第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1)経営方針

当社が行っている不動産担保ローン事業は、不動産市況の影響を受けやすいため、担保価値の下落による貸倒リスクをいかに抑えていくかが重要となります。また、地価の上昇局面においては、ビジネスチャンスは広がりますが、反落した場合のリスクを常に意識した経営が必要です。

そのため、当社では好況時、不況時にかかわらず、貸倒れを抑えたローコスト経営を堅持することで、着実な成長を続けていくことを基本方針としております。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

中長期に亘って当社が成長を続けていくためには、財務の健全性に加え、積極的な営業展開も必要不可欠です。

当社においては、不動産担保ローン事業を中心として、隣接事業である信用保証事業及び不動産賃貸事業を行い、収益基盤の多様化を図っております。

今後も、経営環境の変化に柔軟に対応するための体制を構築し、不動産担保ローン事業で培ったノウハウを活用した収益基盤の強化及び多様化を目指してまいります。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題等

当社が行っている不動産担保ローン事業は不動産市況の影響を受けやすいため、その動向に留意する必要があります。本報告書提出日現在においては、雇用・所得環境の改善等により、国内景気は緩やかな回復を維持しているものの、物価上昇の継続やアメリカの通商政策の影響等により、先行き不透明な状況が続いております。そのような経営環境ではありますが、従来からの基本方針である「債権の健全性」を重視し、貸倒れを抑えたローコスト経営を堅持することで、着実な成長を続けてまいります。

なお、当社が対処すべき課題は以下のとおりです。

 

① 知名度向上による企業ブランド力の強化

当社はインターネット広告及び交通広告を中心にプロモーション活動を展開し、企業認知度及びブランド力の向上を図っております。今後は、従来通りの地道な活動に加え、新たな広告媒体の導入等により、企業認知度及び商品の有用性の積極的なプロモーション活動を行い、企業ブランド力の強化を図っていく所存です。

 

② 企業体質の強化

当社はお客様の企業採算に乗る金利での資金供給を経営の基本方針にしております。この方針に基づき、調達コストとお客様への貸出利率のバランスを取りつつ、優良な顧客の開拓を積極的に行い、信用コストを抑えた良質な営業貸付金残高の積み上げを行ってまいります。

資金調達面におきましては、金融機関との取引拡大に加え、市場から直接調達する等、調達方法の多様化により財務内容の安定性を高め、企業体質の強化を図ってまいります。

 

③ 人材の育成

当社の財産は社員であり、当社が健全に成長していくためには、会社の経営理念をよく理解し、ロイヤルティが高い優秀な社員の育成が必須と認識しております。

そのため、社員の行動原理・原則を記した「企業行動憲章」の制定のほか、キャリアに応じた階層別研修を実施する等、人材育成の体制を構築しております。

このような体制の下、業務遂行に必要な知識や技術の習得及びコンプライアンスの徹底を図り、高い専門性と倫理観を兼ね備えた人材となるよう育成を行っております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1)サステナビリティに関するガバナンス及びリスク管理

① ガバナンス体制

当社は、サステナビリティを巡る課題への対応は、企業の存在と活動に必須の要件であるとの認識の下、自主的に行動するよう努めることを「アサックス企業行動憲章」において宣言し、取締役会を中心とした管理体制を整備してサステナビリティ経営への取組強化を図っております。

 

② リスク管理

「リスク管理規程」に基づき、リスク管理責任者の選定及びリスク評価体制の整備を行っており、日常的モニタリングにおいて重大なリスクを認識した場合は、都度役員ミーティングで協議することとしております。また、リスク評価の結果については3ヶ月に一度取締役会へ報告することとしており、取締役会においてリスクの検証及び対応策の審議・検討を行い、その結果を経営戦略やリスク管理に反映させる体制としております。

 

