第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

本項目においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループ(以下、本項目において「当社」という。)が判断したものであります。

(1) 経営方針

当社は、公正な価格決定機能等を有する商品市場機構の一構成員として、商品デリバティブ取引業及び金融商品取引業の経済的、社会的役割を認識し、それに基づいて市場参加者(投資者)の信頼と期待に応えるべく事業運営を推進したいと考えております。このような観点から、当社は「お客様第一主義」を企業理念に掲げており、今後もさらにこれを継続し、一層充実したものとして次のような営業活動を展開していく方針であります。

第一に、良質で鮮度のある情報を迅速かつ的確にお客様に提供することであります。動画コンテンツを活用した当社オフィシャルチャンネルでの個人投資家に向けたタイムリーなマーケット情報配信に取り組み、新規顧客獲得及び顧客育成機会として一定の効果を得ていた会場型セミナーを開催しております。また、大手商社から入手した情報を分析し、お客様一人ひとりと顔を合わせ、膝と膝を突き合わせた対面営業を通じて提供しておりますが、さらに一層充実したものにいたします。

第二に、多様化する投資ニーズに応じた商品の提供であります。お客様の資産運用方法に従い商品デリバティブ取引、取引所株価指数証拠金取引「ゆたかCFD」、取引所為替証拠金取引「Yutaka24」、及び株価指数先物取引並びに証券媒介取引として株式売買、投資信託及び債券の販売等のサービスを提供してまいります。

第三に、お客様に総合的な企画や提案のできる社員をより多く育成し、さらに一層レベルアップしてまいります。

当社は、このように「お客様重視の営業」を経営方針としてこれからも継続してまいりたいと考えております。

(2) 経営戦略等

当社は商品市場、証券市場及び為替市場等において多角的に商品デリバティブ取引業及び金融商品取引業を展開しております。ここ数年、業界を取り巻く状況は大きく変化しております。まさに激動する経営環境下において当社は、安定的な収益基盤の確保及び顧客層の拡大を図るべく、取引所株価指数証拠金取引「ゆたかCFD」及び取引所為替証拠金取引「Yutaka24」の預り資産を拡大するとともに、中期経営計画に基づき、早期に東京証券取引所の総合取引参加者資格取得を目指し、経営環境の変化に柔軟に対応できる組織、人材の育成等経営基盤の強化に努め、企業価値を高めるべく、その最大化の実現に向けて努力する所存であります。

当期の経営戦略「安定的な収益基盤の確保及び顧客層の拡大」についての評価及び結果については、取引所為替証拠金取引「Yutaka24」の預り資産は3,763百万円(前年同期4,907百万円)と相場が大きく乱高下した為、預り資産が棄損し減少しましたが、取引所株価指数証拠金取引「ゆたかCFD」の預り資産は16,390百万円(前年同期5,874百万円)と総預り資産は、ほぼ目標を達成しております。

また、株価指数先物取引等は2022年1月17日より取扱いを開始し、新規顧客層の拡大を図るべく前進しております。

(3) 目標とする経営指標

当社は、企業価値の拡大を通して株主の皆様へ安定した配当を継続、維持することを基本理念として掲げており、一層の利益還元に努めてまいります。また、自己資本規制比率や純資産額規制比率の充実及び顧客の預り資産、口座数等の拡大に向けて取り組んでおります。

なお、自己資本規制比率及び純資産額規制比率は「3「事業等のリスク」の(4)自己資本規制比率及び純資産額規制比率について」に記載しております。

(4) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(1)及び(2)に記載の経営方針及び経営戦略を実行していくうえで、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。

(特に優先度の高い対処すべき事業上及び財務上の課題)
顧客の預り資産、口座数等の拡大

当社の主要な事業である商品デリバティブ取引業は、市場での売買高が減少傾向にあり、業界にとって厳しい事業環境にあります。また、商品デリバティブ取引は「不招請勧誘の禁止」が適用されるため、個人投資家からの招請による場合を除き、当社において一定の金融取引経験者であって、かつ適合性をクリアした個人投資家を対象とした対面営業となります。このような厳しい事業環境に対応すべく、当社は業界最大規模の営業スタッフと全国11本支店のネットワークで、特に大阪取引所の貴金属市場及び東京商品取引所のエネルギー市場においては、今後も十分かつ適切な教育の継続により個人投資家のニーズに応えるとともに、業界最大規模の法人委託者(当業者)からの受託の拡大を図り顧客の預り資産を増大させていくよう努めてまいります。

当社の第二の主要な事業である金融商品取引業は、取引所株価指数証拠金取引「ゆたかCFD」、取引所為替証拠金取引「Yutaka24」及び株価指数先物取引の3つのサービスを提供しております。当社では会場型の金融セミナーの運営を販売チャンネルの軸として、全国各地で金融セミナーを開催し口座数等の拡大及び個人投資家への啓発に努めております。データとデジタル技術を活用した当社の動画コンテンツ「ゆたかTV」にて商品市場、証券市場及び為替市場等を主体としたバリエーション豊富な番組配信を積極的に行った結果、2021年1月の提供開始から現在までに登録者数が5.4万人となりました。今年度も、会場型セミナーの主たる集客メディアとして動画コンテンツ「ゆたかTV」の動画配信を主体として集客に努め、会場型セミナーの開催を10回予定し、当社の商品に興味を持つ招請意思のあるお客様に参加して頂き、新規口座数を拡大することが重要な課題と考えております。

このような施策により顧客の預り資産、口座数等の拡大による安定的な収益基盤を確保してまいります。

(その他の優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)

当社は、お客様に信頼頂ける企業集団となるべく、コンプライアンス部による従業員に対するコンプライアンス研修及び外部のオンライン研修等を実施することで、コンプライアンス態勢の強化及び維持に向けて一層注力してまいります。

また、情報ネットワーク社会において大切なお客様情報を守る為に、情報セキュリティ環境の向上及び維持に向けて最大限の努力を図ってまいります。

当社は、これらの課題に真摯に取り組み、実効性があるものにするとともに企業価値の向上に努める所存であります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループ(以下、本項目において「当社」という。)のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、本項目においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当連結会計年度末現在(2025年3月31日)現在において当社が判断したものです。

 

(1) ガバナンス

当社は、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティに配慮した経営を目指しており、代表取締役社長安成政文がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。

代表取締役社長の諮問機関として経営リスク管理委員会を設置しております。委員会は適宜、サステナビリティに係る当社の在り方を提言することを目的として協議等を行い、代表取締役社長へ報告します。代表取締役社長又は委員会は当該協議等の内容を取締役会へ報告しております。

取締役会はサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しております。経営リスク管理委員会で協議等された内容の報告を受け、当社のサステナビリティのリスク及び機会への対応方針及び実行計画等についての審議・監督及び決定を行っております。

また、代表取締役社長が議長を務める役付取締役で構成される常務会を設置しており、取締役会で決定された対応方針及び実行計画等の執行状況等に対する審議を行うために適宜開催しております。

 

(2) 戦略

当社における、サステナビリティに係る中期的な経営戦略は中期経営計画において示しております。具体的には次の通りです。

[計画期間における経営目標]

