文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、創業以来一貫して“お客さま第一”の精神を持ち、常に時代の変化や価値観の多様化に合わせ、生活に豊かさを提供することに邁進してまいりました。長期に目指す姿を「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」と定め、その実現に向けた道のりを3つのフェーズ(再生~まち化準備~結実)に区分し取り組みの進化を図っております。「再生フェーズ」にあたる前中期経営計画(2022~2024年度)においては百貨店を中心にグループの再生を大幅に進展させるとともに、「個客業」への変革の足場を固めてまいりました。2025年4月に始動させた新中期経営計画(2025~2030年度)では、「まち化準備フェーズ」としてこれまでの百貨店の枠を超えた個客視点での多様な価値を提供するために「館業」から「個客業」への変革を図り、企業価値の向上を目指してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、営業利益とともに株主資本コストを意識し、ROE等の複数の経営指標を掲げ、将来にわたる企業の持続的成長と企業価値の向上に取り組んでおります。6ヶ年の新中期経営計画(2025~2030年度)のフェーズⅠ(2025~2027年度)の最終年度となる2027年度には営業利益850億円、ROE9.8%の実現を目指し、フェーズⅡ(2028~2030年度)終了時点では営業利益水準を1,000~1,100億円規模、ROE10~11%水準で計画しております。また、「個客業」を目指す当社グループ独自の経営指標として、カードやアプリ等でつながったお客さまによる売上高(識別顧客売上高)等の「顧客KPI」を掲げております。2027年度には識別顧客売上高6,870億円、2030年度には同7,140~7,310億円規模を計画しております。
(3)経営環境及び対処すべき課題
①外部環境
マクロ環境においては、国内人口の減少や高齢化基調が進行する中、1人当たり実質GDP成長率の鈍化、資源・エネルギーや食料品を含む消費財価格の大幅な上昇等、国内経済の環境は厳しさを増しております。加えて、欧州や中東等での地政学リスクの顕在化や国家間での関税競争の激化、急激な為替変動等、当社グループの業績に影響を及ぼす不透明な状況が続いております。
そのような環境においても、国内都市部人口やアジア圏も含めた世界人口は引き続き増加すると予測されており、純金融資産1億円以上を保有する富裕層世帯数は増加が予測されております。また、消費動向が二極化する中、百貨店が強みとする「こだわり消費」の市場は拡大することが期待されます。当社グループでは、環境が大きく変化する中でも成長が見込まれる要素を機会ととらえて、中長期的な成長を目指してまいります。
②内部環境
前述の通り、前中期経営計画(2022~2024年度)においては、グループの再生を大幅に進展させるとともに、「個客業」への変革の足場を固めてまいりました。
「再生」の主な取り組みとしては、徹底した販管費コントロールや事業再編、国内百貨店での要員数適正化等の“科学”の視点による生産性の向上を図りました。
「個客業への変革の足場固め」としては、アプリを中心に識別顧客数を拡大し、そのつながったお客さまに向けた個別のマーケティング活動や国内外の外商顧客へのセールス活動を強化する等の顧客基盤の確立を図ってまいりました。また、百貨店事業を支える金融事業や不動産事業、その他の関連各事業がそれぞれの独自性を磨くとともに、事業間での連携を深めて外部収益の拡大を図る“連邦”戦略を進めております。
(4)中長期的な経営戦略
①中長期ステップ
当社はグループが長期に目指す姿である「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」の実現に向けた中長期のステップを「再生」「まち化準備」「結実」の3つのフェーズで描き、バックキャストの視点で中期の経営計画を組み立てております。

②新中期経営計画(2025~2030年度)
当社グループは、前進の三越呉服店による「デパートメントストア宣言」(1904年)から120年余が経過した今、2025年4月より始動させた新中期経営計画において、前中期経営計画で固めてきた基盤を足掛かりとして、百貨店の館を前提としたこれまでのマス向けビジネスモデルである「館業」から、個のお客さまとのつながりをベースとする 「個客業」への事業構造の変革を本格的に進めてまいります。
「個客業」において、世界中からお客さまを集め、識別化し、つながったお客さまに多様な顧客価値を提案するとともに、“連邦”活動による事業間の連携を深めた上で、「世界」「時間」「空間」「用途」の4つの拡大をキーワードとした新たな事業機会を獲得し、利益拡大を図ってまいります。

当社グループが考える「個客業」プロセスの活動は次の通りです。
<集客> 店舗やコンテンツの魅力で世界中からお客さまを集めます。
そのために、伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店等の更なる「高感度上質店舗化」に向けた
店舗リモデル等により独自性の強化を図ります。
<識別化> 集まった顧客とカードやアプリ等の「仕組み」でつながります。
今後、国内顧客の識別化100%を目指し、更にターゲットを海外顧客へ拡大。カードとアプ
リの機能を駆使したさまざまな識別化戦略を展開してまいります。
<利用拡大> つながった顧客に当社グループの各種事業による多様な価値を提案します。
識別化により充実する顧客情報をもとに“個客”単位のコミュニケーション活動を強化す
るとともに、グループ内での“連邦”活動を活発化させ、BtoB・BtoCビジネスの展開拡大
を図ります。
<生涯顧客化>顧客とのつながりを深め、LTV(ライフタイム・バリュー)を最大化します。
つながった顧客との接点の深化を図りつつ、これまで百貨店が取り扱って来なかった商品
やサービスの提案強化により顧客の生涯におけるさまざまなニーズに幅広くお応えしてま
いります。
これらの「個客業」プロセスの活動を当社グループの中核である百貨店事業の他、金融事業、不動産事業、その他関連事業の多様な事業領域において「“連邦”戦略」や「まち化戦略」等の重点戦略と掛け合わせて推進し、「個客業」への変革を図ってまいります。
■事業別戦略
①百貨店事業
百貨店事業では、「個客業」プロセスを本格展開し、「まち化」の中核として圧倒的な独自性で世界からお客さまを集める“特別な”百貨店を目指します。伊勢丹新宿本店は世界一・唯一無二の「最新・最先端」、三越日本橋本店は比類なき「伝統・文化芸術・暮らし」、三越銀座店は銀座から世界へ発信する「グローバルストア」を標榜し、店舗リモデル強化によるハイタッチMDの拡充やPB等での独自性の追究等を通じ、各店のコンセプトに応じた魅力度の磨き上げを図ります。また、地域百貨店においても「百貨店の科学」の視点で構造改革を進めるとともに、エリアでの集客・識別化の推進等によりビジネスモデルを進化させ、安定黒字化を図り、地域の高感度上質消費を支える唯一無二の存在を目指してまいります。
②海外事業
海外事業では、“選択と転換”から“展開と深掘”フェーズに移行し、エリアのコンディションに応じた構造改革の進行とフード&ビバレッジ領域等での新たなビジネスモデルの探索により、事業領域を再構築してまいります。新たなビジネスモデルの一環として、フィリピン・マニラにおける小売事業とレジデンス、タイ・バンコクにおける小売事業とオフィスを掛け合わせた複合不動産開発に参画しております。
③不動産事業
不動産事業では、世界中から顧客を集め、用途をつなぎ合わせ、各事業の価値を最大化させる「まち化」の具現化を目指します。各拠点の開発計画と「まち」での提供価値の設計を本格化させながら、ホテルやレストランなどの高感度上質コンテンツの開発やその専門領域を担う人財の育成に取り組みます。
④金融事業
金融事業では、暖簾とグループ顧客基盤を活かし、“三越伊勢丹グループならではの価値”を提供する金融サービス業を確立します。カード領域では、アプリ会員などの百貨店ライトユーザーに向けた年会費永年無料の〈エムアイカード ベーシック〉を2025年3月にローンチ。今後、新たな上位カードの発行や新ポイント制度の導入も計画しており、顧客ニーズに沿ったカード戦略により顧客拡大を図ってまいります。金融領域では、ショッピング保険や資産運用等の百貨店ならではの金融サービスを拡充させるとともに、アプリのみ顧客などのカード会員以外の顧客へのサービス提供にも取り組んでまいります。
⑤国内関連事業
国内関連事業では、「BtoB」「BtoC」ビジネスの拡大による、各事業の収益拡大とビジネスモデルの進化を目指します。グループ内での内製化を推進するとともに、グループの持つアセットを活用した飲食等の新たな事業機会の創出や、「まち化戦略」で生じる新たな事業機会への参画等によるマネタイズで外部収益をさらに拡大していきます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ経営に関する考え方
三越伊勢丹グループは、長期に目指す姿として「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」となることを企業理念のVISIONに掲げており、すべての企業活動の原点である企業理念のもとでサステナビリティ経営に取り組んでおります。

2018年度に制定したサステナビリティ基本方針に基づき、当社グループの強みを活かした企業活動を通じて社会課題の解決に貢献することで、ステークホルダーからの期待に応え、人々の豊かな未来と持続可能な社会の実現を目指しております。
① ガバナンス
当社グループは、サステナビリティに関する重要事項について、グループ経営戦略会議にて審議・決議を行い、取締役会に報告を行っております。
2018年度より、CEOを議長とする「サステナビリティ推進会議」では、グループ全体でサステナビリティの実践を推進することを目的に、各種取り組みの進捗を確認するとともに、全社的な取り組みのさらなる加速に向けた情報共有を行っております。また、CAO兼CRO※を議長とする「サステナビリティ推進部会」を設置し、課題ごとの具体的な取り組みの検討を行っております。
さらに取り組みの実効性を高めるため、2022年度より「サステナビリティ推進部会」の傘下に6つのワーキンググループ(WG)を設置しております。また、サステナビリティ経営の実現に向けたグループ全体の活動を推進するため、ホールディングスのグループ総務部内にサステナビリティ推進部を設置しております。
※CAO:チーフ・アドミニストレイティブ・オフィサー、CRO:チーフ・リスク・オフィサー
2024年度推進体制

