第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループはこのたび、原点であるロマン(志)を「暮らしの豊かさを世界の人々に提供する。」へと改定いたしました。新たなロマン(志)には、「住まい」にとどまらず、より幅広く、お客様の「暮らし」を豊かなものへの変革する存在になるという決意が込められております。

このロマン(志)を社員一人ひとりの行動の原点として共有し、当社グループの力を結集して長期ビジョンの実現に全力を尽くすことを企業活動の指針としております。

(2) 目標とする経営指標と中長期経営戦略

[2032年度ビジョン3,000店舗3兆円 / 2025年度買上客数2億人以上]

当社グループは、「暮らしの豊かさを世界の人々に提供する。」というロマンを実現するために、中長期ビジョンである「2032年3,000店舗3兆円」の達成に向けた経営戦略を策定しております。また、社会貢献のバロメーターは増え続けるお客様の数であるとし、中間目標として「2025年度買上客数2億人以上」を掲げ、会社が対処すべき課題を5ヶ年計画(2021年度から2025年度)として策定し、実行しております。以上のような当社グループの掲げる壮大なロマンとビジョンを実現するために、事業活動に関わる全ての人々と信頼関係を構築し、「製造物流IT小売業」というビジネスモデルを通じ、社会における共有価値を創出し相互繁栄を図ってまいります。

[中長期経営戦略]

① 事業領域の拡大と顧客の支持獲得

世界情勢の不確実性の高まりや、日本国内の人口減少・少子高齢化・単身世帯や共働き世帯の増加・低所得化の進行、テクノロジーの進化による購買行動や価値観の多様化等、大きなビジネス環境の変化に直面しています。

既存事業においては、今まで以上に魅力ある品揃え、品質、価格を実現し、客層の拡大と客数の増加を図ってまいります。

利用頻度が高いホームセンター事業においては、当社グループの強みを活かして、品揃え、品質、価格に、より磨きをかけて、客数の増加を図る一方、ローコストオペレーションを一層推し進めることで利益の拡大に努めてまいります。

また、お客様から支持し続けていただけるよう、変容する消費者のニーズ・ウォンツに対応した商品開発や、変わりゆく消費者の買い方に応じた販売方法に変革をしてまいります。

② グローバルチェーン展開の加速

日本国内での人口減少が進む中、海外販売事業が事業拡大の鍵となると考えております。特に、経済成長に伴い中間所得者層が急激に伸びるアジア各国・各地域に重点をおいており、2024年にはフィリピン、インドネシア、インドにも出店を果たし、日本に加えてアジア11か国・地域での事業展開となっております。

今後も足元の経済情勢・地政学リスク等外部環境を見極めながら、海外における事業の拡大と収益性の改善を進めてまいります。

③ サプライチェーンマネジメント・IT・組織戦略によるビジネス基盤改革

長期ビジョンの実現を下支えするビジネス基盤として、創業以来培ってきたサプライチェーン全般を自社ネットワークでコントロールする「製造物流小売業」の姿を、近年いっそう重要性が増すデジタルテクノロジーの活用により「製造物流IT小売業」へと進化させ、さらに発展させてまいります。そして、中長期経営戦略に沿った組織戦略と、従業員のキャリアアップとライフイベントとを両立させる人事制度により、従業員一人ひとりの成長を企業の成長の機動力とし、グループとしてロマン実現と社会貢献を果たしたいと考えております。これらにより、当社グループの持つ店舗網・物流網・自社EC等の多様なチャネルの強みを最大限に活用するビジネス基盤を構築し、成長を加速させてまいります。

④ ビジネス領域拡大に向けたM&A、アライアンスの推進

ビジネス領域拡大や垂直的な機能強化の両面からM&Aも視野に入れ、戦略的なアライアンスを模索してまいります。

⑤ 社会課題解決とロマン実現を両立するサステナビリティ経営

「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりであります。

 

(3) 会社の対処すべき課題

上記に掲げた中長期経営戦略に基づき、3つの重点課題を中心とした5ヶ年計画(2021年度から2025年度)を策定し、実行しております。

① 事業領域と地域の拡大

国内事業については、当社グループの核事業である家具・ホームファニシング専門店のニトリに加え、小型フォーマットであるデコホーム、アパレルブランドのNプラス、子会社化したホームセンターの島忠等により事業領域を広げ、より多くのお客様のより多くの生活シーンをカバーするべく店舗数を拡大しドミナントエリアを構築します。また、島忠をはじめとするグループ企業・事業・ブランド間のシナジーを最大化し、より便利で楽しい買物体験を提供してまいります。

海外事業につきましては、成長著しいアジア各国・各地域での事業拡大が鍵となると考えております。世界情勢等外部環境を見極めながら、事業の拡大と収益性の改善を進めてまいります。

(イ) 国内ホームファニシング事業(ニトリ・デコホーム・通販事業)

今後も、当社グループの核事業として成長を持続してまいります。グループ第4の柱として家電の育成を進めており、特に昨年販売開始したドラム式洗濯機は、大変ご好評いただいております。加えて、キッズ・ベビー用品などの品揃えを充実させるとともに、コーディネート提案の強化も進めてまいります。

また、お客様一人ひとりの購買体験が向上するよう、実店舗との連携や最新情報の提供によって、オンラインとリアルの垣根のないシームレスな消費行動を支えるECとアプリを構築してまいります。

そして、ECサイトの品揃えや、全国に有する店舗や配送網を一層拡充させ、お客様が欲しい商品を、気軽に、便利に受け取ることができる購買体験の提供を実現してまいります。

(ロ) ホームセンター事業(島忠)

利用頻度が高いホームセンター事業においては、当社グループの強みを活かして、品揃え、品質、価格に、より磨きをかけ、ホームセンター本来のDIYや園芸といったカテゴリーを強化し、客数の増加を図る一方、ローコストオペレーションを推し進めることで、利益の拡大に努めてまいります。

(ハ) 海外販売事業

日本国内での人口減少が進む中、海外販売事業が事業拡大の鍵となると考えております。特に、経済成長に伴い中間所得者層が急激に伸びるアジア各国・各地域に重点をおいており、2024年にはフィリピン、インドネシア、インドにも出店を果たし、日本に加えてアジア11か国・地域での事業展開となっております。

今後も足元の経済情勢・地政学リスク等外部環境を見極めながら、海外における事業の拡大と収益性の改善を進めてまいります。

(二) その他育成事業

30代~50代の大人の女性のアパレルブランドNプラスは、年齢を重ねながらも若々しさや感性を失わない「大人の女性」が毎日着たいと思うファッションを提案していきます。引き続きビジネスモデルを確立させ多店舗展開を行ってまいります。

② 顧客中心の経営~商品開発・業態~

当社グループでは、お客様からさらなるご支持をいただけるよう、お客様の「声」を商品開発や売場提案につなげられるよう、言葉の掘り起こしを仕組み化してまいります。

また、従来のマスマーケティングで捉えきれない消費者を「個客」として捉えるビジネスに進化させるため、アプリを中核とした顧客分析機能の強化と、アプリ会員を中心としたお客様との継続的な関係構築を強力に進めてまいります。2025年度におけるアプリ会員数の目標を2,500万人とし、アプリを通じたオンラインとオフラインの融合施策により、お客様の買物利便性を向上させ、購買頻度や年間買上品目数の増加、さらにはLTV(ライフタイムバリュー)の向上につなげてまいります。

また、多様化するお客様のライフスタイル・購買動向の変化に対応するため、遠隔でのカーテンや家具などの接客・販売やライブコマース等、顧客との新たな接点・販売チャネルを強化してまいります。加えて、コロナ禍以降の消費者のショートタイムショッピング・非接触・セルフサービス等のニーズの高まりを踏まえ、接客の無人化・セルフレジ導入・お客様自身で必要な情報を探せるアプリの店内モード等の業態変革を推進してまいります。

③ グローバルサプライチェーンマネジメント戦略

今後、グローバルでの出店が急速に進み、グループの販売拠点と製造・調達先がグローバルの各地域に複雑にまたがっていくことが予測される中、商品供給の短納期化と原材料費や輸送費高騰による原価上昇の抑制に取り組んでまいります。また、環境の変化や地政学リスクに対し安定的な商品供給を実現するために、サプライチェーンの在り方をより最適な形へと進化させてまいります。

