第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

アイザワ証券グループは、時代の変化に応じて事業構造の大幅な変革を進めています。この中で、全社員が一体となって歩んでいく基盤を固めるために、私たちの存在意義・あるべき姿・大切にする価値観を明文化した「パーパス・ビジョン・バリュー(以下、PVV)」と、PVV を実現するためにステークホルダーの皆さまにお約束する「アイザワ宣言」を策定いたしました。

変化が激しく、将来の見通しが立てにくい時代において、お客さまとそのご家族との信頼関係を深め、社員一人ひとりが自信と誇りを持って働くためには、共通の目的と価値観の共有が不可欠であると考えています。

アイザワ証券グループの「PVV」および「アイザワ宣言」は、私たちの全ての原点となるものです。役職員一同が常に心に刻み行動することで、長期的にお客さまとそのご家族に寄り添い続ける資産運用・資産形成の伴走者を目指してまいります。

 

[パーパス:Purpose (存在意義)]

より多くの人に より豊かな生活を

 

[ビジョン:Vision (あるべき姿)]

資産運用・資産形成を通じて お客さまとそのご家族の人生の伴走者となる

 

[バリュー:Values (大切にする価値観)]

チ ャ レ ン ジ・・・行動力 成長 変革

リレーションシップ・・・信頼 思いやり 安心

プロフェッショナリズム・・・誠実 責任 使命感

チ ー ム ワ ー ク・・・調和 敬意 結束

 

[アイザワ宣言]

お客さまへ    私たちは、お客さまの未来を見据えた金融サービスを提供します。

株主の皆さまへ  私たちは、持続的な成長を通じて、企業価値向上に努めます。

社会へ      私たちは、地域との繋がりを大切にし、社会の発展に貢献します。

従業員の皆さんへ 私たちは、社員一人ひとりを尊重し、成長と挑戦を後押しします。

 

(1) 経営環境

「貯蓄から投資へ」の大きな流れに代表されるように、我が国における個人の資産運用・資産形成はもはや不可避の流れです。その主体である資産形成層や準富裕層を中心に、「対面による継続的対話・アドバイス」へのニーズがますます高まっています。資産運用・資産形成アドバイスを含む「継続的・長期的にお客さまに寄り添う」ビジネスモデルへの転換が証券会社に求められています。

このようなニーズに応えていくために、アイザワ証券グループは、資産運用・資産形成を通じてお客さまとそのご家族の人生の伴走者となることを目指しております。当社グループの目指す「伴走者」とは、お客さまとそのご家族の資産運用・資産形成に関して、継続的にお話を傾聴し、それぞれのライフステージに合った提案・アドバイスを送り、世代を超えて対話を続ける、長期にわたる人生のパートナーです。

2025年4月には、2028年3月までの3年間を計画期間とする中期経営計画「資産運用・資産形成を通じてお客さまとそのご家族の人生の伴走者となる」を策定しました。中期経営計画に基づき、安定的にROE目標(8%以上)を達成できる事業構造・収益構造への抜本的な変革を実行してまいります。

 

 

(2) 事業戦略

  財務報告上のセグメントごとの事業戦略は、以下のとおりであります。

①証券事業

お客さまとそのご家族の資産運用・資産形成の伴走者としてのビジネスモデルを確立するため、ゴールベースアプローチ型営業と地域密着を徹底します。お客さまのライフプラン・将来の夢・希望といった「ゴール」を実現するために、継続的・長期的にお客さまに寄り添い、ゴールベースアプローチによりストック商品のご提案に注力してまいります。また、資産形成層のお客さまを中心とした顧客基盤を拡大するため、保険代理店や地域金融機関等との連携を強化し、プラットフォームビジネスの拡大に努めます。

 

②投資事業

グループ連結業績の安定化と資産収益性向上に貢献する重要な事業と位置付け、運用成績を中期的に極大化することを最重視し、それを目的としたポートフォリオ運用、リスク管理及びパフォーマンス評価を行います。一定以上の流動性に留意しつつ、プライベートアセット、外国アセット、不動産等への投資を含めて運用を行ってまいります。

 

③運用事業

非公開市場で取引される資産であるプライベートアセットは、世界的にも注目されており、市場の拡大が続いております。プライベートアセットの投資リターンは上場資産より高い場合もあり、リスクに見合ったリターンが期待できます。そのため、プライベートアセットの運用資産残高の増加に注力いたします。

 

(3) 目標とする経営指標

当社グループは、後述の中期経営計画『資産運用・資産形成を通じてお客さまとそのご家族の人生の伴走者となる』において、2028年度3月期の達成目標として以下の計数目標を掲げております。

 

KPI

2028年3月期 達成目標

ROE(自己資本利益率)

8%以上

ストック商品預り資産

8,000億円以上

総預り資産

2兆5,000億円以上

実質ストック収益(注)1 実質販管費カバー率(注)2

40%以上

女性管理職比率

15%以上

エンゲージメントスコア(注)3

80%以上

 

(注)1 信託報酬とラップ報酬の合計額から金融商品仲介業者等に支払う仲介手数料分を除外した収益額

(注)2 アイザワ証券の販売費・一般管理費から金融商品仲介業者等に支払う仲介手数料を除外した額

(注)3 当社グループのエンゲージメント調査において、回答者のうちアイザワ証券グループに愛着や

     誇りを感じる、もしくはやや感じると回答する社員の割合

 

 

(4) 内部管理体制の整備・運用状況

① 内部牽制組織、組織上の業務部門及び管理部門の配置状況、社内規程の整備状況その他内部管理体制の強化のための牽制組織の状況

当社グループは、内部監査の独立性を高めるため、内部監査を所管する監査部をいずれの業務ラインにも属さない独立した部署として設置しております。

監査部は、「内部監査規程」に基づき、毎期初に策定する「内部監査計画書」に従って監査を実施し、監査結果報告会において監査対象部門と問題点の共有化を図ったうえで改善を指示し、改善状況の確認を行います。