当社の知的財産である優れた営業力とその基盤である高いコンプライアンス機能を、今後の市場環境で最大限に活かしていくためには、現在の基盤である商品先物、金融先物に加えて、顧客ニーズの高い有価証券、同関連商品を一体として扱い、顧客の資産形成に対応していく必要があります。このため、早期の東京証券取引所会員資格取得を目指し、既存の経営資源・知的財産の更なる充実を図るとともに、有価証券等取扱いのための資源配分を進めることといたします。

従って、本計画は、2023年度から2025年度までを計画期間とし、「お客様第一主義の経営理念の下、顧客の求める金融商品ニーズに幅広く対応し、資産形成に資するとともに、成長を持続し、社会的責任を果たす」ことを目標といたします。

[経営目標を実現するための、戦略・資源投資]

本計画の中期経営目標を達成するためには、経営戦略に基づいて適切な人的物的資源配分を行う必要があります。その際には、各種の国際機関、政府の指針に則った、ESG経営を実現するため、知的財産を活用し持続的成長を引き続き図るとともに、「サステナビリティに配慮した持続可能性」の追求を両立させることにより、経営目標を達成することを目指します。

このため、持続的成長に係る3つの重要課題(マテリアリティ)、持続可能性に係る5つの重要課題(マテリアリティ)を、両立して達成するため、マテリアリティごとに、人的資源・物的資源配分戦略を明らかにいたします。

[持続的成長に向けた施策実現のための資源配分]

  ① 顧客の資産運用課題の解決に資する幅広い金融サービスの提供

当社は既存顧客層の幅広い金融商品ニーズに対応できるよう、株式・投信等のフルラインの商品提供を可能とする必要があります。

そのため、東証加盟に向けた、売買管理、顧客対応等の組織体制等の整備や規程類、リーガルチェック体制の充実を図る必要があります。また、端末での発注等インフラ整備についても、当初の事務リスク対応が必要と考えられます。これらに係る人的、物的資源の追加配分については、個々のニーズに合わせた職員への訓練対応の他、必要に応じた新規資源の投入を検討いたします。

  ② 新たな投資家層と既存顧客、それぞれの多様なニーズに対応した金融サービスの提供

当社の顧客層開拓は、資産保有層を対象とし、高度な対面テクニックという知的財産を磨き、実績をあげてまいりました。この知的財産は引き続き維持してまいります。他方、株式・投信等の販売については、マーケットの短期的ボラティリティよりも長期的な投資価値の説明、情報提供が重要であり、異なった知的財産が求められます。

このため、株式・投信等の投資ニーズのある新たな顧客層の開拓と、既存顧客のニーズ対応とのバランスを考えた営業戦略、営業体制を構築し、その基盤として、商品・金融デリバティブで培った知的財産を有する人的資源を引き続き育成しつつ、株式・投信等勧誘という異なった知的財産を形成するための人的資源投資を行ってまいります。

  ③ 対面アプローチでの多様な金融資産提供を可能とする環境整備

幅広い金融商品を顧客目線で販売できる人材育成に加えて、株式・投信等に求められる、これまでとは異なるコンプライアンスや、ITセキュリティを含めたリスク管理等の分野についても、当社の人的資源を適切に配分する必要があります。

こうした、販売、コンプライアンス、リスク管理等の全社を通じた経営戦略について、人材の獲得、育成、配置を通じた「人材育成基本方針」を策定し、包括的な管理を行います。同方針に基づく、人事管理を全社的に継続して行う仕組みを整備します。

次に顧客にポートフォリオに応じた提案を可能とするためには、商品先物、金融先物、株式・投信を通じた、当社における顧客資産の一貫性ある把握と顧客への開示が可能である必要があります。株式・投信等のストック資産を取扱えるようになったあかつきには、この課題を解決してまいります。顧客へのポートフォリオ説明等を可能とするツールの整備も進めます。

[持続可能なビジネスの推進のための資源配分]

  ① 行動規範の徹底とコンプライアンスの充実

当社は、顧客利益の最大化と顧客目線での従業員の対応を第一とし、行動規範を定め、研修活動を重ねてまいりました。今後の取り扱い商品の拡大を視野に入れて、一層の徹底と更なる研修の充実を図ります。

また、コンプライアンスについては、これまでも金融商品取引法、商品先物取引法に基づきコンプライアンス体制を整備してまいりました。今後の株式・投信等を扱う東証加盟会社化を見すえ、営業第一線、本店所管部局、内部監査部局の三者が相互に強力に牽制するスリーラインディフェンスの考え方に基づき、実効性あるコンプライアンス管理体制の構築を図り、PDCAによる不断の改善サイクルを確立します。

  ② 情報セキュリティ、特に個人情報保護の徹底

当社はこれまでも情報セキュリティの確保に努めてきましたが、今後、取り扱い商品の拡大、更に総合口座管理を目指すため、個人情報保護の徹底、自社及び委託会社を含めた情報セキュリティ体制の整備、必要な資源の追加投資の検討を行ってまいります。

  ③ 従業員のエンゲージメント(人材、ダイバーシティ、インクルージョンの向上)

当社は、これまでも、従業員の健康保持に努めるとともに、多様な人材が、各々のやりがいをもって、多様な働き方を可能とする体制の構築に努めてきましたが、更なる推進に向けて、「人材育成基本方針」にその考え方、関係諸施策を掲げるほか、関係諸施策のSDGs開示、フォローアップを行います。

  ④ 気候変動対策への取組、地域・社会・教育活動への参画

当社は、上場企業として、社会的存在としての責任を果たすため、環境負荷低減活動の推進、再生可能エネルギー推進活動への参画、地域社会、福祉活動への参画、助成の推進を進めてきました。

今後も、本社だけでなく、地方拠点も含めて、各施策を展開、SDGs開示を行うとともに、組織的なフォローアップを進めてまいります。

  ⑤ コーポレートガバナンスの確立、財務健全性の確保、リスクマネジメントの確立

当社は、上場企業として、コーポレートガバナンスコードを定め、その定めるところにより、株主その他ステークホルダーの利益を保持し、社会的責任を全うするとともに、法令に基づく規制その他を遵守し、財務健全性の維持、リスクマネジメントの確立に努めてまいります。

[経営係数目標管理について]

ESG経営における、持続的成長及び持続可能性に係る重要課題(マテリアリティ)については、常時その進展状況の点検を、戦略・財務指標に基づいて行います。ただし、現在、当社の取り扱う商品・サービスは、市場環境等に大きく影響され、それら指標を開示することは、業績・目標実現状況について誤った認識をもたらすことから、当面、行いません。

  ※ 中期経営計画

  http://www.yutaka-trusty.co.jp/src/img/chuuki_keiei_keikaku.pdf

また、人材の育成及び社内環境整備に関する方針は、次のとおりであります。

  [人材育成基本方針]

当社は中期経営計画に基づき、これまでに培った「デリバティブ市場」での経験に加え、現物株式や投資信託といったさまざまな金融商品の販売等を通じ、お客様の資産形成にさらなる貢献をしていく所存であります。そのためには、「デリバティブ市場」に関するスキルを今まで以上に磨き上げると同時に、新たに取り扱う金融商品の知識取得や勧誘等に向け、社員を教育したり、経験豊富な人材を採用したりする必要があります。もちろん、コンプライアンス部門の重要性が格段に増すことから、コンプライアンス体制を強化しなければなりません。