※think good:彩りある豊かな未来に向けて「想像力を働かせ、真摯に考えることからスタートする」という想いが込められた三越伊勢丹グループのサステナビリティ活動に関するスローガン。
<2024年度サステナビリティ関連審議・報告実績>
サステナビリティ推進会議、取締役会でサステナビリティ関連の審議、報告をしました。
サステナビリティ推進会議は、サステナビリティ推進部会と合同形式で計2回開催し、(株)三越伊勢丹ホールディングスおよび(株)三越伊勢丹の執行役、さらにグループ事業会社・グループ百貨店の社長に加え、各部門の推進担当者あわせて約200名が参加しました。本会議では、各事業の戦略とサステナビリティの取り組みを連動させ、グループ全社での実践を推進するため、4つの重点取り組み(マテリアリティ)の進捗状況を共有し、今後の方向性について活発な議論を行いました。議題は以下の通りです。
・think good
グループ全社への取り組みの拡大や、当社グループらしいサステナビリティの取り組みの精度向上に向けた基準設定、認知度向上に向けた議論
・サプライチェーン・マネジメント
「お取組先行動規範」の通知拡大、お取組先との対話深化に向けた議論
人権リスクマップで特定した重要リスクの共有と対応状況の報告
人権救済外部窓口設置の報告(25年4月より運用開始)
・環境
SBT認定取得に向けた温室効果ガス排出量削減のロードマップの内容報告
省エネ、再エネ調達計画の内容報告
・資源循環・廃棄物削減
4R※推進、廃棄物削減の取り組み拡大に向けたリサイクル施策推進や分別、計量の精度向上に向けた議論
※4R=Refuse、Reduce、Reuse、Recycle
・従業員エンゲージメント向上
従業員エンゲージメント調査結果の共有
社内浸透に向けた具体的施策(従業員研修、部門の年度計画)の共有
・政策・方針・情報開示
中期経営計画における重点取り組み(マテリアリティ)の2030年目標とアクションプランに関する報告
サステナビリティに関するお客さまアンケート結果の報告
・社内浸透活動
社内研修の実施内容と次年度計画の報告
取締役会では、計2回に渡り、2025年~2030年度までの中期経営計画に基づくサステナビリティの取り組み内容と目標設定について報告・議論を行い、執行側での議論結果を共有しました。サステナビリティ経営の更なる推進を目指し、サステナビリティに関する重要事項についても議論を行いました。具体的な議題は以下の通りです。
・4つの重点取り組み(マテリアリティ)の具体的な内容とKPIに関する報告、議論
・人的資本経営のあり方と推進についての報告、議論
この他に、四半期ごとに行う各執行役からの業務執行報告においても、具体取組の進捗や会議体の開催等を適宜報告しております。
2023年度に外部環境の変化、ステークホルダーの皆さまの声、そして企業理念の再整理を踏まえて、マテリアリティの見直しを実施しました。2024年度からは新たに設定した4つの重点取り組み(マテリアリティ)に基づき、グループ全社で活動を推進しております。

※マテリアリティの特定・見直しのプロセスについては、当社webサイトをご参照ください。
サステナビリティ経営の更なる推進を目指し、2024年度に注力した具体的な項目は、重点取り組み(マテリアリティ)を事業活動の中で実践する具体的な活動think good、サプライチェーン・マネジメント、気候変動への対応、人的資本経営の4点です。
気候変動への対応、人的資本経営については、(2)サステナビリティに関する個別課題に記載しています。
<think good>
think goodとは、彩りある豊かな未来に向けて「想像力を働かせ、真摯に考えることからスタートする」という想いが込められた三越伊勢丹グループのサステナビリティ活動に関するスローガンです。2021年4月より、サステナビリティ基本方針に基づいた取り組みとして百貨店事業を中心にスタートし、2024年度より百貨店事業だけでなく不動産事業、金融事業、その他関連事業に範囲を広げ、グループ全社で取り組みを拡大しております。当社グループの強みである国内外の広範なお取組先ネットワークや地域社会とのつながり、さらにはマーチャンダイジング力を活かし、社会・環境に配慮した商品やサービスのご提案を行うなど、様々な取り組みを推進しています。2024年度の企画数は約1300件、think goodのスタートから4年間累計で約3300件となりました。今後も、グループ全体でthink goodの取り組みをさらに進化させ、認知度の向上を図るとともに、より多くのお客さまのご支持を得られるように努め、社会課題の解決に貢献してまいります。
※think goodの具体的な取り組み事例は当社webサイトをご参照ください。
<サプライチェーン・マネジメント>
当社グループは環境や人権に配慮した調達活動を推進しております。2023年4月に改訂した「三越伊勢丹グループ人権方針」「同 調達方針」に基づいて、持続可能な調達に取り組むとともに、同年6月には「お取組先行動規範」を制定しました。この規範は、累計でお取組先約1万3600社へ通知し、当社方針へのご理解とご協力をお願いしております。さらに、取り組みの進捗や課題を把握するため、2021年度以来、2年に一度アンケートを実施しています。
2024年度にはお取組先アンケートや対話を通じて収集した情報を基に、人権リスクを「発生可能性」と「深刻度」の観点から評価・整理した人権リスクマップを作成しました。これにより、特に重大な人権リスクがサプライチェーン上に潜在する可能性を認識し、人権リスクマップを活用して常に意識を高め、適切な対応を行うことで、人権リスクの是正、防止、低減に向けた取り組みを進めています。
また、お取組先との個別対話にも注力しており、2022年度から2024年度までに約1550社との対話を実施いたしました。対話を通じて、実践に向けた課題やご要望をヒアリングするとともに、取り組み改善に向けた意見交換を行っております。さらに、人権リスクマップで特定した重点リスクを対話の確認事項に組み込み、是正、防止、低減に向けた協議や働きかけを行い、人権デュー・ディリジェンスを推進しています。加えて、サプライチェーン全体に対して通報ができる「人権救済外部窓口」を設置し2025年4月より運用開始しています。これらの取り組みを通じて、持続可能なサプライチェーンの構築を目指しています。
※人権リスクマップおよび特定プロセスについては当社webサイトをご参照ください。
サステナビリティ課題を含むグループの事業を取り巻くリスクについて洗い出しおよび整理を行い、「リスクマネジメント推進会議」において、対応方針等の策定、実行管理を通じてリスクマネジメント対策を図っております。リスク管理の詳細は、
気候変動への対応・人的資本経営に関するリスクについては、(2)サステナビリティに関する個別課題 に記載しています。
2025年度からの中期経営計画でサステナビリティに関する2027年、および2030年の目標を設定し、2024年度の取り組みの状況を評価し課題を抽出します。その上で、目標達成に向けた実践的な取り組みとその進捗のモニタリングを進めてまいります。
気候変動に関する指標と目標については、(2)サステナビリティに関する個別課題 (ア)気候変動への対応に記載しています。

(2)サステナビリティに関する個別課題
重点取り組み(マテリアリティ)のうち、(ア)気候変動への対応(「持続可能な環境・社会をつなぐ」)、(イ)人的資本経営(「ひとの力の最大化」)については、以下に詳細を記載します。
(ア)気候変動への対応
気候変動が社会にもたらす影響は、年々増大・深刻化しています。当社グループは、気候変動を重要な経営課題の一つと位置づけ、「三越伊勢丹グループ環境方針」「同 調達方針」のもと、次世代に持続可能な環境・社会をつないでいくため、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを行っています。また、当社グループは気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)による提言に賛同しています。そのフレームに基づき、ガバナンスやリスク管理体制へと脱炭素社会の実現に向けた取り組みの考慮を組み込むとともに、シナリオ分析を用いて評価したリスクと機会への対応を推進しております。
①ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれています。体制図を含む詳細については、(1)サステナビリティ経営に関する考え方 ①ガバナンス に記載しています。
②戦略
気候変動という大きな社会課題は、当社のビジネスに様々な影響を与えると考えられます。不確実な中でも将来に向けた意思決定をしていくために、シナリオ分析を用いてリスク・機会を分析いたしました。なお、分析にあたっては、当社の経営計画と整合する、下記3つの時間軸にて検討を行いました。
・短期=2027年(2025年度から始まった中期経営計画フェーズⅠの最終年)
・中期=2030年(2025年度から始まった中期経営計画および環境中期目標の最終年)
・長期=2050年(環境長期目標の最終年)
消費志向の変化や実店舗の営業条件の変更などシナリオ分析にて想定した事象が発生した場合でも、目指す姿(ビジョン)に向けて「館業」から「個客業」へと変革し、お客さまとのつながりを拡張し暮らし全般を豊かにしていく当社の戦略を通じて、レジリエンスを保ってまいります。また、リスクを抑制し、機会を実現させるために、それぞれ対応策を行っています。
<1.5℃シナリオ>
規制強化や消費動向の変化を通じて脱炭素社会へと向かっていくことにより移行リスクが強まる一方で、物理的リスクの顕在化可能性が4℃シナリオより相対的に低い世界を想定。
※2030年の想定排出量(Scope1・2)に、IEA WEO2024 Net Zero Emissions by 2050 Scenarioで示された炭素価格の値($140/t-CO2)を乗じた。$1=150円にて換算。
<4℃シナリオ>
脱炭素に向けた政策や技術の変化は起こらず移行リスクの影響が1.5℃シナリオより相対的に低い一方、平均気温の上昇や異常気象の激甚化により物理的リスクが顕在化する世界を想定。
4℃シナリオの影響度(金額)は、いずれも国内百貨店業を対象にて算出。短・中期の時間軸は中期を用いた。
※1 台風の増加に起因する追加の売上減を試算。台風の増加による休業増加日数に、休業1日当たりの売上減を乗じた。台風の増加率は、IPCC AR6 SSP5-8.5を参照。
※2 100年に一度の河川の洪水や高潮が起きた場合を想定。影響度には、期待値として1/100を乗じた。洪水や高潮による浸水が想定される店舗をIPCC AR5: RCP8.5、IPCC AR6: SSP3-7.0に基づき分析。想定浸水深は、国土交通省『治水経済調査マニュアル(案)』を参照。
