第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

[企業理念]

当社は、証券金融の専門機関として、常にその公共的役割を強く認識するとともに、証券界、金融界の多様なニーズに積極的に応え、証券市場の参加者、利用者の長期的な利益向上を図ることで、証券市場の発展に貢献することを使命とする。

 

[経営方針]

①証券金融会社としての社会的責任を常に認識し、新たなガバナンス体制のもとでコンプライアンス、企業統治および経営リスクの管理を徹底することにより健全な業務運営を実践し、以って、揺るぎない社会的信頼を確立する。

②証券市場のインフラの担い手として求められる経営の安定性および財務の健全性を確保するため、強固な自己資本を維持しながら企業価値の増大を図るとともに、収益環境や投資計画などを総合的に勘案し、株主への利益還元を引き続き充実したものとしていく。

③証券金融会社の根幹である貸借取引業務をより強化し、あわせて当社・グループ会社が提供する金融・証券関連サービスの拡充・強化と新規展開に努め、ビジネス基盤を一層拡大し堅固なものとする。

④経営環境の変化に機動的に対応するため、迅速かつ効率的な業務運営体制を構築し、競争力の基盤強化を図る。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

第6次中期経営計画(2020年度~2022年度)

[経営目標]

当社業務の核となる貸借取引業務が市況変動等の影響を大きく受けることを踏まえ、貸借取引の基盤強化のため、貸借銘柄数の着実な増加を図るとともに、証券市場のインフラとしての機能を安定的に果たしていくため、収益源の多様化を推進し、基礎収支額(想定貸借取引収支(過去3年平均値を想定)のもとで試算される基調としての経常利益額)の着実な増加を目指す。

 

[戦略]

①証券市場のインフラとしての貸借取引業務の強化

株式市場を取り巻く環境変化に適切に対応し貸借取引業務の安定的な運営および利便性向上を図る。また、市場参加者の動向の的確な把握や貸借銘柄数の着実な増加などにより、貸借取引の利用促進を図るとともに、制度信用・貸借取引にかかる情報発信を強化し、投資家のすそ野を拡大する。

②セキュリティ・ファイナンス業務の拡充・強化

当社がこれまで培ってきた資金取引や有価証券取引のノウハウを有効に活用し、内外の金融商品取引業者等との多様な取引に積極的に対応するとともに、取引先や対象有価証券等の拡大により、セキュリティ・ファイナンス業務を強化・拡充し、収益機会の拡大を図る。

③新規業務の開発と具体化

証券金融会社としての業歴を背景とした当社の特長を活かし、内外の関係先やグループ会社との連携の下で、長期的視野に立って新規業務の開発に取組むとともに、具体化を図っていく。

④資金の効率的活用としての有価証券運用の多様化

外部環境の変化に対し、適切なリスクコントロールの下、機動的にポートフォリオの見直しを実施することで、安定した収益を確保する。また、外国国債など外貨建て有価証券による運用拡大や、外貨を利用したビジネス展開をサポートするため、外貨調達手段の拡充を図る。

⑤業務管理体制の強化

当社に求められている社会的要請に積極的に対応し、企業理念を実現していくため、コンプライアンスを経営の前提と位置付けていることをあらためて確認する。

当社に対する揺るぎない社会的信頼を確立するため、内部監査の実効性を確保し、金融業務に付随するリスクの多様化・複雑化に対応してリスク管理の一層の充実を図る。

重大な災害発生時においても証券市場のインフラとしての機能を果たせるよう、業務継続体制の更なる強化を図る。

⑥効率的な業務運営による競争力の基盤強化

取引量の増加や業務の複雑化が進む中、業務プロセスの見直しやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)等のデジタル技術の活用を積極的に推進することにより、効率的な業務運営体制を構築し、競争力の基盤強化を図る。

