第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 

■オートバックスセブングループパーパス

社会の交通の安全とお客様の豊かな人生の実現

 

 クルマという存在がなくてはならない世の中となった今日、当社グループは「社会の交通の安全とお客様の豊かな人生の実現」をパーパスに掲げ、当社グループに期待されるさまざまな社会課題を解決し、人とクルマが共存し続けられる持続可能な社会と当社グループの持続的成長の実現を目指しております。

 

 自動車関連業界は100年に一度の変革期を迎え、電動化や自動運転化などの技術革新が急速に進み、当社グループが強みを持つカーアフター市場においても、業界の枠を超えた競争の激化や顧客ニーズの多様化など、当社を取り巻く環境は急速に変化しています。このような中で、当社は「挑戦・創造・感謝」をオートバックスセブングループ行動理念として定め、従来の枠組みに捉われず新たな事業領域への挑戦、経営環境の変化に適応しながらモビリティの未来を創造、そしてそれを支えてくださる全てのステークホルダーの皆さまに感謝し、感謝されるグループとなるために長期的かつ持続的な企業価値向上を図ってまいります。

 

 2032年に向けた長期ビジョン「Beyond AUTOBACS Vision 2032」では、不確実で変化の著しい時代においても、変化を上回るスピードで変革を進め、『これまでのオートバックスを超える』進化と成長を遂げるため、当社グループの進化の方向性をお示しいたしました。お客様に「出かける楽しさを提案し続ける会社」として、社会環境の変化に応じてビジネスやビジネスモデルを進化させながら、「社会の交通の安全」と「お客様の豊かな人生」の実現へ寄与し続け、お客様と社会にとってなくてはならない企業グループを目指してまいります。

 

(2)経営環境

 日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の制限解除に伴う社会経済活動の正常化やインバウンド需要の増加により、景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。一方、ロシア・ウクライナ問題の長期化に加え、急速な円安の進行による原材料やエネルギーコストの高騰、物流業界を中心とした人手不足等、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 世界的なサステナビリティへの意識の高まりを背景に、多くの企業がカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを進める中で急速に普及が進んだEV(電気自動車)も、EUによる2035年のエンジン車販売禁止の方針が撤回されるなど、一時的な踊り場を迎えております。また、国産自動車メーカーがプラグインFCV(燃料電池自動車)を発表するなど、EV以外の環境対応車への関心も高まっております。

 国内の自動車関連業界では、世界的な半導体不足の解消に伴い、自動車の生産・販売が回復傾向にある一方で、一部の自動車メーカーや中古車販売店等による信頼問題の発生を受け、業界全体への影響が懸念されております。

 当社グループが強みとする国内のカーアフター市場に目を向けますと、M&Aによる周辺事業領域の拡大やカーシェア・サブスクリプションサービスのような新たなビジネスモデルによる事業参入が進むなど、カーアフター市場における事業活動が活発化しております。

 また、お客様の購買行動の変化によってネット販売を通じた商品購入の比率がさらに高まりを見せており、業界の枠を超えた競争がいっそう激化していくことが想定されます。さらに、少子高齢化による顧客構成の変化、顧客ニーズの多様化など、当社を取り巻く環境は今後も大きく、急速に変化するものと予想されます。

 なお、当社が加盟する自動車用品小売業協会(APARA)発表の2023年4月から2024年3月までの協会加盟企業4社の店舗売上高合計は、3,982億25百万円で、前年比0.5%減少いたしました。また、同期間の新車販売台数※1は、約452万台(前年比3.3%増)、中古車登録台数※2は、約314万台(前年比4.0%増)となりました。2022年7月から2023年6月までの自動車整備に関わる市場総売上※3は、5兆9,072億円(前年比2.9%増)となり、2年連続で増加しました。

※1 日本自動車販売協会連合会 発表 登録車と軽自動車の合計

※2 日本自動車販売協会連合会 発表 普通乗用車と小型乗用車の合計

※3 日本自動車整備振興会連合会 発表

 

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 事業上の課題

 自動車業界においては、世界中でEVをはじめとするZEV(ゼロエミッション車)の普及拡大やコネクテッドカー、自動運転車の実用化に向けた試みが進行しています。これに伴い、社会、クルマ、人のくらしも大きな変革期を迎えており、当社グループを取り巻く経営環境も、今後さらに大きく変化していくものと考えられます。

 

 当社グループはこのような急激な事業環境の変化に対応すべく、2019年に「5ヵ年ローリングプラン」を策定し、継続的に方向性及び戦略の見直しを実施しつつ、各事業の収益拡大とそれを支える事業基盤の整備を実施してまいりました。また、持続的な成長と長期的な企業価値向上を図るため、2023年5月に、2032年度の連結売上高5,000億円の達成を目指す長期ビジョン「Beyond AUTOBACS Vision 2032」を発表いたしました。

 

 5年間にわたる「5ヵ年ローリングプラン」の遂行を通じて、各事業の推進と事業基盤構築に向けた取り組みを進めるとともに、これらの実行スピードを向上させるべく、執行役員制度の廃止や人事制度の見直し、国内オートバックス事業におけるフランチャイズチェンパッケージの変更など、自社の構造改革に着手し、収益体質を改善、さらなる成長を遂げるための土台を構築してまいりました。また、国内オートバックス事業で培った事業基盤を生かし、事業ポートフォリオ運営を強化したことによって、「5ヵ年ローリングプラン」開始前の2018年度と比べ、国内オートバックス事業以外の連結売上高は約270億円増加し、連結営業利益も改善いたしました。

 そして、このたび長期ビジョンの達成に向け、さらに加速度的な成長を実現すべく、中期経営計画を策定し公表しております。当社グループは2000年以降、カー用品市場の縮小により現状維持に留まり、約20年間大きな成長を遂げることができていない現状がございましたが、ローリングプランの遂行を通じて構築してきた経営基盤のもと、再成長に向けた第一歩を踏み出してまいります。

 

 中期経営計画では、新たな方向性として、お客様にとっての「モビリティライフのインフラ」をグローバルで目指すことを掲げております。当社が最も得意とする「小売り」と「卸売り」の2軸に集中し、強化する体制に変更し、グローバルに展開することや長期ビジョンを実現するための周辺領域への挑戦を行っていくことによって、利益水準をもう一段押し上げつつ、安定的な還元を実現してまいります。

 同計画の最終年度となる2026年度の経営目標は連結売上高2,800億円、連結営業利益150億円、ROIC(投下資本利益率)7.0%としており、新たな方向性を実現するための戦略として、以下3つの取り組みを推進してまいります。

 

 

① モビリティライフを支え続ける『タッチポイントの創出』

② モビリティライフに合わせた『商品・ソリューションの開発と供給』

③ モビリティライフの変化に対応した『新たな事業ドメインの設定』

 

 一つ目のモビリティライフを支え続ける『タッチポイントの創出』では、オートバックスやディーラー、海外などの拠点拡大に加え、出張販売サービスや新たなオンラインマーケットの構築によるチャネルの拡大を図り、リアルとデジタルの双方からお客様との接点強化を図ってまいります。

 

 二つ目のモビリティライフに合わせた『商品・ソリューションの開発と供給』では、魅力ある商品・ソリューションの開発による卸売り販路の拡大を目指してまいります。具体的には、サプライチェーンマネジメントやFC本部機能の集約による競争力の強化、PB商品・サービス・販売支援策のパッケージ化による外販強化を実施いたします。これらの取り組みにより、他にはないオートバックスならではの価値ある商品・サービスを活用したソリューション提案を行い、法人や個人のお客様の潜在的な課題解決を目指してまいります。

 

