(1)会社の経営の基本方針
[企業理念]
当社は、証券金融の専門機関として、常にその公共的役割を強く認識するとともに、証券界、金融界の多様なニーズに積極的に応え、証券市場の参加者、利用者の長期的な利益向上を図ることで、証券市場の発展に貢献することを使命とする。
[経営方針]
①証券金融会社としての社会的責任を常に認識し、新たなガバナンス体制のもとでコンプライアンス、企業統治および経営リスクの管理を徹底することにより健全な業務運営を実践し、以って、揺るぎない社会的信頼を確立する。
②証券市場のインフラの担い手として求められる経営の安定性および財務の健全性を確保するため、強固な自己資本を維持しながら企業価値の増大を図るとともに、収益環境や投資計画などを総合的に勘案し、株主への利益還元を引き続き充実したものとしていく。
③証券金融会社の根幹である貸借取引業務をより強化し、あわせて当社・グループ会社が提供する金融・証券関連サービスの拡充・強化と新規展開に努め、ビジネス基盤を一層拡大し堅固なものとする。
④経営環境の変化に機動的に対応するため、迅速かつ効率的な業務運営体制を構築し、競争力の基盤強化を図る。
(2)中長期的な会社の経営戦略
第6次中期経営計画(2020年度~2022年度)
当社グループは、2017年3月に策定した第5次中期経営計画の下で、これまで培ってきた資金・有価証券関連業務の運営能力と高い信用力、市場における中立性を活かして、既存ビジネスの強化に取組むとともに、内外の新たな取引ニーズを積極的に取り込むことにより、収益基盤の強化に努めてまいりました。また、この間、当社においては、指名委員会等設置会社への移行を通じ、ガバナンス体制の更なる強化に取組んでまいりました。
一方で、当社グループを取り巻く事業環境をみますと、引き続き大きく変化する渦中にあります。すなわち、超低金利環境の継続とデジタライゼーションの急速な進展がみられるなかで、取引先証券会社や金融機関等においては、人工知能(AI)を始めとする新たな情報処理技術の活用による金融サービス事業の再構築に向けた取組みが進められています。そうした下で、国際金融規制や有価証券決済制度の見直しの影響も相まって、新たな金融取引ニーズが生まれているほか、取引ニーズの多様化がみられています。
当社グループは、証券市場のインフラの担い手として求められている財務の健全性を維持することを前提に、人的資源を含め当社が有する資本をより有効に活用することにより、免許業務である貸借取引の基盤強化と収益源の多様化への取組みを更に推進するとともに、迅速かつ効率的な業務運営体制の構築による競争力の基盤強化を図り、市場や投資家の信認に応えていきたいと考えています。
こうした考えに立って、2020年度を初年度とする新たな中期経営計画を策定しました。
[経営目標]
当社業務の核となる貸借取引業務が市況変動等の影響を大きく受けることを踏まえ、貸借取引の基盤強化のため、貸借銘柄数の着実な増加を図るとともに、証券市場のインフラとしての機能を安定的に果たしていくため、収益源の多様化を推進し、基礎収支額(想定貸借取引収支のもとで試算される経常利益)の着実な増加を目指す。
[戦略]
①証券市場のインフラとしての貸借取引業務の強化
株式市場を取り巻く環境変化に適切に対応し貸借取引業務の安定的な運営および利便性向上を図る。また、市場参加者の動向の的確な把握や貸借銘柄数の着実な増加などにより、貸借取引の利用促進を図るとともに、制度信用・貸借取引にかかる情報発信を強化し、投資家のすそ野を拡大する。
②セキュリティ・ファイナンス業務の拡充・強化
当社がこれまで培ってきた資金取引や有価証券取引のノウハウを有効に活用し、内外の金融商品取引業者等との多様な取引に積極的に対応するとともに、取引先や対象有価証券等の拡大により、セキュリティ・ファイナンス業務を強化・拡充し、収益機会の拡大を図る。
③新規業務の開発と具体化
証券金融会社としての業歴を背景とした当社の特長を活かし、内外の関係先やグループ会社との連携の下で、長期的視野に立って新規業務の開発に取組むとともに、具体化を図っていく。
④資金の効率的活用としての有価証券運用の多様化
外部環境の変化に対し、適切なリスクコントロールの下、機動的にポートフォリオの見直しを実施することで、安定した収益を確保する。また、外国国債など外貨建て有価証券による運用拡大や、外貨を利用したビジネス展開をサポートするため、外貨調達手段の拡充を図る。
⑤業務管理体制の強化
当社に求められている社会的要請に積極的に対応し、企業理念を実現していくため、コンプライアンスを経営の前提と位置付けていることをあらためて確認する。
当社に対する揺るぎない社会的信頼を確立するため、内部監査の実効性を確保し、金融業務に付随するリスクの多様化・複雑化に対応してリスク管理の一層の充実を図る。
重大な災害発生時においても証券市場のインフラとしての機能を果たせるよう、業務継続体制の更なる強化を図る。
