文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)基本方針
当社ではこれまでに構築してきた経営基盤をベースに、アフターコロナの事業環境を見据えたより積極的な成長戦略にシフトすべく、2023年3月期を初年度とした3カ年の新中期経営計画を策定しました。保有する資産の徹底的な磨き上げと有効活用を行い、競合に対して圧倒的に差別化できる事業領域をさらに伸ばすことで早期の黒字化の実現に向け推進しております。
当社の全ての事業の根幹は、食を通じて提供される付加価値にあり、全ての事業の提供価値である「食体験」と「ホスピタリティ」をもう一段磨き込み、広く顧客に訴求することを基本方針としております。レストラン事業におけるレストラン営業に関しては、店舗設備や人財、マーケティングなどへの投資を強化し、料理とサービスに磨きをかけ、顧客の満足度を向上させる取り組みを進めてまいります。ブライダル営業においては、レストランウエディングの独自性を再構築し、お客様のニーズに寄り添った「ひらまつならではの価値」を提供し、営業強化を図ってまいります。また、ホテル事業においては、ひらまつが展開する新たなオーベルジュとしての体験価値を訴求し、オペレーションの磨き込みを行い、収益性の改善を図ってまいります。新規事業においては、当社の有形・無形の資産を有効に活用し、出店地における地域への貢献や新たな事業領域の開発など、収益多様化への取り組みを推進してまいります。最後に全社共通の方針として、事業間の垣根を超え再来店を促進するためのCRM構築を進めるとともに、ブランディングやIR、PRを強化し、お客様とマーケットからの期待感を高め、事業間シナジーを最大化することを目指します。レストラン、ブライダル、ホテルが一体となって、お客様の生涯顧客化を実現する唯一無二のビジネスモデルを構築してまいります。
当社は、2023年3月期を初年度とする中期経営計画をスタートさせ、初年度の営業キャッシュ・フローの黒字化、2年目の営業利益の黒字化、最終年度の営業利益10億円の達成に向け、アフターコロナの事業環境を見据えた成長戦略の実行を推進してまいりました。2年目となる2024年3月期は、新型コロナウイルス感染症の「5類感染症」移行後における堅調な外食及び国内旅行需要をとらえ、売上最大化に向けた各種企画の打ち出しや、当社ならではの「付加価値の向上による単価アップ」施策などが奏功し、レストラン、ブライダル、ホテル全ての事業において前年を大幅に上回り、連結累計期間において過去最高売上を更新し、営業利益、経常利益共に計画を大幅に上回る結果となりました。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う行動制限が解除され社会経済活動の正常化が進んだことや、円安によるインバウンド需要の増加など、明るい兆しが見える一方、世界情勢の緊迫化、資源価格や原材料価格の高騰による物価上昇や人件費や物流費の上昇など、当社を取り巻く事業環境は引き続き厳しい状況にあります。また、当社は、新型コロナウイルス感染症による減収の影響により前連結会計年度まで継続して経常損失を計上しており、一部金銭消費貸借契約における財務制限条項に抵触していることから、各金融機関との間で2024年7月末まで既存借入に関する貸付元本の返済猶予について合意している状況であります。
今後の持続的な企業価値向上のためには、ホテル事業の資産効率の見直しによる財務体質の改善が最適な戦略であると判断し、これまでの資産保有と運営が一体化されたビジネスモデルから、レストラン事業と同様に運営に特化したビジネスモデルへ転換するため、当社が保有するホテル資産を譲渡し、対象ホテルの運営を受託する契約を締結することといたしました。対象ホテルはこれまでと同様に当社が運営を継続し、オペレーターに徹することで当社の強みである食を基盤とする滞在価値の更なる強化を図り、ホテル事業の価値向上及び収益最大化を目指してまいります。また、ホテル資産売却で得る資金の一部を借入金の返済に充当することで金融機関との取引正常化による財務健全化を早期に図り、大きく変化する事業環境への対応と、今後の成長投資を機動的に実行出来る体制を整えてまいります。これらの詳細につきましては、2024年3月27日公表の「当社保有ホテル資産の譲渡に関する売買契約及びホテル運営に関する運営委託契約の締結並びに資本業務提携解消に関するお知らせ」並びに2024年6月21日公表の「固定資産の譲渡による特別利益の計上並びに業績予想の修正に関するお知らせ」をご参照ください。
ホテル事業を再構築することに加え、想定以上に長引いた新型コロナウイルス感染症拡大による影響や、原材料価格の高騰による物価や人件費、物流費の上昇など、計画を策定した当時から事業環境が大きく変化したため、現中期経営計画の最終年度となる2025年3月期の計画を修正することといたしました。
