第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「なくてはならぬ人となれ なくてはならぬ企業であれ」を企業理念に掲げ、「Play fashion!」のミッションの下、私たちが提案するファッションを通じて、人々の心を豊かに、幸せにすることを使命としています。いつの時代も変わらぬこのミッションの下で、持続可能な成長を目指し、お客様一人ひとりの毎日を今よりもっと楽しくする選択肢をご提供することで、事業を通じた社会・業界の課題解決への貢献を果たしてまいります。

 


 

(2) 中期的な会社の経営戦略(経営環境、対処すべき課題と経営戦略)

日本経済は、賃金上昇による個人消費の緩やかな改善傾向やインバウンド需要の増加、企業収益の改善を背景に堅調に推移をしています。一方で、原材料及びエネルギー価格などの物価や金利の上昇、人件費の上昇や労働力不足、為替の変動、地政学リスクの増大など事業環境への懸念は続いています。国内アパレル事業における市場環境として、総務省統計局の実施している家計調査によれば、2024年1月から12月における家計の被服費支出は未だパンデミック以前の9割未満に留まっており、一定の回復余地があるものと期待されます。また、タイトな労働需給を背景として名目賃金の増加が続いており、当社の主力顧客である若年層の個人消費の追い風も見込まれます。一方で、ライフスタイルや顧客の嗜好の変化は不可逆的であり、従前と同様の消費行動は戻らないとの前提に立つ必要があり、生活雑貨類の需要増加、ビジネスシーンにおける服装のカジュアル化、エコノミー市場とEC市場の拡大など、変化に柔軟に対応し、新たに生まれた需要を確実に取り込むための対応を進めています。また中長期的には、国内アパレル市場は少子高齢化により緩やかな縮小が構造的に続く一方、海外アパレル市場は人口の増加や新興国の所得水準向上を背景に、拡大を続ける見通しです。

このような経営環境の下、当社は2022年4月に策定した2026年2月期を最終年度とする中期経営計画に基づき、成長と収益性向上の実現を目指してきました。しかし、円安の進行、人件費の上昇、国内外の物価や資源・エネルギー価格の高騰といった経営環境の大きな変化により、2026年2月期における利益目標の達成が困難な見通しとなりました。

この変化する環境へ迅速に対応し、事業構造を変革するため、当社は2030年2月期を最終年度とする「中期経営計画2030」を策定し、2025年4月に発表しました。「中期経営計画2030」では、当社の強みであるマルチブランドで培ったリアル店舗とスタッフが築くお客様との濃いつながりを活用し、プラットフォーム事業、グローバル事業、ブランドリテール事業の3つの事業が互いにシナジーを創出しながら、自社ECである「and ST」を「Play fashion!プラットフォーマー」へと進化させることを目指しています。また、これに合わせて2025年9月1日より、アンドエスティホールディングス株式会社へと改称し、ホールディングス体制に移行することを予定しています。

 

中期経営計画の概要は下の図の通りです。

 


 

対処すべき課題、具体的な成長戦略の内容は以下の通りです。

プラットフォーム事業(グループ価値革新のエンジン)

ファッションの重要性は、近年アパレルだけでなく住まいや食、旅やスポーツなど、生活の様々な場面に広がり、ライフスタイルという一つの大きな市場になりつつあります。当社では既存の業界や業態の壁を越えた新たな成長領域の育成を進めています。また、デジタル技術が生活に浸透したことにより、EC市場が大きく伸長しただけでなく、新たな顧客体験やサービスの機会が生まれています。リアル店舗とWEB双方でシームレスなサービス・体験を提供するとともに、店舗運営や商品企画、PR、物流など、あらゆる面で価値創造を進めていくことが必要です。当社は1,900万人以上の「and ST」顧客会員を有しており、この会員基盤のつながりを最大限に生かし、自社EC「and ST」をモール&メディアに育てます。そして、外部企業による出店を加速し、取扱いカテゴリーの拡充や、スタッフとお客様の関係性強化などプラットフォーマーとしての成長戦略を推進し、ID(顧客基盤)とLTV(顧客生涯価値)の双方を拡大することで、流通総額1,000億円をめざします。

同時に、外部企業へのブランド提供などBtoB向けプロデュース事業や、ECサイト上でお客様にスタイリングを提案するSTAFF BOARDの外販によるソリューション事業、外部とのポイント連携によるユーザーサービスの拡充などにより、ファッションの可能性を広げながら、収益率の向上を目指します。

 

グローバル事業(グループ価値拡大のアクセル)

将来の国内アパレル市場は少子高齢化により構造的な縮小が進むことを前提とすると、長期に渡る成長の継続のため、市場が拡大するアジアへの展開が不可欠であると考えられます。当社では、2019年12月にオープンしたニコアンド上海旗艦店を皮切りに、地域ごとに異なる嗜好や生活文化を持つお客様を理解し、商品開発、MD構成、店頭表現などあらゆる面で現地のお客様のより豊かで楽しい生活に貢献する戦略を展開しております。2024年は、中国大陸でのEC拡大や、台湾や香港でのマルチブランド出店、東南アジア市場の開拓としてタイ・フィリピンへの出店を進めてきました。米国事業は消費の低迷で厳しい状況が続くなか、小売事業への切り替えやコスト削減施策を講じてきましたが、大幅な減益となりました。米国事業の早期の業績回復は困難と考え、グローバル事業のリソースを人口と経済の高成長が見込まれる東南アジアに集中するため、米国事業からの戦略撤退を決定しました。

今後は東南アジアを次の柱として投資を加速させ、リアル店舗の出店と並行して日本で培ったECプラットフォームによるOMO戦略を展開し、将来的に東南アジア地域の高い経済成長を取り込める体制を整えます。グレーターチャイナ(中国大陸・香港・台湾)では、マルチブランド戦略を強化し安定成長を図ります。

 

 

ブランドリテール事業(グループ価値創造の基盤)

長期的には、国内では少子高齢化や可処分所得の減少により、アパレル市場の緩やかな縮小が構造的に続くと予想されております。一方で、アクティブシニア、ウェルネス志向、生活雑貨のニーズ拡大など、ライフスタイルの多様化がもたらす新たな需要もあり、これらを素早く確実にとらえることが求められます。

このような市場の変化に対応するため、当社は多数の独自ブランドを擁し、マルチブランドポートフォリオ経営を進めてきました。今後はグループ各社がそれぞれのミッションに応じた戦略策定・事業運営を行うマルチカンパニー体制へ移行し、ポートフォリオ経営を強化します。グループの中核である株式会社アダストリアでは、グローバルワーク、ラコレ、ジョージズといった注力ブランドへの集中投資、都市部への出店強化や店舗の大型化など出店戦略のアップデートにより、持続的な成長と収益向上の両立を図ります。その他の主要なグループ会社では、株式会社エレメントルールは高価格帯セレクトマーケットにおけるハイエンド顧客層の獲得、株式会社バズウィットはZ世代を中心に細分化するニーズを捉えた迅速な新ブランドの創出、株式会社ゼットンは人が集う場づくりとしての飲食事業をそれぞれ役割とし、グループシナジーを活用した成長を目指します。

また、これらの戦略を支えるデジタル、ロジスティクス、生産機能についてはバリューチェーンの共通化などで高度化や効率化を進め、お客様に豊かな選択肢を提供します。

 

④ サステナブル経営の推進

アパレル産業では、商品の大量生産・廃棄や、原料栽培や生産過程での土壌・水質汚染、生産地域における労働者の人権尊重や従業員の働き方など産業全体で対応すべき課題を有しています。当社では、「ファッションのワクワクを、未来まで。」をサステナビリティポリシーに掲げ、「環境を守る」「人を輝かせる」「地域と成長する」の3つの重点テーマを定めています。環境負荷低減に向けては、衣料品在庫の焼却処分ゼロを継続、生産過程での環境負荷低減、サステナブルな原料・加工への切り替えの他、ショッピングバッグの使用量削減や衣料品回収プロジェクトの拡大などに取り組んでいます。環境負荷の可視化も進め、当社グループのCO2排出量を把握するとともに、TCFD提言に沿った情報開示を行いました。また、人権尊重や労働環境の整備、環境配慮などを明記した調達方針と調達ガイドラインを定め、取引先工場へ遵守を求めています。従業員が生き生きと長く働き続けることができる職場環境づくりのために、女性活躍をはじめとするダイバーシティの推進や、働き方の変革にも取り組んでいます。地域社会との共生においては、生産地域の持続的な発展に向けて、工場モニタリングの実施や、ビジネス全体の透明性向上を目的とした特定サプライヤーリストの公開を行い、共に成長しあえる関係を構築しています。当社はこれらの取り組みを促進することにより、ステークホルダーの皆様との関係を良好な状態で維持し、当社のミッションである「Play fashion!」と継続的な価値の創出を実現します。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティへの考え方及び取組

<当社のサステナブル経営推進にむけて>

当社グループでは、サステナビリティポリシーに「ファッションのワクワクを、未来まで。」を掲げています。このポリシーのもと、サステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置付け、サステナビリティを重視した経営を行います。私たちは事業活動を通じ、地球規模の課題解決に挑み、持続可能な社会と経済成長の実現に寄与していきます。

 


 

① サステナブル経営に関するガバナンスの強化 ― サステナビリティ委員会の設置 ―

当社グループでは2023年3月1日付で取締役会での非財務領域での戦略推進をより一層強化することを目的に、サステナビリティ委員会を新たに設置しました。当委員会では中期経営計画及び事業方針の基軸に関するマテリアリティの特定、適切な情報開示を中心に進めることで、ステークホルダーからの信頼と期待に誠実に対応していきます。また、当委員会では、気候変動をはじめとする当社グループのサステナビリティ方針や中長期の目標策定、特定したマテリアリティに対する進捗管理を行っており、取締役会又は執行会議へ報告・提言を行うことで、グループにおける推進体制をさらに強化し、持続的に企業価値を高めていきます。

 

サステナビリティ委員会には、サステナビリティ担当の専務取締役を委員長とし、以下の委員が常任構成員として出席します。なお、議題に応じて関係部門の責任者等を適宜招集します。

 

委員会名

サステナビリティ委員会

関連規定

「サステナビリティ委員会規程」第4条(構成)

委員長

専務取締役

委員

コーポレート本部長 兼 管理本部長

経営企画室長

R&D本部長

生産本部長

ロジスティクス本部長

営業第2本部長

株式会社WeOur 代表取締役社長

委員長指名

委員長が議案ごとに決定する

事務局

サステナビリティ推進室長

 

 

 

第75期サステナビリティ委員会では、以下のような議題を中心に協議し、経営層に報告しています。サステナビリティ委員会では、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関わる経営の基本方針・戦略、事業活動と連動した計画立案や提言を行います。なお、当委員会の委員長を務める専務取締役が年4回、サステナビリティ委員会で議論した内容を取締役会に報告します。

 

開催月

開催回数

議題

3月

第1回

報告事項:前期振り返りと当期活動方針

第2回

協議事項:サステナビリティ重点課題(テーマ:ダイバーシティ全社アンケート&女性管理職比率向上施策)

