頼性の向上や顧客満足度の向上、競争力強化、企業価値向上の基盤となります。また中期的な期間に渡って使用されるインテリア商材は、経時変化を含めた長いスパンでの品質を如何に担保するかも重要な事項です。
(リスク対策)
商品設計審査のプロセスをデザインレビュー(Design Review:DR-A/B/C)として定め、開発段階ごとに複数の担当者が検証とチェックを行う体制を構築、運用しています。新商品の開発時には、品質検証の段階で確認すべき項目を網羅した「要求品質確認シート」を活用し、DR-A時点で検証項目の洗い出し、DR-B時点で品質や機能性の裏付け、法的要求事項の確認、DR-C時点で検証結果の報告を実施することとし、商品の市場への上市後は、商品群毎にクレーム対策会議を実施し、不備事例を分析、共有することで、類似のリスクを事前に把握し対策を講じています。
また、商品の製造委託に関しては、品質基準を明確化し、品質管理基準書に準じた商品の製造を委託し、その品質の維持・向上のため、製造現場で発生する「Man(人)」「Machine(機械)」「Material(材料)」「Method(方法)」の4つの要素の変更を管理しており、これらの変更が製品品質に及ぼす影響を事前報告により評価し、適切な対策を講じ品質トラブルを未然に防ぐ体制を構築しております。
(3) 安定調達・安定供給・仕入先のBCPについて
(リスクの内容)
当社グループでは、取扱商品のうち主力商品である壁装材や床材について、商品サンプルを掲載した見本帳を配付することで、営業及び販売活動を行っております。見本帳有効期間内は安定供給を維持することが強く求められる業界であるため、生産トラブル、原材料調達等の予期せぬ要因によって商品の供給が中断した場合、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
(リスク対策)
メーカーから商品を安定的に調達できるよう、仕入の前段階としてメーカーの工場内の実査や適正な製造工程の確認を行い、万が一調達が困難な状況に陥った際のバックアップ体制として、主要商品については十分な在庫の確保、代替となる商品の準備等の環境整備を行っております。しかしながら、2024年12月に発生した当社仕入先工場の火災においては、その影響から一部床材の供給が滞る事態となったことを鑑み、中期的な調達戦略の是正の検討と有事に備えた安定供給の強化を図ってまいります。
なお、当社子会社であるクレアネイト株式会社は、国内最大手の壁紙メーカーであります。当社が壁装事業を拡大する上で、競争力強化、量的確保のみならず、製販一貫体制の確立による事業の効率化を通じ、さらなる発展が可能になるものと位置付けており、工場の安定稼働と商品の安定供給を維持することはグループ全体で取り組むべき課題と認識しております。2025年秋に稼働予定のクレアネイト社東広島新工場により、安定供給力をさらに計画的に高めてまいります。
また、当社から顧客への持続的な商品供給ついては、入荷から受注・出荷に至るまで、あらゆる場面で関連するシステム連携の強化に加え、各地区の在庫拠点であるロジスティクスセンターの安定稼働の阻害が想定されるリスクに対して、対処すべき行動計画の検証を定期的に行い、対応策の有効性の確認と改善を図っております。
(4) 設計・施工事業について
(リスクの内容)
当社グループは、インテリア商材やエクステリア商材の販売のみならず、それら商材をいかした設計・空間デザイン提案を行い、その施工までを事業としております。設計・施工事業においては建設業法を始めとした各法規に則った事業活動が必要であり、違反と判断された際の事業継続とレピュテーションに対するリスクや、専門人材の確保等の課題があります。
(リスク対策)
収益性の高い事業の構築・拡大のため、2025年4月には空間創造における事業企画、空間デザイン・設計、施工、営業・プロジェクトマネジメント・マーケティングを一気通貫で担う「空間総合事業部」を創設し、グループ全体の施工機能に関するリスク管理を徹底する体制を整えております。また、空間総合事業における専門知見を持つキャリア人材の採用と育成、表装技能士の確保を進め、業務フローの見直しやシステム化の検討及び社内の法務面での監督を徹底すべく、随時改善に取り組んでおります。
(5) 物流機能について
(リスクの内容)
当社グループは、商材を在庫し、出荷及び配送する事業を展開しております。日本全国への配送網の維持は事業の継続はもちろん、当社の強みと言える機能ですが、物流2024年問題や高齢化に起因するドライバーの確保、物流2026年問題に向けた効率化への取り組み、ひいては配送力の安定確保は重要な課題と認識しております。
(リスク対策)
幅広いエリアの物流機能を当社グループ内に内製化することで、環境負荷の低減を含めた持続可能な物流機能を強化するとともに、地域に応じたよりきめ細やかな配送体制や、調達物流も含めたより効果的・効率的な物流体制を構築・高度化するため、2022年9月の有限会社クロス企画(2023年4月に株式会社化)に続き、2025年4月に物流会社である株式会社SDSを子会社化しました。また、荷役機器の導入による積込み・荷下ろし等の荷役作業の省人化を進め、システム化による効率的なオペレーションを順次実行してまいります。
(6) 知的財産について
(リスクの内容)
当社グループでは、“Joy of Design”をブランドステートメントとして、さまざまな空間創造を通じた“デザインするよろこび”を提供し得る、デザイン性と機能性に優れた商品開発に努めておりますが、類似した商品が他社に製造されるおそれがあります。
