記載された事項で、将来に関するものは、有価証券報告書提出日現在(2020年5月29日)、入手可能な情報に基づく当社の経営判断や予測によるものです。
(1) 経営方針
当社グループは持株会社体制の下、大丸、松坂屋、パルコの店舗ネットワークや顧客基盤などの経営資源を最適かつ有効活用するとともに、時代の変化に的確に対応し、顧客満足の最大化と効率経営の徹底を通じ、百貨店事業、パルコ事業をはじめ既存事業各社の競争力と収益力の向上をはかってまいります。
加えて、より成長性のある分野に資源配分を行っていくなど、競争力と収益力に優れた事業群でバランス良く構成されるポートフォリオへの見直しを進め、“くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”という新たなグループビジョンの実現に挑戦してまいります。
(2) 経営目標
パルコの完全子会社化を契機とする新たな経営体制“新生JFRグループ”として、新たなJFRグループの将来像に基づく、新中期経営計画を策定してまいります。
策定に向けた推進体制として、百貨店事業、SC不動産事業、金融事業、未来創造事業、ライフソリューション事業など各分野においてワーキング・グループを設置し、グループ総合力を結集して2021年度からの新たな成長戦略、事業計画の策定を進めてまいります。
(3) 対処すべき課題
当社グループのビジョン“くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”の実現に向けた「2017~2021年度 中期経営計画」のスタートから3年が経過しました。この3年間において、GINZA SIXや上野フロンティアタワーに続き、2019年度は大丸心斎橋店本館や新生・渋谷パルコの大型再開発を完成させるなど、中期経営計画で掲げる成長戦略を着実に推進してきました。一方、既存事業の成熟化が一層進行するなか、当社グループの最重要課題である「事業ポートフォリオの変革」への取り組み進捗として十分な成果を創出するには至っておりません。
当社グループを取り巻く経営環境は、デジタル技術の進化や消費の多様化、またキャッシュレス化の進展など大きな変化に直面しており、またこうした変化がこれまでにないスピードで進行しています。さらに、新型コロナウイルス感染症拡大により景気後退リスクが増大するなど一段と先行き不透明な状況にあり、短期・中長期の両面から、企業リスクへの迅速な対応が強く求められていると認識しています。
このような環境変化を踏まえ、当社グループの企業価値のさらなる向上にむけ、2019年度にパルコの完全子会社化を実施しました。これにより、グループの経営資源を最大限活用することで、従来の延長線上ではない非連続な成長を加速させるとともに、抜本的かつ機動的な事業ポートフォリオの変革に向け、グループ一体となり取り組む体制構築が進んだものと考えます。
2020年度は、こうした新たな経営体制“新生JFRグループ”のもと、百貨店とパルコの協業による大型複合商業施設の開業など、グループシナジーの最大化による成長戦略の具現化にスピードを上げて取り組んでまいります。
また、経営環境が想定以上に大きく変化するなか、現在進行中の本中期経営計画(2017~2021年度)の目標達成が困難な状況にあること、そして今後当社グループとして中長期にわたる成長を実現していくには、これまで成し得なかった事業構造の変革に向け成長戦略を再構築し、2021年度より「新たな中期経営計画」をスタートさせることが最善との判断に至りました。
このため、本中期経営計画は2020年度をもって終了し、今年度を「グループビジョンの実現に向け、新たな成長戦略を始動していくための年度」と位置づけ、次年度からの新中期経営計画スタートにグループ一丸となり取り組んでまいります。
2019年度後半に生じた新型コロナウイルス感染症影響については、顧客・従業員の安全衛生確保や健康への配慮を最優先に、刻々と変化する状況に対し迅速かつ適切に対応してまいります。
株主の皆様におかれましては、なにとぞ一層のご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
(4) グループ成長戦略
①マルチサービスリテイラー戦略
高効率かつ成長性が高い事業と位置づけるクレジット金融事業の強化を図るとともに、パルコとの連携を一層深めながら新規事業の開発、事業領域の拡大に取り組んでまいります。
1)クレジット金融事業の強化
・クレジット金融事業において、大丸松坂屋百貨店におけるアクワイアリング(加盟店契約)事業を開始するほか、新ポイントプログラムの導入、既存カードのリニューアルを2020年秋に計画しております。
2)グループビジョン実現に向けた新規事業領域の拡大
・「暮らし方の多様化」「楽しみ方の多様化」に対応した新たなサービスの具現化、また消費の価値観の多様化に対応する事業の開発など、サービス分野における事業領域の拡大、他社とのアライアンスを進めてまいります。
②アーバンドミナント戦略
百貨店・パルコの基幹店舗を中心に、グループリソースを最大限活用し、「店舗を核に地域とともに成長するビジネスモデル」の構築に引き続き取り組んでまいります。
1)心斎橋パルコ(仮称)の開業
・2020年秋に開業予定の心斎橋パルコ(仮称)において百貨店・パルコの顧客データを活用したサービス提供やプロモーションの実施など、大丸心斎橋店本館との一体構造を活かした、新たな大型複合商業施設の具現化に取り組んでまいります。
2)基幹店舗を中心とした街づくりの推進
・名古屋・栄地区に位置する「日本生命栄町ビル(仮称)」の商業施設出店(2020年秋予定)、また錦三丁目25番街区における開発を目指してまいります。これらにより、松坂屋名古屋店、名古屋パルコとともに、名古屋栄エリアの魅力化に取り組んでまいります。
・街の魅力度向上、エリア間の競争力強化に向け、重点エリアを中心とした周辺店舗開発に加え、地域・行政等との連携によるイベント実施など、街の賑わい創出に取り組んでまいります。
③IoT時代におけるICT戦略
お客様との生涯にわたる関係を強固なものとし、お客様のライフタイム・バリューの最大化を目指す「ライフタイム・サービスHUB構想」の具現化を進めてまいります。また、成長戦略の具現化や情報セキュリティへの対応強化など、ICT戦略の機能・体制強化に取り組んでまいります。
1)データ活用の高度化
・百貨店・パルコの相互利用顧客を把握・分析し、類似するID顧客へのアプローチを強化するなど、百貨店・パルコ間における顧客データの相互活用による実践拡大に取り組んでまいります。
2)グループ各社における機能・体制強化
・デジタル技術を活用した事業戦略の立案・実行支援、グループ各社の情報セキュリティ強化に対応した情報システムの適切な開発・運用など、攻めと守りの両面からICT戦略を着実に推進する機能・体制強化に取り組んでまいります。
④既存事業の革新
<百貨店事業>
新たな百貨店ビジネスモデルの拡大展開、新顧客戦略の推進による顧客基盤の拡大とCRMの強化、お得意様ビジネスモデルの強化を通じ、競争力・収益力の強化に取り組んでまいります。
1)新たな百貨店ビジネスモデルの具現化
・大丸心斎橋店本館の成功要因を踏まえ、リアル店舗価値の向上に向け新たな店舗モデルの構築、他店舗への展開に取り組んでまいります。
2)新顧客戦略の推進による顧客基盤の強化
・モバイルアプリ会員開拓など顧客基盤の拡大を図るとともに、顧客データを活用したパーソナルな商品・サービスの提案に取り組んでまいります。
・外商ビジネスにおけるデジタル技術を活用した新たな商品・サービスの提供や、顧客のニーズ・購買特性に応じた最適な営業活動の推進により、顧客基盤の強化に取り組んでまいります。
<パルコ事業>
グループシナジーの最大化に向け、事業専心型の会社体制を構築し、新たな不動産事業戦略の早期策定・実行に取り組むほか、パルコ店舗事業の改革により企業価値のさらなる向上に取り組んでまいります。
1)事業会社としての新たな体制構築
・完全子会社化を契機にグループシナジーを最大化すべく、本社機能の統合や組織の再編など資産・組織効率の向上を図るとともに、事業の強化・拡大に専心する体制構築にスピードをもって取り組んでまいります。
2)不動産事業戦略の拡大に向けた戦略の策定
・大丸松坂屋百貨店からの事業移管スキームの確定や人財交流に取り組み、新たな不動産戦略策定と実行に取り組んでまいります。
・当社グループの不動産に係る資源を集約・活用し、国内主要都市部における開発案件を拡大し、多様な開発手法を活用してまいります。
3)パルコ店舗事業の改革
・顧客サービスやプロモーションなど百貨店との高度な連携を実現し、2020年秋に開業予定の心斎橋パルコ(仮称)の成功に向け着実に取り組んでまいります。
・渋谷パルコの開業で得られた知見やネットワークを活かし、パルコ既存店においてストアブランドの再構築を目指した改革を推進してまいります。
⑤ESGへの取り組み
5つのマテリアリティ(重要課題)の目標達成への取り組みを着実に推進してまいります。また、コーポレートガバナンス機能強化への継続的な取り組みを通じ、グループの持続的成長及び中長期的な企業価値向上を目指してまいります。
1)グループ一体となった取り組み推進と情報開示の強化
・本業を通じて社会的課題やニーズを解決するCSV(Creating Shared Value)の考え方に基づき、グループ各社において自社の事業特性、行動計画に基づく課題解決に取り組んでまいります。またCSVのモデル店舗である大丸心斎橋店の取り組みを、順次他の店舗に展開してまいります。
・JFRサステナビリティ委員会を定期開催し、グループ全社の進捗管理・課題共有などPDCAサイクルによるグループ横断の取り組みを推進してまいります。
・ESG活動を社内外に適切に発信していくため、サステナビリティレポートの定期発刊、主要開示ガイドラインを活用した外部評価機関への情報開示の強化に取り組んでまいります。
2)グループガバナンスのさらなる強化
・完全子会社化に伴うパルコの機関設計変更、グループとしての内部統制の精度向上やリスクマネジメントへの対応など、グループガバナンスのさらなる強化に取り組んでまいります。