(2)戦略

① 当社における取組

当社は、サステナビリティ経営の推進を重要課題と位置づけ、「事業活動を通した社会課題解決への貢献」への取り組みを推進しております。具体的には当社の不動産担保融資を通じたお客様の支援により、経済、社会及び技術の進展に貢献するほか、クールビズの実施等による地球温暖化対策及び節電への取り組み、多様なライフスタイルに対応するためのリモートワーク環境の整備、移動手段としての社有車を削減し公共交通機関・自転車の使用を促進する等の取り組みを行っております。

現状では事業環境、企業規模等を考慮すると、中・長期にわたる戦略の策定や大規模な投資を行うことは現実的ではないため、特段の指標を用いたリスクと機会の特定及び定量的な目標の設定は行っておりませんが、主要事業である不動産担保融資を通じた取組を一層強化する他、リスク評価を行う過程で認識したリスクに対する対応及び戦略を継続して検討し、重要性が増した場合には具体的な目標を策定し開示いたします。

なお、現段階で認識しているリスク及び機会並びに当該リスク及び機会が当社の事業活動に与えると想定される影響は下記のとおりです。

区 分

リスク及び機会

想定される影響

移行リスク

政策・法規制の強化

新たな規制の導入や新税制等によるコスト増大

情報開示及び対応の不足による企業価値毀損

気候変動対応等に関する情報開示の不足による企業評価の低下や株価の下落

物理的リスク

自然災害の発生及び激甚災害の頻度の上昇

当社営業エリアにおける自然災害の発生による営業店舗の機能不全

当社の顧客が被災し、事業や業績に影響が及んだ場合の信用コストの上昇

自然災害に起因した不動産担保の価値毀損による信用コストの上昇

気候変動に起因する感染症等の増加

パンデミックの発生による当社営業店舗の機能不全

当社の顧客の事業や業績に及ぼす影響による信用コストの上昇

機会

資金ニーズの増加

気候変動対策に係る資金需要の増加等、融資先その他ビジネス機会の増加

企業価値の向上

サステナビリティ経営の強化及び情報開示の充実による企業価値の向上

 

 

② 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針

当社が中長期に亘って成長を続けていくためには、会社の経営理念をよく理解し、ロイヤルティが高い優秀な社員の確保及び育成が必須と認識しており、従業員の賃金体系の見直しや社員研修の充実等の人的資本への投資を積極的に行っております。

人材の確保に当たっては、人材の多様性が中長期的な企業価値向上に資するとの認識のもと性別、年代、国籍等を問わず、企業力を高めるための経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観を持った人材の確保に努めております。

育成に当たっては、社員は会社の重要な財産であるとの認識のもと、社員の行動原理・原則を記した「企業行動憲章」の制定のほか、キャリアに応じたOJT研修及び階層別研修の実施、外部研修への参加費用の支援等、人材育成の体制を構築し、知識や技術の習得及びコンプライアンスの徹底を図り、高い専門性と倫理観を兼ね備えた人材となるよう育成を行っております。

また、全ての従業員が安心して活躍できる環境を整備すべく、公平な人事評価を行う体制及び内部通報制度を充実させるほか、とりわけライフスタイルの変化が激しい女性従業員に関しては、個別の事情を考慮した勤務条件の設定等で柔軟な働き方が可能となるよう配慮すると同時に、子育てと仕事の両立を支援すべく育児休業や短時間勤務制度等の積極的な取得の推進、職域の多様化及び社内の意識改革を図る等、ワーク・ライフバランスの実現に向けた取り組みを行っております。

 

(3)人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標及び目標

当社における従業員の採用に当たっては、企業力を高めるための経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観を持った人材の確保を最重要視すると同時に、性別、年代、国籍等の多様性の確保に配慮した人材の採用を推進しております。とりわけ近年は、女性従業員比率及び女性管理職比率を高めることに注力する等女性活躍に関する取り組みを行っており、積極的な女性従業員の採用及びワーク・ライフバランスの実現に向けた職場環境の整備に努めております。

