第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は創業以来、どの系列にも属さず「自主独立」を貫いております。また、お客様本位の考え方に基づき、お客様のニーズにあった情報やサービスの提供を推進することにより、お客様満足度の向上に努めております。

当社グループは、お客様へ質の高いサービスを提供するとともに、経営の効率化を進めて企業価値を高め、全てのステークホルダーへの利益還元を充実させていくことが、経営の最重要課題であると考えております。

 

(2) 会社の対処すべき課題

当社は、経営理念において「いついかなる場合にもお客様に対して奉仕する心を失うことのないよう誓う」と宣言し、お客様本位の業務運営に努めております。

また当社は、お客様のライフプランや投資目的、経験、リスクに対する考え方などを充分に把握した上で、資産運用のご提案等を通じ、お客様の資産形成に貢献することが、当社の社会的使命であると考えております。

この実現のためには、「売買手数料依存の収益構造から脱し、残高連動報酬をベースにした収益構造を確立すること」が必要であると考え、2012年度以降、株式投信純増3ヵ年計画を4次にわたり実施してまいりました。

そして、2024年度からは、新たに「中期経営計画」を策定し、現在取り組んでおります。まず、株式営業においては、有望銘柄を発掘する目利き力や分かりやすい提案力を更に強化し、当社が推奨する個別銘柄の残高増加を図っております。また、投資信託営業においては、良質なファンドの長期保有により投資信託の残高を着実に積み上げ、信託報酬による販管費カバー率を一層高めることで、不安定な業界環境下においても安定した業績を目指しております。その他、新たな注力分野として、「ゴールベースアプローチによるファンドラップ事業の開始」や、「引受主幹事案件の獲得拡大」にも取り組んでおります。

これらの施策を実践することで、中期的に、当社の資本コストを上回るROEを達成していく所存です。

 

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般に関する事項

当社は気候変動をはじめとする様々なサステナビリティ課題への対応を、持続可能な社会の実現に寄与するための重要な経営課題の一つであると認識しております。

 

① ガバナンス

当社ではサステナビリティへの取り組みについて、審議検討を行うワーキンググループとして、代表取締役社長が委員長を務める危機管理委員会下にサステナビリティワーキンググループを設置しています。

サステナビリティワーキンググループでは、主に気候変動等によるリスク・機会の特定及び影響の評価を行うとともに、それらを踏まえた対応方針や事業計画を含めた企業戦略の企画立案・推進を行ってまいります。

また、サステナビリティワーキンググループにて審議検討された事項については危機管理委員会に報告がなされ、危機管理委員会より年1回取締役会に付議・報告され、必要に応じて取締役会がその対応について意思決定をし、進捗状況の監督を実施することとしております。

 


 

② リスク管理

当社はサステナビリティに係る様々なリスクに関して、当社だけでなく経済や市場へ多大な影響を及ぼす重要なリスクであると考え、適切なリスク管理体制を整えております。

当社ではサステナビリティに係る様々な事象に対して、危機管理委員会下のサステナビリティワーキンググループにて、各事象が当社ステークホルダーに及ぼすリスクの特定及び影響の評価を行ってまいります。

また、危機管理委員会ではサステナビリティワーキンググループで特定されたリスクや事象について、その他の事業等のリスクを含めた相対的な評価を行い、突発事態発生時の対応も含めた持続可能性に関する諸問題への対応管理を総合的に担ってまいります。

 

 

 

(2) 気候変動に関する事項

当社は気候変動が及ぼす事業への影響について、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づき、気候変動に起因する事業等のリスク・機会の把握と適切な情報開示を行います。

 

① 戦略

シナリオ分析として、SDGs達成目標年度である2030年時点を想定し、現状を上回る気候変動対策が行われない4℃シナリオと、脱炭素化に向けて積極的な気候変動対策が行われる1.5℃シナリオを参考に、定性・定量の両面から考察を行いました。

考察の結果、いずれのシナリオについても当社事業への影響は軽微であることを認識しております。

当社にて特定した主な気候関連リスク・機会に関する詳細な情報については、当社ウェブサイト(URL:https://www.marusan-sec.co.jp/sustainability/tcfd/)の「想定される気候関連リスクの当社への影響」をご参照ください。

 

