第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社及びグループ会社(以下「当社グループ」という。)の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度(以下第2 事業の状況において「当期」という。)末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営の基本方針

当社グループは、創立以来、「信は萬事の基と為す」を経営の基本理念として、信頼を原点としたFace to Face(お客さまとの対面での直接対話型)のビジネスモデルと健全経営による安定的成長確保を経営の基本方針としております。

この基本方針を堅持しながら、市場環境や規制環境の変化にも柔軟に対応し、持続的な成長を可能とする収益基盤を構築していくことが、当社グループの対処すべき課題と認識しております。

こうした課題認識の下、中期事業計画(2024年度~2026年度)を着実に実行することで、企業価値・株主価値の最大化を図ってまいります。また、当社グループの事業活動を通じて、お客さまを含め国民全体の資産形成に資することで社会全体に付加価値をもたらし、ひいては、国民経済全体の発展に貢献することを念頭に置きながら、持続可能な事業を展開してまいります。

 

 

(2)中長期の基本戦略

当社グループは、経営の基本理念に則り、独自のビジネスモデルを堅持し持続的な成長を目指してまいります。そのため、当社グループは、以下に掲げるサステナビリティ基本方針に基づき、全てのステークホルダーをこれまで以上に意識しつつ、当社グループの企業価値の向上及び金融・資本市場を通した持続可能性への貢献を行ってまいります。

また、東京証券取引所プライム市場上場企業として、企業価値の向上に向けた資本コストや株価を意識した経営及び株主との対話の推進に取り組むとともに、より高い水準のコーポレート・ガバナンス体制の構築に努めてまいります。

 

 (サステナビリティ基本方針)

当社グループは、企業理念に基づき、金融商品取引業者としての事業を通して、サステナビリティ(持続可能性)の向上に取り組んでまいります。

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(3)経営環境及び中期事業計画、対処すべき課題

① 経営環境

諸外国における経済・金利の動向や地政学的なリスクなど、わが国経済や金融市場は引き続き不確実な動きを示すことが予想され、当社事業の持続的成長の脅威となる要因は多く存在すると考えております。

わが国では、政府の資産運用立国実現プランの下、NISAの抜本的拡充・恒久化、金融経済教育の充実等の様々な施策が実施されており、国民の安定的な資産形成へのニーズが高まっております。こうした環境において、富裕層向けの金融サービスをその事業の柱としてきた当社グループは、そのビジネスの独自性を更に追求することで、その存在意義が高まり、厳しい競争環境下においても、持続可能な成長が可能であると考えております。

 

② 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

イ.顧客基盤・預り資産の拡大

当社グループは、国内外の証券市場で売買される金融商品の販売をその事業基盤としており、その顧客基盤や預り資産についても、市場環境によって大きく左右されると考えております。当期においては、投資信託の販売が好調に推移したことから、預り資産1,000万円以上の顧客口座数、預り資産ともに増加いたしました。顧客基盤や預り資産について、単にその水準をもって経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標とすることは困難でありますが、それらを当社グループの収益基盤の大きな柱として認識しつつ、加えて、お客さまの属性や投資行動等を詳細に分析し活用する方法を更に検討してまいります。

 

ロ.顧客満足度の向上

当社グループの持続的な成長のためには、提供する商品やサービスに対するお客さまの評価や満足度の向上が不可欠であります。お客さまの満足度を測る指標は、お客さまの投資パフォーマンスの向上、提供されるコンサルティングサービスの評価など、様々であり、当社ではお客さまの満足度を評価する指標として、「既存のお客さまによる新規顧客のご紹介」に関するものをこれまでも採用してまいりました。

新規に口座開設をしていただいたお客さまのうち、口座開設の契機が既存のお客さまによるご紹介の比率は高水準(当期実績 68.3%)を保っております。また、お客さまロイヤルティ調査において、当社は対面証券会社平均と比べてロイヤルティ指標が高いとの結果が出ており、これは当社のFace to Faceのビジネスモデルがお客さまから評価されているものと考えております。このトレンドを今後も維持できるよう定期的にお客さまロイヤルティ調査を行い、当社の取組み成果を確認することにより、更なるお客さまの満足度の向上に努めてまいります。

 

ハ.収益性

当社グループの収益性を評価する指標として考えられるものは、以下のとおりであります。

a. 資本コストと資本利益率

当社グループは、Face to Face (お客さまとの対面での直接対話型)のビジネスモデルを堅持しながらお客さま向けビジネスの拡大に努めるとともに、健全な財務基盤のもと自己資本による積極的な投資も行うことで、持続的な成長を図ることを目指しております。このような収益構造の独自性に鑑み、当社グループはROE(自己資本利益率)を重要な経営指標と位置付けております。資本コストを上回るROEを実現するため、収益力向上に取り組んでまいります。当期の実績につきましては、資本コスト8.6%に対し、ROEは8.4%となりました。

 

b. 各収益源の利益への貢献度合(安定性)

