第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は、持株会社である当社と国内外の連結子会社等により構成されるグループ経営を展開しており、証券ビジネスをコアとする資産運用サービスの提供を通じて持続的な企業価値の向上に努めてまいります

 

(2) 経営戦略等

当社は2023年度を初年度とした5ヵ年の中期経営計画を策定し、次の100年も持続的な成長を実現するための経営基盤の確立に向けて、「One to One マーケティングの強化」「プラットフォームの高度化」「コーポレートブランディングの進化」を基本方針に据え、企業価値の向上に努めております。

計画2年目となった当連結会計年度は、グループ中核企業である岡三証券株式会社において営業基盤の拡充の一環としてソリューションビジネスを引き続き推進したほか、基本方針として掲げております「One to One マーケティングの強化」に取り組むなか、銀行サービス「岡三BANK」及びファンドラップサービス「岡三UBSファンドラップ」の提供を開始しました。お客さまの資産全体を捉えたトータルコンサルティングを一層推進することで、コア資産を含む預り資産残高及びストック型収益の拡大を図ります。

加えて、岡三証券株式会社を軸として証券会社の金融商品仲介業者への転換を支援する証券プラットフォーム事業を開始いたしました。自前主義にこだわらず、当社グループ内外のリソースを活用し、独自のネットワークによる共存共栄に向けた取り組みを進めております。証券ビジネス機能を強化するとともに、お客さまへ多様な商品・ソリューションサービスの提供に努めております。

なお、経営目標の実現を確実なものとするために従業員体験価値(EX)の向上にも努めております。従来の人材マネジメントの考え方を抜本的に見直し、「一人ひとりが能力を最大限発揮できる会社」、そして「多様な人材から選ばれる会社」となるべく新たな人事制度を2025年4月より導入いたしました。

当社グループでは引き続き、金融のプロフェッショナルとしてより多くの「お客さまの人生」に貢献する証券グループへとさらなる発展を目指してまいります。

 

 

岡三証券グループ 中期経営計画

 

<Purpose(存在意義)>

金融のプロフェッショナルとして「お客さまの人生」に貢献する

 

<Vision(目指す姿)>

真心のこもったサービスでお客さま一人ひとりのニーズに応えつづけるベスト・パートナー

 

●基本方針

(ゴール)

 ビジネスモデルを変革し、次の100年も成長しつづける経営基盤を確立する

(成長戦略)

〈One to One マーケティングの強化〉 〈プラットフォームの高度化〉 〈コーポレートブランディングの進化〉

 

~成長戦略の実現性を高めるために、全領域で“デジタル化”を推進する~

●対象期間

  2023年4月から2028年3月までの5年間

 

●主な経営指標目標

預り資産 10兆円

ROE 8%

総還元性向 50%

2025年4月から2028年3月までの3年間においては、総額100億円以上の自己株式取得を実施

(2023年4月から2025年3月までは、PBR 1.0 倍を超えるまで、年間10億円以上の自己株式取得を実施)

 

 

 

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

今、世界を見渡すと、時代が逆回転し、グローバリゼーション等の戦後のパラダイムが揺らぐとともに、深刻な貿易摩擦や地政学リスクによる緊張が世界を覆っています。一方で、国内においては「投資文化」が根付き始めており、証券ビジネスは中長期的な成長機会が期待されます。この変化を確かな潮流とするには、私たち、証券業界の果たすべき役割が一層重要となります。不確実性が高まる状況のなか、投資家一人ひとりに的確かつ信頼性の高いアドバイスを提供するとともに、多様化する投資家ニーズに真摯に寄り添い、サポートすることが求められていると感じます。

このような環境において当社グループは、お客さまのニーズにお応えする体制を構築し、CX(お客さま体験価値)の向上を図るため、改革をより一層加速しています。中核子会社の岡三証券株式会社においては、地域密着型の経営をさらに徹底すべく、各証券カンパニーへの権限委譲を進め、「分権化」に取り組んでいます。その一環として、従来の「マーケティング統括部門」を廃止して「リテールカンパニー統括部門」として新年度より設置し、「プロダクト・ソリューション部門」も「プロダクト・ソリューション開発推進部門」として進化させました。さらに、データベースやアプリ等のデジタル技術によって、サービス向上を一段と図っていく方針です。

成長戦略である「プラットフォームの高度化」においては、岡三情報システム株式会社と岡三ビジネスサービス株式会社を経営統合し、2025年4月より「岡三ビジネス&テクノロジー株式会社」として、新たに始動させました。当社グループは、多様な証券会社との「共存共栄」の経営を志向しており、グループ内外に対してプラットフォームを提供することで、より多くのお客さまへ高度な商品・サービスをお届けすることを目指しています。

「お客さまの人生に貢献する」ことを存在意義として掲げるとともに、新たにバリューとして「矜持(Uphold Integrity)」「情熱(Ignite Passion)」「共創(Forge Synergy)」を設定いたしました。この3つの価値観を含む経営理念の社内浸透を図り、グループ一丸となって成長戦略を遂行することで、企業価値の持続的な向上に努めてまいります。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に取り組み、特に重要な経営指標として、連結ROE8%の達成を目標として掲げております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

