第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)当社の企業理念・目指す将来像

当社は、証券市場のインフラ機能を担う証券金融会社として求められる公共的役割を強く認識しつつ、高い財務の健全性維持と、上場企業として求められる持続的成長と中長期的な企業価値の向上をともに実現する企業を目指すこととしております。

 

(2)中期的な経営方針

こうした考え方の下で、当社としましては、高度なガバナンス体制を基礎とした持続的成長と中長期的な企業価値向上に向けた一段のコミットメントと透明性の確保が求められるとの認識から、2021年11月に「中期的な経営方針」を策定、公表しました。当社は、この方針のもと、経営目標として、現中期経営計画の期間(2022年度まで)においてROE4%、次期中期経営計画の期間(2023年度~2025年度)においてROE5%の達成を目指しています。

このROE目標の策定にあたっては、当社の株主資本コストについて客観的なデータ・複数の方法により推計を行い、4%台半ばとの認識に至ったことから、これを上回る5%をROE目標として設定したものです。

なお、証券市場のインフラとして、財務の健全性や業務範囲への制約が法令や証券・資金決済システムへの参加基準等により課されている証券金融会社の特性から、事業戦略リスクは低く、また財務および収益の安定性が高いことから、当社の株主資本コストは一般的な水準と比べ、相当程度低いものと考えております。

また、ROE目標を達成する時期としては、こうした証券金融会社の特性を踏まえ、2025年度までに着実に実現していくこととしております。その意味で中期的な経営方針は、現行の第6次中期経営計画を修正するものではなくその加速と強化を図るものです。

<第6次中期経営計画(現行)>

[経営目標]

当社業務の核となる貸借取引業務が市況変動等の影響を大きく受けることを踏まえ、貸借取引の基盤強化のため、貸借銘柄数の着実な増加を図るとともに、証券市場のインフラとしての機能を安定的に果たしていくため、収益源の多様化を推進し、基礎収支額(想定貸借取引収支(過去3年平均値を想定)のもとで試算される基調としての経常利益額)の着実な増加を目指す。

[戦略]

①証券市場のインフラとしての貸借取引業務の強化

株式市場を取り巻く環境変化に適切に対応し貸借取引業務の安定的な運営および利便性向上を図る。また、市場参加者の動向の的確な把握や貸借銘柄数の着実な増加などにより、貸借取引の利用促進を図るとともに、制度信用・貸借取引にかかる情報発信を強化し、投資家のすそ野を拡大する。

②セキュリティ・ファイナンス業務の拡充・強化

当社がこれまで培ってきた資金取引や有価証券取引のノウハウを有効に活用し、内外の金融商品取引業者等との多様な取引に積極的に対応するとともに、取引先や対象有価証券等の拡大により、セキュリティ・ファイナンス業務を強化・拡充し、収益機会の拡大を図る。

③新規業務の開発と具体化

証券金融会社としての業歴を背景とした当社の特長を活かし、内外の関係先やグループ会社との連携の下で、長期的視野に立って新規業務の開発に取組むとともに、具体化を図っていく。

④資金の効率的活用としての有価証券運用の多様化

外部環境の変化に対し、適切なリスクコントロールの下、機動的にポートフォリオの見直しを実施することで、安定した収益を確保する。また、外国国債など外貨建て有価証券による運用拡大や、外貨を利用したビジネス展開をサポートするため、外貨調達手段の拡充を図る。

⑤業務管理体制の強化

当社に求められている社会的要請に積極的に対応し、企業理念を実現していくため、コンプライアンスを経営の前提と位置付けていることをあらためて確認する。

当社に対する揺るぎない社会的信頼を確立するため、内部監査の実効性を確保し、金融業務に付随するリスクの多様化・複雑化に対応してリスク管理の一層の充実を図る。

重大な災害発生時においても証券市場のインフラとしての機能を果たせるよう、業務継続体制の更なる強化を図る。

⑥効率的な業務運営による競争力の基盤強化

取引量の増加や業務の複雑化が進む中、業務プロセスの見直しやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)等のデジタル技術の活用を積極的に推進することにより、効率的な業務運営体制を構築し、競争力の基盤強化を図る。

⑦多様な働き方への対応と企業活力の向上

働き方改革、定年延長など労働の在り方が大きく変化し多様化している中、人事制度の見直し等により、職員が自覚とやりがいを持って働ける職場環境を整備し、職員ひとりひとりの生産性を高め、企業活力を向上させる。

[リスクアペタイト・フレームワークの活用]

上記経営目標・戦略とリスク管理を一体運営していくための枠組みとして、リスクアペタイト・フレームワークを導入する。

(3)これまでの当社の取組実績

現行中期経営計画の下での取組みを積み重ねてきたことにより、当社のROEは近年着実に上昇し、2021年度には3.79%となり、中期的な経営方針における2022年度目標である4%、2025年度目標である5%の達成に向けた足掛かりを築くことができたものと考えております。

