第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針・経営戦略等

 当社は「味覚とサービスを通して都会生活に安全で楽しい食の場を提供する」という経営理念のもと、「あったら楽しい」「手の届く贅沢」を営業コンセプトとしております。「東京圏ベストロケーション」「女性ターゲット」「ライトフード・自社生産」という戦略に基づき、すべて直営店での店舗展開をしながら営業活動を行っており、また3つの生産拠点で製造するパスタソース・ドレッシング・珈琲豆・ケーキ・焼き菓子など自社製品のインターネット販売、催事販売も行っております。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題等

① 食材価格の高騰と安定調達に向けた対応

 2022年以降、国際情勢の不安定化や円安傾向の継続、物流コストの上昇などを背景に、食材価格の高騰が継続しています。特に主力として取り扱う珈琲豆、小麦粉、乳製品、卵といった基礎原材料は、国内外問わず価格変動が大きく、店舗運営の安定性を脅かす要因となっています。

 当社では、これまで基幹システムに登録されていた食材原価・レシピデータがレガシー化しており、現場との乖離が原価管理精度の低下を招いていました。これに対応すべく、2024年度に全社的な基幹システムの刷新を実施し、各レシピ単位での理論原価を日々の発注単価ベースで更新・可視化する体制を構築しました。

 また、メニュー設計においては高付加価値商品の開発に注力し、原価率の上昇を客単価の向上でカバーする戦略を展開しております。具体的には、戸塚カミサリーで製造するオリジナルのソースやドレッシングを活用した季節限定メニューや深川コンフェクショナリーで製造する高付加価値ケーキ、ダッキーダックグループのケーキスタジオで製造する季節限定スイーツが好評を博し、平均客単価は前年比103.8%を達成しております。メニューエンジニアリングの高度化により、お客様満足度を維持しながら利益率の向上を図ってまいります。今後もサプライヤーとのパートナーシップをさらに強化し、原材料の品質維持と価格安定化の両立を目指します。また、セントラルキッチンを持つ強みを活かし、調達ロットの最適化や、製造工程における歩留まり向上による実原価の低減に取り組んでいます。今後も需給予測と原材料の相場分析を連動させ、契約交渉や在庫戦略に反映させることにより、調達リスクの低減とコストの安定化を推進してまいります。

 

② 労働力不足への構造的対応

 飲食業界における人手不足は慢性化しており、特に一都三県の都市部では競合業態との採用競争が激化しています。当社はこの問題を短期的対応に留めることなく、構造的かつ中長期的に解決すべく、2025年度より人事システムの全面リプレースを進めます。

新システムでは、本社の研修センターが社員・アルバイト双方のスキル評価、キャリア履歴を一元管理し、適切な人員配置と人材育成を支援します。業務量・業績評価の可視化と公正な評価・処遇をリンクさせることで、離職率の低下と定着率の向上を実現します。

 また、アルバイトの人員体制に関しても、これまでの店舗単位のシフト管理を脱却し、全社横断での支援体制を構築しました。一都三県という出店エリアの集中を活かし、エリア内での応援勤務をスムーズに行えるよう新たなシフト管理システムを導入しました。繁閑差に応じた人材配置の最適化が実現し、急な欠員や需要変動にも柔軟に対応できる組織体制が整いつつあります。

 さらに、教育・研修プログラムを体系化し、特に当社の強みである接客と珈琲に関する専門知識・技術の標準化と共有が進み、全店舗でのサービス品質の均一化が図られております。

 働き方改革への対応としては、労働時間を前年比10%削減するとともに、有給休暇取得率を85%まで向上させました。また、育児・介護と仕事の両立支援制度を拡充し、多様な働き方を可能にする環境整備を進めております。

今後は、従業員エンゲージメント向上のための施策を展開してまいります。特に、従業員の声を経営に活かす双方向コミュニケーションの仕組みを強化し、働きがいのある職場づくりを推進いたします。

 

③ 消費行動の変化と付加価値の再訴求

 コロナ禍以降、消費者の外食に対する価値観は大きく変容しています。利便性や価格重視の需要が増す一方で、体験価値やこだわりを求める層も拡大しており、二極化が進んでいます。当社が展開する椿屋珈琲グループは、後者のニーズに応えるポジションにありますが、価格に見合う価値を提供できなければ選ばれないリスクを抱えています。

