文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日(2025年7月30日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針および中長期的な経営戦略等
当社は1992年のアスクル創業以来、オフィスに必要なものやサービスを「迅速かつ確実にお届けする」トータルオフィスサポートサービスにおけるパイオニアとして、お客様の声を聞きながら、商品・サービス・システムを絶えず進化させて中小事業所から中堅大企業までのあらゆる企業の多様なニーズにお応えし、着実な成長を実現してまいりました。
これに加え、eコマース(インターネット等を介して行われる電子商取引ビジネス)へのニーズは、一般消費者へも急速に高まり、当社グループは、このような状況を絶好の成長機会と捉え、2012年11月20日に一般消費者向けインターネット通信販売サイト「LOHACO」のサービスを開始しました。
当社を取り巻く事業環境は劇的に変化し、なかでも、AI(人工知能)の進化は想像以上に加速しております。人間と同等の知能であるAGI(汎用人工知能)の実現は数年以内、人間の知能を超えたインテリジェンスをもつ超知能であるASI(人工超知能)は、10年以内に実現ともいわれております。
そのような状況の中、2025年7月4日に「2026年5月期~2029年5月期中期経営計画(以下、新中期経営計画)」を策定し、公表いたしました。
新中期経営計画の策定にあたっては、まずは、長期的視点で当社が何を実現したいのかというビジョンについて議論を重ねました。
創業以来、全社に根付いているDNA「お客様のために進化する」の根源にある
・創業の精神である中小事業所に大企業並みのサービスを提供すること等、お客様のお困りごとを解決したいという意志。
・1 box for 2 trees project(お客様のコピー用紙1箱ご購入に対して、2本植林し、育てて、収穫して、コピー用紙をつくる仕組み)に代表される社会的責任を果たすこと。
・自社で蓄積したビッグデータをパートナー企業と共有する等、共創によって新たな価値を社会に還元すること。
といったアスクルらしさを発展させ、働くひとの自己実現をサポートすることで幸せなひとを増やしたいという想いを込めて、2050年ビジョンを「誰もがうれしい自分を次々と実現できる社会をつくる。」と定めました。
そして、中間地点である2035年のあるべき姿を「Beyond Retail~小売を超えて、働くを革新する~」と位置づけ、バックキャストにて2026年5月期から2029年5月期までの4年間に取り組むべき経営方針を新たな中期経営計画として策定いたしました。
新中期経営計画では、「(3)会社の対処すべき課題」に記載の2つのテーマ、①リテール事業の再成長、②新たな価値提供領域の確立、に注力して取り組むことを掲げており、多様な業種・企業規模のお客様の購買ビッグデータの蓄積、全国で当日・翌日配送を可能にする高度に自動化された独自の物流基盤、競合他社との差別化を強化するオリジナル商品の開発力、エージェントの全国各地における強固な営業基盤等の当社グループの強みを活かしながら、成長領域に徹底的に注力し、新たな価値を創造してまいります。
生産労働人口の減少、AI/テクノロジーの進化等、社会を取り巻く環境は加速度的に変化しております。当社はこれからも時代の変化によって生み出されるお客様のお困りごとの解決をサポートし、誰もが何度でも「うれしい」状態になれるような社会を目指してまいります。
(2)目標とする経営指標
新中期経営計画では、最終年度である2029年5月期には、連結売上高6,000億円、連結営業利益率5%、連結株主資本利益率(ROE)20%を目指してまいります。
当連結会計年度(2025年5月期)は、新アスクルWEBサイト(システム)の投資額増加に伴う償却費負担の増加およびソロエルアリーナサイトのオープン化効果の計画未達や、商材拡大(アイテム数)偏重による新規投入商品の低稼働、黒字化優先によるLOHACO事業の売上計画未達、「ASKUL関東DC」立ち上げによる固定費増などにより、売上高は4,811億円、売上高営業利益率は2.9%、ROEは11.6%となりました。
2026年5月期は、お客様数の回復を最優先し、さらなる成長を目指します。一方で「ASKUL関東DC」および基幹システムリプレイス等のプラットフォームの償却開始、「ASKUL関東DC」および関東地区の物流センター再編に係る一過性コスト影響により、売上高は5,000億円、売上高営業利益率は2.2%、ROEは8.6%となる見通しですが、新中期経営計画で掲げている施策の実行スピードを上げることで、2027年5月期のV字回復の実現を目指してまいります。
(3)会社の対処すべき課題
当社グループは、以下2つのテーマに注力して取り組んでまいります。
① リテール事業の再成長
ASKUL事業の戦略ターゲットは、お客様のロイヤリティと成長率が高く、市場のポテンシャルも大きい医療・介護、宿泊、飲食などの対人サービス業種と定めました。また、重点商材領域は、お客様からのご要望が多く、幅広いお客様業種でご利用いただける「仕事場の日用品」と定めました。この領域は市場規模が大きく、BtoB、BtoC共通のニーズも多いことからオリジナル商品の開発がしやすい点も特徴となります。重要テーマは、ニーズに即した品揃え強化、価格競争力があるオリジナル商品による差別化、売り場の利便性強化となり、BtoB市場における多方面の協業検討も開始いたします。
LOHACO事業は、ASKUL事業の規模を活かしたオリジナル商品の提供、ASKUL事業との物流一本化による納期短縮、LINEヤフー株式会社との協業による進化、販売チャネルの拡大により健全な成長による企業価値向上を目指してまいります。
事業を支える物流戦略は、物流ネットワークのさらなる進化により、物流品質向上とコスト低減を図ります。
また、ビッグデータ活用による業務効率化を進化させ、AI AGENTによるサービス革新を目指してまいります。
② 新たな価値提供領域の確立
2035年においては、既存のリテール事業を強化することに加えて、あらゆる業種に幅広くご利用頂いている強固な顧客基盤やバリューチェーンの各プロセスで蓄積したデータ、商品力・物流力・営業力などのアセットを活用し、企業の従業員や企業のお客様に向けたソリューションビジネスを、積極的に推進いたします。新たな価値提供領域の確立のため、2026年5月期期初にCEO直轄に組織を新設しPoC(注)を積極推進するとともに、成長投資枠最大1,000億円の活用によるM&Aや他社協業を積極的に推進し、2035年における既存事業領域と新規事業領域の利益割合(EBITDAベース)50:50を目指してまいります。
(注)Proof of Conceptの頭文字をとった略称で、新しい技術やアイデア等の実現可能性を検証することを指します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日(2025年7月30日)現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、自らの社会的責任を果たし、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図り、取締役会のガバナンス機能を補完することを目的として、リスク担当取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しています。
サステナビリティ委員会においては、サステナビリティおよびESGに関する課題や方針の審議、決定、およびリスク・コンプライアンス委員会、労働安全衛生委員会、品質マネジメント委員会、情報開示委員会の各委員会のモニタリングを行っています。
マテリアリティ(重要課題)への対応やESG施策などを含むサステナビリティに関する課題への取組み・検討・推進に当たっては、当社各部門および当社グループと連携を図るとともに、経営会議および関連各機関とも連携を図り、実効性の向上に努めております。
○CSR/ESG/サステナビリティ推進体制図

合わせて、当社グループの適切なコーポレート・ガバナンスの構築、経営の透明性の確保、企業価値の向上等を目的として、「指名・報酬委員会」「特別委員会」「独立社外役員会議」等を設置し、各課題の審議・検討を行っております。なお、当社は、2025年8月5日開催予定の定時株主総会の議案(決議事項)である「定款一部変更の件」、「取締役(監査等委員である取締役を除く。)9名選任の件」および「監査等委員である取締役4名選任の件」が承認可決された場合、取締役会の過半数が独立社外取締役となることから、監査等委員会設置会社へ移行後の体制においても、少数株主の利益保護および公正性・公平性の担保を図ることができるものと判断し、同定時株主総会での承認可決を前提として、2025年7月4日開催の取締役会において、同定時株主総会の終結と同時に常設の諮問機関としての特別委員会を廃止することを決議しております。
各委員会の活動については、定期的に取締役会に報告されるとともに、特に重要な事項については、随時、取締役会に上程または報告され、適宜必要な指示・助言を受けることでモニタリングが図られています。
上記を含むコーポレート・ガバナンス体制の概要については、「
