文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
使命(ミッション)「魚によって、世界の人々を健康で幸せにする」及び将来像(ビジョン)「魚食文化を守り、日本の水産業の発展に貢献する」から成る企業理念の下、国内の基幹事業をベースとしながら海外進出を進め、また、SDGsや社会貢献にも心を配りながら、努力を重ねてまいります。
(2)経営環境
当社グループは小売業を柱とし、そのほかに飲食業、卸売業を営んでおりますところ、いずれにおいても鮮魚及び魚加工品を主な商品としております。事業基盤とする国内市場において、魚価の上昇、供給量の減少、代替品(肉類)へのシフト、嗜好の変化などにより、魚食が減少する状況にあります。このような中、天然の魚資源の枯渇化の進行や、海外における魚食普及に伴う魚価の高騰、物流をはじめとする諸コストの増大など、当社グループを取り巻く経営環境はより一層厳しくなるものと考えております。
一方、地球的規模で地上からの供給に代わるタンパク質の供給源として、また、国内外において拡がる健康志向などから、養殖業を含む水産業、また、水産物に対する注目度は高まっております。
このような中、「良い魚を鮮度良く、より安い価格で提供する」という当社創業以来の精神を継続して持ち続け、お客様の支持を絶対的なものとするとともに、日本の伝統文化である魚食の普及に取り組み、経営基盤をより確固たるものにしたいと考えております。
(3)経営戦略等
当社グループは、強みである鮮魚の仕入力、販売力と経営実績によりつくられた信用力を活かして、国内外で活躍する「魚」総合企業をめざすことを基本的な経営戦略としております。
この実現のために、基幹事業である鮮魚及び寿司の小売事業の事業内容の強化が重要であります。海外での需要の高まりに伴う魚価高騰、物流費をはじめとする仕入コストの増加などに対応し、バイイングパワー強化・物流体制見直しにより原価低減を行うとともに、「旬」を意識したにぎわいのある売場を作り、サービスレベルを向上させ差別化を図ってまいります。
また、人手不足の深刻化が供給制約となり当社にとっても際限なく新規出店を行える環境ではないため、出店先との交渉、既存店舗からの退店を含め、限られた経営資源を効率的に活用できる最適な店舗ポートフォリオ(筋肉体質の店舗網)の構築に取り組んでまいります。
商品としては、鮮魚店併設の寿司店において鮮魚売場との連携を強化するなど、特に寿司の販売強化を図ってまいります。
飲食事業につきましては、店舗オペレーションや人員配置の見直しによる作業効率の向上などにより労働生産性を追求し販売管理費を削減すること、また、隣接する当社鮮魚店との連携も取りながら仕入・配送を合理化し粗利益率を改善することにより営業利益の確保を図ってまいります。更に、インバウンド需要を取り込むとともに、「魚力鮨」「魚力寿司」といった寿司ブランドの浸透、確立を目指してまいります。
また、卸売事業は当社グループの事業の新たな柱に育っており、国内での事業拡大に加え、海外で高まる水産物需要に応え、国内外の有力企業とのパートナーシップにより、米国やアジアを中心に既存取引の拡大・新たな販売先の開拓を行ってまいります。
一方、天然の水産資源の枯渇化に備え養殖水産物の安定的調達のため養殖業者との資本・業務提携を行い、時代のニーズに対応した商品開発や品揃えに対応してまいります。
これらの事業を円滑かつ効率的に推進するため、グループとして物流の効率化に取り組んでおりますところ、昨今の物流コストの上昇に対応し、物流拠点の変更や配送ルートの組み換え、積載効率の向上による減車などに注力してまいります。また、併せてグループ情報システムのレベルアップを図ってまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
成長性が直接的に分かりやすく表現されることから、売上高、営業利益などを経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
現状の課題として第一に、店舗運営力の強化が重要と考えております。当連結会計年度末において92店(うち小売店78店)を首都圏中心に出店し、1都3県において鮮魚専門店としてドミナント化を実現しております。しかしながら、小売業界においては業態を超えた企業間の競争がますます激化しております。食品スーパーはもとよりコンビニエンスストア、ネット販売などとの競争においては、これまで培った鮮魚専門店ならではのノウハウや知見を活かし、今まで以上に顧客のニーズに対応した商品開発や品揃えに注力し、季節感や活気のある売り場を提供するとともに、サービスレベルの向上を図る必要があります。そのため、社員の販売技術や加工技術のレベルアップを図るとともに、パート・アルバイトの職域拡大と早期戦力化に取り組み生産性の向上に努めてまいります。
一方、仕入れにおいて、魚価の高騰、物流をはじめとする諸コストの増大など新たな需給環境に対応し、仕入条件や物流体制の見直しなど原価低減のための努力を行ってまいります。また、長年に亘り培ってきた豊洲市場の卸売業者、配送業者との強いリレーションを活かしサプライチェーンの維持、商品の調達に万全を期してまいります。
次に、収益性に裏付けられた成長の追求があげられます。当社は、小売事業において一定の売上が見込まれるターミナル駅近隣の商業施設を中心に出店しておりますところ、首都圏を中心とした店舗開発情報の収集に力を入れ、十分な収益性の確保が期待される物件の開発に取り組むこと、あわせて、大型ショッピングセンターなど郊外立地への出店にも引き続き注力することが重要であります。また、2025年2月から3月にかけて福岡県福岡市に2店舗を出店いたしましたところ、現在出店中のエリア以外の有力な地域への出店も視野に入れてまいります。一方、人手不足の深刻化が供給制約となり当社にとっても際限なく新規出店を行える環境ではないため、出店先との交渉、既存店舗からの退店を含め、限られた経営資源を効率的に活用できる最適な店舗ポートフォリオ(筋肉体質の店舗網)の構築をめざすことも重要であります。これに先立ち、既存店の収益性・成長性を継続的に検証し、収益性・成長性が不十分な店舗については商品仕入面の取り組みを含め改善のために努力を尽くしてまいります。当社は豊洲市場を拠点にチルド物流及び冷凍物流を一本化した物流網を有しており、バイイングパワーに裏打ちされた仕入力、効率的な物流力が収益性を高める力となっております。あわせて、埼玉県魚市場(さいたま市北区)の活用を開始しております。このほか、所謂eコマースなど新たな販売手法・ルート開拓への取り組みを行ってまいります。