ホテルの事業構造の変更により、2024年7月以降のホテル売上がGOPに一定比率を乗じた数値となり大幅な減収になることに加え、現中期経営計画策定時に想定していなかったレストラン「アルジェント」(銀座)の退店、及び、新型コロナウイルス感染症拡大等の影響により新規事業が未着手であることから、既存店での比較を下表で示しております。

2025年3月期計画の売上は、現中期経営計画の最終年度の売上に対して既存店比較で増収となっております。一方、現中期経営計画策定時から環境が変化し、業界全体の人員不足により、採用コストや人件費が大幅に増加していること、及びエネルギー価格の高騰や円安による物価上昇により販管費が大幅に増加していることから、営業利益及び経常利益においては減益とさせていただいております。
2025年3月期は、これらの費用構造を中長期的課題ととらえ立案する次期中期経営計画(2025年4月にスタート予定)の基盤づくりの年と位置付け、当社の強みである人の成長を軸とした成長戦略策定を遂行してまいります。なお、次期中期経営計画につきましては2024年中の公表を予定しております。
(注)上記の修正計画(連結業績予想)につきましては、発表日時点において入手可能な情報に基づき作成したものであり、実際の業績は、今後様々な要因によって予想数値と異なる可能性があります。
当社は、食のパイオニア企業として「食の可能性を広げ、心ゆさぶる『時』を提供する」というミッションのもと、「この世界を、食の感動で繋がる大きなテーブルに」というビジョンを掲げ、事業を展開しております。
いま世界は、気候変動や食糧危機など様々な社会・環境課題に直面しておりますが、当社の事業活動を通して、それらの課題と真摯に向き合うことが、持続可能な社会の実現や豊かな食文化の発展に貢献し、ひいては当社の持続的な成長や企業価値の向上に繋がると考えております。
あらゆる文化や価値観を超えた、食の感動で繋がる世界の創造を目指し、サステナビリティ活動を推進してまいります。
当社は、サステナビリティ活動を重要な経営課題の一つと捉え、この活動を積極的かつ着実に推進するため、サステナビリティ推進体制を構築しております。サステナビリティ推進体制では、その中心に代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、取締役会と各本部機能と連携することで課題解決や施策を迅速に実行に移すことを可能としております。また、本委員会には、関連部署担当役員及び部門長の他、オブザーバーとして社外取締役、社外監査役が参加し、各分野における様々な助言のみならず経営層への監督機能も兼ね備えることで、しっかりとガバナンスを効かせた体制としております。企業を取り巻く環境が大きく変化する中、持続可能な社会の実現への貢献と当社の持続的成長の実現の両立に向けた取り組みを各事業の推進とともに、より一層強化することを目的としております。
本委員会では、当社が特定したマテリアリティを中心に、サステナビリティ経営推進や持続的成長に関する取り組みについて審議・評価し、四半期ごとに取締役会に報告いたします。
<サステナビリティ推進体制>

(2)戦略
当社は、サステナビリティ活動を推進するにあたり、第一段階としてマテリアリティの特定を行いました。マテリアリティ(Materiality)とは、当社が直面している問題や課題の中で、経済的・環境的・社会的な観点からの重要なテーマを指し、マテリアリティを特定することで、当社におけるサステナビリティ課題を把握することが可能となります。
次のステップといたしましては、マテリアリティの特定に基づき、優先順位付けと具体的な目標と戦略策定を行い、サステナビリティ戦略を立案する予定です。尚、各マテリアリティに取り組むためのアクションプランは、可能な限り各事業の業務の中に落とし込むこととし、サステナビリティ委員会を中心にその実行状況をモニタリングし、持続的に成果が得られる体制を構築することを想定しております。
①マテリアリティの特定プロセス
マテリアリティの特定にあたっては、以下のプロセスに則り、「ステークホルダーにとっての重要性」及び「当社にとっての重要性」の2つの視点で評価し、重要度の高い課題を複数抽出後、取締役会を含む社内会議で討議を行い、その中で特に優先度の高い課題をマテリアリティとして特定いたしました。
② マテリアリティ
以下の5つの重要課題と10項目の重要テーマをマテリアリティとして特定いたしました。これらは全て当社の事業推進においても重要なテーマであり、当社の掲げるミッション及びビジョンの実現は、これらの課題解決が必須となります。マテリアリティへの取り組みを通じて、持続可能な社会の実現や豊かな食文化の発展に貢献するとともに、当社の持続的な成長及び企業価値の向上に取り組んでまいります。