しかしながら、管理職としての経験・技能の習得には概ね5年から10年程度の期間を要し、新卒採用者が採用人数の大部分を占める現状においては、女性管理職比率の急速な向上は困難な状況にあります。一方で、全従業員に占める女性従業員比率は、2022年3月期末に3割を超える水準となって以降、毎期徐々に向上しており、今後の育成による管理職候補者の増加と職場環境の改善による人材の定着が期待されます。

今後については、新卒採用者の育成と並行して即戦力となり得る中途採用にも注力し、多様性の確保に向けた以下の目標を設定し、継続して改善を進めてまいります。

 

(女性活躍に関する指標及び目標)

 

2022年3月期末

2023年3月期末

2024年3月期末

2025年3月期末

2030年3月期末

目標

女性従業員比率

30.0%

31.7%

34.4%

36.8

35%程度

女性管理職比率

3.1%

3.3%

3.6%

4.0

10%程度

 

3【事業等のリスク】

以下に記載いたしました「事業等のリスク」は、当社が把握している情報に基づく想定及び見解を基に当社の事業展開上リスクとなる可能性があると考えられる主要な事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資家への積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存です。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1)市場環境の変化に関するリスク

① 不動産市況の変化に伴うリスク

当社の行う不動産担保ローンのビジネスモデルは不動産市況の影響を受けやすいため、不動産市況が悪化した場合、担保不動産の価格下落を受け新規の貸付が減少するリスクが高まることにより、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 貸付債権の悪化に伴うリスク

不動産市況が悪化して地価が下落した場合には、担保不動産の価値の目減りによって、債権の与信が悪化する可能性があります。当社は、貸付における厳格な与信判断及び途上与信管理における債権メンテナンス(担保不動産の再評価)に注力し、健全な債権内容の維持に努めております。

しかしながら、今後不動産市況が悪化した場合、担保不動産の価格下落による担保不足の貸付債権の増加リスク及び顧客の返済能力の低下による支払遅延リスクが高まることにより、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 貸倒リスクについて

当社の不動産担保ローンは、概ね1年から5年の期間でお客様に融資いたしております。担保物件の多くは居住用不動産ですが、景気動向、金利動向、地価動向等によって価額の影響を受けます。

また、担保の一部には収益不動産がありますが、同様に金利動向、賃貸の需給バランスによる賃料相場等により価額の影響を受けます。

当社は、商業不動産、大型不動産、特殊な用途の不動産等の需要が限定的な不動産は原則として担保とせず、一顧客当りの平均貸付額は20,000千円台と小口分散を図っておりますが、不動産価額の変動によっては貸倒れが増加し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社の最近5事業年度における営業債権に係る貸倒引当金及び貸倒損失は以下のとおりです。

 

 

第52期

(2021年3月期)

第53期

(2022年3月期)

第54期

(2023年3月期)

第55期

(2024年3月期)

第56期

(2025年3月期)

貸倒引当金

(千円)

(貸倒引当率)

79,700

(0.11%)

86,300

(0.11%)

98,000

(0.11%)

105,500

(0.11%)

113,400

(0.11%)

貸倒償却額

(千円)

(貸倒償却率)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

営業債権

期末残高

(千円)

72,205,083

78,224,473

88,641,883

95,378,759

102,583,893

(注)1.貸倒引当率=営業債権に係る貸倒引当金/営業債権期末残高

2.貸倒償却額=営業債権に係る貸倒引当金目的取崩額+貸倒損失額

3.貸倒償却率=貸倒償却額/営業債権期末残高

 

④ 競争の変化に伴うリスク

当社の主要事業である不動産担保ローン事業には、対象とする不動産の価値判断や顧客リスク判断等のノウハウが必要であり、他業種からの参入、或いは同業種からの当市場への参入は少なからず困難が伴うものと考えております。