 最後のモビリティライフの変化に対応した『新たな事業ドメインの設定』では、モビリティの変化を見据え、ZEVディーラーの運営やEV充電器、家庭用蓄電池の販売・設置などEVソリューション事業を開発いたします。また、市場拡大が見込まれるマイクロモビリティの販売やアフターメンテナンスの展開、既存事業にシナジーのある水平・垂直統合によるグループ会社化の推進などにより、新たな事業ドメインを設定し、成長市場における事業確立とユーザー獲得を図ってまいります。これらそれぞれの施策において国内のみをターゲットと限定するのではなく、グローバルな視点でビジネスを捉え、新たなマーケットを創造してまいります。

 

② 財務上の課題

 当社グループの持続的成長の実現のためには、既存の事業の効率を改善しながら継続するだけではなく、成長領域への投資と新たな事業の育成も必要です。新たな価値創造に向けた挑戦を継続していくべく、ROICを採用した全社・個別事業の業績管理・見える化を段階的に進めており、2025年3月期より、事業統括ごとにROIC目標値を設定しております。また、ROICによるモニタリング体制を強化することで、事業ポートフォリオの見直しや入れ替えを継続して実施してまいります。

 ROIC経営の推進により、最適な投資判断および事業評価を行いつつ、同計画期間中に累計350億円程度の投資を実施した上で、年間配当60円を維持し、安定した株主還元を行っていく方針です。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益、ROEであります。

 2025年3月期の目標値は、売上高2,403億円、営業利益120億円、親会社株主に帰属する当期純利益77億円、ROE6.0%であります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般への対応

 当社は、私たちの目指す社会を「人とクルマと環境が調和する安全・安心でやさしい社会」とし、2023年4月に制定したサステナビリティ基本方針において、「社会課題を解決する事業の創出」や「環境・社会に配慮した取り組みの充実」を掲げています。私たちが提供する商品・サービスなどを通じて、人とクルマが共存し続けられる持続可能な社会をつくっていきたいと考えています。また、こうした社会の実現へ向け従業員が一丸となって推進し、当社グループに期待されるさまざまな社会課題を解決していくことは、「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現にも貢献すると考えています。

 

① ガバナンス

 当社においては、サステナビリティ全般に関する課題を重要なテーマと捉え、代表取締役 社長をプロジェクトリーダーとして「ESG・SDGs推進プロジェクト」を発足し(2021年1月)、全社プロジェクトとして推進しています。その議論・決定内容は取締役会に報告され、取締役会においては、当社としての取り組みについて承認および必要な指示・監督を行っています。また、非財務目標のKPIの進捗は、事業統括および取締役全員が出席する事業統括者会議において年4回取り上げ、各事業統括が取り組み内容を発表し、進捗の共有をしています。また、KPIを変更する場合は、会議内での審議・決定により実行されております。

 2023年4月には、「サステナビリティ基本方針」および関連する方針の整備を行い、コンプライアンス遵守の徹底や健全で強固なガバナンス体制の維持・強化に努めております。また、当社グループの各種方針にもESGの視点を組み込むことで、持続可能な社会の実現に向けた事業活動を実践してまいります。

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② 戦略

 当社は、長期的な企業価値向上と社会の持続的な発展を両立させる取り組みを実施すべく、取締役会での承認を得て、当社が解決すべき4つの重要項目「社会課題を解決する事業の創出」「環境・社会に配慮した取り組みの充実」「成長し続ける組織・人財」「持続可能かつ強固な経営基盤」をマテリアリティとして2021年に特定いたしました。これらのマテリアリティごとにタスクフォースを組成し、取締役非兼務執行役員(当時)が中心メンバーとなって2022年5月には非財務目標を設定し2030年度におけるKPIを策定しております。2023年度においては、取締役非兼務事業統括が、達成まで責任をもって遂行する体制を取っており、各事業部やコーポレート部門と連携を図りながら推進しています。この推進体制のもと、各実行施策の進捗状況のモニタリングを事業統括者会議で継続的に実施し、「人とクルマと環境が調和する安全・安心でやさしい社会」の実現への確度を高めています。

 また、各事業統括は、KPIごとにその重要性や施策の内容、取り組みの状況、課題などについてイントラネットを活用し社内へ取り組み浸透を図っています。

 

③ リスク管理

 当社は、全社のリスクを一元管理する組織として、代表取締役 社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、事業活動に潜むリスクを定期的に洗い出し、重要リスクの特定とその管理体制の強化を行っています。

 リスクマネジメント委員会では、事業への影響度・頻度などを分析・評価し、リスクの高いものから対応策が議論され、発生前のけん制を行うことを目指しています。また、取締役会への重要リスクの報告、およびリスクの対策に関する各部門への具体的な支援を行っています。

 サステナビリティに関わるリスクや機会については、ESG・SDGs推進プロジェクトが主体となり、各事業よりリスク情報や機会を収集し、リスクの特定と評価および機会の識別や評価等を実施しています。また、気候変動は別途TCFDチームの組成により、リスクと機会を特定し、財務的影響の算出等を行っております。こうして特定されたリスクと対応の進捗を、リスクマネジメント委員会と共有することで、組織全体のリスク管理項目に統合していきます。

 

④ 指標及び目標

 当社は、非財務目標としてテーマごとに重視する取り組みを設定し、それぞれ指標と目標を設定しています。当社の向かうべき方向性を明確にし、的確な進捗管理を行うことにより着実に実行していきます。

 また、各指標の進捗状況は会議体を通じてモニタリングされ、2023年度においては、全ての事業統括の評価に組み込まれています。

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(注)「喫煙者比率低減の推進」は、低減させることを目標としているため、2030年度目標が2023年度実績値より低くなっております。

「社員いきいき度の維持」は、ワーク・エンゲージメントおよび職場の一体感に関する設問から、社員いきいき度(ストレスチェック)を測定しています。(満点は4.0点、業界平均は2.5点)

 

(2)気候変動への対応

 当社では、気候変動への対応を重要な経営課題の一つと位置付け、 2022年6月に、TCFD提言に賛同を表明しました。また、気候変動がもたらすリスク・機会の財務的影響について情報開示を求めるTCFD提言に基づき、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の開示推奨項目に準拠した情報開示を積極的に進めています。2023年度からはTCFDにおいては、国内すべての子会社におけるScope1、2の情報を収集し、2024年度以降、Scope3の開示に向けた準備を進めています。またCDPへの回答も開始し、今後も気候変動関連情報の拡充と開示を通じて、ステークホルダーとの円滑な対話を進め、さらなる企業価値向上を目指します。

 

① ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、「サステナビリティ全般への対応」に組み込まれています。詳細については「(1) サステナビリティ全般への対応①ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

 当社は、気候変動に伴うさまざまなリスク・機会を、事業戦略策定上の重要な観点の一つとして捉えています。当社では2050年までを対象期間とし、パリ協定の目標である「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」を想定した「1.5℃/2℃(未満)シナリオ」、および現在のペースで温室効果ガスが排出されることを想定した「4℃シナリオ」の2つの世界を想定しています。当社は、この2つのシナリオを踏まえて、TCFD提言に沿って、気候関連リスク・機会を抽出し、その上で、気候変動がもたらす移行リスクや物理的リスク、気候変動への適切な対応による機会を特定しました。

 「4℃シナリオ」においては、干ばつや大雨など異常気象が多発し、急性的な物理的リスクの影響により、物流センターやデータセンター、店舗の被災・休業、また冬季用品の需要減が発生する可能性があり、事業に甚大な影響を及ぼすことが想定されます。物流センターやデータセンターについては、既に地域の分散やバックアップ体制の整備が進んでおり、物理的なリスクを最小限に抑えています。また、店舗については、浸水リスクに対し、BCPの観点からの立地選定や構造の工夫等を進めることにより物理的なリスクを最小限に抑えることができると考えます。商品については気温帯の変化、消費行動の変化に見合う商品の投入を進めることにより、冬季商品需要減に伴う機会損失を最小限に抑えるための取り組みを進めています。