売上減では想定される営業停止日数に1日当たりの売上を、資産の減損では償却資産(土地以外)および在庫に想定被害率を乗じた。
<共通シナリオ>
気候変動の緩和を目指す、当社グループの環境中期・長期目標の達成に向けた取り組みに伴う影響を想定。
※2030年、2050年の想定エネルギー調達額と、2023年時点の調達額の差。想定調達額は、IEA WEO2024 Net Zero Emissions by 2050 Scenarioを含む複数のレポートを参照。
③リスク管理
気候変動に関するリスクは、サステナビリティ全般の課題におけるリスクと同様に、組織全体のリスク管理プロセスにも組み込みモニタリングを行っています。対応に向けた詳細は、「サステナビリティ推進会議」やその傘下のワーキンググループを筆頭とする会議体、関連部署において、方針の策定、実行管理を行うことで、リスクマネジメントの実現を図っております。リスク管理に関する詳細は、
<リスクと機会の識別・評価のプロセス>
1.当社グループに影響を与えると考えられる、気候変動に関するリスク・機会項目を抽出(当社のビジネスモデルおよびバリューチェーン、お客さま・お取組先・株主/投資家・地域社会/コミュニティ・従業員などのステークホルダーの視点を考慮)
2.抽出したリスク・機会の定性評価を、発生可能性と影響の大きさの2軸でプロット
3.定量評価が可能な項目は定量評価を行ったうえで、定性評価と双方確認し、影響度を判断
④指標と目標
<指標>
当社グループでは、気候変動関連リスク・機会やその進捗状況を管理するための指標として、Scope1・2・3の温室効果ガス(GHG)排出量を用いています。2025年3月期分の実績については、当社webサイト※にて開示予定です。
<温室効果ガス(GHG)排出量>
※1 Scope1・2・3は、GHGプロトコルに基づき策定した当社グループGHG排出量算定規定にて算定を行っています。その信頼性向上を目的に、第三者検証(限定的保証)を依頼し、保証報告書を取得しています。(2025年3月期分も取得予定)
※2 本指標はグループ全体の財務報告範囲と一致させるべきとの考えのもと、2024年3月期より、集計バウンダリをグループ(連結)へと変更いたしました。2023年3月期以前の実績はバウンダリが異なります。具体的な値は、上記
<目標>
気候変動のリスクと機会をマネジメントするための中期目標としては、Scope1・2の温室効果ガス排出量および再生可能エネルギー導入比率を使用しています。
●環境中期目標:2030年におけるGHG排出量(Scope1・2) 2023年度比▲42%
2030年における再生可能エネルギー導入比率 55%
当社グループは、本環境中期目標の水準がパリ協定と整合していることを明確にするため、SBT(Science Based Targets)認定取得を目指しており、コミットメントを表明いたしました。
また、長期の視点では、サプライチェーン全体に関連するリスク・機会を一層考慮していくことが適切なマネジメントにつながるという考えに基づき、中期目標に加え、下記の目標を掲げております。
●環境長期目標:2050年におけるGHG排出量実質ゼロ(Scope1・2・3)

(イ)人的資本経営
三越伊勢丹グループは2023年度に新たな企業理念を制定、ミッションとして「こころ動かす、ひとの力で。」を掲げています。そして「ひとの力の最大化」を進めるため、2024年度に“三越伊勢丹グループ人財マネジメント方針”を定めました。
この方針の中で、「こころ動かす“主役”は、従業員一人一人の“個”の力であり、“変化の先の未来”に向けて、勇気を持って挑戦と努力を続ける一人一人を上司と会社は“後押し”します」とし、あわせて、従業員と会社は互いに成長し、互いに高め合っていく関係性を明確にしました。さらに、「個」・「組織」・「人財基盤」それぞれの目指す姿を掲げ、「従業員」と「上司・会社」への期待をそれぞれ明確にすることで、従業員、上司、会社が三位一体となって取り組んでいきます。
<三越伊勢丹グループ人財マネジメント方針>

①ガバナンス
人的資本に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれています。体制図を含む詳細については、(1)サステナビリティ経営に関する考え方 ①ガバナンス に記載しています。
・執行役とCHROの連携
当社グループでは、業務領域を管掌する執行役と人事分野の責任者であるCHROが連携して業務執行を行うことで、経営戦略と人財戦略の連動を図りグループ全体での取り組みを進めております。
・労働組合との連携
当社グループでは、「三越伊勢丹グループ労働組合」が設立されています。この労働組合は、グループ内の各企業と協議し、労使関係や人事・労働条件を定めるための労働協約を締結しています。
また、グループの経営トップと組合本部幹部、各社トップと組合支部幹部による懇話会も定期的に開催しています。情報共有を行い、相互理解や信頼・協力関係を築くことで、円滑な事業運営と働く環境の維持・向上を図っています。
②戦略
人財戦略として「個客業への変革に向けた企業風土改革(人事の感性)」、「生産性向上と人的資本投資の両立(人事の科学)」、「事業実現人財の確保・育成・活性化(縦の人財確立)」、「グループ経営人財・事業変革人財の創造(横の人財創造)」、の4つの取り組みを定めました。
この人財戦略をグループ一丸となって推し進めていくことで、「ひとの力の最大化」を図り、中期経営計画の実現および④指標と目標の達成に繋げていきます。

■「個客業」への変革に向けた“企業風土改革”「人事の感性」
当社グループでは「三越伊勢丹グループ人財マネジメント方針」のもと、グループ従業員一人ひとりのマインドチェンジと行動変容を促進しています。
・生涯CDP
※CDP=キャリアデベロップメントプログラム(従業員のキャリアや能力を開発するための中長期的な計画)
従業員自らが「自律的なキャリア」を築けるよう、「従業員」・「会社」・「上司」が三位一体となって「生涯CDP」を推進しています。この考え方のもと、個人の成長と会社の成長を両立できる仕組みづくりと、その取り組みを促進する風土醸成を進めています。具体的には、上司と部下、人事と従業員によるキャリア面談の推進や、グループ内の多様な仕事情報の提供、自律的なキャリアを支援するチャレンジキャリア制度(手上げによる社内公募制度等)や自己申告制度、リアル、オンラインを通じた研修、学びの機会の拡充などの各種人事制度を設け、「ひとの力の最大化」に取り組んでいます。
■“人的資本投資”に繋げる生産性向上「人事の科学」
各事業で少数精鋭体制を推進し、労働生産性を最大限に高めることで生み出した原資を「人的資本投資」に活用し、「ひとの力の最大化」を目指していきます。
2025年度から2030年度にかけて人的資本への投資総額は約300億円を計画しています。
従業員の成長と企業の戦略実現を両立させるため、処遇改善や人財育成、働きやすい環境づくりや健康経営の推進、人事DX等、メリハリを持った投資を進めてまいります。
■事業実現人財の確保・育成・活性化 「縦の人財確立」
中期経営計画を実現するためには、百貨店事業以外の事業領域の確立、それぞれの事業分野の強化が不可欠です。そのために必要な人財の「計画」「確保」「育成」「活性化」を促進し、戦略的に人財基盤を整えていきます。
・専門人財の育成
百貨店事業から金融・不動産・システム・広告事業まで拡がる当社グループの多様な事業展開を支えるためのさまざまな知見や技術を持つ人財の確保と育成を進めています。
■グループ経営人財・事業変革人財の創造「横の人財創造」
当社グループ人財の強み(DNA)である「キュレーション力(編集力)」を“グループ事業全体”に拡大することで、“「個客業」としての新たな成長”につなげていきます。
イノベーションの創出に向けて、組織内にさまざまなバックグラウンドを持つ人財を増やすとともに、個人が多領域で豊富な経験を積めるように推進し組織力の向上を目指していきます。
・動的な人財ポートフォリオ
多様な個(人財)を活かす組織づくりとして、グループ内外への出向や、部門をまたいだ異動など、人財の流動性を高めることで、さまざまな知見や人的ネットワークを掛け合わせ、新たな価値やイノベーションの創出につなげています。
特に、今後、経営戦略上強化していく事業領域では外部企業への出向を進め、従業員が新しい知識や経験を得ることで、特別な百貨店を中核とした小売グループとしてのまち化戦略を推し進めていきます。
・次世代人財、及びグループ視点を持った人財の育成
イノベーションを創出するため、コーポレートベンチャーキャピタルの取り組みなどを通じて、次世代人財の育成にも取り組んでいます。人財の流動化を通じてグループ全体の一体感と共創を推進しています。
■「人財基盤」の整備
人財戦略の実現のために、人財基盤の整備にも取り組んでいます。
・健康経営
当社グループは、従業員が「働きがい」と「働きやすさ」を実感できる職場づくりを目指し、ライフワークバランスの推進や、多様な働き方や健康サポートの充実に取り組んでいます。
また、上司や同僚との積極的なコミュニケーションを通じて対話文化の醸成にも努めています。
そして、職場環境の更なる向上を目指し、2023年6月には、会社とグループ労働組合が共同で宣言を発信しました。この労使共同宣言では、「適正な労働時間管理」と「ハラスメント・ゼロ」に関する具体的な行動指針を示し、「安心して働くことのできる職場環境」の実現に向けて労使が一体となって取り組んでいます。
●三越伊勢丹 健康経営優良法人2024(大規模法人部門)認定取得

・女性活躍推進
当社グループでは従業員の約7割が女性であり、今後の企業成長に向けて「女性の活躍推進」を進めていくことが不可欠であると考えています。多様な個性や価値観を尊重し、性別や時間的制約にかかわらず、すべての従業員が最大限に力を発揮できる環境づくりを目指しています。具体的には、短時間勤務制度や配偶者転勤休職制度などの制度の充実に加え、男性の育児休業取得の推進をしています。また、組織風土や従業員一人ひとりの意識醸成にも取り組み、誰もが“働きがい”と“働きやすさ”を実感しながら活躍できる環境づくりを進めています。
●えるぼし認定3段階目(2023年)

●Nextなでしこ共働き・共育て支援企業 選定(2025年)

・従業員エンゲージメント
従業員と会社が「互いに成長し、互いに高め合う関係」を築くことを目指し、年に1度「従業員エンゲージメント調査」を実施しています。この調査結果をもとに、従業員の満足度とモチベーションを高めるための具体的な取り組みを進め、組織全体のエンゲージメント向上に努めています。
③リスク管理
・安心安全な職場環境の整備
当社グループでは、従業員の安全と心身の健康を最優先とし、「適正な労働時間管理」と「ハラスメント・ゼロ」を重要なリスク管理項目と位置付けています。2023年6月に発した労使共同宣言のもと、労使共同で安心・安全な職場環境の整備に向けた取り組みを進めています
