第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループ(以下、「アークスグループ」という場合もあります。)は、小売業界における淘汰・再編の動きが加速するなか、クリティカル・マス(企業が存続していくために最低限必要な事業規模)を確保し、経営資源の特大化(膨張=極大化ではなく、成長=特大化を目指す)を図ることが、企業価値の更なる向上と、地域のお客様のライフラインを守る道であるとの共通認識のもと、2002年11月1日にスタートいたしました。

当社グループは、どの様な領域で社会的使命を果たすべきなのかを明確にする基本的な考え方として、「地域のライフラインとして価値ある商品・サービスを低価格で提供し、豊かな暮らしに貢献」していくことを、グループ各社が共有するグループ理念として掲げております。

また、「私たちは何のために存在するのか」という存在意義に関する考え方を表明するコーポレートステートメントとして「豊かな大地に輝く懸け橋(Bridge on the Rich Land for Your Life)」を定めております。これは、各地域にドミナントエリアを築き、多くのお客様へ新鮮で、安全・安心な食品を提供することにより、生産地とお客様を結ぶ懸け橋になりたいという思いと、同じ志を持って事業展開を進めていく地域企業同士が、海外流通資本も含めた大手流通企業に対抗していくための受け皿会社として、企業と企業を結ぶ懸け橋になりたいという思いが込められています。

グループ名「ARCS」は、Always(常に)、Rising(上昇する)、Community(地域社会に)、Service(奉仕する)の頭文字で構成され、「1つひとつの企業が強い“弧”となり、大きな円=ARCSを創りあげ、地域社会に貢献していく」ことをうたったもので、経営の基本理念とコーポレートステートメントを体現したものであります。

当社グループは、徹底した顧客志向に基づくお客様への奉仕の精神を持ち続け、将来の大同団結に向けた母体企業としての役割も認識しながら、更なる事業の発展を目指してまいります。

 

(2) 中長期的な経営戦略

  当社グループは「八ヶ岳連峰経営」を標榜し、旧来型の垂直的な企業統合からイメージされる富士山のように高い大きな企業グループを目指すのではなく、同じような規模の山々が横に連なることで、企業とお客様の距離を短く保ち続けることを目指しております。

  純粋持株会社である当社は、グループのシンクタンク的な役割として、「中核企業としての業務執行責任の明確化と意思決定のスピードアップ」、「グループ共通の課題解決を目的とした企業横断的な委員会・プロジェクトの活用」、「グループ統一の基幹システムをベースとしたデジタルトランスフォーメーションの推進による生産性の向上」、「既存組織の見直しと再編成」そして「グループ統一の人事制度による人的資本経営の高度化」を主要テーマに、グループ全体の業務改革に取り組んでおります。

  具体的な取り組みとしては、食品スーパーマーケットの独自性と業務の統一化を両立させた新基幹システムを2019年10月から稼働しており、データマイニング(※1)による在庫管理の精度向上や単品管理による品揃えの最適化に努めております。並行して、AIの活用、顧客データや購買情報の利活用、並びにネットスーパー事業の拡充やアークスアプリの刷新にも注力するなど、デジタル技術を活用しての業務改革・組織変革を推進してまいります。また、グループ横断での商流改革や物流改革、店舗運営の効率化などを進め、定量的な効果創出に取り組んでまいります。

サステナビリティ推進については、アークスグループとしての「サステナビリティ推進方針」を定め、同方針に基づくサステナビリティ重点課題(マテリアリティ)として、①地域社会との共生、②地球環境への配慮、③お客様の豊かな暮らしへの貢献、④ダイバーシティ&インクルージョンの推進の4つを策定しております。これらの重点課題に紐づくグループ各社共通の取り組みとして「サステナビリティアクションプラン」を設定し、具体的な活動を推進しております。また、サステナビリティ推進体制につきましては、「サステナビリティ推進室」を設置し専任者を配置し、同推進室を事務局とする「サステナビリティ推進委員会」を通じて環境対応・社会貢献・ダイバーシティ推進のPDCAをグループ横断的に管理しております。

サステナビリティに関する詳しい取り組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

2018年12月に株式会社バローホールディングス、株式会社リテールパートナーズ及び当社の3社間で結成した「新日本スーパーマーケット同盟」につきましては、それぞれの展開エリアを越え、食品流通企業の全国的な結集軸として業界再編の中心核になることを目指しており、4つの分科会活動のもと具体的な相乗効果を実現するための取り組みを進めてまいりました。2023年3月には結成以来の市場環境の変化を踏まえ、より現状の経営課題に資する取り組みとなるよう、既存の4分科会を5つの分科会に再編(※2)し、今後は更なる取り組み強化を進めてまいります。厳しさを増す経営環境下ではあるものの、今後も将来にわたり生き残りを図り、地域のライフライン企業として地域の食文化・食生活を守っていくことで、食品スーパーマーケットとしての共通課題へ適切に対処すると考え、ビジネスモデルの革新に向けて取り組んでまいります。

 

(※1)収集データを分析し、傾向や相関関係、法則性を見出すことで課題解決に活用する分析手法のことです。

(※2)既存の4分科会「商品分科会」「運営分科会」「間接部門分科会」「次世代領域開発分科会」を再編し、「マネジメント分科会(新設)」「商品分科会(継続)」「業務改革分科会(運営分科会と間接部門分科会を統合)」「サステナビリティ分科会(新設)」「次世代領域開発分科会(継続)」の5分科会としたもの。

 

(3) 優先的に対処すべき課題

後のわが国経済は、賃上げの実施や好調な企業業績に伴う底堅い設備投資等を背景に引き続き緩やかな回復基調が見込まれますが、人件費や物流コストの増加に加え物価上昇圧力が続くことが懸念され、食品スーパーマーケット業界においては業種・業態を越えた競争の加速が予測されるなど、前期に引き続き厳しい経営環境となることが想定されます。

このような状況のもと、当社グループは「競合は成長の粮(かて) 協業の力を高め 良い品を納得の価格で提供し 使命を果たす。」を年頭方針として掲げ、お客様の豊かな暮らしに貢献すべく、地球環境や地域社会への責任も確りと果たしながら、事業活動に努めてまいります。

 

営業面につきましては、お客様の節約志向の高まりや変容するニーズへの対応、更には業界再編の大きな動きが予測される環境下、価格戦略の徹底と商品価値の訴求に取り組み、競合店との差別化を徹底してまいります。具体的には「生活防衛価」「家計応援」等の価格政策の強化を一層進めるとともに、CGC商品並びに新日本スーパーマーケット同盟商品の拡販、産直商品や健康志向に対応した商品の開発・拡販に注力してまいります。また、㈱シジシージャパンと連携し、製造委託先の管理強化や優良工場の取り組み事例の横展開、生鮮原料を中心とした素材・加工法の見直し、包装資材の削減や見直しなども進めてまいります。そのほか、グループシナジーの更なる創出として、2023年9月の㈱オータニに続き、2024年6月には㈱みずかみのシステム統合を予定しており、グループ全社のシステム統合を完了させることで、営業数値の比較分析と好事例の横展開を加速いたします。また、商品については「商品調達プロジェクト」、店舗運営は「店舗運営情報共有会」、物流は「物流改革プロジェクト」が中心となり、グループ内の情報共有及び活性化に取り組んでまいります。

