当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
2025年2月期は、マイナス金利が解除されたものの当面は緩和的な金融政策により円安傾向が続き、また消費者物価の上昇を受け、賃金も上昇傾向にある事業環境と想定されます。
このような経営環境の中で、当社グループは、経営理念である「しあわせ社会学の確立と実践」のもと、長期的視点から定期便事業については「顧客基盤の拡大」、「顧客との継続的な関係育成」に向けた施策の実行、新規事業分野については「第2の収益の柱の育成」に向けた施策を実行することにより持続的な成長基盤を確立することを図ります。
2024年2月期の当社グループの収益は大幅な減収かつ純損失であったことから、2025年2月期を「黒字回復期」と位置づけ、定期便事業は、哲学的共感を基軸とする事業展開に重点を移すことや、「積層型ゲートウェイ」「現顧客からのつながり市場開発」「次世代顧客開発プログラム」などに取り組むことにより、新規顧客獲得の拡大、さらには継続商品開発強化によって、のべ顧客数の増加を図ります。また2024年秋にギフト販売機能を拡張させることにより売上の拡大を見込んでおります。新規事業分野では、「出品・出稿型のプラットフォーム開放事業」「ビジネスプロデュース事業」等の事業間の連動性を高め、さらに「リテールメディア事業」の準備に取り組み、「第2の収益の柱の育成」を継続的に推進してまいります。また新たな事業として、2024年4月より神戸ポートタワーの運営事業を開始いたします。来場者収入に加え、オリジナル商品の制作販売や飲食事業の運営などにより新たな売上を創出します。
費用面につきましては、販売費では送料単価の低い配送ルートの開拓と活用を図り商品送料を低減させるとともに出荷送料の変動幅の平準化、出荷関連業務の効率化を高めていくことを計画しています。広告費では広告並びにダイレクトメールで発生する費用の削減、既存顧客の属性別カタログ配布を強化し広告数量の適正化を図る等を実行し、費用の削減を図ります。
2025年2月期の当社グループの連結業績見通しにつきましては、売上高31,205百万円(前期比 5.4%増)を計画しております。営業利益369百万円(前期は営業損失931百万円)、経常利益450百万円(前期は経常損失612百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益385百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失858百万円)を見込んでおります。
健康経営方針について
当社は、経営理念に「しあわせ社会学の確立と実践」、中核価値に「ともにしあわせになるしあわせ」を掲げ、創業間もない時期から諸制度を通じて従業員の心身の健康向上を目指してまいりました。さらなる理念の達成(追求)に加え、近年は働き方改革やウェルビーイング(ワークライフバランス)などの健康観点の重要性の高まりを踏まえて、「健康経営」に取り組んでまいりました。今後も引き続き、持続的な従業員の心身の健康の保持および増進の促進を通して、企業の業績基盤の安定化、さらなる成長の基盤づくりを図ります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティに関する考え方について
当社グループは、「しあわせ社会学の確立と実践」を経営理念とし、永続的なしあわせ社会を創造することを目指しております。事業領域としては「事業性」「独創性」「社会性」の3つが重なり合うところとし、事業活動を通じて「ともにしあわせになるしあわせ」の実現を目指しています。当社グループの経営理念、全ての事業活動は環境や社会、人々の健康、経済などあらゆる場面において、物事の長期的な影響を考えて行動するというサステナビリティの概念にも合致するものと考えております。
(2) サステナビリティに関する取り組みについて
① 当社の取り組みについて
基金をはじめ、当社グループが社会全体のしあわせをかなえるための取り組みは、お客さまや社員一人ひとりの思いからはじまり、いろいろな課題に向き合う持続可能な活動へと発展してまいりました。当社グループがお届けするすべての商品やプロジェクトには、誰かがしあわせになるためのヒントやきっかけになればとの願いが込められております。
② お客さまとの取り組みについて
ひとりではできないことでも、ひとりひとりの思いが集まれば大きな力となります。当社グループはそういう思いを持つお客さまとともに1990年からはじまる森基金による支援活動をスタートいたしました。以来、お客さまのやさしさと思いやりがつながり合って、活動の輪が広がっております。これからも人・自然・動物としあわせな社会を目指してともに取り組んでまいります。毎月1口から参加いただける基金のほか、基金付き商品のお買い物による支援や、フェリシモ・ポイント(お買い物ポイント)による支援などの方法があります。お客さまからお預かりした基金は、厳正なる話し合いのもと、NPO・NGOなどの団体に拠出し、国や地域に根付いた支援活動を行っていただいております。