成長戦略を支える経営基盤の強化
<グループ人財政策>
・パルコの完全子会社化を契機に、事業会社の枠を超えた人財交流を一層推進してまいります。
・人財開発企業を目指し、新たな価値を生み出す“人財力”を基軸とする人事制度の本格運用により、多様な人財採用や専門人財の育成を促進するとともに、ワーク・ライフ・バランスの実現、働き方改革などに継続して取り組んでまいります。
<グループ財務政策>
・株主資本コストを継続して上回る資本効率の高い経営体質の構築に向け、今後の事業ポートフォリオ変革を見据えた最適資本構成について検討を進めるとともに、戦略投資の実施や株主還元の充実、財務体質の改善のバランスを踏まえた資本政策を推進します。
<コンプライアンスマネジメントの強化>
・教育や研修を通じたコンプライアンスへの意識向上、コンプライアンス遵守に関するチェック体制の強化に加え、不正事案の再発防止策の策定・徹底などグループコンプライアンス経営のさらなる強化に取り組んでまいります。
新型コロナウイルス感染症影響への対応
感染症影響の先行きが依然不透明であり、また状況も刻々と変化するなか、顧客・従業員の安全衛生の確保や健康への配慮を最優先に、事業継続計画に基づく態勢整備などに迅速かつ適切に対応してまいります。
同時に、社会・経済活動の停滞による当社グループの各事業への影響を注視するとともに、個人消費の低迷など景気後退リスクが一段と高まるなか、年度事業計画の見直しなどに機動的に対応してまいります。
また今後において、顧客の安全衛生や健康への意識の高まり、暮らしや働き方、消費行動の変化も予測されます。これらの変化を見据え、新たな商品やサービス、顧客とのコミュニケーション手法の検討など各事業において取り組みを進めてまいります。
(5) 株式会社の支配に関する基本方針
①基本方針の内容
当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社グループの財務及び事業の内容や当社グループの企業価値の源泉を十分に理解し、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保し、これを向上していくことを可能とする者であることが必要であるものと考えております。
当社は、当社が上場会社であることから、当社の株主のあり方については、一般的には金融商品取引所における自由な市場取引を通じて決まるものであり、特定の株主または特定の株主グループによって当社株式の一定規模以上の取得行為(以下「大量取得行為」といいます。)が行われる場合であっても、当該大量取得行為が当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであれば、一概にこれを否定するものではなく、これに応じるか否かについては、最終的には株主の皆さまのご判断に委ねられるべきものと考えております。
しかしながら、大量取得行為の中には、その目的等からして当社グループの企業価値に対する明白な侵害をもたらすもの、株主の皆さまに当社株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、当社取締役会や株主の皆さまが大量取得者の提案内容等について検討し、または当社取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないものなど、当社グループの企業価値を毀損する重大なおそれをもたらすものも想定されます。
このような当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益に資さない大量取得行為を行う者(以下「大量取得者」といいます。)は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者としては不適切であり、当社は、このような大量取得行為に対しては、大量取得者による情報提供並びに当社取締役会による検討及び評価といったプロセスを確保するとともに、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の毀損を防止するため、当社取締役会及び株主の皆さまが大量取得者の提案内容を検討するための十分な時間を確保することこそが、株主の皆さまから当社経営の負託を受けた当社取締役会の責務であると考えております。
②基本方針の実現に資する取り組み
当社グループは、大丸・松坂屋の創業以来、その企業理念、伝統精神である「先義後利(義を先にして利を後にする者は栄える)」、「諸悪莫作 衆善奉行(諸悪をなすなかれ、多くの善行を行え)」、「人の利するところにおいて、われも利する」に基づき、永年にわたって呉服商、百貨店業を営んでまいりました。
当社は、当社グループの企業価値の源泉は、これらの理念、精神に基づくことにより築き上げられてきた、お客様及び社会との信頼関係にあるものと考えております。
そこで、当社は、これらの理念、精神に共通する「お客様第一主義」、「社会への貢献」を体現するため、当社グループの基本理念として「時代の変化に即応した高質な商品・サービスを提供し、お客様の期待を超えるご満足の実現を目指す」、「公正で信頼される企業として、広く社会への貢献を通じてグループの発展を目指す」ことを掲げ、この基本理念に基づき、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の確保及び向上に資するため、当社グループのビジョンとして“くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”を掲げ、さまざまな施策に取り組んでおります。
③基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組み
当社は、現在のところ、大量取得者が出現した場合の具体的な取り組み、いわゆる買収防衛策について特にこれを定めてはおりません。
しかしながら、大量取得者が出現した場合には、当社グループの企業価値の毀損を防止するため、大量取得者の属性、大量取得行為の目的、大量取得者が提案する財務及び事業の方針、株主の皆さま及び当社グループのお客様・お取引先様・従業員・当社グループを取り巻く地域社会その他のステークホルダーに対する対応方針など、大量取得者に関するこれらの情報を把握した上で、当該大量取得行為が当社グループの企業価値に及ぼす影響を慎重に検討する必要があるものと考えます。
したがって、このような場合には、当社は、当社社内取締役から独立した立場にある社外取締役及び有識者をメンバーとする独立委員会を設置し、その勧告意見を踏まえた上で、当該大量取得者が前記の基本方針に照らして不適切な者であると判断されるときは、必要かつ相当な対応を講じることにより、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を確保する所存であります。
④具体的な取り組みに対する当社取締役会の判断及びその理由
当社グループで策定するさまざまな施策は、当社グループの基本理念に基づいて策定されており、当社グループの企業価値の源泉であるお客様及び社会との信頼関係のさらなる構築を目指すものであります。したがって、これらの施策は、基本方針の内容に沿うものであり、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資するものであると考えております。
また、基本方針に照らして不適切な者であると判断される大量取得者に対して必要かつ相当な対応を講じることについては、当社社内取締役からの独立性が確保されている独立委員会の勧告意見を踏まえて判断することにより、その判断の公正性・中立性・合理性が担保されており、当社グループの企業価値・株主共同の利益を損なうものではないとともに、当社の会社役員の地位の維持をその目的とするものではないと考えております。
「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成31年1月31日内閣府令第3号)による改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」第二号様式記載上の注意(31)の規定を当事業年度に係る有価証券報告書から適用しております。
(1)経営に重要な影響を及ぼすと想定されるリスク
<リスクの定義及び管理体制>
・リスクの定義
当社グループでは、リスクを「環境変化の中で組織の収益や損失に影響を与える不確実性」と定義しています。リスクには、プラス面(機会)、マイナス面(脅威)の両面があり、適切な対応により、企業の持続的な成長につながると考えています。
・リスク管理体制
代表執行役社長の諮問機関として、代表執行役社長を委員長、執行役などをメンバーとするリスクマネジメント委員会を設置しています。
同委員会には事務局を置き、リスク管理担当役員を事務局長とします。
事務局は、リスクマネジメント委員会で決定した方針や重要な決定事項を事業会社に共有し、グループ全体のリスクマネジメントを推進します。
当社グループでは、経営が、リスクを戦略の起点と位置づけ、リスクと戦略を連動させることで、リスク管理を企業価値向上につなげる取り組みの一つとして推進しています。
<リスクマネジメント委員会の具体的な活動>
当社グループでは、リスクマネジメント委員会において、環境分析をもとに、リスク(不確実性)を識別・評価し、優先的に対応すべきリスクの絞り込みを行い、「JFRグループリスク一覧表」として、グループ全体でリスク認識を共有しています。また、極めて重要度の高いリスクは、「企業リスク」としてリスクマネジメント委員会が対応方針を審議・決定し、「グループ戦略」に反映して対応しています。
<はじめに>
米中覇権争いをはじめとする地政学的緊張、甚大な被害を及ぼすようになった自然災害は前年から引き続き大きなリスクです。加えて、消費増税の消費への打撃、瞬く間に世界的な大流行となった新型コロナウイルス感染症が「ブラックスワン(予測不能で起きたときの衝撃が大きい事象)」として発現したことで、当社グループは、存続が危ぶまれるほど重大な危機に直面しています。
