第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当中間連結会計期間において、第88期有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更があった事項はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)財政状態の分析

<資産の部>

 当中間連結会計期間末の総資産は前連結会計年度末比8,909億円(2.5%)増加の36兆9,153億円となりました。内訳は流動資産が同8,561億円(2.5%)増加の35兆1,319億円であり、このうち現金・預金が同7,784億円(20.7%)増加の4兆5,352億円、有価証券が同3,127億円(19.7%)増加の1兆8,996億円、トレーディング商品が同2兆1,049億円(25.3%)増加の10兆4,324億円、営業貸付金が同3,814億円(13.7%)減少の2兆4,120億円、有価証券担保貸付金が同1兆4,671億円(9.5%)減少の13兆9,104億円となっております。固定資産は同347億円(2.0%)増加の1兆7,833億円となっております。

 

<負債の部・純資産の部>

 負債合計は前連結会計年度末比8,698億円(2.6%)増加の34兆9,708億円となりました。内訳は流動負債が同1兆1,587億円(3.8%)増加の31兆8,541億円であり、このうちトレーディング商品が同5,507億円(7.4%)減少の6兆8,864億円、有価証券担保借入金が同2,185億円(1.4%)減少の15兆2,269億円、銀行業における預金が同4,832億円(11.2%)増加の4兆7,809億円、預り金が同2,321億円(38.6%)増加の8,343億円、短期借入金が同1,641億円(11.6%)増加の1兆5,795億円となっております。固定負債は同2,889億円(8.5%)減少の3兆1,104億円であり、このうち社債が同745億円(6.1%)減少の1兆1,438億円、長期借入金が同2,225億円(10.9%)減少の1兆8,140億円となっております。

 

 純資産合計は同211億円(1.1%)増加の1兆9,444億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は5,145億円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する中間純利益を789億円計上したほか、配当金396億円の支払いを行ったこと等により、同393億円(3.8%)増加の1兆808億円となっております。自己株式の控除額は同313億円(27.7%)増加の1,444億円、その他有価証券評価差額金は同231億円(46.1%)増加の733億円、為替換算調整勘定は同37億円(2.8%)減少の1,298億円、非支配株主持分は同67億円(2.4%)減少の2,704億円となっております。

 

(2)経営成績の分析

① 事業全体の状況

 当中間連結会計期間の営業収益は前年同期比1.7%増の7,017億円、純営業収益は同5.7%増の3,278億円となりました。

 受入手数料は2,186億円と、同14.0%の増収となりました。委託手数料は、株式取引が増加したことにより、同8.5%増の481億円となりました。引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は、債券引受案件が減少した一方で、大型の不動産セキュリティ・トークンの引受案件があったことにより、同1.6%増の197億円となりました。

 トレーディング損益は、債券収益が減少したこと等により、同18.7%減の456億円となりました。

 金融収支は、レポ取引費用が減少したこと等により、同2.2%増の397億円となりました。

 販売費・一般管理費は同3.6%増の2,418億円となりました。取引関係費は、支払手数料が増加したこと等により、同8.4%増の482億円、人件費は、賞与が減少した一方で、給与が増加したこと等により、同0.0%増の1,187億円となっております。

 以上より、経常利益は同11.5%減の979億円となりました。

 これに特別損益を加え、法人税等及び非支配株主に帰属する中間純利益を差し引いた結果、親会社株主に帰属する中間純利益は前年同期比1.5%増の789億円となりました。

 

② セグメント情報に記載された区分ごとの状況

 純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

純営業収益

経常利益又は経常損失(△)

 

 

2024年

9月期

2025年

9月期

対前年同期

増減率

構成比率

2024年

9月期

2025年

9月期

対前年同期

増減率

構成比率

ウェルスマネジメント部門

123,316

137,595

11.6%

42.0%

36,427

49,300

35.3%

50.4%

アセットマネジメント部門

52,893

53,210

0.6%

16.2%

35,984

26,844

△25.4%

27.4%

 

証券アセットマネジメント

27,853

32,350

16.1%

9.8%

13,766

16,011

16.3%

 