<ガバナンス>

当社グループはあらゆるステークホルダーから信頼される企業グループを目指し、「サステナビリティ基本方針」を策定し取り組みを推進しております。

サステナビリティに関する対応については、取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会が主に担っており、同委員会においてサステナビリティに関する方向性、具体的な活動・取り組み、リスクと機会の特定と評価について審議しております。同委員会はサステナビリティ推進室が事務局となり、原則年1回以上開催しており、審議された内容は、適宜、取締役会や経営会議に付議・報告され、取締役会の監督を受けております。

 

<リスク管理>

当社グループにおけるサステナビリティに関するリスクは、サステナビリティ委員会にて特定・評価しており、独立したリスクカテゴリの「ESG関連リスク」として全社的な枠組みで管理しております。なお、事業全体のリスク管理については、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(2) 重要なサステナビリティ項目

当社グループの重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。

・気候変動対応

・人的資本対応

それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 

①気候変動対応

<ガバナンス>

気候変動への対応状況は、サステナビリティへの取り組みの重要な要素として、取締役会による監督が行われております。ガバナンス体制の詳細については、「(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理<ガバナンス>」をご参照ください。

 

<戦略>

a.マテリアリティとの関係

当社グループは2021年10月にマテリアリティ(重要課題)を策定・公表しました。ビジネス領域のひとつとして“社会づくり”(気候変動への対応を含むサステナブルな社会の実現)を掲げており、サステナブルファイナンスやESGファンドの取扱い、サステナブル投資に関する情報発信等を通じて社会課題の解決と地域貢献を推進しています。

 

b.シナリオ分析

以上のような課題認識のもと、気候変動関連のリスクと機会を把握するためシナリオ分析を実施しています。気候変動に係る幅広い将来像に備えるため、「1.5/2℃シナリオ」(脱炭素に向けた変革が進展する)と「4℃シナリオ」(気候変動の対策が進まない)の2つのパターンを想定し、それぞれのパターンにおいて考慮すべきリスクや機会を設定し、事業インパクトを算出しています。

選択したシナリオにおける気候変動のインパクトの考え方は以下のとおりです。

・1.5/2℃シナリオ:気候変動の抑制に向けた市場の変化、規制強化の中で移行リスクの影響が比較的大きい

・4℃シナリオ:洪水等自然災害による物理的リスクの影響が比較的大きい

シナリオ分析においては、国際エネルギー機関(IEA)のシナリオや気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)のシナリオを活用しています。

 

(i)リスク・機会に係る定性分析

上記のシナリオにおける定性分析として、それぞれのパターンにおいて発生が想定される気候変動による移行リスク及び物理的リスクを設定し、当社グループの戦略・ビジネスにとっての重要度が比較的高いと考えられるリスクを特定し、それぞれ想定される影響やその発生時期、ビジネスへの影響度を分析いたしました。

 

表1 想定される当社グループへの影響

リスク

想定される影響

時間軸

影響度

1.5℃/2℃

4℃

移行
リスク

政策・法規制

法律・規制変化に伴う既存ビジネスの減少又は資本負荷の増大などによるコスト増加

中期~長期

市場

気候変動に伴う顧客ニーズの変化による既存ファンド等商品の陳腐化、新規商品開発における競争優位性の低下

中期~長期

低炭素社会への移行過程で、産業構造の変化などにより重大な影響を受ける企業などとのビジネスの減少

中期~長期

保有する資産の価値低下や売却機会の減少

中期~長期

評判

環境負荷の高い事業への投資に伴う評判低下リスク・気候変動リスクへの配慮のない企業や商品に対するブランドイメージの毀損

短期~長期

物理的
リスク

急性

台風・津波・洪水等による当社グループ施設・事業インフラの業務停止、復旧コスト、運転コスト等の増加、従業員の支援コスト等の発生

短期~長期

台風・津波・洪水等による顧客の機能停止に伴う運転コストの増加によるホールセールビジネスの減少

短期~長期

気候変動による異常気象や災害の激甚化と経済状況の悪化による個人資産の減少を通したリテールビジネスの減速

短期~長期

 

※発生時期は短期:現在~3年、中期:3~10年、長期:10~30年を想定

 

当社グループにおける影響の大きな事象として、移行リスクでは、低炭素社会への移行に伴い重大な影響を受けるお客さまとのビジネス機会減少、気候変動リスクへの対応が不十分とみなされた場合の評判悪化による調達コスト増加・ビジネス機会減少などを想定しています。物理的リスクでは、自然災害による当社グループ施設や事業インフラの損壊による各種コストの発生、お客さまが自然災害により重大な影響を受けることによる当社グループのビジネス減少などを想定しています。

なお、物理的リスクへの対応として、自然災害の発生等に備えて、「業務継続計画(BCP)の策定」及び「危機対策本部の設置」によるリスク管理体制を構築しています。

 

一方、当社グループにとっての事業機会として、表2を想定しています。

 

表2 当社グループにとっての事業機会

機会

グリーンファイナンス、トランジション・ファイナンスやソリューションビジネスなど適応に関するビジネス機会の増加

ESG関連商品の信頼度向上と個人投資家の意識の高まりによる市場の拡大

持続可能性や環境に特化したサステナブルボンドやグリーンボンドなどの取扱い機会の増加

 