社内での人事や教育、研修を一元に管理し、司令塔の役割を担う「人事部」を強化し、入社から退職まで一貫して従業員に寄り添うことで、従業員一人ひとりが知識や実践力を深め、切磋琢磨しながら自らの能力を最大限に発 揮して、お客様や社会の信頼に応えてまいります。

  [社内環境整備方針]

中長期的な企業価値の向上と当社の企業理念の「お客様第一主義」を遂行するためには、多様化するお客様のニーズに合わせた金融サービスを提供する人材の育成を進めつつ、専門性や経験、感性、価値観といった、知と経験 のダイバーシティを積極的に取り込むことが必要になると考えております。

性別や年齢、国籍などに関係なく様々な人が活躍できる環境や仕組みを整備し、多様な人材が意欲をもって活躍する活力のある組織の構築を推進していくとともに、優秀な人材を確保するため、新卒を対象とした定期採用に加 え、即戦力として期待できる専門知識を有する人材の中途採用も積極的に行っております。具体的には次の環境を整備しております。

  ① 教育・研修

入社時や昇格時、担務・役職に応じた教育・研修を積極的に実施し、自らがステップアップするとともに、お客様や会社、地域社会等への貢献に対する意欲を高めます。同僚や上司だけでなく、外部から講師を招く講演会を開 催するほか、経済団体等が主催する各種セミナーを少なくとも1年に1回は受講する機会を設けております。

  ② 資格取得等を支援

営業職は今後の各種金融商品の販売・資産形成プランニングを提供するために、ファイナンシャルプランナーや各種アナリスト資格、内勤職は営業との一体的な人事管理を実施するために証券外務員資格一種及び内部管理責任 者資格、専門性向上のために行政書士や社会保険労務士等の士業資格、英検・TOEIC・TOEFL、簿記や秘書検定などの資格取得の支援を行っております。また、取得した資格が会社にとって有益であると認められる場合には、当該資格に対して手当の支給を行っております。

  ③ キャリアの採用

イノベーションの創出に向けて、女性活躍を促すことに加え、多様な知識・経験を持ったキャリアの採用を行い、その際登用すべき地位・役職のレベルについても、その能力が最も発揮されるように検討を行っております。

また、従業員の定着率を向上させるため、ワークライフバランスを整えながら、従業員一人ひとりが働きがいを持って能力を十分に発揮できる仕組みづくりと、安心して働き続けることができる働きやすい環境の整備に努めて まいります。具体的には、次の環境を整備しております。

  ① モチベーション向上

従業員のモチベーション向上に向けた取り組みを強化してまいります。具体的には、次のとおりであります。

 ・ 初任給引き上げに伴う給与水準の見直し

 ・ 人事考課制度・内容の見直しによる多角的な評価

 ・ 福利厚生の充実  

  ② ワークライフバランス

2023年4月より当社従業員の残業時間削減に取り組み、従業員の約7割を占める営業部所属従業員1人1か月当たりの平均残業時間は次のようになりましたが、引き続き残業時間削減を継続してまいります。

2022年度

2023年度

2024年度

約25時間

約6時間40分

約7時間57分

 

  ③ 副業・兼業の多様な働き方

従業員が企業・社会に貢献しようとする主体的な意思を尊重し、社外の副業・兼業を行えるように環境を整備しております。

  ④ 女性活躍に向けた取組
   女性従業員が働きやすい環境を整備しております。具体的には、次のとおりです。
   ・ 育児休業を子が3歳に達するまで取得可能
     育児休業取得後の職場復帰は2021年度以降、4年連続で100%を達成
   ・ 子の看護等休暇について、子1人につき6日の有給休暇を付与
   ・ 育児短時間勤務は子が3歳に達した以降、従業員の諸事情を考慮して延長可能
   ・ 生理休暇を必要日数有給休暇で付与
   ・ 業務職(主に事務系の女性従業員)の基幹職への職種変更制度(職種変更時に特別昇給)    

 

(3) リスク管理

当社において、全社的なリスク管理は経営リスク管理委員会が行っております。

 第4「提出会社の状況」/4「コーポレート・ガバナンスの状況等」/(1)「コーポレート・ガバナンスの概要」/②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由/c.委員会(38頁)参照

 

(4) 指標及び目標

当社では、上記「(2) 戦略」において記載した、人材の育成及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

2023年度

2024年度

管理職に占める女性労働者の割合

2028年まで10

5.6%

5.7

男性労働者の育児休業取得率

2028年まで50

  0%

25

労働者の男女の賃金差異

2028年まで85

72.9%

71.7

 

  ※ 人材育成基本方針

  http://www.yutaka-trusty.co.jp/src/img/jinzai_ikusei_kihon_housin.pdf

 

3 【事業等のリスク】

本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループ(以下、本項目において「当社」という。)の事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める所存であります。

本項目においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社が判断したものであります。

(1) 当社の事業内容

① 商品デリバティブ取引業等の動向

当社は商品市場、証券市場及び為替市場等において多角的に商品デリバティブ取引業及び金融商品取引業を展開しております。

当該市場には経済情勢、相場環境等に起因するさまざまな不確実性が存在しております。市場主義経済圏の拡大に伴い、商品(コモディティ)や金融商品は、グローバルに展開して行くなかで、取引形態の多様性と相まって価格変動と為替に晒されるリスクを内包しております。この価格変動と為替のリスクをヘッジする手法としての先物取引の重要性が経済的、社会的見地からますます高まってきております。

当社の主要な事業である商品デリバティブ取引業では、㈱大阪取引所において国際的大型商品である金(ゴールド)及び白金(プラチナ)等の貴金属市場、並びに大豆及びとうもろこし等の農産物市場、並びにゴム市場が取引されております。金(ゴールド)は米国の関税政策や世界経済の先行き不透明さが高まる中、資金の逃避先として堅調に推移していくものと期待されています。㈱東京商品取引所においてはガソリン、原油及び電力等のエネルギー市場が取引されております。電力は、昨今の需要の高まりから堅調に推移していくものと期待されております。

2020年7月には総合取引所の本格稼働に伴い、商品デリバティブ取引の清算機構(アウトハウス型クリアリングハウス)である㈱日本商品清算機構が㈱日本証券クリアリング機構に統合され、信用リスク(取引先リスク)に対する安全性が国際水準程度に高まったことから、今まで信用リスクの観点から取引を見送っていた向きのある、国内はもとより海外の機関投資家の信用リスクに対する不安が一掃されると思われるため、その参加が大いに期待されます。

一方において市場の自由化及び国際化の進展に伴い、異業種、あるいは外資系企業からの参入が拡大する可能性があると予測されますので、既存の商品デリバティブ取引業者間との企業競争も含めて今後の動向次第では当社の経営環境に影響を及ぼす可能性があります。

② 受託業務と自己売買業務(自己ディーリング)

当社は商品デリバティブ取引業及び金融商品取引業として委託者から受託業務を行うとともに、自己の計算による自己売買業務(自己ディーリング)を行っております。

a. 受託業務

当社の商品デリバティブ取引業に係る委託者は、リスク・ヘッジを主とする商品保有者(将来保有を含む)である商社等の法人委託者と、一方でリスクをとって収益機会を得ようとするリスク・テーカーと称される一般委託者(一般法人を含むが、大半は個人委託者)で構成されております。また、金融商品取引業に係る委託者はほぼすべてが一般委託者となっております。