 このため当社では、商品開発において単なる味や見た目の追求に留まらず、素材の生産地・加工背景のストーリー化、季節ごとの体験演出、空間デザインの更新など、五感すべてで価値を伝える施策に取り組んでいます。また、全店舗でスタッフによる接客の均質化を図るため、接遇教育プログラムとランクアップ制度を刷新。ブランド体験の強化と再訴求を通じて、価格に対する納得感を確立します。

 

④ 直営店舗の収益性と生産性の向上

 一都三県を中心に展開する直営店舗モデルは、当社にとって高いブランドコントロールとサービス品質を確保できる利点がありますが、その反面、人件費・賃料・光熱費等の固定費比率が高く、経済変動に対する柔軟性が問われる経営形態でもあります。

 このため当社では、直営店舗ごとのP/L管理に加え、業態別・エリア別の生産性指標(人時売上高、FL比率、坪効率など)を毎月可視化・分析する体制を強化。高収益店の運営モデルを横展開する「ベストプラクティス手法」を用い、現場のノウハウを全社で共有しています。

 また、セントラルキッチンを活用し、店舗での調理工数の削減も推進中です。特にイタリアンダイニングDONA、こてがえし・ぱすたかんにおいては、下処理やソース調合の集中化により、店内作業の20〜30%を削減し、スタッフ1人あたりの生産性向上を実現しています。さらに、収益性とブランド力を両立する新規店舗開発指針を策定し、今後の出店・退店戦略の高度化を図ります。

 

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出時において当社が判断したものです。

 

(1)ガバナンス

 当社は、サステナビリティを意識した経営を推進することで、ブランド価値の向上、業績向上や事業の拡大、従業員満足度の向上などが図られ、持続可能な事業展開を実現できるものと認識しております。

 期初に掲げられる経営方針の中で部門ごとの課題が共有され、各部門ごとに取組みを推進します。取組みに関するモニタリング内容は、各部門長が出席する月に一度の本部定例会で内容を共有し、実効性を高めております。また年に一度実施する従業員アンケートの内容をもとに、社員で形成されるワーキンググループで現状の課題をまとめ、経営会議や取締役会に報告しています。その上で、リスクの減少のみならず収益機会にも繋がる重要度の高いものとして議論を進めています。

 

(2)リスク管理

 当社では期初に代表取締役社長が掲げる経営方針の中で、国内外の情勢を背景とした課題やリスクについて部門長に共有・周知しており、その内容は部門長から部門内への落とし込みを行います。

 今期は円安、労働力不足によるコストプッシュ型の物価上昇において、価格転嫁の余地は少なく、より一層のコスト管理とメニューの高付加価値化による価格の適正化が必要です。食材高騰の対応として、「原価管理の精度向上」、「持続可能な食材調達」、「セントラルキッチンの生産性向上」を通じて、食材の品質を損なわずに食材原価率の上昇を抑制することが必要不可欠と認識しております。

 その他、労働力不足への対応に関しては、従業員アンケートによってポジティブ・ネガティブ双方の意見から課題を抽出し、より働きやすい環境に近づけるための環境整備に優先順位をつけ、定着率向上につながるよう取り組んでおります。環境整備としてのDX化推進と採用・トレーニング活動の本部一元化、昇進昇格・賃金制度の見える化も進めております。管理職登用に向けた採用活動についても積極性や能力、向上心などの強みや会社の方向性への理解ある人材が当社の成長を支える重要な存在であると考えており、多様な人材が最大限の能力を発揮できる職場環境の醸成に取り組んでおります。このような考えのもとに、年齢、性別、人種、障害の有無などに関わらず、多様な人材の活用を進めております。

 また、各会議体から各部門にいたるまで、品質管理体制の中でさらに機能を発揮できるようプロジェクトを組んで体制づくりに着手しております。

 