また、当社グループの内部統制については、統制組織及び統制手段の両面から内部牽制が有効に機能する仕組みを構築しております。統制組織としては、日本証券業協会の「協会員の内部管理責任者等に関する規則」に基づき、内部管理を担当する取締役1名を「内部管理統括責任者」として定めております。内部管理責任者は組織上、コンプライアンス部に属しており、人事上の評価につきましては組織の上長並びに内部管理統括補助責任者が行うこととし、内部管理体制の充実に努めております。これらの制度を通じ、金融商品取引法その他法令諸規則等の遵守、投資勧誘等の営業活動、顧客管理等が適正に行われるよう社内の監査部門が中心となり、内部管理体制の整備に努めております。

② 内部管理体制の充実に向けた取り組みの最近1年間における実施状況
(イ) コンプライアンス評価委員会

金融商品取引法をはじめとした法令・諸規則遵守の強化を図るため、社内に「コンプライアンス評価委員会」を設置し、法令違反の未然防止策の立案、社内の問題点の洗い出しと改善策の検討・具体化を図っております。

(ロ) リスク管理委員会

内部統制上の会社のリスクを洗い出し、業務に活かすため「リスク管理委員会」を設け、月一回定期的に業務上のあらゆる問題を討議・検討しております。

(ハ) 内部統制構築プロジェクト

監査部内に内部統制専門の担当者を設け、内部統制の運用を行っております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般に関する事項

 当社グループは、サステナビリティに係る対応を経営上の重要課題と認識し、サステナビリティ基本方針を定め、持続可能な社会の実現に向けた取組みを推進しております。「地域密着」を掲げ、地域金融機関、教育機関及び地方自治体と連携し、地方創生・地域活性化や金融リテラシー教育の推進等、社会貢献活動に積極的に取り組んでおります。社員一人ひとりが地域社会の発展に取り組み、貢献することで、中長期的な企業価値向上とサステナブルな未来の実現を目指しております。

 

[サステナビリティ基本方針]

私たちアイザワ証券グループは、お客様を思う気持ちを第一に尊重し、社員一人ひとりが地域社会の活性化に取り組み、貢献してまいります。

また、総合金融サービスグループとして、成長性のある企業の資金調達や独自の金融商品・サービスの開発、個人の資産形成を支えることで社会に貢献し、中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指してまいります。

 

①ガバナンス

サステナビリティに関する重要課題の特定やリスク及び機会の把握、それらへ対応するための各種施策の推進は、各事業を営むグループ子会社がそれぞれの事業にて行い、経営上の重要事項については経営会議において報告を受けて討議し、取締役会は適宜報告を受け、審議・監督するガバナンス体制としております。

 

②リスク管理

当社グループはリスク管理基本方針及びリスク管理規程を定め、業務を適切に運営するため、リスク管理を経営上の重要課題の一つと位置づけております。

全社的なリスクについては、リスクの把握・評価、必要に応じた定性・定量それぞれの面から適切な対応を行うため、「リスク管理委員会」を設置し、総合的なリスク管理を実施しております。重要なリスクは経営会議の協議を経て取締役会へ報告、監督される体制としております。

サステナビリティに係る様々なリスクについても、当社が取り組むべき重要課題として認識し、将来の不確実性を高める要素と捉え、既存のリスク管理プロセスへの反映を検討しております。

 

(2) 気候変動に関する事項

気候変動がビジネスに与える影響は徐々に拡大していると認識しており、当社グループは気候変動に係る対応を経営上の重要課題としております。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言へ賛同し、当社グループの事業に影響を及ぼす気候変動のリスク及び機会を把握し、情報開示の拡充に取り組んでおります。

 

①戦略

<気候変動が当社事業に及ぼすリスクと機会>

 TCFD提言に基づき、全社を対象として気候変動リスク・機会による事業インパクト、対応策の検討に向けたシナリオ分析を行いました。

 2℃未満及び4℃の気温上昇時の世界を想定し、2023年度より将来までの間に事業に影響を及ぼす可能性がある気候関連のリスクと機会の重要性、また気候変動リスク・機会に対する当社戦略のレジリエンスを評価しました。

 

 

《移行リスク》

リスク/機会-要素

リスク

種類

リスク

機会の

種類

機会

評価

影響

ビジネス・戦略

・財務等への影響

2℃

シナリオ

4℃

シナリオ

開示規則

政策

・法規制

情報開示範囲の拡大に伴う開示漏れ

市場

情報提供機会の増加によるレピュテーション向上

当該リスクへの対策コスト等が発生するため当社業績への影響度は高いと考えられます。

↑ 大

↑ 大

開示規則

政策

・法規制

炭素税の導入や新たな法規制の制定

市場

各種規制等の対応によるレピュテーション向上

当該リスクへの対策コスト等が発生し、当社への中規模のリスクがあると考えられます。

→ 小

→ 小

次世代技術

技術

低炭素技術の進展による関連金融商品やサービス等の普及

製品サービス

新たな金融商品サービスの提供

当該リスクへの対策コスト等が発生し、当社への中規模のリスクがあると考えられます。

→ 小

→ 小

電力/石油価格

市場

電力・石油価格高騰による消費者行動の変化

市場

投資行動の抑制

顧客の投資活動が消極的になり、各種手数料収入が減少するため当社業績への影響度は高いと考えられます。

↑ 大

↑ 大

電力/石油価格

評判

気候変動の取組み不足によるレピュテーションへの影響

市場

売買高の減少

株価下落

当該リスクへの対策コスト等が発生し、当社への中規模のリスクがあると考えられます。

↑ 大

→ 小

ステークホルダーの嗜好変化

評判

 

ステークホルダーからの批判

市場

売買高の減少

株価下落

当該リスクへの対策コスト等が発生し、当社への中規模のリスクがあると考えられます。

↑ 中

→ 小

 

