当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は事業を継続的に発展させていくために、経営理念を全従業員に徹底することにより企業体質の一層の強化と、商品のレベルアップ、お客様への「おもてなし」の充実を図り、この理念を実現することを経営の基本方針としております。
(経営理念)
「人間の生命を支える最も基本的な飲食を通し、より多くのお客様に、よりおいしく・よりよいサービス・より速く、をもって私達の『真心』を提供し、お客様の『感謝と喜び』を頂くことを私達の使命と致します。」
(2)経営戦略等及び経営環境
回転寿司業界においては、競合他社との差別化の流れの中で、グルメ回転寿司の業態と低価格回転寿司の業態の二極化が今後も続くものと考えております。グルメ回転寿司及び立ち寿司業態に属する当社は、同業態の競合他社との差別化を図るために、「より高価な食材を新鮮で食べ応え充分な状態で市場価格よりもずっとお得感のある価格帯で」提供することを目指しており、この実現のために産地の開拓、素材の吟味、商品開発など当社独自の商品力の向上に邁進し、さらに、立ち寿司により近い技術の向上に取り組んでいくことを経営戦略としております。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
コロナから解放される中で、イートイン需要が急回復し、外食業界全体の営業活動が活発化する一方で、一昨年から続く業界全体で価格改定の動きにも落ち着きが見られることから、売上は順調に推移することが期待されます。反面で、利益面では、原料・資源コストの継続的な上昇、外食業界における恒常的な人手不足による人件費の傾向的な上昇等、先行き不透明な状況が続くことが予想されます。
このような環境の下、当社は「収益構造・運営オペレーションの改革と新たな価値創造」をテーマとし、次の4項目を重点課題に掲げ、取り組んでまいります。
① DX戦略
イートイン需要が急回復する中で、来店客数は未だ回復途上にあります。一方で人手不足の状況が深刻化し、店舗ごとの技術者(すし職人)不足も顕在化する中で、従来型の成功モデルの出店による「店舗数拡大→売上増」を追う手法は通用しなくなりつつあります。
このような状況において、当社は、DX推進本部において、店舗オペレーションのロボティクス等による機械化・省力化、決済方法のキャッシュレス化の推進に加えて、フルオーダーシステム等から収集した各種の顧客・販売データを統合し有効活用するための共通基盤及び基幹・周辺システムの構築を進め、販売促進や消費・サービスの高度化に注力してまいりました。このような中で、2023年11月にネイティブアプリ「縁アプリ」を導入し、登録会員数の増強に努めるとともに、これを活用したダイレクトマーケティングを新たに展開することにより、来店客数の増大を図ってまいりました。
今後は、共通基盤及び縁アプリの機能拡張・サービスの高度化による集客力の更なる強化を図るとともに、仕入マスタ・メニューマスタ等の各種マスタの一元管理や外部システムとの連携を目的とした統合データ基盤の構築に注力することで、よりムリのないオペレーション、よりムラのないサービス、よりムダのない食材管理を実現し、利益の最大化を目指してまいります。
② 人財戦略
外食業界の人手不足の深刻化は不可避となっています。これに対して、当社は、人財戦略本部において、人を増やす「採用」、技術者を育てる「育成」、辞めない職場を作る「リテンション」を3つのテーマとし優秀な人財確保を推進しております。この一環として、2024年2月には、コロナ下で抑制を余儀なくされた正社員に対する給与について職位等にかかわらず一律30,000円の引き上げを実施しました。
また、同本部に女性活躍推進担当を配置し、女性が働きやすい職場環境及びキャリアアップ支援体制の整備と女性正社員の採用数の増加、及び女性店長・女性管理職の積極的な登用に取り組んでおります。
今後は、3つのテーマの充実に加え、店舗の運営手法をモデル化し、それに則した適正かつ効率的な営業を可能にする教育プログラムの確立と、その実践に注力してまいります。また、経営理念に基づく目指すべき姿をモデル店として具現化し、全従業員が体感・共感・共有できる研修環境を整備し全店に波及させることで、幅広い人財が活躍できる土壌の形成と誰もが挑戦できる社風づくりに努めてまいります。
③ 店舗戦略
一都三県のロードサイドを中心とした「すし銚子丸」、都心部商業施設並びに郊外型大規模商業施設を中心とした「すし銚子丸雅」に加えて、2024年3月には、インバウンド集客が見込める都心部施設に「鮨Yasuke」を新たに出店しました。これらブランドについては、その特性に合致した物件候補地を厳選し、特に神奈川地区をはじめとする未出店エリアでの出店を強化し、新規顧客層の獲得を図ってまいります。併せて、新たに高級江戸前立ち寿司店にも挑戦してまいります。
なお、立ち寿司業態である「江戸前すし百萬石」ブランドについては多店舗展開できるモデルを模索してまいります。
既存店については、人件費をはじめ様々な経費の上昇に耐え得る収益性を確保するために、席数増加・作業性・イメージアップ・省力化を重視した大規模・中規模改装を計画的に実施してまいります。並行して、不採算店舗の退店及び好立地へのリロケーションを推進することで、利益体質の強化に努めてまいります。
④ 米国外食市場における新たな価値創造
今後の人口減少に伴う国内市場の縮小を背景に、外食の分野においても海外成長市場への進出は喫緊の課題となっております。海外市場の中でも米国は市場規模の大きさとともに多様な食文化を享受し、特に日本の食文化に対する需要も高く、外食事業者にとって魅力的な市場と考えております。