商品としては、鮮魚店併設の寿司店において鮮魚売場との連携を強化するなど、特に寿司の販売強化を図ってまいります。
他方、飲食事業においては、店舗運営を担当する店舗管理者とメニュー・調理を担当するシェフとの役割分担を明確化するなど店舗オペレーションの見直し、幹部・スタッフ含め人員配置の見直し、作業効率の向上などにより労働生産性を追求し販売管理費を削減すること、また、隣接する当社鮮魚店との連携も取りながら仕入・配送を合理化し粗利益率を改善することにより営業利益の確保を図ってまいります。更に、「魚力鮨」「魚力寿司」といった寿司ブランドの浸透、確立をめざし、品質での差別化にも取り組んでまいります。
また、卸売事業においては、国内での事業拡大に加え、海外で高まる水産物需要に応え、国内外の有力企業とのパートナーシップにより、米国やアジアを中心に既存取引の拡大・新たな販売先の開拓を行ってまいります。
これらの施策を推進する人材の確保と育成は喫緊の課題であります。当社の将来を担う経営幹部や店舗管理職の育成は不可欠であり、専担部署を中心に採用活動及び社員教育を強力に推進してまいります。店舗の重要な戦力となるパート・アルバイトの確保は昨今困難な状況となっており、従来の募集活動に加え社員紹介制度やホームページを活用した募集などにより人員の確保を図っております。
また、当社は第41期(2024年4月1日から2025年3月31日まで)の連結財務諸表及び財務諸表において複数の誤謬があったことが判明いたしました。今回の事態を厳粛に受け止め、経理部門の体制強化を図るために、業務改革プロジェクトを立ち上げ、そのリーダーに豊富な知見を有する外部有識者を据え、以下の事項を実施いたします。
①経験豊富なCFO及び経理部門長を外部から招聘
②①に記載した階層以外の専門的能力を有する管理職者の採用、部門内階層に応じたマネジメント教育や専門的知識研修の実施、人員配置の見直しを含めた経理部門内の組織の最適化
③決算処理に関する情報収集文書の見直しを含めた決算業務マニュアルの作成・見直し及び運用の徹底
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社グループは、経営執行の意思決定機関である経営会議にてサステナビリティに関する審議・検討を行い、年1回取締役会に報告し適切な監督を受ける体制としております。経営会議は代表取締役社長を含む取締役全員及び常勤監査役で構成されております。
(2)重要なサステナビリティ項目
上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
・人的資本(人材の多様性を含む)に関する対応
・気候変動に関する対応
それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
① 人的資本(人材の多様性を含む)に関する対応
当社グループは、典型的な対面型サービスである小売・飲食業を営んでおり、店舗においてサービスを行う従業員の確保は何より重要であります。また、顧客の過半数が女性であるため、店舗や本社従業員に相応の数の女性が含まれることが望ましいと考えております。
このため、当社グループは、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針として、2021年4月より「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づく行動計画を策定し、正社員の採用者に占める女性比率を高める・女性正社員の離職率を下げる・女性管理職者(候補者)を増員するなどの目標を掲げ、推進しておりますところ、改めて管理職に占める女性労働者の割合について2033年3月までに20%とする目標を設定し、取り組んでおります。
また、女性社員の活躍を後押しするため、男性社員の育児休業取得率を上げるよう通達や研修による育児休業制度の周知や利用の促進を図るとともに、社内の環境整備に取り組んでまいります。
取組について評価する際の指標と具体的な目標、実績については次のとおりであります。
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指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
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なお、表中の目標及び実績値は2025年3月に連結子会社化した株式会社最上鮮魚を含まない数値であります。
② 気候変動に関する対応
当社グループでは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に沿った情報開示を行うにあたり、2022年8月に設置した「TCFD対応プロジェクト」が主体となり当社主力事業である鮮魚小売事業に対する気候変動関連リスク・機会への対応策の検討を行いました。
外部環境変化の分析にあたり、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などが公表しているシナリオを参考に1.5℃、4℃の2つのシナリオを想定し、2030年における移行リスク・機会及び2050年における物理リスクを特定しました。そのうち、重要な項目は次のとおりであります。
<1.5℃シナリオ>[移行リスク]
温暖化抑止に向けて技術革新やGHG排出への規制強化が進み、21世紀末の地球平均気温が産業革命以前と比較し約1.5℃の上昇に抑えられると想定される1.5℃シナリオにおいては、炭素税導入による操業・物流・原材料コストの増加、再生可能エネルギー導入のための投資コストの増加、再生可能資源への切り替えに伴うコスト増加及び顧客行動の変化等の移行リスクが強まることが判明いたしました。