<マテリアリティマップ>

当社は、危機管理規程に基づき危機管理委員会が定める危機管理推進計画に基づき、リスクの事前予防の計画を立案し、その実施状況をモニタリングしております。
サステナビリティに関するリスクについては、前述のサステナビリティ委員会が主体となり、5項目のマテリアリティ及び関連する10項目の重点テーマごとに定めた基本的な考え方に基づき、リスクの識別・評価、戦略、目標のモニタリングを行うことでリスク管理の強化を図ってまいります。
特に気候変動に伴うリスクについては、当社が目指す持続可能な社会の実現、及び事業の持続可能性の追求に重大なダメージを与えるものであり、そのため当社は、自然災害の増加による店舗・物流網への物理的損害や、食品廃棄・温暖化ガス排出などの環境負荷の高い企業とのイメージにより顧客の離反などによる事業への影響が想定されるため、当社でのリスク管理を図ることに留まらず、生産者や取引先を始めとしたステークホルダーとの対話及び連携を強化し、ビジネス機会の創出や管理強化によるリスク低減に取り組んでまいります。
(4)指標及び目標
①気候変動への対応
スコープ別排出量(tCO2)
※Scope1、2の集計対象は、国内拠点としております。
※地産地消の活動は当社ホームページをご参照ください。
https://www.hiramatsu.co.jp/local-table/
今年度からはより精緻な算出とすべく、自社で使用する電気・ガスに加え、ガソリン・灯油・特A重油使用による排出量も算出することとし、2023年3月期の排出量にも加算し修正致しました。2024年3月期の排出量は新型コロナウイルス感染拡大に伴う行動制限の解除により営業時間が正常化しておりますが、店舗の照明のLED化による省エネルギーの推進等によりScope2においてはロケーション基準で前年度よりも削減することができました。
今後は、各拠点毎における脱炭素への取り組みを具体的に推進すべく、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で地方創生事業を産官学にて推進している「地域みらいプロジェクト」と、同大学発スタートアップでGXに特化した支援を行っているSUSTUS株式会社と連携し、地域拠点毎におけるCO2排出量可の視化を行っていく予定です。このような第三者も含めた取組を通じて削減目標の設定に必要なデータの収集と分析を行いながら削減目標に必要なロードマップを策定すると共に、地産地消の促進によるフードマイレージの短縮化とそれに伴うサプライチェーン全体のCO2削減、店舗の照明のLED化による省エネルギーの推進等、具体的な行動を通じたCO2削減に取り組んでまいります。
②ダイバーシティ&インクルージョンの促進
③食のプロフェッショナル人財育成・開発
(5)人的資本
当社は、「食の可能性を広げ、心ゆさぶる『時』を提供する」というミッションのもと、当社の事業を通じて豊かな食文化の発展に貢献し、持続可能な社会づくりを実現することが、当社の企業価値向上と持続的な成長に繋がると考えております。これらを実現するための当社の企業価値の源泉は「人財」であり、従業員一人ひとりがその個性を活かしながらその能力を最大限に発揮し、安心して働くことができる職場環境を提供することが最重要課題であり、人的資本経営における基本方針と位置付けております。「この世界を、食の感動でつながる大きなテーブルに」というビジョンを掲げ、従業員一人ひとりが夢を描いてこの魅力を磨き、使命を追求し、あらゆる文化や価値観を超え、食の感動でつながる世界をつくること、それが、当社の目指す未来であると捉え、このコンセプトのもと、個人と企業がともに成長する環境と風土づくりを推進しております。
当社は、人的資本に関するマテリアリティを「個性輝く人財が活躍し続ける人的資本の強化」とし、重要テーマとして、「ダイバーシティ&インクルージョンの促進」、「食のプロフェッショナル人財育成・開発」を掲げ、多様な人財が活躍できる機会の創出や環境整備を推進するとともに、食のプロフェッショナル人財の育成・開発に取り組み、当社ひいては飲食・サービス業界全体の発展に貢献することを目指しております。
①ダイバーシティ&インクルージョンの促進
多様な人財の活躍が組織の活性化を促し、その一人ひとりが個の魅力を磨き続けることが、持続的な事業成長や当社ならではの価値創造に繋がると考え、従業員が能力や創造性を最大限発揮できる企業風土の醸成や環境整備に取り組んでおります。特に当社は従業員の約半数が女性で構成されていることから、多様な働き方や継続的なキャリア形成支援など、女性の活躍を推進しております。
②食のプロフェッショナル人財育成・開発
