第2【事業の状況】

 本項における経営目標、予測、並びにその他の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、これらの目標や予測の達成及び将来の業績等を保証し又は約束するものではありません。また今後、予告なしに変更されることがあります。

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 2024年度、日本経済は長期にわたるデフレからの脱却が進み、「金利のある世界」への歴史的な転換点を迎えました。株式市場では、新NISAの導入を契機に「貯蓄から投資へ」の流れが加速し、上場企業による資本効率向上を目指したコーポレートアクションが活発化したことで、7月には日経平均株価は史上最高値4万2,224円を記録しました。また、金融政策では、二度の利上げが実施され、政策金利は17年ぶりの水準にまで引き上げられました。

 一方、国内外において既存政権の揺らぎや体制変更が生じ、各国の政策の先行きに不透明感が増すとともに、ロシアによるウクライナへの侵攻や中東情勢の緊迫化などを契機とした地政学的緊張は引き続きリスクとなっています。

当社グループでは、2024年度より3ヵ年のグループ中期経営計画~“Passion for the Best”2026~を始動し、新たな一歩を踏み出しました。グループ経営基本方針として「お客様の資産価値最大化」を掲げ、グループそれぞれの事業領域において、お客様のニーズや課題を深く理解し、お客様の状況や経済環境に応じた最善・最適で質の高いソリューションを提供することで、中長期的なお客様の資産価値及び企業価値の最大化に貢献してまいります。

 中期経営計画の初年度である2024年度は、ウェルスマネジメントビジネスの強化とアセットマネジメントビジネスの高度化を進展させるとともに、顧客基盤の拡充とソリューション機能強化・商品拡充を目指したインオーガニック戦略を実行し、「お客様の資産価値最大化」に向けて着実に前進しました。

 なお、中期経営計画における2026年度の主な数値目標としては、連結経常利益2,400億円以上、連結ROE10%程度、ベース利益(ウェルスマネジメント部門、証券アセットマネジメント、不動産アセットマネジメントの経常利益合計)1,500億円等を定めております。

 

 また、2024年度の状況及び今般の情勢に鑑み、2025年度の大和証券グループ経営方針を下記のとおり定めております。

 

2025年度 大和証券グループ経営方針

 2024年度は、地政学リスクや政治的変動が世界規模で強く意識される中、日本においては、長期にわたるデフレからの脱却が進み、「金利のある世界」への歴史的な転換点を迎えた重要な一年となりました。新NISAの導入を契機に「貯蓄から投資へ」の流れが着実に広がり、企業では資本効率向上を目指したコーポレートアクションが一段と活発化しました。株式市場は年間では下落したものの、7月には日経平均株価が史上最高値の4万2,224円を記録し、さらに、日本銀行が政策金利を17年ぶりの水準に引き上げるなど、日本経済の構造的な変革が一層鮮明になりました。

 こうした中、当社は「お客様の資産価値最大化」を基本方針とする中期経営計画 ~“Passion for the Best” 2026~ を力強く始動しました。連結業績が拡大するとともに当社が重視するベース利益も想定を上回るペースで増加しました。さらに、非連続な成長戦略として、株式会社あおぞら銀行や株式会社かんぽ生命保険をはじめとする外部企業との資本業務提携を実現し、事業基盤の拡充に向けた大きな一歩を踏み出しました。

 2025年度を迎え、世界情勢には依然として不透明感が漂うものの、転換期を迎えたわが国において、当社グループが果たすべき役割と責務は一層重要性を増しています。本年度は、中期経営計画の2年目として、より強固な収益基盤の確立を目指し、以下に掲げる行動計画をスピード感をもって愚直に推進していきます。お客様の不変のニーズである「資産価値最大化」を最優先に掲げ、的確な環境分析と深いお客様理解に基づいた質の高いコンサルティングやソリューションを提供し、資産運用立国・投資大国の実現、さらには、金融・資本市場を通じた豊かな未来の創造に貢献していきます。

 

 2025年度の各事業部門アクションプランは以下のとおりであります。

 

(1) ウェルスマネジメント部門

① お客様に対する深い理解に基づいた最適なコンサルティングの提供によるウェルスマネジメントビジネスのさらなる深化

② 富裕層や法人のお客様の高度なニーズに応えるオーダーメイドで付加価値の高い商品・サービス・ソリューションの拡充及び提供

③ デジタルマーケティングによるお客様に合わせたタイムリーかつ適切なサービス提供体制の深化

④ 外部提携、ワークプレイス(職域)ビジネスによる顧客基盤の拡大

⑤ 銀行ビジネスを活用した顧客基盤の拡大及び、富裕層のお客様向けソリューションの提供

 

(2) アセットマネジメント部門

① 幅広い投資家層に訴求する運用商品・ブランドの確立、魅力的なオルタナティブ商品の展開を通じたさらなる運用残高拡大

② かんぽ生命との資産運用分野における協業を軸にした運用の高度化、国内外における投資顧問ビジネスの基盤構築

③ 不動産アセットマネジメント事業における運用力・物件ソーシング力の強化、運用商品の拡大及びグループ内連携の推進

④ オルタナティブファンドの拡大に向けたパフォーマンスの追求と基盤の構築

 

(3) グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門

① 幅広いお客様ニーズを捉えた多様なプロダクト・高度なソリューションの提供

② ウェルスマネジメント部門をはじめとしたグループ連携の更なる強化によるビジネス基盤の拡大

③ 未上場企業への更なるソリューションの提供及び国内外M&Aの強化

④ 経営資源のリアロケーションを通じた収益性の向上

 

(4) その他(大和総研グループ)

① シンクタンクとしての時宜を得た良質な情報発信による、社会・経済の健全な発展と資産運用立国への貢献

② AI・データサイエンスの活用によるお客様の企業価値最大化への貢献

③ ヘルステック事業を通じた人的資本経営への貢献

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

ガバナンス体制

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1-1.監督体制

サステナビリティに関する戦略及び方針については、取締役会が監督しています。取締役会は、サステナビリティ推進委員会で議論又は執行役会等で審議したサステナビリティに関する戦略及び方針について、取締役会規則に則り必要に応じて報告を受けるとともに、同規則において決議事項として定められた、経営の中核となる事項や取締役会が重要と認めた事項について決定しています。

当社グループの経営ビジョン2030Visionはサステナビリティに関する基本方針を含んでおり、中期経営計画とあわせて取締役会でこれを決定しています。その他、これまでに、例えば環境・社会関連ポリシーフレームワークやカーボンニュートラル宣言、人権方針の策定又は改定について決定しています。また、リスクアペタイト・ステートメントにおいて、2021年度より気候変動リスクを明記し、シナリオ分析に基づく損失額の試算結果も踏まえ、適切に特定・評価し効果的に管理しています。

2023年度の取締役会で決定された中期経営計画~“Passion for the Best”2026~(2030Visionの改定を含みます)では、気候変動や人的資本を含むサステナビリティもトピックとして取り上げられました。同計画で定められたサステナビリティKPIに関しては、その後の取締役会で、決算の承認や同計画のレビューの際に確認等を行っています。その他に、2024年度の取締役会では、気候関連については、気候関連開示内容の報告、環境・社会関連ポリシーフレームワークの改定、サステナビリティ推進の現状報告、機関投資家向けサステナビリティミーティングの報告の計4回、人的資本については健康経営に関する報告を1回、議題として取り上げています。

取締役会には、サステナビリティに深い知見を有する社内外取締役が在籍しており、サステナビリティ課題への取組みに対し実効性の高い監督を行うことができる体制となっています。

また、サステナビリティの取組みに関する役員のインセンティブを強化するため、サステナビリティKPIを業績連動型報酬の評価体系に組込んでいます。サステナビリティKPIとしては、SDGs関連債リーグテーブル、エンゲージメントサーベイスコア及び温室効果ガス(GHG)排出量等が含まれています。

 

1-2.執行体制

① サステナビリティ推進委員会

 サステナビリティに関する戦略及び方針について、代表執行役社長CEOを委員長とするサステナビリティ推進委員会にて定期的に議論を行っています。これまでに、例えば環境・社会関連ポリシーフレームワークやカーボンニュートラル宣言の策定・改定等について議論を行っています。同委員会には、取締役会で承認された執行役規程に基づきサステナビリティ推進を統括するサステナビリティ担当や、複数の社内取締役を含む役員、さらにサステナビリティの主要テーマに専門的知見を有する社外委員3名が参加しています。同委員会での議論内容については、適宜、執行役会に報告され審議・決定を行います。

 

② グループリスクマネジメント会議

 気候変動を含むリスク管理に係る方針や施策については、執行役会の分科会であり、代表執行役社長CEOを議長とし、リスク管理の責任者である最高リスク管理責任者(CRO:Chief Risk Officer)が出席するグループリスクマネジメント会議において議論しています。気候シナリオに基づく定量分析結果等については、毎年、同会議への報告が行われた後、サステナビリティ推進委員会での議論を経て、執行役会に報告されています。

 

③ ダイバーシティ&インクルージョン推進委員会

 2030Visionにおいて、ダイバーシティ&インクルージョンをマテリアリティの一つとして位置づけ、競争力の強化に向けた多様性・専門性の確保を目指し取り組んでいます。2022年度よりダイバーシティ&インクルージョン推進委員会を設置し、代表執行役社長CEOが委員長となり、半期に一度、全国の部室店から社員をアドバイザーとして選任し、議論を行っています。

 

④ グループ横断的ワーキンググループ

 グループ横断的にサステナビリティを推進する体制として、大和証券各本部・主要なグループ会社においてサステナビリティ責任者を設け、かかる責任者のもとで、サステナビリティKPIのモニタリングやサステナビリティ関連ビジネスの推進を行うワーキンググループ(WG)を設置しています。同WGで議論された内容については、適宜、サステナビリティ推進委員会に報告する体制となっています。

 

(2)戦略

(気候変動)

2-1-1.気候関連のリスクと機会についての認識

 当社グループでは、気候変動問題を解決すべき喫緊の課題であると同時にビジネスチャンスと捉え、事業に影響を与えると見込まれる気候関連のリスク(移行リスク/物理的リスク)を整理するとともに、脱炭素社会の実現に向けて、本業である金融商品・サービスの開発・提供を通じたビジネス機会を整理しています。このようなリスクと機会の認識に基づく対応方針を検討の上、気候レジリエンスを高めるための戦略的な取組みを推進していきます。

 

2-1-2.気候関連リスク

 当社グループでは、気候シナリオに基づく分析を行い、事業に負の影響を与えると見込まれるリスクを整理しています。

 主な移行リスクの例として、カーボンプライシング等の政策の変化による投資・運用先等におけるコスト増加及びこれに伴う収益悪化(政策/法律)、エネルギー関連技術の変化による投資・運用先等のコスト増加及びこれに伴う収益悪化(技術)、脱炭素社会への移行に伴うファンド保有資産の価値低下や残高減少(市場)、気候変動対策の取組み不足や環境負荷の高い事業に係る投資・引受に伴う評判悪化(レピュテーション)等が挙げられます。

 主な物理的リスクの例として、豪雨や巨大台風の被災による太陽光/風力発電設備等の投資物件の価値低下や売却機会の減少及びこれらに伴う収益悪化(急性/慢性)、自然災害の激甚化による金融システム障害及び当社グループの各事業拠点やデータセンター等の被災による事業中断(急性/慢性)等が挙げられます。

 これらの気候関連リスクの認識とともに、リスクが事業に及ぼす影響や発生頻度等を踏まえた対応策を検討の上、戦略的な取組みを進めています。

 

気候関連リスクの例

リスクタイプ

気候関連リスク

時間軸

戦略的な取組み例

移行

政策/

法律

カーボンプライシング等の政策の変化による、投資・運用先等におけるコスト増加、及びこれに伴う収益悪化

中~長期

①サステナブルファイナンスの推進

④サステナビリティを意識したソーシング・投資推進

⑤サステナビリティ関連のソリューション提供

⑥自社のカーボンニュートラル実現

カーボンプライシングや情報開示義務化等への対応に伴う、当社グループのコスト増加

短~長期

技術

エネルギー関連技術の変化による、投資・運用先等のコスト増加、及びこれに伴う収益悪化

短~長期

新技術や代替技術の導入に伴う、当社グループのコスト増加

中~長期

市場

脱炭素社会への移行に伴う、ファンド保有資産の価値低下や残高減少

中~長期

③サステナビリティを意識した商品・サービスの開発や投融資の推進

⑦ステークホルダーとのエンゲージメント強化

経済及び産業の停滞・収縮や金融市場の変化による、当社グループの保有する炭素関連資産の価値低下や売却機会の減少

短~長期

レピュテーション

気候変動対策の取組み不足や、環境負荷の高い事業に係る投資・引受に伴う評判悪化

短~長期

⑥自社のカーボンニュートラル実現

物理的

急性/

慢性

異常気象や風水害による、取引先や投資・運用先等の復旧費用の増加、及びこれらに伴うファンド保有資産の価値低下や残高減少

中~長期

①サステナブルファイナンスの推進

④サステナビリティを意識したソーシング・投資推進

⑦ステークホルダーとのエンゲージメント強化

豪雨や巨大台風の被災による、太陽光/風力発電設備等の投資物件の価値低下や売却機会の減少、及びこれらに伴う収益悪化

短~長期

猛暑や異常気象による、お客様の健康被害の増加や就労の制約、及びこれらに伴う収益機会の減少

短~長期

異常気象の発生による、当社グループ役職員の健康被害の増加、就労の制約、及びこれらに伴う収益悪化

中~長期

減災対策やBCPの策定

自然災害の激甚化による金融システム障害及び当社グループの各事業拠点やデータセンター等の被災による事業中断

短~長期

 

時間軸については、当社グループの経営計画やグローバルの基準との整合性に鑑みて定義しています。具体的には、中期経営計画期間が3年であることを勘案し、それぞれ短期を3年未満、中期を3年以上5年未満、長期を5年以上としています。

 

2-1-3.気候関連リスクを踏まえた戦略のレジリエンス評価

 当社グループは、気候関連リスクが事業に及ぼす影響を認識するとともに、将来の気候関連の変化や進展及び不確実性に対するレジリエンス評価として、シナリオ分析を行っています。シナリオの詳細と分析にあたっての前提は以下の通りです。
 

シナリオ分析の前提

項目

内容

参照シナリオ

NGFSによる気候シナリオ

対象期間

2050年まで

対象地域

主に国内

分析範囲

移行リスク・物理的リスクが当社グループに与える影響

分析時期

2025年5月

 

 

想定シナリオ

 

(1)秩序ある移行

(2)無秩序な移行

(3)遅延・不十分

(4)ホット・ハウス・ワールド

NGFSによる
気候シナリオ

Net Zero 2050

Delayed Transition

Fragmented World

Current Policies

シナリオ概要

厳格な排出削減政策とイノベーションにより、気温上昇を1.5℃未満に抑制し、2050年に世界のGHG排出量ネットゼロを目指す

2030年までに排出量がほとんど減少しない。気温上昇を2℃に抑えるには強力な政策が必要。CO2除去は限定的

2030年までに排出量がほとんど減少せず、それ以降の対策も足並み乱れて不十分。気温上昇を抑えられず

現在実施されている政策のみが保持される想定。物理的リスクが高くなる

政策導入

迅速かつ円滑

遅延

遅延かつ不十分

現行政策のまま

マクロ経済

動向

比較的小幅な

GDP減少

比較的大幅な

GDP減少

比較的大幅な

GDP減少

比較的大幅な

GDP減少

エネルギー

の使用

比較的大幅に減少

比較的大幅に減少(2030年代以降)

比較的大幅に減少(2030年代以降)

比較的大幅に増加

技術変化

速い

遅い/速い

遅い/不十分

遅い

気温上昇

(2050年)

約1.5℃

約1.5℃

約2.5℃

約3℃

CO2排出

削減(順調)

削減(逆風有)

削減(不十分)

現状の削減維持

シナリオ特性

移行

リスク

物理的

リスク

機会

※ NGFS Climate Scenarios Phase Vを参考に作成

 

① 分析結果

 経済及び産業の停滞・収縮、金融市場の変化(株価下落、クレジットリスク増大等)、豪雨・水害等の被害、並びに異常高温による健康被害等が、相対的に懸念される要素として挙げられました。シナリオに当てはめると、移行リスクはCO2排出削減に伴い経済・社会が混乱する(2)無秩序な移行及び(3)遅延・不十分において、物理的リスクはCO2排出削減が遅れる(4)ホット・ハウス・ワールドにおいて、相対的に顕在化すると見込まれます。

 一方で、エネルギー転換等が事業に及ぼす影響については、化石資源の削減に伴う既存事業への負の影響と、再エネ等の新エネルギーの増加に伴う新たな事業機会という正の影響が混在しており、全体では中立に近い要因と位置付けられます。なお、転換に伴う費用や税等の負担に応じて影響が変化すると見込まれます。また、CO2排出削減等の気候対策への取組みは企業のレピュテーションを左右する可能性があり、ビジネス全般に間接的に影響を及ぼすと見込まれます。

 このように、当社グループは、エネルギー転換等、気候事象と関連の強い社会・経済的な要素について、事業への正の影響と負の影響を総合的に考慮した結果、一定の気候レジリエンスを有していると考えられます。さらに、負の影響を軽減するために、豪雨・水害等を直接被るリスクに対して減災対策や事業継続計画(BCP)を策定するとともに、気候対策を着実に実行してレピュテーションを維持することにより、マクロ経済等が停滞する場合でもその負の影響を抑えることが可能と考えられます。

 

② 今後の対応

 今回のシナリオ分析は、現時点で得られる情報やデータをもとに仮定を設定し、分析対象を限定して検討したものです。例えば、分析範囲については、当社の事業特性上、気候関連リスク及び機会の大部分が集中する国内を主な対象としています。気候関連リスクの考慮対象は幅広く、金融市場(株価・クレジットリスク等)、政策/法律、ESG対応状況に対する評価等の急速な変化に伴い、リスクの発生時期と規模は多様なパターンが想定されます。今後は、より多くの情報と関連データを入手し、財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローへの中・長期的な影響を把握するとともに、気候レジリエンスを高めるためにも、分析手法の改良を図ります。

 

2-1-4.気候関連機会

 当社グループでは、各事業部門にヒアリングの上、シナリオ分析を通じて把握した影響も加味しながら、気候関連リスクと併せて気候関連機会を特定し、その重要性を評価しています。

 主な機会の例として、グリーンプロジェクト及び脱炭素社会への移行に要する資金調達等の引受増加(グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門)、新たな金融商品の提供機会の増加や市場の変化による収益機会の拡大(ウェルスマネジメント部門)、脱炭素社会への移行に貢献する新産業・企業への投資機会の増大(アセットマネジメント部門)、サステナビリティ関連のルールメイキングへの参画を通じた市場全体の活性化(グループ全体)等が挙げられます。これらの気候関連機会は、気候関連リスクやその対応と共に、サステナビリティ推進委員会又は執行役会等で議論した上で、適宜、取締役会に報告されています。