商品デリバティブ取引、取引所株価指数証拠金取引、取引所為替証拠金取引及び株価指数先物取引は、実際の商品の総代金ではなく、定められた額の保証金等を担保として預託することにより取引が行われることから、投資運用効率が高いと考えられます。この投資運用効率の高さは、大きな利益を得る機会をもたらす半面、ときにより大きな損失をこうむる場合があるため、一般委託者を中心とする市場参加者の動向は受託取引の多寡に関係し、業績(受入手数料)に影響を与えることとなります。

また、受託取引に伴う「預り証拠金」及び「金融商品取引保証金」、並びに「委託者未収金」及び「委託者未払金」等の債権債務、並びに㈱日本証券クリアリング機構及び取引所への預託額、並びに法人委託者との継続取引に伴う取引保証等の「差入保証金」等の増減は財政状態とキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

b. 自己売買業務(自己ディーリング)

一方、自己売買業務(自己ディーリング)は、受託業務に伴う市場流動性を確保するマーケット・メーカーとしての役割からリスクテイクする場合等がありますが、主として、収益機会を獲得するために当社独自の相場観により自己ディーリングを行っております。この自己ディーリングによる損益の状況は業績(トレーディング損益)に影響を及ぼすこととなります。当社は自己ディーリングを行うにあたり、専任部署と専任担当者を定め、社内規程に基づき、厳しい運用管理を行い、かつディーラーの育成強化に努めるなど収益の拡大に取り組んでおります。

(2) 当社の事業における法的規制

当社の主要な事業である商品デリバティブ取引業等を遂行するため、内閣総理大臣より金融商品取引業の登録並びに、農林水産大臣及び経済産業大臣(以下、「主務大臣」といいます。)より商品先物取引業者として許可を受けております。また、金融商品取引所及び商品取引所の定める取引参加資格を取得しております。

事業を遂行する上で金融商品取引法及び同法の関連法令、並びに商品先物取引法及び同法の関連法令、並びに金融商品取引所及び商品取引所の定めた受託契約準則、並びに自主規制機関による自主規制規則等の適用を受けております。また、この他に消費者契約法、個人情報保護法の適用を受けております。

 当社は、これらの諸法令規則等に抵触した場合には、登録及び許可の取消し、又は業務停止等の行政処分が行われることがあり、そのような場合には当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 訴訟について

2025年3月末現在、特段に記載すべき重要な訴訟事件はありませんが、顧客との受託取引等に起因する重要な   訴訟やその他重要な請求の対象とされる可能性があります。当社の従業員である外務員が顧客との受託業務活動に おいて、会社が外務員の権限を内部的に制限している場合であっても、外務員の行った権限外の行為により第三者に損害が発生した場合には、所属会社が当該外務員の使用者として、当該第三者に対し損害賠償責任を負う可能性があります。このような損害賠償が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 自己資本規制比率及び純資産額規制比率について

自己資本規制比率は、金融商品取引法の規定に基づき内閣府令の定めにより算出することとしたものであります。当社の自己資本規制比率は、2025年3月末現在520.6%となっており、金融商品取引業者は、自己資本規制比率が120%を下回ることがないようにしなければならないと定められております。(同法第46条の6)

また、商品先物取引法及び同施行規則に基づき、純資産額規制比率による制限が設けられています。純資産額規制比率とは、純資産額の、商品デリバティブ取引につき生ずる相場の変動その他の理由により発生し得る危険に対応する額として主務省令で定めるところにより算出した額に対する比率であります。当社の純資産額規制比率は、2025年3月末現在837.4%ですが、120%を下回る事態が生じた場合には、主務大臣は商品先物取引業者に対し商品先物取引業の方法の変更を命じ、財産の供託その他監督上必要な措置を命ずることができます。また、100%を下回る場合には3ヶ月以内の期間を定めて業務の停止を命じることができ、業務停止命令後3ヶ月を経過後も100%を下回り、かつ、回復の見込みがないと認められるときは商品先物取引業者の許可を取り消すことができるとされています。(同法第235条)

当社は、自己資本規制比率及び純資産額規制比率が要求される水準を下回った場合には、自己資本規制比率に関しては内閣総理大臣から、純資産額規制比率に関しては主務大臣から業務の停止等を含む様々な命令等を受けることとなります。これらの結果によっては、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 個人情報保護に関して

当社は、顧客の個人情報を扱う企業であることから、その社会的責任を認識し、個人情報管理に積極的に取り組み、当社における個人情報保護方針を制定し、2005年4月に施行された、いわゆる個人情報保護法に対応してきております。2006年2月には「プライバシーマーク」の認証を取得し、その後現在に至るまで2年ごとの更新審査を受け認証資格を維持しており、個人情報保護管理体制に適切に対処する旨努めております。また、「サイバーセキュリティ」を「情報セキュリティリスク」として明確化し、その対応に努めております。

しかしながら、顧客の個人情報や当社の機密情報が、不正なアクセスなど何らかの方法により外部に漏洩し、あるいは悪用された場合等には、損害賠償が発生する可能性があり、加えて当社の信頼を失うおそれがあり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(6) システム障害について

取引所の取引システムや当社の社内システムにおいて障害が発生した場合には、顧客等に与える影響は予測しがたいものがありますが、当社は、社内システムに関して安全性の確保を図る等、システム管理の徹底に努めております。

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(以下、本項目において「当社」という。)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、本項目において「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、通期を通して内需主導の緩やかな回復が見られました。企業活動の活発化やインバウンド需要の回復を背景に、大企業・非製造業の景況感は高水準を維持し、大企業・製造業も一部のハイテク関連や素材産業を中心に改善の動きがありました。一方で、業種によって景況感の二極化が進み、米国の通商政策への警戒感が製造業の一部において景況感を押し下げました。先行きの経済は、好調な企業収益を背景とした賃上げや設備投資の拡大により、個人消費の下支えが期待されるものの、米国の関税引き上げに起因する輸出減少や企業収益の下押しが、民需を抑制し景気は減速する見通しであります。

一方、世界経済は、米国では個人消費が底堅さを見せる局面もありましたが、高金利や物価上昇の影響により、年後半にかけて徐々に消費の勢いは鈍化しております。米国供給管理協会(ISM)景況感指数は製造業・非製造業ともに年初から低下傾向にあり、企業マインドも悪化しております。中国では、年初こそ政策効果を背景に内需が持ち直したものの、個人消費や固定資産投資は通期を通して力強さを欠き、企業の景況感も総じて低迷しており、輸出は一部の分野で好調を維持したものの、内需の低迷が景気の重荷となっております。先行きは、米国では関税引き上げに伴うコスト増加や物価上昇が個人消費・設備投資を抑制し、景気は減速傾向を辿る見込みでありますが、一部では減税や規制緩和への期待が下支え要因となる可能性もあり、中国では、景気刺激策の実効性や規模が限定的であるため、内外需ともに回復力は弱く、景気は引き続き減速する見通しであります。