上記に加え、アークスアプリの刷新を進め、従来のポイント決済機能に加え、割引やクーポンなどのプッシュ販促を開始する予定です。RARAポイントについては、お買い物ギフト券との交換制から1ポイント単位で即時値引きいただけるよう2024年4月1日に制度を変更し、お客様の利便性向上を図っております。また、2024年2月にJリーグ 北海道コンサドーレ札幌とクラブパートナー契約を締結し、北海道内グループ各社で『RARAプリカ・コンサドーレカード』を発行することで新たな顧客基盤の獲得を進めてまいります。

 

店舗展開につきましては、少子高齢化による人口減少や競合店の動向も見据えながら、顧客支持を高めていくべく、スーパーアークスへの業態転換を含めた店舗改装を積極的に進め、年間で26店舗の改装を実施する予定です。新規出店は現在1店舗を計画しておりますが、費用対効果を見極めながら、機会を捉えて更に検討を進めてまいります。

 

生産性向上の施策として、各店舗においてはフルセルフ及びセミセルフレジへの入替、電子棚札の横展開、店内調理機器の更新・最適化を進めるとともに、バックオフィス業務について定型業務のRPA化を更に推進し、次期においては29,000時間(当期対比では約25%増)の作業時間削減を見込んでおります。また、リアル開催の教育研修の充実及び海外視察研修制度の復活など、人的資本の拡充にも努めてまいります。

サステナビリティに関する活動につきましては、2022年度に策定した当社グループ各社の「アクションプラン」に基づいたKPI(重要業績評価指標)の設定を進め、具体的な取り組みを加速してまいります。また、気候変動問題への取り組みとして、2023年4月に開示した「TCFD提言に基づく情報開示のお知らせ」に従い、スコープ1・2に基づく温室効果ガスの排出量削減に向け、冷蔵・照明機器及び空調設備等の入替えによる省エネの推進、電力調達の見直しによる非化石電源や再生可能エネルギー由来の電力導入などの移行計画を策定し、推進してまいります。

 

(4) 目標とする客観的な指標等

当社グループは、主要経営指標のなかでも、ROE(自己資本利益率)及びROA(総資産経常利益率)を重視しており、毎期継続した利益成長と資本の効率的な運用、積極的な株主還元を図ることで、ROE8.0%以上、ROA10.0%以上を中長期的な目標数値に設定しております。具体的な取り組みとして、新規出店や店舗改装といった設備投資の拡大、従来に増して積極的なM&Aの推進といった施策に経営資源を注力し、利益水準の引き上げを図ります。そのほか、デジタルトランスフォーメーションの推進によるコスト削減や事業子会社の生産性向上に向けた支援、増配等の利益還元の強化の取り組みなどにより、各指標の向上に取り組んでまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ推進方針及びサステナビリティに関する重点課題(マテリアリティ)

持続可能な社会の実現に向けた活動の重要性が一段と増すなか、当社グループは、「地域のライフラインとして価値ある商品・サービスを低価格で提供し、豊かな暮らしに貢献します」というグループ理念のもと、当社並びにグループ各社が一丸となってこれらの活動を更に深化させ、事業活動を通じてサステナビリティ経営を推進するための指針として、以下の通りサステナビリティ推進方針及びサステナビリティに関する重点課題(マテリアリティ)を策定しております。

 

①サステナビリティ推進方針

0102010_001.png

0102010_002.png

 

②サステナビリティに関する重点課題(マテリアリティ)

重点課題の策定においては、以下の4つのステップを経て、社内外の様々なステークホルダーの意見を取り入れながら、グループ全体の合意形成を図りました。

0102010_003.png

 

上記「STEP②」のマッピングの結果につきましては以下の通りです。

0102010_004.png

 

 

重点課題(マテリアリティ)に関する具体的な取り組みにあたっては、地域密着の強みを生かしたサステナビリティ活動を推進する為、グループ共通施策と各社個別施策を仕分け、各社別の年間アクションプランに落とし込み、半期に一度サステナビリティ推進委員会にて進捗確認を行うことで取り組みの実効性を高めています。

重点課題に紐づく主な取り組み実績及び今後の目標については以下の通りです。

 

重点課題

(マテリアリティ)

主な取り組み実績

今後の目標

①地域社会との共生

・小規模自治体への出店

・地域行事への協力・支援

・レジ袋収益の寄付

・地元自治体/団体との連携協定
  の締結

・災害時におけるBCPプラン構築

・小商圏採算モデル店舗の開発

・フードバンク/子ども食堂との連携強化

・お取引先様とのサステナビリティ分野における連携強化

②地球環境への配慮

・食品ロスの排出削減

・プラスチック容器包装の削減

・エネルギー・CO2対策

・TCFD提言への対応

・食品ロス・プラ削減のグループ各社における目標達成

・CO2排出量スコープ1・2を2013年度比50%削減

③お客様の豊かな暮らしへの貢献

・地域密着の食の提案

・オンラインショップの取り組

 み

・衛生管理体制(設備/教育)の
  レベルアップ

・RARAカード機能の充実・キャ

ッシュレス化推進

・地場産品や健康/環境配慮商品の
提案強化

・宅配サービスのエリア拡充

・RARAカード申込のペーパーレス化

④ダイバーシティ&インクルージョンの推進(※1)

・ダイバーシティ推進プロジェ

クトによる活動推進

・制度改革/啓発活動

・グループ各社における主体的

な取り組み

・人的資本経営の深化

・グループ全社にて「えるぼし」2つ星以上を取得

・グループ全社にて女性管理職比率

10%達成

・従業員エンゲージメント調査の実施

・グループ各社における現場教育(OJT)の充実

(※1)ダイバーシティ&インクルージョン:様々なバックグラウンドや属性、考え方を持つ人たちが共生できる環境を整えることで、組織や社会を活性化し新たな価値を生み出すという考え方です。多様性(ダイバーシティ)のメリットを発揮するためには、お互いを認めて受け入れること(インクルージョン)が必要となります。

 

(2)サステナビリティ推進体制(ガバナンスとリスク管理)

当社サステナビリティ推進委員会は代表取締役社長・COOを委員長とし、グループ各社よりメンバーを招集し、概ね四半期に1回の頻度で開催しています。また、各事業会社においても個別にサステナビリティ推進委員会を設置しております。本委員会の活動進捗や意思決定の内容は年に1回の頻度で取締役会に報告しています。当社内に専任組織としてサステナビリティ推進室を設置し、当社サステナビリティ推進委員会を事務局として運営すると共に、各社の年度活動計画である「サステナビリティアクションプラン」の策定を通じて取り組み項目の合意形成を行うと共に、PDCAを含めた実行体制を整備しております。

なお、サステナビリティ推進委員会の内容はコンプライアンス・リスク管理委員会と共有し、サステナビリティ関連リスクは適宜全社の事業リスクに反映しています。詳細は「3 事業等のリスク」をご参照ください。

0102010_005.png

 

(3) 気候変動対策(TCFDへの対応)