当社グループの収益構造は、お客さま向けビジネスによる収益と自己資本による投資から得られる収益から成り立っております。市場環境に大きく影響を受けない安定した収益構造を確保するために、収益構造の多様化を図ってまいります。その成果を判断する指標としては、手数料収入、トレーディング収益、金融収支、営業外収益、特別利益等のキャッシュ・フローが全体収益にバランスよく貢献していることを検証することとしております。なお、当期においては、投資信託の販売が好調に推移したことから受入手数料が増加したことに加え、投資有価証券の売却による特別利益も増加しております。

 

 

③ 中期事業計画、対処すべき課題

当社グループを取り巻く内外の環境の変化を踏まえ、中期事業計画(2024年度~2026年度)の見直しを行い、「収益基盤の拡大」、「人的資本の充実」、「コンプライアンスの徹底」を対処すべき課題に設定しました。中期事業計画を着実に実行しながら、ROE8%の達成を目標として、当社グループ独自のビジネスモデルを強化し、収益力の向上に取り組んでまいります。

 

イ.収益基盤の拡大

当社グループは、国内外の証券市場で売買される金融商品の販売をその事業基盤としており、その顧客基盤や預り資産こそが、当社グループの収益基盤の大きな柱であると認識しております。

そのため、当社グループは、他の中堅証券会社との差別化を図るため、お客さまとの直接対話を行う対面による営業スタイルは堅持しつつ、他社では提供できない多様な商品を取りそろえ、マーケットの変化を捉えた機動的な運用提案を行ってまいります。また、全国ベースでの営業活動の展開も行うことで、新たな顧客層を開拓し、預り資産の拡大を目指してまいります。これらに加え、お客さまへの分かり易く、親切、丁寧な対応を更に充実させるために、営業活動をサポートするツールの導入等も引き続き行うとともに、お客さまへのアフターフォローの強化を図ってまいります。こうした取組みを行うことで、お客さまの満足度を高め、信頼を獲得し、更なる預り資産の拡大を目指してまいります。

また、株主資本の効率的な運用という観点から、当社グループを取り巻く環境の変化を的確に捉えながら、適切なリスク管理の下、有望な投資対象への投資を推進することで、お客さま向けビジネスによる収益以外の収益拡大にも取り組んでまいります。

 

ロ.人的資本の充実

当社グループの企業価値を他社と差別化している要因は、「お客さまからの信頼」というブランドと「特色ある旬の商品の提供」というノウハウであると考えております。これらを活用して、今後の環境変化に柔軟に対応し、収益力の向上を図るためには、人的資本の充実が最も重要であると考えております。

当社グループはこうした考えの下、人材育成プランを策定し、独自の金融サービスを提供するために不可欠な高度な能力を備えた中核人材を育成してまいります。

また、社員のモチベーション向上につながる社内体制の整備等を実施し、社員全員が高いパフォーマンスを発揮できる環境を整備してまいります。更に、時代や環境変化に合わせて当社グループが持続的な成長・発展ができるよう、中長期的に必要な人材を適切に確保・育成していくための取組みを推進してまいります。

 

ハ.コンプライアンスの徹底

当社グループは、経営の基本理念に則り、お客さまと「誠実・公正」に向き合い、金融サービスを提供することが、お客さまの満足度を高め、当社の収益力の向上に寄与すると考えております。

そのため、「お客さま本位の業務運営に関する方針」に基づき、「誠実・公正」な業務運営の徹底を図るために、当社グループは、役職員における法令諸規則の遵守の徹底を図り、役職員全員が高い倫理観に基づいて業務を遂行できるような環境整備も継続的に実施し、お客さま本位のコンプライアンスを重視したFace to Faceのビジネスモデルの更なる推進を図ってまいります。

 

 

 

  <中期事業計画の概要>

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ課題全般

サステナビリティ課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識しております。そのため当社グループは、サステナビリティ基本方針に基づき、企業価値の向上及び金融・資本市場を通した持続可能性への貢献を行ってまいります。

 

① ガバナンス

当社グループは、経営の基本理念に則り、独自のビジネスモデルを通して持続的な成長を目指してまいります。そうした中、当社グループにとって重要と考えられるサステナビリティ課題について、取締役会等で継続的に議論を行い、そのうえで基本方針や推進体制等を整備するなどのガバナンス体制の構築を行っております。また、サステナビリティ課題(TCFDへの対応を含む)への取組みの進捗状況については取締役会に定期的に報告することとなっております。

 

② 戦略

当社グループは、独自のビジネスモデルを堅持し持続的な成長を目指すため、サステナビリティ重要課題を設定しております。同重要課題への取組み内容(戦略)は以下のとおりとなっております。

 

(サステナビリティ重要課題)

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(サステナビリティ重要課題への取組み)

 