 

 

《物理的リスク》

リスク/機会-要素

リスク

種類

リスク

機会の

種類

機会

評価

影響

ビジネス・戦略

・財務等への影響

2℃

シナリオ

4℃

シナリオ

自然災害の増加

(豪雨、地震等)

急性

店舗やインフラ設備の被害による事業活動の停止

製品サービス

グリーンファイナンス市場の拡大による投資機会の増加

顧客の投資活動が消極的になり、各種手数料収入が減少するため当社業績への影響度は高いと考えられます。

→ 小

↑ 大

感染症のまん延

慢性

外出自粛等による生活スタイルの変化

製品サービス

オンライン取引の増加

顧客の投資活動が消極的になり、各種手数料収入が減少するため当社業績への影響度は高いと考えられます。

↑ 中

↑ 大

 

 

<シナリオ分析>

《2℃程度の気温上昇シナリオ》

 2100年時点において、産業革命時期比で2℃程度の気温上昇に抑制されるシナリオ。

 気候変動対応が強められ、政策規制、市場、技術、評判等における移行リスクが高まる。

 顧客の投資に対する志向が変化し、企業の気候変動対応が強く求められ、未対応の場合は、顧客流出やレピュテーションリスク上昇が発生する等、移行リスクは高まると推測。一方、気候変動による災害の激甚化や増加が一定程度抑制される等、物理的リスクは相対的に低いと推測。

 

《4℃程度の気温上昇シナリオ》

 産業革命前の水準から気温上昇が4℃程度まで上昇するシナリオ。

 自然災害の激甚化、海面上昇や異常気象の増加等の物理的リスクが高まる。

 この影響により、BCP対応が整備されている企業の競争力は高まるものと想定。

 

 

項目

2℃シナリオ

4℃シナリオ

移行リスク

市場

顧客ニーズの変化

サステナブルな社会の実現のため、気候変動への対応から環境関連商品への需要が高まると思われる

環境関連商品への興味関心度が増す

環境関連商品の取扱い

グリーンボンドやサステナビリティ商品の拡充

環境関連商品への興味関心度が増す

電力コストの上昇

24.9円/kWh

13円/kWh

物理リスク

慢性

年平均気温の上昇

約1.4℃上昇

約4.5℃上昇

猛暑日の年間数

約2.8日増加

約19.1日増加

日降水量200mm以上の年間日数

約1.5倍に増加

約2.3倍に増加

急性

1時間降水量50mm以上の頻度

約1.6倍に増加

約2.3倍に増加

台風の激甚化

台風の強度が高まる

猛烈な台風の存在頻度が増える

 

※ 電力コストについては、(公財)地球環境産業技術研究機構 「2050年カーボンニュートラルのシナリオ分析」を参照

※ 物理リスクについては、文部科学省・気象庁「日本の気候変動 2020 -大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書-」を参照

 

<シナリオに基づく財務影響>

 

シナリオ

炭素価格(ドル)

※1、2

為替

炭素価格

(円/t-CO2)

炭素税の年間負担額

(百万円/年)※3

2030年

2℃

130

130

16,900

2.9

4℃

100

13,000

2.2

2050年

2℃

250

30,000

5.1

4℃

160

19,200

3.2

 

※1 IEA「World Energy Outlook 2021」B.2 CO2 prices Net Zero Emissions by 2050「Advanced economies」の数値を参考

※2 IEA「Net Zero by 2050」A Roadmap for the Global Energy Sector Table 2.2 CO2 prices for electricity, industry and energy production in the NZE「Advanced economies」の数値を参考

※3 2030年3月期:CO2排出量は 約169t-CO2、$1=130円で試算

 

<シナリオ分析を踏まえた気候変動に対する対応策の検討>

項目

対応策

環境基準への対応

社用車やバイク(リース含)等の電気自動車への転換や、事務所で使用する電力の再生可能エネルギー等への切替を行う。

環境関連開示の義務拡大

環境関連開示に適切に対応し、その他の非財務情報の開示も充実を図ることで、当社のESG評価を向上させる。

顧客ニーズの変化

グリーンボンドやサステナビリティ商品等の環境関連商品の取扱いを行う。

新たな成長分野への投資

ベンチャー企業や環境関連ビジネス、プロジェクトへの投資を行う。

平均気温や海面の上昇等、それらによって

もたらされる自然災害等、異常気象の激甚化

顧客とのコミュニケーションを最優先に図るため、WEBや電話等の各種ツールを活用し、当社が強みとする対面での様々な活動が円滑に継続できるような体制を構築する。

 

 

②指標及び目標

 2024年度の温室効果ガス排出量は、Scope1(自社が直接排出する排出量)は、279t-CO2、Scope2(他社から供給された電気等の使用に伴う排出量)は、531t-CO2でした。

 当社グループは、気候変動が社会の喫緊の課題であると認識し、温室効果ガス削減や省エネルギー化を実践してカーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでおります。

 持続可能な社会の実現に向けて、Scope1、2について、2030年度末までにグループ全体のCO2排出量の40%削減(2021年度比)、2050年度末までに排出量の実質ゼロ達成を目標としています。

 

《GHG排出量(単位:t-CO2)》

 

2021年度

2024年度

目標

Scope1

(社用車等使用によるCO2排出量)

251.6

279.1

<2030年度>2021年度比40%削減

Scope2

(店舗等の電力消費に伴うCO2排出量)

806.3

531.6

<2050年度>排出量ゼロ

 

 

<環境長期目標の実現に向けて>

 温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーへの切替やガソリン使用車から電気自動車への転換、カーボンオフセットの活用等を実施・検討してまいります。

 また、再エネや省エネ等の着実な低炭素化(トランジション)や脱炭素化に向けた革新的技術(イノベーション)への投資等、グリーン成長戦略のもと、省エネ関連産業を成長分野にするべくESG投資も行ってまいります。