しかしながら、今後、他業種、或いは金融機関を含む同業種からの当市場への参入により顧客獲得競争が激化し、優良顧客の獲得が十分にできなかった場合又は優良顧客を奪われた場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 業界全般及び当社に対するネガティブな報道に伴うリスク

当社及びローン業界に対するネガティブな報道や悪質な風評等により、それが事実であるか否かに拘らず、契約解消の増加や顧客の減少などにより、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)法的規制について

当社の不動産担保ローン事業は、「貸金業法」、「利息制限法」及び「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(以下「出資法」という。)の適用を受けております。

当社は、コンプライアンスを経営の最重要課題の一つとして、社内規程の整備や役員及び従業員への啓蒙活動を通じて、その強化に取り組んでおります。しかしながら、当社の役員及び従業員の故意又は過失により法令違反が発生した場合は、お客様との信頼関係を損なう可能性があります。また、法人として法令違反があった場合は、監督当局から業務の制限や停止等の命令並びにお客様からの当社に対する訴訟の提起及び損害賠償支払いの発生等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

① 貸金業法の業務規制に伴うリスク

当社は「貸金業法」第3条に基づき、1983年12月20日付で関東財務局の貸金業登録を受け、3年ごとに更新登録を行っております(登録番号 関東財務局長(14)第00035号)。この貸金業登録により各種の業務規制と、これらの規制に違反した場合の行政処分(業務の全部又は一部の停止並びに貸金業登録の取り消し等)並びに罰則等の措置が設けられております。

更に、「貸金業法」の施行に当たって、監督官庁である金融庁が定める「貸金業者向けの総合的な監督指針」及び日本貸金業協会が定める「貸金業の業務運営に関する自主規制基本規則」の適用も受けており、貸金業法における行動指針が定められております。

当社は「貸金業法」、「貸金業者向けの総合的な監督指針」及び「貸金業の業務運営に関する自主規制基本規則」の遵守を徹底しており、現時点において法令に抵触する事実はないものと認識しておりますが、今後何らかの理由により当社並びに当社の役員及び従業員が法令に抵触した場合、業務の全部若しくは一部の停止が命ぜられ、又は登録が取消され、当社の事業活動に支障を来たすとともに、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、今後の法律改正等による業務規制の変更等で業務が制限された場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 貸付金利の規制に伴うリスク

「出資法」は段階的に上限金利の引き下げが行われ、当事業年度末現在における上限金利は出資法は年20%、利息制限法は年15%(貸付元本額により年20%~15%。当社の場合は貸付元本額が1百万円を超過しますので、利息制限法で規定されている年15%以下の金利が上限として適用されます。)となっております。

当社は既に上限金利以下で貸付を行っており、当社の業績に特段の影響は生じないものと考えておりますが、今後更なる上限金利の引き下げが行われた場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)顧客情報の管理に関するリスク

当社の不動産担保ローン事業は、「個人情報の保護に関する法律」及び「個人情報の保護に関する法律施行令」、更に金融庁告示による「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」及び「金融分野における個人情報保護に関するガイドラインの安全管理措置等についての実務指針」の適用を受けており、当社は同法等における個人情報取扱事業者に該当し、個人情報の適正な利用・管理が義務付けられております。

当社は「個人情報保護および安全管理に関する取扱規程」及び「個人情報保護および安全管理に関する運用細則」を制定し、社内管理体制を整備するとともに、システム面においても、データの管理、アクセス権の制限等、セキュリティの強化を図ってまいりました。同時に、コンプライアンス体制を強化し社員一人一人の意識を高める啓蒙活動を通じて個人情報や機密情報の管理の周知徹底を図っております。当社は上記法令等の遵守を徹底しており、現時点において法令に抵触する事実はないものと認識しております。

しかしながら、万一、何らかの理由により個人情報の漏洩又は同法に違反した場合には、同法による制裁を受けるだけではなく、社会的信用を失墜することになり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)資金調達について

