第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は創業以来、どの系列にも属さず「自主独立」を貫いております。また、お客様本位の考え方に基づき、お客様のニーズにあった情報やサービスの提供を推進することにより、お客様満足度の向上に努めております。

当社グループは、お客様へ質の高いサービスを提供するとともに、経営の効率化を進めて企業価値を高め、全てのステークホルダーへの利益還元を充実させていくことが、経営の最重要課題であると考えております。

 

(2) 会社の対処すべき課題

当社は、経営理念において「いついかなる場合にもお客様に対して奉仕する心を失うことのないよう誓う」と宣言し、お客様本位の業務運営に努めております。

また当社は、お客様のライフプランや投資目的、経験、リスクに対する考え方などを充分に把握した上で、資産運用のご提案等を通じ、お客様の資産形成に貢献することが、当社の社会的使命であると考えております。

この実現のためには、「売買手数料依存の収益構造から脱し、残高連動報酬をベースにした収益構造を確立すること」が必要であると考え、2012年度以降、株式投信純増3ヵ年計画を4次にわたり実施してまいりました。この結果株式投信残高は1兆円を超え、投資信託残高より得られる信託報酬の販管費カバー率は44.5%にまで達し、経営の安定性は一段と高まっております。

2024年度からは、新たに「中期経営計画」を策定し、取り組んでまいります。まず、株式営業においては、有望銘柄を発掘する目利き力や分かりやすい提案力を更に強化し、当社が推奨する個別銘柄の残高増加を図ります。また、投資信託営業においては、良質なファンドの長期保有により投資信託の残高を着実に積み上げ、信託報酬による販管費カバー率を更に高めることで、不安定な業界環境下においても安定した業績を目指してまいります。更に、新たな注力分野として、「ゴールベースアプローチによるファンドラップ事業の開始」や、「引受主幹事案件の獲得拡大」にも取り組んでまいります。

これらの施策を実践することで、中期的に、当社の資本コストを上回るROEを達成していく所存です。

 

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般に関する事項

当社は気候変動をはじめとする様々なサステナビリティ課題への対応を、持続可能な社会の実現に寄与するための重要な経営課題の一つであると認識しております。

 

① ガバナンス

当社ではサステナビリティへの取り組みについて、審議検討を行うワーキンググループとして、代表取締役社長が委員長を務める危機管理委員会下にサステナビリティワーキンググループを設置しています。

サステナビリティワーキンググループでは、主に気候変動等によるリスク・機会の特定及び影響の評価を行うとともに、それらを踏まえた対応方針や事業計画を含めた企業戦略の企画立案・推進を行ってまいります。

また、サステナビリティワーキンググループにて審議検討された事項については危機管理委員会に報告がなされ、危機管理委員会より年1回取締役会に付議・報告され、必要に応じて取締役会がその対応について意思決定をし、進捗状況の監督を実施することとしております。

 


 

② リスク管理

当社はサステナビリティに係る様々なリスクに関して、当社だけでなく経済や市場へ多大な影響を及ぼす重要なリスクであると考え、適切なリスク管理体制を整えております。

当社ではサステナビリティに係る様々な事象に対して、危機管理委員会下のサステナビリティワーキンググループにて、各事象が当社ステークホルダーに及ぼすリスクの特定及び影響の評価を行ってまいります。

また、危機管理委員会ではサステナビリティワーキンググループで特定されたリスクや事象について、その他の事業等のリスクを含めた相対的な評価を行い、突発事態発生時の対応も含めた持続可能性に関する諸問題への対応管理を総合的に担ってまいります。

 

 

 

(2) 気候変動に関する事項

当社は気候変動が及ぼす事業への影響について、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づき、気候変動に起因する事業等のリスク・機会の把握と適切な情報開示を行います。

 