当社グループは、持続的な成長を成し遂げるための礎として、パーパス(存在意義)とバリューズ(価値観)を策定し、創業からの企業理念「お客様のために進化する」をDNAとし位置付け、これらを「ASKUL WAY」として策定・公表しております。
また、これに合わせ、持続可能な社会の実現に向けた活動指針として、「サステナビリティ基本方針」を策定するとともに、当社が今後とも重点的に取り組むべき「マテリアリティ(重要課題)」を特定し、取組みを推進しております。
当社における「サステナビリティ基本方針」は以下のとおりです。
○「サステナビリティ基本方針」
私たちアスクルグループは 仕事場とくらしと地球の明日を支える企業として
志を同じくする仲間と共に グループ自らの成長を通じて 持続可能な社会の実現に貢献します。
・マテリアリティ(重要課題)特定のプロセス
マテリアリティ(重要課題)の特定に当たっては、当社におけるパーパス(存在意義)・バリューズ(価値観)や社内の各方針等を踏まえつつ、まずは国際的なガイドライン等を参照し、課題を抽出・整理しました。その後、ステークホルダーへのヒアリングなどを通じて、「ステークホルダーにとっての重要度」および「自社にとっての重要度」という2軸に基づき課題を整理・評価検証を行い、さらに経営陣での議論、取締役会の決議を経て、マテリアリティ(重要課題)を特定・決定しました。
・特定したマテリアリティ(重要課題)
経営会議での議論、社外取締役を含む各役員からの意見・検討、サステナビリティ委員会での妥当性確認、取締役会での決議を経て、当社のマテリアリティ(重要課題)として公表しています。
抽出・選定した13の項目のうち、3項目については企業活動の前提条件として「基盤」と位置付け整理するとともに、10項目については、各項目の取組み内容、相互の関連性と今後の推進体制等を踏まえ、5つのテーマに集約・整理しております。
当社のマテリアリティ(重要課題)は以下のとおりです。
当社は、会社法および会社法施行規則に基づき、当社の業務の適正を確保するため、当社の果たすべき社会的責任を認識し、コーポレート・ガバナンスの充実と同時に、コンプライアンス経営を徹底し、リスク管理の観点から、各種リスクを未然に防止する内部統制システムを構築しています。
また、当社グループでは、サステナビリティに関するリスクを含め、将来の経営成績に影響を与えるリスクを「重要なリスク」として抽出しリスクアセスメントを行うと同時に、社会動向の分析、経営陣幹部による認識や検討を踏まえ、特に当社グループの事業継続に著しい影響を及ぼすと認めたリスクを「特に重要なリスク」と定め、必要なリスク対応策を策定しています。
・リスクマネジメントに関する基本方針および行動指針
1 当社および当社グループは、当社グループの持続的成長の妨げとなるすべての事象を対象にリスクを管理するとともに、法令や社会的規範、倫理・行動規範を含む社内規則を遵守し、適正な業務遂行を実施することで、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図る。
2 当社および当社グループの役員および社員は、具体的なリスクが発生した場合には、人命と身体の安全を最優先とし、法と倫理を遵守し、モラルを持って実直に行動する。
・リスクマネジメント・運用体制
当社グループでは、リスクマネジメント規程に基づき、事業活動を担う各本部等の責任者(リスクマネジメントオフィサー)が業務における影響度が特に大きなリスクおよび機会を、年に1回以上の頻度で短期~長期の時間軸の中で洗い出し、それぞれに対応計画を策定するとともに、定期的にモニタリングを行っており、洗い出されたリスクおよび機会とその対応計画は、リスクマネジメント事務局を通じて、リスク・コンプライアンス委員会に提出されます。
これらリスク・コンプライアンス委員会への上程に先立ち、リスクマネジメント事務局では、「リスクマネジメント規程」に基づいて抽出された「全社レベルのリスクおよび機会」と、「各リスクおよび機会」との整合性を確認し統合しています。リスク・コンプライアンス委員会では、年に1回以上の頻度で、各部門の対応計画の実行状況・進捗の確認、見直しを行っています。
また、これらの検討結果および対応状況、ならびに、特に重要な事項については、サステナビリティ委員会および取締役会に上程、または報告され、適宜必要な指示・助言を受けることでモニタリングが図られています。
また、この他、気候変動に関するリスクと機会については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 2.気候変動への取組み(3)リスク管理」を、当社における主なリスクの詳細については、「
当社グループでは、特定したマテリアリティ(重要課題)に基づき、各取組み(アクションプラン)・KPI(指標・目標)を、以下のとおり設定しております。
サステナビリティ委員会、各委員会および経営会議等を通じて、各項目の進捗確認・推進を図るとともに、ステークホルダーとの対話、経営計画および事業計画の進捗などに応じて、活動の検証・見直し・開示を行っております。
○「マテリアリティ(重要課題)に基づく目標・KPI 一覧」(2025年5月期時点)
(注)1 目標・KPIの範囲は、特に記載がない限り、アスクル株式会社のみが対象となっております。
2 Science Based Targetsの頭文字をとった略称で、産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるために、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標の設定を企業に働きかけている国際的イニシアティブです。
3 マテリアリティ(重要課題)に関する、最新の実績数値等、詳細については、以下をご覧ください。
○
https://www.askul.co.jp/corp/assets/pdf/ir_2024j_05.pdf#page=6
また、この他サステナビリティ・ESGに関する各指標や関連データについては以下もご参照ください。
○
https://askul.disclosure.site/ja/themes/105
当社グループのパーパス(存在意義)である「仕事場とくらしと地球の明日に「うれしい」を届け続ける」の実現のために、当社グループでは、商品の原材料調達から仕入・販売および物流配送に至るまでのサプライチェーン全体の維持が最も重要な経営課題であるとの認識のもと、気候変動はこの経営課題に影響を与える重大な要因として捉えており、世界の平均気温を産業革命以前に比べて1.5℃に抑えるように努力する「パリ協定」の実現を目指して、当社グループの物流センター等で利用する電力の再生可能エネルギー由来への切り替えや、配送用小型トラックの電気自動車(EⅤ)化等、CO2排出量の削減に努めています。
2016年には、当社グループの施設および車両が直接的、間接的に排出するCO2を2030年までにゼロとする目標である「2030年CO2ゼロチャレンジ」を宣言するとともに、2017年には、RE100(注1)およびEV100(注2)に参加し、2019年には日本のeコマース事業者として初めてTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、以下のとおり、事業への影響分析やリスクおよび機会の評価、CO2排出量の管理を進めています。
・TCFDへの対応
TCFD提言に基づく気候変動関連情報の開示およびTCFD対照表については以下をご参照ください。
https://askul.disclosure.site/ja/themes/174
https://askul.disclosure.site/ja/themes/106#tcfd
さらに、2024年には、2050年までにサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量をネットゼロ(90%削減、残りを中和)にする目標についてSBTの認定を取得し、サプライチェーンと連携した施策に取り組んでおります。
当社グループでは、気候関連課題における現状確認、課題解決に向けた協議・審議・対策の実施を目的として、環境マネジメントシステム(EMS)推進体制に基づき代表取締役社長CEO、取締役、執行役員および事業の各部門長を参加メンバーとする「EMS会議」を四半期ごとに開催しています。EMS会議で報告、検討された重要事項については、取締役会の下部機関で、それぞれリスク担当取締役が委員長を務め、代表取締役社長CEOおよび社内取締役等から構成されるリスク・コンプライアンス委員会およびサステナビリティ委員会に上程、または報告されます。
リスク・コンプライアンス委員会では、主に気候変動のリスクマネジメントに関する事項について、またサステナビリティ委員会では、気候変動問題が当社グループの持続的成長に及ぼす影響やそれに対する行動計画等について、それぞれ協議、または審議・決定が行われています。また、各委員会に報告された特に重要な事項については、取締役会に上程、または報告され、適宜必要な指示・助言を受けることでモニタリングが図られています。
当社の代表取締役社長CEOは、経営戦略や事業計画および重要な業務執行などを議論する取締役会に出席し、当社グループの最高経営責任者として気候関連課題に対する最終責任を負っています。