証券市場においては、取引所株価指数取引(くりっく株365)は、米国の根強いインフレを背景として米連邦準備制度理事会(FRB) による利下げ観測が後退したことや、イスラエルによるイラン大使館周辺の空爆などの中東情勢緊迫化を受けて下落、一時37,000円を割り込みました。5月に入るとNYダウが高値を更新して40,000ドル台まで上昇、国内市場も追随する動きを見せましたが、その後は長期金利の上昇が圧迫要因となり軟調な推移となりました。6月は39,000円を中心としたもみ合いを経て、円安ドル高を背景に月末にかけて上値を追う展開となりました。7月の前半はFRBの早期利下げへの期待を背景にNYダウが上昇、円安ドル高も支援要因となり過去最高値を更新して42,000円台まで上昇しました。しかしその後は急速に円高ドル安が進行、NYダウの下落も嫌気され急落場面となりました。8月の前半も円高ドル安の流れに押されて続落場面となり約10ヶ月ぶりに安値を更新、一方で急落に対する反動も大きく、月後半では7月末の水準まで戻すなど不安定な相場展開となりました。9月前半もFRBが0.5%の利下げに踏み切るとの見方から、為替が一時140円を割り込むなど、円高ドル安を背景に35,000円台まで下落しましたが、実際に0.5%の利下げを決定すると米国景気のソフトランディング期待からNYダウが上昇、国内市場も堅調な推移となりました。10月には米国で景気の底堅さを示す経済指標の発表が相次いだことから、日本株市場もリスクオン選好の動きとなり上昇、約3ヶ月ぶりに40,000円を上回りましたが40,000円は抵抗ラインとして意識され、その後は調整場面から38,000円割れまで下落しました。11月に入り米国大統領選挙でトランプ前大統領が勝利したことから、財政出動を期待する「トランプ・トレード」を意識した買いにより上昇しましたが、その後は関税強化の方針が投資家心理の悪化を誘い、再度38,000円を割り込みました。12月に入ると為替市場での円安ドル高進行を背景に下値を切り上げる動きとなりましたが、引き続き抵抗ラインが継続して1月には38,000円台を試す動きとなりました。その後も38,000円から40,000円のレンジを意識した動きとなりましたが、2月後半に為替が150円を割り込んだことからレンジを下抜いて3月には36,000円台まで下落しました。その後は調整場面から値を戻す場面も見られたものの、米国による「相互関税」の導入を控え、景気後退懸念を背景に月末には一時36,000円を割り込みました。

商品市場においては、原油は中東情勢の悪化による供給不安が高まる中、下値を切り上げて80,000円台まで上昇するなど堅調な足取りとなりました。しかし5月に入ると、イスラエルとイスラム組織ハマスとの休戦実現に向けた期待感や米国原油在庫の増加を背景に、海外市場が急落したことから75,000円台まで下落しました。その後は徐々に値を戻しましたが6月に入り、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟産油国でつくるOPECプラスの閣僚級会合が開催され、現行の協調減産を2025年末まで延長することで合意したものの、一部の減産については10月以降、減産規模を徐々に縮小する枠組みを設定したことから、海外市場が急落、国内市場も追随して一時72,000円を割り込みました。しかし売り一巡後は、ウクライナ情勢や中東情勢を巡る地政学的リスクが意識されて急反発場面となり、再度80,000円台を回復しました。その後は中国の消費減速を背景とした原油需要減退懸念が台頭して下落、8月には米国株式市場が大きく下落する中、原油相場にもリスク回避の動きが強まったことから急落場面となり、64,000円を割り込みました。その後も引き続き地政学的リスクが下支えとなり70,000円台を回復する場面も見られましたが、9月に入りOPECが2024年と2025年の世界石油需要見通しを2ヶ月連続で引き下げたことが圧迫要因となり、60,000円台前半まで下落しました。10月に入るとイランがイスラエルにミサイル攻撃を行い、地政学的リスクの高まりから急伸場面となり一時70,000円台まで上昇しましたが、イスラエルの反撃が限定的であったことから、その後はおおよそ65,000円から69,000円での推移となり、保ち合い相場が続いた後、12月にシリアのアサド政権が崩壊したことから中東情勢不安定化への懸念が台頭、日銀の金融政策決定会合での金利据え置きによる円安ドル高も上昇要因となり1月半ばには74,000円台に到達しました。しかしその後は、パレスチナ・ガザ地区の停戦合意が成立したことや、ウクライナ停戦を巡る米露高官協議が行われたことから地政学的リスクが後退して反落、3月にはOPECプラスが自主減産を予定どおり4月から段階的に縮小すると発表したことも圧迫要因となり、60,000円台まで下落しました。年度末にかけては米国が対イラン制裁を強めるなど、中東の地政学的リスクの高まりから供給への懸念が台頭、65,000円台で取引を終えました。

金はイスラエルがシリアのイラン大使館周辺を空爆したことを受けて、中東情勢を巡る地政学的リスクが一段と高まり、国内外ともに最高値を更新する動きとなりました。5月に入り米国の経済指標がインフレ鈍化傾向を示したことから円高ドル安が加速、東京金は一時11,180円まで急落しました。しかし中東の地政学的リスクの再燃や、イラン大統領の事故死などを受けて堅調に推移、12,000円台まで上昇しました。6月に入ると中国人民銀行(中央銀行)が1年半続けてきた金準備高の増加が5月で一時停止したことが明らかとなり12,000円を割り込む場面も見られたものの円安ドル高を背景に堅調に推移、米国の9月利下げ開始予想も支援要因となり、12,679円と過去最高値を更新しました。その後は中国の金需要減退懸念や円高ドル安が圧迫要因となり軟調に推移、8月早々には急激な円高ドル安と株安を受けて商品市場にも売り圧力が加わり、一時11,000円を割り込む暴落場面となりました。その後は中東の地政学的リスクへの警戒や為替市場が大幅に円安ドル高に振れたことから投機資金が流入、12,000円手前まで値を戻すなどボラティリティの高い状況が続きました。9月に入るとFRBが通常の2倍にあたる0.5%の利下げを決定したことが金利のつかない金の支援要因となり、NY市場で2,708.7ドルと過去最高値を更新、国内市場も追随する動きから12,600円台を回復しました。10月に入ると修正を経た後、急激な円安ドル高を背景に連日過去最高値を更新して13,819円まで上昇、NY市場も過去最高値となる2,800ドル台まで上昇しました。その後は利益確定の売りなどの持ち高調整で軟調に推移、米国大統領選挙ではトランプ前大統領が圧勝したことから政策実現性が高まるとの見方が強まり、「トランプ・トレード」が誘発されたことも圧迫要因となりました。12月に入り、シリアのアサド政権崩壊による地政学的リスクや、中国人民銀行(中央銀行)が11月に7ヶ月ぶりとなる金購入を再開したことなどを受けて反発、NY市場では一時2,600ドルを割り込む場面も見られたものの、国内市場は円安基調を背景に上昇しました。1月に入っても中国の金購入が好感され続伸、引き続き地政学的リスクも意識されて2月には14,500円台まで上昇しました。その後は修正場面から一時14,000円を割り込みましたが、円安ドル高を背景に上昇に転じて連日高値を更新、3月後半には15,000円台に至りました。