当社が提供する多彩な「食」を支えているのは、飲食・サービス分野でトップクラスの技量を持つプロフェッショナルな人財であり、当社が持続的な成長を実現する上で、人財は最も重要な経営資源と捉えております。このような考えのもと、当社は食のプロフェッショナル人財の育成・開発に取り組み、当社ひいては飲食・サービス業界全体の発展に貢献してまいります。
食のプロフェッショナル人財の育成・開発に関する活動の詳細は当社ホームページをご参照ください。https://www.hiramatsu.co.jp/sustainability/
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの根幹となるレストラン事業を中核に、レストラン事業におけるブライダル営業、ホテル事業、ワインその他のEC事業等を展開しております。
今後の景況感、市場動向、外食に係る顧客の消費、嗜好の変化、環境リスク等により、当社グループが提供するレストラン・ホテルのコンセプト、料理、サービスが受入れられない場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
海外シェフとの提携契約に基づき当社グループが展開するブランドにおいて、何らかの要因により契約の持続ができなくなった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
天候不順や自然災害の発生、原油の高騰、為替の変動等による原材料価格の上昇は、当社グループにおける原価の上昇につながる可能性があります。一定の範囲においては、メニュー価格の改定等により対応可能でありますが、その影響が一定の範囲を超え、コストの上昇を十分に吸収できない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、個人情報保護法に定められた個人情報を取り扱っており、管理体制の整備及び個人情報の取り扱いについては細心の注意を払っておりますが、当社グループが保有する顧客情報等の個人情報が漏洩した場合、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償請求の提起等により当社グループのブランドイメージを大きく損ね、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、食品衛生法、労働基準法、消防法等レストラン・ホテル営業に関わる各種法的規制を受けております。これらの法的規制に変更が生じた場合、それに対応するための新たな費用が発生することにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの店舗や本店所在地を含む地域で、大規模な地震や洪水や台風等の自然災害、感染症の蔓延などが発生した場合、被災状況によっては正常な事業活動が困難な状態となり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(7)感染症に関するリスクについて
新型コロナウイルス感染症をはじめとした感染症等が発生・拡大した場合、又は収束が長引いた場合には、外出自粛などにより当社のサービスに対する需要が減少し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しておりますが、消費動向や事業環境の変動等により収益性が著しく悪化した場合、減損損失を計上する可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社は、当連結会計年度において売上高の回復はみられるものの、長引く新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、前連結会計年度まで継続して経常損失を計上しており財務制限条項に抵触している状況にあります。
しかしながら、このような状況に対し、アフターコロナを見据えた新中期経営計画の推進により早期の黒字化を目指すとともに、第三者割当増資による46億円の資金調達及び、30億円の資本性劣後ローンによる資金調達により十分な運転資金を確保していることに加え、各金融機関との間で、2024年7月末まで既存借入に関する貸付元本の返済猶予について合意していることから、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しているものの、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