不動産アセットマネジメント

16,251

17,704

8.9%

5.4%

12,982

12,840

△1.1%

 

オルタナティブアセットマネジメント

8,788

3,154

△64.1%

1.0%

9,235

△2,007

グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門

106,644

110,572

3.7%

33.7%

14,189

19,862

40.0%

20.3%

 

グローバル・マーケッツ

72,691

71,835

△1.2%

21.9%

13,609

11,054

△18.8%

11.3%

 

グローバル・インベストメント・バンキング

33,953

38,737

14.1%

11.8%

△946

6,989

7.1%

その他・調整等

27,384

26,502

8.1%

24,027

1,901

1.9%

連結 計

310,238

327,880

5.7%

100.0%

110,627

97,908

△11.5%

100.0%

(注)経常利益又は経常損失(△)の構成比率は、当中間連結会計期間において経常利益であったセグメントの経常利益合計に占める、各セグメントの経常利益の割合としております。

 

[ウェルスマネジメント部門]

 ウェルスマネジメント部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料と、大和ネクスト銀行における預金の受入れ等による調達資金の運用から得られる利鞘収入です。経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。

 当中間連結会計期間においては、好調な株式市場を背景にエクイティ収益が増加しました。またラップ口座サービスは、契約額、純増額ともに高水準を維持したことにより、ラップ関連収益が増加するとともに、契約資産残高は過去最高の5兆3,026億円となりました。

 大和ネクスト銀行における当中間連結会計期間末の預金残高(譲渡性預金を含む)は前連結会計年度末比11.2%増の4兆7,926億円となりました。銀行口座数は同1.0%増の191万口座となりました。

 その結果、当中間連結会計期間のウェルスマネジメント部門における純営業収益は前年同期比11.6%増の1,375億円、経常利益は同35.3%増の493億円となりました。

 

[アセットマネジメント部門]

 アセットマネジメント部門は、証券アセットマネジメント、不動産アセットマネジメント及びオルタナティブアセットマネジメントで構成されます。

 証券アセットマネジメントの主な収益源は、当社連結子会社の大和アセットマネジメントにおける投資信託の組成と運用に関する報酬です。また、当社持分法適用関連会社である三井住友DSアセットマネジメントの投資信託の組成と運用及び投資顧問業務に関する報酬からの利益は、当社の持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因には、マーケット環境によって変動するお客様の投資信託及び投資顧問サービスへの需要と、マーケット環境に対するファンドの運用パフォーマンスや、お客様の関心を捉えたテーマ性のある商品開発等による商品自体の訴求性が挙げられます。

 証券アセットマネジメントは増収増益となりました。大和アセットマネジメントでは、公募投資信託の運用資産残高は、資金純増に加え株式相場の上昇も寄与し、前連結会計年度末比16.8%増の33.5兆円となりました。その結果、当中間連結会計期間の純営業収益は前年同期比16.1%増の323億円、経常利益は同16.3%増の160億円となりました。

 不動産アセットマネジメントの主な収益源は、当社連結子会社の大和リアル・エステート・アセット・マネジメント、大和証券リアルティ、大和証券オフィス投資法人及びサムティ・レジデンシャル投資法人の不動産運用収益等です。また、当社持分法適用関連会社であるSong Holdings合同会社(サムティホールディングスの親会社)、サムティアセットマネジメント及び大和証券リビング投資法人の損益は、当社の持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因には、国内の不動産売買市場・賃貸需給の動向が挙げられます。

 不動産アセットマネジメントは増収減益となりました。新規の物件取得などにより、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及びサムティ・レジデンシャル投資法人の2社を合わせた運用資産残高は前連結会計年度末比8.4%増の1兆7,302億円となりましたが、大和証券リアルティで物件売却益が減少したことなどにより、当中間連結会計期間の純営業収益は前年同期比8.9%増の177億円、経常利益は同1.1%減の128億円となりました。