当社及びグループ各社は、気候変動問題をグループ横断で取り組むべき重要課題と考え、当社グループのサステナビリティに関する重点課題の一つとして「地球環境への配慮」を定めております。電気使用量監視設備の導入や冷蔵・冷凍ケースの入替え、LED照明の最新化、太陽光パネルの導入等、設備関連のCO2の削減を加速しております。また、2008年より継続している(一社)北海道CGCみどりとこころの基金(※1)への有料レジ袋売上高の全額寄付を通じて、植林等の環境保全活動に役立てられています。また、野菜くずや廃油等の食品残渣のリサイクルや、再生原料を使用した食品トレーの利用促進、一般顧客からのペットボトルやトレーの店頭回収を強化し水平リサイクルを促進するなどプラスチック廃棄物の資源化活動も進めております。2023年度の当社グループのレジ袋辞退率は84.6%と、スーパーマーケット業界の平均値77.0%(※2)を上回っております。

また、2023年4月3日に「TCFD(Task Force on Climate-Related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)」提言に賛同いたしました。TCFD提言への対応につきましては、気候変動がもたらす事業活動に係る重要なリスクと機会に関し、シナリオ分析に基づく対応策の立案・検討・実施に取り組み、各種KPIの設定・モニタリングを実施し、その結果をステークホルダーに対し開示・広報することを通じて、すなわち、Plan(計画)、Do(実行)、Check(チェック)、Disclosure(開示)、Action(対策)の「PDCDA」サイクルを回していくことにより、2050年の脱炭素社会実現に貢献する取り組みを進めてまいります。

具体的なTCFD提言への対応内容は以下の通りです。

 

(※1)有料レジ袋販売金額の環境保全・環境教育、環境研究機関等への寄付の受け皿として、北海道CGCグループ加盟企業10社が会員となり2008年12月19日に設立されたものです。2012年3月1日に、任意団体から『一般社団法人』へ移行しております。

 

(※2)(一社)全国スーパーマーケット協会 2023年スーパーマーケット年次統計調査報告書

        における2023年7月及び8月時点のレジ袋辞退率調査結果
https://www.super.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/01/2023nenji-tokei-FIX202401.pdf

 

<TCFD提言への対応>

 

a.ガバナンス

当社グループはサステナビリティの推進体制として、2021年11月にサステナビリティ推進委員会を設置し、委員長を当社代表取締役社長・COO、事務局長を当社サステナビリティ推進室長とする組織体制のもと、サステナビリティに関する取り組みの管理を行っております。

サステナビリティ推進委員会は、当社及びグループ各社のメンバーで構成されており、原則四半期に1回以上の頻度で開催しております。同委員会は、気候変動問題に関わる方針や目標の設定の他、実績・進捗の管理、各種取り組みの推進を実施し、その状況については年1回以上、当社取締役会に報告を行っております。

 

b.リスク管理

当社グループ全体のコンプライアンス及びリスク管理を統括する組織として設置された「コンプライアンス・リスク管理委員会」は、当社代表取締役会長・CEOが委員長となり、全役職員に関連法令やグループ理念・行動規範についての教育を行い、コーポレート・ガバナンスやコンプライアンスに関する基本事項を周知徹底しています。同委員会は、当社及びグループ各社のメンバーで構成されており、原則四半期に1回以上の頻度で開催しております。

気候変動に係るリスクにつきましても、グループ全体のリスク管理体制の下で管理すべく、サステナビリティ推進委員会とコンプライアンス・リスク管理委員会とが密接に情報連携を図り、リスクの評価及び対応策の協議を行っております。

 

c.戦略

Ⅰ.シナリオ分析の設定

シナリオ分析においては、国際エネルギー機関(IEA)及び気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書などを参照し、今世紀末までに産業革命以前と比較し世界の平均気温上昇が「1.5℃」と「4℃」の2つのシナリオにおける2050年の社会を想定しました。また、当社の事業への影響を見通せる範囲として、各々のシナリオにおける2030年時点での当社における機会とリスクの分析を行いました。

なお、当社グループの連結売上高の99%を占める食品スーパーマーケット事業に絞った上で分析を実施しました。残りのグループ各社におけるリスク・機会とその影響については今後分析を進めてまいります。

<1.5℃シナリオ>

2100年時点において、産業革命時期比の気温上昇が1.5℃程度に抑制されるシナリオです。気候変動に対し厳しい対策が取られ、脱炭素社会への移行による影響(移行リスク)を受けます。具体的には、炭素税の導入、脱炭素化へ向けた政策・法規制の強化、ステークホルダーや消費者のサステナビリティ意識向上による市場変化や評判への影響などの移行リスクを分析の対象としています。

※IEAのSustainable Development Scenario(SDS)、Net Zero Emissions By 2050
    Scenario(NZE2050)、IPCC第6次評価報告書RCP2.6などを参照

<4℃シナリオ>

2100年時点において、産業革命時期比4℃程度気温が上昇するシナリオです。気候変動への厳格な対策が取られず、自然災害の激甚化など気候変動による物理的な影響(物理的リスク)を受けます。具体的には、異常気象の激甚化や気温の上昇、海面上昇など店舗の営業に影響を及ぼし得る物理的リスクを分析の対象としています。

         ※IEAのStated Policies Scenario(STEPS)、IPCC第6次評価報告書RCP8.5などを参照

 

Ⅱ.シナリオ分析の結果、リスク・機会の特定

まず、当社の主要事業である食品スーパーマーケット事業におけるリスク・機会を洗い出し、網羅的に把握しました。その上で、それぞれの発生度・影響度を評価し、当社にとって重要度の高いリスク・機会を選定しました。

リスク・機会の重要度については、「各事業への影響度」と「事象の発生可能性」から評価しました。「各事業への影響度」は、リスク・機会が現実のものとなった場合の影響規模を定性的に分析しています。「事象の発生可能性」においては、物理的リスクはIPCCの報告書における発生確率を参考に評価し、移行リスクは将来的な政策目標・導入計画の動向や現在の政策導入などをもとに分析しています。

重要度評価の見直しや対応策については、引き続きサステナビリティ推進委員会で議論・検討を行ってまいります。

 

気候関連の事象

リスク項目

影響度

炭素税/排出権取引の導入

CO2排出量に対して炭素税の負担が発生

規制強化・導入

フロン規制の強化に伴う、設備投資のコスト・罰金発生のリスク増加

ZEH・ZEB化の推進による、店舗設備投資のコスト増加

プラスチック使用制限に伴う、代替素材製品調達のコスト増加

再エネ比率拡大

買電契約の見直しによるコスト増加・再エネ設備投資のコスト増加

顧客・投資家における環境意識の高まり

環境関連の取り組み及び非財務情報開示への対応遅れによる、資金調達環境・株価水準の悪化

顧客の嗜好変化への対応遅れによる売上減少・企業イメージ低下

 

気候関連の事象

機会項目

影響度

資源循環の促進

食品廃棄物の重量抑制による廃棄コストの減少と、バイオガス生成などによる経済価値の創出

輸送の高効率化

物流拠点の統廃合、モーダルシフトの促進などによる物流コストの減少

再エネ比率拡大

再生可能エネルギーを自ら創出することによる、電気使用コストの減少

EV化の進展

EV用充電器の店舗設置による集客力の向上、売り上げの増加

顧客・投資家における環境意識の高まり

顧客の嗜好変化に見合う環境配慮型商品の販売や、環境への取組の発信による、企業イメージ向上・売上の増加

 