4月

第3回

報告事項:有価証券報告書でのサステナビリティ開示内容

報告事項:人権方針開示について

報告事項:ダイバーシティ全社アンケート結果

第4回

協議事項:サステナビリティ重点課題(テーマ:サステナブル素材&サプライヤーリスト公開)

報告事項:環境データ集計システムの導入の進捗報告

第5回

協議事項:CSR調達に関する目標更新に向けた協議

協議事項:特定サプライヤーリストの開示概要

5月

第6回

報告事項:環境データ集計システムの運用開始の報告

報告事項:ダイバーシティ関連施策の詳細

報告事項:プライドマンスの実施案内

第7回

協議事項:サステナビリティ重点課題(テーマ:温室効果ガスの削減施策など)

第8回

報告事項:CSR調達に関する目標

報告事項:MSCIの評価結果

6月

第9回

報告事項:重点課題第1Q振り返り

協議事項:CSR調達に関する目標更新について

第10回

協議事項:CO2削減施策の概要

7月

第11回

協議事項:CO2削減施策の検討

第12回

報告事項:CO2削減施策の進捗報告

報告事項:特定サプライヤーリストの開示方針

8月

第13回

協議事項:CO2削減目標の協議

報告事項:特定サプライヤーリストの開示の進捗報告

報告事項:プライドマンスアンケート結果について

第14回

協議事項:事業活動を通じた資源循環更新の検討

協議事項:ダイバーシティ関連プログラムの開催方針

9月

第15回

報告事項:重点課題第2Q(上期)振り返り

第16回

報告事項:健康経営ウェブサイトの更改

報告事項:ダイバーシティ関連プログラムの企画概要

10月

第17回

報告事項:ダイバーシティ関連プログラムの詳細

協議事項:事業活動を通じた資源循環更新の概要

第18回

協議事項:事業活動を通じた資源循環更新の進捗

第19回

協議事項:CO2削減施策の方針

11月

第20回

協議事項:事業活動を通じた資源循環の最終審議

協議事項:生物多様性に関する開示概要

第21回

協議事項:人権方針に関する開示方針

 

 

開催月

開催回数

議題

12月

第22回

報告事項:重点課題第3Q振り返り

協議事項:人権方針に関する開示概要

第23回

協議事項:生産委託先でのコンプライアンス強化

報告事項:商品・ブランドでのCO2排出傾向

報告事項:環境データに関する外部保証

1月

第24回

協議事項:ダイバーシティに関する全社アンケートの実施

報告事項:事業活動を通じた資源循環の変更点

報告事項:来期の委員会運営関連事項

第25回

協議事項:サステナビリティ関連の開示方針検討

2月

第26回

協議事項:サステナビリティ関連の開示概要

報告事項:今期の成果振り返り

第27回

報告事項:CDP2024スコア結果

 

 

② 戦略

1) 中長期経営計画とサステナブル経営

中期経営計画を策定するにあたり、昨今の社会情勢及び当社のビジネス領域において、サステナビリティの重要性は非常に高まっています。私たちはビジネスの現状と中長期的なサステナビリティ戦略に関する方向性を再認識し、ESGに関する目標をより明確にしました。当社が掲げるサステナビリティの各重点テーマでは、より高い目標を設定しながらも、アダストリアらしいアプローチで事業の成長とサステナブル経営を融合させていくことが、中期経営計画における我々の挑戦と考えています。

 

2) 中期経営計画と連動したマテリアリティの特定

ファッション業界は従来からの大量生産や在庫廃棄、生産過程での環境負荷、人権問題など様々な社会課題を抱えています。多くのステークホルダーは、経済・産業構造の様々な要因によって発生する多様な問題の解決に取り組むことは企業の責務であると捉え、ファッション業界を含む経済全体にサステナビリティと経営との両立を求める傾向にあります。

当社は、地域社会やお客様・お取引先様等と直接的に接する機会が多い事業特性を有するため、これらの課題に真摯に取り組むことはもちろん、積極的な情報開示に努める必要があります。また、先に挙げた社会課題は個社単独で解決できるものではなく、他社との協業やコミュニティとの連携構築などを通じて解決に向けた取り組みを継続的に促進していくことが重要と考えています。

当社グループでは、私たちのビジネスを通じたサステナビリティへの貢献と相関性をステークホルダーの皆様により理解していただくことを目的に、マテリアリティマッピングである「グッドコミュニティ共創マッピング」を開示しています。以下の図はステークホルダーにとっての関心・重要度を縦軸に、アダストリアグループにとっての影響度を横軸としてマテリアリティをマッピングしています。また、マテリアリティ優先度の見直しや、マテリアリティごとにリスク及び機会の分析・評価することを定期的に行っています。さらに、中期経営計画にて掲げる将来のビジネスポートフォリオ拡大・成長を見据えたプラットフォームの確立に向け、サステナビリティが成長シナジーを加速するための重要な源泉の一つに位置付けることで、優先順位や網羅性を有したマテリアリティへの対応を行いながら、社会課題の解決と事業成長を両立していきます。

 

 


 

③ 指標及び目標

1) サステナビリティの重点テーマと取り組みについて

近年、地球温暖化や種の絶滅をはじめとする環境危機、基本的な人権への侵害や不当な差別などの社会問題に対して、企業として取り組む責任と重要性が高まっています。当社は自然資本や人的資本、社会資本に多くを依拠するビジネスを行っていることから、事業全体で環境・社会課題に真摯に向き合うための指標・目標を定めています。これらの課題と事業との関連性を考慮し、取り組むべき3つの重点テーマを以下のとおり定めています。

 


 

重点テーマである「環境を守る、人を輝かせる、地域と共に成長する」の3つのテーマにおける取り組みについては当社統合報告書2024

https://www.adastria.co.jp/archives/001/202410/4ca11afba9557e33d0da1c853ed50322c38754139f63dedfd936d32b32b7764e.pdf にて詳細を開示しています。

 

 

2) 重点テーマの取り組み概要

「環境を守る」に関する取り組み

「事業による環境負荷を低減させ、ファッションの世界をサステナブルにします。」を掲げ、活動ビジョンとして、未来につながるものづくり、環境への配慮と営業活動の両立、ファッションロスのない世界の3つを定めています。

未来につながるものづくりでは、2030年までに全商品のうち半分以上をサステナブルな原料・加工へと切り替えることを目標としています。2025年2月期時点で、商品への独自のサステナブルマークの付与率は17.9%、付与数は前期比109.7%となりました。引き続き、当社生産部で独自のサステナブル素材開発(2025年2月時点で7種類)を促進し、目標の達成を進めます。

環境への配慮と営業活動の両立では、2050年カーボンニュートラルの実現を目標とし、当社及び連結子会社でのCO2排出量(国内・海外におけるScope1-3)の把握を完了しました。新たに脱炭素社会への移行に基づく温室効果ガス削減シミュレーションを策定・開示したほか、TCFDフレームワークに準拠した要求事項、並びに財務インパクト評価の開示を実施しました。

ファッションロスのない世界では、衣料品在庫の焼却処分ゼロを目標に掲げ、2020年2月期より継続して達成しています。また、2016年からスタートした衣料品回収活動「Play Cycle!」では、全国約190店舗でお客様の不要になった衣料品の回収を実施しています。9年間の累計で約54万枚、重量にして169tを回収し、協業先と連携しリユースのほか衣料品の原料や自動車内装材などに適切にリサイクルしています。当社の衣料品回収活動は、「Play Cycle!」特設サイト https://www.adastria.co.jp/playcycle/ に詳細を掲載しています。

 

「人を輝かせる」に関する取り組み

「お客様も、従業員も、関わる誰もが毎日ワクワクできる環境をつくります。」を掲げ、活動ビジョンとして、自分らしくファッションを楽しめる社会、心身ともに健康で個性や能力を発揮できる組織の2つを定めています。

自分らしくファッションを楽しめる社会では、LGBTQ+フレンドリー企業としての社内プログラム推進、インクルーシブファッションの展開や社会への啓もう、性別を意識しないデザインと着用バランスを基にした独自サイズを展開するブランド「Anui(アニュイ)」など、事業を通じてあらゆるお客様のライフスタイルに寄り添い、ファッションの楽しみ方の選択肢を拡げています。

心身ともに健康で個性や能力を発揮できる組織では、重要な経営戦略としてダイバーシティ経営を推進しています。正社員の7割以上を占める女性の活躍支援を通じた組織の多様化、共働き・共育てを可能にする両立支援やキャリア形成支援など、人事戦略と連動した施策や職場環境づくりと健康経営の推進を通じて働きがいを高め、誰もが個性や能力を最大限に発揮できるよう取り組んでいます。2024年12月には、難聴のスタッフが活躍するインクルーシブな店舗「OFF STOREエスパル山形店」をオープンさせるなど、個性豊かで多様な組織・人材を成長の原動力と位置づけ、あらゆる従業員の成長を後押しする制度や環境づくりを推進しています。

なお、人的資本に係る取り組みは、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) 人的資本に関する取組」をご参照下さい。

 

「地域と成長する」に関する取り組み

「地域社会と共生し、ともに新しい価値を創ります。」を掲げ、活動ビジョンとして、出店地域の活性化、生産地域の持続可能な発展の2つを定めています。

出店地域の活性化では、国内外の様々な地域への拡大に伴い、法令を遵守することはもちろん、文化や風習を尊重しながら地域の人々とファッションを通じてエンゲージメントを強化しています。出店地域のお客様や地元企業とのつながりを深めるイベントの開催、創業地である水戸でのスポーツ・文化活動の後援、地元密着型企業からのニーズに応じた制服プロデュースなど、地域に還元できるビジネスを展開しています。

生産地域の持続可能な発展では、当社バリューチェーンの発展に協力いただいているサプライヤーのご理解のもと、ビジネス全体の透明性向上を目的に、サプライヤーリストを初めて公開しました。当社のリスト公開に賛同いただいたサプライヤー47社は、私たちの特定パートナー取引先として認定しており、社名・所在地・生産種別を当社コーポレートサイトで開示しています。今後は、リスト公開企業の増加や開示情報の拡充を図り、環境・人・地域にポジティブなサプライチェーンの構築と責任ある生産方法を確立することで、ステークホルダーからの信頼に応えていきます。サプライヤーリストは、当社コーポレートサイト

https://www.adastria.co.jp/sustainability/theme/community/supply-chain/ にて詳細を開示しています。

 

 

④ リスク管理

当社グループでは、サステナブル経営における重要な環境課題やリスクについては、取締役会、執行会議及びサステナビリティ委員会にて重点課題として議論しています。統合的なリスク管理体制のもと、推進部門であるサステナビリティ推進室が定期的な見直しと協議を行っています。

なお、サステナビリティに関するリスクの内容については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

(2) 気候変動への対応

当社は気候変動への対応をサステナビリティにおける重要課題の一つとして位置づけ、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目指しています。また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同することを2022年9月に表明し、気候変動が事業に与える可能性があるリスクを捉えながら適切に情報を開示しています。