① 戦略

シナリオ分析として、SDGs達成目標年度である2030年時点を想定し、現状を上回る気候変動対策が行われない4℃シナリオと、脱炭素化に向けて積極的な気候変動対策が行われる1.5℃シナリオを参考に、定性・定量の両面から考察を行いました。

考察の結果、いずれのシナリオについても当社事業への影響は軽微であることを認識しております。

当社にて特定した主な気候関連リスク・機会に関する詳細な情報については、当社ウェブサイト(URL:https://www.marusan-sec.co.jp/sustainability/tcfd/)の「想定される気候関連リスクの当社への影響」をご参照ください。

 

② 指標及び目標

当社は、気候変動対応の進捗を管理するための指標として、自社企業活動によるGHG(温室効果ガス)排出量(Scope1,2)を採用しております。

今後、再生可能エネルギーの導入や、省エネ活動等による自社のGHG排出量削減を推進し、パリ協定の目標を参考に中長期的な削減目標の設定についても検討を行ってまいります。

GHG(温室効果ガス)排出量(Scope1,2)

 

Scope1

Scope2

合計

2022年度

207.3t-co2

800.8t-co2

1,008.1t-co2

2023年度

225.9t-co2

787.4t-co2

1,013.3t-co2

前年比

+18.6t-co2 

△13.4t-co2

+5.2t-co2

 

※ 対象:提出会社の全営業拠点(本社を含む)

算定範囲:2022年4月~2024年3月

Scope1:主に営業車のガソリン使用に伴う直接排出

Scope2:主にオフィス・店舗の電気使用に伴う間接排出

 

 

(3) 人的資本に関する事項

当社グループは、「顧客に対する奉仕の心」を経営理念に掲げ、お客様本位の業務運営に努めてまいりました。2024年4月には中期経営計画を公表し、有望な銘柄やファンドを発掘する目利き力、お客様の長期的な資産形成に資する提案力の強化により、対面証券会社としてお客様から信頼を得られる存在を目指しています。

また、社員の一人ひとりが経営に積極的に参加していくことによって企業の発展と社会的責任の遂行が可能になるという考え方の下、「全員参加の経営」を目指してまいりました。

これらを実現するために、社員一人ひとりが「自ら考え、自ら行動する」自発的な発想と行動力を持った人材を育成すべく、社員教育に積極的な投資を行っています。また、個々の社員が持てる力を最大限に発揮することができる働きがいのある職場環境の整備に努めています。

 

① 研修制度の整備・拡充

対面営業の強みを活かした質の高いアドバイスを提供することに重点を置いて、キャリアに応じた階層別の研修や、外部教育機関への派遣研修などを実施し、社員のスキル向上を図っています。

新入社員に対するOJTでは、コーチャー制度を設けて先輩社員によるマンツーマンの実地指導を行っています。先輩社員が自らの経験に基づくきめ細かな指導を行い、「先輩に教わり、後輩に教える」伝統を受け継いでいます。更に、株式カレッジや投信カレッジでは、個々の営業員の銘柄・ポートフォリオ提案力の強化を図り、中期経営計画の実践に繋げていきます。

また、経営層の育成・発掘を目的として、社内ビジネススクール「丸三アカデミー」を実施しています。組織横断的に人材を集め、当社の100年以上にわたる歴史を学ぶとともに、経営者視点でビジネスモデルを考える機会を設け、経営理念の浸透や知識と意識の底上げを図っております。

 

研修制度(総合職)


 

② 資格取得の促進

資格取得を通じて、自らの能力向上がお客様へのサービス向上に繋がることを体得し、自ら学びお客様のために成長できる人材の育成を図るため、資格取得に対する奨励・支援を積極的に行っています。

まず、入社1~3年目を「ベーシック・プログラム期間」と位置付け、AFP、テクニカルアナリストを取得する期間としています。その後の入社4年目以降を「アドバンスト・プログラム期間」とし、CFP®、証券アナリストなどのより専門性の高い資格の取得を促進しています。