なお、2024年3月27日公表の「当社保有ホテル資産の譲渡に関する売買契約及びホテル運営に関する運営委託契約の締結並びに資本業務提携解消に関するお知らせ」の通り、ホテル資産の譲渡で得られる資金の一部を財務制限条項に紐づく借入金の元本返済に充てる予定であることから、2025年3月期に継続企業の前提に関する疑義を生じさせるような事象又は状況についても解消される見込みです。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下、「経営成績等」という。)の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ110百万円増加し、21,872百万円となりました。これは主に、現金及び預金が370百万円増加した一方、建物及び構築物(純額)が287百万円減少したことによるものであります。
負債合計は前連結会計年度末に比べ285百万円増加し、17,525百万円となりました。これは主に、買掛金が274百万円増加したことによるものであります。
純資産は前連結会計年度末に比べ174百万円減少し、4,347百万円となりました。これは主に、利益剰余金が153百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)におけるわが国の経済情勢は、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限の緩和により社会経済活動の正常化が進み、個人消費の持ち直しやインバウンド需要の回復が見られたものの、世界情勢の緊迫化、資源価格や原材料価格の高騰、円安による物価の上昇などにより、原材料をはじめ人件費や物流費の費用面の上昇は継続しており、予断を許さない状況となっております。
このような状況の中、当社グループは、2022年5月13日に公表した中期経営計画で掲げた2024年3月期の営業利益黒字化達成に向け、「付加価値の向上による単価アップ」、「人員充足」、「コスト削減」を重点施策として営業活動を強化推進してまいりました。新型コロナウイルス感染症の「5類感染症」移行後における堅調な外食及び国内旅行需要を背景に、売上最大化に向けた各種施策の打ち出しや、当社ならではの「付加価値の向上による単価アップ」施策などが奏功し、売上高は、レストラン、ブライダル、ホテル全ての事業において前年を大幅に上回り、連結累計期間において過去最高売上を更新する結果となりました。
利益面においては、原材料価格やエネルギーコストの高騰、さらには業界全体の人員不足により採用コストが想定を大きく上回るとともに、コスト増となる派遣社員を登用したことで人件費の大幅な増加が利益を圧迫しました。一方、前述の大幅な増収効果により原価率、及び人件費率を計画内でコントロールすることが出来たことに加え、電力供給業者の見直しや店舗における照明のLED化、再生可能エネルギー発電促進賦課金制度の活用、省エネ機器の導入による光熱費削減などの「コスト削減」施策を積極的に進めたことにより、営業利益及び経常利益が計画を大きく上回る結果となりました。
付加価値の最大化に向けた戦略投資として「リストランテASO」、「カフェ・ミケランジェロ」(代官山)の改装を行った一方で、財務健全化の一環として将来の回収可能性を検討した結果、店舗の閉鎖と一部店舗の減損損失計上による特別損失を298百万円計上いたしました。
これらの結果、当連結会計年度における当社グループの業績は、売上高13,859百万円(前年同期比12.0%増)、営業利益266百万円(前年同期は営業損失617百万円)、経常利益175百万円(前年同期は経常損失612百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失153百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失904百万円)となりました。
なお、「中期経営計画」に対する進捗は、売上高が計画比6.0%の増収、営業利益が計画比2,098.4%の大幅な増益となり、経常利益においても経常損失68百万円の計画値に対して経常利益175百万円と大幅な増益となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(レストラン事業)
当連結会計年度のレストラン事業の売上高は9,029百万円(前年同期比10.9%増)、営業利益は999百万円(前年同期比42.8%増)となりました。
新型コロナウイルス感染症の「5類感染症」移行後における堅調な外食需要を背景に、季節やイベント毎に各店の特色を活かした高付加価値かつ高単価のメニューを開発し販売強化したことにより、お客様の来店意欲の喚起と価値向上による単価アップにつながり、ランチ、ディナー売上ともに計画並びに前年を大きく上回る結果となりました。特に中期経営計画にて「付加価値の最大化に向けた戦略投資」として9月にリニューアルオープンした「リストランテASO」、「カフェ・ミケランジェロ」(代官山)においては、内外装のみならず新たなメニュー開発によりお客様の体験価値を更に強化した結果、両店の顧客満足度向上に加え、単価アップにも寄与し、売上は改装後において前年比+11.6%と順調に推移いたしました。