また、国内の物流網につきましては、DC拠点の最適な配置と機能の集約を柱とし、オペレーション、発送・宅配網の整備、業務プロセスを改革テーマに取り組んでおります。総額約3,500億円を投資し、全国8箇所にDCの整備を計画しており、2023年度までに北海道石狩市と兵庫県神戸市、2024年度に埼玉県幸手市と愛知県名古屋市及び宮城県仙台市の新設DCの稼働が開始しております。さらに全国3箇所にDCを整備し、ローコストの実現とともに在庫やリードタイムの適正化を図ってまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、独自のビジネスモデル「製造物流IT小売業」を通じて、お客様の快適な暮らしと環境・社会課題の解決を両立した事業推進に努め、7つのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定し、その重要課題に基づき、持続可能な社会の実現を目指しております。

その一環として、当社グループでは、2050年に向けた環境目標「NITORI Group Green Vision 2050」を掲げ、「サーキュラー(循環)ビジネスの推進」、「持続可能な調達」、「気候変動への対応」の3つのテーマに沿って目標達成に向けた取組を推進しております。

「サーキュラー(循環)ビジネスの推進」といたしましては、商品を「つかいおわったあと」まで責任を持ち、「ごみ」として捨てるのではなく「資源」として再び活かす仕組みづくりを進めています。一気通貫のビジネスモデルを活かして、「お、ねだん以上。」を維持しながら、サステナブルな商品をお客様に提供するとともに、お客様が使い終わった後にも回収して資源化する等 「ごみ」 にしない工夫を徹底することで、社会課題の解決とビジネスの両立を目指しております。

具体的な取組として、カーテンのリサイクル回収において 、カーテンは処分や買い替えを考えていても「まだ使えそうなので捨てづらい」というお客様の声にお応えし、全国のニトリ・島忠・デコホーム全店舗(以下「全店」)にて常時受付を開始しております。本取組は、2022年度から2024年度までの累計で、約42.2万人にご参加いただき、回収重量は約 1,683トンとなりました。

タオルのリサイクル回収においては「家に使用していないタオルが沢山あって困る」「色や柄を揃えたくても買い替えるきっかけがない」等のお客様の困りごとにお応えし、期間限定で回収を実施しております。2023年度から2024年度までの累計で、約2.4万人のお客様にご参加いただき、回収重量は約32.5トンとなりました。また、羽毛布団のリサイクル回収においても、2022年度から2024年度までの累計で約8万人のお客様にご参加いただき、回収実績は約11.5万枚となりました。2024年度に販売した「再生羽毛」使用の羽毛布団は、昨年度約4.6万人のお客様にご協力いただき回収した羽毛が生まれ変わった商品で、一枚当たりの再生羽毛使用量を大幅に増やし、より一層サステナブルな取組へとつながりました。

「持続可能な調達」といたしましては、ニトリグループ全体で「調達方針」を制定し、環境・社会課題に配慮した持続可能な調達を推進しております。この「調達方針」に基づき、サプライチェーン全体を視野に入れた取組を進めております。その中でも特に重要と考える木材調達から、トレーサビリティ調査の実践等により、優先的に持続可能な調達体制の強化を図っており、目標として2030年度までに「環境・社会への配慮ができている木材100%」を目指しております。さらに、2025年4月に改正された日本のクリーンウッド法にも対応すべく、トレーサビリティ調査に加え、リスク評価や記録管理の強化にも取り組んでおります。

「気候変動への対応」といたしましては、店舗や物流拠点において、無駄な電力使用を抑える省エネルギー施策を継続的に推進したほか、再生可能エネルギー施策として、日本初の余剰電力活用型スキームを用いた太陽光発電「ニトリ発電所」が本格稼働いたしました。全国に店舗網・物流網を持つ当社グループの強みを最大限に活かし、店舗及び物流拠点の屋根上太陽光発電を活用し、余剰電力活用型の再生エネルギー循環を、株式会社Sustechと連携して実現いたしました。FIP制度を利用した自社設備の屋根上における太陽光発電プロジェクトとしては日本最大級となります。また、当社グループではTCFD提言への賛同を表明しており、温室効果ガス削減目標をはじめとするTCFD提言に基づく情報開示を実施しております。

また、当社グループがサステナビリティの重要課題の一つとして取り組んでいる「地域社会への貢献」の一環として、戦禍によって日本へ避難されているウクライナ避難民の方々が自立した生活を送れるよう、生活費支援及び就労支援を実施しております。生活費支援については、株式会社ニトリと当社代表取締役会長似鳥昭雄個人からそれぞれ1億3,000万円(合計2億6,000万円)の寄付を原資として、公益財団法人似鳥国際奨学財団を通じて、ウクライナ避難民の方々を対象に1人当たり1年目は月額8万円 (20歳未満の方は月額4万円)、2年目は月額4万円(20歳未満の方は月額2万円)の生活支援金を毎月支給しております。避難民の方々の生活がより安定したものになるように、2024年10月より支給期間を1年間から2年間へ延長いたしました。これを受けて、2025年2月には日本への避難を余儀なくされたウクライナの方々の日本における安定した避難生活の実現に大きく貢献したとして、法務大臣から感謝状を賜りました。また、就労支援においては、全国の当社グループの店舗や物流拠点への就労機会を提供しております。日本語を習得されていない方々にも安心して勤務いただけるよう、翻訳機やウクライナ語のマニュアルを整備し、職場環境の向上に取り組んでおります。

サステナビリティ経営推進体制につきましては、取締役会直下の組織として「サステナビリティ経営推進委員会」を位置づけ、代表取締役社長が委員長を務めて強力なリーダーシップのもとで推進する体制を整えているほか、専任部署(事務局)として「SDGs推進室」を設置しております。

「サステナビリティ経営推進委員会」は、気候変動をはじめとする環境・社会課題に対し、リスクと機会の観点から、国内のみならずグローバルでのESG課題への対応を進め、ビジネスモデルのレジリエンス強化と企業としての社会的責任を果たすため、各マテリアリティの目標を達成するための取組を実施しております。当社取締役会は、サステナビリティ経営推進委員会の取組の進捗状況に応じた助言等を行い、当社グループとしての方向性と対応策等を決定しております。

今後も、サステナビリティを経営の重要課題と位置づけ、企業として持続的に発展するとともに、一気通貫の循環型ビジネスモデルを通じて環境・社会課題を解決し、より良い未来に貢献することを目指してまいります。

 

(1)気候変動に関する取組(TCFD提言に基づく情報開示)

  ①ガバナンス

当社グループでは、気候変動への対応を重要な経営課題と捉えております。

当社代表取締役社長を委員長とした「サステナビリティ経営推進委員会」においては、サステナビリティ全般に関する課題をグループ全体で把握し、「サステナビリティ経営推進会議」においては、事業会社の部門責任者を構成員とし、具体的な対応策や目標設定について協議しております。

その議論・決定内容は取締役会に報告され、取締役会においては、当社グループで実施する対応策の承認と必要な助言を行っております。

気候変動への対応については、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)の一つである「環境に配慮した事業推進」の活動の一環としてアプローチを進めてまいります。気候変動への対応を含む当社グループのサステナビリティに関わる取組の進捗は、年一回以上取締役会に報告する運用としております。

 

 

(サステナビリティ推進体制)


 

(サステナビリティ重要課題(マテリアリティ))

1.「お、ねだん以上。」の商品・サービス提供による豊かな暮らしへの貢献

2.品質管理の徹底による製品安全・安心の提供

3.環境に配慮した事業推進

4.サプライチェーンにおける公平公正な取引と人権尊重

5.地域社会への貢献

6.働きがいのある環境づくりとダイバーシティの推進

7.実効性のあるコーポレート・ガバナンス

各マテリアリティに対する当社グループのアプローチや主に関連するSDGsの項目等詳細については、当社WEBサイト(https://www.nitorihd.co.jp/sustainability/policy/#policy-4)内に記載しております。

 

  ②戦略

温暖化防止の状況により、気候変動は様々なシナリオが考えられますが、当社グループでは代表とされる「+4℃」シナリオと「+2℃(未満)」シナリオについてサステナビリティ経営推進体制のもとで検討いたしました。

「+4℃」シナリオにおいては、十分な対策がなされずに酷暑と激甚な暴風雨が発生することが想定されるため、物理リスクの影響を中心に検討し、「+2℃(未満)」シナリオにおいては、温暖化抑止に向けて技術革新や規制強化が進み、社会が変化することが想定されるため、移行リスクの影響を中心に検討いたしました。

 


 

 