GHG排出への規制強化は当社の事業活動に相応の財務インパクトを与えると予想されます。具体的に、炭素税はIEA「World Energy Outlook 2023」を参考に2030年時点の炭素税額を140USドル/トン-CO2と仮定し、当社2023年時点のCO2排出量に基づき算出した結果、およそ98百万円となることを認識しました。また、再生エネルギー証書(Jクレジットを想定)調達コストの発生も見込まれます。このような移行リスクに対し、GHG排出量削減の推進及び店舗の省エネ・再エネ設備の拡大・導入に向けたディベロッパーへの働きかけが必要であることが判明しました。
<1.5℃シナリオ>[機会]
資源効率化が進み、消費者の環境意識が向上すると想定される1.5℃シナリオにおいては、リサイクルの活用、利用資源の多様化、物流・交通・輸送手段の効率化及び消費者の購買行動の変化などの機会が生じることが判明しました。このような機会に対し、サステナブル製品や環境配慮商品・資材の取扱い拡大、調達ネットワークの多様化による調達リスク軽減及び公共交通網の発達した首都圏へのドミナント出店などの対応策が、当社事業のレジリエンス強化及び中長期的な企業価値の向上において有効であることを認識しました。
<4℃シナリオ>[物理リスク]
低炭素・脱炭素化などの温暖化抑止策が推進されず、21世紀末の地球平均気温が産業革命以前と比較し約4℃上昇する結果、異常気象の深刻化・増加や海洋環境の変化が想定される4℃シナリオにおいては、大規模自然災害による営業機会損失や日本周辺の漁獲量変化に伴う調達コスト増加などの急性・慢性的な物理リスクが強まることが判明しました。
大規模自然災害の発生に伴う店舗閉鎖は当社事業に相応の財務インパクトを与えると予想されます。具体的に、2050年までの洪水被害による売上損失リスク額は、洪水発生頻度が現在の4倍になると仮定し算出した結果、年間およそ31百万円増加することを認識しました(※)。また、大規模自然災害により商品供給網が途絶した場合、大幅な売上減少及び調達コスト増加などの影響が生じることを認識しました。
また、日本周辺の漁獲量変化や天然魚種の多様性減少により魚価が高騰し、仕入コストが相応に増加することを想定しております。
これらの物理リスクに対し、BCP対策強化による店舗・事務所のレジリエンス強化、水害リスク対応策検討に向けたディベロッパーへの働きかけ及び調達先の多様化・調達拠点の分散によるリスクヘッジが必要であることが判明しました。また、海洋生態系の変化の把握や養殖事業者との連携強化などによる商品供給網のレジリエンス強化も必要であることが判明しました。
(※)100年確率洪水規模の洪水が発生した場合のみ考慮
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(特に重要なリスク)
(1)食の安全について
当社グループは「食品衛生法」に基づいた営業施設を整備し、同法の許可の下で魚介類、寿司を主に販売する小売店及び飲食店を営業しておりますところ、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に対応し、一般的衛生管理及び当社ルールを併用し、食の安全性確保に努めております。また、「食品表示法」及び「計量法」に基づき、商品を販売するにあたって原産地、食品添加物、アレルギー、保存方法、消費期限、内容量などの表示が義務付けられておりますところ、適正な表示の実施に取り組んでおります。
近年、生産者、加工業者による「食の安全」を脅かすような問題がしばしば発生し、消費者の「食の安全」を守るため法改正が行われる頻度が高まっています。このような中、食品衛生についてのコンプライアンスの遵守が会社の存続にも関わる問題となってきております。
生鮮食品を扱う当社グループにとって、「食の安全」確保は最重要事項であるため、店舗においてオゾン消毒施設を備え滅菌・消臭を行うとともに、社内専担部署による衛生検査、専門業者による定期的な清掃・設備点検を実施するなど、「食の安全」確保に最大限の努力を行っております。
また、商品の産地表示、消費期限表示、添加物表示、アレルギー表示などについて消費者へ十分な情報を提供する体制を構築しております。
しかしながら、当社の取組を超えた重大な事故が発生した場合、営業への支障や損害賠償などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
更に、「食の安全」に関わる事件の発生やマスコミの報道などにより、「生」で食することの多い魚について購買敬遠ムードが高まった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)世界的な魚介類の需給構造の変化と水産物市況の変動について
世界的な魚食の習慣は今後とも勢いを増し、米国・欧州・ロシア・中国等を中心に魚介類に対する需要は更に増すものと考えられます。
これにより、今まで日本が中心であった魚介類の需給が世界に拡散する一方、マグロをはじめとして天然の魚資源の枯渇化が進行しているため、漁獲量の制限が強化されるなど、供給面の縮小が問題視されております。
このような世界的な魚介類の需給バランスの変化に対応するため、当社グループとしては、養殖事業者大手である(株)ヨンキュウと資本業務提携、また豊洲市場卸売事業者大手である東都水産(株)と業務提携を行うなど、ネットワークの強化や仕入手法の多様化等に取り組み、お客様への安定的な商品供給に取り組んでおります。
しかしながら、需給関係の大幅な変化やそれに伴う魚介類の価格変動が大きく発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、海外紛争・戦争の影響により、一部の輸入海産物について供給の停止・減少・遅滞などサプライチェーンの混乱が生じた場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)消費者の鮮魚購入のニーズ変化について