新型コロナウイルス感染症の影響は、当初の我々の想定をはるかに超え、当社グループの中核事業である小売事業の実店舗は、長期に渡り営業休止を余儀なくされています。現段階で新型コロナウイルス感染症が収束するまでに要する期間は見通せず、その間多くの顧客との繋がりが断たれていることに、非常に危機感を抱いています。このような環境の下、まずは、企業の存続の基盤を確固たるものとし、顧客や取引先企業からの派遣者を含む現場スタッフの安全・安心の確保、取引先企業との連携強化に努めています。
また、新型コロナウイルス感染症は、あらゆる側面で大きな転機になると捉えています。人々の消費に対する価値観や消費行動は変容し、それに伴い、小売業に求める価値も変化すると考えられます。また、急速に広まったリモートワークなどにより、将来に渡り働き方や生活が大きく変化していくと、企業としての雇用のあり方も見直す必要が生じると想定されます。商取引においては、サプライチェーンの寸断を受け、中国を始めとする特定地域への過度な依存からの脱却、強靭なサプライチェーンの再構築が求められます。さらに、人の流れが変わることにより、当社グループの実店舗と地域社会とのつながりにも、変化が生じてくるものと思われます。このような様々な環境変化から、多数の顧客を店舗に集客し、対面で販売するという従来の実店舗型小売業は、あり方の見直しを問われることとなり、ビジネスモデルの変革のスピードが増すと想定されます。
当社グループでは、このような状況をニューノーマル(新常態)として捉え、企業存続に向け、新型コロナウイルス感染症収束までの期間や影響などの違いによる複数のシナリオをもとに、従来の常識に捕らわれず、将来も顧客との繋がりが維持できる取り組みに着手しています。変化を先読みし、顧客の気持ちに寄り添い顧客との生涯に渡る繋がりを大事にするというビジネスの根幹は変えることなく、各事業において、既存のビジネスモデルの変革を進め、グループ全体の事業構造の見直しにもスピードを上げて取り組んでいきます。
当社グループでは、以下、13項目を有価証券報告書提出日現在において、投資家の皆さまの判断に影響を与える可能性がある主要なリスクとして、リスク認識及び対応策を記載いたします。
①感染症
・リスクの発現度合い・影響度・変化
しばらく影を潜めていた感染症のリスクは、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行として顕在化し、多くの人命が失われています。さらに、人やモノの流れの分断により実体経済が過去最大の打撃を受けるとともに、金融市場も混乱するなど、未曾有の危機に直面しています。感染症は、地球温暖化や生態系の変化との関連が示唆されており、持続可能な環境を取り戻さない限り、今後も頻度、影響度ともに引き続き増大し続けると見込まれます。B to Cが事業の中核である当社グループにおいて、その影響は極めて大きく、事業の存続を左右するほどのインパクトをもっています。
・マイナス面
感染症は、最も事態が深刻な場合、当社グループが有する顧客・従業員の人命損失につながります。また、今回の新型コロナウイルス感染症のように収束が遅れた場合には、長期間に渡り人やモノの流れが分断し、店舗の営業休止や営業時間短縮を余儀なくされるだけでなく、グループ各社の事業活動や従業員の働き方についても、平時からの抜本的な見直しが必要となります。さらに、長期間の外出自粛は、将来に渡り、消費者の価値観や消費行動を変容させる可能性があります。
・対応策
当社グループでは、新型コロナウイルス感染症拡大において、顧客や従業員の安全確保のため、営業休止や、営業時間の変更にいち早く取り組んでいます。これは、平時より、災害や感染症の発生に備えて、顧客や従業員の安全確保に向け、被害を極小化するための体制を整えていることが背景にあります。店舗閉鎖については、営業再開に向けた取引先企業との緊密な連携体制の構築や、代替のサプライチェーンの確保に努めています。また、消費者の価値観や消費行動の変容に備え、顧客との接点の持ち方など、ビジネスモデルの変革にも着手しています。
②災害
・リスクの発現度合い・影響度・変化
地球温暖化がもたらす気候変動の影響による台風・豪雨や、地震などの自然災害は、頻度、損害の規模ともに数年前から急速に増大しています。また、火災・停電などの事故も、顧客や従業員の人命を危機にさらし、事業の基盤であるインフラを脅かすという点で、当社グループの事業活動全体に、非常に大きな影響があります。
・マイナス面
自然災害は、最も事態が深刻な場合、当社グループが有する顧客・従業員の人命損傷につながります。また、電気・ガス・交通機関などインフラの寸断により事業活動が停止を余儀なくされ、復旧が長引くと、店舗の集客力が低下するなどの影響も生じます。火災・停電などの事故は、人命損傷や事業活動の一時停止につながる可能性があり、施設の改修などに多額の費用が生じます。
・対応策
当社グループでは、自然災害や火災・事故の発生に備え、平時より、老朽化したインフラへの投資、施設の定期的な点検、防災教育などを行っています。また緊急時に備え、具体的な行動レベルまで落とし込まれた事業継続計画を常備し、模擬訓練を行うとともに、災害備蓄品の整備などを進めています。システム停止への備えとしては、データのクラウドへの移行、決済を中心とする重要データを処理するバックアップセンターの設置などにより、店舗の営業に差支えが生じないよう努めています。
③テクノロジーの進化
・リスクの発現度合い・影響度・変化
5Gの商用開始、ビッグデータの利活用の拡大、AIの解析精度向上など、テクノロジーの世界は目覚ましいスピードで進化しています。この進化により、業界の垣根を破壊するディスラプターが相次いで登場し、消費者のライフスタイルや消費行動も大きく変化しつつあります。新型コロナウイルス感染症の長期に渡る流行は、この流れを加速させると思われ、今後数年の間に小売りをはじめとする当社グループの既存事業にますます大きな影響を与えると想定されます。
・マイナス面・プラス面
IT専門人財の不足や組織体制の未整備により、テクノロジーを活用することができなければ、マーケティングの高度化や生産性の向上が遅れます。加えて、新型コロナウイルス感染症のように外出自粛が長引く事態が発生した場合には、消費行動がオンラインショッピングにシフトするなど、既存事業の競争力が低下します。一方で、ビッグデータやAIを利活用できれば、新たな顧客サービスの提供や業務変革が可能となります。
・対応策
当社グループでは、複数の事業の顧客データを統合したデータベースを構築し、スマートフォンアプリを通した顧客との新たなコミュニケーション、マーケティング、販売の高度化に着手しています。今後はそれをさらに推進するとともに、リニューアルした「渋谷PARCO」で展開しているXR(VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・MR(複合現実)の総称)技術など最新テクノロジーを活用した、新たな顧客体験の提供にも力を入れ、リアル店舗の魅力を高めていきます。業務変革については、定型業務へのRPA導入、テレワーク、Web会議の拡大など、順次、生産性向上につながる取り組みを推進しています。
④シェアリングエコノミーの進展
・リスクの発現度合い・影響度・変化
消費者の所有から利用へのシフトは、欧州に端を発したサーキュラーエコノミーという大きなうねりを受け、緩やかに、しかしながら、確実に進んでいます。日本においても、新型コロナウイルス感染症を機に、環境への配慮から、使い捨て文化への見直しが進むと思われます。今後、ますます大きくなるシェアリングエコノミーの波は、当社グループの中核である小売事業に、中期的に非常に大きな影響を与えると想定されます。
・マイナス面・プラス面
新興企業によるシェアリング市場の領域拡大や、C to C(企業を介さない消費者同士のモノやサービスなどの取引)の台頭は、従来の購買行動に加え、購買を前提としない多様な消費行動の拡大を促進します。一方で、消費者の変化を機会と捉え、当社グループ自らがシェアリングを切り口とした事業への参入を図ったり、既存事業において3R(リユース、リデュース、リサイクル)を進め循環型社会の実現を目指すことで、新たな需要を創造することが可能となります。
・対応策
複数の事業を展開する当社グループは、優良な顧客基盤、購買情報をはじめとするビッグデータを有しており、これらを活用して、マルチサービスリテイラー(既存の小売業の枠を超え、サービスも含め顧客の幅広いニーズに対応することを目指す)戦略を推進しています。シェアリングについても複数の新規事業の創出を検討しており、所有から利用へとシフトする顧客ニーズに柔軟に対応しようと取り組んでいます。また、パルコ事業において、クラウドファンディングの取り組みを強化し、地域活性化につながるサービスの創出を支援しています。加えて、小売店舗では、不要な衣料品の回収およびリサイクルや、フードロス削減を推進し、循環型社会に貢献しています。
⑤ESGの重要性向上
・リスクの発現度合い・影響度・変化
ガバナンス・環境・社会の3つの課題への対応は、今や必須のものとして、その重要性も急速に増しており、ESGの取り組みにより企業がステークホルダーから峻別される時代となっています。新型コロナウイルス感染症を機に、持続可能な社会への取り組みが進展すると見込まれており、ESGは、中長期的に当社グループの企業価値やレピュテーション、資金調達に非常に大きな影響を与えると想定されます。
・マイナス面・プラス面
ESGの取り組みは、今まで以上に社会的価値と経済価値を両立するCSV(共通価値の創造)の実現度合いで評価されるようになっています。ESGの推進には長い期間やコストがかかるため、CSVが思うように実現できなければ、ステークホルダーから評価されない可能性があります。一方で、消費者の持続可能な社会への関心の高まりに訴求する新たな商品やサービスを提供できれば、売上やレピュテーションが向上し、資金調達面でもプラスの効果をもたらします。
・対応策