④指標と目標
・従業員エンゲージメント調査「企業理念の浸透・実践」数値 2030年度3.75以上の達成(グループ計)
・女性管理職比率 2030年度37%の達成(グループ計)
・育児休業取得率(性別問わず) 2030年度100%の達成(グループ計)
・障がい者雇用比率 2030年度前年以上の達成((株)三越伊勢丹および首都圏主要グループ会社の合計)
・年間総実労働時間1,700時間台達成企業数 2030年度21社の達成(グループ計)
※各指標の実績については、(1)サステナビリティ経営に関する考え方④指標と目標に記載のとおりです。
※経年実績については当社webサイトに掲載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、財務の状況等に関する事項のうち、当社グループが投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識しているリスクは以下のとおりです。
ただし、将来の業績や財務に影響を与えうるリスクや不確実性は、これらに限定されるものではありません。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
1.リスクマネジメント推進体制について
当社グループのリスクマネジメント体制は、3つのディフェンスラインと5つのレイヤーで構成されております。各レイヤーの役割と責任を明確化することで、実効性の高いリスクマネジメント体制を構築しております。
※リスクマネジメント体制図

当社グループは、グループ経営戦略会議の諮問機関であるリスクマネジメント委員会にて、経営戦略の推進や経営基盤に影響を与える重大な経営リスクについて検証および対応策等の検討を行い、その結果をグループ経営戦略会議に答申する体制を構築しております。また、グループ全体のリスクマネジメント推進のため、リスクマネジメント推進会議およびサイバーセキュリティ推進会議を設置しております。
リスクマネジメント推進会議では、リスクマネジメント年度方針ならびに実行計画等を策定し、その実行管理を通じてリスクマネジメント対策の実現を図っております。また、重点リスクへの具体的な対策を強化するため、リスク対策部会を設置しております。
サイバーセキュリティ推進会議では、サイバーセキュリティ年度方針ならびに実行計画等を策定し、その実行管理を通じてサイバーセキュリティ対策の実現を図っております。また、具体的な対策を強化するため、サイバーセキュリティ対策部会を設置しております。
2.リスクの分析・評価について
当社グループは、グループ全体の事業を取り巻くリスクを5つの領域(①経営戦略リスク②財務リスク③人事・労務リスク④災害・犯罪リスク⑤オペレーショナルリスク)に分類し、領域ごとにリスクを洗い出し、リスク一覧として整理しております。毎年、その内容を見直し、月次でリスクへの対応状況を確認し、必要に応じて評価を見直しております。経営戦略リスクについては、リスク一覧で管理しておりますが、事件事故事象となりうるインシデントについては、経営への影響度、発生頻度をもとにリスクマップ上に抽出し、その中から重点リスクを選定、3つの部会(コンプライアンス部会・リスク対策部会・サイバーセキュリティ対策部会)を通じて具体的な対策の強化を図っております。なお、リスクへの対応状況については、グループ経営戦略会議および監査役会に定期的に報告しております。
(1) 経営戦略リスク
<当社グループのリスク認識>
近年、世界各地において気候変動に伴う自然災害の激甚化等、私たちを取り巻く社会課題は年々深刻さを増しております。このような背景から、各企業は気候変動への取り組みや循環型社会の実現、人権尊重、持続可能なサプライチェーンの構築、地域社会への貢献など、経済的価値の追求だけではなく、社会的価値の両立を目指した企業活動を行うことが強く求められております。
このような社会の潮流に対して、当社グループのサステナビリティ経営が遅れをとった場合、お客さまを始めとするステークホルダー(お取組先、株主、地域社会、従業員等)からの信用の失墜による市場競争力低下、資金調達や人材獲得が困難となる等、企業経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、脱炭素に向けた取り組みが遅れた場合、大量のエネルギー消費による環境負荷増加につながるだけでなく、将来的に環境規制の強化やエネルギーコストの増加等が発生し、当社グループの財務状況に悪影響を与える可能性があります。
<当社グループのリスク対策>
■サステナビリティ経営推進
・サステナビリティに関する課題は経営基盤を支える重要課題と捉え、サステナビリティ基本方針
のもと取り組みを進めております。
サステナビリティ推進体制
・当社グループでは、CEOを議長とするサステナビリティ推進会議を通じ、サステナビリティ活動の方向性・重点取り組み等を共有し、取り組みの推進・浸透を図っております。また、CAO兼CROを議長とするサステナビリティ推進部会では、各課題の具体的な取り組みの検討を行っております。
4つの重点取り組み(マテリアリティ)
・本業を活かして取り組むことが出来るか、加えて当社グループが取り組む意義があり成果を上げることができるかという観点を踏まえ、各事業戦略とリンケージさせながら、4つの重点取り組み(①人・地域をつなぐ ②持続可能な環境・社会をつなぐ ③ひとの力の最大化 ④グループガバナンス・コミュニケーション)に取り組んでおります。
サステナビリティ活動 think good の取り組み
・“think good”の取り組みをグループ全社に拡大し、一丸となって取り組んでおります。
①多様な価値観の尊重 ②地域社会との共創 ③文化の継承と革新 ④環境への取り組み
ステークホルダーへの取り組み
・対お客さま:サステナビリティ活動に関するアンケートを、2013 年より毎年実施しております。
アンケートの集計結果を分析・情報開示の上、頂戴した貴重なご意見・ご要望を、サステナビリティ活動に活かしております。
・対お取組先:小売業を中核とする当社グループの事業活動は、多数のお取組先との協働が不可欠と考えております。サプライチェーン上の持続可能性に配慮するため、お取組先と調達先に対して「お取組先行動規範」の遵守をお願いしております。また、2023年度には、「責任ある調達活動に関するお取組先アンケート」を実施し、潜在リスクをはじめとするサプライチェーン全体の状況把握を行っております。またお取組先との個別対話を実施し、実践に向けた課題やご要望をヒアリングするとともに、取り組みの改善に向けた意見交換を行っております。(2022~2024年度実績:約1,550社)
人権デュー・ディリジェンスへの取り組み
・当社グループでは、人権リスクを発生可能性と深刻度でマッピングした人権リスクマップを作成しております。これにより、特に深刻な人権リスクがサプライチェーン上に潜在する可能性を認識し、「人権リスクマップ」を活用して常に意識を高め、適切な対応を行うことで、人権リスクの未然防止、発生時における是正、防止、低減に向けた取り組みを進めております。加えて、サプライチェーンに開かれた通報窓口として25年4月に「人権救済外部窓口」を設置し、運用を開始しております。
・対従業員:当社グループ全従業員が人権と事業活動とのつながりを理解することを目的に、グループ全社共通のeラーニングや全国のグループ百貨店とグループ会社を対象にした対面研修を実施し、当社グループを取り巻く環境への理解を深め、社会課題の解決に取り組んでおります。
■気候変動・脱炭素社会の実現に向けた取り組み
・当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)提言へ賛同しており、気候変動によるリスクの把握と当社の財務への影響を分析し、情報開示を行っております。
・気候変動の緩和策としては、「三越伊勢丹グループ2030年環境中期目標(温室効果ガス排出量2023年比▲42%および再生可能エネルギー導入比率55%)」および「三越伊勢丹グループ2050年環境長期目標(温室効果ガス排出量実質ゼロ)」を設定し、脱炭素社会の実現に向けた様々な取り組みを推進しております。詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する個別課題(ア)気候変動への対応」をご覧ください。
・気候変動への適応策としては、自然災害の激甚化を想定した対応を行っております。詳細は、「(4)災害・犯罪リスク ①災害対応に関するリスク」の項目において詳しく記載しております。
<当社グループのリスク認識>
当社グループは、デジタル社会の変化に対応するために、実店舗とオンラインをシームレスにつなぐオンラインサイトやアプリの提供、デジタルツールを利用した業務効率化を進めております。
また、事業活動を通じて蓄積したデータを活用してお客さまやお取組先への新たな価値提供を目指すなど、デジタルテクノロジーを活用したビジネスモデル変革や業務改革にも取り組んでおります。
当社グループが、デジタル社会への対応に乗り遅れた場合、お客さまのご要望や購買行動が変化する中で、迅速な対応ができず、市場競争力の低下、収益性に悪影響を及ぼすリスクが増大します。また、DXを実行するデジタル人財不足により、経営効率化、業務効率化が進まずに中期経営計画実行、業績、財務状況に悪影響を与える可能性があります。その他、新システム導入や更改、日々のシステム運用のなかで不測の障害が発生することにより、実店舗およびオンライン上の営業活動に支障が生じる恐れがあります。さらに、SNS活用が浸透・拡大するにつれ、従業員個人が関与するSNSトラブル増加の恐れがあります。また、AIチャットサービスは、将来的には業務生産性を高める無限の可能性を持つツールとして積極的な活用が求められる一方で、使い方によっては重要な機密情報の漏洩や意図せず第三者の権利侵害につながるリスク等も懸念されております。
<当社グループのリスク対策>
■デジタル社会への対応
・仮想空間プラットフォームやAIを組み合わせた顧客データ分析等、新しいデジタルテクノロジーを活用したビジネス価値創造に持続的に取り組むことにより、デジタル社会に適応しております。
■デジタルトランスフォーメーション(DX)推進
・個客業化に向けたDX戦略を推進する目的でDX戦略プロジェクトを発足し、DX戦略全体像策定、個客業業務別DXアクション整理を行い、アクションロードマップに基づいてDXを推進しております。
■デジタル人財強化
・デジタルテクノロジーやデータ活用に長けた専門組織を設置し、人材育成や各部門へデジタル人材を配置することで、グループ全体としてDXを実行するデジタル人財の強化を図っております。
■システム障害管理体制