 

① ガバナンス

当社グループでは、気候変動への対応をサステナビリティにおける重要課題の一つと位置づけ、気候変動がもたらす影響及び当社の取り組み状況をサステナビリティ担当取締役が取締役会に定期的に報告しています。取締役会は、監査等委員でない取締役8名(うち、社外取締役4名)、監査等委員である取締役3名(うち、社外取締役2名)で構成され、代表取締役社長が議長を務め、グループ全体の経営意思決定の最高機関として重要事項を審議・決議しています。また、取締役会での非財務領域での戦略推進をより一層強化することを目的に、サステナビリティ委員会を設置しており、気候変動をはじめとする当社グループのサステナビリティ方針や中長期の目標策定、環境領域などで特定されたマテリアリティに対するリスク・機会の分析と進捗管理を行い、定期的に取締役会又は執行会議へ報告・提言を行うことで、グループ全体への実効性のある監督機能を有する推進体制を備えることで、持続的に企業価値を高めています。

 

② 戦略

気候変動によって原材料価格の高騰やサプライチェーンの分断、消費者の購買活動の変化などさまざまな影響を受けることから、当社グループは気候変動を重要な経営リスクの一つに位置づけています。当社グループは、気候変動による事業へのリスクを予防・軽減し、適切に管理・対応することで、将来に渡るビジネスへの財務影響を最小限にすることを目的に中長期的な戦略を策定することが、事業の持続的な成長に不可欠だと考えています。このため、売上の約90%を占める主力事業のアパレル・雑貨関連事業に関して、2050年までを対象にしたリスクと機会を、2℃シナリオと4℃シナリオに別けて分析しています。特に重要性が高いと評価したリスクと機会については、気候変動による事業及び財務への影響を定量的に試算しています。2023年度以降は、対象とする事業や領域を広げ、リスク・機会の分析の高度化を進めていく考えです。

 

 

2℃シナリオ

分類

要因

事業へのインパクト

カーボンプライシングの導入

炭素税等の導入によって化石燃料の調達コストが増加し、生産・物流・店舗営業等のコストが増加するリスク

再生可能エネルギーの調達競争の激化

再生可能エネルギーの調達競争に優位に立てなかった場合、価格合理性の低い再生可能エネルギーを調達することによってコストが増加、又は再生可能エネルギーの確保ができなくなるリスク

環境指標における情報開示の厳格化

情報開示に対応できずESG評価が下がる、又は対応コストが増加するリスク

商品の環境負荷値をLCA(ライフサイクルアセスメント)で評価されることが義務化された場合、トレーサビリティの確保が困難、又は確保に時間とコストがかかるリスク

環境負荷の高い素材に対する使用規制

商品の原料、付属品、包装資材等の見直しにより環境配慮型素材を使用することで調達コストが増加するリスク

拡大生産者責任の高まりによる、販売数量に応じた衣料品回収の義務化

衣料品回収活動の回収量が増えることに伴い、資源再生コストが増加するリスク

お客様による環境志向の高まり(環境負荷の少ない商品を好まれるようになる)

ニーズに対応できない場合、売上が低下するリスク

お客様の購買行動の変化(新しく衣服を購入することが少なくなる)

小売以外のサービス・事業が拡大しない場合、売上が低下するリスク

ESG投資の拡大

取り組みが不十分だった場合、ESG評価によりレーティングが低下し、資本調達コストが増加するリスク

学生など将来世代の価値観の変化(サステナビリティに注力する企業を就職先として選択する)

当社の取り組みが不十分だった場合、採用が困難となり採用のためのコストが増える、又は人員不足により事業自体が継続できなくなるリスク

EC購買率の拡大

スタッフボードの活用やインスタグラムのライブ配信など、当社スタッフのオンライン接客のノウハウを活用することによってECの売上が拡大

店舗内装投資や保証金、敷金など、資産の保有を抑えてアセットライトな経営へとシフト

学生など将来世代の価値観の変化(サステナビリティに注力する企業を選択する)

当社のサステナビリティへの取り組みが評価され、優秀な人材を獲得しやすくなる

拡大生産者責任の高まりによる、販売数量に応じた衣料品回収の義務化

衣料品回収活動「Play Cycle!」によって衣料品を回収する仕組みをすでに構築しており、対応のための追加コストが僅少、また効率の良い衣料品回収が可能

お客様による環境志向の高まり(環境負荷の少ない商品を好まれるようになる)

環境に配慮した商品やサービスが支持され、売上が拡大

環境配慮型素材へのニーズの高まりと素材開発部による独自素材の開発

環境配慮型素材の需要が高まり、素材開発部によるBtoB事業の売上が拡大

環境負荷低減を目的とした3DCG等の新技術の活用

商品の企画効率が上がり、トレンド性ある商品をスピーディーに生産できるため、売上が拡大

サーキュラーエコノミー市場の拡大

既存のオフプライス事業及びアップサイクル事業等、サーキュラーエコノミー型ビジネスの拡大による事業機会の獲得

再生可能エネルギープログラムへの参加及び省エネ対策の採用

安価で質の高い再生可能エネルギー・水素の調達により、エネルギーコストの削減、企業イメージの向上

 

 

 

4℃シナリオ

分類

要因

事業へのインパクト

大規模な自然災害による店舗の休業

店舗が営業できないことによって売上が低下するリスク

大規模な自然災害によるサプライチェーンの断絶

納品遅れ、商品破損等により在庫が不足し売上が低下するリスク

気候パターンの変化

気候の変化から商品企画やお客様のニーズを予測することが困難となり、当社がニーズに対応できない場合、売上が低下するリスク

気候パターンの変化

マルチカテゴリー戦略により気温の上昇に対応した素材開発、商品企画ができた場合、当社シェア率の拡大

 

 

気候変動に関するリスク・機会への対応戦略

当社はアパレル小売をメインビジネスとしており、商品の原材料は綿、羊毛、木など自然資本に依存するものが多く、気候変動が当社サプライチェーンに及ぼす影響とその適応策について、2℃シナリオ、4℃シナリオのそれぞれで明らかにしています。

 

・2℃シナリオ:21世紀末の世界平均気温が産業革命以前と比べて1.6~1.9℃上昇する世界であり、脱炭素経済活動が活発化し、規律型社会への移行が進みます。各国政府の炭素排出規制が強化されることで、当社の温室効果ガスに関連する排出責任と環境対策がバリューチェーン全体に拡大し、コストの上昇が予想されます。環境意識の高まりが消費者の行動変容につながり、売上にも影響を及ぼすと想定されます。当社は素材開発、生産地域の分散化、省エネ・節水など環境に配慮された生産体系を構築するとともに、ポートフォリオの多様化で持続可能な事業成長を図ります。

 

・4℃シナリオ:21世紀末の世界平均気温が産業革命以前と比べて3.5~3.9℃上昇する世界であり、地球温暖化が著しく進行します。自然災害の発生頻度の増加とその被害が深刻化し、衣料品や食料の入手が不安定になる可能性が高まります。このような状況の中で、当社安定した事業を継続運用するため、中国やASEAN諸国を中心とした原材料調達、生産背景、ロジスティクスの分散・多角化を図ることで、強靭なサプライチェーンを構築し事業運営におけるリスクを軽減します。

 

これら分析結果を受け、2℃と4℃、どちらのシナリオが現実化した場合においても、事業レジリエンスを保ちながら、持続可能な成長が可能と考えています。

 

財務インパクト評価

[移行リスク]

項目

財務

インパクト

時間軸

可能性

事業へのインパクト

2℃

4℃

カーボン

プライシング制度

間接費

の増加

中期

高い

化石燃料の調達コストが増加し、生産・物流・店舗営業等の経費が増加する可能性があります。

現在の当社の店舗営業に関わるScope1・2排出量に対して炭素税が課されたと仮定すると、財務影響額は全店舗排出量:27,192t-CO2×120米ドル/t=3,263,040米ドル、日本円で約300~400百万円のコスト増の影響が出る可能性があります。

約300~400百万円

(年間)

炭素税は

導入されないと想定

 

※算出前提:120米ドル/t-CO2IEAWorld Energy Outlook2021」より試算)、2030年時点

 

 

[物理的リスク]

項目

財務

インパクト

時間軸

可能性

事業へのインパクト

2℃

4℃

洪水

店舗休業に

伴う

売上減少

短期

高い

気候変動に起因する洪水等の浸水リスクにより店舗休業を余儀なくされ、売上が減少する可能性があります。2021年度においては大雨の影響により、福山、鳥取、平塚にある3店舗の営業時間短縮の影響が発生しました。

同地域の洪水ハザードマップによると、0.5m~3m未満の浸水予想となっており、実際浸水した場合には3店舗合計で最大67.6日間の休業を余儀なくされ、売上に対して27百万円の影響が出る可能性があります。気候変動が進行した場合、日本においては洪水発生頻度が4倍に至ると想定されており、108百万円の影響がでる可能性があります。

59百万円

108百万円

 

※算出前提:2021年度の浸水店舗の実績を用いてハザードマップ及び国土交通省「治水経済調査マニュアル」より試算

 

③ 指標及び目標

当社グループは、2050年カーボンニュートラルの実現を目標に掲げ、取り組みの指標としてサプライチェーンにおけるCO2排出量を設定しています。各Scope及びカテゴリにおける年次でのCO2排出量の変化の要因を特定/考察することにより、自社領域及び自社領域外での気候変動あるいはCO2排出量の増減に依存・影響を及ぼすと予想されるリスク/機会を抽出し管理しています。

 

Scope及びカテゴリ

排出量[t-CO2]

比率

備考

2024年2月

Scope1+2+3

579,388

100.0%

 

Scope1(直接排出)

1,480

0.3%

 

Scope2(エネルギー利用に伴う間接排出)

35,222

6.1%

 

Scope3(バリューチェーンからの間接排出)

542,686

93.7%

 

 

カテゴリ1 購入した製品・サービス

449,125

77.5%

 

カテゴリ2 資本財

37,365

6.4%

 

カテゴリ3 Scope1・2に含まれない燃料及びエネルギー活動

6,018

1.0%

 

カテゴリ4 輸送、配送(上流)

5,848

1.0%

 

カテゴリ5 事業から出る廃棄物

1,372

0.2%

 

カテゴリ6 出張

1,192

0.2%

 

カテゴリ7 雇用者の通勤

2,071

0.4%

 

カテゴリ8 リース資産(上流)

対象外

カテゴリ9 輸送、配送(下流)

1,042

0.2%

 

カテゴリ10 販売した製品の加工

対象外

カテゴリ11 販売した製品の利用

対象外

カテゴリ12 販売した製品の廃棄

38,653

6.7%

着用後、不要になった衣類を廃棄と想定

カテゴリ13 リース資産(下流)

対象外

カテゴリ14 フランチャイズ

対象外

カテゴリ15 投資

対象外

 

 

 