また、当社の株主総利回りも、このところTOPIX平均を有意に上回る水準で上昇しております。

※ROEおよび株主総利回りにつきましては、第1企業の概況-1.主要な経営指標等の推移-(1)連結経営指標等に記載の「自己資本利益率」および-(2)提出会社の経営指標等に記載の「株主総利回り」をご参照ください。

 

(4)経営目標実現のための施策と事業ポートフォリオについての考え方

上記(1)、(2)記載の経営目標の実現のため、1)貸借取引を核とするセキュリティファイナンス業務の強化、2)グループ連結経営の強化、3)業務運営の効率化などにより、収益力と資本効率の向上に向けての取組みを加速します。

当社は、証券金融会社の免許を有しておりますが、法令上、証券金融会社については、貸借取引にかかる業務を主要業務とすることが想定されており、貸借取引にかかる業務以外の業務は、貸借取引の運営に支障を及ぼさない範囲でのみ認められる制約が設けられております。そのため、子会社を含む当社グループの事業ポートフォリオは、当社の業務と関連がありその遂行に資すると考えられる比較的狭い範囲に限定されているほか、上記のような法令上の規制があるため、事業ポートフォリオがM&A等により頻繁に変動することもあまり想定されません。

こうした当社グループの業務の基本的な性格と、コーポレートカバナンス・コードの趣旨を踏まえ、当社では取締役会において事業ポートフォリオの基本方針について審議・決定を行い、これを次のとおり公表しております。

・当社グループは、証券市場のインフラとしての公共的役割を強く意識しつつ、免許業務である貸借取引業務を核とするセキュリティファイナンス業務を中心に、証券界・金融界の多様なニーズに積極的に応え、様々な証券・金融関連サービスを提供する。

・また、貸借取引業務が市況変動等の影響を大きく受けることを踏まえ、引続き収益源の多様化に向けて努力し、各事業においてこれまで以上に資本効率の向上を意識しつつ経営目標の達成に取組む。

・このような考え方の下、当社グループは、貸借取引を核とするセキュリティファンナンス業務、有価証券運用業務、信託銀行業務、不動産管理業務からなる事業ポートフォリオにより、当社が目指す将来像の実現を図る。

 

(5)株主還元

株主還元については、さらなる充実を図っていく観点から、2021年度以降2025年度(ROE5%目標達成)までの間、配当および自己株式取得の機動的な実施により累計で総還元性向100%を目指します。なお、配当については、2021年度の1株当たり年間配当金額は30円としたうえで、2022年度以降2025年度(ROE5%目標達成)までの間は、1株当たり年間配当金額が30円を下回らない範囲で積極的な配当を目指します。

この方針の下2022年度の株主還元は、配当予想を年間32円(前期比+2円)とし、あわせて自己株式取得枠を株数上限320万株(発行済み株式総数に対する割合3.5%)、金額上限30億円と設定いたしました。これらをあわせた2022年度の総還元性向は103.4%となります。

 

(6)ESGに関する取組み

持続可能な社会の実現に向けては、社会経済活動の基盤となるインフラの整備も重要であり、SDGs(持続可能な開発目標)の一つにも掲げられております(目標9)。当社グループは、証券市場のインフラとして貸借取引業務をはじめとする様々なサービスを提供し、証券・金融市場の流動性向上と参加者の利便性向上に取り組んでおり、こうした活動を通じて、持続可能な社会の実現に向けて、同様な取り組みを行う市場参加者への支援も含め、その一翼を担うことを目指しております。

当社は、こうした基本方針のもと、環境負荷の低減(E)、金融経済教育活動の推進(S、信用取引に関する各種セミナー等の実施)、学術研究活動の推進(S、東京大学との共同実証研究、信用・貸借データを活用した指数開発における京都大学との連携)、海外の証券・金融市場インフラへの貢献(S、インドネシア証券金融会社への技術協力および出資)、従業員の多様な働き方の実現(S)、コーポレートガバナンスの強化(G、指名委員会等設置会社等)、BCP(G)といった取り組みを行っております。

これらのことについて、2021年12月20日提出のコーポレート・ガバナンスに関する報告書において開示を行いました。

気候変動対応についても経営の重要課題(マテリアリティ)と認識しており、TCFD提言に沿って気候変動に関連する情報を、先般、当社ウェブサイト(https://www.jsf.co.jp/ir/tcfd/)において開示を行いました。

 

(7)コーポレートガバナンス面の取組み

①取締役会の構成等についての考え方

当社は2019年に指名委員会等設置会社に移行し、監督と執行を分離したうえで、社外取締役3名を含む取締役 5名の体制で、取締役会議長および三委員会の委員長をすべて社外取締役としているほか、当社の指名委員会および報酬委員会は独立した社外取締役が過半数を占めております。

この体制のもと、経営方針の策定にあたり様々な角度からの検討と議論を積み重ねております。また、業務執行の適切な監督のため、報告内容の見直しや業務説明会の実施など取締役への情報提供の充実にも努めてきております。こうした取組みについては、取締役会の実効性評価においても適切であるとの評価を受けております。