重要課題

取組み内容

ビジネス戦略

独自のビジネスモデルの追求

・Face to Faceのビジネスモデルの堅持

・ビジネスモデルの根幹である人的資本への投資

・持続的な発展の基となる健全な財務基盤の構築

人生100年時代を見据えたサービスの拡充

・高齢化の進展に対応した顧客サービスの拡充

・様々な年齢層に適合した商品提供

DXの活用による営業活動の強化

・デジタルツール活用による営業員へのサポート

・デジタルサービスの提供によるお客さまの利便性向上

引受業務を通じた新興企業への支援

・お客さま等のリスクマネーを、新しい技術やサービスを持つ新興企業に提供

事業基盤

ガバナンス・コンプライアンスの強化

・コンプライアンスの徹底

・コーポレート・ガバナンス体制の整備

リスク管理体制の強化

・リスク管理委員会における各種リスク(市場リスク、

 信用リスク、人事労務リスク等)の管理

持続可能な地球環境への対応

・ESG要素を踏まえた自己投資

・TCFD提言に基づく情報開示

金融リテラシーの向上

・正確な金融知識の普及により、リターン・リスクを十分

 理解したうえで投資判断ができる投資家の育成

人材の育成・多様化

・人材育成プランに基づくスキルアップ研修等の実施

・働き方改革

地域社会への貢献

・芸術活動への協賛

・寄付を通した社会への貢献

 

 

③ リスク管理

当社グループの事業リスクの網羅的な把握、その評価・分析及び対策について協議し、今後の方向性を定めることその他のリスク管理のために必要となる事項を取り扱うため、リスク管理委員会を設置しております。委員会においては、全社的なリスク管理の一環としてサステナビリティ関連のリスクを取り扱うこととしております。また、委員会における審議内容は、代表取締役社長及び取締役会に報告することとなっております。

 

 

 

④ 指標及び目標

上記「②戦略」において記載した、当社グループのサステナビリティ重要課題への対応状況を示す指標及び目標は下記のとおりとなっております。

 

重要課題

目標

指標及び2024年度実績

ビジネス戦略

独自のビジネス

モデルの追求

・他の中堅証券会社との差別化を図るため、お客さまとの直接対話を行う対面による営業スタイルを堅持いたします。その営業スタイルの質的な向上を図り、当社グループの提供する商品やサービスを求める新しい顧客層を開拓するとともに、全体的な預り資産の増加を図り、顧客基盤の拡大に努めてまいります。

・役職員がその業務を遂行するうえで必要とされる様々な技能や資格の取得を支援し、お客さまの期待に応えられるような人材の育成や拡大を図ってまいります。

・自己資本を充実させることにより強固な財務基盤を構築するとともに、自己資本を効率的に運用することで収益性を高め、企業価値の向上を目指してまいります。

・紹介による新規開拓口座割合    68.3%

・株主資本コスト          8.6%

・ROE              8.4%

・営業員のFP取得率        98.9%

・テクニカルアナリスト取得数     72名

・通信教育提供数          70講座

・自己資本比率           65.7%

人生100年時代

を見据えた

サービスの拡充

・資産寿命を延伸させるための安定的な資産運用や資産相続アドバイスなど、総合的なコンサルティングサービスに対するニーズに応えることによって新たな顧客層の取り込みを図ってまいります。

高齢者のライフスタイルに適した商品の提供

・毎月分配型投資信託の販売額  約340億円

 (投資信託販売額の全体(約463億円)の約74%)

DXの活用による

営業活動の強化

・他の中堅証券会社との差別化を図るためのビジネスモデルの根幹は、特色ある旬の商品やサービスをFace to Faceでお客さまにいかに提供できるかというところにあります。その観点から、営業活動を高度化させるデジタルツールを活用してまいります。

・導入済みのデジタルツール(STARモバイル、LINE WORKS等)の更なる活用を支援するために営業員向けの説明会を実施し、営業活動のサポート体制を強化。

 

引受業務を通じた新興企業への支援

・引受幹事証券会社として、新技術、新サービスを提供する企業に必要なアドバイスや情報提供を行うとともに、上場時の株主づくりに貢献してまいります。

・IPO引受件数           30件

・IPO関与率           36.1%

  (全IPO件数 83件。東京プロ市場、REITを除く)

事業基盤

ガバナンス・

コンプライアンスの強化

・「お客さま本位の業務運営に関する方針」を徹底し、役職員全員がより高い倫理観に基づいて業務を遂行するとともに、コンプライアンス体制の更なる強化を図ってまいります。

・コンプライアンス・チェックを営業店で実施

・全役職員を対象にマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策研修(コンプライアンス研修)を実施

・「アテンション制度運用細則」の新設及び運用の開始。

リスク管理体制

の強化

・管理すべきリスクが多様化する現状に鑑み、新たに認識されたリスクや今後発生すると予想されるリスクを的確に把握し、それに対する対応策などを早期に策定するなど、リスク管理の更なる強化を図ってまいります。

・リスク管理委員会を4回開催。重点リスクのモニタリングやリスク管理に係る諸課題を協議

 

持続可能な

地球環境への対応

・中長期の観点から、お客さまのESG投資に係るニーズの把握やそれに適う金融商品の提供等の検討を行ってまいります。また、自己投資の分野においては、脱炭素社会に向けて推進される代替エネルギーの開発など有望分野への投資について引き続き取り組んでまいります。

