当行グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当行グループ(当行及び連結子会社)が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当行は、「豊かな地域社会づくりに貢献し、信頼される銀行を目指します」、「新たな時代に柔軟に対応できる強い体力のある銀行として発展します」、「明るい働きがいのある職場を作ります」を経営理念に掲げ、地域金融機関として地域の皆様に親しまれ、信頼される銀行として地域の発展とともに歩んでまいりました。
当行グループを取り巻く市場環境は、人口減少、高齢化、キャッシュレスの拡大、デジタル化の進展など、大きく変化しております。そのような中、これまでの銀行機能を提供するだけでは、地域及び当行グループの持続的成長は困難であり、当行グループ自身も変化していかなければなりません。
当行グループの役割が大きく変化する中、経営理念と並ぶ重要な指針として、2022年12月の創立80周年を機に、当行グループの全役職員からのアンケートを行い、当行グループのパーパス(存在意義)を「困りごとを『ありがとう』に変えながら、“笑顔”と“幸せ”を守りつづける」と制定しました。パーパスを判断・行動軸として全組織、全役職員が同じ方向を向いて歩みを進めることで当行グループの存在価値を高めてまいります。
また、「10年後の当行グループの目指す姿」として、長期ビジョンを「「リレーション」と「ソリューション」で、地域の未来を共創する企業グループ」と制定しました。長期ビジョンには、当行グループの強みである「親しみやすさ」を活かすことで地域・お客さまと顔の見える関係を築き、広く地域社会の課題を解決していくことで地域社会の持続性を高め、地域と一緒になって未来を創造するという想いが込められています。
今後も、コンプライアンス態勢の確立とリスク管理態勢の強化を図り、資産の健全化を一層推進するとともに、ディスクロージャーを更に充実し、経営の透明性を高めてまいります。また、一層の経営の合理化・効率化により収益力の強化を図るとともに、お客様の多様なニーズに応え、お客様が抱える課題や困りごとを解決するため、対話を重視した訪問型営業を強化してまいります。
(2) 経営環境
当期の経済環境は、2024年3月に日本銀行によるマイナス金利政策の解除を受け「金利ある世界」としてスタートいたしました。企業の賃上げの動きと家計の消費意欲の高まり等を背景に、2度の政策金利の利上げが決定されるなか、国内経済は底堅く回復を続けてきました。
一方で、ウクライナや中東情勢、人手不足問題をはじめ資源・エネルギー価格の高止まりによる影響が長期化するなか、2025年1月に発足した米国の新政権による高関税政策による影響は、世界各国のほか日本においても幅広い産業に及ぶとみられ、今後の金融経済環境の見通しは高度に不確実な状況が続くものとなっております。
金融情勢では、ドル円為替相場は日米金利差から4月に1ドル160円台まで下落しましたが、日米の金融政策の変更もあり9月には一時139円台まで上昇しました。その後、米国景気や日米金融政策の見通しなどから円安基調で推移しました。
日本の長期金利(10年国債利回り)では、堅調な国内景気を背景に1%台で推移しましたが、2025年に入ると昨年に続き賃上げが実施される見通しが強まるとともに、再度、日本銀行による利上げ観測が強まるなか、3月には1.59%台まで上昇しました。
株式相場では、円安を追い風に上場企業が過去最高益を更新し、2024年7月11日には日経平均株価の終値は史上最高値の42,426円となりました。2025年に入ると米国半導体株式の下落や、米国の関税政策の影響から大幅下落し、3月末の日経平均株価終値は35,617円で終えました。
これらの経済情勢、金融情勢は、銀行業務を中心とした当行グループの事業や、主たる営業基盤である栃木県、埼玉県経済に大きく影響しており、今後、当行グループの業績へ影響を及ぼす可能性がある状況となっております。
(3)中長期的な経営戦略
2023年4月から当行グループの第11次中期経営計画がスタートしました。第11次中期経営計画では、「新たな価値提供の実現」をテーマに掲げ、「徹底した地域への信用創造」と「既存の金融の枠組みを超えた新しい事業領域への挑戦」を図り、グループ一体となり持続可能な地域の未来の創造に取り組んでまいります。
計画の実現に向けて、人材、DX、システム、店舗、新事業、グループ会社等に積極的に成長投資を行い、「人にしか出来ない仕事」に注力してまいります。また、失敗を恐れずに取り組むチャレンジ精神、柔軟な発想や素早い対応、そしてそれを後押しする組織風土を醸成してまいります。職員がいきいきと自分らしく働きがいをもって意欲的に取り組める職場環境を整えることで、当行グループの大きな変革を実現してまいります。


第11次中期経営計画では、地域金融機関として地域の皆様に親しまれ、信頼される銀行として地域の発展とともに歩んでいくために、収益性の代表的指標である当期純利益と、銀行の本業利益を示す指標の一つであるコア業務純益を目標としたほか、自己資本比率、ROE、OHRを目標としております。
なお、各数値については有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
※当期純利益又は当期純損失(△)(連結):親会社株主に帰属する当期純利益又は当期純損失(△)(連結)
※コア業務純益(投信解約損益除く):業務純益+一般貸倒引当金繰入-国債等債券売却損益
※自己資本比率(連結) :自己資本(連結)÷リスク・アセット(連結)
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当行グループを取り巻く環境は、日本銀行によるマイナス金利政策の解除により「金利ある世界」となるなか、海外情勢や資源・エネルギー価格の高騰等、米国の関税政策の影響などにより、経済先行きは不透明な状況にあります。また、少子高齢化の進展と金融デジタル化の進展をはじめとする外部環境の変化により、他金融機関との競争激化が予想される等、経営環境は大きく変化しております。
このような中、2023年4月よりスタートさせた第11次中期経営計画では、当行グループ全組織、全役職員の判断や行動における軸として、パーパス「困りごとを『ありがとう』に変えながら、“笑顔”と“幸せ”を守りつづける」を制定しております。同計画では、「収益力強化」、「体制強化」、「人的資本投資の強化」の3つの基本戦略をもとに「新たな価値提供の実現」を目指してまいります。
そして、10年後の目指す姿としての「長期ビジョン」(「リレーション」と「ソリューション」で地域の未来を共創する企業グループ)を定めております。
この「長期ビジョン」実現のためには、より盤石な経営基盤を作る必要があります。そのため、当行の資本コストや資本収益性を的確に把握するとともに、改善に向けた取組みを進め、企業価値向上を図っていかなければなりません。
