第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

以下の記載における将来に関する事項は、本書提出日現在において当行グループが判断したものです。

 

(1) 経営の基本方針

当行グループは以下の経営方針のもと、「安心・安全で最も便利な銀行」を目指しています。

■ 当行は銀行業務の公共性に鑑み、信用を維持し、預金者保護を徹底するために、健全経営と効率経営を確保します。加えて金融の円滑化を進めるとともに、社会的インフラとしての決済機能の充実に努めます。

■ 当行は、楽天グループの一員として、グループの経営資源を最大限活用し企業価値の増大を図ると同時に当局の主要行等監督指針に則り、経営の独立性確保に充分留意します。

■ 当行は、お客さま第一の考え方を徹底し、お客さまの多様なニーズに応え、満足いただけるようなサービスを提供します。

■ 当行は、人材の育成強化を図るとともに、役職員がいきいきと仕事の出来る職場環境を整備し、働き甲斐のある職場作りを進めていきます。

 

また、楽天グループの一員として、イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントすることを目指します。個人及び法人のお客さまに対して、満足度の高いサービスを提供するとともに、多くの人々の成長を後押しすることで、社会を変革し豊かにしていくことに寄与していきます。

 

(2) 目標とする経営指標

当行は、店舗を持たないインターネット銀行という主要行や地方銀行等とは一線を画した新しい銀行ビジネスを実践しており、営業基盤の拡大途上であることから、口座数及び預金量を営業基盤の規模を示す重要な経営指標として位置付けています。また、経常収益及び経常利益を成長性や収益性を評価する指標として位置付けています。2024年3月期末の口座数は15.2百万口座(前期比+1.4百万口座)、預金量は10.5兆円(前期比+1.4兆円)となり、また、2024年3月期の連結経常収益は137,950百万円(前期比+17,504百万円)、連結経常利益は48,367百万円(前期比+9,620百万円)となっています。今後も営業基盤の拡大及びこれに伴う事業の成長を推進してまいります。

 

(3) 経営環境・経営戦略

1.経営環境

世界経済は、「アフターコロナ」での経済活動の正常化により回復傾向にありましたが、長期化するロシア・ウクライナ情勢やイスラエル・パレスチナ情勢等の影響により不透明感も漂いました。また、原油、原材料価格、人件費の上昇等を契機とするインフレ進行への対応として、欧米を含む多くの国の中央銀行が連続的に政策金利を引き上げたことで、逆に高金利による景気悪化への懸念も生じました。日本においては、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行されたことにより「アフターコロナ」への転換が進み、経済活動が活発化するとともに、インバウンドの回復による外国人旅行者の消費も景気回復を後押ししました。金融政策においては、日本銀行が2024年3月の金融政策決定会合において、賃金と物価の好循環を確認し、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、2016年から継続してきたマイナス金利政策の解除を決定しました。その結果、これまで−0.1%としていた政策金利を0~0.1%程度(無担保コール翌日物レート)に引き上げました。このほか、人口減少・地域過疎化等の経済構造問題への対応も引き続き重要であることに加えて、世界的な気候変動問題への取組についての対応も求められています。

こうしたなか、昨今の銀行業界を取巻く環境は、新型コロナウイルス感染症への対応として加速した個人の生活や法人の企業活動のデジタルシフトが進展するなか、個人、企業ともにインターネットバンキングへ移行する動きが加速しました。メガバンクや有力地域金融機関は、自前のインターネットバンキングへの経営資源の投下や、フィンテック企業との提携も含めて、インターネットバンキングの強化を図る動きを加速しています。特に、為替業務等のインターネットとの親和性が高く、リアル店舗では採算性が低い業務は、インターネットバンキングへのシフトを推進しているほか、スマートフォンアプリの開発にも加速度的・積極的に経営資源を投下しています。また、インターネット銀行においては、グループ内にクレジットカード・証券・保険等の銀行以外の金融機能も取込む動きが見られ、金融機能を提供するグループ企業間のシナジーを追求する金融ホールディングス化の動きを加速させています。

さらには、デジタル技術の進展に伴う金融と非金融の垣根を越えた決済手段の多様化・キャッシュレス化の進展や異業種からの金融事業への参入が見られる等、金融・非金融の垣根を越えた競争が激化しています。

 

2.経営戦略

当行は、インターネットを活用し、個人、法人のお客さまに利便性の高いサービス、お得なサービスを、スピード感をもって提供し、「安心・安全で最も便利な銀行」を実現することを目指して事業を展開します。具体的には、個人ビジネスにおいては、①「生活口座として利用される銀行」、②テクノロジーを活用した時間と場所を選ばない「安心・安全で便利な銀行」を目指します。法人ビジネスにおいては、テクノロジーを使って融資、預金、為替を含めた全ての銀行サービスを顧客のニーズに合わせて提供し、①「取引先企業の規模に関わらず全ての取引先に利便性を提供する銀行」、②「企業経営者のパートナーになる銀行」を目指しています。また、楽天エコシステムを活用して新規顧客を効率的に獲得し、当行の事業の成長を実現することを目指します。これらの楽天エコシステムを活用した事業展開を通じてお客さまの楽天グループのサービスに対する信頼を高め、結果としてお客さまの当行サービスに対する粘着性の向上に繋げたいと考えています。さらには、インターネットの有効活用や役職員の革新的なアイデアの活用により事業の低コスト運営を徹底し、低コスト運営により得られたコスト削減分の一部をお客さまにポイントやキャッシュバック等で還元することにより、お客さまにとってお得なサービスを実現することを目指します。

一方、「安心・安全な銀行」としてお客さまに認知されるために、コンプライアンス、リスク管理を徹底し、最高レベルのセキュリティを実現することを目指します。但し、セキュリティの強化にあたっては、お客さまの利便性を犠牲にしないよう、セキュリティとお客さまの利便性の両立に努めます。

以上の取組を通じて、社会に対して銀行としての新たなスタンダードを提示できるような存在になることを目指し、銀行業界の更なる発展に貢献していきます。

 

(中長期ビジョン)

当行は、ゼロキャッシュ時代の到来を見据えたFinTechのリーディングカンパニーを目指し、更なる顧客基盤の拡充と収益基盤の強化、FinTech領域の成長取込みに向け、2022年4月28日に以下の内容の中長期ビジョンを策定し、公表しました。

 

(i) 中長期ビジョンの概要
① 経済・事業環境の認識

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により急速に進展したデジタルシフトは、消費・経済活動の正常化が進む中でも進展が続いています。

当該環境下において、メガバンクや有力地域金融機関は、伝統的銀行業のDXを進めるデジタル・バンキング領域に経営資源の投下を図り、FinTech企業との提携も含めたサービス強化を図る動きが加速しています。また、インターネット銀行においては、グループ内にクレジットカード・証券・保険等の銀行以外の金融機能も取り込む動きが見られ、金融機能を提供する企業間のシナジーを追求する金融ホールディングス化の動きが加速しています。さらには、インターネット関連企業をはじめとする他業態からの金融業への参入の動きもあり、銀行取引においても今後到来することが想定されるゼロキャッシュ時代に向けて、リアルの店舗での取引からデジタル・バンキングでの取引に移行する動きが加速しています。

当行は、2000年の創業以来20年以上にわたり、インターネット上における利便性の高い金融サービスをより多くのお客さまに提供することに努めており、2024年2月には1,500万口座を突破するなど、多くの個人及び法人のお客さまに利用されています。また、楽天グループの金融機能の中心となるグループ会社のひとつとして、様々な楽天グループ内金融サービスとの連携を深耕してまいりました。このように、“第一の成長ステージ”において、当行はデジタル・バンクの先駆者として金融サービスのデジタル化を推進してきたと自負しています。

 

 

② 事業拡大の方向性

当行の基本方針としては、FinTechのリーディングカンパニーを目標として、楽天エコシステムとのシナジーを最大限に発揮することで顧客数と顧客当たりの取引機会を増やし、適切なリスクコントロールの下で業容拡大の更なる加速化を進めます。個人ビジネスにおいては、①「生活口座として利用される銀行」、②テクノロジーを活用した時間と場所を選ばない「安心・安全で便利な銀行」として従前のリアル店舗における取引をデジタル化することを目指します。法人ビジネスにおいては、データ及びテクノロジーを使って融資、預金、為替を含めた全ての銀行サービスを顧客のニーズに合わせて提供し、①「取引先企業の規模にかかわらず全ての取引先に利便性を提供する銀行」、②「企業経営者のパートナーになる銀行」を目指し、本邦金融市場におけるシェア拡大を進めます。

 

(ⅱ) 中長期ビジョンの達成に向けた“第二の成長ステージ”としての成長戦略
① 顧客基盤の拡充

以下の事業環境と当行の強みを活かし、顧客獲得をさらに加速させることを目指しています。

・国内銀行業界におけるデジタルシフトの進展

・楽天エコシステムの活用(楽天ポイント、ブランドや知名度、楽天グループ各社との顧客相互送客等)によって既に実現している低い顧客獲得費用

・高度な自社システム開発・保守・運用体制に裏付けられた優れたUI/UXを持つサービスとアプリ

・効率的な低コストオペレーションを背景とした安価で顧客満足度の高いサービス

 

② 収益力の強化

・個人・法人顧客数の拡大による貸出利息収益、手数料収益の増加

・当行の信託機能を活用した証券化資産の運用上積み

・住宅ローン、カードローン、リバースモーゲージ等に続く、プロダクトラインナップの拡充

・適切な管理に基づくミドルリスク運用資産の拡充

 

③ FinTech領域の成長取込み

・楽天ペイメント株式会社との連携深化による個人口座のメイン化・生活口座化、法人口座獲得の推進による顧客基盤の更なるアクティブ化、高頻度なタッチポイントを活用したクロスセル、による成長機会の拡大

・当行と楽天グループが持つデータとAIを活用した審査・マーケティングの精度向上や銀行アプリのページビューを活用した広告ビジネス及び新規ビジネスの拡大

・BaaSプラットフォームのパートナーとの連携による新たな収益機会の創出

 

この目指す事業拡大の実現に向けて、「顧客基盤の拡充」、「収益力の強化(貸出利息収益と手数料収益の両輪の拡充)」、「FinTech領域の成長取込み」を三位一体とした取組を推進します。

 

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

1.生活口座化の推進

当行グループの収益力を向上し、成長を加速するためには、口座数を増やすことは重要ですが、それにとどまらず、個人顧客が生活の中で生じる様々な金融サービスへのニーズを満たすために当行口座を利用するように誘導し、決済資金を当行口座に滞留させ、顧客あたりの取引件数、収益額を向上させることが重要です。そのため、当行グループは、楽天グループの顧客基盤等を活用して新規口座を獲得した後、顧客の給与振込及び口座振替を獲得して預金・為替の拡大を図り、続いて顧客の嗜好に合わせた他のサービスをクロスセルすることにより、顧客口座の生活口座化を推進しています。生活口座化の推進にあたっては、店舗を持たないインターネット銀行のコスト競争力に加え、当行グループのシステムの柔軟性・コスト競争力を活かし、顧客に便利でお得なサービスを提供することが肝要です。当行グループは、便利でお得なサービスの開発により一層注力して、顧客口座の生活口座化を加速し、顧客基盤の拡充を図ってまいります。なお、「生活口座化」とは、「口座保有者に対して当行口座を『生活口座』としての利用を促す取組」と定義し、「生活口座化」の進展度合いを測るために「メイン口座率」というKPIを設定しています。「メイン口座率」というKPIにおける「メイン口座」とは、「給与・賞与振込口座、又は口座振替を利用されている口座」と定義しています。2024年3月末時点のメイン口座率(単体総口座数(法人口座含む)のうちメイン口座数の割合)は31.5%となっています。また、生活口座化の進展により、2020年3月末時点では3.5兆円であった単体預金残高は、2024年3月末時点では10.5兆円となっています。

 

(単位:千口座、%)

項目

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

メイン口座数

1,738

2,592

3,618

4,280

4,803

メイン口座率

20.0

24.6

29.3

31.1

31.5

 

 

 

2.資産運用の多様化による収益基盤の強化

日本銀行は、2024年3月の金融政策決定会合においてマイナス金利政策を解除し、金融市場調節方針として、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促すことを決定しました。当行は、現在、住宅ローン、カードローン、教育ローン、オートローン、不動産担保ローン、リバースモーゲージ等のローンを個人顧客向けに提供していますが、斯かる環境の変化のもと、ローン商品をさらに多様化し、顧客の生活シーンで必要になる様々な資金需要に漏れなく応えることにより、更なる利息収益の拡大を図ることができると考えています。また、法人顧客に対する営業体制の質的・量的強化による法人融資の増加、企業の保有する金銭債権、不動産等の証券化をアレンジすることによる証券化資産への投資の増加等も、利息収益の上積みに寄与するものと考えています。当行グループは、上記の施策をスピード感をもって実行し、運用資産を多様化・増加することにより、利息収益の拡大を実現していきたいと考えています。