代表取締役社長CEOへの気候関連課題の報告プロセスとしては、主に四半期ごとのEMS会議、年に1回のマネジメントレビューがあり、各取組み方針、計画と進捗状況の報告が行われています。代表取締役社長CEOは、各報告プロセスにおいて、気候関連課題の解決に向けた取組みを評価し、全社事業活動との整合性を図り、経営資源の配分や体制の構築、取組みの促進や方向性の修正に関して、必要な意思決定・指示・助言を行っています。
当社グループでは、商品の原材料調達から仕入・販売、および物流配送に至るまでのサプライチェーン全体の維持が最も重要な経営課題であるとの認識のもと、このサプライチェーンの各プロセスにおいて、気候変動に伴う影響を移行リスク、物理的リスクと機会に分類してこれらの重要度を評価しています。
また、評価に当たっては当社の事業戦略やインフラの整備状況のみならず、国際的な政治・社会動向、あるいは法規制の変更といった外的要因も十分考慮しています。
当社グループでは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書におけるSSPシナリオに基づき、前項で重要度が高いと判断されたリスクおよび機会の各項目につき、以下の2種類の気候関連シナリオに基づき、科学的根拠等を用いて2030年時点での財務に及ぼす影響を算定することで、「リスク」を低減し、「機会」を拡大するための事業戦略立案を行っています。
・4℃シナリオ(SSP5-8.5)
各国政府が新たな政策、制度を導入せず温室効果ガスの排出量が抑制されないシナリオ
・1.5℃以下シナリオ(SSP1-1.9)
各国政府がパリ協定達成のために適切な政策、制度を導入し、気温上昇を1.5℃以下に抑えるシナリオ
シナリオ分析の結果は以下のとおりとなり、2030年時点では物理リスクはそれほど顕在化しないと見られる一方、政策・規制や、顧客の嗜好の変化等が、当社グループの事業へ大きな影響を及ぼすとの結果を得ています。
気候変動による事業への影響は、世界的な脱炭素化への動きや、技術革新により刻々と変化してまいりますので、今後ともこうした社会的動向を考慮しながら、財務的な影響を定期的に把握し、リスクマネジメント計画や中期経営計画などを含む当社グループの事業戦略に反映してまいります。
(3)リスク管理
当社グループでは、リスクマネジメント規程に基づき、事業活動を担う各本部等の責任者(リスクマネジメントオフィサー)が業務における影響度が特に大きな気候関連リスクおよび機会を、年に1回以上の頻度で短期~長期の時間軸の中で洗い出し、それぞれに対応計画を策定するとともに、定期的にモニタリングを行っており、洗い出された気候関連リスクおよび機会とその対応計画は、リスクマネジメント事務局を通じて、リスク・コンプライアンス委員会に提出されます。
これらリスク・コンプライアンス委員会への上程に先立ち、リスクマネジメント事務局では、「リスクマネジメント規程」に基づいて抽出された「全社レベルのリスクおよび機会」と、EMS事務局が現在~長期の時間軸を考慮して洗い出した「気候関連リスクおよび機会」との整合性を確認し統合しています。リスク・コンプライアンス委員会では、年に1回以上の頻度で、各部門の対応計画の実行状況・進捗の確認、見直しを行っています。
当社グループでは、気候変動が事業戦略にもたらすリスクおよび機会の影響を評価する指標として、CO2排出量を定めています。
2025年5月期におけるCO2排出量は、以下のとおりです。
なお、上記の数値の内、2024年5月期までについては、JQA(一般財団法人日本品質保証機構)による第三者検証を受けています。2025年5月期については会社算定値であり、今後第三者検証を実施予定です。
CO2排出量は小数点以下を四捨五入して表示しております。また、CO2排出量(連結)については、一部の連結子会社の数値は集計の対象外としております。
当社グループでは、2030年CO2ゼロチャレンジとして、2030年までに当社グループが使用する電力の100%を再生可能エネルギー由来の電力に切り替えるとともに、当社グループで保有またはリースしているお客様向け配送用車両の100%を電気自動車に置き換えることを目標としており、2030年までにScope1+Scope2をゼロとすることを目指しています。また、2050年までにサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量をネットゼロ(90%削減、残りを中和)にする目標を立てており、この削減目標はSBTの「ネットゼロ認定」を取得しています。
このように当社グループは、気候変動に伴うリスクと機会を総合的に管理しながら、当社の事業戦略と統合することで、事業活動を通じて脱炭素社会への移行を推進してまいります。
(注)1 事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が参加する国際ビジネスイニシアチブです。
2 事業運営に関係する車輌をすべて電気自動車に転換することを目標に掲げる企業が参加する国際ビジネスイニシアチブです。
採用・育成・評価処遇など人事全般に関わる基本的な考え方・指針として、「人事ポリシー」を制定し、これに基づき各方針を策定、各種施策を実施しております。
当社の「人事ポリシー」および「多様性確保の考え方」は、それぞれ以下のとおりです。
○「人事ポリシー」
「ASKUL WAY」への共感に基づき、主体的に学び挑戦し、多様な個性と共創し、新たな価値を生み出すことに期待します。その成果と行動に対し公平に報います。
○「多様性確保の考え方」
私たちは、多様性を尊重し、個性を活かした共創こそが新たな価値を生み出す源泉になると考えます。その第一歩として、まずは女性管理職比率30%を達成すると共に、採用、配置、教育、評価・処遇、働き方などにおいて、年齢、性別、学歴、国籍、宗教、人種、民族、思想信条、障がい、性的指向・性自認等によって差別することなく、機会を均等に提供することで、多様性を確保します。
人的資本および多様性に関するリスク・課題・対応状況については、取締役会による監督に基づき、サステナビリティ委員会、労働安全衛生委員会および経営会議等を通じて、審議・決議を実施しております。
労働安全衛生委員会においては、当社および当社グループの労働安全と労働環境の向上を通じて、従業員およびスタッフ等の安全確保および心身の健康・向上、ならびに、生産性と士気の向上を図ることを目的として、労働安全衛生に関する状況の把握と対策に取り組んでいます。
このほか、人的資本・多様性を含むサステナビリティ全般に関するガバナンスについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 1.サステナビリティ全般 (1)ガバナンス」に記載のとおりです。
当社における「多様性の確保に向けた人材育成方針」および「社内環境整備方針」は以下のとおりです。
○「多様性の確保に向けた人材育成方針」
社員一人ひとりがありたい姿を描き、主体的に学び、多様性を生かして共創し、どんな時代になっても「うれしい」を創ることのできる人材を育成していきます。
○「社内環境整備方針」
私たちは、社員一人ひとりが心身ともに健康で、高いモチベーションを維持し、最大限の能力を発揮できるよう、複数の社員サーベイをもとに、状況を科学的かつ多角的に把握し、企業風土を活性化するとともに、社内環境を整備し続けます。
なお、当社グループ各社の事業規模および人事制度等の違いにより当社グループにおける記載は困難であるため、当社グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
人的資本・多様性に関する主なリスクは、サステナビリティ全般に含めて管理しております。詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 1.サステナビリティ全般 (3)リスク管理」をご参照ください。
(注)1 当事業年度または当事業年度末時点の実績を集計対象としております。
2 人材育成を含む各種取り組み、ならびに、指標および目標の管理については、当社グループに属するすべての会社で実施しているものではないため、いずれも、提出会社のみを対象として記載しております。今後は一定のグループ単位の指標および目標の設定・開示も検討してまいります。
3 当事業年度末時点の社員数のうち、当社指定のDX研修を受講・修了した者の人数(退職者を除く)の割合(%)
4 人材育成項目については、今後、新中期経営計画(2026年5月期~2029年5月期)を反映した新たな指標および目標を策定し、取り組んでまいります。
5 健康な状態で発揮できるパフォーマンスを100%とした場合の平均パフォーマンス(%)
6 エンゲージメント(社員と会社の双方向の関係性・つながり)の状況を100点満点で数値化したもの。業務遂行、人事評価、人材育成、人材配置、仕事環境、企業文化等に対する社員定期アンケートの回答から、期待値と実感値を元に算出。
当有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、当社グループでは、将来の経営成績に影響を与えるリスクを「重要なリスク」として抽出しリスクアセスメントを行うと同時に、その中でも特に当社グループの事業継続に著しい影響を及ぼすと認めたリスクを「特に重要なリスク」と定め、必要なリスク対応策を策定しています。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当有価証券報告書提出日(2025年7月30日)現在において判断したものであります。
