文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
当社は、お客さまはもとより株主、社員、地域社会から信頼され、選ばれる金融サービス会社として発展するために、以下の経営理念および経営ビジョンを掲げております。
「水戸証券は、顧客・株主・社員にBESTをつくす企業でありたい」
<経営ビジョン>
(1)対処すべき課題
当社が掲げる「経営ビジョン」の実現に向けて策定した第六次中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)は、当事業年度で終了しました。本計画における計数目標とその実績、並びに4つのビジョンにかかる成果と課題については、以下のとおりです。
(第六次中期経営計画の計数目標及び実績)
※ストック収益による販管費カバー率:投資信託の代行手数料とファンドラップ報酬の合計を販売費・一般管理費で除した比率であり、費用を安定収益でどれだけカバーできているかの割合を示します。
① ROEについては、初年度となる2022年度が世界的なインフレ懸念から米国長短金利が急上昇し、日米株式市場の調整もあり、株式委託手数料や投資信託の募集手数料が落ち込み、目標を下回る結果となりました。2年目に入ると、脱デフレ気運や資本コスト経営の広がり等を背景としたマーケット環境が好転したことから目標を上回り、最終年度の2024年度も、企業業績の拡大と積極的な株主還元策期待、NISA制度の拡充なども追い風となり、特に投資信託の代行手数料、ファンドラップ報酬が増加したことなどから、最終的に5.0%の目標に対し、5.8%の実績となりました。
② 販管費カバー率については、減価償却費や不動産関係費の減少などにより販売費・一般管理費が減少した一方、投資信託とファンドラップの残高増加に伴い、投資信託の代行手数料が28億57百万円(2021年度末比 41.3%増)、ファンドラップ報酬は21億85百万円(同 35.8%増)となったことから、33%以上(2024年度)の目標に対し、41.8%の実績となりました。
(経営ビジョン)
指針となる経営ビジョンが掲げる4つのビジョンにかかる成果と課題
(2)経営環境
当社を取り巻く経営環境は、政府による「資産運用立国」の実現に向けた施策が追い風となる一方で、国際情勢の不透明感、長期化するインフレ、日本における高齢化の進展に加え、サステナビリティやDXへの対応など、急速な環境変化に直面しております。こうした中、お客さまのライフステージに応じた資産形成や承継への関心は一層高まり、証券会社に求められる役割は多様化・高度化しております。
当社は、営業基盤である北関東を中心とした関東一円において、対面を重視した金融サービスの提供と地域社会との共生を通じて、付加価値の提供に努めております。後述する第七次中期経営計画では、「人の力」と「組織の力」の強化を柱に、お客さま本位の質の高い金融サービスの提供(ふやす・まもる・つなぐ)によりお客さまとの信頼を深め、預り資産の増大を通じて持続的な成長を目指します。
当社は、経営環境の変化及び経営ビジョンの実現に向けた課題を踏まえ、企業価値の更なる向上を目指すため、2026年3月期から2030年3月期までの5年間を対象とした「第七次中期経営計画」を以下のとおり策定しました。
(第七次中期経営計画)
① 期 間 2026年3月期から 2030年3月期(5年間)
② テ ー マ 「人と組織の力で、お客さまからの信頼を深め、持続的に成長する企業へ」
③ 4つの基本方針と重点戦略

④ KPI 2030年3月期達成目標
※1 ストック収益(投資信託の代行手数料とファンドラップ報酬の合計)の販売費・一般管理費に占める割合
※2 MRFや公社債投資信託等を除いた株式投資信託
⑤ 資本政策
当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の重要課題の一つと位置付けており、今後、更なる株主還元の強化の一環として、第七次中期経営計画期間の5期においては、1株当たり年間配当金の下限を30円とすることとしております。
第七次中期経営計画では、資本収益性の向上をより重視し、持続的な成長と株主価値向上を目指した資本の効率的な活用に取組んでまいります。
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社は、経営理念「水戸証券は、顧客・株主・社員にBESTをつくす企業でありたい」及び経営ビジョン「金融サービスを通じて価値を創造し、お客さまと地域社会の豊かな未来の実現に貢献する」のもと、地域社会の発展に貢献してまいります。