また、第三者より知的財産権を侵害しているという主張を受け、訴訟が提起された場合には、係争費用や損害賠償等の損失が発生し、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
(リスク対策)
リスクの低減を図るため、下記のような様々な取り組みを行っております。
・当社事業に関連する特許、意匠及び商標の出願・権利取得を行う等、知的財産の創造・保護・活用に努めております。
・競合他社の知財情報を常にモニタリングし、社内に最新の情報(特許、意匠、商標等)を共有するとともに、商品発売などに際して事前の調査確認を行っております。
・外部の専門家である弁理士・弁護士等と緊密に連携し、直ちにリスク対策を講じる体制を構築しております。
(7) 法的規制について
(リスクの内容)
予期せぬ法令等の改正があった場合、事業を展開していく上で、製造物責任、知的財産、環境、労務など様々な法的規制の適用を受けている当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対策)
内外の法規制を常時観察して法対応が行えるようにしております。また、コンプライアンスの遵守を企業にとっての最低必要条件と位置付け、管理体制を構築し、社員教育の強化に努めるなどの体制をとっております。
(8) 自然災害等のBCPについて
(リスクの内容)
商品開発、製造、調達、ロジスティクス、販売、サービスに係る当社グループの施設は、国内全域、海外(北米、中国・香港、東南アジア各国)に点在しており、地震・洪水・暴風雨・大雪等の自然災害に伴うインフラの停止、建物・設備の損壊、故障による混乱状態に陥り、当社グループの経営成績や財務状況等に影響を与える可能性があります。
(リスク対策)
当社グループでは、自然災害による事業活動への影響を最小限にとどめるため、災害発生時の事業継続計画書(BCP)を策定しております。非常時の初期対応、報告方法、対策本部の設置と役割について明記し、災害発生の際に適切な対応が取れる仕組みを構築し、定期的な訓練や設備の点検を行っております。また毎年、災害の状況に合わせて事業継続計画を見直しております。これらの他、商品の安定的な調達と供給を実行するため、仕入先などのサプライチェーンや当社グループの各地の事業拠点の被災時に、代替拠点での商品調達・配送が可能な体制を構築しております。2024年度に発生したシステム障害の経験から、今まで以上に対策が強化されており、実効性の高いBCPスキームの構築のため、2025年度には大規模システム障害を想定した訓練が計画されております。
(9) 気候変動について
(リスクの内容)
気候変動リスクへの関心が高まる中、2015年に国連で「パリ協定」が採択され、同年に開催された国連サミットではSDGs(持続可能な開発目標)が採択されるなど、2030年をターゲットにした目標の設定が進展しました。一方、金融機関に関連した動きとして、国連環境計画と国連グローバル・コンパクトのパートナーシップが打ち出した「責任投資原則(PRI)」では投資家に対してサステナビリティ投資が要請され、それに呼応して日本では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名するなど、日本の金融においてもESG投資がメガトレンドとなっています。また、気候変動関連の情報開示については、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言において、企業に対して「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目についての財務的な影響を開示するよう求められています。
このように気候変動に関連する環境変化が大きく進展する中、当社では、事業活動におけるGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)排出量を低減できないリスク、商品・見本帳を低炭素化できないリスクや回収・リサイクルできないリスク、及び急性・慢性的に起こりうる物理的なリスクが想定され、当社グループの経営成績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、サプライチェーン全体でのGHG排出量を低減できないことでの炭素税の負担増加による仕入コストの増加や、商品・見本帳を低炭素化できないことで市場からのニーズに対応できず、信用の低下及びビジネス機会の損失などに繋がることが考えられます。
(リスク対策)
当社は、気候変動リスクへの対応として、社長を委員長とする全社リスク管理委員会のもとに環境・気候変動リスク部会を設置し、組織的な管理体制を構築しております。この環境・気候変動リスク部会のもと、気候変動に関する各リスクを、法規制・評判などの移行リスクと、急性・慢性的などの物理リスクといった区分に沿って分析し、スペースプランニング部門、ロジスティクス部門、事業部門及びコーポレート部門が緊密に連携し、具体的な管理指標を設定した上で、リスクの監視と対応を行っております。
また、当社はSangetsu Group長期ビジョン[DESIGN 2030]において、地球環境を守るサステイナブルな社会の実現を掲げており、2029年度の事業活動(Scope1&2)におけるGHG排出目標を、当社単体ではカーボンニュートラル(排出実質ゼロ)、グループ全体では55%削減(2021年度比)と設定し、GHG排出量の多い生産拠点での省エネ活動や、再生可能エネルギーの導入などにより、GHG排出量の削減に努めています。今後は、サプライチェーン全体でのGHG排出量削減に向けた仕入先とのエンゲージメント強化や、顧客のニーズに応える低環境負荷商品の販売拡大を推進し、気候変動リスクに対応していきます。