当社グループが持続的に成長する上で、従業員の安全・安心は最大の優先事項であるとの基本的な考え方に基づき、当社グループでは、オフィス、物流センターにおける設備、車両等の維持・管理、およびそれらを取り扱う従業員向けの安全教育の徹底により、労働災害等の事故撲滅を目指しています。特に、近年の地球温暖化による気温上昇に伴う物流センター構内や配送現場等での熱中症リスクへの対応も重要課題と位置付け、温度管理対策や休憩環境の整備、現場従業員への体調管理支援を強化しています。また、職場における災害の発生、あるいは長時間労働により従業員の心身の健康が脅かされることのないように、建物、設備における防災対策の徹底や労働時間の管理を行っております。しかしながら、不慮の事故、突発的な災害発生、急激な感染症の拡大や不測の事態に伴う長時間労働等により、従業員の生命、健康が損なわれた場合、人的資源の損失のみならず、事後の対応費用等も含めて当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
また、当社グループは、主たる事業であるeコマース事業において、食品・飲料や衛生・医療用品、事務用品、生活雑貨等、多岐にわたるプライベートブランド商品を販売しております。当社グループでは、商品品質の管理部署を設置し、商品の調達先および商品の選定・管理を行い品質水準維持に努めております。さらに、発売後には、お客様相談窓口を通じて、購入されたお客様からのお申し出に関する情報を集約し、さらなる品質向上の活用に努めております。しかしながら、プライベートブランド商品に起因する健康被害、異物混入や商品表示の誤り等が発生し、お客様の生命、身体、健康に対し負の影響を及ぼした場合、お客様の信頼を損ない当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
① 自然災害等に関するリスク
当社グループでは、東日本大震災の被災経験を踏まえ、また、台風の大型化や集中豪雨の頻発といった気象災害の激甚化や巨大地震などの自然災害の発生に伴う大規模な停電や公共交通機関の運休等に備え、受注センター・お問い合わせセンター・物流センターを複数設置することで、リスク分散を図っております。また、事業、拠点、体制等の拡大や当社グループ内外の事業環境の変化に応じて、事業継続計画の見直しを継続して行っております。しかしながら、自然災害の発生確率は依然として高いことから、想定以上の自然災害、特に南海トラフ地震、あるいは地球規模的な重度感染症のまん延など広域かつ深刻な災害が発生し、複数の事業所等が同時に甚大な被害を受け、サービスの継続に支障を来した場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。また、このような広域かつ深刻な自然災害の発生に伴い、当社グループの事業所等のみならず、当社グループの配送委託先やサプライチェーンを構築するサプライヤー等が被害を受けその影響が長期化した場合、特にサプライヤーに関しては当社グループの調達先が海外に拡大していることからグローバルな物流ネットワークの寸断や遅延が長期化した場合にも、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
特に気候変動については、こうしたサプライチェーンの維持のみならず、政策・規制面、あるいは顧客の嗜好の変化など多方面での影響が懸念されます。当社グループでは、こうした気候変動による影響を経営上の重大リスクとして認識するとともに、それに適切に対応することで事業成長の機会に繋がると捉えています。気候変動への取組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 2.気候変動への取組み」に記載しています。
また、当社においてはリモートワークが十分活用されているものの、eコマースという事業内容の特性や事業規模の観点から、本社機能が1ヶ所に集中し、役員、従業員もその周辺に居住していることから、大規模な自然災害等により物理的な本社機能の喪失や通信手段の途絶が長期化した場合には、業務の中枢機能が影響を受けることで、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
なお、自然災害以外の災害、特に火災については、2017年2月に発生した「ASKUL Logi Park首都圏」の火災事故を受け、防火設備点検等の定期的な実施や物流センター運営体制の強化等により再発防止に努めておりますが、万が一こうした災害等が発生した場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
② パートナー企業への業務委託の継続性に関するリスクについて
当社グループの主たる事業であるeコマース事業では、サプライヤーをはじめ、情報システムの開発および保守・運用会社、配送会社、その他の業務の委託先会社、およびASKUL事業独自のエージェント等多くの協力会社によって支えられております。それぞれの機能により、役割を分担・補完し合い、お互いにパートナーとして戦略的に連携し、業務や機能の重複、時間やコストの無駄を排除してお客様価値の最大化を図るバリューチェーンの考え方が当社グループの基本スタンスにあります。当社グループでは、こうした事業モデルを支えるパートナー企業との良好な関係の維持に努めておりますが、ビジネスモデルの進化と市場の変化に伴ってパートナー企業の役割の見直しや、契約関係の改廃が生じ、特定の分野のパートナーが離脱した場合、あるいは各社の経営状況や経営方針の変化等により業務委託等の継続ができなくなった場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、商品調達先のサプライヤーに対して当社グループの販売力に応じて安定した商品供給体制を整えていただくよう要請し、また商品製造拠点のグローバルな最適化を含むサプライチェーンの見直しなどの対応を行っております。しかしながら、サプライチェーンが国内外に拡大しつつある昨今の状況においては、グローバルな経済状況の変化、原産地を含むサプライチェーンにおける政治体制の変化や地域紛争・戦争、あるいはこれらを原因とする国家間の経済制裁などのカントリーリスク・地政学的リスクの増加に伴い、原材料価格の高騰、人手不足、為替変動によるコスト上昇などが発生した場合、安定した商品調達や価格の維持が困難となる可能性があります。
また、当社グループの主力事業であるASKUL事業では、製造業、医療・介護、建設業、サービス業等、多岐にわたる国内の事業者を主要顧客としており、特定の業種の業績悪化に伴う需要減少による影響は限定的と見込んでおります。しかしながら、前述のようなグローバルな経済環境の変化により、為替・関税・通商政策等の転換、さらにはマクロ経済環境の悪化による消費の停滞等が生じた場合には、お客様の購買力または消費意欲が減退し、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
また、グローバルな経済環境の変換という観点からは、地球規模の感染症の拡大など全世界的に特定の商品への需要急増・逼迫等が生じた場合には、商品供給に支障をきたし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、「アスクル」、「ソロエルアリーナ」、「ソロエルエンタープライズ」および「LOHACO」等のサイトを通じてご注文の大半をインターネットによって受け付けているとともに、お客様のお届けに至るサプライチェーン全体をITシステムにて構築しています。
今後、社会のIT化、デジタル化が進むにつれて、インターネットやAI(人工知能)をはじめとするITシステムに特有の技術的または社会的なリスク要因が増大すると見込まれますが、当社グループではサーバーの増強、分散化、最新化および通信回線容量の増強を図るとともに、万一の障害や事故に備えた基幹システムの二重化およびリアルタイムのバックアップ体制の整備、不正アクセスやコンピュータウィルスを防御するネットワーク・セキュリティの強化を行う等、お客様にいつでも安心してサービスをお使いいただけるよう、安定稼働すべく運用を行っております。
しかしながら、基幹システムの障害やネットワークの障害、不測の事態によるインシデントや、外部からの攻撃、ウィルスの侵入等や急激なアクセスの増加等により情報システムの停止が引き起こされる、あるいは情報の流出、破壊もしくは改ざん等が引き起こされる可能性があり、当社グループの事業運営に重大な支障が発生する可能性があります。万一、このような事態が生じた場合には、社会的な信用の低下や損害賠償請求等による多額の費用の発生、または長時間にわたる業務の停止等により当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、事業成長に伴って、情報処理能力や出荷能力の拡大、あるいはお客様向けサービスの刷新を目的に、大規模な情報システム開発や物流インフラ等への設備投資を継続的に実施しています。いずれの場合も、周到に準備を行い、綿密な計画を立案の上、必要な経営資源を投入することにより、決められた期間、予算内で実現するように努めていますが、想定を超えるトラブルの発生等によりスケジュールが大幅に遅延する、あるいは当該システムや設備の完成を断念せざるを得ない可能性があります。その場合、所定の投資費用が回収できないのみならず、多額の追加費用の発生や、ユーザビリティの低下によるお客様の離反、サービスの低下・停止等に伴う社会的信頼の失墜により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