① 資金調達状況

当社は、営業貸付金を中心とした事業運営全般に対して必要となる資金については、銀行をはじめとした金融機関からの借入により資金調達を行っておりますが、当社の主要な借入先である金融機関が金融環境等の事情により当社への貸出方針を変更しないという保証はありません。

当社は現状では資金の調達が著しく困難ではないものと考えておりますが、今後金融市場の不安定化が生じた場合には、資金調達費用の増加や、必要資金の調達が困難となるおそれがあり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 金利上昇によるリスク

調達金利は市場環境等により変動いたしますが、当社では金利の動向を見据えて調達金利の固定化、金利キャップ、或いは金利スワップ等を活用することにより金利上昇リスクの軽減を図っていく方針です。

今後、金利の上昇によって資金調達コストが上昇した場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 資金調達に係る財務制限条項について

当社の借入の一部には、財務制限条項が付されているものがあります。現状ではこれに抵触する可能性は低いものと認識しておりますが、今後何らかの事由により事業環境が激変し、財務制限条項に抵触した場合には、期限の利益を喪失し、当該借入を一括返済することとなり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)システムリスク及びオペレーショナルリスク

当社は、「情報セキュリティ基本方針」及び「業務処理パソコンおよび情報システム管理規程」等によるシステムリスク管理の基本方針に基づき、システム障害やコンピューターの不正使用等に関するセキュリティの強化に努めております。しかしながら、外部からの不正アクセスや火災、回線故障等の障害を受けた場合、コンピューターシステムの損害規模によっては当社の業務に支障を来たし、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社ではコンプライアンス体制の整備、強化に努めておりますが、当社の役員及び従業員が正確な事務処理を怠ることや、事故・不正等を起こすことによる損失の発生等により業務遂行に支障を来たすおそれがあり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)イベントリスク

当社は当事業年度末現在、本店及び6支店で事業活動を行っており、テロや災害等が発生した場合、事業活動の全部又は一部を休止せざるを得なくなるおそれがあります。その結果、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)人材の育成と確保

当社の不動産担保ローン事業は、金融と不動産に関する専門的な知識を必要とするため、キャリアに応じた階層別研修や外部講師を招いての定期的な講習の実施等、採用した人材の育成に注力しております。しかしながら、採用した人材が十分に戦力となり得ない場合や、優秀な人材が採用できない場合、又は外部に流出した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)自然災害について

当社の営業店舗は東京都を中心とする首都圏に集中しております。したがって、この地域で大規模な地震や台風等による風水害が発生した場合、又は他地域において発生した大規模な地震や風水害等においても、その直接的、間接的影響により正常な営業活動を行うことができなくなる可能性があり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の増加等により、緩やかな回復を維持しました。一方で、物価上昇の継続、為替・金融資本市場の変動、アメリカの通商政策の動向等の影響が海外・国内景気の下振れリスクとなっており、先行き不透明な状況が続いております。

不動産金融市場においては、都心近郊における住宅地・商業地の地価水準は堅調に推移しているものの、今後については前述のリスク等が不動産の流動性や価格に与える影響を注視していく必要があります。

このような環境の下、当社においては、従来通り「債権の健全性」を重視して債権内容の維持に努めつつも、積極的な顧客開拓を行ってまいりました。

その結果、当事業年度末における営業貸付金残高は、前事業年度末の95,378,759千円から7,205,134千円

(7.6%)増加の102,583,893千円となりました。

当事業年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりです。

 

イ.財政状態

(a)資産の部

流動資産

当事業年度末における流動資産は、前事業年度末の101,576,738千円から6,923,728千円(6.8%)増加の108,500,466千円となりました。これは主として、現金及び預金が296,554千円(5.4%)の減少となったものの、営業貸付金が7,205,134千円(7.6%)の増加となったこと等によるものです。

 