家計調査年報によると、食料支出に占める素材としての魚介類購入額の割合は減少する一方、調理食品購入額や外食費の割合は増加する傾向にある中、総体として魚介類の消費量は減少傾向にあります。
このような中、当社としては小売事業において、消費者のニーズに合わせた素材の提供方法を取り入れ、また、簡便性ニーズに対応し寿司や調理済みの煮魚・焼魚の品揃えを増やすなど、消費者のニーズをとらえる努力を行っており、また、飲食事業におきましては、こだわりの食材をリーズナブルな価格で提供する新業態「魚力食堂」のチェーン化に取り組むなどしております。しかしながら、消費者のニーズは年々大きく変化しており、これに対して対応が不十分、もしくはニーズと一致しない施策等があった時には、当社グループの業績に影響を及ぼすことが予想されます。
また、小売事業において消費者の購買動向は、最寄品、日用品、食料品についてワンストップ・ショッピング、ショートタイム・ショッピング志向が強まってきており、一箇所で買物を短時間で済ます傾向が強くなっております。このため、当社の出店している商業施設の近隣に大規模な競合する商業施設がオープンした場合に、当社店舗の売上高が減少するなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)人材の確保・育成について
当社の成長戦略上、新規の出店は重要な要素であるところ、そのためには店舗運営を担う優秀な人材の確保が不可欠であります。経験豊富な中途社員を積極的に採用するとともに、新入社員についても各種研修を行うことで早期戦力化を図っております。しかしながら、昨今、雇用情勢が改善したことに加え、パート・アルバイトの時給が上昇しており採用環境は厳しい状況にあります。
従いまして、人材の確保及び育成が不十分であった場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)出店環境について
当社の小売事業の店舗は、原則30~50坪の売場面積が確保できることを条件として、大型商業施設にテナントとして出店することを基本としております。また、生魚を中心とした専門店としての商品の集積で常時鮮度を保って販売を行っていくためには、一定の商品回転率を必要とし、そのため、現状は集客力の高い首都圏を中心とした一定の売上規模が見込めるターミナル隣接の駅ビル、あるいは駅近隣の百貨店への出店が中心となっております。
近年、首都圏、特に都内有力ターミナルにおいては、新たな商業施設の建設が減少し、新規出店施設に当社が出店できる機会は少なくなりつつありますが、都心部を中心とした店舗開発情報の収集に力を入れ、積極的な物件開発に取り組むことが重要と考えております。
また、必ずしも鉄道駅隣接ではない、郊外型の大型ショッピングセンターなどへの出店も進めております。
しかしながら、主力事業における今後の新規店舗の開発状況によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)気候変動・自然災害・事故等について
当社グループは、首都圏、中京圏及び九州を中心に店舗展開しております。これらの地域での地震・台風・洪水などの自然災害や、不測の事故などが発生した場合、災害や事故発生時の店舗施設への損害や人的被害の状況によって、店舗の営業に支障をきたす可能性があります。また、猛暑・冷夏・暖冬等の異常気象による漁獲量の大幅な減少や、異常気象に起因する消費者の購買動向の大きな変化があった場合、売上の減少につながるおそれがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)放射能汚染について
当社グループは、主に豊洲市場を通じ全国から海産物を仕入れております。東京電力福島第一原子力発電所に溜まる処理水に関し海洋放出の準備が進められているところ、たとえ科学的、技術的に実行可能であり国際的慣例に沿ったものであっても、福島県産ほかの魚介類に関する風評被害が発生するおそれがあります。放射能汚染については、現実の汚染の有無にかかわらず、消費者の購買行動が影響を受け、当社グループの売上の減少につながるおそれがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)感染症について
当社グループは、典型的な対面型サービスである小売・飲食業を行っております。今般の新型コロナウイルス感染症のような感染症が流行し、感染拡大や蔓延状況に応じ、また、政府等の要請等に基づき店舗の休業、営業時間の短縮などの措置がとられた場合、売上の減少につながるおそれがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。更に、流行が一応の収束に到った後においても、消費者の購買動向が変化した場合には、売上の減少につながるおそれがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)法規制、会計制度等の変更について
当社グループは、「食品衛生法」、「食品表示法」、「計量法」、「独占禁止法」はじめ、消費者保護、各種税制、環境・リサイクル関連法等により規制を受けております。また、税制改正に伴う消費税率の引き上げ等により、個人消費に影響が出る可能性があります。
これに加え、国際会計基準などの新たな会計基準の適用により、業績への直接的な影響のみならず、会計基準の変更に伴うシステム変更などの負担増加も懸念されます。
従いまして、これらの法規制や制度改定により、これに対応するための費用の増加や、店舗の営業への支障が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(重要なリスク)
(1)売上高・利益計上の季節性について
業種柄、当社グループの売上高、営業利益の計上には季節性があり、特に小売業において顕著です。通常、当社の売上高、営業利益ともクリスマスから年末の商戦を含む第3四半期が最高となります。売上高は4つの四半期の平均より10%から20%多く、営業利益は更に多くなります。