このような状況に対応するために、当社は、ロイヤルホールディングス株式会社、及び双日株式会社との3社にて、米国での共同事業展開に関する合弁事業契約を締結し、2024年3月に現地(カリフォルニア州)に合弁会社を設立いたしました。米国における日本食レストランは堅調な増加傾向にあり、特にカリフォルニア州はロサンゼルスなどの大都市を中心に米国最大の日本食レストラン数を誇り、日本人移民の歴史も長く、特にロサンゼルスは日本食レストランの多様性に富み、寿司ブームなど、米国の日本食ブームの火付け役としての役割を果たしています。まずは同エリアで現地の嗜好を確認しながら新業態のブラッシュアップを図り、各社の事業分野での強みを生かし、単独では成し得ない新たな価値を創造することを目指してまいります。
以上のとおり、「DX推進」、「人財確保」及び「店舗開発」への傾斜的な投資により収益構造・運営オペレーションの改革を推進することで利益の最大化を実現し、更なる投資余力を生み出し、これを再投資することで更なる売上増加と利益の拡大を循環させる「サスティナブル(継続可能)企業」の確立を目指してまいります。併せて米国外食市場における3社協業による新たな価値を創造し、企業価値の更なる向上に努めてまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は事業を継続的に発展させていくためには、安定した財務基盤を維持しつつ、売上高を着実に増加させ、適正な利益の確保を図っていくことが、必要であると考えております。そのために、売上高経常利益率、自己資本比率、ROEを重要な経営指標として位置付け、その向上に努めてまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社は、経営理念の下に、日本食の代表とも言える「寿司」事業を営む企業として、日本の食文化、特に魚食文化と、その源となる海洋環境を守り育てることを社会的責任の一つと考えております。この理念を実現するために、SDGs委員会を中核として、様々な社会・環境問題に対して当社の方針や目標を策定し、取組みを行ってまいります。
(1)ガバナンス
サステナビリティ経営の強化を目的として、執行部門の最高意思決定機関である経営会議の直下にSDGs委員会を設置しております。同委員会は、社長を委員長として業務執行取締役、執行役員、部室長で構成されており、また、同委員会内に環境部会、食文化部会、人財部会を設置しております。同委員会では、サステナビリティに関する方針や「マテリアリティ」などの重要課題を協議検討するとともに、3部会を中心として具体的対応策やその進捗状況の確認等を行い、その状況を適宜取締役会に報告しております。
(2)戦略
① 移行リスク
イ.環境規制の強化により、原材料調達コストの大幅な上昇が発生した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
ロ.環境課題に対する対応が遅れることにより、ステークホルダーからの信用失墜、ブランド価値棄損、お客様離れが発生した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 物理リスク
イ.気候変動をはじめとする環境の変化により、原材料となる食材の漁獲、収穫、生産の状況が悪化し、不足、途絶、市場価格の大幅な上昇などが発生した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
ロ.地球温暖化の影響と思われるアニサキスや、その他の食中毒など、水産物の安全性に関わる問題が発生した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 機会
当社は、サステナビリティの観点を経営に取り込むことは、事業リスクの低下や新たな事業機会の創出が期待でき、また、ステークホルダーからの評価が向上することで投資の拡大や企業イメージの向上、顧客の獲得などにつながることから、サステナビリティを巡る課題への対応を重要な経営課題であると認識しており、これらの課題に積極的に取り組むこととしております。
④ リスクと機会に対処する取組みのマテリアリティ
イ.当社の貢献可能性と、当社のステークホルダーにとっての重要度の2軸でマトリクスを作成し、SDGsの17の目標の位置付けを検討し、当社のマテリアリティMAPを策定しております。
ロ.マテリアリティMAPに基づいて、当社が取り組むべき課題と具体的な施策を明示したマテリアリティ一覧表を作成し、その実現に努めております。
⑤ 多様な人財の育成と活用
イ.人財育成方針
企業文化としての経営理念を実現し、顧客並びに地域の皆様に感謝され喜ばれる人財の育成に努めております。
育成した人材が良質な外食体験を提供することにより、お客様だけでなく、劇団員一人ひとりが接客業の喜びを感じるとともに、人としても成長していく、そして、その力によって更なる良質な外食体験が生み出されて、お客様の感謝と喜びが増大していく、このような循環を達成することこそが経営理念を実現した姿であると考えております。
ロ.社内環境整備方針
すべての銚子丸社員について、その社員人生に寄り添い、採用→育成→リテンション→ロングテール→ハッピーリタイヤメントまでの各ステージで、該当する個々の社員満足度をより高めることができる環境を目指しております。
(3)リスク管理
当社のリスク管理は、危機管理委員会にて行っておりますが、サステナビリティに係るリスクの識別、優先的に対応すべきリスクの絞り込みについて、SDGs委員会の中でより詳細な検討を行い、共有しております。
(4)指標及び目標
人的資本に関する指標及び目標
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指標 |
