第2 【事業の状況】

 本文における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。その内容にはリスク、不確実性、仮定が含まれており、将来の業績等を保証し又は約束するものではありません。

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの中期経営計画の状況

当社グループを取り巻く経営環境は、大きく変化してきております。AI等のテクノロジーの活用が事業展開に欠かすことができない存在となってきており、また、環境への配慮や社会的責任を企業がどのように果たしていくか等、サステナビリティ経営が企業に強く求められるようになりました。対面証券ビジネスにおいては、専門性・人間性を備えた人材やインフラが必要な参入障壁が高いビジネスモデルであるものの、手数料体系の変化、賃金、システム、物価や金利の上昇や規制・制度改革、デジタル・トランスフォーメーション(以下「DX」)の加速等により、その在り方が大きく変容してきております。

そのような環境下、当社グループでは、2022年4月より5ヵ年の中期経営計画「“Beyond Our Limits” ~異次元への挑戦」(以下「本計画」)を策定し、推進しております。本計画は、「『誇り』と『憧れ』を感じる企業グループ」となるために、「“Social Value & Justice” comes first」を行動指針として、「異次元の世界」への到達に挑戦するものです。そのための戦略の基本方針として、「金融力の強化」と「異次元に向けた重点施策」を掲げ、「金融力の強化」においては、収支構造改革への取組み、安定収益基盤の拡大を強化し、「異次元に向けた重点施策」では、Powerful Partners(※1)との協業、New Bonanza(※2)の創出等に一層注力するとともに、デジタル分野では、当社の子会社であるCHEER証券等において先進的な金融サービスの提供を図っております。

 


 

※1 電力会社、通信会社、金融機関、商社、不動産、大学、地方銀行、地方公共団体といったパートナー

※2 新しい金鉱脈となるビジネスや機能

 

本計画3年目にあたる当連結会計年度において、グループKGIである自己資本利益率(ROE)は6.1%、預り金融資産は10.9兆円、重要なKPIである経常利益は151億円となりました。

本計画における主な課題として認識している事項、及びそれに対する取組みは以下のとおりであります。

 

戦略の基本方針

課題・取組み

金融力の強化

・富裕層向けのブランドとして、「Orque d'or(オルクドール)」を確立し、サロンや証券担保ローン等の商品、営業員の育成等を取組み、お客さまの資産全体を活用する資産ポートフォリオモデルのサービスを推進。

・新たに準富裕層やアッパーマス層との取引拡大・深耕を図る「クレールシエル戦略」を本格推進、金融・非金融両面のサービスを提供するブランドを確立。

・顧客ニーズに応えた新商品の開発による取引拡大、市場の変化に柔軟に対応可能とするトレーディングキャパシティの強化と専門性の向上。

・日本最大級のスタートアップ支援拠点であるSTATION Aiとの連携、オルクドールAOYAMAに専門のフロアを設ける等のスタートアップ拡大支援、IPOの引受強化。

・地方銀行との提携合弁証券における媒介型モデルの導入、富裕層・法人向けサービスの展開、効率経営の推進。

異次元に向けた

重点施策

Powerful Partnersとの各提携モデルの推進、顧客基盤拡大と証券機能だけでない総合金融サービスの獲得。

(1)当社グループを補完する機能を持つ企業との提携により、フルラインの機能提供

(2)当社グループのDXインフラを中心とした提携

(3)新たに銀行と提携し、銀行・証券代理店を展開

 

 

行動指針

課題・取組み

“Social Value & Justice” comes first

・気候変動や人的資本、ウェルビーイングを中心に持続可能性への取組みのさらなる強化。情報開示の充実化を図ることによる、ESG指数「FTSE Blossom Japan Index」を含む指数への継続採用の実現。透明性のある情報提供を通じた、ステークホルダーとの信頼関係の深化と企業価値の向上を目指す。

・東海東京証券ではお客様本位の業務運営の実行のためNPS®(※)向上をKPIに設定。

・人的資本経営として、社員教育に積極的に投資しているほか、ポジションチャレンジや「Humanity Enhancement Program」等社員の自律的なキャリア構築のためのチャレンジ支援、働きやすい職場環境の整備。

・ESG評価機関による当社グループの取組状況の評価取得と改善活動(FTSE評価「3.5」、MSCI評価「BBB」、CDP評価「B」)

・開示情報の充実とステークホルダー等との対話の拡大

 

※NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現・NICE Systems,Inc.) の登録商標。「Net Promoter Score®(ネット・プロモーター・スコア)」の略で、正味推奨者比率と訳され、顧客ロイヤルティ(企業やブランドに対する愛着・信頼の度合い)を数値化する指標。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般

当社グループは、サステナビリティの重要性を認識し、持続可能な社会の実現に向け、金融・資本市場の担い手として事業活動を通じ環境・社会課題に積極的に取組んでおります。当社グループは長年、地域に根差した社会貢献活動等を積極的に実施してまいりましたが、サステナビリティに関する取組みを一層推進するべく、2020年9月に「SDGs宣言」及び「マテリアリティ(東海東京フィナンシャル・グループの優先すべき重要課題)」を発表しました。2022年4月には、新たな中期経営計画「“Beyond Our Limits”~異次元への挑戦」の中で、「“Social Value & Justice” comes first」を行動指針として掲げ、経営課題としてサステナビリティに取組む姿勢を明確化しました。さらにマテリアリティを2023年9月に見直し、「豊かなライフマネジメントの実現」、「イノベーション」、「パートナーシップ」「ウェルビーイング」、「グリーン」を当社グループの重要課題と特定しています。2024年3月には、従来から取組んできた人権尊重の取組みを、グローバルな潮流を踏まえグループ全体で徹底するべく、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、「東海東京フィナンシャル・グループ人権方針」を策定しました。引き続き、サステナビリティに関する取組強化を通じて、環境・社会課題の解決に貢献しながら、企業価値のさらなる向上を目指してまいります。

 

① ガバナンス

当社グループにおけるサステナビリティに関する取組みは、代表取締役会長が議長を務める経営会議(代表取締役会長、代表取締役社長及び関連する取締役、執行役員から構成)がサステナビリティに関する戦略策定等の意思決定を行い、社外取締役が議長を務める取締役会が監督を行う体制により推進しております。推進にあたっては、サステナビリティに関する施策の企画・実施を担当する専門部署であるコーポレートコミュニケーション部ソーシャル・バリュー&ジャスティス推進室が事務局を務めております。

