第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

当社は、創業の精神である「信用本位」「感謝報恩」「よろこびのあきない」を基本理念と位置づけております。

この精神を原点に、宗教用具関連事業を通じて、「心の平和と生きる力」を実現することを当社の使命と捉え、そのために必要なサービスや商品のきめ細やかな提供と、様々な価値観の変化を先取りした柔軟な提案を追求してまいります。それとともに、これまで長年取り組んできた「供養」の領域をさらに掘り下げ、さらには領域を周辺に拡張して、お客様の抱えているお悩みやお困りごとを解消する商品・サービスを提供することで、お客様の「心豊かな生活(ピースフルライフ)」を支援する企業を目指してまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社は、仏壇仏具・墓石・屋内墓苑の販売を中心とする事業強化により、主にROA、売上高伸張率、自己資本比率を主要な経営指標の目標とし、各指標の向上を目指しております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社は、「仏壇仏具事業」「墓石事業」「屋内墓苑事業」を宗教用具関連事業の中核と位置づけ、各事業が連動して顧客創造を進めることで、相乗効果を図ってまいります。

「仏壇仏具事業」については、さまざまなお客様のニーズにお応えできる当社オリジナルの商品開発に取り組んでまいります。また、当社に来店された多くのお客様は、大切な誰かを亡くされて来店されます。そのお客様の気持ちに寄り添い、お客様の期待に応えられるような「最上のおもてなし」を提供できる人材の育成を継続して実施してまいります。

店舗政策については、より多くのお客様に心豊かな生活を送っていただけるように、顧客接点が見込まれる立地や店舗形態(ショッピングセンターや百貨店など)の検討を行ない、新規出店や移転、統廃合などを推し進めてまいります。

「墓石事業」と「屋内墓苑事業」を含めた遺骨収蔵に関する事業について、特に近年人気のある「樹木葬」は、異業種の参入もあり、競争環境が徐々に悪化していることから、当社においても開発に向けた企画提案と受託販売に関する活動を強化してまいります。また、「合葬墓・海洋葬」など多様なニーズに対応できるような販売体制づくりも並行して行なってまいります。

また、「飲食・食品・雑貨事業」では、上記の宗教用具関連事業とは別の供養にとらわれずに日常の「祈り・願い・感謝」を「食」を通して提案し、新たな顧客接点の増加を目指してまいります。

今後は、なお一層変化するお客様のニーズに対応した商品・サービスの提供とともに、「供養」の枠組みにとらわれず、日常の「祈り・願い・感謝」の提案を拡大し、「手を合わせる機会」を創造してまいります。

当社は、2023年3月期から新たな3ヵ年の中期経営計画が始まりました。中期経営計画では「売り切り型からの脱却」と「手を合わせる機会の創造」をテーマに、ご供養の領域でお客様に安心・安全な商品を提供することに加えて、ご供養以外の領域においても商品・サービスを開発・提供してまいります。具体的には、法事シーンを中心としたギフトの販売や、2023年4月より全店展開したピースフルライフサポート事業における紹介サービスの展開です。当事業年度は一定の成果が上がったものの、試行錯誤しながら進化に向けて様々な実験を行なっている段階であり、現時点においては事業の柱となるような規模には至っておりません。現中期経営計画の最終年度である2025年3月期はこれらの新しい取組みを新たな事業の柱に成長させられるよう、機能及び体制を強化してまいります。さらに当社が提供する商品・サービスの幅を拡げながら、当社とお客様の関係性を継続できるような仕組みを並行して検討・実験し、お客様との長期にわたる関係構築を目指してまいります。

2025年3月期は、新しい事業の芽となる活動に注力しつつ、それらの活動と今後の展開に目処をつけるとともに、当社の中長期的な成長に向けた絵姿、そしてそれを実現するための重要課題を特定し、次期中期経営計画の策定に取り組んでまいります。

 

(4) 会社の対処すべき課題

当社が事業を展開する宗教用具関連業界を取り巻く環境は、お客様の生活様式や価値観の多様化によって購入商品の小型化・簡素化の傾向が継続し、それに伴う単価下落の傾向などが継続しております。当社が対象とするお客様はご家族様を亡くされた方が中心となりますので、当社の市場は、商圏内における死亡者数の推移に連動するものと考えておりますが、お客様のなかには伝統的形式に縛られない「自分らしい」供養の在り方を求める方や、おひとり様なので、そもそもお仏壇を用意しないという方が一定数いらっしゃることが想定されます。また、既にご自宅でお祀りされているお仏壇が大きい、もしくは長くお使いの結果傷んでしまったという理由で、小型のお仏壇にお買替えされるお客様が一定数いらっしゃり、このようなお買替えの需要も市場の一部を形成しております。そのため、死亡者数が増加しても市場規模が単純に拡大しないものと認識しており、前述のような価値観を持ったお客様のインサイトの把握とこれまでにない商品・サービスの開発とご提案が課題となっております。

業界全体としては、新型コロナウイルス感染症が流行して以降、お客様の情報収集手段及び購買行動がリアルからデジタルに大きく変化しており、その動きに拍車がかかっております。また、当社のようなお仏壇・お仏具の専門小売店ではないホームセンターや家具メーカーなどの企業が、近年お仏壇の取扱いを増やしており、新たなプレイヤーとして台頭してきております。

このような環境変化のなか、当社は顧客接点の更なる拡大とお客様の営業店への誘致を目的に、デジタル領域の課題を設定し強化・推進するとともに、紙媒体を含めたお客様への情報発信ややり取り、お客様とのコミュニケーションを一貫性のあるものとして、効果・効率を高めていくための機能を統合し、カスタマーコミュニケーション部を2024年4月に新設いたしました。カスタマーコミュニケーション部では、WEBサイトの強化(SEO、デジタルマーケティング、SNS活用など)と、ECモールの強化(モールごとの販売促進策、商品説明を充実させるなどのページ改善)に加え、顧客との関係性を強化していくCRM(注1)や、WEB以外の媒体(チラシ・カタログ・CMなど)を手掛けるプロモーション機能を持ち、お客様の属性や購買プロセスに沿った最適な情報発信とコミュニケーションを図っていくことで、集客を高めてまいります。