⑦多様な働き方への対応と企業活力の向上

働き方改革、定年延長など労働の在り方が大きく変化し多様化している中、人事制度の見直し等により、職員が自覚とやりがいを持って働ける職場環境を整備し、職員ひとりひとりの生産性を高め、企業活力を向上させる。

 

[リスクアペタイト・フレームワークの活用]

上記経営目標・戦略とリスク管理を一体運営していくための枠組みとして、リスクアペタイト・フレームワークを導入する。

 

(3)会社の対処すべき課題

当社は、「証券金融の専門機関として、常にその公共的役割を強く認識するとともに、証券界、金融界の多様なニーズに積極的に応え、証券市場の参加者、利用者の長期的な利益向上を図ることで、証券市場の発展に貢献する」ことを企業理念としております。

そうした企業理念の下、「免許業務である貸借取引業務を核とするセキュリティ・ファイナンス業務の全般において、高い競争力を有する企業として成長していく」ことを中長期的なビジョンとして掲げております。

2021年度以降については、第6次中期経営計画のもと、次のような取組みを引き続き推進して参ります。

「貸借取引業務の強化」については、関係機関や取引先と連携して貸借取引の利便性向上に向けての取組みを継続するとともに、制度信用取引や貸借銘柄の意義などについて理解を深めるための取組みなどにより貸借銘柄の拡大を図って参ります。「セキュリティ・ファイナンス業務の拡充・強化」については、取引先の多様なニーズに引続き柔軟・迅速に対応するとともに、営業活動を強化することにより取引先や対象有価証券の拡大に努めて参ります。また、「業務運営の効率化」の面では、業務の見直しやRPAの活用により業務の効率化に取組むほか、テレワーク環境の強化やサイバーセキュリティ対策の高度化も推進して参ります。「働き方」の面では、人事制度改革の実施に加え、ダイバーシティの推進に向けた取組みを検討・実施して参ります。

子会社の日証金信託銀行においては、引続き顧客資産保全目的の信託の推進などを中心に、当社グループの信託銀行として特色ある金融・証券関連サービスの拡充に努めます。

当社グループは、以上のような各種取組みを通じて経営基盤の一層の強化と充実した株主還元の実施に努め、株主・投資家や市場参加者、利用者からの高い信頼を維持しつつ、今後も証券市場のインフラとしての機能を安定的に果たしていくことにより、持続可能な社会の発展に貢献して参りたいと考えております。

 

 

2【事業等のリスク】

当社および当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は以下のとおりです。

金融のグローバル化やフィンテックに代表される高度化の加速など、当社グループを巡る経営環境が変化する中、内外の新たなニーズの獲得に向けた取組みを通じて、業務内容の複雑化が進むと同時に、当社グループを取り巻くリスクも変化しております。

こうした状況を踏まえ、2020年3月に策定した第6次中期経営計画(2020年度~2022年度)の下、事業戦略、収益およびリスク管理の一体運営に取組むべく、リスクアペタイト・フレームワークを導入することといたしました。

なお、記載事項のうち将来に関する事項は当期末(2021年3月31日)現在において当社が判断したものです。

1.事業環境に関するリスク

(1) 各種法令等に関するリスク

①免許業務について

当社の主要業務である貸借取引業務は金融商品取引法第156条の24の規定により内閣総理大臣の免許を受けて運営しております。また、子会社では、日証金信託銀行株式会社は銀行法および金融機関の信託業務の兼営等に関する法律の免許および認可を受けて信託銀行業務を営み、日本ビルディング㈱については宅地建物取引業法等の適用を受けております。

現時点では、免許取消や業務停止等の処分を受けるような事由は発生しておりませんが、将来、何らかの理由により、こうした処分等を受けることとなった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

②業務内容の制限等について

証券金融会社は、金融商品取引法の定めにより、免許業務である貸借取引業務以外で運営可能な業務の範囲が制限されております。こうした規制は、証券市場のインフラである貸借取引業務の安定運営を目的としており、将来、新規業務を起ち上る際などにおいて必要な承認が得られない場合には、事業機会を逸失するなど、当社グループの事業運営及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