(10) 情報セキュリティについて
(リスクの内容)
当社グループは、事業活動を通じ、個人情報を含む様々な機密情報を適切に管理するため、多くの投資を行っております。また、こうしたシステムの運用並びに導入・更新に際しては、システムトラブルや情報の外部漏洩が発生しないよう最大限の対策を講じております。しかしながら、外部からのコンピュータウイルスやハッキングの被害、コンピュータ・ネットワーク機器の障害、ソフトウェアの不備等によるシステム障害、災害によるシステムの一部損壊による業務停止、情報の外部漏洩等の事態が発生するおそれがあり、これらの予期せぬトラブルの発生に伴い、社会的信頼を損なうとともに多額の費用負担が生じ、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対策)
・サーバー、ネットワーク機器は、適性に応じクラウド及びデータセンターへの移行・利用を推進しております。
・外部からの不正アクセスやマルウェア等の対策として、不正侵入検知・監視サービスやセキュリティ対策ソフトを導入しております。
・ITシステムに影響を及ぼす不正なマルウェア等は導入しているEDR(Endpoint Detection and Response)にて即時検知、隔離するとともに、SOC(Security Operation Center)と連携して迅速に対処しております。
・情報セキュリティに関する社員の教育(個人情報を含む機密情報保護と情報管理の重要性)や訓練を定期的に実施しております。
・重要なシステム機器については二重化しております。
・サイバーセキュリティ損害保険に加入しております。
・改正個人情報保護法に沿った個人情報保護規定を制定しております。
・上記の対応は、サイバーセキュリティ統括室が推進するとともに、同室では当社グループ全体(国内外)のサイバーセキュリティ体制の構築・整備を進めております。
(11) 与信管理について
(リスクの内容)
当社グループは、取引先に対して与信供与を行っており、経済情勢悪化の影響や不測の事態を含めた取引先の財政状態悪化により債権の回収が困難となった場合、貸倒れによる損失が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して下記の取り組みを実施し、債権の回収不能による損失発生の予防として与信管理体制強化を図り、貸倒れによる損失回避に努めております。
(リスク対策)
・与信管理規定の適切な運用
・取引先の信用状況を勘案した与信限度額の年次更新
・重要な取引先の業況ヒアリング、財務諸表の定期的な把握
・取引先との今後の展開を見据えた取引条件の見直し
・債権回収状況のタイムリーなモニタリング
・売上債権回転期間の見直し
・与信不安先に対する会計上の貸倒引当金の設定
・与信不安先に対する管理強化や営業施策支援の実施
・取引先の信用状況に応じた担保、保証、取引信用保険付保等の債権保全策の実施
(12) 海外事業活動について
(リスクの内容)
当社グループは、北米、中国・香港、東南アジア各国を中心に事業を展開しており、以下の場合、当社グループの経営成績や財務状況等に影響を及ぼすリスクがあります。
・感染症の蔓延、政情不安、経済動向の不確実性、宗教・文化・商習慣の相違、戦争・内戦、テロ、投資・海外送金・輸出入規制等が発生した場合。
・固定資産の減損に係る会計基準等に従い、定期的に保有資産の将来キャッシュ・フロー等を算定し、減損損失の認識・測定を行った結果、固定資産の減損損失を計上する場合。
・製造部門を持つグループ会社の事業において、原油や鉱産物価格の高騰などにより原材料や商品仕入価格に極端な変動がある場合。
・日本からの輸送並びに海外グループ各社が海外から商品を調達する場合の輸送に関わるコストが高騰する場合。
・製品クレームや品質問題の長期化などによるレピュテーションリスクが生じる場合。
・海外グループ会社を経営していく当社の経営人材、現地の経営人材が確保できない場合。
(リスク対策)
・当社グループでは、平時より政治的又は経済的な障害となりうる問題に関する情報の収集や、不測の事態に対するBCPの策定など、グループ内で有事に備えた環境整備を行っております。
・当社グループでは投資後の事業を管理する体制を整備しております。
・原材料等が高騰した場合には、市場や競合の状況を判断しながら適切な価格改定を実施します。仕入先だけではなく、原油価格や原材料メーカーの価格変動動向にも注視し、仕入価格の交渉や販売価格の改定に関する適切な判断を行うための情報収集等の準備を常時実施しております。
・より効率の良い輸送方法の選択と、販売先への輸送運賃の適切な請求を行っております。
・各国での品質管理を徹底し、クレームを未然に防止する体制の構築を進めております。
・中長期的に海外事業を担う若手人材を育成するとともに、事業を成長させ、変革するための組織体制の整備と維持や収益性の拡大を担う現地の経営人材の育成を行っております。
(13) 人材の確保について
(リスクの内容)