事業別の課題としては、仏壇・仏具事業については、最も競争力の高いLIVE-ingコレクションの商品改廃によるラインナップの刷新・強化に加え、各価格帯において競争力の高いオリジナル商品の開発・投入によって、競合他社と差別化・対抗していくとともに、富裕層のお客様に提案できる高価格帯の商品品揃えも充実させ、お仏壇の単価維持・向上を図ってまいります。また、お客様への「最上のおもてなし」を実践するために、営業部門を中心に社員への販売教育を継続課題として実施してまいります。更に商品及び接遇という、当社の強みを活かして既存及び新規商圏での出店を計画的に行ない、シェアの獲得を目指してまいります。

当社の墓石事業及び屋内墓苑事業に重要な影響を及ぼすご遺骨供養に関する動向としては、お客様が要望する遺骨供養の手段の変化が大きな課題となっております。特に近年人気が高まっている樹木葬は、墓石の代わりに樹木を墓標としてご遺骨を地中に埋葬するスタイルですが、通常の墓石と比較して価格がリーズナブルであるため、新しくお墓を検討されるお客様からの要望が増加しております。当社はここ数年「樹木葬」の開発の企画提案を始めとして、商圏内で受託販売可能な樹木葬墓地の確保を重要な課題として取り組んでまいりました。しかしながら、当社とは全く業容が異なる企業も同様の樹木葬墓地の開発に向けた動きを強めており、営業部門を中心にスピード感を持って推進し、より条件の良い立地での樹木葬墓地の確保が必須の課題となっております。屋内墓苑事業については、先述した樹木葬墓地のニーズの高まりにより、一定の需要減の可能性はあるものの、利便性の高い施設は依然としてお客様から高い支持を受けております。ただし、屋内墓苑施設の供給量が、需要を上回っている状況は変わらず、宗教法人による厄除け祈願や、施設の見学バスツアーなど各施設の特色を生かしたイベントを開催するなど、差別化が課題となっております。

飲食業界においては、物価高騰による食材及び商品仕入価格の上昇、水道光熱費、物流費の増加などで、厳しい状況が継続していると認識しており、当社が運営している「田ノ実」についても、収益性の改善が求められることから、これらの影響を最小化することが引き続きの課題となります。当然、コスト削減と並行して売上高を増加するための施策を検討・実施していく必要があるため、飲食及び食物販においてMDの強化を引き続き行なってまいります。また、2022年10月より全店での販売を開始した田ノ実のギフトについては、当初法事シーンが中心ではあったものの、商品の拡充やシーンの拡大によってさらなる売上拡大を目指してまいります。

新たな事業の確立を目指し、活動をスタートしているピースフルライフサポート事業については、営業店を中心とした各事業所において、ご供養以外の周辺領域でのお困りごとをヒアリングし、2023年4月より全店にて相談対応やサービスを提供しております。具体的には、相続に関することや、遺品整理、不動産整理などの手続きです。現時点では、提携企業にお客様を取り次ぐ形でサービスを提供しておりますが、お客様のニーズをより広く、深く把握していくことで、当社として独自に提供できる商品・サービスを検討し、中期経営計画のテーマに掲げている「売り切り型からの脱却」につながるような商品・サービスのラインナップの充実化を図ってまいります。

全社的な課題としては、サステナビリティとDX(注2)に関する課題、さらに組織運営上の課題が対処すべき課題であると認識しております。サステナビリティについては、2023年3月24日に公表したサステナビリティ基本方針に基づき、4つの重要課題を特定し、新たに設置したサステナビリティ委員会にて具体的な取組み内容を決定し、担当部署を中心に課題を推進してまいりました。当社の事業の成長に資する取組みが現状十分に行なえていないため、引き続き経営陣を中心に課題の精査を行ない、中期経営計画の課題と連動させていくことが重要であると認識しております。DXに関しては、人材の確保が困難になるなか、生産性を高めるためにデジタルツールの活用による業務効率の向上が課題となると考えております。それによって生み出された人員は、イノベーションを生み出す企画創造のための人材として活用していく必要があると認識しております。また、当社顧客から獲得したデータを統合し、それらの分析から新たな洞察を獲得し、新規商品・サービスの開発や顧客接点の最適化などに活用していくことも重要な課題であると認識しております。組織運営上の課題としては、多様な価値観やライフステージに合わせた働き方やキャリア形成、人材育成が実現できる新しい人材マネジメント体系の構築や、新しいチャレンジが自律的・積極的に行なわれるような組織風土の醸成などが課題であると考え、そのような活動を支援してまいります。このような制度面の充実とともに、より良い企業風土を作っていくことで、優秀な人材の確保につながると考えております。

 

(注1)CRM…「Customer Relationship Management」の略で、顧客それぞれの購入や商談の履歴、趣味や嗜好、家族構成などの情報を一括して管理し、企業の営業戦略に活用する経営手法のこと

(注2)DX…「Digital Transformation」の略で、情報技術を有効かつ継続的に活用することで、企業の業務の在り方から組織・文化・風土までを変革し、それによって企業が新たな価値を創出し、社会や人々の生活を向上させるという考え方、またはそうした取り組みのこと

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ基本方針

私たちは、創業の精神に基づく持続的な企業活動を通じて、お客様、社員、社会、自然をはじめとしたあらゆるご縁への感謝の想いを体現し、歴史ある日本文化を伝承することで、ともに調和し、輝きあい、喜びあえる世界を実現してまいります。

 

(2) 重要なサステナビリティ項目(マテリアリティ)