 オルタナティブアセットマネジメントの主な収益源は、当社連結子会社である大和企業投資、大和PIパートナーズ及び大和エナジー・インフラの投資先の新規上場(IPO)・M&A等による売却益や、投資事業組合への出資を通じたキャピタルゲインのほか、契約に基づきファンドから受領する、管理運営に対する管理報酬や投資成果に応じた成功報酬、投資した株式からの配当、売電収入などのインカムゲインです。経営成績に重要な影響を与える要因には、株式市場やIPO市場の動向、投資先企業の評価額に影響を及ぼす可能性のある経済環境の状況、保有する有価証券や投資資産の流動性が挙げられます。

 オルタナティブアセットマネジメントは減益となりました。大和企業投資では、国内外の成長企業への投資や上場支援に貢献しながら、投資先の売却益により収益を確保しました。また、大和PIパートナーズでは、国内外で金銭債権投資、不動産ローン、企業向け投融資を実行するとともに、既存案件の回収を進め、大和エナジー・インフラでは、蓄電池事業への出資を行うなど、持続可能な開発目標(SDGs)に資するエネルギー・インフラ関連投資を実行しながら、インカムゲイン及びキャピタルゲインを計上した一方で、再生可能エネルギー関連における一部投資先の再評価により引当金の計上及び減損処理を行いました。その結果、当中間連結会計期間の経常損失は20億円(前年同期は92億円の経常利益)となりました。

 これらの結果、当中間連結会計期間のアセットマネジメント部門における純営業収益は前年同期比0.6%増の532億円、経常利益は同25.4%減の268億円となりました。

 

[グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門]

 グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人、金融法人等が発行する有価証券の引受けやM&Aアドバイザリー業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングによって構成されます。

 グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る顧客フロー収益及びトレーディング収益であり、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。

 グローバル・マーケッツは減収減益となりました。エクイティ収益は、好調な株式市場を背景に、フロー収益が拡大し増収となった一方、フィクスト・インカム収益は、ボラティリティが高い市場環境下でポジション運営に苦戦し減収となりました。その結果、当中間連結会計期間の純営業収益は718億円(前年同期726億円)、経常利益は110億円(前年同期136億円)となりました。

 グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料であり、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。

 グローバル・インベストメント・バンキングは増収増益となりました。引受け・売出し手数料は、エクイティにおいて複数の主幹事案件を務めたことにより増収となりました。またM&Aビジネスでは、国内外で多数の案件を遂行し増収となりました。これらの結果、当中間連結会計期間の純営業収益は387億円(前年同期339億円)、経常利益は69億円(前年同期は9億円の経常損失)となりました。

 その結果、当中間連結会計期間のグローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門における純営業収益は1,105億円(前年同期1,066億円)、経常利益は198億円(前年同期141億円)となりました。

 

[その他]

 その他の事業には、主に大和総研によるリサーチ・コンサルティング業務及びシステム業務などが含まれます。

 大和総研は、当社グループのシステム開発を着実に遂行したほか、高付加価値のソリューション提案により、お客様との関係を強化したこと、大口顧客向けシステム開発案件を手掛けたこと等により、当社グループの収益に貢献しました。

 当中間連結会計期間において、その他セグメントに属する一部のグループ会社が前年同期比で増益となったことなどにより、その他・調整等に係る純営業収益は265億円(前年同期273億円)、経常利益は19億円(前年同期は240億円の経常利益)となりました。

 

③ 経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当中間連結会計期間において、経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について、第88期有価証券報告書の「目標とする経営指標の達成状況等」に記載した経営指標から重要な変更及び新たに生じた事項はありません。

 

④ 経営成績の前提となる当中間連結会計期間のマクロ経済環境

<海外の状況>

 世界経済は、経済成長率が徐々に鈍化する傾向となっています。IMF(国際通貨基金)が2025年10月に公表した世界経済見通しによれば、2025年の世界経済成長率は+3.2%と見込まれており、2023年の+3.5%、2024年の+3.3%からは低下しています。歴史的な高インフレに対応するための当局による金融引き締めは一巡し、米国や欧州では利下げに転じましたが、2022年から続くロシアによるウクライナへの侵攻や、中東情勢の緊迫化による地政学的緊張の高まり、更には米国の関税政策が世界経済におけるリスク要因となっています。