当社グループが持続的に成長し、中長期的に企業価値を向上させていくためには、経営戦略を実行し得る、多様で優秀な人材の確保が不可欠であると認識しております。しかしながら、国内における労働力人口の減少や労働市場の流動化を背景に、業界や業種を超えた人材獲得競争は激化しており、当社グループが必要とする人材を計画通りに採用・育成できない場合、あるいは既存の優秀な人材が社外へ流出した場合には、事業計画の遂行に遅延が生じる等、当社グループの経営成績や財務状況等に影響を及ぼすリスクがあります。
(リスク対策)
当社グループでは、「人的資本の強化」を中期経営計画[BX 2025]の重要施策に掲げ、人的資本への積極的かつ計画的な投資を進めております。新卒採用の強化および高い専門能力を持つキャリア採用の拡大による人的資本の強化を進めるとともに、事業環境に連動した人事諸制度の構築、従業員の能力開発やキャリア形成・キャリア自律を支援する研修制度の充実、DE&Iの推進、多様な人材が安心して能力を発揮できる職場環境の整備に取り組んでおります。
2023年度からは、きめ細かな人材マネジメントを行う人事担当を各組織に配置し、社員一人ひとりを理解した上でのキャリアデザインサポートや適正な人材配置を実施しています。また、エンゲージメントサーベイを活用した組織課題の把握および改善に向けた施策の実行により、社員のエンゲージメント向上によるパフォーマンスの向上を図っております。
採用計画の進捗状況、エンゲージメントサーベイの結果、離職率の推移等を確認しリスク管理に努めています。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は117,011百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,548百万円増加しました。これは主に現金及び預金が8,630百万円、商品及び製品が919百万円それぞれ増加したことによるものです。固定資産は66,848百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,560百万円増加しました。これは主に有形固定資産が1,756百万円、無形固定資産が1,061百万円それぞれ増加したことによるものです。
この結果、総資産は、183,859百万円となり、前連結会計年度末に比べ13,109百万円増加しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は58,276百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,003百万円増加しました。これは主に短期借入金が3,386百万円、支払手形及び買掛金が2,025百万円それぞれ増加したことによるものです。固定負債は11,800百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,033百万円増加しました。これは主に長期借入金が2,000百万円増加しましたが、退職給付に係る負債が947百万円減少したことによるものです。
この結果、負債合計は、70,077百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,037百万円増加しました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は113,781百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,071百万円増加しました。これは主に利益剰余金が3,756百万円(親会社株主に帰属する当期純利益12,567百万円及び剰余金の配当8,811百万円)、退職給付に係る調整累計額が1,313百万円、為替換算調整勘定が843百万円それぞれ増加したことによるものです。
この結果、自己資本比率は61.5%(前連結会計年度末は62.5%)となりました。
(2) 仕入及び販売の状況
①仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
|
国内インテリア |
(百万円) |
117,075 |
103.4 |
|
国内エクステリア |
(百万円) |
4,278 |
99.5 |
|
海外 |
(百万円) |
17,493 |
127.7 |
|
調整額 |
(百万円) |
△15 |
- |
|
合計 |
(百万円) |
138,832 |
105.9 |
(注)セグメント間の取引については調整額欄で相殺消去しております。
②販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
|
国内インテリア |
(百万円) |
163,986 |
103.0 |
|
国内エクステリア |
(百万円) |
6,611 |
102.3 |
|
海外 |
(百万円) |
29,794 |
122.6 |
|
調整額 |
(百万円) |
△13 |
- |
|
合計 |
(百万円) |
200,378 |
105.5 |
(注)1.セグメント間の取引については調整額欄で相殺消去しております。
2.総販売実績の10%以上の割合を占める主要な取引先はありません。
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)におけるわが国経済は、物価上昇等により消費者マインドは弱含んでいるものの、雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しや、企業収益の改善などにより、景気は緩やかな回復基調となっています。一方、先行きについては、物価上昇の継続や金融市場の変動影響、米国の通商政策の動向などから不透明な状況が続くことが予想されます。