 

② リスク管理

当社グループにおけるサステナビリティに関するリスク管理は、代表取締役会長が議長を務める経営会議がグループ全体のサステナビリティ関連のリスクを識別、評価、管理し、結果を取締役会へ報告し、取締役会の監督を受けております。今後も引き続きサステナビリティに関連するリスクについての分析・評価の高度化に努め、リスクを回避・低減できるよう最適な管理体制の整備を一層進めてまいります。

 

(2) 気候変動

当社グループは、気候変動に起因する事業等のリスク及び機会を認識し、TCFDフレームワークに基づく取組みと情報開示の拡充に取組んでおります。

① ガバナンス

当社グループは、金融商品取引業者として、気候変動を含む環境問題の重要性を認識し、指針となる「環境方針」を定めた上で、取組みを進めております。気候変動に関する重要事項は、サステナビリティ推進を担当するコーポレートコミュニケーション部ソーシャル・バリュー&ジャスティス推進室が立案し、経営レベルでサステナビリティ課題を議論する協議会にて報告・協議され、特に重要な事項や取組みは経営会議及び取締役会に付議されます。

 

② 戦略

リスク及び機会の認識

気候変動リスクには、低炭素経済への移行に伴う移行リスクと、気候変動の影響が資産等に直接及ぶ物理的リスクの2つのリスクがあります。移行リスクは、規制強化等の政策・法的リスク、新しい技術が影響を与える技術リスク、市場リスク、評判リスクに分類され、物理的リスクは、台風・洪水発生などの急性リスクと気温上昇や海面上昇等、中長期的に影響が及ぶ慢性リスクに分類されます。これらのリスクと機会が顕在化した場合、その内容に応じて、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があると認識しています。

 

当社グループで想定される気候関連リスク

リスク

想定される影響

時間軸

カテゴリー

移行
リスク

政策/
法規制

政府の排出量削減政策の厳格化や規制強化等により当社グループの事業コストが増加

中・長期

政策・法規制リスク

技術

脱炭素技術の発展による産業構造の変化や顧客ニーズの変化に適応した商品・サービスが十分提供できないこと等により当社グループの収益が減少

中・長期

オペレーショナル・リスク

市場

脱炭素社会への移行に向けた政策変更や規制強化により市場が急激に変動し当社グループのトレーディング資産に損失が発生

短・中・長期

市場リスク

評判

ステークホルダーが当社グループの気候変動問題への取組みや情報開示を不十分と評価し当社グループのレピュテーションが低下

短・中・長期

レピュテーションリスク

物理的
リスク

急性/
慢性

台風・豪雨等の異常気象による当社グループ資産の損壊、社員の被災に伴う業務の中断、対応コストの増加等により当社グループの業績が悪化

短・中・長期

オペレーショナル・リスク

台風・豪雨等の異常気象により当社グループの取引先に人的被害や物的損害が生じ収益機会が減少

短・中・長期

信用リスク

台風・豪雨等の異常気象により融資事業の担保価値が減少し、債権の回収可能性が低下

短・中・長期

市場リスク

 

短期:3~5年、中期:5~10年、長期:10~30年

 

当社グループで想定される気候関連機会

機会

時間軸

省エネルギーの取組みによるエネルギーコストの削減

短・中・長期

脱炭素社会への移行に取組むための資金調達などの引受けの増加

短・中・長期

脱炭素社会への移行に貢献する新産業・企業への投資機会の増大

短・中・長期

気候変動への取組みを通じたレピュテーション向上による事業機会の拡大

短・中・長期

 

 

シナリオ分析

「気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)」が公表するシナリオのうち、移行リスクと物理的リスクが最小となる「秩序ある2050年脱炭素シナリオ(Net Zero 2050)」、移行リスクが最大となる「無秩序な2050年脱炭素シナリオ(Delayed Transition)」、物理的リスクが最大となる「現状政策シナリオ(Current Policies)」をベースとして、当社グループの財務(費用及び収益)に与える影響について、定量・定性分析を通じた財務への影響を評価しました。

当社グループの事業全体への影響を総合的に考慮した結果、財務に与える影響は限定的と考えております。一方で、今後のグリーン分野への投資ニーズの拡大等を見据えたビジネス機会の拡大可能性についても再認識いたしました。今後も分析レベルの高度化を図り、緩和と適応の両面から取組みを推進してまいります。

 

 

シナリオ分析の概要

気候変動シナリオ
  (NGFS第4版)

秩序ある2050年
脱炭素シナリオ
(Net Zero 2050)

無秩序な2050年
脱炭素シナリオ

(Delayed Transition)

現状政策シナリオ

(Current Policies)

シナリオ概要

・厳格な排出削減政策とイノベーションにより世界の気温上昇を1.5℃に抑制。

・2050年に日本を含む世界のCO2排出量をネットゼロにすることを目指す。

・2030年まで排出量が減少せず、脱炭素社会への移行が遅れる。

・温暖化を抑えるために強力な政策が必要となり移行リスクが高くなる。

・現在実施されている政策のみが保持される。

・気温上昇が進み物理的リスクが最も高くなる。

分析期間

2050年時点

分析方法

定量・定性分析、影響度評価

分析結果

当社グループの財務に与える影響は限定的

 

 

③ リスク管理

当社グループで想定される具体的な気候変動リスク及び機会は、サステナビリティ推進を担当するソーシャル・バリュー&ジャスティス推進室と総合リスク・コンプライアンス部を中心に当社グループの事業特性を踏まえて想定されるリスクを整理、評価しています。また、代表取締役会長、代表取締役社長と関連部門の役員から構成される協議会及び経営会議にて報告・協議し、取締役会へ報告し議論することで全社的な管理を行っています。

 

④ 指標及び目標

当社グループでは、事業活動に伴う温室効果ガス排出量を継続的に削減してきました。今後は、「2030年実質ゼロ」を達成するため、再生可能エネルギーの一層の利用や省エネの推進等により、さらなる削減を進めていきます。

 

温室効果ガス排出量

 (単位:t-CO2)

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

SCOPE1

681

401

454

450

424

SCOPE2

2,701

2,590

2,493

2,090

1,817

SCOPE1、2

3,382

2,991

2,947

2,539

2,242

 