為替市場においては、底堅い米国経済情勢を背景にFRB議長が政策金利を当面の間、現行水準を維持する方針を示唆したことから利下げ観測が後退、また、日銀の金融政策決定会合を受けて緩和的な金融政策が継続する見方が強まったことから、160円台前半まで円安ドル高が進行しました。5月に入り高値警戒感の中でISM景況感指数などの米国主要指標が市場予想を下回ったことを受けて急落場面となり、一時151円台後半へ調整安となりましたが、その後はFRBと日銀の金融政策を巡るスタンスの違いが意識され、再び157円台半ばへ円安ドル高が進みました。6月は一進一退の動きを経た後、日銀が国債買い入れの減額を先送りしたことなどから37年半ぶりとなる161円台まで円安ドル高が進行しました。7月に入ると日米金利差の縮小を背景に円高ドル安が進行、FRBが9月の利下げ開始を示唆した一方で、日銀が追加利上げと長期国債買い入れ減額を発表したことも円高ドル安に拍車をかけました。8月には日銀高官が利上げを急がない姿勢を示したことで一時的に円が反落しましたが、9月に入り軟調な米国の経済指標を受けて再び円高ドル安が進み、一時140円を割り込みました。月後半の自民党総裁選では、当初円売りドル買いが強まり、146円台に達しましたが、決選投票後に143円台まで急落するなどボラティリティの高い展開となりました。10月に入ると石破首相の「追加の利上げをする環境にはない」との発言や、米国雇用関連指標の強さを背景に大きく円安ドル高が進行しました。11月にはトランプ前大統領の勝利を経て、共和党が上下両院を制する見通しやFRB高官の利下げ慎重姿勢を背景に156円台後半まで上昇しましたが、その後は日銀の早期追加利上げ観測が浮上、11月末には一時150円を割り込む展開となりました。12月に入るとFRBが堅調な経済指標やインフレ再燃への警戒から利下げペース鈍化を示唆したことや、日銀の金融政策決定会合では植田総裁が利上げに慎重な姿勢を示したことから円安ドル高が進行、1月初旬には158円台後半に達しました。しかしその後は日銀が追加利上げを実施したことにより日米両国の金利差が縮小、2月の前半には一時150円台後半まで円高ドル安が進みました。その後も修正を繰り返しながら円高ドル安トレンドが継続、3月上旬には米国がカナダ、メキシコへの関税賦課を実施すると表明したことから146円台半ばまで円高ドル安が進行しました。その後は堅調な米国経済指標を背景に151円台まで反発しました。

このような環境のもとで、当社グループの当連結会計年度の商品デリバティブ取引の総売買高1,269千枚(前年同期比3.7%増)及び金融商品取引の総売買高2,335千枚(前年同期比19.9%減)となり、受入手数料7,537百万円(前年同期比2.8%増)、トレーディング損益27百万円の利益(前年同期は16百万円の損失)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の業績は営業収益7,662百万円(前年同期比3.5%増)、純営業収益7,643百万円(前年同期比3.5%増)、経常利益2,153百万円(前年同期比2.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,915百万円(前年同期比33.9%増)となりました。

当社の経営成績の概要は次のとおりであります。

a. 営業収益

当連結会計年度の営業収益は7,662百万円(前年同期比3.5%増259百万円増加)となりました。受入手数料は7,537百万円(前年同期比2.8%増204百万円増加)、トレーディング損益は27百万円の利益(前年同期は16百万円の損失)、その他の営業収益は97百万円(前年同期比13.6%増11百万円増加)となりました。

b. 金融費用

当連結会計年度の金融費用は18百万円(前年同期比20.9%増3百万円増加)となりました。

c. 純営業収益

当連結会計年度の純営業収益は7,643百万円(前年同期比3.5%増256百万円増加)となりました。

d. 販売費及び一般管理費

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は5,569百万円(前年同期比3.3%増176百万円増加)となりました。この主な内訳は、取引関係費が761百万円(前年同期比1.4%減10百万円減少)、人件費が3,580百万円(前年同期比3.8%増130百万円増加)、貸倒引当金繰入額が20百万円(20百万円増加)、その他(電算機費等)が655百万円(前年同期比4.1%増・25百万円増加)となっております。

e. 営業利益

前連結会計年度に比べて純営業収益は256百万円増加し、販売費及び一般管理費は176百万円増加した結果、当連結会計年度の営業利益は2,074百万円(前年同期比4.0%増80百万円増加)となりました。

f. 営業外収益

当連結会計年度の営業外収益は92百万円(前年同期比16.8%減18百万円減少)となりました。この主な内訳は、受取利息が22百万円(前年同期比40.2%減15百万円減少)、受取配当金が54百万円(前年同期比8.6%増4百万円増加)となっております。

g. 営業外費用

当連結会計年度の営業外費用は13百万円(前年同期比97.2%増6百万円増加)となりました。この主な内訳は、為替差損が8百万円(8百万円増加)、投資事業組合運用損が4百万円(前年同期比28.3%減1百万円減少)となっております。

h. 経常利益

前連結会計年度に比べて営業外収益は18百万円減少し、営業外費用は6百万円、営業利益が80百万円それぞれ増加したため、当連結会計年度の経常利益は2,153百万円(前年同期比2.6%増55百万円増加)となりました。

i. 特別利益

当連結会計年度の特別利益は624百万円(前年同期比245.7%増443百万円増加)となりました。この主な内訳は投資有価証券売却益が393百万円前年同期比127.2%増220百万円増加)、商品責任準備金戻入額が157百万円(157百万円増加)となっております。

j. 特別損失

当連結会計年度の特別損失は111百万円(前年同期比34.4%増28百万円増加)となりました。この主な内訳は、投資有価証券評価損が98百万円(98百万円増加)、金融商品取引責任準備金繰入額が10百万円(前年同期比16.4%増加・1百万円増加)となっております。

k. 税金等調整前当期純利益

前連結会計年度に比べて特別損失は28百万円増加したものの、特別利益が443百万円、経常利益が55百万円それぞれ増加したため、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は2,665百万円(前年同期比21.4%増470百万円増加)となりました。

l. 法人税等

当連結会計年度の法人税等は750百万円(前年同期比1.9%減14百万円減少)となりました。この主な内訳は、法人税、住民税及び事業税が731百万円(前年同期比8.8%減70百万円減少)、法人税等調整額が19百万円(前連結会計年度は△36百万円)となっております。

m. 親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は1,915百万円(前年同期比33.9%増484百万円増加)となりました。営業収益合計に対する比率は25.0%(前連結会計年度は19.3%)となっております。自己資本利益率は14.6%(前連結会計年度は12.3%)となりました。また、1株当たり当期純利益は343.86円(前連結会計年度は259.93円)となりました。

以上の結果、当社の財政状態の概要は次のとおりであります。

当連結会計年度末の資産総額は125,860百万円、負債総額は112,060百万円、純資産13,800百万円となっております。

当連結会計年度末の資産総額125,860百万円は、前連結会計年度末99,476百万円に比べて26,384百万円増加しております。この内訳は、固定資産が438百万円減少したものの、流動資産が26,822百万円増加したものであり、主に「投資有価証券」が317百万円減少したものの、「保管有価証券」が1,633百万円、「差入保証金」が16,033百万円、「委託者先物取引差金」が6,381百万円それぞれ増加したものであります。

当連結会計年度末の負債総額112,060百万円は、前連結会計年度末87,005百万円に比べて25,054百万円増加しております。この内訳は、固定負債が259百万円、特別法上の準備金が147百万円それぞれ減少したものの、流動負債が25,462百万円増加したものであり、主に「預り証拠金」が18,523百万円、「金融商品取引保証金」が9,354百万円それぞれ増加したことによるものであります。