④ リスク管理

当社グループは、事業が気候変動によって受ける影響を把握し評価するため、サステナビリティ担当部門を中心とする社内のタスクフォースを通じてシナリオの分析を定期的に行い、気候変動リスク・機会を特定しています。特定した重要なリスク・機会は危機管理担当取締役に報告したうえで、タスクフォースと該当部門が連携しながら具体的なリスク対策を行っていきます。なお、自然災害に起因する物理リスクへの対応については、危機管理担当取締役を委員長とする危機管理委員会においてBCPをはじめとする事業継続マネジメントの実行体制を整備しています。

 

(3) 人的資本に関する取組

人的資本経営の基本方針

 

アダストリアで働くすべての人が、新しい価値 Play fashion!を創出する

 

~成長戦略の達成や企業価値を高める組織・人材への投資~

~新しい価値創造へ=最も重要な経営資源は『人材』~

 

変化するマーケットの中で、当社が次のステージへと成長していくためには、経営・ビジネスモデルの変革だけでなく、それを実現する人材と組織が重要です。アダストリアの組織の強みはチームワークにあり、仲間が集まって、経験や知識、考えをシェアし、掛け合わせることで新しい価値を生み出してきました。企業規模が拡大する中にあっても、緊密な部門連携により組織力の向上に努めています。

従業員それぞれが成長を実感できる環境を整備することで、働きがいとパフォーマンスの向上に努めています。一人ひとりが失敗を恐れず挑戦を続け、変化を楽しみながら「なくてはならぬ人」として成長することで、ミッションである「Play fashion!」の実現を目指しています。

 


 

① ガバナンス

当社グループでは、経営戦略と人事戦略の連動を図るため、重要な人事戦略や施策は、取締役会、執行会議及びサステナビリティ委員会にて、経営課題として議論しています。当社人事部がグループ全体の人的資本経営の推進部門として、グループ各社と連携しつつ、モニタリングと達成状況の評価検証サイクルを通じて、人的資本の増幅を図っています。

 

<人的資本経営の推進体制>


 

 

② 戦略

当社グループでは、従業員一人ひとりが新たな価値を創出できるよう、多様性を重視し、失敗を恐れず挑戦できる環境づくりを行っています。また、社員の成長を支援するため、人材への投資を進め、企業理念である「なくてはならぬ人」の育成に努めていきます。


 

1) 人材育成方針及び社内環境整備方針

人材育成方針

社員一人ひとりの強み・専門性を活かし、多様な個性を集約・成長支援することで、個人と組織の力を最大化することを目指していきます。

 

社内環境整備方針

社員一人ひとりが挑戦を恐れず能力を発揮できるよう、役割期待を明確にし、年齢・性別・世代等関係なく、多様な人材が融合し、イキイキと光り輝き続けられる環境を整備していきます。

 

2) 当社グループの組織・体制の特長、強み

 

  組織や体制の特長、強みを活かし、

        成長戦略の実現、新たな価値創造 Play fashion! へ

 

当社グループでは、現場起点・現場力を重視しており、店頭のスタッフが捉えたお客様のライフスタイルやファッションの変化を、事業運営に反映する仕組みを構築しています。また、支店営業本部が中心となり、地域内の店

舗が連携し、エリアの環境や地域特性に合わせた店舗運営と危機管理対応を実現しています。

また、多様な価値観、各分野での専門性を有する個々の経験や知識をチームで融合し、プラスαの組織力へ発展させるとともに、スピーディーな情報連携と柔軟な部門横断プロジェクトによる、さまざまな施策遂行により、課題解決を進めています。


 

2025年2月28日現在

 

 

③ 指標及び目標

当社グループでは、多彩な人材の活躍を支える環境をつくり、事業成長を実現するため、さまざまな施策を講じています。その重点施策の指標及び目標は以下の通りです。

 

基本方針

アダストリアで働くすべての人が、新しい価値 Play fashion! を創出する

人事戦略

多様な個性の成長を支援し、なくてはならぬ人として輝かせる

 

 


 

[重点施策の指標及び目標]

 

<事業戦略の実現> 中期経営計画の実現に向けた人事戦略の実行

 

 

EC拡大とDXを推進するための、DX人材の採用拡大・強化

当社グループの成長を支えるDX推進を加速すべく、DX部門を取締役の直下に専門部署として設置し、デジタル技術やデータ活用に精通した優秀な人材の採用・育成・定着に取り組んでいます。また、国内及び海外のビジネスパートナーとの提携、スタートアップ企業との連携強化、副業人材の活用などにも積極的に取り組み、競争優位性のあるDX推進体制の構築を進めています。海外を含むEC拡大とビジネスのデジタル化を推進するため、2026年2月期において国内DX人材は70~90名体制を目指し、海外エンジニア(※)50~100名の確保を目標としています。

※「海外エンジニア」は、パートナー企業におけるエンジニアを含みます。

「DX人材」データ

指標

2023年2月

2024年2月

2025年2月

国内DX人材

52人

63人

73

 

 

上記のほか、中期経営計画の実現に向けた人事施策として以下の取り組みの強化を図っています。

グローバル化を推進する人材の採用・育成強化及び関連諸制度の整備

DX人材のほか、さまざまな高度専門スキルを有する人材の採用強化

中長期的なDX人材の拡充を目指し、会社の戦略や社風にマッチしたDX人材を新卒採用

将来を担う経営人材の計画的な育成と教育研修体系の整備

 

 

<多彩な人の活躍を支える環境作り> チャレンジ、ワクワク!

 

 

■EC、デジタル接点の拡大に向けたチャレンジ「スタッフボード」

2018年、自社ECサイトの「and ST」上で、当社スタッフによるコーディネート提案するスタッフボードの運営を開始しました。スタッフボード上で当社スタッフを1人以上フォローされているお客様の年間購入金額は、1人もフォローされていないお客様の年間購入金額の約2.5倍で推移しており、スタッフボードの取り組みはEC売上の拡張に大きく貢献しています。

このスタッフボードの参加人数を一層増やすと


ともに、参加スタッフのスキル・コミットメントを高めることは更なる業績向上に繋がるとして、スタッフボードへ取り組むスタッフに対し、SNSのフォロワー数に応じたインセンティブ制度、SNSに特化した分析ツールの導入、教育制度の拡充を図るなどさまざまな取り組みを進めてきました。特に2024年月期からは、教育制度の拡充に力を入れており、スタッフボード経由の売上とフォロワー数などが上位の殿堂入りスタッフが、自身のノウハウやスキルを他のスタッフに共有することで全体の成果の底上げを図り、結果、総フォロワー数・スタッフボードシェア率ともに、大きく伸張しました。

さらに、当社グループの製品だけでなく、協業企業から依頼を受けての他社製品PR、当社内の教育で培ったノウハウの他社への展開など、他企業の売上にも貢献し、活躍の場を広げています。

“ブランドが好き、ファッションが好き、お客様と向き合うことが好き”というスタッフたちこそ、当社グループにとって最たる「人的資本」です。彼らが自ら楽しみながらスタッフボード等を通じより多くのお客様と接点を持つことにチャレンジできる環境整備に一層の投資を行い、スタッフ自身の成長・自己実現とともに、会社・ブランドの成長にも寄与する好循環を一層高めていきます。

 

 

「スタッフボード」データ

指標

2019年2月期

(初年)

2022年2月

2023年2月

2024年2月

2025年2月

スタッフボード
参加人数

449人

3,920人

3,990人

4,098人

4,485

(※1)

総フォロワー数 (※2)

48万人

340万人

573万人

1,035万人

1,322万人

スタッフボード
経由の売上比率 (※3)

4.6%

19.4%

27.2%

29.1%

29.4

 

(※1) 2025年2月の集計より、当社グループ外からの参加者67名を含む。

(※2) 総フォロワー数:スタッフボード、Instagram、TikTok、YouTubeほかSNSフォロワー数の延べ総計。

(※3) スタッフボードシェア率:EC売上に占めるコンテンツを経由して商品購入された売上の比率。

    1商品購入に対して計測対象は1コンテンツとし、計測対象期間は30日間。

 

 

「キャリアを自分で描いていく」ためのキャリア拡大支援プロジェクト「キャリカク」

店舗で働く従業員がキャリアを自分で考え、挑戦できる機会を生み出すキャリア拡大支援プロジェクト「キャリカク」は、店長の次のキャリアが見えないという販売職特有の課題に対して、自らキャリアについて考えるきっかけをつくることを目的にスタートしました。「地域に根差した活躍ができる」「得意を伸ばす」という2点を軸に、地域活性化イベント、地域プロモーションや販売スペシャリストとしての接客スキル向上を担う「SSC認定講師」などの役割を設け、販売職プラスαの役割を担うことで入社数年のスタッフにも自分の可能性を感じてもらえる環境を整えています。

今期より「子育て社員アドバイザー」の役割も追加され、店舗の子育て社員のサポートや地域での情報発信など、キャリカクに参加する社員だけでなく組織全体へも良い影響を与えています。「キャリカク」を通して、更なる活躍の場を拡充するとともに、インセンティブ制度も導入し、自ら手を挙げてプラスαの役割を担うことに対する継続的なモチベーションの後押しを進めています。

※SSC:Service Skill Certificationの略で、店頭で働くスタッフを対象としたスキル認定制度です。

 

「キャリカク」データ

「キャリカク」新たな役割

2023年2月

2024年2月

2025年2月

館リーダー:同じ施設内に出店している店舗のサポート

6人

8人

9

地域販促:地域を盛り上げる施策立案

6人

5人

4

商品提案:現場の意見を反映した商品提案

3人

2人

0

SSC認定講師:スタッフの接客スキル向上

18人

12人

8

スタッフボード地域担当:地域のスタッフボード売上拡大

2人

1人

2

子育て社員アドバイザー

7

35人

28人

30人

 

子育て社員アドバイザーは、2025年2月期からの取組のため、算出データは2025年2月のみ。

 

上記のほか、アダストリアらしいチャレンジの創出、自律的なキャリア開発・学びの促進に係る施策は以下の通りです。

自ら手を挙げてチャレンジできる「公募型研修」

主体的にキャリアを考えチャレンジできる「社内公募制度(ポジション公募)」

アルバイト・パートタイマーから社員へチャレンジできる「正社員登用制度」

チャレンジ度を重視した人事評価制度

 

<多彩な人の活躍を支える環境作り> 全ての人を輝かせる

 

 

■女性の活躍支援を通じた組織の多様化(女性登用計画、意識改革)

当社は店舗社員の84%、本部社員の62%を女性が占めており、女性の活躍が事業活動の成果に直結していると考えています。また、商品のうち約80%が女性向けであり、女性の感性を活かし、多様化するニーズを捉えた商品、サービスや新たな価値を提供しています。

2026年2月期までに女性の管理職比率45%以上、上級管理職比率30%以上を目標に掲げ、より多くの女性が活躍できる会社となるため、2019年より勉強会や講演会の開催、メンター制度を運用しています。2022年からは、女性社員と経営陣との座談会開催や男性社員中心で構成されていた経営会議への女性社員の参画を開始しています。これらは女性幹部候補の育成と議論の活発化、また、経営層の意識改革に奏功しており、女性の視点でのカテゴリの開拓・拡張が中長期の企業の成長に貢献しています。