③コンプライアンスに関するリスク

当社は、コンプライアンスを企業経営の前提と位置づけ、コンプライアンス統括部を中心に当社全般のコンプライアンスを推進しております。役職員に対しては、投資家保護の意識を高め、公正かつ適切な業務運営を行うため、定期的にコンプライアンス研修を実施するほか、随時、業務に即した研修、指導を行うことにより、コンプライアンス意識の徹底を図っております。

また、当社グループを取り巻く事業環境の様々な変化に対応すべく、既存業務の強化を図るとともに、新規業務の開始による収益源の多様化等に取組む中で、新たなコンプライアンス・リスクが生じる可能性も念頭に、グループ各社の役職員が参加する外部講師による講演会開催や研修など各種啓蒙活動の実施のほか、グループ各社間において情報および認識の共有を随時図ることを通じてコンプライアンス意識の徹底に取組んでおります。

しかしながら、役職員の故意または過失によりコンプライアンス・リスクが顕在化した場合、または法人としてコンプライアンス・リスクが顕在化した場合は、取引先との信頼関係の低下や、損害賠償、行政処分等に直面するおそれがあります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

④法令等の変更に伴うリスク

当社グループに関連する、金融商品取引法、銀行法、信託業法、宅地建物取引業法等の法令・規則等が変更された場合には、市場環境の変化等を通じて直接的又は間接的に当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、具体的にどのような影響が発生し得るかについては、将来において決定される法令等の改正の内容によるため、現時点ではその内容等を予測することは困難であり、当社グループがコントロールしうるものではありません。

(2)制度信用取引の動向に関するリスク

①制度信用取引残高の変動に伴うリスク

当社は、証券金融の専門機関として証券市場の発展に貢献することを使命とし、当社基幹業務である貸借取引業務の強化に取組むとともに、当社グループが提供する金融・証券関連サービスの拡充等に努めることにより、ビジネス基盤の強化にも取組んでおります。

こうした取組みを通じて、当社収益基盤の多様化が着実に進む一方で、貸借取引業務が営業収益に占める割合は依然として高い状態にあります。株式市況の動向等の影響から、制度信用取引の主たる利用者である個人投資家の利用減少等により、制度信用取引残高・貸借取引残高が減少した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

②運用スタイルの多様化に伴うリスク

昨今、新たな運用商品・手法が相次いで提供され、個人投資家の運用スタイルの多様化が進んでおり、株価指数や外国為替の先物取引や、信用取引の中でも自由度の高い一般信用取引の利用が増えています。

こうした状況に鑑み、当社では、信用取引にかかるスマートフォンアプリの開発や動画作成等を通じて制度信用取引・貸借取引の普及活動に取り組んでいるほか、一般信用取引向けに資金(一般信用ファイナンス)および株券(一般貸株)の貸付業務を展開しております。

しかしながら、こうした地道な取り組みが必ずしも現物取引・信用取引・貸借取引の残高増加に直結するとは限らず、株式市場における取引が縮小する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

2.事業運営上のリスク

(1)市場リスク

当社グループは資金を効率的に活用する観点から、ポートフォリオにおける運用資産の多様化・分散投資を推し進めております。

このうち、国内外の債券については、各国中央銀行による金融政策の変更や各国財政政策に対する信認の低下等を要因に国債金利が急騰した場合などにおいて、想定以上の評価損や実現損が発生する可能性があります。同様に、外国為替市場において日本円が上昇した場合には、保有する外貨建て有価証券について評価損や実現損が発生する可能性があります。

また、市場性のある株式を保有しており、株価の下落により保有株式に評価損等が発生する可能性があるほか、非上場投資信託等も保有しており、金融市場の混乱等により、市場において正常な取引ができなくなる場合や通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされる可能性があります。