⑥効率的な業務運営による競争力の基盤強化
取引量の増加や業務の複雑化が進む中、業務プロセスの見直しやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)等のデジタル技術の活用を積極的に推進することにより、効率的な業務運営体制を構築し、競争力の基盤強化を図る。
⑦多様な働き方への対応と企業活力の向上
働き方改革、定年延長など労働の在り方が大きく変化し多様化している中、人事制度の見直し等により、職員が自覚とやりがいを持って働ける職場環境を整備し、職員ひとりひとりの生産性を高め、企業活力を向上させる。
[リスクアペタイト・フレームワークの活用]
上記経営目標・戦略とリスク管理を一体運営していくための枠組みとして、リスクアペタイト・フレームワークを導入する。
(3)会社の対処すべき課題
当社は、「証券金融の専門機関として、常にその公共的役割を強く認識するとともに、証券界、金融界の多様なニーズに積極的に応え、証券市場の参加者、利用者の長期的な利益向上を図ることで、証券市場の発展に貢献する」ことを企業理念としております。
こうした企業理念の実現に向け、当社グループは第5次中期経営計画(2017年度から2019年度)の下、これまで培ってきた資金・有価証券関連業務の運営能力と高い信用力、市場における中立性を活かして、当社の基幹業務である貸借取引業務をはじめとする既存ビジネスの強化に取組むとともに、内外の新たな取引ニーズを積極的に取り込むことにより、収益基盤の強化に努めて参りました。また、昨年6月には指名委員会等設置会社へ移行し、公共的役割を担う金融機関として、ガバナンス体制の一層の強化にも取組んで参りました。
外部環境に目を向けますと、デジタライゼーションの急速な進展がみられるなかで、AI(人工知能)を始めとする新たな情報技術の活用による金融サービスの再構築に向けた取組みや国際金融規制等の見直しの影響が相まって、取引ニーズの多様化が進んでおります。また、2020年1月下旬以降、新型コロナウイルスの感染拡大による影響が世界的な広がりを見せるなかで、日本経済のみならず世界経済の先行きに対する不透明感が急速に高まるとともに、超低金利環境の更なる長期化が見込まれております。
こうした事業環境のなか、当社は、2020年度から2022年度を対象期間とする第6次中期経営計画を策定いたしました。新たな計画では、貸借取引業務の基盤強化のため、貸借銘柄数の着実な増加を図るとともに、証券市場のインフラとしての機能を安定的に果たしていくため、収益源の多様化を推進し、基礎収支額*の着実な増加を目指して参ります。具体的には、第5次計画の成果をさらに推し進め、貸借取引業務では発行会社・貸株取引先とのリレーション強化により、株券調達力の向上に取組み、その他のセキュリティ・ファイナンス業務では取引先や取引手法、対象通貨などの多様化を通じて資金および有価証券取引ビジネスの領域拡大を図るほか、部門間連携の強化を通じた戦略的な営業活動の推進などに取組んで参ります。
また、新たに、経営管理やリスク管理を一体運営していくための枠組みとして、リスクアペタイト・フレームワークを導入し、適切なリスクテイクの管理体制を整備することといたしました。
これからも当社グループは、証券市場のインフラとして必要な財務の健全性および高い信用力を維持しつつ、人的資源を含め当社が有する資本をより有効活用した効率的な業務運営により、安定的な収益確保と充実した株主還元を実現し、市場や投資家の信認に応えて参りたいと考えております。
*「基礎収支額」:想定貸借取引収支(過去3年平均値を想定)の下で試算される経常利益
当社および当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は以下のとおりです。
金融のグローバル化やフィンテックに代表される高度化の加速など、当社グループを巡る経営環境が変化する中、内外の新たなニーズの獲得に向けた取組みを通じて、業務内容の複雑化が進むと同時に、当社グループを取り巻くリスクも変化しております。
こうした状況を踏まえ、2020年3月に策定した第6次中期経営計画(2020年度~2022年度)の下、事業戦略、収益およびリスク管理の一体運営に取組むべく、リスクアペタイト・フレームワークを導入することといたしました。
なお、記載事項のうち将来に関する事項は当期末(2020年3月31日)現在において当社が判断したものです。
1.事業環境に関するリスク
(1) 各種法令等に関するリスク
①免許業務について
当社の主要業務である貸借取引業務は金融商品取引法第156条の24の規定により内閣総理大臣の免許を受けて運営しております。また、子会社では、日証金信託銀行株式会社は銀行法および金融機関の信託業務の兼営等に関する法律の免許および認可を受けて信託銀行業務を営み、日本ビルディング㈱については宅地建物取引業法等の適用を受けております。