「女性活躍」データ

指標

2023年2月

2024年2月

2025年2月

上級管理職比率

17.7%

18.7%

19.8

管理職比率

33.8%

33.7%

36.2

 

※実績値は、株式会社ゼットンを除く国内グループ会社全体の値です。

 

 

育児休業の取得促進(促進、現場サポート)

ジェンダーに関わらず仕事と育児を両立することについて、理解し支援できる環境の整備は、女性がキャリアを中断することなく長期的な活躍に繋がります。当社では、出産後も安心して働き続けることができるように、ママアドバイザーの設置をはじめとする復帰後の勤務支援などの支援制度を整備してきました。現在は、男性の育児休業取得率の向上に向け、配偶者の妊娠が分かった時点で本人・上長・人事部の3者面談を行い、本人の取得希望時期の確認、引継ぎや役割分担等の調整を行っています。男女ともに安心して育児休業が取得できる環境整備に力を入れており、男性及び女性の育児休暇取得率100%を目標にしています。

今後も全ての社員が活躍できる職場、組織、会社を目指し、育児休暇取得の文化醸成と、早期復職支援や柔軟な働き方の推進により、社員の仕事と育児の両立を支援していきます。

 

「育児休業」データ

<男性>

 

 

 

指標

2023年2月

2024年2月

2025年2月

取得者数

8人

40人

(51人)

26

(36人)

取得率

14.8%

78.4%

(100%)

72.2%

(100%)

平均取得日数

36日間

32日間

32日間

 

 

<女性>

 

 

 

指標

2023年2月

2024年2月

2025年2月

取得者数

198人

179人

207人

取得率

98.5%

98.8%

98.6

平均取得日数

421日間

418日間

432日間

取得者復帰率

96.9%

94.5%

95.0%

 

※男性の取得者数及び取得率の( )内の値は、事業年度末日時点で取得時期が確定している人数を加味し算定したものです。

※実績値は、株式会社ゼットンを除く国内グループ会社全体の値です。

 

健康経営の推進(ウェルビーイング)

Play fashion! Play wellness! 「ファッションと人生を楽しんで、もっと健康に、もっと自分らしく」をミッションに掲げ、一人ひとりが健康で、自分らしく、“いきいき”と輝きながら働ける環境づくりを目指しています。この想いのもと、心身が健康で人生が楽しめるよう“こころ”と“からだ”の両面で疾病の予防・健康増進に向けた取り組みを行っています。一例として、常駐する産業医や保健師による相談窓口(こころとからだの保健室)を設置し気軽に健康相談ができる体制を整備するほか、健康課題に関わるセミナーを定期的に開催しています。また、女性活躍を支える女性の健康課題への対応を重点テーマとして掲げ、特


 

に女性特有の婦人科がん健診については、対象者を拡大するほか受診を勧奨し女性従業員の受診率100%を目標に取り組んでいます。本人だけでなく上司を含めた女性の健康課題へリテラシー教育を進め、働きやすい環境整備と健康維持・増進に取り組んでいます。

 

 

 

~取組み事例~

女性活躍を支える健康課題への対応

婦人科がん健診の対象拡大と受診勧奨

健康に関する上司向けリテラシー教育

疾病予防・健康増進とメンタルヘルス対応

相談窓口「こころとからだの保健室」の設置

産業保健職体制構築(産業医、保健師常駐)

健診リスク者へ2次健診勧奨

自社健康保険組合と連携して、健康への関心・リテラシー向上のための研修・情報発信

 

「健康経営推進」データ

指標

2024年2月

2025年2月

“こころ”

の健康

ストレスチェック受検率

90.5%

92.5%

高ストレス者率

8.3%

8.7%

“からだ”

の健康

健康診断受診率

92.8%

95.0%

<女性特有:

婦人科がん検診受診率>

 

 

乳がん検診(20歳以上)

51.2%

56.7%

子宮頚がん検診(20歳以上)

48.8%

49.0%

共通

休職率

2.2%

2.3%

※“からだ”の健康の受診率の値は、事業年度末日時点での健診予約者分を含んでいます。

※実績値は、株式会社ゼットンを除く国内グループ会社全体の値です。

 

 

上記のほか、全ての人が輝くためのダイバーシティやウェルビーイング施策は以下の通りです。

障がい者の雇用促進と長期的にかつ自分らしく活躍できる環境の整備

-店舗運営支援業務、物流機能及びバックオフィスのサポート業務に加えて、接客や店舗運営まで任せる取り組みを「OFF STOREエスパル山形店」にて開始し、活躍領域をさらに拡大

・LGBTQ+、インクルーシブの促進に向けた取り組み

福利厚生の公平な適用に向け、配偶者に同性パートナーを認めるよう規程を改定

-店舗内にレインボーフラッグを掲げる「アダストリアプライドマンス」の実施やオリジナル研修動画を作成し、性的マイノリティへの理解を促進

-インクルーシブファッションプロジェクト「Play fashion! for ALL」を推進

・仕事と家庭の両立、業務効率化に繋がる柔軟な働き方やコミュニケーションが活性化するオフィス環境の改善

 

多彩な人の活躍を支える環境作り> ファミリー感、風通しの良さ

 

 

マネジメントメッセージの発信や社員との双方向の対話機会

マネジメントと従業員の双方間で、将来の夢を語り、想いを共有し、また課題に対して共に解決に向けて意見交換する機会を大切にしています。年に1回実施している「タウンミーティング」では、経営層が各地域に出向き、企業理念・ミッションや事業計画などについて想いや方向性を共有するとともに、社員たちと直接対話することで、その場で社員から出た困りごとや改善を求める声を受け止める機会としています。なお、その社員の声に積極的に耳を傾け、速やかに改善を進めています。

また、従業員の家族からの理解を深め、楽しみを共感してもらうことも重視しており、親子で参加できる「A KIDSラボ」や家族参加型のウェルビーイング企画「ウェルネスデイ」などの開催を通じて、当社の良き文化であるファミリー感・一体感を一層高めています。

これら一つ一つの取組みを通して、従業員のモチベーション向上、組織活性化に繋がっています。なお、毎年実施している従業員満足度調査では、総合満足度4.0以上(5点満点)の維持を目指しています。

 

 

「従業員満足度」データ

指標

2023年2月

2024年2月

2025年2月

総合満足度

4.01

4.02

4.05

-理念・経営方針に共感

4.24

4.28

4.30

-帰属意識度、働き続けたい

4.04

4.07

4.12

 

※実績値は、株式会社ゼットンを除く国内グループ会社全体の値です。

※本調査は、非正規労働者(月80時間以上の勤務者)を含む従業員を対象に実施しています。

 

上記のほか、ファミリー感を裏付ける風通しの良さ(対話の文化)やコミュニケーション活性に係る施策は以下の通りです。

従業員全員から、会社全体やブランド横断でアイデアを募集する「アイデアポスト」の設置

お客様からのお褒めやご指摘などのご意見は全社に即時に共有

 

④ リスク管理

当社グループでは、人的資本経営の推進に向けた重要な人事戦略や施策及び関わる課題やリスクについて、取締役会、執行会議及びサステナビリティ委員会にて、重要課題として議論しています。総合的なリスク管理体制のもと、推進部門である人事部が詳細な検討を行い、全社的な観点で課題やリスクへのモニタリングを行っています。

なお、人的資本に関するリスクの内容については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業に関連するリスク要因で、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクには次のようなものが考えられます。以下は、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ない又は重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループではこのような経営及び事業リスクの発生可能性を認識した上で、これを最小化するとともに、これらを機会として活かすための様々な対応及び仕組み作りを行っております。なお、記載事項のうち、将来に関するものは、本有価証券報告書提出日現在(2025年5月30日)、入手可能な情報に基づき当社が判断したものです。

 

1. 事業環境に関するリスク

① 国内市場の縮小

現在、当社グループは事業の約9割を国内で展開しており、少子高齢化と将来の人口減少により国内アパレル市場が縮小すると、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、海外展開により東アジア、東南アジア市場を開拓するとともに、国内ではマスブランドの育成やライフスタイルブランドの開発、自社ECサイト「and ST」への外部企業の出店を始めとするBtoB事業などに取り組み、事業及び展開国の多様化と顧客の基盤の拡大、顧客のライフタイムバリューの向上を進め、成長の継続を図ってまいります。

 

② 展開国の地理的・政治的リスク

事業展開国において、予期しない法規制の変更や政治的又は経済的要因の混乱、テロ・紛争・自然災害等による社会的混乱が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループ取扱商品の大半は、中国等のアジア各国で生産されたものであり、生産国の政治情勢・経済環境・自然災害等により、商品仕入、販売に支障が出る可能性があります。

当社グループでは、生産地の分散化を進めるとともに、新たに東南アジア地域の市場開拓を進め事業展開地域を広げることで、リスクを低減しながら、東南アジアのファッション市場の高い成長力を取り込んでまいります。

 

為替変動・原価高騰

当社グループ取扱商品の大半は、中国等のアジア各国で生産されたものであり、為替相場の変動(主に円安)により、商品原価が上昇する可能性があります。また、世界的なエネルギー価格上昇に伴う商品輸入の際の輸送コストの高騰、生産国における人件費の上昇によっても商品原価が増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、為替予約を適切に活用するとともに、ASEAN諸国への生産の分散化、複数ブランドの素材共通化や一括発注によるボリュームディスカウント、工場との直接取引による仲介業者のマージン削減などの取り組みにより、商品の品質を維持しながら原価の低減に努めてまいります。

 

④ 環境問題

当社グループの主力事業であるアパレル産業は、過剰生産や環境汚染などの環境負荷が世界的に問題とされています。気候変動や自然資本等に関する規制強化や、それらの影響による消費者の行動変容が生じることで十分な対応をすることができない場合、中長期的には気候変動による原材料価格の高騰、化石燃料調達に対して炭素税が施行された場合の経費増加など、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。また、生物多様性・自然資本への配慮が十分でない場合、当社グループのレピュテーションが毀損し、事業の持続可能性に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループではTCFDガイドラインに則り、温暖化による購買動機の変化や、現在の事業に関わる温室効果ガス排出量への炭素税課税などの財務影響を分析し、一部の開示を行っています。また当分析を受けて、再生可能エネルギー由来電源の調達などを検討し、リスク軽減に向けた準備を進めています。

一方で、消費者の意識が変容し、商品・サービスの選択の際に環境や社会に配慮した商品がより選好されるエシカル消費が広がりつつあります。中長期的にお客様のニーズをとらえ、新たな付加価値のある商品を提供することができれば、当社グループの業績拡大の機会となる可能性があります。

 

当社グループでは環境関連の指標を含むサステナビリティ目標を策定しており、環境に配慮した原材料の調達や加工への切り替えといった生産工程での環境負荷低減、在庫適正化によるファッションロスの削減などバリューチェーン全体のサステナビリティ向上に取り組んでいます。また、他社との連携、各ブランドにおけるサステナブル素材の採用拡大や独自素材の開発等を通じて、市場全体の行動変容や環境意識向上に努めてまいります。