また、当行の運用資産の多くは短期の市場金利の上昇にスライドして利回りが上昇するため、預金金利の上昇を適切にコントロールすることにより、運用利鞘を拡大することが可能であると考えています。

なお、日本銀行は、先述のマイナス金利政策の解除と同タイミングで、長期金利操作(イールドカーブ・コントロール)を撤廃しました。これにより、長期金利が漸進的に上昇しているため、今後、中長期金利に連動する運用資産を取得することによる収益獲得の機会が増加する一方、既に当行が保有している有価証券に含み損が生じる、又は含み損が拡大する可能性があります。

 

 

3.システムのキャパシティ及びセキュリティの確保

当行グループは、2024年3月末現在、インターネット銀行で最大の口座数、最大の預金量を有しており、現時点において、全ての顧客にサービスを提供するために十分なシステムのキャパシティを確保しています。また、犯罪、不正取引の手口分析等により将来の犯罪、不正取引の傾向を予測し、先手を打った対策により業界最高レベルのセキュリティを顧客に提供していると自負しています。しかし、顧客数は今後も増加することが見込まれるため、システムのキャパシティは、顧客の取引動向も踏まえて計画的に拡充していくことが必要です。また、セキュリティについても、犯罪、不正取引の手口が時間の経過とともに変化するため、当行グループが適時に適切にセキュリティを改善し続けなければ、顧客をリスクに晒す結果になることも否定できません。当行としては、システムのキャパシティの拡充、セキュリティの確保に十分な経営資源を継続的に投下し、全行的な推進体制を構築することにより、常に十分なシステムのキャパシティを確保し、業界最高レベルのセキュリティを提供し続けることを目指します。

 

4.コーポレート・ガバナンスの一層の充実

いかなる企業においても、コーポレート・ガバナンスの強化は、最重要経営課題の1つであり、当行グループにおいても、常にコーポレート・ガバナンスの充実に取り組む必要があります。特に、当行グループは、銀行業を営んでいるため、高いコーポレート・ガバナンスが求められます。当行グループは、経営環境の変化に迅速かつ的確に対応できる業務運営体制、経営執行の公正性及び透明性を確保する経営監視機能の強化に努め、コーポレート・ガバナンスの一層の充実を図ってまいります。また、当行グループは、今後も業容を拡大する見込みであるため、業容に応じたリスク管理態勢、コンプライアンス態勢の構築が不可欠です。リスク管理態勢、コンプライアンス態勢の継続的な向上を当行の最優先経営課題として位置づけ、全役職員が自らのこととして取り組むことにより、役職員ひとりひとりが銀行としての公共的使命を自覚し、行動する企業風土の更なるレベルアップを図ってまいります。

 

5.自己資本の一層の充実

当行は、中長期ビジョンを達成するための“第二の成長ステージ”としての成長戦略の1つとして、個人・法人顧客数の拡大による貸出利息収益の増加や運用資産の拡充を掲げています。今後とも顧客基盤を拡充して事業拡大を図り、当行の優位性をより確固たるものにするためには、運用資産の更なる多様化、運用資産の積み上げの加速が不可欠であり、そのためには自己資本の継続的な充実が必要であると考えています。当行の2024年3月末時点における「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)」に定められた算式に基づき算出された連結自己資本比率は10.93%となっており、短期的に自己資本の充実に取り組まなければならない状況にはなく、自己資本の充実は現時点で優先的に対処すべき課題ではありませんが、今後の中長期的な運用資産の積み上げを展望すると、毎期、確実に利益を蓄積して自己資本の一層の充実を図ることが必要であると考えています。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当行グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当行グループが判断したものです。

 

(1) 重要なサステナビリティ課題への対応に関する基本的な方針

 当行は、楽天グループの一員として、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」というミッションのもと、企業価値を高めながら、社会に貢献し、社会と共生していくことをサステナブル経営基本方針としています。

 

1.ガバナンス

当行では、取締役会がサステナビリティ経営に関連する基本方針の決定、多角的な視点や長期的な時間軸での意見交換、態勢構築等を実施しています。経営会議では、サステナビリティ経営に関連する取締役会決議事項の審議機関として、また、基本方針に基づく業務執行機関としての役割を果たしています。上記ガバナンス態勢の下で、行内横断的な会議体としてサステナビリティ推進会議を設置するほか、サステナブル経営の推進に向けて、当行における人材の育成や従業員の啓発、職場環境の整備に当たるとともに、環境や社会の課題の解決に資するお客さまの取組を支援する施策を推進しています。

サステナビリティ推進会議は、代表取締役社長を議長として、各業務執行本部長、リスク管理本部長等が参加する会議体として開催しており、当年度は3回開催しました。当該会議では当行のサステナブル経営基本方針及び各施策の策定の検討等、環境面、社会面における中長期的なサステナビリティ課題や機会への対応方針や取組計画等を協議し、関連する目的設定等の重要な事項があれば経営会議及び、取締役会に付議又は報告をすることとしています。

 

2.リスク管理

当行ではリスク管理本部を中心とした統合的なリスク管理態勢を構築しており、月次でリスク管理委員会を開催し、市場・信用リスク管理、資金流動性リスク管理、オペレーショナル・リスク管理等といったリスク管理に関する事項について、統合的リスク管理の観点から管理態勢・運営方針の策定及びその管理状況等について協議及び報告を行い、経営会議、取締役会へリスク管理状況を報告しています。リスク管理委員会は、統合的なリスク管理の一環として、サステナビリティに関連する項目も含めて、年次でリスクプロファイルの評価及び見直しを行い、経営会議、取締役会に報告を行いました。

上記リスク管理体制の下、2022年5月に制定した「環境・社会に配慮した投融資方針」を踏まえ、環境や社会に対する影響を勘案のうえ、審査基準に照らし融資判断を行っています。

 

(2) 重要なサステナビリティ課題への取組及び指標

当行が気候変動、人的資本に関して行っている取組は以下のとおりです。ガバナンス及びリスク管理体制については、「(1) 重要なサステナビリティ課題への対応に関する基本的な方針 1.ガバナンス、2.リスク管理」をご参照ください。

 

1.気候変動

当行は、2022年3月に賛同を表明した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を踏まえ、構成されるバリューチェーン全体での脱炭素化を目指して、(i)環境関連投融資を通じた社会のカーボン・ニュートラルへの取組支援、(ii)温室効果ガス(以下、「GHG」という。)プロトコルに沿ったGHG排出量の計測及び(iii)再生可能エネルギー100%への転換(RE100)達成に向けた国内外での取組を着実に進めています。

 

当行における気候変動の機会、物理的リスク、移行リスクへの検討と対応状況は以下のとおりです。

リスク及び機会

概要及び対応策

機会

気候変動関連ビジネスへの支援が不可欠な中、当行では、革新的な金融サービスの提供により、お客さまのカーボン・ニュートラルに向けた対応を支援していきます。

物理的リスク

台風・豪雨等の異常気象による経済活動の低迷や担保価値の毀損による与信関連費用の増加が考えられます。近年の大規模自然災害の発生状況も睨みつつ、気候変動が財務に与える影響を分析していきます。

移行リスク

当行では、脱炭素社会への移行に伴い炭素税等の各種法規制が課せられる可能性をはじめとした気候変動政策や規制、技術革新等により生じるリスクをモニターしています。

また、「環境・社会に配慮した投融資方針」に基づき、ネガティブ・インパクトの大きい以下の事業に資金使途を特定した投融資には取り組まない方針としています。

- 石炭火力発電事業、森林伐採事業、パーム油農園開発事業、非人道的兵器の開発・製造事業、人権侵害が行われている事業

 

 

上記に伴う指標として、環境関連投融資残高、GHG排出量(連結グループにおけるスコープ1、2、3)及び再生可能エネルギー100%への転換(RE100)の達成状況を採用しています。それぞれの指標と目標は以下のとおりです。

 

(i) 環境関連投融資残高(注)

2024年3月31日時点における環境関連投融資残高は1,326億円となり、当初2027年3月31日の達成目標としていた1,000億円を前倒しで達成しました。

新たな環境関連投融資残高の目標については、取締役会の決議を経て決定する予定です。

 

(注) 環境関連投融資の範囲には、以下①及び②に係る投融資案件が含まれます。

    国際原則又は政府の指針に適合する投融資、及びそのリファイナンス

・   グリーンボンド原則(国際資本市場協会<International Capital Market Association>)

・   グリーンボンドガイドライン(環境省)

・   気候ボンド基準(Climate Bonds Initiative)

・   クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック(国際資本市場協会)

・   クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針(金融庁、経済産業省、環境省)

・   グリーンローン原則(ローンマーケット協会<Loan Market Association>ほか)

・   グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン(環境省)

・   サステナビリティボンド・ガイドライン(国際資本市場協会)

・  サステナビリティ・リンク・ボンド原則(国際資本市場協会)

 

    ①に準じる投融資として資金使途が以下に限定されている投融資やそのリファイナンス

・ FIT法に基づく認定を受けた事業への投融資であって、森林法、自然環境保護法を含む各種法令を遵守した投融資(リファイナンスを含む)

例:気候変動リスクを低減する省エネルギー・再生可能エネルギー事業(太陽光発電施設・設備、風力・水力・バイオマス発電施設)など

・   ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)への融資(住宅ローン、投資用マンションローン)

 

 

(ii) GHG排出量

 

単位

2022年12月31日

実績(注1)

2023年12月31日

実績(注1)

 合計(注2)

t-CO2

4,675,576

8,407,135

スコープ2

ロケーション基準

1,379

1,672

マーケット基準

178

-

 スコープ3(注3)

4,675,399

8,407,135

 

(注) 1.GHG排出量は暦年(1月1日~12月31日)で集計しています。

2.合計値に含めるスコープ2はマーケット基準を加算しています。

3.スコープ3のうちカテゴリ15の算定対象セクターの範囲を拡大した影響により、2023年12月31日のGHG排出量実績が3,726,922t-CO2増加しています。

4.算定及び推移の詳細については、当行ホームページにて2024年6月に公開される予定のESGデータブック2023を参照ください。

 

(iii) 再生可能エネルギー100%への転換(RE100)の達成

 2023年12月31日(注1)を基準日として非化石証書等が付与された再生可能エネルギーを国内外において100%導入しており、目標を達成しています。

 新たな再生可能エネルギーへの転換の目標については、取締役会の決議を経て決定する予定です。

 

(注) 1.非化石証書等及びRE100に係る第三者保証は暦年(1月1日~12月31日)で取得しています。

 

 

2.人的資本

 当行グループでは、全社的なリスク管理の一環として、人的資源確保の困難化を主要なトップリスクの一つとして認識するとともに(詳細は下記「3 事業等のリスク」をご参照ください。)、当該リスクに対して予め必要な措置を講じて、可能な範囲でリスクをコントロールするための未然防止策を策定・実施しています。

当行が人的資本に関して行っている主な取組と指標及び目標は以下のとおりです。人的資本の指標及び目標は、当行グループにおいて主要な事業を営む当行単体の数値を記載しています。

 

(i) 人材育成

当行は、業務に必要な知識、有用なスキルについて研修を行うと共に、各人の自律的な能力開発をサポートしています。全従業員を対象に毎年実施している全社研修のほか、管理職向けのマネジメント研修や年次別の研修等、充実した研修制度で従業員一人ひとりの成長を支援しています。また、各種資格取得や英語学習のサポート体制も整えています。

 

人材育成に関する指標と目標は以下のとおりです。

 

2024年3月31日

実績

2025年3月31日

目標

全社研修参加率

100%

100%

金融コンプライアンス・オフィサー2級認定率 (注)

99%

100%

 

(注) 日本コンプライアンス・オフィサー協会が実施しており、金融機関の初級・中級管理職及び一般行職員を対象として、日常業務において直面するコンプライアンスに関する諸問題に対処するために必要な実務知識の習得度合いを判定する試験です。

 

(ii) 働きやすい職場環境の整備及びダイバーシティの促進

 当行は、従業員の心身の健康保持を第一に考え、従業員一人ひとりが生き生きと活動できる職場環境を整備し、働き甲斐のある職場作りを進めていきます。具体的には、長時間労働の防止、5連続休暇の取得促進、定期健康診断受診率の更なる向上に注力する等により、行員の健康保持に努めています。傷病療養が必要な場合には、長期間療養に専念頂けるよう私傷病休職制度、復帰時の支援プラン、継続的に通院が必要な場合の特別休暇制度を設ける等、万一の際のセーフティネットも設け、安心して活躍頂ける環境を整えています。次世代育成支援対策法に基づく一般事業主行動計画に関しては、2023年、「くるみん認定」を取得しています。