 「1.5℃/2℃(未満)シナリオ」においては、温暖化抑止に向けて技術革新や規制強化が進み、社会が変化することが想定されるため、移行リスクの影響がより顕在化すると考えます。炭素税などの税制、ZEB(Zero Energy Building)の標準仕様の義務化などの規制強化、電気料金の上昇など、 店舗や物流センターのコストが上昇するリスクがありますが、省エネの推進により、リスク低減を進めています。また炭素税や排出権取引の導入、ZEV(ゼロエミッション車)メーカーへの優遇政策や内燃自動車への規制強化等が進むことにより、エンジン搭載車の販売台数が急激に減少し、代わりにZEVの普及が急速に進むことが想定されますが、ZEVの拡販に伴う売上増に加え、ZEV推進のためのインフラ整備や拡充を積極的に進めることで、販売機会の拡大に努める予定です。

 なお、気候変動の影響は中長期的に顕在化する可能性を有することから、外部動向の変化も踏まえ、定期的にリスク・機会の分析・評価の見直しや対応策の具体化を進め、中長期の経営戦略に反映させていきます。

 

■分析対象

   [事業] 国内オートバックス事業、ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業、その他事業

   [範囲] 日本国内 事業所、直営および子会社店舗、物流拠点

   [期間] 現在~2050年まで(短期:1年以内/中期:~2030年/長期:~2050年)

■分析ステップ

 (1) 各気候関連リスク・機会要因が、分析対象範囲に及ぼし得る影響を網羅的に抽出

 (2) (1)を俯瞰し、より発生可能性の高いリスクを整理

 (3) 採用シナリオ(物理的リスク:RCP2.6・RCP8.5、移行リスク:NZE・STEPS)に基づき、「1.5℃/2℃(未満)」および「4℃シナリオ」下での事業インパクトの検証および財務的影響を算出

 (4) (3)の結果への対応策を検討

■参照文献

 気候変動監視レポート2020(気象庁)/日本の気候変動2020(文部科学省、気象庁)/ハザードマップポータルサイト(国土交通省)/Global Hybrid & Electric Vehicle Forecast(LMC Automotive)/IPCC・AR6・WG1報告書 /IEA(2021)World Energy Outlook 2021/車両電動化の見通し(東京主税局)等

 

下線部分は前年度からの変更箇所

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物理的リスク: 気象災害の激甚化等の気候変動に起因するリスク

移行リスク: 温室効果ガス排出に関する規制等による低炭素経済への「移行」に起因するリスク

 

 

③ リスク管理

 気候変動に関するリスク管理は、「サステナビリティ全般への対応」に組み込まれています。詳細については「(1) サステナビリティ全般への対応③リスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

 当社は、「人とクルマと環境が調和する安全・安心でやさしい社会」を目指し、温室効果ガス排出量削減に取り組んでいます。削減目標として、日本政府の宣言に基づき、2050年度にカーボンニュートラル(排出量実質ゼロ)を掲げ、取り組みを推進いたします。

 

 具体的には、お客様の商品使用段階における排出量削減も含めた環境配慮型機能性商品の開発や、省エネ店舗化の推進および資源循環への取り組み等を検討し、それらの数値目標の開示についても進めていきます。

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■2021年度

算定範囲:[事業] 国内オートバックス事業

          [対象] 日本国内 事業所、直営および子会社店舗、物流拠点(147拠点)

算定期間:2021年4月1日~2022年3月31日

■2022年度

算定範囲:[事業]  国内オートバックス事業、ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業

          [対象] 日本国内 事業所、直営および子会社店舗、物流拠点(196拠点)

算定期間:2022年4月1日~2023年3月31日

 

Scope 1:燃料の燃焼、工業プロセス等、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出

Scope 2:他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出

 

2023年度は、算定中につき、最新の情報については当社ホームページの「気候変動への対応」をご覧ください。

(2024年6月下旬に更新を予定しております)

https://www.autobacs.co.jp/ja/sustainability/environment/climate_change.html

 

 

(3)人的資本への対応

① ガバナンス

 人的資本に関するガバナンスは、「サステナビリティ全般への対応」に組み込まれています。詳細については「(1)サステナビリティ全般への対応①ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

 当社グループでは「2024中期経営計画」の実現に向け、成長し続ける組織・人財を基盤としてグループの稼ぐ力を向上させるため、「人的資本の最大化」、「イノベーションを創出する組織の変革」、そして「戦略的な人員配置」の3つの人事方針のもと、「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」、「人材育成」、「リソース・タレント・マネジメント、人的資源の見える化」および「エンゲージメントの向上」を重点課題と位置付けて取り組んでいます。

 

 「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」については、「多様な人材が活躍し組織に異なる視点をもたらすことがイノベーションの源泉となり企業価値をより高める」との考えのもと、知と経験の多様化を進めるため、性別を問わずさまざまな職歴・経験を有する人材の採用、店舗での外国人技能実習生の受け入れ、連結子会社からの中核人材の戦略的配置など、多様な人材の積極的な活用や中核人材への登用を推進しています。さらに、テレワーク、フレックスタイムの導入や短時間勤務の適用拡充、男性従業員の育児休業取得を進めるなど、結婚、出産、育児、介護など多様なライフイベントを経ても仕事と生活の調和を図ることができる働きやすい環境の整備に努めています。

 「人材育成」については、多様な人材一人ひとりがキャリアを開発し、持てる力を最大限に発揮できるよう、階層別・年齢別・事業別など多様な研修を整備し実施するほか、キャリア研修や社内外の相談窓口設置によるキャリア自律支援、自己啓発の補助金制度(カフェテリアプラン)による積極的な能力開発を推進しております。また、データ活用人材の育成やオートバックス店舗で活躍できる販売スキルなどの取得といったリスキリングを推進しております。

 「リソース・タレント・マネジメント、人的資源の見える化」では、連結グループの人材データの整備を行い、人的リソースの見える化により、人材育成や戦略的人員配置に繋げてまいります。

 「エンゲージメントの向上」においては、ワーク・エンゲージメント・サーベイを実施することにより課題を抽出し、従業員のエンゲージメント向上による組織の活性化に向けた施策につなげてまいります。

 これらの取り組み成果を確認するためのKPIおよび2027年度における目標値を設定しました。具体的なKPIおよび目標数値については「④指標及び目標」をご参照ください。

 

③ リスク管理

 人的資本に関するリスク管理は、「サステナビリティ全般への対応」に組み込まれています。詳細については「(1) サステナビリティ全般への対応③リスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

 当社グループは、ESG・SDGsの非財務目標である「多様な人材が活躍できる企業風土づくり」のKPIと目標を定め、施策に取り組んでいます。また、人的資本への対応に関するKPIと目標についても、「2024中期経営計画」において以下のとおり定めました。

 ESG・SDGsに関する指標および目標につきましては、「(1)サステナビリティ全般への対応④指標及び目標」をご参照ください。

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 〔2024年3月末時点 人事データ(連結)〕

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※女性従業員比率はパート・アルバイトを除く従業員数に占める女性従業員の割合

※女性管理職比率は「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」にある従業員の合計に占める女性管理職の割合

管理職の定義は以下の通りです。

・オートバックスセブン:本社における課長以上、店舗におけるストアマネジャー以上

・国内子会社:本社における課長以上、店舗における店長以上

・海外子会社:本社におけるManager以上、店舗におけるStore Manager以上

※男性育休取得者比率は雇用形態や期間を問わず直接雇用の男性従業員の対象者数に占める割合

 

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)リスクの管理体制

当社は、オートバックスフランチャイズシステムを通じ、さまざまな商品・サービスを数多くの顧客に対して提供しており、あらゆるステークホルダーからさらなる支持と信頼を獲得する「オートバックス」ブランドの維持・向上に継続的に取り組むことが経営の最重要課題と認識しております。