・CO2排出量           246t-CO2

・ESG債・ヘルスボンド・グリーン

 ボンドの販売額      約46億9,000万円

金融リテラシー

の向上

・金融リテラシーの向上のための施策を行い、お客さまに販売する金融商品について、内在するリスク・リターンの関係をより分かりやすく説明してまいります。

・2024年度におきましては、投資セミナーへの協賛等はありませんでしたが、引き続き金融リテラシーの向上に努めてまいります。

人材の育成・

多様化

・人材の育成、多様化を図るため、当社グループは人的資本への投資を積極的に行ってまいります。とりわけ、人材育成プランに基づく研修プログラム(マネジメント研修、ビジネススキル研修等)の充実、社員のモチベーション向上につながる社内体制の整備を行うことで、社員全員が高いパフォーマンスを発揮できる環境を整備してまいります。

・適材適所の人員配置や差別のない人材登用等、あらゆる面で役職員が働きやすい職場環境を整備してまいります。

・人的資本への投資額     約4,700万円

 (主な内訳)

 ・社員のモチベーション向上策 約3,240万円

 ・マネジメント研修       約210万円

 ・営業スキル研修        約190万円

 ・ビジネススキル研修      約180万円

 ・ハラスメント研修       約 60万円

 ・AFP養成講座        約 50万円

※上記以外の指標については後述の「(2)人的資本」の項目を参照

地域社会への貢献

・自ら提供する金融サービスを通じて国民の資産形成や金融リテラシー向上に貢献することや、質の高い教育や研究を支援する目的で、学術活動及び金融・経済等に係る教育分野への寄付を行ってまいります。

・分野別の寄付件数・金額等

   ・教育機関への寄付金額      1,240万円

   ・芸術活動への協賛金額        300万円

・こども・若者の貧困問題に関する全国銀行協会・日本証券業協会連携施策(物資支援プロジェクト)に参加

・日本証券業協会主催の「こどものみらい古本募金」への参加

・一般社団法人日本橋兜らいぶ推進協議会への参加

 

 

(2)人的資本

① 戦略

当社グループの企業価値を他社と差別化している要因は、「お客さまからの信頼」というブランドと「特色ある旬の商品の提供」というノウハウであると考えております。これらを活用して、今後の環境変化に柔軟に対応し、収益力の向上を図るためには、人的資本の充実が最も重要であると考えております。

当社グループはこうした考えのもと、人材育成プランを策定し、独自の金融サービスを提供するために不可欠な高度な能力を備えた中核人材を育成してまいります。

また、社員のモチベーション向上につながる社内体制の整備等を実施し、社員全員が高いパフォーマンスを発揮できる環境を整備してまいります。更に、時代や環境変化に合わせて当社グループが持続的な成長・発展ができるよう、中長期的に必要な人材を適切に確保・育成していくための取組みを推進してまいります。

こうした取組みの推進により、人材育成や社内環境整備等について進捗が見られますことから、これらの取組みを継続し、更なる人的資本の充実を図ってまいります。

 

② 指標及び目標

 

指標

目標

2024年度実績

人材獲得・育成

営業員のFP取得率

100

98.9

中途採用者管理職比率

50

49.6

多様性の拡大

女性管理職比率

25

24.8

男性の育児休業取得率

100

88.8

職場環境の整備

ストレスチェックスコア

(パフォーマンス評価)

100

94.0

月平均所定外労働時間

30時間以下

21.7時間

有給休暇取得率

70以上

53.0

(注)男性の育児休業取得率について、育児休業未取得の対象者が2025年4月に取得済みのため、有価証券報告書提出日現在において100%を達成しております。

 

(3)TCFDへの対応

 

① ガバナンス

上記「(1)サステナビリティ課題全般 ①ガバナンス」の項目に記載のとおり、当社グループは、TCFDへの対応も含むガバナンス体制の構築を行っております。

 

② 戦略

当社グループは、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照のうえ、2℃シナリオ及び4℃シナリオが実現した場合の2つの社会を想定いたしました。

 

2℃シナリオ

新たな政策・制度を導入し、2100年時の気温上昇が産業革命前に比べて2℃未満に抑制されるシナリオ

4℃シナリオ

新たな政策・制度が導入されず、2100年時の気温上昇が産業革命前に比べて4℃以上となるシナリオ

 

その想定のもと、気候変動が当社グループの事業活動に与えるリスク及び機会を以下のとおり抽出し、対応を開始しております。

 

<リスク>

種類

気候関連

のリスク

当社グループにとってのリスク

ビジネス・戦略・財務等への影響

2℃シナリオ

4℃シナリオ

移行リスク

政策・法規制

リスク

・環境基準を満たす機器への入れ替え義務化によるコスト増

・環境関連の情報開示義務が拡大することにより、対応コストが増加

技術リスク

 

 