当社は、社長を議長とする経営会議においてサステナビリティへの取組みについて審議し、その内容を取締役会へ報告しております。加えて、取締役会において適宜企業価値向上に向けた議論の時間を設けており、その中でサステナビリティについての議論を行っております。
当社では、オペレーショナルリスクや資金流動性リスク等について定期的に取締役会へ報告しております。また、当社が保有するリスクの種類とリスクが顕在化した場合の影響度について把握するよう努めております。サステナビリティについても同様の枠組みで管理してまいります。
① 戦略
当社は、公開されている各種シナリオや情報をもとに、気候変動に係るリスク及び機会を認識しております。
イ. 移行リスク
2℃未満シナリオ
・再生可能エネルギーの調達や、その他CO2排出量削減に係るコストの増加
・炭素税導入など規制強化によるコストの増加
ロ. 物理的リスク
a.4℃シナリオ
・自然災害の激甚化や洪水発生による当社店舗の被災
・猛暑や風水害の増加による地域経済の悪化と、これらを起因とした当社の預り資産及び収益の減少
b.事業継続計画(BCP)
・当社は「危機管理規程」を制定し、災害時の緊急時における事業継続計画を定め、重要な業務を中断させない、又は中断しても短期間で再開できる態勢を整えております。
ハ. 機会
・企業のグリーンボンド等の発行増加
・投資家のポートフォリオ変更のための取引増加
② 指標と目標
当社は、国及び地方自治体と足並みを揃えてCO2排出量の削減に取組んでまいります。
なお、CO2排出量の削減への取組みの一環として、2025年4月1日より本社ビルへの「グリーン電力提供サービス」を導入いたしました。
イ. 当社のCO2排出量(注1)
2024年度 1,127 tCO2 (参考)2019年度 1,351 tCO2
(注1)Scope1(自動車のCO2排出量)とScope2(電力使用によるCO2排出量)の合計
(3)人的資本に関する戦略及び指標と目標
① 戦略
イ. 人材育成方針
当社は、「金融サービスを通じて価値を創造し、お客さまと地域社会の豊かな未来の実現に貢献する」というパーパスのもと、お客さま一人ひとりのご要望に的確にお応えするとともに、お客さまの最善の利益に資する高品質な『金融サービス』を提供するため、専門知識を有しお客さまに期待以上の価値をご提供できる社員を育成します。育成にあたりましては、職位毎の目指すべき社員像として策定した人材育成指針と職位毎の研修マスタープランを定め、各職位に必要な知識・スキル・意識(態度)の均一的なレベルアップを行います。
また、多様性の確保が持続的成長に向けた重要課題の一つであると認識しており、経営トップからの発信、取締役会による監督、研修・教育によって多様性の確保に努めます。そして、多様な経験や感性、価値観を積極的に取り込んでいくため、多様な人材の採用と個人の能力や実績を重視した公平な評価による人物本位の登用をいたします。
ロ. 社内環境整備方針
当社にとって社員は大切な財産(人財)であり、社員の成長や行動指針の「自己に挑戦」を実現するため、当社が独自に認定した上級資格の取得支援や自ら学びたい内容を全社員が学習できる環境を整え、継続的な育成を行います。
また、経営ビジョンの「社員が誇りを持って働き自己実現できる」の具現化と、全社員のスキルアップ及び多様性に応じた体制整備のため自己申告制度を導入しており、キャリアプランや能力開発状況について上司や会社との共有に活用します。
なお、社員にとって働きやすい環境を整備することが多様性の確保に向けて重要であるとの考えから、多様な人材の活躍を支援し柔軟な働き方の実現のため人事部内にダイバーシティ推進課を置き、長時間労働の防止を目的とした残業の抑制策や法定の水準を上回る育児介護制度等を導入しております。
2019年1月に、社員の健康管理を経営的な課題と捉え健康宣言を策定し、社員の健康保持・増進に積極的に取り組んでいます。また、健康経営の推進のため、当社にとって社員が大切な財産であるという考えに基づき、社員が心身ともに健康で、日々明るくいきいきとやりがいを持って働き、最大限のパフォーマンスを発揮するため、社員にとって働きやすい環境を整備します。健康経営実施体制は以下のとおりです。
健康経営推進チーム :健康経営推進プロジェクトの事務局として人事部に設けています。
健康経営推進プロジェクト:健康経営推進最高責任者(CWO)が任命したプロジェクトメンバーが、健康経営推進施策を検討、具体化し、社内へ浸透を図ります。