もっとも、コーポレートガバナンス・コードの改訂や東京証券取引所における新市場区分への移行、国際化・DX化等の一層の進展などの環境変化や、中期的な経営方針の下での次期中期経営計画の策定・実行といった局面を迎え、指名委員会等設置会社の取締役会としての役割をさらに充実させる観点から、当社としては、取締役会の構成等について改めて指名委員会での審議を経て取締役会において検討を行いました。

その結果、環境変化等を踏まえスキルの複層化を図ること、監督と執行の人数面でのバランスや年齢構成・ジェンダーの多様化も重要であること等を踏まえ、取締役会の規模を現在の5名に加え2名程度増員(いずれも社外)することが適当との認識に至りました。また、スピーディな意思決定を可能としつつ当社の規模を勘案し、スキルマトリックスを踏まえて取締役の員数の上限を実人員対比で一定の余裕を持たせつつ見直すことも検討に値するとの結論を得ました。

これを踏まえ、当社としましては、取締役候補者は社外5名、社内2名の合計7名の体制で全体としてのスキルセットのパッケージで臨むこととし、定款上の取締役の員数の上限は、実人員7名に対して1名の余裕を持つ8名といたしました。

 

②「執行役の選任についての考え方」の策定・開示

当社は、取締役会による監督機能発揮の一環として、指名委員会において経営陣の選任に関する方針を審議・決定しております。昨年度、上記の環境変化等を踏まえ、改めて執行役の選任に関する考え方を包括的に検証し、指名委員会において審議を行った結果も踏まえ、執行役に求められる資質については、その選任の目的が中期経営計画の推進のための執行体制の構築にあることを踏まえ、次のとおり整理したうえで具体的な選任を行っております。

・公共的役割を十分認識して業務執行を遂行することができる者

・金融・証券市場全般について広範な知見を有している者

・金融商品取引法をはじめとした各種法令に関して精通している者

・専門性の高い当社の業務に携わり、知識・経験を有している者

・当社業務の推進にあたり必要とされる国際性を有している者

・経営管理やリスク管理に関する高度な知識・経験を有している者

・財務・会計に関する高度な知識・経験を有している者

・当社を取り巻く金融・証券業界のさまざまな環境変化に対し、柔軟に対応できる者

また、具体的な人選にあたっては、内部出身者、公共部門出身者、金融・証券界出身者をロングリストとして整理しております。

③コーポレートガバナンス統括室の設置

当社は、2021年10月、コーポレートガバナンス統括室を設置いたしました。これは、コーポレートガバナンス・コードの改訂や、東京証券取引所における上場企業の新市場区分への対応等、上場企業として求められる高度なガバナンス体制の構築やその機能強化に向けて、当社としてスピード感を持って対応するための事務局としての体制整備を行ったものです。

また、従来、取締役会の事務局機能は経営企画部が担っていました。もっとも、経営企画部は、中期経営計画の立案を代表執行役社長の指揮のもと行う部署であることから、指名委員会等設置会社として監督と執行を分離している当社において、取締役会の事務局は経営企画部とは担当役員も含め別建てとすることが適切との考え方から、コーポレートガバナンス統括室を設置したものです。

 

 

(8)報酬とインセンティブについての考え方

以上の経営方針やガバナンス体制を支える報酬体系については、証券市場のインフラとしての公的役割を強く意識しつつ中長期的な企業価値の向上を図るとの当社の経営方針と整合的なインセンティブが働くよう設計しております。

具体的には、執行役の報酬は、当社の業績および株式価値との連動性を高める観点から、定額の月額報酬(基本報酬)ならびに業績連動の役員賞与および株式報酬とします。定額の月額報酬(基本報酬)は、各執行役の役位に応じて決定します。役員賞与については経営責任を明確にする観点から、事業年度終了後、中期経営計画における経営目標の達成状況および毎期の業績に連動して決定し、決定後3カ月以内に支給します。株式報酬については、株式給付信託の仕組みを用いて、中期的な業績に連動して決定したポイントを付与し、退任時にポイント数に応じた当社株式を交付します。

取締役(執行役を兼務する者を除く。)は、監督機能発揮の観点から、定額の月額報酬(基本報酬)のみとし、業績連動の報酬等は支給しません。個々の取締役の報酬は、常勤・非常勤の別や議長就任など、取締役としての職責に応じて決定します。執行役を兼務する取締役には、取締役としての報酬の支給は行いません。

取締役および執行役の個人別の報酬は、報酬委員会で決定します。また、報酬枠や報酬体系の変更等についても、報酬委員会で決定します。

 

(9)対処すべき課題

当社グループは第6次中期経営計画の下、これまで取組んできた諸施策の成果として、着実に収益基盤の強化が進んでおり、ROEも向上しております。第6次中期経営計画の最終年度を迎える2022年度につきましても、次のような取組みを推進することにより、「中期的な経営方針」で掲げたROE4%達成を目指して参ります。

「貸借取引業務の強化」については、関係機関や取引先との連携および貸借取引情報の提供拡大などによる貸借取引の利便性向上に努めるほか、東証新市場区分の下での選定ルールの見直しなどを通じて貸借銘柄の拡大を図って参ります。「セキュリティファイナンス業務の拡充・強化」については、欧米を中心とした金融政策変更などに伴う取引先ニーズの変化に対して、引き続き柔軟・迅速に対応するとともに、営業活動の強化を通じて取引先の拡充および取引残高拡大を図ります。また、こうした営業活動を後方から支援する体制を強化する観点から、RPAの積極活用やミドルバック事務の見直しなど業務効率化に努めて参ります。