当連結会計年度末の純資産13,800百万円は、前連結会計年度末12,471百万円に比べて1,329百万円増加しております。この内訳は、主にその他の包括利益累計額が290百万円減少したものの、株主資本が1,620百万円増加したことによるものであります。

当連結会計年度末の自己資本比率は11.0%(前連結会計年度末は12.5%)となっております。

なお、後記「第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」「注記事項」の(セグメント情報等)」に掲記したとおり、当社グループの事業セグメントは、主として商品デリバティブ取引の受託及び自己売買、並びに金融商品取引の受託及び自己売買の商品デリバティブ取引業等の単一セグメントであり重要性が乏しいため、セグメント情報の記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて482百万円の増加となり、8,137百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の取得は、1,765百万円(前年同期は1,951百万円の取得)となりました。これは「委託者未払金」の減少、「差入保証金」の増加、「委託者先物取引差金」の増加、及び「未払委託者取引差金」の減少による資金の使用等があったものの、「預り証拠金」及び「金融商品取引保証金」の増加による資金の取得等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の使用は、827百万円(前年同期は16百万円の取得)となりました。これは、投資有価証券の売却による収入等があったものの、有価証券の取得及び投資有価証券の取得による支出等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の使用は、407百万円(前年同期は308百万円の使用)となりました。これは主に配当金の支払額によるものであります。

 

③ 商品デリバティブ取引業等
a. 当連結会計年度における商品デリバティブ取引業等の営業収益は次のとおりであります。
(受入手数料)

 (単位:千円)

区分

金額

前年同期増減比(%)

 

取引名及び市場名

商品デリバティブ取引

 

 

 

現物先物取引

 

 

 

農産物市場

2,484

△89.0

 

貴金属市場

5,854,886

5.6

 

ゴム市場

8,464

△5.8

 

エネルギー市場

 

中京石油市場

317

△4.8

 

小計

5,866,153

5.2

 

現金決済先物取引

 

 

 

貴金属市場

28,512

△38.7

 

エネルギー市場

73,195

7.4

 

商品指数市場

△100.0

 

小計

101,707

△11.5

 

国内市場計

5,967,861

4.9

 

海外市場計

20,610

△4.3

 

商品デリバティブ取引計

5,988,471

4.9

金融商品取引

 

 

 

取引所株価指数証拠金取引

1,165,765

△8.9

 

取引所為替証拠金取引

363,269

26.4

 

株価指数先物取引

18,570

△65.6

 

証券媒介取引

839

12.4

 

国内市場計

1,548,444

△4.5

 

海外市場計

422

△47.1

 

金融商品取引計

1,548,867

△4.5

合計

7,537,338

2.8

 

 

(注) 商品デリバティブ取引には、金融商品取引法及び商品先物取引法に基づく取引を含めて記載しております。

 

 

(トレーディング損益)

 (単位:千円)

区分

金額

前年同期増減比(%)

 

取引名及び市場名

商品デリバティブ取引

 

 

 

現物先物取引

 

 

 

農産物市場

 

貴金属市場

48,778

 

ゴム市場

 

小計

48,778

 

現金決済先物取引

 

 

 

貴金属市場

 

エネルギー市場

△24

 

商品指数市場

 

小計

△24

 

国内市場計

48,754

 

海外市場計

 

商品デリバティブ取引計

48,754

金融商品取引

 

 

 

取引所株価指数証拠金取引

△104

 

取引所為替証拠金取引

△21,499

 

株価指数先物取引

 

国内市場計

△21,604

 

海外市場計

 

金融商品取引計

△21,604

商品売買損益

 

 

 

貴金属等現物売買取引

628

△95.0

 

商品売買損益計

628

△95.0

合計

27,778

 

 

(注) 商品デリバティブ取引には、金融商品取引法及び商品先物取引法に基づく取引を含めて記載しております。

 

 

b. 当社及び当社の関係会社の商品デリバティブ取引等の売買高に関して当連結会計年度中の状況は次のとおりであります。
(売買高の状況)

(単位:枚)

区分

委託

自己

合計

 

取引名及び市場名

 

前年同期
増減比

(%)

 

前年同期
増減比

(%)

 

前年同期
増減比

(%)

商品デリバティブ取引

 

 

 

 

 

 

 

現物先物取引

 

 

 

 

 

 

農産物市場

3,144

△67.1

△100.0

3,144

△67.4

貴金属市場

877,896

9.5

24,296

△27.8

902,192

8.0

ゴム市場

2,916

△71.4

2,916

△71.4

エネルギー市場

中京石油市場

690

△8.7

690

△8.7

小計

884,646

7.6

24,296

△28.0

908,942

6.2

現金決済先物取引

 

 

 

 

 

 

貴金属市場

20,957

△42.0

20,957

△42.0

エネルギー市場

311,262

16.7

1,484

△59.3

312,746

15.7

商品指数市場

△100.0

△100.0

小計

332,219

9.7

1,484

△59.3

333,703

8.9

国内市場計

1,216,865

8.2

25,780

△31.0

1,242,645

6.9

海外市場計

26,907

△56.5

26,907

△56.5

商品デリバティブ取引計

1,243,772

4.8

25,780

△31.0

1,269,552

3.7

金融商品取引

 

 

 

 

 

 

 

取引所株価指数証拠金取引

1,399,188

△33.7

5,540

3.0

1,404,728

△33.6

取引所為替証拠金取引等

801,568

9.3

122,786

157.4

924,354

18.4

株価指数先物取引

3,434

△65.8

3,434

△65.8

国内市場計

2,204,190

△22.8

128,326

141.7

2,332,516

△19.8

海外市場計

3,100

△61.9

3,100

△61.9

金融商品取引計

2,207,290

△22.9

128,326

141.7

2,335,616

△19.9

合計

3,451,062

△14.8

154,106

70.4

3,605,168

△12.9

 

 

(注)1. 商品デリバティブ取引には、金融商品取引法及び商品先物取引法に基づく取引を含めて記載しております。

2. 商品デリバティブ取引の主な商品別の委託売買高とその総委託売買高に対する割合は、次のとおりであります。

(単位:枚)

取引所名

銘柄名

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

2024年3月31日)

取引所名

銘柄名

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

2025年3月31日)

委託売買高

割合(%)

委託売買高

割合(%)

大阪取引所

金(標準取引)

497,809

42.0

大阪取引所

 金(標準取引)

557,195

44.8

大阪取引所

白金(標準取引)

302,277

25.5

大阪取引所

白金(標準取引)

320,210

25.7

東京商品取引所

東京原油

263,808

22.2

東京商品取引所

東京原油

306,014

24.6

 

 

3. 商品デリバティブ取引における取引の最低単位を枚と呼び、例えば金(標準取引)1枚は1,000グラムというように1枚当たりの数量は商品ごとに異なります。

 

c. 当社及び当社の関係会社の商品デリバティブ取引業等に関する売買高のうち当連結会計年度末において反対売買等により決済されていない建玉の状況は次のとおりであります。
(未決済建玉の状況)

(単位:枚)

区分

委託

自己

合計

 

取引名及び市場名

 

前年同期
増減比

(%)

 

前年同期
増減比

(%)

 