2019年5月に健康保険組合連合会東京連合会に対して「健康企業宣言」を行い、2020年8月に健康優良企業としての「銀の認定」後も継続して企業全体で健康づくりに取り組み、2024年9月に次のステップである「金の認定」を取得しました。また、日本健康会議が選定する「健康経営優良法人(大規模法人部門)」にも5年連続(2021年から2025年)認定されました。
② 指標と目標
(注1) 同一職位での賃金格差はないため、目標は設定しておりません。
(注2) 当社では多様な人材を採用し、中核人材の登用等においても、性別や国籍、職歴に関係なく、個人の能力や実績を重視した人物本位の登用を実施していることから、外国人・中途採用者の管理職比率の目標を定めておりません。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 人材の確保及び育成に係るリスク
当社は、金融サービスを通じて価値を創造し、お客さまと地域社会の豊かな未来の実現に貢献することを目標に事業運営を行っており、人材を最重要の経営資源と位置付けております。しかしながら、人材の確保及び育成が進まない場合には、事業目的が達成できず、また、持続的な成長にも支障をきたす可能性があります。
なお、当リスクが顕在化する可能性は高いと考えております。対応策として、質の高い金融サービスを提供できる人材を育成するための教育・評価制度の整備、給与水準の引き上げ、高度専門人材の中途採用等を行っております。
(2) 収益変動リスク
当社の主要な収益源である受入手数料及びトレーディング損益は、株式市況や為替市況の変動に大きく影響を受けます。このため、企業業績や国内外の政治・経済情勢の悪化等により市場が低迷した場合、当社の業績は大幅に変動する可能性があります。
なお、当リスクが顕在化する可能性は高いと考えております。対応策としては、お客さまへポートフォリオを考慮した商品提案を行うことで、保有商品の値下がりを軽減することや、ファンドラップ報酬や投資信託の代行手数料の増大による安定収益基盤の拡大を図っております。
(3) 事務リスク
当社では、社内規程やマニュアルに則り正確な事務処理を行うよう体制を整備しておりますが、役職員の故意、過失又は事故などにより正確な事務処理が執行されなかった場合、経済的損失の発生や社会的信用が失墜する可能性があります。特に誤発注に関しては、未然防止のため管理者及びシステムによるチェック体制を整備しておりますが、万一誤ったデータが取引所に送信された場合、損失を被る可能性があります。
なお、当リスクが顕在化する可能性は、小規模のものを含めると高いと考えております。対応策としては、社内に「事務ミス検討会」を設置し、事務ミスの情報収集や、改善策の取りまとめを行っております。これらの内容については、コンプライアンス部、事務管理部、業務指導部が連携し、社内への周知徹底を図っております。
(4) 市場リスク
当社は、自己の計算において国内外の有価証券を保有しております。政治・経済情勢等の急変等により相場の急激な変動があった場合、売買取引が停止・制限される事態が発生した場合等に、損失を被る可能性があります。
なお、当リスクが顕在化する可能性は高いと考えております。対応策として、市況の変動や財務の健全性を勘案して、リスク限度枠や損失限度額を設定し管理している他、トレーディング商品として保有する有価証券は、最小限に留めております。
(5) 資産価値の下落に係るリスク
当社は、事業運営のため土地建物等の有形固定資産、コンピュータソフトウェア等の無形固定資産、有価証券等の資産を保有しております。これらについて時価の下落、収益性の低下、陳腐化などが生じた場合、損失が発生する可能性があります。
なお、当リスクが顕在化する可能性は比較的低いと考えております。
(6) 流動性リスク
当社の事業運営資金は、主に自己資金と金融機関からの借入によっておりますが、当社の財政状態について信用不安等が広がった場合、資金調達コストが著しく上昇し、あるいは資金調達が困難になり事業運営が制約される可能性があります。
なお、当リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。当社は金融機関として、資金決済が滞ることのないよう非常時に備えた資金を保有するよう努めているほか、資金流動性のストレステストの実施、「資金流動性危機対応マニュアル」を整備しております。
(7) 取引先リスク
当社の保有する金銭債権や預金などの資産は、相手先が資金繰りの悪化などにより債務不履行に陥った場合、回収不能となり損失が発生する可能性があります。