② 指標及び目標

当社は、気候変動対応の進捗を管理するための指標として、自社企業活動によるGHG(温室効果ガス)排出量(Scope1,2)を採用しております。

今後、再生可能エネルギーの導入や、省エネ活動等による自社のGHG排出量削減を推進し、パリ協定の目標を参考に中長期的な削減目標の設定についても検討を行ってまいります。

GHG(温室効果ガス)排出量(Scope1,2)

 

Scope1

Scope2

合計

2023年度

225.9t-co2

787.4t-co2

1,013.3t-co2

2024年度

220.2t-co2

795.5t-co2

1,015.7t-co2

前年比

△5.7t-co2 

8.1t-co2

2.4t-co2

 

※ 対象:提出会社の全営業拠点(本社を含む)

算定範囲:2023年4月~2025年3月

Scope1:主に営業車のガソリン使用に伴う直接排出

Scope2:主にオフィス・店舗の電気使用に伴う間接排出

 

 

 

 

(3) 人的資本に関する事項

当社は、持続的な企業価値の向上のため、経営理念を通じて行動指針や提供価値を示し、企業文化の醸成に努めており、経営理念に沿った人的資本経営を進めています。

①「全員参加の経営」では、社員一人ひとりが経営に積極的に参加し、社員全員が共に考え共に行動することを目指しています。また、②「企業の発展と福祉の向上」では、お客様や社員の人間性を無視した経済合理性の追求ではなく、社会的責務の遂行、社会の福祉の向上、企業の継続的発展を目的に生産性向上に努めています。

「全員参加の経営」と「企業の発展と福祉の向上」への取り組みを通じて、お客様へ質の高いサービスを提供できる体制を整え、「顧客に対する奉仕の心」を実践することで「社会的責務の遂行」を実現してまいります。

 

経営理念


 

また、2024年4月には中期経営計画を策定し、有望な銘柄やファンドを発掘する目利き力、お客様の長期的な資産形成に資する提案力を強化することにより、対面証券としてお客様から頼られる存在を目指しています。

経営環境や個人を取り巻く変革のスピードが増す中で、当社は伝統と革新の再構築を進め、社員一人ひとりと丁寧に向き合いながら、企業価値を高めるべく人的資本に関する取り組みを進めています。

 

 

① 全員参加の経営

経営理念に掲げる「全員参加の経営」の実現に向けて、多様な人材が活躍できる環境を整備することで、組織・人材の活性化を図っています。各施策は、「若手の登用」「女性の活躍」「ミドルの躍動」「シニアの知見」と社員層別に体系化し、社員全体の納得性を高めることにより、ビロンギング(組織における帰属意識や一体感)の醸成に取り組んでいます。

 

「全員参加の経営」と諸施策


 

「若手の登用」では、「早期に活躍できる施策」や「能力に見合った処遇」など、将来を担う若手人材が働きがいを感得できるように取り組んでいます。

「女性の活躍」では、女性の採用を積極的に行っているほか、女性の大半が管理職として育成過程にある中で、新たな研修の導入や、多様な働き方に対応できる環境の整備を通じて、女性が活躍できる風土づくりに取り組んでいます。

当社における女性活躍の一例として、1984年に導入した「投信債券歩合外務員」という専門職があります。「投信債券歩合外務員」は、給与の一部に歩合給を採用し所定労働時間を6時間(始業9時30分~終業16時30分)に短くしたことで、「課長職と比較しても遜色ない給与水準」と「ライフイベントに対応した柔軟な働き方」の両立を可能にしました。地域に根差してお客様と信頼関係を築きながら長期に亘り働き続けることができるため、優秀な女性社員の多くが「投信債券歩合外務員」にキャリアアップしています。

「ミドルの躍動」では、中堅社員の自律的なキャリア形成を支援し、改めて当社のケイパビリティ(組織の強み)に気付いてもらうことが大切であると考えています。ミドル世代の中堅社員がより働きがいを持てるよう、処遇の見直しに着手しています。

「シニアの知見」では、シニア世代の社員が身に着けた高い技能・技術、豊富な経験・人脈などを次世代につなげていくことが企業の継続的発展に不可欠と考え、原則70歳までの希望者を雇用する「シニア人事制度」を整備しました。

そのほか、2025年4月には「人間ドック受診の促進」「休暇制度の充実」「時差出勤制度の導入」「自己申告書の拡充」「社宅制度の改正」「単身赴任制度の改正」など多岐にわたる人事制度改正を行いました。