※温室効果ガス排出量(CO2排出量)の集計対象は、以下のとおり。

当社、東海東京証券株式会社、CHEER証券株式会社、株式会社東海東京インテリジェンス・ラボ、東海東京インベストメント株式会社、東海東京サービス株式会社(東海東京証券株式会社が入居する拠点)、東海東京ビジネスサービス株式会社。(2021年度から旧エース証券株式会社を追加)

 

 

(3) 人的資本

経営戦略と人材戦略の連動を意識した取組み

当社は、ビジネスモデルの変化とともに人事制度も変化させてきました。また、社会の変化とともに、柔軟性のある働き方ができる職場環境を整備してまいりました。

成長の源泉である人材をいかに確保・育成・配置を行うかが重要な経営テーマであると認識しており、2019年からジョブ型人事制度へ転換を図りました。これにより、仕事の価値と給与の連動を実現し、各ポジションの業務内容を明らかにすることで、属性・勤続年数等に関わらず、より適した人材のポジション登用やよりスムーズなキャリア採用を可能といたしました。

一方、当社が採用しているジョブ型人事制度は、導入から一定期間が経過したことから、現状の確認と課題の洗い出しを行いました。具体的には、年功序列を廃止することにより管理職の早期登用が可能になったことや、キャリアパスを明確にすることにより社員の成長を促すなど、同制度の導入によりさまざまな利点が見られました。一方で、ポジションの硬直化などの課題も明らかになったため、今後は課題を踏まえて改善策を講じてまいります。

 

文化の醸成

当社は、社内公募や自己研鑽の取組みに対して手挙げ制度による仕組みを広げております。また、2年かけて65歳までの全社員を対象にキャリアデザインプログラムを実施いたしました。社員一人ひとりが自らキャリアを選択し、能動的に考えていくための環境を整えております。

2020年にHumanity Enhancement Programを創設し、プライベート支援、社内インターン、リスキリング、社外への複業留学等の多様な学習機会を提供しており、結果として、専門性・人間性が向上し魅力的な人材になると考えております。現在はこれらのメニューを拡充しながら運用しており、当社独自の制度として社員へ広く浸透しております。

昨年度はキャリア選択の機会を増やすため、従来は「社内公募」として実施していた制度を拡張した「ポジションチャレンジ」を新たに創設し、実施しました。これまでの「社内公募」では募集を希望する部署からの発信でしたが、「ポジションチャレンジ」では原則すべてのポジションを対象とし、社員本人が希望すればどこでも自由に応募することができるようになり、より一層自律的なキャリア形成を促進できるような体勢を整えました。

今後も人材育成や社内環境を整備することで、企業価値向上につなげてまいります。

 

① 戦略

社内環境整備方針

当社では、経営戦略と人材戦略の連動について、2019年に全社員へ導入したジョブ型人事制度をベースにしております。
 経営戦略でキーワードとしている「金融力の強化」、「異次元に向けた重点施策」、行動指針である「“Social Value & Justice”comes first」を実現するために、“攻め”の観点としての「事業強化」と、“持続性”の観点としての「企業の継続性・サステナビリティ」の2軸で人材戦略を定めております。それぞれの人材戦略について具体的な取組みを進め、従業員エンゲージメントの向上と、前年度の経常利益の3%を人材に投資し、育成に努めていくことをKPIとして設定しております。

なお、この2項目は中期経営計画のKPIとしても設定しております。

 


 

また、主な取組みは以下のとおりです。

 

取組み

取組みの主旨・内容

採用

部門別採用

・新卒採用時から専門性の高い部門において採用

(ウェルス部門、グローバル・マーケット部門、

投資銀行部門、デジタル部門、IT部門、調査部門)

育成・研修

 

キャリア形成

ポジションチャレンジ(※)

・キャリア選択の機会を増やすため、関連会社を含め原則全部署のポジションを対象に公募を実施

・2023年度の制度導入時の対象である東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社の全部長のポジションから対象を拡大

若手育成プログラム

・新卒入社後2年間を研修期間として位置づけ、Off-JTとOJTを交えたプログラムにより顧客対応・業務スキル・各分野の専門スキルの習得機会を提供

管理職層に向けた育成支援

・マネジメントやコーチングをテーマに育成支援の研修機会を提供

国内外MBA・選抜研修

・国内外MBAへの派遣、リーダー育成研修等を実施

キャリアデザインプログラム

全社員対象に自らの意思でキャリア形成を目指す研修を提供

個別相談に応じる窓口を設置

リスキリング

現所属部署に在籍しながら、今後のキャリア形成に役立つ新たな知識・スキルを獲得するための研修「キャリア・プラスアップ制度」を提供

Humanity Enhancement Program

・会社が提供する機会以上に学びたいこと、業務以外のプライベートでも真剣に取組みたいことへの会社支援(プライベート支援、複業留学、社内インターン、社内副業、メンター・メンティ、チームセッション)を実施

 

 

 

取組み

取組みの主旨・内容

働き方

 

環境

出産・育児・介護に関する

両立支援制度

・法定以上の休業期間及び短時間勤務期間を可能とする制度、柔軟な働き方を可能にするテレワーク、フレックスタイム制度、ワークデイセレクトを提供

エンゲージメントサーベイ

ストレスチェック

・従業員の状況を把握することで、より効果的な環境整備の取組みを実現

組織体制

ハラスメント撲滅

風紀委員会・規律の文化推進協議会

・倫理観や規律に関する高い意識を持ち行動する企業風土の醸成を目指す組織体制を整備

・規律を逸する行為について、情報を収集し、十分な調査の下、組織として適切な解決を図り、原因を検証し再発防止を企図

健康経営推進協議会

・健康にかかる取組みや課題を協議

 

※ポジションチャレンジの前身である社内公募制度は、募集されているポジションに対して自ら手を挙げキャリアを選択できる制度。2006年から開始し、これまでに累計900名の応募があり、350名程度の異動を実現。なお、ポジションチャレンジ制度の応募者数は前年度の社内公募制度と比較し1.5倍程度。

 