 

今後、当社グループでは、これらの機会を捉えるための対応として多様な金融サービスの提供を強化していきます。

 

()リスク・機会に係る定量分析

定性分析に加え、上記のシナリオに基づく定量分析を実施し、2030年における財務インパクトを試算しました。

移行リスクについては、炭素税導入に係るコスト増や評判低下による調達コストへの影響のほか、当社グループの証券ビジネスの委託手数料への影響等を分析しています。物理的リスクについては、急性リスクである営業拠点の洪水被害による営業停止や当社施設の損傷や市場イベント等の影響を分析しています。なお、洪水被害は主要な拠点である国内拠点を想定したものとしています。

移行リスクでは、脱炭素・サステナブルファイナンスへの取り組みを継続することで、関連ビジネスを拡大し気候変動対策に対する当社グループのレピュテーションを保つことが重要であること、物理的リスクでは、異常気象による洪水等の直接的な影響に加え、市場を介した間接的な影響もあるため、気候災害の市場イベント時にも耐えうるリスク管理の必要性が認識されました。

試算の結果、いずれのシナリオでも気候変動関連のリスクと機会に対して適切な対策ができない場合は収益が圧迫される一方で、適切な対応をとることや機会を享受することができれば、当社グループの財務に与える影響は限定的となることが分かりました。

 

c.脱炭素社会実現に向けたロードマップ

当社グループでは、気候変動はグローバルで重要な社会課題との認識のもと、「a.マテリアリティとの関係」のとおり経営の重要課題(マテリアリティ)と位置づけ、事業を通じた取り組みを進めております。パリ協定や日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言に賛同し、脱炭素社会への移行と実現に向け、「2030年までに自社の温室効果ガス排出量(Scope1・2)ネットゼロの達成」及び「事業活動を通じた脱炭素社会への移行の支援」を含む「温室効果ガス排出量ネットゼロ宣言」を策定し取り組みを進めております。今後の具体的な取り組みは以下のとおりです。

 

(i)2030年までに自社の温室効果ガス排出量(Scope1・2)ネットゼロの達成

自社の温室効果ガス排出量(Scope1・2)の削減については、省エネ活動の継続及び再エネ電力の導入等を進めていきます。前者については、各施設におけるエネルギー利用の効率化などを行っていきます。また、後者については、EVや電動バイク等の導入に加え使用電力の再エネ化等を推進していきます。

 

()事業活動を通じた脱炭素社会への移行の支援

気候変動問題を含む社会課題解決に向けて、グリーンボンドを始めとしたSDGs債の引受・販売や、投資家や発行体向けのセミナー開催・レポート発行の情報発信等に取り組んでおり、今後もサステナブルファイナンスの普及・拡大に貢献していきます。

 

<リスク管理>

気候変動に関するリスク(移行リスク・物理的リスク)は自然災害・環境、経済環境やファイナンスなどの経営環境にも影響を及ぼすと考えています。リスクを特定・評価・管理するプロセスについては、「(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理<リスク管理>」をご参照ください。

 

<指標及び目標>

a.GHG排出量

当社グループは、自社の温室効果ガス排出量(Scope1・2)の2030年ネットゼロを目標に掲げており、GHGプロトコルと整合した環境省・経済産業省の基本ガイドラインに従って排出量の把握と削減に向け取り組みを進めております。事業活動を通じたエネルギー消費と温室効果ガス排出削減に向け、引き続き対策を講じていきます。

 

 

GHG排出量(単位:t-CO2)

 

実績

目標

 

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

2030年度

Scope1

993

984

689

759

ネットゼロ

Scope2

2,952

2,827

2,058

1,912

 

対象範囲:株式会社岡三証券グループ、岡三証券株式会社

 

b.SDGs債の引受状況

当社グループの中核企業である岡三証券株式会社では、2020年に「グリーンボンド発行促進プラットフォーム」に登録しており、グリーンボンドを始めとしたSDGs債の引受・販売を通じて気候変動問題を含む社会課題の解決に取り組んでおります。

SDGs債引受状況

 

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

引受額(億円)

162.0

321.0

458.3

786.4

引受件数

12

19

34

42

 

 

当社グループは、気候変動関連のリスク・機会を経営の重要課題のひとつと捉え、今後も、TCFD提言に基づく情報開示のさらなる充実を図り、自社の脱炭素化に加えサステナブルな社会の実現に貢献するための取り組みを進めていきます。

 

②人的資本対応

<戦略>

当社グループでは、国籍・人種・性別・年齢・障がいの有無・性自認・性指向・信条・宗教・社会的身分等を問わず多様性を受容することで、あらゆる人材が個性と能力を発揮でき、個人が有する属性によって不平等が生じないよう、人材の採用や評価・処遇等の諸制度を適切に運用してまいります。今後も会社の持続的な成長を促進するため、これまでのキャリアで培われたさまざまなバックグラウンドを礎とした多様性を尊重しながら優秀な人材を獲得し、当社グループの中核を担う人材として積極的に指導的立場へ登用する施策を進めてまいります。