 米国の2025年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率△0.6%とマイナス成長を記録しました。トランプ政権による関税率の引き上げが本格化する前に駆け込み輸入が発生したことで、輸入が前期比年率+38.0%と増加したことがマイナス成長の主因ですが、個人消費も前期比年率+0.6%と減速しました。2025年4―6月期には、実質GDP成長率は輸入の反動減により前期比年率+3.8%と持ち直したほか、個人消費は前期比年率+2.5%と回復するなど、米国経済は底堅さを見せています。

 金融面では、FRB(連邦準備制度理事会)は歴史的な高インフレの鎮静化から景気の下支えへとスタンスを変化させました。2023年7月以降のFOMC(連邦公開市場委員会)ではFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが5.25-5.50%で据え置かれていましたが、2024年9月のFOMCでは誘導目標レンジを0.50%pt引き下げ、11月と12月のFOMCでもそれぞれ0.25%pt引き下げました。インフレの減速が続く可能性が高まる中、景気や雇用を下支えする必要性が高まったことが利下げに転じた背景とみられます。その後、2025年1月から7月までのFOMCでは誘導目標レンジは据え置かれました。しかし、雇用悪化への懸念が強まったことから、9月のFOMCでは再び0.25%ptの利下げを実施しました。

 欧州経済(ユーロ圏経済)は、緩やかな拡大を続けています。ユーロ圏の実質GDP成長率は2025年1-3月期には前期比年率+2.3%となりました。1-3月期の実質GDP成長率を国別に見ると、2024年に停滞していたドイツもプラス成長に転じており、内容面でも総資本形成をはじめ内需の拡大が成長に寄与しました。2025年4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.5%と減速しました。米国の関税引き上げによる輸出の減少や、家計消費の減速が主な要因です。2025年7―9月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.9%となりました。家計消費に持ち直しの動きが見られました。

 金融面では、ECB(欧州中央銀行)は近年インフレの抑制に努めてきましたが、2024年からは景気停滞に対応すべく利下げを実施しました。2024年6月のECB理事会では4年9ヵ月ぶりの利下げを決定し、主要3金利(主要リファイナンス・オペ金利、限界貸付ファシリティ金利、預金ファシリティ金利)をそれぞれ0.25%pt引き下げました。7月の理事会では政策金利は据え置かれたものの、9月には0.25%ptの利下げを実施し、その後も10月、12月、2025年1月、3月、4月、6月とそれぞれ0.25%ptの利下げを実施しました。しかし、7月と9月の理事会では政策金利が据え置かれ、ECBのラガルド総裁は9月の理事会後の会見で、利下げの打ち止めを示唆しています。

 IMFによると、2025年の新興国の実質GDP成長率は+4.2%と見込まれており、2023年の+4.7%、2024年の+4.3%から低下しています。中国を中心に外需の減速によって経済成長のペースが鈍化する見込みとなっています。

 新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、2025年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.4%となりました。米国による関税引き上げが本格化する前の駆け込み輸出や家電等の買い替え促進策による個人消費の増加がこれを下支えしました。2025年4-6月期の実質GDP成長率は、米中貿易摩擦による対米輸出の大幅な減少が成長率を押し下げ、前年同期比+5.2%に減速しました。ただし、+5.0%前後との政府目標は上回っています。2025年7―9月期の実質GDP成長率は4.8%となり、減速が続いています。

 中国以外の新興国は、2022年以降は総じてみれば持ち直しの動きが続きましたが、足元では米国の関税引き上げによる輸出の減少が成長率鈍化をもたらしうるリスク要因となっています。2024年には米国が利下げに転じたことから、新興国でも利下げを行うことで景気を下支えしようとする動きが広がっています。

 

<日本の状況>

 日本経済は2024年4-6月期から5四半期連続で実質GDP成長率がプラスとなるなど、持ち直しを続けました。2024年4-6月期は前期比年率+1.9%、7-9月期が前期比年率+2.3%、10-12月期が前期比年率+2.1%と、個人消費や輸出の増加を主因として、比較的高い成長率を維持しました。2025年1-3月期には輸入の急増が伸び率を押し下げたものの、前期比年率+0.3%とプラス圏にとどまり、4-6月期には前期比年率+2.2%へと伸びが加速しました。7-9月期は、トランプ米政権による高関税政策(トランプ関税)の影響やこれまで好調だった反動などが重なり、前期比年率△3%程度のマイナス成長となったと見込んでいます。