現時点では、免許取消や業務停止等の処分を受けるような事由は発生しておりませんが、将来、何らかの理由により、こうした処分等を受けることとなった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
②業務内容の制限等について
証券金融会社は、金融商品取引法の定めにより、免許業務である貸借取引業務以外で運営可能な業務の範囲が制限されております。こうした規制は、証券市場のインフラである貸借取引業務の安定運営を目的としており、将来、新規業務を起ち上る際などにおいて必要な承認が得られない場合には、事業機会を逸失するなど、当社グループの事業運営及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③コンプライアンスに関するリスク
当社は、コンプライアンスを企業経営の前提と位置づけ、コンプライアンス統括部を中心に当社全般のコンプライアンスを推進しております。役職員に対しては、投資家保護の意識を高め、公正かつ適切な業務運営を行うため、定期的にコンプライアンス研修を実施するほか、随時、業務に即した研修、指導を行うことにより、コンプライアンス意識の徹底を図っております。
また、当社グループを取り巻く事業環境の様々な変化に対応すべく、既存業務の強化を図るとともに、新規業務の開始による収益源の多様化等に取組む中で、新たなコンプライアンス・リスクが生じる可能性も念頭に、グループ各社の役職員が参加する外部講師による講演会開催や研修など各種啓蒙活動の実施のほか、グループ各社間において情報および認識の共有を随時図ることを通じてコンプライアンス意識の徹底に取組んでおります。
しかしながら、役職員の故意または過失によりコンプライアンス・リスクが顕在化した場合、または法人としてコンプライアンス・リスクが顕在化した場合は、取引先との信頼関係の低下や、損害賠償、行政処分等に直面するおそれがあります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④法令等の変更に伴うリスク
当社グループに関連する、金融商品取引法、銀行法、信託業法、宅地建物取引業法等の法令・規則等が変更された場合には、市場環境の変化等を通じて直接的又は間接的に当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、具体的にどのような影響が発生し得るかについては、将来において決定される法令等の改正の内容によるため、現時点ではその内容等を予測することは困難であり、当社グループがコントロールしうるものではありません。
(2)制度信用取引の動向に関するリスク
①制度信用取引残高の変動に伴うリスク
当社は、証券金融の専門機関として証券市場の発展に貢献することを使命とし、当社根幹業務である貸借取引業務の強化に取組むとともに、当社グループが提供する金融・証券関連サービスの拡充等に努めることにより、ビジネス基盤の強化にも取組んでおります。
こうした取組みを通じて、当社収益基盤の多様化が着実に進む一方で、貸借取引業務が営業収益に占める割合は依然として高い状態にあります。株式市況の動向等の影響から、制度信用取引の主たる利用者である個人投資家の利用減少等により、制度信用取引残高・貸借取引残高が減少した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②運用スタイルの多様化に伴うリスク
昨今、新たな運用商品・手法が相次いで提供され、個人投資家の運用スタイルの多様化が進んでおり、信用取引から株価指数や外国為替といった先物取引への移行に加え、信用取引の中でも一定の基準が設けられている制度信用取引からより自由度の高い一般信用取引への移行もみられております。
こうした状況に鑑み、当社では、信用取引にかかるスマートフォンアプリの開発や動画作成等を通じて制度信用取引・貸借取引の普及活動に取り組んでいるほか、一般信用取引向けに資金(一般信用ファイナンス)および株券(一般貸株)の貸付業務を展開しております。
しかしながら、こうした地道な取り組みが必ずしも現物取引・信用取引・貸借取引の残高増加に直結するとは限らず、株式市場における取引が縮小する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
2.事業運営上のリスク
(1)市場リスク
当社グループは資金を効率的に活用する観点から、ポートフォリオにおける運用資産の多様化・分散投資を推し進めております。
このうち、国内外の債券については、各国中央銀行による金融政策の変更や各国財政政策に対する信認の低下等を要因に国債金利が急騰した場合などにおいて、想定以上の評価損や実現損が発生する可能性があります。同様に、外国為替市場において日本円が上昇した場合には、保有する外貨建て有価証券について評価損や実現損が発生する可能性があります。