 

気候関連機会の例

事業部門

気候関連機会

時間軸

戦略的な取組み

グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門

グリーンプロジェクト及び脱炭素社会への移行に要する資金調達等の引受増加

短~長期

①サステナブルファイナンスの推進

再エネ分野のM&Aの増加

短~長期

②サステナビリティ分野のM&Aアドバイザリー強化

ウェルス

マネジメント部門

新たな金融商品の提供機会の増加や市場の変化による収益機会の拡大

短~長期

③サステナビリティを意識した商品・サービスの開発や投融資の推進

アセット

マネジメント部門

脱炭素技術を持つ企業を組入れた投資信託への資金流入

短~長期

太陽光発電所等再エネへの投資と外部資本の導入を通じた投資機会の拡大

短~長期

④サステナビリティを意識したソーシング・投資推進

脱炭素社会への移行に貢献する新産業・企業への投資機会の増大

短~長期

環境性能の高い不動産・実物資産を裏付け資産とする投資法人・私募ファンドの組成・運用

短~長期

その他

脱炭素社会への移行を支援するソリューションビジネス機会の拡大

短~長期

⑤サステナビリティ関連のソリューション提供

グループ全体

ネットゼロに向けた取組みを通じたレピュテーション向上による事業機会の拡大

短~長期

⑥自社のカーボンニュートラル実現

発行体や投資家等とのエンゲージメントを通じた脱炭素社会への移行や気候変動対応の支援

短~長期

⑦ステークホルダーとのエンゲージメント強化

サステナビリティ関連のルールメイキングへの参画を通じた市場全体の活性化

短~長期

⑧ルールメイキングへの関与

 

2-1-5.気候変動に関連して推進する戦略的な取組み

 当社グループでは、各事業部門で特定した気候関連のリスクと機会を踏まえ、戦略的な取組みを推進しています。移行リスク及び機会への対応策として、以下①から⑧の取組みを推進していきます。物理的リスクへの対応策としては、異常気象、風水害等による社会的インフラの停止によって本店(本社機能)、支店、データセンターが被災して機能できなくなった場合を想定し、BCPを策定しています。

 また、役職員の気候変動を含むサステナビリティに関する専門性向上を目的とした研修を実施する等、人材育成も進めています。具体的には、2022年より、社員一人ひとりがサステナビリティに関する知識や意識を向上させ、一層ジブンゴト化することを目指し、全役職員を対象にVision研修を毎年実施しています。

 

① サステナブルファイナンスの推進

 2015年のパリ協定締結以降、世界各国において脱炭素化への取組みが加速しています。当社グループは、グローバルな脱炭素化に向けた取組みを支援するため、本業として積極的にサステナブルファイナンスに取り組んでいます。従前より資金調達の支援はコアビジネスでしたが、SDGsの要素が加わることは、お客様に提供できる付加価値が増える新たなビジネスの機会とも捉えています。また、SDGs関連債リーグテーブルをサステナビリティKPIに設定し、定期的にモニタリングしています。

 また、当社グループは、2024年1月31日に策定・公表したグリーンファイナンス・フレームワークに基づき、自社としても国内公募形式によるグリーンボンドを継続的に発行しており、その調達資金は、連結子会社を通じて行った再エネ発電プロジェクトへの投融資資金に係る社債償還資金に充当しました。

 

② サステナビリティ分野のM&Aアドバイザリー強化

 当社グループでは、先行する欧州の有力企業と連携することで、再エネ分野のM&Aアドバイザリーも強化しています。具体的には、同分野に特化したフィナンシャル・アドバイザリー事業を行うGreen Giraffe等との資本業務提携を通じて、事業展開を加速しています。

 

③ サステナビリティを意識した商品・サービスの開発や投融資の推進

 当社グループは、サステナビリティを意識した商品・サービスの開発や投融資を強化しています。大和アセットマネジメントでは、サステナブルな社会への移行に向けESGやSDGs目標達成等に取り組む企業を投資先とする投資信託を提供しています。

 

④ サステナビリティを意識したソーシング・投資推進

 当社グループでは、再エネ分野を中心とするサステナビリティを意識したソーシング・投資を推進しています。2018年7月に大和エナジー・インフラを設立し、大和PIパートナーズにおいて取り組んでいたエネルギー投資機能を移管しました。従来は太陽光発電を中心に国内再エネ分野への投資を行っていましたが、現在では海外の再エネ及びインフラストラクチャーの分野へ投資領域を広げています。

さらに、大和リアル・エステート・アセット・マネジメントでは、ESGに配慮した不動産等、オルタナティブ資産の運用機会を提供しています。同社が運用業務を受託している大和証券オフィス投資法人及び大和証券リビング投資法人では、サステナブルファイナンスによる資金調達を活用し投資を行うことで、環境性能の高いオフィスビルや優良で質の高いヘルスケア施設の供給促進に努めています。

 

⑤ サステナビリティ関連のソリューション提供

 大和総研によるリサーチ、コンサルティング業務において、サステナビリティ関連のソリューション提供を強化していきます。気候変動による経済・社会への影響に関する情報発信や政策提言、気候変動対応をはじめ気候関連リスクに対する経営戦略の立案やプロジェクト支援等のコンサルティングを強化し、お客様の企業価値の向上に繋げていきます。

 

⑥ 自社のカーボンニュートラル実現

 当社グループはカーボンニュートラル宣言を策定し、カーボンニュートラル実現に向けた取組みを進めています。詳細は、「2-1-6.カーボンニュートラル実現に向けた移行計画」をご参照ください。

 

⑦ ステークホルダーとのエンゲージメント強化

 当社グループでは、お客様の脱炭素への移行を金融面で支援するため、発行体や投資家をはじめとするステークホルダーとのエンゲージメントを強化しています。例えば、環境・社会関連ポリシーフレームワークを基に、環境や社会に対して多大な負の影響を与える可能性がある事業に関するリスクを認識した上で、投融資先企業とのエンゲージメント等を通じた適切な対応に取り組んでいます。

 また、大和アセットマネジメントでは、気候変動をマテリアリティの一つと位置付け、投資先企業とのエンゲージメントを行っています。

 

⑧ ルールメイキングへの関与

 当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献すべく、国内外におけるさまざまな議論形成の場や各種イニシアティブへの参画を積極的に行っています。近年、サステナビリティ開示基準の策定に向けた取組みが進展するなか、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)等を傘下に持つ国際会計基準(IFRS)財団の評議員や、国内のサステナビリティ開示基準の策定を行うサステナビリティ基準委員会(SSBJ)の委員に当社グループの役職員が就任し、積極的な活動を行っています。

また、投融資等を通じたGHG排出量を計測・開示する手法を開発するPartnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)やGXリーグへの参画を通じて、各種ルールメイキングに貢献しています。

 

2-1-6.カーボンニュートラル実現に向けた移行計画

① 2030年度までの自社のGHG排出量(Scope1・2)ネットゼロ

 2030年度までのカーボンニュートラル実現に向けて、自社のGHG排出量(Scope1・2)のネットゼロを推進します。Scope1・2の推移は以下の通りです。具体的な取組みとしては、省エネ活動の継続及び使用電力の再エネ化等を進めていきます。

Scope1・2の推移

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Scope1・2ネットゼロ推進に向けた取組み例

これまでの取組み例

今後の取組み例

エネルギー利用の効率化
設備の切替(空調、照明のLED化)、オペレーションの見直し等

トラッキング付非化石証書の活用等による再エネへの切り替え
大和証券(2024年1月~)・大和総研(2024年4月~)の国内全拠点の使用電力を再エネへ切り替え

エネルギー利用の効率化を継続的に実施

海外拠点等への再エネの導入を検討

カーボンオフセットの活用
Jクレジット等、カーボンクレジットの購入

 

② 2050年までの投融資ポートフォリオのGHG排出量等(Scope3)ネットゼロ

 脱炭素社会の実現に向け、自社の排出量だけでなくサプライチェーン全体での排出量の管理・削減が求められています。特に金融機関には、投融資ポートフォリオ排出量(Financed Emissions)の管理が求められています。

 当社グループは、2021年12月にPCAF及びPCAF Japan coalitionに加盟し、PCAFの知見やデータベースを活用しながらGHG排出量の計測をしています。2023年度の実績は、従前に比べて対象範囲を拡大させ、高排出セクターに限定しない形で計測を行いました。また、投融資先のScope1・2に加えてScope3も計測しました。なお2023年度には、当社グループの投融資ポートフォリオ排出量において最も大きな割合を占める電力セクターのうち、プロジェクトファイナンスについて、2030年度までの中間目標を設定しました。詳細は、「(4)指標及び目標」をご参照ください。

 

③ 金融ビジネスを通じた脱炭素社会へのスムーズな移行の支援

 総合証券グループとして、金融ビジネスを通じたお客様の脱炭素化に向けた取組みへの支援にも引き続き取り組んでいます。

 

 

(人的資本)

2-2-1.人的資本経営に対する考え方

 当社グループは、企業理念の一つに「人材の重視」を掲げ、競争力の源泉が人材にあることを明文化しています。この企業理念の下、人事戦略を経営戦略の一環と位置付け、競争力の強化に向けて、社員一人ひとりが多様性・専門性を発揮し、成長や働きがいを感じられる組織を目指しています。

 中期経営計画における人的資本経営・人事戦略では、「採用」、「育成」、「人財ポートフォリオ」、「評価・処遇」の進化・深化により、社員のエンゲージメントを高め、人的資本が創出する付加価値を最大限に引き出していくことで、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上につなげていきます。

 

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2-2-2.ポテンシャル人材の「採用」

 当社グループは、労働人口の減少や人材の外部流出等に伴う人的リソースの不足が持続的な成長や企業価値向上へ与える影響の重要性に鑑み、積極的な人材の採用を実施しています。

 高いポテンシャルを持つ人材の発掘・採用をすべく、グループ各社の特性に応じた採用活動を実施しています。大和証券では、新卒採用(通年)において、応募者が作成した「自分史」をもとに本人の価値観・行動に影響を与えた経験などを共有・把握した上で、現場の部室店長など、複数の目で採用対象者を選出することで、入社後、本人のキャリアパスに沿ったポテンシャルの伸長へとつなげています。

 応募者に対しては、様々な部門・部署の社員について、自ら話を聞きたい社員を選択して面談することができる「ジョブサポーター制度」を導入しています。各部門で働く社員の考えや職場の雰囲気、キャリアプラン等について理解を深められることでミスマッチの減少に寄与しています。

 また、実務に近く細分化・専門化したインターンシップの実施や高度な専門性をビジネスで活かすことができる人材を評価する人事制度「エキスパート・コース」の導入によって、部門別採用の応募者増加と高いポテンシャルを有する人材の採用強化へとつなげています。

 さらに、多様な知識・経験をもつ人材を迎え入れることが企業の持続的な成長につながるという確信から、2022年度からキャリア採用※を積極的に進めています。(新卒を含む年間採用人数764名のうち37.3%)。採用者の多様性を包摂しながら、当社グループに定着し活躍できる環境を整備するためのオンボーディング施策として、入社式やメンター制度、キャリア入社社員との交流チャネルの整備、経営トップを含む懇親会等を実施しています。

※ 正社員としての就業経験があり、当社グループが事業を行っている業界への知見や特定の職種での勤務経験のある方を募集する採用形態。

 

 

2-2-3.人材育成方針

「高付加価値人財への『育成』」

「人材」に投資をすることにより、その価値を高め、「人財」へと磨き上げることで、企業の成長へと繋げていくこと、これが当社グループの目指している姿です。変化し続けるビジネス環境においては、必要とされる「人財」の定義も様々です。人材育成においては、社員一人ひとりがパフォーマンス向上やキャリア実現のために何が必要かを考え、自律して学び続けられる環境の整備が不可欠です。大和証券では、これまでの知見やノウハウを活用してカスタマイズされた教育研修プログラムに加えて、全社員を対象に個別最適化された学びを提供することが可能なオンライン動画学習プラットフォーム「Udemy Business※」を導入しています。マネジメントやデータ分析、マーケティングなどをはじめとした最新かつ評価の高いビジネス講座の中から、必要な知識・スキルを選択、習得できるようにすることで、主体的なキャリア形成をサポートしています。

また、お客様ニーズの多様化を受け、質の高いソリューション提案の実現につながるよう、社員の資格取得のサポートとして、試験対策講座受講料・受験料の補助や社内コミュニティによる交流支援等も行っており、2025年3月末時点において、CFP資格取得者数は金融業界最多の水準となっています。

さらに、デジタル・イノベーションの追求に向けて、高度なデジタル技術を活用してビジネス変革を担う人材を育成する「デジタルITマスター認定制度」や全社員を対象にデジタルスキルの向上を図る「Daiwa Digital College」の導入等、デジタル人材の育成にも注力しています。

※ 「Udemy Business」は、Udemyで公開されている世界約25万の講座から、厳選した約30,000講座(2024年12月末時点)を、定額で利用できるオンライン動画学習プラットフォーム。

 

「適財適所の人財ポートフォリオ」

社員がそれぞれの個性を活かしてパフォーマンスを発揮するためには、自らキャリアを考え自己実現に向けて行動していくことが重要です。自律的なキャリア形成を目的として、1on1ミーティングを通じた上司とのキャリアビジョンや強み・課題の共有、自身の希望するキャリアや職場環境に対する考えを人事部門に直接伝えることができる「自己申告制度」、当社グループ内の様々な業務に自ら手を挙げて異動を実現する「グループ内公募制度」を設けています。

また、社員一人ひとりの考え・想いやスキルレベルなどをリアルタイムで可視化できる「タレントマネジメントシステム」を活用し、社員本人と上司が1on1ミーティングの際に入力・更新した情報を、社員ごとに引き継ぎ、新たな直属上司もこの情報を基にしたキャリアビジョンの共有・育成を行っています。競争力の源泉である人財のキャリア可視化と経営資本としての情報蓄積による、最適な人財ポートフォリオの実現に取り組んでいます。

 

「公正な評価・処遇体系の構築」

すべての社員がモチベーション高く働き続けるためには、公正で納得性の高い評価が行われることが重要です。当社グループでは、入社年次を問わず、すべての社員がより高いステージや責任の大きいポジションで活躍したいと思えるような評価体系を目指しています。処遇については、Pay for Performanceの考えに基づき、成果や実績をもとにあるべき水準と配分を常に模索しながら、競争力のある処遇制度を整備することで、パフォーマンスに応じた登用を進めています。

当社グループは、2022年度以降4年連続で給与水準の引き上げを実施しています。2025年度の処遇改定では、グループ全体で給与水準を5%程度引き上げることで、過去4年間の累計では20%以上の引き上げとなります。業績拡大に伴う賞与増とあわせ、平均年間給与は2021年度の1,220万円から2024年度の1,626万円に増加しており、3年間で33%増加しております。

また、定量面だけでなく定性面も加味した総合的な評価を行うとともに、複数の目線で評価の妥当性について精査しています。加えて、定期的に社内アンケートを実施し、社員の声をもとに評価や処遇の水準が適切であったか検討するなど、双方向のコミュニケーションを通じて納得性の向上に取り組んでいます。

 

2-2-4.社内環境整備方針

「エンゲージメントと生産性の向上」

 当社グループでは、社員の働きがいを追求するため、各種人事制度の整備や働き方改革に取り組んでいます。社員の率直な意見を把握して継続的な改善活動につなげていくこと、また、企業業績と相関関係にあるエンゲージメントを包括的に計測し、生産性や業績の向上につなげるため、匿名形式の「エンゲージメントサーベイ」を定期的に実施しています。当該サーベイでは、当社グループにおける「企業理念」「中期経営計画」「2030Vision」等の要素を組み入れながら、エンゲージメントに影響を及ぼす要素を網羅的に把握するコンセプトのもと、設問を設計しています。当該サーベイにより、グループ各社がそれぞれの強みや課題を把握し、改善アクションを行うとともに、社員一人ひとりの成長と生産性の向上に向けた活動を継続しています。なお、業績と相関性の高いサーベイスコア※1であるとされる「持続可能なエンゲージメント※2」をグループKPIに設定しており、2024年度の調査においてグループ全体でのスコアは81%となっています。これはWTW日本基準値※3を上回り、グローバル高業績企業基準値※4も射程距離に捉えた水準であると認識しています。グローバル高業績企業基準値の水準を意識し、現行の水準を向上すべく改善活動に取り組んでいます。

 また、エンゲージメントサーベイの結果と財務指標、人事関連指標との相関分析を実施しています。過去4回の結果より、グループKPIに設定している「持続可能なエンゲージメント」のスコア及び一部設問のスコアが生産性(収益/労働時間)や離職率と統計有意に相関することが確認されました。

 「生産性の向上」においては、人への直接的な投資のみならず、人が使うシステムも含め「人的資本投資」と考えています。基本的なシステムインフラの整備を行うことで従業員が価値創出できる時間を増やし、「デジタルIT人材」の積極的な育成や、デジタルツールを駆使した、蓄積したデータの分析・研究・活用を行うことで、効率的なビジネスの仕組みづくりに取り組むと同時に、社員一人ひとりがより一層イノベーティブな業務に取り組めるよう環境を整備しています。

※1 数値及び分析資料はサーベイパートナーであるウイリス・タワーズワトソンより提供。数値は、全従業員のうち各カテゴリーの設問に対して肯定的な回答をした従業員の割合を設問ごとに集計のうえ、当該カテゴリーの全設問における当該割合の平均値を算出したもの。

※2 持続可能なエンゲージメントとは、生産的な職場環境、心身の健康などによって維持される、目標達成に向けた高い貢献意欲や組織に対する強い帰属意識を指す、ウイリス・タワーズワトソンの概念。同社は、持続可能なエンゲージメントのスコアが高い企業は当該企業が属する業界の平均的な成長率を上回る業績成長を見せる傾向にあるとしている。当社グループでは、「持続可能なエンゲージメント」とその構成要素を体系的に把握しながら、分析結果を全社的な施策や各組織における改善活動に活用している。

※3 ウイリス・タワーズワトソンにて当該サーベイを実施している企業の中で、日本で働いている回答者のスコアの加重平均値。

※4 ウイリス・タワーズワトソンにて当該サーベイを実施している企業のうち、(i)純利益やROIC等、財務及び業績に関する所定の指標が過去3年間継続して当該企業が属する業界の全世界平均値を上回っており、かつ、(ⅱ)当該サーベイの中で、人事、人材及び組織に関連する質問への肯定的回答の割合が当該企業が属する業界の全世界平均値と比べて特に高い水準にある、という2つの条件を満たす企業の調査結果の加重平均値。

 