(3)戦略

 当社は「味覚とサービスを通して、都会生活に安全で楽しい食の場を提供する」という経営理念を掲げ、お客様や従業員、株主や投資家から取引先、地域社会まで、様々なステークホルダーとの繋がりの中で、自らの社会的責任を果たし、社会・環境の持続的な発展に向けて積極的に取り組んでおります。

 当期は食品リサイクルの分野において戸塚カミサリーで取り組んでいる生麺端材の有効活用について、今期の総量は6.5トンとなりました。引き続き「横濱ビーフ」(株式会社小野ファーム様)の飼料として提供しており、あわせて廃棄物処理で発生するCO2削減に繋げております。

 また持続可能な取り組みとして始めたこととしては、深川コンフェクショナリーで発生する動植物性残渣の有効活用です。対応可能な業者を選定し、6.0トンを飼料原材料と、516Kwの発電リサイクルに活用しております。その他、売上の一部を小児がん治療のために寄付する社会貢献活動、環境に配慮した副資材の使用も全店で徹底し、当当26期は工場で発生する廃油1.1トンをSAF(持続可能な航空機用再利用燃料)として活用し、大気中のCO2削減に努めております。

 安定的に高品質な食材を確保するために、栽培されている現地の視察と直接買い付けを行うことで、スペシャルティコーヒーの品質と生産農家のおかれる環境などもチェックしています。このような行動を続けていくことは、当社が経営理念に掲げている「安全で楽しい食の場」や高付加価値の提供機会と捉えております。

 

(人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)

 当社はおよそ200名の正社員、300名の契約社員およびフルタイムキャスト、2,400名のキャストで構成されており、全従業員が会社の経営理念に理解共鳴し、日々の営業活動において付加価値の提供が出来るよう教育を進めていく方針です。

 正社員に関しては、入社時のスキルにあわせて集合研修を実施。他に業態別で開催しているキッチンカレッジ、衛生管理セミナーなど、役割に応じた個別研修を社内で行います。

 また外部研修では、主に新入社員が参加するトレーニングセミナー、キャスト指導にあたる人材を中心としたトレーナーズトレーニングセミナー、食中毒対策セミナー等に積極的に参加することで、外部環境の変化を把握しながら自身のスキルアップにつなげております。

 

 当社従業員の約9割を占めるキャストの採用・育成・定着は付加価値を提供する上で特に重要なプロセスと認識しております。年間で1,500名程度の採用オリエンテーションを本社一括で行うことにより、会社に所属する意識の醸成と価値観の共有に努めております。店舗では初期導入時の負担も軽減でき、指導にあたる人材の働く環境としてもプラスに影響しています。また、新しく導入を進めているキャストランクアップ制度では、ランクアップ時の本社研修実施とトレーナーによる評価を取り入れることで、少数分散型組織でも基準を一定に保つことが可能となりました。

 

参考 キャスト3ヶ月定着率(%)

 

7月末

10月末

1月末

4月末

2023年4月期

73.7

80.2

79.6

82.0

2024年4月期

79.5

81.0

79.7

80.2

2025年4月期

79.1

80.9

78.2

79.9

 

 定着率を向上させるための取り組みとしては、年間を通して業績や企業価値向上に貢献した人材の表彰や永年勤続表彰制度、お客様から日々頂いているお褒めや御意見の中から顧客確保に向け優れたサービス提供した人材を表彰するホスピタリティ賞を創設し、毎月表彰しております。

 また、福利厚生制度は内容、対象者ともに順次拡大を続けております。業務推進に必要な資格取得費用補助、家族手当や奨学金返済支援制度、従業員持株会の奨励金の増額など、福利厚生ガイドブックを配布し、周知しています。

 

(4)指標及び目標

 当社では、コストプッシュ型の物価上昇に対応するため、原価管理の精度向上が優先課題であると認識しており、原価管理の精度向上に繋げるためのプロジェクトチームを立ち上げ、対応を進めております。

 また、年に一度無記名方式での従業員アンケートを実施し、ポジティブ、ネガティブ双方の意見から従業員が自らの意思で長く貢献する会社づくりを進めております。従業員の多くは、結婚や出産という人生のステージにおいて、自らの意思で安定的に休暇が取得でき、ワークライフバランスを充実させることを望んでおります。長く働ける環境を多くの従業員に与えるべく福利厚生制度の拡充を行っております。