 

⑤ 自然災害や事故

当社グループは、国内全域に店舗を展開しており、大規模な地震や津波、台風、火山の噴火等の自然災害や、それに起因する大規模停電及び電力不足や浸水、感染症によるパンデミックの発生などによって大きな被害を受ける可能性があります。当社ブランドの出店する商業施設の休業及び客数の減少や、顧客のライフスタイルや志向が大きく変化し、当社グループの提供する商品やサービスが顧客の需要を捉えられなくなるリスクがあります。

また、これらの影響により、生産や物流、店舗やECでの営業活動が長期間にわたって滞り、当社グループの財政状態、経営成績、物的及び人的資本に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、首都圏直下型地震などの大規模な地震をはじめとする災害や感染症発生等を想定し、事業継続及び早期復旧のためのBCP(事業継続計画)を策定し、リスクの低減に努めております。BCPは、富士山噴火やパンデミックなどの個別リスクに対しても策定し、定期的な訓練も実施しています。また、IT-BCPについては、日本で発動できないケースに備え、海外のDXメンバーがIT-BCPを発動できる体制を整備しています。

 

2. 事業運営に関するリスク

① 店舗運営に関するリスク

当社グループの店舗は、全国主要都市のファッションビル及びショッピングセンター内へのインショップ出店を中心に展開しております。この運営にあたり、以下のようなリスクがあります。

ⅰ. 当社グループの店舗の大半は賃借物件であり、出店に際して敷金及び保証金の差入を行っております。当連結会計年度末における敷金及び保証金は、143億30百万円であり、総資産の約1割を占めております。デベロッパー等の倒産その他の事由が発生した場合、敷金及び保証金の全部又は一部が回収できなくなる可能性があります。

ⅱ. 当社グループは、店舗を中心に多額の固定資産を保有し、これらについて減損会計を適用しております。店舗等の収益性の悪化や、保有資産の市場価格が著しく下落し、減損処理がさらに必要になった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

ⅲ. その他、出店先ファッションビル等を取り巻く商業環境の変化等により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、敷金及び保証金の適正性を精査しながら、各地域に密着した支店制度により地域ごとの状況を慎重に調査し、継続的な出退店を通じて常に最適な店舗網の維持に努めております。また当社グループのスケールメリットやブランド力を活かしてより有利な立地構成を実現し、これらのリスクの低減に努めてまいります。

 

② アパレルビジネスに関するリスク

当社グループの主要ブランドが属するカジュアル衣料小売市場は、流行・嗜好が短期的に大きく変化する傾向が強く、また国内外の競合企業との厳しい競争状態にあり、商品企画等の失敗により顧客の選好にマッチした商品開発ができなかった場合、或いはブランド価値が陳腐化した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、温暖化や異常気象が消費者の購買行動を変化させ、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、店舗や自社ECサイト、SNSを通じて顧客の選好に関する情報を収集して、素早く商品展開に反映させることで、顧客のニーズに合った商品の提供に努めております。また、ECサイトでの予約販売推進により、需要予測の精度向上にも取り組んでおります。常に顧客にとって新鮮味のあるブランドや商品を提供するため自社ECサイトへ他社の出店を促進することで、商品カテゴリーの拡大も進めています。また、IPコラボレーション商品や非アパレル商品カテゴリー拡大などによる天候変化に左右されない商品の強化、シーズン別在庫と発注精度の向上を進めています。

 

 

③ サプライチェーンに関するリスク

当社グループは商品の原材料を外部から調達し、自社で企画・監督しながら外部委託にて生産を行っております。生産遅延、調達先の倒産、又は商品を輸送する経路の寸断等により商品供給が滞った場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの委託先企業において、従業員の人権侵害や環境汚染などの問題が発生した場合、委託元企業として当社グループのレピュテーションが棄損され、ブランドや業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループは海外で生産した商品の輸入、店舗やお客様への配送を外部企業に委託しており、エネルギー価格の変動や労働力不足などを背景に物流コストが上昇した場合、また十分な物流キャパシティを確保できなくなった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、生産地をメインの中国大陸に加えASEAN諸国へ分散させ、生産地の集中化におけるリスクの軽減を図っております。また、商品供給経路寸断に備え、適切な付保と共に、輸送工程における情報管理、複数の輸送手段の確保や代替ルートの選定、物流拠点の複数地域への分散などの対策を実施しております。加えて、グループ調達方針を定め、社会や環境に配慮した責任ある調達活動を推進しており、すべての取引先にグループ調達ガイドラインの遵守を要請している他、主要な取引先については取引先の協力を得ながら定期的なモニタリングを実施し、加えて、当社グループが目指すべきCSRの基準に賛同し協業いただけるお取引先様を特定パートナー企業として選定・公表し、リスクの低減を図っております。物流コストの上昇については、EC販売における店舗受取の活用や配送ルートの効率化や、自社物流施設の機械化投資により、コスト上昇リスクの低減に取り組んでおります。また外部配送企業との提携や、輸送生産性の向上・物流効率化を目指す「ホワイト物流」推進運動に準拠した取り組みなどにより、必要な物流キャパシティの確保に努めております。

 

海外事業に関するリスク

当社グループでは、海外での事業展開を重要な成長戦略の一つと位置付けておりますが、海外事業において現地の顧客ニーズに即した商品提案ができない、事業運営に長けた人材が獲得できない等の理由で、当初見込んだとおりの事業展開、事業収益が得られない可能性があります。また、様々な現地企業と取引を進めていくなか、商習慣の違いなどにより意図せず汚職や贈収賄が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、現地法人の機能を強化し人材の現地化を進めるなど、事業運営のノウハウ蓄積と人材獲得に努めてまいります。また、生産関連の海外取引先に対しては年次での取引先アンケートで汚職や贈収賄に関する該当事項の有無確認、グループ全社に会食報告書及び贈答報告書の提出義務付け、海外現地法人における内部通報制度の整備をおこない、リスクの低減に努めております。

 

⑤ 情報システムや個人情報に関するリスク

当社グループでは、デジタル時代に対応したビジネス構造への進化を成長戦略の一つとし、情報システムの活用を推進しております。また当社グループの自社ECサイト「and ST」は1,900万人を超える会員を有しており、当社グループは多くの顧客情報を保有しております。デジタルを活用した事業の比率が高まる中、情報システムの不具合やサイバー攻撃等により重大な障害が発生し当社グループのシステムが正常に利用できない場合、あるいは不正アクセス等により個人情報が外部へ流出した場合、システムの停止に伴う売上損失や顧客からの信用の失墜などにより、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、第三者機関によるセキュリティリスク診断を実施の上、それを踏まえて最新のセキュリティ対策ソフトの導入や情報管理規程の整備、従業員へのセキュリティ教育の強化、海外を含む全ての自社ECサイトのセキュリティチェックと怪しい通信の遮断、セキュリティ専門人材の採用とセキュリティ委員会の下で動く専門組織を組成し、リスクの低減に努めております。

 

 

⑥ 人材に関するリスク

創業家出身で長年に渡り経営を率いてきた代表取締役会長の福田三千男氏をはじめ、当社グループの事業運営及び取引関係の構築に貢献してきた経営陣は当社事業において重要な役割を果たしており、当該経営陣の突然の離脱があった場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また当社グループは国内外で1,600を超える店舗を運営しており、店舗運営や商品開発において多くの人材が必要です。近年の国内における労働人口の減少や世界的な賃金上昇などに対応できず、質・量の両面において十分な人材を確保できない場合、店舗運営の制限や労務関連コストの上昇や、従業員のパフォーマンス低下、休職や離職の増加により、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、取締役会全体として適切なバランスが確保されるよう、専門知識や経験等のバックグラウンドが異なる多様な取締役で取締役会を構成するとともに、執行役員制を導入し経営と執行の分離を図っております。加えて、取締役には業績連動型株式報酬、執行役員等には株式交付型インセンティブプランを導入し、有能な経営人材の確保に努めるとともに、経営幹部向けの研修を実施する等、後継人材の育成を図っております。事業運営人材の確保にあたっては、初任給の引き上げや従業員の賃金改善、社員紹介制度・他店舗紹介制度の導入による採用促進などを実施しています。また、サステナビリティの重要テーマの一つとして「人を輝かせる」を掲げ、従業員がライフスタイルに合わせた多様なキャリアや働き方を選択できるよう、人事制度を整備しております。2021年からは自社健康保険組合を運営し、一人ひとりに合わせた保険事業・福利厚生サービスを行うとともに、従業員を中心に構成された健康推進委員会「Adastria Wellness Committee(アダストリア・ウェルネス・コミッティ)」を通じて、従業員のウェルビーイング実現に向けた取り組みを促進しております。

 

3. 経営戦略に関するリスク

① 大型投資や企業買収の成否

当社グループでは、長期的成長の実現に向け、海外での事業展開、新規ブランド・顧客の獲得、関連技術の獲得等を目的として、外部企業への出資や企業買収を行っております。また、デジタル化や物流機能強化など、事業の成長に必要な設備投資・システム投資を実施しております。これらの投資において、出資・買収した企業が期待された収益やシナジーを生み出せない場合、また設備やシステムが想定した機能を果たさない場合、投資の回収に想定以上の期間を要する可能性や、投資の回収を図れない可能性があります。

当社グループでは、財務の健全性が維持される範囲での投資を原則とするとともに、経営統合プロセスのノウハウを蓄積し、投資判断における検討プロセスを定めて取締役会で社外取締役を含めた討議を行い、また大型のシステム投資に当たっては第三者PMOの設置をルール化し、リスクの低減に努めております。

 

② 新規事業の不確実性

当社グループでは、成長戦略の一つとして既存の事業領域にとどまらない新規事業の開発に取り組んでおります。当社グループが新規に開始した事業に対する顧客のニーズが想定を下回った場合、新たな事業への参入や運営に要する費用が想定よりも増加する場合、当該事業における競争が激化した場合等に、当初見込んだとおりの事業展開、事業収益が得られない可能性があります。また、これらの事業について撤退や事業の縮小を行うことにより、費用又は損失が発生する可能性があります。他にも、成長戦略の重点領域であるデジタルの顧客接点の拡大にあたっては、デジタル分野に精通したIT人材の確保が必要ですが、近年IT人材は業界を超えた採用競争が激しく、十分な人材を確保できない場合には当社グループの成長戦略遂行に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、M&Aやライセンスの活用など、他社との協業により段階的に新領域におけるノウハウを蓄積するとともに、新規事業においてもアパレル領域で培ったライフスタイル提案力を活用することで、相乗効果の創出に努めてまいります。IT人材の確保においては、デジタル戦略を統括するDX本部を取締役直下に設置し、社外の専門人材の獲得と定着を図るとともに、国内及び海外のビジネスパートナーとの提携強化により、十分な人材の確保を図っております。

 

 