また、市場性のある株式を保有しており、株価の下落により保有株式に評価損等が発生する可能性があるほか、非上場投資信託等も保有しており、金融市場の混乱等により、市場において正常な取引ができなくなる場合や通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされる可能性があります。
当社グループでは、市況を注視するとともに適宜デリバティブ取引等によるヘッジオペレーションの実施等により市場リスクの低減に努めておりますが、突発的な市場の急変動等が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)信用リスク
当社の貸付業務では、信用リスクの顕在化に備え流動性の高い有価証券を担保として受入れています。さらに資産の健全性の維持・向上を図るため、保有資産について厳格な自己査定を実施しているほか、信用供与先については社内格付により信用リスクを評価するとともに、信用リスクについて計量化による管理やストレステストを実施するなど厳格な管理態勢を整備しています。
また、子会社の日証金信託銀行㈱においては銀行業務の一環として無担保貸付業務を行っておりますが、本邦政府向けが大宗を占めるなど信用リスクは限定的であるほか、厳格なリスク管理およびポートフォリオ管理を行っております。
しかしながら、信用供与先の経営状況の急激な悪化に加え担保として受入れている有価証券の価格が想定を超えて下落した場合は、貸出債権を回収できない恐れがあり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)資金および有価証券調達に関するリスク
①資金調達環境の悪化等によるリスク
当社グループは主として、コールマネーやコマーシャル・ペーパー、銀行からの短期借入金等、比較的短期かつ低利の資金を調達することにより、業務を運営しております。また、外貨を含めた調達手段の多様化、安定した調達先の確保に努めるとともに、日証金信託銀行㈱との緊密な連携を通じた連結ベースでの資金繰り管理を行うなど、厳格な流動性リスク管理を行っております。しかしながら、金融市場の混乱や短期金利の急激な上昇、当社グループの財務状況の悪化などにより、資金調達コストが上昇したり、取引制限を受ける可能性があり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②格下げによるリスク
当社の主要業務である貸借取引業務をはじめとする各種業務の運営に必要となる資金および有価証券を安定的に調達するためには、高い水準の格付けを維持することが求められます。しかしながら、財務状況の悪化など当社固有の要因に限らず、日本国債の格下げ等の影響により、当社格付が引き下げられた場合には、取引条件の悪化を余儀なくされたり、十分な資金および有価証券の確保が困難となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)自己資本にかかる規制に関するリスク
当社は、貸借取引業務の安定運営を確保する観点から、日本銀行のオペレーションや決済機構の参加資格を有しており、証券会社と同様に自己資本規制比率200%を維持することが求められております。
また、連結子会社の日証金信託銀行株式会社についても、単体自己資本比率を2006年金融庁告示第19号に定められる国内基準である4%以上の水準を維持する必要があります。
これら基準を下回った場合には、日銀オペレーション等の参加資格の全部または一部停止措置を受けることにより、当社主要業務である貸借取引業務の安定運営に支障が生じる可能性や、日証金信託銀行の業務の全部または一部の停止命令を受ける可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)金融市場におけるテールリスクの発生
2008年のリーマンショック発生時に連結ベースで最終赤字を計上した経験を踏まえ、当社と子会社の日証金信託銀行株式会社のリスク管理部門担当者の兼務や定期的なミーティング開催などを通じてグループリスク管理の強化を推進しているほか、市況が急速に悪化した場合においても貸借取引業務を安定して運営できるよう、充分な自己資本の維持に努めております。
しかしながら、金融市場におけるテールリスクの発生を予見することは困難であり、そうしたリスクが顕在化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)オペレーショナルリスク
①情報システムに関するリスク