46期 |
47期 |
目標( |
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9.5% |
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7.7% |
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1 |
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男女平均賃金の格差 (男性の賃金に対する女性の賃金割合) |
77.5% |
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91.7% |
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109 |
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当社の事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると考えられる主な事項及びその他投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項は、以下のとおりです。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスク発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社への投資は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で判断される必要があると考えております。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が入手可能な情報及び合理的であると考えられる一定の前提に基づいて判断したものです。
(1)当社の事業に影響を与える外的要因について
① 外食業界の動向及び競合他社との競争について
当社の属する外食産業は、アフター・コロナの営業活動に転換する中で、業界各社の競争がより激しさを増しております。寿司業界においても、大手チェーン店の相次ぐ出店や異業種からの参入等による競争が激化しております。
このような状況の中で当社は、経営理念に掲げる「私達の『真心』を提供し、お客様の『感謝と喜び』を頂くことを私達の使命と致します。」を徹底し、今後も競合他社との差別化に向けた諸施策を講じながら収益力の向上に努めてまいる所存であります。しかしながら、今後、外食市場の縮小や他の外食事業者や中食事業者を含めた競合他社との競争が更に激化した場合に、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 食材について
当社は寿司事業のみの単一事業を営んでいるため、水産物や米等、原材料となる食材に関して市場価格変動に伴う当社仕入価格の変動や市場流通量の大幅な減少に伴う定番品目の欠品等が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。特にまぐろをはじめとした主要品目については、世界情勢や為替、漁獲状況等の影響により、市場価格が大きく変動する事態も想定されるものと考えております。当社は、まぐろをはじめとした主要品目の仕入に関して、固定価格での長期契約の締結や仕入経路の多様化等によって、仕入価格上昇や欠品が発生するリスクの低減を図る方針でありますが、こうした施策が必ずしも期待どおりの効果を生む保証はありません。
また、近年、地球温暖化の影響と思われるアニサキス等、寄生虫の食中毒の発生が増加傾向にあります。当社は品質管理について、常に厳格かつ万全な管理に努めておりますが、取り扱う食材のうち、特にこれら水産物の安全性に係る問題が発生した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人件費・光熱費等について
コロナ収束に伴う景気の回復により、労働市場が逼迫しており、優秀な人材確保の為の賃金上昇圧力が高まっております。また、ロシアのウクライナ侵攻やハマス・イスラエル間の武力衝突の結末が見えない中で、世界的なエネルギー危機を背景とする燃料価格の高止まりや、円安による物価上昇が顕在化しております。今後、人件費や電気代の補助終了に伴い光熱費等の諸経費が急激に上昇した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 自然災害・事故等について
地震や台風等の自然災害や火災・事故などにより、店舗の営業に支障が生じたり従業員が被害を受ける可能性があります。これに伴う売上高の減少、営業拠点の修復又は代替のための費用発生等が、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 新型コロナウイルス感染症の影響について
新型コロナウイルス感染症は、収束したとみられますが、なお再拡大の可能性を残しております。このような感染症が再び拡大し、従業員内でクラスターが発生した場合には、店舗の営業継続が難しくなり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ その他の外的要因について
当社は寿司事業のみの単一事業を営んでいるため、寿司に関する消費者の嗜好の変化が当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)出店について
① 出店戦略について