従いまして、悪天候などの要因により第3四半期の売上高が伸びない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)店舗賃借に係る条件について
当社は、先に述べたとおり、小売事業、飲食事業ともに自社物件もしくは一括自社での借上げ物件での営業ではなく、商業施設内等へのテナント出店を基本としております。
小売事業において、出店している商業施設側からの改装等の機会をとらえての既存テナントに対する出店条件の見直し、もしくは出店条件によるテナントの選別が行われることが多くなっております。併せて、従来の契約期間満了に伴う自動更新が一般的であった賃貸条件から、定期借家による賃貸契約への変更要請も多くなっており、テナントとしての中長期的な店舗運営継続の基盤は、今までより弱いものとなりつつあります。このような中、当社は営業実績に加え良好な財務内容に裏付けられた信用力により商業施設に訴求しております。しかしながら、入店している商業施設における条件により、もしくは契約年数の期限到来による営業の停止などがあった場合、将来的には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)海外での事業活動について
当社グループは、海外で事業活動を行っており、現地での地震・洪水・火災等の災害や、戦争・内乱・テロ等による政治的・社会的混乱や予期せぬ景気の変動により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。但し、現時点での海外事業活動は比較的小規模にとどまっております。
(4)為替相場・金利の変動について
当社グループの商品の中には為替相場の変動の影響を受ける輸入品があるとともに、これを原材料とする加工品も販売しており、為替相場の変動により仕入価格が影響を受ける可能性があります。また、金利変動を背景とした退職給付債務の金額算定の基礎となる割引率の変動により、費用負担が増減する可能性があります。従いまして、為替相場の変動や金利変動により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)固定資産の減損会計の適用について
当社では、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しております。当社は各店舗を独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位としており、本社経費配賦後の店舗別損益を基に減損の兆候を把握しております。減損の兆候があった店舗については、全社予算の構成単位である店舗別予算から割引前将来キャッシュ・フローを見積り、減損の認識を判定しております。
今後出店する地域の消費動向や競合する店舗の状況等により、店舗の売上高が大きく低下し店舗別損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナスとなった場合、当該店舗の固定資産の減損処理が必要となる可能性があり、この場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)保有する有価証券の減損処理による評価損について
金利環境の変化などにより、有価証券の実勢価格が大幅に低下した場合、減損処理による投資有価証券評価損を計上する必要があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
イ.経営成績
当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境の改善を受け個人消費、また、好調な企業収益などを背景とした設備投資を起点に緩やかに回復いたしました。しかしながら、一方で、物価上昇による消費マインドの低下や米国の関税政策による世界的な混乱、米中貿易摩擦など景気下振れ要因が多く見られます。また、ウクライナ情勢や中東情勢は景気の先行きに関する不透明感を濃くしております。
水産業界におきましては、地球的規模で地上からの供給に代わるタンパク質の供給源として、また、国内外において拡がる健康志向などから、養殖業を含む水産業、また、水産物に対する注目度は高まっております。しかしながら、海外で高まる水産物需要・わが国では地球温暖化が原因とも言われる不漁による魚価高騰、物流をはじめとする諸コスト増大など、当社を取り巻く経営環境はたいへん厳しい状況にあります。更に、中国による日本産水産物禁輸措置長期化の影響が懸念されます。
このような経営環境の中、当社グループにおきましては、中期経営計画(2024-2026年度)の下、国内事業の着実な成長と海外事業の拡大をめざし、仕入、販売、海外、人財、財務、地球環境といった分野における基本戦略に取り組んでまいりました。
このような中、通期の既存店売上高が前年を上回りましたが、これは消費者の消費マインド、購買力が相応に高まったことを踏まえ、商品の付加価値を高めつつ諸コストの上昇を適切に売価に反映したこと、前年度出退店同数ながら、経営資源を効率的に活用できる最適な店舗ポートフォリオ(筋肉体質の店舗網)の構築を念頭に戦略的に出店を行った効果が表れたものと考えております。
この間、小売事業で4店舗を出店する一方、4店舗を退店し、当連結会計年度末の営業店舗数は92店舗となりました。なお、2025年3月11日付で九州及び山口県において鮮魚小売店など49店舗を運営する株式会社最上鮮魚を連結子会社化しておりますが、当社グループの連結売上高及び連結営業利益への取り込みは2026年3月期からとなります。
この結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は366億29百万円(前年同期比0.8%増)、営業利益は14億93百万円(前年同期比5.6%減)、経常利益は20億51百万円(前年同期比0.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は14億28百万円(前年同期比4.9%増)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