・システム部門による障害発生への事前対策とともに、システム部門と営業部門が一体となりシステム障害発生時における損失を最小化する取り組みを行っております。
■従業員によるSNSトラブル未然防止・再発防止の取り組み
・SNS活用が浸透・拡大するにつれ、想定しなかった事故やトラブルが増加していることから、デジタルな顧客接点として、お客さまに安心してご利用いただける環境の構築を図っております。
・SNSを利用するにあたって従業員が公私を問わず遵守すべきルールとして、禁止・注意・推奨する事項を明示した「ソーシャルメディアガイドライン」を策定し、周知徹底を図っております。
■AIチャットサービスの適切な利用
・AIチャットサービスについては、当社グループ専用のデジタルツールを作成し、利活用できる環境を整備しております。また、利用前には必ずeラーニングを受講するなど社内ルールを周知徹底することで、機密情報漏洩や第三者の権利侵害といったリスク回避の対策を講じております。
<当社グループのリスク認識>
当社グループの中核事業である百貨店事業は、これまでマスマーケティング型のビジネスモデルに重きを置いておりました。しかしながら、近年の少子高齢化といった人口動態の変化や所得・消費の二極化といった社会構造の変化、デジタル化の加速と情報化社会の進化により、お客さまの価値観、消費行動は大きく変化し続けています。
また、市場における競争激化を背景とした業界再編の動きが活発化してきており、新たなビジネスモデルへの転換が急務となっております。さらには、インフレの影響、労働市場の逼迫、サプライチェーンの混乱等に伴う人件費、資材、エネルギー等の高騰が、当社グループのビジネスモデル変革への阻害要因にもなり得ます。このような社会の変化の中で、当社グループのビジネスモデル変革が遅れた場合、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
<当社グループのリスク対策>
■「館業」から「個客業」へのビジネスモデル変革
・当社グループは、新中期経営計画(2025~2030年度)に基づき、従来の「館業」(マス向けビジネスモデル)から「個客業」(「個客業」プロセス活動を通して世界中からお客さまを集め、識別化し、つながったお客さまに多様な顧客価値を提案するビジネスモデル)への変革を進めてまいります。具体的には、百貨店事業でつながりを深めた識別顧客に向けて、グループ全体で連携し、百貨店以外の事業コンテンツ・サービスをご提案してまいります。これにより、お客さまのウォレットシェアを拡大し、各事業の収益性向上を目指す“連邦活動”を主軸に推進してまいります。
「個客業」プロセス活動
・集客:店舗やコンテンツの魅力で世界中からお客さまを集めます
・識別化:集まった顧客とカードやアプリ、デジタルなどの「仕組み」でつながります
・利用拡大:つながった顧客に当社グループの各種事業による多様な価値を提案します
・生涯顧客化:顧客とのつながりを深め、LTV(ライフタイム・バリュー)を最大化します
事業機会の獲得
・世界へ拡大:国内・海外の枠を取り払い、世界中からお客さまを集めます
・時間の拡大:百貨店の営業時間に留まらず、24時間・365日を活用したビジネスを展開します
・空間の拡大:まち化(※)を手段に、お客さまを集め、深くお付き合いするための空間を創造します
・用途の拡大:グループ各事業(百貨店事業/不動産事業/金融事業/関連事業)による三越伊勢丹グループならではの“高感度上質”で多様な価値を提供します
※まち化:百貨店を核に複合用途を広げ、グループ全体でまちのインフラ機能まで展開、世界中のお客さまをまちに呼び込み、不動産事業だけにとどまらないグループ全体の収益モデルの進化を目指す戦略
■変革を迅速に進めるための対応
収益力向上の取り組み
・継続的な収益力向上のため、成長戦略を推進しつつ、科学の視点における販売管理費コントロールでコスト抑制を継続しております。首都圏に加えて地域百貨店においても、科学の視点で3つの改革「組織要員改革」、「収支構造改革」、「店舗構造改革」を着実に推進しております。
擬似カンパニー体制
・2025年度より戦略に適合した組織運営体制をスタートさせ、その中で百貨店事業、不動産事業、金融事業の3つの大きな事業領域を“擬似カンパニー”体制としております。縦の”擬似カンパニー”では、各事業のユニークポイントを進化させ、横では、連邦戦略、まち化戦略、DX戦略などの全社戦略を推進し、縦と横の組み合わせによる新しい個客体験価値を提供し、「個客業」へのビジネスモデルの変革を実現させてまいります。本体制では、各擬似カンパニー単位でモニタリングを実施し、収益性・資本効率を高めるROIC経営を推進しております
<参照先>「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)中長期的な経営戦略」において詳しく記載しております。
<当社グループのリスク認識>
当社グループは、百貨店事業における東南アジア、中国、台湾、および米国の店舗営業のほか、海外の不動産事業にも参画しております。これらの売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のため円換算されており為替変動の影響を受けております。また事業展開をする各国において、事業・投資の許認可、税制等、様々な政府規制や法制度の適用を受けております。
外部リスクとしては、政治・経済的不安や社会的混乱等の地政学リスクがあります。なかでも国際紛争によるエネルギーコストや商品価格の高騰および商品供給のリードタイムの長期化等、当社グループのビジネスに影響を与える可能性があり、引き続き注視が必要であると捉えております。さらには、米国の関税政策等を背景としたインフレ加速、景気後退、為替変動等のリスクがあり、これらの影響が長引いた場合、海外現地店舗の来店客数および売上高の減少と、訪日外国人来店客数および免税売上高が減少し、業績や財務状況に悪影響をもたらします。
内部リスクとしては、海外で事業展開するうえで、従業員の安全上・労務管理上の問題、海外現地法規制への対応不備、現地のガバナンス不全等のリスクが内在しております。これらのリスクにより、海外実店舗の人的・物的損害の発生だけでなく、財務への損害、事業の停止・撤退を余儀なくされる可能性があります。また、商品供給網においても、お取組先を介してのグローバルな取引が多く存在し、商品供給の停滞、遅延が発生する可能性があります。また、これらの内部リスクを通じて、日本においても、レピュテーション毀損や財務への損害が発生する可能性があります。
<当社グループのリスク対策>
■地政学リスクを背景としたインバウンド需要減少への取り組み
・2025年3月より、海外顧客向けアプリ「MITSUKOSHI ISETAN JAPAN」のサービスを開始しました。
国内のお客さま同様、海外のお客さまとつながることで売上と収益の安定化を図っております。
■従業員の安全上・労務上への取り組み
・海外へ赴任する従業員に対し、海外事業リスクに関する教育を実施しております。
・海外拠点とのリモート会議やタイムリーな現地リスク情報の共有等、定期的なコミュニケーションを実施し、連携を図っております。
・有事におけるレポートラインの確立や日本と海外拠点とが一体となった組織的対応の実施計画を策定しております。また、海外情勢の変化を常に注視し、赴任する従業員の家族や現地への出張者を含めた安全確保のための対策を講じております。
■現地法規制対応
・資金管理等は、銀行のシステムを利用し、日本側からのモニタリング体制を構築しております。
■現地ガバナンス強化
・海外拠点を対象にした内部通報制度を導入し、通報窓口を設置、運用しております。
・資金管理等は、銀行のシステムを利用し、日本側からのモニタリング体制を構築しております。
<当社グループのリスク認識>
当社グループは、「館業」から連邦(※注1)とまち化(※注2)を手段に、「個客業」への変革と進化を目指しております。その実現のため、コンテンツ、DX・システム、不動産、生産性向上、安心・安全等の投資に、1,000億円水準の投資が必要となります。しかしながら、当社グループの業績悪化や格付け変更による資金調達力の低下、さらには政策の転換による金融市場の資金調達コストの増加等、様々な要因が資金調達を困難にする可能性があります。資金調達が困難になった場合には、戦略実行の遅延や戦略変更を余儀なくされるリスクが内在しております
※注1) 連邦:グループ内の各事業が連携し、顧客に個別最適なサービスを提供する戦略
※注2) まち化:百貨店を核に複合用途を広げ、グループ全体でインフラ機能まで展開することで、世界中の顧客を街に呼び込み、不動産事業だけにとどまらない収益モデルを目指す戦略
<当社グループのリスク対策>
■財務戦略
・当社グループでは、円滑な資金調達の為、健全なバランスシートやキャッシュフローを維持し、負債比率等を適切に管理しております。具体的な取り組みは以下の通りです。
財務体質の改善
・当社グループは、収支構造改革を積極的に推進し、固定費の削減を実施することで、営業黒字を拡大する取り組みを行っております。また、営業キャッシュフロー改善を通じて、有利子負債削減に取り組むとともに、経費や投資キャッシュアウトのコントロールを徹底することで、財務体質の改善を図っております。
事業別利益と資本効率の改善
・資本コストを意識して、事業利益・連邦利益の拡大と資産効率の改善を図っております。
投資分類と規律・評価の考え方
・中長期的な投資に向けた余力を確保しながら、株主還元や有利子負債削減、収益に貢献する投資をバランス良く実施しております。フローとストックの観点でも最適な財務基盤を構築することで、株主の皆さまをはじめとする全てのステークホルダーとの良好な関係性構築に努めております。
(3) 人事・労務リスク
<当社グループのリスク認識>
当社グループは、戦略を遂行するうえで百貨店事業分野のみならず、不動産事業、金融事業、関連事業をはじめとした各事業の成長を担う専門人財と長期のグループ成長を担う経営人財の確保、持続的な育成が必要と認識しております。少子高齢化に伴う生産労働人口の減少を背景にした人財獲得競争が激化するなかで、計画通りに必要な知識・経験・スキルを有する人財の確保が図れなかった場合は、当社グループの目指す経営目標の達成や事業成長に影響を及ぼす可能性があります。
<当社グループのリスク対策>
■人財獲得に向けた取り組み
・当社グループでは、採用において、学生の皆さまとの価値観の共有を何より大切にしております。
相互理解を深めるため、ワークショップ等で丁寧にコミュニケーションを重ねていっております。
・内定を出した後にも価値観のすり合わせ、入社に対するモチベーションを高めてもらうため、複数回面談を実施するなど採用におけるミスマッチをなくし、一人一人の力を最大化しながら意欲的に働くことができるよう努めております。