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「ウェルビーイングの向上と健康経営推進」

 当社グループでは、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001や、厚生労働省「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」を参考に、適正な労働条件や職場環境の整備をはじめ、社員が心身ともに健康で働き続けられるよう、労働安全衛生の確立に積極的に取り組んでいます。

 社員のウェルビーイング向上により生産性を高め、組織として高いパフォーマンスを発揮し続けることを目指し、CHO(最高健康責任者)に人事担当役員を選任している他、毎年、グループ全役職員の健康状態を分析した「健康白書」を作成し、CHO主催の「健康経営推進会議」を定期的にグループ横断で開催し、健康経営のための取組の評価・改善を行っています。

 また、人事部・総合健康開発センター(医務室)・健康保険組合の3者が協働して健康施策に関する企画・発信を行う他、日常的に意見交換を実施することで実効性を高めており、健康経営によって解決を目指す経営課題への取組として、メンタル不全の未然防止のためのマインドフルネス研修の他、睡眠リテラシーの向上に関する施策、歯科の健康施策を導入し、社員のパフォーマンス向上に向けた取組を強化しています。

 さらに、全国に勤務する社員がオンラインで医務室を利用できるオンライン診療を導入しており、婦人科を含む様々な科目の診察や薬の処方に加え、こころの健康に関する相談も行っています。また、女性特有の健康課題への対処として、月経・更年期による体調不良や不妊治療の際に取得できる「エル休暇」の導入や治療時間の確保等に加えて、2024年度にはフェムテックを活用したプログラムの導入やリテラシーの更なる向上によって女性の健康について包括的にサポートする「Daiwa ELLE Plan+」として拡充を行いました。

 これらの結果をモニタリングするため、プレゼンティーイズム損失割合※1やアブセンティーイズム平均値※2に関する目標値を設定し、定期的に進捗状況の評価を行っております。

 こうした取組が評価され、経済産業省が東京証券取引所と共同で、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え戦略的に取り組む上場企業を選定する「健康経営銘柄」に当社グループは2025年3月に選定されました。2015年の制度開始以来、10回目の選定となります。

※1 プレゼンティーイズムは、何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力や生産性が低下している状態。プレゼンティーイズム損失割合は、病気やケガがないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事の出来をパーセンテージで評価するアンケートを実施し、全従業員の平均値と100%との乖離を算出したもの。数値が小さいほど生産性が高い。

※2 アブセンティーイズムは、病欠、病気休業の状態。アブセンティーイズム平均値は、過去1年間に自分自身の病気を理由として何日欠勤したかを問うアンケートを実施し、全従業員の平均値を算出したもの。平均日数が少ないほど生産性が高い。

 

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2-2-5.人権

 グローバル化により世界経済が拡大する中、世界では、格差や貧困の拡大、気候変動等の環境問題の深刻化、感染症の拡大、紛争の勃発等の難題が数多く発生しています。人権侵害をめぐる問題はこれらと密接に関連しており、当社グループでは、企業活動が人権に及ぼす負の影響の拡大を防ぎ、企業活動による人権侵害に関する企業の責任を果たすため、2022年に「人権方針」を制定しました。「人権方針」は、2011年に国連にて承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」や、2017年に日本政府が策定した「ビジネスと人権に関する国家アクションプラン」に準拠しており、具体的な取り組みについては、人事担当役員を委員長とする「人権啓発推進委員会」にて検討を行い推進しています。

 

2-2-6.ダイバーシティ&インクルージョン

 当社グループでは、特に注力すべき重点分野の一つとして「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げており、社員一人ひとりが強み・個性を活かして最大限にパフォーマンスを発揮できるよう、ジェンダー・年齢・障がい・人権・LGBTQ+・採用ルート等、様々な観点からダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。

 代表執行役社長CEOを委員長とする「ダイバーシティ&インクルージョン推進委員会」では、複数の経営幹部が、テーマに応じてアドバイザーとして任命した全国の部室店の役職員とともに幅広いテーマで議論を行い、取るべきアクションを具体化して、制度や施策の拡充につなげています。

 また、各種制度等の浸透度等をモニタリングし状況に応じて改善を目指すべく、マネージャーに対する多面評価に「育児・介護等の各種両立支援制度やワーク・ライフ・バランスに関する諸制度を利用しやすい環境を整えている」「部下の意見や考えに公平に耳を傾け、心理的安全性が保たれた組織運営を行っている」等のダイバーシティ推進に関する項目を導入しています。

 近年では、LGBTQ+に関する制度拡充や理解促進にも力を入れており、各自治体における「パートナーシップ制度」において、自治体より公式に認定されたパートナーを社内制度においても配偶者と同等と認める運用や社内外の相談窓口の設置、LGBTQ+を理解・支援する「Daiwa ALLYネットワーク」の構築などを進めてきました。この結果、2024年度には、一般社団法人work with Prideが主催し、職場におけるLGBTQ+などの性的マイノリティへの取り組みを評価する「PRIDE指標2024」において、最高評価である「ゴールド」を獲得しました。すべての社員が安心して業務に取り組むことができる職場環境の整備とともに、インクルーシブな文化の醸成を目指しています。

 

2-2-7.女性活躍推進、ジェンダーギャップ解消に向けた取組

 当社グループの社員に占める女性の割合は40.4%(2024年度末/提出会社及びすべての国内連結子会社、以下同じ)となっており、ダイバーシティ推進のなかでも女性活躍推進を重要課題と捉えて、アンコンシャスバイアスの解消をはじめ、可能性を引き出していくための様々な施策に取り組んでいます。

 各社の事業特性や人員構成は異なりますが、グループ一体での推進を図るため、2014年度より四半期ごとに各社の人事担当役員が集う「女性活躍ミーティング」を実施し、各社の状況に応じた目標に関し、進捗状況や好事例等を共有することで連携を深めています。これまで連綿と続けてきたことが奏功し、女性管理職比率は20.4%となり、当社グループがサステナビリティKPIの1つとして、2026年度までの目標として定める女性管理職比率20%以上(連結)を達成しています。

 こうした取組が評価され、経済産業省が東京証券取引所と共同で、女性活躍の推進に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」に当社グループは2025年3月に選定されました。2012年の制度開始以来、10回目の選定となります。

 

2-2-8.ファイナンシャル ・ウェルネス

 社員の金銭状態(家計)が悪化すると、ストレスや心理的な負担が増加し、生産性やモチベーションの低下に繋がるだけでなく、社員による不祥事等も発生しやすくなり、当社グループの信頼性にも悪影響を与える可能性があります。当社グループでは、社員に対し適切な金銭管理を促すことで個人の経済的な健康度の維持・向上にも努めており、奨学金支払いの負担軽減に向けた「奨学金返済サポート貸付」や、「持株会」「職場つみたてNISA」に奨励金を付与する等、社員の経済的自立を支援しています。また、財形貯蓄制度、ストック・オプション制度、住宅取得のための融資制度を設けている他、退職後の資産形成に向けた確定拠出型年金(401K)制度等を導入することで、社員の幸福度・満足度の向上を図り、生産性を引き上げることを目指しています。

 

(3)リスク管理

3-1.サステナビリティに関するリスク管理

① リスク管理の概要

当社グループでは、収益性や成長性を追求する一方で、事業に伴う各種リスクを適切に認識・評価し効果的に管理することが重要であると考えています。リスクとリターンのバランスがとれた健全な財務構造や収益構造を維持し、短期のみならず、気候関連リスクのような中長期で顕在化する可能性のあるリスクも適切に管理することにより、企業価値の持続的な向上を図ります。

気候関連リスクについては、気候現象のみならず、政治・社会の対応や経済構造等多くの要素が関係し、相互に影響を及ぼし合います。例えば、脱炭素社会への移行過程で経済全体の変化を受けた株式や金利等への影響(市場リスク)、脱炭素への移行等の気候変動対応に伴う企業の事業や財務状況への影響(信用リスク)等、気候関連リスクは既存の各リスクを発生又は増幅させる要因となります。このため、既存のリスク管理の枠組みの中で気候関連リスクの影響を考慮しています。各リスクの定義や管理プロセスについては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

人的資本関連のリスクについては、サステナビリティ推進委員会やダイバーシティ&インクルージョン推進委員会、健康経営推進会議等において、広く協議を行っているほか、人権に関するリスクについては、人権啓発推進委員会での議論や内部通報制度の運用等を通じて、管理を行っています。

 

② リスクアペタイト・フレームワークにおける気候関連リスク

グローバルに活動する金融機関は、経済や市場のストレス時においても十分な金融仲介機能を発揮できるだけの健全性の確保が求められています。また、ストレス時への備えを十分なものとするためには、平時より各種リスクに見合う流動性及び自己資本を十分に確保することが必要です。こうした認識のもと、当社グループでは、リスクアペタイト・フレームワーク(以下、RAF)を導入しています。当社グループのRAFは、リスクアペタイト・ステートメントとして文書化のうえ、取締役会で審議・決定し、グループ内への浸透と管理態勢の水準向上を図っています。リスクアペタイトの定量指標は、取締役会においてリスクアペタイト・ステートメントの一部として審議・決定し、年2回見直しを行います。また、RAFに関する取締役会及び経営の職務執行の監査は、監査委員会が行います。

本ステートメントでは、2021年度より気候関連リスクを取り上げています。これにより、気候関連リスクについて、そのリスク・プロファイルに応じて適切に特定・評価し効果的に管理していきます。

 

③ トップリスク(人的資本)

 リスク事象のうち、当社グループの事業の性質に鑑みて特に注意すべきものをトップリスクとして選定し管理しています。トップリスクの選定にあたって、経営陣が広範なリスクを認識・議論できるように、社内外より収集したリスク事象をもとに、関連部署が整理・抽出したリスク事象をトップリスクの候補として「見える化」します。その上で当社グループの取締役・執行役が、当社グループの業績に与える影響度と当該リスク事象の発生可能性からフォワードルッキングに評価し、当該候補からトップリスクを抽出し選定します。

 当社グループは、労働人口の減少・専門人材の育成遅延・人材の外部流出等に伴う人的リソースの不足が持続的な成長や企業価値向上へ与える影響の重要性が高まっていることを踏まえて、労働力・人材不足による持続的成長の停滞をトップリスクの一つとして位置付けています。なお、トップリスク一覧については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

3-2.環境・社会関連ポリシーフレームワーク

当社グループは、地球環境/生物多様性の保全や人権の保護等、環境・社会リスクの管理体制を強化するため、環境・社会関連ポリシーフレームワークを策定しています。本フレームワークでは、新規の投融資と債券/株式発行にかかる引受を対象とし、投融資等を禁止する事業及び留意する事業を定めています。新規の投融資等に際しては、対象となる案件に対して初期的なESGデュー・デリジェンスを実施します。当該評価の結果、追加的な確認が必要と判断した場合には、強化ESGデュー・デリジェンスを実施し、投融資等の可否を判断します。当該案件の実施が当社グループの企業価値を大きく毀損する可能性がある場合には、さらに経営陣による追加協議を行い、最終的な投融資等の可否を判断します。また、新規の投融資の実施後も、投融資先が児童労働、強制労働、人身取引を行っていないか、定期的にスクリーニングを行います。児童労働、強制労働、人身取引の事実を把握した場合は、対話を通じて是正と再発防止を求め、投融資継続について慎重に検討します。なお、本フレームワークは、国内外の動向を踏まえながら定期的に見直しを行っています。

 

(4)指標及び目標

(気候変動)

 当社グループはカーボンニュートラル宣言において2030年度までの自社のGHG排出量(Scope1・2)ネットゼロを目指しています。これらの目標達成に向け、GHG排出量を毎年モニタリングしています。さらに、本宣言にて掲げる2050年までの投融資ポートフォリオのGHG排出量等(Scope3)ネットゼロに向けた具体的な道筋を明確化するため、当社グループの投融資ポートフォリオ排出量において最も大きな割合を占める電力セクターのうち、プロジェクトファイナンスに関する2030年度までの中間目標を設定しています。加えて、サステナブルファイナンスに関する指標としてSDGs関連債リーグテーブルを設定し、定期的にモニタリングしています。

指標

目標

中間目標

実績

自社のGHG排出量(Scope1・2)

ネットゼロ

(2030年度)

Scope1:  926 t-CO2

Scope2:8,632 t-CO2

(2023年度)

投融資ポートフォリオの

GHG排出量等(Scope3)

ネットゼロ

(2050年)

電力セクターのプロジェクトファイナンス:

186~255 g-CO2/kWh

(2030年度)

電力セクターのプロジェクトファイナンス:

243 g-CO2/kWh

(2023年度)

SDGs関連債リーグテーブル

2位以内

(2026年度)

1位

(2024年度)

<GHG排出量の集計対象及び算定方法>

Scope1・2

[国内の集計対象]法令でエネルギー使用量、CO2排出量の報告義務のある、大和証券、大和総研の2社。なお、大和証券グループの本拠地であるグラントウキョウノースタワー、大和八重洲ビル、大和東陽町ビルのデータについては、上記以外のグループ会社のデータも含め対象としています

[海外の集計対象]ロンドン、ニューヨーク、香港、台北、シンガポール、ソウル、ワシントンD.C.、ムンバイ、マニラにおける拠点

[算定方法]エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律、地球温暖化対策の推進に関する法律に定める算定方法に従い、電力・都市ガス・LPガス・重油・軽油・灯油・蒸気・温水・冷水の使用により生じるCO2を対象として算定。小数点以下は四捨五入

Scope3

[集計対象]大和証券グループ本社の出資先、アセットマネジメント部門の運用先(自己保有分。ファンド経由の非上場株式除く)、大和ネクスト銀行の運用先

[算定方法]PCAF基準に基づいて計測を実施。投融資先のデータが入手できない場合は、PCAFのデータベース等を参照した推計値を使用。

SDGs関連債リーグテーブル

[集計対象] 発行体のサステナビリティ戦略における文脈に即し、環境・社会課題解決を目的として発行される
普通社債、財投機関債、地方債、サムライ債 ※自社債除く

[算定方法]LSEG データ&アナリティクスのデータを基に大和証券作成

 

 

(人的資本)

<人的資本経営>

ダイバーシティに関する指標

 

2022年度末

2023年度末

2024年度末

目標

女性取締役比率

グループ本社

28.6%

35.7%

50.0%

30%以上

女性管理職比率

大和証券

19.9%

21.1%

23.2%

2026年度末25%以上

連結 ※1

16.9%

18.4%

20.4

2026年度末20%以上

男性社員の育児休業等取得率 ※2

大和証券

88.7%

97.5%

101.0%

100%以上

連結 ※1

94.2%

98.8%

103.0

100%以上

キャリア採用比率 ※3

連結 ※1

27.8%

25.6%

37.3

-

※1 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す。

※2 男性社員の育児休業等取得率。

 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号に定める方法により算出しています。

※3 キャリア採用比率は年度内の総採用者数に対するキャリア採用者の比率。

 

<人材育成方針>

 

2022年度末

2023年度末

2024年度末

CFP・証券アナリスト

資格取得者

CFP

連結 ※

1,469名

1,570名

1,677名

証券アナリスト

1,550名

1,553名

1,576名

合計

3,019名

3,123名

3,253名

※ 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す。

 

 

教育投資にかかわる費用 ※1

 

2022年度

2023年度

2024年度

教育投資にかかわる費用(連結 ※2)

21.8億円

21.6億円

22.2億円

従業員一人当たり※3の教育投資にかかわる費用

0.17百万円

0.17百万円

0.18百万円

※1 教育投資にかかわる費用とは、従業員の研修の運営に必要な講師等の研修費や施設運営費を指す。

※2 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す。

※3 事業年度末時点での国内連結従業員数をもとに算出。

 

<社内環境整備方針>

「エンゲージメントサーベイ」スコア ※1

 

 

2022年度

2023年度

2024年度

目標

持続可能なエンゲージメント ※2

大和証券

81%

83%

82%

-

連結 ※3

79%

80%

81%

80%以上

強みの

3領域

倫理性・誠実さ

連結 ※3

86%

88%

89%

-

タレントマネジメント

連結 ※3

82%

83%

84%

-

ウェルビーイング・フレキシビリティ

連結 ※3

82%

82%

82%

-

改善領域

業務運営体制

連結 ※3

47%

47%

49%

-

デジタル化の取組

連結 ※3

67%

69%

71%

-

パフォーマンスマネジメント

連結 ※3

65%

67%

70%

-

※1 数値及び分析資料はサーベイパートナーであるウイリス・タワーズワトソンより提供。数値は、全従業員のうち各カテゴリーの設問に対して肯定的な回答をした従業員の割合を設問ごとに集計のうえ、当該カテゴリーの全設問における当該割合の平均値を算出したもの。

※2 持続可能なエンゲージメントとは、生産的な職場環境、心身の健康などによって維持される、目標達成に向けた高い貢献意欲や組織に対する強い帰属意識を指す、ウイリス・タワーズワトソンの概念。同社は、持続可能なエンゲージメントのスコアが高い企業は当該企業が属する業界の平均的な成長率を上回る業績成長を見せる傾向にあるとしている。当社グループでは、「持続可能なエンゲージメント」とその構成要素を体系的に把握しながら、分析結果を全社的な施策や各組織における改善活動に活用している。

※3 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す。2023年度、2024年度は海外拠点の一部を追加して実施した数値。

 

労働安全衛生・健康経営に関する指標

 

 

2022年度

2023年度

2024年度

目標

2030年まで

プレゼンティーイズム損失割合 ※1

連結 ※3

12.6%

13.9%

14.5

10.0%未満

アブセンティーイズム平均値 ※2

連結 ※3

3.1日

3.9日

4.0

3.0日以下

※1 病気やケガがないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事の出来をパーセンテージで評価するアンケートを実施し、全従業員の平均値と100%との乖離を算出したもの。数値が小さいほど生産性が高い。

※2 過去1年間に自分自身の病気を理由として何日欠勤したかを問うアンケートを実施し、全従業員の平均値を算出したもの。平均日数が少ないほど生産性が高い。

※3 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項に関し、以下のようなリスクがあげられます。これらのリスクは必ずしもすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では想定していないリスクや重要性が乏しいと考えられるリスクも、今後当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループでは、収益性や成長性を追求する一方で、事業に伴う各種のリスクを適切に認識・評価し効果的に管理することが重要であると考えております。当社グループで展開するビジネスには、多種多様なリスクが存在します。健全な財務構造や収益構造を維持するためには、事業特性やリスク・プロファイルを踏まえてこれらのリスクを認識し、かつ適切な評価のもとに管理していくことが重要であると考えております。