人材育成方針

当社における人材育成方針は以下のとおりです。

金融機能の担い手として、お客様の資産形成や資本の充実に貢献し、日本経済の成長に寄与する人材の育成

常に自分のキャリアを模索し、自律的に学び続けることができる人材の育成

変化を恐れず、変化をチャンスと捉え、新たなことにチャレンジできる人材の育成

2022年度からスタートした中期経営計画『“Beyond Our Limits”~異次元への挑戦』期間中の人材育成方針として、“Social Value & Justice”comes firstを常に意識し、体現できる人材の育成を実行する

 

2025年度の重点育成施策については、以下のとおりです。

ⅰ 若手社員育成の推進

・新卒入社後2年間の研修でより高度な専門知識・スキルの習得を目指し、専門部署と連携したトレーニー研修の一層の拡充

リテール営業員向け2年次集合研修(資産形成支援部への集約)の継続実施

資産形成支援部の専任課長を始めとする管理職に対する育成スキル向上の支援

研修と実践の反復による知識・スキル習得度の熟練化

当社のことを知るとともに、当社でのキャリアパスと向き合うことができるプログラムの活用

 

ⅱ 現場でのキャリア支援の浸透、リスキリング教育の拡充

・キャリアプランシート作成による自身のキャリアデザインの明確化と、キャリアプランシートを活用した上司との1on1面談の実施

・キャリア・プラスアップ制度の継続実施による、社員のリスキリングに対する意識の醸成

 

ⅲ DX人材、専門人材のさらなる育成と確保

リーダー育成研修を公募と選抜の混合により実施

当社の目指すべきデジタル人材の育成に向け、全社員のITツールスキルのレベルアップに向けた施策の拡充

 

・「ChatGPT」の業務への活用を目指した「TTDXワーキンググループ」を組成し、「生成AI」を活用した「業務効率化」の可能性を検証

・AI基礎知識を有し、DX推進に適した人材の育成・確保

AI活用の情報収集、企画・立案及び社内浸透を目的とした、「AI戦略室」の新設

各部門、各分野の専門人材の育成

国内外MBA候補者の確保

 

当社の教育体系は以下のとおりです。

当社は就業している全期間において、教育プログラムを幅広く提供しております。

 


 

② 指標及び目標

当社では、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」及び上記において記載した社内環境整備方針及び人材育成方針に関する指標として、次の指標を用いております。当該指標における目標及び実績は次のとおりです。

 

<「従業員の状況」記載事項に対する目標>

当社と主要な事業を営む連結子会社である東海東京証券株式会社の2社の合算を開示対象といたします。

将来のありたい姿として、管理職に占める女性労働者の割合においては男女の社員比率と管理職比率が同率となることや、男女で同等の育児への関与ができるように男性が育児休業を取得すること、また、性別によらない公平な機会提供の実現によって労働者の男女の賃金の差異が縮小することを目指しております。

このありたい姿の実現に向けてまずは中期経営計画の最終年度に目標値を置き、取組みを進めてまいります。

 

指標

2022年度実績

(※)

2023年度実績

(※)

2024年度実績

(※)

2026年度目標

管理職に占める女性労働者の割合

16.8%

17.5%

19.1

21

男性労働者の育児休業取得率

34.0%

40.0%

32.4

男性の育児休業又は

育児関連休暇取得100

労働者の男女の賃金の差異
(正規雇用労働者)

72.9%

73.3%

74.5

77

 

※実績は、「従業員の状況」に記載した当社及び東海東京証券株式会社の2社を合算し算出しております。

 

 

項目

今後の取組みの方向性

管理職に占める

女性労働者の割合の向上

・女性本人及び男性社員の意識改革

・アンコンシャスバイアスの払しょく

・ライフイベントを考慮した女性の育成

・女性の育児休業からの早期復帰

及び時短勤務労働者のフルタイムへの移行促進

男性労働者の育児休業取得率の向上

・育児関連休暇制度の拡充

・育児休業取得の義務化

・祝福する雰囲気の醸成

・長期休暇取得を可能とする環境整備

労働者の男女の賃金の差異の縮小

・上記の取組みが男女の賃金の差異の縮小にもつながることを期待

 

 

 

<サステナビリティに記載の社内環境整備方針・人材育成方針にかかる目標>

当社では、従業員エンゲージメントと教育研修費をサステナビリティに関する目標として掲げております。

指標

2022年度実績

2023年度実績

2024年度実績

2026年度目標

従業員エンゲージメント

40.0%

41.0%

38.0

63.0

前年度の経常利益に占める
教育研修費の割合

4.5%

8.4%

3.4

3.0

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、現時点では確認できていないリスクや現在は重要でないと考えられるリスクも当社グループの経営成績及び財政状態等に重要な影響を与える可能性があります。また、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済情勢及び市場変動に伴うリスクについて

当社グループの主たる業務である金融商品取引業は、株価、金利及び為替市況等の変動並びに景気後退などの国内外の経済情勢の影響を受けやすく、投資需要の減少等による手数料収入の減少やトレーディング損益の変動等により、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、お客様の多様なニーズに応えるために大量の有価証券を保有しておりますが、市場の混乱等による急激な市況変動や金利変動等により金融資産の価値が変動した場合や、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされる場合には、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 法的規制に伴うリスクについて

当社グループの主たる事業である金融商品取引業は、その業務の種類に応じて法令・諸規則の規制を受けております。国内の金融商品取引業者は、金融商品取引法及び関連する政省令等により登録規制、顧客勧誘規制、顧客取引規制及び自己売買規制その他の金融商品取引業者としての行為について規制されており、万が一、抵触した場合には業務停止等の行政処分を受ける可能性があります。

また、東海東京証券株式会社を含む第一種金融商品取引業者は、これらの法令により所定の自己資本規制比率を維持することが求められており、万が一、定められた自己資本規制比率を下回った場合には業務停止等を命じられるなどにより、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 競争状況に伴うリスクについて

当社グループの主たる事業である金融商品取引業は、近年の大幅な規制の緩和等により、競争が激化する一方で、取扱商品の多様化が進んできております。このような状況のなかで、将来、より強力な競合先の出現等で従来と変わらぬ競争力を維持できない場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(4) 取引先又は発行体の信用力悪化に伴うリスクについて