指標1 管理職に占める女性従業員の割合について(当社における管理職は、店舗責任者および部門責任者です)目標 2026年6月 15%(2025年6月実績13.3%、2024年6月実績 11.0%)

新規採用の女性比率と定着率を高めることで達成に向かいます。

指標2

目標年間休日 2026年4月期 120.0日(2025年4月期実績 118.2日、2024年4月期実績115.0日)

地域ごとのシフト状況を把握し応援体制を強めるためのシフト管理システムを導入しました。管理方法の効率化も図れており、相互フォローを継続して強めていきます。

指標3

目標月間平均時間外勤務 2026年4月期 15時間(2025年4月期実績16.9時間、2024年4月期実績24.5時間)

システムでの把握と応援体制強化、月例本部定例会での情報共有にて、課題を共有したうえでフォローを実施し、特定の店舗へ集中する負担を分散します。

 

 

3【事業等のリスク】

 当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中にある将来に関する事項は、当事業年度末(2025年4月30日)現在において当社が判断したものです。

 

① 食材の調達と安全性に係るリスク

 当社は、安全で安心な食材を提供するため、信頼性の高い仕入先から継続して食材を調達し、また通関時の検査結果の確認に加え、定期的に自主検査も実施して安全性を確認しております。

 しかし、鳥インフルエンザ問題に代表されるような疫病の発生、天候不順、自然災害の発生等により、食材の調達不安や食材価格の高騰などが起こり、一部のメニューの変更を余儀なくされるケースも想定されます。また想定外の法的規制強化や新たな規制の発生、異物混入及び品質・表示不良品の流通による回収費用や訴訟・損害賠償、商品の品質や安全性を確保するためのトレーサビリティーの強化・システム構築などの費用が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② セントラルキッチンおよび店舗での衛生管理に係るリスク

 当社は、セントラルキッチンを所有し、スパゲッティの生麺とパスタソース、ドレッシングおよびフレッシュケーキ・焼き菓子を製造し、店舗へチルド配送しております。

 セントラルキッチンおよび店舗においては、厳しい品質管理と衛生検査を実施しておりますが、万一当社店舗において食中毒が発生した場合には、営業停止処分などにより当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。なお、安全・安心な製品の提供を確保するため、食品安全マネジメントシステム規格の「ISO22000」の認証を取得し、品質管理の徹底と品質向上に向けた取組みを実施しております。

 

③ 自然災害のリスク

 近年発生が増加傾向にある異常気象のうち、台風や暴風雨などの影響や自然災害の中でも地震、大雨、洪水により生産現場や生産設備に被害が生じた場合、その復旧まで生産や出荷が長期間にわたって停止する可能性があります。当社では災害対策マニュアルやBCP(事業継続計画)の策定、安否確認体制による社員・アルバイト・全事業所のライフラインの確認、防災訓練などの対策を講じていますが、自然災害での被害を完全には排除できるものではなく、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 気候変動のリスク

 環境問題に対する取組みは近年ますます重要となっております。気候変動問題などの環境・社会課題の顕在化に伴い、持続可能な社会の構築を目指し、企業におけるSDGsへの取組みへの期待が一層高まっています。当社では環境への負荷低減に向けて食品リサイクルの分野を中心に着手しております。当社工場で発生する生麺の端材などを飼料として提供することによる廃棄物削減と廃棄物処理時に発生するCO2排出削減に繋げております。しかしながら環境関連の規制強化やステークホルダーからの評価、消費者意識の高まりなどによっては当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 店舗の賃借物件への依存に係るリスク

 当社の大部分の店舗は、賃借しております。賃貸借契約のうち、特に、定期賃貸借契約は、契約終了後再契約されない可能性があります。このような場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 財政状態に係るリスク

 当社は主に賃借による出店を基本としているため、賃貸人が破綻等の状態に陥り継続的使用や債権の回収が困難となった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 減損会計に係るリスク

 当社において、今後経営環境の変化により、店舗の収益性が悪化し、固定資産の減損会計に基づき減損損失を計上することになった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑧ 感染症拡大に係るリスク