 当社グループは、自己勘定を活用して一時的に販売目的の商品ポジションを保有し、お客様への商品提供を行うため、相場変動やヘッジが機能しないことに起因する市場リスク、取引先や発行体に対する信用リスク、外貨を含めた流動性リスクのほか、業務を執行するうえで必然的に発生するオペレーショナルリスクや意思決定にモデルを使用することによるモデルリスクなどが生じます。また、成長投資を実行することに伴い、投資先の業績や信用状態の悪化、市場環境の変化などに起因する投資リスクも発生します。そのため、ストレステストやトップリスク管理を活用し、フォワードルッキングな視点でグループ内における資本や流動性に与える影響を計測するなど、統合的なリスク管理を行っています。

 

トップリスク

 当社グループは、多様なリスクの中から、当社グループの事業の性質に鑑みて特に注意すべき事象をトップリスクとしてモニタリングしております。有価証券報告書提出日現在におけるトップリスクは下表のとおりです。

 

リスク事象

具体例

国際紛争・対立の深刻化

・米国新政権の台湾防衛方針の後退等をきっかけに、台湾海峡で本格的な軍事衝突が発生。広範な海上封鎖、日本の本格関与等へと事態が発展
・ロシア・ウクライナの軍事衝突がエスカレートしてロシアによる核脅威の拡大やNATOの参戦に至り、商品市況の高騰、欧州を中心とした世界経済の悪化に波及

トランプ2.0

・米国新政権の通商政策(関税強化)が中国等の報復関税を招き、世界貿易が減速する。移民政策(不法移民の大量送還)による労働力減少や減税政策による財政赤字の拡大も相まって、インフレ高進と金利上昇を招き、米国経済は急激に悪化

中国経済危機

・不動産市況の下落に歯止めがかからず、不動産セクターを起点としたデフォルトが相次ぐ。信用収縮により中国経済が急激に悪化し、世界経済の悪化に波及

日本の財政不安による国債格下げや円資産の暴落

・日本政府が財政再建に消極的で、歳出削減と税・社会保障の負担増は先送りされる。財政リスクが増大し、国債の格下げや海外投資家による日本株・国債等の円資産の売りに波及。また、国債の格下げに伴い、当社の資金調達コストも増加

日本のスタグフレーションリスク

・円安や資源価格高騰、労働力不足(少子高齢化・外国人労働者の減少等)による構造的なインフレが進展。賃金と物価の好循環には至らず消費が減速し、日本経済はスタグフレーションに陥る

金融危機の再来

・「米国」の長期金利上昇等を起因とした金融不安、「欧州」の政治不安を背景としたポピュリズム的財政拡大によるソブリン危機の発生、「新興国」の通貨危機等が同時的に発生

労働力・人材不足による持続的成長の停滞

・労働人口の減少による採用の不調、専門人材の育成遅延、金融機関内外の人材獲得競争激化による人材の外部流出等により人的リソースが不足し、持続的な成長や企業価値向上が停滞

大規模地震

・大規模地震(首都直下型地震、南海トラフ地震等)による日本経済への甚大な影響が発生。また、当社への人的・物的被害も発生

新たな感染症の流行

・未知の感染症の発生等により国内外で感染が再拡大し、グローバルで経済活動が長期停滞

サイバー攻撃

・サイバー攻撃による顧客情報漏えいが発生し、当社のレピュテーションが棄損、ビジネス機会も喪失

役職員による不適切な行為

・役職員による市場の健全性を損ねる行為(インサイダー取引・相場操縦等※)やその他の犯罪行為(顧客資産の窃盗等)により、当局からの制裁金が課される又は使用者責任を問われるうえ、当社のレピュテーションが棄損し、ビジネス機会も喪失
※役職員自身による取引だけでなく、取引に関与することを含む

マネロン・テロ資金供与への対応不備

・マネー・ローンダリング、テロ資金供与等の金融犯罪への対応に不備があり、関与を防止できず、巨額な制裁金の支払いが発生。また、当社のレピュテーションが棄損し、ビジネス機会も喪失

情報セキュリティリスク

・役職員の顧客情報の持ち出し等が発生し、当社のレピュテーションが毀損。損害賠償費用や法的制裁等の不利益が発生し、ビジネス機会も喪失

 

 トップリスクは経営陣が選定する体制としており、選定に際しては、経営陣が広範なリスクを認識・議論できるような枠組みを整備しております。具体的には、広範なリスク事象を網羅的に「見える化」するために、社内外より収集したリスク事象を基に、関連部署が整理・抽出したリスク事象をトップリスクの候補とします。その上で当社グループの取締役・執行役が、当社グループの業績に与える影響度と当該リスク事象の発生可能性からフォワードルッキングに評価してトップリスクを当該候補から抽出して選定します。かかる評価に際しては、以下のリスクマップが活用されます。

 

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(1)日本及び世界の景気、経済情勢、金融市場の変動に関するリスク

2024年度の日本経済は、企業業績は底堅く推移し、賃上げ率も高水準となるなど、景気は緩やかな回復基調にある一方で、物価上昇の影響や消費マインドの慎重さから、個人消費の回復は力強さを欠く状況が続きました。日本銀行は金融政策の正常化を進め、2024年度中に二度の利上げを実施しましたが、その政策効果が期待通りに実現せず、資源価格の高騰や急激な円安進行などが重なり、物価上昇が加速した場合等には、日本経済が下振れするリスクも存在します。

世界経済においては、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の不安定化など、地政学リスクが高い状況が続いており、エネルギー価格の変動やサプライチェーンの混乱を通じて、インフレ圧力の長期化や世界経済の成長鈍化を招く懸念があります。米国では、高金利政策の継続による景気減速懸念に加え、大統領選挙後の政策運営に対する不確実性が、経済活動に停滞や混乱をもたらす可能性があります。中国経済については、長引く不動産市場の調整や米中間の貿易摩擦、技術覇権争いなどが、景気回復の重石になる可能性があります。新興国においては、高インフレ、債務問題、地政学リスクなどが複合的に作用し、経済の不安定化を招くリスクがあります。世界的に財政状況や経済状況が急速に悪化した場合には、金融危機や経済危機に発展する可能性も否定できません。

このように、日本における財政政策、金融政策の効果が期待通り得られない場合や、世界景気や経済情勢の停滞若しくは悪化など、日本を取り巻く経済環境に悪影響を及ぼす事象が発生した場合には、企業業績の悪化、株価の下落、為替・金利の変動等により様々なリスクが顕在化することが想定されます。このような事態は、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)外的要因によるリスク

 当社グループの主たる事業である有価証券関連業務は、マーケットに急激な変動を生じさせる予測不可能な出来事の発生により大きな影響を受ける傾向があります。例えば、2001年9月に発生した米国同時多発テロ、2011年3月に発生した東日本大震災のほか、2024年3月における日本銀行によるマイナス金利の解除及び利上げといった各国の金融政策の転換による金融・証券市場への影響は、当社グループの業績に重大な影響を及ぼしました。

 このように、戦争・テロ行為、地震・津波・洪水等の自然災害、各種感染症の大流行や情報・通信システム・電力供給といったインフラストラクチャーの障害等の外的要因は、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)気候変動等に関するリスク

 当社グループは、気候変動への取組みが重要な経営課題であると認識しております。

 当社グループの主な移行リスク(気候関連リスクのうち、脱炭素社会への移行に伴うもの)の例として、カーボンプライシング等の政策の変化による投資・運用先等におけるコスト増加及びこれに伴う収益悪化(政策/法律)、エネルギー関連技術の変化による投資・運用先等のコスト増加及びこれに伴う収益悪化(技術)、脱炭素社会への移行に伴うファンド保有資産の価値低下、残高減少(市場)、気候変動対策の取組み不足や環境負荷の高い事業に係る投資・引受に伴う評判悪化(レピュテーション)などが挙げられます。

 当社グループの主な物理的リスク(気候関連リスクのうち、物理的な被害に起因するもの)の例として、豪雨や巨大台風の被災による太陽光/風力発電設備等の投資物件の価値低下や売却機会の減少及びこれらに伴う収益悪化(急性/慢性)、自然災害の激甚化による金融システム障害及び当社グループの各事業拠点やデータセンター等の被災による事業中断(急性/慢性)などが挙げられます。

 これらの事態は、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)競争状況に伴うリスク

 株式の売買委託手数料率の自由化をはじめ、ファイアーウォール規制の見直し等、一連の大幅な規制緩和を契機として、当社グループの主たる事業である有価証券関連業務における競争は、厳しいものとなっています。参入規制がほぼ撤廃されて、銀行その他の証券会社以外の国内外の金融グループ等は、幅広い金融商品・サービスの提供を行うことにより、顧客基盤及び店舗ネットワークを構築・強化しております。

 当社グループは、これら国内外の金融グループ等に対して、競合する事業における価格やサービス面等の点で十分な競争力を発揮できるという保証はなく、これが発揮できない場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)グループ戦略が奏功しないリスク

 当社グループは、有価証券関連業務を中核とする投資・金融サービス業や不動産・ヘルスケア・再生可能エネルギーなど新たな事業領域となる業務を行うグループ会社群によって構成されており、これらグループ会社が連携することで付加価値の高い投資・金融サービスを提供する等、グループ全体の企業価値を最大化することを目指しております。しかしながら、①国内外の経済・金融情勢が悪化した場合、②競争環境の変化により、当社グループの期待する収益を得られない場合、③当社グループ内外との事業提携・合弁関係、業務委託関係が変動あるいは解消した場合、④当社グループ内の組織運営効率化のための施策が想定どおりに進まない場合、及び⑤法制度の大幅な変更があった場合をはじめとする様々な要因により、上記のグループ戦略に変更が生じる場合や、グループ会社間の業務、その他の連携が十分に機能しない場合には、グループ戦略が功を奏しない可能性や想定していた成果をもたらさない可能性があり、その場合、当社グループの事業、財政状態及び経営戦略に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)業績の変動性に伴うリスク

 当社グループの主たる事業である有価証券関連業務をはじめ、その他の主要業務であるアセットマネジメント業務、投資業務は、お客様との取引から得られる手数料、トレーディング損益、営業投資有価証券関連損益等が大幅に変動するという特性を持っております。当社グループでは業績の安定性を向上させるべく、ウェルスマネジメント部門における預り資産の拡大やアセットマネジメント部門における契約資産残高の拡大、グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門の収益構造の多様化、市場リスクや信用リスクをはじめとする各種リスクの管理強化、経費管理の徹底等の努力を行っておりますが、これらの施策は有価証券関連業務に伴う業績の変動性をカバーすることを保証するものではなく、とりわけ経済・金融情勢が著しく悪化した場合には、当社グループの業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループの過去3連結会計年度における連結業績の推移は次のとおりです。

 

 

 

(単位:百万円)

回次

第86期

第87期

第88期

決算年月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

営業収益

866,090

1,277,482

1,372,014

純営業収益

464,226

590,910

645,990

経常利益

86,930

174,587

224,716

親会社株主に帰属する当期純利益

63,875

121,557

154,368

 

(7)ウェルスマネジメント部門におけるビジネス・リスク

 ウェルスマネジメント部門では、市況の低迷でお客様の証券投資需要が低調となったり、証券市場のリスクを避ける投資行動が強まったり、リスク資産を保有することそのものに対して消極的な傾向が強まったりすると、収益が大きく低下する可能性があります。また、店舗、営業員、オンライン取引システム等を必要とするため、不動産関係費、人件費、システム投資等に係る減価償却費等の固定的経費を要する傾向があります。したがって、上記のような要因により収益が大きく低下したときは、経費抑制努力では対応しきれず、採算割れとなるリスクがあります。なお、連結子会社である株式会社大和ネクスト銀行(以下、「大和ネクスト銀行」という。)に起因する「銀行業に伴うビジネス・リスク」は(8)に記載しています。

 

(8)銀行業に伴うビジネス・リスク

 当社グループのウェルスマネジメント部門では、連結子会社である大和ネクスト銀行が、同行の銀行代理店である大和証券株式会社(以下、「大和証券」という。)を通じて、お客様向けサービスを提供しております。

 大和ネクスト銀行においては、大和証券やインターネット等を通じたお客様からの預金受入れ等により調達した資金を、貸出や債券その他有価証券投資等により運用しておりますが、銀行業は、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、システムリスク、コンプライアンスリスク、事務リスク、情報セキュリティリスク、外部委託にかかるリスク、イベントリスク、レピュテーショナルリスク、自己資本比率低下リスク等、様々なリスクへの対応が必要となります。このような広範に渡るリスクの管理態勢の整備、維持及び改善等の対応を進めておりますが、これらの対応が不十分であった場合、金融政策の変更等による運用資産の利回り低迷や調達金利の上昇等により期待された利鞘が確保できない場合、競合する他の銀行との差別化戦略が期待どおりに進まず競争力が発揮できなかった場合等においては、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)アセットマネジメント部門におけるビジネス・リスク

 アセットマネジメント部門は、証券アセットマネジメント、不動産アセットマネジメント及びオルタナティブアセットマネジメントの各ビジネスにより構成されております。

 証券アセットマネジメントの収益は、運用資産の残高に基づく一定料率又は実績連動の報酬です。市場の変動によって運用資産の評価額が下落した場合や、お客様の資産運用の動向が変化(預金等の安定運用志向の高まりを含む。)したり、あるいは当社グループの運用実績が競合他社に比べて低迷する等して、解約等が増加し、運用資産が減少した場合には、当社グループの収益は減少します。

 他方、証券アセットマネジメントの経費構造は、システム関連経費や人件費が中心であり、固定費的な要素が強いため、収益の低下が著しい場合には採算割れとなるリスクがあります。

 不動産アセットマネジメントの収益は、運用資産の残高や不動産売買金額に基づく一定料率の報酬の他、不動産開発利益、不動産賃貸事業利益等から構成されております。不動産市場の変動等により、運用資産の評価額下落や運用資産の収益性低下、不動産売買取引の減少、不動産取引価格の低迷、不動産開発用地の取得価格上昇、建設資材の価格上昇等が生じた場合に、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 他方、不動産アセットマネジメントの経費構造は、人件費や不動産関係費、不動産賃貸事業費用等から構成されており、これらの費用の上昇及び収益の著しい低下等が生じた場合に、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、不動産アセットマネジメントには、当社グループの連結子会社である大和証券オフィス投資法人及びサムティ・レジデンシャル投資法人、持分法適用関連会社である大和証券リビング投資法人が含まれております。これらの不動産投資法人は、投資信託及び投資法人に関する法律に基づく投資法人であり、株式会社東京証券取引所不動産投資信託証券市場に上場し、投資口及び投資法人債の発行並びに金融機関等からの借入れ等により資金調達をし、大和証券オフィス投資法人は主としてオフィスビル、サムティ・レジデンシャル投資法人は主として賃貸住宅、及び大和証券リビング投資法人は主として賃貸住宅及びヘルスケア施設を中心とした不動産及び不動産を信託財産とする信託受益権等に対して投資し、不動産の賃貸や売却等により回収することを主たる事業としております。

 大和証券オフィス投資法人、サムティ・レジデンシャル投資法人及び大和証券リビング投資法人の事業は、市場環境や経済情勢の変動、調達金利の変動、テナントの入退居、賃料の改定・不払い、テナント・信託の受託者その他関係者の倒産等、固定資産税その他諸費用の変動、不動産に係る欠陥・瑕疵の存在、災害等による建物の滅失・劣化・毀損、所有権その他不動産の権利関係、有害物質の存在、環境汚染、行政法規・税法(投資法人と投資主の二重課税を排除するための税法上の要件を含む。)その他法令等の制定・変更、取引所規則等の制定・変更等の様々な事情により影響を受ける可能性があります。これらにより、期待する水準又は時期による賃料や売却収入が得られなかったり、評価損が発生したりした結果、大和証券オフィス投資法人、サムティ・レジデンシャル投資法人及び大和証券リビング投資法人が損失を計上した場合等には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 オルタナティブアセットマネジメントでは、当社グループが運営管理するファンドの資金により、主に国内外のベンチャー企業、中小企業等への投資を行うファンド運営業務と、自己の資金により、主に国内外の中小企業やエネルギー及びインフラストラクチャー分野の国内外の資産等への投資を行うプリンシパル・インベストメント業務を行っており、ファンド運営業務ではファンドからの管理報酬及び成功報酬を、プリンシパル・インベストメント業務では、投資期間中のインカムゲインや売却時のキャピタルゲインを、それぞれ主な収益源としています。

 ファンド運営業務では、その特性上、投資活動の成否はキャピタリスト等の人材に大きく依存し、有能な人材を確保・育成し定着できない場合、投資活動に支障をきたすリスクがあります。また、ファンド募集において、ファンド出資者から十分な資金を集めることができない場合、投資活動に支障をきたす可能性があるほか、管理報酬が減少し当社グループの業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。さらに、投資対象となる中小企業等は、ビジネスモデルや経営基盤が安定していない、創業者等の特定の人物に対する依存度が著しく高い、経営に何らかのリスク要因を抱える等、多種多様なリスク要因を包含しております。また、投資対象のベンチャー企業等が株式公開を目指す場合には、実際の公開に至るまでの、投資期間も長期に亘る傾向があります。加えて、投資先企業のすべてが株式公開を実現する保証はなく、投資先企業の株式公開が実現した場合においても、当該企業の株式等の取得原価を上回る価額で当該株式等を売却できるとは限りません。これらの要因により、投資先企業が倒産する可能性のほか、取得原価を上回る価額で株式等を売却できずに期待されたキャピタルゲインが実現しない可能性や売却損又は評価損が発生する可能性があり、ファンドのパフォーマンスに、ひいては当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 プリンシパル・インベストメント業務では、保有する有価証券や投資資産の流動性が低く保有期間が長くなる傾向にあること、投資先の分散によるリスク抑制が行い難いこと、中小企業等への投資の場合は投資開始時点で経営に何らかのリスク要因のある企業へ投資する場合があること、国内外の法規制等により株式等の処分が妨げられたり処分までに長期間を要する場合があること、エネルギー及びインフラストラクチャー分野の国内外の資産等への投資の場合は投資資産の対象企業その他関係者の信用状態の変化、経済環境の変化、公的施策の動向、規制の強化、政情不安、自然災害、為替・金利動向、資源価格の動向、投資資産の所在国のカントリーリスク等による影響を受ける可能性があること等、多種多様なリスク要因を包含しています。これらの要因により、保有期間中に期待したインカムゲインが得られない可能性や、評価損が発生する可能性があり、また、売却する場合において、取得原価を上回る価額で売却できるとは限らないため、期待された売却益が実現しない可能性や売却損が発生する可能性があります。

 

(10)グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門におけるビジネス・リスク

 グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングの各ビジネスにより構成されております。

 グローバル・マーケッツにおける現物取引やデリバティブ取引等のトレーディング業務には、市場動向や税制、会計制度の変更等の影響でお客様の取引需要が減少して収益が低下するリスクや、急激かつ大幅な市況変動でディーラーの保有ポジションの時価が不利な方向に変動して損失が発生するリスク、低流動性のポジションを保有していたため市況変動に対応して売却することができず損失が発生するリスク等があります。