 ③リスク管理

当社グループは、気候変動関連の規制や事業への影響等のリスク要因を幅広く情報収集・分析を実施しております。

留意すべき重要な機会とリスクについては各事業部の環境部門責任者が参画する「サステナビリティ経営推進会議」で評価・特定しております。

評価・特定されたリスク・機会については、前述のサステナビリティ経営推進体制のもとで監督・モニタリングし、リスク・コンプライアンス委員会と問題を共有することで、組織の総合的リスク管理を統合しております。

 

 ④指標及び目標

温室効果ガス排出量削減目標として、スコープ1+2の排出量(海外拠点含む)削減を以下のとおり目指します。

2030年度 2013年度比で50%削減

     (売上収益1億円当たり排出量)

2050年度 カーボンニュートラル

     (排出量実質ゼロ)

 

また今後、お客様の商品使用段階における排出量削減も含めた環境配慮型機能性商品の開発や、資源循環への取組を推進し、スコープ3における排出量削減に関する開示についても検討してまいります。

 

(施策)

上記目標を達成するための施策として、再生可能エネルギーの利活用や、エネルギー効率の高い電気・ガス設備への入替え、当社グループ施設への熱遮断性の高い建築方法・建築素材の採用等、複数の施策を進めてまいります。また、これらの温室効果ガス削減につながる設備投資を促進するため、将来見込まれるカーボンコスト(炭素税・排出量取引等)を踏まえた投資判断を行うためのツールとして「インターナルカーボンプライシング(ICP:社内炭素価格)」を2023年度から導入しております。なお、再生可能エネルギーの利活用につきましては、一部ニトリ店舗にて太陽光発電の稼働を開始いたしました。太陽光パネルを設置した店舗で使用する分以上の電力を発電し、その余剰電力を当社グループの他店舗に供給する循環型の仕組みとなっており、順次、物流拠点も含めて拡大してまいります。さらに、当社グループのニトリ及び島忠の約300店舗に、実質100%再生可能エネルギーによる電気自動車用充電インフラを構築し、お客様の利便性向上に加え、温室効果ガスの削減にも貢献してまいります。

 

(進捗)

中間目標:   2030年度 2013年度比で50%削減(売上収益1億円当たり排出量)

2024年度進捗: 2013年度(売上収益1億円当たり排出量原単位 33.6t-CO2)比で43.2%削減

 

温室効果ガス排出量

単位

2013年度
(基準年)

2022年度

2023年度

2024年度

 グループ合計

t-CO2

183,904

226,082

202,223

177,438

 

スコープ1 国内

t-CO2

33,980

26,166

22,451

21,566

 

スコープ1 海外

t-CO2

244

5,831

4,499

5,628

 

スコープ2 国内

t-CO2

143,533

141,133

128,942

101.365

 

スコープ2 海外

t-CO2

6,147

52,952

46,331

48,879

原単位

t-CO2/億円

33.60

23.85

22.57

19.10

売上収益原単位削減率(2013年度比)

△ 29.0%

△ 32.8%

△ 43.2%

 

 

 ※当社及び連結子会社が対象範囲

  国内:店舗、物流拠点、本社本部、製造工場、その他自社が管理する施設

  海外:店舗、物流拠点、事務所、製造工場

 ※上記の売上収益の額は、日本基準に基づき算定した数値を使用しています。

 

(2)多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針

①ガバナンス

「第2 事業の状況  2 サステナビリティに関する考え方及び取組(1)気候変動に関する取組 ①ガバナンス」をご参照下さい。

②戦略

当社グループは、社会に貢献する真のスペシャリストの育成を目指し、幅広い領域での配転教育を通じて人材力を高め、「多数精鋭」の組織づくりの実現を目指しております。業界や職種の垣根を越えた課題解決が求められる現代において、幅広い知見と、幾多の専門性を組み合わせてイノベーションを起こせる人材の育成は不可欠です。当社グループは配転教育により個人が専門性の柱を増やし、広い視野から課題を解決に導ける「ニトリ型スペシャリスト」を継続して輩出してまいりました。この強力な”多数精鋭”の組織を強みに、今後も持続的な成長を目指します。

また、当社グループは従業員一人ひとりの人権を尊重し、職場におけるあらゆるコミュニケーションにおいて、多様性が損なわれないように調和を図り、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しております。結婚や出産、育児、介護や、国籍、LGBTQ等様々な事情や背景を持つ従業員が互いを認め合い、尊重し合える企業文化を醸成することで、働きがいのある環境が生まれ 企業の成長にもつながると考えております。今後も中長期経営戦略の実現に向けて、多様な人材が個々の力を最大限発揮できる環境の整備を進めてまいります。

 

Ⅰ.人材採用の取組

当社グループは、“製造物流IT小売業”という独自のビジネスモデルを確立し、商品の企画・開発から製造、

物流、販売、IT活用に至るまで一貫して自社で担うことで、他にはない価値をお客様に提供してまいりました。この体制のもと、「63部署100職種以上」に及ぶ幅広い活躍フィールドを有し、多様な人材が力を発揮できる環境を整えています。

採用活動においては、当社グループのビジネスモデルや企業風土を早期に知っていただく機会として、インターンシップの充実に努めてまいりました。このプログラムを通じて、ニトリグループへの理解を深めるとともに、自らのキャリアを主体的に描き、多様なフィールドで成長し続ける意欲ある人材を積極的に採用しています。今後も、インターンシップをはじめとする多様な採用活動を通じて、当社グループの「ロマン(志)」に共感し、新たな未来を切り拓く人材の獲得に取り組んでまいります。

 

Ⅱ.人材育成の取組

<教育体系> 

未来を担う人材が長く働き続けられること、それが企業の成長につながることが重要だと考えています。その起点となる人材教育では、配転教育や『ニトリ大学』という独自の教育体系のもと、多数精鋭のスペシャリスト体制強化に向けて人材育成に取り組んでおり、教育投資額は上場企業平均の5倍以上です。ニトリ大学では、創業者の原点であるアメリカでの感動を体感するアメリカセミナーをはじめ、配属前全体研修、新人研修(1年目)、年次別若手研修(2・3年目)、さらに部署別・職位別研修等、キャリアステップ毎に多彩なカリキュラムを用意しています。また、現場ではNWC(Nitori group World Circle)という小集団活動を通じて、日々の業務の中で問題点の発見、原因推定、対策立案、実験・検証を繰り返し、現場主導の改善・改革を経営陣に直接提言できる機会も提供しています。

   

<グローバルチェーン展開の加速>

グローバル展開を加速する体制を早期に整えるために、現地新卒の積極的な採用とともに、ナショナルスタッフの人材育成の加速化を図っています。グローバルチェーン化における人材育成の重要課題は、ニトリグループの特徴であり、最大の強みである「ロマン(志)」を共有し、一人ひとりと確実な目線合わせを行うことです。そのため、日本国内と同様の教育体系を海外拠点にも構築しています。さらに、ナショナルスタッフ向けの日本研修を行い、店舗・物流拠点の視察を通じて、日本と現地の違いを学びながら「観察・分析・判断」の企業文化を体得できる機会を提供しています。こうした取組により、同じ志を持ち、現地で自律的に改革を進められるグローバル人材の輩出を加速しています。

 

<グローバル展開を見据えたIT・DXによるビジネス基盤改革>

グループ全体のDXを推進することを目的として、2022年4月に株式会社ニトリデジタルベースを設立し、現在は2032年までに社内のIT人材を1,000人以上に増やす計画を進めています。独自の"製造物流IT小売業”というビジネスモデルを支える基盤として、ITの自社内製化に30年以上前から取り組んできました。今後、グローバル展開をさらに加速するため、ITシステムの 強化と新たな仕組みづくりに注力してまいります。また、IT人材育成においては、専門スキルの習得はもちろん、原則全てのIT人材が店舗や物流部門での現場勤務を経験することで、現場での知識や現場視点の問題解決力を培っています。また、非IT部門からのIT人材化も推進しており、基礎から最新技術まで段階的に学べる教育プログラムを用意すると同時に、社員のITリテラシーを高めることも非常に重視しており、プロジェクトでは、選抜制・挙手制・全員で取り組むもの等、それぞれのプロジェクトの特性に合わせて様々なアプローチで要員を集め、多くの従業員がITやDXに対して積極的に関わることができる体制を整えています。

 