カフェ営業においては、前述の「カフェ・ミケランジェロ」(代官山)に加え、新国立美術館(六本木)内の3つのカフェ「サロン・ド・テ ロンド」、「カフェ コキーユ」、「カフェテリア カレ」が好調に推移し、売上は計画並びに前年を大幅に上回る結果となりました。
パーティ営業につきましては、渡航制限の解除により3年ぶりに再開した海外提携ブランドのシェフ来日イベントをはじめとした当社主催のパーティを積極的に開催したことに加え、法人営業を強化し企業や高級ブランドなどの法人パーティ需要を積極的に取り込んだことにより、売上は計画並びに前年を大幅に上回る結果となりました。
婚礼営業につきましては、コロナ禍において少人数化していた婚礼の列席者数が徐々に回復傾向になる中、レストランウエディングの強みを活かした様々な単価アップ施策や、パートナー企業との連携による高単価商品の開発及び販売強化など、当社ならではの施策により組単価が大幅に上昇し、売上は計画並びに前年同期を上回る結果となりました。婚礼獲得においては、平日見学の強化や外部委託スタッフの有効活用などによる新規獲得の強化に加え、来店前アンケートによる顧客の潜在ニーズの把握から最適化した婚礼プラン提案までをシステム化することにより、成約率及び単価アップを図る取組みや、見学後のフォロー体制強化、社内教育機関による若手スタッフの教育を充実するなど、次期に向けた取組みも着実に進めております。
(ホテル事業)
当連結会計年度のホテル事業の売上高は4,544百万円(前年同期比11.9%増)、営業利益は170百万円(前年同期は営業損失90百万円)となりました。なお、GOP(販売費及び一般管理費より地代家賃・減価償却費を控除した営業粗利益)につきましては、1,220百万円(前年同期比29.5%増)となっております。
新型コロナウイルス感染症の「5類感染症」移行後における堅調な国内旅行需要やインバウンド需要の増加に向け、各ホテルがそれぞれの特徴や地域性を活かした様々な施策を推進した結果、リピーターの利用も含め順調に集客を伸ばし、高稼働を維持することができました。単価についても料理のアップグレードやペアリングのドリンク提案、及びアクティビティの開発による提供価値の向上を推進した結果、前年を上回り堅調に推移いたしました。
また、富裕層インバウンドの獲得を強化したことにより、特に京都、軽井沢御代田、仙石原において外国人富裕層の予約が徐々に増えており、稼働と単価を引き上げることに繋がっております。引き続き営業活動を強化推進するとともに、インバウンド向け料理メニューや多言語対応スタッフの拡充など、富裕層インバウンドの受入体制も強化してまいります。
(その他)
当連結会計年度のその他の売上高は505百万円(前年同期比43.5%増)、営業利益は114百万円(前年同期比73.3%増)となりました。なお、連結子会社との内部取引にかかる調整額を除いた実績は、売上高285百万円(前年同期比63.9%増)、営業利益114百万円(前年同期比73.3%増)と増収増益となっております。
オンライン販売においては、フランス銘醸地の特別ワインセットや、プレミアムシャンパーニュセットなど、高価格帯商品の販売が堅調に推移したことに加え、取り扱いを開始したフランス以外の銘醸地ワインの販売も好調に推移いたしました。
また、2023年12月には、新たなライセンスビジネスの展開として「カフェ・ミケランジェロ」のライセンス1号店となる「アルベルゴ・カフェ・ミケランジェロ」を株式会社HESTA大倉と共同で「センタラグランドホテル大阪」(難波)にオープンいたしました。このようなライセンスビジネスをはじめとする新たな事業モデルの追求は、当社がこれまで培ってきた知見とブランドを活かした収益多様化への取り組みとして今後も推進してまいります。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.上記の収入実績(合計)に対する婚礼営業の構成比は、26.2%であります。