※1.AFPとCFP®の保有者は重複なし

※2.テクニカルアナリストは1次レベルから3次レベル保有者の合計
(1次レベル:CMTA®、2次レベル:CFTe®、3次レベル:MFTA®)

※3.証券アナリストは日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)保有者

指標

2023年度末実績

目標

AFPの取得者数

778

ベーシック・プログラム期間中に対象者全員が取得

テクニカルアナリストの取得者数

222

ベーシック・プログラム期間中に対象者全員が取得

CFP®の取得者数

27

2028年度まで75名以上

証券アナリストの取得者数

23

2028年度まで50名以上

 

 

 

③ 多様な人材の活躍

「全員参加の経営」の実現に向けて、多様な人材が活躍できる環境を整備することで、組織・人材の活性化を図っています。

将来を担う若手の人材に対しては、「早期に活躍できる体制の構築」や「能力に見合った処遇」など、働きがいを高める施策を実施してまいります。

また、当社は女性の活躍推進に積極的に取り組んでいます。女性の採用を積極的に行っているほか、女性の大半が中核人材としての育成過程にある中で、多様な働き方に対応できる体制整備と、女性が活躍できる風土づくりに取り組んでいます。2023年度においては、育児による短時間勤務制度の対象者を拡大する制度改正や、企業主導型保育所紹介サービスや介護相談サービスの導入などで、育児や介護と仕事の両立支援を進めました。

さらに、シニア世代の社員が身に着けた高い技能・技術、豊富な経験・人脈などを次世代につなげていくことが企業の継続的発展には必要不可欠です。当社のキャッチコピー“100年変わらぬ志 丁寧に、誠実に、あなたの未来のために”は、先人の築き上げた信頼の軌跡であり後輩に託すべき思いであります。シニア世代がやりがいを持って働き続けることができるよう、定年後の働き方を見直し、新たな制度の再構築に着手しています。

指標

2023年度実績

目標

新卒採用の女性比率

53.4%

50%水準を維持

管理職候補(課長代理)の女性比率

14.6%

2028年度まで40%以上

女性管理職比率

1.5%

2028年度まで5%以上

男性の育児休業等取得率※1

61.5%

100%

 

※1.育児休業等取得率には、育児目的休暇を含みます。

 

④ エンゲージメントの向上

生産性、顧客満足度及び従業員満足度の向上を図る取り組みとして、MST(Marusan Small Teams)活動を推進しています。MST活動は、社員が部署横断的に小集団を結成し、各種課題を研究・討議し解決を目指す活動です。MST活動を通じて社員の一人ひとりが経営に積極的に参加していくことでエンゲージメントと企業価値の向上を目指しています。

また、2024年5月からは、エンゲージメントサーベイによる組織課題の可視化と改善に着手しています。社員のエンゲージメントを定点観測し、人材育成及び社内環境整備の方向性と成果を都度モニタリングしていくことで、社員が「働きがい」や「働きやすさ」を感じられる施策の整備などに活用していきます。

指標

2023年度実績

目標

エンゲージメントサーベイの回答率

100%

 

 

⑤ 健康経営の推進

人材育成の仕組みを補完し組織を一層活性化させていくために、社員の安全衛生、職場環境の改善及び健康の保持増進に継続的に取り組んでいます。2023年度より、東京証券業健康保険組合のサポートを受けて、企業全体で健康づくりに取り組む「健康企業宣言®」へ参加しています。

指標

2023年度実績

目標

有給休暇取得率

60.8%

2028年度まで80%

一人当たり年間総労働時間

1,979時間

1,920時間

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

 

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがあります。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等に与える影響につきましては、合理的に予見することは困難であるため記載しておりません。

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 株式市場の変動から受ける影響について

当社グループの営業収益のうち株式委託手数料が占める割合は、当連結会計年度36.5%(前連結会計年度28.4%)となっております。このため当社グループの業績は、株式市場の変動により大きな影響を受ける可能性があります。