これらの取組みにより当行グループは、お客様の安定した資産形成や、企業の持続的な事業価値の維持・向上に貢献するなど、お客様の人生や経営にとってなくてはならない存在を目指してまいります。
また、SDGs・ESGと企業活動の整合性を高め、環境・地域社会・経済へのインパクトを考慮した経営を実践し、地域社会と当行グループの持続可能性を確保していくため、2021年12月に制定した「サステナビリティ方針」に基づき、持続的に地域社会の発展・成長と当行グループの企業価値向上を推進する取組みを行ってまいります。
(1)サステナビリティ全般
①ガバナンスの状況
ア.ガバナンス体制
当行グループは、当行、地域社会ならびにステークホルダーが直面する持続可能性に関わる重要な課題(「マテリアリティ」)への積極的な対応が、当行の持続可能性にも資する重要なミッションであると認識し、当行の課題への取組みとともにこれらを経営戦略に落とし込み、中長期的な企業価値の向上に繋げていくこと、そしてそれを取締役会が監督・主導していくことが重要であると考えております。
以上を踏まえ、当行グループは、取締役会での議論を経て、2021年12月に「サステナビリティ方針」を策定するとともに、「サステナビリティ方針」を踏まえた3つの基本的な方針(「環境方針」、「人権方針」、「持続可能な社会の形成に向けた投融資方針」)を策定いたしました。
<3つの基本的な方針>
あわせて、「サステナビリティ方針」を実現するために、頭取を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置いたしました。
「サステナビリティ推進委員会」は半期に一度開催し、サステナビリティに関連する重要事項について協議し、取締役会に報告する体制としております。取締役会は、サステナビリティ推進委員会からの報告を受け、サステナビリティ活動を監督する役割を担っているほか、サステナビリティ全般の案件を含む、経営上の重要事項について意思決定を行っております。また、サステナビリティ推進のための活動として、環境・人的資本・社会課題・ESG地域金融・地域課題などの重要な課題に対して活動するワーキンググループを組成し、営業店・グループ会社・本部機能が相互に連動して地域社会等の課題解決に取組む体制としております。各ワーキンググループの活動状況は、サステナビリティ推進検討部会で情報共有が行われており、直面する課題に対し、本部・営業店が協力して解決に向けた方策を協議しております。
これらの活動により、広く地域社会の課題を解決していくことが地域社会の持続性を高め、「地域の未来を共創する」という当行の長期ビジョンの実現に寄与すると考えております。

当事業年度においては、当行や地域が直面する課題を共有し解決していくため、サステナビリティ推進委員会を2回開催し、以下の議題について報告を行いました。また、取締役会にも報告し共有を図っております。
〔サステナビリティ推進委員会における主な議題〕
・CO2排出削減の取組み
・サステナブルファイナンス等の取組み
・TCFD(注)提言に基づく取組み及び開示状況
・人的資本の取組み及び開示状況
・地域課題解決の特筆すべき事例
(注)TCFD(Task Force on Climate-Related Financial Disclosures):気候変動関連財務情報開示タスクフォース
イ.業績連動型株式報酬
第11次中期経営計画では、取締役(社外取締役除く)に対する業績連動型株式報酬における評価項目の一部としてCO2排出量削減率と女性管理職比率を採用しております。
②戦略
当行グループは、サステナビリティ方針を踏まえて、地域社会・ステークホルダーと当行グループにとっての重要課題(マテリアリティ)を、地域社会とステークホルダーにとっての重要度を縦軸、当行グループにとっての重要度を横軸として整理し、より重要度の高いマテリアリティを、取締役会の協議を経て特定し、そのリスクと機会を認識した上で解決に向けた取組みを実施しております。

③リスク管理
当行グループのリスク管理は、直面するリスクに関し、「信用リスク」、「市場リスク」、「流動性リスク」、「オペレーショナルリスク(事務リスク、システムリスク、法務リスク、人的リスク、有形資産リスク、風評リスク等)」のリスクカテゴリー毎に評価したリスクを相対的に捉え、当行グループの経営体力である自己資本と比較・対照し、当行グループが持続していくうえで必要な経営体力の範囲内のレベルにコントロールする枠組み(統合的リスク管理)のなかで管理しております。
サステナビリティに関するリスクの識別、評価は、サステナビリティ推進委員会において共有され、その内容は取締役会に報告されますが、あわせて、気候変動や人的資本等のサステナビリティに関する重要課題に起因するリスクは、統合的リスク管理の枠組みのなかで管理されます。統合的リスク管理の状況は、半期毎に取締役会に報告しております。
④指標及び目標
当行グループは、サステナビリティの取組みについて以下の項目について目標を設定し、指標をモニタリングしております。
ア.脱炭素関連
CO2排出量削減量、当行子会社によるPPA事業を通じた発電容量など。詳細は後述「(2)気候変動関連」を参照願います。
イ.人的資本
ワークエンゲージメントの数値、各種資格取得者数など。詳細は前述「第1 企業の概況 5従業員の状況」及び後述「(3)人的資本」を参照願います。
ウ.サステナブルファイナンス等の取組み
当行では、お客さまの社会課題や環境問題等への取組みを後押しするため、以下の融資を「ESG/SDGs融資」と位置付け、取組みを強化しています。社会におけるESGに対する意識の高まりとともに、企業にとってもESG経営への関心は年々高まっており、当行が取り扱ったESG/SDGs融資実績も増加傾向にあります。また、環境分野への取組みとして、地域資源を活用した再生可能エネルギー事業(太陽光発電、小水力発電等)などの脱炭素化を推進する分野への融資にも積極的に取組んでおります。
(ア)ESG/SDGs融資実行額(2022年度からの累積)
2022年度から2030年度の融資実行額の累計目標を2,500億円として長期的に取組んでおります。
■社会分野
・対象となる業種への融資(医療・福祉、保健衛生、教育、農業等)
・対象企業の取組みを評価するもの(寄付型私募債、創業支援融資等)
■環境分野
・対象となる事業への融資(再生可能エネルギー事業、省エネ化設備の導入や更新)
・その他(バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業融資等)

(イ)サステナブルファイナンス(注)
上記のESG/SDGs融資実行額のうち環境分野には「サステナブルファイナンス(サステナビリティ・リンクローン、グリーンローン等)」の実績が含まれております。
(単位:億円)