当社グループは、自己の計算において金融資産を保有しているほか、取引先との提携・友好関係の維持・構築を目的とした株式等の保有やお客様の多様なニーズに応えるために大量の有価証券を保有しておりますが、取引先が決済を含む債務不履行に陥った場合、また、保有する有価証券の発行体が信用状況を著しく悪化させた場合には、元本の毀損による損失や利払いの遅延等により、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 資金調達環境の悪化に伴うリスクについて

当社グループの主たる業務である金融商品取引業は、その業務の性質上、大量の有価証券を保有するために多額の資金を必要とすることから、適切な流動性を確保し、財務の安全性を維持することが必要となります。しかしながら、市場環境の激変、クレジット・クランチ、銀行の貸出余力の低下、格付会社による当社及び東海東京証券株式会社の信用格付の低下、当社グループの業績に対する不透明感等が生じた場合は、必要資金の確保に際し、通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされること等により、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) システムリスクについて

当社グループの主たる事業である金融商品取引業にはコンピュータシステムは必要不可欠の設備であるため、業務上使用するコンピュータシステムや回線において、プログラム障害、外部からの不正アクセス、災害や停電等が原因となる障害が発生した場合、その規模によっては当社グループの業務に支障が生じるだけでなく、社会的信用の低下による取引の減少等により、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) オペレーショナルリスクについて

当社グループは、多様な業務を行うことに伴い、日々膨大な事務処理が発生しており、役職員が正確な事務処理を怠ること、及び事務管理上又は事務処理上のミス、事故又は不正等による損失の発生により、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、法令違反があった場合は、監督官庁から業務停止等の行政処分を課される可能性もあり、社会的信用が低下するなど、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 情報セキュリティーに係るリスクについて

当社グループは、多くのお客様等の個人情報、取引先等の重要な営業情報及び当社グループ自身の重要情報を保有しており、不正な手段や過失等によりお客様等の個人情報及び当社グループの営業情報等が流出した場合は、当社グループの業務に支障が生じるだけでなく、損害賠償の請求や社会的信用の低下により取引が減少するなど、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 災害等に関するリスクについて

当社グループの主たる子会社である東海東京証券株式会社の営業店舗網及び営業基盤は、東海地区及び関東地区を主力としており、これら地区の市民生活やインフラに重大な影響を及ぼす災害等が発生した場合、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、国内外の各地の活動拠点には多くの役職員が業務に従事しており、地震・台風等の大規模な自然災害の発生、これらの事象に伴う停電その他の障害の発生、又は病原性感染症の感染拡大等の場合は、当社グループの事業の縮小を余儀なくされるなど、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 訴訟に関するリスクについて

当社グループでは、国内外で日々様々な取引が成立しており、法令、商慣習、契約及び約款等に基づく相互の認識の違い等が生じた場合、取引先との間に損害賠償請求訴訟等が生じる可能性があり、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(11) 人材確保に係るリスクについて

当社グループは、金融商品取引業を中心に高度な専門性を必要とする業務を行っており、有能な人材の確保に努めております。しかしながら、優秀な人材確保への競争は激しく、必要な人材の確保が困難な場合には、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 海外事業に関するリスクについて

当社グループは、現地子会社の設置、海外の有力証券会社グループ等との提携等積極的に海外展開を図っております。展開にあたっては、弁護士等現地の専門家の助言を受けて進めておりますが、現地の法令、商慣習等に抵触した場合には、事業展開の中止、中断、縮小若しくは遅延又は社会的信用の低下等により、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 風評に関するリスクについて

当社グループは、お客様、取引先からの信用に大きく依存しております。そのため、憶測や必ずしも正確な事実に基づいていない風説・風評の流布に晒された場合は、その内容が正確でないにもかかわらず、当社グループの社会的信用が低下する風評被害の発生により、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) リスク管理方針や態勢に関するリスクについて

当社グループは、リスクカテゴリーごとに責任部署を定め、当社及び子会社全体のリスクを統合的に管理しておりますが、想定外の市場の変動、リスク管理用データの過誤・陳腐化、事業内容の変貌又は法令の改正等により、当社グループのリスク管理態勢が有効に機能しない可能性があり、それにより損失・損害等が生じる場合は、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 事業の拡大に伴うリスクについて

当社グループは、グループ顧客基盤拡大やDXによる事業基盤拡充を図る観点から買収や資本提携等により業容の拡大を図ってまいりました。買収や資本提携等を成功に導くには、事業の効率的な統合等が必要となります。買収・資本提携等をした事業が、当社の予想通りの収益を計上できない可能性もあります。当社グループが当初期待した成果が得られない場合、又は、想定しなかった重大な問題点が買収や資本提携等の後に発見された場合には、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(16) 気候変動等に関するリスクについて

当社グループは、気候変動への取組みが重要な経営課題であると認識しております。気候変動等に関するリスクは、企業の事業活動の観点から捉えると物理的リスクと移行リスクに分類されます。物理的リスクは、気候変動に起因するもので、当社グループの各事業拠点等の直接的な損傷や、バリューチェーンのステークホルダーが影響を受けたことによる間接的な損失等があります。移行リスクは、脱炭素社会への移行に伴う変化に起因するもので、法規制変化による税負担増加や座礁資産化といった財務的な影響や、対応の誤り・遅れから来るレピュテーションの低下等があります。これらの事態は、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー等の状況は、以下のとおりであります。

 

(1) 財政状態

(資産)

当連結会計年度末の総資産は90億69百万円増加(前連結会計年度末比、以下(1)において同じ。)し1兆4,094億29百万円となりました。このうち流動資産は、約定見返勘定が484億72百万円増加し733億49百万円、信用取引資産が217億円増加し1,088億77百万円となり、短期貸付金が200億95百万円増加し1,106億80百万円となる一方、有価証券担保貸付金が870億56百万円減少し4,196億49百万円となったことなどから、94億99百万円増加し1兆3,221億76百万円となりました。また、固定資産は、退職給付に係る資産が39億88百万円減少し73億9百万円となったことなどから、4億30百万円減少し872億52百万円となりました。

 

(負債)

当連結会計年度末の負債合計は71億75百万円増加し1兆2,146億円となりました。このうち流動負債は、トレーディング商品が266億99百万円減少し3,962億75百万円となり、預り金が101億98百万円減少し821億84百万円となる一方、有価証券担保借入金が342億41百万円増加し2,985億96百万円となったことなどから、175億92百万円減少し1兆411億28百万円となりました。また、固定負債は、長期借入金が263億円増加し1,533億円となったことなどから、固定負債合計は247億68百万円増加し1,726億88百万円となりました。