 

 

(3) 人的資本に関する事項

当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、人的資本投資への取組みを強化しております。自発的に行動し変化に対応できる人材の育成や、新規及び中途採用の強化、給与水準の引き上げ、職場環境の整備、離職率の改善、育児休業制度の拡充等を継続し、従業員エンゲージメントの向上と優秀な人材確保を図るとともに、多様性の確保に努めております。

 

①戦略

人的資本投資は当社グループが取り組むべき重点課題と位置づけ、経営戦略・事業戦略と連動する人事戦略を推進しております。社員への報酬の適切性を意識すると同時に、特に社員教育、フィードバックの強化、社内コミュニケーションの向上、次世代経営人材の発掘と教育等の継続的な施策を実施してまいります。

 

人材育成方針

中期経営計画において人的資本投資は当社が取り組むべき重点課題と位置づけ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、自発的に行動し変化に対応できる人材の育成に努めております。社員の自律的成長を中長期的に支援するCDP(キャリア・デベロップメント・プログラム)を中心とした人材育成により、個人の適性・希望を考慮し、能力開発やキャリア開発をサポートしております。社員の能力を最大化し、自主性を重んじることで働きがいを高め、会社の成長を担う優秀な人材を育成してまいります。

また、多様な人材の育成のため、女性キャリアステップアップ研修等の実施や人事交流の活発化、キャリア選択の多様化等の施策を推進してまいります。

 

社内環境整備方針

社員の会社への愛着度(エンゲージメント)を重視し、定期的に全社員を対象とした調査を実施しており、活き活きと働ける環境整備を推進しております。男女問わずワーク・ライフ・バランスを実現できる職場環境を目指し、育児・介護休業の取得促進やライフプラン・ライフステージの変化に応じて選択できる着脱式のエリア限定制度の導入を図るなど、働きがいを高める施策を実行し、エンゲージメントの向上に取り組んでまいります。

また、社員の健康保持増進に取り組み、健康診断受診100%、人間ドック受診等の補助を通じ、健康経営を推進してまいります。

 

<多様な人材の活躍>

当社グループは、社員(人材)を会社の重要な財産(人財)と捉え、年齢、性別、国籍、人種、役職、働き方等の属性に偏ることなく多様性を認め、能力や実績を重視し、人物本位の採用及び登用を行っております。また、仕事と家庭の両立を支援するとともに、働きやすい環境をつくることによって、すべての社員がその能力を十分に発揮できるよう雇用環境の整備を行っております。

管理職への登用については、性別や国籍、採用方法等に関係なく、能力、スキル、経験、適性等を総合的に判断しております。現時点では、女性・外国人・中途採用者の社員に占める割合が低く、当社はこれを課題と認識しております。当社グループの持続的な成長のために積極的に女性の採用を行ってまいります。

女性の管理職登用については、女性キャリアステップアップ研修を開催し、管理職を目指す女性社員を自薦で募った上で、リーダーシップの向上に努めております。社員一人ひとりが自らのキャリアを継続し成長できる環境を整備し、各種研修の充実に取り組んでおります。

なお、アイザワ証券株式会社では、女性活躍推進法に基づく「えるぼし」認定(2段階目)、次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん」認定を取得しております。

 

 

<ファイナンシャル・ウェルネスに関する取組み>

当社グループでは、社員のファイナンシャル・ウェルネスを支援するため、確定拠出年金(DC)継続教育プログラムでのeラーニングやライブ配信セミナー等を提供し、DCへの理解や資産形成への知識を深める取組みを行っております。

また、従業員持株会を設け、当社株式購入時の奨励金支給や子会社のアイザワ証券株式会社を通じ、同社で取り扱う国内外の株式や投資信託、ラップ商品等の金融商品の購入を可能とするとともに、購入条件に応じた資産形成手当を支給しております。

さらに、従業員向けインセンティブ・プランとして株式交付制度を2019年から導入しており、社員の資産形成に対する支援に積極的に取り組んでおります。

 

②指標及び目標

当社グループでは、上記「①戦略」において記載した人材育成方針・社内環境整備方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

指標

2027年度達成目標

2024年度実績

女性管理職比率

15%以上

13.8%

エンゲージメントスコア※

80%以上

72.1%

 

※ エンゲージメントスコア:当社グループのエンゲージメント調査において、回答者のうちアイザワ証券グループに愛着や誇りを感じる、もしくはやや感じると回答する社員の割合

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。本項においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末において判断したものであります。

 

(1) 事業関連について

① 主要な事業の前提に係るリスク

当社グループでは、主要な事業活動である金融商品取引業務につき、金融商品取引法に基づく金融商品取引業の登録(登録番号関東財務局長(金商)第3283号)を受けております。金融商品取引業者は、金融商品取引業又はこれに付随する業務に関し、法令又は法令に基づく規定に違反した時は、登録又は認可の取消し、一定期間の業務停止又は何らかの改善命令を受ける可能性があります。現時点において当社グループはこれらの取消事由に該当する事実はないと認識しております。しかしながら、将来何らかの事由により登録等の取消しを命じられた場合には、当社グループの主要な事業活動に支障をきたすとともに、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

② 市場の縮小に伴うリスク

株式・債券相場の下落又は低迷により、流通市場の市場参加者が減少し、売買高や売買代金が縮小する場合、あるいは発行市場において計画の延期や中止が行われた場合、当社グループの受入手数料が減少する可能性があります。このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 

③ 相場の急激な変動に伴うリスク

当社グループでは、自己勘定で市場リスクを内包するトレーディングを行っておりますので、株価・債券価格・金利・為替その他市場価格等の変動により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 