当社グループでは、市況を注視するとともに適宜デリバティブ取引等によるヘッジオペレーションの実施等により市場リスクの低減に努めておりますが、突発的な市場の急変動等が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)信用リスク

当社の貸付業務では、信用リスクの顕在化に備え流動性の高い有価証券を担保として受入れています。さらに資産の健全性の維持・向上を図るため、保有資産について厳格な自己査定を実施しているほか、信用供与先については社内格付により信用リスクを評価するとともに、信用リスクについて計量化による管理やストレステストを実施するなど厳格な管理態勢を整備しています。

また、子会社の日証金信託銀行㈱においては銀行業務の一環として無担保貸付業務を行っておりますが、本邦政府向けが大宗を占めるなど信用リスクは限定的であるほか、厳格なリスク管理およびポートフォリオ管理を行っております。

しかしながら、信用供与先の経営状況の急激な悪化に加え担保として受入れている有価証券の価格が想定を超えて下落した場合は、貸出債権を回収できない恐れがあり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3)資金および有価証券調達に関するリスク

①資金調達環境の悪化等によるリスク

当社グループは主として、コールマネーやコマーシャル・ペーパー、銀行からの短期借入金等、比較的短期かつ低利の資金を調達することにより、業務を運営しております。また、外貨を含めた調達手段の多様化、安定した調達先の確保に努めるとともに、日証金信託銀行㈱との緊密な連携を通じた連結ベースでの資金繰り管理を行うなど、厳格な流動性リスク管理を行っております。しかしながら、金融市場の混乱や短期金利の急激な上昇、当社グループの財務状況の悪化などにより、資金調達コストが上昇したり、取引制限を受ける可能性があり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

②格下げによるリスク

当社の主要業務である貸借取引業務をはじめとする各種業務の運営に必要となる資金および有価証券を安定的に調達するためには、高い水準の格付けを維持することが求められます。しかしながら、財務状況の悪化など当社固有の要因に限らず、日本国債の格下げ等の影響により、当社格付が引き下げられた場合には、取引条件の悪化を余儀なくされたり、十分な資金および有価証券の確保が困難となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)自己資本にかかる規制に関するリスク

当社は、貸借取引業務の安定運営を確保する観点から、日本銀行のオペレーションや決済機構の参加資格を有しており、証券会社と同様に自己資本規制比率200%を維持することが求められております。

また、連結子会社の日証金信託銀行株式会社についても、単体自己資本比率を2006年金融庁告示第19号に定められる国内基準である4%以上の水準を維持する必要があります。

これら基準を下回った場合には、日銀オペレーション等の参加資格の全部または一部停止措置を受けることにより、当社主要業務である貸借取引業務の安定運営に支障が生じる可能性や、日証金信託銀行の業務の全部または一部の停止命令を受ける可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(5)金融市場におけるテールリスクの発生

2008年のリーマンショック発生時に連結ベースで最終赤字を計上した経験を踏まえ、当社と子会社の日証金信託銀行株式会社のリスク管理部門担当者の兼務や定期的なミーティング開催などを通じてグループリスク管理の強化を推進しているほか、市況が急速に悪化した場合においても貸借取引業務を安定して運営できるよう、充分な自己資本の維持に努めております。

しかしながら、金融市場におけるテールリスクの発生を予見することは困難であり、そうしたリスクが顕在化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(6)オペレーショナルリスク

①情報システムに関するリスク

当社は証券市場のインフラとしての貸借取引業務の運営に必要なシステムを始め、様々な情報システムを利用しており、それらシステムの安定稼働に万全を期すべく、ネットワーク・機器類の二重化やメンテナンスの実施等によりシステム障害発生の未然防止に努めているほか、コンティンジェンシープランを策定し、障害発生時においても早期に復旧させる体制を構築しております。また、システム開発・運用を安全かつ効率的に行うため、作業手順を明確化するとともに監視体制を整備しています。これらの対策にもかかわらず不測の要因により業務継続に支障が生じる重大なシステム障害が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