 これらのうち、主要なものは市場リスク(株式・金利・為替・コモディティ等の相場が変動することにより損失を被るリスク)と信用リスク(与信先の財務状況の悪化等により、資産(オフバランス資産を含む。)の価値が減少ないし消失し、あるいは債務が履行されないことにより損失を被るリスク)です。当社グループでは、各商品のトレーディングにかかるリスクを軽減するために、各商品の過去の市場価格の推移や各商品の価格変動の相関を参考に、必要に応じて様々なヘッジ取引を行っておりますが、予想を超える市場の変動や突発的に発生する個別の事象等により、ヘッジが有効に機能しない可能性もあります。さらに、トレーディング・ポジションの内容が特定の銘柄や業種等に偏ると、ポートフォリオ全体の分散効果が得られにくくなるほか、ポジションの円滑な処分も困難になるため、リスクが顕在化した場合の損失額が大きく膨らむ傾向があります。

 グローバル・マーケッツにおけるブローカレッジ業務では、市況の低迷でお客様の証券投資需要が低調となったり、リスクを避ける投資行動が強まったり、リスク資産を保有することそのものに対して消極的な傾向が強まったりすると、収益が大きく低下する可能性があります。また、法人のお客様向けの大規模な取引システム等を必要とするため、システム投資等に係る減価償却費等の固定的経費を要する傾向があります。したがって、上記のような要因により収益が大きく低下したときは、経費抑制努力では対応しきれず、採算割れとなるリスクがあります。

 また、グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、法人のお客様の財務面でのニーズに対応して、債券、上場株式、新規公開株式、資産流動化証券等の引受け、募集・売出しを行うほか、仕組み証券やストラクチャード・ファイナンスの組成に関する業務、M&A、事業再編や新規公開に関するアドバイザリー業務も行います。これらの業務には、概して証券市況に影響されて取引規模及び取引量が急激に変動する特性があります。また、引受業務には、引受けた証券が市況の下落等で円滑に投資家に販売できない場合、引受けた証券を保有すること等により、市場価値の下落による損失を被るリスクがあります。引受業務におけるポジション・リスクは、単一の銘柄でかつ巨額なポジションとなり、適時に効果的なリスク回避の手段をとることができないため、通常のトレーディングにおけるポジション・リスクよりも重大なリスクとなり得ます。また、引受業務には、有価証券の募集・売出しにかかる発行開示が適切になされなかった場合には、金融商品取引法に基づき引受会社として投資家から損害賠償請求を受けるリスクがあります。

 

(11)投資有価証券に関するリスク

 当社グループは、提携・友好関係の維持や構築等を目的として、対象企業等の株式等を保有することがあります。このうち、市場性のある株式等については市場価格の下落により、それ以外の株式等については当該対象企業等の財政状態及び経営成績の悪化等に起因する評価損あるいは減損損失が発生することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、上記株式等について、保有意義の希薄化等を理由に売却を実行する際、市場環境若しくは対象企業等の財政状態及び経営成績等によっては、期待する価格又は時期に売却できない可能性があります。

 

(12)海外事業に関するリスク

 当社グループは、欧米等の先進国並びに新興国市場を含むアジアに広範な事業基盤を有しております。

 海外の事業基盤は、国内の事業基盤と比較すると、お客様の取引ニーズの変動や市場環境、政治・金融・経済情勢の変動等の影響をより強く受ける場合があり、これらの変動の程度やリスク管理の状況によっては減収又は損失を被る可能性があります。また、海外事業については、投下した資本並びに収益が為替変動リスクに晒されていることや、事業を展開する国における法規制等の変更により、当社グループ又は当社グループが出資する合弁会社等の事業が制約を受ける可能性があることのほか、投下資本の価値が変動する可能性があります。

 

(13)自己資本規制・流動性規制に関するリスク

 当社グループは、当社が金融商品取引法上の最終指定親会社に該当するため、「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(平成22年金融庁告示第130号)の適用を受け、同告示第2条に基づいて連結自己資本規制比率を所定の比率(連結普通株式等Tier1比率4.5%、連結Tier1比率6%、連結総自己資本規制比率8%。以下、「最低所要連結自己資本規制比率」と総称する。)以上に維持する必要があります。また、当社グループは2025年3月末からバーゼルⅢ最終化を適用しております。

 当社グループは、上記の最低所要連結自己資本規制比率の充足に加え、2016年3月末以降は、資本保全バッファー比率2.5%とカウンター・シクリカル・バッファー比率の合計に、当社がD-SIBs(Domestic Systemically Important Banks: 国内のシステム上重要な銀行)に指定されたことによる上乗せ分0.5%を加えた最低資本バッファー比率の維持が必要となっています。

当社グループは、「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準の補完的指標として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準」(平成31年金融庁告示第13号)が適用され、2024年6月末から連結レバレッジ比率を3.15%以上に維持することが求められています。

当社グループは、「金融商品取引法第57条の17第1項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性のうち流動性に係る健全性の状況を表示する基準」(平成26年金融庁告示第61号)が適用されており、同告示に基づき2015年3月末から連結流動性カバレッジ比率、さらに2021年9月末からは連結安定調達比率を所定の比率(100%)以上に維持する必要があります。

また、連結子会社のなかにも同様に類似の規制を受けている会社があります。大和証券、リテラ・クレア証券株式会社及び大和コネクト証券株式会社は、金融商品取引法に定める自己資本規制比率を同法に基づいて120%以上に維持する必要があります。大和ネクスト銀行は、「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(平成18年金融庁告示第19号)に定める自己資本比率(国内基準)を同告示に基づいて4%以上に維持する必要があります。(大和ネクスト銀行も2025年3月末からバーゼルⅢ最終化を適用しております。)海外の連結子会社についても同様の会社があります。

 当社グループの上記比率又は連結子会社の自己資本規制比率が著しく低下した場合には、レピュテーショナルリスクの波及や信用水準の低下により流動性懸念が生ずる可能性があります。さらに、上記の各規制により要請される最低基準を下回った場合に有効な対策(資本増強策等)を講じられない場合には、内外の監督当局から業務改善命令や業務の全部又は一部の停止等の措置を受ける可能性があります。

 当社グループにおいて上記の自己資本規制・流動性規制を遵守するために、規制により要請される最低水準に適切なバッファーを上乗せした社内管理水準を会議体で決議して、自己資本規制比率・流動性規制比率のモニタリングを行い、遵守状況について経営に報告しております。

 規制比率がこの社内管理水準を下回った場合には、CFOは、規制担当部署を通じ原因の発生したグループ会社に対し、当該状況、要因及び事後の対応方針等を報告させます。また必要に応じて、社内管理水準を回復するよう予め定めた対応策を実施します。

 もっとも、これらの対応策にもかかわらず自己資本規制・流動性規制を遵守できなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)当社グループが発行する有価証券に関するリスク

 当社株式は、東京及び名古屋の各金融商品取引所に上場しており、その売買については金融商品取引法をはじめとする関連法令及び各金融商品取引所が定める諸規則等に基づいて行われております。これらの規則等により、当社に係る重要情報の周知を目的として売買停止の措置がなされ、あるいは当社株式について大量の注文執行により売買が一時的に停止される等、当社株式の売買ができなくなる状況が生じる可能性があります。

 当社は、ストック・オプションの目的で新株予約権を発行しておりますが、将来において新株予約権の行使がなされた場合は、1株当たり利益が希薄化する可能性があります。また、当社株式を大量に保有する株主が当社株式を売却することに伴って、株価が下落する可能性があります。

 

(15)流動性リスク

 当社グループは、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務や、投融資業務を行っております。このため、適切な流動性を確保し、財務の安定性を維持することが必要となります。しかし、市場環境の変化や当社グループ各社の財務内容の悪化などにより、資金繰りに支障をきたすリスク、あるいは通常よりも著しく高いコストでの資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスクがあります。

 当社グループの資金調達が困難になった場合には、保有する資産を圧縮する等の対応が必要となります。しかし、市場環境の悪化により市場全体の流動性が低下すると、当社グループが売却しようとする資産のうち信用度の低い資産の流動性はより一層低下し、保有資産の処分ができなくなったり、取得原価を大幅に下回る価格であっても売却せざるを得なくなるリスクがあります。

 こうした流動性リスクが顕在化した場合、当社グループの業務継続が困難になる可能性や、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)オペレーショナルリスク

 当社グループは、多様な業務を行うことに伴うオペレーショナルリスクに晒されており、かかるリスクが顕在化した場合には、当社グループが損失を被ること等により、当社グループの業績及び社会的信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、オペレーショナルリスクを以下のように分類して管理しております。

・事務リスク

役職員が正確な事務を怠る、あるいは事故・不正等を起こすことにより損失を被るリスク

・システムリスク

コンピュータシステムのダウン又は誤作動、システムの不備等に伴い、損失を被るリスク、さらにコンピュータが不正に使用されることにより損失を被るリスク

・情報セキュリティリスク

情報資産に対する脅威の発現のために、情報セキュリティ(機密性、完全性、可用性の維持)が確保されないリスク

・コンプライアンスリスク

役職員が企業倫理及び法令諸規則等に従わないことにより損失を被るリスク(役職員の不適切な行為により、お客様、お取引先に不利益が生じる、又は市場の健全性が損なわれるリスクであるコンダクトリスクを含む)並びにお客様等との法的紛争により損失を被るリスク

・リーガルリスク

不適切な契約締結、契約違反により損失を被るリスク

・人的リスク

労務管理や職場の安全環境上の問題が発生することにより損失を被るリスク、必要な人的資源が確保されないリスク

・有形資産リスク

自然災害や外部要因又は役職員の過失などの結果、有形資産の毀損等により損失を被るリスク

 当社グループでは、特に有価証券関連業務において、取引の執行や決済等を処理するコンピュータシステムのダウン又は誤作動、システムの不備、システムの新規開発・統合等に起因するシステム障害、サイバー攻撃等によるデータの改ざんやお客様の情報の流出等が発生した場合、業務が正常に行えなくなることによる機会損失や損害賠償責任の発生、社会的信用の低下等を通じて当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループが最近重要性を増していると認識しているオペレーショナルリスクとしては、以下が挙げられます。

・サイバーセキュリティリスク

外部からのサイバー攻撃によるシステムサービスの停止、情報漏えい、データ改ざん等により損失を被るリスク

・マネー・ローンダリング及びテロ資金供与にかかわるリスク

金融庁作成の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」をはじめ、各国の規制等に基づき態勢整備を実施するも有効に機能せず、当社グループがマネー・ローンダリング等に関与してしまうリスク

・外部委託先管理リスク

業務委託先の不適切な選定、契約不備、倒産・買収等による業務撤退、不正行為、過失等により損失を被るリスク

 

(17)規制等に関するリスク

 当社グループの各社は、その業務の種類に応じた法令や自主規制団体の規程等による規制を受けております。グループの主たる証券会社である大和証券をはじめ、大和アセットマネジメント株式会社、大和企業投資株式会社等が、金融商品取引業者として金融商品取引法等の規制を受けているほか、大和ネクスト銀行が銀行法等の規制を受けております。

 また、大和証券は貸金業等の兼業業務に関して関係法令上の規制にも服しております。さらに、当社グループは金融商品取引法の定めにより、親法人等・子法人等が関与する行為の弊害防止のため、当該関係を利用した一定の取引の制限や、親法人等・子法人等間での情報授受や利用の制限等を受けており、お客様の利益が不当に害されることがないよう、適切な情報管理と内部管理体制の整備が求められております。また、当社は、一部のグループ各社の主要株主として、監督当局が公益又は投資家保護のために必要かつ適当であると認めるときは報告・資料提出命令を受ける等一定の規制を受ける可能性があります。一方、海外の子会社には現地の法制上、証券会社や金融機関としての規制を受けるものもあります。

 なお、当社は、特別金融商品取引業者である大和証券の最終指定親会社として監督当局の連結規制・監督の対象となっております。また、当社グループは「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」における「指定親会社グループ」に該当し、連結自己資本の適切性を含む一定の事項について連結ベースでの監督を受けております。

 加えて、G20(金融・世界経済に関する首脳会合)主導の下、各種金融規制・監督の強化が包括的に進む中、これらの国際的な金融規制や各国独自の金融規制が当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 上記のように、当社グループの事業の多くは行政及び自主規制団体による監督・規制やグローバルな金融規制のもとにあり、将来における法規・規程、政策、規制の変更が当社グループの事業活動や経営体制、さらには当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)法令遵守に関するリスク

 当社グループは、グループ全体の内部統制機能を強化し、より充実した内部管理体制の構築に努めるとともに、役職員に対する教育・研修等を通じ、インサイダー取引規制を含め法令遵守の徹底に注力しております。しかしながら、事業を進めていく上で、その執行過程に関与する役職員の故意又は過失により法令違反行為が発生する可能性は排除し得ず、周到な隠蔽行為を伴った意図的な違法行為等については、長期間にわたって発覚しない可能性もあるため、当社グループの業績に悪影響を与えるような規模の損害賠償を取引先等から求められる可能性があります。

 さらに、役職員の不正行為のみならず、法人としての当社又はグループ会社に法令違反その他の問題が認められた場合には、監督当局から課徴金の納付命令、業務の制限又は停止等の処分・命令を受ける可能性があります。また、当社グループは情報管理の徹底や「個人情報の保護に関する法律」への対応については万全の体制を敷いていると認識しておりますが、過失や不正行為等により当社グループの保有する顧客情報等各種の情報が外部に流出した場合、当社グループの信用が失墜し、クレームや損害賠償請求、監督当局からの処分等を受ける可能性があります。

 当社グループの事業は、お客様からの信用に基づく部分が大きいため、法令遵守上の問題が発生し当社グループに対する社会的信用が低下した場合には、お客様との取引が減少し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす事態が生じる可能性があります。

 

(19)財務報告に係る内部統制に関するリスク

 当社は、金融商品取引法の財務報告に係る内部統制に関する規定及び関連する諸規則の施行に伴い、財務報告に係る内部統制に必要な体制整備・運営に努めております。まず業務プロセスの選定に際しては、連結ベースの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)の評価をもとに、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性を考慮しております。業務プロセスに係る内部統制の評価範囲については、重要な事業拠点における重要な勘定科目を選定し、これに至る業務プロセスを主な評価対象としております。評価対象とした各プロセス並びに全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスについては、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点の整備及び運用状況を検証することによって、内部統制の有効性に関する評価を行っております。しかしながら、こうした取組みが有効に機能せず、監査法人による内部統制監査の結果、財務報告に係る内部統制に重要な不備が発見された場合等においては、当社グループの社会的信用が低下し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)訴訟リスク

 当社グループでは、経営方針等において、お客様本位の営業姿勢を掲げており、今後もより一層のサービスの拡充に努めていく所存ではありますが、お客様に対する説明不足やお客様との認識の不一致等によってお客様に損失が発生した場合には、当社グループが訴訟の対象となることがあります。その損失が当社グループの責任に起因する場合、当社グループは民法上、金融商品取引法上、又はその他の根拠に基づく損害賠償義務を負う可能性があります。このほか当社グループは、広範な事業を行い、様々な規制に服していることから、多数の当事者を巻き込み、多額の請求金額に上るものを含め、様々な訴訟リスクに晒されており、訴訟に伴う損害賠償そのもののみならず訴訟内容に起因する社会的信用の低下が当社グループの事業活動や経営体制、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループが事業に関して使用している商標やビジネスモデル等のなかには、現在出願中のため、権利が確定していないものもあります。当社グループの確認の不備等がなかった場合においても、結果として当社グループが第三者の知的財産権を侵害し、損害賠償請求又は差止請求を受ける可能性があります。

 

(21)レピュテーショナルリスク

 当社グループの事業は、法人、個人のお客様や市場関係者からの信用に大きく依存しております。「3 事業等のリスク」に記載した事象が発生した場合、特に「(16)オペレーショナルリスク」、「(18)法令遵守に関するリスク」、「(19)財務報告に係る内部統制に関するリスク」及び「(20)訴訟リスク」に記載したように、当社グループや役職員の責任に起因する法令違反や訴訟等が発生した場合には、当社グループの社会的信用が低下する可能性があります。また、憶測に基づいたり、必ずしも正確な事実に基づいていない風説・風評の流布に晒された場合、その内容が正確でないにもかかわらず、当社グループの社会的信用が低下する可能性もあります。その結果、お客様による取引停止等が生じ、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(22)リスク管理及び手続の有効性に関するリスク

 当社グループは、リスク管理方針を踏まえて手続の強化に努めておりますが、リスク管理の有効性は事業内容やグループ内各企業の特性により異なります。また、新しい分野への急速な業務展開に際しては、必ずしも有効に機能しない可能性があります。

 なお、リスク管理方針については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④リスクアペタイト・フレームワーク及び⑤リスク管理体制の整備の状況」に記載しております。

 リスク管理の前提としては、市場や投資先に関する情報の収集・分析・評価が重要となりますが、その情報自体が不正確、不完全、あるいは最新のものではないことにより、適切な評価が行えない場合があり、また、一部のリスク管理手法においては、過去の動向に基づく定量的判断を伴うものがあるため、予想を超えた変容や突発的事象に対しては、必ずしも有効でない可能性があります。リスク管理が有効に機能しない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(23)優秀な人材を確保・育成できないリスク

 当社グループでは、有価証券関連業務を中心に高度な専門性を必要とする業務を行っております。いずれの分野でも高いパフォーマンスを発揮するには、優秀な人材の確保と専門人材の育成が前提となるため、業務特性に応じた人事制度、研修制度の充実及びその継続的な改善、採用活動の強化に努めております。しかしながら、金融業界内外において、人材獲得競争は激しく、優秀な人材の採用と育成が困難な状態や外部、特に競合他社への大量流出等が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(24)会計基準や税制等の変更に関するリスク

 日本の会計基準は国際財務報告基準(IFRS)とのコンバージェンスを進めているところであり、ここ数年の間に数多くの改正が行われ、今後もさらなる改正が予定されております。また、IFRS任意適用を促進する方策も打ち出されており、将来日本においてIFRSが強制適用される、あるいは当社がIFRSの任意適用を行う可能性もあります。これらの改正、強制適用あるいは任意適用が行われた場合、当社グループの事業運営や業績等の実体に変動がない場合であっても、例えば収益の認識、資産・負債の評価、連結範囲の見直し等に係る会計処理方法が変更されることに伴い、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、税制等が変更されることとなった場合においても、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(25)その他のリスク

 当社グループでは、コンピュータシステムの取得・構築に係る投資により発生する償却コスト及び維持・運営コストの増大が業績に悪影響を及ぼす可能性があるほか、店舗・オフィス等の不動産やコンピュータシステム等について、資産の陳腐化や収益性若しくは稼働率の低下が生じた場合又はこれらの処分が行われた場合には、減損処理による損失計上や除売却損失の計上が必要となる可能性もあります。