(注)1.上記には、婚礼営業及びパーティの実績は含まれておりません。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末から370百万円増加し5,630百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は1,151百万円(前連結会計年度は99百万円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失125百万円(同861百万円)、非資金費用項目である減価償却費777百万円(同803百万円)並びに減損損失298百万円(同217百万円)によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、支出した資金は744百万円(前連結会計年度は179百万円)となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出が707百万円(同203百万円)となったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、支出した資金は38百万円(前連結会計年度は42百万円)となりました。これは、ファイナンス・リース債務の返済による支出が38百万円(同42百万円)となったことによるものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額並びに開示に影響を与える見積り及び仮定を必要としております。経営者は、これらの見積り及び仮定に基づく数値について過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
① 「プルセル」ブランド
フランス、モンペリエのレストラン「ル・ジャルダン・デ・サンス」のオーナーシェフであるローラン・プルセル氏が代表を務めるJDS HOLDING(現JLO HOLDINGS)と「プルセル」ブランドのレストランを展開する契約を締結しております。
なお、提携契約の要旨は、下記のとおりであります。
フランス、アルザスのレストラン「オーベルジュ・ド・リル」のオーナーシェフであるマルク・エーベルラン氏と「エーベルラン」ブランドのレストランを展開する契約を締結しております。
なお、提携契約の要旨は、下記のとおりであります。
フランス、リヨンのレストラン「ポール・ボキューズ」を運営するProduits Paul BOCUSEと、日本国内において「ボキューズ」ブランドのレストランを展開する契約を締結しております。
なお、提携契約の要旨は、下記のとおりであります。
フランスのシャンパーニュ地方のレストラン「ARBANE」のオーナーシェフ、フィリップ・ミル氏との業務提携契約を締結しております。
なお、提携契約の要旨は、下記のとおりであります。
(2)資本業務提携契約の締結、第三者割当による新株式及び新株予約権の発行
株式会社マルハン太平洋クラブインベストメント及び株式会社太平洋クラブとの間で株式引受契約及び業務提携契約を、株式会社マルハン太平洋クラブインベストメントとの間で新株予約権引受契約を締結し、これに基づき、株式会社マルハン太平洋クラブインベストメント及び株式会社太平洋クラブを割当先として第三者割当による普通株式並びに株式会社マルハン太平洋クラブインベストメントを割当先とする第7回新株予約権を発行しております。
なお、契約の要旨は、下記のとおりであります。
① 株式引受契約(第三者割当)
② 新株予約権引受契約(第三者割当)
③ 業務提携契約
(3)当社保有ホテル資産の譲渡に関する売買契約及びホテル運営に関する運営委託契約の締結並びに資本業務提携解消
Ⅰ.当社保有ホテル資産の譲渡に関する売買契約及びホテル運営に関する運営委託契約の締結
当社は、2024年3月27日開催の取締役会にて、「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島」、「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 熱海」、「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原」、「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 宜野座」、「THE HIRAMATSU 京都」及び「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」(以下、個別に又は総称して「対象ホテル」といいます。)について、①ロードスターキャピタル株式会社(以下「LSC」といいます。)が出資する予定である特別目的会社であるLD1合同会社(以下「営業者SPC」といいます。)との間で、当社が所有する土地建物等に係る信託受益権、各対象ホテル内の家具、什器及び備品等の動産(以下、これらの動産を総称して「FF&E」といいます。)を営業者SPCに対して譲渡すること(以下「本譲渡」といいます。)を内容とする信託受益権及び動産売買契約、並びに②対象ホテル運営のための特別目的会社であるLD2合同会社(以下「ホテル運営SPC」といいます。)との間で、当社がホテル運営SPCから対象ホテルの運営を受託すること(以下「本運営受託」といいます。)を主な内容とする運営委託契約(以下「本運営委託契約」といいます。)を締結いたしました。また、同日開催の取締役会において、エヌ・ティ・ティ都市開発株式会社(以下「NTTUD」といいます。)との間で締結していた資本業務提携(以下「本資本業務提携」といいます。)を解消することを決議いたしました。