ESGリスクマネジメント

当社グループは、事業を通じて環境や社会にポジティブな取り組みを行うサステナブル経営を推進しております。環境・社会・ガバナンスに関する規制や市場の期待に適切に対応できない場合、資本市場における企業価値を毀損し事業の持続可能性に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、非財務領域での戦略推進をより一層強化することを目的に、サステナビリティ委員会を設置しサステナビリティ方針や中長期の目標策定、社会と事業にとっての重要度(マテリアリティ)とリスク/機会を明確にするとともに、それらの進捗管理を行っており、取締役会又は執行会議へ定期的に報告・提言を行うことで、グループにおけるESG戦略と施策の推進を担保しております。

 

グループ経営管理の成否

当社グループでは、グループ会社がそれぞれのミッションに応じた戦略策定・事業運営を行うマルチカンパニー経営を掲げています。グループ会社に対するガバナンスが機能していない場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当社取締役がグループ会社取締役を兼任することによるモニタリング、四半期に一度グループ企業から当社へ戦略の進捗を報告するグループ会社報告会、グループ全体の中期経営計画の議論や進捗確認をグループ各社の責任者を含めて実施することなどによって、グループ各社のガバナンス向上に努めています。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(2) 経営成績

 連結業績

 

2024年2月
連結会計年度

2025年2月
連結会計年度

増減

増減率

2023年3月1日から

2024年3月1日から

 2024年2月29日まで)

 2025年2月28日まで)

売上高

(百万円)

275,596

293,110

17,514

6.4%

営業利益

(百万円)

18,015

15,510

△2,504

△13.9%

経常利益

(百万円)

18,389

15,964

△2,424

△13.2%

親会社株主に帰属する当期純利益

(百万円)

13,513

9,614

△3,898

△28.9%

 

 

当連結会計年度においては、企業収益や雇用・所得環境が改善する中で、国内景気の緩やかな回復が見られました。また、昨年から続くインバウンド需要や賃上げが国内需要の支えとなり、消費意欲は底堅く推移しました。一方、円安の恒常化、少子高齢化と労働力不足、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢の長期化など経済の先行きは不透明な状況が続き、猛暑や大雨、大雪などの異常気象も見られました。

 

このような情勢の中、当社グループは中期経営計画において以下の成長戦略を策定し、着実に推進してきました。

成長戦略Ⅰ マルチブランド、カテゴリー

ブランドの役割に応じたグルーピングによる収益改善と成長の両立

成長戦略Ⅱ デジタルの顧客接点、サービス

自社ECの成長加速と楽しいコミュニティ化

成長戦略Ⅲ グローカル

中国大陸でのモデル展開と東南アジア開拓

成長戦略Ⅳ 新規事業

飲食事業確立と新たな魅力の獲得

 

 

当連結会計年度の連結業績は、売上高が2,931億10百万円(前年同期比6.4%増)、営業利益が155億10百万円(前年同期比13.9%減)、経常利益が159億64百万円(前年同期比13.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が96億14百万円(前年同期比28.9%減)となりました。成長戦略に基づき、M&Aによるブランドやカテゴリーの拡大、自社ECで他社商材を取扱うオープン化及び東南アジアの出店などを進めましたが、国内外の気候変化への対応や一部子会社の業績に課題があり、増収減益となりました。

 

 

アパレル・雑貨関連事業の国内売上高につきましては、春先の低気温や夏場の猛暑、秋冬には残暑や大雪など、年間を通して天候要因の影響がありました。一方、外出需要やカジュアルファッション消費は底堅く推移しており、トレンドを捉えた商品展開やヒット商品の育成、TVCMやポイント還元などのプロモーションを行い、前年同期比6.1%の増収となりました。7月から連結開始した株式会社トゥデイズスペシャル(現在は当社に統合)も増収に寄与しています。

デジタル戦略として、自社ECとリアル店舗を連動させたプロモーション、企業や人気キャラクターとのコラボ商品の取扱い、自社ECのオープン化拡大などの集客施策を継続的に行ったことで、自社EC/ポイント制度の会員数は前期末比220万人増の1,970万人に伸長し、EC売上高は前年同期比5.7%増となりました。なお、10月に自社ECの名称を「ドットエスティ」から「and ST」に変更しております。

海外売上高(円換算)につきましては、中国大陸では旗艦店のリニューアルやECの好調などがあったものの、不動産不況や消費低迷などの影響により、前年同期比1.9%の減収となりました。香港と台湾ではマルチブランド戦略の進展や新規出店により、それぞれ12.0%、15.8%の増収となりました。米国では市況全体の冷え込みによる卸売事業の不振が続き、6.4%の減収となりました。また、前第2四半期から事業を開始したタイは第3四半期に2号店を開店するなど63.9%の増収、フィリピンでは12月に1号店を出店しました。この結果、海外事業全体では5.0%の増収となりました。

その他(飲食事業)の売上高につきましては、当連結会計年度において飲食事業を行う株式会社ゼットンが決算日を変更したため13ヶ月決算となっており、14.0%の増収となりました。外食産業における原材料価格や光熱費の上昇、人手不足など厳しい経営環境が続きましたが、外食需要の増加や新規出店、海外事業の好調などが売上に寄与しました。

収益面につきましては、「適時・適価・適量」の商品提供による在庫コントロールと値引き販売の抑制、商品の高付加価値化、商品の価格見直しを継続し、売上総利益率の改善を図りました。しかし、円安による原価上昇や秋物商戦の不調による在庫の評価減、卸売事業を含むBtoB事業の構成比が上がったことによる押し下げなどにより、アパレル・雑貨関連事業の売上総利益率は前年同期から低下しました。その他(飲食事業)においても商品価格の見直しや原価低減などに取り組んだものの、売上総利益率が減少し、連結での売上総利益率は54.7%となり、前年同期比0.6ポイント悪化しました。

販売費及び一般管理費につきましては、従業員の処遇改善や飲食事業による人件費の増加、新店出店やM&Aによる減価償却費の増加などにより、販管費率は49.4%と前年同期比0.7ポイント上昇しました。

以上の結果、営業利益率は前年同期比1.2ポイント減の5.3%となり、営業利益は前年同期比13.9%の減益となりました。

また、為替差益266百万円を営業外収益に、店舗、のれん及びその他の減損損失12億49百万円を特別損失に計上しました。

 

セグメントごとの経営成績は次の通りです。

 

①アパレル・雑貨関連事業

上記の状況の結果、売上高は2,785億75百万円(前年同期比6.0%増)、セグメント利益は166億82百万円(前年同期比10.1%減)となりました。

店舗展開につきましては、株式会社トゥデイズスペシャル(現 当社)の連結子会社化により、国内において30店舗増加したほか、98店舗の出店(内、海外25店舗)、66店舗の退店(内、海外8店舗)の結果、当連結会計年度末における店舗数は、1,554店舗(内、海外139店舗)となりました。

 

②その他(飲食事業)

その他(飲食事業)につきましては、売上高は146億6百万円(前年同期比14.1%増)、セグメント損失は7億17百万円(前年同期はセグメント損失1億39百万円)となりました。

店舗展開につきましては、9店舗の出店、4店舗の退店の結果、当連結会計年度末における店舗数は、76店舗となりました。

 

 

(3) 仕入及び販売の状況

当社グループは、アパレル・雑貨関連事業を報告セグメントとしているため、仕入実績につきましては、商品部門別に区分して記載しており、セグメント情報ごとに記載しておりません。なお、販売実績につきましては、商品部門別、ブランド別、地域別及び単位当たりに区分して記載しております。

 

 ① 仕入実績

    当連結会計年度の仕入実績は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

商品部門

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

前連結会計年度比
(%)

メンズボトムス

5,607

16.8

メンズトップス

15,713

3.2

レディースボトムス

20,010

7.9

レディーストップス

54,251

3.0

雑貨・その他

37,823

12.8

合計

133,406

6.9

 

(注) 1.金額は仕入価格によっております。

2.上記の金額は外部仕入先からによるもので、連結会社相互間の内部仕入高は含まれておりません。

 

 ② 販売実績

    当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。

 

a. 商品部門別販売実績

(単位:百万円)

商品部門

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

前連結会計年度比
(%)

メンズボトムス

12,873

12.2

メンズトップス

35,188

4.1

レディースボトムス

46,114

6.7

レディーストップス

126,721

3.9

雑貨・その他 

72,212

10.9

合計

293,110

6.4

 

(注) 1.雑貨・その他は、契約負債の計上額やポイント引当金繰入額等が含まれております。

2.上記の金額は外部顧客に対するもので、連結会社相互間の内部売上高は含まれておりません。

 

 

b. ブランド別販売実績

 

ブランド・地域

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

前連結会計年度比
増減率(%)

売上高(百万円)

構成比(%)

 

 

グローバルワーク

52,660

18.0

1.9

 

 

ニコアンド

35,902

12.2

7.0

 

 

スタディオクリップ

22,883

7.8

3.9

 

 

ローリーズファーム

22,738

7.8

1.5

 

 

レプシィム

14,888

5.1

12.5

 

 

ラコレ

12,673

4.3

17.3

 

 

ジーナシス

11,695

4.0

△4.9

 

 

ベイフロー

11,288

3.9

4.7

 

 

その他

42,023

14.3

6.5

 

 当社 計

226,754

77.4

4.9

 

 株式会社BUZZWIT

12,277

4.2

5.6

 

 株式会社エレメントルール

12,641

4.3

12.8

 

 その他連結子会社

2,981

0.9

212.1

 

国内合計

254,654

86.8

6.1

 

 

中国大陸

4,268

1.5

△1.9

 

 

香港

4,756

1.6

12.0

 

 

台湾

7,518

2.6

15.8

 

 

タイ

355

0.1

63.9

 

 

フィリピン

25

0.0

 ―

 

 

米国

6,995

2.4

△6.4

 

海外合計

23,920

8.2

5.0

アパレル・雑貨関連事業合計

278,574

95.0

6.0

 

株式会社ゼットン(注)3

14,535

5.0

16.0

その他(飲食事業)合計(注)4

14,535

5.0

14.0

グループ合計

293,110

100.0

6.4

 

(注)1.店舗を運営管理しているブランド営業部・地域別に集計しております。

2.上記の金額は外部顧客に対するもので、連結会社相互間の内部売上高は含まれておりません。

3.株式会社ゼットンの売上高は、同社の連結子会社であるZETTON,INC.を含めて集計しております。

4.その他(飲食事業)合計の前連結会計年度比増減率は、2024年2月2日付で清算結了しております株式会社ADASTRIA eat Creationsの前年同期の売上高を含めて集計しております。

 

 

 なお、店舗出退店等の状況は、次のとおりであります。

ブランド・地域

店     舗     数

前連結会計

年度末

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

当連結会計
年度末

合併等
(注)3

出 店

変 更

退 店

増 減

 

 

グローバルワーク

214

 ―

5

 ―

△3

2

216

 

 

ニコアンド

141

 ―

6

 ―

△2

4

145

 

 

スタディオクリップ

179

 ―

10

 ―

△2

8

187

 

 

ローリーズファーム

126

 ―

1

 ―

△2

△1

125

 

 

レプシィム

115

 ―

1

 ―

△1

 ―

115

 