(注)サステナブルファイナンス:国際金融業界団体が策定した「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」等の関連原則等に適合あるいは整合的であると評価した融資を「サステナブルファイナンス」と定義しております。
エ.金融リテラシーセミナー等の開催
小学生~大学生、社会人の金融リテラシー向上、相続に対するお客さまの不安解消を目的にセミナーを開催しております。金融リテラシーセミナーについては、J-FLEC(金融経済教育推進機構)も活用しております。
<2024年度の開催実績>
(2)気候変動関連
①ガバナンスの状況
気候変動に関するガバナンスについては、前述「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンスの状況」を参照願います。なお、当行グループは2021年12月にTCFD提言への賛同を表明しており、今後も積極的な情報開示に努めてまいります。
②戦略
ア.シナリオ分析
当行グループは、気候変動が当行の財務にもたらすリスクと機会について、以下のシナリオに基づき分析しております。
(ア)リスクと機会に対する定性的認識
当行グループでは気候変動に関する主なリスクと機会を以下のように認識しています。これらの認識を踏まえ、当行グループのCO2排出量の削減やお客さまの脱炭素支援等、脱炭素社会の実現に向けて取組んでまいります。
(イ)定量的シナリオ分析
a 移行リスク
2050年にカーボンニュートラルを目指す社会において、炭素税(排出した温室効果ガスに対して課される税)が導入された場合に、お客さまの財務悪化を通じて当行の与信関係費用がどの程度増加するかを分析したものです。この結果、与信関係費用の増加額は最大15億円程度と推計しております。
なお、当行の融資ポートフォリオは、移行リスクの影響を大きく受ける状況ではないと考えておりますが、推計にあたっては、そのなかでも比較的影響を受けやすいと考えられるセクター(業種分類:鉄鋼・エネルギー・不動産)を選定して分析対象としております。この選定したセクター内でサンプル企業を抽出し、将来財務諸表の変化を一定条件のもとで予想する方法により算出しております。
b 物理的リスク
物理的リスクについては、4℃シナリオにおける気候変動に起因する自然災害のなかでも、国内における発生頻度が高く、当行の営業エリア内でも被害が出やすいと考えられる「洪水」の影響について定量的に分析したものです。
分析にあたっては、ハザードマップ等のデータを活用し、100年に1度レベルの雨量によって洪水が発生した場合に、担保不動産が毀損し、またお客さまの事業が停滞することにより、当行の与信関係費用がどの程度増加する可能性があるのかを分析したものです。この結果、与信関係費用の増加額はおよそ8億円程度と推計しております。
イ.当行の炭素関連資産の状況
2021年10月のTCFD提言改訂において「炭素関連資産」とされた4つのセクターについて、当行の与信額及び与信割合は下記のとおりです。なお、各セクターに含まれる業種は、①「エネルギー」=石油・ガス、石炭、電力、②「運輸」=空港貨物輸送、空港旅客輸送、海運、鉄道輸送、トラックサービス、自動車・部品、③「素材・建築物」=金属・鉱業、化学品、建材、資本財(建物等)、不動産管理・開発、④「農業・食料・林産物」=飲料、農業、包装食品・肉、紙・林産物、と定義しております。
※2025年3月末の貸出金、支払承諾、私募債等の合計。ただし、再生可能エネルギー発電事業、水道事業は除く。
※TCFD提言における対象業種に当行融資先を分類して集計。
③リスク管理
当行グループは、気候変動に起因する物理的リスクや移行リスクが、中長期的に当行グループの財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
気候変動に関連して発生が想定される「信用リスク」や「市場リスク」、「流動性リスク」、「オペレーショナルリスク」は、様々な時間軸や影響経路を通じて顕在化する性質を持つため、事業運営や財務への影響を総体的に捉え、当行グループが持続していくうえで必要な経営体力の範囲内のレベルにコントロールする枠組み(統合的リスク管理)のなかで管理しております。
④指標と目標
ア.CO2排出量の削減
<Scope1,2の推移>
当行グループではCO2排出量の削減に取組んでおり、2024年度は2013年度比で67.6%削減しております。今後、2030年度には70%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを目指しております。

※エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)の規定に基づく定期報告書より算出。
※グラフ中の2022年度までの排出量は、当行グループ7社のうち株式会社クリーンエナジー・ソリューションズを除いた6社の排出量を算出。
<Scope3 カテゴリ別排出量>
当行のScope3排出量のうち、カテゴリ15(投融資先の温室効果ガス排出量=ファイナンスド・エミッション)が占める割合が大半となっております。同カテゴリは、気候変動リスク管理において、重要な指標であると認識し、算定の精緻化に取り組んでおります。
※Scope3については栃木銀行単体の数値。
※カテゴリ1~7の算定にあたっては、環境省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の
算定のための排出原単位データベースVer3.4」を使用しております。
※カテゴリ3は、電力のみのデータ。
<カテゴリ15(ファイナンスド・エミッション)の排出量内訳>
カテゴリ15については国内事業法人向け融資先を算定対象としております。対象先のうち、排出量を公表している先については当該データを、それ以外の先については業種ごとの平均データを使用して計算する併用方式で算定しております。
今後も、算定方法について検討を重ねると同時に投融資先の排出量削減に向けて、サステナブルファイナンスの推進や当行子会社による地域企業のCO2排出量削減支援に取組んでまいります。
※カテゴリ15は、以下の計算式に基づき算定。
・排出量を開示している取引先:温室効果ガス排出量×当行融資寄与度
・排出量を開示していない取引先:業種別の売上高あたりの炭素強度×融資先売上高×当行融資寄与度
※炭素強度:∑[業種別の炭素強度]/融資先数
イ.当行子会社によるPPA(注)事業を通じた地域企業のCO2排出量削減支援
地域における脱炭素の推進及び地域内経済循環の創出を目指し、2023年3月に株式会社クリーンエナジー・ソリューションズ(以下、「CES」)を設立いたしました。CESは地域事業者に対し、オンサイトPPA事業を通じて、再生可能エネルギーの供給を行っております。
本事業では、設立4年目までに年間発電容量約5万kW、年間CO2削減量約2万t-CO2(一般家庭の約1万世帯に相当)を目標に、地域企業のCO2排出量削減支援を通して地域社会発展に貢献しております。