そのため、日々変化する当社グループを取り巻く環境変化に対応するだけでなく、目標達成を阻害する可能性のあるさまざまなリスクの的確な把握・評価と適切なコントロールを行い、また重大事案が発生した場合における、被害拡大防止や損害・損失の極小化を可能とする態勢を確立することで、企業の社会的責任を果たすことに努めております。

当社は、オートバックスセブングループを挙げて「統合リスクマネジメント」に継続的に取り組み、ステークホルダーから信頼される企業グループを目指します。

 

 統合リスクマネジメント態勢

当社は、代表取締役社長を委員長とし、業務執行取締役および内部統制を担当する事業統括を委員とした「リスクマネジメント委員会」を設置し、オートバックスセブングループにおけるリスクの管理、全社的なリスクマネジメントシステムの構築・推進を行います。

また、有事の際には、リスクマネジメント委員長である代表取締役社長が「危機対応本部」を設置し、自ら指揮を執り、迅速かつ適切な対応と回復に努めます。

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(注)1.リスクマネジメント体制および危機管理態勢を含めて「統合リスクマネジメント態勢」としています。

2.「危機」とは、オートバックスセブングループの経営または事業継続に重大な影響を与える恐れのある、または与えた事象を指します。

3.組織を常設する「体制」に加え、身構えや心構えを含めて「態勢」としています。

 

(2)主要なリスク

① 国内市場環境に関するリスク

当社グループは、日本国内においてカー用品の卸売・小売、車検・整備および車買取・販売等の事業を行っております。そのため、国内外の情勢の変化に伴う商品調達、為替変動などによる日本経済の悪化、個人消費の低迷、競争優位性変動等が、当社グループの営業成績や財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクの低減のため、当社は代表取締役社長を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置し、外部機関によるリスク評価を実施し、取り組むべき重要リスクの選定および対処を行い、継続的にリスクの低減を図っております。

 

② 店舗運営に関するリスク

当社グループは、カー用品販売、車検・整備、車買取・販売を取り扱う小売店舗を営業しておりますが、店舗の営業に伴う廃棄物の処理、有害物質の取り扱い、ピット作業における事故、また店舗敷地内でのその他の事故などのリスクがあります。これらは直接的、もしくは顧客のグループ店舗に対する心証悪化に伴う客数減少などによって、間接的に当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

ピット作業事故等につきましては重大リスクと認識し、研修による指導教育、作業マニュアルの周知徹底、コンプライアンスチェックプログラムによる点検と改善を継続しております。

 

③ 人材確保・育成に関するリスク

当社グループが事業を維持・拡大していくためには、車の整備や検査等をはじめ次世代整備の専門性を有する人材や、イノベーションを創出することのできる多様な知見・スキル・価値観を有する人材を確保・育成していくことが不可欠です。今後の社会情勢や雇用環境の変化により、ふさわしい人材を継続的に採用することが困難になる場合、既存事業における売上確保や成長戦略の推進に支障が生じるなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

人材確保につきましては、当社グループならびにフランチャイズ加盟法人を含めたチェンリクルートや採用支援、整備士確保の取り組み強化により、人材確保を推進しております。また、ワークライフバランスを重視し、働き方や価値観の多様化に対応した人事制度の構築や労務環境の整備に取り組んでおります。

人材育成につきましては、当社グループならびにフランチャイズ加盟法人を含めた人材育成プログラムの充実を図るとともに、整備士資格をはじめとした各種資格の取得を支援する制度を設けているほか、独自のグループ内認定資格を用意するなど役職員に自己研鑽を促し、育成に取り組んでおります。

 

④ 技術革新に関するリスク

自動車関連の技術は日々変化をしており、運転支援機能、自動運転の技術開発、電気自動車の普及などに伴い、当社グループが販売する交換部品の需要や市場規模が変化する可能性があります。こうした技術進化に伴う顧客ニーズの多様化に対し、柔軟に対応できなかった場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対応するため、国内外の自動車メーカーとの協業、電気自動車市場への参入、車検指定工場全店における特定整備認証(電子制御装置整備)の取得など、継続して技術革新のノウハウ獲得のための取り組みを推進しております。

 

⑤ 商品の開発および調達に関するリスク

当社グループは、プライベートブランド(PB)の商品開発を行っております。開発においては厳しい基準を設けて品質検査を実施する等、さまざまな取り組みを進めておりますが、PB商品等に起因する事故等が発生した場合、お客様からの信頼失墜を招き、ブランド毀損により、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

PBを含めた商品は、国内外より調達を行っておりますが、各地域の政治情勢、自然災害、経済状況の変化などのさまざまな要因によってその商品の調達が困難となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、仕入価格の高騰に伴う小売価格の上昇で商品・サービスに対する需要が後退した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 情報セキュリティに関するリスク

当社グループが行う事業活動の多くは、情報システムおよび通信ネットワークに依存しておりますが、想定外の災害やサイバー攻撃などにより、データセンター機能の停止やシステム障害など、ITシステムが長期間にわたり正常に作動しなくなった場合、当社グループの業務が著しく停滞し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、個人情報や法人の秘密情報等が外部に漏えいした場合には、当社グループの社会的信用に影響を及ぼす可能性や、損害賠償等を行う必要が生じることにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。

これらに対し、ファイアウォールなどのいわゆる入口対策・出口対策のほか、あらゆるアクセスを検証対象として情報保護対策を行うとともに、情報セキュリティに関する規程(「ITガバナンス規程」、「情報セキュリティ規程」等)を整備し、情報セキュリティに関するeラーニングや標的型攻撃メール訓練をオートバックスセブングループ全従業員に対して実施するなど教育・研修の徹底を図っております。また、自然災害や停電、火災等の災害に対する耐性やセキュリティ面を考慮の上で24時間対応可能なデータセンターの設置や、複数のデータセンターを利用することでリスクの分散を図るとともに、定期的にデータのバックアップを行い、非常時において当該データを復元し、できる限り早急にサービスを再開できる体制を整備することにより、リスク対策を講じております。

 

⑦ 法規制等の変化によるリスク

当社グループは、店舗の出店において「大規模小売店舗立地法」により売場面積1,000㎡超の新規出店や既存店舗の増床などについて、騒音、交通渋滞、ごみ処理問題など、生活環境等の法令や条例などの規制を受けております。当社グループは、1,000㎡超の大型店舗を新規出店する際には、出店計画段階から地域環境を十分考慮し、出店地近隣住民や自治体との調整を図りながら出店していく方針ですが、これらの規制に変更等が生じ、新たな法規制等の影響を受けることになった場合には出店を計画通りに進めることができず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 気候変動に関するリスク

当社グループの販売する商品には、スタッドレスタイヤ、タイヤチェーンなど天候により販売個数を大きく左右される季節商品が一部含まれています。そのため、冷夏や暖冬などの気候変動が発生した場合、季節商品の需要低下や販売時期のずれにより売上高が減少する可能性があります。また、環境に関する法的規制や社会的要請の高まりによって炭素税等の導入や各種規制の拡大が進んだ場合、事業活動の制約やオペレーションコスト・設備コストの上昇など、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクに対して、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、店舗で排出する温室効果ガスの総量をゼロにすることを目標に、再生可能エネルギーの活用に取り組むとともに、環境配慮型店舗やEV車の販売・メンテナンスをはじめとした脱炭素への取り組みにより、省エネルギー化の推進を行っております。また、事業ポートフォリオの柔軟な見直しを行い、経営から現場に至るまで、気候変動課題と事業推進の両立を図りリスク低減を目指しております。

 