このような状況に対応するため、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、売買手数料依存の収益構造から脱し、残高連動報酬をベースにした収益構造を確立することを目指しております。

 

(2) 市場リスクについて

市場リスクとは、株価、金利、為替、その他の変動により発生する潜在的なリスクであります。当社グループの営業収益のうちトレーディング損益が占める割合は、当連結会計年度0.2%(同0.4%)となっております。当社グループのトレーディング業務には市場リスクが存在しており、急激な相場変動により損失を被る可能性があります。

市場リスクの回避に努めるため、社内規程に基づき、市場リスクを毎営業日計測して、市場リスクが予め定めた枠に収まっていることを確認し、内部管理統括責任者に報告する体制を整備しております。

 

(3) システムリスクについて

システムリスクとは、インターネット取引システムや業務上使用するコンピュータシステムの障害等の発生に伴い、損失を被るリスクであります。障害の規模によっては、当社の経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

システムリスクを低減するため、当社は外部ベンダーに委託する基幹システムのバックアップセンターを地域的に離れた場所に設け、基幹システムのデータセンターに障害が生じても、バックアップセンターを使用して業務を継続できるよう体制を整備しております。

 

(4) 情報漏洩に関するリスクについて

情報漏洩に関するリスクとは、役職員等の人為的ミスや事故、サイバー攻撃等外部からの不正アクセス等により、会社保有情報のうち、公知を除くものが漏洩又は漏洩の疑いがあると判明した場合に被るリスクであります。万一会社保有情報が漏洩又は漏洩の疑いがあると判明した場合には、当社の経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

情報漏洩に関するリスクを低減するため、当社は「セキュリティポリシー」並びに社内規程を整備し、社内システムの技術的サイバーセキュリティ対策、外部委託先のセキュリティ対策の管理を行うことで、会社保有情報における情報セキュリティの確保に努めております。また、当社は、社内教育・啓発を図り、情報セキュリティに関する高い意識を養っております。

 

 

(5) 法務・コンプライアンスに関するリスクについて

法務・コンプライアンスに関するリスクとは、各種取引及び業務執行において、法令違反や契約違反に伴う罰則適用や損害賠償等により損失を被るリスク、ステークホルダーの期待に反する行為等で社会的信用を失墜するリスクであります。万一リスクが顕在化した場合には、当社の経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

法務・コンプライアンスに関するリスクを低減するため、当社は「コンプライアンス原則」をはじめとする社内規程を整備し、法務・コンプライアンスについて社内教育・啓発を図るとともに、顧問弁護士と連携した法的対応等の体制を整備しております。

 

(6) 事務リスクについて

事務リスクとは、役職員の過失又は事故等により事務処理が正確に執行されなかったことにより損失を被るリスクであります。万一重大な事務処理の誤りが発生した場合には、当社の経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

事務リスクを低減するため、社内規程等の整備、事務処理状況の点検、事務指導等によって、事務の正確な執行に努めております。

 

(7) 気候変動リスクについて

気候変動リスクとは、異常気象によって引き起こされる自然災害等により物理的な損害を被るリスク(物理的リスク)や、気候変動に対処するための移行に伴う規制強化や市場変化等に起因するリスク(移行リスク)であります。これらの変化に対応できない場合には、当社の経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

気候変動等が事業に与える影響について審議検討を担うワーキンググループとして、代表取締役社長が委員長を務める危機管理委員会下にサステナビリティワーキンググループを設置し、気候変動によるリスク・機会の特定及び影響の評価、それを踏まえた方針や事業計画を含めた企業戦略の企画立案・推進を行います。

気候変動課題への対応の詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類感染症となり経済活動の正常化が進展したことを受け、雇用・所得環境の改善が続き、個人消費も回復基調となりました。また、企業の設備投資も脱炭素化、デジタル化の推進などを背景に持ち直しの動きが続きました。一方、国内の生産活動は、部品不足の解消が進んだ自動車産業などで局地的な回復があったものの、海外景気の下振れを背景に全体としては伸び悩む状況が続きました。