④ 競合によるリスク

当社グループが属する金融商品取引業界においては、株式の売買委託手数料の自由化、規制緩和に伴う他業態からの新規参入等をはじめとした環境変化が進行しております。とりわけ、近年においては、オンライン取引に特化した金融商品取引業者の台頭、銀行の金融商品取引仲介業の解禁等もあり、当業界を取り巻く環境は年々厳しさを増す傾向にあります。そのため、このような事業環境の中で、競争力を低下させた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 業務範囲の拡大に伴うリスク

当社グループは株式市況に過度に依存しない収益体質を構築するため、金融商品取引業務以外の金融関連業務を行うことを目的として、投資事業組合や匿名組合等への投資並びに新規業務を行っております。これらの投資及び新規業務への開始に際してはその採算性等について十分な検討を行っておりますが、投資先の事業及び新規業務が計画的に遂行できなかった場合等においては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 財務関連について

① 信用取引に伴うリスク

信用取引においては、顧客への信用供与が発生し、市況の変動によっては顧客の信用リスクが顕在化する可能性があります。株式相場の変動等により、担保となっている有価証券等の価値が低下した場合等、各顧客に追加で担保の差し入れを求める場合があります。顧客が追加担保の差し入れに応じない場合には、担保となっている代用有価証券を処分いたしますが、株式相場が急激に変動し、顧客への信用取引貸付金を十分に回収できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、取引所取引における先物取引及びオプション取引(売建て)につきましても類似のリスクがあります。

 

② 固定資産の減損に関するリスク

当社グループが保有する固定資産について、資産の収益性低下等により投資額の回収が見込めなくなる可能性があります。これに伴い「固定資産の減損に係る会計基準」に規定される減損損失を認識するに至った場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

③ 年金債務に関するリスク

当社グループの退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づいて算定されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合には、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。

 

(3) 資金調達について

当社グループは事業の特性上、日常業務の遂行に必要となる大量の資金を機動的かつ安定的に調達する必要があります。このため、長期・短期借入金といった安定的な資金調達に加えて、金融機関との間にコミットメントラインを設定する等、資金調達手段の多様化を図っております。また、調達による借換リスクを低減させるため、資金調達源の分散を図っております。ただし、経済情勢やその他の要因により、当社グループの経営成績及び財政状態が悪化した場合には、金融市場、資本市場等からの資金調達が困難となる、もしくは資金調達コストが上昇する可能性があります。

 

(4) 法的規制等について

当社グループは、金融商品取引法の他、各金融商品取引所、日本証券業協会等の自主規制機関による法令・諸規則等に従って業務を遂行しておりますが、将来的に当社業務に関係する法令・諸規則や実務慣行、解釈等の変更が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 自己資本規制比率について

金融商品取引業者は、金融商品取引法及び金融商品取引業等に関する内閣府令に基づき、自己資本規制比率を120%以上に維持することが求められております。万一、定められた自己資本規制比率を維持できない場合は業務停止や金融商品取引業者の登録の取消しを命じられる可能性があります。そのため、当該比率が低下した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 法令遵守に関するリスクについて

当社グループは法令遵守(コンプライアンス)体制の整備を経営の最重要課題として位置付け、内部統制の整備を図り、より充実した内部管理体制の確立と役職員の教育・研修等を通じた意識徹底に努めております。こうした内部統制の整備やコンプライアンス研修は、役職員の違法行為を未然に防止するための有効な方策ではありますが、違法行為の全てを排除することを保証するものではありません。また、役職員による意図的な違法行為は、総じて周到に隠蔽行為がなされ、長期間にわたって発覚しないケースもあり、将来において当社グループの業績に影響を及ぼすような損害賠償を求められる可能性もあります。このほか、非公開情報の不適切な使用・漏洩・情報受領者と共謀等の不正行為の可能性もあります。これらの不正行為は、会社の使用者責任及び法的責任等を問われることもあり、場合によっては監督官庁より種々の処分・命令を受ける可能性があり、また、当社グループの社会的な信用が低下する可能性もあります。かかる事態の発生により、当社グループが損失(若しくは得べかりし利益の逸失)を被り、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 訴訟等について

顧客に対する説明不足あるいは顧客との認識の不一致などによって、顧客に損失が生じた場合には、当社グループが訴訟の対象となる可能性があります。万一、訴訟等に発展し、当社の主張と異なる判断がなされた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、現在係争中の訴訟案件につきましては当社グループの経営に重大な影響を及ぼす可能性は低いと考えております。

 

 

(8) その他

① システムに関するリスク

当社グループが提供するインターネット取引システム及び当社が業務上使用するコンピューターシステムが、回線の不具合、外部からの不正アクセス、災害や停電時の諸要因によって障害を起こした場合、障害規模によっては当社業務に支障をきたし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 情報セキュリティに関するリスク

当社グループでは「リスク管理委員会」を組織し、「情報セキュリティ管理規程」及び「情報セキュリティマニュアル」等を制定し、情報漏洩防止体制等管理体制の強化を図っておりますが、万一、顧客情報を含む社内重要事実が社外に不正流出した場合、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、さらに技術的、人的安全管理措置等、顧客情報の管理を図ってまいります。

③ 業務処理におけるリスク

有価証券の受発注に関しましては、入力項目の確認等を励行しているほか、システム上の画面表示も注意喚起する等事故防止策が図られております。さらに、約定代金及び売買単位が多量になる場合には、システム的に一定の権限を付与された者以外は入力できないシステムとなっております。しかし、万一入力項目を誤って入力し、約定が成立した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ 人材の確保及び育成について

当社グループは常に質の高い投資情報サービスを提供し、お客様の満足度の向上を実現できる人材の確保並びに育成が重要な経営課題と捉えております。この観点から、新規採用及び中途採用の両面から積極的に人材を採用し、かつ社内研修の充実度を高めていく方針であります。しかしながら、当社グループが必要とする人材が確保できなかった場合には、当社グループの経営成績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 業務の外部委託について