当社は証券市場のインフラとしての貸借取引業務の運営に必要なシステムを始め、様々な情報システムを利用しており、それらシステムの安定稼働に万全を期すべく、ネットワーク・機器類の二重化やメンテナンスの実施等によりシステム障害発生の未然防止に努めているほか、コンティンジェンシープランを策定し、障害発生時においても早期に復旧させる体制を構築しております。また、システム開発・運用を安全かつ効率的に行うため、作業手順を明確化するとともに監視体制を整備しています。これらの対策にもかかわらず不測の要因により業務継続に支障が生じる重大なシステム障害が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②サイバーセキュリティに関するリスク
昨今、デジタル技術の高度化が加速する中で、当社グループを取り巻くサイバーリスクが高まっていることを踏まえ、システム面での対応に加え、グループ各社とも連携しながらサイバーセキュリティ態勢の強化にも取組んでおります。
しかしながら、高度化または巧妙化されたサイバー攻撃等により、想定外のシステム障害等が発生し、当社グループの業務継続に甚大な支障が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③情報漏洩リスク
取引先の情報等の情報資産の保護については、さまざまなセキュリティ対策を整備するとともにその取扱いを役職員に周知徹底しています。しかしながら、人為的ミスや不正行為、サイバー攻撃を含む外部犯罪等によって重要な情報が漏洩した場合は、当社の信用力が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④自然災害等に関するリスク
当社は、貸借取引業務等を最重要業務として位置づけ、証券市場のインフラ機関としての責務を果たすべく、大規模災害等が発生した場合においても、業務の継続や早期復旧を図るための業務継続体制を構築しております。
昨今は、気候変動の影響等により自然災害の多様化・大規模化が見られるほか、新型コロナウィルス感染症の流行が発生しております。
当社では、大阪支社等を活用したデュアル・オペレーション体制の構築やテレワークの推進など、業務継続体制の強化に取組んでおります。
また、子会社の日証金信託銀行㈱では金融市場において定期的に開催される合同訓練に参加し、当社との連携確認の実施等に取組むとともに、当社拠点の活用を含む業務継続体制強化に向けた検討を進めております。さらに、日本ビルディング㈱においてもBCP対策委員会を設置し、ビルの安全を確保する観点から、業務継続体制の強化に努めております。
しかしながら、想定を大幅に上回る自然災害や停電、戦争、犯罪・テロが発生したり、各種感染症が流行した場合には、当社グループの業務運営に支障をきたすリスクがあり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
3.子会社・関連会社固有のリスク
当社の子会社・関連会社では不動産業務、情報処理サービス業務の事業を展開しており、以下の様な事象が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)不動産業務
不動産市況の悪化や空室率の上昇等により業績が悪化するリスクがあります。また、周辺地域において再開発が相次ぐなか、所有ビルの資産価値・競争力向上等の観点から、戦略的にビルの建替え等を実施することとなった場合には、一時的な費用が発生したり、工期中においては賃料収入等が減少する可能性があります。
(2)情報処理サービス業務
当社の持分法適用関連会社2社は、情報処理サービス業務を営んでおります。取引先企業のシステム投資意欲が減退した場合や提供するシステムおよびサービスにおいて障害等が発生した場合には、当社グループの持分法投資損益に影響を及ぼすリスクがあります。
4.事業戦略が奏功しないリスク
当社は、2020年度から2022年度までの3年間を対象とする第6次中期経営計画を2020年3月に公表し、「当社業務の核となる貸借取引業務が市況変動等の影響を大きく受けることを踏まえ、貸借取引の基盤強化のため、貸借銘柄数の着実な増加を図るとともに、証券市場のインフラとしての機能を安定的に果たしていくため、収益源の多様化を推進し、基礎収益額(想定貸借取引収支のもとで試算される経常利益)の着実な増加を目指す」との経営目標を掲げ、各種戦略・施策に取組んでおります。
しかしながら、国内外の経済・金融情勢の悪化、本邦における金融緩和政策の一層の深化等による事業環境の悪化などの影響により、現在取組んでいる各種戦略・施策等が功を奏しないリスクがあり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績の概況
(金融経済環境)
当年度の経済環境は、海外では米国を中心に回復が続き、日本経済も消費税増税により一時的な影響を受けつつも企業収益や雇用・所得環境の改善を通じて緩やかな回復が見られておりましたが、年明け以降は新型コロナウイルスの感染拡大により国内外の経済は急速に縮小しました。