⑨ 自然災害に関するリスク

当社グループが店舗を展開する、また事業関連施設を所有する地域において、地震、台風その他の自然災害が発生し、当該施設への物理的な損傷、または役職員の死亡・負傷による欠員があった場合、商品の損害、売上高の減少、または原状復帰や人員の補充などにかかる費用によって、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対して当社グループではBCP/事業継続計画を策定し、年2回の訓練実施においてさまざまな災害ケースを想定し実行することで、課題抽出とリスク低減に努めております。

 

⑩ 強毒性感染症に関するリスク

人々の交通インフラの一翼を担う「オートバックス」事業を中核事業とする当社グループは、新型コロナウイルス(COVID-19)のような感染症の流行に備え、お客様・取引先、従業員等の安全を最優先に考えた上で、お客様の安全・安心な車生活を守るため、感染症流行時における人員確保など、営業継続の対策を講じておりますが、感染拡大などの状況に応じて、店舗の休業や営業時間の短縮などの措置をとる可能性があります。この場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、対策備品の配布・備蓄やバックオフィスにおいてリモートワーク等の導入を行い、影響の最小化に努めております。

 

⑪ 固定資産減損に関するリスク

当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しております。今後、店舗等の収益性の悪化などにより、新たに減損損失を計上することになった場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫ コンプライアンスに関するリスク

当社グループは、法令遵守・コンプライアンスに係る問題につき内部統制の整備を図っており、より充実した内部管理体制の確立のため全社の内部統制を主管する部門を定め、役員および従業員が高い倫理観に基づいて企業活動を行うよう行動規範と行動指針を制定しています。しかし、役員および従業員による不正行為は完全に回避できない可能性があります。万一、このような事象が発生した場合、当社グループの社会的な信用の低下や、多額の損害賠償の請求など、当社グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対して「行動規範・行動指針」の周知・徹底、店舗運営におけるコンプライアンスチェックプログラムの実行、重大事案報告制度、内部通報制度等の対策によりリスクの極小化に努めております。

 

⑬ 個人情報・機密情報管理に関するリスク

当社グループは、事業の過程において、個人情報や機密情報を保有しています。万一、当社が保有するこれらの情報の漏えい事故等が発生した場合、当社グループの社会的な信用の低下により、業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクに対して、資料の取り扱いに関する規制や制限を実施しております。特に重要な電子データはアクセス権限設定やパスワード設定、期限設定など対策を厳格に実施しております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

日本経済は、新型コロナウイルス感染症の行動制限緩和に伴い社会経済活動の正常化が進み、個人消費は持ち直しの動きが見られました。一方で、ウクライナ情勢の長期化や、原材料やエネルギー価格の高騰などを背景とした物価上昇、為替相場の変動による景気減速懸念など、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。

国内の自動車関連業界の動向といたしましては、世界的な半導体不足の影響が緩和し、新車販売台数・中古車登録台数は前年を上回る水準へ回復いたしましたが、カー用品関連につきましては、記録的な暖冬により冬季用品需要が減少するなど厳しい事業環境となりました。

このような環境下において、当社グループは、社会・クルマ・人のくらしの変化をいち早く捉えて適応することで市場競争力の向上に努めております。当社グループが向かうべき方向性を示す「5ヵ年ローリングプラン」では、より成長の可能性の高い領域への集中に加え、持続的成長に向け、ネットワークおよび事業基盤の強化と事業の推進を図ってまいりました。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。

 

① 連結損益状況

売上高、売上総利益

当社グループの当連結会計年度における売上高は、前年同期比2.7%減少の2,298億56百万円、売上総利益は前年同期比5.1%減少の754億24百万円となりました。

 

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:百万円)

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

国内オートバックス事業

170,015

167,038

海外事業

13,052

14,700

ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業

39,820

35,144

その他の事業

13,347

12,973

報告セグメント計

236,235

229,856

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

販売費及び一般管理費、営業利益

販売費及び一般管理費は、前年同期比0.5%減少の674億14百万円、営業利益は前年同期比31.7%減少の80億10百万円となりました。

新店舗システム稼働により減価償却費が増加いたしましたが、期中に連結子会社2社を連結の範囲より除外したことにより販売費及び一般管理費は減少いたしました。

 

 

 

セグメント別の従業員の状況

(単位:人)

セグメントの名称

2023年3月期

2024年3月期

増減

国内オートバックス事業

2,698

(739)

2,700

(741)

2

(2)

海外事業

571

(18)

564

(17)

△7

(△1)

ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業

657

(17)

484

(11)

△173

(△6)

その他の事業

298

(21)

310

(44)

12

(23)

全社(共通)

253

(27)

327

(2)

74

(△25)

合計

4,477

(822)

4,385

(815)

△92

(△7)

(注)従業員数は就業人員であり、出向者は除いております。臨時雇用者数は( )内に年間の平均人員を外数で記載しています。全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。

 

営業外収益、営業外費用、経常利益

営業外収益は、前年同期比11.7%増加の20億70百万円となりました。営業外費用は、前年同期比0.8%減少の19億87百万円となりました。

主に、前年同期に比べ持分法適用会社の収益改善が図られ、持分法による投資利益として営業外収益を計上しております。また、新店舗システム稼働により情報機器賃貸費用が増加いたしました。

この結果、経常利益は前年同期比30.1%減少の80億93百万円となりました。

 

特別利益、特別損失

特別利益は、事業譲渡益39億71百万円を計上いたしました。特別損失は、店舗整理損7億8百万円、固定資産の減損損失5億34百万円、投資有価証券評価損3億51百万円、早期割増退職金1億88百万円を計上いたしました。

 

法人税等合計

法人税等合計は、前年同期比7億24百万円減少の39億15百万円となりました。

 

親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比12.2%減少の63億55百万円となりました。

 

 

 

② セグメントごとの経営成績

 

当社グループ 報告セグメントの概要

0102010_008.png

 

セグメントごとの売上高、利益又は損失

(単位:百万円)

 

報告セグメント

調整額

連結財務諸表計上額

国内オートバックス

事業

海外事業

ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業

その他の

事業

合計

売上高

 

 

 

 

 

 

 

 顧客との契約から生じる収益

167,038

14,673

35,144

10,542

227,398

227,398

 その他の収益

26

2,431

2,458

2,458

外部顧客への売上高

167,038

14,700

35,144

12,973

229,856

229,856

対前期増減率

△1.8%

12.6%

△11.7%

△2.8%

△2.7%

△2.7%

セグメント間の内部

  売上高又は振替高

5,075

674

9,116

5,100

19,966

△ 19,966

172,113

15,375

44,260

18,073

249,823

△ 19,966

229,856

対前期増減率

△1.4%

13.6%

△10.0%

△2.7%

△2.4%

△2.7%

セグメント利益又は

  損失(△)

16,721

101

△ 49

△ 659

16,115

△ 8,105

8,010

対前期増減率

△21.3%

△20.4%

△31.7%

 

 

 

国内オートバックス事業

国内オートバックス事業は、上期においては、物価上昇の影響を受けつつも、個人消費に緩やかな改善傾向が見られたことに加え、販売促進を強化したことなどにより売上は堅調に推移いたしました。下期については、暖冬の影響で店舗における冬季用品需要が減少し、卸売売上が減少いたしました。また、フランチャイズチェンパッケージ変更に伴いFC加盟店舗が保有している2025年3月期の期首在庫に対して、卸売価格引き下げ後と同水準の価格に合わせる措置を講じた結果、当連結会計年度の売上高は前年同期比1.4%減少の1,721億13百万円となりました。売上総利益は、前年同期比6.0%減少の561億20百万円となりました。販売費及び一般管理費は新店舗システム稼働により減価償却費が増加し、前年同期比2.4%増加の393億98百万円となりました。この結果、セグメント利益は前年同期比21.3%減少の167億21百万円となりました。