当社は、各部門から提出されたサステナビリティに係る取組課題について、サステナビリティ基本方針との親和性、社会問題解決への貢献度、当社利益へのインパクト、取組の継続性といった基準で検証し、重要なサステナビリティ項目(マテリアリティ)として4つの重要課題と8つのテーマを選定しております。

重要課題

テーマ

心豊かな生活を支援するための

サービスや商品の提供と創出

市場シェアの拡大

新市場の創造

デジタル領域の強化

自然に配慮した企業活動

原材料に配慮した商品開発

省エネ・省資源の取組み

日本文化の伝承

日本の精神文化の承継

日本の伝統文化・技術の継承

多様な人材が活躍できる職場づくり

人的資本・多様性に関する取組み

 

(3) ガバナンス

当社のガバナンス体制につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 イ 会社の機関・内部統制の関係」に記載のとおりであります。

また、当社は、サステナビリティに係る取組を次のとおり実行します。

① 各部門は、サステナビリティに係る取組状況を3ヵ月に1回の頻度でサステナビリティ委員会に報告します。

② サステナビリティ委員会は、各部門のサステナビリティに係る取組状況をモニタリングし、必要に応じて各部門に指示を出します。

③ サステナビリティ委員会は、全社のサステナビリティに係る取組状況を半年に1回の頻度で取締役会に報告します。

④ 取締役会は、全社のサステナビリティの取組状況を監督し、必要に応じてサステナビリティ委員会に是正を勧告します。

 

(4) 戦略

当社は、上記の重要なサステナビリティ項目(マテリアリティ)に関する具体的な施策や担当部門についてサステナビリティ委員会で協議・決定し、取組みを推進しております。

また、当社における人材の多様性の確保を含む人材育成方針及び社内環境整備方針は次のとおりであります。

① 人材育成方針

当社は、会社を「人間形成の場」と考えています。

従業員一人ひとりが、当社におけるあらゆるご縁を通じて専門的な教養やスキルを身につけながら「個の力」を高めること、自主性・自律性を発揮し「自己」を確立すること、これらのプロセスにおいて、創業以来脈々と育まれ引き継がれてきた「敬い・感謝・礼儀を重んじる”和”の企業文化」に包まれながら様々な経験を積み重ねることで、日本の心に根差した奥深い精神性を養うことが当社の人材育成の本質です。このような人材育成の本質を根幹に据え、従業員と会社が協調し互いに役割を果たしながら人材育成を推進してまいります。

 

② 社内環境整備方針

当社では、従業員一人ひとりが「個の力」を発揮していくために「健康」が欠かせない要素と考えております。適切な労働環境の提供、健康管理の支援、メンタルヘルス対策の実施などを通じて従業員一人ひとりの心身の健康保持増進に努めてまいります。

一方で、当社では、「個の力」を「組織の力」に昇華させていくために「多様性」が欠かせない要素と考えております。従業員が自主的・自律的に「多様なキャリア」・「多様な勤務体系」・「多様な勤務場所」を選択できるインフラ・仕組みや、多様性が交わる機会(組織横断や他社共同のプロジェクトやワークショップ)などを従業員に提供し、表層的(年齢・性別など)・深層的(価値観・経験など)の両面から多様な属性を持つ従業員が働きやすく活躍できる環境を整備してまいります。

そして、これらの社内環境整備の実施を背景として、多様な属性を持つ従業員の雇用と活用を進めてまいります。

 

(5) リスク管理

投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは、「3 事業等のリスク」に記載のとおりでありますが、サステナビリティ関連のリスク及び機会について、その影響度や発生頻度の検証等は十分ではありませんので、今後サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別評価し、管理するための体制の構築を引き続き検討してまいります。

 

(6) 指標及び目標

上記「(4) 戦略」に記載のとおり、当社は、重要なサステナビリティ項目(マテリアリティ)に関する具体的な施策や担当部門についてサステナビリティ委員会で協議・決定し、併せて創業100周年を迎える2029年までの目標及び年度ごとの目標についても協議・決定しております。

また、当社では、上記「(4) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材育成方針及び社内環境整備方針に基づき、次のような取組、指標、目標を掲げております。なお、当事業年度の実績は次のとおりであります。

① 人材育成方針に基づく取組、指標、目標、実績

当社では、専門的な知識・教養を身につけることが従業員の「個の力」を高めるものと考えております。

イ.専門的な知識を身につける当社独自の社内資格プログラムの実施

■内容:階層ごとの対象者に対する社内資格(ベーシック資格・販売資格)の講座及び試験の実施

■指標:社内資格の取得率

■目標:ベーシック資格 取得率100%、販売資格 取得率90%

■実績:ベーシック資格 取得率98.5%、販売資格 取得率91.7%

(注)「累計取得者人数÷受験資格を有する累計対象者人数×100」で算出しております。

ロ.専門的な教養を身につける当社独自の理念教育の実施

■内容:「経営理念(創業の精神)」への理解を深め実践につなげる社内研修・プログラムの実施

■指標:社内研修・プログラムの実施回数

■目標:-(毎事業年度、選抜基準を設定し、その規模により実施回数を設定)

■実績:当事業年度は受講対象者が僅少であったため開催を見送り、翌事業年度の開催内容についての検討を実施。

(注)現在は課長職以上の選抜者を対象としており、当事業年度までの累計受講者人数は41人となっております。また、翌事業年度の対象者は5~10名を予定しております。

② 社内環境整備方針に基づく取り組み、指標、目標、実績

イ.「健康」の維持増進に向けた取組みの一環としての休暇取得の推進

■指標:年間有給休暇取得率

■目標:年間有給休暇取得率 70.0%

■実績:年間有給休暇取得率 63.6%

(注)1 「全雇用者の有給取得日数計÷全雇用者の有給付与日数計×100」で算出しております。

2 有給取得日数には、前事業年度有給休暇の繰越分を取得した分も含めております。

3 付与日数には、前事業年度繰越分は含めておりません。

ロ.「多様性」の確保に向けた取組みの一環としての女性の活躍の場の拡大

■指標:係長職(店長・所長)に占める女性従業員の比率

■目標:2025年3月31日までに30%

■実績:18.7%(当事業年度末時点)