Ⅲ.ダイバーシティの推進

<ワークライフバランスの推進>

■女性活躍推進

当社グループの管理職における女性比率は増加傾向にあり、㈱ニトリと㈱島忠を合計した管理職に占める女性労働の割合は18.8%となっています。ライフイベントの到来等の個々の事情を踏まえ、女性管理職ポストの拡大、短時間勤務で活躍可能なポストの拡充、より利用しやすい支援制度の実現等について、全従業員を対象としたアンケートや、取締役を交えた定期的な討議を実施しています。また、従業員のワークライフバランス向上を目的として、2023年には転勤なし・報酬の減額なしの「マイエリア制度」を導入する等、多様な働き方選択ができるように様々な取組を行った結果、2025年3月には厚生労働省が女性活躍推進に積極的に取組を行っている企業として、「えるぼし認定(3段階目)」を取得しました。今後も女性のキャリア形成を支える環境整備を進め、2040年までに女性管理職比率を40%程度まで高めることを目指します。

 

■育児両立支援

男女を問わず育児休業を取得できる風土の醸成に取り組んでおり、店舗従業員を含む男性労働者の育児休業取得率は77.2%に上り、年々増加しています。2023年には全社員を対象に一日の労働時間の下限を6時間から4時間に引き下げたことで、選択してシフトを組むことができるようになり、これまで以上に柔軟な働き方ができる環境となりました。

 

<定年後再雇用制度>

当社グループでは、「暮らしの豊かさを世界の人々に提供する。」ため豊富な経験と知見を持ったシニア人材の活躍は不可欠と考え、再雇用制度の拡充及び処遇の見直しを実施しました。再雇用制度の拡充では、従来65歳と定めていた継続雇用期間を、当社の基準を満たす場合は70歳へ拡大し、報酬水準は定年前と比較して最大9割維持しています。

   

<障害者活躍支援>

当社グループは、障害者雇用を重要な社会的責任と捉え、多様性を尊重しながら、全ての従業員が能力を発揮できる環境づくりに努めています。職場における合理的配慮を徹底し、個々の特性に応じた業務を提供することで、働きがいを感じられる職場を実現しています。障害者雇用比率は、厚生労働省が定める2.5%以上に対し、既に3.08%となっています。今後も誰もが活躍できる持続可能な社会の構築に貢献してまいります。   

   

<従業員エンゲージメント調査>

従業員一人ひとりがニトリグループのロマン(志)とビジョンに共感し、自発的に力を発揮することで、グループ全体の活性化と成長につなげるため、全社員を対象とした「従業員エンゲージメント調査」を半年に1回実施 しています。2024年度下半期の調査結果では、全体満足度82.5%となりました。(昨年度同時期比+1.1ポイント)引き続き、調査結果については、エンゲージメントの視点で課題を発見・分析し、その改善・改革へとつなげていくと同時に、調査を継続してまいります。

 

Ⅳ.社内環境整備の取組

<健康経営体制>

当社グループは、ロマン(志)とビジョンの実現には、従業員の健康が不可欠であると考えております。 2016年4月1日に健康経営宣言を行い、会社・労働 組合・健康保険組合・各部との連携により、健康経営推進に向けた対応を行っており、 従業員と家族が健康的で幸せな生活を営めるよう、これからも支援してまいります。

     

<適正な労働時間の確保>

当社グループでは、ワークライフバランスを推進しており、長時間労働が発生しないような仕組みづくりをしています。例えば、勤務間インターバルの導入や、本社・本部一斉消灯等の実施により従業員の健康確保・ワークライフバランスの充実・時間を意識した仕事による生産性の向上を目指しています。こうした取組が評価され、2018年より「ホワイト企業認定」を取得し、2021年からは最高位のプラチナに認定されています。また、2023年度には、健康経営部門でホワイト企業アワードを受賞いたしました。

 

③リスク管理

当社グループのリスク管理体制に、人的資本に関するリスクも含まれます。

リスク管理の詳細は、「第2 事業の状況  3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

3 【事業等のリスク】

⑴当社のリスクマネジメント体制

当社は、当社グループ内で発生し得る様々なリスクに対し、発生防止と適切なリスク対応を行うため、2009年に「リスク管理規程」を定め、当社グループの企業価値にマイナスの影響を及ぼす恐れのあるリスクを軽減するため、当社代表取締役社長を最高責任者とし、各グループ会社の社長等を各社のリスクマネジメント責任者とする全社横断的なリスクマネジメント体制を確立しています。

また、全社的なリスクマネジメントの向上を図ることを目的に、「リスク・コンプライアンス委員会」、「サステナビリティ経営推進委員会」を設置し、討議部門である「社内役員会」等で審議することにより、それぞれが関係するリスクを管理し、当社グループに影響を及ぼすリスクの特定と評価を定期的に実施しております。

<ガバナンス体制図>


具体的な活動として、「リスク・コンプライアンス委員会」は、企業価値毀損の未然防止・最小化の視点から、当社グループ全体に内在するリスクとその状態を把握し、当社グループ全社のリスク対策方針の決定や各種ガイドライン設計を行うとともに、毎年当社グループリスクリストを見直しております。当社取締役会は、リスク・コンプライアンス委員会の取組の進捗状況に応じた助言等を行い、(4)重要な事業リスクに記載するリスクを中心に議論の上、リスク対策の検討を行っております。

 

<リスクマネジメント体系図>


「サステナビリティ経営推進委員会」は、気候変動をはじめとする環境・社会課題に対し、リスクと機会の観点から、国内のみならずグローバルでのESG課題への対応を進め、ビジネスモデルのレジリエンス強化と企業としての社会的責任を果たすため、各マテリアリティの目標を達成するための取組を実施しております。当社取締役会は、サステナビリティ経営推進委員会の取組の進捗状況に応じた助言等を行い、当社グループとしての方向性と対応策等を決定しております。

これらの活動の他に、3つのディフェンスライン(グループ会社事業部門等を第1ディフェンスライン、グループ各社の管理部門と機能会社を第2ディフェンスライン、内部統制部門を第3ディフェンスライン)の考え方で、個々のリスク管理の担当と役割を定め、現場と経営層がリスク情報を共有するガバナンス体制を構築しています。

 

⑵当社のクライシスマネジメント体制

当社グループでは、大規模な災害や事件・事故等のインシデントが現実に発生した場合に備えるため、2008年に「危機管理規程」を制定し、企業価値の損失を最小限に抑制することを目的に、BCP基本方針を定めております。

その基本的な行動指針は、以下のとおりです

1.『お客様、従業員、地域住民の人命尊重を最優先します。』

2.『危機発生時においては、可能な限りの安全確保を行い、地域社会貢献のための事業継続を速やかに再開します。』

また、重大インシデント発生時には、当社リスク対策担当執行役員が本部長となる「災害復旧対策本部」又は「事件・事故対策本部」を立上げ、初期対応を円滑に進めることで、グループ経営に及ぼす影響を最小限にとどめる体制を整えております。

なお、被害の規模が大きい非常事態の場合は、当社代表取締役社長が本部長を担うこととしております。

 

<クライシスマネジメント体制図>


 

⑶リスクマネジメント評価体制

当社グループは、各グループ会社における自律的なリスク管理を基本とし、その中でもリスクの対応状況について、当社取締役会の事前審議機関となる社内役員会等が定期的に監督しております。

また、リスク・コンプライアンス委員会は、年度毎の経営環境の変化に対して、特に影響が大きい(又は大きくなる可能性の高い)リスクを「重要リスク」として特定し、社内役員会にて討議の上、当期のグループ重要リスクとして選定しており、そのプロセスは、次のとおりです。

 ①リスクの特定・・・時期:7月~9月、全社リスクの網羅的な洗出し

 ②リスクアセスメント・・・時期:10月~11月、各社各部署のリスクマネジャーによるセルフ評価

 ③「重要リスク」の特定・・・時期:12月、重要リスクの選定、社内役員会の事前審議による当社取締役会報告

 ④重要リスク対策の策定・・・時期:1月~3月、次年度リスク対応計画策定

⑤対応計画の推進・モニタリング・・・時期:翌年度、リスク対策実施状況の四半期評価、半期・期末のモニタリング

なお、当社取締役会は、リスク・コンプライアンス委員会からの報告内容を議論の上、年間目標を決定しております。

 

<リスク評価プロセス>


上記、リスク評価プロセスに基づき、特に当社グループの企業価値の損失影響の高いリスクを「重要リスク」としております。2024年度における当社グループが対策を行った「重要リスク」は次のとおりです。