営業の状況といたしましては、当連結会計年度における国内のオートバックスチェン(フランチャイズ加盟法人店舗を含む)の全業態の売上高は、前年同期比で既存店が0.2%の減少、全店が前年同期並みとなりました。

 

国内オートバックスチェン売上高および客数(既存店前年比/月別)2023年4月~2024年3月

0102010_009.png

 

国内オートバックスチェンでは、既存車のメンテナンス需要を背景に、エンジンオイル、バッテリーが好調に推移いたしました。また、これらの商品に伴うサービス工賃も堅調に推移いたしました。

タイヤについては、プライベートブランドタイヤなどの低価格帯商品の売上が伸長したものの、暖冬によりスタッドレスタイヤが低調だった影響で、売上は前年割れとなりました。

プライベートブランドについては「AQ.(オートバックスクオリティ.)」や、心躍るガレージライフを提案するブランド「GORDON MILLER(ゴードンミラー)」等、自信をもっておすすめできる価値ある商品の開発・販売を推進しております。また、オートバックス誕生50周年を記念した特別増量商品を販売するなど、50周年を記念した商品の企画・販売も進めております。

車検・整備については、公式アプリにおいて、ピット作業予約機能に加え、主要メンテナンス項目の作業履歴や交換時期のお知らせ機能を追加するなど、順次サービスを拡大しております。また、ピット作業のWeb予約が定着しつつあり、公式アプリからのピット作業予約件数が前年同期比24.3%増加いたしました。車検実施台数については、第3四半期連結会計期間より車検対象台数が減少に転じましたが、車検リピート率の向上などに努めたことにより、前年同期比0.3%増加の約66万7千台となりました。

車販売については、中古車の買取台数の増加を背景に好調に推移いたしました。これにより、国内オートバックス事業における総販売台数は前年同期比10.5%増加の約31千4百台となりました。

また、オートバックス会員制度を18年ぶりにリニューアルし、特典内容やランクアッププログラムの見直しを行い、さらに魅力的な会員制度といたしました。

国内における出退店は、新規出店が3店舗、退店が1店舗あり(SB/RLに伴う出退店は除く)、2024年3月末の店舗数は590店舗となりました。

 

 

国内オートバックス事業セグメントにおける商品別売上(連結調整後)

(単位:百万円)

 

2023年3月期

2024年3月期

増減

タイヤ・ホイール

54,874

51,384

△ 3,489

カーエレクトロニクス

22,899

20,788

△ 2,110

オイル・バッテリー

16,285

17,475

1,189

アクセサリー・メンテナンス用品

40,251

38,805

△ 1,445

車検・サービス

17,831

18,301

469

車販売

7,275

8,751

1,475

その他

10,597

11,531

933

合計

170,015

167,038

△ 2,976

 

国内出退店実績

(単位:店)

 

2023年3月末

新店

退店

2024年3月末

オートバックス

496

499

スーパーオートバックス

74

74

オートバックスセコハン市場

4

オートバックスエクスプレス

11

11

オートバックスカーズ

3

国内計

588

590

 

国内店舗数の内訳

(単位:店)

 

2023年3月末

2024年3月末

直営

11

連結対象子会社

124

127

連結対象外法人※

453

454

合計

588

590

※関連会社を含む

 

海外事業

海外事業における売上高は153億75百万円(前年同期比13.6%増加)、セグメント利益は1億1百万円(前年同期は2億7百万円のセグメント損失)となり、黒字化を達成いたしました。

小売・サービス事業においては、ウクライナ情勢や世界的なインフレの影響を受けたものの、売上は増加し、卸売事業においては既存取引先への営業強化などにより、売上が伸長いたしました。

フランスにおいては、冷夏や降雨により夏季用品の需要が減少したものの、価格の適正化や営業活動の最適化などの対策を講じたことにより、売上が増加いたしました。また、法定最低賃金の引き上げにより人件費が増加いたしましたが、不採算店舗を閉店するなど収益性の向上に取り組みました。シンガポールにおいては、COE(車両購入権)の価格上昇に伴い、既存車のメンテナンス需要拡大を取り込み、ピットサービスが好調に推移いたしました。マレーシアとオーストラリアにおいては、インフレや金利上昇を背景に、消費者の購買意欲が低下したことなどにより売上が減少いたしました。中国においては、日本国内への輸出が増加し、営業損益が改善いたしました。

海外における出退店は、新規出店が37店舗、退店が6店舗あり、2023年3月末の78店舗から109店舗となりました。

 

主要海外子会社の損益

(単位:百万円)

 

 

2023年3月期

2024年3月期

増減

フランス

売上高

7,271

8,376

1,104

営業利益

△123

△ 395

△ 271

シンガポール

売上高

1,714

1,855

141

営業利益

△30

37

67

中国

売上高

1,382

1,223

△ 159

営業利益

△143

2

146

マレーシア

売上高

116

113

△ 3

営業利益

△11

△ 12

△ 1

オーストラリア

売上高

2,812

2,625

△ 187

営業利益

163

67

△ 96

 

 

 

海外出退店実績

(単位:店)

 

2023年3月末

新店

退店

2024年3月末

フランス

10

シンガポール

タイ

49

34

82

台湾

マレーシア

インドネシア

フィリピン

海外計

78

37

109

 

海外店舗の内訳

(単位:店)

 

2023年3月期

2024年3月期

連結対象子会社

12

12

連結対象外法人※

66

97

合計

78

109

※関連会社を含む

 

ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業

ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業における売上高は442億60百万円(前年同期比10.0%減少)、セグメント損失は49百万円(前年同期は2億81百万円のセグメント利益)となりました。

 

ディーラー事業においては、Audiの正規ディーラーを運営する子会社が好調に推移したものの、2023年9月にBMW/MINI正規ディーラー事業を行う子会社2社を譲渡した影響で、売上が減少いたしました。また、BYD Auto Japanの正規ディーラーを運営する子会社が「BYD AUTO 宇都宮」および「BYD AUTO 練馬」を新規オープンいたしました。加えて、お客様のEVライフをトータルサポートすることを目指し、BYDの新車販売に加え、EV中古車の取扱いや、EV充電器・蓄電池およびソーラーパネルの設置などのサービスも開始いたしました。

 

ディーラーの運営会社と店舗数

(単位:店)

会社名

2023年3月末

2024年3月末

㈱アウトプラッツ

㈱モトーレン栃木

㈱バックス・アドバンス

㈱バックスeモビリティ

 

BtoB事業においては、社用車のメンテナンスやカー用品などの法人一括払いが可能となる「オートバックス法人会員制度」への加入件数が順調に増加するとともに、車両のメンテナンス需要を背景に、エンジンオイル等の卸売を行う子会社や車検・整備・タイヤ販売を行う子会社が堅調に推移いたしました。また、ドライブレコーダーやカーナビゲーションなどの出張取付サービスが堅調で、2023年9月に開始した園児送迎バス置き去り防止装置の出張取付サービスは、園児送迎車両だけでなく、介護送迎車両などにも多数ご利用いただいております。さらに、日産自動車株式会社との協業にも注力しており、車種専用アイテムの企画開発・販売を行っております。

 

オンラインアライアンス事業においては、ECサイトでの取扱商品を大幅に増やしたこと等により、売上が増加いたしました。また、引き続き物流改革やネットとリアルの融合を進めており、カーライフに必要な情報サービス・コンテンツを集約したカーライフ総合情報サイト「MOBILA(モビラ)」を通じて、潜在顧客へのアプローチとオートバックス店舗への送客を目指しております。さらに、携帯アルコールチェッカー「ALCクラウド」の機能を搭載したクラウド型社用車管理システム「FLEETGUIDE(フリートガイド)」の提供を開始いたしました。

 

その他の事業

その他の事業における売上高は180億73百万円(前年同期比2.7%減少)、セグメント損失は6億59百万円(前年同期は10億66百万円のセグメント損失)となりました。