Ⅲ,財務影響試算

財務に与える影響が大きいと考えられる項目については、以下の通り評価いたしました。

 

<移行リスク>

規制強化による費用増加

影響額

備考

炭素税/排出権取引の導入

29.1億円

2030年度において、売上高1億円当たりスコープ1・2のCO2排出量を、基準年度(2013年度)より50%削減する場合

再生可能エネルギーの

調達費用

6.8億円

2030年度において、再生可能エネルギーの調達割合を50%とする場合

 

 

<物理的リスク>

自然災害による損害

影響額

備考

店舗・商品損害

93.3億円

(※)

洪水による最大想定浸水深度(3.0m以上)に基づく試算

休業による機会損失

(1店舗1日当たり)

500~

1,500千円

1店舗1日当たりの売上総利益に基づく試算

(※)店舗・商品損害の内訳は、家屋資産48.9億円、償却資産37.1億円、在庫資産7.3億円であります。

 

Ⅳ.主なリスク・機会に対する取り組み

「各事業への影響度」が大きく「事象の発生可能性」も高いと評価した「重要なリスク・機会」については、環境問題に係るリスクの低減及び機会の実現に向けまして、以下のような取り組みを、より一層推進してまいります。

 

 

重要度の高い

リスク・機会項目

取り組み内容

リスク

炭素税負担の発生

・CO2排出量削減の取り組み推進

・省エネ性能の高い空調や冷蔵・冷凍設備等の導入/更
  新

・全店舗へのLED照明の導入/更新

・物流拠点の統廃合やモーダルシフトによる物流業務の
  効率化

再エネ投資コストの増加

・太陽光発電設備の導入拡大

フロン規制の強化

・次世代冷媒の利用促進

災害時被害の発生

・災害等有事に備えたBCP計画策定、災害対策訓練実施

機会

食品廃棄コストの低減

・商品の仕入発注、加工・製造計画、在庫管理等の精度
  向上

・賞味期限/消費期限が近い商品の寄付活動

・食品残渣のリサイクル活動

 

d.指標と目標

当社グループでは、サステナビリティ推進方針に掲げる「持続可能な社会の実現とグループの成長」を目指し、「社会・環境価値」、「経済価値」の両面における持続的な価値向上を図るよう、当社グループが事業展開する食品スーパーマーケットチェーンの事業活動に密接に関連する気候変動に係るKPIを設定し、モニタリングを行ってまいります。

 

 

Ⅰ.スコープ1・2の温室効果ガス排出量算定

スコープ1・2の温室効果ガス(GHG)を、以下の通り算定いたしました。

 

     <CO2排出量 総量>

スコープ

2013年度 実績 (※)

2022年度 実績

 

排出量

構成比

排出量

構成比

 

(t-CO2e)

 

(t-CO2e)

 

スコープ1

80,571

23.4%

92,502

29.6%

スコープ2

263,219

76.6%

220,259

70.4%

合計

343,790

100.0%

312,761

100.0%

 

 

       <CO2排出量 単位当たり>

単位区分

2013年度 実績 (※)

2022年度 実績

 

排出量

排出量

2013年度

 

(t-CO2e)

(t-CO2e)

対比

1店舗当たり

1,210.5

845.3

▲30.2%

売上高(1億円)当たり

78.78

55.71

▲29.3%

 

(※) 2013年度実績には、一部推定値が含まれております。

 

Ⅱ.削減目標

当社グループは、「地域のライフラインとして価値ある商品・サービスを低価格で提供し、豊かな暮らしに貢献します」というグループ理念のもと、事業活動を通じた持続可能な社会の実現とグループの成長を目指し、以下の目標を設定いたしました。

2050年カーボンニュートラルの実現へ向け、省エネの推進や廃棄物の削減といった従前の取り組みを継続・加速させることはもちろん、再生エネルギーを積極的に導入することで、スコープ1・2のCO2排出量削減を目指します。また、サプライヤー・運送業者との協業による物流の効率化などにも取り組み、サプライチェーン全体での排出量削減にも取り組んでまいります。

 

中長期目標

・2030年度に、売上高1億円当たりスコープ1・2のCO2排出量を、基準年度(2013年
  度)の排出量に対し50%削減します。

・2050年度に、カーボンニュートラルの実現を目指します。

 

 

 

 

 

(4) 人的資本に関する取り組み

      ①人材育成方針(アークス人材育成理念)

当社グループは、2013年にグループ共通で定めた「人材育成理念」を人材育成方針と位置づけております。

 

   <アークス人材育成理念>

1.人間力の向上

   人の心の理解力と倫理的思考力を兼ね備えた「豊かな人間性」と互いに学び合う「共育の精神」を持つ人材の育成を行う。

2.常識力の向上

  ビジネス常識、一般常識、業界常識の理解と習得を行う。

3.基礎的技能の向上

  業務を遂行する為に必要な技術・技能の育成を行う。

4.変化対応力の向上

   既存の枠組みにとらわれず、「多面的・俯瞰的な見方」「柔軟な発想」により、変化に対応できる人材の育成を行う。

5.自律(立)力の向上

  自ら考え、判断・行動し、結果に責任を持つ人材の育成を行う。

 

      ②統一人事制度と人材教育

2005年より職能資格制度を採用したグループ統一人事制度を導入し、八ヶ岳連峰経営のプラットフォームとして展開エリア拡大に伴い刷新を重ね、2019年4月より役職ごとの役割と処遇を明確にしたグループ統一の役割等級制度としました。教育制度と併せてキャリア形成をグループで一元化し、新人社員から指導職、管理職、役員を含む経営職まで、役割等級ごとに体系的な教育研修を実施しております。

0102010_006.png

 

③ダイバーシティ&インクルージョンの推進と社内環境整備方針

当社グループは、「サステナビリティに関する重点課題」の一つとして「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」を定め、社内環境整備方針として、「全ての人がイキイキと自分らしく活躍できる魅力ある職場をつくる」を掲げております。

従業員の健康を確保・増進し、安全安心に働ける職場環境の維持・改善を実施するとともに、時間外労働の削減、積極的な有給休暇取得、柔軟な働き方の導入などによりワークライフバランスの推進と従業員のWell-being(ウェルビーイング)の実現を目指しております。また、多様な価値観を尊重するべく、性別、国籍、年齢、学歴等を問わず、多様な人材が能力を発揮できる環境整備に取り組み、従業員エンゲージメントの向上を目指します。

 

<ダイバーシティ&インクルージョンの主な取り組み>

・ダイバーシティ推進プロジェクトを中心とした教育啓発活動・グループの好事例共有

・半日有休の導入

・子育て中の従業員の時短勤務制度

・定年後再雇用制度

・パートナー社員のリーダー登用制度/正社員登用制度

・外国人技能実習生の積極的な受入と住居や通訳の確保等の支援体制の整備

・産休/育休取得ガイドブック、介護ガイドブックの内製

・厚労省の女性活躍企業認定マーク「えるぼし」の全社取得をグループ目標として設定

・男性育休の取得推進

・ダイバーシティニュースの発行

・北海道大学との共働により従業員の相互理解を促進する冊子「WORK×LIVE」を発行

・各事業会社トップへのコミュニケーション活動

・従業員アンケートの実施

 