<重要リスク>

①自然災害リスク

②火災・爆発リスク

③情報セキュリティリスク

④製品事故・製品不良リスク

⑤海外法令違反リスク

⑥地政学リスク

なお、各社事業部門や各社管理部門における年度経営計画のコミットメント達成を阻害する可能性があるリスクで、「重要リスク」として選定されないリスクについては「機能別リスク」と定め、当該年度に重点的に取り組むものは各社各部署のコミットメントとしてリスク対策のPDCA体制が継続的に行われるように管理を強化しています。

<リスクマップ>


⑷重要な事業リスク

経営者が当社グループの業績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、次のとおりです。

ただし、これらは当社グループにかかる全てのリスクや不確実性を網羅したものではなく、現時点において予見できない、あるいは重要とみなされていない他の要因の影響を将来的に受ける可能性があります。

当社グループを取り巻くリスクや不確実性に関して、当社グループでは取締役会の事前審議機関となる社内役員会等において定期的に議論し、これらのリスクや不確実性を機会として活かす、あるいは低減するための対応を検討しています。その検討結果は、取締役会へ報告・議論されており、以下に記載したリスクや不確実性には、取締役会における議論も反映しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

①為替変動に関するリスク

当社グループは、「使う・買う」立場に立って、全ての商品で「お、ねだん以上。」の実現を目指すため、商品の約90%をプライベートブランドとして開発輸入しております。そのため、外貨建取引について為替予約の実行や、輸入為替レートの平準化を図ることで、仕入コストの安定化を推進しておりますが、各国基軸通貨に対して、米ドル高が急激に進む場合、為替相場の変動が当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対して、当社グループは外貨建取引について為替予約の実行や、海外子会社においては決済通貨を米ドルにすることで、相対的に為替変動を抑えるように努めております。

また、「デリバティブ基本方針」に基づき、為替予約を利用したヘッジ取引を機動的に行うことで対応するとともに、当社取締役会にて情報の共有化とモニタリングを実施しております。

 

②商品の海外調達に関するリスク

当社グループは、適正な品質を維持しながら、どこよりも安い価格で商品を提供するため、販売する商品の大半を、中国大陸をはじめとするアジア諸国等にて生産し輸入しております。そのため、地震、風水害等大規模な自然災害の発生等により、商品供給体制に影響を及ぼすほか、アジア諸国の政治情勢、経済環境、治安状態、法制度に著しい変動があった場合、工場従業員や港湾従業員によるストライキの発生、主要な取引先等を含む、サプライチェーンの寸断等による物流の停滞や社員の避難等により、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対して、当社グループは安定した調達を継続するため、商品毎に生産国の見直しや産地分散、複数のサプライヤーから調達可能な体制を構築しております。危機発生時には、調達先の現状と納入可否の確認を実施するとともに、代用可能な採用実績のある他社相当品への切り替えを検討することで影響を最小限に留めるよう努めております。

 

③品質に関するリスク

当社グループは、販売する商品について独自の厳格な品質基準に基づき、品質不良や不具合の発生防止を含め、商品の品質確保に万全な対策を講じておりますが、全ての商品において、予想できない品質問題の発生可能性があり、品質問題に起因する当社グループのブランドイメージの低下や社会的信用の失墜による売上収益の減少や対策コストの発生等、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対して、当社グループは品質保証を所管する組織を設置し、独自の厳格な基準に沿った調査を行った上で取引先の工場を選定しております。また、2020年の珪藻土関連商品リコール事案の反省から、使用制限物質リストの刷新を行い、商品への対象物質の使用禁止・含有規制を徹底しております。さらに、「原材料安全性の確認」、「規制・基準などの遵守」、「工場管理体制の監視と指導」の3項目等、商品開発に関わる部署と合同で確認する「企画設計評価会」を2021年2月に設立しております。

また、新素材・新機能を伴う商品については、この評価会を経ずには商品化されない仕組みとした上、商品の使用上の安全性を確認する「開発技術評価会」と並行して行うことで品質問題の未然防止に努めております。その他の取組として、製造物責任賠償保険に加入する等の対策を講じております。

 

④知的財産に関するリスク

当社グループでは、第三者の知的財産権を侵害することのないように常に注意を払っておりますが、万が一、当社グループの事業活動が第三者の知的財産権を侵害した場合、第三者から当該事業活動に対する中止要請や、損害賠償を請求されることにより、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対し、当社グループは国内外で自らが使用するロゴ等の商標登録や、商品等を意匠登録することにより対策を講じております。また、知的財産権に対する従業員教育等を徹底することにより、未然防止体制の整備・運用改善を図っております。

 

 

⑤人材に関するリスク

当社グループでは、製造物流IT小売業としての優位性を確保するため、人材採用と人材育成が重要となります。今後の事業拡大や事業環境変化への対応のためには、多様な社員が活躍するダイバーシティ経営の推進が、中長期ビジョンの実現に向けて経営の重要課題であり、優秀な人材の確保がなかった場合、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、代表取締役 似鳥 昭雄、白井 俊之をはじめとする経営陣は、各担当業務分野において重要な役割を果たしているため、これら役員が業務執行できない事態となった場合には、同様に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対して、当社グループは優秀な人材の確保に向け、多様な人材が活躍し、多様な働き方が実現できるよう労働環境の改善及び整備等、当社グループの魅力を高める取組に努めるとともに、役員の業務分掌の見直しや、次期役員候補の育成等の施策に加え、業務の省力化、省人化を実現する先端技術の活用をする等、効率化を図っております。

さらに、当社グループは人権侵害や差別・ハラスメントにつながる行為を禁止するとともに、日々の活動において人権を尊重することがグループの事業活動の基盤であり、持続的な成長のために必要不可欠であることを示すために、「ニトリグループ人権ポリシー」を定め、グループ全体への周知・啓蒙活動に取り組んでおります。

 

⑥気候変動に関するリスク

当社グループでは、気候変動により近年発生が増加傾向にある台風、集中豪雨等の異常気象により、当社グループが商品を生産・調達・流通・供給する業界が甚大な被害を受けた場合、その復旧まで生産もしくは出荷が長期間にわたり停止する可能性があります。また、冷夏、暖冬、長雨等による異常気象により、商品供給への影響が発生する場合、及び季節的な要因による販売状況が左右される商品の取り扱いが多く、売れ行き不振や販売シーズンの経過による商品価値の下落が発生する場合には、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対して、当社グループは安定した調達を継続するため、複数のサプライヤーから調達できるように取組を進めており、商品力の強化や商品企画・投入時期の見直しで販売比率を向上させること、及びお客様のニーズに即した商品販売時期の適正化による消化率の向上や在庫の適正化により、収益性の改善を図っております。

さらに、当社グループは、気候変動に関する対応を重要な経営課題と捉え、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明するとともに、その枠組みに沿って、2030年度時点、2050年度時点の温室効果ガス排出量削減目標を設定しております。温室効果ガス発生の低減に努めるとともに、共同輸送やモーダルシフト等グリーンロジスティクスの推進を通じて、サプライチェーンにおけるCO2削減への貢献に努めてまいります。また、具体的な対策につきましては、当社代表取締役社長を委員長とした「サステナビリティ経営推進委員会」と各事業会社の部門責任者を構成員とする「サステナビリティ経営推進会議」において、今後も検討を重ねてまいります。

 

⑦自然災害・大規模事故等に関するリスク

当社グループでは、日本全国に830店舗以上、また海外においては中国大陸に90店舗以上、台湾に60店舗以上、さらにマレーシア、シンガポール、タイ、韓国、ベトナム等のアジア諸国へ出店を果たしております。その他アジア諸国に商社機能・製造機能・物流機能を有しており、これらの地域において、大規模な自然災害により店舗、製造工場、物流センター等の設備や棚卸資産、人的資源等に被害が発生した場合には、営業活動に支障が生じ、復旧等のコスト発生により、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対して、当社グループは事業継続計画(BCP)や毎月実施しているリスク・コンプライアンス会議にて、管理体制の整備・構築と運用の遵守・徹底を図っております。また、危機発生時に備え、従業員等の安全確保・安否確認等の初動対応フローの見直し、定期訓練や必要物資等の備蓄対策を実施するとともに、あらゆる事象を想定したリスク・影響度分析に基づく、継続的なPDCAサイクルの実施等、包括的なリスクマネジメント活動を推進し、各種危機に備えております。

 