そのほか、研修制度の拡充(人材育成の強化)、積極的な採用活動の展開(ダイバーシティの推進)、サイバーセキュリティや自然災害に対するレジリエンス向上に加え、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を踏まえた情報開示の充実など、サステナビリティ関連諸課題への取組みをグループ一丸となって推進して参ります。

子会社の日証金信託銀行においては、引続き顧客資産保全を目的とした信託サービスの拡充・強化を中心に、日証金グループの信託銀行としての特色を活かした金融・証券関連サービスの拡充に努めます。

子会社の日本ビルディングにおいては、グループ各社に対して良好かつコストの低い執務環境の提供を行い、もって当社グループの使命達成と中長期的な企業価値の向上に貢献する役割を果たして参ります。

当社グループは、以上のような各種取組みを通じて経営基盤の一層の強化と充実した株主還元の実施に努め、株主・投資家をはじめとするステークホルダーからの高い信頼を維持しつつ、今後も証券市場のインフラとしての機能を安定的に果たしていくことにより、持続可能な社会の発展に貢献して参りたいと考えております。

 

 

2【事業等のリスク】

当社および当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は以下のとおりです。

金融のグローバル化やフィンテックに代表される高度化の加速など、当社グループを巡る経営環境が変化する中、内外の新たなニーズの獲得に向けた取組みを通じて、業務内容の複雑化が進むと同時に、当社グループを取り巻くリスクも変化しております。

こうした状況を踏まえ、リスクアペタイト・フレームワークの活用を通じて、経理管理とリスク管理を一体的に運営しております。

なお、記載事項のうち将来に関する事項は当期末(2022年3月31日)現在において当社が判断したものです。

1.事業環境に関するリスク

(1) 各種法令等に関するリスク

①免許業務について

当社の主要業務である貸借取引業務は金融商品取引法第156条の24の規定により内閣総理大臣の免許を受けて運営しております。また、子会社では、日証金信託銀行株式会社は銀行法および金融機関の信託業務の兼営等に関する法律の免許および認可を受けて信託銀行業務を営み、日本ビルディング㈱については宅地建物取引業法等の適用を受けております。

現時点では、免許取消や業務停止等の処分を受けるような事由は発生しておりませんが、将来、何らかの理由により、こうした処分等を受けることとなった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

②業務内容の制限等について

証券金融会社は、金融商品取引法の定めにより、免許業務である貸借取引業務以外で運営可能な業務の範囲が制限されております。こうした規制は、証券市場のインフラである貸借取引業務の安定運営を目的としており、新規業務を起ち上げる際などにおいて必要な承認が得られない場合には、事業機会を逸失するなど、当社グループの事業運営及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

③コンプライアンスに関するリスク

当社は、コンプライアンスを企業経営の前提と位置づけ、コンプライアンス統括部を中心に当社全般のコンプライアンスを推進しております。役職員に対しては、投資家保護の意識を高め、公正かつ適切な業務運営を行うため、定期的にコンプライアンス研修を実施するほか、随時、業務に即した研修、指導を行うことにより、コンプライアンス意識の徹底を図っております。

また、当社グループを取り巻く事業環境の様々な変化に対応すべく、既存業務の強化を図るとともに、新規業務の開始による収益源の多様化等に取組む中で、新たなコンプライアンス・リスクが生じる可能性も念頭に、グループ各社の役職員が参加する外部講師による講演会開催や研修など各種啓蒙活動の実施のほか、グループ各社間において情報および認識の共有を随時図ることを通じてコンプライアンス意識の徹底に取組んでおります。

しかしながら、役職員の故意または過失によりコンプライアンス・リスクが顕在化した場合、または法人としてコンプライアンス・リスクが顕在化した場合は、取引先との信頼関係の低下や、損害賠償、行政処分等に直面するおそれがあります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

④法令等の変更に伴うリスク

当社グループに関連する、金融商品取引法、銀行法、信託業法、宅地建物取引業法等の法令・規則等が変更された場合には、市場環境の変化等を通じて直接的又は間接的に当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、具体的にどのような影響が発生し得るかについては、将来において決定される法令等の改正の内容によるため、現時点ではその内容等を予測することは困難であり、当社グループがコントロールしうるものではありません。

(2)制度信用取引の動向に関するリスク

①制度信用取引残高の変動に伴うリスク

当社は、証券金融の専門機関として証券市場の発展に貢献することを使命とし、当社基幹業務である貸借取引業務の強化に取組むとともに、当社グループが提供する金融・証券関連サービスの拡充等に努めることにより、ビジネス基盤の強化にも取組んでおります。

こうした取組みを通じて、当社収益基盤の多様化が着実に進む一方で、貸借取引業務が営業収益に占める割合は依然として高い状態にあります。株式市況の動向等の影響から、制度信用取引の主たる利用者である個人投資家の利用減少等により、制度信用取引残高・貸借取引残高が減少した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