②サイバーセキュリティに関するリスク

昨今、デジタル技術の高度化が加速する中で、当社グループを取り巻くサイバーリスクが高まっていることを踏まえ、システム面での対応に加え、グループ各社とも連携しながらサイバーセキュリティ態勢の強化にも取組んでおります。

しかしながら、高度化または巧妙化されたサイバー攻撃等により、想定外のシステム障害等が発生し、当社グループの業務継続に甚大な支障が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

③情報漏洩リスク

取引先の情報等の情報資産の保護については、さまざまなセキュリティ対策を整備するとともにその取扱いを役職員に周知徹底しています。しかしながら、人為的ミスや不正行為、サイバー攻撃を含む外部犯罪等によって重要な情報が漏洩した場合は、当社の信用力が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

④自然災害等に関するリスク

当社は、貸借取引業務を最重要業務として位置づけ、証券市場のインフラ機関としての責務を果たすべく、大規模災害等が発生した場合においても、業務の継続や早期復旧を図るための業務継続体制を構築しております。

昨今は、気候変動の影響等により自然災害の多様化・大規模化が見られるほか、新型コロナウィルス感染症の流行が発生しております。

当社では、大阪支社等を活用したデュアル・オペレーション体制の構築やテレワークの推進など、業務継続体制の強化に取組んでおります。

また、子会社の日証金信託銀行㈱では金融市場において定期的に開催される合同訓練に参加し、当社との連携確認の実施等に取組むとともに、当社拠点の活用を含む業務継続体制強化に向けた検討を進めております。さらに、同じく子会社の日本ビルディング㈱においてもBCP対策委員会を設置し、ビルの安全を確保する観点から、業務継続体制の強化に努めております。

しかしながら、想定を大幅に上回る自然災害や停電、戦争、犯罪・テロが発生したり、各種感染症が流行した場合には、当社グループの業務運営に支障をきたすリスクがあり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

3.子会社・関連会社固有のリスク

当社の子会社・関連会社では不動産業務、情報処理サービス業務の事業を展開しており、以下の様な事象が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(1)不動産業務

不動産市況の悪化や空室率の上昇等により業績が悪化するリスクがあります。また、周辺地域において再開発が相次ぐなか、所有ビルの資産価値・競争力向上等の観点から、戦略的にビルの建替え等を実施することとなった場合には、一時的な費用が発生したり、工期中においては賃料収入等が減少する可能性があります。

(2)情報処理サービス業務

当社の持分法適用関連会社2社は、情報処理サービス業務を営んでおります。取引先企業のシステム投資意欲が減退した場合や提供するシステムおよびサービスにおいて障害等が発生した場合には、当社グループの持分法投資損益に影響を及ぼすリスクがあります。

4.事業戦略が奏功しないリスク

当社は、2020年度から2022年度までの3年間を対象とする第6次中期経営計画を2020年3月に公表し、「当社業務の核となる貸借取引業務が市況変動等の影響を大きく受けることを踏まえ、貸借取引の基盤強化のため、貸借銘柄数の着実な増加を図るとともに、証券市場のインフラとしての機能を安定的に果たしていくため、収益源の多様化を推進し、基礎収益額(想定貸借取引収支のもとで試算される基調となる経常利益額)の着実な増加を目指す」との経営目標を掲げ、各種戦略・施策に取組んでおります。

しかしながら、国内外の経済・金融情勢の悪化、本邦における金融緩和政策の一層の深化等による事業環境の悪化などの影響により、現在取組んでいる各種戦略・施策等が功を奏しないリスクがあり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績の概況

(金融経済環境)

当年度の経済環境は、新型コロナウイルス感染症の拡大による個人消費の落ち込みや企業活動の停滞を受け、厳しい状況が続きました。経済活動の再開により、一部で持ち直しの動きが見られるものの、当社グループを取り巻く内外経済への影響については、引き続き注視していく必要があります。