■経営・戦略実現・事業基盤を支える人財育成
・従業員の成長と企業の戦略実現を両立させるため、処遇改善や人財育成、働く環境の整備や健康経営の推進、人事DX等、メリハリを持った人的資本投資を行っております。
従業員の成長
・当社グループは、「三越伊勢丹グループ人財マネジメント方針」の下、経営資源の成長分野への投入や従業員の能力開発、スキル向上等を通じて、イノベーションによる持続的な成長と生産性向上に取り組み、付加価値の最大化に注力しております。その上で、生み出した収益・成果に基づいて、従業員への持続的な還元を目指しております。
企業の戦略実現
・経営戦略の実現に向けた専門人財の育成に関しては、戦略的な出向政策や既存人財のリスキル、事業別に異なる専門スキルに応じた制度の拡充に取り組んでおります。
・合わせて、経営戦略の実現に必要な「多様な事業の組み合わせ」により新たな価値を創造する人財の育成に向けて、グループ内外への人財流動化を計画的に進めることで、個人の持つ知と経験、ネットワークの多様性を拡大し、新たな価値を生み出す人財の育成に取り組んでおります。
<参照先>
・人的資本経営については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する個別課題(イ)人的資本経営」において詳しく記載しております。
■従業員エンゲージメントの向上
・社内のあらゆる関係における対話文化の醸成を進めることで、働きがい、働きやすさの向上を図っております。
・従業員の心身の健康維持・増進に向け、会社と労働組合が共同で「安心して働くことのできる職場環境づくり」を宣言しております。本取り組みでは、ハラスメント撲滅や適正な労働時間の管理を全社的に進めております。
・その他、一人一人のライフワークバランスを尊重し、個人のライフスタイルに合わせた多種多様な働き方を認める両立支援制度(育児・介護等)の拡充や、女性活躍推進に向けた取り組みにも継続して取り組んでおります。
<参照先>サステナビリティレポート:
https://www.imhds.co.jp/content/dam/imhds/corporate/pdf/sustainability/sustainability_report2024.pdf
<当社グループのリスク認識>
当社グループは、百貨店事業を中核とした事業展開を行っております。そのため、自然災害(地震・津波・台風・水害・雪害等)が発生すると、店舗の営業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
大規模地震(首都直下地震、南海トラフ地震等)が発生した場合、お客さま、従業員への人的被害、建物・設備・商品等の物的被害、停電、ガス停止、断水等の社会インフラへの影響、さらには、地震の揺れや津波の影響による原子力発電所の運転停止等の事故発生時には、放射能による食品汚染などが営業活動に影響を及ぼす恐れがあります。加えて、百貨店事業は全国各地からの商品供給や物流により成り立っているため、供給網に影響が及ぶことで、当社グループの事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
また、台風、水害(集中豪雨・高潮・洪水等)、大雪の影響を受けた場合、お客さま、従業員への人的被害および建物・設備・商品等の物的被害が生じ、臨時休業等による営業損失を被る可能性があります。
さらに、富士山が噴火した場合、東海地方および首都圏の各社・各店において、火山灰が飛来することで、交通インフラの混乱が予想されるほか、通信・システム・電力・上下水道や物流網等、全国的な影響が想定され、当社グループの事業継続に多大なる影響を及ぼす可能性があります。
感染症が拡大した場合、国内の消費マインドやインバウンド需要の低迷等、当社グループの業績や財務状況に悪影響を与える可能性があります。
近年では、他国からのミサイルが日本の領土等に着弾・落下する可能性もあり得ます。たとえ、お客さま、従業員、建物・設備・商品等に直接的な損害が無くても、攻撃が継続され、深刻な事態に発展した場合、当社グループの事業継続に甚大なる影響を及ぼす可能性があります。
火災が発生した場合、お客さま、従業員への人的被害、建物・設備・商品等への物的被害、被害者に対する損害賠償責任等が発生する可能性があります。その他、消防法違反が発覚した場合、罰則や営業停止に伴う営業損失等、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
<当社グループのリスク対策>
■自然災害への取り組み
平時の備え
・当社グループでは、想定される大規模災害(地震、水害、パンデミック、富士山噴火、ミサイル攻撃等)への対応のため、事業継続計画書(以下、BCP)、災害対策基本計画を策定しております。
・毎月開催されるリスク対策部会を通じて、自然災害に対する様々な取り組みを強化しております。
※体制整備、物理的安全対策、防災資機材の整備、コミュニケーション手段の整備、訓練実施等
・自主点検を年2回実施し、グループ各社の災害対策実施状況を把握し、適時フォローしております。
有事の対応
・年2回全国一斉安否確認訓練を実施し、従業員の安否報告と安否確認の周知徹底を図っております。
・年2回BCP訓練(首都直下地震・南海トラフ地震)を実施し、災害対応力向上を図っております。
※2024年度以降、複合災害への備え強化を目的に、大規模地震と合わせ富士山噴火対応も実施
・年1回以上、グループ各社においても大規模地震を想定した災害対策本部訓練を実施しております。
レジリエンス認証
・株式会社三越伊勢丹では、BCPの取り組みと店頭での募金活動や従業員のボランティア活動を支援する仕組み等が評価され、「事業継続」と「社会貢献」の分野において外部認証機関より百貨店初のレジリエンス認証を取得しております。
■風水害への取り組み
・当社グループ全拠点のハザードマップを作成し、災害対策本部を立ち上げるための基準を個別に設定しております。また災害発生時には、風水害対策マニュアルに基づいた対応を行っております。
■感染症への取り組み
・当社グループのBCPでは、「新型インフルエンザ等によるパンデミック」について、被害想定ならびに行動目標を定めております。グループ内で感染症が拡大した場合、総合対策本部を立ち上げ、お客さまと従業員の安全・安心を第一に、グループ全社で感染予防対策を実施してまいります。
■ミサイル攻撃への取り組み
・ミサイル攻撃については、Jアラート発令時の対応マニュアルを作成し、周知しております。
・リスク対策部会等を通じて、Jアラート発令時の訓練の事例共有を行い、横展開を図っております。
■火災・消防法違反への取り組み
・毎月開催されるリスク対策部会を通じて、火災に対する様々な取り組みを強化しております。
※日々のお買場点検、年2回の自主点検実施、事例共有による火災未然防止・再発防止等
・所轄消防署の協力のもと、防火防災訓練を実施し、火災発生時の対応力向上を図っております。
・当社グループでは、消防法に基づき適切に防火管理者選任、自衛消防隊を編成しております。
■従業員への教育
・社内報での防災に関する情報発信を通じて、従業員への自助の取り組みを推進しております。
<当社グループのリスク認識>
近年、SNSなどを通じて緩やかに結びつく匿名・流動型犯罪グループ等による特殊詐欺をはじめ、高額品を狙った強盗や窃盗などの組織犯罪が増加し、手口が巧妙化してきています。強盗・窃盗等は、お客さまや従業員の人命や安全を脅かすだけでなく経済的、物理的損失や営業停止を引き起こし、ブランドイメージを脅かす恐れがあります。
特に、当社グループは多岐にわたる事業活動やサービス提供のなかで、お客さま、お取組先の様々な情報をお預かりし、厳重に管理しております。昨今、日本企業が国内外からのサイバー攻撃を受ける事例が増加しており、当社グループでも情報セキュリティガバナンスのさらなる強化は急務となっております。サイバー攻撃等によるシステムの破壊や停止、不正アクセス等による機密情報や個人情報の漏洩が発生した場合、システムの停止と復旧に時間を要することにより、広範な業務に支障をきたすことを余儀なくされます。
また、従業員による不正・違法行為が発生した場合、社会的信用の失墜による売上減少や賠償金等の支払い負担、レピュテーション棄損等、業績や財務状況に悪影響を与える可能性があります。
<当社グループのリスク対策>
■組織犯罪等への取り組み
詐欺・強盗・窃盗等への取り組み
・毎月開催されるリスク対策部会を通じて犯罪リスクに対する様々な取り組みを強化しております。
※年2回の自主点検実施、事例共有による詐欺・強盗・窃盗未然防止・再発防止等
・所轄警察署の協力のもと、強盗訓練を実施し、強盗発生時の対応力向上を図っております。
サイバー攻撃・不正アクセス等への取り組み
・当社グループでは、情報セキュリティガバナンス強化のため、サイバーセキュリティ対策部会において、日常の業務活動のなかで技術的および人的・組織的な対策の推進を図っております。
・技術的対策では、サイバー攻撃を防御、監視、検知、駆除するためのセキュリティツールの導入と運用を強化しております。
・人的・組織的対策では、情報セキュリティに関する従業員のリテラシーの向上を図るため、システム部門における専門的なセキュリティ人財の育成や、従業員へのセキュリティ教育・サイバーインシデント訓練を適時実施しております。
■従業員による不正・違法行為 未然防止の取り組み
・「三越伊勢丹グループ企業理念」を実践するため、グループの役職員が日々の業務でいかに判断し、行動すべきかの倫理的基準を示す「三越伊勢丹グループ行動規範」を定め徹底を図っております。
・不正・違法行為を内部通報する「三越伊勢丹グループホットライン」を設けております。
・オンライン上の不正行為を抑止するために、技術的対策の導入を一層強化していっております。
(5) オペレーショナルリスク
<当社グループのリスク認識>
当社グループは、百貨店事業を中核とした事業展開を行っております。お客さまのニーズに合わせて、常に安全で安心な商品やサービスを提供することを最優先に考え、お客さまのご満足と信頼に応えられる品質を追求しております。百貨店事業は、私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律を始めとする経済法や各種消費者保護法、また営業許認可に関わる各種業法の適用を受けております。これらの法規制を遵守し、お取組先や消費者との取引においても、競争力や情報量の格差に乗じた不当な拘束等を排除し、公正な取引を行うことが求められております。これらの法規制を遵守できなかった場合、行政処分により当社グループの営業活動に制限がかかる可能性や、社会的信用の失墜、売上の減少、罰金や課徴金の負担等の財務上の損失が生じる可能性など、当社グループの営業活動に大きな影響を与えることが考えられます。