 需要項目ごとにみると、個人消費は持ち直し基調にあります。賃金上昇が物価上昇に追い付かない中で、実質賃金が低下を続けたことなどを背景に、個人消費は2023年4-6月期から2024年1-3月期まで、4四半期連続で減少しました。しかし、2024年4-6月期から2025年4-6月期までは春闘での高水準の賃上げなどを受けて所得環境の改善が進んだことで、5四半期連続で増加しました。2025年7-9月期は小幅に減少した(前期比△0.1%)とみられるものの、持ち直し基調が続く中での振れの範疇といえそうです。

 企業部門の需要である設備投資も、総じて増加基調にあります。2024年1-3月期には前期比△1.2%と、自動車の減産などを背景に落ち込みましたが、4-6月期には自動車の生産体制の正常化が進み、前期比+1.6%と増加しました。7-9月期は前期比△0.1%と小幅に減少した一方、10-12月期以降は3四半期連続で増加しました。2025年7-9月期は小幅に減少したものの、高水準が維持された(前期比△0.4%)とみられ、企業の投資意欲は引き続き旺盛です。

 輸出は、2024年1-3月期には前述した自動車の減産などを受けて前期比△3.5%と減少しましたが、設備投資同様、4-6月期には自動車の増産もあり前期比+1.1%となり、その後も7-9月期に前期比+1.3%、10-12月期に前期比+1.9%と増加を続けました。2025年1-3月期は一部の業務サービスが下振れしたことが響き、前期比△0.3%と減少したものの、4-6月期は前期比+2.0%と持ち直しました。7-9月期は、トランプ関税の影響から米国向けの輸出が下振れしたことなどから、前期比△1.9%となったと見込んでいます。

 金融面では、日本銀行は、2024年3月の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除と、短期金利に加えて長期金利(10年国債利回り)も操作対象とする金融緩和措置(イールドカーブ・コントロール)の撤廃を決定し、短期金利を操作目標とする通常の金融政策へと転換を図りました。そして、2024年7月に開催した金融政策決定会合において、短期金利の誘導目標を0.25%程度に引き上げることを決定しました。その後も、基調的な物価上昇率が目標水準である2%に向けて徐々に高まっているとの判断のもと、日本銀行は2025年1月の金融政策決定会合において短期金利の誘導目標を0.50%程度に引き上げました。また、国債の買入れに関しては、2024年7月の金融政策決定会合で長期国債買入れ予定額を原則として毎四半期4,000億円程度ずつ減額する計画が、2025年6月には、2026年4月以降の減額幅を毎四半期2,000億円程度ずつに縮小する計画が示されました。2024年7月に月額5.7兆円程度であった買入れ額は、2026年度末で同2.1兆円程度へと減額され、日本銀行の保有する国債残高は2027年3月に減額開始前の2024年6月から16~17%減少すると見込まれています。さらに、2025年9月の金融政策決定会合では、日本銀行が保有するETFおよびJ-REITについて、それぞれ簿価で年間3,300億円程度、50億円程度のペースで市場への売却を行うことを決定しました。

 為替市場をみると、2024年度は変動の大きい展開となりましたが、2025年度上半期は円安基調へと転換しました。2025年初以降、トランプ政権の関税政策が米国に景気後退をもたらすとの見方が強まったことで円高が進み、ドル円レートは4月に一時1ドル139円台となりましたが、5月には米中関税交渉の進展等を受けて円高の動きが一服しました。7月には参議院議員選挙の結果を見越した財政拡張懸念の高まりや、堅調な米経済指標を背景とした早期利下げ期待の後退から、ドル円レートは円安が進行しました。9月にかけては、国内の政局不安による円安要因、米国の利下げ再開への期待再燃による円高要因が入り交じり、一進一退の展開となりました。