2023年度の具体的な活動としては、グループ横断の「ダイバーシティ推進プロジェクト」を中心に、介護との両立支援やLGBTQ+に関するセミナーの実施、ダイバーシティニュース「rashiku(らしく)」の発行や北海道大学様との協働による冊子「WORK×LIVE」の発行等の啓発活動等を実施いたしました。

当社は2022年11月に厚生労働省が認定する女性活躍推進企業の認定マーク「えるぼし」の3つ星を取得しており、グループの各事業会社においても「えるぼし」2つ星以上の取得と女性管理職比率10%を共通目標としております。

これらの活動の結果、2024年2月期のグループ全体の期末女性管理職比率は7.0%(前年同期比+0.5pt)、男性育休取得率は36.5%(前年同期比+12.1pt)となりました。

また、正社員一人あたりの研修時間は年間で11.6時間(前年同期比+1.3時間)、障がい者雇用比率は3.0%(前年同期比+0.1pt)となり、女性活躍だけに留まらず多種多様な人材が能力を最大限発揮できる機会を提供しております。

多様化するお客様のニーズや、雇用環境の変化にも対応することで、当社グループの持続的な成長を目指してまいります。

 

 

 

3【事業等のリスク】

(1)リスク管理の体制及び運用状況

当社グループは、企業活動に影響を与える様々なリスクへの対応力の向上や、リスク管理の体制及びその仕組みの整備・改善に鋭意取り組んでおり、その効果的な実現のために、コンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、定期的に開催しております。本委員会では、企業活動に関して抽出したリスク事象とその対応策を、その発生頻度や影響度等に基づき策定するとともに、それらが有効に機能しているかどうかの評価を行っております。なお、本委員会でのリスク管理の運用状況等については、定期的に当社取締役会に報告しております。

今後は、対応策とその有効性についての検証を更に重視し、定期的な評価・見直しによるリスク管理体制の強化を推進してまいります。

 

(2)事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 

主なリスク

具体的リスク

対応策

自然災害

・大災害

(地震、津波、台風、洪水など)

・事業継続計画(BCP)及び防災マニュアルの策定

・緊急物資や災害用備品の保管

・避難訓練の実施

・緊急連絡体制に基づく速やかな情報伝達

事故・事件

・店内外の事故や事件

(火事、交通事故、万引きなど)

・防犯対策の実施チェック

・社内及び警察など外部専門機関との連携

・建物・設備の損失

・計画的な改装工事による店舗年齢の更新

・店外販売等代替手段の方法を予め確立

感染症・伝染病

・お客様及び従業員の健康リスク

・パンデミックの発生

・公的指針に則った対応ルールの整備と感染症対策の徹底

・行政機関からの情報を確認し、対処策を講じる。

・本部及び部門間、店舗間の人員応援体制整備

人材確保

・人員不足に関するリスク

 (労働人口の減少、人材獲得競争の激化)

・離職による優秀な人材の確保・育成難

・社内環境整備方針の確立と徹底

・ダイバーシティ&インクルージョンの推進

・採用方法の多様化

・教育研修制度の充実

・労働時間や待遇など、労働条件の改善に向けて労使で協議

労務管理、

職場の安全衛生

・職場の安全衛生問題

(過重労働、ハラスメント等)

・社内環境整備方針の確立と徹底

・過重労働やハラスメント有無の定期チェックとグループ間共有

・各階層向けハラスメント研修・啓発の実施

・「ハラスメントガイドライン」の制定

・産業医との緊密な連携とグループ各社への随時情報共有

・顧問弁護士などの外部専門家と連携

・コンプライアンス・リスク管理委員会を通じて事例と再発防止策を共有

 

 

主なリスク

具体的リスク

対応策

地政学

・テロや戦争、紛争等の政治的な不安による世界経済不況

・強固な財務基盤構築、金融機関とのリレーション強化等による影響軽減

・BCP事務局と連携し、対象事案として準備

・エネルギー価格の高騰やサプライチェーンの混乱等

・上記に伴うコスト上昇や消費マインドの冷え込み

・省エネ整備の導入促進、エネルギー調達の多様化検討

・グループ各社間の情報共有とスケールメリットの活用

・電力会社などの各専門業者と連携

商品・食品の安全性

・食品表示や販促広告の誤り

・HACCP基準による指導とグループ各社の衛生管理を徹底

・表示ルール及び運用状況の定期チェック

・事案による適格な保健所報告とリコール届出

・HACCPプランの見直し

・商品の問題

 (食中毒、商品の欠陥など)

・他社の食中毒情報による注意喚起

・適切な自主回収の要請

・原因と対策の早期報告要請

情報セキュリティ・情報管理

・災害、停電等によるソフトウェア及び機器の欠陥

・ハードウェアの予防保守管理

・ソフトウェア稼働状況の監視

・発生原因を解明し、保守契約先とともに復旧対策を講じる

・影響が及ぶ関係組織に対し、普及目途及び復旧までの対処について申し入れを行う

・サイバー攻撃

 (コンピュータウイルスの感染や不正アクセス、内部情報の流出、改ざんなど)

・ネットワーク冗長化/疎通監視

・個人情報に関する各種規程・ガイドラインの策定と従業員研修の実施

・ネットワーク遮断と通信ログの解析

・警察など外部専門機関への通報

事業環境の変化

 

・小売業界における競争激化

・エリアドミナント戦略による地域シェアの確保

・お客様の消費動向の変化

・顧客情報を活用したマーケティング推進

・2024年問題に対する対応

・仕分け作業の効率化

・物量に応じた作業人数、人時の変動化による作業コストの抑制

・店舗配送回数・配送ルート・店舗滞在時間の見直しを含めた、軽減コスト削減案作成及び実施。

気候変動

・環境関連取り組みや対応遅れ等による、資金調達環境・株価水準の悪化

・環境への配慮や社会的責任を果たすために、持続可能性を重視した経営戦略を策定

・統合報告書・ホームページ等の媒体を通じてESG関連の取り組みに関する情報開示を積極的に実施

・投資家とのコミュニケーションを強化し、持続可能性へのコミットメントを再確認

・企業の強みや将来展望を明確に伝え、投資家の信頼を取り戻すための具体的な行動計画を策定

コンプライアンス・不祥事

・ハラスメント、SNSリスク

・重大な不祥事、コンプライアンス上の問題

・アークスグループ・フィロソフィーやコンプライアンス・ニュースを活用した従業員への啓蒙

・法令遵守の重要性についての教育、啓蒙を継続

・コンプライアンス・リスク管理委員会によるリスク事案の共有

・顧問弁護士等の外部専門家との連携

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

経営成績

当連結会計年度(2023年3月1日から2024年2月29日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行により経済活動が正常化に向かうなか、ウクライナ紛争の長期化や中東情勢の緊迫といった地政学リスクの高まりがありつつも、半導体の供給体制の緩和やインバウンド需要の回復、堅調な企業業績に伴う設備投資の増加などにより景気は緩やかに回復してまいりました。一方で、物価上昇の継続に伴う個人消費の下押し圧力などもあり、先行きは不透明な状況が続いております。