⑧感染症及びパンデミックに関するリスク

新型感染症の発生や感染症の世界的流行が発生した場合、国内外の経済活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。最大のリスクは、お客様、従業員、お取引先様が健康被害を受けてしまうことですが、それによる事業の中断や社会的信用が失墜する可能性があるために、当社グループでは、従業員の安全と商品の安定供給を引き続き確保するため、感染症対策に伴う事業環境の急変に最優先に対応しております。その感染拡大等の状況次第では、経済活動がより一層停滞し、需要の減退、サプライチェーンの混乱、当社グループの生産活動への悪影響等、当社グループが事業展開する上で、重大なリスクにつながる可能性があり、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対し、当社グループは海外子会社も含むグループ全体の日常の感染症対策として、手洗い消毒・マスク着用等の衛生対策のほか、WEB会議の活用等の対策を徹底しております。また、販売対策として、Eコマース強化、店舗の非接触化・接客省人化、ショートタイムショッピングの推進、OMO(Online Merges with Offline)推進等、消費者の買物に対する意識変化を見極めながら、お客様が安心して買物できる環境の整備に努めております。

 

⑨情報セキュリティに関するリスク

当社グループでは、製造物流IT小売業という一気通貫のビジネスモデルを活かす独自のIT開発を行っており、そのノウハウ管理や多くの個人情報を取り扱うため、社内管理体制を整備してその取扱を厳重に行っておりますが、万が一、コンピューターウイルスやサイバーテロ、従業員や委託先の管理ミス等の要因により、社内情報や個人情報の漏洩等が発生した場合には、当社グループのブランドイメージの低下や社会的信用の失墜による売上収益の減少が考えられ、法的な責任の追及によるコストの発生等、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対して、当社グループは「情報セキュリティ基本規程」に基づく積極的な情報セキュリティ活動(教育訓練含む)を展開するとともにセキュリティ関連の情報収集に努め、より高度なコンピューターウイルス対策の実行、基幹系サーバの二重化等の適切なIT管理体制の構築に取り組んでおります。さらに、不正アクセスが発生したことから、対象となるお客様のアカウントへのパスワードリセット及びパスワードの使いまわしをしないことに関する周知等を実施するとともに、通販等の公開システムの監視の強化、アプリケーションのセキュリティ機能強化を行っております。

 

⑩M&A、事業提携に関するリスク

当社グループでは、事業拡大及び企業価値向上のためにM&A及び事業提携を日々検討しております。特にこれらの経営戦略を実施する場合は、対象会社への十分なデュー・デリジェンスを実施するとともに、取締役会等にて、出資・取得価額の妥当性について十分に検討した上で実行することとしております。しかしながら、当該M&Aや資本提携等実施時に見込んだ成果が計画どおりに進捗しないこと等によるのれんや株式取得価額の減損等、当初予期していなかった事業上の問題の発生、取引関連費用の負担等によって当社グループの事業、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性がある場合、公表している中期経営計画の見直しを行う可能性があります。

 

⑪コンプライアンスに関するリスク

当社グループでは、コンプライアンスを最優先とした経営を推進しております。しかしながら、商品・サービスや労働・安全、サプライチェーン全体におけるコンプライアンス上のリスクを完全には回避できない可能性があり、各種法令に抵触する事態が発生した場合、当社グループのブランドイメージの低下や社会的信用の失墜による売上収益の減少が考えられ、発生した事象に対する追加的な費用の発生等により、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対して、当社グループはグループ経営の健全性を高めるため、グローバル共通の基本的な姿勢・行動の指針となる「ニトリグループ行動憲章」を改定し、昨今の社会情勢や価値観に応じた見直しを実施いたしました。さらに、各従業員が「ニトリグループ行動憲章」の内容を具体的な行動に落とし込むための、各種ポリシー・方針を制定しております。当社グループが進出する国・地域にて勤務する従業員の一人ひとりが実践でき、日々の業務の中で迷ったら立ち返ることができる指針となるよう、海外子会社を含むグループ全体への周知・啓蒙活動を、各国・地域の言語にて実施しております。

また、様々な目的の情報が開示される中、公開される文書やナレーション、映像や画像等の表示物に対するコンプライアンスリスクを回避するため、表示物の作成に関連する全ての部署に表示管理責任者を設置いたしました。表示管理責任者が、表示物作成におけるルールの整備について部署を横断して検討・議論できる場として、表示分科会を開催する等、表示管理体制の整備に取り組んでおります。

また、適正な表示指針を示した「ニトリグループ表示ガイドライン」を制定し、販売手法の多様化や消費者意識の高まり等の社会環境の変化に合わせ、適宜、改定を行っております。

このほか、従業員へのコンプライアンス教育の実施、グループ内部通報制度及び協力会社・パートナーに対するアンケートを通じた不適正事案の早期発見と適切な対応等、グループガバナンスの強化に取り組んでおります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

当社グループは当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)より、従来の日本基準に替えてIFRS会計基準を適用しており、前連結会計年度の数値をIFRSに組み替えて比較分析を行っております。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日)における我が国経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されておりますが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクが高まっております。加えて、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども、我が国の景気を下押しするリスクとなっております。また、金融資本市場の変動等の影響にも一層注意する必要があります。

家具・インテリア業界においては、業種・業態の垣根を越えた販売競争の激化や、人手不足による人件費の高騰や原材料価格の上昇などにより、依然として厳しい経営環境が続いております。

当連結会計年度における主な経営成績は次のとおりであります。

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減額

(百万円)

増減率

(%)

売上収益

896,667

928,828

32,160

3.6

営業利益

124,274

117,665

△6,609

△5.3

(利益率)

13.9%

12.7%

 

 

親会社の所有者に帰属する
当期利益

90,158

82,546

△7,612

△8.4

 

 

セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減額

(百万円)

増減率

(%)

ニトリ事業

売上収益

786,306

820,886

34,580

4.4

(外部顧客への売上収益)

777,703

809,684

31,980

4.1

セグメント利益

128,638

118,975

△9,663

△7.5

島忠事業

売上収益

119,263

119,596

333

0.3

(外部顧客への売上収益)

118,964

119,143

179

0.2

セグメント利益

△4,376

△1,288

3,088

△70.6

 

 

① ニトリ事業

国内の営業概況といたしましては、当連結会計年度において、ニトリ24店舗、デコホーム15店舗を出店いたしました。当連結会計年度は、新たな商品開発により、お客様の欲しいをかたちにする「需要創造」をテーマに取り組んでまいりました。TVCM本数を前連結会計年度の58本から当連結会計年度は65本に増やし、重点販売商品を中心に取り上げ、該当商品を期間限定値下げ価格でご提供、店舗やECと連携して売場と接客サービスを準備しお客様へご提案させていただきました。結果として、ドラム式洗濯乾燥機やNウォームBOXパッドなど多くのヒット商品を創造し、お客様からご支持をいただくことができました。

販売促進施策といたしましては、より多くのお客様にご満足いただくために、最大2,200アイテムを期間限定値下げ価格でご提供する「新生活応援キャンペーン」を実施いたしました。結果として、たんす1台分の大容量収納でベッド下のデッドスペースを有効活用できるチェストベッド「ジオ」、カーテンを変えるだけでお部屋が華やかに変わる「ジャカードカーテン」などの売上が好調に推移し、前年を上回る販売実績となりました。また、家電商品をご購入いただいた際、一定の条件で平日配送料金が無料となる「家電キャンペーン」も実施いたしました。さらに、家電販売促進のためのTVCMや、商品発表会の開催をはじめとするマーケティング活動の強化を実施いたしました。加えて、より多くのお客様にニトリの家電を安心してご使用いただきたいという思いから、49,900円(税込)以上の大型家電を、5年保証付きでの販売といたしました。結果として、ドラム式洗濯乾燥機やコードレススティッククリーナーなどの販売実績が好調に推移しております。今後も、ソファやベッドなどの大型家具、布団やカーテンなどのソフト商品、食器や収納ケースなどのハード商品に次ぐ「第4の柱」として家電を育成してまいります。

売上原価につきましては、円安の進行に起因する輸入コスト上昇の影響を受けましたが、円安でも利益を確保できる商品を開発し、順次入替を進めております。販売費及び一般管理費につきましては、積極的な人材採用と賃金改定による人件費の増加、新DCにかかるコストなどにより前年より増加いたしましたが、不要不急な経費の削減を強く推し進めております。