固定資産

当事業年度末における固定資産は、前事業年度末の7,970,072千円から1,801,470千円(22.6%)増加の9,771,542千円となりました。これは主として、投資その他の資産のその他に含まれる満期保有目的債券が償還等により138,552千円の減少となったものの、海外子会社への増資に伴い、関係会社株式が1,799,520千円(89.4%)の増加となったこと及びシステム投資を行ったことにより、ソフトウエア仮勘定が102,795千円の増加となったこと等によるものです。

 

(b)負債の部

流動負債

当事業年度末における流動負債は、前事業年度末の18,447,668千円から3,236,551千円(17.5%)増加の21,684,219千円となりました。これは主として1年以内返済予定の長期借入金が3,194,766千円(18.6%)の増加となったこと等によるものです。

 

固定負債

当事業年度末における固定負債は、前事業年度末の44,771,958千円から2,761,816千円(6.2%)増加の47,533,774千円となりました。これは主として、長期借入金が2,643,156千円(6.1%)の増加となったこと等によるものです。

 

(c)純資産の部

配当金の支払い659,520千円があった一方、当期純利益を3,386,351千円計上したことにより、利益剰余金が前事業年度比2,726,831千円(6.2%)の増加となり、当事業年度末における純資産は、前事業年度末の46,327,184千円から2,726,831千円(5.9%)増加の49,054,015千円となりました。なお、自己資本比率は41.5%(前事業年度末は42.3%)となりました。

 

 

ロ.経営成績

(a)営業収益

営業貸付金利息は、期中平均貸付金残高の増加及び平均貸付金利の上昇等が主因となり、前事業年度比540,275千円(11.0%)の増加となりました。

その他の営業収益は、期中貸付額・期中回収額がともに増加したことにより、手数料収入が115,601千円(11.7%)の増加、解約違約金が79,076千円(24.3%)の増加となったこと等が主因となり、前事業年度比224,838千円(12.3%)の増加となりました。

以上により、当事業年度における営業収益は前事業年度比765,113千円(11.3%)増加の7,519,934千円となりました。

 

(b)営業費用

金融費用は、期中平均借入金残高の増加及び平均借入金利の上昇に伴う支払利息の増加等が主因となり、前事業年度比149,950千円(33.0%)の増加となりました。

売上原価は、不動産賃貸原価の減少により、前事業年度比16,139千円の減少となりました。

その他の営業費用は、プロモーション活動の強化により広告宣伝費が67,828千円(34.5%)の増加となったことに加え、店舗の統合・移転に伴い、その他に含まれる消耗品費・修繕費の増加となったこと等が主因となり、前事業年度比163,466千円(11.3%)の増加となりました。

以上により、当事業年度における営業費用は前事業年度比297,278千円(14.8%)増加の2,305,180千円となりました。

 

(c)営業利益

前述のとおり、当事業年度における営業収益が前事業年度比765,113千円(11.3%)の増加、営業費用が前事業年度比297,278千円(14.8%)の増加となったことから、営業利益は前事業年度の4,746,919千円に比べて467,835千円(9.9%)増加の5,214,754千円となりました。

 

(d)経常利益

営業外収益は、前期計上したデリバティブ評価益及び為替差益の剥落等が主因となり、前事業年度比301,859千円(88.2%)の減少となりました。

営業外費用は、為替変動に伴う為替差損の計上等により、前事業年度比53,627千円の増加となりました。

以上により、経常利益は前事業年度の5,061,667千円に比べて112,348千円(2.2%)増加の5,174,016千円となりました。

 

(e)特別利益、特別損失

特別利益、特別損失ともに当期純利益に大きな影響を与えるものはありませんでした。

 

(f)当期純利益

法人税等合計は、前事業年度比25,886千円(1.5%)の増加となり、当事業年度における当期純利益は、前事業年度の3,289,170千円に比べて97,180千円(3.0%)増加の3,386,351千円となりました。