当社グループでは、設定した5つのマテリアリティ(※)をもとに、CSVの実現に向け、様々な取り組みを推進しています。E(環境)については、全社で再生可能エネルギーへの切り替えを精力的に進め、不要な衣料品の引き取りや環境に配慮した包装資材への変更、フードロス削減など、顧客及び地球への負担の低減に努めています。E(環境)S(社会)両方に関連する取り組みとしては、当社グループの姿勢を示した「お取引先様行動原則」「JFR行動原則」を制定し、取引先企業への説明会、社内サイトでの従業員への周知を行い、ステークホルダーとともに、環境や人権に配慮した営業活動や店舗を核とした地域社会への貢献を推進しています。これらの取り組みを支えるコーポレートガバナンスについては、指名委員会等設置会社として、複数の独立社外取締役を選任して経営監督機能を強化し、透明性の高い経営を実現しています。これら一連の取り組みは、「サステナビリティレポート」に集約し、社外に開示するとともに、社内浸透の強化を図っています。
※「低炭素社会への貢献」「サプライチェーン全体のマネジメント」「地域社会との共生」「ダイバーシティの推進」「ワークライフバランスの実現」
⑥既存事業の成熟から衰退への移行
・リスクの発現度合い・影響度・変化
当社グループの中核事業である小売事業を中心とする既存事業の成熟は、デジタル化による消費者のライフスタイルや消費行動の変化により、そのスピードが加速しています。テクノロジーの進化、新型コロナウイルス感染症の長期化により、ここ数年でさらに既存事業の成熟から衰退への移行が進むと見込んでおり、小売事業をはじめ当社グループ全体の業績に非常に大きな影響を与えると想定されます。
・マイナス面・プラス面
新型コロナウイルス感染症で加速する消費者のライフスタイルや消費行動の変化への対応が遅れると、既存事業のビジネスモデルの陳腐化から、顧客離れを招きます。一方で、ECでは得られない実店舗ならではの購買や接客体験を見直す機運が高まりつつあることを踏まえ、当社グループが有する都心の実店舗の変革を加速することにより、既存顧客の満足度が向上するとともに、新規顧客の獲得による持続的な成長が望めます。
・対応策
当社グループでは、順次、既存店舗のリニューアルを進めており、11月には、「大丸心斎橋店本館」「渋谷PARCO」をリニューアルオープンしました。「大丸心斎橋店本館」では、収益分析をもとに、従来の売仕契約と定期借家契約の最適化を図った新たなビジネスモデル(革新的ハイブリッド型ビジネスモデル)に取り組んでいます。「渋谷PARCO」では、EC併設のオムニチャネル型売場、バーチャル(仮想)展示など、最新テクノロジーを活用した新たな店舗づくりに挑戦しています。今後も商圏や顧客の特性を踏まえ、既存店舗のビジネスモデルの変革に取り組むとともに、当社グループの金融事業と連携し、キャッシュレス決済など消費行動の変化にも対応していく予定です。
⑦取引先の転換
・リスクの発現度合い・影響度・変化
当社グループの中核事業である小売事業では、テクノロジーの進展を背景に、従来の優良取引先企業のECシフト、実店舗からの撤退が進んでいます。また、少子高齢化に伴う国内市場の縮小を背景に、倒産・廃業も増加しています。新型コロナウイルス感染症の発生による営業休止を受け、買取・売仕など従来の百貨店型取引形態である取引先企業の業績は大幅に悪化しています。加えて、業績が悪化した定期借家契約の取引先企業からは賃料の減額要請を受けています。このような状況から、撤退や倒産・廃業の波は、今後数年の間に急速に増大し、小売事業の業績に非常に大きな影響を与えると想定されます。
・マイナス面・プラス面
優良取引先企業の撤退・倒産・廃業は、当社グループの小売店舗の品揃え、魅力の低下につながります。一方で、これを取引先政策転換の契機と捉え、顧客データの分析などにより既存取引先企業の営業施策を支援したり、新たな取引先企業の開拓による品揃えの向上につなげることができれば、既存事業の持続的な成長が可能となります。
・対応策
当社グループでは、既存取引先と共同で、最新テクノロジーを活用した次世代型店舗や、物販とサービスの複合店の開発を進めています。また、消費行動の変化を踏まえ、ライフスタイル全般において新規事業の創造を行っている企業を新たな重点取引先企業と位置づけ、開拓を強化しています。さらに、社会との共生を切り口とした施設・サービスの導入や、店舗を核とした周辺エリアの活性化に寄与するイベントの開催を行い、幅広い顧客層の集客に努めています。
<コロナショックが与える金融への影響>
新型コロナウイルス感染症の拡大は、「深刻さ」と「長期化」の両面で景気を後退させ、経済は重大な危機に直面しています。この経済危機が実体経済を支える金融システムにも影響を与えることになれば、「コロナショック」は「金融危機」へと変異拡大するリスクを秘めています。
最新の「国際金融安定性報告書(GFSR)」によると、金融システムはすでに一定の影響を受けているとされていますが、実体経済の落ち込みが長期化した場合には、金融面の本格的な調整が起き、「経済危機⇒資金流出⇒信用収縮⇒流動性低下」という「負の連鎖」を生じ、経済活動の萎縮を増幅する致命的な状況を産み出すことになります。
「コロナショック」による実体経済の影響は、過去に日本を襲った4つの危機、「世界恐慌」「オイルショック」「バブル崩壊」「リーマンショック」に匹敵、あるいは上回るものですが、危機管理の観点では、1997年に起きた「アジア通貨危機」を想起させます。
金融市場においては、為替、金利、株式の各市場が乱高下を続け、混迷を深める状況が発生しています。さらに、原油価格の下落に伴い、産油国が発行する長期債の価格が大きく下落しています。さらに、コマーシャル・ペーパーなど短期資金調達市場の逼迫、金融資産価格の変動性の急上昇、企業の信用スプレッドの急拡大が表出し始めています。
現在までに、各国中央銀行が融資や資産買入れを始めとする流動性供給の拡大計画を発表したことから、一部の市場に見られた緊張は多少和らぎ、資産価格も回復傾向にあります。しかし、市場のマインドは引き続き脆弱であり、世界の金融市場は年初に比べて大幅に縮小したままです。
景気後退が深刻化し長引くことになれば、世界の金融環境は一層悪化することになります。その結果、近年の超低金利環境において蓄積された金融脆弱性が露呈することとなり、「コロナショック」は「金融危機」を通じて、小売・サービス事業、その取引先である製造事業の業績悪化に拍車をかけることになると想定されます。
⑧資金調達
・リスクの発現度合い・影響度・変化
当社グループは、出店・改装などの設備投資、M&Aなどに要する資金を、金融機関からの借入に加え、社債、コマーシャル・ペーパーなど金融市場から、直接調達しています。新型コロナウイルス感染症の影響から、多数の企業が財務の安定性を確保するために、従来とは次元の異なる規模で資金調達を実施しようとしています。その結果、金融市場は急激に不安定さが増しています。このような環境下において、当社グループにおいても、的確な資金調達により、事業の安定性、継続性を担保することが当面の最重要課題であり、ひいては将来の成長に非常に大きな影響を与えると想定されます。
・マイナス面・プラス面
金融機関による貸付枠や信用供与枠などの条件変更や当社グループの信用格付の大幅な引き下げ、あるいは、投資家の投資意欲の減退や市場環境の悪化が生じた場合、適時に適切な条件で必要な資金を調達できない可能性があります。一方で、効率的・効果的な資金調達ができると、積極的な事業投資により、当社グループの持続的な成長が可能となります。
・対応策
当社グループでは、事業年度毎に資金調達方針を定め、間接金融と直接金融、並びに短期調達と長期調達の適正なポートフォリオの構築に取り組んでいます。また、適切な金利水準による資金調達を実施するために、市場動向の把握や最適な調達手段の選択を行い、支払利息の削減につなげています。急激な金融市場の変動への備えとしては、日頃から金融機関、格付機関、債券投資家と良好な関係を築き、金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパーの発行を計画的に行うとともに、コミットメントラインなどの資金調達枠を十分に確保することにより、不透明な調達環境下でも、適切に資金調達ができる体制を整えています。さらに、ESGを重視した経営を行うことで、効率的・効果的な資金調達に努めています。
特に、新型コロナウイルス感染症の影響拡大に対しては、資金確保が最重要課題であるとの認識の下、リスクシナリオを設定し、その対応を迅速かつ的確に実践していきます。
⑨為替の変動
・リスクの発現度合い・影響度・変化
新型コロナウイルス感染症の全世界的な流行を機に、安定していた為替相場は、急速に変動幅が大きくなっています。為替の変動は、当社グループの中核事業である小売事業におけるインバウンド売上、並びに一部事業での原材料や商品調達を左右し、当社グループの収益性に大きな影響を与えます。
・マイナス面・プラス面
円高が進行した場合、中国をはじめとする訪日客数が減少し消費意欲も減退する一方、一部事業での原材料や商品の仕入れコストが低下します。逆に円安が進行した場合、訪日客数が増加し高額消費が活発化する一方、一部事業での原材料や商品の仕入れコストが増加します。
・対応策
当社グループでは、為替の変動に備え、インバウンドについては商圏拡大という発想で、中国依存からの脱却(幅広いアジア圏のマーケット開拓)や、外国人富裕層の固定客化を推進し、円高による外国人マーケットの落ち込みを低減しています。また、原材料や商品の調達の一部については、実需に基づく為替予約取引の活用や、海外の商品調達先を分散するなどの対策を講じています。
⑩株式相場の変動
・リスクの発現度合い・影響度・変化
米中貿易戦争の長期化に加え、新型コロナウイルス感染症が世界経済に大打撃を与えており、将来に対する見通しが立たない環境下において、株式相場は乱高下しています。株式相場の急激な変動は、株式を保有する当社グループの中核事業である百貨店顧客および当社グループの財務状況に大きな影響を与えます。
・マイナス面・プラス面