このような考え方のもと、男女ともに活躍できる環境・組織風土の醸成を目的として、各種人事制度・研修制度の拡充や新たな施策推進に向け取り組んでおります。当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

a.人材育成方針

当社グループは、社員がお客さまに高い付加価値を提供し続けるためには、金融のプロフェッショナルとしての高度な知識と専門性、さらには高い倫理観が不可欠であるとの考えのもと、人材育成に取り組んでおります。

社員一人ひとりの能力を向上させるため、中核子会社である岡三証券株式会社を中心にグループ各社と連携し、多彩な教育及び研修プログラムを導入しております。

この度、2025年4月に新人事制度を導入し、人材育成体系も刷新いたしました。社員一人ひとりが業務遂行に必要な能力を高めるだけでなく、自身のキャリアビジョンを実現するためのスキル向上を支援する体系といたしました。人材育成方針及び新たな人材育成体系に基づき、以下の施策に取り組んでおります。

 

(i)共通能力・基盤研修

新入社員から中堅社員・管理職・店部長に至る各階層に応じた研修を実施し、全社員が共通して備えるべきプレイヤー能力やマネジメントスキルに加え、コンプライアンスや倫理観の向上を図っております。

 

(ⅱ)自律的能力開発研修

社員の特性や志向に応じて専門性を高められるプログラムを提供しております。金融のプロフェッショナルとしての証券知識の習得に加え、CFP®、証券アナリスト、プライベートバンカーなどの資格取得も推奨しております。また、対人スキル、DX・ITスキルや語学力など幅広い分野の習得も可能としており、社員の主体的なキャリア形成を包括的に支援しております。

 

(ⅲ)マネジメント能力向上施策

マネージャー層に対し実施していた“気づき力を高める為の研修・研鑽”を主眼とした「マネージャー行動診断」を一段階進化させ、「BOSS(Balance Objectivity Strength Sustainability)評価」に刷新いたしました。180度・360度評価制度の要素を加味したフィードバックを行うことにより、マネージャーと部下の円滑なコミュニケーションを促進させ、全ての社員がパフォーマンスを最大限に発揮できる職場環境の整備に取り組んでおります。

 

(ⅳ)自律的な成長を促す育成支援施策

金融、マネジメント、ダイバーシティなど100種類以上の講座を社員一人ひとりが自律的に学習できる環境を整備し、主体的かつ能動的な思考・行動ができるプロフェッショナル人材の育成を進めております。

さらに、AIを活用した育成支援システムを導入し、社員が時間や場所を問わずモバイル端末を使用して基礎的な営業スキルを習得できる環境を整備いたしました。即時フィードバックなどの双方向型コミュニケーションを通じ、学習に対するモチベーションを高め、現場でのOJTにおいては応用力の向上を主眼とした育成を可能としております。

 

b.社内環境整備方針

当社グループで働く社員が高いモチベーションを持ちパフォーマンスを最大限に発揮し続け、多様なキャリアパスや働き方の実現ができるよう、さらなる環境整備を進めております。当社のマテリアリティ(重要課題)「人材」(人材育成、労働環境整備)における取組方針「社員が輝く職場づくりのために」を全社的に推進する体制の確立を目的として「ダイバーシティ推進プロジェクトグループ」を設置し、多様性確保・働き方改革の実現に向け必要な取り組み・課題解決を推進し、KPIの達成と多様な社員が活躍する社内環境のさらなる整備を図る体制を構築いたしました。また、多様な人材が活力と成長を生むとの考えのもと、社員それぞれの能力や適性に応じて強みを発揮できるような施策や、柔軟な働き方を可能とする勤務体系の導入などを実施しております。

なお、具体的には以下の環境を整備しております。

 

(i)多様な社員の活躍・育成支援を推進する施策

・多様な社員の活躍推進

社員のライフステージとキャリアパターンに合わせた働き方を推進するため、小学校6年生までの子を養育する社員及び家族の介護を必要とする社員を対象として、仕事と育児・介護を両立し、安心して働き続けることができる「WLB(Work Life Balance)制度」を拡充いたしました。育児・介護支援制度のさらなる充実を目的として、職種の選択肢を拡充したほか、短時間勤務においては最大2時間30分まで短縮が可能となりました。社員のライフステージに合わせてキャリアを中断させることなく仕事を継続できる環境整備に取り組んでおります。

 

・高齢者雇用の取り組み

定年後も継続して勤務可能とする「継続雇用制度」においては、定年退職者の豊かな経験や能力を積極的に活用するため、年齢にとらわれず、能力や成果に応じた役職への積極的な登用を行うことでシニア人材のモチベーションを高め、長期にわたって活躍できる体系としております。

 

 

(ⅱ)自律的な自己成長・キャリア形成を促す施策

・コース制の導入

社員との長期的な関係構築を前提とし、活躍の場や働き方の自律的な選択を可能とするため、本人の志向及び適性、ライフステージによる働き方の変更に応じたキャリア機会を提供しております。

 

・社内人材公募制度

社員自らの意思で希望する業務にチャレンジできる機会を提供するために、社内人材公募制度(Okasan Career Challenge)を導入しております。

 