 このほか、当社グループは税効果会計に係る会計基準に基づいて、税務上の便益を将来の課税所得等に関する見積りや仮定に基づき繰延税金資産として計上しております。実際の課税所得等は見積りや仮定と異なる可能性があり、将来において繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断した場合には繰延税金資産は減額され、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすことになります。

 

リスクが顕在化する時期

 当社グループは、可能なものについては、リスクが顕在化する時期について短期、中長期等の想定を置き、発生の可能性、発生時の影響度等も勘案して、各種ストレステストに反映させる対応をしております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に基づき作成されております。また、当社は、連結財務諸表を作成するにあたり、会計方針に基づいていくつかの重要な見積りを行っており、これらの見積りは一定の条件や仮定を前提としております。そのため、条件や仮定が変化した場合には、実際の結果が見積りと異なることがあり、結果として連結財務諸表に重要な影響を与える場合があります。重要な会計方針のうち、特に重要と考える項目は、次の4項目です。

 

① トレーディング商品の評価

当社グループでは、トレーディング商品に属する有価証券及びデリバティブ取引は、時価をもって連結貸借対照表価額とし、評価損益はトレーディング損益として連結損益計算書に計上しております。また、「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号 2019年7月4日)等を適用しており、トレーディング商品の時価は、時価の算定に用いたインプットの観察可能性及び重要性に応じて、3つのレベルに分類しております。これらの時価は「第5 経理の状況 (金融商品関係) 2. 金融商品の時価等及び時価のレベルごとの内訳等に関する事項」に記載しております。

 

 時価測定に用いた評価技法及びインプットの詳細は以下のとおりであります。これらは、市場参加者が商品を評価するときに考慮するであろう当社グループによる仮定及び見積りを含んでおります。

(ⅰ)商品有価証券等

 主に同一又は類似の商品に関する市場価格を用いております。また、特定の負債性金融商品及び資産担保証券については、デリバティブ取引に準じた評価技法もしくは、ディスカウント・キャッシュ・フロー・モデルにより時価を測定しております。

 

(ⅱ)デリバティブ

 上場デリバティブについては原則として市場価格を、店頭デリバティブについては、評価技法により理論価格を算定しております。

 デリバティブ取引の理論価格には、信用リスク及び流動性リスクを考慮した調整が含まれており、時価測定においては、市場で一般に用いられるリスク中立測度の仮定のもとでの期待キャッシュ・フローの現在価値を、主に数値積分法、有限差分法及びモンテカルロ法による価格算定モデルにより算定しております。

 価格算定モデルには、金利、為替レート、株価、ボラティリティ、相関係数などの様々なインプットがあります。また、市場で観察可能でないインプットとしては、相関係数、長期のボラティリティ、長期のクレジット・スプレッドなどがあります。

 価格算定モデルの選択及びその価格算定モデルに投入するインプットの決定、信用リスク及び流動性リスクにかかる評価調整には見積り及び前提を含んでおり、特に、市場で観察可能でないインプットを使用する場合には、その見積り及び前提は、トレーディング商品の評価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 算定に用いたインプットを含め、価格算定モデルは社内における指針に基づいて承認され、価格算定モデルの開発部署から独立した部署が、モデル内の仮定及び技法、算定に用いたインプットについて検証を行っております。また、価格算定モデルを観察可能な市場情報や代替可能なモデルとの比較分析等により、市場動向に合わせて調整する体制を構築しております。

 

 経営者は、時価測定に用いられた前提は合理的であると考えております。しかしながら、これらの見積りには不確実性が含まれているため、将来キャッシュ・フローや時価の下落を引き起こすような見積りの変化が、評価金額に不利に影響し、結果として、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

 

② 有価証券の評価

 当社グループでは、投資有価証券、営業投資有価証券等のトレーディング商品に属さない有価証券を保有しております。

(ⅰ)投資有価証券

 市場価格のあるものについては、市場価格が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。具体的には、当連結会計年度末における市場価格の下落率が取得原価の50%以上の場合は、著しい下落かつ回復する見込みがないものと判断して、減損処理を行っております。市場価格の下落率が取得原価の30%以上50%未満の場合は、市場価格の推移及び発行会社の財政状態等を総合的に勘案して回復する見込みを検討し、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。市場価格のないものについては、実質価額が著しく低下し、かつ、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられない場合には、減損処理を行っております。

 

(ⅱ)営業投資有価証券

 営業投資有価証券は、アセットマネジメント部門における非上場株式、国内外の再生可能エネルギー、インフラストラクチャーへの投資等により構成されております。

 営業投資有価証券の評価については、その評価額に基づき実質価額を見積り、その実質価額が帳簿価額を下回り、損失発生の可能性が高い場合には投資損失引当金を計上しております。さらに、実質価額が帳簿価額に比して50%以上下落し、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられない場合には、減損処理を行っております。実質価額の算定の前提となる当社の財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。

 

1) 非上場株式

 株式の評価額は、投資先の事業計画等をもとにした将来キャッシュ・フロー、類似取引事例との比較などにより算定しております。

 

2) 国内外の再生可能エネルギー、インフラストラクチャーへの投資等

 評価額は、投資先の事業計画等をもとにした将来キャッシュ・フロー、財政状態などにより算定しております。

 

 これらの評価額の測定には経営者が妥当と判断する見積り及び仮定を使用しており、これらの見積り及び仮定は、減損損失又は投資損失引当金の計上の要否の判断及び認識される損失金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 経営者は、実質価額の見積りに用いられた仮定は合理的であると判断しております。ただし、これらの見積りには不確実性が含まれているため、将来の予測不能な前提条件の変化などにより、これらの評価に関する見積りが変化した場合には、結果として将来において当社及び連結子会社が減損処理又は投資損失引当金の計上を行う可能性があります。

 

③ 固定資産の減損

 当社グループでは、各資産グループにおいて、収益性が著しく低下した資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。なお、資産のグルーピングは、事業用資産のうち、証券店舗等の個別性の強い資産については個別物件単位で行い、その他の事業用資産については管理会計上の区分に従って行っております。

 

④ 繰延税金資産の状況

(ⅰ)繰延税金資産の算入根拠

 当社グループでは、会計基準に従い、税務上の繰越欠損金や企業会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差額である一時差異について税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しております。

 

(ⅱ)過去5年間の課税所得(繰越欠損金使用前の各年度の実績値)

 

 

 

(単位:百万円)

回次

第83期

第84期

第85期

第86期

第87期

決算年月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

通算グループの課税所得

60,907

92,842

106,263

51,393

161,466

(注) 提出会社を通算親法人とする通算グループの所得を記載しております。また、記載した課税所得は法人税確定申告書上の繰越欠損金控除前の数値であり、その後の変動は反映されておりません。

 

 なお、当連結会計年度末に係る連結貸借対照表上の繰延税金資産78億円のうち、提出会社を通算親法人とする通算グループの計上額合計は31億円であります。

 

(ⅲ)見積りの前提とした税引前当期純利益の見込額

 提出会社を通算親法人とする通算グループの課税所得見積期間を3年とし、同期間の税引前当期純利益を3,652億円と見積もっております。

 

(ⅳ)繰延税金資産・負債の主な発生原因

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 税効果会計関係 1」に記載のとおりであります。

 

 なお、ロシア・ウクライナ情勢及び中東情勢の緊迫化や、トランプ政権の関税政策による経済情勢や相場への影響は、現時点においてはこれらの見積りに重大な影響を及ぼしておりませんが、今後、入手可能となる情報等によりこれらの市場、経済又は地政学リスクが顕在化した場合には、会計上の見積りに用いられた前提条件に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループにおきましては、投資事業における保有資産の評価に関する見積りの変化による減損又は評価損の計上、不動産アセットマネジメント事業における資産の稼働率低下による財務内容悪化懸念などの可能性があります。

 

(2)当連結会計年度の財政状態の分析

<資産の部>

 当連結会計年度末の総資産は前年度末比3兆9,970億円(12.5%)増加の36兆243億円となりました。内訳は流動資産が同3兆8,364億円(12.6%)増加の34兆2,757億円であり、このうち現金・預金が同6,418億円(14.6%)減少の3兆7,567億円、トレーディング商品が同7,925億円(10.5%)増加の8兆3,275億円、有価証券担保貸付金が同3兆91億円(24.3%)増加の15兆3,775億円となっております。固定資産は同1,606億円(10.1%)増加の1兆7,486億円となっております。

 

<負債の部・純資産の部>

 負債合計は前年度末比3兆8,624億円(12.8%)増加の34兆1,010億円となりました。内訳は流動負債が同3兆8,978億円(14.5%)増加の30兆6,953億円であり、このうちトレーディング商品が同1兆5,733億円(26.8%)増加の7兆4,371億円、有価証券担保借入金が同3兆7,465億円(32.0%)増加の15兆4,454億円となっております。固定負債は同360億円(1.0%)減少の3兆3,993億円であり、このうち社債が同578億円(4.5%)減少の1兆2,184億円、長期借入金が同158億円(0.8%)増加の2兆366億円となっております。

 

 純資産合計は同1,346億円(7.5%)増加の1兆9,232億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は5,136億円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する当期純利益を1,543億円計上したほか、配当金745億円の支払いを行ったこと等により、同800億円(8.3%)増加の1兆414億円となっております。自己株式の控除額は同100億円(8.1%)減少の1,131億円、その他有価証券評価差額金は同27億円(5.2%)減少の501億円、為替換算調整勘定は同5億円(0.4%)減少の1,336億円、非支配株主持分は同176億円(6.8%)増加の2,772億円となっております。

 

(3)当連結会計年度の経営成績の分析

① 事業全体の状況

 当連結会計年度の営業収益は前年度比7.4%増の1兆3,720億円、純営業収益は同9.3%増の6,459億円となりました。

 受入手数料は4,164億円と、同16.2%の増収となりました。委託手数料は、株式取引が減少したことにより、同4.7%減の890億円となりました。引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は、エクイティ引受案件が増加したことにより、同24.5%増の479億円となりました。

 トレーディング損益は、為替関連取引収益が増加したこと等により、同9.4%増の1,073億円となりました。

 金融収支は、支払利息やレポ取引費用が増加したこと等により、同4.6%減の780億円となりました。

 販売費・一般管理費は同9.6%増の4,792億円となりました。取引関係費は、支払手数料が増加したことにより、同13.8%増の917億円、人件費は、賞与引当金繰入や給料が増加したことにより、同10.1%増の2,450億円となっております。

 以上より、経常利益は同28.7%増の2,247億円となりました。

 また、投資有価証券売却益等により特別利益が41億円(前年度184億円)、減損損失や事業再編等関連費用等により特別損失が98億円(前年度130億円)となり、法人税等及び非支配株主に帰属する当期純利益を差し引いた結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度比27.0%増の1,543億円となりました。

② セグメント情報に記載された区分ごとの状況

 純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

純営業収益

経常利益又は経常損失(△)

 

 

2024年

3月期

2025年

3月期

増減率

構成比率

2024年

3月期

2025年

3月期

増減率

構成比率

(注)

ウェルスマネジメント部門

228,131

255,841

12.1%

39.6%

66,213

80,664

21.8%

35.9%

アセットマネジメント部門

97,784

102,517

4.8%

15.9%

66,407

77,418

16.6%

34.5%

 

証券アセットマネジメント

47,083

57,960

23.1%

9.0%

20,959

27,841

32.8%

12.4%

 

不動産アセットマネジメント

28,455

29,619

4.1%

4.6%

27,041

29,029

7.4%

13.0%

 

オルタナティブアセットマネジメント

22,245

14,938

△32.8%

2.3%

18,406

20,547

11.6%

9.1%

グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門

220,479

234,196

6.2%

36.3%

44,037

42,738

△2.9%

19.0%

 

グローバル・マーケッツ

149,394

149,044

△0.2%

23.1%

37,648

29,005

△23.0%

12.9%

 

グローバル・インベストメント・バンキング

71,084

85,151

19.8%

13.2%

4,510

11,605

157.3%

5.2%

その他・調整等

44,515

53,435

8.2%

△2,069

23,895

10.6%

連結 計

590,910

645,990

9.3%

100.0%

174,587

224,716

28.7%

100.0%

(注)経常利益又は経常損失(△)の構成比率は、当連結会計年度において経常利益であったセグメントの経常利益合計に占める、各セグメントの経常利益の割合としております。

 

[ウェルスマネジメント部門]

 ウェルスマネジメント部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料と、大和ネクスト銀行における預金の受入れ等による調達資金の運用から得られる利鞘収入です。経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。

 当連結会計年度において大和証券は以下の事業計画に沿って活動を行いました。

1.お客様に対する深い理解に基づいた最適なコンサルティングの提供によるウェルスマネジメントビジネスの進化

2.富裕層や法人のお客様の高度なニーズに応えるオーダーメイドで付加価値の高い商品、サービス及びソリューションの拡充

3.デジタルマーケティングによるお客様に合わせたタイムリーかつ適切なサービス提供体制の確立

4.外部提携、ワークプレイス(職域)ビジネスによるお客様基盤の拡大

 各項目の実績は以下のとおりです。

1.当期も引き続き、お客様の資産状況やニーズなどのヒアリングを踏まえ、最適なポートフォリオ提案やソリューション提案を実践しました。これらの取組みにより、株式投資信託の純増額が過去最高となるなど、マーケット環境に左右されにくい収益基盤の構築が進展しました。

2.多様なお客様のニーズに応えられるよう、「ダイワ・ブラックストーン・インフラストラクチャー・ファンド(米ドル建て)」や「UBSユニバーサル・トラスト(ケイマン)Ⅲ -KKRプライベート・マーケッツ・エクイティ・ファンド(米ドル建て)」といったオルタナティブ資産を対象とした株式投資信託など、商品ラインアップの拡充に取り組みました。

 

3.データ分析による約定確率のスコアリングや、メール・画面ポップアップなどのデジタルアプローチを活用し、持株会を退会されたお客様や相続資金を受け取られたお客様などに対して、タイムリーかつ効率的なサービス提案を実現しました。

4.株式会社ゆうちょ銀行に提供している「ゆうちょファンドラップ」について、同行行員に対するサポート体制強化に努めたことで、お客様基盤の順調な拡大につながりました。また、株式会社四国銀行との包括的業務提携では、目標を3年前倒しで達成するなど有価証券資産残高が大きく拡大しました。さらに、2025年3月には株式会社岩手銀行と包括的業務提携に関する最終契約を締結し、提携業務の開始に向け体制を整備しています。

 当連結会計年度は、引き続きお客様の資産状況やニーズなどのヒアリングを踏まえ、最適なポートフォリオ提案やソリューション提案を実践しました。この取組みにより、ラップ口座サービスは契約額が過去最高となり、契約資産残高は4兆6,863億円となりました。また、オルタナティブ資産(注)を対象とした株式投資信託など多様なお客様のニーズに応えられるよう、商品ラインナップの拡充に取り組みました。その結果、株式投資信託の純増額も過去最高となるなど、マーケット環境に左右されにくい収益基盤の構築が進展しました。投信代理事務手数料及びラップ関連収益は増収となり、残高ベース収益は前年度比20.4%増の1,117億円と順調に拡大しました。

(注)オルタナティブ資産:伝統的な投資対象である上場株式や債券に代わる新たな投資資産。

 当連結会計年度において大和ネクスト銀行は以下の事業計画に沿って活動を行いました。

1.預金量の拡大と収益性の両立

2.グループ内連携の強化

3.国内外の金利環境に応じた運用残高の拡大や、運用対象の多様化

4.応援定期預金やESG投融資への継続的取り組み

 各項目の当連結会計年度における実績は以下のとおりです。

1.外貨預金について、業界トップ水準の金利を維持するとともに、キャンペーンの実施等により新規の預金を取り込みました。

2.大和証券との連携のもと、お客様のニーズを捉え、新たに不動産投資ローンを導入しました。

3.市況環境の変化に応じたポートフォリオの見直しと、投融資残高の拡大に向け取組みました。

4.サステナビリティKPIの一つである、ESG投融資の残高維持に向けた取り組みを行いました。

 大和ネクスト銀行の当連結会計年度末の預金残高(譲渡性預金含む)は前年度末比4.8%減の4.3兆円、銀行口座数は前年度比6.1%増の189万口座となりました。

 これらの結果、当連結会計年度のウェルスマネジメント部門における純営業収益は前年度比12.1%増の2,558億円、経常利益は同21.8%増の806億円となりました。

 

[アセットマネジメント部門]

アセットマネジメント部門は、証券アセットマネジメント、不動産アセットマネジメント及びオルタナティブアセットマネジメントで構成されます。

 証券アセットマネジメントの主な収益源は、当社連結子会社の大和アセットマネジメントにおける投資信託の組成と運用に関する報酬です。また、当社持分法適用関連会社である三井住友DSアセットマネジメントの投資信託組成と運用及び投資顧問業務に関する報酬からの利益は、当社の持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因には、マーケット環境によって変動するお客様の投資信託及び投資顧問サービスへの需要と、マーケット環境に対するファンドの運用パフォーマンスや、お客様の関心を捉えたテーマ性のある商品開発等による商品自体の訴求性が挙げられます。

不動産アセットマネジメントの主な収益源は、当社連結子会社の大和リアル・エステート・アセット・マネジメント、大和証券オフィス投資法人及びサムティ・レジデンシャル投資法人の不動産運用収益です。また、当社持分法適用関連会社であるサムティホールディングス株式会社の各子会社、及び同じく持分法適用関連会社である大和証券リビング投資法人の不動産運用収益からの利益は、当社の持分割合に従って経常利益に計上されます(注1、2)。経営成績に重要な影響を与える要因には、国内の不動産市場・オフィス需要の動向が挙げられます。

 オルタナティブアセットマネジメントの主な収益源は、当社連結子会社である大和企業投資、大和PIパートナーズ及び大和エナジー・インフラの投資先の新規上場(IPO)・M&A等による売却益や、投資事業組合への出資を通じたキャピタルゲインのほか、契約に基づきファンドから受領する、管理運営に対する管理報酬や投資成果に応じた成功報酬、投資した株式からの配当、売電収入などのインカムゲインです。経営成績に重要な影響を与える要因には、株式市場やIPO市場の動向、投資先企業の評価額に影響を及ぼす可能性のある経済環境の状況、保有する有価証券や投資資産の流動性が挙げられます。

 

 当連結会計年度において、アセットマネジメント部門は以下の事業計画を実行しました。

1.運用の高度化・商品開発力の向上を通じた高付加価値な資産運用サービスの提供

2.オルタナティブ商品の拡充や投資顧問領域への本格参入による新たなビジネス基盤の確立

3.不動産アセットマネジメント事業における資産運用力・物件ソーシング力の強化及びグループ内連携の推進

4.オルタナティブ投資の知見・実績を活かした良質な投資機会の提供及びパフォーマンスの追求

 各項目の実績は以下のとおりです。

1.大和アセットマネジメントでは高付加価値なアクティブファンドのマーケティングに注力し、新NISAへの好調な資金流入も背景に運用資産残高は過去最高水準となりました。