②運用スタイルの多様化に伴うリスク

昨今、新たな運用商品・手法が相次いで提供され、個人投資家の運用スタイルの多様化が進んでおり、株価指数や外国為替の先物取引や、信用取引の中でも自由度の高い一般信用取引の利用が増えています。

こうした状況に鑑み、当社では、信用取引にかかるスマートフォンアプリの開発や動画作成等を通じて制度信用取引・貸借取引の普及活動に取り組んでいるほか、一般信用取引向けに資金(一般信用ファイナンス)および株券(一般貸株)の貸付業務を展開しております。

しかしながら、こうした地道な取り組みが必ずしも現物取引・信用取引・貸借取引の残高増加に直結するとは限らず、株式市場における取引が縮小する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

2.事業運営上のリスク

(1)市場リスク

当社グループは資金を効率的に活用する観点から、ポートフォリオにおける運用資産の多様化・分散投資を推し進めております。

このうち、国内外の債券については、各国中央銀行による金融政策の変更や各国財政政策に対する信認の低下等を要因に国債金利が急騰した場合などにおいて、想定以上の評価損や実現損が発生する可能性があります。同様に、外国為替市場において日本円が上昇した場合には、保有する外貨建て有価証券について評価損や実現損が発生する可能性があります。

また、市場性のある株式を保有しており、株価の下落により保有株式に評価損等が発生する可能性があるほか、非上場投資信託等も保有しており、金融市場の混乱等により、市場において正常な取引ができなくなる場合や通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされる可能性があります。

当社グループでは、市況を注視するとともに適宜デリバティブ取引等によるヘッジオペレーションの実施等により市場リスクの低減に努めておりますが、突発的な市場の急変動等が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)信用リスク

当社の貸付業務では、信用リスクの顕在化に備え流動性の高い有価証券を担保として受入れています。さらに資産の健全性の維持・向上を図るため、保有資産について厳格な自己査定を実施しているほか、信用供与先については社内格付により信用リスクを評価するとともに、信用リスクについて計量化による管理やストレステストを実施するなど厳格な管理態勢を整備しています。

また、子会社の日証金信託銀行㈱においては銀行業務の一環として無担保貸付業務を行っておりますが、本邦政府向けが大宗を占めるなど信用リスクは限定的であるほか、厳格なリスク管理およびポートフォリオ管理を行っております。

しかしながら、信用供与先の経営状況の急激な悪化に加え担保として受入れている有価証券の価格が想定を超えて下落した場合は、貸出債権を回収できない恐れがあり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3)資金および有価証券調達に関するリスク

①資金調達環境の悪化等によるリスク

当社グループは主として、コールマネーやコマーシャル・ペーパー、銀行からの短期借入金等、比較的短期かつ低利の資金を調達することにより、業務を運営しております。また、外貨を含めた調達手段の多様化、安定した調達先の確保に努めるとともに、日証金信託銀行㈱との緊密な連携を通じた連結ベースでの資金繰り管理を行うなど、厳格な流動性リスク管理を行っております。しかしながら、金融市場の混乱や短期金利の急激な上昇、当社グループの財務状況の悪化などにより、資金調達コストが上昇したり、取引制限を受ける可能性があり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

②格下げによるリスク

当社の主要業務である貸借取引業務をはじめとする各種業務の運営に必要となる資金および有価証券を安定的に調達するためには、高い水準の格付けを維持することが求められます。しかしながら、財務状況の悪化など当社固有の要因に限らず、日本国債の格下げ等の影響により、当社格付が引き下げられた場合には、取引条件の悪化を余儀なくされたり、十分な資金および有価証券の確保が困難となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)自己資本にかかる規制に関するリスク

当社は、貸借取引業務の安定運営を確保する観点から、日本銀行のオペレーションや決済機構の参加資格を有しており、証券会社と同様に自己資本規制比率200%を維持することが求められております。

また、連結子会社の日証金信託銀行株式会社についても、単体自己資本比率を2006年金融庁告示第19号に定められる国内基準である4%以上の水準を維持する必要があります。

これら基準を下回った場合には、日銀オペレーション等の参加資格の全部または一部停止措置を受けることにより、当社主要業務である貸借取引業務の安定運営に支障が生じる可能性や、日証金信託銀行の業務の全部または一部の停止命令を受ける可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(5)金融市場におけるテールリスクの発生

2008年のリーマンショック発生時に連結ベースで最終赤字を計上した経験を踏まえ、当社と子会社の日証金信託銀行株式会社のリスク管理部門担当者の兼務や定期的なミーティング開催などを通じてグループリスク管理の強化を推進しているほか、市況が急速に悪化した場合においても貸借取引業務を安定して運営できるよう、充分な自己資本の維持に努めております。

しかしながら、金融市場におけるテールリスクの発生を予見することは困難であり、そうしたリスクが顕在化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(6)オペレーショナルリスク