さらに、ITの進歩が著しく、投資したソフトウエア等の利用可能期間が、当初予定したものより短くなった場合、残存期間分の償却が一時に発生し、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。また、いずれのシステム開発および設備投資の実施に際しましても、充分な投資対効果の検証を行った上で実施しておりますが、その効果が充分でない場合、またはその効果の発現が計画より遅れた場合には、固定資産の減損損失を計上することとなり、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社グループは、事業を展開する上で、お客様やお取引先の機密情報や個人情報および当社グループ内の機密情報や役員、従業員等の個人情報を保有しております。これらの情報の破壊、改ざん、あるいは外部流出や競合他社への不正な提供等がないように、当社グループ全体で委託先も含めた管理体制を構築しセキュリティ対策を行うとともに、役員、従業員等への教育を実施しております。また、当社グループでは、情報資産の管理を徹底すべく、情報セキュリティマネジメントシステム(JIS Q 27001)の認証を取得し、JIS Q 27001の要求事項に沿ったマネジメントシステムを確立し、お客様情報および個人情報の保護においても必要な管理体制を整えており、今後も引き続きネットワーク・セキュリティと情報管理に関しまして強化を図ってまいります。しかしながら、万が一、不測の事態により、過去の在籍者を含む当社グループの役員、従業員、あるいは委託先の従業員等によって、これらの情報の破壊、改ざん、あるいは外部流出や競合他社への不正な提供等が引き起こされた場合には、信用低下、被害を受けた方への損害賠償等の多額の費用の発生、または長時間にわたる業務の停止等により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社グループは、事業を展開するにあたり、様々な法律や諸規制の遵守を求められております。当社グループは、役員、従業員共通の規範となる「ASKUL CODE OF CONDUCT」を定めるとともに、コンプライアンスに則した行動をするための体制や仕組みの構築を推進し、健全で公正かつ透明性の高い企業風土を醸成するよう努めております。
しかしながら、このような施策を講じても関連する規制への抵触や、役員、従業員による不祥事、不正行為は完全には回避できない可能性があります。このような事象が発生した場合、当社グループの社会的な信用が低下し、多額の課徴金や損害賠償が請求される等、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
現在、各企業は「社会の公器」として、SDGsに代表されるような環境や人権をはじめとするグローバルな社会課題への対応を求められています。当社グループも「責任あるサプライチェーンの構築」の一環として、「アスクルサステナブル調達方針」を定めるなど、企業活動を通じて、積極的にこうしたグローバルな社会課題の解決に努めております。
しかしながら、こうしたグローバルな社会課題は、原因が複雑に絡み合い、関係者の利害も多岐にわたることから、当社グループの取組み方が不十分な場合、あるいはその成果がお客様、あるいは社会一般の期待に添えない場合には、社会的信用の低下を招き、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは上場企業として、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制を整備し運用する必要があります。当社グループは、効果的な内部統制システムの整備は極めて重要であると認識し、必要な経営資源を投下し相当な程度で緻密な整備に取り組んでおりますが、判断の誤りや過失の可能性を完全に排除することは極めて困難とみられます。内部統制上の重大な欠陥等が発見された場合、あるいは改善に要する新たな資源投入により追加的コストが発生した場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
また、財務報告に関わる内部統制に欠陥があり決算発表を延期せざるをえない等、市場における当社グループの評価が毀損するおそれが生じた場合、さらには欠陥の重大性や原因等の程度によって、法的責任が課せられた場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社グループの事業は、物流センターの庫内業務や配送業務等、労働集約型の業務がお客様との接点を支えており、質の高い人材を常に一定数確保することが重要であります。また、今後更なる事業拡大およびテクノロジーやサービスの進化に挑戦していくためエンジニアなどの優秀な人材を継続的に採用、確保することとともに、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保も重要となっております。さらには人材育成を継続的に推進していくことや、性別、年齢、人種、国籍の違いを尊重したダイバーシティを適切に推進することも必要となっております。当社グループは、ダイバーシティに十分に配慮しながら、事業の持続的成長のために新卒採用や経験者の中途採用を実施し、人材を育成するための各種教育の実施等、従業員のモチベーションを向上する仕組みを構築することにより労働環境の改善に継続的に取組み、従業員満足度の向上、および従業員の定着を図っております。
一方、国内においては人手不足問題が顕在化しており、このような状況下において事業の継続、拡大に必要な人材を継続的に獲得するための競争は厳しく、こうした人材を確保できなかった場合、あるいは確保するために人件費が大幅に増加した場合、また、従業員満足度の低下に伴う転職者の増加等、人材の定着率が低下した場合には、商品価格、品揃えや配送納期、新規サービスの提供などの点においてサービスレベルの劣化や競争優位性の低下を招くことにより、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社は「お客様のために進化する」ことをDNAとしてずっと大切にしてきました。このDNAを根付かせ、企業文化へと昇華することを目指して、進化・変化にチャレンジする人材の育成をするための集合研修・OJT教育、および進化・変化へのチャレンジを後押しする人事評価制度を導入・整備してきました。これらにより「お客様のために進化する」というDNAは確実に根付いてきたと思われますが、一方、事業環境は急速に変化しており、それに応じたスキルを身に付けていないと人材価値が陳腐化することが危惧されています。キャリアの再構築や新たなスキルを習得するリスキリングには相当の手間や時間を要することから、このような人材育成が停滞することにより、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社は「明日来る」という時間を約束したサービスの提供により、これまで事業を拡大してきました。この成功体験に捉われることなく、ビジネスモデルの変革に向けて、イノベーションやトランスフォーメーションを促進する人材の育成を重要と位置付け、労働環境の整備や人事評価制度の導入・整備など組織のアップデートを進めております。しかしながら、現行のビジネスモデルへの過度の依存による事業変革の遅れや、競合他社のサービス進化への対応不足により市場優位性を喪失し、お客様の離反を招いた場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
加えて、昨今の事業環境の急速な変化に応じて法改正や制度変更が行われており、当社グループでは適宜これに対応していますが、対応が不十分である場合や対応に時間を要する場合、ビジネスモデルの毀損や収益構造の悪化、競争力の低下といった事態が発生し、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
さらに、当社グループではM&Aや新規事業の立ち上げを通じて成長を図っておりますが、こうした取り組みにおいて所定のシナジーが十分に実現されない場合、期待収益の大幅な悪化が生じるリスクがあります。こちらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの競争優位性が損なわれ、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
近年、生成AIをはじめとするAI技術は急速に進展しており、業務効率化やお客様対応、商品開発など、さまざまな分野で活用が進んでいます。当社グループにおいても、こうしたAIの進化を競争力向上やサービス進化の機会と捉え、その活用を積極的に進めています。しかしながら、競合他社よりもAIの活用が遅れる場合や、AIを活用できる人材の確保・育成が十分に行われない場合、競争力の低下を招く可能性があります。さらに、お客様においてもAIの活用により購買行動や意思決定のあり方が大きく変化すると見られ、それらに適切に対応できない場合、顧客満足度の低下や売上機会の喪失につながる可能性があります。