株式相場が下落すると、百貨店顧客の名目的な資産減少から消費マインドの低下を招きます。また、当社グループも株式を保有していることから、親会社の所有者に帰属する持分、年金資産が減少します。一方で、株式相場が上昇すると、百貨店顧客の高額消費が活発となり、業績の向上につながるとともに、親会社の所有者に帰属する持分、年金資産が増加します。
・対応策
当社グループでは、株価下落時でも急激に顧客の消費が落ち込まないよう、常日頃から、テクノロジーを活用したコミュニケーションツールや手厚い人的サービスなど、顧客特性に応じた方法で顧客との絆を強め、需要を喚起する対策を講じています。また、自己株式の取得による株価の維持、資産全体に占める株式の割合を適正に保つことにより、財務の安定化を図っています。さらに、当社グループが保有する国内企業の株式などの有価証券については、保有合理性のあるもの以外を削減することにより、株式相場の変動による資産価値の変動を低減しています。
⑪減損
・リスクの発現度合い・影響度・変化
事業活動上、当社グループが保有または賃借している、店舗用土地・建物を始めとする事業用固定資産は、財政状態計算書に計上しています。競合などの環境変化による事業用固定資産の収益性の低下や、地価の下落などの不確実性は常に大きく、これらに直面した場合、減損を認識しなければなりません。新型コロナウイルス感染症の影響が長引いた場合、店舗収益の悪化や、事業用固定資産の市場価格の大幅な下落により減損リスクが高まっていくと認識しており、当社グループの財務状況に非常に大きな影響を与えると想定されます。
・マイナス面・プラス面
減損損失の計上は、当社グループの財務状況の悪化ばかりでなく、顧客や地域社会をはじめとするステークホルダーからの評価の低下、ひいては、当社グループのブランド力低下につながります。一方で、収益性と資産価値の整合が取れ、事業の評価が適正化されることにより、将来の事業ポートフォリオの検討、変革へ結びつけることができます。
・対応策
当社グループでは、減損すると影響が大きい一定金額以上の投資案件について、投資計画検討委員会において、損益計画の妥当性、投資回収の実現性を審査しています。具体的には、案件特有のリスクを反映したプランを含む複数のプランを検証し、投資判断に誤りが生じないよう努めています。また、不測の事態を避けるため、再生計画検討委員会において、減損の生じる可能性について定期的に検証し、再生計画に基づき、業績の回復に努めています。
⑫情報管理
・リスクの発現度合い・影響度・変化
テクノロジーの進化と並行して、サイバー攻撃の手法は、数年前から急速に高度化しています。また、スマートフォンの進化と利用拡大により、顧客情報を狙った不正アクセスなども急増しており、扱う情報量に比例して情報管理のリスクは高まっています。リスクが発現した場合、当社の信頼性や企業イメージへの大きな影響が想定されます。
・マイナス面
当社グループが有する多数の顧客情報および営業機密、並びに他企業から受け取る機密情報が、不正または過失により外部に流出した場合、当社グループの社会的な信用が失墜するとともに、損害賠償など多額の費用負担が発生します。
・対応策
当社グループでは、基本方針・基本規程・ガイドラインなどからなる「JFRグループ情報セキュリティポリシー」を制定し、ハード・ソフト両面からセキュリティ強化に取り組んでいます。サイバー攻撃の高度化、多発に備えて、本年度は、情報システムセキュリティ強化や、全従業員対象の訓練や教育の増強など、専門部署によるグループ各社への支援をより一層強化しています。知的財産については、専門部署による管理を徹底し、財産の保護に努めています。
⑬法規制及び法改正
・リスクの発現度合い・影響度・変化
マルチサービスリテイラー戦略に基づき複数の事業を展開する当社グループは、常に様々な法規制・法改正に注意を払い、適切に対応することが求められています。特に近年は、当社グループの各事業活動で制限や対応の義務が生じうる働き方改革、個人情報関連などでの法改正が増えており、引き続き当社グループの事業の安定運営、信用に大きな影響を与えると想定されます。
・マイナス面
法規制により事業活動が制限を受ける場合、ビジネスの転換や縮小を招きます。また、法規制・法改正への対応には、常に新たなコストが発生します。さらに、当社グループが十分に注意を払っているにも関わらず法違反が生じた場合、処罰を受けるとともに、企業の信用低下につながります。
・対応策
当社グループでは、第一に担当部署が中心となり、適宜外部の専門家を活用しながら、専門部署がサポートすることで、法を遵守しています。法改正に関する動向については、専門部署が網羅的に情報収集を行い、当社グループと関わりの深いものについては、経営層並びに各事業会社へ情報を共有しています。また、経営層および全従業員を対象としたコンプライアンス研修や内部通報制度の強化により、コンプライアンス風土の醸成や、法違反の未然防止に努めています。
<主要リスク一覧>
(2)気候変動への対応とTCFD提言に沿った情報開示
JFRグループでは、気候変動をサステナビリティ経営上の最重要課題であると捉え、気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識しています。当社グループは、2018年、優先して取り組むべき5つのマテリアリティを特定し、その一つである「低炭素社会への貢献」を最重要課題と位置づけ、コーポレートガバナンス機能の継続的な強化を通じて中長期の目標達成に向けた実行計画の立案等、全社的な取り組みを進めています。
また、当社グループは2019年5月、金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD, Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の最終報告書(TCFD提言)に賛同しました。当社グループは、「低炭素社会への貢献」に向けてエネルギー消費量の削減、使用効率化、再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組むとともに、TCFD提言に沿った情報開示のさらなる拡充を図ってまいります。
<ガバナンス(環境課題に対するガバナンス)>
JFRグループでは、気候変動への対応を含む「低炭素社会への貢献」をサステナビリティ経営上の最重要課題と認識し、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、2019年度に「サステナビリティ委員会」を設置しました。「サステナビリティ委員会」では、当社グループの環境課題に対する実行計画の策定と進捗モニタリングを行っており、取締役会ではサステナビリティ委員会で論議・承認された内容の報告を受け、環境課題に関する長期目標や取り組み施策の決議および進捗についての論議・監督を行っています。
また当社グループでは、環境課題に関する具体的な取り組み施策について、業務執行の最高意思決定機関である「グループ経営会議」で協議しており、決議事項は取締役会へ報告されます。「グループ経営会議」の長を担う代表執行役社長は、直轄の諮問委員会である「リスクマネジメント委員会」および「サステナビリティ委員会」の委員長も担うことにより、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っています。取締役会による監督体制のもと、環境マネジメントにおけるガバナンスの強化を進めています。
・環境マネジメント体制図
①取締役会:業務執行において論議・承認された環境課題に関する取り組み施策の進捗を監督。毎月開催。
②グループ経営会議:環境課題に対する具体的な取り組み施策を含む全社的な経営に係る施策について協議。決議事項は取締役会へ報告。毎週開催。
③リスクマネジメント委員会:経営の観点から環境課題を含む包括的なリスクを抽出し、対策を検討。決議事項は取締役会へ報告。都度開催。
④サステナビリティ委員会:グループ全体のサステナビリティ経営を推進するため、グループ経営会議で協議された環境課題へのグループ対応方針を決議、共有。環境課題に関する長期計画とKGI/KPIの策定、各事業会社の進捗状況のモニタリングなどを実施。決議事項は取締役会へ報告。半期に一度開催。
⑤ESG推進部:全社的な環境課題への対応を推進。気候変動を中心とする環境関連情報を収集し、グループ経営会議やサステナビリティ委員会、リスクマネジメント委員会へ報告。
<リスク管理>
JFRグループでは、リスク(不確実性)を戦略の起点と位置づけ、全社的に管理する体制を構築することが重要であると考えています。リスク管理を企業価値向上につなげる取り組みの一つとして、代表執行役社長直轄の諮問機関である「リスクマネジメント委員会」を設置しています。「リスクマネジメント委員会」では外部環境分析をもとに、リスクを識別・評価し、優先的に対応すべきリスクの絞り込みを行い、当社グループでリスク認識を共有し「グループ戦略」に反映して対応しています。
また、2019年度に設置された「サステナビリティ委員会」では、リスクマネジメント委員会で特定したリスクのうち、環境課題に係るリスクについて、より詳細に検討を行い、各事業会社と共有化を図っています。各事業会社では、気候変動の取り組みを実行計画に落とし込み、各事業会社社長を長とする会議の中で論議しながら実行計画の進捗確認を行っています。
その内容について、当社グループの業務執行の最高意思決定機関と位置づける「グループ経営会議」や代表執行役社長直轄の諮問会議である「リスクマネジメント委員会」および「サステナビリティ委員会」において、進捗のモニタリングを行い、最終的に取締役会へ報告を行っています。
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・リスク管理プロセス |
・リスク管理体制 |
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<戦略>