① 想定ストラクチャー
対象ホテルについて、当社は(ⅰ) 「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島」、「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 熱海」、「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原」、「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 宜野座」及び「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」(建物敷地外に限ります。)の土地部分、並びに(ⅱ) 「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原」(本館を除きます。)及び「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」の建物部分(以下(ⅰ)及び(ⅱ)を総称して「当社保有ホテル資産」といいます。)を、NTTUDは「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島」、「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 熱海」、「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原」(本館)、「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 宜野座」及び「THE HIRAMATSU 京都」の建物部分、並びに「THE HIRAMATSU 京都」の土地部分(以下「NTTUD保有ホテル資産」といいます。)をそれぞれ三菱UFJ信託銀行株式会社(以下「信託受託者」といいます。)に信託(以下「本信託」といいます。)したうえで、当社は当社保有ホテル資産に係る信託受益権及びFF&Eを、NTTUDはNTTUD保有ホテル資産に係る信託受益権を、それぞれ営業者SPCに有償で譲渡します。
本信託により対象ホテルの土地建物を所有することになる信託受託者は、ホテル運営SPCとの間で、対象ホテルに係るマスターリース契約を締結して対象ホテルをホテル運営SPCに賃貸します。これにより対象ホテルの賃借人となるホテル運営SPCは、当社との間で、対象ホテルに係る本運営委託契約を締結して対象ホテルの運営を当社に委託します。本譲渡に伴い、当社は当社保有ホテル資産及びFF&Eの所有権を失い、NTTUDと当社の間で締結されていた対象ホテル(「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」を除きます。)に係る建物賃貸借契約は合意解約されますが、当社は、ホテル運営SPCと本運営委託契約を締結し、対象ホテルを引き続き運営する予定です。
② 本譲渡及び本運営受託の概要
i) 本譲渡の概要
当社は、営業者SPCとの間で、当社保有ホテル資産の信託受益権及びFF&Eを営業者SPCに譲渡する契約を締結いたしました。
ⅱ) 本運営受託の概要
本譲渡と同時に、当社はホテル運営SPCとの間で運営委託契約を締結いたします。本運営受託により、業績に連動した運営受託報酬を享受することとなり、当社はオペレーターとして当社のホテル運営ノウハウを活かして収益を追求することになります。
Ⅱ.NTTUDとの資本業務提携の解消
① 資本業務提携の解消について
今後の持続的な成長のためにはホテル事業戦略の見直しと財務体質の改善が急務であると判断し様々な検討を行っていましたが、NTTUDとの協議の結果、資本業務提携の目的に照らし一定の成果を収めたものと判断し、本取引の実施に伴い、2024年7月1日(以下「解消日」といいます。)付で本資本業務提携を解消することといたしました。
② 資本業務提携解消の内容等
資本業務提携の解消により、ホテルの開発及び運営に関するNTTUDとの間の業務提携は解消します。これに伴い、対象ホテルの土地及び建物に関してNTTUDとの間で締結していた賃貸借契約も解約する予定です。なお、当社は、2024年3月31日現在、NTTUDの株式は保有しておりません。NTTUDは、2024年3月31日現在、当社の普通株式150万株(発行済株式総数の2.13%)を保有しております。
(4)事業提携契約の解消
該当事項はありません。
特に記載すべき事項はありません。