 

(純資産)

当連結会計年度末の利益剰余金は40億34百万円増加し1,203億5百万円となり、純資産合計は18億93百万円増加し1,948億28百万円となりました。

 

(2) 経営成績

(受入手数料)

 

連結会計年度

区分

株券
(百万円)

債券
(百万円)

受益証券
(百万円)

その他
(百万円)

合計
(百万円)

前連結会計年度
自 2023年4月1日
至 2024年3月31日

委託手数料

17,249

14

501

16

17,783

引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料

558

587

1,146

募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料

2

4

8,125

50

8,182

その他の受入手数料

704

15

5,983

8,422

15,126

合計

18,515

622

14,611

8,489

42,239

当連結会計年度
自 2024年4月1日
至 2025年3月31日

委託手数料

14,500

19

593

15,114

引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料

652

758

90

1,501

募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料

0

3

7,972

7,976

その他の受入手数料

796

24

7,312

8,452

16,586

合計

15,949

807

15,969

8,452

41,178

 

 

当連結会計年度の受入手数料の合計は2.5%減少(前連結会計年度増減率、以下(2)において同じ。)し411億78百万円を計上いたしました。

① 委託手数料

株式委託手数料は15.9%減少し145億円となり、委託手数料全体では15.0%減少し151億14百万円を計上いたしました。

② 引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料

株式は16.8%増加し6億52百万円を計上いたしました。また、債券は29.1%増加し7億58百万円の計上となり、引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料全体では31.0%増加し15億1百万円を計上いたしました。

 

③ 募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料

受益証券は、1.9%減少し79億72百万円の計上となり、募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料全体では2.5%減少し79億76百万円を計上いたしました。

④ その他の受入手数料

投資信託の代行手数料は22.2%増加し73億12百万円、保険手数料収入は16.3%増加し62億58百万円の計上となり、その他の受入手数料全体では9.7%増加し165億86百万円を計上いたしました。

 

(トレーディング損益)

 

区分

前連結会計年度
自 2023年4月1日
至 2024年3月31日

当連結会計年度
自 2024年4月1日
至 2025年3月31日

株券等トレーディング損益         (百万円)

25,497

21,729

債券・為替等トレーディング損益   (百万円)

14,941

15,175

合計

40,439

36,905

 

 

当連結会計年度の株券等トレーディング損益は14.8%減少し217億29百万円の利益の計上となり、債券・為替等トレーディング損益は1.6%増加し151億75百万円の利益を計上いたしました。この結果、トレーディング損益の合計は8.7%減少し369億5百万円の利益を計上いたしました。

 

(金融収支)

当連結会計年度の金融収益は26.4%増加し82億44百万円を計上いたしました。また、金融費用は25.4%増加し31億46百万円を計上し、差引の金融収支は27.0%増加し50億98百万円の利益を計上いたしました。

 

(販売費及び一般管理費)

当連結会計年度の取引関係費は8.2%増加し144億68百万円となりました。また、人件費は3.2%減少し328億55百万円、不動産関係費は0.6%減少し77億33百万円、事務費は2.0%減少し87億11百万円となりました。この結果、販売費及び一般管理費の合計は0.1%増加し714億42百万円を計上いたしました。

 

(営業外損益)

当連結会計年度の営業外収益は、投資事業組合運用益13億10百万円、受取配当金10億33百万円などを計上し、営業外収益の合計は6.3%増加し36億50百万円となりました。また、営業外費用は、投資事業組合運用損2億27百万円などを計上し、営業外費用の合計は21.5%減少し2億68百万円となりました。

 

(特別損益)

当連結会計年度の特別損益は、特別利益として27億63百万円を計上し、特別損失として8億37百万円を計上いたしました。

 

以上の結果、当連結会計年度の営業収益は3.2%減少し863億28百万円、純営業収益は4.0%減少し831億82百万円となり、営業利益は23.3%減少し117億39百万円、経常利益は17.8%減少し151億20百万円を計上し、法人税等を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は8.4%増加し110億48百万円を計上いたしました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは207億79百万円の収入となりました。これは税金等調整前当期純利益が170億47百万円の黒字となり、有価証券担保貸付金が870億56百万円減少し、有価証券担保借入金が342億41百万円増加し、それぞれ収入となる一方で、約定見返勘定が484億73百万円増加し、トレーディング商品(負債)が266億99百万円減少し、それぞれ支出となったことなどによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは243億61百万円の支出となりました。これは、短期貸付けによる支出488億32百万円、投資有価証券の取得による支出38億52百万円、短期貸付金の回収による収入287億1百万円、投資有価証券の売却による収入49億80百万円などによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローは176億62百万円の収入となりました。これは短期借入金の純増減額が△58億64百万円、長期借入れによる収入341億円、配当金の支払による支出70億6百万円などによるものです。

以上の結果、現金及び現金同等物は146億93百万円増加し、当連結会計年度末の残高は1,113億45百万円となりました。

 

(4) トレーディング業務の概要

① トレーディング商品

トレーディング商品の残高は次のとおりです。

 

区分

前連結会計年度
(2024年3月31日)

当連結会計年度
(2025年3月31日)

資産の部の
トレーディ
ング商品

商品有価証券等

(百万円)

319,327

328,641

 株式・ワラント

(百万円)

23,133

9,012

 債券

(百万円)

253,487

277,415

 受益証券等

(百万円)

42,705

42,213

デリバティブ取引

(百万円)

8,889

14,317

合計

(百万円)

328,216

342,958

負債の部の
トレーディ
ング商品

商品有価証券等

(百万円)

397,368

370,718

 株式・ワラント

(百万円)

9,727

25,938

 債券

(百万円)

387,569

344,659

 受益証券等

(百万円)

71

121

デリバティブ取引

(百万円)

25,605

25,556

合計

(百万円)

422,974

396,275

 

 

② トレーディング業務のリスク管理

トレーディング業務のリスク管理の状況については「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等」の注記事項(金融商品関係)に記載しております。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)のわが国経済は、生鮮食品を中心とするインフレの高止まりが消費マインドを下押しする一方、6月から行われた所得減税や、企業の前向きな賃上げなどが個人消費を下支えしました。また、インバウンドがコロナ前の2019年を上回り過去最高となったことで、宿泊・観光業界などに恩恵が広がりました。