当社グループが実施しているサステナビリティ活動に関するお客さまアンケートにおいても、例年「商品の品質・安全の確保・正確な表示」が、当社グループに期待されている項目の上位に挙げられております。なかでも食料品販売から飲食サービスまで多岐にわたる食品衛生に関わる事業においては、アレルギー表記の不備等が原因となる食物アレルギー有症事故や、調理者の健康管理不良や食材管理不良等に伴う食中毒が懸念されます。これらが発生した場合、お客さまへの重篤な健康被害だけでなく、営業停止や罰則などの行政処分、社会的信用の失墜による売上の減少や損害賠償金等の支払いが発生し、当社グループの業績、財務状況に悪影響を与える可能性があります。
<当社グループのリスク対策>
■法令遵守への取り組み
三越伊勢丹グループ行動規範の策定と周知
・「三越伊勢丹グループ企業理念」を実践するため、グループの役職員が日々の業務でいかに判断し、行動すべきかの倫理的基準を示す「三越伊勢丹グループ行動規範」を定め浸透を図っております。
コンプライアンス推進体制
・コンプライアンス推進会議を組織し、定例会議において、法改正等への対応指針の策定と社内懸念事項の報告および解決に向けた取り組みを強化しております。
従業員への教育
・グループ全体の商品取引における法令遵守体制を構築するために、下請代金支払遅延等防止法や不当景品類及び不当表示防止法、特定商取引に関する法律に則したガイドラインやマニュアルを整備し、法改正やオペレーションの見直し等時宜に適った改定を行い、社内に周知しております。
・コンプライアンスを担当する実務者向けに、法令、社内規程等を含めた定期的な教育を実施し、実務とコンプライアンス遵守の両立に取り組んでおります。
事件・事故発生時の対応
・事件・事故が発生した場合、各ガイドラインとレポートラインに則った関連部署間での連携による解決を図り、その後、社内にて事例を共有し、再発防止に努めております。
■お取組先との公平・公正な取引への取り組み
・当社グループは、持続可能なサプライチェーンの構築やビジネスと人権等の社会課題に対応するため、「三越伊勢丹グループ調達方針」、「三越伊勢丹グループ人権方針」を策定しております。
・当社グループは、お取組先や価値創造を図る事業者の皆さまとの連携・共存共栄を重視して、新たなパートナーシップを構築することを宣言する「パートナーシップ構築宣言」を策定しております。宣言の内容は、eラーニングを通じて従業員全員が理解・実践に努めており、公平・公正な取引を通じてお取組先との信頼関係を築き、社会的価値と経済的価値の両立を目指しております。
・アンケートの実施、お取組先との対話、方針説明会の開催等を通じて、お取組先各社との対話を深め、サプライチェーン・マネジメント体制を整えております。
・当社グループ内に派遣いただいている従業員を含め、店頭において法令違反や社内規程に反する行為がないか、定期的に点検を行うとともに、法令、社内規程等のOJT教育を実施しております。
■商品の品質・安全管理体制
食品事故 未然防止・再発防止への取り組み
・食品衛生の基本となるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理計画書を策定し、お取組先まで共有することで食品衛生確保の網羅性を図っております。また、計画書に基づき日々の記録と保管を徹底し、定期的な点検を実施することで、法令遵守と食中毒等予防の両面からお客さまの安全確保に取り組んでおります。
・アレルギー有症事故を予防するため、正確なアレルギー情報を提供するためのマニュアルと社内体制を整備しております。定期的な点検を通じて情報の正確性を確認し、お客さまとも積極的なリスクコミュニケーションを日々推進しております。
<当社グループのリスク認識>
昨今、個人情報を用いたビジネスの拡大や新規ビジネス創出に伴う個人情報の漏洩や不適切な利用事案の増加から、消費者の個人情報保護への意識と利用状況への関心が高まっております。また、個人情報に関する各国法も相次いで整備されるなか、企業には、越境移転も踏まえた厳重な管理体制や、目的内利用の仕組みの構築が求められております。
当社グループは、百貨店事業、金融事業、不動産事業、関連事業における事業活動やサービス提供のなかで、多くのお客さま、お取組先から個人情報をお預かりし厳重に管理しております。しかし、サイバー攻撃、不正アクセス等による個人情報漏洩や管理体制不備による個人情報漏洩・紛失、また個人情報の保護に関する法律等への違反が発覚した場合には、損害賠償費用や罰金などの費用が発生する可能性があります。さらに、当社グループの社会的信用の失墜による売上の減少等、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
<当社グループのリスク対策>
■サイバー攻撃、不正アクセス等への取り組み
・情報セキュリティリスクへの備えとしてサイバーセキュリティ対策部会において、人的・組織的・技術的な対策の推進を図っております。人的・組織的対策では、情報セキュリティに関する従業員のリテラシー向上を図るため、システム部門における専門的なセキュリティ人財の育成や、セキュリティ教育、サイバーインシデント訓練を実施しております。また、技術的対策では、サイバー攻撃に対し、防御、監視、検知、対応するためのセキュリティツールの導入と運用を強化しております。
■グループ情報管理基盤の構築
・グループ経営戦略会議の諮問機関であるリスクマネジメント委員会を通じて、「館業」から「個客業」への転換に向けて、堅固なグループ情報管理基盤の構築に向けた対策の強化を図っております。
個人情報漏洩・紛失等の未然防止・再発防止の取り組み
・適切な個人情報の取得および利用のための自主基準やマニュアルを策定し、これらに基づいて管理システム・社内管理体制を整備し、実店舗からオンライン環境に至る全ての事業環境において、日々厳重に個人情報の管理を実施しております。
・個人情報を含む情報セキュリティ体制の策定と周知徹底を行い、さらに継続的な見直しとモニタリングを実施しております。
・従業員に向けた教育を実施し、対応スキルの向上・リテラシーと意識向上を図っております。
・行政によるデジタル社会の形成に向けた法整備状況や個人情報の保護に関する法律、法規制、ガイドライン等への対応を進めております。
海外拠点における取り組み
・海外拠点においては、現地法規制に関する情報収集を継続的に行い適切な対応を行っております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、物価上昇により賃上げの動きが広がり雇用・所得環境の改善が進む中で、個人消費は回復基調で推移しました。また、小売業を含む非製造業は相対的に堅調な状況が続いており、訪日外国人の増加によるインバウンド消費額は2024年度に過去最高を記録しました。
一方、世界経済においては欧州や中東の地政学リスクや、各国の金融引き締め政策継続による景気の下振れリスク、急激な為替変動等の影響に対する懸念が見られました。また、世界的インフレによってエネルギーや原材料価格が高騰し、国内においても所得の伸びを上回る物価上昇により一部において消費に慎重になる傾向も見受けられ、消費の二極化がこれまで以上に進むなど、景気の先行きは依然不透明な状況が続いています。
こうした環境下において当社グループは、「三越伊勢丹グループ 企業理念」のミッションとして「こころ動かす、ひとの力で。」を掲げ、「お客さまの暮らしを豊かにする“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」というビジョンの実現に向け、中期経営計画(2022~2024年度)に基づいて事業活動を進めてまいりました。
中期経営計画の最終年度である当連結会計年度は、第1フェーズである「百貨店を中心にグループの再生」を大幅進展させ、「館」にお客さまを集客するマス向けのビジネスモデルである「館業」から、「個」のお客さまとつながる「個客業」への変革に向け取り組みを強化してまいりました。特にマスから個へのマーケティングの取り組みにより、識別顧客数・識別顧客売上高が増加し、個客とのつながりの深化で1人当たり年間購買額も着実に増加傾向にあります。また同時に次なる「まち化準備」フェーズに向けた取り組みを加速させるべく、地域百貨店や関係会社の事業構造改革への注力、「百貨店の科学」のグループ会社への浸透による経費コントロールを推し進め、国内百貨店事業を中心にした経営効率の大幅な改善により財務体質の盤石化を図ってまいりました。その結果、百貨店事業全体での損益分岐点売上高が低下し、収入拡大が利益拡大に直結する構造が確立でき、第1フェーズで目指した「百貨店の再生」を実現しました。また、国内関連事業においては、構造改革による事業再編を着実に進行させ、加えて事業活動体制の拡充に努めてまいりました。
経営基盤としての「サステナビリティ」では、「三越伊勢丹グループ 企業理念」のもとで重点取り組み(マテリアリティ)を「人・地域をつなぐ」「持続可能な環境・社会をつなぐ」「ひとの力の最大化」「グループガバナンス・コミュニケーション」の4つに定め、当社グループの事業戦略とつなぎ合わせ、一体的に推進して社会課題の解決に取り組んでおります。中でも「think good」は、彩りある豊かな未来に向けて「想像力を働かせ、真摯に考えることからスタートする」という想いが込められた三越伊勢丹グループのサステナビリティ活動のスローガンであり、2024年度は全国で1,300件を超える企画を実施いたしました。特に国内百貨店業で実施した、お取組先や教育機関と協業し、残反をファッションやアートにアップサイクルする大型プロジェクト「ピースdeミライ」は好評を博し、伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、岩田屋本店など複数店舗で開催し、これまでに延べ150以上のブランドと50名以上の学生が参加しています。詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」とあわせてご覧ください。
当社では、企業理念のミッションとして「こころ動かす、ひとの力で。」を掲げている通り、企業の持続的な成長を続けるうえでの根幹は、多様な従業員一人ひとりの「ひとの力」であると考えます。“暖簾”を愛し、信頼してくださるお客さまとの深いつながり(お客さまとの関係性)、350年を超える歴史と経営陣の想いが紡ぐ、ビジネスパートナーとの信頼関係(お取組先との信頼関係)、戦略を理解・コミットして生涯にわたって成長を続ける人財(従業員の実行力)、これらすべてを「ひとの力」で継続的に深化させて「個客業」における競争優位を確立してまいります。またこの度、三越伊勢丹グループの人財戦略や取り組みが評価され、2025年3月に「共働きや共育てを可能にする性別を問わない両立支援」の取り組みが特に優れた企業として経済産業省と東京証券取引所より令和6年度「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」に選定されました。