JFRグループでは、気候変動が当社グループに与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、および2030年時点の世界を想定した当社グループの戦略のレジリエンスとさらなる施策の必要性の検討を目的に、シナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上(※)、パリ協定の目標である「産業革命前からの全世界の平均気温の上昇を1.5~2℃未満に抑える」ことを想定したシナリオおよび国別約束草案(NDC, Nationally Determined Contribution)を含む各国の気候関連の政策目標がすべて達成されることを想定したシナリオ(3℃シナリオ)の2つの世界を想定しました。
最重要マテリアリティである「低炭素社会への貢献」の実現に向け、当社グループの事業活動について上記シナリオを前提に、気候変動がもたらす影響を分析し、その対応策を検討し、当社グループの戦略レジリエンス(強靭性)を検証しています。
※参照した既存シナリオについて
(1.5~2℃未満シナリオ)
・「Below 2 Degree Scenario(B2DS)」(IEA、2017年)
・「Sustainable Development Scenario(SDS)」(IEA、2019年)
・「Representative Concentration Pathways (RCP2.6)」(IPCC、2014年)
(3℃シナリオ)
・「Stated Policy Scenario(STEPS)」(IEA、2019年)
・「Representative Concentration Pathways (RCP6.0)」(IPCC、2014年)
各シナリオにおける当社グループのリスク・機会とそれらに伴う事業/財務影響の概観は下記の通りです。なお、事業/財務への影響の大きさは表中の矢印の傾きを3段階で定性的に表示しています。
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:当社グループの事業/財務への影響が非常に大きくなることが想定される |
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:当社グループの事業/財務への影響がやや大きくなることが想定される |
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:当社グループの事業/財務への影響は軽微であることが想定される |
・2030年時点を想定した1.5~2℃未満シナリオおよび3℃シナリオにおける当社グループの事業/財務への影響
当社グループでは、2030年時点を想定した財務への影響のうち、特に日本国内における炭素税
(※)の導入および再生可能エネルギー由来の電気料金の変動が、重要なパラメータ(指標)になると考えています。そのため、この2つのパラメータについて、1.5~2℃未満シナリオおよび3℃シナリオにおける当社グループへの財務影響を定量的に試算しています。
※気候変動の主な原因である二酸化炭素(CO2)の排出に課される税
(前提条件)
・2030年時点のJFRグループ温室効果ガス排出量は、削減目標の基準年である2017年度比で削減率40%を達成した結果、116,492t-CO2と想定。(参考:2017年度実績:194,154t-CO2)
・IEAの既存シナリオに基づき、2030年時点における先進国の炭素税価格は、1.5~2℃未満シナリオでは$100/t-CO2、3℃シナリオでは$33/t-CO2と想定。(参考:$1=100円換算)
・2030年時点のJFRグループ再生可能エネルギー由来の電気使用量は、総電気使用量に占める再生可能エネルギー比率50%を達成した結果、164,450MWhと想定。なお、2030年時点の総電気使用量は、2018年度実績と同量と想定。(参考:2018年度総電気使用量実績:328,900MWh)
・再生可能エネルギー由来電気の実勢価格および2030年時点の社会・制度動向の予測をふまえ、再生可能エネルギー由来の電気料金は、それ以外の電気料金と比較して1~4円/kWhの価格高と想定。(参考:2019年度当社グループ再生可能エネルギー由来電気の購入実績:関西エリア+2円/kWh、関東エリア+4円/kWh)
上記をふまえ、当社グループでは、下記の取り組みを軸とした活動を強化・推進していきます。
・1.5~2℃未満シナリオの実現に向けた、事業活動に伴う温室効果ガス排出量(Scope1,2 排出量※)の削減
・1.5~2℃未満シナリオの実現に向けた、省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの活用の推進
・1.5~2℃未満シナリオの実現に向けた、サプライチェーン・プロセスにおける温室効果ガス排出量(Scope3 排出量※)の削減
※Scope1 排出量:事業活動からの直接排出量(燃料使用に伴う直接排出量)
Scope2 排出量:事業活動からの間接排出量(電気・熱の使用に伴う間接排出量)
Scope3 排出量:その他当グループが影響を及ぼす間接排出量(サプライチェーンにおける排出量)
・気候変動に伴う物理リスクへの対応策の強化による強靭なサプライチェーンの実現
・店舗を核としたCSVへの取り組みを通したサステナブルな店作りの実現による地域社会への貢献
・サーキュラーエコノミーへの取り組みによる新しいビジネス機会の実現
・消費者の消費行動の変化に対応した低炭素製品・サービスへの積極的対応
<指標と目標>
JFRグループでは、1.5~2℃未満シナリオの実現に向けた上記戦略に基づき、中長期温室効果ガス排出削減目標を設定しています。また、当社グループの中期温室効果ガス排出削減目標は、SBT(Science Based Targets)の認定を受けています。
当社グループでは、上記目標の達成のために各年度目標を設定するとともに、その達成のための施策ミックス(省エネルギー、再生可能エネルギー由来電気の調達、省エネ設備の導入など)を計画し、温室効果ガス排出量削減を推進していきます。
また、投資家をはじめとするステークホルダーの皆様に対し、当社グループの温室効果ガス排出量の正確性・透明性を確保するため、「Scope1,2 温室効果ガス排出量算定・集計ルール」を策定し、2017、2018年度Scope1,2 エネルギー使用量および温室効果ガス排出量について第三者保証を取得しています。今後は、第三者保証取得の範囲をScope3 に拡大し、サプライチェーン全体においても、温室効果ガス排出量の着実な削減に向けて取り組んでまいります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
① 当期の経営成績
当連結会計年度の日本経済は、海外経済の減速や自然災害などの影響から、輸出・生産が伸び悩み、設備投資や国内需要の減少など景気回復が鈍化するなか、年度終盤において企業の生産や設備投資、消費など内外経済の不確実性が急速に高まり、不安定な状況となりました。個人消費は、雇用・所得環境は堅調に推移したものの、消費税率引き上げに伴う消費低迷の長期化などにより力強さを欠いたことに加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、インバウンド消費、国内消費ともに落ち込み、年度終盤において悪化いたしました。
このような状況のなか、当社グループは、グループビジョンの実現、事業ポートフォリオの変革に向けた「2017~2021年度 中期経営計画」の3年目の取り組みとして、以下5つの成長戦略及び基盤強化戦略に取り組みました。とりわけ今年度は、新たな百貨店ビジネスモデルを具現化した「大丸心斎橋店本館」、次世代型商業空間を創造する「渋谷パルコ」の大型再開発プロジェクトを完成させました。
当社グループを取り巻く経営環境は大きな変化に直面しており、当社とパルコの企業価値・ブランド価値のさらなる向上には、日々変化する消費者ニーズを的確に捉えていくことが求められます。今後、当社グループとしての抜本的かつ機動的な事業ポートフォリオの変革を、迅速な意思決定のもとスピード感をもって推進するには、両社の連携をさらに深め、経営資源を集中していく必要があることから、パルコ株式の公開買付けおよび株主売渡請求を行い、結果、パルコの完全子会社化を実施いたしました。これらにより、グループシナジーを最大化し、グループビジョン“くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”の実現に向け、グループ構造変革への取り組みを加速させてまいります。
「マルチサービスリテイラー戦略」では、既存事業領域の拡大への取り組みとして、クレジット金融事業において7月にVISAやマスターカードのライセンスを取得し、当社グループ内でのアクワイアリング(加盟店契約)事業の実施に向け、環境整備を進めたほか、2020年秋に導入予定の新ポイントプログラムや付帯サービス等を刷新する既存カードのリニューアルに取り組みました。また、新規事業領域の拡大への取り組みとして、「物やサービスなどを所有ではなく共有する」という価値観が進展するなか、これらのリスクに対応するため、ファッションレンタル事業のマーケット理解と参入への検討を進めました。
「アーバンドミナント戦略」では、GINZA SIX(ギンザ シックス)や上野フロンティアタワーに次ぐ、大型エリア再開発プロジェクトである大丸心斎橋店本館を9月に、渋谷パルコを11月に完成させたほか、京都・上野エリアにビューティー&ヘルスをコンセプトとする商業施設「BINO(ビーノ)」を2店舗オープンさせるなど、基幹店舗を中心とした周辺開発に取り組みました。また、上野・名古屋・神戸エリアで百貨店とパルコの共同プロモーションやエリア活性化イベントを開催したほか、地域の大学と共同で次世代支援や地域振興などに向けて連携するなど、街の魅力度向上に努めました。