③ 従業員及びパートナー企業さまとの取り組みについて
当社グループでは、お客さまにお届けする商品やカタログをつくる工程、それらを運ぶ過程においても、自然や生き物、社会への影響を考え、ともにしあわせになれるプロセスをデザインしたいと考えております。例えば、商品をつくるときには自然環境や動物への負荷をできるだけ軽減するために当社グループ独自のルールを定め、カタログをつくるときには環境に配慮した紙やインクの使用及び紙の使用量の軽減に努めています。商品をつくり届ける会社として、従業員やパートナー企業など、すべてのはたらく仲間がともに心がけ、これらの取り組みを実践しております。
(3) ガバナンスとリスク管理について
上記のような考え方及び取り組みから、サステナビリティに関するガバナンスとリスク管理については次のように実施しております。
① ガバナンスについて
当社グループでは、上記のとおり事業活動の中で「事業性」及び「独創性」とともに「社会性」をも重視していることから、取締役会、経営委員会等の重要会議で議論し、策定される経営戦略、事業戦略等にこれらが反映されるよう取り組んでおります。取締役会では、議決権を持つ監査等委員である取締役が出席し、取り組みの状況を注視しております。
② リスク管理について
リスク管理については、リスク委員会において「
(4) 人材の多様性の確保を含む人材育成方針及び社内環境整備
① 戦略
当社グループでは、性別、国籍、学歴、キャリア採用者であるか否かなど人材の属性に関係なく、「しあわせ社会学の確立と実践」という経営理念および「ともにしあわせになるしあわせ」という当社の中核価値に共鳴し、共有し得る人材を採用してきました。一人ひとりの個性や様々な経験価値を引き出すための当社独自の選考課題を通して、多様な人材を採用してきております。
また、企業理念および中核価値のもとで、事業と顧客を創造できる人材育成に注力してきました。そのための環境整備として様々な育成機会を設けております。とくに不安定な環境状況において、よりオーナーシップを発揮し、自らのパッションドリブンで事業を推進できる人材の育成をめざし、キャリア研修、マネジメント研修、社外ビジネススクールへの派遣などを継続的に実施してきております。さらに、クラスター&トライブ事業推進のため、正規・非正規に関わらず、直接業務に関わらない分野でも、資格取得の支援を行うなど、従業員自らの学ぶ意欲を促進する独自の支援制度も設けております。
若手のうちからプロジェクトリーダーや小規模チームのリーダーを任せるほか、チームや部門をまたぐ業務にも積極的にアサインし、中長期的な取り組みとして中核人材の育成を積極的に継続しております。
なお、上記の人材育成方針のもとで、その能力の発揮度合いに基づいた公正な評価を行い、性別、定期採用かキャリア採用かにかかわらず管理職登用を行っており、多様な個性、経験をもつ人材が中核人材として活躍しており、女性管理職比率は高い水準で推移しております。
働き方の多様性においても柔軟に対応できるよう、小学3年生までの育児時短勤務制度や、介護時短制度、フレックスタイム制等働きやすい社内環境を整えております。
② 指数と目標
人材育成の機会として、マーケティング研修やマネジメント研修など、様々な研修を年間20カリキュラム以上実施しております。引き続き、育成の機会を維持し、プロジェクトリーダーや事業推進リーダーの育成に注力いたします。
女性管理職比率、男性育児休業取得率の高い水準での維持を目指し、多様な人材が働きやすく、活躍できる環境整備に努めてまいります。
以下において、当社グループの事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項及びその他投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を記載しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社の株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 通信販売市場の動向について
当社グループは、一般生活者を顧客とした通信販売事業を行っております。当社グループでは国内の通信販売の市場規模について、インターネットやスマートフォン等モバイル端末の普及と情報技術の発達を背景としたeコマース市場の寄与から拡大傾向にあるものと推測しておりますが、一方でカタログを媒体とした通信販売の市場規模は減少傾向にあるものと推測しております。
このような市場動向の中で当社グループでは、カタログの再編・活性化、eコマースへの取り組みや新規事業の育成等により収益の拡大を図っておりますが、当社グループの施策が想定する効果をもたらさない場合、または既存事業者との競合、新規事業者の参入、新たな販売モデルの出現等により生活者の消費動向が変化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの主な顧客は、30歳代から50歳代の女性となっており、これら顧客層の消費動向また消費低迷による需要の落ち込み、長期的には少子化の状況は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 法的規制について