2.2025年2月に「ダイワ・ブラックストーン・インフラストラクチャー・ファンド」を新たに設定し、良質なオルタナティブ商品のラインナップ拡充に取り組みました。また、かんぽ生命との資本業務提携を通じて投資顧問ビジネス強化に取り組みました。

3.大和リアル・エステート・アセット・マネジメントでは運用するREITや私募ファンドを通じて運用資産残高が増加、大和証券リアルティでは信託受益権スキームを活用した不動産小口化商品を組成しウェルスマネジメント部門のお客様への提供を行いました。

4.大和PIキャピタルでは運営するプライベート・エクイティファンドにおいて目標を上回る出資約束を得て募集を完了し、オルタナティブ投資の知見・実績を活かして良質な投資機会を提供しました。大和企業投資では、国内外の成長企業へ着実に投資を実行したほか、投資先の上場などを通じた既存投資案件の回収を進めました。大和エナジー・インフラでは、国内、米州の太陽光発電事業や蓄電池事業に投資をしたほか、欧州における既存投資案件の回収を実行しました。

証券アセットマネジメントは増収増益となりました。大和アセットマネジメントの運用資産残高は、資金純増と時価の上昇により、前年度末比1.0兆円増の33.3兆円となりました。その結果、証券アセットマネジメントの純営業収益は前年度比23.1%増の579億円、経常利益は同32.8%増の278億円となりました。

不動産アセットマネジメントは運用する投資法人向けの物件売却による売却益の計上や運用報酬の積み上げにより増収増益となりました。新規の物件取得等により、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及びサムティ・レジデンシャル投資法人の2社を合わせた運用資産残高は前年度末比1,373億円増の1兆5,963億円となりました。その結果、不動産アセットマネジメントの純営業収益は前年度比4.1%増の296億円、経常利益は同7.4%増の290億円となりました。

オルタナティブアセットマネジメントは増益となりました。大和企業投資では、国内外の成長企業への投資や上場支援に貢献しながら、投資先の売却益により収益を確保しました。また、大和PIパートナーズでは、国内外で金銭債権投資、不動産ローン、企業向け投融資を実行するとともに、既存案件の回収を進め、大和エナジー・インフラでは、太陽光発電所の取得など、持続可能な開発目標(SDGs)に資する投資を実行しながら、欧州におけるエネルギー・インフラ投資のエグジット等、キャピタル・リサイクリングにより高水準の利益を確保しました。その結果、オルタナティブアセットマネジメントの純営業収益は前年度比32.8%減の149億円、経常利益は同11.6%増の205億円となりました。

これらの結果、当連結会計年度のアセットマネジメント部門の純営業収益は前年度比4.8%増の1,025億円、経常利益は同16.6%増の774億円となりました。

 

(注)1 当社の持分法適用関連会社であったサムティ株式会社は、2024年6月3日付で、単独株式移転の方式により設立されたサムティホールディングス株式会社を完全親会社とする持株会社体制に移行しております。かかる持株会社体制への移行後、当社はサムティホールディングス株式会社を持分法適用関連会社としており、サムティホールディングス株式会社の各子会社の不動産運用収益等からの利益が、当社の持分割合に従って経常利益に計上されております。

   2 2024年11月27日付でサムティホールディングス株式会社が公表したとおり、同社の普通株式に対するSong Bidco合同会社(以下「公開買付者」といいます。)による公開買付けは同月26日付で終了し、また、2025年1月29日付でサムティホールディングス株式会社が公表したとおり、同社は同月30日をもって上場廃止となりました。当社及び大和PIパートナーズは、公開買付者との間で不応募契約を締結しており、当社は、サムティホールディングス株式会社の上場廃止後も同社との資本関係を継続し、同社の企業価値の最大化を図る観点から、継続して同社の運営に関与します。

 

[グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門]

グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人、金融法人等が発行する有価証券の引受けやM&Aアドバイザリー業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングによって構成されます。

グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る顧客フロー収益及びトレーディング収益であり、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。

グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料であり、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。

当連結会計年度において、グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門として以下の事業計画を実行しました。

1.幅広いお客様ニーズを捉えた多様なプロダクト・高度なソリューションの提供

2.ウェルスマネジメント部門との更なる連携強化によるビジネス基盤の拡大

3.未上場企業への更なるソリューションの提供及び国内外M&Aの強化

4.経営資源のリアロケーションを通じた収益性の向上

各項目の実績は、以下のとおりです。

1.引受ビジネス、M&Aの取組みとして、政策保有株式の売却、金利上昇局面における前倒し負債調達、業界再編、といったお客様の多様なニーズを的確に捉えた提案を行い、案件の獲得に取り組みました。

2.データサイエンティストによる分析を活用したウェルスマネジメント部門における支店営業の効率化や地域の商流分析に基づくセミナーの実施などを通じ、お客様本位のマーケティング・コンテンツ提供に取り組みました。

3.未上場企業のお客様に対してIPOに留まらない多様なソリューションを提供し、国内外M&Aビジネスにおいては、効率的な収益拡大のためにアドバイザリーサービスの高付加価値化に取り組みました。

4.グローバル・インベストメント・バンキングでは、テーマ別でのアプローチや大型案件に注力することで収益性の向上に取り組みました。グローバル・マーケッツでは、世界的な日本株への関心の高まりを背景とした体制強化など、お客様ニーズに合わせたリソースの再配分を進め、収益向上を図りました。

グローバル・マーケッツのエクイティ収益は、海外投資家による日本株買いが好調に推移したことに加え、大型プライマリー案件の引受けなどに伴って個人投資家の売買が増加したことにより、増収となりました。フィクスト・インカム収益は、国内において金利上昇を背景に投資家の様子見姿勢が強まり、トレーディング収益が減収となりました。海外においても米国金利の高いボラティリティの影響により減収となりました。その結果、グローバル・マーケッツの当連結会計年度の純営業収益は前年度比0.2%減の1,490億円、経常利益は同23.0%減の290億円となりました。

グローバル・インベストメント・バンキングでは、株式会社ゆうちょ銀行の株式売出し、JX金属株式会社の新規上場において、グローバル・コーディネーター(注1)を務めたほか、NTTファイナンス株式会社による普通社債、KDDI株式会社によるサステナビリティボンド(注2)などで主幹事を務めました。当連結会計年度の引受け・売出し手数料は、前年度比24.5%増の479億円となりました。M&Aアドバイザリー業務では、株式会社トライアルホールディングスによる株式会社西友株式の取得、SCSK株式会社によるネットワンシステムズ株式会社への公開買付け、伊藤忠商事株式会社による株式会社デサントへの公開買付けなど、多くの案件に関与しました。これらの結果、グローバル・インベストメント・バンキングの当連結会計年度の純営業収益は前年度比19.8%増の851億円、経常利益は同157.3%増の116億円となりました。

 その結果、当連結会計年度のグローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門における純営業収益は前年度比6.2%増の2,341億円、経常利益は同2.9%減の427億円となりました。

 

(注)1 グローバル・コーディネーター:株式の公募・売出しを国内外に対して実施するときに、全体の業務を統括する主幹事証券会社。

   2 サステナビリティボンド:企業や地方自治体などが、国内外のグリーンプロジェクト及びソーシャルプロジェクト双方に要する資金を調達するために発行する債券。

 

[その他]

 その他の事業には、主に大和総研によるリサーチ・コンサルティング業務及びシステム業務などが含まれます。

 当連結会計年度において大和総研グループは以下の事業計画を実行しました。

1.リサーチクオリティのさらなる向上を通じて、より良質な情報をタイムリーに発信

2.ITサービスのプラットフォーム化、AI・データサイエンスの活用による顧客サービスの拡充

3.社会保険事業で蓄積してきたデータを活用したソリューションの提供により健康寿命の延伸に貢献

 各項目の当連結会計年度における実績は以下のとおりです。

1.シンクタンクとして、少子化対策をはじめ税制や社会保障に関する時宜を得た情報発信と政策提言活動を実施し、プレゼンス向上に寄与しました。

2.証券業務向け新基幹系プラットフォームの構築や、生成AIを活用した業務効率化ソリューションの提供を行いました。また、株式会社Workthy、Sky株式会社との資本業務提携を通じ、マイナンバーを活用した金融業界の行政手続きデジタル化と金融機関利用者の利便性向上や、事業会社向けソリューションの拡充を推進しました。

3.健康保険組合向け情報管理システム等の基幹システムについて、商品性強化や顧客満足度の向上を目的として再構築を実行したほか、人的資本経営ソリューションに関するサービス開発に取り組みました。

 大和総研は、当社グループのシステム開発を着実に遂行したほか、高付加価値のソリューション提案により、お客様との関係を強化したこと、また、大口顧客向けシステム開発案件を手掛けたこと等により、当社グループの収益に貢献しました。

 当連結会計年度は、その他セグメントに属する一部のグループ会社が前年同期比で増益となったことや、あおぞら銀行の株式取得及び持分法適用に係る負ののれん発生益等により、その他・調整等に係る純営業収益は534億円(前年度445億円)、経常利益は238億円(前年度経常損失20億円)となりました。

 

③ 目標とする経営指標の達成状況等

 当社グループでは、2024年度から2026年度にかけての中期経営計画~“Passion for the Best”2026~を公表し、業績KPIとして連結経常利益、連結ROE及びベース利益(注1)を掲げました。また、グループ経営基本方針である「お客様の資産価値最大化」を追求するお客様資産KPIとして、預り資産(注2)、ストック関連資産(注3)及びアセットマネジメント部門AUM(注4)を設定しました。

 中期経営計画初年度となる当連結会計年度においては、業績KPIは、連結経常利益2,400億円以上の目標に対し2,247億円、連結ROE10%程度の目標に対し9.8%、ベース利益1,500億円の目標に対して1,375億円となり、順調な滑り出しとなりました。お客様資産KPIは、預り資産120兆円の目標に対し90.2億円、ストック関連資産13.6兆円の目標に対し9.8兆円、AM部門AUM44兆円の目標に対し34.9兆円となり、着実に目標値に向けて増加しています。

 2024年度は、日本経済は長期にわたるデフレからの脱却が進み、金融政策の正常化の進展から「金利のある世界」が到来するとともに、株式市場では「貯蓄から投資へ」の流れが加速した歴史的な転換点を迎える年となりましたが、当社ではこうした経済環境を追い風に、グループ経営基本方針である「お客様の資産価値最大化」に向けて、ウェルスマネジメントビジネスの強化やアセットマネジメントビジネスの高度化が着実に進捗した一年となりました。また、中長期的な経営指針となる「2030Vision」の根底に取り入れたサステナビリティへの取組み推進においても、サステナブルファイナンスへの社会的ニーズの一層の高まりを受けてSDGs債の引受け実績を積み上げ、着実な進捗があったと評価しています。

 

(注)1 ベース利益:ウェルスマネジメント部門、証券アセットマネジメント、不動産アセットマネジメントの経常利益合計

2 預り資産:大和証券の預り資産残高

3 ストック関連資産:投資信託、ファンドラップ、外貨預金

4 AM部門AUM:大和アセットマネジメント、大和ファンド・コンサルティング、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント、サムティ・レジデンシャル投資法人、大和PIパートナーズ、大和エナジー・インフラ、大和企業投資のAUM合計

 

④ 経営成績の前提となる2024年度のマクロ経済環境

<海外の状況>

 世界経済は、2020年前半の新型コロナウイルスの感染拡大による落ち込みからの急回復が一服し、その改善ペースは鈍化しています。IMF(国際通貨基金)が2025年4月に公表した世界経済見通しによれば、2020年の大幅な落ち込みからの反動もあり、2021年の世界経済成長率は+6.6%と、IMFが成長率を公表する1980年以降で最も高い成長となりました。一方、2022年の世界経済成長率は+3.6%、2023年には+3.5%へと低下し、2024年には+3.3%と見込まれています。歴史的に高いインフレ率や、それに対応するための当局による金融引き締めが、景気の拡大ペースを鈍化させたとみられます。また、2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの侵攻や、中東情勢の緊迫化による地政学的緊張の高まり、更には米国の関税政策が世界経済におけるリスク要因となっています。

 米国の2024年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率+1.6%となり、2023年10-12月期以降減速基調にありました。もっとも、輸入の急増を主因に外需がマイナスに寄与したものの、個人消費や設備投資、住宅投資の増加が経済を下支えしました。2024年4-6月期の実質GDP成長率は、前期比年率+3.0%となり、1-3月期から加速しました。内訳を見ると、屋台骨である個人消費は前期比年率+2.8%と1-3月期の前期比年率+1.9%から伸び率が高まりました。住宅投資は前期比年率△2.8%とマイナスに転じましたが、設備投資は前期比年率+3.9%となりました。全体としては、FRB(連邦準備制度理事会)が金融引き締めを続ける中でも米国経済は内需主導で好調を維持したと評価できます。7-9月期の実質GDP成長率は、前期比年率+3.1%となりました。個人消費が前期比年率+3.7%と加速したことがけん引役となりました。しかし、10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.4%と減速しました。個人消費は前期比年率+4.0%と加速が続いた一方で、設備投資が前期比年率△3.0%と減少に転じたことが重しとなりました。更に、2025年1-3月期に入ると、実質GDP成長率は前期比年率△0.2%とマイナス成長を記録しました。トランプ政権による関税率の引き上げが本格化する前に駆け込み輸入が発生したことで、輸入が前期比年率+42.6%と増加したことがマイナス成長の主因ですが、個人消費が前期比年率+1.2%と減速するなど、米国経済には陰りが見え始めています。

 金融面では、FRBは歴史的な高インフレの鎮静化から景気の下支えへと徐々にスタンスを変化させています。インフレ率がFRBの目標である2%を大幅に上回っていることを背景に、2022年3月のFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利が0.25%pt引き上げられ、2020年3月以降続いてきた実質的なゼロ金利政策が終了し、その後も、政策金利は段階的に引き上げられました。2023年に入ってもFRBはインフレ抑制の姿勢を崩さず、3月、5月、7月のFOMCではそれぞれ0.25%ptの利上げを決定しました。その後のFOMCでは誘導目標レンジが据え置かれましたが、2024年9月のFOMCでは、誘導目標レンジを0.50%pt引き下げ、11月と12月のFOMCでもそれぞれ0.25%pt引き下げ、誘導目標レンジは4.25-4.50%へと変更されました。インフレの減速が続く可能性が高まる中、景気や雇用を下支えする必要性が高まったことが利下げに転じた背景にあるとみられます。2025年1月と3月のFOMCでは誘導目標レンジは据え置かれました。

 欧州経済(ユーロ圏経済)は、緩やかな拡大を続けています。ユーロ圏の実質GDP成長率は2024年1-3月期には前期比年率+1.3%となり、前期比年率+0.2%にとどまった2023年10-12月期から成長ペースが加速しました。家計消費支出の持ち直しや、輸出の増加がけん引役となりました。4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.7%と、1-3月期から成長ペースは鈍化しました。家計消費支出が減少に転じたことが重石となりましたが、輸出の拡大が経済を下支えした格好です。7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.7%となり、成長ペースが加速しました。10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.0%と前期から減速したものの、2025年1-3月期には前期比年率+1.3%となり、成長率は振れを伴いながらも緩やかに高まっています。1-3月期の実質GDP成長率を国別に見ると、ドイツやフランスもプラス成長に転じており、内容も良好といえます。

 金融面では、ECB(欧州中央銀行)は近年インフレの抑制に努めてきましたが、足元では景気停滞に対応すべく利下げが続いています。2022年7月のECB理事会では、0.50%ptの利上げに踏み切り、2014年に導入された預金ファシリティ金利のマイナス状態が8年ぶりに解消されました。その後も段階的に利上げを実施してきましたが、2023年10月と12月の理事会では、政策金利の水準が据え置かれました。2024年に入っても1月、3月、4月の理事会で政策金利の水準据え置きが決定されましたが、6月の理事会では、2019年9月以来、4年9ヵ月ぶりの利下げを決定し、主要3金利(主要リファイナンス・オペ金利、限界貸付ファシリティ金利、預金ファシリティ金利)をそれぞれ0.25%pt引き下げました。7月の理事会では政策金利の水準は据え置かれたものの、9月の理事会では0.25%ptの利下げが全会一致で決定されました。その後もインフレ率の低下などを受け、10月、12月、2025年1月、3月とそれぞれ0.25%ptの利下げを実施しました。

 IMFによると、2022年の新興国の実質GDP成長率は、+4.1%の成長となりました。2023年も+4.7%の成長となりましたが、先進国において景気後退懸念が高まる中、新興国経済でも景気減速のリスクが高まりつつあります。2024年の成長率は+4.3%となったと見込まれています。中国を中心に外需の減速によって経済成長のペースが鈍化する見込みです。

 新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、2024年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.3%となりました。4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.7%と、1-3月期から伸び率は低下しましたが、背景には不動産不況による家計のバランスシート調整の影響により、消費の伸びが鈍化したことがあります。7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.6%となり、減速が続きました。10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.4%となりました。消費や投資の回復が経済をけん引しました。2025年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.4%となりました。トランプ政権による関税政策が本格化する前の駆け込み輸出や家電買い替えの促進策による個人消費の増加が下支えしました。

 中国以外の新興国は、経済活動の正常化が進展したことなどを背景に、2022年以降は総じてみれば持ち直しの動きが続きました。2022年には高インフレや米国での金利上昇に伴う資金流出抑制のため、多くの国が利上げを余儀なくされましたが、2023年以降は利上げを行う国は減少しています。2024年に米国が利下げに転じたことから、新興国でも利下げによる景気下支えの余地が広がっています。

 

<日本の状況>

日本経済は2024年前半以降持ち直しの動きが続いています。2024年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率△1.6%となりましたが、4-6月期は前期比年率+3.8%と、4四半期ぶりのプラス成長を記録しました。個人消費が持ち直しに転じたことに加え、設備投資や輸出の増加も経済を下支えしました。その後も、個人消費や輸出の増加を背景に、実質GDP成長率は7-9月期に前期比年率+1.0%、10-12月期には前期比年率+2.4%と回復基調にありました。しかし、2025年1-3月期には、輸出の減少や輸入の増加を主因に実質GDP成長率は前期比年率△0.7%とマイナス成長を記録しました。

 需要項目ごとにみると、個人消費に回復の動きがみられます。物価上昇率に賃金上昇率が追い付かず、実質賃金が減少していたことなどを背景に、個人消費は2023年4-6月期から2024年1-3月期まで、4四半期連続で減少していました。しかし、4-6月期に入ると、所得環境の改善もあって個人消費は5四半期ぶりに増加に転じ、その後も回復が続いています。