このような環境の下、当社グループの業績は、株式委託手数料、投資信託の募集手数料及び信託報酬の増収により、連結経常利益は41億87百万円(前連結会計年度比391.4%の増益)となりました。

当連結会計年度の経営成績の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ②連結損益計算書及び連結包括利益計算書 連結損益計算書」に記載しております。

 

 

(株式部門)

当連結会計年度の株式市場では、日本企業の資本効率改善などに対する期待の高まりから、日経平均株価は4月から6月にかけて大幅に上昇しました。その後、7月から12月にかけては、米金融引き締めの長期化懸念や日銀の政策修正観測が重荷となり保ち合い相場が継続しましたが、半導体関連などのハイテク銘柄を牽引役に1月以降は再び上昇基調に転じました。また、為替が円安基調で推移したことも追い風となり、日経平均株価は2月に史上最高値を34年ぶりに更新。3月に入り上値を切り上げ、4万円の大台で期末を迎えました。

このような環境の下、車載向けマイコンや顧客の要望に沿ったカスタム半導体といった特定領域に強みを持つ半導体メーカーや、生成AIの急速な普及で成長期待が高まっている半導体製造装置・材料メーカーなどの半導体関連銘柄を中核に、メガバンクや総合商社、鉄鋼大手、自動車大手などの好配当利回り銘柄、サプライチェーン再構築や省人化などを目的とした設備投資の回復・拡大を追い風とする工場自動化・ロボット関連銘柄、デジタル技術やデータ活用を通じた事業変革を支援するDX関連銘柄などの選別及び情報提供に注力しました。

引受業務につきましては、新規上場を目指す企業へのマーケティング、情報提供及び関係構築に注力するとともに、当社の独自性や強みを訴求することにより、新規上場企業20社の株式引受けを行いました。

以上の結果、株式受入手数料は68億7百万円(前連結会計年度比59.4%の増収)となりました。

株式受入手数料の詳細は、「第4 提出会社の状況 5 業務の状況 (1)受入手数料の内訳」に記載しております。

 

(債券部門)

当連結会計年度の債券市場におきましては、期初0.340%で始まった長期金利(新発10年物国債利回り)は、欧米の中央銀行の金融引き締め長期化姿勢に加え、国内物価と賃金の上昇を受けて日銀が長期金利の許容変動幅を拡大したことから、11月初旬に0.970%まで上昇しました。その後、欧米の中央銀行が景気減速やインフレ鎮静化により利下げに転じる観測が強まり0.550%まで低下したものの、日銀が賃金と物価の好循環を確認したと判断しマイナス金利政策とイールドカーブ・コントロール政策を終了したことから、当連結会計年度末は0.725%となりました。

このような環境の下、債券の募集・売出しの取扱高は277億円(前連結会計年度比3.3%の減少)となり、債券受入手数料収入は80百万円(同14.1%の減収)となりました。また、債券価格の下落による売買の手控えなどを受け、債券等トレーディング損益は8百万円(同5.4%の減益)となりました。

債券受入手数料及び債券等トレーディング損益の詳細は、「第4 提出会社の状況 5 業務の状況 (1)受入手数料の内訳、及び (2)トレーディング損益の内訳」に記載しております。

 

(投資信託部門)

投資信託部門は比較的高いインカムを獲得可能なバランス型ファンドのほか、国内株式に投資するファンドを中心に販売し、残高の増加に努めました。

具体的には米ドル建ての多様な資産に分散投資するバランス型ファンド「NWQフレキシブル・インカムファンド」、中長期的な利益成長が期待される日本のオーナー企業に投資する「ジパング・オーナー企業株式ファンド」、優れた経営効率と利益成長力を有し、株価の上昇が期待される銘柄に厳選して投資する「ニッセイJPX日経400アクティブファンド」などの販売に注力しました。