当社事業に直接的影響を与える国内建設市場においては、2025年3月には改正建築基準法の4号特例の駆け込み需要等の影響により新設住宅着工戸数・床面積の増加が見られましたが、建築コストの高止まりや人手不足等の影響から、全体としては弱含みで推移しました。非住宅市場は、一部では着工棟数や床面積に増加が見られたものの、依然として力強い動きには至っていません。一方、国土交通省発表の建築物リフォーム・リニューアル調査報告において、第3四半期までの受注高は堅調に推移していることから、当連結会計年度におけるリフォーム・リニューアル需要は前年同期比で増加したと見込んでいます。
このような経営環境において、当社グループは2023年5月に見直した長期ビジョン[DESIGN 2030]および同時発表した中期経営計画[BX 2025](BX:ビジネストランスフォーメーション)に基づき、中核事業であるインテリア、エクステリア、海外、空間総合事業の強化・拡大を進め、スペースクリエーション企業への転換を図るとともに、次世代事業の創出を目指しています。当連結会計年度においては、壁紙、床材、ファブリック等の主要見本帳の発刊および市場浸透に努めるとともに、調達コスト、物流費、労務費、ユーティリティコスト等の上昇を踏まえた商品取引価格の改定を実施しました。また、エンゲージメント向上施策、採用活動・研修の拡充等を通じた人的資本の強化、デジタル資本を活用したサプライチェーンマネジメントの強化などを中心とした中期経営計画の各種施策を着実に進めるとともに、2024年3月に開設した新たな価値創造拠点「PARCs Sangetsu Group Creative Hub(以下、PARCs)」を起点に、次世代事業の可能性の一つとして、スタートアップ企業とのオープンイノベーションを開始しています。
これらの企業活動により、国内インテリアセグメントでは市場が弱含む中でシェアを堅持するとともに、中型商品の伸長や価格改定の効果が見られました。さらに、海外セグメントにおける北米事業の牽引もあり、連結売上高は前年同期比で増加しました。利益面では、仕入コストの継続的な上昇、IT・物流等事業インフラ強化に伴うコスト増、人件費等の増加により、営業利益は減少しました。
これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高200,378百万円(前年同期比5.5%増)、営業利益18,174百万円(同4.9%減)、経常利益18,606百万円(同5.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は12,567百万円(同12.1%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(国内インテリアセグメント)
国内インテリアセグメントにおいては、新設住宅着工戸数ならびに着工床面積の減少に見られる厳しい外部環境のなか、当社グループの持つ商品・デザイン・物流・施工機能を、市場や地域、顧客のニーズに応じ組み合わせて提供するソリューション提案活動が奏功し、ニーズを捉えた各商品の販売が拡大しました。また、調達コスト、物流費、労務費、ユーティリティコスト等の上昇を踏まえて2024年12月に実施した価格改定は、着実に浸透が進みました。主要商品である壁紙の数量面においては、前述の厳しい外部環境下、価格改定の前後で駆け込み需要と反動減が見られ、第4四半期においては反動減の影響が継続しました。一方で、業界における壁紙出荷数量と比較した場合のシェアへの影響は限定的となっています。
物流機能については、物流2024年問題を踏まえた、より効果的・効率的な調達物流、拠点間物流、販売物流を実現するため、自社で一部配送サービスを行う「サービスクルー」の拡充や地域別配送体制の再構築のほか、省力化・省人化などを目的としたユニットロードシステムの導入を進めました。また、2025年4月には以前より当社の出荷・配送を委託していた物流会社㈱SDSをグループ会社化しており、今後、調達・販売物流の最適化、効率化などによるロジスティクス機能のさらなる向上を図っていきます。
空間総合提案においては、キャリア採用人材の知見と、従来から当社グループが持つノウハウ・事業基盤をいかした提案活動を強化したことで、受注件数の増加とともに同提案を起点とした商品販売機会の創出・拡大が進んでいます。
商品開発においては、マーケット起点での新しい見本帳の発刊や、外部との協業を含めた商品ブランド強化などによる高付加価値化を図るとともに、展示会や当社主催の「サンゲツデザインアワード2024」をはじめとするデザインコンテストを通じた市場への浸透を進めました。また、安全・安心を担保する商品・サービスの安定供給を強固なものとするべく、品質管理体制の強化、サプライチェーンの最適化などに向けた各種取り組みを加速しています。これらの取り組みの結果、国際的に権威のある「iFデザインアワード」において、昨年受賞した資源を再利用して生まれた壁紙「メグリウォール」に続いて、国立科学博物館とのコラボレーション壁紙「Day and Night Science Museum」が「iFデザインアワード 2025」を受賞しました。
なお、2024年12月に発生した当社仕入先工場の火災の影響により、2025年2月から一部の床材商品の受注を停止している状況ですが、2025年度においては代替生産等による供給体制を再構築し、第2四半期ごろから段階的に販売を再開する見通しです。