当社グループは、国内の通信販売事業に売上高の大部分を依存しておりますが、当該事業は「特定商取引に関する法律」、「消費者契約法」、「不当景品類及び不当表示防止法」、「製造物責任法」、「下請代金支払遅延等防止法」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等による法的規制を受けております。当社グループでは、管理体制の構築等によりこれら法令を順守する体制を整備しておりますが、これらの法令に違反する行為が行われた場合、法令の改正または新たな法令の制定が行われた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 新商品の開発及び新事業モデルについて
当社グループは、カタログの発刊に合わせ、新商品を発売しております。当社グループでは、市場動向や対象顧客のニーズ分析、流行予測等を参考にしつつ、特徴あるオリジナル商品の企画を行っておりますが、すべての商品で顧客の支持を獲得できるとは限らず、商品企画の成否が業績に影響を及ぼします。当社グループが顧客ニーズや流行の変化を十分に予想できなかった場合、オリジナル商品のコンセプト・商品の魅力が顧客に受け入れられなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの商品の大部分は、従来からの定期便事業モデルにより販売しておりますが、将来においては商品の特徴に合わせ、また顧客へのサービス向上のため、Webとの連動も含めた新しい事業モデルによる注文が増加することが予想されます。こうした新しい事業モデルの導入により、顧客の購買行動が変化し、当社グループが予期しない受注動向の大きな変動があった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 商品の品質管理について
当社グループが販売する商品の大部分はオリジナル商品であり、当社グループの商品開発部門とパートナー企業が共同で商品企画を行い、パートナー企業で生産、品質管理を行っております。
商品の安全性に関する社会の期待、関心は高まっており、当社グループにおいても、仕入に際しての品質基準の見直しや、品質検査、適法検査等を強化し、安全な商品の供給に努めております。しかしながら、当社グループが販売した商品に不具合等が発生した場合には、大規模な返品、製造物責任法に基づく損害賠償や対応費用の発生、信用失墜等により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 需要予測に基づく仕入について
当社グループが販売する商品の大部分はオリジナル商品であり需要予測の精度向上に努めておりますが、実際の受注は天候その他様々な要因に左右されるため、実際の受注が需要予測を上回った場合には、追加仕入が受注スピードに応じきれないケースもあり、販売機会を失ったり、他の受注商品と別に配送するための費用等が発生します。さらには、顧客の信頼を失うこととなり、次回注文に影響する可能性もあります。また、実際の受注が需要予測を下回った場合には、当社グループに過剰在庫が発生し、キャッシュ・フローへの影響や棚卸資産評価損が発生する可能性があります。
当社グループでは、受注に対し適時適量に商品を供給するため、需要予測精度の向上や、受注の変動にすばやく対応できるサプライチェーンの構築を課題として取り組んでおりますが、当社グループの対応力を超え、大きな商品供給不足が生じた場合、逆に新商品が販売不振で当初の需要予測を下回る場合、あるいは流行の変化や季節変動、または消費の低迷等で生じる大きな需要収縮に対応しきれなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 返品について
当社グループは、通信販売という販売形態をとっていることから、原則として理由の如何を問わず返品を受け入れております。返品の受け入れにあたっては、返送品の処理、代替商品の配送等追加的な費用が発生することから、当社グループの想定以上に返品が増加した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 原材料市況等の影響について
当社グループの事業においては、通信販売という特性上、カタログコストと顧客への配送コストの販売費に占める比率が高くなっております。今後、紙市況の影響によるカタログコストの変動、また、国内の輸送コスト上昇の影響により顧客への配送コストの変動が想定以上にあった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、今後石油及び天然ガスをはじめとしたエネルギー価格の高騰が想定以上に見込まれることから、原価率の上昇により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 物流拠点への業務機能の集約について