<小売事業>
小売事業では、新たなバイイングパワーの構築に力を注ぎ、魚種の豊富さや旬を意識した仕入れを行い、鮮魚専門店ならではのにぎわいのある売り場作りを実施いたしました。また、商品に付加価値をつけ差別化を図るとともに、お造りや生ネタ寿司など高付加価値商品の販売を強化いたしました。一方で、仕入コストの増加に加え賃上げによる人件費の増加に対応するため、店舗ごとの繁閑状況に応じた人員配置の下、作業オペレーションの統一化など運営の一層の効率化、資材の絞り込みなど徹底したコスト削減に取り組むとともに、適正な売価の検討を行いました。また、物流コストの増加に対応するため、物流拠点の変更や配送ルートの組み替えなどの物流改革に着手しております。
新店は、2024年7月に埼玉県道54号線沿いの「ロヂャース八潮店」内に「魚力市場八潮店」(埼玉県八潮市)、11月にJR高崎線桶川駅に隣接する「東武ストアおけがわマイン」内に「桶川店」(埼玉県桶川市)、2025年2月に西鉄福岡(天神)駅及び天神バスセンター直結の「福岡三越」内に「福岡三越店」(福岡県福岡市)、3月に西鉄福岡(天神)駅前の「岩田屋本店」内に「岩田屋本店」(福岡県福岡市)を開店しております。一方、2025年1月に「エキュート上野」の一部フロアの業態変更に伴い「Sushi力蔵上野店」(東京都台東区)、「nonowa東小金井」の生鮮食品フロアの営業終了に伴い「東小金井店」(東京都小金井市)、2月に「まるひろ上尾店」の業態変更に伴い「上尾店」(埼玉県上尾市)、3月に「セレオ甲府」の生鮮食品フロアの営業終了に伴い「甲府店」(山梨県甲府市)を退店しております。
この結果、売上高は315億6百万円(前年同期比2.6%増)、営業利益は17億60百万円(前年同期比1.6%増)となりました。
<飲食事業>
飲食事業では、訪日外国人の増加によるインバウンド需要の高まりなどによる来店客数の増加が後押しとなり、売上高が前年度に比べ増加いたしました。また、原材料費などの上昇に伴いメニューや価格設定の見直しを行うとともに、店舗オペレーションの見直しや物流の合理化を含む構造改革に取り組んでおりますところ、一定の効果を上げております。これにより、粗利益額が増加し、人件費をはじめとする店舗運営コストを吸収することができました。
この結果、売上高は15億23百万円(前年同期比7.9%増)、営業利益は0百万円(前年同期は営業損失12百万円)となりました。
<卸売事業>
卸売事業では、子会社の魚力商事株式会社が、アジアにおいて新規取引先の開拓に取り組んでおりますところ、2023年5月に設立した合弁会社のCP-Uoriki Co.,Ltd.が、タイ国内各地の大型ショッピングモールなどにおいて鮮魚と寿司の小売店舗を運営しておりますところ、2025年3月時点で営業店舗が25店舗となり業績好調なことから、これら店舗向けの輸出を伸ばしております。一方で、漁獲量の減少に起因する一部商品の供給制限などによる北米向け販売の落ち込みや、日本産水産物の禁輸措置の継続による中国向け販売の回復遅れなどの影響により、海外向け販売全体の売上高は前年に比べ減少いたしました。国内では飲食店舗向けの売上が好調に推移した一方、スーパーマーケットや地方荷受向けの販売が苦戦いたしました。また、物流コストの増加や仕入・出荷に付帯する費用など販管費は増加いたしました。
この結果、グループ全体の卸売事業の売上高は35億31百万円(前年同期比14.8%減)、営業利益は32百万円(前年同期比72.7%減)となりました。
ロ.財政状態
当連結会計年度末の当社グループの財政状態は次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は146億9百万円となり、前連結会計年度末に比べ16億64百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が20億円、商品及び製品が1億11百万円増加したものの、売掛金が5億円減少したことによるものであります。固定資産は83億53百万円となり、前連結会計年度末に比べ99百万円減少いたしました。これは主に繰延税金資産が2億63百万円増加したものの、投資有価証券が3億16百万円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は、229億63百万円となり、前連結会計年度末に比べ15億65百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は46億96百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億55百万円増加いたしました。これは主に支払手形及び買掛金が5億14百万円、未払金が2億83百万円増加したことによるものであります。固定負債は5億19百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億12百万円増加いたしました。これは主に退職給付に係る負債が1億14百万円、資産除去債務が80百万円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は、52億15百万円となり、前連結会計年度末に比べ10億67百万円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は177億47百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億97百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金が6億74百万円、非支配株主持分が2億22百万円増加したものの、その他有価証券評価差額金が3億92百万円減少したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は76.3%(前連結会計年度末は80.6%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ19億96百万円増加(前年同期比22.0%増)し、当連結会計年度末には110億85百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、21億68百万円の収入(前年同期は19億25百万円の収入)となりました。