①情報システムに関するリスク

当社は証券市場のインフラとしての貸借取引業務の運営に必要なシステムを始め、様々な情報システムを利用しており、それらシステムの安定稼働に万全を期すべく、ネットワーク・機器類の二重化やメンテナンスの実施等によりシステム障害発生の未然防止に努めているほか、コンティンジェンシープランを策定し、障害発生時においても早期に復旧させる体制を構築しております。また、システム開発・運用を安全かつ効率的に行うため、作業手順を明確化するとともに監視体制を整備しています。これらの対策にもかかわらず不測の要因により業務継続に支障が生じる重大なシステム障害が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当期において、子会社の日証金信託銀行株式会社は、銀行業務効率化及び障害管理体制強化の一環として、新銀行勘定系システムへ移行しております。当該移行にかかる移行テストおよび本番稼働までの一連のプロセスは適切な導入体制の下実施しておりますが、何らかの理由により、当該システムが適切に稼働しない場合やデータ移行を誤った場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

②サイバーセキュリティに関するリスク

デジタル技術の高度化が加速する中で、当社グループを取り巻くサイバーリスクが高まっていることを踏まえ、システム面での対応に加え、グループ各社とも連携しながらサイバーセキュリティ態勢の強化にも取組んでおります。

しかしながら、高度化または巧妙化されたサイバー攻撃等により、想定外のシステム障害等が発生し、当社グループの業務継続に甚大な支障が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

③情報漏洩リスク

取引先の情報等の情報資産の保護については、さまざまなセキュリティ対策を整備するとともにその取扱いを役職員に周知徹底しています。しかしながら、人為的ミスや不正行為、サイバー攻撃を含む外部犯罪等によって重要な情報が漏洩した場合は、当社の信用力が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

④自然災害等に関するリスク

当社は、貸借取引業務を最重要業務として位置づけ、証券市場のインフラ機関としての責務を果たすべく、大規模災害等が発生した場合においても、業務の継続や早期復旧を図るための業務継続体制を構築しております。

昨今は、気候変動の影響等により自然災害の多様化・大規模化が見られるほか、新型コロナウィルス感染症の流行が発生しております。

当社では、大阪支社等を活用したデュアル・オペレーション体制の構築やテレワークの推進など、業務継続体制の強化に取組んでおります。

また、子会社の日証金信託銀行㈱では金融市場において定期的に開催される合同訓練に参加し、当社との連携確認の実施等に取組むとともに、当社拠点の活用を含む業務継続体制強化に向けた検討を進めております。さらに、同じく子会社の日本ビルディング㈱においてもBCP対策委員会を設置し、ビルの安全を確保する観点から、業務継続体制の強化に努めております。

しかしながら、想定を大幅に上回る自然災害や停電、戦争、犯罪・テロの発生、各種感染症が流行した場合には、当社グループの業務運営に支障をきたすリスクがあり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

3.子会社・関連会社固有のリスク

当社の子会社・関連会社では不動産業務、情報処理サービス業務の事業を展開しており、以下の様な事象が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(1)不動産業務

不動産市況の悪化や空室率の上昇等により業績が悪化するリスクがあります。また、周辺地域において再開発が相次ぐなか、所有ビルの資産価値・競争力向上等の観点から、戦略的にビルの建替え等を実施することとなった場合には、一時的な費用の発生や、工期中に賃料収入等が減少する可能性があります。

(2)情報処理サービス業務

当社の持分法適用関連会社2社は、情報処理サービス業務を営んでおります。取引先企業のシステム投資意欲が減退した場合や提供するシステムおよびサービスにおいて障害等が発生した場合には、当社グループの持分法投資損益に影響を及ぼすリスクがあります。

4.事業戦略が奏功しないリスク

当社は、2020年3月に策定した第6次中期経営計画(2020年度~2022年度)の下で、証券市場のインフラの担い手として求められている高い財務の健全性を維持することを前提に、人的資源を含め当社が有する資本をより有効に活用することにより、収益力の着実な強化に取り組んでいます。加えて、2021年11月には、「中期的な経営方針」を策定し、「現中期経営計画の期間(2022年度まで)においてROE4%、次期中期経営計画の期間(2023年度~2025年度)においてROE5%の達成を目指す。」とする新たな経営目標を掲げ、1)貸借取引を核とするセキュリティファイナンス業務の強化、2)グループ連結経営の強化、3)業務運営の効率化などにより、収益力と資本効率の向上に向けての取組みを加速することとしております。

しかしながら、国内外の経済・金融情勢の悪化、本邦における金融緩和政策の一層の深化等による事業環境の悪化などの影響により、現在取組んでいる各種戦略・施策等が功を奏しないリスクがあり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績の概況

(金融経済環境)

当年度の経済環境は、新型コロナウイルス感染症の影響による停滞から持ち直しつつあるものの、変異型ウイルスによる感染再拡大やウクライナ情勢による原油価格の高騰など、依然として不透明な状況が続きました。