また、当社グループの事業に関して、AIによって生成された偽情報や誤情報が拡散された場合、企業ブランドの毀損や信用低下といった重大な影響を及ぼすおそれがあり、こうした事態に早期に適切な対応を取れなかった場合には、当社グループの事業運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、商品品質の管理部署を設置し、商品の調達先および商品の選定・管理を行い品質水準維持に努めておりますが、商品の品質問題に起因するリコール等が発生した場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。また、特に当社グループで製造している食品・飲料等の取扱商品については、食品衛生に関わる設備の充実、品質チェック体制の確立等、お客様に安全な商品をお届けできるよう努めておりますが、品質や商品情報等に瑕疵等が発生した場合、商品回収や製造物責任賠償が生じることもあり、その場合、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社グループは、eコマース事業において通信販売事業者として「消費者契約法」、「特定商取引に関する法律」、「不当景品類及び不当表示防止法」、医薬品等販売事業者として「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、その他「個人情報保護法」、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」等の規制を受けております。また、当社グループは医療・介護施設向け用品や医療機関向けの医療専門商材、一般消費者向けの医薬品、健康食品、酒類等をはじめ多岐にわたる商材を取り扱っており、これらの商材の販売および管理は、関連法規等により規制を受けるものもあり、必要な各種許認可の取得、登録、届出等を行っております。その他、当社グループは、特定・一般建設業の許可、第一種貨物利用運送事業の登録、一般貨物自動車運送事業の許可、貨物軽自動車運送事業の届出、倉庫業の登録、その他各種許認可の取得、登録、届出等を行っております。また、ビジネスの構造上、多くのお取引先と多様な取引を行っており、独占禁止法、下請法等一般的なビジネスに関わる法令の対象となっています。
こうした各種の法令については、従業員に対して必要な教育や啓発活動を行うとともに、これらの法令の規制改正や新たな法的規制については、規制当局やお取引先を通じて適宜把握し、必要な対応策を講じています。しかしながら、担当する従業員の理解不足や、社内の部門間連携の不手際等によりこれらの規制を遵守できなかった場合、当社グループの営業活動が制限され、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
また、当社グループの主たる事業であるeコマース事業で取り扱っている商品アイテム数は年を追うごとに加速度的に増加しています。商品の選定、およびその商品情報のインターネットや紙カタログへの掲載におきましては、人為的なミスを回避するためシステム化を進めるとともに、法令遵守のための専門組織を中心とする管理体制を設け、細心の注意を払っておりますが、表示内容に重大な瑕疵が発生した場合には、内容訂正やお詫び、損害賠償、法令違反への対応をはじめとする様々な対応を行う事態が発生することが考えられます。その場合、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社グループは取扱商品数やご利用お客様数の増加に対応するため、中期的な売上予測を踏まえて物流センターの新設を含む出荷能力向上のための設備投資計画を入念に立案・実行しております。しかしながらこのような設備投資、特に大型の投資は計画から稼働開始まで年単位を要することから、その間に不測の事態により設備投資の実施が遅延する、あるいは売上増加が物流センターの出荷能力の想定値を大幅に上回る事態が発生する可能性があります。その場合、受注件数が出荷能力を超える事態が常態化し、お客様へ商品をお届けする納期が遅延する状況が続くことでお客様の離反に繋がり、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(4)競合企業の新規参入等に関するリスク
当社グループのビジネスモデルの主要な構成要素であるeコマースは、技術革新の変化が早く、また成長産業であるため資金調達も比較的容易である上に、店舗などの物理的、地理的な制約が比較的少ないことから、後発企業であっても一気にシェアを拡大できる余地が高いビジネスと考えられています。当社グループとしても、グループ内においてエンジニア等専門家の採用、育成を進めるとともに外部の先進的なパートナーと連携をすることで、こうした技術革新に対応し、ビジネスモデルを持続的に進化させているものの、新たな競合企業の参入や、既存の競合企業の台頭により競争が激化する可能性があり、その可能性が顕在化した場合、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社およびLINEヤフー株式会社は、2012年4月27日付けで業務・資本提携契約を締結して以降、両社は事業運営の独立性をお互いに尊重し、イコールパートナーシップの精神の下、それぞれが有する集客能力、お客様、仕入先、決済システム、インターネットサービスに係るシステムおよびデザイン技術、物流・配送設備および物流・配送のオペレーション能力、ならびに、それらに関するノウハウ、人材その他のリソースを相互に提供し合い、「お客様に最高のeコマースを提供する」という壮大な目標を実現すべく、当社が運営する「LOHACO」をeコマース史上最も早い成長速度で立ち上げてまいりました。
両社は「LOHACO」をさらに大きく成長させるとともに収益性の向上を図るために、3年間培ってきた信頼関係をベースにさらなる発展および連携の強化を図ることが最善であると判断し、2015年5月19日付けで、業務・資本提携契約を更改いたしました。
当社は、更改された契約日以降、当社の株式の議決権希薄化行為(注)を行おうとする場合には、LINEヤフー株式会社に対して、議決権希薄化行為を行う旨およびその条件を書面にて通知した上で、議決権希薄化行為の直前の時点におけるLINEヤフー株式会社の当社の株式に係る議決権割合を維持するために必要なあらゆる措置を適時かつ適切に講じるものとしております。加えて、当社は、当社の新株予約権その他の潜在株式の行使または株式への転換(以下「新株予約権行使等」という。)により、当該新株予約権行使等の直後の時点におけるLINEヤフー株式会社の当社株式に係る議決権割合が、(a)2015年8月27日の自己株式取得の終了時点におけるLINEヤフー株式会社およびその子会社の当社株式に係る議決権割合よりも100分の1以上低下し、かつ、(b)直前に上記措置を講じた時点におけるLINEヤフー株式会社およびその子会社の当社の株式に係る議決権割合よりも100分の1以上低下した場合には、LINEヤフー株式会社に対して、その旨を書面にて通知した上で、2015年8月27日の自己株式取得の終了時点におけるLINEヤフー株式会社およびその子会社の当社株式に係る議決権割合を回復または維持するために必要なあらゆる措置を講じるものとしております。このため、当該措置を講じた場合、当社の株式の議決権の希薄化が生じる可能性があります。
なお、LINEヤフー株式会社は、更改された契約日以降、自らまたは第三者をして、当社の株式を追加取得(LINEヤフー株式会社または第三者が当社の株式を有するその他の第三者(有価証券報告書または半期報告書の大株主の状況の記載により、当社の株式を有することが合理的に認知可能な第三者に限る。)の株式その他の持分を取得することにより、当社の株式を間接保有することとなる態様による取得を含む。)することを希望する場合は、事前に当社に対して書面により通知し、LINEヤフー株式会社および当社の書面による合意に基づいて実施するものとしております。
その他、LINEヤフー株式会社は、LINEヤフー株式会社および契約更改後にLINEヤフー株式会社の子会社となった当該子会社(以下「LINEヤフーグループ」という。)の保有する当社の株式に係る議決権割合が、2015年8月27日の自己株式取得の終了時点におけるLINEヤフーグループの保有する当社の株式に係る議決権割合の合計よりも100分の1以上上昇した場合には、速やかに、市場取引等により当社の株式を売却し、または売却せしめることその他、LINEヤフーグループの当社の株式に係る議決権割合の合計を、本自己株式取得の終了時点におけるLINEヤフー株式会社の議決権割合の合計に復するために必要な措置を講じるものとしております。但し、上記に定めるLINEヤフー株式会社および当社の書面による合意に基づいて行われる取引により、または当社による自己株式取得その他LINEヤフーグループの作為によらずに、LINEヤフーグループの当社の株式に係る議決権割合の合計が上昇した場合は、この限りではありません。上記等により株価等に影響を及ぼす可能性があります。