物流施策といたしましては、川上から川下までの物流機能の全体最適の実現を目的とした物流戦略プロジェクトを推進し、DC拠点の最適配置と機能集約を進めております。当連結会計年度において、コスト削減と生産性向上を戦略目標として、幸手DC・名古屋DCの稼働と仙台DCの一部稼働を開始いたしました。また、株式会社ホームロジスティクス(物流子会社)と株式会社エディオンは、川崎から仙台への家電の幹線輸送において、両社の物流効率の向上と環境負荷軽減を目的とした共同配送による協業を開始いたしました。さらに、物流2024年問題におけるドライバーの労働力不足への対策や、環境負荷軽減と物流効率改善を目的として、配送センター間長距離輸送においてダブル連結トラックの運行を開始しております。

海外の営業概況といたしましては、当連結会計年度において台湾8店舗、中国大陸23店舗、香港2店舗、韓国3店舗、マレーシア1店舗、シンガポール2店舗、タイ5店舗、ベトナム2店舗、フィリピン4店舗、インドネシア3店舗、インド1店舗の合計54店舗を出店いたしました。フィリピン、インドネシア、インドにつきましては、新規出店国となっております。また、中国大陸を中心に、出店基準の見直しを進め、不採算店舗の撤退や、より良い立地への移転等を実施することで、収益性改善策を進めております。中でも、上海中山公園店につきましては、より集客力の高い上海中山公園龍之夢店へ移転を行うことで、坪効率が大幅に改善しております。未出店の国・地域も含め、店舗網の積極的な拡大を今後も迅速に進めるために、日本で培ったノウハウを各国に展開し、現地スタッフを早期に育成する計画を進めております。

海外の販売促進施策といたしましては、台湾において、2024年10月4日にデコホーム店舗の海外初となる「DECO HOME 高雄漢神アリーナ店」を出店し、海外でもデコホーム事業の展開を開始いたしました。同店舗では、デコホームオリジナルアイテムや普段使いの日用品、お部屋のアクセントになるようなインテリア雑貨などを取り扱っており、お客様よりご好評をいただいております。また、BOPIS(ネットで購入して店舗で受け取るサービス)の導入を開始し、ECサイトと店舗との相互送客の実現や、自社サイトと台湾の外部各社通販サイトにて「W11キャンペーン」などを開催することで、売上対策をしてまいりました。中国大陸においては、坪効率の高い分類の品揃え強化を目的とした店舗改装を実施し、営業利益対策を進めております。香港においては、キッチン家具の空間コーディネート提案の強化や、低価格で高機能なプライベートブランド(以下、「PB」という。)の開発力を活用し、ペット用品を競合他社の3分の1以下の価格で販売するなど、売上対策を進めてまいりました。そして、2024年12月19日に、旗艦店となる、売場面積約1,000坪の湾仔合和商場店を出店いたしました。韓国においては、現地のメディアを通じた広告活動によってニトリ会員を増やし、ブランドの知名度を向上させる取組を継続しております。また、その他の国・地域においても、お客様との関係性構築と買い物利便性向上の取組に努めてまいりました。

海外事業の物流施策といたしましては、経費対策として、現地調達品の商流見直しをいたしました。中国大陸と香港、ベトナムにおいては、工場からDC経由で納品されていた商品を、工場から直接店舗に納品できるようにすることで、輸送コスト及び保管コストの削減を実現しております。

 

② 島忠事業

営業概況といたしましては、「新生活応援キャンペーン」を実施いたしました。日用消耗品やペットフードなど最大1,400アイテムを期間限定値下げ価格としたことで、売上が好調に推移いたしました。さらに、PB商品の開発と販売強化を進めており、特に好調な自転車においては、「NH-504」、「NH-505」等につきまして、売上収益及び粗利益高が、ともに前年を上回る結果となっております。また、新規品種である衣料品「Neasy」について、展開店舗を39店舗に拡大するとともに、一部店舗にて実施している衣料品・かばん回収活動においてクーポンを配布するなどの販売促進活動を行った結果、売上が好調に推移しております。テナント事業においては、大型テナントの誘致や契約満了時の更新対策、定期賃貸借契約の見直しを通じて、集客力向上と収益性改善を行っております。

販売費及び一般管理費につきましては、賃金改定による人件費や、TVCM本数とデジタル広告件数増加に伴う広告宣伝費等の増加により、前連結会計年度を上回る結果となりました。また、ニトリとの物流システム統合による家具配送コスト削減などの経費抑制策を進め、粗利対策と経費対策を強化しながら必要な投資を行ってまいります。

今後の売上対策といたしましては、アプリを活用した販促の拡大と、集客力向上を目的とした既存店の改装を進めてまいります。粗利益改善対策といたしましては、さらなるPB商品の開発と販売強化を目的として、商品開発の人員を増やし、棚割りや展示方法の見直しも進めてまいります。

今後もお客様の暮らしに密着した「お、ねだん以上。」のPB商品の開発を拡大し、商品力の強化を図り、地域のお客様に快適な暮らしを提供してまいります。

 

2025年までの目標として設定した指標の進捗は次のとおりであります。

 

2025年の目標

当連結会計年度実績

グループ合計

買上客数(年間)

2億人超

1億49百万人

店舗数(期末)

1,400店舗

1,048店舗

日本国内

アプリ会員(期末)

2,500万人

2,256万人

EC売上高(年間)

1,500億円

954億円

 

 

店舗の出退店の状況は次のとおりであります。

 

2024年3月31日

店舗数

出店

退店

2025年3月31日

店舗数

 

 

ニトリ(EXPRESS含む)

556

24

14

566

 

 

デコホーム

174

15

17

172

 

 

Nプラス

38

10

44

 

国内小計

768

49

35

782

 

 

台湾

61

68

 

 

中国大陸

95

23

18

100

 

 

香港

 

 

韓国

 

 

マレーシア

11

12

 

 

シンガポール

 

 

タイ

10

 

 

ベトナム

 

 

フィリピン

 

 

インドネシア

 

 

インド

 

海外小計

179

54

20

213

ニトリ事業

947

103

55

995

島忠事業

54

53

合計

1,001

103

56

1,048

 

 

当社グループは、2025年2月12日付けで、ロマン(志)の改定を行いました。従来、「住まいの豊かさを世界の人々に提供する。」としていたロマン(志)を、「暮らしの豊かさを世界の人々に提供する。」に改定しております。

当社グループは、家具の販売を原点に1967年に創業して以来、お客様に豊かな暮らしを提供することを一貫して目指し、家具のみならず寝具やカーテン、装飾用品や生活用品も含めたホームファニシング事業へと拡大してまいりました。近年では、家電やペット用品などにも注力するほか、アパレル事業やホームセンター事業を通じ、お客様の暮らしをより豊かなものにするべく、その提案の幅を広げております。世界の人々が本当の暮らしの豊かさを心から楽しめる社会の実現に貢献し、グループとして持続的に発展していくことを目指してまいります。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

ニトリ事業

809,684

4.1

島忠事業

119,143

0.2

合計

928,828

3.6

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(3) 財政状態

流動資産は、現金及び現金同等物が180億22百万円、棚卸資産が72億50百万円、それぞれ増加した一方で、営業債権及びその他の債権が106億37百万円減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ187億96百万円増加いたしました。非流動資産は、建物及び構築物の増加等により有形固定資産が910億33百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ993億31百万円増加いたしました。これらの結果、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,181億28百万円増加し、1兆5,294億21百万円となりました。

流動負債は、短期借入金が655億81百万円、未払法人所得税等が17億77百万円、それぞれ増加した一方で、営業債務及びその他債務が253億25百万円減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ390億83百万円増加いたしました。非流動負債は、その他の金融負債が174億10百万円、引当金が73億68百万円それぞれ増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ140億13百万円増加いたしました。これらの結果、当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ530億96百万円増加し、6,236億84百万円となりました。

資本は、当期利益825億48百万円の計上等により、前連結会計年度末に比べ650億31百万円増加し、9,057億36百万円となりました。

 

(4) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動によるキャッシュ・フローにより1,443億84百万円増加し、投資活動によるキャッシュ・フローにより1,278億56百万円減少し、財務活動によるキャッシュ・フローにより12億95百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ180億22百万円増加し、1,360億1百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果獲得した資金は、1,443億84百万円(前連結会計年度は1,811億64百万円の獲得)となりました。これは主として、税引前当期利益1,174億48百万円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果支出した資金は、1,278億56百万円(前連結会計年度は1,331億7百万円の支出)となりました。これは主として、有形固定資産及び投資不動産の取得による支出1,214億32百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動の結果獲得した資金は、12億95百万円(前連結会計年度は553億78百万円の支出)となりました。これは主として、短期借入金の純増減額(△は減少)826億65百万円及びリース負債の返済による支出373億19百万円長期借入金の返済による支出273億30百万円並びに配当金の支払額167億15百万円によるものであります。