 

なお、当社は不動産担保ローン事業の単一セグメントとしており、その他の事業については重要性が乏しいため、セグメントに関連付けた記載は行っておりません。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末に比べて296,554千円減少し、5,173,296千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは3,742,539千円の支出となりました。

これは主として、税引前当期純利益5,192,209千円による収入等があったものの、営業貸付金の増加額7,205,134千円による支出に加え、法人税等の支払額1,853,895千円による支出を計上したこと等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは1,709,806千円の支出となりました。

これは主として、海外子会社への増資に伴う関係会社株式の取得1,799,520千円による支出があったこと等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは5,180,185千円の収入となりました。

これは、配当金の支払額657,736千円による支出があったものの、長期借入金の純増加額5,837,922千円による収入があったことによるものです。

 

③ 特定金融会社等の開示に関する内閣府令に基づく貸付金(営業貸付金)の状況

「特定金融会社等の開示に関する内閣府令」(1999年5月19日 大蔵省令第57号)に基づく営業貸付金の状況は次のとおりです。

 

イ.貸付金種別残高内訳

貸付種別

当事業年度

(2025年3月31日)

件数

残高(千円)

平均約

定利率

(%)

 

構成割合

(%)

 

構成割合

(%)

消費者向

 

 

 

 

 

無担保(住宅向を除く)

有担保(住宅向を除く)

2,043

36.9

25,295,255

24.6

5.62

住宅向

153

2.8

2,137,070

2.1

5.42

2,196

39.7

27,432,326

26.7

5.60

事業者向

 

 

 

 

 

3,332

60.3

75,151,567

73.3

5.32

合計

5,528

100.0

102,583,893

100.0

5.40

(注)件数は同一顧客の場合でも契約が異なる場合は1件として計算しておりますので、顧客数での表示とは相違があります。

 

 

ロ.調達別内訳

借入先等

当事業年度

(2025年3月31日)

残高(千円)

平均調達金利

(%)

金融機関等からの借入

66,385,455

1.15

その他

 

社債・CP

合計

66,385,455

1.15

自己資本

50,430,438

 

資本金・出資額

2,307,848

(注)「自己資本」は、資産の合計額より負債の合計額を控除し、引当金(特別法上の引当金を含む。)の合計額を加えた額です。

 

ハ.業種別貸付金残高内訳

業種別

当事業年度

(2025年3月31日)

先数

残高(千円)

 

構成割合

(%)

 

構成割合

(%)

製造業

103

2.5

2,531,807

2.5

建設業

167

4.2

3,422,123

3.3

電気・ガス・熱供給・水道業

運輸・通信業

135

3.4

2,456,084

2.4

卸売・小売業、飲食店

363

9.1

9,767,824

9.5

金融・保険業

20

0.5

515,544

0.5

不動産業

220

5.5

14,569,915

14.2

不動産賃貸業

545

13.6

24,718,314

24.1

サービス業

254

6.4

4,925,115

4.8

個人

1,710

42.8

27,432,326

26.8

その他

480

12.0

12,244,836

11.9

合計

3,997

100.0

102,583,893

100.0

(注)先数は顧客数で表示いたしております。

 

ニ.担保別貸付金残高内訳

受入担保の種類

当事業年度

(2025年3月31日)

残高(千円)

構成割合(%)

有価証券

 

うち株式

債権

 

うち預金

商品

不動産

102,583,893

100.0

財団

その他

102,583,893

100.0

保証

無担保

合計

102,583,893

100.0

 

ホ.期間別貸付金残高内訳

期間別

当事業年度

(2025年3月31日)

件数

残高(千円)

 

構成割合

(%)

 

構成割合

(%)