(注)PPA(Power Purchase Agreement):「電力販売契約」と訳され、企業の敷地内に太陽光発電設備を無償で設置し、発電した電力を当該企業に供給する仕組みをオンサイトPPA、企業の敷地外に設置する仕組みをオフサイトPPAといいます。
(3)人的資本
①ガバナンスの状況
人的資本に関するガバナンスについては、前述「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンスの状況」を参照願います。
2024年3月に、部門、男女、年齢等様々なメンバーで構成する従業員エンゲージメント向上に向けたプロジェクトチームを始動いたしました。また、2025年2月には、外部人材の受け入れや多様な価値観を受け入れる組織風土・文化を醸成するために、様々な層のメンバーによる「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)プロジェクトチーム」を始動いたしました。両プロジェクトチームの取組みについては後述「②戦略」を参照願います。
②戦略
当行グループはパーパス「困りごとを『ありがとう』に変えながら、“笑顔”と“幸せ”を守りつづける」を基軸とし、徹底して地域との繋がりにこだわり、お客さまの困りごとに寄り添い解決し続けることを実践してまいります。そのためには、多種多様な専門スキルを持った人材、失敗を恐れず変化に向けて主体的に挑戦する人材、多様な価値観を有する人材の活躍に加えて、これらを包含する企業文化の醸成が必要であります。
これらの実現に向けては、当行グループ役職員一人ひとりの健康が源泉であり、誰もが活き活きと明るく活躍できる働きがいのある職場の構築を通じた、エンゲージメント及びウェルビーイングの向上が重要であると認識し、様々な取り組みを進めております。
また、少子化や労働力不足を背景にITやデジタル化が進展しており、地域・お客さま・当行グループ内における業務効率化ニーズが増えております。今後DXへの幅広い対応が求められるなか、DXに関する基礎レベルの知識を有したベース人材の育成も進めております。
主な取組み
ア.自律型人材の育成
新しいこと、変化へ取組む勇気を持ち、地域課題の解決や組織内の問題解決に向けてアクションを起こす自律型人材の育成に取組んでおります。環境や地域課題を考慮した地域経済の好循環サイクルを追求し、地域社会と全てのステークホルダーの持続的な発展を目的に、新事業・サービスの創出に向けた研修プログラムやプロジェクトに加え、職員のやりがい創出や職場環境整備に向けたプロジェクトも推進しております。これらの取組みは、地域を俯瞰する観点や、ステークホルダーとのあるべき関係性について考える力を養い、とちぎんマインド(注1)の醸成にも繋がるものです。
(注1)お客さまと地域に貢献したいと強く思う精神。
(注2)事業構想に向けた課題設定やアイデア開発から新事業構想を策定していくプログラム。第1期(2023年11月~2024年10月)開催、参加者12人。第2期(2024年11月~2025年10月)開催、本部・営業店の20~30代の男女11人が参加。
(注3)2023年11月に全部室店向けにビジネスアイデアを募集し、163件の応募があり、地域への貢献や事業の成長可能性などの観点から、記載の3つの事業に絞込みを実施。2024年度に、事業化に取組む意志のある行員を公募し「とちぎん新事業創出プロジェクトチーム」を結成し、各事業の磨き上げ活動を実施してきました。今後も、事業化に向けて取組んでまいります。本部・営業店の20~50代の男女が参加しております。
イ.従業員エンゲージメントの向上
当行では、仕事や職場環境に関する課題を抽出し、いきいきと働きがいのある職場環境を目指す為に、2023年度より従業員エンゲージメント調査を実施しております。
(注)ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度の「活力」「熱意」「没頭」の平均値。
2024年度調査の結果を踏まえ、引き続き下記3項目を重点改善項目として、2024年3月に始動したエンゲージメント向上プロジェクトチームの活動も活かして改善に取り組んでまいります。
(重点改善項目)
・総合心理的安全性の改善
・上位管理職と中間・若年層のエンゲージメント格差の是正
・ウェルビーイングの改善
この3点の重点改善項目の改善、エンゲージメント向上に向けて以下の通り、戦略マップを作成し、3つに施策のグループ化を行い、対策ポイントを設定いたしました。

3つの対策ポイント毎に、プロジェクトチーム(以下、PT)を組成し、2024年3月に始動いたしました。中間層・若年層の男女・内外勤・本部・営業店等、様々な属性の職員が活動しております。
<本PTの提言から実現した主な施策>
業績評価項目の一部集約・削減、役職定年者の処遇改善、手書き業務の削減、住宅ローン業務の本部業務拡大、業務スキルの見える化、ビジネス・カジュアル導入、制服廃止

ウ.健康経営の推進
当行グループは、従業員を始めとする人材への投資を強化しサステナブル経営の土台を作るためには、従業員とその家族の健康こそが活力の源泉と考えております。従業員等の健康を考えた経営の強化に取り組むため、2023年6月に健康経営宣言を公表致しました。
健康経営宣言以降、生活習慣病等のからだの健康課題及びこころの健康課題の両面に対応するため、従業員の健康リテラシーの向上と健康リスク予防への様々な取組みを強化しております。こうした取組みが評価され、2025年3月に、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に昨年に引き続き認定されました。
<健康経営推進体制>

<主な施策>
・健康サポートブックの制作・配付
・全館禁煙及び禁煙支援の実施
・メンタルヘルス態勢の拡充
(外部健康保険相談窓口の設置、メンタルヘルスリテラシー向上に向けた取組み、外部産業保健師による個別面談)
・特定保健指導の勧奨強化
・有給休暇取得の促進
エ.ダイバーシティの推進
正規雇用労働者における賃金差異は、相対的に賃金水準が高くなる管理職(支店長代理級以上)に占める女性労働者の割合が大きく影響しております。30代、40代の管理職に占める女性労働者の割合は、各々18.2%、18.8%であり、特に出産や育児などさまざまなライフイベントを経験する30代の女性管理職割合が低いことが課題となっております。
当行は上記課題に対応するため、2022年4月に人事制度の改正を行い、出産・育児・介護など個々のライフイベントや事情により地域限定で働く女性を含む全ての職員が上位職位にチャレンジ可能としたことに加え、コース間(総合職・地域総合職)における昇進基準の差異を撤廃いたしました。加えて、今後も人事制度や育児短時間勤務、復職制度(カムバック制度)などの働く環境面に止まらず、男性に比べて職務範囲が狭いとされる女性の職務拡大を支援するため、ジョブ・ローテーション制度や新任役席者フォローなどの教育研修体制の整備も進めてまいります。こうした女性のキャリア支援体制を充実させつつ、女性管理職のロールモデルとなる一定の母集団を形成するため、計画的に女性の積極登用を行っていく方針であります。