当社は、2024年5月15日現在、千葉県内に38店舗、東京都内に35店舗、埼玉県内に10店舗、神奈川県内に5店舗の計88店舗(「すし銚子丸」「すし銚子丸 雅」「江戸前すし百萬石」及び「鮨Yasuke」業態、すべて直営)を展開しております。今後におきましても、これらの各業態の特徴を活かし一都三県のロードサイド並びに商業施設内・ビルイン・駅中・駅前等の繁華街立地をメインとした都心部への出店について積極的に検討していく方針であります。
当社は、出店にあたって、周辺人口、近隣道路環境、敷地状況、競合店状況、及び契約条件等の諸条件を総合的に検討した上で、出店候補地の選定を行っております。予め当社の希望する条件で絞り込んだ出店候補地に対して、物件所有者との交渉を行っており、当該交渉期間は長期化する場合があります。
また、当社の出店条件に合致した物件がなく計画通りの出店ができない場合や、出店後において立地環境等に多大な変化が生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 敷金・保証金等について
当社は、出店に際して、敷金・保証金等を差し入れた上で土地、建物を賃借しており、賃借物件の地主・家主の経済的破綻等により敷金・保証金等の回収が不能となった場合や、当社の都合による賃貸借契約の中途解約により契約条件に従って敷金・保証金等を放棄せざるを得なくなった場合等には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)事業体制について
① 人財確保及び育成について
当社は店舗数増加等による業容と組織の拡大において、これを担う人財の量的・質的な確保及び育成が重要な課題であると考えております。会社財産としての「優秀な人財」の安定確保と早期戦力化及び定着率向上のためには、働き方改革の推進による労働環境の改善と給与体系の見直しによる人件費の増加が今後の飛躍に向けた事業基盤構築のために不可欠な負担であるとの認識のもとで、人財の確保・育成を推進しております。しかしながら、今後、労働法令の改正や労働市場の逼迫によって当社の想定を上回る人件費の増加があった場合や、新規出店を担う人財確保及び育成ができない場合には当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 鮮魚の配送について
当社では、水産物卸売市場の休業日を除き、早朝に水産物卸売市場で仕入れた鮮魚を、当日中に配送し、店舗で加工して提供するための仕入及び物流体制を構築しております。このような体制を構築していることが他社の回転寿司店舗との差別化要因の一つであると考えており、今後こうした体制を維持継続できなくなった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの体制を維持するためには、水産物卸売市場から開店前に仕入品を店舗に配送できることが前提となるため、出店用地の選定に制約が生じる場合があります。
(4)法的規制等について
① 法的規制について
当社の事業に関連する法的規制としては、「食品衛生法」「消防法」及び「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(いわゆる食品リサイクル法)等があります。このうち食品衛生法においては、飲食店を経営するにあたり厚生労働省令が定めるところの都道府県知事の許可を受けなければならない旨が規定されています。
今後、これらの法的規制が強化された場合、それに対応するための新たな費用の発生等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 衛生管理について
当社では、衛生管理を重要な経営管理項目として位置づけており、衛生管理室が、各店舗の衛生評価・教育並びに外部の専門業者との連携による食材・調理器具の検体採取や従業員の検便検査等を定期的に実施しております。さらに、その実施結果に基づいて各店舗に対する衛生管理指導を行うなど衛生管理体制を整備しております。また、食品衛生法の改正により2020年6月からHACCPに沿った衛生管理が制度化されましたが、これを契機として当社はより安全性の高い衛生管理体制の構築を進めております。
当社は、今後とも一層の衛生面の管理を強化していく方針でありますが、外食産業の中でも生鮮食材を取り扱う業態として食中毒事件等が発生した場合には、企業としての存続そのものに重大な影響を及ぼす可能性があります。
また同業他社で食中毒事件等が発生した場合には、消費者による寿司業界全体に対する不安感を与えてしまうことから、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)について
2001年5月に施行された「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)により、年間100トン以上の食品廃棄物を排出する外食事業者(食品関連事業者)は、食品廃棄物の発生量の抑制、減量及び再生利用を通じて2024年度末までの食品廃棄物の再利用等の実施率は業種全体で50%を達成するよう目標が設定されております。
当社におきましては、排出量の把握とその抑制策、再生利用策、及び減量策等の具体的な対応策を実施しておりますが、今後同法に関して追加的な対応が必要となった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 短時間労働者の雇用について
当社では従業員に占める短時間労働者の比率が高いため、今後、労働法令の改正等、あるいは厚生年金保険等、パート・アルバイト社員の処遇に関連した法改正が行われた場合には、人件費負担の増加により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)個人情報の管理について