主なプラス要因は、税金等調整前当期純利益21億58百万円、売上債権の減少額5億99百万円及び仕入債務の増加額4億6百万円であり、主なマイナス要因は、投資有価証券売却益7億44百万円及び法人税等の支払額6億81百万円であります。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、5億89百万円の収入(前年同期は2億88百万円の支出)となりました。主なプラス要因は、投資有価証券の売却による収入43億36百万円であり、主なマイナス要因は、投資有価証券の取得による支出38億78百万円であります。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、7億64百万円の支出(前年同期は6億69百万円の支出)となりました。主なマイナス要因は、配当金の支払額7億52百万円であります。
③仕入及び販売の実績
イ.商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
小売事業(千円) |
18,096,445 |
104.1 |
|
飲食事業(千円) |
515,475 |
110.3 |
|
卸売事業(千円) |
3,266,552 |
85.9 |
|
報告セグメント計(千円) |
21,878,483 |
101.1 |
|
その他(千円) |
- |
- |
|
合計(千円) |
21,878,483 |
101.1 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
ロ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
小売事業(千円) |
31,506,931 |
102.6 |
|
飲食事業(千円) |
1,523,409 |
107.9 |
|
卸売事業(千円) |
3,531,242 |
85.2 |
|
報告セグメント計(千円) |
36,561,583 |
100.8 |
|
その他(千円) |
67,907 |
104.7 |
|
合計(千円) |
36,629,490 |
100.8 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容
イ.経営成績
当連結会計年度の連結売上高は、当社において販促計画の確実な実行により既存店売上高が計画を上回る一方、新規出店店舗における計画の未達があり、また、卸売事業を手掛ける魚力商事株式会社における減収があったため、前年度実績を上回る一方で2025年2月に公表した通期業績予想を下回りました。売上総利益率は当社、魚力商事株式会社ともに前年を下回りましたが、減収により魚力商事株式会社の連結売上高への寄与度が低下したことにより連結での売上総利益率は若干改善しました。一方で徹底したコスト削減に努めましたが、連結ベースによる販売費および一般管理費(以下「販管費」)の増加は、連結ベースによる売上総利益額の増加を上回りました。これらの結果、連結営業利益は前年度実績および2025年2月に公表した通期業績予想を下回る結果となりました。
セグメントごとの分析・検討内容は次のとおりであります。
<小売事業>
当社では鮮魚や持ち帰り寿司等の小売事業が売上高、営業利益において重要な部分を占めておりますが、各店舗への集客が経営成績に重要な影響を与えます。供給量の減少、代替品(肉類)へのシフト、嗜好の変化などによる魚食の減少、魚資源の枯渇化の進行、海外における魚食普及に伴う魚価の高騰、物流をはじめとする諸コストの増大など、経営環境は厳しさを増しております。このような中、食品スーパー、コンビニエンスストア、ネット販売など異業態を含む競争に打ち勝つため、これまで培った魚専門店ならではのノウハウや知見を活かし、今まで以上に顧客のニーズに対応した商品開発や品揃えに注力し、季節感や活気のある売り場を提供するとともに、サービスレベルの向上を図ることが重要であります。また、売上原価の削減も重要な課題でありますが、当社は豊洲市場を拠点にチルド物流及び冷凍物流を一本化した物流網を有しており、バイイングパワーに裏打ちされた仕入力、効率的な物流力がこの課題に対応するための力となっております。あわせて、埼玉県魚市場(さいたま市北区)の活用を開始しております。
他方、パート・アルバイト社員はじめ人手不足の深刻化から際限なく出店を行える環境ではないため、出店先との交渉、既存店舗からの退店を含め、限られた経営資源を効率的に活用できる最適な店舗ポートフォリオ(筋肉体質の店舗網)の構築が重要であります。当連結会計年度において退店した4店舗はディベロッパーによる業態変更や営業終了によるものですが、近年不振店を退店することが利益の底上げにつながっておりますところ、次期においても引き続き筋肉体質の店舗網の構築に取り組んでまいります。また、2025年2月から3月にかけて福岡県福岡市に2店舗を出店いたしましたところ、現在出店中のエリア以外の有力な地域への出店も視野に入れてまいります。
また、長年に亘り培ってきた各メーカーや生産者、豊洲市場の卸売業者、配送業者との強いリレーションを活かしサプライチェーンの維持、商品の調達に万全を期してまいります。そのうえで、バイイングパワー・情報力を活かした有利な仕入条件の獲得、物流拠点の変更や配送ルートの組み換えなどの物流改革に取り組み原価低減のための努力を行ってまいります。
また、併せてグループ情報システムのレベルアップを図ってまいります。
<飲食事業>
飲食事業では、訪日外国人の増加によるインバウンド需要の高まりによる客数の増加が後押しとなり売上高は前期実績を上回りました。また、売上高販管費率が下がりました。これは、水道光熱費をはじめ店舗運営コストの増加やタイトな人材需給の状況に対応するため、作業効率の向上、幹部・スタッフ含め人員配置の見直しなどにより労働生産性を追求し販管費を削減したこと、また、隣接する当社鮮魚店との連携も取りながら仕入・配送の合理化を進めてきたことの効果が表れたものです。これらの結果、通期では2018年3月期以来7期ぶりに営業利益の黒字転換を達成いたしました。