市場リスク

・グリーン投資を志向する顧客ニーズの変化への対応の遅れにより、当社の市場競争力(商品・サービス)の低下や収益機会を逸してしまうこと

・顧客ニーズの変化に伴う新たな営業手法・サービスの導入が必要となった際のコスト増

・気候変動への取組内容・開示情報の不足により、当社のESG格付が下落し、ESGインデックスからの除外やウェイトの縮小となり、機関投資家が当社株の保有を削減し、株価が下落

・電気やガソリン等のエネルギー価格上昇による事業コストの増加

評判リスク

・ESG商品の品揃え不足による顧客離れ

・再生可能エネルギーへの切替等を行わないことによる当社のイメージダウン(例:ガソリン車の利用、省エネ機器の不使用)

・ESG格付低下による当社株価の下落

物理的リスク

急性リスク

・台風や大雨による当社社員の被災、本社ビル等の損壊

慢性リスク

・気温上昇による屋外での活動の制限(例:熱中症の危険性増大・海面上昇による道路浸水)

・業務における使用電力の増加(例:気温上昇による冷房器具の使用増)

 

 

 

<機会>

気候関連の機会

当社グループにとっての機会

ビジネス・戦略・財務等への影響

2℃シナリオ

4℃シナリオ

資源効率

・事業コスト全般の削減

エネルギー源

・事業コスト全般の削減

製品とサービス

・顧客ニーズの変化を捉えた新規商品の提供(例:新興国の発行体や新興国通貨建のグリーンボンド、天候デリバティブを組み込んだ個人向けの社債・投資信託)

・顧客ニーズの変化に伴う新たな営業手法・サービスの導入(例:新規顧客へのコンタクトや情報提供のデジタル化による収益機会の獲得)

市場

・グリーンボンドの引受・売出を行うことによる新たな収益源の確保

・環境関連のベンチャー企業や脱炭素社会に向けての有望分野への自己投資による当社の収益増

レジリエンス

・再エネプログラム、省エネ対策の推進による取引先からの信頼性向上

その他

・気候変動への取組内容・開示情報の充実により、当社のESG格付が上昇し、ESGインデックスへの組入やウェイトの増加により、機関投資家が当社株の保有を増加させ、株価が上昇

 

<対応>

項目

対応策

環境基準への対応

・社用車(リース含む)の電気自動車への転換や電力の再生可能エネルギー等への切替を検討

環境関連開示の義務拡大

・環境関連開示に適切に対応し、その他の非財務情報の開示も充実を図ることで、当社のESG評価を向上させる

顧客ニーズの変化

・外資系金融機関と連携し、当社が得意としてきた他社とは差別化された商品(グリーンボンド等のESG関連商品)の発掘(開発)を行う

新たな成長分野への投資

・環境関連のベンチャー企業や脱炭素社会に向けての有望分野への自己投資

平均気温の上昇やゲリラ豪雨の増加、異常気象の激甚化

・Face to Faceの営業が円滑に継続できるような体制を整備(WEBによるリモート面談やリモートワークを可能とするツール導入等のデジタル化)

・新規顧客へのコンタクトや情報提供のデジタル化による新たな収益機会の獲得

 

 

③ リスク管理

上記「(1)サステナビリティ課題全般 ③リスク管理」の項目に記載のとおり、当社グループは、リスク管理委員会において、全社的な事業リスク管理の一つとして気候関連リスクの管理を行っており、委員会における審議内容は、代表取締役社長及び取締役会に報告することとなっております。

 

④ 指標及び目標

温室効果ガス排出量実績と2030年度削減目標

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3【事業等のリスク】

当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重大な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重大であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に記載しております。

当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合への対応を図るため、全社的なリスク管理体制を整備しております。また、当社グループの事業リスクの網羅的な把握、その評価・分析及び対策について協議し、今後の方向性を定めることその他のリスク管理のために必要となる事項を取り扱うため、リスク管理委員会を設置しております。なお、委員会における審議内容は、代表取締役社長及び取締役会に報告することとなっております。

 

本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当期末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)一般的なリスク

① 事業会社としてのリスク

イ.単一事業を営んでいることのリスク

当社グループは、単一領域(金融商品取引業)で事業を行っているため、その業績は金融資本市場の変貌や環境変化によって多大な影響を受けることとなります。金融資本市場の縮小等によって、当社グループの収益が縮小した場合、それを補完する他の事業を行っていないことから、経営成績や財政状態が急激に悪化する可能性があります。

ロ.テクノロジーを活用しないことのリスク

当社グループは、Face to Faceのビジネスモデルに基づいて対面営業を行っていることから、オンライン取引等を行うために必要とされるシステム等は構築しておりません。しかしながら、将来的には顧客又は投資者からフィンテック分野での技術を活用したサービスの提供を求められる可能性があります。その際、これまでテクノロジーを有効に活用してこなかったことにより、高度にシステム化されたお客さま向けサービスのためのインフラ構築の遅延により収益機会を逃す可能性があります。また、業務効率性向上の遅延、費用削減の限界等により、当社グループの市場競争力そのものが低下する可能性もあります。これらを原因として、将来にわたって当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