当社は、顧客からのアンケート情報等を収集し、顧客満足度の把握及びサービス向上に努めております。個人情報の管理に関しては万全を期しておりますが、何らかの理由で個人情報が漏洩した場合には、損害賠償請求の発生や社会的信用の低下等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の概要
当事業年度における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症から解放されて経済活動のコロナ前への正常化が進み、雇用・所得環境の改善、インバウンド需要の増加等を背景とした回復基調となりました。ウクライナや中東等で緊迫した情勢が続く中で、日米金利差拡大に伴う円安の進展やこれらを背景としてエネルギー・原料・資源コストが高騰し物価が上昇する一方で、景気回復に伴う労働力不足が顕在化するなど、国内外で先行き不安定な状況が続きました。
外食業界におきましては、コロナの呪縛から解放されてイートイン需要が急回復し、業界全体の営業活動が活発化しました。一方で、物価上昇に対する消費者の生活防衛意識が高まる中で、業界全体の価格改定の動きも抑制的なものとなりました。
このような状況において、当社は、通常の月別イベントに加え、『銚子丸47周年創業祭(2023年10月16日~同年11月15日)』、『クリスマスミートフェア(2023年11月16日~同年12月25日)』、及び『バレンタインフェア(2024年2月10日~同月14日)』等、1年を通じて時節の特別イベントを開催し、リピート客数の増大並びに新規顧客の獲得を図りました。
店舗開発につきましては、2023年6月に「すし銚子丸横浜六ツ川店」(横浜市南区)を新規に出店しました。また、2024年3月には豊洲市場に隣接して開業した豊洲場外江戸前市場『豊洲千客万来』に、日本の伝統食「鮨」を江戸と現代を融合させた空間の中で、職人の技とおもてなしの心をもってご提供する新業態「鮨Yasuke豊洲千客万来店」(東京都江東区)を新規に出店しました。一方で、雇用が逼迫する中で、限られた人的資源の有効活用と効率的な店舗網の再構築の観点から「すし銚子丸南浦和店」(2023年6月)、「同 三鷹店」(同7月)、及び「同 浦和木崎店」(同7月)を閉店しました。並行してコロナ収束後にテイクアウト需要が急減し、店舗採算の確保が難しくなった「すし銚子丸テイクアウト専門店荻窪店」(2023年6月)、「同 初台店」(同7月)、「同 落合店」(同7月)及び「同ペリエ海浜幕張店」(同10月)について、歴史的使命を終了したとの判断により順次閉店しました。この結果、当事業年度末の店舗数は88店舗となりました。
以上の結果、当事業年度の売上高は、イートイン需要の急回復及び価格改定の定着に加え、テレビ放映をはじめとした1年間で延べ40回にわたるメディアでの紹介等が奏功し、213億60百万円(前期比10.6%増)となりました。
利益面につきましては、令和6年能登半島地震に対する災害義援金10百万円、及びウクライナ難民緊急支援10百万円を寄付しましたが、売上高の増加に加えて、価格改定やフルオーダー化に伴う廃棄ロス減少等による原価率の低下、及びコロナ下に推進してきた機械化・省力化等による利益体質の改善努力等が奏功し、営業利益は17億9百万円(同155.3%増)、経常利益は17億35百万円(同118.5%増)となりました。なお、採算が悪化した店舗に係る減損損失1億74百万円を計上したこと等により、当期純利益は10億73百万円(同92.3%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末に比べ4億5百万円増加し、61億78百万円(7.0%増)となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動におけるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、23億75百万円(前期比451.2%増)となりました。これは、税引前当期純利益15億41百万円、減価償却費4億65百万円及び減損損失1億74百万円による資金の獲得によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、18億39百万円(前期比79.7%増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出12億25百万円及び関係会社株式の取得による支出3億6百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、1億30百万円(前事業年度は14百万円の使用)となりました。これは配当金の支払額1億63百万円による資金の使用によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は一般顧客(最終消費者)へ直接販売する飲食業を行っておりますので、生産実績は記載しておりません。
b.受注実績
当社は一般顧客(最終消費者)へ直接販売する飲食業を行っておりますので、受注実績は記載しておりません。
c.販売実績
当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2023年5月16日 至 2024年5月15日) |
前年同期比(%) |
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寿司事業(千円) |
21,360,275 |