引き続きメニューや価格設定、店舗オペレーションの見直しに取り組んでまいります。
また、「魚力鮨」「魚力寿司」といった寿司ブランドの浸透、確立をめざし、品質での差別化にも取り組んでまいります。
<卸売事業>
卸売事業では、魚力商事株式会社に集約し国内外における販路の拡大に取り組んでおりますところ、北米向け取引において一部魚種の漁獲量の減少に起因する一部商品の供給制限が発生したこと、日本産水産物の禁輸措置の継続による中国向け販売の回復が遅れていること、国内においてスーパーマーケットや地方荷受向けの販売が苦戦したことなどにより、売上高は前年実績を下回りました。また、物流コストや仕入・出荷に附帯する費用などの増加により販管費は前年実績と比較し増加いたしました。これらの結果、営業利益は前年度実績に比べ大きく減少し、概ね27%にとどまりました。
次期につきましては、商品選定や仕入先見直しによる商品の安定供給に取り組むとともに、既存取引先への営業活動を強化してまいります。その上で、特に海外で高まる水産物需要に応え、国内外の有力企業とのパートナーシップにより北米やタイをはじめとするアジアを中心に新たな販売先の開拓に注力してまいります。
なお、CP-Uoriki Co.,Ltd.においてタイ国内に日本式の魚屋の店舗網構築を進めておりますところ、これらの店舗への商品供給が売上の伸長に貢献するものと期待しております。
ロ.財政状態
当連結会計年度末における当社グループの財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 ロ.財政状態」に記載のとおりであります。
当社グループにおける資産及び負債のうち主なものは以下のとおりであります。
(資産)
主として小売事業におきまして、商業施設にテナントとして出店する際に必要となる預け金等を敷金及び保証金に、店舗に関わる内装・空調・衛生厨房設備等を有形固定資産に、店舗において販売された当社の商品代金(売上返還金)を売掛金に計上しております。
この他、報告セグメントに属さない資産として、余資運用資金(預金及び投資有価証券)を保有しております。
(負債)
主として小売事業におきまして、商品の購入費用を支払手形及び買掛金に、店舗の運営経費・設備投資に係る費用を未払金に計上しております。
当連結会計年度末における当社グループの流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は311.1%となっております。売上返還金を含む現金による収入がその多くを占める当社グループの業種特性と照らした場合、流動比率100%を超える一定の健全な水準を維持しているものと判断しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループにおける資金需要は、運転資金需要および設備投資資金需要であります。
・運転資金需要のうち主なものは、販売商品の購入費用、人件費、店舗賃借料及び店舗運営に関わる費用(テナント経費・水道光熱費・販売促進費等)であります。
・設備投資資金需要のうち主なものは、小売事業、飲食事業の新規店舗、改装店舗に関わる店舗内装・空調・衛生厨房設備等の販売拠点の拡充・整備のための資本的支出と、全社的なIT活用推進を図るための、本社・店舗間のネットワーク構築やセキュリティ対策等のシステム投資であります。
当社グループは、現在運転資金および設備投資資金につきましては、内部資金でまかなう事を基本方針としております。
当社グループの出店は主にターミナル駅近隣の商業施設や郊外型ショッピングセンターなどへのテナント出店であるため、設備投資資金需要においても、通常、営業キャッシュ・フローにより対応することが可能であります。また、更なる成長力獲得のためのM&Aや資本提携を行う場合などにおいても、同様に内部資金を活用する考えであります。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は110億85百万円である一方、有利子負債残高は34百万円であり、強固な財務体質を維持しております。
資金の手元流動性は十分に確保している状況であり、財務状況は健全であると認識しておりますが、不測の事態に備えるため、借入枠につきましては、金融機関2行との間に合計6億円の当座貸越契約を締結しております。
当社グループは健全な財政状態を維持しつつ、営業活動により得られるキャッシュ・フローから、成長を維持するための将来必要な資金を調達することが可能と考えております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に際し、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりです。
(固定資産の減損)
当社は、各店舗を独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位とし、本社経費配賦後の店舗別営業損益等に基づき、営業損益等が継続してマイナスとなる場合等に減損の兆候があると判断しており、該当する各店舗の将来営業キャッシュ・フローを見積り、その合計額が固定資産の帳簿価額を下回る場合に、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。
当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に与える影響につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に、また、当期において計上した減損損失につきましては、「第5経理の状況 1連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」にそれぞれ記載しております。
特記事項はありません。
該当事項はありません。