ハ.業容拡大や収益多様化の遅延に伴うリスク

お客さまからの手数料収入に極端に頼らない収益構造を構築するためには、新しい収益分野への進出による業容拡大や収益源の確保が必要でありますが、業容拡大や収益源確保のための経験やリソースが伴わないことにより、また、それらの施策実施のタイミングに遅れが出ることにより、収益機会を逃してしまう可能性があり、結果として、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

ニ.新規事業への参入に係るリスク

収益源の多様化を目的として金融商品取引業以外の新規事業に直接又はグループ会社を通じて参入することを決定した場合は、当該事業を管轄する法令等の遵守が必要となります。したがって、法令遵守について不適切な対応や違反行為を行うことで、それらの業務が制限されることとなり、収益拡大につながらない可能性があります。

ホ.訴訟等に係るリスク

当社グループは、お客さまからの信頼確保を経営の基本理念として、日頃よりコンプライアンスの徹底とお客さま本位の業務運営を実行しております。しかしながら、お客さまに多額の損失が発生した場合、お客さま等から訴訟の提起やあっせんの申立てが行われる可能性があります。仮に、これらの訴訟等の結果が当社グループにとって不利なものとなった場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

ヘ.法令遵守、内部統制に係るリスク

当社グループは、法令遵守やリスク管理の視点から内部統制システムの整備を図り、より充実した社内管理態勢の確立と役職員におけるコンプライアンス意識の徹底に努めております。しかしながら、業務執行のプロセスにおいてそれらに関与する役職員の故意又は過失により法令違反若しくはそれらに準ずる行為がなされる可能性があります。内部統制システムの整備やコンプライアンス研修の実施は役職員による違法行為を未然防止するための有効な方策ではありますが、違法行為の全てを排除できるものではありません。また、役職員による意図的な違法行為は、周到に隠蔽され、長期間にわたって発覚しない場合もあります。更には、業務執行に関わり未公開情報を取り扱うこととなった場合に、それらの未公開情報の不適切な利用や漏洩、又は情報受領者との共謀など、不正行為が行われる可能性もあります。これらの違法行為は、当社グループの経営成績や財政状態に直接又は間接に影響を与える可能性があると同時に、会社に対しての使用者責任や法的責任等を問われる可能性があります。

ト.オペレーションに係るリスク

当社グループは、規則やマニュアルの整備など、役職員によるオペレーションに係るリスク軽減に努めておりますが、リスクの原因を全て排除することは極めて困難であります。役職員による事務処理上のミス等に起因する事故や不正等によって損失が発生した場合、損害賠償や社会的信用力の低下によって、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

チ.災害等に起因するリスク

当社グループは、地震等の大規模な自然災害の発生やそれに伴うインフラ障害、又は新型コロナウイルス感染症などの病原性感染症の拡大(パンデミック)等を想定し、あらかじめ様々な対策を講じております。しかしながら、これら災害等に起因するリスクを全て回避することは困難であり、想定を超える規模でリスクが発現し、事業規模の縮小を余儀なくされる場合や事業継続計画の不備により事業の維持が不可能となった場合には、それらの事象に起因する直接的な損害に加えて、将来の収益の減少を引き起こすこととなり、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

リ.風評リスク

当社グループの事業はお客さまや投資者の信頼の上に成り立っております。仮に、お客さまや投資者の信頼を損ねるような不祥事が発生したり、お客さまに提供するサービスの内容が低下することにより、お客さまの評価が悪化した場合、お客さまが離散し、顧客基盤が脆弱となり、収益力の低下を引き起こします。また、その真偽にかかわりなく、当社グループにとって不利な報道や風評が流された場合にも、事業の縮小を招くことになります。これらの風評リスクの発現は、結果として当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

ヌ.気候変動リスク

当社グループの事業は、気候変動に関するリスクにより様々な影響を受ける可能性があります。例えば、気候変動への対応において脱炭素化によりエネルギー価格の上昇や供給量の不足が生じ、事業継続に支障をきたすことで事業コストの増加につながる可能性があります。また、気候変動の深刻化によって、保有する金融商品の価格やお客さま向け商品の販売に悪影響が生じ収益が悪化する可能性があります。グリーン投資を志向する顧客ニーズの変化への対応の遅れにより、当社の市場競争力(商品・サービス)の低下が発生する可能性もあります。気温上昇による屋外での活動制限等の物理的な制約を受ける可能性もあります。当社グループでは、中長期の経営成績や財政状態に影響が生じ得ることを踏まえ、気候変動を経営の重要な課題の一つとして認識し、その対策を検討してまいります。

② 財務活動に係るリスク

イ.資金流動性に係るリスク

当社グループは、銀行借入れのほか、コールマネーによる市場での資金調達を行っております。金融引締めや金融市場の混乱又は当社の信用格付けの低下により、必要な資金調達が困難となる、又は不利な条件での資金調達を強いられる場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。このような流動性に係るリスクを回避すべく、コミットメントライン契約に基づくシンジケートローン、換金性の高い資産の保有、手許流動性の確保、流動性コンティンジェンシープランの整備、等の諸施策を講じております。