 株式市場では、2024年度の株価は一進一退の動きとなりましたが、2025年度上半期は下落から始まったものの、その後は上昇傾向で推移しました。2025年に入ると、世界的な景気後退リスクの高まりから日経平均株価は軟調な動きとなり、4月には米国の関税政策の強化を背景に一時は約1年5カ月ぶりの安値まで落ち込みました。しかし、その後は米国の利下げ期待の高まりや、生成AI市場の成長期待を受けた半導体関連銘柄への買い、米関税措置に関する日米協議の合意等が相場を押し上げました。日経平均株価は8月には1年1カ月ぶりに史上最高値を更新し、その後も上昇傾向が続きました。

 2025年9月末の日経平均株価は44,932円63銭(2025年3月末比9,315円07銭高)、10年国債利回りは1.662%(同0.165%ptの上昇)、為替は1ドル148円07銭(同1円07銭の円高)となりました。

 

(3)繰延税金資産の状況

① 繰延税金資産の算入根拠

 当社グループでは、会計基準に従い、税務上の繰越欠損金や企業会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差額である一時差異等について税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しております。

 

② 過去5年間の課税所得(繰越欠損金使用前の各年度の実績値)

 

 

 

 

(単位:百万円)

回次

第84期

第85期

第86期

第87期

第88期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

通算グループの課税所得

92,842

106,263

51,393

161,466

147,874

(注) 提出会社を通算親法人とする通算グループの所得を記載しております。また、記載した課税所得は法人税確定申告書上の繰越欠損金控除前の数値であり、その後の変動は反映されておりません。

 

 なお、当中間連結会計期間に係る中間連結貸借対照表上の繰延税金資産73億円のうち、提出会社を通算親法人とする通算グループの計上額合計は28億円であります。

 

③ 見積りの前提とした税引前当期純利益の見込額

 提出会社を通算親法人とする通算グループの課税所得見積期間を3年とし、同期間の税引前当期純利益を3,350億円と見積もっております。

 

 

④ 繰延税金資産・負債の主な発生原因

 当中間連結会計期間末現在、中間連結貸借対照表上の繰延税金資産及び繰延税金負債の内訳は次のとおりであります。

 

(単位:百万円)

当中間連結会計期間

(2025年9月30日)

繰延税金資産

 

繰越欠損金

46,837

営業投資有価証券関連損益

18,137

退職給付に係る負債

13,804

減価償却超過額

9,165

関係会社株式評価損

7,377

投資有価証券評価損

7,359

賞与引当金

7,052

貸倒引当金

5,516

その他有価証券評価差額金

5,239

未実現利益の消去

5,113

減損損失

3,631

事業税・事業所税

2,258

資産除去債務

2,083

金融商品取引責任準備金

1,979

商品有価証券・デリバティブ

1,172

訴訟損失引当金

112

その他

12,047

繰延税金資産小計

148,889

評価性引当額

△111,706

繰延税金資産合計

37,183

繰延税金負債

 

企業結合に伴う評価差額

37,706

その他有価証券評価差額金

33,087

繰延ヘッジ損益

9,342

その他

6,160

繰延税金負債合計

86,297

繰延税金資産(負債)の純額

△49,113

 

(4)キャッシュ・フローの状況

営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物

 当中間連結会計期間におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

 

(単位:百万円)

 

2024年9月期

2025年9月期

営業活動によるキャッシュ・フロー

△515,442

1,368,649

投資活動によるキャッシュ・フロー

△218,401

△365,365

財務活動によるキャッシュ・フロー

240,823

△222,700

現金及び現金同等物に係る換算差額

△15,254

△1,816

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△508,274

778,766

現金及び現金同等物の期首残高

4,351,951

3,739,698

現金及び現金同等物の中間期末残高

3,843,676

4,518,464

 

 当中間連結会計期間において、営業活動によるキャッシュ・フローは、有価証券担保貸付金及び有価証券担保借入金の増減、トレーディング商品の増減、銀行業における預金の増減などにより1兆3,686億円(前年同期は△5,154億円)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得による支出、有価証券の売却及び償還による収入などにより△3,653億円(同△2,184億円)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出、社債の発行による収入、自己株式の取得による支出などにより△2,227億円(同2,408億円)となりました。これらに為替変動の影響等を加えた結果、当中間連結会計期間末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ7,787億円増加し、4兆5,184億円となりました。