株式市場についてみますと、期初21,509円で始まった日経平均株価は、米中貿易摩擦への懸念などから夏場にかけては21,000円台を中心とした上値の重い展開が続きましたが、9月以降はFRBによる利下げや米中通商協議の進展期待などから上昇に転じ、年明けの1月20日には当期間の最高値となる24,083円まで上昇しました。しかしながら、1月下旬以降は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景にグローバル経済の先行きに対する懸念が強まり、金融資産を現金化する動きが活発化したことなどを受けて急落し、3月19日には16,552円と2016年11月以来の安値を付けました。その後、各国政府および中央銀行による緊急的な経済対策や金融緩和措置を受けて反発し、期末は18,917円で取引を終えました。
この間の東証第一部の1日平均売買代金をみますと、2兆6,097億円と前期比2,453億円の減少となりました。
東京市場の制度信用取引買い残高についてみますと、期初1兆6,000億円前後で推移していた残高は、9月には1兆4,000億円台まで減少しましたが、その後は株価の上昇とともに回復傾向を辿り、1月下旬には1兆7,000億円台を回復しました。しかし、その後の株価の大幅な下落により、手仕舞い売りが増加し、3月末には当期間のボトムとなる1兆2,700億円台まで減少しました。一方、期初6,600億円台であった同売り残高は、9月中旬に当期間のピークとなる7,500億円台まで増加しましたが、12月以降残高は減少に転じ、さらに2月以降の株価急落で買戻しが加速したため、3月中旬には当期間のボトムとなる4,600億円台まで減少しました。その後、株価の下落が一服すると、残高は急回復し、3月末は6,600億円台となりました。
(2020年3月期決算)
このような市場動向の下で、当社グループの貸付金総残高(期中平均)は7,664億円と前期比301億円減少しました。
連結営業収益は、貸借取引における有価証券貸付料および有価証券貸付業務における買現先利息などが増収となったことなどから、29,101百万円(前期比19.7%増)となりました。一方、同営業費用は、貸借取引における有価証券借入料および有価証券貸付業務における売現先利息などの増加により16,835百万円(同37.0%増)となり、一般管理費は8,136百万円(同1.0%増)となりました。
また、一部投資株式の保有区分変更に伴い、当該株式にかかる受取配当金の計上が営業外収益から営業収益となった影響(352百万円)により、連結営業利益は4,129百万円(同3.7%増)となった一方、同経常利益は4,894百万円(同3.0%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は3,556百万円(同5.6%減)となりました。
次に各セグメントの営業概況をご報告いたします。
①証券金融業
貸借取引業務における営業収益は12,517百万円(前期比29.6%増)となりました。貸借取引貸付金が期中平均で2,199億円と前期比642億円減少し、貸付金利息が減収となった一方、貸借取引貸付有価証券が期中平均で3,339億円と前期比723億円の増加となり、貸株料が増収となったことに加え、貸株超過銘柄にかかる品貸料も増加しました。
一般貸付業務における営業収益は1,312百万円(同5.7%増)となりました。金融商品取引業者向け貸付では一部取引先の資金需要を取り込んだものの全体としては前期を下回ったほか、個人・一般事業法人向け貸付も弱含みで推移した結果、当業務の貸付金の期中平均が726億円と前期比84億円の減少となりました。なお、現金担保付株券等貸借取引の利用は増加しました。
有価証券貸付業務における営業収益は7,308百万円(同12.8%増)となりました。一般貸株部門においては有価証券貸付料が減収となったものの、債券営業部門が現先取引の残高伸長を主因に大幅な増収となり、業務全体でも増収となりました。
その他業務における営業収益は4,230百万円(同18.0%増)となりました。保有区分変更に伴う受取配当金の計上や投資信託等の分配金収入の増加などが寄与しました。
②信託銀行業
信託銀行業務における営業収益は2,832百万円(同14.8%増)となりました。貸付金利の低下に伴い貸付金利息が減収となったものの、信託報酬および保有国債等の売却益等が増加しました。
③不動産賃貸業
不動産賃貸業務における営業収益は899百万円(同1.6%増)となりました。
(2)財政状態に関する分析
《当社グループの資産、負債、キャッシュ・フローの特徴》
資産は、日々変動する貸借取引貸付(営業貸付金)および日銀当座預金への預け金(現金及び預金)、有価証券を調達する際に差し入れる担保金(借入有価証券代り金)、資金の効率的な活用を目的として保有する有価証券が大宗を占めます。