また、当行は、性別、国籍、ライフステージを問わず多様性あふれる行員が生き生きと活躍できるよう、ダイバーシティを促進しています。Englishnizationに取り組む他、子育て世代に向けて短時間勤務を小学校卒業までの間認める制度、不妊治療に活用頂ける特別休暇制度等を整備しています。また、障がい者の雇用確保にも取り組み、法定雇用率は継続して達成しています。

次世代育成支援対策法及び女性活躍推進法に基づく行動計画と指標及び目標は以下のとおりです。詳細は当行ホームページの次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画(https://www.rakuten-bank.co.jp/policy/action.html)及び女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画(https://www.rakuten-bank.co.jp/policy/action2.html)をご覧ください。

 

 

取組計画

働きやすい職場環境の整備

・ 引き続き残業時間抑制を徹底(平均残業時間30時間以内となるよう管理する)。

有給休暇の取得促進

・ 引き続き会議等において年次有給休暇取得状況を共有する。

・ 従業員全員が有給休暇取得率70%以上となるよう、従業員への促進啓発を行う。

勤務歴が浅い社員を対象とした研修の実施

・ 若手の労働者に対する多様なロールモデル・多様なキャリアパス事例の紹介。

 

 

指標及び目標

 

2024年3月31日

実績

2026年3月31日

目標

管理職に占める女性労働者の割合

「第1 企業の概況 5従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」をご参照ください。

35%以上

平均勤続年数の男女差異
(女性平均年数/男性平均年数)

72.0

75%以上

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

経営に係る各種リスクを適切に認識・管理するための枠組みとして、当行グループは取締役会にて決議された「統合的リスク管理基本規程」のもと、全社的なリスク管理方針、各種リスク管理方針及びリスク管理組織・体制を定めています。また、リスクに関する経営会議の事前協議機関として「リスク管理委員会」を設置し、全社的なリスク管理統制部署としてリスク管理本部を設置するとともに、各種リスクの管理統制部署を設置することで、適切なリスク管理を実践しています。以下の「(1) 経営環境に関するリスク」、「(2) 楽天グループとの関係に係るリスク」及び「(3) 当行グループの事業に関するリスク」で記載されている各リスクのうち、当行グループにおいて、影響度や蓋然性の観点から、経営上特に重要なリスク事象について、リスク管理委員会及び経営会議等での議論を踏まえて、経営者が「トップリスク」を以下のとおり認識しています。この「トップリスク」に対して、予め必要な措置を講じて、可能な範囲でリスクをコントロールするための未然防止策を策定・実施し、当該リスクの適切なコントロール及びガバナンスの強化に活用しています。

 

主要なトップリスク

 

リスク事象

リスクシナリオ(例)

競争環境の激化

■ デジタル社会の進展に伴う他の金融機関との競争激化

■ 他業種による銀行業への参入及び金融サービスの提供による競争激化

技術革新への対応遅延

■ サービスの陳腐化及び競争力の低下

■ 既存システムの改良及び新システムの開発等による費用の増加

深刻な感染症の流行

■ 未曾有の感染症の蔓延による行動制限・営業自粛等を契機とする景気低迷による与信関連費用の増加

■ 役職員の感染増加による事業の中断及びサービス品質の大幅な劣化

楽天グループとの関係

■ 楽天グループ株式会社の子会社・関連会社等でなくなった場合に、「楽天」のブランド利用及び楽天グループ各社との協業に制限が発生

■ 楽天グループに属する会社に業績不振や行政処分等、商品やサービス等に対する不信感や不祥事等が生じた場合等に、楽天グループ全体のブランドに影響が生じ、利用者が離反することによる収益の低下

システム障害

■ ハードウェア・ソフトウェアの不具合・欠陥、役職員の過誤によるシステム障害発生に伴うサービスの停止による行政処分、損害賠償請求、当行グループに対する社会的信用の毀損等の発生

サイバー攻撃

■ 犯罪・テロ組織等からの攻撃によるサービス停止、データの消滅・盗取等の発生による当行グループに対する社会的信用の毀損、顧客離反、損害賠償請求等の発生

監督官庁等の規制等

■ 銀行法その他の関連法令・諸規則に基づく監督官庁からの行政処分又は指導の発生

金融犯罪・マネロン・制裁違反リスク対策への対応不備

■ 急速な犯罪手法の高度化・巧妙化への対応の遅れによる風評の悪化に伴う当行グループに対する社会的信用の毀損、追加施策の実行に伴う費用の発生

■ マネー・ローンダリング対策、制裁違反リスク対策が有効に機能しないことに伴う行政処分、社会的信用の毀損等の発生

人的資源確保の困難化

■ 業容の拡大に伴う費用及び人材の確保が困難となった場合の競争力の低下、業容拡大施策の制約の発生

金融政策の変更に伴う金利の上昇

■ マイナス金利政策の解除による貸出金利の上昇に伴う与信関連費用の増加

■ 長期金利操作(イールドカーブ・コントロール)の撤廃をはじめとする国内外の金融政策の変更等による保有有価証券の評価損の発生

 

 

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、上記の「トップリスク」に関する分析を踏まえ、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。また、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資判断上重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から以下に開示しています。

以下に記載する事項のうち将来に関する事項は、別段の記載がない限り、本書提出日現在において当行グループが予想したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

 

(1) 経営環境に関するリスク

① マクロ経済環境に係るリスク

当行グループは、日本と台湾において銀行業を営んでおり、当行グループの業績は国内の景気動向とともに、海外の経済動向、社会情勢及び地政学的リスク等の影響を受けます。各国の中央銀行の金融政策の変更により国内外の金利が低下した場合、資金運用に係る収益が低下する可能性があります。また、当行は、お客さまの給与振込、口座振替を獲得する等、生活に密着する資金の受取りや支払いを取り込むことにより当行口座をお客さまの生活口座としてご利用いただくことを推進し、併せて外貨預金、振込、海外送金等の利便性に優れた幅広いサービスをお客さまに提供することにより手数料収入の拡大を図っていますが、経済活動の低迷による企業活動の停滞及び個人消費の低迷等により、当行サービスの利用が減少した場合には、想定よりもお客さまの生活口座化が進まず、また、手数料収入が低下する等の理由により当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

② 深刻な感染症の流行に関するリスク

新型コロナウイルス感染症は、2023年5月に5類感染症に移行され、行動規制の緩和等、一定の落ち着きを見せているものの、今後も未曾有の感染症の出現・流行の可能性があります。引き続き国内外における各種感染症の発生・感染状況やこれに伴う経済動向に注視し、適切なリスク管理を実施する方針ですが、想定以上の感染拡大等により経済状況がさらに悪化した場合や景気の低迷が長期化した場合等には、資金需要の減退に伴う減収、与信関連費用の増加、保有有価証券等の評価損等により、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

また、当行グループでは、銀行サービスが社会インフラであるとの認識の下、感染拡大防止に取り組みつつ、銀行に求められる決済・預金・貸出業務の提供をいかなる状況においても継続するという社会的責任を果たすため各種感染防止対策を実施しており、今後も流行状況に応じて、既存の業務継続体制をベースに、オフィスにおけるパーティションの設置、同一部署の社員の勤務場所の分離、交代勤務の実施、テレワークの拡大等の感染防止の取組を行ってまいりますが、各種感染症が流行し、多数の役職員が罹患するといった事態が生じた場合、事業継続に支障が生じる可能性があります。

 

③ 競争環境

当行グループは、インターネットを活用した銀行業を営んでいますが、国内には当行以外にもインターネットバンキングを中心として銀行業を営む金融機関が一定数存在するほか、資金・人員面でより優位な他の金融機関においても経営資源をインターネットバンキングに投下する動きが見られ、今後、インターネットバンキングにおける金融機関の競争がさらに激化する可能性があります。また、当行は、主にインターネットを通じてお客さまに銀行サービスを提供していますが、伝統的な対面での銀行サービスの提供を好むお客さまも存在することから、顧客獲得等の面において実店舗を有する金融機関との競争が激化する可能性があります。

加えて、他業種による銀行業への参入や金融サービスの提供の動きが見られるほか、楽天グループ内でもキャッシュレスペイメント分野で潜在的な競合の可能性がある等、他業種との競争が激化する可能性があります。当行グループは、競合となり得る金融機関や他業種の動向を注視しつつ、引き続き顧客ニーズに合致したサービスの提供を行う方針ですが、これらの取組が期待通りの成果を上げられず、当行サービスが競争力を失った場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。また、当行は楽天ブランド、楽天ポイントの活用及び楽天グループ各社との顧客相互送客等を通じた楽天エコシステムの活用により他のインターネット銀行に比して優れた利便性や価格競争力のあるサービスをお客さまに提供していると考えており、引き続き楽天エコシステムとのシナジーを強化して新規顧客獲得及びお客さまのリテンションを推進しますが、楽天エコシステムや楽天ポイントが他社グループとの競合の中で競争力を失い、その影響として当行サービスも競争力を失った場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

 

④ 業界における技術革新等

当行グループが営むインターネットを活用した銀行業は、技術の進歩や変化が著しく、頻繁に新しい技術を活用したサービスが導入されています。当行は常に最新の技術動向及び市場動向の調査、技術的優位性の高いサービスの導入、既存システムの改良等の検討を通して、競争力を維持するための施策を講じています。しかしながら、何らかの要因により、当該変化等への対応が遅延した場合には、サービスの陳腐化、競争力の低下等が生じる可能性があります。また、変化等への対応が可能な場合であっても、お客さまのキャッシュレスペイメントの普及が想定どおり進まない可能性や、既存システムの改良、新システムの開発等による費用の増加等が発生する可能性があり、これらの動向及びその対応の巧拙により、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。また、当行グループの事業運営の障害となり得る技術が開発される可能性もあり、このような技術が広く一般に普及した場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

(2) 楽天グループとの関係に係るリスク

① 楽天グループ株式会社が株主総会の決議事項に関する支配権又は重大な影響力を有することについて

当行は、楽天グループ株式会社(東証プライム上場企業)の連結子会社であります。当行は、意思決定の透明性・公正性を確保するため、取締役の過半数を独立社外取締役としているほか、独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役及び社外監査役をいいます。)から構成される特別監視委員会を設置し、楽天グループ株式会社からのグループ事業戦略上の要請に基づく経営方針の決定や当行グループと楽天グループの相互に関連する人事案件及び楽天グループ株式会社との経営基本契約の締結や非独占的ブランドライセンス契約の締結をはじめとする楽天グループとの取引及び行為の実行に際して、少数株主保護の観点等から取引の必要性及び取引条件の妥当性等を検証し、同委員会に事前に諮問又は事後に報告をしなければならないこととしています。また、当行は、楽天グループ株式会社と経営基本契約を締結し、同契約において楽天グループ株式会社と当行の株主との間に利益相反リスクがあることを踏まえ、上場子会社として求められる独立性を尊重する旨を定めています。しかし、株主総会決議が必要となる取締役及び監査役の選任・解任、定款の変更、当行の重要な方針の決定等においては、同社が当行グループの経営に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、経営基本契約において、楽天グループ株式会社は、当行が楽天グループ以外からの取締役の登用を積極的に行う等、ガバナンスに対する適切なチェックが働く体制とすることを尊重するとともに、従業員に対する当行の人事権を尊重する旨を定めています。また、同契約において楽天グループ株式会社に対する事前承認、事前協議事項は規定しておらず、当行から楽天グループ株式会社に対する報告については、同契約に基づき必要かつ法令等に抵触しない範囲で行っています。また、同契約において、楽天グループ株式会社は、当行の業況が悪化した場合には当行の業務の健全かつ適切な運営を確保するために必要な措置を講じ、楽天グループ株式会社の業況が悪化した場合には、同社が当行に対して資本出資、融資等の支援を要請しない旨を規定しています。

なお、当行と楽天グループ株式会社及びその他の関係会社との主な関係等の詳細については、以下「②役員の兼任について」から「⑦楽天グループとの取引関係について」のとおりです。

 