なお、当リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。お客さまからの買付け注文に係る金銭債権については、対応する有価証券が保護預りされており、また信用取引に係る金銭債権については、一定の担保を確保しております。また、預金については、当座預金、利息のつかない普通預金など決済用預金としており、預金保険機構によって保護されております。
(8) システムリスク
当社の業務上使用するコンピュータシステムに、品質不良、回線トラブル、外部からの不正アクセス、災害などにより障害が発生した場合、障害の規模・状況によっては取引の縮小や中断を余儀なくされる可能性があります。
なお、当リスクが顕在化する可能性は、中程度と考えております。システム障害が発生した場合、緊急時の業務執行体制を整備しているほか、大規模災害等により基幹システムに障害が発生した場合、システム会社によってDRサイト(遠隔地のバックアップシステム)が用意されております。
(9) 情報セキュリティに係るリスク
当社は、お客さま情報の管理について万全を期しておりますが、不正な手段や過失等により、万一情報が外部に漏洩した場合、賠償金の発生や社会的信用が失墜する可能性があります。
なお、当リスクが顕在化する可能性は、小規模のものを含めると中程度と考えております。お客さま情報に関しては、各部支店で毎月末を個人情報点検日とし、個人情報管理台帳にて管理を行っております。また、コンプライアンス部宛に点検結果を報告する体制としております。情報セキュリティ並びにサイバーセキュリティに係るインシデントが発生した場合に関しては、組織内CSIRTを整備しているほか、SOCサービスにて24時間365日体制で監視を実施しております。
(10) 法令・諸規則等に係るリスク
当社は、金融商品取引業者として多くの法令・諸規則のもとに業務を遂行しておりますが、規制が強化又は緩和された場合、若しくは新たな規制が導入された場合、既存業務に対する制約や競争の激化により、収益が低下する可能性があります。また、「金融商品取引法」に基づき、自己資本規制比率を算出しておりますが、数値が定められた水準を下回った場合、業務停止等を命じられる可能性があります。
なお、当リスクが顕在化する可能性は、低いと考えております。また自己資本規制比率については、現状高い水準を維持しております。
(11) 法務リスク
当社は、金融商品取引法、その他法令・諸規則等を遵守し業務を遂行しておりますが、役職員の故意又は過失により法令違反が発生した場合、行政処分等を受け社会的信用が失墜し、取引の減少を招く可能性があります。また、お客さまや取引先等との間で紛争が生じた場合、提訴される可能性があります。
なお、当リスクが顕在化する可能性は比較的低いと考えております。法令の遵守に関しては、「コンプライアンス部」や「監査部」を設置し、監視や予防に努めているほか、コンプライアンスに係る研修を毎月実施しております。
現在、当社の業績に大きな影響を与える訴訟はありません。
(12) 災害等に関するリスク
当社は、気候変動等に起因する自然災害や地震・津波等の大規模災害の発生により当社営業基盤の地域に電力供給が制限されるなどの重大な影響が及んだ場合、事業運営が制約される可能性があります。
なお、当リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。万一大規模災害等が発生した場合、緊急時の業務継続体制を整備しているほか、事業継続計画(BCP)に基づく定期的な訓練を実施しております。
(13) パンデミック感染症に関するリスク
当社は、新型コロナウイルスの感染拡大期においては、業務継続の観点から、ローテーション勤務・在宅勤務等を実施し、可能な限り少人数で業務を遂行してまいりました。
2023年5月に感染症法上の位置づけが5類感染症へ移行した後は、感染対策に留意しつつ、通常の勤務体制に移行しております。
なお、当リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。今後新たな感染症が発生した場合に備え、引続き感染対策に細心の注意を払ってまいります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当事業年度のわが国経済は、堅調に推移しました。国内総生産(GDP)は名目・実質ともに2024年1~3月期のマイナス成長を最後に同10~12月期まで3四半期連続でプラス成長となりました。こうした中、消費者物価指数は安定した上昇ペースとなり、日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除した後、3度の利上げを実施しました。一方、低水準の失業率や主要企業を中心とした近年の積極的な賃上げの動きにもかかわらず、消費動向調査の「暮らし向き」では、悪化すると考える世帯が増加しました。年明け以降は、米トランプ政権による関税政策への警戒感が強まる状況となりました。