また、2023年8月に引続き、2024年8月に非正規社員の75.4%を占めるパートタイマー(全員女性)の時給引上げを実施いたしました。これにより、非正規雇用労働者の男女の賃金差異解消を図るとともに、非正規から正規への雇用転換についても積極的に取組んでまいります。
これらの取組みにより、管理職に占める女性労働者の割合向上及び労働者の男女の賃金の差異解消を図ってまいります。
③リスク管理
人的資本に起因するリスクについても、気候変動関連のリスク同様、主に「オペレーショナルリスク(主として人的リスク)」として、統合的リスク管理の枠組みのなかで管理しております。
④指標及び目標
当行グループでは、人材育成方針及び社内環境整備方針の実現度合いを測るために、次の指標を用いております。なお、当行においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社においては、企業規模及び業種の専門性も区々であり、データ管理及び具体的な取組みについては部分的な実施に留まるため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績については、連結グループにおける主要な事業を含む提出会社のものを記載しております。また、管理職に占める女性労働者の割合など下記以外の指標を「企業情報 第1 企業の概況 5従業員の状況」に記載しております。
ア.人材戦略
イ.多様性確保
ウ.社内環境整備
(注) 1.労働施策総合推進法に基づく中途採用比率を示しております。
2.従業員に占める身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者の割合を示しております。
3.従業員に付与した年次有給休暇の日数に対し、実際に従業員が取得した日数の割合を示しております。
4.ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度の「活力」「熱意」「没頭」の平均値
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当行グループ(当行及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 信用リスク
当行グループでは、貸出金等の資産内容について厳格な基準のもとに自己査定を行い、その結果を反映させた不良債権額を開示し、貸出先の債務者区分や担保の価値等に基づき適切な引当金を繰り入れております。
しかし、わが国の経済情勢、特に当行グループが主たる営業地域としている栃木県ならびに埼玉県の経済情勢が貸出先の業況等に悪影響を及ぼし、債務者区分の下方遷移や、担保価値の下落、または予期せぬ事由の発生により、当行グループの不良債権及び与信関係費用は増加するおそれがあり、その結果、当行グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 市場リスク
当行グループの業務運営は、経済動向、金利、為替などの金融経済環境の変化から大きな影響を受ける可能性があります。主要なリスクとして以下の3つが挙げられます。
① 価格変動リスク
当行グループは市場性のある有価証券を保有しており、大幅な取引価格の下落があった場合には、保有有価証券に評価損が発生し、減損処理による損失の計上等、当行グループの業績及び財政状態に悪影響を与えるとともに、自己資本比率の低下を招くおそれがあります。
② 金利変動リスク
金利が変動した場合、債券相場の変動等により、当行グループの保有する国債をはじめとする債券ポートフォリオの価値等に悪影響を及ぼします。
③ 為替変動リスク
円高となった場合に、当行グループの保有する外貨建て投資の財務諸表上の価値が減少します。
(3) 流動性リスク
当行グループでは、資金調達や運用状況の分析を日々行い、流動性管理に万全を期しておりますが、市場環境の大きな変化や、外部格付機関による当行グループの格付の引き下げ等により、信用状況が悪化して必要な資金が確保できなくなるリスクや、資金の確保に通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされ損失を被るリスクがあります。
また、市場の混乱等による市場取引の中止や、通常より著しく不利な価格での取引を余儀なくされることで損失を被るリスクがあります。
(4) オペレーショナルリスク
① 事務リスク
当行グループでは、事務リスク回避のため事務管理体制の強化に取り組んでおりますが、故意または過失等により大きな賠償に繋がるような事務事故が発生した場合、当行グループの業績及び財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② システムリスク
当行グループでは、業務上使用しているコンピュータシステムにおいては、障害発生防止に万全を期しておりますが、災害や停電のほか、サイバー攻撃、コンピュータウィルスによるものも含め、システムの停止または誤作動等におけるシステム障害が発生した場合には、当行グループの業績並びに業務遂行に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 法務リスク
当行グループでは法令遵守態勢の充実・強化に取り組んでおりますが、顧客に対する過失による義務違反、不適切なビジネスマーケット慣行・契約締結等により損失が発生した場合、業績や財務内容に影響を及ぼす可能性があります。
④ 人的リスク
当行グループでは、中長期の経営戦略の実現や地域社会の持続的な発展、社会環境の変化に対応できる人材の確保が重要と考えております。こういった人材の不足・流出は、当行グループの戦略策定や業務運営に悪影響を及ぼす可能性があります。また、人事運営上の不公平、不公正、差別的行為、職場の安全衛生環境の問題により、業績または業務遂行に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、人的資本に関する取組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しておりますが、人材育成や社内環境整備が計画通りに進まない、あるいは機能しないことにより、業務遂行上必要な人材が不足・流出する可能性があります。
⑤ 有形資産リスク
当行グループが所有及び賃借中の土地、建物、車両等について、自然災害、犯罪行為、または資産管理上の瑕疵等の結果により、業務運営に支障をきたし、当行グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 風評リスク
当行グループの評判悪化や風説の流布等により、それが事実であるか否かにかかわらず、当行グループの信用が著しく低下し、業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) その他のリスク