ロ.外貨調達に係るリスク

当社グループは、外貨建ての有価証券をお客さまに販売、又は自己勘定で取引しておりますが、取引の決済通貨として利用する外貨については、複数の外国為替取扱銀行との取引ラインを維持することで流動性の確保に努めております。しかしながら、外国為替市場の混乱等により外貨調達が困難になり、結果として決済が履行できなくなった場合には、決済の相手方に対する信用の毀損又は決済遅延等による金銭的な損失が発生することとなり、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

ハ.デリバティブ取引に係るリスク

当社グループは、保有する外貨や外貨建て有価証券の為替リスクを回避するために行うデリバティブ取引を活用しております。しかし、これらの取引が、その本来の役割(リスク管理)を果たさない可能性があります。また、信用格付け等の悪化によりデリバティブ取引を行う能力が低下する場合も想定されます。これらは、デリバティブ取引により多額の損失を被る場合を含め、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

ニ.会計基準や税制の改正に係るリスク

当社グループの事業内容が変わらない場合であっても、会計制度や会計基準が改正されることによって、当社グループの経営成績や財政状態を標記する方法が変更される可能性があります。また、繰延税金資産の計上につきましては、現行の法定実効税率を使用しておりますが、税制の改正によって税率が変更された場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

③ 投資活動に係るリスク

 投資有価証券等の固定資産に係る減損リスク

当社グループは、関係会社への投資に加えて、純投資目的の有価証券を保有するとともに、不動産等の固定資産も保有しております。経済環境の悪化によって不動産価格の下落や不動産の陳腐化によって保有資産の減損を強いられる可能性があります。また、有価証券については、それらの市場価格等が下落することによって多額の評価損(減損)が発生することも考えられます。それらは、結果的に当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(2)金融商品取引業に係る固有のリスク

① 金融商品取引業の登録取消し、業務停止処分に係るリスク

当社は、金融商品取引業を営むために金融商品取引法第29条に基づく金融商品取引業の登録を受け、金融商品取引法及び同法施行令等の関係法令を遵守することが求められております。また、当社は東京証券取引所、大阪取引所及び名古屋証券取引所の取引参加者であるとともに、自主規制機関である日本証券業協会及び第二種金融商品取引業協会の会員であり、これら諸団体が定める諸規則を遵守することも求められております。将来何らかの事由(会社又はその役職員の法令違反行為)により、金融商品取引業の登録の取消しや業務停止処分を受けた場合、又は金融商品取引所や自主規制機関から処分を受けた場合は、事業活動を行うことが困難となり、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

② 自己資本規制比率に係るリスク

第一種金融商品取引業者は法令に基づいて、固定化されていない自己資本金額のリスク相当額に対する比率を自己資本規制比率として算出しております。この自己資本規制比率が法令で定める一定比率(120%又は100%)を下回ることによって、業務方法の変更命令、業務の停止命令、更には登録の取消しが行われることとなります。また、この自己資本規制比率の届出を怠った場合又は虚偽の内容の届出を行った場合は行政処分等を受けることがあります。これらの処分等が行われた場合は、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

③ 顧客資産の分別保管に関するリスク

金融商品取引業者は、お客さまから預託された資産を円滑かつ安全に返還できるように、預託された有価証券及び金銭については自己の財産とは区別して保管することが義務付けられております。また、お客さまから預託された外貨による金銭は、その円貨相当額を分別保管しており、仮に当社が経営破綻した場合は、当該預託された外貨ではなく分別保管されている円貨相当額を返還することになります。ただし、お客さまが信用取引を行った際に、当社が預かる信用取引買付け株券又は信用取引売付け代金については分別保管の対象とはなっておりませんが、これらの株券又は金銭は、社内で厳格に分別管理されております。しかし、これらの分別保管が適正に行われていなかった場合には、お客さまへ返還の遅延等が発生する可能性があり、それによって何らかの賠償責任が発生することも想定され、これらは当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

④ 投資者保護基金に関するリスク

当社が加入する日本投資者保護基金は、会員が破綻した際に、投資者が当該破綻業者に預託した証券及び金銭について一人当たり10百万円を上限として保護することとしております。しかしながら、会員となっている金融商品取引業者の破綻に際して、投資者保護のために支払う総額が基金の積立総額を上回る場合は、当社を含む会員に対して、臨時拠出を求める可能性があります。この場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

⑤ 自己勘定によるトレーディングに伴うリスク

当社グループは、自己勘定で株券及び債券等の取引を行っておりますが、市場流動性が減少する、又は多額の損失が発生する可能性があります。また、これらのポジションの市場リスクを低減させるために、ヘッジ取引やポジション管理を行っておりますが、想定以上に市場価格が変動した場合には、これらの機能がうまく発揮されない可能性があります。このような場合は、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