③ 財政状態に関する分析

a.連結貸借対照表の各項目の状況

流動資産

流動資産は、前連結会計年度末に比べ8億49百万円増加し、1,121億91百万円となりました。主に現金及び預金が増加した一方、売掛金、商品、未収入金が減少したことなどによるものです。

 

有形固定資産、無形固定資産

有形固定資産は、前連結会計年度末に比べ14億94百万円増加し、482億52百万円となりました。主に新規出店、改装により建物及び構築物が増加したことなどによるものです。

無形固定資産は、前連結会計年度末に比べ16億28百万円減少し、77億63百万円となりました。

 

投資その他の資産

投資その他の資産は、前連結会計年度末に比べ94百万円減少し、267億41百万円となりました。

 

流動負債

流動負債は、前連結会計年度末に比べ78百万円増加し、489億84百万円となりました。

 

固定負債

固定負債は、前連結会計年度末に比べ16億46百万円減少し、168億12百万円となりました。主に銀行からの借入を返済したことにより長期借入金が減少したことなどによるものです。

 

純資産合計

純資産合計は、前連結会計年度末に比べ21億89百万円増加し、1,291億52百万円となりました。主に利益剰余金の配当による減少があった一方、親会社株主に帰属する当期純利益による増加などによるものです。

 

セグメントごとの資産

(単位:百万円)

 

2023年3月末

2024年3月末

増減

国内オートバックス事業

93,595

92,451

△ 1,143

海外事業

12,256

13,317

1,061

ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業

22,572

16,501

△ 6,070

その他の事業

36,955

38,004

1,048

全社(共通)

28,948

34,673

5,724

総合計

194,327

194,948

621

 

資産合計/負債純資産合計

資産合計、負債純資産合計は、前連結会計年度末に比べ6億21百万円増加し、1,949億48百万円となりました。

 

 

b.連結キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ67億75百万円増加し、312億78百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは144億31百万円の収入(前年同期は106億87百万円の収入)となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益102億83百万円に対し、非資金損益項目等の調整を加減した営業取引による収入193億3百万円であり、支出の主な内訳は、法人税等の支払額50億円等であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、4億49百万円の支出(前年同期は76億52百万円の支出)となりました。収入の主な内訳は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入50億98百万円および貸付金の回収による収入38億96百万円等であり、支出の主な内訳は、有形及び無形固定資産の取得による支出91億49百万円等であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、74億13百万円の支出(前年同期は34億95百万円の支出)となりました。支出の主な内訳は、配当金の支払額46億81百万円および長期借入金の返済による支出19億58百万円等であります。

 

c.設備投資の状況

当社グループでは、新規出店や既存店舗の改装ならびに輸入車ディーラー店舗のリロケーションに係る建物および構築物の取得のほか、店舗情報基盤の構築などの情報システム投資その他に対し、総額91億49百万円の設備投資を実施いたしました。

 

設備投資の主な内訳

(単位:百万円)

 

2023年3月期

2024年3月期

新規出店(リニューアル含む)

446

2,260

既存店改装・改修

1,989

2,439

土地

453

561

情報化投資

2,405

1,780

その他

1,887

2,107

合計

7,182

9,149

 

セグメント別設備投資額

(単位:百万円)

 

2023年3月期

2024年3月期

国内オートバックス事業

4,570

6,378

海外事業

622

143

ディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業

1,138

1,505

その他の事業

243

434

全社(共通)

607

688

合計

7,182

9,149

 

④ 資金調達の状況

当連結会計年度において、グループ全体として運転資金需要に対する資金調達を行いました。なお当連結会計年度末の短期借入金および長期借入金の残高が25億13百万円減少した主な要因は、約定返済およびグループ内融資の借り換え等によるものです。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 日本経済は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により制限されていた社会経済活動の正常化を背景に、内需を中心として持ち直しの傾向にあり、また、インバウンド需要の回復もあり全体としては緩やかな回復傾向にあります。一方で、不安定な国際情勢に起因する原材料やエネルギーコストなどの高騰、急速な円安の進行やそれに伴う物価高など、経済の先行きについては依然不透明な状況が続いています。

 国内の自動車関連業界に目を向けますと、半導体不足の解消とともに新車販売台数・中古車登録台数が回復し、円安を追い風として自動車の輸出が好調であった一方で、一部の自動車メーカーや中古車販売店による不正問題が発覚するなど、業界を取り巻く環境は不透明感を強めております。

 当社は、このような外部環境の変化に加え、変化するお客様のニーズをとらえ、素早く対応できる体制を整えておかなければ勝ち残れないという考えから、2019年より時流に合わせて継続的に5年後の方向性および戦略の見直しを実施する「5ヵ年ローリングプラン」を策定いたしました。「お客様の利用シーンに合わせ、お客様の求める商品やサービスを、スピード感を持って提供する」ことを目指し、クルマの利用シーンを支えるすべての商品やサービスを、オートバックスグループで提供するだけではなく、それぞれの領域で強みを持つ事業者間の垣根を越えた連携を「6つのネットワーク」と定義し、5つの事業基盤の整備、そして事業の強化を進めてまいりました。

 2024年3月期は、以下の「実行性向上とスピードアップ」「持続的成長に向けた取り組みの強化」「人づくりのための取り組みの継続」の方針を掲げ、重点的に推進してまいりました。

 

a.実行性向上とスピードアップ

 ROIC経営推進に向けた取り組み

 当社グループの持続的成長の実現のためには、既存事業の効率改善や新陳代謝の促進、成長領域への投資と新たな事業の育成が必要です。新たな価値創造に向けた挑戦を継続していくために、ROIC(投下資本利益率)を用いた事業ポートフォリオの見直しを進めております。2024年3月期は事業別にROICの見える化を実施し、ROIC経営の基盤を構築いたしました。2025年3月期からは事業ごとのROIC目標を設定し、事業別ROICを事業統括の業績評価の指標にするなど、人事評価指標への組み込みや社内浸透を図ってまいります。中期的には、2027年3月期に7.0%のROIC目標を掲げるとともに、資本コスト(WACC)を上回るROICの維持・拡大を目指し、各事業のROIC向上に加え、成長投資に際しては他人資本を活用してWACCのコントロールも進めてまいります。

 

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 事業ポートフォリオの見直しと絞込みによる経営資源の最適化のための取り組み

 国内オートバックス事業においては、フランチャイズ(以下、FC)チェン本部のコスト構造改革とオートバックス店舗への人員再配置を実施いたしました。また、FC加盟店舗とFCチェン本部である当社が共に小売をより一層重視する経営を実現するため、2024年4月1日より、当社からFC加盟店舗への卸売価格を引き下げ、小売に付随するロイヤリティ料率を引き上げるFCチェンパッケージ変更を実施いたしました。これにより、お客様へ全国均質の高品質なサービスを提供することや、全店舗におけるDXの促進、統一ツールの導入などを進めるとともに、FC加盟店舗とFCチェン本部が真に一体となってお客様接点を増やし、お客様視点で商品やサービスの開発・提供を行うなど、より一層お客様に支持されるFCチェンへと進化してまいります。

 海外事業においては、AUTOBACS FRANCE S.A.S.の不採算店舗の閉鎖や、PT AUTOBACS INDOMOBIL INDONESIAの合弁解消により収益性が改善し、営業利益が黒字転換いたしました。

 ディーラー事業においては、BMW/MINI正規ディーラーを運営する孫会社2社の株式を譲渡いたしました。これにより、ディーラー事業の売上が減少いたしましたが、売却益約39億円を特別利益として計上いたしました。本売却益は、成長に向けた戦略投資へ充当する予定です。

 その他の事業においては、車買取・販売をカートレーディング事業として独立事業化し、2024年4月より、オートバックスグループ外からのフランチャイズ加盟店募集を開始いたしました。