① 自己資本比率に関わるリスク
当行グループの連結自己資本比率及び単体自己資本比率は、「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断する基準」(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき算出しており、国内基準を採用しております。
当行グループの自己資本比率が要求される基準である4%を下回った場合には、金融庁長官から、業務の全部または一部の停止等の命令を受けることとなります。当行グループの自己資本比率は以下のような要因により影響を受ける可能性があります。
イ 融資先の経営状況の悪化等に伴う不良債権処理費用の増加
ロ 有価証券ポートフォリオの価値の低下
ハ 自己資本比率の基準及び算出方法の変更
二 繰延税金資産の回収可能性の低下による減額
ホ その他不利益な展開
② 繰延税金資産に関わるリスク
現時点におけるわが国の会計基準に基づき、一定の条件の下で、将来における税金負担額の軽減効果として繰延税金資産を貸借対照表に計上することが認められております。当行グループの将来の課税所得の予測に基づいて繰延税金資産の一部または全部の回収ができないと判断される場合は、当行グループの繰延税金資産は減額され、その結果、当行グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 退職給付債務に関わるリスク
当行グループの退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づき作成されております。これらの前提条件が変更された場合、または実際の年金資産の時価が下落した場合、当行グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 固定資産の減損等に関わるリスク
当行グループが所有及び賃借中の土地、建物、車両等の固定資産について、自然災害、犯罪行為・資産管理上の瑕疵等による物理的な棄損、あるいは収益性の低下、市場価格の低下等により、投資額の回収が見込まれなくなった場合、固定資産の減損等により多額の損失が発生し、当行グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 情報資産リスク
当行グループでは、顧客情報や経営情報などの管理には万全を期しておりますが、当行グループ及び外部委託先の人為的ミス・事故等や外部者の不正アクセス、AIの利用過程などにおける漏洩、紛失、改ざん、不正使用などが発生した場合、当行グループの社会的信用の失墜などによって、当行グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 業務の外部委託に伴うリスク
当行グループでは、効率的な業務運営を行うため業務の一部を外部委託するにあたり、業務委託を行うことの妥当性検証や、委託先の選定を適切に行うよう努めておりますが、委託先において、委託した業務に係る事務ミス、システム障害、情報漏洩等の事故が発生した場合、当行グループの業務運営に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 規制変動リスク
当行グループは現時点の法令・規制等に従い業務を運営しておりますが、将来において法律、規則、政策、実務慣行、解釈等の変更が行われた場合には、当行グループの業務運営、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ コンプライアンスリスク
当行グループは、各種法令・規則等に従って業務を遂行しておりますが、当行グループの役職員による違法行為等が発生した場合、各種法令・規則等に基づく処分等を受けることになる他、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑨ マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係るリスク
当行グループは、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与防止規程等を制定し、リスクベース・アプローチに基づく適切な管理態勢の構築に取り組んでおります。しかしながら、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関する法令等を遵守できない場合には、当行グループの信用や業績、業務運営に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 競争に関わるリスク
競争激化により、当行グループが競争優位を得られない場合、調達コストの上昇を資金運用面でカバー出来ない等の事態も想定され、当行グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 地域経済に関わるリスク
当行グループは栃木県ならびに埼玉県を主要な営業基盤としており、地域別与信額においても栃木県は大きな割合を占めております。栃木県の経済状況が悪化した場合、信用リスクが増加し、当行グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当該地域において、自然災害や感染症の発生等があった場合、当行グループ及び従業員自身の被災による被害のほか、営業活動の制約や取引先の業績悪化による信用リスクの上昇等を通じて、当行グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 気候変動に関わるリスク
気候変動に伴う異常気象や自然災害による被害の甚大化により、社会インフラ及び当行グループの所有不動産や顧客の資産等に物理的被害が及ぶリスク(物理的リスク)が発生する可能性があります。また、規制強化による省エネ設備の導入コストの発生、温暖化等による農作物への影響、仕入れ価格の上昇などにより、融資先の経営状況が悪化した場合には、当行グループの不良債権処理費用が増加するなど、当行グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、脱炭素社会への急激な移行は、当行グループ及び当行グループの取引先の事業双方に、正負それぞれの影響が想定されております。今後、当行グループでは、TCFDに沿ったリスクの把握・評価や情報開示の拡充に取り組んでまいりますが、気候変動に関するリスクへの取り組みや情報開示が不十分と見做されることにより企業価値の低下等のリスクがあります。
上記リスクについては、当行グループが直面するリスクとして各リスクを適切に評価し、全体のリスクの程度を総体的に捉え、当行グループの経営体力の範囲内のレベルにコントロールする統合的リスク管理を行っております。