(注)当社の株式の議決権の希薄化が生じる可能性のある一切の行為(募集株式の発行、自己株式の処分、株式の発行を伴う組織再編等、議決権の希薄化が現に生じる行為のほか、新株予約権、議決権のある株式に転換可能な種類株式その他の潜在株式の発行等、将来議決権の希薄化が生じる可能性のある行為を含みます。但し、既に発行済の新株予約権の行使による当社の株式の発行若しくはそれに伴う自己株式の交付、または、当社の単元未満株式を有する株主から、会社法第194条第1項および当社の定款第10条に基づく単元未満株式の売渡請求がなされた場合において、当社がその保有する自己株式を当該株主に売り渡す行為を除きます。)を指します。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度(2024年5月21日から2025年5月20日まで)におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下でインバウンド需要の増加等もあり、緩やかに景気が回復しております。一方、不安定な国際情勢を背景とした原材料価格・エネルギー価格の高騰や急激な為替変動および世界的な金融引締めによる景気への影響が懸念され、通商政策などのアメリカの政策動向が個人消費に及ぼす影響等もあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような状況の中、当社グループは、当連結会計年度が中期経営計画(2022年5月期~2025年5月期)の最終年度にあたり、売上高、営業利益ともに過去最高額の更新を目指してまいりました。当連結会計年度においては、主力であるASKUL事業におけるお客様数の減少および従来型オフィス商材の需要の伸び悩みを背景に売上高成長率が鈍化したものの、お客様購入単価が伸長し売上高は過去最高額を更新しました。売上高再成長を図るためDXによる価格適正化やお客様ニーズに応える品揃え拡大、オリジナル商品の強化等に取り組んでおり、施策の実行スピードを加速させてまいりました。また、期初計画通りではありますが、関東圏の物流センター再編のスタートとして2025年6月に稼働しました「ASKUL関東DC」の準備費用の発生に対して、為替影響等による仕入原価上昇に伴い売上総利益で当該費用を吸収するまでには至らず営業利益は減益となりました。
以上の結果、当連結会計年度の当社グループの業績は、売上高4,811億1百万円(前期比2.0%増)、営業利益140億4百万円(前期比17.4%減)、経常利益138億16百万円(前期比17.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益90億68百万円(前期比52.6%減)となりました。
セグメント別の経営成績につきましては、以下のとおりです。
<eコマース事業>
(注)eコマース事業については、従来「BtoB事業」「BtoC事業」の区分にて売上高の開示をしておりましたが、より経営実態に即した開示への見直しを行い、当連結会計年度より「ASKUL事業」「LOHACO事業」「グループ会社・内部取引消去」の区分に変更しております。「ASKUL事業」はBtoB事業、「LOHACO事業」はBtoC事業、「グループ会社・内部取引消去」は、BtoB事業とBtoC事業の両事業になります。
当連結会計年度のeコマース事業については、売上高は、4,722億31百万円(前期比2.1%増)と堅調に伸長しました。一方、当連結会計年度の下期以降改善しているものの為替影響等による売上総利益率の低下に加えて、2025年6月に稼働した「ASKUL関東DC」に係る地代家賃の固定費の増加等もあり、営業利益は142億55百万円(前期比16.6%減)となり、増収減益となりました。
売上高、営業利益の状況は、主に以下のとおりです。
1)売上高
a. ASKUL事業
・従来型オフィス用品(オフィス家具、インクやトナー、文具など)に対する需要は伸び悩むも、生活用品、メディカルは堅調に推移し、前期比1.5%の伸長
・仕入原価の高騰を背景とした断続的な商品値上げや配送バー(注)改定等によりお客様単価は前期比で増加、一方、お客様数は当第4四半期連結会計期間では回復しているものの前期比で減少
・中小企業向け売上高は需要回復遅れによる購買金額に伸び悩みも、中堅大企業向け売上高は堅調に推移
b. LOHACO事業
・LINEヤフー株式会社と連携した販促施策等の効果もあり、前期比1.9%の伸長
c. グループ会社・内部取引消去
・株式会社アルファパーチェス、フィード株式会社の売上高が堅調に推移し、前期比5.6%の伸長
2)営業利益
営業利益は、142億55百万円と前期比で28億42百万円減少しておりますが、主に、売上総利益率が24.8%と前期比で0.5ポイント低下したこと、固定費が増加した影響等により販管費比率が21.8%と前期比で0.2ポイント増加したことによるものであり、内容は以下のとおりです。
・コピーペーパー等の輸入商品について、為替影響により仕入原価が増加し、売上総利益率が低下
・前期に実施した配送バー改定後もお客様のまとめ買いが継続しており、一箱あたりの売上単価が改善するとともに、売上高配送費比率が低下し、配送費を逓減
・「ASKUL関東DC」の賃借開始により、地代家賃や来期稼働に向けた準備費用(合計17億30百万円)が発生
<ロジスティクス事業>
ASKUL LOGIST株式会社の当社グループ外の物流業務受託の売上高は減収となりました。サービス価格の見直しや生産性の向上等により採算性の改善を進めたものの、減収を吸収するには至らず、減益となりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は82億15百万円(前期比4.0%減)、営業損失は2億99百万円(前期は営業損失1億46百万円)となっております。
<その他>
嬬恋銘水株式会社での飲料水の販売が新商品を含め堅調に推移しました。営業利益は生産性の一層の向上により大幅な増益となりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は20億30百万円(前期比4.0%増)、営業利益は99百万円(前期比241.5%増)となっております。
(注) 基本配送料を当社が負担する注文金額基準。
財政状態の状況は以下の通りであります。
(資産の部)
当連結会計年度末における総資産は2,277億82百万円となり、前連結会計年度末と比べ152億80百万円減少いたしました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産が59億91百万円、建設仮勘定が44億69百万円、ソフトウエア仮勘定が31億84百万円増加した一方、現金及び預金が「ALP首都圏」火災に係る損害賠償金の入金に対し、法人税等および自己株式取得に係る支払い等により133億21百万円、未収入金が118億93百万円、リース資産が23億33百万円、ソフトウエアが19億19百万円減少したことによるものであります。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債は1,465億27百万円となり、前連結会計年度末と比べ151億98百万円減少いたしました。これは主に、長期借入金(1年内返済予定を含む)が24億90百万円増加した一方、未払法人税等が68億41百万円、電子記録債務が43億46百万円、未払金が25億79百万円、リース債務が23億92百万円、未払消費税等が18億27百万円減少したことによるものであります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産は812億54百万円となり、前連結会計年度末と比べ81百万円減少いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益90億68百万円の計上に対し、自己株式の消却が58億79百万円、配当金の支払いが35億44百万円あったことにより、利益剰余金が3億57百万円減少したことによるものであります。
以上の結果、自己資本比率は34.2%(前連結会計年度末は32.2%)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は484億23百万円となり、前連結会計年度末に比べ133億21百万円減少いたしました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、129億8百万円の収入(前期は168億87百万円の収入)となりました。これは、法人税等の支払額117億62百万円、売上債権の増加額59億37百万円、仕入債務の減少額49億54百万円があった一方、税金等調整前当期純利益136億18百万円、損害賠償金の受取額118億81百万円、減価償却費、ソフトウエア償却費、のれん償却額および顧客関連資産償却額の合計110億37百万円があったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、165億79百万円の支出(前期は115億37百万円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出92億81百万円、ソフトウエアの取得による支出61億67百万円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、96億49百万円の支出(前期は98億28百万円の支出)となりました。これは、長期借入れによる収入66億35百万円があった一方、自己株式の取得による支出62億19百万円、長期借入金の返済による支出41億99百万円、配当金の支払額35億44百万円、リース債務の返済による支出31億65百万円があったこと等によるものであります。