(注)「係長職に占める女性の人数÷係長職総人数×100」で算出しております。

なお、上記指標・目標とは別に、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異につきましては、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (3) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載のとおりであります。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項につきましては、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) お客様の供養に対する価値観の変化について

お客様の生活様式や価値観の変化に伴って、従来の概念に捉われない供養へのニーズが高まっております。この大きな変化の一部として、既存販売商品における小型化・低価格化は一段と進行しており、また、屋内墓苑や樹木葬・合葬墓・海洋葬等の新しい商品・サービスへのニーズの高まりもみられます。

当社は、取扱い商品・サービスの見直しや拡充及び新業態への取組み等の対応を図っておりますが、このようなお客様の意識の変化が、当社の今後の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 自然災害・事故・感染症等の発生について

当社の主要な営業拠点及び商品流通拠点は、首都圏を中心とした関東地域に集中しているため、大規模な地震、台風といった自然災害、事故、感染症等により流通経路や店舗設備が被害を受けた場合には、商品の調達や販売に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社の品質基準に適合する商品を製造しうる工場を育成するにはある程度の年月を要するため、これらの工場が自然災害・事故・感染症等により短期間で甚大な被害を受けた場合には、価格・品質競争力のある商品の充分量の調達が困難となり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 海外における社会情勢の変化について

当社が販売する商品の大半は、中国等アジア各国からの輸入によるものであります。

また、仏壇に使用する木材や、墓石に使用する石材等の原材料等は、海外協力工場に集約され、商品の生産が行なわれております。

このため、海外の政治情勢や経済環境等の変化により、原材料価格及び輸送費等の急激な高騰や著しい円安の影響、あるいは一部の部材についての供給の滞り、代替材の調達先が確保できない、商品の製作・出荷ができない場合には、商品の利益率の悪化や機会損失の発生により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 優良な霊園・墓所の確保について

墓石売上確保のためには霊園・墓所を確保することが重要となりますが、お客様の要望は、より生活圏に近く立地の良い霊園を求める傾向が強くなっております。

しかしながら、地方自治体の霊園開発規制強化や開発業者と近隣住民とのトラブル等により、宗教法人による霊園の新規開発は従来に比べて困難な状況となっております。将来に向けて、優良な霊園や墓所が充分確保できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 建墓権取得に係る営業保証金の評価について

優良な霊園・墓所の確保のために、当社は主に霊園開発計画の段階で、霊園の経営主体(宗教法人等)に建墓権(墓石を販売する権利)取得のための営業保証金を差入れております。営業保証金は、当社と宗教法人等との「墓地販売業務提携契約」に基づく、建墓権取得を目的としての墓地永代使用権販売受託業務のために差入れた金銭の返還請求債権で、墓石の販売権が付随した複合的な性格を持っている債権であります。差入れた営業保証金は、当社と墓石販売契約を締結する顧客が霊園の経営主体に永代使用料(墓地を使用する権利料)を支払った後、霊園の経営主体から返還されるものであります。

建墓権取得にあたっては、開発計画の頓挫や開園後の販売不振等の事業リスクの回避を充分検討したうえで営業保証金の差入れを行なっておりますが、霊園の経営は地方自治体の経営主体に対する許可制であることから、開園の不許可や許可の取消しが生じるなど、当初の想定外の事態が発生する可能性があります。また、開園済みの霊園に対する営業保証金については、顧客の動向や霊園ごとの環境変化により回収までに長期を要する可能性があります。その結果、営業保証金の一部又は全部の回収が困難と判断される場合には、貸倒引当金を計上するなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 屋内墓苑受託販売物件の販売保証について

屋内墓苑の受託販売では宗教法人と販売業務委託契約を締結する際、納骨堂経営の安定化を目的として、販売保証を行なっております。

販売保証とは、当社が宗教法人に対して一定の計算期間ごとに受託販売目標金額を保証する契約であり、受託販売金額が計算期間内の販売保証金額に満たない場合には、不足額を保証金として宗教法人へ預託することとなります。なお、預託した保証金は、受託販売金額が販売保証金額を上回った場合等、将来的には宗教法人から当社へ返還されるものであります。ただし、当社が預託している販売保証金については、顧客の動向や施設ごとの販売状況により回収までに長期を要する可能性があります。その結果、販売保証金の一部の回収が困難と判断される場合には貸倒引当金を計上するなど、業績及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。

なお、販売保証の状況につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(貸借対照表関係)」に記載のとおりであります。

 

(7) 減損会計について

当社は、店舗、本社において設備等を保有しており、減損会計を適用しております。店舗の収益性が悪化した場合や保有資産の市場価格等が著しく下落した場合は、減損損失を計上する可能性があります。その場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 店舗設備投資について

当社は134店舗の直営小売店舗を展開しております。そのため、経営効率の改善のための店舗移転や老朽化・陳腐化した店舗の改装投資等の店舗戦略により、固定資産の除却損等の損失が発生する可能性があります。

 

(9) 店舗賃借と差入保証金について

当社が展開する店舗の大部分が賃借物件であります。賃借期間は賃貸人との合意により更新いたしますが、賃貸人側の事由により賃借契約を解約される可能性があります。

また、賃貸人に対して保証金を差入れておりますが、倒産その他の賃貸人に生じた事由により一部回収不能になる可能性があります。

 

(10) 売上高の季節的変動について

当社の売上高は季節性が高く、お盆と秋のお彼岸を迎える第2四半期(7月から9月まで)と、春のお彼岸を迎える第4四半期(1月から3月まで)の売上高が他の四半期に比べて高くなる傾向があります。