負債は、変動する資産に合わせてコールマネーやコマーシャル・ペーパーといった日々調整が可能な市場性調達のほか、有価証券を貸し付ける際に受け入れる担保金(貸付有価証券代り金)が中心となります。
キャッシュ・フローは、主に上記の資産・負債の変動によるもののほか、配当金の支払および自己株式取得・処分等により発生するものが中心となります。
なお、資産における現金および預金は、負債における日証金信託銀行株式会社の信託勘定における待機資金の状況やグループ全体の資金繰りの状況等により大きく増減することがあります。
また、現時点では重要な資本的支出の予定はありません。
①資産、負債および純資産の状況
資産合計額は9兆8,144億円と前連結会計年度末に比べて4兆5,231億円、負債合計額は9兆6,878億円と前連結会計年度末に比べて4兆5,372億円それぞれ増加した一方、純資産合計額は1,266億円と前連結会計年度末に比べて141億円減少しました。この主な要因は以下のとおりです。
○資産
現金及び預金…機動的な資金調達による日銀当座預金への預け金の増加等に伴い、前連結会計年度末に比べて3,092億円増加しました。
営業貸付金…当社においては貸借取引貸付金をはじめとする貸付金が減少した一方、日証金信託銀行株式会社における貸付金が増加した結果、前連結会計年度末に比べて187億円増加しました。
買現先勘定…現先取引残高の増加に伴い、前連結会計年度末に比べて2兆2,008億円増加しました。
借入有価証券代り金…貸借取引および現先担保付債券貸借取引(債券レポ取引)にかかる差入担保金の増加に伴い、前連結会計年度末に比べて1兆7,402億円増加しました。
○負債
コールマネーおよびコマーシャル・ペーパー…機動的な資金調達を行った結果、前連結会計年度末に比べてそれぞれ1,603億円の増加、1,520億円の増加となりました。
売現先勘定…現先取引残高の増加に伴い、前連結会計年度末に比べて2兆4,700億円増加しました。
貸付有価証券代り金…現先担保付債券貸借取引(債券レポ取引)にかかる受入担保金の増加に伴い、前連結会計年度末に比べて1兆5,405億円増加しました。
信託勘定借…日証金信託銀行株式会社の信託勘定における待機資金の増加に伴い、前連結会計年度末に比べて1,261億円増加しました。
○純資産
株主資本…配当金の支払いおよび自己株式取得を行ったものの、当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加や自己株式の処分により、前連結会計年度末に比べて10億円増加しました。
その他の包括利益累計額…その他有価証券評価差額金の減少に加え、保有する有価証券等の価格変動に伴い、繰延ヘッジ損益が悪化したことから、前連結会計年度末に比べて151億円減少しました。
②キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は1兆2,528億円(前期比2,676億円増)となりました。
○営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、2,750億円の流入超(前連結会計年度2,263億円の流入超)となりました。これは、買現先取引の増加、現金担保付債券貸借取引(債券レポ取引)にかかる借入有価証券代り金の増加、有価証券及び投資有価証券の取得などによる支出があった一方で、売現先取引の増加、現金担保付債券貸借取引(債券レポ取引)にかかる貸付有価証券代り金の増加、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還などによる収入によるものです。
○投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、47億円の流出超(前連結会計年度86億円の流出超)となりました。これは、投資有価証券の売却及び償還による収入等があった一方で、投資有価証券の取得および無形固定資産の取得による支出等によるものです。
○財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、25億円の流出超(前連結会計年度39億円の流出超)となりました。これは、配当金の支払および自己株式の取得による支出等によるものです。
(3) 当社グループ業務別営業収益の状況
|
|
|
|
前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
||
|
|
|
|
金額(百万円) |
構成比(%) |
金額(百万円) |
構成比(%) |
|
証券金融業 |
20,969 |
86.3 |
25,369 |
87.1 |
||
|
|
貸借取引業務 |
9,661 |
39.7 |
12,517 |
43.0 |
|
|
|
|
貸借取引貸付金利息 |
1,799 |
7.4 |
1,420 |
4.9 |
|
|
|
借入有価証券代り金利息 |
708 |
2.9 |