・再入社支援制度

学業や新たなフィールドへのチャレンジ等のキャリアアップや、結婚・育児・介護・配偶者の転勤といったライフステージの変化等を理由に退職された方に対して、これまで培ってきた知識・スキル・多様な経験を活かし、改めてチャレンジしたい方を対象とした再入社支援制度(Okasan Seagull Club)を導入しております。

なお、2024年より同制度拡充のためアルムナイネットワークの運営を開始し、退職された方との多面的かつ長期的な関係を構築することを可能といたしました。さまざまな分野で現在活躍されているアルムナイと現役社員の交流による各ビジネス領域の活性化によりお客さまへのサービス向上に繋げてまいります。

 

(ⅲ)社員の健康保持・増進を実現するための支援施策

当社グループは、全ての社員が心身ともに健康で、自分自身の仕事・職場に誇りを持てる企業であり続けることを目指し、社員を対象としたウォーキングイベント「岡三Walk」の開催や、禁煙施策の導入、健康経営に関する研修等を行っております。また、社員の健康の保持・増進を目的として、常駐の保健師による健康管理体制を構築し、社員の健康診断の結果をもとに保健師が健康管理者・産業医と連携し、月に一度フォローが必要な社員の洗い出しを行い、専門的見地からのアドバイス、受診後のアフターフォローに力を入れております。

これらの取り組みにより「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」として認定されました。

 

(ⅳ)社員の経済的な安定を支援する取り組み

当社グループでは、社員の経済的な安定を支援する取り組みについても推進しており、中長期的な資産形成に資するよう、確定拠出年金制度及びマッチング拠出、各種積立投資並びに貯蓄制度等を整備しております。

 

<指標及び目標>

当社グループでは、上記「戦略>」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績

管理職に占める女性労働者の割合

2030年まで30

10.4

男性労働者の育児休業取得率

2030年まで100

102.0

年次有給休暇取得率

2030年まで70

54.9

 

(注)1.中核子会社である岡三証券株式会社の数値であります。

2.管理職に占める女性労働者の割合は、2025年4月1日時点を基準日として算出したものであります。

 

 

3 【事業等のリスク】

証券業界を取り巻く環境は目まぐるしく変化していくなか、当社グループは環境の変化に対応するための戦略を実行する必要があります。そのため、リスク管理の果たす役割はますます重要となってきております。

このような環境下、当社ではリスクアペタイトフレームワークの枠組みを構築し、当社が直面している経営環境及び経営方針に従った事業計画を実行する上で生じるリスクを識別、管理することが重要であると考えています。

そのため、グループの事業特性を考慮し、管理すべきリスクとしてリスクカテゴリを定めています。その上で、リスクカテゴリ内の各リスクを識別し、リスクを定量化した上で、事業計画達成のために進んで受け入れるべきリスクの総量をリスクアペタイトとして表現し、定量化されたリスクがリスクアペタイトの範囲に収まるように管理を実施しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであることから、実際の結果と異なる可能性があります。また、当該記載事項については、必ずしもリスク要因に該当しない場合もありますが、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性等を考慮し記載しております。

 

(1) 経営環境リスク

政治、経済環境、業界構造、競合企業、法規制、資本調達、株主構成、テクノロジーの革新等の外部経営環境の変化によって当社グループが損失を被る可能性があります。

① 金融商品取引業の収益変動

当社グループの主要事業であります金融商品取引業は、日本国内のみならず世界各地の市況動向や経済動向により投資需要が変化し、顧客からの受入手数料、トレーディング損益等が大幅に変動しやすいという特性があり、これら国内外の金融商品市況の動向や金融商品取引所における取引の繁閑が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合企業

当社グループは対面営業を主力とする専業証券として、長年に亘り地域密着した営業活動により競争優位を築いてまいりましたが、近年の証券業界においては、同業他社に加えて銀行等の競合、異業種やフィンテック系スタートアップからの参入、及び業界再編などにより、今後も激しい競争環境が続くことが予想されます。このような状況下、当社グループの競争力の優位性が維持できない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 法規制

当社グループは、その業務の種類に応じて、法令・諸規則の規制を受けております。岡三証券株式会社を始め国内で金融商品取引業を営む証券子会社等は、金融商品取引法の規制を受けるほか、各金融商品取引所、日本証券業協会等の自主規制機関による諸規則等の規制を受けます。また、海外の子会社については、現地法上の規制を受けます。

当社グループが受ける法令・諸規則の規制から引き起こされるリスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」等に基づく体制整備を行っております。

しかし、将来において、法的規制の強化や、現在予期し得ない法的規制等が設けられる可能性があり、関連法令を遵守できなかった場合、規制、命令により業務改善や業務停止の処分を受けるなど、事業活動が制限され当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 経営戦略リスク

当社は、2028年3月期を最終年度とする中期経営計画において、「金融のプロフェッショナルとして「お客さまの人生」に貢献する」ことを存在意義として掲げ、「One to One マーケティングの強化」「プラットフォームの高度化」「コーポレートブランディングの進化」を基本方針に据えて経営基盤の強化に取り組んでおります。また、成長戦略の実現性を高めるために、全領域で“デジタル化”を推進しています。