 

(11) 店舗の衛生管理について

食品衛生とは安全・安心な商品をお客様に提供することであり、店舗では食材の取扱い及び衛生管理を実施するとともに、清潔な店作りに注力しております。しかしながら、万一、食中毒等の重大な衛生上の問題が発生した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 顧客情報の漏洩について

当社では多くの顧客情報・個人情報を取り扱っております。顧客情報・個人情報の取扱いについての諸規程を整備するとともに、情報システムのセキュリティ体制を構築し、それらを全社に周知することにより、顧客情報・個人情報の漏洩を防ぐ対策を講じておりますが、不測の事態等により顧客情報・個人情報が外部に漏洩した場合には、当社の社会的信用の低下や損害賠償請求の発生等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症が、5月8日には指定感染症5類へ移行されたことで、国内における行動制限や海外からの入国制限が緩和され、人流の回復や消費活動の正常化が進行し、緩やかな景気回復が期待される環境になりつつあります。一方で、世界的な金融引き締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念などがあるほかに、物価高騰や円安は続いており、経済の先行きは依然として不透明な状況が続いております。しかしながら、個人消費は持ち直しの動きがみられ、先行きについては雇用・所得環境が改善する下で回復することが期待されております。

宗教用具関連業界においては、お客様の生活様式や価値観の多様化によって購入商品の小型化・簡素化が進み、それに伴う単価下落の傾向が継続しております。また、お仏壇や墓石といった伝統的な形式を必要としない供養の在り方を求める声もあり、お客様の多様なニーズへの対応が求められております。そして近年はEコマース市場の拡大や、ポータルサイトの利活用など、お客様の購買行動や情報収集のデジタル化が進んでいることから、販売手法の見直しが求められております。

当社はこのような情勢のなか、仏壇仏具事業に関しては、お客様の変化に対応するために新商品の開発と商品の投入を実施してまいりました。墓石事業に関しては、屋内墓苑事業を含むご遺骨供養に対する多様なニーズに対応できることを目的に活動してまいりました。

 

イ 財政状態

当事業年度末における資産合計は、販売保証契約に基づく預託により販売保証金が3億56百万円、主に年金資産の増加により前払年金費用が3億14百万円、時価が上昇したことにより投資有価証券が2億33百万円、ソフトウエア開発等によりソフトウエアが1億72百万円及び既存店舗設備の更新等により什器備品が90百万円それぞれ増加並びに営業保証金の譲渡等により貸倒引当金が1億53百万円減少したものの、現金及び預金が8億87百万円、墓石販売に伴う営業保証金の回収等により営業保証金が2億70百万円、商品が2億11百万円及び繰延税金資産が1億77百万円それぞれ減少したことなどにより、前事業年度末に比べて1億51百万円減少し、180億66百万円となりました。

当事業年度末における負債合計は、長期借入金(1年内返済予定を含む)が4億68百万円、未払法人税等が3億12百万円及び買掛金が2億82百万円それぞれ減少したことなどにより、前事業年度末に比べて11億10百万円減少し、61億62百万円となりました。

当事業年度末における純資産合計は、主に当期純利益10億59百万円を計上し利益剰余金が7億85百万円増加したこと及び投資有価証券の時価が上昇したことによりその他有価証券評価差額金が1億70百万円増加したことなどにより、前事業年度末に比べて9億58百万円増加し、119億3百万円となりました。

当社は、自己資本比率を主要な経営指標の目標とし、財務体質の強化に取り組んでおります。

当事業年度末においては、借入の返済により長期借入金(1年内返済予定を含む)が減少したこと及び利益剰余金が増加したことなどにより、自己資本比率は65.9%(前事業年度末は60.1%)となりました。

 

ロ 経営成績

当事業年度の経営成績は、売上高は213億円(前期比1.4%減)となりました。

営業利益は16億12百万円(前期比8.8%減)、経常利益は16億38百万円(前期比7.6%減)、当期純利益は10億59百万円(前期比8.2%減)となりました。

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

当社は、「仏壇仏具・墓石」、「屋内墓苑」及び「飲食・食品・雑貨」を報告セグメントとしております。

<仏壇仏具・墓石>

仏壇仏具については、東日本地区と西日本地区ともに、販売単価が向上したものの、販売基数が減少した結果、売上高は、150億80百万円(前期比2.1%減)となりました。当事業年度は、お客様の購買行動のデジタル化が浸透していることから、積極的なリスティング広告(注1)への費用投下や、カスタマーサイト内のご供養記事などコンテンツ強化を行ないSEO(注2)対策を実施いたしました。また、MA(注3)ツールを活用したメールフォローなど効率的な販売促進活動を継続することで、リピーターの獲得に繋げることができました。営業施策として、お客様のご心情に寄り添った最大限のおもてなしを実行し、そのうえでより良い商品をおすすめする付加価値販売を実践しております。主力商品として、主に国内家具メーカーと共同開発したLIVE-ingコレクションシリーズや、世界的に有名な建築家 隈研吾氏がデザインした『薄院』の販売を強化しております。

 

(注1)リスティング広告…インターネットにおいて、ユーザーの検索結果に適合した広告を表示するサービス

(注2)SEO…「Search Engine Optimization」の略で、インターネット上の検索エンジンで特定のキーワードを検索した結果リストにおいて、その上位に表示されるようにウェブサイトの構成や内容を調整すること、また、その手法

(注3)MA…「Marketing Automation」の略で、顧客の動向や趣向をリアルタイムに把握して適切な商品情報を提供したり、購入見込みの高い顧客の選別などを自動的に行なうこと

 