米国経済も堅調に推移しました。実質GDPは順調な成長を示し、また失業率は低水準で推移し、消費者物価指数の上昇率は概ね落ち着いた水準となりました。しかし、トランプ政権の政策の不確実性が高まり、米国経済への悪影響が懸念される状況となりました。
当事業年度の国内株式市場は、2024年7月まで概ね堅調に推移した後、8月に半導体領域での米中対立激化や米景気悪化への懸念、日本銀行の利上げ観測などから大きく調整する動きとなりました。その後、2025年1月まで米国の大幅利下げによる米経済のソフトランディング(軟着陸)期待や米大統領選でのトランプ候補の勝利を受けた政策関連銘柄への期待、衆議院選挙での与党の苦戦による国内政治の不安定化懸念、与党敗北を受けた経済政策への期待、米連邦準備制度理事会(FRB)の緩やかな2025年利下げ見通し、日本銀行の早期利上げ観測など好悪材料を織り込むボックス圏での推移となりました。しかし、2月以降はトランプ政権による関税政策が世界経済や企業業績を圧迫するとの警戒感が強まり、株価は大きく調整する動きとなりました。この結果、当事業年度末の日経平均株価は2024年3月末と比べ11.8%安い35,617円56銭で取引を終了しました。
このような状況の中、当事業年度の業績は、営業収益が139億83百万円(前期比 3.9%減)と減少し、営業収益より金融費用53百万円(同 2.7%増)を控除した純営業収益は、139億30百万円(同 3.9%減)と減少しました。また、販売費・一般管理費は120億72百万円(同 0.3%減)となり、その結果、営業利益は18億58百万円(同 22.3%減)、経常利益は23億28百万円(同 17.0%減)となりました。特別利益が8億57百万円(前事業年度実績 6億35百万円)、税金費用が7億65百万円(前期比30.2%減)となったことから、当期純利益は24億20百万円(同 3.6%増)と増加しました。
主な概況は以下のとおりであります。
イ 受入手数料
当事業年度の「受入手数料」の合計は、127億14百万円(前期比 0.5%減)となりました。
a 委託手数料
「委託手数料」は、49億81百万円(同 12.7%減)となりました。これは、主に株券委託売買金額が1兆56億円(同 7.5%減)と減少したことにより、株式の委託手数料が49億47百万円(同 12.9%減)となったことによるものです。また、受益証券の委託手数料は34百万円(同 37.8%増)となりました。
b 引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料
「引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料」は、81百万円(同 160.5%増)となりました。
c 募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料
主に投資信託の販売手数料で構成される「募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料」は、25億71百万円(同 13.4%減)となりました。これは、米国を中心に世界の優良企業へ投資を行う投資信託や米国の持続的な成長企業に投資をする投資信託の販売に注力しましたが、株式市場が8月に急落するなど不安定な状況となったことを受け、販売額が減少したことによるものです。また、「その他の受入手数料」は、投資信託の代行手数料やファンドラップ報酬の増加等により50億79百万円(同 24.8%増)となりました。
ロ トレーディング損益
当事業年度の「トレーディング損益」は、株券等が7億95百万円(前期比 39.5%減)、債券・為替等が1億13百万円(同 27.7%減)となり、合計で9億8百万円(同 38.2%減)となりました。
ハ 金融収支
当事業年度の「金融収益」は、受取利息の増加等により3億34百万円(前期比 18.4%増)、「金融費用」は有価証券貸借取引費用の増加等により53百万円(同 2.7%増)で差引収支は2億81百万円(同 21.9%増)の利益となりました。