(資本の財源及び資金の流動性)

当社グループの主な資金需要は、商品仕入や販売費及び一般管理費等の運転資金及び出店や物流施設、工場拡張、システム投資等の設備投資資金であります。これらの資金需要につきましては、主に自己資金により賄うことを予定しておりますが、2032年の目標店舗数3,000店舗に向け、今後のM&A等を検討する場合に借入や社債発行等の資金調達が機動的かつ低コストで行えるよう、充実した内部資金を元とした健全な財務基盤を構築・維持することが重要であると考えております。

 

(5) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況

世界情勢の不確実性の高まりや、日本国内の人口減少・少子高齢化・単身世帯や共働き世帯の増加・低所得化の進行、テクノロジーの進化による購買行動や価値観の多様化等、大きなビジネス環境の変化に直面しています。

当社グループにおいては、独自のビジネスモデルである「製造物流IT小売業」を通じ、社会における共有価値を創出し相互繁栄を図ってまいります。既存事業における魅力ある品揃え・品質・価格の実現、ホームセンター事業におけるローコストオペレーションの実現、グローバル展開の加速を進めてまいります。また、お客様から支持し続けていただけるよう、変容する消費者ニーズ・ウォンツに対応した商品の開発や、変わりゆく消費者の買い方に応じた販売方法に変革をしてまいります。

次期の連結業績見通しは、次のとおりであります。

 

次期予想

当期

増減額

増減率

売上収益(百万円)

988,000

928,828

59,171

6.4

営業利益(百万円)

135,800

117,665

18,134

15.4

親会社の所有者に帰属する当期利益(百万円)

94,000

82,546

11,453

13.9

1株当たり当期利益(円)

831.77

730.42

101.35

13.9

 

 

(6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRS会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。連結財務諸表の作成に用いた重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる要因等に基づき見積り及び判断を行っておりますが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合があります。

 

(7) 並行開示情報

「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(第3編から第6編までを除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表、要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更は、次のとおりであります。

なお、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。

また、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、百万円未満を切り捨てて表示しております。

 

① 要約連結貸借対照表

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

資産の部

 

 

 流動資産

347,736

370,834

 固定資産

 

 

  有形固定資産

736,897

822,743

  無形固定資産

31,162

30,077

  投資その他の資産

122,882

126,976

  固定資産合計

890,942

979,796

 資産合計

1,238,679

1,350,631

負債の部

 

 

 流動負債

276,336

319,775

 固定負債

66,033

65,502

 負債合計

342,370

385,278

純資産の部

 

 

 株主資本

875,513

935,673

 その他の包括利益累計額

20,790

29,678

 非支配株主持分

4

 純資産合計

896,308

965,352

負債純資産合計

1,238,679

1,350,631

 

 

② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書
要約連結損益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

売上高

895,799

928,950

売上原価

439,850

455,378

売上総利益

455,949

473,572

販売費及び一般管理費

328,223

353,199

営業利益

127,725

120,372

営業外収益

5,349

7,358

営業外費用

697

1,512

経常利益

132,377

126,218

特別利益

1,784

35

特別損失

10,257

12,051

税金等調整前当期純利益

123,904

114,201

法人税等

37,381

37,315

当期純利益

86,523

76,886

非支配株主に帰属する当期純損失

△4

親会社株主に帰属する当期純利益

86,523

76,891

 

 

要約連結包括利益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

当期純利益

86,523

76,886

 その他の包括利益合計

8,407

8,888

包括利益

94,931

85,774

(内訳)

 

 

 親会社株主に係る包括利益

94,931

85,778

 非支配株主に係る包括利益

△4

 

 

③ 要約連結株主資本等変動計算書

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の
包括利益累計額

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

805,714

12,382

818,096

当期変動額

69,799

8,407

4

78,211

当期末残高

875,513

20,790

4

896,308

 

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の
包括利益累計額

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

875,513

20,790

4

896,308

当期変動額

60,159

8,888

△4

69,043

当期末残高

935,673

29,678

965,352

 

 

④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

143,593

112,069

投資活動によるキャッシュ・フロー

△131,824

△129,913

財務活動によるキャッシュ・フロー

△20,606

36,085

現金及び現金同等物に係る換算差額

1,035

1,896

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△7,801

20,138

現金及び現金同等物の期首残高

125,115

117,313

現金及び現金同等物の期末残高

117,313

137,452

 

 

⑤ 要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(会計方針の変更)

(時価の算定に関する会計基準の適用指針の適用)

「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第31号 2021年6月17日。以下、「時価算定会計基準適用指針」という。)を当連結会計年度の期首から適用し、時価算定会計基準適用指針第27-2項に定める経過的な取扱に従って、時価算定会計基準適用指針が定める新たな会計方針を将来にわたって適用することといたしました。なお、連結財務諸表に与える影響はありません。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

(会計方針の変更)

(法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準の適用)

「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号 2022年10月28日。以下「2022年改正会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。

法人税等の計上区分(その他の包括利益に対する課税)に関する改正については、2022年改正会計基準第20-3項ただし書きに定める経過的な取扱及び「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第28号 2022年10月28日。以下「2022年改正適用指針」という。)第65-2項(2)ただし書きに定める経過的な取扱に従っております。なお、当該会計方針の変更による連結財務諸表への影響はありません。

また、連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益を税務上繰り延べる場合の連結財務諸表における取扱の見直しに関連する改正については、2022年改正適用指針を当連結会計年度の期首から適用しております。当該会計方針の変更は、遡及適用され、前連結会計年度については遡及適用後の連結財務諸表となっております。なお、当該会計方針の変更による前連結会計年度の連結財務諸表への影響はありません。

 

(会計上の見積りの変更)

(資産除去債務の見積りの変更)

店舗等の不動産賃貸借契約に基づく原状回復義務として計上していた資産除去債務について、直近の原状回復費用実績等の新たな情報の入手に伴い、見積額の変更を行っております。見積りの変更による増加額8,032百万円を変更前の資産除去債務残高に加算しております。

この結果、当連結会計年度の営業利益及び経常利益は778百万円、並びに税金等調整前当期純利益は973百万円それぞれ減少しております。

 

(追加情報)

(法人税等の税率変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の金額の修正)

令和7年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律」及び「地方税法等の一部を改正する法律」が2025年3月31日に国会で成立したことに伴い、2026年4月1日以後開始する連結会計年度から、防衛特別法人税が課されることとなりました。これに伴い、2026年4月1日から開始する連結会計年度以降において解消が見込まれる一時差異については、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に使用する法定実効税率を変更しております。なお、この税率変更が当連結会計年度における連結財務諸表に与える影響は軽微であります。

 

(8) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「41.初度適用」をご参照下さい。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

(のれんの償却額に対する調整)

日本基準ではのれんは計上後10年以内のその効果の発現する期間にわたって均等償却しておりましたが、IFRS会計基準ではのれんを償却せずに毎期減損テストを実施しております。同様に、持分法で会計処理されている投資に関連するのれんは、日本基準では効果が発現すると合理的に見積られる期間にわたって均等償却しておりましたが、IFRS会計基準では均等償却をせずにのれんを含む関連会社に対する投資全体について、減損している客観的証拠がある場合、減損テストを実施しております。

この影響により、IFRS会計基準では日本基準に比べて、「のれん」が14,501百万円減少し、「販売費及び一般管理費」が2,559百万円減少しており、「持分法による投資利益」が1,528百万円増加しております。

 

(リースに対する調整)

借手のリースについて、日本基準ではファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、オペレーティング・リースについては通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っておりました。IFRS会計基準では、借手のリースについてファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分がないため、短期リース及び少額リースを除く全てのリース取引について、「使用権資産」及び「リース負債」を計上しております。この影響により、IFRS会計基準では日本基準に比べて、「有形固定資産」が232,767百万円、「その他の金融負債」が234,694百万円増加しております。

 

(有形固定資産に対する調整)

一部の有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法について、日本基準では定率法を採用しておりましたが、IFRS会計基準では定額法に変更しております。また、不動産取得税について、日本基準では費用に認識しておりましたが、IFRS会計基準では取得に係る直接付随コストとして固定資産に計上しております。この影響により、IFRS会計基準では日本基準に比べて、「有形固定資産」が51,724百万円減少し、「売上原価」が161百万円並びに「販売費及び一般管理費」が1,353百万円減少しております。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。