これらの結果、国内インテリアセグメントにおける売上高は163,986百万円(前年同期比3.0%増)、営業利益は18,940百万円(同2.8%減)となりました。なお、壁装ユニットの売上高は78,644百万円(同1.8%増)、床材ユニットの売上高は57,377百万円(同1.8%増)、ファブリックユニットの売上高は9,609百万円(同1.1%増)、デザインフィー・施工を含むその他の売上高は18,354百万円(同14.3%増)となりました。
人口減少等による市場の漸減、および仕入価格、物流費、人件費等のコストアップなど、今後も厳しい事業環境が見込まれる中でも、市場のニーズ、社会課題に応じたソリューション提案力を強化し、付加価値の高い商品の開発、新たなビジネスモデルの創出に取り組んでまいります。また、既存のインテリア商品ベースの事業の深堀りに加え、中長期にわたる成長に向けたポテンシャルを有する空間総合事業においては、専門性を備えたビジネスモデルを確立し、事業基盤を構築することが急務と認識しており、収益力向上に向けた施策を着実に実行してまいります。
(国内エクステリアセグメント)
国内エクステリアセグメントにおいては、主要市場である新設住宅着工戸数の低迷により、エクステリア市場全体は厳しい状況が継続しました。このような環境下、グループ会社である㈱サングリーンでは、地理的拡大施策により新設した関東2支店の売上高が計画以上に進捗したことに加えて、主要メーカーの価格改定に伴う販売価格への転嫁やその他メーカー商品の価格改定前の駆け込み需要もあり、売上高は増加しました。外構の空間設計・施工を含めた提案事業においては、販路拡大に向けた営業活動や施工領域の拡大が奏功し、受注増加に繋がり始めました。また、当社の空間総合事業との連携などにより、新たな付加価値創出と競争優位性を高める取り組みも進捗しています。
これらの結果、国内エクステリアセグメントの売上高は6,611百万円(前年同期比2.3%増)、営業利益は17百万円(前年同期は営業損失77百万円)となりました。
当セグメントを担う㈱サングリーンにおいては、新たな拠点の設置や事業領域拡大のためのコストが先行し、中期経営計画策定時に想定した収益水準には至っておりません。中核であるエクステリア商品卸売事業の強化のための品揃え拡充に加え、空間総合事業の基盤構築やインテリア・エクステリア一体提案、当社との連携強化を進め、グループシナジーを活かした施策を実行してまいります。
(海外セグメント)
海外セグメントでは、海外関係会社の2024年1月から12月までの実績を、当連結会計年度の業績に算入しております。
北米は、主力のホテル分野における自社製造壁紙の売上伸長やホテル分野以外での戦略商品の販売数量増加が見られる中、主に自社製造壁紙の価格改定効果が牽引し、売上高は増加しました。利益面では、品質を維持するための製造コスト増加や業績連動賞与をはじめとする人件費等の費用の増加がありましたが、売上増加や不良率の改善により、前年同期と比較して増益となっています。
東南アジアでは、従来から展開しているインテリア商品卸売事業とのシナジーの創出を狙い、空間デザイン・総合施工を事業領域とするD'Perception Pte Ltdをグループ会社化しました。その効果並びに卸売事業におけるマレーシア、タイの売上伸長により、同地域での売上高は前年同期比で増加しました。一方、主力のシンガポールでは受注減少の影響が顕著となり、通期では赤字額が拡大しましたが、コスト適正化により第4四半期は第3四半期と比較して赤字額が縮小しました。また、2025年4月には経営体制を刷新しております。
中国・香港では、不動産市場の低迷や雇用環境の悪化による消費意欲の低下などを背景に依然として厳しい状況が続いています。収益化に向けた一時的な費用の発生もあり、第4四半期には営業赤字が拡大しましたが、香港の経営体制の刷新、顧客・販路の拡大による売上高の増加、組織体制見直しによるコストの適正化に取り組んでいます。
これらの結果、海外セグメントにおける売上高は29,794百万円(前年同期比22.6%増)となり、北米では引き続き増収増益で推移している一方、アジアでの業績悪化、また第1四半期に計上したD'Perception Pte Ltdの株式取得に関する一時的費用や、同社を新たに連結したことに伴う体制整備費用等の販売費及び一般管理費の増加等により、営業損失は785百万円(前年同期は営業損失311百万円)となりました。
当セグメントで最も事業規模の大きい北米においては、リーダーシップと優れた経営手腕を有する経営者のもと、既存事業の強化、新たな事業への挑戦等の成長戦略を加速してまいります。
アジアにおいては、業績回復が遅れている既存のDistribution事業について、経営体制の刷新や組織の見直し等を行い、早期の黒字転換および収益基盤の確立に取り組んでまいります。一方、当連結会計年度に参入したDesign&Build事業については、グループ会社化したD'Perception Pte Ltdを梃子として、当社との連携を含めたグループ全体でのシナジー創出を目指します。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ8,727百万円増加し、33,445百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因と分析・検討内容は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は19,260百万円(前年同期は12,818百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益18,695百万円、減価償却費3,180百万円、売上債権の減少額3,751百万円及び、法人税等の支払額5,541百万円などによるものです。