 

 戦略事業への取り組み強化

 BYD正規ディーラーの新規出店やHyundaiコーナーのスーパーオートバックス7店舗への設置、EVの企画・製造・販売を行うASF株式会社へ出資など、活性化しているEV市場におけるオートバックスグループのノウハウ・アセットを活用して対応を進めております。

 また、私たちの強みである商品を切り口に、新たなカテゴリー商品の取り扱いや販売チャネルの拡大を目指し、日産自動車株式会社への車種専用商品の開発・供給を強化するとともに、オートバックス店舗でのマイクロモビリティの取り扱いを開始いたしました。

 

b.持続的成長に向けた取り組みの強化

 ネットとリアルの融合による「小売業としての進化」

 お客様の価値観や購買行動が大きく変化を遂げる中で、小売業やITなど、業界の枠を超えた競争が激化しています。そのような環境下で、当社は、ネットとリアルの融合による「小売業としての進化」を通じて、お客様にシームレスな購買体験を提供し、お客様の「時間の価値を高める」ことを目指しております。具体的には、ECで購入した商品と取付作業費用の事前決済により、お客様へ商品・サービスをスピーディに受渡しする取り組みや、ラストワンマイル対策として、ECで購入した商品が店舗にあれば、店舗からすぐに配送する取り組みを進めており、実店舗とECサイトの融合により、全国にカー用品店を展開するオートバックスならではの価値を提供しております。

 

 ユニークデータの利活用によるDX「小売業からの進化」

 「小売業からの進化」は、デジタルエコシステムによる“CDE”の実現をコンセプトに、お客様とより深く、より長く、直接的につながることを目指す戦略です。ユニークデータを活用し、お客様に最適なモビリティライフを提案することで、出かける楽しさを伝え、クルマの利用を促進することで業界全体を活性化させたいと考えております。

 ユニークデータの利活用によるDXの一例として、2023年4月に、最新のカーニュース、ドライブなどクルマで出かけたくなる情報を提供するカーライフ総合サイト「MOBILA」をオープンいたしました。「MOBILA」の利用者数は180万人を突破いたしましたが、今後も機能拡充を図るとともに、「MOBILA」をお客様とのコミュニケーションのツールとし、モビリティ情報のプラットフォーマーへと進化していきたいと考えております。

 

c.人づくりのための取り組みの継続

 人づくりは企業の成長のために不可欠であると考えております。特に、整備士人材の採用・育成・定着化に関しては喫緊の課題と捉えており、子会社である株式会社チェングロウスと連携しながら、整備士学校の新卒者や、有資格者の獲得を進め、グループとして採用活動を継続・拡大しています。また、整備士資格取得に向け開設した分教場の活用や、短期講習会の開催、自動車検査員の教習試験対策に向けた研修会の開催、ハイブリッド技術研修などを実施し、整備士を育成する場の提供を積極的に進めております。さらに、フィリピンのパーペチュアル・ヘルプ大学と、フィリピンにおける自動車整備人材の育成と日本でのキャリア形成を推進するプロジェクトの基本合意を締結し、大学と共同で整備士のキャリア人材の育成に取り組んでいます。高度な技術を持つ人材をグローバルで育成・獲得することで、日本の自動車整備業界全体の発展を目指すとともに、国際的な人材キャリア支援にも貢献したいと考えております。

 リスキリングの推進による人材開発も進めています。具体的には、データリテラシー向上を目的としてIT・DXリスキリングプログラムの提供や、本社スタッフの店舗業務におけるスキル取得や、リスキリングの教育支援を推進しました。これらのスキルは、当社が「小売業からの進化」を実現していく上で重要であると考えております。さらに、人事制度の見直し、早期退職優遇制度および関連の退職による約70名の合理化、コストセンターからプロフィット部門への100名規模の配置転換などの人事施策も実施いたしました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③財政状態に関する分析 b.連結キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

 資本の財源および資金の流動性の状況

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、カー用品を中心とした商品の購入費用およびシステム等の運営コストの支払等である一方、主にフランチャイズ加盟法人に対する卸売と個人を中心とした一般のお客様への小売を行っているため、仕入債務の支払よりも売上債権の回収が進む傾向にあります。したがって、基本的には営業キャッシュ・フローで得られる資金に加え短期借入を、季節によって変動する運転資金需要と投資に充てております。

 新中期経営計画期間である2025年3月期からの3年間は、設備投資や事業拡大に向けたM&Aによる投資により、累計約350億円の投資を計画しており、長期ビジョンの期間である2032年までに累計約1,000億円の投資を実施する計画です。

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 株主還元方針

 当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題の一つと位置づけており、株主還元につきましては、「5ヵ年ローリングプラン」の計画期間においては、5年間累計総還元性向100%を基本方針といたしました。当該期間の累計総還元性向は93.9%となりました。なお、2024年3月期に実施したBMW/MINI正規ディーラー事業の売却に伴う一時的な利益を除いた5年間の累計総還元性向は102.9%です。

 新中期経営計画期間である2025年3月期からの3年間の株主還元につきましては、長期ビジョンの達成に向けた成長機会への投資を優先し、原則として1株当たり年間60円の安定的な配当を実施していくことを基本方針として定めております。また、営業キャッシュ・フローの増大分については投資に充当する計画としております。

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③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益および費用の計上に際し、様々な見積りおよび判断を行っておりますが、実際の結果につきましては、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループが連結財務諸表で採用する重要な会計上の見積りは、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)および(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 フランチャイズ契約

  当社は、既存の小売店と共存共栄を図ることを基本方針としてフランチャイズ契約を締結しております。

 その契約の主な事項は次のとおりであります。

(1)オートバックスフランチャイズ契約の要旨

契約の目的

株式会社オートバックスセブン(本部)は、加盟店に対して本部が使用している商号及び経営ノウハウ等を提供し、本部と同一企業イメージで事業を行う権利を与える。加盟店はこれに対し、一定の対価を支払い、本部の指導と援助のもとに、継続して営業を行い、相互の繁栄を図ることを目的とする。

ロイヤリティ

毎月の売上高に、一定の料率に相当する金額を支払うものとする。

仕入及び販売

加盟店の販売商品は主に本部から仕入れ、本部の提供したノウハウによって消費者へ販売する。

契約期間

オートバックスフランチャイズ契約

契約締結日から5年間。ただし期間満了6ヶ月前までに、一方当事者の解約申出のない時は、3年毎の自動更新。

スーパーオートバックスフランチャイズ契約

契約締結日から5年間。ただし期間満了6ヶ月前までに、一方当事者の解約申出のない時は、3年毎の自動更新。

オートバックスセコハン市場フランチャイズ契約

契約締結日から5年間。ただし期間満了6ヶ月前までに、一方当事者の解約申出のない時は、3年毎の自動更新。

 

    (2)オートバックスカーズフランチャイズ契約の要旨

契約の目的

株式会社オートバックスセブン(本部)は、加盟店に対して本部が使用している商号及び経営ノウハウ等を提供し、本部と同一企業イメージで事業を行う権利を与える。加盟店はこれに対し、一定の対価を支払い、本部の指導と援助のもとに、継続して営業を行い、相互の繁栄を図ることを目的とする。

ロイヤリティ

取引毎の車両売却価格に、一定の料率に相当する金額を支払うものとする。

仕入及び販売

加盟店は、本部の提供したノウハウによって、次の自動車の取引を行う。

 ・一般消費者からの買取、下取り及び販売

 ・他の自動車販売業者からの仕入れ及び販売、本部からの仕入れ

 ・自動車オークションへの出品及び落札

契約期間

契約締結日から3年間。ただし期間満了6ヶ月前までに、一方当事者の解約申出のない時は、3年毎の自動更新。

 

6【研究開発活動】

 特記事項はありません。