② 役員の兼任について

当行の取締役のうち、三木谷浩史氏は、楽天グループ株式会社及びその主要な子会社の役員を兼任しています。当行の上場後の更なる成長を企図すると、楽天グループとのシナジーを追求することに加えて、楽天グループ外の顧客とのビジネスの更なる拡大を実現することが重要であると考えています。三木谷氏は株式会社日本興業銀行出身であると共に当行取締役の経験があり銀行ビジネスに対する知見が深く、さらに楽天グループ株式会社代表取締役会長、楽天カード株式会社の取締役会長及び楽天モバイル株式会社代表取締役会長を兼任する等、楽天グループ全体のビジネスを横断的に把握していることに加え、楽天グループ外の顧客とのビジネスの強化にあたっては、同氏は一般社団法人新経済連盟の代表理事を務める等、日本に留まらず海外にも幅広い人脈があることから、これらの豊富な実績、経験及び幅広い人脈が、楽天グループと当行の更なるシナジーの追求及び楽天グループ外における当行の事業基盤拡充に資すると考え、招聘したものです。なお、三木谷氏の就任は当行グループと楽天グループの相互に関連する人事案件に該当するため、予め特別監視委員会に諮問し、出席委員全員より異議がない旨の意見表明を受けています。

 

 

③ 従業員の出向及び兼任について

楽天グループ株式会社では、業務の効率性、事業上の必要性、人材育成及び各職員の将来像を踏まえたキャリアパス形成の観点から、積極的なグループ内での人材交流が行われており、当行においても楽天グループ株式会社を含めた楽天グループ内他社から出向社員を受け入れています。2024年3月31日時点で楽天グループ内の他社から当行へ出向している社員は99名となっています。当行全体に占める受入出向者の割合は1割程度となっており、受入出向者に依存した状況ではないと考えています。

なお、業務分掌を受けた組織体の責任者であるライン長(各組織体における組織長)以上の人事については、親会社からの独立性及び経営の安定性の観点から、出向関係を解消し転籍した者としており、継続的に出向関係のモニタリングを行い、出向期間は当行主導で決定できるようにしています。また、当行から楽天グループ内の他社への出向については、当行の事業上必要と判断するもののみ実施しています。

 

④ 楽天のブランド利用等に係るリスク

当行は、楽天グループ株式会社と経営基本契約を締結し、これに基づき、非独占的ブランドライセンス契約を締結して、「楽天」のブランド利用等を行っています。これに伴い、楽天グループ株式会社に対して、ブランドライセンス料を支払っています。

当行が、楽天グループ株式会社の子会社・関連会社等でなくなる等の理由により非独占的ブランドライセンス契約の終了、解除又は変更がなされた場合には、「楽天」等のブランド利用等ができない、又は利用が制限される可能性等があり、この場合には、楽天エコシステムからの顧客獲得の減少や、当行が提供するサービスの知名度の低下、サービス利用の低迷による収益の低下等により、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

また、楽天グループ株式会社、その他の楽天グループ各社、又は当行グループにおいて、行政処分等に伴うマイナスイメージが生じた場合、商品やサービス等に対する不信感や不祥事等が生じた場合、必ずしも正確な情報に基づかない、又は憶測に基づいた報道や情報の流布がなされた場合等には、楽天グループ全体のブランドに影響が生じ、利用者の離反による収益の低下等により、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑤ 楽天グループ間の業務提携に係るリスク

当行は、楽天エコシステムとのシナジーを追求し、楽天グループの1億超ID(2024年3月現在)の強固な顧客基盤を活用した新規顧客獲得及び当行へのロイヤルティを高める施策を推進しており、楽天グループ株式会社とのポイントプログラムの提携等、楽天証券株式会社との口座連携(マネーブリッジ)、銀行代理業の委託、金融商品仲介業務等、楽天カード株式会社、楽天生命保険株式会社、楽天損害保険株式会社への銀行代理業の委託等、楽天グループ株式会社及びその他の楽天グループ各社との間で様々な提携を行っています。主な提携内容は以下「イ.楽天グループ経由の口座開設申込み」から「ハ.楽天ポイント」のとおりです。

 

イ.楽天グループ経由の口座開設申込み

2024年3月期における当行新規口座開設の約70%が、楽天グループ各社のホームページ・アプリ上に掲載している当行口座開設バナー広告経由での申込となっています。当行としては、楽天エコシステムを回遊する楽天会員は楽天グループが提供するサービスを利用していることから、口座開設後に稼働する可能性が高く、従って稼働顧客当たりの獲得費用を抑制可能であることから、楽天エコシステムを回遊する楽天会員からの口座開設申込獲得に戦略的に注力してまいりました。今後は、引き続き楽天グループ経由の口座開設申込の獲得に注力することに加え、当行の知名度向上による楽天グループ外チャネルからの口座開設申込の獲得、当行法人顧客の従業員の口座獲得等を拡大していくことを目指しており、結果として、楽天グループ外チャネルからの口座開設申込獲得の割合が漸進的に増加していくと考えています。

しかし、当行が、楽天グループ株式会社の子会社・関連会社等でなくなった場合には、楽天グループ内での広告活動の条件が変更され、又はこれまでと同様の広告活動ができなくなる可能性があり、その結果稼働顧客当たりの獲得費用を抑制し続けることが困難になる等、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

 

ロ.楽天証券株式会社との口座連携(マネーブリッジ連携口座)

2024年3月期末における当行個人預金残高の約80%が、楽天証券株式会社との口座連携プログラムであるマネーブリッジ連携口座の預金残高となっています。マネーブリッジ連携口座については、入出金の利便性の高さから多くのお客さまにご利用いただいており、マネーブリッジの普通預金の優遇金利についても、お客さまの支持をいただいていると認識しています。今後は、お客さまの多様なニーズに応えるために普通預金のマネーブリッジ以外の金利優遇施策を順次拡充していくことを検討しており、当行の業容拡大に伴い、マネーブリッジの優遇金利のみを目的とする預金の割合は、漸進的に低下していくものと考えています。なお、マネーブリッジ連携口座の預金残高のうち楽天証券株式会社の証券投資に利用されない資金は、お客さまの日常生活のニーズ等のために利用されており、マネーブリッジ連携口座の預金残高の多くはお客さまの日常生活のニーズ等に充当されています。

当行が、楽天グループ株式会社の子会社・関連会社等でなくなった場合には、当該連携の条件が変更され、又は継続できなくなる等、これまでと同様のメリットを享受できなくなる可能性があります。このような場合には、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

ハ.楽天ポイント

当行は、お客さまの当行サービスの利用や預金残高に応じてお客さまに楽天ポイントを付与する顧客優遇プログラム「ハッピープログラム」、デビットカードの利用額の一定割合をポイントでお客さまに還元するプログラム、当行の定める期間中に一定の条件を達成されたお客さまに対してポイントを進呈するキャンペーン・プログラム等、各種キャンペーンやプログラムを通じてお客さまに楽天ポイントを付与しています。また、楽天グループ株式会社のポイントプログラムであるスーパーポイントアッププログラム(以下、「SPU」という。)に参画しており、楽天市場で獲得できる楽天ポイントが増加する特典(①楽天市場での購買時に当行口座を口座振替口座として設定している楽天カードで決済すると+0.3倍、②当行口座を給与受取口座とするとさらに+0.2倍)をお客さまに提供しています。これらの顧客に付与する楽天ポイントに係る費用は、当行が全額負担しています。また、顧客に付与する楽天ポイントの経理処理について、顧客との取引金額や件数に直接連動して顧客に付与する楽天ポイントは、同取引の収益認識時点で楽天ポイント費用を収益より減額しています。それ以外のポイント費用については、費用発生時点において販売促進費として計上しています。なお、顧客が当行サービス利用時にサービス手数料等の全部又は一部に充当する楽天ポイントについては、当行は、利用ポイント相当額を楽天グループ株式会社に対して請求するため、当行に費用負担は生じません。また、当行は楽天ポイントに係るシステム等を利用するために楽天グループ株式会社との間で「グループコアアセットの利用等に関する契約」を締結しており、同契約に基づき、①当行の顧客に対する楽天ポイントの付与、②顧客の当行サービス利用時におけるサービス手数料等への楽天ポイントの充当に際して、ポイントシステム利用料(「⑦ 楽天グループとの取引関係について」内に記載のポイントシステム利用料)を楽天グループ株式会社に対して支払っています。

当行が、楽天グループ株式会社の子会社・関連会社等でなくなった場合には、当該プログラムの条件が変更され、又は継続できなくなる可能性があります。かかる場合には、当該ポイント特典と同等の経済価値相当のキャッシュバック等で代替することも考えられますが、当該代替策の効果が楽天ポイント特典の効果を下回った場合、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。また、楽天ポイント特典により得られる効果については、一定の条件のもと、楽天ポイントの活用から得られた利益と、当該活用に係る費用とを比較することにより定期的に検証し、その結果を特別監視委員会に報告することとしているため、その可能性は限定的ではあるものの、楽天ポイント特典により得られる効果が楽天ポイント特典の提供に要する費用を下回った場合、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑥ 楽天グループ内の金銭債権を裏付とした証券化取引に係るリスク

当行は、楽天カード株式会社のクレジットカード債権、楽天モバイル株式会社の通信料債権等の楽天グループ内の金銭債権を裏付資産とする信託受益権を購入しています。2024年3月期末における当該信託受益権残高合計は2兆2,924億82百万円となっています。当行は、個人向けのローンを拡充し、法人融資を拡大し、投資先の信用力とスプレッドを勘案して国債・政府保証債、事業債、外国債券等への投資を増加させる等、運用手段の多様化を進めていますが、当行が楽天グループ株式会社の子会社・関連会社等でなくなった場合、当行がグループ各社の金銭債権を証券化する機会が減少する等の可能性があり、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑦ 楽天グループとの取引関係について

当行グループでは、楽天グループ内の各社と取引を行っています。当行グループの独立性の観点を踏まえ、楽天グループ株式会社との経営基本契約の締結や非独占的ブランドライセンス契約の締結をはじめとする楽天グループとの取引及び行為の実行に際しては、当該取引の事業上の必要性と取引条件の妥当性等の取引内容について特別監視委員会に事前に諮問又は事後に報告し、社内規程に定められた決裁権限に則った手続を経ることとし、取引の健全性及び適正性を確保する体制を築いています。

2024年3月期における当行と楽天グループとの主な取引内容は以下のとおりです。

 

(当行と楽天グループ株式会社との取引)

取引の内容

2024年3月期

取引条件等の決定方法

取引金額(百万円)

期末残高(百万円)

販売促進費の支払い

10,549

楽天ポイント付与に伴い発生するポイント費用の実額を負担しています。なお、顧客との取引金額や件数に直接連動して顧客に付与する楽天ポイントは、同取引の収益認識時点で楽天ポイント費用を収益より減額しており、取引金額は当該減額相当額を含む金額を記載しています。

ブランドライセンス料の支払い

1,305

当行グループ売上総利益の一定割合によっており、その料率は楽天グループ㈱と協議の上、合理的に決定しています。

ポイントシステム利用料の支払い

2,338

楽天ポイント付与額の一定割合によっており、その料率は楽天グループ㈱と協議の上、合理的に決定しています。

賃借料の支払い

444

近隣相場と同等の価格によっています。

 

 

(当行と楽天カード株式会社との取引)

取引の内容

2024年3月期

取引条件等の決定方法

取引金額(百万円)

期末残高(百万円)

信託受益権の受取利息

17,455

2,152,451

一般の市場情勢を勘案し、楽天カード㈱と協議の上、合理的に決定しています。期末残高欄には信託受益権の引受残高を記載しています。

代位弁済受入額

7,991

208,037

独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で取引を行っています。期末残高欄には個人ローン債権に対する被保証残高を記載しています。

保証料の支払い

12,062

当行カードローン残高のうち楽天カード㈱を保証会社とするものに対する保証料の支払いであり、取引条件は一般に採用される保証料率を勘案し楽天カード㈱と協議の上、決定しています。

 

 

(当行と楽天証券株式会社との取引)

取引の内容

2024年3月期

取引条件等の決定方法

取引金額(百万円)

期末残高(百万円)

決済及び金融商品仲介手数料等

4,881

独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行っています。

 

 

 

(当行と楽天生命保険株式会社との取引)

取引の内容

2024年3月期

取引条件等の決定方法

取引金額(百万円)

期末残高(百万円)

保険料の支払い

1,563

独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行っています。

 

 

(当行と競馬モール株式会社との取引)

取引の内容

2024年3月期

取引条件等の決定方法

取引金額(百万円)

期末残高(百万円)

決済手数料等の受取

1,924

独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行っています。

 

 

(3) 当行グループの事業に関するリスク

① 事業戦略におけるリスク

当行は、顧客基盤の拡充により業容を拡大し、その顧客基盤を活用して手数料収益及び利息収益の増加を図っています。しかしながら、以下の要因により、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