 様々な感染症の世界的拡大により、外出自粛などによる来店客数の減少等のリスクが懸念されます。国や自治体のガイドラインに従い徹底的な衛生管理を行ってまいりますが、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社では、新型コロナウイルス同様の感染症が拡大した場合には、代表取締役社長を対策本部長とする対策本部を設置し、雇用と健康を守ることを第一に、全事業所の感染症対策を講じ、営業再開ガイドラインや感染者予防および感染発生時のマニュアルに則った運営、テレワーク、オンライン会議システムの活用を現在もすすめております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度の経営成績

 当26期の業績は、売上高128億12百万円(前期比103.5%)、営業利益は10億62百万円(前期比106.6%)、経常利益は10億99百万円(前期比104.7%)となり、当期純利益は7億20百万円(前期比102.3%)となりました。

 

 当26期の国内経済においては企業収益や雇用環境の改善が進み、全体としては回復基調となりました。体験価値を提供する観光、サービス、外食産業においては個人消費の持ち直しとインバウンド需要の高まりが下支えとなり、当期の売上高は過去最高を記録しました。しかしながら不安定な国際情勢や天候不順を背景に原材料とエネルギー価格の高騰は未だ続いており、長期化する物価高騰は国内の消費意欲を減退させる理由にもなり、客数確保とコスト抑制は引き続き重要な経営課題となっております。

 

 このような環境下、当社では「インフレ・人手不足の対応」というテーマに沿って諸施策を進めてまいりました。

 食材価格の高騰に対して、店舗で発生する廃棄ロスを分析し、レシピと調理手順の確認を実施したうえで適正使用量の再徹底を行いました。当26期に新たに導入した原価管理システムではタイムリーな原価管理が可能となります。業態ごとのメニューレシピの登録や棚卸データの連携を進めており、対応完了後はこれまで行っていたデータ入力や報告業務が自動化され、より店舗営業に注力できる体制となります。

 

 人手不足の対応に関しましては、新しい研修制度の構築を進め、本社ビルに新設した研修センターにおいて新人キャスト全員の導入研修を本部接客トレーナーが実施しております。これまで店長が行っていた事務手続きや連絡、初期教育等の体制を研修センターに移行したことで、キャストは統一された基準のもとに勤務開始できるようになり、店舗ではオペレーションの精度向上や業務効率化に繋がる問題発見、クリンリネスの強化など、サービスの均一化が進んでおります。採用事務においてもWEB化を進め、入社手続きの時間短縮、ペーパーレス化によるコスト削減なども実現いたしました。今期は研修センターの活用をさらに進め、入社後のフォロー研修、時間帯責任者研修ほか、キャスト自身の成長機会を数多く設けられるようにランクアップ制度とリンクさせて人材育成と定着を進めてまいります。

 福利厚生制度では、定着率向上を目的として子育て世代への手当支給や資格取得時の経済的支援を拡大するなど、持続可能な制度改定を実施しております。

 さまざまな取組みを推進したことで、社員の年間休日は118.2日(前年比3.2日増)、平均時間外勤務時間は16.9時間(前年比69.0%)となり、7.6時間削減出来ました。引き続き労務環境の改善を進めてまいります。

 新規創店につきましては「椿屋珈琲吉祥寺茶寮」「椿屋珈琲焙煎所&カフェ」「イタリアンダイニングDONA新宿紀伊國屋店」の3店舗を出店いたしました。

 また新たな取り組みとしてケーキ予約サイトを新設いたしました。事前のネット注文が可能となり、ご予約時のお客様の負担軽減と店舗業務の効率化にも繋がりました。特にバースデーケーキや子供の日、母の日などのアニバーサリーケーキのご予約が好評です。

 

部門別の概況につきましては、以下のとおりです。

 

『椿屋珈琲グループ』(期末店舗数52店舗 増減なし)

 椿屋珈琲グループの売上高は56億95百万円(前期比106.2%)となりました。

 「ゆとりとくつろぎの60分」を店内で過ごしていただくため、高級感のある内装、落ち着いた雰囲気、接客サービスなど、ブランド化を推進してまいりました。スペシャルティコーヒーに限定した商品開発と新設した本社研修センターにおける基礎教育、職位に応じた従業員のトレーニングを実施することでサービス向上に繋げており、定着率向上によって労務環境改善にも大きく貢献しております。