 

 

② 企業の発展と福祉の向上

経営理念に掲げる「企業の発展と福祉の向上」の実現に向けて、社員が「働きがい」や「働きやすさ」を感じられる職場環境の整備に取組み、ウェルビーイングの向上を図っています。

また、経営理念に掲げる「顧客に対する奉仕の心」や「社会的責務の遂行」を育成の根幹に据え、自発的な発想と行動力を持ったプロフェッショナル人材の成長を促進しています。

このような社内環境整備と人材育成の仕組みにより、社員の共感と企業文化の維持・強化を図っています。

 

<研修制度>

経営理念に掲げる「顧客に対する奉仕の心」を真に理解し「ライフプランを実現する相談相手」として付加価値の高いサービスを提供することに重点を置いて、社員のスキル向上のためにキャリアに応じた階層別の研修や外部教育機関への派遣研修などを実施しています。

新入社員に対するOJTでは、コーチャー制度を設けて先輩社員によるマンツーマンの実地指導を行っています。先輩社員が自らの経験に基づくきめ細かな指導を行い、「先輩に教わり、後輩に教える」伝統を受け継いでいます。

また、株式カレッジや投信カレッジでは、銘柄・ポートフォリオ提案力の強化を図り、中期経営計画の実践につなげていきます。

さらに、経営層の育成・発掘を目的として、社内ビジネススクール「丸三アカデミー」を実施しています。組織横断的に人材を集め、当社の100年以上にわたる歴史を学ぶとともに、経営者視点でビジネスモデルを考える機会を設け、経営理念の浸透や知識と意識の底上げを図っています。

2025年4月には、新任主任、新任次席研修を設けるなど既存の研修体系を見直すと共に、社員の人権・倫理及び行動規範の一層の向上を図るための新たな研修を導入しました。

 

研修制度(総合職)


 

 

<資格取得>

経営理念に掲げる「顧客に対する奉仕の心」を実践し、「社会的責務の遂行」を可能とするためには、プロフェッショナル集団として常に自己研鑽を怠らない「学ぶ文化の醸成」が肝要です。資格取得を通じて、自らの能力向上がお客様へのサービス向上につながることを体得し、自ら学びお客様のために成長できる人材の育成を図るため、資格取得に対する奨励・支援を積極的に行っています。

入社1~3年目を「ベーシック・プログラム期間」と位置付け、AFP、テクニカルアナリストを取得する期間としています。その後の入社4年目以降を「アドバンスト・プログラム期間」とし、CFP®、証券アナリストなどのより専門性の高い資格の取得を促進しています。

 

資格取得状況


 

 

<MST活動>

生産性、顧客満足度及び従業員満足度の向上を図る取組みとして、MST(Marusan Small Teams)活動を推進しています。MST活動は、社員が部署横断的に小集団を結成し、各種課題を研究・討議し解決を目指す活動です。MST活動を通じて、社員の一人ひとりが経営に積極的に参加していくことでエンゲージメントと企業価値の向上を目指しています。

 

<エンゲージメント>

2024年5月よりエンゲージメントサーベイを導入し、組織課題の可視化と改善に着手しています。社員のエンゲージメントを定点観測し、人材育成及び社内環境整備の方向性と成果を都度モニタリングしていくことで、社員が「働きがい」や「働きやすさ」を感じられる施策の整備などに活用しています。

指標

2024年5月実施

2024年11月実施

2025年5月実施

エンゲージメントサーベイの回答率

100%

100%

100%

エンゲージメントスコア

57.3

55.6

59.0

 

 

 

<社員の健康>

人材育成の仕組みを補完し組織を一層活性化させていくために、社員の安全、職場環境の改善及び健康の保持増進に継続的・積極的に取り組んでいます。

2024年9月には、健康保険組合連合会東京連合会から「健康優良企業」として「銀の認定」を受けました。

また、2025年4月には「人間ドック受診の促進」として、50歳以上の社員は定期健康診断の代替に人間ドックの受診を努力義務化(上限有で受診費用を会社負担)しました。

 

③ 人的資本に関する指標及び目標

当社の社内環境整備方針及び人材育成方針に関する指標は次のとおりです。

(社内環境整備方針)