当社グループの主力事業である食品スーパーマーケット業界におきましても、長引く物価上昇・実質賃金の低下などによりお客様の節約志向や買い控えの傾向が続くなか、業種・業態を越えた企業間競争は加速しており、電気料金や建築資材コスト、人件費等の上昇も受け、経営環境は厳しい状況が続いてまいりました。

このような事業環境の下、当社グループは、お客様ニーズの変化、事業運営コストの上昇、競争の激化などに対応する様々な施策を推し進めてまいりました。

 

営業面につきましては、物価高騰対策としてCGC商品の拡販に注力し、年間の取り扱い比率(仕入原価ベース)は前期比0.3ポイント上昇の13.1%に拡大してまいりました。㈱シジシージャパンと連携した取り組みとして、競合店対策を含む共同販促、容器・包装資材の削減、物流効率化等に取り組んだほか、コロナ収束に伴い再開した海外産地視察によりメキシコ産バナナや台湾・スペイン産本まぐろといった商品の取り扱いを新たに開始いたしました。当社グループ内の取り組みとしては、カテゴリーマネジメント(※1)による商品構成の見直しを継続し、取り組み品目数を乾麺、ヨーグルト、冷凍食品等全14品目に倍増させたほか、南部せんべいに一部手を加えた地元銘菓の域外販売、鏡餅など季節催事商品の販売好事例の横展開、東北3社の酒類帳合統一などのグループシナジーの強化を進めてまいりました。また、㈱ラルズにおいて「ワイン300万本プロジェクト」と銘打ち低価格輸入ワインの拡充・拡販にも努めてまいりました。加えて、2023年9月の㈱オータニとの基幹システム統合により、グループ全社横並びでロス率や在庫水準の比較分析を行い、同社の在庫管理や荒利益管理の精度向上に取り組んでおります。

 

物流面におきましても、札幌市内を中心に展開する㈱ラルズ・㈱東光ストアにおいて2023年4月からの実証実験を経て同年10月から「ゆとり配送」(※2)を本格導入し、物流体制を再構築してまいりました。商品の発注から納品までのプロセスを最適化し、輸送ピークの平準化に取り組んでいるほか、クレート・ドーリー等小型マテハン(※3)機器の活用により各店舗での荷下ろし作業の効率化、ドライバーの労働時間短縮を進めてまいりました。これらの施策はグループ全社横断の「物流改革プロジェクト」において横展開を進め、2024年問題への対応及び物流コストやCO2排出量の削減に資する取り組みとなっております。また、㈱シジシージャパンや日本貨物鉄道㈱(JR貨物)、CGCグループの加盟社と共に、モーダルシフト(※4)を推進し、輸送の平準化や安定した物流体制の確保に取り組んでおります。

 

新日本スーパーマーケット同盟(※5、以下、同盟)におきましては、2023年3月に既存の4つの分科会を5つの分科会(マネジメント分科会、商品分科会、業務改革分科会、サステナビリティ分科会、次世代領域開発分科会)に再編し、協議・対応を深めてまいりました。特に、システム・データの利活用、お取引先との連携によるDX推進、人事交流や店舗フォーマットの開発、モーダルシフトの推進等、同盟間の物理的距離を克服するための具体策について協議を進めております。また、「塩こうじレモンぽん酢」などの同盟共同開発商品や原材料の相互供給による商品の差別化なども進めてまいりました。2023年12月からは、同盟結成5周年を記念した同盟オリジナル商品の販売を実施しており、特に同盟各社の地域銘産品を使用した即席カップ麺や米粉スナック菓子等はSNS上でも話題となるなど、お客様からご好評をいただいております。

 

ネット販売の取り組みにつきましては、㈱ラルズが運営する「アークスオンラインショップ」において、札幌市を中心に苫小牧市・小樽市など同社が店舗展開する道央地域全域まで配送エリアを拡大したほか、個人のお客様に加えて、保育園・介護施設といった法人取引、リゾート地の宿泊顧客向けの販売サービスも拡充してまいりました。また、2023年6月に開始した㈱ベルジョイスの運営による「アークスオンラインショップ」並びに2023年12月にスタートしたAmazon社との協業による「Amazonネットスーパー アークス」につきましても順調なスタートを切っております。

お客様との接点の強化や利便性の向上、東証プライム上場企業としてのプレゼンスを強化するため、2023年12月及び2024年2月にグループ全12社のホームページをリニューアルいたしました。デザインを一新して視認性を大幅に向上したほか、スマートフォンやタブレットなど様々なデバイスで快適に閲覧できる仕様に変更しております。そのほか、旬の食材を使用したレシピページの新設やサステナビリティ情報の拡充等、各種コンテンツや機能も追加いたしました。

 

販売費及び一般管理費(以下、販管費)につきましては、エネルギー価格の高騰に対し、引き続きエネルギー監視システムの利活用に加え冷凍ケースのリーチイン化、省エネ性能の高い調光機能付きLED照明の切り替えを加速、飲料品の設定温度の見直しや適切な照度での照明管理といった節電に資する取り組みを進めてまいりました。そのほか、給与明細や年末調整手続きの電子化などの業務改善を進めるとともに、RPA(※6)を活用した定型業務の自動化及びその横展開を図り、年間23,000時間の作業時間の削減を目指してまいりました。

グループの基盤強化につきましては、岩手県遠野市を中心にスーパーマーケット4店舗を展開する㈱みずかみと2023年9月に経営統合し、同社を㈱ベルジョイスの連結子会社といたしました。2024年6月にはグループシステムへ統合すると同時にアークスRARAカードも導入する予定です。

店舗展開につきましては、㈱道北アークスが「Da*マルシェ歌志内店」「Da*マルシェ剣淵店」、㈱ユニバースが「パワーズUシンフォニープラザ店」「ユニバース城下店」の計4店舗を新規出店いたしました。また、既存店の活性化として、㈱ラルズ6店舗、㈱ユニバース3店舗、㈱ベルジョイス3店舗、㈱福原5店舗、㈱道北アークス3店舗、㈱東光ストア3店舗、㈱道南ラルズ1店舗、㈱道東アークス1店舗の計25店舗の改装を実施いたしました。改装店舗のうち、㈱ラルズの「(旧)ビッグハウス白石店」「(旧)ビッグハウス野幌店」「(旧)ビッグハウス光洋店」、㈱ベルジョイスの「(旧)ジョイス盛岡西バイパス店」「(旧)ジョイス花巻高木店」、㈱福原「(旧)ビッグハウス中標津店」、㈱道東アークス「(旧)ビッグハウスメッセ」の7店舗はスーパーアークスへの業態変更を伴う改装となっております。閉店4店舗に、経営統合した㈱みずかみの4店舗を加え、当連結会計年度末における当社グループの総店舗数は377店舗となりました。

 