110.6 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
① 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
(資産)
当事業年度末における資産は14億39百万円増加し、128億42百万円(前期比12.6%増)となりました。主な要因は次のとおりであります。
流動資産は4億5百万円増加し、80億75百万円(同5.3%増)となりました。主な内訳は、現金及び預金の増加4億5百万円であります。
固定資産は10億34百万円増加し、47億67百万円(同27.7%増)となりました。これは主に、建物(純額)の増加4億43百万円、工具、器具及び備品(純額)の増加63百万円、ソフトウェアの増加2億12百万円及び繰延税金資産の増加80百万円によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債は4億98百万円増加し、35億33百万円(同16.4%増)となりました。主な要因は次のとおりであります。
流動負債は4億69百万円増加し、30億32百万円(同18.3%増)となりました。主な内訳は、未払法人税等の増加4億54百万円によるものであります。
固定負債は28百万円増加し、5億1百万円(同6.0%増)となりました。これは主に、資産除去債務の増加28百万円によるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は9億41百万円増加し、93億9百万円(同11.3%増)となりました。主な内訳は、繰越利益剰余金の増加9億9百万円であります。
b.経営成績の分析について
当事業年度は2店舗は新規出店し、7店舗(うちテイクアウト専門店4店舗)を閉店しました。これにより期末時点の店舗数は88店舗となりました。
売上高につきましては、前事業年度と比較して20億49百万円増の213億60百万円(前期比10.6%増)となりました。これは新型コロナウイルス感染症から解放されてイートイン需要が急回復したこと、また価格改定の効果によるものであります。
売上原価は前事業年度と比較して1億4百万円増の82億81百万円(前期比1.3%増)で、原価率は38.8%と前事業年度(42.3%)比3.5%減となりました。これは、食材や副食材価格の上昇に伴う価格改定がお客様に受け入れられ定着した結果であります。
販売費及び一般管理費は前事業年度と比較して9億5百万円増の113億69百万円(前期比8.7%増)となりました。これは給料及び手当が前期比5億16百万円、外注費が1億38百万円増加したこと等が主な要因であります。
以上により営業利益は前事業年度と比較して10億39百万円増の17億9百万円(前期比155.3%増)、売上高営業利益率は8.0%(前事業年度は3.5%)となりました。
経常利益は前事業年度と比較して9億41百万円増の17億35百万円(前期比118.5%増)、売上高経常利益率は8.1%(前事業年度は4.1%)となりました。
当期純利益につきましては、不採算店舗の減損損失1億74百万円(前期比1億63百万円増)を計上した結果、前事業年度と比較して5億15百万円増の10億73百万円の利益(前期比92.3%増)、売上高当期純利益率は5.0%(前事業年度は2.9%)となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フローの状況について
当事業年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「第2 事業の状況 4 [経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当事業年度は新規出店及び店舗改装の設備資金は、原則として自己資金及び営業活動によるキャッシュ・フローで賄っており借入金による資金調達は行っておりません。運転資金としては納税資金を金融機関からの借入金で調達をしております。当事業年度末のリース債務を含む有利子負債残高は1億98百万円(前事業年度末残高は1億92百万円)となっております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。また、この財務諸表の作成に当たりまして、将来事象の結果に依存するため確定できない金額について、仮定の適切性、情報の適切性及び金額の妥当性に留意しながら会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積りと異なる場合があります。なお、新型コロナウイルス感染症の収束に伴い、イートイン需要が復活してきており、一方で、価格改定の効果も手伝って、売上はコロナ禍前の水準を越えて回復するものと仮定し、固定資産の減損及び繰延税金資産の回収可能性に関する会計上の見積りを行っております。
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 固定資産の減損損失
固定資産の減損損失につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご覧ください。
② 繰延税金資産の回収可能性
当社は、将来の利益計画に基づいた課税所得の見積りを行い、将来減算一時差異等に対して繰延税金資産を計
上しております。繰延税金資産の回収可能性は決算時点で入手可能な情報や資料に基づき合理的に判断しており
ますが、消費の動向や事業環境の変動等により、利益計画及び課税所得の見直しが必要となった場合、当社の翌
事業年度以降の財務諸表において繰延税金資産の金額に重要な影響が及ぶ可能性があります。
該当事項はありません。
特記事項はありません。