指標

2024年度実績

目標

新卒採用の女性比率

47.1%

50%水準を維持

管理職候補(課長代理)の女性比率

17.1%

2028年度まで40%以上

女性管理職比率

1.8%

2028年度まで5%以上

男性の育児休業等取得率

65.2%

100%

有給休暇取得率

60.3%

2028年度まで80%

 

 

(人材育成方針)

指標

2024年度末実績

目標

AFPの取得者数

764

ベーシック・プログラム期間中に対象者全員が取得

テクニカルアナリストの取得者数

222

ベーシック・プログラム期間中に対象者全員が取得

CFP®の取得者数

34

2028年度まで75名以上

証券アナリストの取得者数

25

2028年度まで50名以上

 

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

 

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがあります。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等に与える影響につきましては、合理的に予見することは困難であるため記載しておりません。

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1) 株式市場の変動から受ける影響について

当社グループの営業収益のうち株式委託手数料が占める割合は、当連結会計年度28.2%(前連結会計年度36.5%)となっております。このため当社グループの業績は、株式市場の変動により大きな影響を受ける可能性があります。

このような状況に対応するため、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、売買手数料依存の収益構造から脱し、残高連動報酬をベースにした収益構造を確立することを目指しております。

 

(2) 市場リスクについて

市場リスクとは、株価、金利、為替、その他の変動により発生する潜在的なリスクであります。当社グループの営業収益のうちトレーディング損益が占める割合は、当連結会計年度0.1%(同0.2%)となっております。当社グループのトレーディング業務には市場リスクが存在しており、急激な相場変動により損失を被る可能性があります。

市場リスクの回避に努めるため、社内規程に基づき、市場リスクを毎営業日計測して、市場リスクが予め定めた枠に収まっていることを確認し、内部管理統括責任者に報告する体制を整備しております。

 

(3) システムリスクについて

システムリスクとは、インターネット取引システムや業務上使用するコンピュータシステムの障害等の発生に伴い、損失を被るリスクであります。障害の規模によっては、当社の経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

システムリスクを低減するため、当社は外部ベンダーに委託する基幹システムのバックアップセンターを地域的に離れた場所に設け、基幹システムのデータセンターに障害が生じても、バックアップセンターを使用して業務を継続できるよう体制を整備しております。

 

(4) 情報漏洩、サイバー攻撃に関するリスクについて

情報漏洩、サイバー攻撃に関するリスクとは、役職員等の人為的ミスや事故、サイバー攻撃等外部からの不正アクセス等により、会社保有情報のうち、公知を除くものが漏洩又は漏洩の疑いがあると判明した場合に被るリスク及びサイバー攻撃によりシステムやデータが利用不能になるリスクであります。万一会社保有情報が漏洩又は漏洩の疑いがあると判明した場合やシステム等が利用不能になった場合には、当社の経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

情報漏洩、サイバー攻撃に関するリスクを低減するため、当社は「情報セキュリティポリシー」並びに社内規程を整備し、社内システムの技術的サイバーセキュリティ対策、外部委託先のセキュリティ対策の管理を行うことで、会社保有情報における情報セキュリティ及び業務継続性の確保に努めております。また、当社は、社内教育・啓発を図り、情報セキュリティに関する高い意識を養っております。

 

 

(5) 法務・コンプライアンスに関するリスクについて

法務・コンプライアンスに関するリスクとは、各種取引及び業務執行において、法令違反や契約違反に伴う罰則適用や損害賠償等により損失を被るリスク、ステークホルダーの期待に反する行為等で社会的信用を失墜するリスクであります。万一リスクが顕在化した場合には、当社の経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

法務・コンプライアンスに関するリスクを低減するため、当社は「コンプライアンス原則」をはじめとする社内規程を整備し、法務・コンプライアンスについて社内教育・啓発を図るとともに、顧問弁護士と連携した法的対応等の体制を整備しております。

 

(6) 事務リスクについて

事務リスクとは、役職員の過失又は事故等により事務処理が正確に執行されなかったことにより損失を被るリスクであります。万一重大な事務処理の誤りが発生した場合には、当社の経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

事務リスクを低減するため、社内規程等の整備、事務処理状況の点検、事務指導等によって、事務の正確な執行に努めております。

 

(7) 気候変動リスクについて

気候変動リスクとは、異常気象によって引き起こされる自然災害等により物理的な損害を被るリスク(物理的リスク)や、気候変動に対処するための移行に伴う規制強化や市場変化等に起因するリスク(移行リスク)であります。これらの変化に対応できない場合には、当社の経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