将来これらの施策が計画通りに進行しない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 事務リスク

事務処理のプロセスが正常に機能しないこと、役職員の行動が不適切であること、又は災害・犯罪等の外部的事象の発生により、当社グループに対する損害賠償請求や信用力の低下等のリスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」等に基づく体制整備を行っています。

しかし全ての事象に対応することは不可能であるため当社グループの想定を超える不測の事態が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 資金流動性リスク

当社グループの主要な事業であります金融商品取引業においては、事業の特性上、業務執行に必要となる大量の資金を機動的かつ安定的に調達する必要があります。財政状態の悪化、資産の流動性悪化、信用格付低下等の要因により短期金融市場・資本市場等からの資金調達が困難となる、あるいは資金調達コストが上昇するなど流動性リスクの顕在化に迅速に対応するため、ストレステストを実施することで、相場急変時の影響をモニタリングしております。

しかし、予想を超えた量の資金流出や急激な信用格付低下といった当社グループの想定を超える不測の事態が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) システムリスク

当社グループの業務執行に際しては、コンピュータ・システムの利用は不可欠なものとなっております。そのため、インターネット取引や当社グループが業務上使用しているコンピュータ・システムや回線が品質不良、外部からの不正アクセス、災害や停電等の諸要因によって引き起こされるリスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」等に基づく体制整備を行っております。

しかし、当社グループの想定を超える不測の事態が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 情報セキュリティリスク

コンピュータ・システムの不正利用等による顧客及び役職員の個人情報、経営情報等の機密情報の漏洩等、引き起こすリスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」等に基づく体制整備を行っております。

顧客情報の流出や個人情報の漏洩等が生じた場合、損害賠償の請求や、監督官庁から行政処分を受ける可能性があるほか、当社グループの社会的信用が毀損され顧客の流出につながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 風評リスク

当社グループに対する噂、悪評、信用不安情報や誤解、誤認、誇大解釈等が、マスコミ、その他社会一般等に広がることにより、当社の評価、評判が低下し、当社グループの業績に悪影響が生じる等の損失を被る可能性があります。

 

(8) 災害リスク

自然災害の発生や病原性感染症の拡大等に備えて、「業務継続計画(BCP)の策定」及び「危機対策本部の設置」によるリスク管理体制を構築しておりますが、当社グループの想定を超える不測の事態が発生する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 労務リスク

従業員の「就業規則」等の諸規則違反、職場の安全衛生環境の問題及び労務慣行の問題に起因して当社グループが損失を被る可能性並びに役職員の不法行為により使用者責任を問われ、当社が損失を被る可能性があります。

 

(10) 経営法務リスク

法令等や各種取引上の契約等において、法令遵守違反や契約違反その他これらに伴う罰則の適用や損害賠償等の発生により、当社グループが損失を被る可能性があります。これらの経営法務リスクについては当社グループが個別に管理しており、リスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」等に基づく体制整備を行っております。

当連結会計年度末現在において当社グループの事業に重要な影響を及ぼす訴訟は提起されておりませんが、将来、重要な訴訟等が提起された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 市場リスク

当社グループでは、自己の計算において株式・債券・為替等及びそれらの派生商品などの金融資産を保有しておりますが、急激な市況変動・金利変動等によりこれらの金融資産の価値が変動した場合、取引先が決済を含む債務不履行に陥り保有する有価証券の発行体の信用状況が著しく悪化した場合、加えて、市場の混乱等により市場において取引が出来ないことや、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることにより当社グループが損失を被る場合等、元本の毀損や利払いの遅延等による損失に対応するため、リスク相当額の限度額を定め、日々モニタリングしています。

しかし、予想を超えた急激な市況変動・金利変動といった当社グループの想定を超える不測の事態が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)ESG関連リスク

環境、社会、ガバナンス(以下「ESG」という。)を取り巻く環境の変化は速く、その影響は広範に及び不確実性を伴います。このような状況のなか、事業活動において気候変動や人権を含むESGへの取り組みが奏功しない、もしくは不十分である場合、当社グループのレピュテーション、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。また、当社グループは「投資・金融サービス業」の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は緩やかに回復しました。価格転嫁の進展等により、企業収益は高水準で推移したほか、設備投資は総じて底堅い動きとなりました。また、賃上げの流れが継続していることが窺われた一方で、コメ価格等の上昇を主因として全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数、コアCPI)が前年比+2%を上回って推移し、物価高によって家計の消費マインドが下押しされ、個人消費は幾分弱めの状況が続きました。

こうした環境のなか、日経平均株価は7月半ばに一時42,000円台まで上昇し、史上最高値を更新しました。しかし、日米要人による円安牽制発言や米国経済への懸念の強まりを受けた急速な円高進行が嫌気され、8月上旬には31,000円台まで急落する場面がありました。その後は、国内主要企業の好決算などが相場の下支えとなった一方、米国経済に対する先行き不安から変動率の高い値動きとなりました。1月以降は、トランプ政権の政策に対する不透明感や円高進行、AI投資の減速懸念が嫌気され、軟調に推移しました。年度末にかけては、米国による自動車への追加関税発動や相互関税に関する発表などを背景に下落幅を拡大する展開となり、日経平均株価は35,617円56銭で当年度の取引を終えました。