 2024年5月に椿屋珈琲吉祥寺茶寮、10月に椿屋珈琲焙煎所&カフェの2店舗を新規出店し、質、ブランド力の向上に尽力しております。

 

『ダッキーダックグループ』(期末店舗数19店舗 1店舗減)

 ダッキーダックグループの売上高は25億9百万円(前期比105.3%)となりました。

 旬の食材を使用したホームメイドケーキ、食事メニューとケーキのセットを主力商品としております。ケーキスタジオ併設店では、専属パティシエールが地域の子供たちと一緒にケーキをつくる「夢のパティシエ体験」や地産地消をテーマとした大学とのコラボレーション企画など、多くのお客様との交流も行っております。

 

『イタリアンダイニング ドナグループ』(期末店舗数23店舗 1店舗増)

 イタリアンダイニング ドナグループの売上高は22億22百万円(前期比106.6%)となりました。

 「本格イタリアンをカジュアルに楽しめる店」をコンセプトに、自社製にこだわった生麺、パスタソース、ドレッシングを使用し、大小パーティではご要望にあわせた特別メニュー、料理にあわせたお酒の提案など、付加価値の提供に努めております。

 2025年4月、ビルの改装工事に伴い一時撤退しておりましたイタリアンダイニングDONA新宿紀伊國屋店を4年ぶりに再出店しております。

 

『こてがえし・ぱすたかんグループ』(期末店舗数12店舗 1店舗減)

 こてがえし・ぱすたかんグループの売上高は13億58百万円(前期比97.6%)となりました。

 日本のソウルフードである「もんじゃ焼き」「お好み焼き」はお客様のリピート率は高くないものの、訪日外国人や若年層の取り込みが進んでおります。体験価値を向上させる調理動画や多言語化に加え、テーブルオーダーシステム等のDX対応が完了し、人で行うべき調理・サービスの充実を進めるべくトレーニングを行っております。

 

『プロント』(期末店舗数4店舗 増減なし)

 プロントの売上高は5億26百万円(前期比83.6%)となりました。

 弊社がフランチャイジーとして運営するプロントでは、日中はカフェとしてコーヒー・トースト・マフィンやランチパスタを、夜間は一人からグループ客までお酒の需要回復にあわせて、「キッサカバ」として気軽にお酒を楽しめるシーンを提供しております。

 

『生産部門/EC事業/物販催事事業』

 生産部門の売上高は2億98百万円(前期比104.3%)となりました。

 パスタソース・ドレッシング、食パンや珈琲豆などはOEMの依頼を受け、外部販売も行っております。生産性向上策としてコンフェクショナリーの冷蔵・冷凍設備の改修を実施いたしました。

 EC事業の売上高は1億46百万円(前期比87.7%)となりました。

 自社サイト「椿屋オンラインショップ」では、ハレの日需要のギフト商品開発を中心に、お客様のニーズに合わせた対応を心掛け、新商品の開発や改良を実施しております。

 物販催事事業の売上高は54百万円(前期比73.1%)となりました。

 主に百貨店や駅ナカの催事スペースにて、ホームメイドケーキ販売を実施しております。

 

『サステナビリティの取組み』SDGs ゴール3.7.8.12.14

 食品リサイクルの分野において取り組んでいる生麺端材の有効活用について、今期の総量は6.5トンとなりました。引き続き「横濱ビーフ」(株式会社小野ファーム様)の飼料として提供しており、あわせて廃棄物処理で発生するCO2削減とコスト削減にもつながっております。深川コンフェクショナリーでは、発生する動植物性残渣から6.0トンの飼料原材料化と516㎾の発電リサイクルへの活用を行いました。

 その他、売上の一部を小児がん治療のために寄付する社会貢献活動、環境に配慮した副資材の使用も全店で徹底し、工場で発生する廃油1.1トンをSAF(持続可能な航空機用再利用燃料)として活用し、大気中のCO2削減に貢献できるよう取り組みを継続しております。

 