そのため行内にALM委員会及び市場運用委員会を設置し、各種リスクの評価・コントロールを行うほか、コンプライアンス委員会、危機管理委員会も含めて、損失発生を直接防止・抑制すると同時に、将来損失が発生する可能性をできるだけ合理的に把握・測定をしております。
このように、当行グループでは健全性の確保と収益性の向上のための適切なリスク管理態勢を構築しております。
また、大規模災害等の不測の事態を想定した「コンティンジェンシープラン」等を策定し、業務継続性確保のための体制も整備・構築しております。
この「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」は、当行グループの経営成績等に重要な影響を与えた事象や要因を経営者の視点から分析・検討したものです。なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当行グループが判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態
イ.資産・負債及び純資産の状況
当連結会計年度末の資産は、貸出金の増加等により前連結会計年度末比193億円増加し、3兆3,339億円となりました。負債は、預金の増加等により前連結会計年度末比180億円増加し、3兆1,808億円となりました。また純資産は、その他有価証券評価差額金の増加等により前連結会計年度末比13億円増加の1,530億円となりました。
なお、主要勘定の状況は次のとおりとなりました。
○預金
個人預金の増加等により、預金残高は前連結会計年度末比74億円増加し3兆1,175億円となりました。
○貸出金
個人・中小企業向け及び中堅・大企業向け貸出の増加等により、貸出金残高は前連結会計年度末比1,292億円増加し2兆1,892億円となりました。
○有価証券
ポートフォリオの入替を加速したことに伴い売却損を計上した結果、有価証券残高は前連結会計年度末比2,331億円減少し3,735億円となりました。
ロ.連結自己資本比率
連結自己資本比率(国内基準)は、当期純損失の計上等により、前連結会計年度末比1.33ポイント減少の10.10%となりました。
②経営成績
経常収益は、貸出金利息及び役務取引等収益は増加しましたが、有価証券利息配当金が減少したことにより前連結会計年度比1億88百万円減少の450億87百万円となりました。経常費用は、国債等債券売却損の計上や預金利息の増加等により、前連結会計年度比276億87百万円増加の687億28百万円となりました。
この結果、経常利益は前連結会計年度比278億75百万円減少の△236億41百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比244億29百万円減少の△223億28百万円となりました。
事業の種類別セグメントの状況につきましては、銀行業では、経常収益は前連結会計年度比1億67百万円減少の400億86百万円、セグメント利益は前連結会計年度比275億33百万円減少の△240億61百万円となりました。金融商品取引業では、経常収益は前連結会計年度比1億79百万円減少の22億94百万円、セグメント利益は前連結会計年度比1億75百万円減少の3億1百万円となりました。
③キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、貸出金の増加等により、△976億99百万円となりました。(前連結会計年度比1,122億58百万円減少)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却等により、2,105億53百万円となりました。(前連結会計年度比2,154億72百万円増加)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払等により、△6億72百万円となりました。(前連結会計年度比35百万円減少)
これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末比1,121億12百万円増加し6,844億71百万円となりました。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績等の状況に関する分析・検討について
第11次中期経営計画の2年目となる2025年3月期は、日本国内では政策金利の上昇により「金利ある世界」となるなか、当行は有価証券の再投資環境が整ってきたものと判断し、計画的に進めていたポートフォリオの改善を加速させ、有価証券の売却を前倒しで行いました。その結果、単体の当期純利益は△224億91百万円のとなりました。(連結の親会社株主に帰属する当期純利益は△223億28百万円)
一方、本業に関する利益であるコア業務純益(投信解約損益除く)では、預金利息の支払いが先行するなか、貸出金利息、預け金利息の増加等のほか、役務取引等利益の増加等によりコア業務純益(投信解約損益除く)は前年度と比較し10億27百万円増加の84億88百万円となりました。
2026年3月期の連結業績予想は、経常収益480億円、経常利益83億円、親会社株主に帰属する当期純利益は58億円を見込んでおります。
なお、日本銀行によるマイナス金利政策の解除により「金利ある世界」となるなか、海外情勢や資源・エネルギー価格の高騰等、米国の関税政策の影響などにより、経済先行きは不透明な状況が続くものと想定しております。
②資本の財源及び資金の流動性について
当行グループの資本的支出、設備投資については、全て自己資金で対応する予定であります。また、貸出金や有価証券の運用については、大部分を顧客からの預金にて調達しております。
預金は個人預金を中心に毎期増加(連結キャッシュ・フロー計算書:預金の増加等6,490百万円)しております。一方、貸出金は他金融機関と競争を強いられる厳しい環境にある中、個人・中小企業向け貸出を中心に取引先との関係強化や訪問型営業により、積極的に取引先のニーズに対応し一層の資金供給を行ってまいります。有価証券運用では市場リスク等各種リスクを踏まえつつ、流動性の高い運用を継続していることから、当行の現金・預け金をはじめ資金の流動性は十分確保(連結キャッシュ・フロー計算書:現金及び現金同等物の期末残高684,471百万円)されたものとなっております。
なお、この資金の流動性については、資金運用部が資金繰り表を作成・更新したうえ、リスク統括部に報告しているほか、「危機管理計画」により、平常時、注視時、懸念時、危機時の流動性準備額を定め、これを上回る流動性資産を保有していることを常時管理しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当行グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要となる事項)」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