株式市場についてみますと、期初29,388円で始まった日経平均株価は、新型コロナウイルスの感染再拡大などが嫌気されて下落基調となりましたが、8月下旬以降はワクチン接種の進展による経済正常化への期待などから上昇に転じ、9月14日には当期間の最高値となる30,670円まで上昇しました。その後は変異型ウイルスによる感染再拡大などにより再び下落基調となり、2022年2月以降はウクライナ情勢による経済への影響懸念から一時さらに下げが強まり、3月9日には当期間の最安値となる24,717円となりましたが、期末は27,821円で取引を終えました。

この間の東京市場等(東証、名証およびPTS)の制度信用取引買い残高をみますと、期初2兆2,800億円台から 7月初旬に当期間のピークとなる2兆6,500億円台まで増加したものの、その後は減少基調となり、期末は2兆100億円台で当期間のボトムとなりました。一方、期初に5,900億円台であった制度信用取引売り残高は、株価の回復に伴う新規売りの増加を受け、9月には当期間のピークとなる6,400億円台となったものの、その後は減少基調となり、2022年1月の株価急落局面では当期間のボトムとなる4,100億円台まで減少し、期末は5,500億円台となりました。

 

(2022年3月期決算)

このような環境の下、当期の連結営業収益は、債券営業をはじめとするセキュリティファイナンス業務が好調となったものの貸借取引業務が減収となったことにより30,138百万円(前期比2.5%減)となりました。一方、連結営業費用は貸借取引における有価証券借入料が減少したことから16,533百万円(同8.2%減)となり、一般管理費は当社における貸倒引当金の算定方法見直しに伴う負担額の減少などにより7,368百万円(同9.4%減)となりました。

この結果、連結営業利益は6,235百万円(同30.5%増)、連結経常利益は7,164百万円(同28.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,174百万円(同30.3%増)といずれも増益となりました。

各セグメントの営業概況は以下のとおりです。

①証券金融業

証券金融業務における営業収益は26,558百万円(前期比3.5%減)となりました。

業務別の営業収益をみますと、貸借取引業務における営業収益は6,118百万円(同46.1%減)となりました。貸借取引貸付金が期中平均で2,831億円と前期比585億円増加し、貸付金利息が増収となったものの、貸借取引貸付有価証券は期中平均で1,755億円と前期比1,250億円減少し、貸株料および貸株超過銘柄にかかる品貸料がいずれも減収となりました。

セキュリティファイナンス業務における営業収益は15,368百万円(同24.4%増)となりました。

このうち、債券営業(12,846百万円、同27.6%増)は、取引先ニーズへの積極対応が奏功して現先取引および現金担保付債券貸借取引(債券レポ取引)の残高(合計)が過去最高を更新するなど堅調に推移しました。金融商品取引業者向けの資金貸付(1,196百万円、同52.4%増)は、現金担保付株券等貸借取引(株券レポ取引)の期中平均残高が前期に比べ大幅に増加したことなどにより増収となりました。一般信用ファイナンス(156百万円、同94.7%増)および個人・一般事業法人向け貸付(510百万円、同9.0%増)は貸付残高の増加により、それぞれ増収となりました。一方、一般貸株(657百万円、同30.8%減)は上期の借株需要の低調に加え、利鞘の厚い取引の残高減少により減収となりました。

その他の収益は、有価証券運用におけるキャリー収益の着実な積上げとポートフォリオ入替による売却益の計上等により5,071百万円(同32.7%増)となりました。

②信託銀行業

信託銀行業務における営業収益は2,737百万円(同10.3%増)となりました。管理型信託サービスにおける受託残高の増加の強化により信託報酬が引き続き堅調となりました。

③不動産賃貸業

不動産賃貸業務における営業収益は841百万円(同7.4%減)となりました。

 

(2) 財政状態に関する分析

《当社グループの資産、負債、キャッシュ・フローの特徴》

資産は、日々変動する貸借取引貸付(営業貸付金)および日銀当座預金への預け金(現金及び預金)、有価証券を調達する際に差し入れる担保金(借入有価証券代り金、買現先勘定)、資金の効率的な活用を目的として保有する有価証券が大宗を占めます。

負債は、変動する資産に合わせてコールマネーやコマーシャル・ペーパーといった日々調整が可能な市場性調達のほか、有価証券を貸し付ける際に受け入れる担保金(貸付有価証券代り金、売現先勘定)が中心となります。

キャッシュ・フローは、主に上記の資産・負債の変動によるもののほか、配当金の支払および自己株式取得・処分等により発生するものが中心となります。

なお、資産における現金及び預金は、負債における日証金信託銀行株式会社の信託勘定における待機資金の状況やグループ全体の資金繰りの状況等により大きく増減することがあります。

また、現時点では重要な資本的支出の予定はありません。

 

①資産、負債および純資産の状況

資産合計額は14兆1,686億円で前連結会計年度末に比べて2兆324億円増加、負債合計額は14兆306億円で前連結会計年度末に比べて2兆295億円増加、純資産合計額は1,379億円で前連結会計年度末に比べて28億円増加となりました。