顧客との交渉や手形決済から電子記録債権への移行などを進めた結果、資金回収の早期化が図られたことをはじめとして、サプライチェーンマネジメントの強化のための様々な取り組みが奏功し、営業キャッシュ・フローの創出力は確実に向上していると認識しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は6,873百万円(前年同期は1,846百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出4,741百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出1,817百万円などによるものです。
当社グループは長期ビジョン[DESIGN 2030]及び中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]に掲げる成長戦略に基づき、強固な収益力と成長力を持つスペースクリエーション企業へと転換することで、持続的な成長の実現を目指すこととしており、将来を見据えた成長投資を着実に行う方針です。この方針のもと、壁紙の持続的な安定供給を実現するためにクレアネイト㈱の新工場設立に向けた投資を引き続き実行するとともに、当社グループ全体でのシナジーの創出を狙い、Design&Buildを事業領域とするD’Perception Pte Ltdの株式の70%を取得し、グループ会社化しました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は3,980百万円(前年同期は11,249百万円の使用)となりました。これは主に、資金の借入れによる収入28,596百万円及び返済による支出23,208百万円、配当金の支払額8,802百万円などによるものです。
配当金につきましては、中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における資本政策に基づき、安定増配を実施しました。
当社グループは、連結キャッシュ・フロー計算書における現金及び現金同等物に換金性の高い金融資産を加えた資金を、現金及び現金同等物として認識しております。現金及び現金同等物をベースに、営業キャッシュ・フローの獲得による資金創出及び借入による外部資金調達で得られた資金を財源とし、様々な成長投資及び資本政策を通じた株主還元に使用しております。また、手許資金と有利子負債のバランスを維持するため、ネットキャッシュ残高にも留意しております。当連結会計年度末における現金及び現金同等物、ネットキャッシュの状況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (2024年3月31日) |
当連結会計年度 (2025年3月31日) |
|
(1)連結キャッシュ・フロー計算書における現金及び現金同等物 |
24,717 |
33,445 |
|
(2)預入期間が3ヶ月を超える定期預金 |
379 |
282 |
|
(3)有価証券 |
300 |
300 |
|
(4)投資有価証券(株式除く) |
- |
- |
|
現金及び現金同等物 残高 |
25,396 |
34,027 |
(単位:百万円)
|
|
前連結会計年度 (2024年3月31日) |
当連結会計年度 (2025年3月31日) |
|
(1)現金及び現金同等物 |
25,396 |
34,027 |
|
(2)短期借入金 |
△5,711 |
△9,098 |
|
(3)1年内返済予定の長期借入金 |
- |
- |
|
(4)長期借入金 |
- |
△2,000 |
|
ネットキャッシュ 残高 |
19,685 |
22,929 |
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における3年間の資金配分の計画は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。Sangetsu Group長期ビジョン[DESIGN 2030]を見据え、将来の事業拡大に向け必要な成長投資及び資本政策に基づく株主還元は着実に実施する方針であります。原資となる資金については収益拡大による営業キャッシュ・フローの最大化を図るとともに、成長投資における資金需要に応じて外部借入を柔軟に活用します。
(4) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、ROE(自己資本当期純利益率)を重要な経営指標と位置付けております。中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]における定量目標として、最終年度となる2026年3月期のROE14.0%の達成を目指し、成長戦略の実行を進めてまいりました。しかしながら、国内エクステリアセグメントおよび海外セグメントにおいては、前者は成長投資によるコストが先行し、後者はアジアでの業務改善の遅れなどにより収益基盤の構築が依然として不十分であり、本中期経営計画策定時に想定した収益には結びついておりません。また、足元では2024年12月下旬に発生した当社仕入先における工場火災が一部床材の供給に影響を与えており、業績にマイナス影響を及ぼす見込みです。