イ.当行は、口座数及び預金量を重要な経営指標と位置づけており、今後も当行サービスの利便性と価格競争力を訴求することにより顧客基盤の拡充に努めてまいりますが、他のインターネット銀行との競争の結果として当行サービスが競争力を失ったことによりこの経営指標の伸びが減速・低迷した場合、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。また、インターネットバンキングをスマートフォンアプリにて取引する顧客が増加しており、当行は今後も顧客ニーズに応えるためにスマートフォンアプリの利便性・機能向上に努めてまいりますが、この顧客ニーズに適切に対応できない場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

ロ.当行は、独自の店舗・ATM網を有しておらず、そのためATMの利用に係る契約を他の金融機関等と締結することにより当行の顧客に対して現金の入出金サービスを提供していますが、この契約を締結している金融機関等との関係が悪化した場合、他の金融機関等と接続するシステムに不具合が発生した場合又は何らかの理由により他の金融機関等による当行のニーズに合致したサービスの提供が困難となった場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

ハ.当行グループは、新たな収益機会を得るために、銀行法の範囲内において積極的に新規事業への進出を検討しています。しかしながら、当行グループが未進出の業務分野に進出した場合や競争の激しい分野に進出した場合等において、業容の拡大につながらない又は当初想定した成果を得ることができない可能性があり、その結果、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

② 海外事業に係るリスク

当行は、台湾において銀行業を営む連結子会社を有しています。同社は現地における法令、自主規制等を遵守する必要があり、現地監督当局による検査、調査等の対象となっているほか、現地における政治、経済環境等の影響を受けます。当行は同社への役員派遣を含め、当行グループとしての同社に対するガバナンス態勢、コンプライアンス態勢、リスク管理態勢を構築していますが、今後、同社が法令・自主規制等に抵触し、現地監督当局による罰金、課徴金、業務改善命令、業務停止命令、許認可の取消等が行われた場合、同社を取り巻く政治・経済環境の変化、自然災害等の不測の事態が発生した場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。また、為替レートの変動により、当行グループの利益が減少する可能性があります。また、上記事由により同社の自己資本が大幅に毀損する事態となった場合には、当行が親会社として増資を含む支援を要請される可能性があります。

 

 

③ 中長期ビジョンに係るリスク

当行は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営環境・経営戦略 2.経営戦略」に記載のとおり、2022年4月28日付で中長期ビジョンを策定し、公表しています。しかしながら、当該中長期ビジョンにおける成長戦略の実施や目標の達成は、本「事業等のリスク」に記載された事項を含む様々なリスク要因や不確実性による影響を受けます。また、当該中長期ビジョンは、策定時点における経済・事業環境の認識等様々な前提に基づくものであり、前提が想定どおりとならない場合等には、当該中長期ビジョンにおける成長戦略の実施や目標の達成が困難となり、当行グループの経営成績及び財政状態に重大な影響が生じる可能性があります。

 

④ 自然災害及びパンデミック等に係るリスク

地震、台風、津波、豪雨等の自然災害、火災、停電、電力不足や異常気象、戦争やテロリズムその他の犯罪行為及びパンデミック等が発生した場合、当行グループの経営成績及び財政状態に重大な影響が生じる可能性があります。

これらの災害及びパンデミック等が発生した場合には、経済活動が停滞し、当行グループが提供するサービスに対する需要が減少する可能性があります。また当行グループの本店、出張所、データセンター等の拠点が、これらの災害及びパンデミック等により直接的又は間接的に被害を受けた場合には、物理的・人的な被害に加えて、通信ネットワークや情報システム等が正常に稼働せず、当行グループの事業継続が困難になる可能性があります。加えて、役職員の安全確保のため、状況に応じて役職員の出勤を制限又は停止する等、事業の運営体制を変更せざるを得ないことにより、サービスの低下が発生する可能性があります。

当行グループにおいては、これらの災害及びパンデミック等が発生した場合に備えて、事業継続計画(BCP)を策定し、定期的な訓練を通じて事業継続の確実性を高め、かかるリスクを最小限とするように努めていますが、災害及びパンデミック等の規模が想定を上回る場合には、準備している事業継続計画では対応できず当該リスクが顕在化し、事業継続自体が困難又は不可能となり、当行グループの経営成績及び財政状態に重大な影響が生じる可能性があります。

 

⑤ 気候変動に係るリスク

2015年に採択された「パリ協定」を受けて、気候変動の原因とされる温室効果ガス削減の取組が世界的に加速しています。気候変動リスクは、主に気候変動に伴う物理的リスクと脱炭素社会への移行に伴う各種規制拡大等の移行リスクに大別されます。物理的リスクとしては、台風・豪雨等の異常気象による経済活動の低迷や担保価値の毀損による与信関連費用の増加が考えられます。また、CO2の排出を抑え、脱炭素社会へ移行することに伴い、当行グループが事業を営む日本及び台湾において、炭素税等の各種法規制が課せられる可能性があります。当行は、行内横断的な会議体としてサステナビリティ推進会議を設置し、脱炭素社会への移行をはじめとするサステナビリティへの取組に関する体制強化に努めていますが、これらの取組が奏功しない、もしくは不十分である場合又は各種規制への対応コストが増加した場合、当行グループの経営成績及び財政状態に重大な影響が生じる可能性があります。

 

⑥ 情報システムに係るリスク

当行グループは、コンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを通じて銀行業を営んでいますが、ネットワーク又はコンピュータシステム上のハードウェアもしくはソフトウェアの不具合・欠陥等により当行グループ、楽天グループ各社又は外部のサービスプロバイダもしくはビジネスパートナー企業等の第三者の情報システムに脆弱性又は不備が生じる可能性があります。加えて、役職員の過誤により正常なサービス提供に支障が生じる可能性があるほか、重要なデータの消失、機密情報の漏えい等が発生する可能性があります。

これらのリスク発生の回避及び軽減のため、監視体制を強化するとともに、通信ネットワークの複線化・システムの冗長化・データセンターの複数拠点の設置等の技術的・物理的にも各種対応策を講じていますが、かかるリスクが発現した場合には、当行グループのシステムが一時的に停止する等の事態が発生し、システム停止により顧客に生じた損害の賠償等をせざるを得なくなる可能性があります。また、監督官庁から行政処分等を受ける可能性もあり、かかる場合には、当行グループに対する社会的信用が毀損し、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

 

⑦ サイバー攻撃に係るリスク

当行グループは、コンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを通じてサービスを提供しています。そのため、ネットワークもしくはコンピュータシステム上のハードウェア又はソフトウェアの不具合、欠陥、コンピュータウイルス、フィッシングメール等による顧客に対する攻撃、外部からの不正な手段による当行グループのコンピュータシステム内への侵入等により情報システムの可用性、機密性、完全性を確保できない可能性があります。その場合、当行グループのサービスの不正な利用、重要なデータの消失、盗取等が発生する可能性もあります。

これらのリスク発生の回避又は低減のため、監視体制を強化するとともに、技術的、物理的にも各種対策を講じていますが、かかるリスクが発現した場合、当行グループに対する社会的信用の毀損、顧客の離反、損害賠償請求等が発生する可能性があるほか、監督官庁から行政処分等を受ける可能性があり、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑧ 金融犯罪への対応

当行グループは、インターネットを活用した非対面取引を基本とした銀行としての特徴を有しており、口座開設時の取引時確認を厳格に実施しています。また、口座開設後の口座利用状況についても、モニタリングを実施しており、当行口座に係る金融犯罪の未然防止に努めるとともに、預金者保護に注力しています。しかしながら、急速な犯罪手法の高度化・巧妙化に対して当行が講じる対策が功を奏さない場合等において、当行グループの風評の悪化等により社会的信用が毀損される可能性があります。また、高度化した犯罪手法等に対応する追加施策の実行に伴う費用の発生等により、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑨ 個人情報漏えいに係るリスク

当行グループは、銀行業を営んでおり、個人情報を含む顧客情報を保有しています。当行は、「個人情報の保護に関する法律」に規定される個人情報取扱事業者として同法に基づき、個人情報の利用目的の公表又は通知、個人データの安全管理に十分に留意し、本人からの保有個人データの開示請求等に適切に対応する態勢を整備しています。また、その旨を「個人情報保護細則」に規定し、役職員に対する周知を徹底しています。さらに、外部委託先が当行の個人データを取扱う場合は、全国銀行個人情報保護協議会「個人データの安全管理措置等に関する指針」にて「委託契約において盛り込むべき安全管理に関する内容」として列挙された事項を含む内容の契約を締結することとし、個人情報を含む顧客情報を厳格に管理しています。しかし、情報漏えい等が発生し、顧客に甚大な被害を及ぼす結果となった場合には、当行グループに対する社会的信用の毀損、顧客の離反、損害賠償請求等が発生する可能性があるほか、監督官庁からの行政処分を受ける可能性があり、当行グループの経営成績に影響が生じる可能性があります。

 

⑩ 訴訟に係るリスク

当行グループは、日本及び台湾において銀行業を営んでおり、付加価値の高いサービスを幅広く提供しています。こうした業務を行うにあたり、システム障害等によって損害を与えた場合や、第三者の知的財産権を侵害した場合等においては損害賠償請求訴訟等が提起され、損害に対する補償が必要となる可能性があります。当行グループでは、適宜、弁護士等をはじめとする外部専門家からの助言及び監督当局への事前相談すること等により、適切かつ適法なサービスの提供に努めていますが、全ての訴訟等の可能性を排除することは困難であり、かかるリスクが顕在化した場合には、その訴訟等の内容、請求額によっては大きな損失が発生し、また、当行グループの社会的信用が毀損される結果となり、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑪ 風評に係るリスク

当行グループの事業は、預金者を含む顧客等からの信用・信頼の上に成り立っているため、これを維持・向上することが重要であると考えていることから、当行では、当行の業務に関連して現実に生じた各種のリスク事象や、事実と異なる事象により生じた報道や風説により、当行の業務が阻害されて被るリスクをレピュテーショナル・リスクと定義し、当該リスクの管理体制を構築しています。しかしながら、当行グループの風評がマスコミに報道されたり、インターネット上の掲示板への書き込み等により拡散された場合には、仮にその風評が事実と異なるものであったとしても、顧客等が風評を信じて当行グループについて事実と異なる認識を持つ可能性があり、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

 

⑫ 監督官庁の規制等

当行は、銀行法第4条第1項の規定に基づき、銀行業を営むことについての免許の交付を受け、預金、為替、貸付業務をはじめとする種々の業務を営んでいます。また、銀行業については、有効期間その他の期限は法令等で定められていませんが、銀行法第26条において業務の停止等及び同第27条において免許の取消し等の要件が定められており、当該要件に該当した場合、業務の停止、又は免許の取消しを命じられる可能性があります。

現時点で、当行はこれらの事由に該当する事実はないと認識していますが、将来、何らかの事由により業務の停止、免許の取消し等の処分を命じられた場合には、当行グループの主要な事業活動に支障をきたすとともに、事業、経営成績及び財政状態に重大な影響が生じる可能性があります。

上記に加えて、当行グループは、大口信用供与等規制、業務範囲規制及びアームズ・レングス・ルール等の銀行法上の様々な規制、金融商品取引法及び信託業法等その他の金融関連法令、これらに関連する監督官庁の監督指針及び業界団体の自主規制等の適用を受けています。これに関連して、当行は監督官庁や自主規制機関等による監督を受けており、かかる監督による措置には行政処分、指導、立入検査、ヒアリング、オンサイト・オフサイトでの資料の徴求等が含まれます。当行に、法令等の違反、法解釈等の相違及びその他の何らかの事由により監督官庁による行政処分、指導、立入検査等における指摘等又は自主規制機関による処分等がある場合、また、当行サービスに影響のある金融関連法令、監督指針、自主規制等の改定及び新たな規制の導入が行われる場合には、当行グループの事業、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑬ 自己資本比率が悪化するリスク

当行は、「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその他保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)」に基づき自己資本比率を算出しており、国内基準行である当行は、4%以上の自己資本比率を維持することが求められています。

当行は、本「事業等のリスク」の状況を踏まえ、適切かつ十分な水準の自己資本比率を維持することに努めていますが、記載している各種リスクが顕在化した場合、又は将来的に当該規制等が変更となった場合には、自己資本比率が低下する可能性があります。また、自己資本比率が4%を下回った場合には、金融庁より、営業の全部又は一部の停止を含む行政上の措置が課される可能性があり、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑭ 格付に係るリスク

当行は格付機関による格付を取得していますが、当行の業績や風評の動向、親会社である楽天グループ株式会社の動向等により、格付機関が当行の格付を引き下げた場合、資金調達における取引条件の悪化、市場関連取引における追加担保の差入、既存取引の解消等が発生する可能性があり、当行の資本・資金調達等に影響が生じ、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。また、楽天グループ株式会社又はその他の楽天グループ各社の格付が引き下げられた場合にも、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑮ 人材に係るリスク