海外においては、雇用や個人消費の底堅さを背景に米国経済が堅調を維持しました。一方、ユーロ圏は一時の低迷からは脱却したものの、低空飛行を継続しました。またアジアにおいては、減速気味だったインドが回復を見せたほか、中国経済は消費財の買い替え促進策や輸出の回復(「トランプ関税」前の駆け込み需要の可能性)などを背景に、持ち直す展開となりました。

日本株市場では、4月に40,600円台で始まった日経平均株価が、円安を背景に1989年12月以来の最高値を更新し7月には42,200円台まで上昇しました。しかし8月には、日銀のサプライズ利上げや円高を受けて、一時31,100円台まで急落、その後は米国株上昇に支えられて持ち直し、年内は39,000円前後で一進一退となりました。2025年になると、「トランプ関税」への警戒からリスクオフの流れが強まり、日経平均株価は35,600円台まで下落して3月の取引を終えました。なお、2024年4月~2025年3月の東証プライム市場の1日当たり平均売買代金は5兆631億円(前年同期の1日当たり平均売買代金は4兆3,804億円)となっています。

米国株市場では、4月に39,800ドル台で始まったダウ平均株価が、良好な景気や長期金利の低下等を背景に概ね上昇基調を維持しました。夏場に40,000ドル台に乗せたダウ平均株価は、9月の米利下げ開始や11月5日のトランプ氏の大統領再選を機にさらに上昇、12月はじめには一時45,000ドル台の過去最高値を付けました。しかしその後は「トランプ関税」を巡る不透明感から乱高下する展開となり、最終的には42,000ドル近辺まで下げて3月の取引を終えました。

日本の長期金利は4月に0.73%の期中最低金利で始まった後、1%水準まで上昇しましたが、日銀の追加利上げで株価が急落したため、8月には0.74%まで低下しました。その後は米長期金利の上昇や日銀の追加利上げ観測を背景に反発基調が続き、3月には1.59%をつけ、最終的に1.49%で3月の取引を終えました。

米長期金利は4月に4.19%で始まった後、4.73%まで上昇しましたが、利下げ期待の高まりなどから低下基調を継続、9月には期中最低となる3.59%を付けました。9月のFOMCでは0.5%の利下げが行われましたが、パウエルFRB議長がタカ派姿勢を示したことやトランプラリーで株価が上昇する中、1月には期中最高となる4.80%をつけました。しかし、「トランプ関税」への懸念によるリスクセンチメント悪化で、3月には4.10%まで低下し、4.20%で3月の取引を終えました。

ドル円は4月に1ドル151円台で始まると上昇が続き、7月には期中最高値となる161円台をつけました。その後、政府・日銀の大規模な円買い介入や日銀の追加利上げ、FRBの大幅利下げ観測から9月には期中最低となる139円台まで下落しました。しかし、9月のFOMC後にドルの買戻しが強まったことや日銀の追加利上げ観測の後退によりドル円はその後反発に転じ、1月には158円台まで反発しました。しかし、「トランプ関税」への懸念が広がるとドル安円高が進み、149円台で3月の取引を終えました。

 

(2) 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの主たる業務である金融商品取引業は、その業務の性質上、自己の計算により株式及び債券等の有価証券を保有するのに多額の資金を必要とするため、十分かつ安定的な流動性を確保しております。

主な資金調達手段としては現先取引等の有担保調達、市中銀行等の金融機関借入、MTN及び短期社債の発行、コールマネー等の方法があり、資金繰り状況に応じた適切な組合せにより資金調達を行っております。

なお、東海東京証券株式会社においては、有事の際の資金調達手段として市中銀行と総額430億円のコミットメントライン契約を確保しております。また、リスク管理では関連規程に基づいて日次、週次、月次で資金繰り管理を行っている他、コンティンジェンシー・プランについても4段階の想定シナリオに基づいたリスク管理を実施しております。

 

(3) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、経営者は会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や状況に応じ合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針及び見積りが連結財務諸表に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

① 金融商品の評価

当社グループは、トレーディング商品に属する商品有価証券等及びデリバティブ取引については、時価をもって連結貸借対照表価額とし、評価損益はトレーディング損益として計上しております。商品有価証券等及びデリバティブ取引については、取引所等の市場価格により時価を算定しております。ただし、市場価格がない商品有価証券等及びデリバティブ取引については、主に金利、配当利回り、原証券価格、ボラティリティ等を基に将来のキャッシュ・フローの現在価値を見積もることにより時価を算定しており、異なる前提条件等を採用した場合には当該時価が変動する可能性があります。

 

② 投資有価証券の減損

当社グループは、長期的な取引関係維持のため、特定の取引先の株式を所有しております。当社グループは投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、「金融商品に関する会計基準」に基づき減損処理を行っております。市場価格のある株式については、株式の時価が一定期間継続して取得原価を30%以上下回り続けたとき等、下落が一時的ではないと判断します。市場価格のない株式については、1株当たり純資産額が取得原価の50%以下となった場合等、実質価額が著しく下落し回復可能性がないと判断した場合に減損処理を行います。

また、連結貸借対照表には、持分法適用関連会社に関するのれんが含まれております。当該のれんについても減損損失の計上の必要性を検討する必要があり、投資時に予想した収益性が低下した結果、投資額の回収が見込めないと判断した場合に減損損失の計上を行います。

将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が生じた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

 

③ 固定資産の減損

収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産については、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように、減損損失の計上を行っております。資産又は資産グループの回収可能価額は、時価から処分費用見込額を控除した正味売却価額と割引後将来キャッシュ・フローとして算定される使用価値のいずれか高い金額であることから、固定資産の減損損失の金額は合理的な仮定及び予測に基づく将来キャッシュ・フローの見積りに依存しております。従って、事業計画や経営環境等の前提条件が変化した場合、固定資産の使用方法を変更した場合、不動産取引相場等が変動した場合及びのれんが認識された取引において取得した事業の状況に変動が生じた場合には、新たに減損損失が発生する可能性があります。

 