サステナビリティ推進活動につきましては、2023年4月に「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言」に基づく情報開示を行い、同年6月には「アークス統合報告書~地域のライフラインとして」(以下、統合報告書)を発行し、同年8月に統合報告書の英語版も当社ホームページ上に公開いたしました。また、食品ロス削減に向けた「てまえどり運動」の積極的な推進、フードドライブ(※7)の実施店舗拡大(7社合計85店舗)、災害時における自治体等との連携協定拡大(47自治体、14団体)を実施してまいりました。そのほか、㈱ラルズにて環境保全及び障がい者自立支援の取り組みとして使用済コルク栓の回収並びに同コルク栓を再利用した製品の販売を実施したほか、産学官連携のウェルネス推進プロジェクト「H-ARTs(ハーツ)」を立ち上げ、地域の皆様向けの健康増進イベントを開催いたしました。再生可能エネルギーに関する取り組みでは、2023年8月に㈱伊藤チェーンの本部及び3店舗、同年12月にはラルズ東光生鮮流通センターに太陽光発電システムを導入いたしました。

 

以上の結果、当連結会計年度(2023年3月1日から2024年2月29日)の業績は、売上高5,915億57百万円(対前期比4.5%増)、営業利益168億31百万円(対前期比13.5%増)、経常利益184億39百万円(対前期比12.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益117億66百万円(対前期比18.3%増)となりました。既存店売上高は、物価高による節約志向が続く中、当社グループの品ぞろえや鮮度、価格が改めてお客様の支持を高め、鶏卵不足や猛暑といった事象への適時適切な対応もあり、既存店客数が対前期比で1.2%の増加となりました。また、物価上昇に伴い1点単価が同6.4%の増加となった一方で1人当り買上点数は同3.2%の減少で留め、既存店客単価は対前期比3.1%の増加となりました。結果、既存店売上高は対前期比4.3%の増加となりました。販管費については人件費や電気料金の上昇により金額で対前期比4.4%の増加となりましたが、堅調な売上高及び売上総利益率の改善により総利益高が対前期比で5.4%増加したことから、営業利益・経常利益共に2桁の増益となりました。なお、賃上げ促進税制に係る法人税額の特別控除により、親会社株主に帰属する当期純利益は対前期比18.3%増で着地いたしました。

 

(※1)小売業者が自社の戦略や目標に基づいて商品分野(カテゴリー)を設定し、商品の管理をすること。消費者にとって適切なタイミングで、適切な場所(売場・棚)に、適切な商品を適切な価格で提供することで、需要の活性化を図ることを目的とします。

 

(※2)店着時間を柔軟に幅広く設定することや、日替わりの特売品や酒類についても輸送量を前日に確定すること等により配送時間にゆとりを持たせることで物流の最適化、ドライバーの作業時間削減を図る当社独自の取り組みです。㈱ラルズ及び㈱東光ストアにて2023年4月から実証実験を始め、同年10月から本格導入しています。

 

(※3)マテリアル・ハンドリングの略で、物流倉庫内で荷物の運搬や入出庫、ピッキング、仕分けなどを効率的に管理することを指します。マテハン機器はフォークリフトやパレット、カゴ車等の物流業務を効率化する作業機械の総称です。

 

(※4)日本の貨物輸送の大半を担っているトラック輸送を、より環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することをいいます。CO2排出量削減のほか、輸送効率の向上、ドライバー不足への対応策として期待を集めています。

 

(※5)㈱バローホールディングス(本社:岐阜県)、㈱リテールパートナーズ(本社:山口県)、当社の3社により、2018年12月に資本業務提携契約を締結した地域密着型の独立系食品流通企業の連合体です。

 

(※6)ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略で、作成したシナリオに基づいて動作するロボットにより、主にデータ入力等のルーチン業務や事務ミスの検知等を自動化する仕組みであり、業務の効率性並びに正確性を向上させることが期待されます。

 

(※7)賞味期限内でまだ食べられるにもかかわらず、ご家庭で眠っている・買い過ぎてしまった食料品などを、食品を必要としている地域のフードバンク等の生活困窮者支援団体、子ども食堂、福祉施設等に寄付する活動です。農林水産省や消費者庁、環境省が中心となって推進しています。

 

 

当連結会計年度に実施した新規出店等は以下のとおりであります。

 

概要

店舗名称

所在地

実施時期

運営会社

新規出店

Da*マルシェ歌志内店

北海道歌志内市

2023年4月

道北アークス

(4店舗)

Da*マルシェ剣淵店

北海道上川郡

2023年6月

道北アークス

 

パワーズUシンフォニープラザ店

青森県八戸市

2023年10月

ユニバース

 

ユニバース城下店

青森県八戸市

2023年12月

ユニバース

改装

東光ストア北広島店

北海道北広島市

2023年6月

東光ストア

(25店舗)

フクハラ別海店

北海道野付郡

2023年7月

福原

 

スーパーチェーンふじ深川店

北海道深川市

2023年7月

道北アークス

 

 

東光ストア豊平店

札幌市

2023年7月

東光ストア

 

ラルズマート北35条店

札幌市

2023年9月

ラルズ

 

ユニバースむつ旭町店

青森県むつ市

2023年9月

ユニバース

 

ジョイス八戸石堂店

青森県八戸市

2023年9月

ベルジョイス

 

スーパーアークス港町店

北海道函館市

2023年9月

道南ラルズ

 

スーパーアークス西神楽

北海道旭川市

2023年9月

道北アークス

 

Uマート桔梗野店

青森県弘前市

2023年10月

ユニバース

 

フクハラ新得店

北海道上川郡

2023年10月

福原

 

ホームストア港北店

北海道室蘭市

2023年11月

ラルズ

 

ユニバース水沢日高店

岩手県奥州市

2023年11月

ユニバース

 

スーパーアークスパルプタウン

北海道旭川市

2023年11月

道北アークス

 

東光ストア円山店

札幌市

2023年11月

東光ストア

 

ぴあざフクハラ西18条店

北海道帯広市

2024年1月

福原

 

ラルズマート真駒内店

札幌市

2024年2月

ラルズ

 

ハピネスマート春採店

北海道釧路市

2024年2月

福原

うち業態変更

スーパーアークス盛岡西バイパス店

岩手県盛岡市

2023年5月

ベルジョイス

(7店舗)

スーパーアークス白石店

札幌市

2023年6月

ラルズ

 

スーパーアークス中標津店

北海道中標津郡

2023年6月

福原

 

スーパーアークスメッセ

北海道北見市

2023年7月

道東アークス

 

スーパーアークス花巻高木店

岩手県花巻市

2023年9月

ベルジョイス

 

スーパーアークス野幌店

北海道江別市

2023年11月

ラルズ

 

スーパーアークス光洋店

北海道苫小牧市

2024年2月

ラルズ

閉店

イトーチェーン角田店

宮城県角田市

2023年8月

伊藤チェーン

(4店舗)

フクハラ長崎屋店

北海道帯広市

2023年9月

福原

 

東光ストア南郷18丁目店

札幌市

2023年10月

東光ストア

 

ジョイス球場前店

岩手県盛岡市

2024年1月

ベルジョイス

 

 