当行グループは、高度な専門性を有するインターネットバンキングを中心とした銀行業務を行っています。このため、有能な人材の確保及び育成に努めていますが、人材の採用にあたっては、他の金融機関のみならず、インターネットサービス関連企業やシステム関連企業との競合を余儀なくされることから、必要な人材の確保ができない場合には、当行の競争力が低下し、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

 

⑯ コンプライアンスリスク

当行グループは、銀行法、金融商品取引法、信託業法、会社法等の各種法令、監督当局や自主規制機関の定める諸規則等に基づいて業務を行っており、法令等遵守を経営上重要な責務と位置づけ、コンプライアンス態勢を強化し、法令等遵守の徹底を図っています。しかしながら、役職員が法令、諸規則等を遵守しない、又は不正行為等を行った場合等には、監督当局による行政処分、罰則の適用、顧客からの信頼の低下等により、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

また、当行は、監督官庁により発出された「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」にて金融機関に求められるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(以下、「マネロン対策」という。)について態勢を整備するとともに、「外国為替取引等取扱業者遵守基準」及び「外国為替取引等取扱業者のための外為法令等の遵守に関するガイドライン」にて求められる経済制裁措置に違反するもしくは違反するおそれのある又は規制に該当することを免れるために偽装された取引等を行うリスクへの対策(以下、「制裁違反リスク対策」という。)についても態勢を整備したため、現時点で必要なマネロン対策・制裁違反リスク対策を講じていると認識しており、今後も適切な態勢の整備に努める所存でありますが、これらのマネロン対策・制裁違反リスク対策が有効に機能せずに、法令等の違反が発生した場合、又は当行のマネロン対策・制裁違反リスク対策について監督官庁が要請する水準に達していないと判断された場合には、監督当局による行政処分、罰則の適用、顧客からの信頼の低下等により、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑰ 信用リスク

当行グループでは、個人顧客及び法人顧客に対する貸付債権、国債・社債等の有価証券並びに楽天グループ内外の金銭債権等を裏付資産とする信託受益権等を保有しています。このため経済状況が悪化した場合、債務者・債券の発行体の信用状況が著しく悪化した場合等には、当行グループが保有する貸付債権、債券及び信託受益権の原資産の信用力が低下し、元利金等の支払いが不履行となる可能性があります。この結果、当該貸付債権及び信託受益権への引当金の増額や保有する有価証券の市場価格の下落に伴う損失を計上する可能性があります。

また、当行は、個人顧客に対する貸付債権に関しては外部信用情報機関を利用した途上与信を含む与信管理を行い、法人顧客に対する貸付債権に関しては継続的な顧客の業況確認等による与信管理を行い、保有する信託受益権に関しては継続的な原資産のパフォーマンスの確認等によるモニタリングを行い、保有する有価証券に関しては定期的に発行体の業況及び有価証券の市場価格の確認等によるモニタリングを実施し、信用リスクの低減に努めていますが、想定以上の経済状況の悪化、債務者の業況悪化等が発生した場合のほか、日本銀行が2024年3月にマイナス金利政策を解除したことに伴って当行の貸出金利が上昇する可能性があり、これにより元利金等の支払いが不履行となる貸付が増加した場合には、貸倒関連費用の増加等、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

加えて、市場リスク及び為替リスクをヘッジするために実施しているデリバティブ取引については、カウンターパーティーリスクがあり、カウンターパーティーの義務の不履行が生じた場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑱ 金利リスク

当行グループは、国債、政府保証債、事業債等の市場性のある有価証券及びデリバティブ等が組み込まれた金融商品を保有しています。これらは、金利変動により価格の変化が生じるため、当行では、運用調達業務全般にわたり、資産・負債構成の最適化及び適切な水準の自己資本充実度の確保を目的とし、金利感応度、資金流動性、市場流動性等に留意したALM(資産負債総合管理)運営を行っています。しかしながら、日本銀行が2024年3月に長期金利操作(イールドカーブ・コントロール)を撤廃したことをはじめ、今後の国内外の金融政策の変更、債券等の格付の低下、国内外の市場の混乱、金融経済環境の悪化等により金利が変動した場合、評価損、売却損等が発生することにより、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑲ 為替リスク

当行グループは、外貨建資産及び負債を保有しており、必要に応じて、為替リスクを回避することを目的としたヘッジ取引を行っていますが、為替レートが急激に変動した場合には、多額の為替差損等の発生により、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑳ 決済リスク

当行グループは、国内外の多くの金融機関と多様な取引を行っています。大規模なシステム障害や災害が発生した場合又は政治的な混乱等により金融システム不安が発生した場合には、取引相手である金融機関との間で決済が行われない又は決済が遅延する等、決済が困難になる可能性があります。また、非金融機関の取引先との一定の決済業務においても取引先の財政状態の悪化等により決済が困難になるリスクがあります。加えて、当行が購入する信託受益権の証券化スキームにおいて、信託受益権の組成及び購入に関する一連の決済が想定通り実行されず、支払った購入代金の回収が必要になる可能性があります。

当行グループでは、勘定系システム等の重要なシステムについては、バックアップサーバーを分散して設置するとともに、定期的な訓練を実施する等、システム障害や災害発生時に迅速に対応できる体制の構築に努めているほか、日中の流動性について定期的なモニタリングやストレステストの実施等、当行グループの決済が滞らないよう管理する体制や、非金融機関の取引先と一定の決済業務を行うにあたり、必要に応じて取引先の財政状態を適宜把握する体制を構築しています。また、買入金銭債権の購入代金の回収に係る社内規程・マニュアルを整備し、当行の自己資本額に比して過大な回収リスクを負うことを避けるオペレーション上の対応も実行していますが、これらの対策が不十分な場合又は当行グループの想定を逸脱する事態が生じたことによりこれらの対策が有効ではなくなった場合等には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

㉑ 流動性リスク

当行は、インターネットを活用した銀行サービスを提供しており、ATMでの普通預金の引き出し、定期預金の解約及び他の金融機関への送金又は振込サービスを24時間365日(システムメンテナンス時間帯を除く)提供しています。当行は、このような当行の預金の特性を踏まえて手元流動性を含めた資金流動性リスク管理体制を構築し、流動性に十分配慮した運用を行っていますが、経済環境の悪化や当行の風評に悪影響を与える不測の事態が発生した場合には、予想を超えた著しい資金流出が予想を上回る速度で進行する可能性があり、当行グループの経営成績に影響が生じる可能性があります。

 

㉒ 事務リスク

当行グループは、事務に関する社内規程の整備、事務のシステム化、事務処理における再鑑の徹底、自主点検による部署内の事後チェック、業務改善への取組等により、堅確な事務処理体制の構築・運用に努めていますが、人的な対応が必要な業務においては、役職員等が事務に関する社内規程等に定められた事務手続を怠る等により、事務面での事故、不正等が発生する可能性があります。

また当行グループは、当行グループの急速な顧客基盤の拡大による取引件数の増加、新サービスの導入等による事務量の増加により、業務遂行に必要な体制整備が追い付かずに、事務手続のミスの発生、事務の滞留等の可能性があります。この結果、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

㉓ リスク管理の有効性に係るリスク

当行グループは、リスク管理方針を策定し、同方針に基づき管理態勢を整備し、運用していますが、金融市場においては急激かつ大規模な変動や混乱が発生する可能性があり、これを正確に予測することは困難であることから、リスク管理が有効に機能しない可能性があります。また、急速な事業展開や業容拡大に伴い、リスク管理が有効に機能しない可能性があります。この結果、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。これらのリスク発生の回避又は軽減のため、原則、半期に1度、当行の事業展開や業容拡大に伴う当行のリスクプロファイルの変化を把握し、管理すべきリスクの網羅性及びリスク管理手法の妥当性について検証を行っています。

 

(4) 当行株式に関するリスク

当行は、2023年4月21日付で東京証券取引所プライム市場へ上場しており、上場に際しては、公募増資及び楽天グループ株式会社による当行株式の売出しによって当行株式の流動性の確保に努めました。また、2023年12月の楽天グループ株式会社による当行株式の売出しによって、同社の当行株式の保有割合は49.26%となりました。今後も、当行の事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達や当行親会社である楽天グループ株式会社への一部売出しの要請による流通株式数の増加等により、引き続き流動性の向上を図っていく方針ではありますが、市場環境や何らかの事情により流動性が低下する場合には、当行株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当行株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.経営成績等の状況の概要

当行グループ(当行、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

(連結経営成績)

当連結会計年度の連結経常収益は、前連結会計年度比17,504百万円増の137,950百万円となりました。経常収益の内訳を見ると、資金運用収益が、楽天カード株式会社のクレジットカード債権等を裏付資産とする信託受益権残高の増加、及び投資用マンションローン、提携ローン、カードローン等の貸出金残高の増加により、前連結会計年度比15,508百万円増の84,518百万円となりました。役務取引等収益は、口座数の増加、生活口座化の進展による為替関連手数料の増加等により、前連結会計年度比1,697百万円増の42,849百万円となりました。その他業務収益は、新型定期預金(仕組預金)に係る収益等が減少し、前連結会計年度比211百万円減の8,219百万円となりました。また、台湾で2021年1月に営業開始した樂天國際商業銀行股份有限公司において、前連結会計年度比883百万円増の2,188百万円の経常収益を計上しました。

一方、連結経常費用は、前連結会計年度比7,884百万円増の89,583百万円となりました。経常費用の中では、資金調達費用が、預金残高の伸長による預金利息の増加等により、前連結会計年度比4,493百万円増の11,125百万円となりました。役務取引等費用は、保証付きカードローンの支払保証料が減少したものの、支払為替手数料等の増加により、前連結会計年度比128百万円増の33,407百万円となりました。また、営業経費は、販売促進費が減少したものの、業務委託費、広告宣伝費、及びソフトウエア償却費等の増加により、前連結会計年度比2,748百万円増の41,950百万円となりました。樂天國際商業銀行股份有限公司においては、前連結会計年度比930百万円増の5,297百万円の経常費用を計上しました。

これらの結果、連結経常利益は、前連結会計年度比9,620百万円増48,367百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比6,744百万円増34,436百万円となりました。

なお、当行グループは、銀行業の単一セグメントであるため、セグメント毎の経営成績等については記載を省略しています。

 

(連結財政状態)

当連結会計年度末における資産の部については、貸出金が、投資用マンションローン、提携ローンの堅調な増加に加えて、カードローン残高が純増に転じたことにより、前連結会計年度末比288,979百万円増の4,069,567百万円、買入金銭債権が、楽天カード株式会社のクレジットカード債権等を裏付資産とする信託受益権等の購入により、前連結会計年度末比447,752百万円増の2,550,812百万円となりました。有価証券は、国債、政府保証債、事業債、外国債券等の購入により、前連結会計年度末比310,133百万円増の1,090,506百万円、現金預け金は、前連結会計年度末比740,869百万円増の4,791,097百万円となりました。この結果、資産の部の合計額は、前連結会計年度末比1,890,965百万円増13,480,473百万円となりました。

負債の部については、普通預金が、口座数の伸長や生活口座化の進展に加え楽天証券株式会社との口座連携サービス(マネーブリッジ)を利用する顧客数の増加もあり、前連結会計年度末比1,348,900百万円増の9,475,548百万円、定期預金が前連結会計年度末比113,726百万円増の878,580百万円となりました。また、借用金は、日本銀行の貸出増加を支援するための資金供給を活用しているものですが、前連結会計年度末比288,400百万円増の2,565,800百万円となりました。負債の部の合計額は、前連結会計年度末比1,843,061百万円増13,200,885百万円となりました。

純資産の部については、資本金が、2023年4月に東京証券取引所プライム市場へ上場した際の増資等により前連結会計年度末比6,662百万円増の32,616百万円、資本剰余金が、前連結会計年度末比6,662百万円増の10,543百万円となり、利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益の計上により前連結会計年度末比34,436百万円増の221,151百万円となりました。純資産の部の合計額は、前連結会計年度末比47,903百万円増279,587百万円となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローについては、営業活動によるキャッシュ・フローが、買入金銭債権の増加による430,987百万円の支出、貸出金の増加による287,328百万円の支出等があった一方、預金の増加による1,448,715百万円の収入、借用金の増加による288,400百万円の収入等があったことから、1,027,880百万円の収入(前連結会計年度比433,185百万円の収入増加)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の償還による292,955百万円の収入、有価証券の売却による7,823百万円の収入等があった一方、有価証券の取得による592,468百万円の支出等があったことから、301,058百万円の支出(前連結会計年度比107,480百万円の支出増加)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、2023年4月に東京証券取引所プライム市場へ上場した際の増資等により、13,324百万円の収入(前連結会計年度比13,324百万円の収入増加)となりました。