④ 退職給付費用及び債務

従業員(執行役員を除く。)に係る退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には割引率、退職率、昇給率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の期待収益率等が含まれております。当社グループの退職年金制度においては、割引率は期末における安全性の高い長期の債券の利回りにより、退職率は直近3年間の実績に基づいております。退職給付債務の算定にあたっては、退職給付見込額の期間帰属方法を給付算定式基準とし、割引率の設定はイールドカーブ等価アプローチによる方法により算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合又は前提条件が変更された場合には、将来の退職給付費用及び退職給付債務が変動する可能性があります。

 

⑤ 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について回収可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性を評価するにあたっては、将来の課税所得の発生及び税務計画を検討いたします。当社グループの主たる事業である金融商品取引業は、業績変動の幅が大きく、長期にわたる課税所得の発生を予測することが困難でありますが、策定した経営計画の期間以内の一定期間を、将来の課税所得の見積り期間としておりますので、翌事業年度以降の課税所得の発生見積りによって、評価性引当額が増減し、繰延税金資産の調整額が発生する可能性があります。

 

5 【重要な契約等】

(1) 金銭消費貸借契約

借入人

当社

契約締結日

2024年6月26日

相手方の属性

都市銀行、地方銀行等

期末残高

18,700百万円

借入期間

2024年6月28日 ~ 2029年6月29日

担保の有無及び内容

特約の内容

2025年3月期決算以降、各年度の決算期の末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額を2024年3月決算期末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額の75%及び直前の決算期末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額の75%のいずれか高い方の金額以上に維持すること。

2024年9月末日に終了する中間期の末日及び2025年3月末日に終了する決算期の末日における自己資本規制比率(金融商品取引法第46条の6で定義された意味を有する。)がそれぞれ200%以上であること。

 

なお、2024年4月1日前に締結された金銭消費貸借契約については、「企業内容の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。

 

 

(2) リボルビング・クレジット・ファシリティ契約

リボルビング・クレジット・ファシリティ契約①

借入人

東海東京証券株式会社

愛知県名古屋市中村区名駅四丁目7番1号

代表取締役社長 北川尚子

契約締結日

2024年6月14日

相手方の属性

都市銀行、地方銀行等

極度額

10,000百万円

コミットメント期間

2024年6月14日 ~ 2025年6月13日

担保の有無及び内容

特約の内容

2024年9月末日に終了する中間期の末日における東海東京証券株式会社の単体の貸借対照表における純資産の部の金額が、2024年3月末日に終了する決算期の末日における単体の貸借対照表における純資産の部の金額の75%以上の金額であること。

2025年3月末日に終了する決算期の末日における単体の貸借対照表における純資産の部の金額が、2024年3月末日に終了する決算期の末日における単体の貸借対照表における純資産の金額又は2024年9月末日に終了する中間期の末日における単体の貸借対照表の純資産の部の金額いずれか大きい方の75%の金額以上であること。

2024年9月末日に終了する中間期の末日及び2025年3月末日に終了する決算期の末日における自己資本規制比率(金融商品取引法第46条の6で定義された意味を有する。)がそれぞれ200%以上であること。

 

 

リボルビング・クレジット・ファシリティ契約②

借入人

東海東京証券株式会社

愛知県名古屋市中村区名駅四丁目7番1号

代表取締役社長 北川尚子

契約締結日

2025年3月26日

相手方の属性

都市銀行

極度額

35,000百万円

コミットメント期間

2025年3月31日 ~ 2026年3月31日

担保の有無及び内容

国債、一般債、外債

特約の内容

単体の貸借対照表における純資産の部の金額が、前年同月に終了する決算期の末日における東海東京証券株式会社の単体の貸借対照表における純資産の部の金額の75%の金額以上であること。

 

 

(3) コミットメントライン契約

コミットメントライン契約①

借入人

東海東京証券株式会社

愛知県名古屋市中村区名駅四丁目7番1号

代表取締役社長 北川尚子

契約締結日

2024年7月29日

相手方の属性

都市銀行

極度額

3,000百万円

コミットメント期間

2024年8月1日 ~ 2025年7月31日

担保の有無及び内容

特約の内容

東海東京証券株式会社の単体決算において、半期毎決算期末における純資産の部の金額が、2024年3月期末における単体決算の純資産の部の金額の75%相当額を下回らないこと。

半期毎決算期末における自己資本規制比率が、200%を下回らないこと。

 

 

 

コミットメントライン契約②

借入人

東海東京証券株式会社

愛知県名古屋市中村区名駅四丁目7番1号

代表取締役社長 北川尚子

契約締結日

2024年9月30日

相手方の属性

地方銀行

極度額

17,000百万円

コミットメント期間

2024年9月30日 ~ 2025年9月29日

担保の有無及び内容

特約の内容

東海東京証券株式会社の単体の貸借対照表における純資産の部の金額を2024年3月期末の金額の75%以上に維持すること。

単体の自己資本規制比率を200%以上に維持すること。

 

 

コミットメントライン契約③

借入人

東海東京証券株式会社

愛知県名古屋市中村区名駅四丁目7番1号

代表取締役社長 北川尚子

契約締結日

2024年10月25日

相手方の属性

都市銀行

極度額

3,000百万円

コミットメント期間

2024年10月25日 ~ 2025年10月24日

担保の有無及び内容

特約の内容

各年度の決算期及び中間決算期の末日における単体の貸借対照表における純資産の部の金額を822億円以上に維持すること。

各年度の決算期及び中間決算期の末日における単体の自己資本規制比率を200%以上に維持すること。

 

 

コミットメントライン契約④

借入人

東海東京証券株式会社

愛知県名古屋市中村区名駅四丁目7番1号

代表取締役社長 北川尚子

契約締結日

2024年12月30日

相手方の属性

信託銀行、地方銀行等

極度額

10,000百万円

コミットメント期間

2024年12月30日 ~ 2025年12月30日

担保の有無及び内容

特約の内容

東海東京証券株式会社は、2025年3月決算期の末日における単体の貸借対照表に記載される純資産の部の金額を、2024年9月中間期の末日における単体の貸借対照表に記載される純資産の部の金額の75 %以上に維持すること。

2025年9月中間期の末日における単体の貸借対照表に記載される純資産の部の金額を、2024 年9月中間期の末日又は2025年3月決算期の末日における単体の貸借対照表に記載される純資産の部の金額のいずれか大きい方の金額の75 %以上に維持すること。

 

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。