1年以下

113

2.0

3,041,958

3.0

1年超 5年以下

1,992

36.0

49,134,516

47.9

5年超 10年以下

2,367

42.8

42,602,003

41.5

10年超 15年以下

746

13.5

5,978,410

5.8

15年超 20年以下

231

4.2

1,345,829

1.3

20年超 25年以下

70

1.3

336,117

0.3

25年超

9

0.2

145,057

0.2

合計

5,528

100.0

102,583,893

100.0

1件当たり平均期間

4.8年

(注)1.件数は同一顧客の場合でも契約が異なる場合は1件として計算しておりますので、顧客数での表示とは相違があります。

2.期間は約定期間によっております。

 

④ 営業の実績

イ.営業収益の実績

当事業年度の営業収益をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

不動産担保ローン事業

(千円)

7,519,934

11.3

報告セグメント計

(千円)

7,519,934

11.3

合計

(千円)

7,519,934

11.3

 

ロ.営業貸付金増減額及び残高

区分

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

金額(千円)

期首残高

88,641,883

95,378,759

期中貸付額

37,602,814

41,644,435

期中回収額

30,865,938

34,439,301

破産更生債権等振替額

貸倒償却額

期末残高

95,378,759

102,583,893

平均貸付金残高

92,153,544

98,459,594

 

ハ.営業貸付金残高の内訳

利率別貸付金残高内訳

利率別

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

件数

残高(千円)

件数

残高(千円)

 

構成割合

(%)

 

構成割合

(%)

 

構成割合

(%)

 

構成割合

(%)

 0.0%超  4.0%以下

145

2.8

9,735,248

10.2

90

1.6

6,312,171

6.1

 4.0%超  5.0%以下

1,239

23.6

41,114,001

43.1

984

17.8

37,486,736

36.5

 5.0%超  6.0%以下

1,885

35.9

30,628,306

32.1

1,932

34.9

39,352,990

38.4

 6.0%超  7.0%以下

1,261

24.0

10,980,786

11.5

1,939

35.1

17,234,731

16.8

 7.0%超  8.0%以下

667

12.7

2,787,105

2.9

540

9.8

2,111,936

2.1

 8.0%超  9.0%以下

53

1.0

133,310

0.2

43

0.8

85,326

0.1

 9.0%超 10.0%以下

合計

5,250

100.0

95,378,759

100.0

5,528

100.0

102,583,893

100.0

(注)件数は同一顧客の場合でも契約が異なる場合は1件として計算しておりますので、顧客数での表示とは相違があります。

 

ニ.調達実績

借入先別内訳

借入先別

前事業年度

(2024年3月31日)

当事業年度

(2025年3月31日)

調達額

(千円)

返済額

(千円)

期末残高

(千円)

調達額

(千円)

返済額

(千円)

期末残高

(千円)

都市銀行

4,390,000

3,294,992

10,449,618

5,790,000

3,909,994

12,329,624

地方銀行

12,520,000

8,890,531

27,840,415

14,704,000

10,057,884

32,486,531

信託銀行

350,000

305,000

735,000

300,000

295,000

740,000

その他銀行

5,300,000

3,755,000

10,255,000

5,000,000

4,021,800

11,233,200

事業会社

660,000

1,455,000

505,000

950,000

関係会社

2,000,000

2,000,000

証券化借入金

187,500

9,812,500

1,166,400

8,646,100

合計

24,560,000

19,093,023

60,547,533

25,794,000

19,956,078

66,385,455

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、本項に記載した将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものです。従いまして、将来に関する事項には不確実性が内在している、或いはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性がありますのでご留意ください。

 

① 財政状態及び経営成績の分析

財政状態及び経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5[経理の状況] 1財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりです。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

当社の営業活動における資金需要の主なものは営業貸付金を中心としたものであり、当該資金需要については、自己資金及び金融機関からの借入れにより必要資金を調達しております。

また、当社では、貸付予定等を勘案した資金管理を日々行っており、手許流動性と有利子負債との適正バランスを考えながら、資金の効率化を図っております。

なお、当事業年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。