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末比740,866百万円増加し、4,791,091百万円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

「生産、受注及び販売の状況」は、銀行業における業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載していません。

 

2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当行グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における世界経済は、「アフターコロナ」での経済活動の正常化により回復傾向にありましたが、長期化するロシア・ウクライナ情勢やイスラエル・パレスチナ情勢等の影響により不透明感も漂いました。また、原油、原材料価格、人件費の上昇等を契機とするインフレ進行への対応として、欧米を含む多くの国の中央銀行が連続的に政策金利を引き上げたことで、逆に高金利による景気悪化への懸念も生じました。日本においては、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行されたことにより「アフターコロナ」への転換が進み、経済活動が活発化するとともに、インバウンドの回復による外国人旅行者の消費も景気回復を後押ししました。金融政策においては、日本銀行が2024年3月の金融政策決定会合において、賃金と物価の好循環を確認し、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、2016年から継続してきたマイナス金利政策の解除を決定しました。その結果、これまで−0.1%としていた政策金利を0~0.1%程度(無担保コール翌日物レート)に引き上げました。

当行グループは、銀行サービスが重要な社会インフラであるという確固たる認識を持ち、また新型コロナウイルス感染症への対応として加速した個人の生活や法人の企業活動のデジタルシフトにより当行グループへの社会的期待が一層高まっていることを十分に踏まえ、当連結会計年度においても、高性能かつ安定的な決済インフラの運営、システムの効率化、内部管理態勢の整備を推進しました。併せて、新サービスの導入や資産運用の強化等を通じて今まで以上に収益性と成長性を重視した経営に取り組んでまいりました。具体的には、お客さまに提供するサービスの利便性をさらに向上させるために継続的に決済サービス等の改善に取り組むとともに、高齢化社会の進展を見据え、社会の多様性に対応し、お客さまにより多くの選択肢を提供させていただくように商品開発を進めました。

 

まず、楽天銀行アプリでより多くの支払いを簡単に行うことができるようにするために、口座振替とPay-easy(ペイジー)にて支払いができる先を拡大しました。八王子市の公金の口座振替及びPay-easyの取扱い、並びに宇都宮市、福岡市、千葉県、川崎市の公金、宇都宮市上下水道局、横浜市水道局の水道料金、日本学生支援機構の奨学金、独立行政法人中小企業基盤整備機構が取扱う小規模企業共済、株式会社日本政策金融公庫(国民生活事業及び中小企業事業)の融資金返済の口座振替サービスの取扱いを開始しました。また、「楽天銀行コンビニ支払サービス(アプリで払込票支払)」において、地方税統一QRコードの取扱いを開始し、当サービスにて支払いができる先を大きく拡大しました。

さらには、楽天証券との口座連携サービス「マネーブリッジ」の自動スイープの対象に国内株式積立注文取引を新たに加えました。この改善は、新NISA制度で積立を行うお客さまの利便性も向上するものです。また、人生100年時代の到来による価値観や住まいのあり方の多様化を踏まえ、住宅を購入されるお客さまの住宅ローンの返済負担を軽減するとともに、将来の住み替え等、様々なライフステージの変化に合わせた住み方をお客さまご自身でお選びいただける住宅ローンとして、「残価設定型住宅ローン」を一般社団法人移住・住みかえ支援機構と共同で開発しました。2023年4月に旭化成ホームズ株式会社と提携し、同6月には大和ハウス工業株式会社と提携して、同住宅ローンの提供を開始しました。

これらの取組の結果、事業規模については、口座数が2024年2月に1,500万口座を突破し、2024年3月末には1,523万口座に達し、単体預金残高が2023年12月に10,000,000百万円を突破し、2024年3月末には10,540,202百万円に達しました。

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因

当行グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、国内の金利動向が挙げられます。金利動向に伴う資産・負債の公正価値の変動及び発生する損益の変動については、ALM委員会にてモニタリングすることでそのリスクを評価するとともに、必要に応じてヘッジ取引等により対応を図るものとしています。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当行グループの資金調達は、金利動向等を踏まえて、主として預金により確保しており、今後も安定的に増加させていく方針です。

当連結会計年度末における現金預け金は47,910億円であり、十分な水準にて確保しており、資金流動性確保に懸念はないものと考えています。

なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、上記「1.経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当行グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りに用いた仮定のうち、重要なものは貸倒引当金及び金融商品の時価の計上です。

貸倒引当金に関して、当行では、全ての債権について、資産の自己査定基準に基づき資産の自己査定を実施しています。資産の自己査定にあたっては、債務者を「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の5段階に区分し、当該区分に応じて、予め定めている償却・引当基準に則り、貸倒引当金を計上しています。「正常先」「要注意先」については、主として今後1年間の予想損失額又は今後3年間の予想損失額を見込んで計上しており、予想損失額は、1年間又は3年間の貸倒実績又は倒産実績を基礎とした貸倒実績率又は倒産確率の過去の一定期間における平均値に基づき損失率を求め、これに将来見込み等必要な修正を加えて算定しています。「破綻懸念先」については、債権額から、担保の処分可能見込額及び保証による回収可能見込額を控除し、その残額のうち、債務者の支払能力を総合的に判断し必要と認める額を計上しています。「実質破綻先」「破綻先」については、債権額から回収可能見込額を控除し、その残額を貸倒引当金に計上しています。連結される子会社及び子法人等の貸倒引当金は、一般債権については過去の貸倒実績率等を勘案して必要と認めた額を、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額をそれぞれ計上しています。当行グループにおける当該見積り及び当該仮定については、連結財務諸表作成時における入手可能な最善の情報に基づいていますが、予測不能な前提条件の変化等により債権の評価に関する見積りが変化する場合があり、この場合には、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する貸倒引当金及び貸倒引当金繰入額等の金額に重要な影響を与える可能性があります。

金融商品の時価に関して、当行では、時価の算定に用いたインプットの観察可能性及び重要性に応じて、時価を3つのレベルに分類しています。特に、算定した時価等について市場で観察できないインプットが重要な構成要素であることからレベル3に分類されるものについては、時価評価に用いる見積り及び仮定の複雑性、不確実性が高いものとなります。インプットに関する情報の詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(金融商品関係) 3 金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項  (注2) 時価で連結貸借対照表に計上している金融商品のうちレベル3の時価に関する情報  (1) 重要な観察できないインプットに関する定量的情報」に記載しています。これらの時価の算定に使用された主要な仮定には不確実性があり、特にレベル3に分類されるものについては、時価評価に用いる見積り及び仮定の複雑性、不確実性が高いものであり、評価に用いるインプットが市場環境の変化等を受けて変化することにより時価が増減する可能性があります。インプットを変化させた場合の時価に対する影響の詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(金融商品関係) 3 金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項 (注2) 時価で連結貸借対照表に計上している金融商品のうちレベル3の時価に関する情報 (4) 重要な観察できないインプットを変化させた場合の時価に対する影響に関する説明」に記載しています。

 

 

(参考)

(1) 国内・海外別収支

当連結会計年度における資金運用収支は、前連結会計年度比11,014百万円増加73,393百万円、信託報酬は前連結会計年度比224百万円増加し1,464百万円、役務取引等収支は前連結会計年度比1,569百万円増加9,441百万円、その他業務収支は、前連結会計年度比208百万円減少8,219百万円となりました。

国内・海外別に見ますと、国内の資金運用収支は前連結会計年度比10,693百万円増加し72,846百万円、信託報酬は前連結会計年度比224百万円増加し1,464百万円、役務取引等収支は前連結会計年度比1,602百万円増加し9,535百万円、その他業務収支は前連結会計年度比200百万円減少し8,202百万円となりました。

海外の資金運用収支は前連結会計年度比321百万円増加し546百万円、役務取引等収支は前連結会計年度比33百万円減少し△94百万円、その他業務収支は前連結会計年度比7百万円減少し17百万円となりました。

 

種類

期別

国内

海外

相殺消去額(△)

合計

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

資金運用収支

前連結会計年度

62,153

225

62,378

当連結会計年度

72,846

546

73,393

うち資金運用収益

前連結会計年度

67,779

1,231

69,010

当連結会計年度

82,382

2,135

84,518

うち資金調達費用

前連結会計年度

5,626

1,006

6,632

当連結会計年度

9,536

1,589

11,125

信託報酬

前連結会計年度

1,239

1,239

当連結会計年度

1,464

1,464

役務取引等収支

前連結会計年度

7,933

△60

7,872

当連結会計年度

9,535

△94

9,441

うち役務取引等収益

前連結会計年度

41,111

40

41,151

当連結会計年度

42,827

21

42,849

うち役務取引等費用

前連結会計年度

33,177

101

33,278

当連結会計年度

33,292

115

33,407

その他業務収支

前連結会計年度

8,402

24

8,427

当連結会計年度

8,202

17

8,219

うちその他業務収益

前連結会計年度

8,405

24

8,430

当連結会計年度

8,202

17

8,219

うちその他業務費用

前連結会計年度

3

3

当連結会計年度

 

(注) 1.「国内」とは、当行及び国内に本店を有する連結子会社(以下、「国内連結子会社」という。)に関する数値です。

2.「海外」とは、海外に本店を有する連結子会社(以下、「海外連結子会社」という。)に関する数値です。

3.「相殺消去額」は、「国内」と「海外」間の取引に関する相殺額を記載しています。

 

 

(2) 国内・海外別資金運用/調達の状況

当連結会計年度の資金運用勘定平均残高は、前連結会計年度比1,434,501百万円増加8,570,704百万円となりました。資金運用利息は、前連結会計年度比15,508百万円増加84,518百万円となりました。この結果、資金運用利回りは、前連結会計年度比0.01ポイント上昇して0.98%となりました。

また、資金調達勘定平均残高は、前連結会計年度比1,740,600百万円増加11,916,737百万円となりました。資金調達利息は、前連結会計年度比4,493百万円増加11,125百万円となりました。この結果、資金調達利回りは、前連結会計年度比0.02ポイント上昇して0.09%となりました。

国内・海外別に見ますと、国内の資金運用勘定平均残高は前連結会計年度比1,388,104百万円増加し8,435,627百万円となりました。資金運用利息は、前連結会計年度比14,603百万円増加し82,382百万円となりました。この結果、資金運用利回りは、前連結会計年度比0.01ポイント上昇して0.97%となりました。

また、国内の資金調達勘定平均残高は、前連結会計年度比1,692,538百万円増加し11,792,620百万円となりました。資金調達利息は、前連結会計年度比3,910百万円増加し9,536百万円となりました。この結果、資金調達利回りは、前連結会計年度比0.02ポイント上昇して0.08%となりました。

海外の資金運用勘定平均残高は前連結会計年度比46,396百万円増加し152,957百万円となりました。資金運用利息は、前連結会計年度比904百万円増加し2,135百万円となりました。この結果、資金運用利回りは、前連結会計年度比0.24ポイント上昇して1.39%となりました。

また、海外の資金調達勘定平均残高は、前連結会計年度比48,061百万円増加し124,116百万円となりました。資金調達利息は、前連結会計年度比583百万円増加し1,589百万円となりました。この結果、資金調達利回りは、前連結会計年度比0.04ポイント低下して1.28%となりました。

 

 

① 国内

 

種類

期別

平均残高

利息

利回り

金額(百万円)

金額(百万円)

(%)

資金運用勘定

前連結会計年度

7,047,522

67,779

0.96

当連結会計年度

8,435,627

82,382

0.97

うち貸出金

前連結会計年度

3,348,824

47,933

1.43

当連結会計年度

3,902,523

54,324

1.39

うち有価証券

前連結会計年度

689,918

1,200

0.17

当連結会計年度

870,964

4,729

0.54

うちコールローン及び

買入手形

前連結会計年度

5,013

0

0.00

当連結会計年度

うち債券貸借取引支払

保証金

前連結会計年度

459,059

45

0.01

当連結会計年度

525,929

52

0.01

うち買入金銭債権

前連結会計年度

2,264,602

18,299

0.80

当連結会計年度

2,737,998

23,008

0.84

うち預け金

前連結会計年度

260,091

301

0.11

当連結会計年度

364,514

270

0.07

資金調達勘定

前連結会計年度

10,100,081

5,626

0.05

当連結会計年度

11,792,620

9,536

0.08

うち預金

前連結会計年度

8,164,400

4,778

0.05

当連結会計年度

9,451,224

5,894

0.06

うちコールマネー及び売渡手形

前連結会計年度

当連結会計年度

341

0

0.00

うち債券貸借取引受入担保金

前連結会計年度

当連結会計年度

うち借用金

前連結会計年度

1,933,242

当連結会計年度

2,336,007

 