このような状況を踏まえ、2025年5月14日公表の通り、本中期経営計画の最終年度である2026年3月期の定量目標の一部見直しを行いました。見直し後の業績目標である連結売上高2,100億円、連結営業利益190億円、連結当期純利益130億円、ROE11.5%、ROIC14.0%、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)70日の達成を目指してまいります。
なお、当連結会計年度におけるROEは11.4%となりました。前述の通り、国内エクステリアセグメント・海外セグメントにおける利益目標の未達、および国内インテリアセグメントにおける当社仕入先の工場火災の影響による利益の押し下げ、ならびに保有株式の時価上昇や金利上昇による退職給付に係る調整累計額の増加等により自己資本が増加したことも影響し、前年同期比で2.7ポイント低下しました。当社グループは、ビジネスモデルの深化、変革に向けた成長投資による着実な収益成長と、利益水準や資本効率等を踏まえた適正な株主還元との両輪による、企業価値の一段の向上を目指しております。引き続き、成長投資と株主還元のバランスを踏まえ、ROEを含む定量目標の達成に向けた各施策を実行してまいります。
中期経営計画(2023-2025)[BX 2025]進捗状況
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2026年3月期 (目標) ※見直し前 |
2026年3月期 (目標) ※見直し後 |
2024年3月期 (実績) |
2025年3月期 (実績) |
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連結売上高 |
195,000百万円 |
210,000百万円 |
189,859百万円 |
200,378百万円 |
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連結営業利益 |
20,500百万円 |
19,000百万円 |
19,103百万円 |
18,174百万円 |
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連結当期純利益 |
14,500百万円 |
13,000百万円 |
14,291百万円 |
12,567百万円 |
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ROE |
14.0% |
11.5% |
14.1% |
11.4% |
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ROIC |
14.0% |
14.0% |
14.8% |
13.7% |
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CCC |
65.0日 |
70.0日 |
71.5日 |
72.0日 |
特記すべき事項はありません。
当社グループは、壁装材・床材・ファブリック(カーテン・椅子生地)等、合わせて約12,000点の商品をサンゲツブランドで企画開発・販売しており、主要見本帳約30冊のうち、毎年およそ3分の1の商品を更改しています。
現在は、これまで培ってきた商品開発・企画力とネットワークをベースに、市場ニーズに沿った、かつ市場動向を先読みした「市場起点」での開発を進めるとともに、内装空間のデザイン・総合施工を担う空間総合事業や壁紙メーカーをはじめとする国内外のグループ会社のバリューチェーン上のさまざまな機能・ノウハウを掛け合わせることで、商品開発の高度化に取り組んでいます。さらに、豊富なラインアップとブランド価値向上に向けて、世界的なブランドとのコラボレーションやパートナー企業との連携強化などのオープンイノベーションを推進しています。
また、商品開発において近年重視している大きなテーマの一つが、気候変動や資源循環、人手不足などの社会課題の解決に向けた取り組みです。例えば、気候変動を中心とする環境問題への対応はグローバルな課題であり、顧客や消費者も商品選択の軸に環境影響を据える流れが顕著になってきています。当社グループが属する建設市場においても例外ではなく、建築の設計段階からCO2削減や再生材利用などを重視した商品が選定されるケースが増加しています。こうした社会課題への対応と市場ニーズの的確な把握をもとに、当社グループでは「省エネ」「省資源」「ロングライフ」の3つを柱とした低環境負荷商品の開発・販売を通じて、地球環境・生活環境の向上に貢献しています。
品質管理については、取扱商品の品質管理体制を強化するために2015年に品質管理技術室を設置、独自の評価項目に沿って仕入先を多面的に評価し、改善を働きかけることで品質管理を徹底しています。商品開発の各段階においては、検証体制プロセスとして「デザインレビュー」を整備し、スペースプランニング部門において、商品開発を担う各プロダクトユニットと、品質管理技術室をはじめとする関係部局が連携して審議を重ね、品質の担保に努めています。なお、2025年4月の組織改編では、品質管理体制をさらに強化すべく「品質企画室」を新設しました。
また、サプライチェーンマネジメントの調達・発注・在庫管理等をグループ会社、仕入先を含めて統括する組織として、施策を立案する「SCM統括室」と実際に施策を実行する「SCMオペレーション室」を新たに設置しています。
これらの結果、当連結会計年度におけるグループ全体での研究開発費の総額は