当社グループは、国内唯一の物流拠点として神戸市に「エスパスフェリシモ」を保有しております。当社グループでは、業務効率の向上を目的として、カタログの配送、受注から商品の納入、出荷、入金管理、顧客サービス並びにそれらを管理する情報処理業務にいたるまでの一連の業務機能を当該物流拠点に集約しております。業務機能の集約によるリスクについては十分に検討し、リスク回避の実施及びリスク発生時の対応体制の見直し等を行っておりますが、万が一、当社グループの対応能力を超える大災害等が発生した場合は、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ システムトラブルについて
当社グループは、多くの業務をIT化しており、また業務の効率化、顧客へのサービス向上やWeb化への対応のためシステムの新規開発や改修、設備機器の導入や入替え等を継続的に行っております。これらシステムの変更に係る管理、またシステムの運用保守及び情報のバックアップには万全を期しておりますが、万が一、大災害や予期せぬ理由により大規模なシステム障害が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、顧客からの注文についても、インターネットによるものが増加しており、インターネット網に何らかの障害が発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ カントリーリスクについて
当社グループの取り扱う商品の多くは、主に中国を中心としたアジア地域において生産されております。また、当社グループは、将来的な事業のグローバル化を視野に入れ、中国を中心としたアジア地域において販売活動を行っております。従って、これら地域に関係する地政学的リスク、信用リスク、市場リスクは、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 為替変動及び商品市況について
当社グループの取り扱う商品の多くは、主に中国を中心としたアジア地域において生産されており、仕入原価は直接・間接的にそれらの国の為替変動による影響を受けております。為替変動リスクを軽減するために為替予約等によるヘッジを行っておりますが、当社グループの想定を超えた為替変動があった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、今後のアジア地域の経済情勢の変化により、これらの地域において現地で調達される原材料費や人件費等が当社グループの想定を超えて変動した場合、当社グループが直接・間接的にこれらの地域から輸入している商品の仕入原価に反映し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
通信販売の場合は、為替や市況の急激な変動により仕入原価が高騰した場合も、カタログの有効期間中は販売価格への転嫁が難しく、そのような場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 個人情報保護について
当社グループは、商品の販売に際して会員登録制をとっており、氏名、住所等の基本情報及び取引情報、決済情報等、多くの個人情報を保有しております。当社グループは、個人情報保護を重要な経営課題と認識しており、個人情報を厳正かつ厳重に管理しておりますが、個人情報の漏洩や個人情報保護法に抵触する事象が発生した場合には、損害賠償や対応費用の発生のみならず、当社グループに対する信用の低下等により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑬ 月次業績の特徴について
当社グループは、一般生活者を顧客としており、その販売実績は季節や歳時等一般的な消費支出性向の影響を受けます。また、傾向として、カタログを新しく発刊した場合、配布後1、2ヵ月で受注のピークを迎えるため、当社グループの基幹カタログの発刊基本ローテーションに従い、売上高はカタログ発刊前に低くなる傾向があります。一方、無料で配布するカタログにかかるコストは、当社は広告費として会計処理しており、撮影等の制作費はカタログの配布開始月に一括して計上し、本体コストは配布時に計上するため、基幹カタログの発刊時には広告費が高くなる傾向があります。このため当社グループの月次の営業損益は、カタログ発刊時期の影響を受ける可能性があります。
⑭ 自然災害、事故等について
当社グループは、主に国内外の一般消費者を顧客とした通信販売事業を行っておりますが、国内外の一部地域または広域で地震や水害その他の自然災害が発生した場合、新型コロナウイルスや新型インフルエンザ等の感染症によるパンデミック(世界的な大流行)が発生した場合、または大規模な事故等により物流や通信等の社会インフラに長期的に大きな影響を与えるような事態が生じた場合、もしくは資材の調達や商品の生産が困難になった場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に見直され、経済活動の正常化に向けた緩やかな回復が続くことが期待された一方で、エネルギー価格、原材料価格の高騰による物価高、世界的な金融引き締めの影響などにより景気の先行きは依然として不透明な状況が続いておりました。