また、重要情報シートや「投信NAVI(投信分析・販売支援ツール)」、資産運用シミュレーションツールを積極的に活用することで、分かり易い説明やお客様の保有ファンドのフォローに努めました。その他にもポートフォリオ分析、お客様のニーズに沿ったご提案などのサービス向上による販売促進に取り組みました。

そうしたなか、株式投資信託の募集取扱高は1,835億円(前連結会計年度比15.7%の増加)となり、募集手数料は47億35百万円(同10.9%の増収)となりました。また、3月末の株式投資信託残高は1兆395億円(同26.8%の増加)となり、これに伴う株式投資信託の期中平均残高の増加により、信託報酬も66億30百万円(同12.6%の増収)となりました。

 

 

(損益の状況)

以上の結果、当連結会計年度の当社グループの連結業績は、営業収益が186億8百万円(前連結会計年度比24.6%の増収)となりました。営業利益は36億94百万円(同872.5%の増益)、経常利益は41億87百万円(同391.4%の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益は29億25百万円(同275.9%の増益)となりました。

当社単体の業績は、営業収益が186億8百万円(前事業年度比24.6%の増収)、経常利益が41億94百万円(同397.6%の増益)、当期純利益が29億92百万円(同287.2%の増益)となりました。

連結業績の詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ②連結損益計算書及び連結包括利益計算書 連結損益計算書」に、単体業績の詳細は「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 ②損益計算書」に、それぞれ記載しております。

 

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ164億74百万円増加し840億75百万円となりました。主な要因は、現金・預金が53億90百万円、保有する有価証券の値上がりなどにより投資有価証券が73億88百万円増加したことなどによるものです。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ100億35百万円増加し315億50百万円となりました。主な要因は、預り金が63億10百万円、繰延税金負債が22億50百万円増加したことなどによるものです。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べ64億38百万円増加し525億24百万円となりました。主な要因は、配当金21億1百万円の支払いにより減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益29億25百万円を計上したことや、その他有価証券評価差額金が50億59百万円増加したことなどによるものです。

連結財政状態の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ①連結貸借対照表」に記載しております。

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、預り金の増加などによる資金の増加と信用取引資産の増加や顧客分別金信託の増加などによる資金の減少との差し引きにより、75億57百万円の資金の増加(前連結会計年度は109億94百万円の資金の増加)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出などにより、7億34百万円の資金の減少(同46億3百万円の資金の減少)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払などにより、18億86百万円の資金の減少(同15億61百万円の資金の減少)となりました。

その結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比53億90百万円増加し、363億68百万円となりました。

連結キャッシュ・フローの詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ④連結キャッシュ・フロー計算書」に記載しております。

当社グループの主たる事業は有価証券の売買等の金融商品取引業であり、資金需要の主なものには、信用取引貸付金等の顧客の資金運用ニーズに対応するための資金などがあります。このような資金ニーズに対応するための経常的な資金調達については、自己資金を中心に対応することとしております。金融商品取引業者として顧客の様々な取引需要に対応するためには、常に一定程度の資金を保有しておくことが必要と考えております。当連結会計年度末の現金・預金残高は363億68百万円であり、これらの資金需要に対応可能な水準を確保しております。

 

 

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たって、当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

当連結会計年度末の繰延税金資産の回収可能性及び固定資産の減損に関する会計上の見積りに用いた仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは2024年4月26日に「中期経営計画」を公表し、2024年度より取り組んでおります。中期経営計画における2028年度までに達成を目指す数値目標は、株式投資信託の預り資産純増額3,000億円、当社が推奨する日本株の個別銘柄の預り資産純増額1,000億円、ROE8%以上、信託報酬による販売費・一般管理費カバー率55%です。

中期経営計画の概要


 

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。