 新規創店につきましては「椿屋珈琲吉祥寺茶寮」「椿屋珈琲焙煎所&カフェ」「イタリアンダイニングDONA新宿紀伊國屋店」の3店舗を出店いたしました。

 また新たな取り組みとしてケーキ予約サイトを新設いたしました。事前のネット注文が可能となり、ご予約時のお客様の負担軽減と店舗業務の効率化にも繋がりました。特にバースデーケーキや子供の日、母の日などのアニバーサリーケーキのご予約が好評です。

 

 

 

 

 

 

(2)生産・仕入・販売実績・店舗数等の状況

① 生産実績

 当社は、フードサービス事業の単一セグメントであるため、生産実績は製品別、仕入実績は品目別、販売実績は部門別に記載しております。

 当事業年度における生産実績を製品別に示すと、次のとおりであります。

製品名

当事業年度

(自 2024年5月1日

至 2025年4月30日)

生産金額(千円)

前年同期比(%)

自社製フレッシュケーキ

568,723

96.0

スパゲッティ生麺、ソース、ドレッシング

667,823

104.9

コーヒー豆

176,350

108.0

合計

1,412,897

101.5

(注)金額は、製造原価によっております。

 

② 仕入実績

 当事業年度における仕入実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

品目

当事業年度

(自 2024年5月1日

至 2025年4月30日)

仕入金額(千円)

前年同期比(%)

飲料・食材類

2,757,471

101.8

その他

207,987

106.7

合計

2,965,459

102.2

(注)金額は、仕入価格によっております。

 

 

③ 販売実績

 当事業年度における販売実績を部門別に示すと、次のとおりであります。

 

当事業年度

(自 2024年5月1日

至 2025年4月30日)

売上金額(千円)

前年同期比(%)

椿屋珈琲

東京都

4,230,792

107.7

 

神奈川県

833,576

102.0

 

埼玉県

246,047

110.7

 

千葉県

385,549

97.8

小計

 

5,695,965

106.2

ダッキーダック

東京都

1,024,090

103.0

 

神奈川県

704,747

106.5

 

埼玉県

273,175

107.5

 

千葉県

507,800

107.0

小計

 

2,509,813

105.3

ドナ

東京都

1,331,258

104.6

 

神奈川県

389,084

108.9

 

埼玉県

387,295

109.8

 

千葉県

114,611

114.2

小計

 

2,222,249

106.6

ぱすたかん・こてがえし

東京都

850,572

95.6

 

神奈川県

203,167

80.0

 

埼玉県

114,396

128.7

 

千葉県

190,796

119.2

小計

 

1,358,933

97.6

その他

東京都

927,791

98.4

 

神奈川県

98,213

45.8

 

埼玉県

 

千葉県

小計

 

1,026,005

88.6

合計

東京都

8,364,505

104.2

 

神奈川県

2,228,790

96.7

 

埼玉県

1,020,914

111.2

 

千葉県

1,198,757

106.1

総合計

 

12,812,967

103.5

(注)ダッキーダックには、EggEggキッチン・Cheese Egg Garden・ダッキーダックカフェ・ダッキーダックキッチン

   およびダッキーダックケーキショップを含んでおります。

 

④ 地域別店舗数及び客席数の状況

 

当事業年度

(2025年4月30日現在)

期末店舗数(店)

前期末比増減

客席数(席)

椿屋珈琲

東京都

36

+1

2,760

 

神奈川県

9

630

 

埼玉県

3

158

 

千葉県

4

△1

238

小計

 

52

3,786

ダッキーダック

東京都

8

△1

550

 

神奈川県

5

453

 

埼玉県

2

177

 

千葉県

4

302

小計

 

19

△1

1,482

ドナ

東京都

13

+1

672

 

神奈川県

5

256

 

埼玉県

4

201

 

千葉県

1

65

小計

 

23

+1

1,194

ぱすたかん・こてがえし

東京都

7

△1

421

 

神奈川県

2

118

 

埼玉県

1

52

 

千葉県

2

102

小計

 

12

△1

693

その他

東京都

3

288

 

神奈川県

1

58

小計

 

4

346

合計

東京都

67

4,691

 

神奈川県

22

1,515

 

埼玉県

10

588

 