1,178 |
4.0 |
|
|
|
有価証券貸付料 |
6,819 |
28.0 |
9,662 |
33.2 |
|
|
一般貸付業務 |
1,242 |
5.1 |
1,312 |
4.5 |
|
|
|
有価証券貸付業務 |
6,480 |
26.7 |
7,308 |
25.1 |
|
|
|
|
株券 |
1,517 |
6.2 |
1,015 |
3.5 |
|
|
|
債券 |
4,962 |
20.4 |
6,293 |
21.6 |
|
|
その他 |
3,586 |
14.8 |
4,230 |
14.5 |
|
|
信託銀行業 |
2,467 |
10.1 |
2,832 |
9.8 |
||
|
|
貸付金利息 |
58 |
0.2 |
50 |
0.2 |
|
|
|
信託報酬 |
746 |
3.1 |
784 |
2.7 |
|
|
|
その他 |
1,662 |
6.8 |
1,997 |
6.9 |
|
|
不動産賃貸業 |
884 |
3.6 |
899 |
3.1 |
||
|
合計 |
24,321 |
100.0 |
29,101 |
100.0 |
||
(4) 当社グループ貸付金の状況(平均残高)
|
|
前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
||
|
金額(億円) |
構成比(%) |
金額(億円) |
構成比(%) |
|
|
貸借取引貸付金 |
2,842 |
35.7 |
2,199 |
28.7 |
|
一般貸付金 |
811 |
10.2 |
726 |
9.5 |
|
(うち一般信用ファイナンス) |
(106) |
(1.3) |
(104) |
(1.4) |
|
信託銀行貸付金 |
4,312 |
54.1 |
4,738 |
61.8 |
|
その他 |
― |
― |
― |
― |
|
合 計 |
7,966 |
100.0 |
7,664 |
100.0 |
|
(参考) 貸借取引貸付有価証券 |
2,616 |
― |
3,339 |
― |
(5) 当社グループ貸付金の状況(期末残高)
|
|
前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
||
|
金額(億円) |
構成比(%) |
金額(億円) |
構成比(%) |
|
|
貸借取引貸付金 |
2,493 |
37.3 |
1,891 |
27.5 |
|
一般貸付金 |
546 |
8.2 |
505 |
7.4 |
|
(うち一般信用ファイナンス) |
(82) |
(1.2) |
(68) |
(1.0) |
|
信託銀行貸付金 |
3,649 |
54.6 |
4,478 |
65.1 |
|
その他 |
― |
― |
― |
― |
|
合 計 |
6,688 |
100.0 |
6,876 |
100.0 |
|
(参考) 貸借取引貸付有価証券 |
4,330 |
― |
3,973 |
― |
(6) 貸借取引金利・貸株料の推移
|
年月日(約定日) |
貸借金利融資金利 |
貸株等代り金金利 |
貸株料 |
|
2001年5月1日 |
0.60% |
0.00% |
- |
|
2002年5月7日 |
0.60% |
0.00% |
0.40% |
|
2006年7月27日 |
0.74% (+0.14%) |
0.00% |
0.40% |
|
2006年9月22日 |
0.86% (+0.12%) |
0.00% |
0.40% |
|
2007年3月15日 |
1.02% (+0.16%) |
0.00% |
0.40% |
|
2007年4月5日 |
1.11% (+0.09%) |
0.00% |
0.40% |
|
2009年1月29日 |
0.97%(△0.14%) |
0.00% |
0.40% |
|
2010年11月22日 |
0.77%(△0.20%) |
0.00% |
0.40% |
|
2014年8月6日 |
0.64%(△0.13%) |
0.00% |
0.40% |
|
2016年3月9日 |
0.60%(△0.04%) |
0.00% |
0.40% |
|
2020年3月31日現在 |
0.60% |
0.00% |
0.40% |
(7)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当該事項につきましては、(1)経営成績の概況をご参照ください。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当該事項につきましては、(2)財政状態に関する分析をご参照ください。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」をご参照ください。
該当事項はありません。
該当事項はありません。