当社グループは、業務の効率化を図るため、業務の一部を他社へアウトソーシングしております。これらの業務委託先がシステムの故障、処理能力の限界又はその他の理由によりサービスの提供を中断又は停止し、適時に代替策を講じることができない場合には、当社グループの顧客へのサービスの提供が途絶し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループといたしましては、他社へアウトソーシングした業務を管理し、一部の業務では外部委託先の内部統制について独立監査人の報告書を入手する等のモニタリングを実施しております。

⑥ 自然災害等について

当社グループの証券事業を営むアイザワ証券株式会社の営業拠点は、東京近郊、東海及び関西に集中していますが、一般的に他の地域と比較して地震の頻度が多いため、それに伴う被害も受けやすい地域であるといえます。
 また、大規模な地震、津波、台風、噴火等の自然災害による直接的な影響のほか、これらに起因する社会的インフラへの影響、また、コンピューター・ウィルス、テロ攻撃といった事象などにより、同様の混乱状態に陥る可能性があります。
 これらの災害等により、金融商品取引に関するインフラ等への物理的な損害、従業員への人的被害並びにお客様への被害等があった場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 気候変動等に係るリスクについて

気候変動に係るリスク及び収益機会が事業活動や収益等に与える影響につきましては、今年度より新たに策定した中期経営計画において、当社が取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として認識しております。一方、当社グループにおける各事業活動や収益等に与える影響は小さく、また事業活動による環境への負荷も小さいと想定しております。今後、必要なデータの収集・分析を行い、TCFD等の国際的に確立された枠組みに基づいて適切に開示することを検討してまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)において、世界株式市場は堅調な米国経済とFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ開始、中国の大規模景気対策等を背景に米国と中国の株価が上昇した一方、日本とASEAN主要国(シンガポールを除く。)の株価は軟調に推移しました。

米国株式市場は、生成AI関連の投資拡大やトランプ次期政権に向けた政策期待を追い風に循環物色が広がり、ダウ工業株30種平均とS&P500、ナスダック総合の主要3指数はそろって史上最高値を更新しました。その後、第2次トランプ政権による追加関税に対する懸念が高まり、2025年3月から相場は調整局面に入っています。

国内株式市場は、脱デフレ期待と賃上げ、円安、不安定な海外情勢等強弱材料が入り交じる中で波乱の相場展開になりました。2024年4月から2025年3月までの日経平均株価の期間騰落率は-11.8%と、主に米国経済に関する不確実性が高まったことや米国による自動車関税への懸念等が相場の重石になりました。

アジア株式市場は、中国の景気対策と不安定な海外情勢、各国固有の要因等を背景に国別の明暗が分かれました。その中で中国は政府当局が利下げや住宅の需要喚起、株式市場のテコ入れ、地方隠れ債務の解消を中心とする大規模な景気対策を発表したため、2024年4月から2025年3月にかけて上海総合指数と香港ハンセン指数はそれぞれ+9.7%、+39.8%と上昇が目立ちました。一方ASEANは米国の金融・貿易政策を巡る不透明感と、インドネシアの財政悪化やタイの政情不安に対する懸念により相場は総じて低迷しましたが、ベトナムのVN指数がプラス圏を維持するなど底堅い動きも見られました。

 

このような状況の中、当社グループは2022年度からスタートした中期経営計画「Define Next 100 ~もっとお客様のために~」に基づき、各種施策に取り組んでまいりました。最終年度となる当期は、ゴールベースアプローチによるストック商品(投資信託とラップ商品)のご提案に注力し、お客さまとそのご家族の資産運用・資産形成の伴走者となることを目指し、本格的な一歩を踏み出しました。

 

当社グループは、証券事業を主軸とし、投資事業、運用事業を展開しております。各事業における取組みは以下のとおりです。

 

[証券事業]

証券事業を営むアイザワ証券株式会社は、長期にわたるお客さまとそのご家族の資産運用・資産形成の伴走者となることを目指しております。お客さまのライフプラン・将来の夢・希望といった「ゴール」を実現するために、ゴールベースアプローチにより金融サービスのプロフェッショナルとして寄り添い続けてまいります。お客さまの資産形成に資する商品として、ストック商品の残高増加を図っており、2025年3月末時点で総預り資産1兆9,661億円、ストック商品預り資産4,233億円となりました。

プラットフォームビジネスにおいては、地域金融機関や保険代理店、一般事業会社等との連携を拡大しており、当期におきましては、島田掛川信用金庫との顧客紹介契約の締結や株式会社佐賀共栄銀行との会社分割(簡易吸収分割)契約の締結、JR九州のグループ会社であるJR九州保険コンサルティング株式会社と金融商品仲介業に関する業務委託契約を締結しました。その他、2024年4月より今村証券株式会社を投資一任契約の媒介業務を委託する金融商品取引業者として、ゴールベースアプローチ型ラップサービス「未来設計」の提供を開始しました。プラットフォームビジネスは、資産形成層のお客さまへアプローチする重要なチャネルであるため、今後も強化してまいります。

他方、資産運用・資産形成の伴走者としてのビジネスモデルを確立するためには経営資源を集中することが必要と判断し、2028年3月末までに引受け業務を取り止める方針を決定しました。

サステナビリティに関する取組みとして、アイザワ証券は地域金融機関、教育機関及び地方自治体と連携し、地方創生・地域活性化や金融リテラシー教育を推進しております。地方自治体との連携の5例目として、2025年2月に東京都青梅市と地域活性化に関する包括連携協定を締結しました。

 

[投資事業]

投資事業を営むアイザワ・インベストメンツ株式会社は、国内外の成長企業や、配当金を含め安定的な期待収益が見込める上場企業等、中長期投資を基本に上場有価証券への投資を行っております。また、有望なベンチャー企業へ投資し、将来的な上場へ向けてサポートを行っているほか、国内外のベンチャーファンドやバイアウトファンド、プライベートデットファンド、メザニンファンド、ヘッジファンド、不動産開発型ファンド等への投資を行っております。国内不動産に対する直接投資も行い、主に首都圏においてレジデンスを中心に物件を保有し、賃料収入による収益を獲得しております。