③ 生産、仕入および販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 「その他」の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、水の製造を行っております。
2 金額は、製造原価によっております。
3 eコマース事業およびロジスティクス事業につきましては、生産業務を行っていないため該当事項はありません。
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 「その他」の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、水の製造を行っております。
2 セグメント間取引については、相殺消去しております。
3 金額は、仕入価格によっております。
4 ロジスティクス事業につきましては、物流・小口貨物輸送サービスの提供が主要な事業であるため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 「その他」の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、水の製造を行っております。
2 セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日(2025年7月30日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。連結財務諸表の作成にあたっては、報告期間の期末日における資産・負債の計上、期中の収益・費用の計上を行うため、必要に応じて会計上の見積りを用いております。この会計上の見積りには、その性質上不確実性があり、実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りのうち、重要なものは以下のとおりであります。なお、当連結会計年度の連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りのうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあるものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(固定資産の減損)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産グループについて、資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識および測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、新たに減損処理が必要となる可能性があります。
(のれんおよび顧客関連資産の減損)
当社グループは、のれんおよび顧客関連資産について、その効果の発現する期間にわたって均等償却しております。また、その資産性について子会社の業績や事業計画等を基に検討しており、将来において当初想定していた収益が見込めなくなった場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上する可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
繰延税金資産については、将来の利益計画に基づく課税所得を慎重に見積り、回収可能性を判断した上で計上しております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額が減少した場合は、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
a. 経営成績等
「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
b. キャッシュ・フローの分析
「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社グループが属するeコマース市場は引き続き成長が見込まれているものの、競合とのサービス競争は激化しており、競合他社の状況が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があります。当社グループといたしましては、主要なASKUL事業は、データドリブンな意思決定による商品採用・価格決定業務等のスピード向上のためのマーチャンダイジングDXを進めると同時に、マーケティングラボをはじめとするサプライヤーとの連携によるデータ活用等により品揃えを強化してまいります。また、データ活用により優良化しやすいお客様をターゲティングした開拓手法の強化や登録後の定着施策の実施によるお客様の開拓手法や定着率向上施策の見直し、レコメンドエンジン最適化等による販促精度の向上、検索のアルゴリズム最適化とお客様の声に基づいた機能改善によりサイト進化を図りUI/UXを強化してまいります。その他、経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りです。
当社グループの資金需要の主なものは、物流センターの新設・増強やWEBサイトの刷新等の設備投資資金、各事業の成長を加速させるためのシナジー効果のある事業者の買収資金等があります。
設備投資資金や買収資金等の資金については、金利コスト等を勘案しながら、自己資金または金融機関からの借入金、リース契約等により調達しております。
当社グループは、2025年7月4日に2029年5月期を最終年度とする4年間の中期経営計画を発表いたしました。中期経営計画では、2029年5月期の経営目標として連結売上高6,000億円、連結営業利益率5%、ROE20%を目標に掲げております。なお、当連結会計年度においては連結売上高4,811億円、連結営業利益率2.9%、ROE11.6%となっております。
当社は、当社の株主であるLINEヤフー株式会社との間で、企業・株主間のガバナンスに関する合意、および企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意を含む業務・資本提携契約を締結しております。
契約に関する内容等は、以下のとおりであります。
当社およびLINEヤフー株式会社は、2012年4月27日付けで業務・資本提携契約を締結して以降、両社は事業運営の独立性をお互いに尊重し、イコールパートナーシップの精神の下、それぞれが有する集客能力、お客様、仕入先、決済システム、インターネットサービスに係るシステムおよびデザイン技術、物流・配送設備および物流・配送のオペレーション能力、ならびに、それらに関するノウハウ、人材その他のリソースを相互に提供し合い、「お客様に最高のeコマースを提供する」という壮大な目標を実現すべく、当社が運営する「LOHACO」をeコマース史上最も早い成長速度で立ち上げてまいりました。
両社は「LOHACO」をさらに大きく成長させるとともに収益性の向上を図るために、3年間培ってきた信頼関係をベースにさらなる発展および連携の強化を図ることが最善であると判断し、2015年5月19日付けで、改めて当業務・資本提携契約を締結したものです。
当業務・資本提携契約締結の意思決定にあたり、独立した立場で議論されることが重要であるとの認識のもと、当業務・資本提携契約に利害関係のない社外取締役・社外監査役で構成される任意の独立委員会を設置し、審議・検討を行った結果、①本業務・資本提携契約の締結は当社の中長期的な企業価値の向上に資するものである、②当社とLINEヤフー株式会社の関係はイコールパートナーシップの精神が継続され、かつそれぞれが独立した上場会社として事業運営の独立性が確保される、との結論に至っております。
独立委員会における上記結論も踏まえ、2015年5月19日開催の取締役会にて当業務・資本提携契約の締結を決議しております。
当社の取締役会は、取締役10名のうち5名を独立社外取締役で構成し、独立性を確保しているほか、取締役会の諮問機関として、当該独立社外取締役2名を含む独立役員で構成される特別委員会を常設しております。当該委員会においては、LINEヤフー株式会社などのグループ会社との取引実施時の意思決定のモニタリングなど、監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンスのさらなる向上と、当社少数株主の保護を図るため、当社グループのガバナンス等に関する重要な事項について審議を行っております。
これら経営モニタリング体制の充実、牽制機能の強化により、当該合意が当社の企業統治に及ぼす影響は限定的かつ軽微であると判断しております。
なお、当社は、2025年8月5日開催予定の定時株主総会の議案(決議事項)である「定款一部変更の件」、「取締役(監査等委員である取締役を除く。)9名選任の件」および「監査等委員である取締役4名選任の件」が承認可決された場合、取締役会の過半数が独立社外取締役となることから、監査等委員会設置会社へ移行後の体制においても、少数株主の利益保護および公正性・公平性の担保を図ることができるものと判断し、同定時株主総会での承認可決を前提として、2025年7月4日開催の取締役会において、同定時株主総会の終結と同時に常設の諮問機関としての特別委員会を廃止することを決議しております。
特記すべき事項はありません。