債券市場では、4月初旬に0.75%程度だった日本の10年物国債利回りは、日銀の利上げ観測を背景に上昇し、6月から7月にかけて1.0%前後で推移しました。その後は、米国経済の減速懸念が強まったことから8月には一時0.8%を下回ったものの、10月以降は再び上昇に転じ、1月の追加利上げや決算期末に向けた持ち高調整の売りなどを受けて、10年物国債利回りは1.485%で当年度の取引を終えました。為替市場では、4月から6月にかけて米国の堅調な経済指標を背景に利下げ期待が後退し、1ドル=160円台まで円安が進行しました。7月以降は、米景気の先行き懸念から、一時1ドル=140円を割り込みました。その後は、トランプ氏の大統領選勝利を受けてインフレ再燃不安が高まり、円安ドル高基調で推移しましたが、1月の日銀による利上げ実施や米景気後退懸念により、円高が進行しました。この結果、4月初めに1ドル=151円台だったドル円相場は、1ドル=149円台後半で当年度の取引を終えました。

このような状況のもと当社グループでは、5ヵ年の中期経営計画に基づき、持続的な成長を実現するための経営基盤の確立に取り組みました。引き続きソリューション営業を推進したほか、中核子会社の岡三証券株式会社を軸として証券会社の金融商品仲介業者転換を支援する証券プラットフォーム事業を開始し、当社グループ内外の証券会社に対して取り組みを進めました。また、岡三証券においては、銀行サービス「岡三BANK」及びファンドラップサービス「岡三UBSファンドラップ」の提供を開始し、コア資産(中長期で安定運用する資産)へのアプローチによる資産管理型ビジネスの拡大を図ったほか、菊陽町サテライトプレイス(熊本県)の設置、新たな投資情報サイトの開設など事業基盤の拡充とサービス強化を推進しました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ1,719億58百万円増加1兆3,797億38百万円、負債合計は前連結会計年度末に比べ1,778億82百万円増加1兆1,715億5百万円、純資産合計は前連結会計年度末に比べ59億23百万円減少2,082億32百万円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度における当社グループの営業収益は819億36百万円(前年度比3.0%減)、純営業収益は798億49百万円(同3.3%減)となりました。販売費・一般管理費は670億10百万円(同0.9%増)となり、経常利益は155億77百万円(同13.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は116億52百万円(同11.5%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ330億26百万円減少し、447億45百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は、206億88百万円となりました。これは主に、有価証券担保貸付金及び有価証
券担保借入金の増減1,207億54百万円、信用取引資産及び信用取引負債の増減200億13百万円による資金の獲得
と、トレーディング商品の増減1,573億80百万円、預り金の増減113億34百万円による資金の使用の差し引きによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果獲得した資金は、61億80百万円となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入77
億37百万円、事業譲受による収入25億14百万円による資金の獲得と、無形固定資産の取得による支出21億38百万
円による資金の使用の差し引きによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、185億2百万円となりました。これは主に、子会社の自己株式の取得による
支出71億9百万円、配当金の支払額60億70百万円による資金の使用によるものであります。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態

(資産合計)

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,719億58百万円増加1兆3,797億38百万円となりました。これは主に、トレーディング商品が2,364億62百万円、有価証券担保貸付金が422億73百万円増加した一方、現金・預金が332億14百万円、約定見返勘定が314億54百万円、信用取引資産が280億20百万円減少したことによるものであります。

 

(負債合計)

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,778億82百万円増加1兆1,715億5百万円となりました。これは主に、有価証券担保借入金が1,630億27百万円、トレーディング商品が241億81百万円、約定見返勘定が234億47百万円増加したことによるものであります。

 

(純資産合計)

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ59億23百万円減少2,082億32百万円となりました。これは主に、非支配株主持分が149億90百万円減少したことによるものであります。

 

 

(トレーディング業務の概要)

当連結会計年度の年度末日時点のトレーディング商品の残高は以下のとおりであります。

 

種類

2024年3月31日現在
(百万円)

2025年3月31日現在
(百万円)

資産の部のトレーディング商品

284,513

520,976

 

商品有価証券等

284,461

520,934

 

 

株式・ワラント

35,036

5,858

 

 

債券

244,506

515,015

 

 

受益証券等

4,919

59

 

デリバティブ取引

51

42

 

 

オプション取引

10

1

 

 

先物取引

41

40

負債の部のトレーディング商品

438,673

462,855

 

商品有価証券等

438,204

462,855

 

 

株式・ワラント

920

3,498

 

 

債券

437,283

459,356

 

 

受益証券等

 

デリバティブ取引

469

 

 

オプション取引

 

 

先物取引

469

 

 

 

b.経営成績

当連結会計年度における当社グループの営業収益は819億36百万円(前年度比3.0%減)、純営業収益は798億49百万円(同3.3%減)となりました。販売費・一般管理費は670億10百万円(同0.9%増)となり、経常利益は155億77百万円(同13.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は116億52百万円(同11.5%減)となりました。

 

受入手数料

受入手数料の合計は502億1百万円(前年度比0.5%増)となりました。主な内訳は次のとおりです。

 

 

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

(百万円)

受入手数料

49,948

50,201

 

委託手数料

24,173

22,911

 