上記の取り組みを進めた結果、当連結会計年度において、計画当初の営業利益額64,000百万円を大きく上回り2期連続して過去最高を更新しました。
当連結会計年度の連結決算につきましては、売上高は555,517百万円(前連結会計年度比3.6%増)、営業利益は76,313百万円(前連結会計年度比40.4%増)、経常利益は88,123百万円(前連結会計年度比47.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は52,814百万円(前連結会計年度比5.0%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
百貨店業
国内百貨店においては、伊勢丹新宿本店や三越銀座店を中心に入店客数が大幅に伸長しました。また、免税売上高の大幅な伸長に加えて、外商やエムアイカード会員などの識別顧客による売上が拡大しました。
当社グループでは、上質で豊かな生活を求めるお客さまの消費ニーズにお応えする「高感度上質戦略」を推進しており、伊勢丹新宿本店や三越銀座店のリモデルにより新規に導入したコンテンツ・MDが好調に推移しました。地域百貨店においては、高感度上質消費を志向する全国のお客さまのご要望にお応えするため、伊勢丹新宿本店・三越日本橋本店への送客や商品の取り寄せを可能とする「拠点ネットワーク戦略」の取り組みを強化したことで、売上が拡大しました。
「個客とつながるCRM戦略」としては、伊勢丹新宿本店「丹青会」、三越日本橋本店「逸品会」などの両本店のお得意様向けのご招待会に加えて、各店で上位個客に向けた独自のおもてなし企画を実施しました。その結果、首都圏の都心店舗だけでなく地域店舗においても前年実績を大きく上回り、国内百貨店計で過去最高の総額売上高を更新しております。さらなる戦略の推進に向け、2025年3月には海外個客向けアプリ「MITSUKOSHI ISETAN JAPAN」や年会費無料の「エムアイカード ベーシック」を導入し、個客の識別化に向けた取り組みを強化しております。
合わせて、経費コントロールの取り組みを引き続き強化したことで、大幅な収益の改善につながりました。このうち、オンライン事業についても売上拡大に加えて収支構造改革により黒字化を達成し、安定的に収益を創出できる構造へと転換しております。
海外店舗では、2023年8月にレストランをリモデルオープンした米国三越の売上が好調で、前年実績を大きく上回りました。また、マレーシアにおいても、先行してリモデルオープンしたKLCC店の食品エリアが全体を牽引し、売上が堅調に推移しております。
このセグメントにおける売上高は461,136百万円(前連結会計年度比2.9%増)、営業利益は64,563百万円(前連結会計年度比43.0%増)となりました。
クレジット・金融・友の会業
クレジット・金融・友の会業は、好調なグループ百貨店売上の牽引によるクレジットカード利用の拡大に加え、割賦手数料やマーケティング事業収入の拡大などにより、売上が前年実績を上回り増収となりました。また、収支構造改革の推進が奏功し、販売管理費の抑制につながり、2024年度は前年度に続き増益となっております。なお、新たな金融サービスである伊勢丹新宿本店時計売場における商品保証サービスは当初計画の加入率を達成し、新規カード入会にもつながるなど、将来の事業拡大に向けた戦略推進に寄与しています。2025年3月には新たに会員数拡大に向けた「エムアイカードベーシック」を導入し、足元のカード獲得件数は大きく伸長しております。引き続き百貨店事業を通じてつながったすべての識別顧客の暮らし全般に関わるご要望にお応えするべく、今後も金融サービスのラインアップを拡充してまいります。
このセグメントにおける売上高は34,433百万円(前連結会計年度比5.1%増)、営業利益は5,743百万円(前連結会計年度比41.8%増)となりました。
不動産業
不動産業は、新宿エリアの保有物件における賃料収入増加や建装事業のグループ間での連携強化により受注が増え、増収増益となりました。
高品質な内装・造作家具、自社工場による高い品質と技術力を強みとする株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザインでは、外部の大型開発案件のホテルやオフィス、ブランドショップ改装の施工を中心に売上が拡大し、増収となりました。
このセグメントにおける売上高は29,539百万円(前連結会計年度比10.3%増)、営業利益は3,615百万円(前連結会計年度比18.7%増)となりました。
その他
クイーンズ伊勢丹などのスーパーマーケット事業や食品のOEM製造事業を展開している株式会社エムアイフードスタイルは、三越伊勢丹のグループ力を活かしたプライベートブランドの販路拡大やOEM受注拡大、エムアイカード会員に向けたキャンペーンの実施など、グループでの取り組みを強化しました。2024年11月にはJR埼京線十条駅の再開発地区に「クイーンズ伊勢丹十条店」を新規オープンし、販路を拡大しています。
旅行業の株式会社三越伊勢丹ニッコウトラベルは、国内旅行では、毎年ご好評頂いているチャータークルーズ催行、海外旅行では独自の欧州リバークルーズに加えてイタリア4大モニュメントの貸切見学など、希少性の高い特別企画旅行を展開しました。加えて、円安傾向や海外での物価高の影響を受けながらも原価管理と経費コントロールを徹底したことにより、大幅な増収増益となりました。
広告・メディア事業の株式会社スタジオアルタは、屋外広告やデジタルサイネージ等の百貨店の広告メディア販売事業が堅調に推移しました。また、グループ会社の広告制作を集約させた効果が継続し、大幅な増収増益となりました。
このセグメントにおける売上高は96,094百万円(前連結会計年度比5.5%増)、営業利益は2,079百万円(前連結会計年度比0.3%増)となりました。
当連結会計年度末の総資産は1,205,726百万円となり、前連結会計年度末に比べ19,376百万円減少しました。これは主に、有利子負債の返済による現金及び預金の減少、のれんの減損などによるものです。
負債合計では602,847百万円となり、前連結会計年度末から21,431百万円減少しました。これは主に、有利子負債の返済などによるものです。
また、純資産は602,878百万円となり、前連結会計年度末から2,054百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことおよび為替換算調整勘定が増加したことなどによるものです。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて30,555百万円減少し、41,834百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、89,564百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ収入が32,669百万円増加しました。これは主に、税金等調整前当期純利益が25,753百万円増加したこと及び売上債権の増減額が33,849百万円増加したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、25,955百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出が1,059百万円減少しました。これは主に、長期貸付による支出3,963百万円があった一方で、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入が4,254百万円増加したことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、94,909百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出が26,423百万円増加しました。これは主に、連結の範囲を伴わない子会社株式の取得による支出16,161百万円があったこと及び自己株式の取得による支出が10,003百万円増加したことなどによるものです。
当社及び当社の関係会社においては、その他事業の一部に実績がありますが、当社グループ全体の事業活動に占める比重が極めて低いため、記載を省略しております。
販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(重要な会計上の見積り)に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
4)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、充分な流動性の確保及び財務健全性の維持を常にめざし、安定的な営業キャッシュ・フローの創出と幅広い資金調達手段の確保に努めております。
運転資金及び収益基盤拡大に必要な投融資資金は、営業キャッシュ・フローに加え、銀行借入金、社債、コマーシャル・ペーパー等により賄っております。
また、一時的な資金不足に備え、主要取引銀行とのコミットメントライン契約及び当座借越契約、並びにコマーシャル・ペーパー発行枠により、充分な流動性を確保しております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(子会社株式の追加取得)
当社の子会社である株式会社三越伊勢丹は、2024年4月1日に三越伊勢丹の子会社でありシンガポールにて伊勢丹の店舗を展開するイセタン(シンガポール)Ltd.と、同社の発行済株式の全て(三越伊勢丹が保有する対象会社株式を除く。)を取得することにより完全子会社化する手続きを開始することについて合意し、本件株式取得の実行に関する Implementation Agreementを締結しました。その後、イセタン(シンガポール)Ltd.の賛同の下、同社の株主の承認及びシンガポールの裁判所の許可を取得し、完全子会社化しました。
詳細は、「第5 経理の状況 (1)連結財務諸表 注記事項」の(企業結合等関係)をご参照ください。
(持分法適用関連会社の一部株式譲渡)
当社は、当社の持分法適用関連会社である新光三越百貨股份有限公司の株式の一部を新光三越の合弁に係る当社の合弁パートナーが設立した特別目的会社である新昕資本股份有限公司へ譲渡することについて合意し、本株式譲渡を完了いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 (1)連結財務諸表 注記事項」の(重要な後発事象)をご参照ください。
特に記載する事項はありません。