気候変動等が事業に与える影響について審議検討を担うワーキンググループとして、代表取締役社長が委員長を務める危機管理委員会下にサステナビリティワーキンググループを設置し、気候変動によるリスク・機会の特定及び影響の評価、それを踏まえた方針や事業計画を含めた企業戦略の企画立案・推進を行います。

気候変動課題への対応の詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度のわが国経済は、人手不足が続くなかで、雇用・所得環境の改善が進み、個人消費に持ち直しの動きが見られました。また、堅調な企業業績を背景に設備投資も底堅く推移するなど、緩やかな回復局面が続きました。一方、期末にかけては、米政権が打ち出した関税政策を巡る懸念から、世界経済の先行き不透明感が強まり、日本経済を下押しするリスクが高まりました。

このような環境の下、当社グループの業績は、株式委託手数料が減収となった一方で、投資信託の募集手数料及び信託報酬は増収となり、連結営業収益は188億49百万円(前連結会計年度比1.3%の増収)、連結経常利益は40億48百万円(同3.3%の減益)となりました。

当連結会計年度の経営成績の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ②連結損益計算書及び連結包括利益計算書 連結損益計算書」に記載しております。

 

 

(株式部門)

当連結会計年度の株式市場において、期初40,646円で始まった日経平均株価は、日本企業の業績拡大期待などを受けて、7月に42,000円台へ上昇し、史上最高値を更新しました。しかし、米国の景気後退や日銀の金融引き締めに対する警戒などから、8月に一時31,000円台へ急落しました。その後、円高の一服や米国経済の軟着陸期待の高まりで、40,000円台へ持ち直す場面がありましたが、米政権が打ち出した関税政策を巡る懸念から、2月以降は再び下落基調となり、当連結会計年度末は35,617円となりました。

このような環境の下、生成AIの急速な普及で成長期待が高まっている半導体関連銘柄を中核に、航空・防衛事業を手掛ける大手重工メーカー、貸出利ざやの改善が期待されるメガバンクなどの選別及び情報提供に注力しました。しかし、下期にかけては、日本株市場の騰勢が一服するなか、相場の牽引役だった半導体関連銘柄が大幅な下落となりました。引受業務につきましては、新規上場を目指す企業へのマーケティング、情報提供及び関係構築に注力するとともに、当社の独自性や強みを訴求することにより、新規上場企業19社、既上場企業2社の株式引受けを行いました。

以上の結果、株式受入手数料は53億53百万円(前連結会計年度比21.4%の減収)となりました。なお、2024年4月からスタートした中期経営計画における日本株(当社が推奨する個別銘柄)の純増額(12か月間)は336億円(達成率168.2%)となりました。

 

(債券部門)

当連結会計年度の債券市場において、期初0.740%で始まった長期金利(新発10年物国債利回り)は、円安が一段と進行し、日銀による追加利上げなどの政策修正観測が強まったことから、5月下旬に1.100%まで上昇しました。その後、インフレ減速などを受けて、米国が利下げ姿勢に転じたことなどから一旦は低下しましたが、米国景気の底堅さや米政権の政策を巡るインフレ再燃への懸念などから再び上昇に向かい、期末にかけては、好調な賃上げ情勢を背景に日銀が利上げ姿勢を強めたことなどを受けて、当連結会計年度末は1.485%となりました。

このような環境の下、個人向け社債の引受額の増加などにより、債券の募集・売出の取扱高は327億円(前連結会計年度比17.7%の増加)となり、債券受入手数料は1億3百万円(同28.5%の増収)となりました。一方、債券価格の下落などを受けて、債券等トレーディング損益は3百万円(同59.0%の減益)となりました。

 

(投資信託部門)

投資信託部門はバランス型ファンドのほか、世界の株式に投資するファンドを中心に販売し、残高の増加に努めました。

具体的には、米国を中心とした世界の株式及び債券に分散投資する「ジャナス・ヘンダーソン・バランス・ファンド」、米ドル建ての多様なインカム資産に分散投資する「NWQフレキシブル・インカムファンド」、割安で好配当が期待される株式に投資する「先進国好配当株式ファンド」などの販売に注力しました。