株式市場についてみますと、年度を通じて株価が堅調に推移しました。期初18,065円で始まった日経平均株価は、各国政府および中央銀行による経済対策や金融緩和措置を受けて反発し、6月から10月にかけては22,000円台から23,000円台で推移しました。さらに11月以降は、米国新政権による大規模経済対策や新型コロナウイルスのワクチン開発による経済活動の正常化期待などから上昇し、2月中旬には1990年以来の3万円台を回復するなど活況が続き、期末は29,178円で取引を終えました。

この間の東京市場等(東証、名証およびPTS)の制度信用取引買い残高をみますと、4月上旬に当期間のボトムとなる1兆3,600億円台まで減少しましたが、その後は株価の上昇とともに増加基調で推移し、3月末は当期間のピークとなる2兆2,900億円台となりました。一方、期初に5,400億円台であった同売り残高は株価の回復とともに新規売りが増加し、6月末には当期間のピークとなる7,400億円台となりましたが、その後は株価調整局面での買い戻しなどにより10月末には当期間のボトムとなる5,300億円台まで減少しました。その後、株価の上昇により残高は増加に転じましたが、先高感から新規売りを手控える動きも見られたことから、3月末は5,900億円台となりました。

 

(2021年3月期決算)

このような環境の下、当期の連結営業収益は、セキュリティ・ファイナンス業務における債券営業が好調となったことから買現先利息および借入有価証券代り金利息などが増収となり、30,924百万円(前期比6.3%増)となりました。一方、連結営業費用は債券営業における取引の増加により売現先利息および有価証券借入料などが増加したことから18,018百万円(同7.0%増)となり、一般管理費は8,129百万円(同0.1%減)となりました。この結果、連結営業利益は4,777百万円(同15.7%増)、同経常利益は5,558百万円(同13.6%増)、親会社株主に帰属する純利益は3,971百万円(同11.7%増)といずれも増益となりました。

各セグメントの営業概況は以下のとおりです。

①証券金融業

証券金融業務における営業収益は27,534百万円(前期比8.5%増)となりました。

業務別の営業収益をみますと、貸借取引業務における営業収益は11,359百万円(同9.2%減)となりました。貸借取引貸付金が期中平均で2,246億円と前期比46億円増加し、貸付金利息が増収となったものの、貸借取引貸付有価証券は期中平均で3,006億円と前期比333億円減少し、貸株料が減収となったことに加え、貸株超過銘柄にかかる品貸料も減収となりました。

セキュリティ・ファイナンス業務における営業収益は12,353百万円(同39.8%増)となりました。債券営業は日銀による金融緩和強化などを背景にマーケットが活況となるなか、取引先ニーズへの積極対応が奏功して現先取引および現金担保付債券貸借取引(債券レポ取引)の残高が過去最高水準まで伸長した結果、10,069百万円(同54.7%増)と増収となりました。また、金融商品取引業者向けの資金貸付では外貨建ての現金担保付株券等貸借取引(株レポ取引)および一部業者向けの貸付金の増加などにより785百万円(同6.5%増)と増収となりました。一方、一般貸株については、上期は堅調に推移したものの下期に入り軟調に転じたことにより950百万円(同6.4%減)と減収となりました。また、個人・一般事業法人向け貸付は残高の減少により468百万円(同5.3%減)と減収となりました。一般信用ファイナンスについては前期並みの80百万円となりました。

その他の収益は外貨取引にかかる期末日時点での為替差益が減少したことから3,820百万円(同4.9%減)となりました。

②信託銀行業

信託銀行業務におきましては、保有国債等の売却益が減少したことにより営業収益は2,481百万円(同12.4%減)となりましたが、金融派生商品費用等が減少したほか、管理型信託サービスの強化により信託報酬が過去最高を更新したことなどから、経常利益は1,254百万円(同102.2%増)となりました。