墓石については、仏壇同様に東日本地区・西日本地区ともに、販売基数が減少したことにより、売上高は、44億60百万円(前期比3.3%減)となりました。当事業年度は、主に自社企画の樹木葬開発に注力し、商圏内の霊園・寺院に対し、積極的に樹木葬の企画・提案をし、東日本地区で3件(千葉市稲毛区、岐阜県可児市、愛知県刈谷市)、西日本地区で3件(北九州市門司区、佐賀市、福岡県田川郡)の新規樹木葬の受託販売を開始しております。

<屋内墓苑>

屋内墓苑については、リスティング広告などデジタルを活用した販売促進活動を積極的に行ないましたが、結果として売上高は、5億62百万円(前期比1.4%減)となりました。今後も墓石販売とともに、ご遺骨供養において利便性や機能性を求められるお客様のニーズに応えられるよう事業を展開してまいります。

<飲食・食品・雑貨>

飲食・食品・雑貨については、法事シーンを中心とした食のギフトの販売が順調に推移した結果、売上高は、2億36百万円(前期比112.7%増)となりました。

<その他>

その他については、売上高は、9億61百万円(前期比5.9%増)となりました。主に仏壇仏具のEC販売が順調に推移しました。

 

なお、当社の報告セグメント別売上高は次のとおりであります。

(報告セグメント別売上高の構成比及び前期比増減)

報告セグメント

等の名称

区分

前事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前期比増減

金額

構成比

金額

構成比

金額

増減率

(百万円)

(%)

(百万円)

(%)

(百万円)

(%)

報告セグメント

仏壇仏具

墓石

東日本

仏壇仏具

12,275

56.8

12,028

56.5

△247

△2.0

墓石

3,833

17.7

3,700

17.3

△133

△3.5

 

16,108

74.5

15,728

73.8

△380

△2.4

西日本

仏壇仏具

3,128

14.5

3,051

14.3

△76

△2.4

墓石

781

3.6

759

3.6

△21

△2.7

 

3,909

18.1

3,811

17.9

△97

△2.5

仏壇仏具

15,403

71.3

15,080

70.8

△323

△2.1

墓石

4,614

21.3

4,460

20.9

△154

△3.3

 

20,018

92.6

19,540

91.7

△477

△2.4

屋内墓苑

570

2.7

562

2.7

△7

△1.4

飲食・食品・雑貨

111

0.5

236

1.1

125

112.7

その他

908

4.2

961

4.5

53

5.9

合計

21,608

100.0

21,300

100.0

△307

△1.4

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ8億87百万円減少し、19億91百万円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は6億40百万円(前事業年度は10億36百万円の資金の獲得)となりました。

これは主に、貸倒引当金の減少額1億53百万円、仕入債務の減少額2億82百万円、その他の減少額2億48百万円及び法人税等の支払額6億84百万円などの減少要因があったものの、税引前当期純利益15億93百万円に加え、減価償却費2億24百万円及び棚卸資産の減少額2億11百万円などの増加要因があったためであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は7億16百万円(前事業年度は3億13百万円の資金の使用)となりました。

これは主に、墓石販売等に伴う営業保証金の回収の純額91百万円(回収6億82百万円-支出5億90百万円)などの増加要因があったものの、有形固定資産の取得による支出1億66百万円、無形固定資産の取得による支出1億69百万円及び販売保証金の支出4億84百万円などの減少要因があったためであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は8億11百万円(前事業年度は15億98百万円の資金の使用)となりました。

これは主に、長期借入れによる収入9億円の増加要因があったものの、長期借入金の返済による支出13億68百万円及び配当金の支払額2億73百万円などの減少要因があったためであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

イ 生産実績

生産実績については、当社の業務形態上、重要性が乏しいため記載を省略しております。

 

ロ 商品仕入実績

当事業年度の商品仕入実績は、次のとおりであります。

事業の名称

金額(百万円)

前期比(%)

宗教用具関連事業

7,568

90.4

飲食・食品・雑貨事業

229

221.2

合計

7,797

92.0

(注)金額は、仕入価格によっております。

 

ハ 受注実績

受注実績については、当社の業務形態上、重要性が乏しいため記載を省略しております。

 

ニ 販売実績

当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

仏壇仏具・墓石

19,540

97.6

屋内墓苑

562

98.6

飲食・食品・雑貨

236

212.7

報告セグメント計

20,339

98.3

その他

961

105.9

合計

21,300

98.6

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ 経営成績等

a 財政状態

当事業年度末の財政状態につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 イ 財政状態」に記載のとおりであります。

 

b 経営成績

売上高については、特に既存事業において3年ぶりに新規出店を再開し、成長に向けた動きを取ることができたものの、既存店での売上を減少させてしまった影響が大きく、結果として減収となってしまいました。当社の事業は死亡者数の推移が業績に一定の影響を与えていることが回帰分析の結果から明らかになっており、当期は当社商圏における死亡者数がほぼ横ばいで推移したことから、各事業の業績で苦戦した原因の一つであると考えております。

事業別に見ていくと、仏壇仏具事業については、当社にご来店くださるお客様の総数が減少したことが業績に影響を及ぼしました。ここ数年はより多くのお客様に当社を認知・想起いただくために、スマートフォンをはじめとしたWEB上で情報収集するお客様に向けて、WEB広告を中心に販促活動を強化してまいりました。WEB広告ではリスティング広告以外にもディスプレイ広告やLINE広告など多様な方法で、顧客接点の増加に努めてまいりましたが、他社も同様にWEB広告に注力している状況があり、思うように営業店にお客様を誘致できなかった経緯がございます。ただし、今後もお客様はWEBを起点とした購買行動を取ることは明らかであるため、結果を分析したうえで、新設したカスタマーコミュニケーション部を中心に、必要に応じて新聞折込チラシや「しあわせ少女 ゆうかちゃん」を起用したTVCMを併用しながら、最大の効果を発揮できるように取り組んでまいります。