このような経営環境の中、当社グループは経営理念である「しあわせ社会学の確立と実践」のもと、長期的視点から「顧客基盤の拡大」、「顧客との継続的な関係育成」、「第2の収益の柱の育成」の3点に注力し持続的な成長基盤を確立することを目指した経営活動に取り組んでまいりました。
そのような視座で取り組んでおります長期経営活動下における当連結会計年度の概況といたしまして、中核事業である定期便事業は、消費者の外出機会の増加、物価高による可処分所得の減少といった外部環境の変化がある中で、当社グループが企画開発する商品の圧倒的な差別化が不十分であったことや、商品が有する価値を魅力的かつ効果的に伝達することが出来なかったことにより、平均購入単価、のべ顧客数ともに減少いたしました。一方、雑貨ブランド「YOU+MORE!(ユーモア)」が東京・上野駅構内にリニューアルオープンした常設店舗や、福岡・天神地下街に新規出店した店舗、また東京・渋谷で開催した「大偏愛展」などのリアル店舗でのマーケティング活動は順調に推移し「顧客基盤の拡大」、「顧客との継続的関係の構築」に貢献いたしました。また本社ステージフェリシモ内にて運営するフェリシモチョコレートミュージアムの年間有料来訪者は6万人を超えるなど新たな事業性の芽として育ってまいりました。これらの活動から得られた知見を2024年4月より15年間に渡って当社がプロデュースする神戸ポートタワー事業に活かすべくその準備を積極的に進めてまいりました。
新規事業分野におきましては、当社の定期便プラットフォームに取引先事業者が出品・出稿できる「FELISSIMO PARTNERS(フェリシモパートナーズ)」事業において、「産地直送マルシェ」や全農との共同事業「純農」の受注が好調に推移したことにより、前期に比べて売上高が増加いたしました。
これらの活動の結果、当連結会計年度における当社グループの売上高は29,607百万円(前期比 7.9%減)となり、売上総利益は15,587百万円(前期比 8.6%減)となりました。
販売費及び一般管理費につきましては、出荷数の減少に伴い商品送料や出荷業務手数料などが減少したものの、新たな人材の確保と育成、次世代のWebシステム基盤整備などの戦略的費用投入を積極的に行ったことにより、16,519百万円(前期比 0.6%減)となりました。これらの結果、営業損失は931百万円(前期は営業利益440百万円)となりました。
営業外損益では、為替差益などによる営業外収益を319百万円計上したことにより、経常損失は612百万円(前期は経常利益818百万円)となりました。税金等調整前当期純損失は664百万円(前期は税金等調整前当期純利益812百万円)となり、親会社株主に帰属する当期純損失は858百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益671百万円)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における資産合計は29,064百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,479百万円減少(7.9%減)いたしました。この主な要因は、投資有価証券の増加813百万円及び長期預金の増加500百万円に対し、現金及び預金の減少3,032百万円及び商品の減少373百万円となったことによるものであります。
負債合計は10,121百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,540百万円減少(13.2%減)いたしました。この主な要因は、電子記録債務の減少710百万円及び支払信託の減少529百万円となったことによるものであります。
純資産合計は18,943百万円となり、前連結会計年度末に比べ939百万円減少(4.7%減)いたしました。この主な要因は、親会社株主に帰属する当期純損失を858百万円計上したこと及び利益剰余金の配当106百万円を行ったことにより利益剰余金の減少965百万円となったことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、7,733百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,410百万円減少いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果減少した資金は877百万円(前年同期は191百万円の増加)となりました。これは主に、減価償却費の計上807百万円及び棚卸資産の減少額364百万円に対し、税金等調整前当期純損失の計上664百万円及び仕入債務の減少額1,312百万円となったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は1,421百万円(前期比 121.6%増)となりました。これは主に、定期預金の払戻が預入を上回ったことによる収入469百万円に対し、投資有価証券の取得による支出800百万円及び新Webシステムの構築等により無形固定資産の取得による支出710百万円となったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果減少した資金は112百万円(前期比 0.3%減)となりました。これは主に、配当金の支払が106百万円となったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、カタログ等による一般消費者向けの通信販売を主な事業としておりますので、生産及び受注の状況に替えて商品仕入実績を記載しております。