「IoT時代におけるICT戦略」では、顧客データをグループの共通資産として統合的に活用し、お客様のライフタイム・バリューの最大化(※)を目指す「ライフタイム・サービスHUB構想」の推進基盤となる統合データベースの構築に取り組みました。あわせて、グループ各社のセキュリティ管理やビジネス戦略のデジタル化に迅速かつ柔軟に対応できるクラウド環境の構築などに取り組みました。(※お客様一人ひとりのライフステージに応じた商品サービスの提供を通じて、顧客との生涯にわたる関係をより強固にし、顧客価値を最大化していくこと)
「既存事業の革新」では、百貨店事業では、大丸心斎橋店本館において従来の百貨店にはない斬新なフロア構成により、成長性と収益性を兼ね備えた新たな百貨店ビジネスモデルを具現化させるとともに、マーケット変化に対応した新たな売場開発を各店において推進しました。また、下関大丸、大丸芦屋店をはじめ地方・郊外店舗の構造改革を着実に推進しました。創業50周年を迎えたパルコでは、体験型コンテンツの拡充やファッションの再提案、ICTを活用した未来型の売場づくりなど、パルコブランドの新たな魅力を表現した次世代型商業施設「新生・渋谷パルコ」を開業させました。また、錦糸町パルコ、サンエー浦添西海岸 PARCO CITY、川崎ゼロゲートを開業するなど多様な業態開発を着実に推進しました。
「ESGへの取り組み」では、「低炭素社会への貢献」など5つの重要課題の解決に向けた全社的な取り組みを推進しました。ESG推進のフラッグシップ店舗である大丸心斎橋店本館では、館内で使用する全ての電力を再生可能エネルギーに切り替えたほか、大丸松坂屋百貨店では、2019年に策定した「JFRお取引先様行動原則」について、ESG活動の協同推進に向けたお取引先様への説明会を初開催いたしました。これらの取り組みの結果、気候変動調査など外部機関によるESGに係る認定や評価が向上しました。(ESG:環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))
グループ人事改革においては、持続的な成長実現に向けた人財開発企業を目指し、新たな価値を生み出す“人財力”を基軸とする人財マネジメントの再構築を図るため、創造と挑戦を引き出す人事制度改正を推進したほか、専門人財の採用、またシニア活躍の観点から各社において65歳への定年延長を推進しました。
グループ財務戦略においては、資本効率の高い経営体質の構築を目指すB/S視点の経営管理の推進による資産効率の向上に取り組みましたほか、国際会計基準(IFRS)に基づく新リース会計基準に着実に対応いたしました。また、投資家の皆様との対話機会の充実を目的に「事業戦略説明会」を初開催いたしました。
グループ業務システム革新においては、情報セキュリティの強化や、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の拡大によるグループ後方業務を中心とした業務自動化の推進、生産性向上に向けたビジネスツールの導入など、経営効率の向上に努めました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、当期の連結業績は、消費税率引き上げによる消費低迷の長期化や自然災害・暖冬影響に加え、新型コロナウイルス感染症の影響等がありましたものの、売上収益は渋谷再開発における保留床売却等により前年に比べ4.5%増の4,806億21百万円となりましたが、営業利益は1.5%減の402億86百万円、税引前利益は11.8%減の371億61百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は22.3%減の212億51百万円となりました。また、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は5.4%(対前年1.4pt減)、親会社所有者帰属持分比率は31.2%(同8.9pt減)となりました。
なお期末配当金につきましては、1株あたり18円とさせていただきました。この結果、中間配当金18円と合わせた年間配当金は1株につき36円となり、9年連続の増配となりました。
セグメント業績
<百貨店事業>
9月に建て替えオープンした大丸心斎橋店本館は、強みである富裕層や訪日外国人客への対応を強化しながら、“生活を積極的に楽しむすべてのお客様”をターゲットに、世界と未来に向け進化する百貨店へと生まれ変わりました。
新顧客戦略の展開では、顧客基盤の拡大に向け、5月末に「大丸・松坂屋アプリ」を展開いたしました。また、拡大する富裕層マーケットに対応するため、新規口座開拓に継続して取り組むとともに、新たな外商ビジネスモデルの展開に向け、ICTを活用した業務支援システムの整備や新たな組織体制の構築に取り組みました。
以上のような諸施策に取り組みましたものの、自然災害の発生に伴う営業時間短縮や休業、消費税率引き上げによる消費低迷に加え、新型コロナウイルス感染症の影響などから、前年に比べ売上収益は4.2%減の2,637億48百万円、営業利益は27.2%減の176億25百万円となりました。
<パルコ事業>
新しい消費体験・価値観を提供する唯一無二の次世代型商業施設として新生・渋谷パルコを11月に開業いたしました。また、リノベーション型の開発物件である「錦糸町パルコ(3月)」、株式会社サンエーとの共同事業による「サンエー浦添西海岸 PARCO CITY(6月)」、「川崎ゼロゲート(8月)」を開業し、多様な業態開発手法に基づく不動産開発を推進いたしました。パルコ店舗では、デジタル環境の進化や消費志向の変化を捉え、優待方法を割引からポイントサービスに変更するなど、顧客起点でのビジネスモデル変革を進める体制を整え、新たなテナント開発や顧客接点拡大・満足度向上に向けたコミュニケーション強化に取り組みました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、一部のパルコ既存店舗や事業などが苦戦したものの、新たに開業した錦糸町パルコや新生・渋谷パルコなどの貢献、渋谷再開発における保留床売却等により、前年に比べ売上収益は24.7%増の1,122億12百万円、営業利益は前年度において店舗営業終了に伴う損失やその他店舗の減損損失などを計上した反動もあり、98.7%増の108億23百万円となりました。
<不動産事業>
アーバンドミナント戦略における重点エリア(上野、名古屋、京都、心斎橋、神戸)を中心に、賃貸床面積の拡大による不動産賃貸事業の強化に取り組みました。具体的には、京都烏丸エリアに「BINO東洞院(4月)」を、松坂屋上野店第二別館跡地に「BINO御徒町(12月)」を新たにオープンしたほか、心斎橋エリアで「DAIMARU WHITE AVENUE(大丸 ホワイトアベニュー)」を改装(11月)するなど、周辺店舗開発を着実に推進しました。
以上のような諸施策への取り組みや、2017年度に開業したGINZA SIXが堅調に推移したことなどにより、前年に比べ売上収益は4.7%増の177億93百万円となりました。営業利益は2020年秋に開業予定の大丸心斎橋店北館への投資が先行した一方、固定資産の売却等により、44.2%増の67億25百万円となりました。
<クレジット金融事業>
外部加盟店における取扱高の拡大やショッピングリボ、分割払いなどの利用促進により、加盟店手数料収入、割賦販売利息収入等が増加し、前年に比べ売上収益は1.4%増の107億19百万円となりました。営業利益は、決済・金融サービスを基軸とする中長期の成長実現に向けた人財採用、組織強化などにより費用が増加しましたことから、19.1%減の19億8百万円となりました。
<その他>
人材派遣事業のディンプルは派遣事業が苦戦し、また卸売事業の大丸興業では電子デバイス部門の不調により減収減益となりましたが、建装事業のJ.フロント建装がホテルやラグジュアリーブランドなど内装工事の受注拡大に加え、大丸心斎橋店本館の改装工事などの受注増により大幅増収増益となりましたことから、前年に比べ売上収益は18.2%増の1,232億75百万円、営業利益は34.0%増の47億円となりました。
② 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は1兆2,403億8百万円となり、前連結会計年度末に比べ
2,107億35百万円増加いたしました。これは主にIFRS第16号「リース」の適用による使用権資産の増加などによるものです。一方、負債合計は8,406億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,795億40百万円増加いたしました。なお、有利子負債残高は4,787億73百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,043億95百万円増加いたしました。これは主にIFRS第16号「リース」の適用によるリース負債の増加などによるものです。
資本合計は、3,996億81百万円となり、前連結会計年度末に比べ688億4百万円減少いたしました。これは主にパルコ株式追加取得による資本剰余金及び非支配持分の減少などによるものです。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末に比べ89億74百万円増の346億33百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は733億58百万円の収入となりました。前連結会計年度との比較では、使用権資産の増加にかかる減価償却費及び償却費の調整や棚卸資産の減少などにより384億88百万円の収入増となりました。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は495億59百万円の支出となりました。前連結会計年度との比較では、投資有価証券の取得による支出の増加などにより227億23百万円の支出増となりました。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は148億29百万円の支出となりました。前連結会計年度との比較では、パルコ株式追加取得による支出やリース負債の返済額の計上があったものの、社債の発行などの資金調達により64億45百万円の支出減となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