墓石事業及び屋内墓苑事業については、お客様がご遺骨を供養する手段として、それぞれ需要を分け合っているものと考えております。直近においては樹木葬墓地を要望されるお客様が増加し続けており、それらの対応で樹木葬墓地の受託販売を進めております。これらの結果、遺骨供養全体の受注数は伸びておりますが、販売構成比が変化し、樹木葬墓地の占める割合も大きくなっております。また、競合他社の動きも活発になっているため、早急に当社で販売できる樹木葬墓地を確保することが喫緊の課題となっております。遺骨供養の方法については、多様化の傾向が継続するものと考えておりますが、人々の宗教的慣習からくる埋葬に対してのイメージは、従来と大きく変わらないため、新しい形態についても伝統的な様式と新しい価値観やデザイン、そして合理性を融合させた形で提供していく必要があると考えており、開発・販売の際には留意してまいります。

利益面については、継続する円安や物価高騰、物流コストの上昇などにより、売上総利益を押し下げることが考えられます。定期的に価格改定は行なっているものの、値上げが原価を全て吸収する状況には至っていないのが現状です。これは商品価格の値上げがお客様の購買行動に与える影響が大きいと考えており、価格改定の品目及び改定の価格幅も一定程度で抑える必要があると認識しているためです。今後はお客様にとってより価値の高い、かつ同時に売上総利益を確保できる商品の開発に注力してまいります。

また、販管費については、中長期的に見て、全体的にコストが上昇しており、収益力が弱くなっていると認識しております。特に人件費が増加している状況であり、労働分配率が40%を超えるような高い水準で人件費が推移しております。優秀な人材の確保のため、また、社会情勢から賃上げが必須の状況であるため、一定水準の定期昇給やベースアップは必要であるとの認識を持っているものの、生産性向上に向けた取組みが十分実施できていないことが現状の課題であると考えており、今後は営業店の業務の効率化や本社・本部の業務の在り方などを見直しし、生産性を上げることで収益の確保を図ってまいります。

 

このように、各事業において施策を推進した結果、売上高は213億円(前期比1.4%減)となりました。また、営業利益は16億12百万円(前期比8.8%減)、経常利益は16億38百万円(前期比7.6%減)、当期純利益は10億59百万円(前期比8.2%減)となりました。

 

ロ 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、お客様の生活様式や供養の価値観の変化によって祭祀の簡素化が進み、それによって販売数量の減少や、販売単価の低下を招く可能性があることです。近年は、お仏壇のご準備を省略し、お位牌の代用として写真立てや分骨壺を飾るなど、伝統的な形式に縛られずに、より自分らしい供養を求めるお客様が一定数いらっしゃいます。また、お仏壇のトレンドとしては、当社のお仏壇販売において、新型仏壇の構成比が全体の8割を占めるように、よりシンプルかつ機能的でコストパフォーマンスの高い商品が求められています。このようなお客様のニーズに対応し、他社との差別化が図れる商品開発を行なう一方で、伝統的な形式で厳かに供養をしたいといったお客様のご要望にも柔軟に対応できるよう、定期的に商品ラインナップの見直しや、社員の販売教育などを行なってまいります。

 

ハ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、仏壇仏具・墓石・屋内墓苑の販売を中心とする事業強化により、主にROA、売上高伸張率、自己資本比率を主要な経営指標の目標とし、各指標の向上を目指しております。

各指標の進捗状況は次のとおりであります。

回次

第56期

第57期

第58期

決算年月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

ROA

(%)

3.9

6.3

5.8

売上高伸張率

(%)

110.8

109.6

98.6

自己資本比率

(%)

53.8

60.1

65.9

 

ニ セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

仏壇仏具については、西日本地区については、販売単価が向上したものの、販売基数が減少した結果、売上高は30億51百万円(前期比2.4%減)となりました。東日本地区についても同様に、販売単価が向上したものの、販売基数が減少した結果、売上高は120億28百万円(前期比2.0%減)となりました。その結果、仏壇仏具事業の売上高は150億80百万円(前期比2.1%減)となりました。

墓石については、樹木葬の販売が堅調に推移したものの、墓石の販売基数が減少した結果、売上高は44億60百万円(前期比3.3%減)となりました。

当事業年度は、お客様の購買行動のデジタル化が浸透していることから、積極的なリスティング広告への費用投下や、カスタマーサイト内のご供養記事などのコンテンツ強化を行ないSEO対策を実施いたしました。また、MAツールを活用したメールフォローなど効率的な販売促進活動を継続することで、リピーターの獲得に繋げることができました。営業施策として、お客様のご心情に寄り添った最大限のおもてなしを実行し、そのうえでより良い商品をおすすめする付加価値販売を実践しております。主力商品として、主に国内家具メーカーと共同開発したLIVE-ingコレクションシリーズや、世界的に有名な建築家 隈研吾氏がデザインした『薄院』の販売を強化しております。

墓石については、主に自社企画の樹木葬開発に注力し、商圏内の霊園・寺院に対し、積極的に樹木葬の企画・提案をし、東日本地区で3件(千葉市稲毛区、岐阜県可児市、愛知県刈谷市)、西日本地区で3件(北九州市門司区、佐賀市、福岡県田川郡)の新規樹木葬の受託販売を開始しております。

これらの結果、仏壇仏具及び墓石を合わせた全体での売上高は195億40百万円(前期比2.4%減)、セグメント利益は17億49百万円(前期比9.5%減)となりました。

仏壇仏具・墓石におけるセグメント資産は、東日本地区において78億21百万円(前期比1.5%減)となり、西日本地区においては20億28百万円(前期比1.1%増)となりました。

屋内墓苑については、リスティング広告などデジタルを活用した販売促進活動を積極的に行ないましたが、結果として、売上高は5億62百万円(前期比1.4%減)となりました。年金資産に係る運用益の影響で、他のセグメントと同様に間接費用が減少したことにより、セグメント利益は2億2百万円(前期比15.4%増)となりました。屋内墓苑におけるセグメント資産は36億46百万円(前期比12.4%増)となりました。