引受け・売出し・特定投資家向け
売付け勧誘等の手数料

1,459

1,442

 

募集・売出し・特定投資家向け
売付け勧誘等の取扱手数料

14,419

13,534

 

その他の受入手数料

9,896

12,313

 

 

委託手数料

当連結会計年度における東証の1日平均売買高(内国普通株式)は27億12百万株(前年度比23.8%増)、売買代金は5兆3,355億円(同14.1%増)となりました。こうしたなか、中核子会社である岡三証券株式会社においては、個人のお客さまの外国株式委託売買代金が前連結会計年度比で増加した一方、国内株式委託売買代金は減少しました。

これらの結果、株式委託手数料は223億58百万円(同5.3%減)となりました。また、その他の委託手数料は5億53百万円(同2.3%減)となり、委託手数料の合計は229億11百万円(同5.2%減)となりました。

 

引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料

当連結会計年度における株式の引受けは、大型IPOや複数の主幹事を務めたことにより、引受金額及び引受手数料が増加しました。また、債券の引受けは、財投機関債や政府保証債における主幹事を務めたことにより引受金額は増加した一方で、事業債における主幹事引受案件の減少等により、引受手数料は減少しました。

これらの結果、株式の手数料は6億16百万円(前年度比23.0%増)、債券の手数料は8億25百万円(同13.8%減)となり、株式・債券を合わせた引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料の合計は14億42百万円(同1.2%減)となりました。

 

募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料

募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料につきましては、投資信託関連収益がその大半を占めています。

当連結会計年度においては、安定成長が期待される高配当株に着目したファンドが年度を通じて販売を牽引しました。また、日本の金融株に投資するファンドや元本確保を狙うファンド等も人気を集めました。一方で、景気減速懸念や日米政治イベントにより株式市場で不透明感が高まったことを受け、公募投資信託の販売額は前連結会計年度比で減少しました。

これらの結果、募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料は135億34百万円(前年度比6.1%減)となりました。また、その他の受入手数料については、主に投資信託の信託報酬等により123億13百万円(同24.4%増)となりました。

 

 

トレーディング損益

 

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

(百万円)

トレーディング損益

29,139

24,572

 

株券等トレーディング損益

22,808

20,323

 

債券等トレーディング損益

6,496

3,658

 

その他のトレーディング損益

△164

590

 

 

株券等トレーディング損益は主に米国株式を中心とした外国株式の国内店頭取引等によるものであり、また、債券等トレーディング損益は国内外債券の顧客向け取扱いやポジション管理等に伴うものであります。

当連結会計年度においては、個人のお客さまの外国株式国内店頭取引が前連結会計年度比で減少しました。また、外国債券の販売額は個人、法人ともに前連結会計年度比で減少しました。

これらの結果、株券等トレーディング損益は203億23百万円(前年度比10.9%減)、債券等トレーディング損益は36億58百万円(同43.7%減)となり、その他のトレーディング損益5億90百万円の利益(前年度は1億64百万円の損失)を含めたトレーディング損益の合計は245億72百万円(前年度比15.7%減)となりました。

 

金融収支

金融収益は53億3百万円(前年度比47.8%増)、金融費用は20億87百万円(同6.8%増)となり、差引の金融収支は32億15百万円(同96.9%増)となりました。

 

その他の営業収益

金融商品取引業及び同付随業務に係るもの以外の営業収益は、18億59百万円(前年度比1.5%増)となりました。

 

販売費・一般管理費

販売費・一般管理費は、人件費や不動産関係費の増加等により、670億10百万円(前年度比0.9%増)となりました。

 

営業外損益及び特別損益

営業外収益は30億94百万円、営業外費用は3億55百万円となりました。また、特別利益は投資有価証券売却益の計上により23億20百万円、特別損失は10億8百万円となりました。

 

c.経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループのコア事業であります証券ビジネスの営業収益は、株式、債券、金利、為替等の市況環境変動の影響を受けるため、当社グループの経営成績は連結会計年度毎に大きく変動する傾向にあります。

このため、当社といたしましては、グループ企業それぞれの事業の強みを全体で共有・活用し、多様化する資産運用ニーズに迅速かつ的確に対応できる体制の確立を目指すことにより、安定した成長を実現できる経営体質の構築に努めております。

 

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に取り組み、特に重要な経営指標として、連結ROE8%の達成を目標として掲げております。当連結会計年度におけるROEは、営業収益の減少等により、親会社株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度比で減少したことから、5.7%(前年度比1.4ポイント低下)となりました。

当社グループでは、中長期的な企業価値向上への取り組みを続けてまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。

当社グループのコア事業であります証券ビジネスの資金需要の主なものは、信用取引買付代金の顧客への貸付、トレーディングのロングポジション及び有価証券担保貸付金であり、逆に資金調達の主なものは金融機関借入、コールマネー、信用取引売却代金の顧客からの借入、トレーディングのショートポジション及び有価証券担保借入金であります。これらは、市況環境の変動の影響を受け、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与えることとなります。なお、岡三証券株式会社では、安定的かつ機動的な財務運営のため、株式会社みずほ銀行をアレンジャーとしたコミットメントラインを総額210億円として更新いたしました。

 

 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。