前年同期
増減比

(%)

商品デリバティブ取引

 

 

 

 

 

 

 

現物先物取引

 

 

 

 

 

 

農産物市場

149

△92.8

149

△92.8

貴金属市場

39,316

20.1

39,316

20.1

ゴム市場

113

△31.9

113

△31.9

エネルギー市場

中京石油市場

小計

39,578

13.1

39,578

13.1

現金決済先物取引

 

 

 

 

 

 

貴金属市場

3,508

△57.2

3,508

△57.2

エネルギー市場

16,204

△14.2

16,204

△14.2

商品指数市場

小計

19,712

△27.2

19,712

△27.2

国内市場計

59,290

△4.5

59,290

△4.5

海外市場計

225

△91.5

225

△91.5

商品デリバティブ取引計

59,515

△8.0

59,515

△8.0

金融商品取引

 

 

 

 

 

 

 

取引所株価指数証拠金取引

90,768

177.7

90,768

177.7

取引所為替証拠金取引等

26,601

△33.0

26,601

△33.0

株価指数先物取引

191

5.5

191

5.5

国内市場計

117,560

62.0

117,560

62.0

海外市場計

△100.0

△100.0

金融商品取引計

117,560

62.0

117,560

62.0

合計

177,075

29.0

177,075

29.0

 

 

(注) 商品デリバティブ取引には、金融商品取引法及び商品先物取引法に基づく取引を含めて記載しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループ(以下、本項目において「当社」という。)の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

本項目においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社が判断したものであります。

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社は商品市場、証券市場及び為替市場等において多角的に商品デリバティブ取引業及び金融商品取引業を展開しております。

 当連結会計年度における当社の状況は、商品デリバティブ取引部門の国内委託売買高は、前年同期1,124千枚に対し当期1,216千枚と92千枚増加しております。これは、貴金属市場の委託売買高が76千枚増加(前年同期比9.54%増加)したことが主因となっております。また、貴金属市場の主要銘柄である金市場ではシリアのアサド政権崩壊による地政学的リスクや、中央銀行が11月に7ヶ月ぶりとなる金購入を再開したことなどを受けて反発、NY市場では一時2,600ドルを割り込む場面も見られたものの、国内市場は円安基調を背景に上昇しました。1月に入っても中国の金購入が好感され続伸、引き続き地政学的リスクも意識されて2月には14,500円台まで上昇しました。その後は修正場面から一時14,000円を割り込みましたが、円安ドル高を背景に上昇に転じて連日高値を更新、3月後半には15,000円台に至ったことから前年度と同様に取引が集中しました。貴金属市場の取引手数料収入は前年同期比5.6%増加となり、国内商品デリバティブ取引手数料収入が前年同期比4.9%増加したことの主因となっております。

 また、金融商品取引部門の国内委託売買高は、前年同期2,855千枚に対し当期2,204千枚と650千枚減少しております。これは前年度に引き続き取引所株価指数証拠金取引におけるNYダウリセット付証拠金取引及び日経225リセット付証拠金取引の委託売買高の大幅な減少によるものであります。主力商品である日経225リセット付証拠金取引は、12月に入ると為替市場での円安ドル高進行を背景に下値を切り上げる動きとなりましたが、引き続き抵抗ラインが継続して1月には38,000円台を試す動きとなりました。その後も38,000円から40,000円のレンジを意識した動きとなりました、2月後半に為替が150円を割り込んだことからレンジを下抜いて3月には36,000円台まで下落しました。その後は調整場面から値を戻す場面もみられたものの、米国による「相互関税」の導入を控え、景気後退懸念を背景に月末には一時36,000円を割り込んだことにより委託売買高は減少しました。取引所株価指数証拠金取引全体の委託売買高は、前年同期比33.7%減少となり、手数料の減少の要因となり、受入手数料(取引所株価指数証拠金取引)1,166百万円(前年同期比8.9%減)となっております。しかし、取引所為替証拠金取引における主力商品である米ドル円の証拠金取引は、12月に入るとFRBが堅調な経済指標やインフレ再燃への警戒から利下げペース鈍化を示唆したことや、日銀の金融政策決定会合では植田総裁が利上げに慎重な姿勢を示したことから円安ドル高が進行、1月初旬には158円台後半に達しました。しかしその後は日銀が追加利上げを実施したことにより日米両国の金利差が縮小、2月の前半には一時150円台後半まで円高ドル安が進みました。その後も修正を繰り返しながら円高ドル安トレンドが継続、3月上旬には米国がカナダ、メキシコへの関税賦課を実施すると表明したことから146円台半ばまで円高ドル安が進行しました。その後は堅調な米国経済指標を背景に151円台まで反発したことから、委託売買高が増加しました。取引所為替証拠金取引の委託売買高は、前年同期比9.3%増加となり、受入手数料(取引所為替証拠金取引)363百万円(前年同期比26.4%増)となったものの、取引所株価指数証拠金取引の受入手数料減少が、金融商品取引部門の国内取引手数料収入が前年同期比4.5%減少したことの主因となっております。

 このような結果、当連結会計年度の経営成績は、金融商品取引業の受入手数料は前連結会計年度に比べ減少したものの、トレーディング損益が27百万円の利益(前年同期は16百万円の損失)、商品デリバティブ取引業の受入手数料は前連結会計年度に比べ増加したことにより、営業損益、経常損益ともに利益を計上、親会社株主に帰属する当期純利益は1,915百万円(前年同期は1,430百万円の利益)を計上しました。

 当社の収益の柱は、商品デリバティブ取引業及び金融商品取引業の2つに分けられます。収益比率では、前連結会計年度に引続き、金を中心とした商品デリバティブ取引業の手数料収入が収益の大きな割合を占めました。手数料収入のおおよその割合は商品デリバティブ取引業が79%、金融商品取引業が21%となっております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社の当連結会計年度末における連結ベースのキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。また、株主還元につきましては、「第2「事業の状況」」「第4「提出会社の状況」」に記載しております。

 当社の資金需要を満たすための資金は、原則として、営業活動によるキャッシュ・フローを財源としますが、巨額の資金需要に対応する場合などは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保、財務の健全性及び安定性を維持するため、銀行等から借入を行う方針です。資金調達を行う際は、期間や国内外の市場金利動向総合的に勘案しながら最適な調達を実施しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

(繰延税金資産)

繰延税金資産は、将来の事業計画に基づく課税所得の発生時期及び金額によって認識し、繰延税金負債は、将来加算一時差異について認識しております。当該課税所得の見積りは、将来の不確実な経済条件の変動などによって影響を受ける可能性があり、実際に発生した課税所得の時期及び金額が見積りと異なった場合、繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。

(訴訟損失引当金)

訴訟損失引当金の認識は、商品取引事故及び金融商品取引事故等による損失に備えるため、損害賠償請求等に伴う損失の見込額のうち、商品取引責任準備金及び金融商品取引責任準備金の期末残高を勘案して訴訟損失引当金を計上しておりますが、当社に対する新たな訴訟の提起や判決等により見積りと異なった場合、訴訟損失引当金の金額に重要な影響を与える可能性があります。

なお、重要な会計上の見積りについての詳細は「第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」「注記事項」の(重要な会計上の見積り)」に記載されております。

また、連結財務諸表の作成のための重要な会計基準等は「第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」「注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。