 

(5)事業上及び財務上の対処すべき課題

 当中間連結会計期間において、事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更及び新たに生じた事項はありません。

 

(6)研究開発活動

 該当事項はありません。

 

(7)資本の財源及び流動性に係る情報

① 流動性の管理

<財務の効率性と安定性の両立>

 当社グループは、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務や、投融資業務を行っており、これらのビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。

 当社グループの資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー、預金受入等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。

 財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。

 当社は、「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性のうち流動性に係る健全性の状況を表示する基準」(平成26年金融庁告示第61号)により連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)及び連結安定調達比率(以下、「NSFR」という。)を所定の比率(それぞれ100%)以上に維持することが求められており、第89期第2四半期日次平均のLCRは142.1%です。当中間連結会計期間末のNSFRは所定の比率を上回る見込みとなっております。また、当社は、上記金融庁告示による規制上のLCR及びNSFRを流動性に係るリスクアペタイトとして管理・モニタリングしていることに加え、一定期間無担保調達が行えない場合でも業務の継続が可能となるように流動性ストレステストを中心とした流動性リスク管理態勢を構築しております。短期の無担保調達資金の十分性検証として、様々なストレスシナリオを想定したうえで、資金流出見込額をカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しております。長期の無担保調達資金の十分性検証として、ストレス期に換金性の低い資産に対する安定的な資金調達額を定期的にモニタリングしております。

 第89期第2四半期日次平均のLCRの状況は次のとおりです。

 

 

 

(単位:億円)

 

 

 

 日次平均

(自 2025年7月

 至 2025年9月)

適格流動資産

(A)

28,005

資金流出額

(B)

47,519

資金流入額

(C)

27,817

連結流動性カバレッジ比率(LCR)

 

 

 

算入可能適格流動資産の合計額

(D)

28,005

 

純資金流出額

(E)

19,702

 

連結流動性カバレッジ比率

(D)/(E)

142.1%

 

<グループ全体の資金管理>

 当社グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、当社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っており、当社は、必要に応じて当社からグループ各社に対し、機動的な資金の配分・供給を行うと共に、グループ内で資金融通を可能とする態勢を整えることで、効率性に基づく一体的な資金調達及び資金管理を行っております。

 

<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>

 当社グループは、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社グループは機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。

 当社グループのコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、グループ全体のストレスを踏まえて策定しており、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。

 また、金融市場の変動の影響が大きく、その流動性確保の重要性の高い大和証券株式会社、株式会社大和ネクスト銀行及び一部の海外証券子会社においては、更に個別のコンティンジェンシー・ファンディング・プランも策定し、同様に定期的な見直しを行っております。

 なお、当社は、子会社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランの整備状況について定期的にモニタリングしており、必要に応じて想定すべき危機シナリオを考慮して子会社の資金調達プランやコンティンジェンシー・ファンディング・プランそのものの見直しを行い、更には流動性の積み増しを実行すると同時に資産圧縮を図るといった事前の対策を講じることとしております。

 

② 株主資本

 当社グループが株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、プリンシパル・インベストメント、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開し、新たな価値の提供に資する投融資を行うためには、十分な資本を確保する必要があります。また、当社グループは、日本のみならず、海外においても有価証券関連業務を行っており、それぞれの地域において法規制上必要な資本を維持しなければなりません。

 当中間連結会計期間末の株主資本は、前連結会計年度末比89億円増加し、1兆4,510億円となりました。また、資本金及び資本剰余金の合計は5,145億円となっております。利益剰余金は親会社株主に帰属する中間純利益を789億円計上したほか、配当金396億円の支払いを行ったこと等により、同393億円増加の1兆808億円となりました。自己株式の控除額は同313億円増加し、1,444億円となっております。

 

3【重要な契約等】

 当中間連結会計期間において、該当事項はありません。