 

ラコレ

78

 ―

14

 ―

△1

13

91

 

 

ジーナシス

68

 ―

1

 ―

 ―

1

69

 

 

ベイフロー

62

 ―

2

 ―

△2

 ―

62

 

 

その他

259

6

25

 ―

△20

11

270

 

 当社 計

1,242

6

65

 ―

△33

38

1,280

 

 株式会社BUZZWIT

31

 ―

1

 ―

△4

△3

28

 

 株式会社エレメントルール

83

 ―

6

 ―

△11

△5

78

 

 その他連結子会社

14

24

1

 ―

△10

15

29

 

国内合計

1,370

30

73

 ―

△58

45

1,415

 

 

中国大陸

15

 ―

3

 ―

△4

△1

14

 

 

香港

23

 ―

7

 ―

△1

6

29

 

 

台湾

72

 ―

11

 ―

△2

9

81

 

 

タイ

2

 ―

1

1

3

 

 

フィリピン

 ―

 ―

1

 ―

 ―

1

1

 

 

米国

10

 ―

2

 ―

△1

1

11

 

海外合計

122

 ―

25

 ―

△8

17

139

 

アパレル・雑貨関連事業合計

1,492

30

98

 ―

△66

62

1,554

 

株式会社ゼットン(注)4

71

 ―

9

 ―

△4

5

76

 

その他(飲食事業)合計

71

 ―

9

 ―

△4

5

76

 

グループ合計

1,563

30

107

 ―

△70

67

1,630

 

(注) 1.店舗を運営管理しているブランド営業部・地域別に集計しております。

2.店舗数は、他社WEBストア、自社WEBストアを含めて集計しております。

3.2024年3月1日付で、当社を存続会社、株式会社Gate Winを消滅会社とする吸収合併を実施し、それに伴う変更を記載しております。

また、株式会社トゥデイズスペシャル(現 当社)の連結子会社化に伴う増加店舗数を記載しております。

4.株式会社ゼットンの店舗数は、同社の連結子会社であるZETTON,INC.を含めて集計しております。

 

 

c. 地域別販売実績

 

地域別

前連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

売上高
(百万円)

期末店舗数
(店)

売上高
(百万円)

店舗異動状況

期末店舗数
(店)

出店
(店)

閉鎖・変更等(店)

(注)2

 

 

 

北海道

5,791

37

5,905

1

38

 

 

 

青森県

984

7

1,085

4

11

 

 

 

岩手県

828

7

797

7

 

 

 

秋田県

875

7

885

7

 

 

 

宮城県

2,973

23

3,089

23

 

 

 

山形県

404

3

424

3

 

 

 

福島県

850

7

886

1

8

 

 

北海道・東北地区計

12,707

91

13,072

6

97

 

 

 

栃木県

2,022

15

1,970

△1

14

 

 

 

茨城県

2,880

22

2,984

2

△2

22

 

 

 

群馬県

1,962

17

2,041

1

△2

16

 

 

 

千葉県

10,383

55

13,005

2

57

 

 

 

山梨県

1,006

8

1,061

8

 

 

 

埼玉県

10,122

73

10,783

7

△3

77

 

 

 

東京都

17,368

135

18,434

3

△3

135

 

 

 

神奈川県

12,997

92

13,821

9

△1

100

 

 

関東地区計

58,743

417

64,102

24

△12

429

 

 

 

静岡県

4,684

33

4,797

1

△1

33

 

 

 

新潟県

1,949

17

1,935

△1

16

 

 

 

長野県

2,083

13

2,155

13

 

 

 

富山県

1,365

12

1,420

2

△1

13

 

 

 

石川県

2,384

22

2,398

1

23

 

 

 

愛知県

10,906

69

11,198

4

△3

70

 

 

 

岐阜県

2,278

16

2,607

4

△1

19

 

 

 

福井県

569

4

680

1

5

 

 

中部地区計

26,222

186

27,192

13

△7

192

 

 

 

三重県

2,592

20

2,593

20

 

 

 

京都府

3,481

28

3,858

2

30

 

 

 

大阪府

15,743

109

16,154

4

△2

111

 

 

 

兵庫県

6,945

48

6,741

3

51

 

 

 

奈良県

1,742

13

1,672

13

 

 

 

和歌山県

853

8

831

△1

7

 

 

 

滋賀県

1,668

14

1,656

14

 

 

近畿地区計

33,028

240

33,507

9

△3

246

 

 

 

岡山県

2,383

18

2,321

18

 

 

 

広島県

4,322

38

4,482

1

△1

38

 

 

 

鳥取県

257

2

228

1

3

 

 

 

島根県

720

7

681

1

8

 

 

 

山口県

376

4

729

4

8

 

 

 

愛媛県

1,480

11

1,481

11

 

 

 

香川県

1,372

12

1,367

12

 

 

 

高知県

603

5

555

△1

4

 

 

 

徳島県

915

6

878

6

 

 

中国・四国地区計

12,432

103

12,725

7

△2

108

 

 

 

地域別

前連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

売上高
(百万円)

期末店舗数
(店)

売上高
(百万円)

店舗異動状況

期末店舗数
(店)

出店
(店)

閉鎖・変更等
(店)

(注)2

 

 

 

福岡県

7,973

64

7,994

1

△3

62

 

 

 

長崎県

759

7

896

1

8

 

 

 

佐賀県

1,413

8

1,389

△1

7

 

 

 

熊本県

2,662

19

2,677

19

 

 

 

大分県

1,820

13

1,745

13

 

 

 

宮崎県

953

6

1,147

2

8

 

 

 

鹿児島県

1,739

12

1,687

12

 

 

 

沖縄県

2,210

16

2,420

16

 

 

九州・沖縄地区計

19,532

145

19,957

3

△3

145

 

 

WEBサイト

53,594

60

56,194

3

63

 

当社 計

216,260

1,242

226,754

65

△27

1,280

 

株式会社BUZZWIT

11,630

31

12,277

1

△4

28

 

株式会社エレメントルール

11,210

83

12,641

6

△11

78

 

その他連結子会社

955

14

2,981

1

14

29

 

国内合計

240,057

1,370

254,654

73

△28

1,415

 

 

中国大陸

4,351

15

4,268

3

△4

14

 

 

香港

4,248

23

4,756

7

△1

29

 

 

台湾

6,493

72

7,518

11

△2

81

 

 

タイ

216

2

355

1

3

 

 

フィリピン

25

1

1

 

 

米国

7,477

10

6,995

2

△1

11

 

海外合計

22,787

122

23,920

25

△8

139

 

アパレル・雑貨関連事業合計

262,844

1,492

278,574

98

△36

1,554

 

株式会社ゼットン(注)3

12,536

71

14,535

9

△4

76

 

その他(飲食事業)合計(注)4

12,751

71

14,535

9

△4

76

 

グループ合計

275,596

1,563

293,110

107

△40

1,630

 

(注) 1.上記の金額は外部顧客に対するもので、連結会社相互間の内部売上高は含まれておりません。

2.2024年3月1日付で、当社を存続会社、株式会社Gate Winを消滅会社とする吸収合併を実施し、それに伴う変更を記載しております。

また、株式会社トゥデイズスペシャル(現 当社)の連結子会社化に伴う増加店舗数を含めております。

3.株式会社ゼットンの店舗数は、同社の連結子会社であるZETTON,INC.を含めて集計しております。

4.その他(飲食事業)合計の前連結会計年度の売上高は、2024年2月2日付で清算結了しております株式会社ADASTRIA eat Creationsの売上高を含めて集計しております。

 

d. 単位当たり販売実績

 

区分

前連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

売上高(百万円)

275,596

293,110

1㎡当たり売上高

売場面積(月平均)(㎡)
1㎡当たり期間売上高(千円)

347,361

793

369,848

792

1人当たり売上高

従業員数(月平均)(人)(注)1
1人当たり期間売上高(千円)

12,153

22,674

12,798

22,899

 

(注) 1.従業員数は臨時雇用者(年間平均人員:1日8時間換算)を含めております。

2.上記の金額は外部顧客に対するもので、連結会社相互間の内部売上高は含まれておりません。

 

 

(4) 財政状態

 ① 資産

流動資産は、前連結会計年度末に比べて、15億58百万円減少して671億73百万円となりました。これは主に、棚卸資産が22億43百万円増加した一方で、現金及び預金が22億28百万円、受取手形及び売掛金が12億88百万円それぞれ減少したことによるものです。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて、67億50百万円増加して659億35百万円となりました。これは主に、店舗内装設備(純額)が11億円、使用権資産(純額)が8億円、建設仮勘定が10億65百万円、のれんが15億64百万円それぞれ増加したことによるものです。

この結果、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて、51億92百万円増加して1,331億8百万円となりました。

 

 ② 負債

流動負債は、前連結会計年度末に比べて、14億12百万円減少して470億79百万円となりました。これは主に、リース債務が4億57百万円増加した一方で、支払手形及び買掛金が6億10百万円、未払法人税等が5億30百万円、契約負債が5億17百万円それぞれ減少したことによるものです。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて、9億85百万円増加して88億28百万円となりました。これは主に、リース債務が4億57百万円、固定負債のその他が7億37百万円それぞれ増加したことによるものです。

この結果、当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べて、4億26百万円減少して559億8百万円となりました。

 

 ③ 純資産

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べて、56億18百万円増加して772億円となりました。これは主に、自己株式が18億88百万円減少(純資産は増加)、非支配株主持分が13億40百万円減少した一方で、利益剰余金が56億94百万円増加したことによるものです。

 

(5) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前年同期に比べて、22億60百万円減少して210億81百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

 ① 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果得られた資金は、213億73百万円(前年同期比8億50百万円減)となりました。これは主に、棚卸資産の増加が14億26百万円、法人税等の支払額が57億25百万円それぞれあった一方で、税金等調整前当期純利益が146億55百万円、減価償却費が110億93百万円、売上債権の減少が14億3百万円それぞれあったことによるものです。

 

 ② 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果使用した資金は、169億71百万円(前年同期比70億50百万円増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が75億21百万円、無形固定資産の取得による支出が38億74百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が44億93百万円それぞれあったことによるものです。

 

 ③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果使用した資金は、71億11百万円(前年同期比15億29百万円増)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出が11億25百万円、配当金の支払額が39億17百万円、リース債務の返済による支出が16億90百万円それぞれあったことによるものです。

 

 

(6) 資本の財源及び資金の流動性について

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。

当社グループの運転資金需要は主に、商品仕入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用です。また、長期性の資金需要は、店舗投資、物流・システム投資及び更なる成長に向けたM&Aを含む成長投資等によるものです。

運転資金及び長期性資金は、主に営業活動によって得られた自己資金を充当し、必要に応じて借入金等による資金調達を実施する方針としています。また、グループの資金は、当社にて一括運用・調達を行うことにより、グループの資金効率の向上を図っています。

 

(7) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループでは、2025年4月4日に2030年2月期を最終年度とする「中期経営計画2030」を発表し、下記の目標を設定しております。

 

 


 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

特記すべき事項はありません。