ニ 販売費・一般管理費
当事業年度の「販売費・一般管理費」は、「不動産関係費」や「取引関係費」が増加する一方、「人件費」等が減少したことから、120億72百万円(前期比 0.3%減)となりました。
ホ 特別損益
当事業年度の「特別利益」は、「投資有価証券売却益」が8億57百万円(前事業年度実績 6億28百万円)となりました。
イ 流動資産
当事業年度の「流動資産」は、前事業年度に比べ79億46百万円減少し、465億円となりました。これは、「立替金」が4億8百万円、「未収収益」が74百万円増加する一方、「現金・預金」が32億19百万円、「預託金」が32億19百万円、「トレーディング商品」が17億18百万円、「募集等払込金」が2億44百万円減少したことなどによるものです。
ロ 固定資産
当事業年度の「固定資産」は、前事業年度に比べ26億6百万円減少し、169億80百万円となりました。これは、「投資有価証券」が23億48百万円、「有形固定資産」が1億50百万円、「長期差入保証金」が61百万円、「無形固定資産」が46百万円減少したことなどによるものです。
ハ 流動負債
当事業年度の「流動負債」は、前事業年度に比べ64億98百万円減少し、193億63百万円となりました。これは、「従業員株式給付引当金」が固定負債からの振替えにより4億99百万円増加する一方、「預り金」が47億10百万円、「未払法人税等」が9億76百万円、「信用取引負債」が4億24百万円、「未払金」が3億87百万円、「有価証券担保借入金」が3億54百万円、「賞与引当金」が71百万円減少したことなどによるものです。
ニ 固定負債及び特別法上の準備金
当事業年度の「固定負債」及び「特別法上の準備金」は、前事業年度に比べ13億24百万円減少し、40億20百万円となりました。これは、「資産除去債務」が11百万円増加する一方、「繰延税金負債」が6億78百万円、「従業員株式給付引当金」が流動負債への振替えにより3億73百万円、「退職給付引当金」が2億25百万円、「その他の固定負債」が48百万円減少したことなどによるものです。
ホ 純資産
当事業年度の「純資産」は、前事業年度に比べ27億29百万円減少し、400億97百万円となりました。これは、「当期純利益」で24億20百万円、「自己株式の処分」で20百万円増加する一方、「剰余金の配当」で18億75百万円、「自己株式の取得」で18億9百万円、「その他有価証券評価差額金」で14億86百万円減少したことによるものです。
当事業年度における「現金及び現金同等物の期末残高」は、前事業年度に比べ32億19百万円減少し、247億91百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における「営業活動によるキャッシュ・フロー」は4億67百万円の減少となりました。これは、「顧客分別金信託の増減額」で32億96百万円、「税引前当期純利益」で31億85百万円、「トレーディング商品の増減額」で17億19百万円増加する一方、「預り金及び受入保証金の増減額」で47億74百万円、「法人税等の支払額」で17億75百万円、「投資有価証券売却損益」で8億57百万円、「その他の資産・負債の増減額」で4億67百万円、「信用取引資産及び信用取引負債の増減額」で4億58百万円、「立替金の増減額」で4億8百万円減少したことなどが要因であります。なおこれは、前事業年度の「営業活動によるキャッシュ・フロー」69億20百万円の増加と比較すると73億87百万円の減少となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における「投資活動によるキャッシュ・フロー」は9億63百万円の増加となりました。これは、「有形固定資産の取得による支出」で1億4百万円、「投資有価証券の取得による支出」で53百万円減少する一方、「投資有価証券の売却による収入」で9億42百万円、「投資有価証券の償還による収入」で1億94百万円増加したことなどが要因であります。なおこれは、前事業年度の「投資活動によるキャッシュ・フロー」10億41百万円の増加と比較すると78百万円の減少となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における「財務活動によるキャッシュ・フロー」は36億91百万円の減少となりました。これは、「配当金の支払額」で18億71百万円、「自己株式の取得による支出」で18億9百万円減少したことなどが要因であります。なおこれは、前事業年度の「財務活動によるキャッシュ・フロー」19億55百万円の減少と比較すると17億36百万円の減少となっております。