 企業部門の需要である設備投資は一進一退の動きとなっています。2024年1-3月期には輸送用機械への投資停滞を主因に、設備投資は前期比△1.1%と減少しました。しかし、4-6月期に入ると、設備投資は前期比+1.4%と増加しました。内訳を見ると、輸送用機械やその他の機械設備等が増加に転じました。自動車の生産体制の正常化が進んだことが背景にあるとみられます。7-9月期の設備投資は前期比+0.1%と減速したものの、その後は10-12月期に前期比+0.8%、2025年1-3月期に前期比+1.4%と加速しています。

 2024年1-3月期の輸出は前期比△3.6%と減少しました。自動車の減産が下押し要因となったほか、資本財などの輸出も伸び悩みました。4-6月期には前期比+1.5%と増加しました。中間財や情報関連財の減少が重石となったものの、自動車の増産が輸出をけん引しました。その後も、7-9月期には前期比+1.2%、10-12月期には前期比+1.7%と増加が続きましたが、2025年1-3月期には前期比△0.6%と減少しました。

 金融面では、日本銀行は、短期金利に加えて長期金利(10年国債利回り)も操作対象とする金融緩和措置(イールドカーブ・コントロール)を2016年9月に導入し、強力な金融緩和政策を続けていました。しかし、2024年3月の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除とイールドカーブ・コントロールの撤廃を決定し、短期金利を操作目標とする通常の金融政策へと転換を図りました。また、2024年7月に開催した金融政策決定会合において、短期金利の誘導目標を0.25%程度に引き上げることを決定しました。その後も、基調的な物価上昇率が目標水準である2%に向けて徐々に高まっているとの判断のもと、日本銀行は2025年1月の金融政策決定会合において短期金利の誘導目標を0.50%程度に引き上げました。また、国債の買入れに関しては、2024年7月の金融政策決定会合で長期国債買入れの減額計画を示しました。減額計画では、月間の長期国債の買入れ予定額を原則として毎四半期4,000億円程度ずつ減額するとされています。2024年7月に月額5.7兆円程度であった買入れ額は、2024年度末で同4.5兆円程度、2025年度末で同2.9兆円程度へと減額され、日本銀行の保有する国債残高はおおよそ7~8%減少すると見込まれています。

 為替市場をみると、2024年度に入って以降、変動の大きい展開となっています。4月から7月前半にかけては円安基調で推移し、ドル円レートは一時161円台後半まで円安が進みました。しかし、その後は、日本銀行が追加利上げに踏み切る中、米国の景気に陰りが見えたことでFRBの利下げ観測が高まったことなどもあり、日米金融政策の方向感の違いが強く意識されたことで、円高方向への急速な揺り戻しが生じました。2024年10月以降はFRBによる利下げペースが鈍化するとの見方が強まったこと等を背景に円安が進みましたが、2025年に入ると、トランプ政権の関税政策が米国に景気後退をもたらすとの見方が強まったことで、円高が進みました。

 株式市場では、2024年の株価は一進一退の動きとなりました。2024年に入ると、デフレ脱却期待を背景に外国人投資家による買いが相場を下支えしたことで、日経平均株価は一時4万円を超えました。7月にはドル円レートが160円を超えたこともあり、企業収益の拡大期待や外国人投資家による買い姿勢の強まりなどを背景に、日経平均株価は史上最高値を更新しましたが、ドル円レートが急速に円高に振れたことで、日経平均株価は下落しました。その後、再度ドル円レートが円安に振れたことで日経平均株価は持ち直したものの、2025年に入ると世界的な景気後退リスクの高まりから日経平均は軟調な動きとなりました。

 2025年3月末の日経平均株価は35,617円56銭(2024年3月末比4,751円88銭安)、10年国債利回りは1.497%(同0.747%ptの上昇)、為替は1ドル149円14銭(同2円20銭の円安)となりました。

(4)当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析

① 営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

 

(単位:百万円)

 

2024年3月期

2025年3月期

営業活動によるキャッシュ・フロー

705,124

△454,066

投資活動によるキャッシュ・フロー

△223,986

△353,443

財務活動によるキャッシュ・フロー

△2,847

199,019

現金及び現金同等物に係る換算差額

38,101

△3,763

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

516,392

△612,253

現金及び現金同等物の期首残高

3,835,559

4,351,951

現金及び現金同等物の期末残高

4,351,951

3,739,698

 

 当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、トレーディング商品の増減、有価証券担保貸付金及び有価証券担保借入金の増減、銀行業における預金の増減などにより、△4,540億円(前年度は7,051億円)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得による支出などにより、△3,534億円(同△2,239億円)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入などにより、1,990億円(同△28億円)となりました。これらに為替変動の影響等を加えた結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比6,122億円減少の3兆7,396億円となりました。

 

② 資本の財源及び流動性に係る情報

(ⅰ)流動性の管理

<財務の効率性と安定性の両立>

 当社グループは、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務や、投融資業務を行っており、これらのビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。

 当社グループの資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー、預金受入等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。

 財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。

 当社は、「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性のうち流動性に係る健全性の状況を表示する基準」(平成26年金融庁告示第61号)により連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)及び連結安定調達比率(以下、「NSFR」という。)を所定の比率(それぞれ100%)以上に維持することが求められており、当第4四半期日次平均のLCRは142.9%です。また、当第4四半期末のNSFRは有価証券報告書提出日における速報値で158.9%となっており、確定値は算出完了次第、当社ホームページにて公表する予定です。また、当社は、上記金融庁告示による規制上のLCR及びNSFRのほかに、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理態勢を構築しております。即ち、一定期間無担保調達が行えない場合でも業務の継続が可能となるように流動性ストレステストを中心とした流動性リスク管理態勢を構築しております。短期の無担保調達資金の十分性検証として、様々なストレスシナリオを想定したうえで、資金流出見込額をカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しております。長期の無担保調達資金の十分性検証として、ストレス期に換金性の低い資産に対する安定的な資金調達額を定期的にモニタリングしております。

 当第4四半期日次平均のLCRの状況は次のとおりです。

 

 

 

(単位:億円)

 

 

 

 日次平均

(自 2025年1月

  至 2025年3月)

適格流動資産

(A)

28,154

資金流出額

(B)

44,766

資金流入額

(C)

25,064

連結流動性カバレッジ比率(LCR)

 

 

 

算入可能適格流動資産の合計額

(D)

28,154

 

純資金流出額

(E)

19,701

 

連結流動性カバレッジ比率

(D)/(E)

142.9%

 

<グループ全体の資金管理>

 当社グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、当社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っており、当社は、必要に応じて当社からグループ各社に対し、機動的な資金の配分・供給を行うと共に、グループ内で資金融通を可能とする態勢を整えることで、効率性に基づく一体的な資金調達及び資金管理を行っております。

 

<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>

 当社グループは、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社グループは機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。

 当社グループのコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、グループ全体のストレスを踏まえて策定しており、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。

 また、金融市場の変動の影響が大きく、その流動性確保の重要性の高い大和証券株式会社、株式会社大和ネクスト銀行及び一部の海外証券子会社においては、更に個別のコンティンジェンシー・ファンディング・プランも策定し、同様に定期的な見直しを行っております。

 なお、当社は、子会社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランの整備状況について定期的にモニタリングしており、必要に応じて想定すべき危機シナリオを考慮して子会社の資金調達プランやコンティンジェンシー・ファンディング・プランそのものの見直しを行い、更には流動性の積み増しを実行すると同時に資産圧縮を図るといった事前の対策を講じることとしております。

 

(ⅱ)株主資本

 当社グループが株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、プリンシパル・インベストメント、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開し、新たな価値の提供に資する投融資を行うためには、十分な資本を確保する必要があります。また、当社グループは、日本のみならず、海外においても有価証券関連業務を行っており、それぞれの地域において法規制上必要な資本を維持しなければなりません。

 当連結会計年度末の株主資本は、前連結会計年度末比1,238億円増加し、1兆4,420億円となりました。また、資本金及び資本剰余金の合計は5,136億円となっております。利益剰余金は親会社株主に帰属する当期純利益を1,543億円計上したほか、配当金745億円の支払いを行ったこと等により、同800億円増加し1兆414億円となりました。自己株式の控除額は同100億円減少し、1,131億円となっております。

 

③ 財務戦略

 当社グループの財務戦略の基本は、成長投資、資本効率性、財務健全性及び株主還元の最適なバランスを図り、健全な利益の確保を通じた持続的成長を実現することです。

 持続的な成長の実現に際しては、規制並びに制度対応と適正な自己資本水準を維持することを重視しております。強固な財務基盤を堅持するため、過去の金融危機時のストレス・シナリオにも耐えうる資本のバッファーを加味して、連結総自己資本規制比率には社内管理水準を設定しております。

 成長投資に関しましては、当連結会計年度も既存事業の競争力強化のための投資や事業ポートフォリオ多様化のための出資などを数多く実行いたしました。その上で、連結総自己資本規制比率は、速報ベースで社内管理水準を上回っており、今後も継続的な成長投資を行うための十分な資本余力を有しております。このため、証券ビジネスの顧客基盤拡大に向けた投資やコアビジネスと親和性のある周辺領域への投資は今後も常に検討してまいります。

 株主還元策については「第4提出会社の状況 3配当政策」に記載のとおりです。

 当社の資金調達の方法については、「② 資本の財源及び流動性に係る情報」に記載しております。

 

 

5【重要な契約等】

 大和証券オフィス投資法人(連結子会社)は、資産の取得、修繕、分配金の支払及び有利子負債の返済等に充当する資金を調達する目的で、下記のとおり、複数の金融機関との間で財務上の特約が付された金銭消費貸借契約を締結しております。

借入人

大和証券オフィス投資法人

住所

東京都中央区銀座六丁目2番1号

代表者名

田中 稔介

相手方の属性

都市銀行、信託銀行、地方銀行、生命保険会社、損害保険会社等の金融機関

期末残高

合計 210,450,000,000 円

担保の有無及び内容

特約の内容

各決算期においてLTV(不動産価値に対する借入金の割合として一定の計算式により算出される数値)及びDSCR(収益を元利金支払額で除した数値として一定の計算式により算出される数値)の計算を行い、いずれかについて一定の基準を維持できない場合、期限の利益を喪失しうる旨の特約が付されています。

 

契約締結日

弁済期限

期末残高(円)

 

契約締結日

弁済期限

期末残高(円)

2016年3月24日

2025年5月30日

1,500,000,000

 

2019年11月27日

2026年11月30日

1,200,000,000

2016年3月24日

2025年5月30日

1,000,000,000

 

2019年11月27日

2028年11月30日

1,000,000,000

2016年5月27日

2026年5月29日

200,000,000

 

2020年2月21日

2027年2月26日

1,000,000,000

2016年8月26日

2026年8月31日

1,500,000,000

 

2020年2月21日

2028年2月29日

1,000,000,000

2017年5月24日

2025年5月30日

2,000,000,000

 

2020年2月21日

2029年2月28日

2,000,000,000

2017年5月24日

2025年5月30日

1,500,000,000

 

2020年5月26日

2025年5月30日

1,000,000,000

2017年5月24日

2025年11月28日

2,000,000,000

 

2020年5月26日

2027年5月31日

3,000,000,000

2017年5月24日

2025年11月28日

3,000,000,000

 

2020年5月26日

2027年5月31日

2,000,000,000

2017年8月29日

2025年5月30日

2,550,000,000

 

2020年8月26日

2027年8月31日

1,600,000,000

2017年8月29日

2026年8月31日

1,500,000,000

 

2020年8月26日

2027年8月31日

1,500,000,000

2017年8月29日

2026年8月31日

1,000,000,000

 

2020年8月26日

2030年8月30日

2,000,000,000

2017年11月28日

2025年5月30日

2,000,000,000

 

2020年8月26日

2030年8月30日

1,000,000,000

2017年11月28日

2025年11月28日

500,000,000

 

2020年11月25日

2027年5月31日

3,000,000,000

2017年11月28日

2026年5月29日

2,000,000,000

 

2020年11月25日

2028年11月30日

2,000,000,000

2018年2月26日

2026年2月27日

5,000,000,000

 

2020年11月25日

2028年11月30日

1,000,000,000

2018年5月29日

2025年5月30日

500,000,000

 

2020年11月25日

2028年11月30日

2,000,000,000

2018年5月29日

2026年5月29日

500,000,000

 

2021年2月22日

2029年2月28日

1,000,000,000

2018年8月29日

2025年8月31日

1,500,000,000

 

2021年2月22日

2031年2月28日

1,000,000,000

2018年8月29日

2027年8月31日

1,000,000,000

 

2021年3月26日

2026年3月31日

2,000,000,000

2018年8月29日

2027年8月31日

2,000,000,000

 

2021年3月26日

2027年3月31日

2,000,000,000

2018年10月25日

2026年10月30日

1,000,000,000

 

2021年3月26日

2028年3月31日

2,000,000,000

2018年10月25日

2027年10月29日

3,000,000,000

 

2021年3月26日

2028年3月31日

1,500,000,000

2018年10月25日

2027年10月29日

1,000,000,000

 

2021年3月26日

2030年3月29日

2,400,000,000

2018年10月25日

2027年10月29日

1,000,000,000

 

2021年3月26日

2030年3月29日

2,000,000,000

2018年10月25日

2027年10月29日

4,000,000,000

 

2021年5月26日

2031年5月30日

1,000,000,000

2019年3月26日

2026年3月31日

1,000,000,000

 

2021年8月26日

2030年8月30日

1,000,000,000

2019年3月26日

2028年3月31日

3,000,000,000

 

2021年11月22日

2029年11月30日

1,500,000,000

2019年3月26日

2028年3月31日

2,000,000,000

 

2021年11月22日

2029年11月30日

1,000,000,000

2019年5月28日

2026年5月29日

2,000,000,000

 

2021年11月22日

2030年5月31日

2,000,000,000

2019年5月28日

2026年5月29日

1,000,000,000

 

2021年11月22日

2030年5月31日

1,000,000,000

2019年5月28日

2027年5月31日

500,000,000

 

2022年2月24日

2029年2月28日

1,000,000,000

2019年5月28日

2029年5月31日

1,000,000,000

 

2022年2月24日

2029年8月31日

1,000,000,000

2019年8月27日

2026年8月31日

1,500,000,000

 

2022年3月28日

2028年3月31日

2,000,000,000

2019年8月27日

2026年8月31日

1,000,000,000

 

2022年5月24日

2028年5月31日

1,500,000,000

2019年9月25日

2029年9月28日

2,000,000,000

 

2022年5月24日

2029年5月31日

1,000,000,000

2022年5月24日

2029年8月31日

2,000,000,000

 

2023年11月28日

2032年5月31日

500,000,000

2022年5月24日

2030年2月28日

1,000,000,000

 

2023年11月28日

2032年5月31日

2,000,000,000

2022年5月24日

2030年5月31日

1,500,000,000

 

2023年11月28日

2032年5月31日

1,500,000,000

2022年5月24日

2030年5月31日

1,000,000,000

 

2024年2月21日

2031年8月29日

1,000,000,000

2022年5月24日

2030年11月29日

1,000,000,000

 

2024年2月21日

2031年8月29日

1,000,000,000

2022年5月24日

2030年11月29日

3,400,000,000

 

2024年2月21日

2032年2月27日

1,000,000,000

2022年8月24日

2029年8月31日

2,000,000,000

 

2024年3月26日

2031年8月29日

1,900,000,000

2022年8月24日

2029年8月31日

1,000,000,000

 

2024年3月26日

2032年2月27日

1,500,000,000

2022年8月24日

2029年8月31日

1,000,000,000

 

2024年3月26日

2032年2月27日

1,000,000,000

2022年8月24日

2029年8月31日

1,300,000,000

 

2024年3月26日

2032年2月27日

1,000,000,000

2022年11月25日

2027年11月30日

1,000,000,000

 

2024年3月26日

2034年3月31日

3,000,000,000

2022年11月25日

2028年11月30日

1,000,000,000

 

2024年3月26日

2034年3月31日

1,600,000,000

2022年11月25日

2029年11月30日

1,000,000,000

 

2024年5月23日

2029年5月31日

2,000,000,000

2022年11月25日

2029年11月30日

1,500,000,000

 

2024年5月23日

2030年5月31日

1,500,000,000

2022年11月25日

2029年11月30日

300,000,000

 

2024年5月23日

2032年5月31日

3,000,000,000

2022年11月25日

2030年2月28日

1,000,000,000

 

2024年7月19日

2029年5月31日

450,000,000

2022年11月25日

2030年11月29日

1,500,000,000

 

2024年7月19日

2032年7月30日

1,000,000,000

2022年11月25日

2031年5月30日

4,000,000,000

 

2024年7月19日

2032年7月30日

1,450,000,000

2022年11月25日

2031年5月30日

1,000,000,000

 

2024年7月19日

2033年1月31日

1,600,000,000

2023年2月22日

2029年2月28日

1,500,000,000

 

2024年8月26日

2029年8月31日

2,500,000,000

2023年2月22日

2030年2月28日

1,000,000,000

 

2024年8月26日

2029年8月31日

500,000,000

2023年2月22日

2030年2月28日

1,500,000,000

 

2024年8月26日

2029年8月31日

500,000,000

2023年2月22日

2031年2月28日

2,500,000,000

 

2024年8月26日

2032年2月27日

1,000,000,000

2023年5月24日

2031年5月30日

1,500,000,000

 

2024年8月26日

2032年8月31日

1,500,000,000

2023年5月24日

2031年5月30日

1,500,000,000

 

2024年9月19日

2032年9月30日

1,000,000,000

2023年5月24日

2031年11月28日

2,500,000,000

 

2024年11月22日

2030年11月29日

2,000,000,000

2023年5月24日

2031年11月28日

1,000,000,000

 

2024年11月22日

2030年11月29日

1,000,000,000

2023年7月21日

2028年5月31日

1,000,000,000

 

2024年11月22日

2032年11月30日

2,000,000,000

2023年8月23日

2028年8月31日

1,000,000,000

 

2024年11月22日

2032年11月30日

1,300,000,000

2023年8月23日

2031年8月29日

1,000,000,000

 

2024年11月22日

2032年11月30日

2,000,000,000

2023年9月27日

2031年8月29日

2,000,000,000

 

2025年1月22日

2030年1月31日

1,000,000,000

2023年11月28日

2028年5月31日

1,500,000,000

 

2025年1月22日

2032年11月30日

1,000,000,000

2023年11月28日

2028年11月30日

1,000,000,000

 

2025年1月22日

2032年11月30日

500,000,000

2023年11月28日

2028年11月30日

1,700,000,000

 

2025年2月26日

2033年2月28日

1,500,000,000

2023年11月28日

2031年11月28日

1,500,000,000

 

 

 

 

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。