その他 |
894 |
123.8 |
(注)1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2 上記以外のセグメントについては該当事項はありません。
2)受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
その他 |
59,694 |
164.5 |
(注)1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2 上記以外のセグメントについては該当事項はありません。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
内訳 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
百貨店事業 |
大丸松坂屋百貨店 |
236,235 |
96.0 |
|
博多大丸 |
18,638 |
94.4 |
|
|
下関大丸 |
4,327 |
92.5 |
|
|
高知大丸 |
4,547 |
94.0 |
|
|
計 |
263,748 |
95.8 |
|
|
パルコ事業 |
ショッピングセンター事業 |
73,186 |
145.5 |
|
専門店事業 |
17,885 |
90.5 |
|
|
総合空間事業 |
14,431 |
101.9 |
|
|
その他事業 |
6,709 |
116.9 |
|
|
計 |
112,212 |
124.7 |
|
|
不動産事業 |
不動産賃貸業・テナント業 |
17,793 |
104.7 |
|
クレジット金融事業 |
クレジットカードの発行及び運営等 |
10,719 |
101.4 |
|
その他 |
卸売業 |
30,073 |
90.9 |
|
建装工事請負・家具製造販売業 |
44,752 |
158.8 |
|
|
人材派遣業 |
22,195 |
97.6 |
|
|
その他 |
26,253 |
129.6 |
|
|
計 |
123,275 |
118.2 |
|
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調整額 |
△47,128 |
- |
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合計 |
480,621 |
104.5 |
|
(注)1 セグメント間の取引については、「調整額」欄で調整しております。
2 販売高は、売上収益を記載しております。
3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容
当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や現状を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)経営成績等
a)売上収益
売上収益は、百貨店事業は減収となりましたものの、パルコ事業、不動産事業、クレジット金融事業が増収となったことや建装事業が好調だったこともあり、前連結会計年度に比べ207億81百万円増の4,806億21百万円となりました。
b)営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ6億5百万円減の402億86百万円となりました。
c)税引前利益
税引前利益は、前連結会計年度に比べ49億65百万円減の371億61百万円となりました。
d)親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ61億7百万円減の212億51百万円となりました。
e)キャッシュ・フロー
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持並びに健全な財政状況を目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めております。
また、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資、投融資資金は、主に手許資金と営業活動によるキャッシュ・フローに加え、社債の発行及び金融機関からの借入などにより調達しております。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は733億58百万円の収入となりました。一方、「投資活動によるキャッシュ・フロー」は495億59百万円の支出、「財務活動によるキャッシュ・フロー」は148億29百万円の支出となりました。
この結果、当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」は、前連結会計年度末に比べ89億74百万円増の346億33百万円となりました。
今後も、利益水準やキャッシュ・フローの動向等を考慮し、適切な利益配分や設備投資を行っていく予定であります。
f)財政状態
当連結会計年度の資産合計は1兆2,403億8百万円となり、IFRS第16号「リース」の適用による大丸松坂屋百貨店やパルコにおける使用権資産の増加などにより前連結会計年度末に比べ2,107億35百万円増加いたしました。一方、負債合計は8,406億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,795億40百万円増加いたしました。なお、有利子負債残高は4,787億73百万円となり、IFRS第16号「リース」の適用によるリース負債の増加などにより前連結会計年度末に比べ3,043億95百万円増加いたしました。
資本合計は3,996億81百万円となり、前連結会計年度末に比べ688億4百万円減少いたしました。
これらの結果、資産合計営業利益率(ROA)は、3.2%、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は、5.4%、親会社所有者帰属持分比率は、31.2%となりました。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループは、事業活動に必要となる資金は、自ら創出した資金でまかなうことを基本方針としております。そのうえで、事業投資等で必要資金が生じる場合には、財務の健全性維持を勘案し、主として社債の発行及び金融機関からの借入などにより資金調達を行っております。
グループ子会社については原則として金融機関からの資金調達を行わず、キャッシュ・マネジメントシステムを利用したグループ内ファイナンスにより、資金調達の一元化と資金効率化を推進しております。
また、適切な現預金残高を維持することに加え、一時的な資金不足に備え、主要取引銀行とのコミットメントライン契約及び当座借越契約、並びにコマーシャル・ペーパー発行枠を確保することにより、充分な流動性を確保しております。
なお、資金調達に係るリスクについては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
2)経営目標の達成状況
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)対処すべき課題」に記載しておりますとおり、「2017~2021年度 中期経営計画」は2020年度をもって終了し、今年度を「グループビジョンの実現に向け、新たな成長戦略を始動していくための年度」と位置づけ、次年度からの新中期経営計画スタートにグループ一丸となり取り組んでまいります。
したがいまして、本中期経営計画最終年度である2021年度において掲げておりました経営数値目標の達成状況は記載を省略いたします。
経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
(表示組替)
日本基準では、営業外収益、営業外費用、特別利益及び特別損失に表示していた項目を、IFRSでは金融収益又は金融費用、その他の営業収益及びその他の営業収費用等に表示しております。
(売上収益の純額表示に関する事項)
当社グループにおいては、取引の当事者として提供される財又はサービス自体の付加価値を高める機能を有し、取引に係る重要なリスクを負担している取引以外の取引について、日本基準では、売上高を計上し関連する売上原価を総額で認識しておりますが、IFRSでは、対象となる取引が他社の代理人であると判断されるため、売上収益を純額で認識しております。
この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べて、売上収益が6,530億33百万円減少しております。
<連結子会社>
賃貸借に関する契約
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会社名 |
事業所名 |
賃借先 |
賃借物件 |
面積 |
賃料 |
|
㈱大丸松坂屋百貨店 |
大丸 大阪・梅田店 |
大阪ターミナルビル㈱ |
建物 |
95,101㎡ |
(1)定額賃借料 年額 6,186百万円 (2)歩合賃借料 売上高85,000百万円を超過した額の1.5% |
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大丸 東京店 |
㈱鉄道会館 |
建物 |
64,657㎡ |
(1)定額賃借料 年額 5,330百万円 (2)歩合賃借料 直前3事業年度の年間最高売上高を超過した額の1% |
|
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㈱博多大丸 |
本館 |
㈱西日本新聞ビルディング 紙与不動産㈱ |
建物 |
31,258㎡ |
年額 1,206百万円 |
|
東館 (エルガーラ) |
㈱西日本新聞ビルディング |
建物 |
15,155㎡ |
年額 1,041百万円 |
特記すべき事項はありません。