飲食・食品・雑貨については、法事シーンを中心とした食のギフトの販売が順調に推移した結果、売上高は2億36百万円(前期比112.7%増)、セグメント損失は28百万円(前期はセグメント損失68百万円)、セグメント資産は17百万円(前期比1.3%増)となりました。

その他については、売上高は9億61百万円(前期比5.9%増)、セグメント損失は80百万円(前期はセグメント損失39百万円)、セグメント資産は1億34百万円(前期比29.7%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

イ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

ロ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a 資金需要

当社の運転資金需要のうち主なものは、商品仕入代金の支払資金のほか、人件費及び販売促進費等の販売費及び一般管理費であります。

投資を目的とした資金需要のうち主なものは、新規出店、店舗移転、既存店舗の改装等に係る設備投資や、墓石販売に伴う建墓権取得のための営業保証金の差入れ及び屋内墓苑販売業務委託契約に伴う販売保証金の預託等によるものであります。

 

b 財政政策

当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金または銀行借入により資金調達することとしております。

このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金につきましては短期借入金により調達することとしており、設備投資、営業保証金(建墓権)及び販売保証金に係る資金につきましては長期借入金(原則として5年以内)により調達することとしております。

また、運転資金の効率的な調達を行なうため取引銀行5行と当座貸越契約(当座貸越極度額合計30億円)を締結しております。

なお、当事業年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は23億65百万円、有利子負債依存度は13.1%となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

財務諸表の作成にあたりましては、一定の会計基準の範囲内で見積りが行なわれている部分があり、過去の実績や現在の状況等を勘案し、合理的と考えられる見積り及び判断を行なっております。

財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、見積り特有の不確実性により、翌事業年度の財政状態及び経営成績に重要な影響が及ぶ可能性があるものとして、営業保証金の評価、販売保証金の評価及び店舗固定資産の減損について「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

その他の会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(棚卸資産の評価)

当社の棚卸資産の評価につきましては、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により評価損を計上しております。今後、市場状況の悪化により収益性の低下の事実を新たに反映する必要が生じた場合、棚卸資産の評価損を計上する可能性があります。

 

(繰延税金資産の回収可能性の評価)

繰延税金資産の回収可能性の判断につきましては、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、将来において当社を取り巻く環境に大きな変化があった場合など、その見積額が変動した場合は、繰延税金資産の回収可能性が変動し、繰延税金資産の取崩又は追加計上の可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1) 当社は、墓石の販売にあたって霊園の経営主体(宗教法人等)と墓地販売業務提携契約を締結しており、建墓権(墓石を販売する権利)取得のための営業保証金を差入れております。

営業保証金の概要につきましては、「3 事業等のリスク (5) 建墓権取得に係る営業保証金の評価について」に記載のとおりであります。

営業保証金を差入れております111法人のうち、主要な5法人の契約の概要は、以下のとおりであります。

相手先

契約内容

契約期限

宗教法人 清龍院

墓地販売業務提携

建墓権に基づく建墓工事が完了するまで

宗教法人 万年寺

墓地販売業務提携

建墓権に基づく建墓工事が完了するまで

株式会社 大友石材工業

墓地販売業務提携

建墓権に基づく建墓工事が完了するまで

株式会社 亜室

墓地販売業務提携

建墓権に基づく建墓工事が完了するまで

宗教法人 大法寺

墓地販売業務提携

建墓権に基づく建墓工事が完了するまで

 

(2) 当社は、屋内墓苑の受託販売にあたって宗教法人と販売業務委託契約を締結しており、販売保証を行なっております。

販売保証の概要につきましては、「3 事業等のリスク (6) 屋内墓苑受託販売物件の販売保証について」に記載のとおりであります。

屋内墓苑の販売業務委託契約に基づく販売保証を行なっている5法人の契約の概要は、以下のとおりであります。

相手先

契約内容

契約期限

宗教法人 勝楽寺

販売業務委託

2024年6月30日まで (注)1、2

宗教法人 源覚寺

販売業務委託

2023年12月31日まで (注)3

宗教法人 一行院

販売業務委託

2025年7月31日まで (注)1

宗教法人 仙行寺

販売業務委託

2025年7月31日まで (注)1

宗教法人 千光寺

販売業務委託

2026年12月31日まで (注)1

(注)1 契約期限までに本契約に基づく総区画数の販売を終了した時は当該販売終了まで、また、契約期限を経過した後も本契約に基づく総区画数の販売が終了していない時は協議のうえ延長するものとしております。ただし、契約期限を経過した後も預託した販売保証金の残高が残っている場合は全額が返還されるまで延長するものとしております。

2 宗教法人勝楽寺の販売業務委託契約は契約期限が到来した時点で、預託した販売保証金の残額が残っている場合は、契約期間を延長し、販売を継続する予定であります。契約期間の延長が決定した際には、当社と宗教法人勝楽寺は新たに販売業務委託延長の覚書を締結する予定であります。

3 宗教法人源覚寺の販売業務委託契約は契約期限が到来しておりますが、預託した販売保証金の残額が残っているため、販売を継続しております。なお、当社と宗教法人源覚寺は新たに販売業務委託延長の覚書を締結する予定であります。

4 前事業年度の有価証券報告書に記載した宗教法人伝燈院の販売業務委託契約は、2023年3月31日をもって販売業務委託契約に基づく販売保証を終了しております。ただし、預託した販売保証金の残額が残っているため、販売を継続しております。また、当社と宗教法人伝燈院は新たに販売に関する覚書を締結しており、預託した販売保証金を回収した後も、全区画完売するまで販売を継続することとしております。

 

6【研究開発活動】

特記すべき事項はありません。