財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比較して、88億16百万円増加し、2,749億72百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比較して、26億94百万円増加し、971億63百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比較して、61億22百万円増加し、1,778億9百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)の残高は、前連結会計年度末と比較して21億37百万円増加し、747億31百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動の結果得られた資金は、240億52百万円(対前期比41.6%増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益174億49百万円、減価償却費97億71百万円、退職給付に係る負債の減少額14億88百万円、仕入債務の増加額15億73百万円、及び法人税等の支払額49億21百万円などによるものです。また、得られた資金が増加した要因は、税金等調整前当期純利益が増加したこと及び仕入債務が増加したことなどによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動の結果使用した資金は、106億47百万円(対前期比37.1%増)となりました。これは主に、新規出店や店舗改装等に伴う有形固定資産の取得による支出98億54百万円、システム関連投資に伴う無形固定資産の取得による支出11億84百万円などによるものです。また、使用した資金が増加した要因は、新規出店や店舗改装等に伴う有形固定資産の取得による支出が増加したことなどによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動の結果使用した資金は、112億67百万円(対前期比302.2%増)となりました。これは主に、長期借入れによる収入50億円、長期借入金の返済による支出62億46百万円、自己株式の取得による支出52億41百万円、及び配当金の支払額32億71百万円などによるものです。また、使用した資金が増加した要因は、長期借入れによる収入が減少したことに加えて、自己株式の取得による支出が増加したことなどによるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

  当社グループは小売関連事業を主たる事業としているため、生産実績及び受注状況は記載しておりません。

 

a. 仕入実績

事業の名称

前連結会計年度

(自  2022年3月1日

    至  2023年2月28日)

当連結会計年度

(自  2023年3月1日

    至  2024年2月29日)

前期比

(%)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

小売関連

事業

食品

368,114

86.6

384,938

86.9

104.6

衣料品

1,329

0.3

1,427

0.3

107.3

住居関連

16,400

3.9

16,934

3.8

103.3

酒類等

36,670

8.6

37,674

8.5

102.7

テナント

2,133

0.5

1,205

0.3

56.5

その他

593

0.1

538

0.1

90.8

合    計

425,241

100.0

442,717

100.0

104.1

 

b. 販売実績

事業の名称

前連結会計年度

(自  2022年3月1日

    至  2023年2月28日)

当連結会計年度

(自  2023年3月1日

    至  2024年2月29日)

前期比

(%)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

小売関連

事業

食品

488,070

86.2

513,387

86.8

105.2

衣料品

1,831

0.3

1,909

0.3

104.2

住居関連

21,535

3.8

22,073

3.7

102.5

酒類等

42,150

7.4

43,570

7.4

103.4

テナント

5,054

0.9

3,258

0.6

64.5

不動産賃貸収入等

6,554

1.2

6,334

1.1

96.6

その他

1,012

0.2

1,022

0.2

101.0

合    計

566,209

100.0

591,557

100.0

104.5

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

  経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比較して、88億16百万円増加し、2,749億72百万円となりました。この主な要因は、現金及び預金が21億23百万円、土地が22億56百万円、投資有価証券が22億36百万円、及び退職給付に係る資産が14億87百万円増加した一方で、ソフトウエアが15億80百万円減少したことなどによるものです。

(負債)

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比較して、26億94百万円増加し、971億63百万円となりました。この主な要因は、買掛金が17億63百万円、未払消費税等が7億21百万円、及び繰延税金負債が5億76百万円増加した一方で、長期借入金が5億22百万円、及び退職給付に係る負債が10億69百万円減少したことなどによるものです。

(純資産)

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比較して、61億22百万円増加し、1,778億9百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が84億92百万円、その他有価証券評価差額金が17億88百万円、退職給付に係る調整累計額が10億71百万円増加した一方で、自己株式が52億29百万円増加したことなどによるものです。

 この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末より0.2ポイント上昇し64.7%となりました。

 

b.経営成績

(売上高)

  売上高は、5,915億57百万円(対前期比4.5%増)となりました。増加の主な要因は、当連結会計年度において新規出店4店舗に加え、改装25店舗など既存店の営業基盤の拡充をはかったことなどによるものです。

(営業利益)

  売上総利益率が前連結会計年度を若干上回る水準を確保できたことにより、売上総利益は1,494億17百万円(対前期比5.4%増)となりましたが、水道光熱費や人件費が増加したことなどにより、販売費及び一般管理費が前連結会計年度と比較して56億20百万円増となったことから、営業利益は、前連結会計年度と比較して19億95百万円増の168億31百万円(前期比13.5%増)となりました。

(経常利益)

  経常利益は、営業外損益が前連結会計年度とほぼ同水準の16億8百万円となったことにより、前連結会計年度と比較して19億95百万円増の184億39百万円(対前期比12.1%増)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

  親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益が前連結会計年度と比較して1億57百万円減少して21百万円となった一方で、経常利益の増加に加え、減損損失が前連結会計年度と比較して1億75百万円減の8億67百万円となったこと及び賃上げ促進税制に係る法人税額の特別控除により、前連結会計年度と比較して18億18百万円増の117億66百万円(対前期比18.3%増)となりました。

 

c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

  経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1 経営方針、経営戦略及び対処すべき課題等」に記載しております。

  当連結会計年度の状況は次のとおりであります。

指 標

中長期目標

2024年2月期

(実績)

ROE(自己資本利益率)

8.0%以上

6.7%

ROA(総資産経常利益率)

10.0%以上

6.8%

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

  当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

  なお、キャッシュ・フロー指標の推移は次のとおりであります。

 

2020年2月期

2021年2月期

2022年2月期

2023年2月期

2024年2月期

自己資本比率(%)

62.2

62.7

63.5

64.5

64.7

時価ベースの
自己資本比率(%)

42.0

49.4

47.5

45.6

60.8

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

1.4

0.8

1.8

1.6

1.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

111.4

203.5

92.1

121.4

176.2

自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注)1.いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

   2.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

   3.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

   4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。

 

  当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、運転資金及び設備投資は営業キャッシュ・フローの範囲で行う方針であり、営業キャッシュ・フローでまかないきれない時は、金融機関からの借入により資金調達を行います。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 この連結財務諸表の作成に当たっては、過去の実績や現状等を勘案して、合理的と考えられる方法により会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(1) 業務・資本提携契約

契約会社名

相手方の名称

契約

締結日

契約期間

契約内容

㈱アークス

(当社)

㈱バローホールディングス、㈱リテールパートナーズ

2018年

12月25日

期間の定めなし

業務提携

⑴ 既存領域の強化

① 地場商品や産地情報、取引先情報の相互共有

② 資材・備品・什器などの共同購入

③ 店舗開発、店舗運営などのノウハウの共有

④ 物流やセンター運営のノウハウの共有

⑤ スポーツクラブ事業などの小売周辺事業の共同展開

⑥ 人材採用や人材教育に関するノウハウの共有 他

⑵ 次世代に向けた取り組み

① カード事業の共同研究、及び統合に向けた検討

② バックオフィス業務の統合も含めた共同研究

③ 金融、決済事業に係る共同運営の検討

④ スマートストア(次世代型店舗)など新たなテクノロジー対応への共同研究 他

資本提携

 株式の相互保有

 

 

6【研究開発活動】

  該当事項はありません。