 

[運用事業]

運用事業を営むあいざわアセットマネジメント株式会社は、「日本で最も投資家に求められるオルタナティブ資産運用会社」になることを目標に掲げ、プライベートエクイティとヘッジファンドの分野を中心とするオルタナティブ資産の運用を行っております。日本では担い手の少ない「プライベートエクイティセカンダリー投資」分野で日本のリーディングカンパニーを目指し、国内外における認知度の向上を図っております。

 

アイザワ証券グループは、株主還元の強化の一環として、2025年3月期から2028年3月期までの間、配当(普通配当及び特別配当)と自己株式取得による株主還元を総額200億円以上(約100億円を特別配当、残り約100億円を普通配当及び自己株式取得)実施する方針としております。

※ 特別配当の金額は、2024年4月26日時点で入手可能な情報に基づく一定の前提(仮定)及び将来の予測等に基づき見込んでいる金額であり、今後、分配可能額規制その他の法令上の規制や経営環境の変化等の事情により変動する可能性があります。

※ 2024年4月1日~2024年6月18日の期間で自己株式の取得(取得株数 6,163,900株、取得価額の総額 10,775,065,200円)を完了しております。

 

一方、2025年3月14日付で自己株式8,000,000株の消却を実施しております。

 

また、2024年10月18日に社債に係る発行登録を行い、2024年10月28日(効力発生日)から2026年10月27日までの2年間で上限300億円の社債を発行する予定です。本社債発行は、資金調達手段の多様化による財務安定性の向上を企図し、当社グループの将来の成長に必要な資金を機動的に調達できる体制を構築することを目的としております。

 

これからも当社グループは、各グループ子会社がそれぞれの強みを発揮することで、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に努めてまいります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a. 財政状態

当連結会計年度末の資産合計は1,095億29百万円と、前連結会計年度末に比べ145億90百万円の減少となりました。

当連結会計年度末の負債合計は619億29百万円と、前連結会計年度末に比べ35億32百万円の減少となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は475億99百万円と前連結会計年度末に比べ110億57百万円の減少となりました。

 

b. 経営成績

当連結会計年度の経営成績は、営業収益は205億88百万円(前年度比8.5%増)、営業利益は18億86百万円(同62.7%増)、経常利益は25億71百万円(同32.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は31億72百万円(同6.6%増)となりました。

 

c.セグメント毎の経営成績

証券事業の営業収益は178億72百万円(前連結会計年度比0.4%減)、セグメント利益は2億55百万円(同83.2%減)となりました。

運用事業の営業収益は4億23百万円(同55.7%増)、セグメント損失は1億16百万円となりました。

投資事業の営業収益は24億7百万円(同192.9%増)、セグメント利益は15億39百万円となりました。

上記のセグメント別営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高が含まれており、セグメント利益は連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は前連結会計年度末に比べ95億47百万円減少し、131億61百万円となりました。当連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果支出した資金は57億59百万円となりました。これは主に顧客分別金信託の減少、預り金の減少、信用取引負債の減少によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果獲得した資金は11億80百万円となりました。これは主に投資有価証券の取得、投資有価証券の売却によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は48億86百万円となりました。これは主に自己株式の取得、短期社債の発行によるものです。

 

③ トレーディング業務の概要

トレーディング商品:当連結会計年度末のトレーディング商品の残高は以下のとおりです。

 

前連結会計年度
(2024年3月31日)

当連結会計年度
(2025年3月31日)

資産の部のトレーディング商品(百万円)

232

347

 

商品有価証券等(百万円)

232

347

 

 

株式・ワラント(百万円)

121

債券(百万円)

232

226

受益証券等(百万円)

0

0

負債の部のトレーディング商品(百万円)

24

 

商品有価証券等(百万円)

24

 

 

株式・ワラント(百万円)

24

 

トレーディングのリスク管理:

トレーディング業務は、市況の変化に影響を受けやすく、取引商品の多様化並びにマーケットリスクが複雑化しておりますので、リスク管理は極めて重要と認識しております。当社グループのリスク管理の基本は、財務状況に合せたリスクを適切にコントロールすることであります。このため当社の連結子会社であるアイザワ証券株式会社では「自己計算による売買取引の実施権限に関する規程」を定め、ポジション枠、ロスカットルール、与信枠等の設定をしております。また、リスク管理は、商品部門、営業部門から独立したコンプライアンス部が掌握し、トレーディングポジションの状況は経営者に毎日報告されており、損益と合わせて報告書が月例取締役会に提出され分析・検討が行われております。

また、自己売買に関するポジション管理を目的とした、リスク管理委員会において、多様な取引手法やポジション枠の増加につきリスクをより正確に把握、監視する体制としております。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは、金融商品取引業を営む会社を中核とする企業集団であるため、「生産、受注及び販売の実績」に該当する事項はありません。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等
(イ)財政状態

(資産合計)

当連結会計年度末の資産合計は1,095億29百万円と、前連結会計年度末に比べ145億90百万円の減少となりました。

主な要因は、現金・預金95億86百万円の減少、預託金28億48百万円の減少、信用取引資産17億31百万円の減少によるものです。

(負債合計)

当連結会計年度末の負債合計は619億29百万円と、前連結会計年度末に比べ35億32百万円の減少となりました。

主な要因は、信用取引負債25億90百万円の減少、預り金55億16百万円の減少、短期社債60億円の発行によるものです。

(純資産合計)

当連結会計年度末の純資産合計は475億99百万円と前連結会計年度末に比べ110億57百万円の減少となりました。

主な要因は、利益剰余金72億47百万円の減少、自己株式の増加に伴う純資産23億29百万円の減少、その他有価証券評価差額金13億68百万円の減少によるものです。

 