当社は金融商品取引業を営んでいるため、「生産、受注及び販売の状況」については、「(1)経営成績等の状況の概要①~③」に含めて記載しております。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 当事業年度の経営成績の分析
当事業年度は「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(1)対処すべき課題」に記載のとおり、数値目標の達成及び施策に取り組んでまいりました。
数値目標に対する当事業年度の実績は以下のとおりです。
イ ROEについては、日米株式市場の調整もあり、株式委託手数料や投資信託の募集手数料が減少した一方、投資信託の代行手数料、ファンドラップ報酬が増加したこと、投資有価証券売却益を計上したことなどから、5.0%の目標に対し、5.8%の実績となりました。
ロ 販管費カバー率については、従業員株式給付引当金繰入や賞与引当金繰入などの人件費の減少により販売費・一般管理費が減少した一方、投資信託とファンドラップの残高の増加に伴い、投資信託の代行手数料が28億57百万円(前期比27.9%増)、ファンドラップ報酬が21億85百万円(同21.5%増)となったことから、33%以上の目標に対し、41.8%の実績となりました。
当社は、第七次中期経営計画の重点戦略の下、お客さま一人ひとりのライフプランに応じた金融サービスの提供(ふやす・まもる・つなぐ)と主体的な人材の育成・自律的な組織運営の推進により経営基盤の一層の強化を図り、投資信託・ファンドラップを軸としたストック収入の拡大による安定収益基盤の構築に取り組んでまいります。
② 経営成績に重要な影響を与える要因の分析
当社は対面及びインターネットの二つのチャネルを展開しており、対面ではフロー収益として、株式委託手数料、投資信託の販売手数料、外国株式等のトレーディング収益、またストック収益として、投資信託の代行手数料、ファンドラップ報酬を主な収益源としております。株式委託手数料及び外国株式のトレーディング収益は、日本及び米国の株式市況に大きく影響を受けます。また、外国株式は為替の影響も受け、円安(円高)になると円ベースの価格が上昇(下落)いたします。投資信託は運用する資産や手法により様々な要因で基準価額が上下しますが、基準価額が上昇すると販売が伸びる傾向があるとともに、預り残高が増加することで代行手数料も増加いたします。また、ファンドラップは値動きの異なる複数のファンドを効果的に組み合わせた国際分散投資を行い、ポートフォリオ全体のリスク低減と安定したリターンの追求を図っていますが、為替の影響を受けやすく、円安(円高)になると時価評価額が上昇(下落)する傾向があります。そのため、時価評価額に応じて算出するファンドラップ報酬は増減しますが、お客さまの国際分散投資ニーズの高まりを受け、残高は順調に伸びております。なお、インターネット取引については、開設口座数が少数であるため、収益全体に占める割合は少額であります。
費用面では、販売費・一般管理費は固定的な費用が大部分を占めておりますが、「人件費」に含まれる賞与は経営成績によって増減いたします。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当事業年度末の現金・預金残高は247億91百万円となっており、日常の運転資金としては十分な額を有しております。また、当社は日本銀行に当座預金を開設する金融機関として、万一の場合でも資金決済が滞ることのないよう、非常時に備えた資金を有しておくことが必要であると考えております。さらに、非常時に備え「資金流動性危機対応マニュアル」を策定している他、定期的に資金流動性のストレスチェックテストを実施し、経営会議に報告しております。
現在、信用取引借入金及び有価証券貸借取引受入金を除く借入金は27億50百万円あり、自己資金で返済することは可能ですが、安定的な資金調達を図るため銀行等との関係を重視し、借入を継続しております。また、現在借入実績のない銀行等に対しても借入枠を確保するよう努めております。
当社が保有する現預金については、事業運営、成長投資及び株主還元等を使途として、当社の財務の安全性及び企業価値の向上の観点から適切に配分してまいります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当事業年度において、新たに締結した重要な契約等はありません。
該当事項はありません。