(注) 1.平均残高は、原則として日々の残高の平均に基づいて算出していますが、国内連結子会社については、前連結会計年度末と当連結会計年度末の残高に基づく平均残高を利用しています。

2.「国内」とは、当行及び国内連結子会社に関する数値です。

3.「資金運用勘定」は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度3,213,168百万円、当連結会計年度3,546,062百万円)を控除しています。

 

 

② 海外

 

種類

期別

平均残高

利息

利回り

金額(百万円)

金額(百万円)

(%)

資金運用勘定

前連結会計年度

106,561

1,231

1.15

当連結会計年度

152,957

2,135

1.39

うち貸出金

前連結会計年度

6,434

144

2.23

当連結会計年度

25,874

570

2.20

うち有価証券

前連結会計年度

58,794

693

1.17

当連結会計年度

79,841

878

1.10

うちコールローン及び

買入手形

前連結会計年度

9,094

81

0.89

当連結会計年度

6,878

115

1.68

うち債券貸借取引支払

保証金

前連結会計年度

25,833

225

0.87

当連結会計年度

31,642

505

1.59

うち買入金銭債権

前連結会計年度

当連結会計年度

うち預け金

前連結会計年度

6,405

87

1.35

当連結会計年度

8,719

66

0.75

資金調達勘定

前連結会計年度

76,055

1,006

1.32

当連結会計年度

124,116

1,589

1.28

うち預金

前連結会計年度

67,962

950

1.39

当連結会計年度

104,061

1,348

1.29

うちコールマネー及び売渡手形

前連結会計年度

6,014

45

0.76

当連結会計年度

13,205

183

1.39

うち債券貸借取引受入担保金

前連結会計年度

1,947

当連結会計年度

6,763

56

0.82

うち借用金

前連結会計年度

当連結会計年度

 

(注) 1.海外連結子会社の平均残高は、前連結会計年度末と当連結会計年度末の残高に基づく平均残高を利用しています。

2.「海外」とは、当行の海外連結子会社に関する数値です。

 

 

③ 合計

 

種類

期別

平均残高(百万円)

利息(百万円)

利回り

小計

相殺

消去額(△)

合計

小計

相殺

消去額(△)

合計

(%)

資金運用勘定

前連結会計年度

7,154,083

17,880

7,136,203

69,010

69,010

0.96

当連結会計年度

8,588,585

17,880

8,570,704

84,518

84,518

0.98

うち貸出金

前連結会計年度

3,355,259

3,355,259

48,077

48,077

1.43

当連結会計年度

3,928,398

3,928,398

54,894

54,894

1.39

うち有価証券

前連結会計年度

748,712

17,880

730,831

1,894

1,894

0.25

当連結会計年度

950,806

17,880

932,925

5,608

5,608

0.60

うちコールローン

及び買入手形

前連結会計年度

14,107

14,107

81

81

0.57

当連結会計年度

6,878

6,878

115

115

1.68

うち債券貸借取引

支払保証金

前連結会計年度

484,892

484,892

271

271

0.05

当連結会計年度

557,571

557,571

558

558

0.10

うち買入金銭債権

前連結会計年度

2,264,602

2,264,602

18,299

18,299

0.80

当連結会計年度

2,737,998

2,737,998

23,008

23,008

0.84

うち預け金

前連結会計年度

266,496

266,496

388

388

0.14

当連結会計年度

373,234

373,234

336

336

0.09

資金調達勘定

前連結会計年度

10,176,137

10,176,137

6,632

6,632

0.06

当連結会計年度

11,916,737

11,916,737

11,125

11,125

0.09

うち預金

前連結会計年度

8,232,362

8,232,362

5,729

5,729

0.07

当連結会計年度

9,555,286

9,555,286

7,242

7,242

0.07

うちコールマネー及び売渡手形

前連結会計年度

6,014

6,014

45

45

0.76

当連結会計年度

13,547

13,547

183

183

1.35

うち債券貸借取引受入担保金

前連結会計年度

1,947

1,947

当連結会計年度

6,763

6,763

56

56

0.82

うち借用金

前連結会計年度

1,933,242

1,933,242

当連結会計年度

2,336,007

2,336,007

 

(注) 1.「相殺消去額」は、「国内」と「海外」間の取引に関する相殺額を記載しています。

 

 

(3) 国内・海外別役務取引の状況

当連結会計年度の役務取引等収益は前連結会計年度比1,697百万円増加42,849百万円となりました。また、役務取引等費用は前連結会計年度比128百万円増加33,407百万円となりました。

国内・海外別に見ますと、国内の役務取引等収益は前連結会計年度比1,716百万円増加し42,827百万円、役務取引等費用は前連結会計年度比114百万円増加し33,292百万円となりました。

海外の役務取引等収益は前連結会計年度比18百万円減少し21百万円、役務取引等費用は前連結会計年度比14百万円増加し115百万円となりました。

 

 

種類

期別

国内

海外

相殺消去額(△)

合計

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

役務取引等収益

前連結会計年度

41,111

40

41,151

当連結会計年度

42,827

21

42,849

うち預金・貸出業務

前連結会計年度

3,103

3,103

当連結会計年度

2,868

2,868

うち為替業務

前連結会計年度

19,388

26

19,414

当連結会計年度

21,001

3

21,004

うち口座開設管理

業務

前連結会計年度

428

428

当連結会計年度

552

552

うちATM関連業務

前連結会計年度

5,299

5,299

当連結会計年度

5,447

5,447

うちカード関連業務

前連結会計年度

10,818

10,818

当連結会計年度

11,105

11,105

役務取引等費用

前連結会計年度

33,177

101

33,278

当連結会計年度

33,292

115

33,407

うち為替業務

前連結会計年度

3,835

72

3,907

当連結会計年度

4,223

73

4,296

うちATM関連業務

前連結会計年度

9,652

9,652

当連結会計年度

10,264

10,264

うち支払保証料

前連結会計年度

15,338

15,338

当連結会計年度

13,940

13,940

 

(注) 1.「国内」とは、当行及び国内連結子会社に関する数値です。

2.「海外」とは、当行の海外連結子会社に関する数値です。

3.「相殺消去額」は、「国内」と「海外」間の取引に関する相殺額を記載しています。

 

 

(4) 国内・海外別預金残高の状況

○ 預金の種類別残高(末残)

 

種類

期別

国内

海外

相殺消去額(△)

合計

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

預金合計

前連結会計年度

8,892,388

93,304

8,985,693

当連結会計年度

10,327,563

114,818

10,442,382

うち流動性預金

前連結会計年度

8,096,213

76,792

8,173,006

当連結会計年度

9,459,875

50,833

9,510,709

うち定期性預金

前連結会計年度

773,787

16,511

790,299

当連結会計年度

837,796

63,984

901,781

うちその他

前連結会計年度

22,387

22,387

当連結会計年度

29,891

29,891

譲渡性預金

前連結会計年度

当連結会計年度

総合計

前連結会計年度

8,892,388

93,304

8,985,693

当連結会計年度

10,327,563

114,818

10,442,382

 

(注) 1.「国内」とは、当行及び国内連結子会社に関する数値です。

2.「海外」とは、当行の海外連結子会社に関する数値です。

3.流動性預金=普通預金

4.定期性預金=定期預金

5.「相殺消去額」は、「国内」と「海外」間の取引に関する相殺額を記載しています。

 

(5) 国内・海外別貸出金残高の状況

① 業種別貸出状況(残高・構成比)

 

業種別

2023年3月31日

2024年3月31日

貸出金残高(百万円)

構成比(%)

貸出金残高(百万円)

構成比(%)

国内(除く特別国際金融取引勘定分)

3,769,085

100.0

4,029,319

100.0

金融業,保険業

2,800

0.0

2,600

0.0

不動産業,物品賃貸業

8,866

0.2

11,158

0.2

その他

3,757,419

99.6

4,015,560

99.6

海外及び特別国際金融取引勘定分

11,501

100.0

40,247

100.0

政府等

金融機関

その他

11,501

100.0

40,247

100.0

合計

3,780,587

4,069,567

 

(注) 1.「国内」とは、当行及び国内連結子会社に関する数値です。

2.「海外」とは、当行の海外連結子会社に関する数値です。

 

② 外国政府等向け債権残高(国別)

該当事項はありません。

 

 

(6) 国内・海外別有価証券の状況

○ 有価証券残高(末残)

 

種類

期別

国内

海外

相殺消去額(△)

合計

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

国債

前連結会計年度

640,310

640,310

当連結会計年度

644,596

644,596

地方債

前連結会計年度

当連結会計年度

短期社債

前連結会計年度

当連結会計年度

社債

前連結会計年度

41,946

41,946

当連結会計年度

275,517

275,517

株式

前連結会計年度

1,431

1,431

当連結会計年度

1,801

1,801

その他の証券

前連結会計年度

36,989

77,575

17,880

96,684

当連結会計年度

104,363

82,107

17,880

168,590

合計

前連結会計年度

720,677

77,575

17,880

780,373

当連結会計年度

1,026,279

82,107

17,880

1,090,506

 

(注) 1.「国内」とは、当行及び国内連結子会社に関する数値です。

2.「海外」とは、当行の海外連結子会社に関する数値です。

3.「その他の証券」には、外国債券を含んでいます。

4.「相殺消去額」は、「国内」と「海外」間の取引に関する相殺額を記載しています。

 

(自己資本比率の状況)

(参考)

自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しています。

なお、当行は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を、オペレーショナル・リスク相当額に係る額の算出については粗利益配分手法を採用しています。

 

連結自己資本比率(国内基準)

 

(単位:百万円、%)

 

2024年3月31日

1.連結自己資本比率(2/3)

10.93

2.連結における自己資本の額

263,608

3.リスク・アセットの額

2,409,945

4.連結総所要自己資本額

96,397

 

 

単体自己資本比率(国内基準)

 

(単位:百万円、%)

 

2024年3月31日

1.自己資本比率(2/3)

10.68

2.単体における自己資本の額

253,071

3.リスク・アセットの額

2,369,568

4.単体総所要自己資本額

94,782

 

 

 

(資産の査定)

資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、当行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として以下のとおり区分するものです。

 

1 破産更生債権及びこれらに準ずる債権

破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。

 

2 危険債権

危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。

 

3 要管理債権

要管理債権とは、三月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。

 

4 正常債権

正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記1から3までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。

 

資産の査定の額

 

債権の区分

2023年3月31日

2024年3月31日

金額(億円)

金額(億円)

破産更生債権及びこれらに準ずる債権

危険債権

11

13

要管理債権

10

16

正常債権

37,884

40,660

 

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

経営上の重要な契約等は、次のとおりであります。

 

(1) 経営基本契約(2022年4月1日締結)(期間の定めのない契約)

当行は、親会社である楽天グループ株式会社との間で、両社の基本的な関係を定めることを目的とする経営基本契約を締結し、当該契約において、当行が銀行として公益の観点から求められる経営の独立性及び上場子会社として求められる独立性を楽天グループ株式会社が尊重する旨を規定しています。また、楽天グループ株式会社は、当行が楽天グループ以外からの取締役の登用を積極的に行う等、ガバナンスに対する適切なチェックが働く体制とすることを尊重するとともに、従業員に対する当行の人事権を尊重する旨を規定しています。なお、当該契約において楽天グループ株式会社に対する事前承認、事前協議事項は規定しておらず、当行から楽天グループ株式会社に対する報告については、当該契約に基づき必要かつ法令等に抵触しない範囲で行っています。また、当該契約において、楽天グループ株式会社は、当行の業況が悪化した場合には当行の業務の健全かつ適切な運営を確保するために必要な措置を講じ、楽天グループ株式会社の業況が悪化した場合には、同社が当行に対して資本出資、融資等の支援を要請しない旨を規定しています。

なお、当該契約の締結に際しては、予め特別監視委員会に諮問し、出席委員全員より異議がない旨の意見表明を受けています。

 

(2) 非独占的ブランドライセンス契約(2022年4月1日締結)(1年間毎の自動更新)

当行の顧客基盤の拡大等は楽天エコシステムを最大限に活用することにより図っているところ、楽天エコシステムの活用にあたっては、「楽天」のブランドを表章するロゴやドメイン等の使用が必要不可欠であることから、当該ロゴやドメイン等を使用するために、当行は、親会社である楽天グループ株式会社との間で非独占的ブランドライセンス契約を締結しています。当該契約に基づき当行が楽天グループ株式会社に支払うブランドライセンス料は、当行グループの売上総利益の一定割合によっており、その料率は楽天グループ株式会社と協議の上、合理的に決定しています。

なお、当該契約の締結に際しては、予め特別監視委員会に諮問し、出席委員全員より異議がない旨の意見表明を受けています。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。