(ロ)経営成績

(営業収益)

当連結会計年度の営業収益は205億88百万円(前年度比8.5%増)となりました。営業収益のおもな内訳は次のとおりです。

1)受入手数料

当連結会計年度の受入手数料は、141億90百万円(同7.3%増)となりました。科目別の概況は以下のとおりです。

ⅰ)委託手数料

委託手数料は株式委託取引の減少により、57億69百万円(同14.3%減)となりました。

ⅱ)引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料

引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は、国内株式の引受額の増加により32百万円(同221.6%増)となりました。

ⅲ)募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料

募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料は、投資信託の販売の増加により32億74百万円(同24.2%増)となりました。

ⅳ)その他の受入手数料

その他の受入手数料は、ファンドラップの投資顧問報酬の増加等により、51億14百万円(同33.1%増)となりました。

2)トレーディング損益

当連結会計年度のトレーディング損益は、30億25百万円(同29.4%減)となりました。科目別の概況は以下のとおりです。

ⅰ)株券

外国株国内店頭取引売買代金の減少により、25億11百万円(同31.7%減)となりました。

 

ⅱ)債券

外国債券の取扱いに伴う収益の減少により、1億72百万円(同15.0%減)となりました。

ⅲ)その他

外国為替取引から生じる損益の減少等により、3億41百万円(同16.0%減)となりました。

3)金融収益

金融収益は受取利息の増加等により8億85百万円(同30.6%増)となりました。

金融費用は信用取引費用の増加等により99百万円(同17.5%増)となりました。これにより、金融収支は7億85百万円(同32.4%増)となりました。

4)その他の営業収益

その他の営業収益は営業投資有価証券売上高の増加等により24億86百万円(同214.7%増)となりました。

なお、その他の営業費用は営業投資有価証券売上原価の減少等により4億66百万円(同33.7%減)となりました。

 

(販売費・一般管理費)

販売費・一般管理費は、取引関係費及び事務費の増加等により、181億35百万円(同6.5%増)となりました。

(営業外損益)

営業外収益は受取配当金4億68百万円、収益分配金2億56百万円等により8億84百万円となりました。営業外費用は支払利息1億28百万円、為替差損27百万円等により1億99百万円となりました。これにより営業外損益は6億84百万円の利益(同12.5%減)となりました。

(特別損益)

特別利益は投資有価証券売却益により23億45百万円となりました。特別損失は投資有価証券償還損2億56百万円等により2億66百万円となりました。これにより特別損益は20億79百万円の利益となりました。

 

b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループは、2022年4月に策定した中期経営計画において「ブローカレッジから資産形成へ」をスローガンに掲げ、ストック収益の増加に邁進してまいりましたが、一方で、年度を通じてストック商品積み上げを優先した事もあり、証券事業全体の収益は伸び悩みました。投資事業においては、投資資産の売却や投資先ファンドによる収益計上により、業績に大きく貢献しました。

2025年4月に策定した中期経営計画は、お客さまとそのご家族の資産運用・資産形成の伴走者としてのビジネスモデルを確立し、安定的にROE目標を達成できる事業構造・収益構造に転換する3年間と位置付けております。ゴールベースアプローチ型営業と地域密着を徹底することでストック商品(投資信託とラップ商品)の預り資産増加に努め、証券事業の変革に注力するほか、投資事業のグレードアップや運用事業の再構築を行います。

 

c. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、「より多くの人に より豊かな生活を」というパーパス:Purpose (存在意義)のもと、2025年4月に策定した中期経営計画において、お客さまとそのご家族の資産運用・資産形成の伴走者としてのビジネスモデルを確立し、安定的にROE目標を達成できる事業構造・収益構造に転換する事を目標としております。この目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、ROE(自己資本利益率)8%以上、証券事業において、ストック商品預り資産8,000億円以上、総預り資産2兆5,000億円以上、実質ストック収益実質販管費カバー率40%以上を目標として掲げております。

 

 

d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

証券事業は外国株式国内店頭取引の減少等によりトレーディング損益が減少し、営業収益は178億72百万円(前連結会計年度比0.4%減)、セグメント利益は2億55百万円(同83.2%減)となりました。

運用事業は運用報酬の増加に伴い、営業収益は4億23百万円(同55.7%増)、セグメント損失は1億16百万円となりました。

投資事業は営業投資有価証券売上高の増加に伴い、営業収益は24億7百万円(同192.9%増)、セグメント利益は15億39百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

b. 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、信用取引買付代金の顧客への貸付であります。信用取引買付代金は株式市況の変動の影響を受けますが、当社グループは主に日本証券金融株式会社の貸借取引により調達しております。また、不測の事態に備え、安定的かつ機動的な財務運営を行うため、三井住友信託銀行株式会社と総額7億50百万円のコミットメントラインを設定しております。

なお、当連結会計年度における当社グループの借入金の総額は190億4百万円です。借入の内訳は金融機関等からの短期借入金96億75百万円、証券金融会社からの信用取引借入金41億73百万円、金融機関からの長期借入金51億56百万円です。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積に用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この連結財務諸表の作成に当たりまして、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に固定資産の減損会計、税効果会計、貸倒引当金、賞与引当金、役員賞与引当金、退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び法人税等であり、継続して評価を行っております。当社グループの採用した重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しております。

なお、見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

 

5 【重要な契約等】

資本業務提携

契約
会社名

相手先の
名称

相手先の
所在地

契約
年月日

契約期間

提携内容

提出会社

ファイブスター投信投資顧問株式会社

東京都

中央区

2020年
6月12日

2024年6月12日から

2025年6月11日まで

(1年毎の自動更新)

(1) 個人のお客様に対する商品・サービスの提供

(2) 法人・金融機関のお客様に対する商品・サービスの提供

(3) 当社の自己運用の高度化 等

 

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。