千葉県

11

707

総合計

 

110

△1

7,501

(注)1 ダッキーダックには、EggEggキッチン・Cheese Egg Garden・ダッキーダックカフェ・ダッキーダックキッ

     チンおよびダッキーダックケーキショップを含んでおります。

 

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、18億58百万円で前事業年度末に比較して、41百万円増加しました。

 当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において営業活動の結果、得られた資金は9億43百万円で、前事業年度と比較して3億77百万円減少しました。これは主に法人税等の支払額が4億18百万円増加したことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において投資活動の結果、使用した資金は7億35百万円で、前事業年度と比較して3億34百万円増加しました。これは主に定期預金の払戻による収入が5億円減少したことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において財務活動の結果、使用した資金は1億66百万円で、前事業年度と比較して5億56百万円減少しました。これは主に長期借入金の返済による支出が6億円減少したことによるものです。

 

(4)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。

 当社の財務諸表作成において、損益または資産の評価等に影響を与える見積り、判断は、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で行なっておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績について

 当社は「味覚とサービスを通して都会生活に安全で楽しい食の場を提供する」という経営理念のもと、「あったら楽しい食の場・手の届く贅沢」という脱日常と付加価値を提供することに注力しております。今期は「ゆとりとくつろぎの60分」を体験していただくための高付加価値の提供を掲げて、日々の営業施策を進めてまいりました。「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、世界的インフレによる物価の上昇や労働力不足に起因する人件費の高騰などのさまざまな影響を受けたものの、業務効率化と営業施策の推進に努めた結果、すべての月で売上高、客数、客単価ともに前年を上回ることができました

 売上高は128億12百万円(前年同期比103.5%)、営業利益は10億62百万円(前年同期比106.6%)、経常利益は10億99百万円(前年同期比104.7%)となり、当期純利益は7億20百万円(前年同期比102.3%)となりました。期末店舗数は1店舗減少し、計110店です。

 

③ 財政状態について

 当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ4億48百万円増加し91億69百万円となりました。流動資産は前事業年度末に比べ3億79百万円増加し52億71百万円となりました。これは現金及び預金が3億41百万円増加したことが主な要因です。固定資産は前事業年度末に比べ69百万円増加し38億97百万円となりました。これは有形固定資産の建物(純額)が1億41百万円増加したことが主な要因です。

 当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ1億6百万円減少し19億97百万円となりました。流動負債は前事業年度末に比べ93百万円減少し12億82百万円となりました。これは未払法人税等が1億20百万円減少したことが主な要因です。固定負債は前事業年度末に比べ12百万円減少し7億15百万円となりました。これは退職給付引当金が8百万円減少したことが主な要因です。

 当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ5億55百万円増加し71億71百万円となりました。これは利益剰余金が5億59百万円増加したことが主な要因です。

 

 

 

(単位:千円)

 

勘定科目

前事業年度

2024年4月期

構成比

当事業年度

2025年4月期

構成比

増減額

現金及び預金

4,017,113

46.1%

4,358,423

47.5%

341,310

有形固定資産

1,535,505

17.6%

1,668,039

18.2%

132,534

土地

530,000

 

530,000

 

投資その他の資産

2,249,801

25.8%

2,184,386

23.8%

△65,415

差入保証金

404,508

 

404,508

 

敷金

1,442,675

 

1,395,950

 

△46,725

資本金

50,000

0.6%

50,000

0.5%

資本剰余金

1,306,350

15.0%

1,306,350

14.2%

利益剰余金

5,331,706

61.1%

5,891,018

64.2%

559,312

 

④ 資金の財源及び資金の流動性についてと財政状態の改善に向けた取り組みについて

 当事業年度末におけるキャッシュ・フローの状況は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 従来、当社の資金需要はそのほとんどが新規出店と既存店改装のための設備投資資金であります。

 今後についても、通常ベースの新規出店と既存店改装は、営業活動によって得られる資金によって賄う方針に変更はございません。また、生産性向上のための製造設備の拡充や、計画外で大型出店を実施するとの判断に至った場合には、金融機関等からの借入または資本市場からの直接資金の調達によって、必要資金の確保を進めていきたいと考えております。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について

 経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。