また、重要情報シートや「投信NAVI(投信分析・販売支援ツール)」、資産運用シミュレーションツールを積極的に活用することで、分かり易い説明やお客様の保有ファンドのフォローに努めました。その他にもポートフォリオ分析、お客様のライフステージやニーズに沿ったご提案などのサービス向上に取り組みました。

そうしたなか、株式投資信託の募集取扱高は1,981億円(前連結会計年度比7.9%の増加)となり、募集手数料は52億92百万円(同11.8%の増収)となりました。また、基準価額の上昇などに伴い、取扱ファンドが分配金を払い出したことなどから、3月末の株式投資信託残高は1兆122億円(同2.6%の減少)となったものの、株式投資信託の期中平均残高の増加により、信託報酬は76億17百万円(同14.9%の増収)となりました。

なお、2024年4月からスタートした中期経営計画における株式投信の純増額(12か月間)は722億円(達成率120.3%)となり、当連結会計年度の投資信託の信託報酬による販管費カバー率は50.0%となりました。

 

 

(損益の状況)

以上の結果、当連結会計年度の当社グループの連結業績は、営業収益が188億49百万円(前連結会計年度比1.3%の増収)となりました。営業利益は35億45百万円(同4.0%の減益)、経常利益は40億48百万円(同3.3%の減益)、親会社株主に帰属する当期純利益は37億92百万円(同29.6%の増益)となりました。

当社単体の業績は、営業収益が188億50百万円(前事業年度比1.3%の増収)、経常利益が41億13百万円(同1.9%の減益)、当期純利益が45億20百万円(同51.1%の増益)となりました。

連結業績の詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ②連結損益計算書及び連結包括利益計算書 連結損益計算書」に、単体業績の詳細は「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 ②損益計算書」に、それぞれ記載しております。

 

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ107億12百万円減少し733億63百万円となりました。主な要因は、現金・預金が49億20百万円、投資有価証券が47億49百万円、信用取引貸付金が12億81百万円減少したことなどによるものです。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ71億95百万円減少し243億55百万円となりました。主な要因は、預り金が38億10百万円、繰延税金負債が11億37百万円、短期借入金が9億20百万円減少したことなどによるものです。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べ35億16百万円減少し490億8百万円となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益37億92百万円を計上した一方で、配当金42億92百万円の支払いや、その他有価証券評価差額金が33億31百万円減少したことなどによるものです。

連結財政状態の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ①連結貸借対照表」に記載しております。

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益を計上した一方で、預り金の減少や法人税等の支払いなどにより、1億60百万円の資金の減少(前連結会計年度は75億57百万円の資金の増加)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入などにより、5億9百万円の資金の増加(同7億34百万円の資金の減少)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払などにより、50億54百万円の資金の減少(同18億86百万円の資金の減少)となりました。

その結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比49億20百万円減少し、314億48百万円となりました。

連結キャッシュ・フローの詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ④連結キャッシュ・フロー計算書」に記載しております。

当社グループの主たる事業は有価証券の売買等の金融商品取引業であり、資金需要の主なものには、信用取引貸付金等の顧客の資金運用ニーズに対応するための資金などがあります。このような資金ニーズに対応するための経常的な資金調達については、自己資金を中心に対応することとしております。金融商品取引業者として顧客の様々な取引需要に対応するためには、常に一定程度の資金を保有しておくことが必要と考えております。当連結会計年度末の現金・預金残高は314億48百万円であり、これらの資金需要に対応可能な水準を確保しております。

 

 

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たって、当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

当連結会計年度末の繰延税金資産の回収可能性及び固定資産の減損に関する会計上の見積りに用いた仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは2024年4月26日に「中期経営計画」を公表し、現在取り組んでおります。中期経営計画における2028年度までに達成を目指す数値目標は、株式投資信託の預り資産純増額3,000億円、当社が推奨する日本株の個別銘柄の預り資産純増額1,000億円、ROE8%以上、投資信託の信託報酬による販管費カバー率55%です。

中期経営計画の概要


 

進捗状況(2024年4月~2025年3月)


 

 

資本コストを上回るROEの達成

・ 資本コストを平均的に上回るROE8%(長期10%)の達成を目指す


 

 

5 【重要な契約等】

当社は、2024年12月16日開催の取締役会において、当社の完全子会社である丸三ファイナンス株式会社を吸収合併することを決議し、本合併に係る合併契約を締結しました。本契約に基づき、2025年4月1日付で丸三ファイナンス株式会社を吸収合併しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。

 

 

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。