なお、当社グループは、単一セグメント・単一事業部門であるため品目ごとに商品仕入実績及び販売実績を記載しております。
イ.商品仕入実績
|
事業区分 |
品目 |
前連結会計年度 (自 2022年3月1日 至 2023年2月28日) |
当連結会計年度 (自 2023年3月1日 至 2024年2月29日) |
前年同期比(%) |
|
通信販売事業 |
服飾・服飾雑貨(百万円) |
11,060 |
9,681 |
87.5 |
|
生活関連品(百万円) |
3,697 |
3,221 |
87.1 |
|
|
その他(百万円) |
699 |
743 |
106.3 |
|
|
合計(百万円) |
15,458 |
13,646 |
88.3 |
|
ロ.販売実績
|
事業区分 |
品目 |
前連結会計年度 (自 2022年3月1日 至 2023年2月28日) |
当連結会計年度 (自 2023年3月1日 至 2024年2月29日) |
前年同期比(%) |
|
通信販売事業 |
服飾・服飾雑貨(百万円) |
22,599 |
20,931 |
92.6 |
|
生活関連品(百万円) |
7,814 |
6,871 |
87.9 |
|
|
その他(百万円) |
1,745 |
1,805 |
103.4 |
|
|
合計(百万円) |
32,160 |
29,607 |
92.1 |
|
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告数値及び収益、費用の報告数値に影響を与える見積り、判断及び仮定を必要としております。当社グループは連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じて、合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。この差異は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループが連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの業績に重要な影響を与える要素として、中核事業の定期便事業につきましては、新規顧客の獲得や顧客の継続化が重要な要素となります。また新規事業につきましては、現在計画中の新規事業案件の育成が重要となります。当連結会計年度においては、定期便事業では「顧客基盤の拡大」と「顧客との継続的な関係育成」に取り組みましたが、当社グループが企画開発する商品の圧倒的な差別化が不十分であったことや、商品が有する価値を魅力的かつ効果的に伝達することができなかったことにより、平均購入単価、のべ顧客数ともに減少いたしました。新規事業では、「第2の収益の柱の育成」に取り組み、定期便プラットフォームに取引先事業者が出品・出稿できる「FELISSIMO PARTNERS(フェリシモパートナーズ)」事業は順調に売上げが伸長しましたが、サブスクリプションサービス「EIZOKU」事業は進捗が遅れております。
費用面につきましては、当連結会計年度においては、想定以上の円安進行により輸入仕入価格が上昇しましたが、販売価格に転嫁できない商品があったため原価率が上昇しました。またエネルギー価格の高騰、物流関連費用の高騰や賃金上昇といった外部要因による費用増加がある中で、新たな人材の確保と育成、次世代のWebシステム基盤整備などの戦略的費用投入を積極的に行ったことも営業損失の要因となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品仕入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な資金は自己資金をもって充当することを基本方針としております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は15百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は7,733百万円となっております。
(連結子会社の吸収合併について)
当社は、2024年1月25日開催の取締役会において、当社の100%出資の連結子会社である株式会社cd.を吸収合併(簡易吸収合併)することを決議し、2024年3月1日付で合併契約を締結いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。