○資産

現金及び預金…日銀当座預金への預け金の減少等に伴い、前連結会計年度末に比べて1,224億円減少しました。

営業貸付金…貸借取引貸付金および日証金信託銀行株式会社における貸付金の期末残高の減少に伴い、前連結会計年度末に比べて2,248億円減少しました。

買現先勘定…現先取引残高の増加に伴い、前連結会計年度末に比べて9,262億円増加しました。

借入有価証券代り金…現現金担保付債券貸借取引(債券レポ取引)および現金担保付株券等貸借取引(株券レポ取引)にかかる差入担保金の増加に伴い、前連結会計年度末に比べて1兆1,738億円増加しました。

○負債

コールマネーおよびコマーシャル・ペーパー…機動的な資金調達を行った結果、前連結会計年度末に比べてそれぞれ1,518億円の増加、1,170億円の減少となりました。

売現先勘定…現先取引残高の増加に伴い、前連結会計年度末に比べて1兆3,530億円増加しました。

貸付有価証券代り金…現金担保付債券貸借取引(債券レポ取引)にかかる受入担保金の増加に伴い、前連結会計年度末に比べて6,777億円増加しました。

信託勘定借…日証金信託銀行株式会社の信託勘定における待機資金の減少に伴い、前連結会計年度末に比べて1,120億円減少しました。

○純資産

株主資本…自己株式の取得(23億円)および配当金の支払(27億円)に伴う減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益(51億円)の計上により、前連結会計年度末に比べて1億円増加しました。

その他の包括利益累計額…保有する有価証券等の価格変動等に伴いその他有価証券評価差額金が減少した一方、繰延ヘッジ損益が改善し、前連結会計年度末に比べて27億円増加しました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

当期末における現金及び現金同等物は1兆2,950億円(前連結会計年度末比1,224億円減)となりました。

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

○営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、1,223億円の流出超(前連結会計年度1,644億円の流入超)となりました。有価証券及び投資有価証券の取得による支出や信託勘定借の減少のほか、買現先勘定や借入有価証券代り金の増加による支出が売現先勘定や貸付有価証券代り金の増加による収入を上回ったことによるものです。

○投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは、49億円の流入超(前連結会計年度22億円の流入超)となりました。これは、主に投資有価証券の売却及び償還による収入等によるものです。

○財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは、50億円の流出超(前連結会計年度20億円の流出超)となりました。これは、自己株式の取得による支出が増加したことによるものです。

 

(3) 当社グループ業務別営業収益の状況

 

 

 

 前連結会計年度(通期)

 (自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

 当連結会計年度(通期)

 (自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

増  減

 

 

 

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

比率(%)

証券金融業

27,534

89.1

26,558

88.1

△976

△3.5

 

貸借取引業務

11,359

36.7

6,118

20.3

△5,241

△46.1

 

 

貸借取引貸付金利息

1,453

4.7

1,793

5.9

339

23.4

 

 

借入有価証券代り金利息

1,108

3.6

446

1.5

△661

△59.7

 

 

有価証券貸付料(品貸料)

7,213

23.3

2,832

9.4

△4,380

△60.7

 

 

有価証券貸付料(貸株料)

1,278

4.1

748

2.5

△529

△41.4

 

セキュリティ・ファイナンス業務

12,353

40.0

15,368

51.0

3,014

24.4

 

 

一般信用ファイナンス

80

0.3

156

0.5

76

94.7

 

 

金融商品取引業者向け

785

2.5

1,196

4.0

411

52.4

 

 

個人・一般事業法人向け

468

1.5

510

1.7

42

9.0

 

 

一般貸株

950

3.1

657

2.2

△292

△30.8

 

 

債券営業

10,069

32.6

12,846

42.6

2,777

27.6

 

その他

3,820

12.4

5,071

16.8

1,250

32.7

信託銀行業

2,481

8.0

2,737

9.1

256

10.3

 

貸付金利息

92

0.3

91

0.3

△1

△1.3

 

信託報酬

1,031

3.3

1,266

4.2

234

22.8

 

その他

1,357

4.4

1,380

4.6

23

1.7

不動産賃貸業

908

2.9

841

2.8

△66

△7.4

合計

30,924

100.0

30,138

100.0

△786

△2.5

 

 

(4) 当社グループ貸付金の状況(平均残高)

 

 

 前連結会計年度(通期)

 (自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

 当連結会計年度(通期)

 (自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

増  減

 

 

(億円)

(億円)

(億円)

貸借取引貸付金

2,246

2,831

585

貸借取引貸付有価証券

3,006

1,755

△1,250

セキュリティ・ファイナンス

70,990

99,697

28,707

 

一般信用ファイナンス

99

215

115

 

金融商品取引業者向け

3,274

5,859

2,585

 

個人・一般事業法人向け

130

149

19

 

一般貸株

471

475

3

 

債券営業

(債券レポ・現先取引など)

67,014

92,997

25,983

信託銀行貸付金

5,711

6,824

1,113

 

(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当該事項につきましては、(1)経営成績の概況をご参照ください。

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当該事項につきましては、(2)財政状態に関する分析をご参照ください。

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発費の金額は40百万円であります。これは、分散型台帳技術を活用した有価証券貸借取引にかかる共同実証研究に関連するものであり、研究期間(2年程度を予定)における総額です。