なお、貸倒引当金の見積り及び当該見積りに用いた仮定については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(3) 国内業務部門・国際業務部門別収支
当連結会計年度の資金運用収支は246億円、役務取引等収支は63億円、その他業務収支は△303億円となりました。
このうち、国内業務部門の資金運用収支は245億円、役務取引等収支は63億円、その他業務収支は△303億円となりました。また、国際業務部門の資金運用収支は1.1億円、役務取引等収支は△0.0億円、その他業務収支は0.0億円となりました。
(注) 1 「国内業務部門」とは当行の円建取引及び連結子会社、「国際業務部門」とは当行の外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引は国際業務部門に含めております。
2 資金運用収益及び資金調達費用の合計欄の上段の計数は、国内業務部門と国際業務部門の間の資金貸借の利息(外書き)であります。
(4) 国内業務部門・国際業務部門別資金運用/調達の状況
当連結会計年度の資金運用勘定の平均残高は3兆3,767億円、受取利息は270億円、利回りは0.80%となりました。資金調達勘定の平均残高は3兆2,994億円、支払利息は24億円、利回りは0.07%となりました。
このうち、国内業務部門の資金運用勘定の平均残高は3兆3,753億円、受取利息は269億円、利回りは0.79%、資金調達勘定の平均残高は3兆2,980億円、支払利息は24億円、利回りは0.07%となりました。国際業務部門の資金運用勘定の平均残高は105億円、受取利息は1億円、利回りは1.17%、資金調達勘定の平均残高は105億円、支払利息は0.0億円、利回りは0.04%となりました。
① 国内業務部門
(注) 1 平均残高は、原則として日々の残高の平均に基づいて算出しておりますが、金融業以外の連結子会社については、半年毎の残高に基づく平均残高を利用しております。
2 「国内業務部門」とは、当行の円建取引及び連結子会社であります。
3 資金運用勘定は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度267,615百万円、当連結会計年度20,899百万円)を控除して表示しております。
4 ( )内は国内業務部門と国際業務部門の間の資金貸借の平均残高及び利息(内書き)であります。
② 国際業務部門
(注) 1 「国際業務部門」とは、当行の外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引は国際業務部門に含めております。
2 資金運用勘定は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度3百万円、当連結会計年度2百万円)を控除して表示しております。
3 ( )内は国内業務部門と国際業務部門の間の資金貸借の平均残高及び利息(内書き)であります。
4 国際業務部門の国内店外貨建取引の平均残高は、月次カレント方式(前月末TT仲値を当該月のノンエクスチェンジ取引に適用する方式)により算出しております。
③ 合計
(注) 1 資金運用勘定は無利息預け金の平均残高(前連結会計年度267,618百万円、当連結会計年度20,902百万円)を控除して表示しております。
2 国内業務部門と国際業務部門の間の資金貸借の平均残高及び利息は、相殺して記載しております。
(5) 国内業務部門・国際業務部門別役務取引の状況
当連結会計年度の役務取引等収益は103億円、役務取引等費用は40億円となりました。
このうち、国内業務部門の役務取引等収益は103億円、役務取引等費用は40億円となりました。また、国際業務部門の役務取引等収益は0.00億円、役務取引等費用は0.01億円となりました。
(注) 「国内業務部門」とは当行の円建取引及び連結子会社、「国際業務部門」とは当行の外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引は国際業務部門に含めております。
(6) 国内業務部門・国際業務部門別預金残高の状況
○ 預金の種類別残高(末残)
(注) 1 流動性預金=当座預金+普通預金+貯蓄預金+通知預金
2 定期性預金=定期預金+定期積金
3 「国内業務部門」とは当行の円建取引、「国際業務部門」とは当行の外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引は国際業務部門に含めております。
(7) 国内業務部門・国際業務部門別貸出金残高の状況
① 業種別貸出状況(末残・構成比)
(注) 「国内」とは当行及び連結子会社であります。
② 外国政府等向け債権残高(国別)
該当事項はありません。
(8) 国内業務部門・国際業務部門別有価証券の状況
○ 有価証券残高(末残)
(注) 1 「国内業務部門」とは当行の円建取引及び連結子会社、「国際業務部門」とは当行の外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引は国際業務部門に含めております。
2 「その他の証券」には、外国債券を含んでおります。
(自己資本比率等の状況)
(参考)
自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき、連結ベースと単体ベースの双方について算出しております。
なお、当行は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
連結自己資本比率(国内基準)
(単位:億円、%)
単体自己資本比率(国内基準)
(単位:億円、%)
(資産の査定)
(参考)
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、当行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるものについて債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
1 破産更生債権及びこれらに準ずる債権
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
2 危険債権
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
3 要管理債権
要管理債権とは、三月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
4 正常債権
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記1から3までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
資産の査定の額
該当事項はありません。
該当事項はありません。