③不動産賃貸業

不動産賃貸業務における営業収益は908百万円(同1.0%増)となりました。

 

(2)財政状態に関する分析

《当社グループの資産、負債、キャッシュ・フローの特徴》

資産は、日々変動する貸借取引貸付(営業貸付金)および日銀当座預金への預け金(現金及び預金)、有価証券を調達する際に差し入れる担保金(借入有価証券代り金、買現先勘定)、資金の効率的な活用を目的として保有する有価証券が大宗を占めます。

負債は、変動する資産に合わせてコールマネーやコマーシャル・ペーパーといった日々調整が可能な市場性調達のほか、有価証券を貸し付ける際に受け入れる担保金(貸付有価証券代り金、売現先勘定)が中心となります。

キャッシュ・フローは、主に上記の資産・負債の変動によるもののほか、配当金の支払および自己株式取得・処分等により発生するものが中心となります。

なお、資産における現金及び預金は、負債における日証金信託銀行株式会社の信託勘定における待機資金の状況やグループ全体の資金繰りの状況等により大きく増減することがあります。

また、現時点では重要な資本的支出の予定はありません。

 

①資産、負債および純資産の状況

資産合計額は12兆1,362億円で前連結会計年度末に比べて2兆3,217億円増加、負債合計額は12兆10億円で前連結会計年度末に比べて2兆3,132億円増加、純資産合計額は1,351億円で前連結会計年度末に比べて84億円増加となりました。

○資産

現金及び預金…日証金信託銀行株式会社の信託勘定における待機資金の増加等により、前連結会計年度末に比べて1,216億円増加しました。

営業貸付金…貸借取引および金融商品取引業者向けの貸付金、日証金信託銀行株式会社における貸付金が増加し、前連結会計年度末に比べて4,286億円増加しました。

買現先勘定…現先取引残高の増加に伴い、前連結会計年度末に比べて2,544億円増加しました。

借入有価証券代り金…現金担保付債券貸借取引(債券レポ取引)および現金担保付株券等貸借取引(株レポ取引)にかかる差入担保金が増加し、前連結会計年度末に比べて1兆4,477億円増加しました。

○負債

コールマネーおよびコマーシャル・ペーパー…機動的な資金調達を行った結果、前連結会計年度末に比べてそれぞれ5,298億円の増加、2,470億円の増加となりました。

売現先勘定…現先取引残高の増加に伴い、前連結会計年度末に比べて2,683億円増加しました。

貸付有価証券代り金…現金担保付債券貸借取引(債券レポ取引)にかかる受入担保金が増加し、前連結会計年度末に比べて9,246億円増加しました。

信託勘定借…日証金信託銀行株式会社の信託勘定における待機資金の増加に伴い、前連結会計年度末に比べて2,739億円増加しました。

○純資産

株主資本…配当金の支払いを行ったものの、当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加により、前連結会計年度末に比べて19億円増加しました。なお、自己株式の消却および処分により、資本剰余金が前連結会計年度末に比べて24億円減少しましたが、控除項目である自己株式も同額減少しているため、合計には影響はありません。

その他の包括利益累計額…保有する有価証券等の価格変動に伴い繰延ヘッジ損益が改善し、その他有価証券評価差額金が増加した結果、前連結会計年度末に比べて65億円増加しました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

当期末における現金及び現金同等物は1兆4,175億円(前連結会計年度末比1,646億円増)となりました。

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

○営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、1,644億円の流入超(前連結会計年度2,750億円の流入超)となりました。現先取引および債券レポ取引の受入担保金(売現先勘定、貸付有価証券代り金)、コールマネー、コマーシャル・ペーパー、信託勘定借による収入があった一方、現先取引および債券レポ取引の差入担保金(買現先勘定、借入有価証券代り金)、営業貸付金による支出がありました。

○投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは、22億円の流入超(前連結会計年度47億円の流出超)となりました。これは、投資有価証券の売却及び償還による収入があった一方、投資有価証券取得による支出が前連結会計年度に比べ減少したことによるものです。

○財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは、20億円の流出超(前連結会計年度25億円の流出超)となりました。これは、主に配当金の支払によるものです。

 

(3) 当社グループ業務別営業収益の状況

 

 

 

前連結会計年度(通期)

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

当連結会計年度(通期)

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

増  減

 

 

 

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

比率(%)

証券金融業

25,369

87.2

27,534

89.1

2,165

8.5

 

貸借取引業務

12,517

43.0

11,359

36.7

1,157

△9.2

 

 

貸借取引貸付金利息

1,420

4.9

1,453

4.7

33

2.3

 

 

借入有価証券代り金利息

1,178

4.0

1,108

3.6

69

5.9

 

 

有価証券貸付料(品貸料)

8,255

28.4

7,213

23.3

1,041

12.6

 

 

有価証券貸付料(貸株料)

1,407

4.8

1,278

4.1

129

9.2

 

セキュリティ・ファイナンス業務

8,835

30.4

12,353

40.0

3,518

39.8

 

 

一般信用ファイナンス

80

0.3

80

0.3

△0

△0.0

 

 

金融商品取引業者向け

737

2.5

785

2.5

47

6.5

 

 

個人・一般事業法人向け

494

1.7

468

1.5

26

5.3

 

 

一般貸株

1,015

3.5

950

3.1

64

6.4

 

 

債券営業

6,507

22.4

10,069

32.6

3,561

54.7

 

その他

4,016

13.8

3,820

12.4

195

4.9

信託銀行業

2,832

9.8

2,481

8.0

351

△12.4

 

貸付金利息

50

0.2

92

0.3

41

82.5

 

信託報酬

784

2.7

1,031

3.3

246

31.5

 

その他

1,997

6.9

1,357

4.4

640

32.1

不動産賃貸業

899

3.0

908

2.9

9

1.0

合計

29,101

100.0

30,924

100.0

1,822

6.3

 

 

(4) 当社グループ貸付金の状況(平均残高)

 

 

前連結会計年度(通期)

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

当連結会計年度(通期)

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

増  減

 

 

(億円)

(億円)

(億円)

貸借取引貸付金

2,199

2,246

46

貸借取引貸付有価証券

3,339

3,006

333

セキュリティ・ファイナンス

46,090

70,990

24,899

 

一般信用ファイナンス

104

99

5

 

金融商品取引業者向け

3,090

3,274

184

 

個人・一般事業法人向け

139

130

8

 

一般貸株

608

471

137

 

債券営業

(債券レポ・現先取引など)

42,148

67,014

24,866

信託銀行貸付金

4,738

5,711

973

 

(5) 貸借取引金利・貸株料の推移

年月日(約定日)

貸借金利融資金利

貸株等代り金金利

貸株料

 2001年5月1日

0.60%

0.00%

 2002年5月7日

0.60%

0.00%

0.40%

 2006年7月27日

0.74% (+0.14%)

0.00%

0.40%

 2006年9月22日

0.86% (+0.12%)

0.00%

0.40%

 2007年3月15日

1.02% (+0.16%)

0.00%

0.40%

 2007年4月5日

 1.11% (+0.09%)

0.00%

0.40%

 2009年1月29日

 0.97%(△0.14%)

0.00%

0.40%

 2010年11月22日

 0.77%(△0.20%)

0.00%

0.40%

 2014年8月6日

 0.64%(△0.13%)

0.00%

0.40%

 2016年3月9日

 0.60%(△0.04%)

0.00%

0.40%

 2021年3月31日現在

 0.60%

0.00%

0.40%

 

(6)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当該事項につきましては、(1)経営成績の概況をご参照ください。

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当該事項につきましては、(2)財政状態に関する分析をご参照ください。

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 該当事項はありません。