⑥ 市場の縮小に伴うリスク

経済情勢の悪化等により、株式市場や債券市場が低迷・縮小した結果、投資者の投資意欲が減退し、売買注文が減少することによって、委託手数料をはじめとする各種手数料収入が減少する可能性があります。また、新規上場企業の減少や株券発行市場の縮小によって引受手数料等が減少する可能性もあります。これらは、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

⑦ 競合によるリスク

規制緩和の影響で金融商品取引業への参入が容易になるとともに、情報技術を利用した新たな商品やサービスを提供する業者の進出が可能となってきております。競争が激化する環境下で、当社グループがその競争力を維持できない場合には、競合他社へビジネスが流出してしまい、収益力を維持できなくなる可能性があります。この場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

⑧ 信用取引における信用供与に係るリスク

信用取引を行うお客さまへ当社自らが信用供与を行い、それによって得られる収益は、当社グループの収益源の一つであります。しかし、信用取引による損失がお客さまに発生した場合、又は、代用有価証券の担保価値が下落することでお客さまの預託する担保価値が減少した場合において、担保の追加差し入れができなかった結果、当社が何らかの損失を被る可能性があります。その場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

⑨ カウンターパーティに関するリスク

当社グループは、保有する外貨建てポジションの為替変動リスクをヘッジする目的で店頭デリバティブ取引を行っておりますが、取引の相手方(カウンターパーティ)の業務が継続できなくなることによって、当該取引の清算決済の履行が行われないカウンターパーティ・リスクがあります。仮に決済履行が行われなかった場合、何らかの損失が発生する可能性もあり、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

⑩ 反社会的勢力及びマネー・ロンダリングに係るリスク

当社グループは、反社会的勢力との取引関係を排除するための必要な方策をとるとともに、マネー・ロンダリングやテロ資金供与に関しても当社が不正に利用されないための対策をとっております。しかし、万全の体制をとっていたとしても、これらを全て排除することができない可能性があります。そのため、当局からの是正命令等を受ける、又は社会的な信用力が低下する可能性があります。この場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

⑪ 法令や会計基準の施行・改正に係るリスク

当社グループによる業務遂行の根幹となる金融商品取引法等の関係法令について、新たな法令の施行や改正が行われた場合、当社グループの事業に多大な影響を及ぼす可能性があります。また、金融商品取引業者に係る会計基準の新規適用や改正により、事業内容に変更がなくても、当社グループの経営成績や財政状態に関する開示内容が大幅に変更される可能性があります。

(3)その他リスク

① 年金債務の増加リスク

当社グループの従業員に係る退職給付費用及び退職給付債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件等に基づいて算定されております。実際の運用結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

② システム障害に係るリスク

当社グループが業務執行のために利用するコンピュータのハードウエア若しくはソフトウエア、又はネットワークが、人為的ミス、品質不良、外部からの不正アクセス、コンピュータウイルス、災害や停電等の諸要因によって障害を起こす場合があります。当社グループ及び業務委託先はこれらシステム障害リスクに備えて、システムの監視、二重化、バックアップ構築などの措置を講じておりますが、それらが不十分又は想定を超える大規模な障害であった場合には、損失や損害賠償責任が発生する可能性があります。この場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

③ 情報資産に係るリスク

当社グループは、保有する全ての情報資産を重要な資産として位置付け、「情報セキュリティ方針」に基づいて、情報管理態勢を整備するとともに、それぞれの情報資産を保全するためのセキュリティ対策を施しております。しかし、何らかの理由で重要な顧客データや個人情報が漏洩又は破壊される可能性があることは否めません。このような場合は、お客さまをはじめ全てのステークホルダーの信頼を失墜するのみならず、賠償責任を負う場合もあります。これによって、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

④ サイバー攻撃を受けるリスク

当社グループは、サイバーセキュリティに関する対応方針を定め、高度なサイバー攻撃の標的とされる蓋然性の高い業務領域を特定するとともに、サイバー攻撃を想定したセキュリティ対策やサイバー攻撃緊急時対応計画を策定するなど、体制整備に努めております。しかし、これらの対策にもかかわらず、想定しなかった攻撃を受けることによって、重要な情報資産の漏洩や破壊が起きる可能性があります。これによって、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

⑤ 人材育成や人材確保に係るリスク

当社グループは、幅広いコンサルティングサービスを提供し、お客さまの満足度を向上させることを目標に業務運営を行っております。したがって、それらを達成できる人材の確保又は育成は重要な経営課題の一つであります。そのために、有能な人材を通年で積極的に採用するとともに、社員教育制度の充実を図っております。しかし、人材確保や人材育成が進まなかった場合には、将来の事業展開に支障をきたし、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当期における当社グループの経営成績等の状況の概要は以下のとおりであります。

① 経営成績の状況

当期は、国内外で金融政策の方向性に大きな違いが見られました。日本銀行は、7月に政策金利を0.25%に引き上げ、1月には更に0.5%に引き上げました。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月から3回の利下げを実施して、政策金利を5.5%から4.5%に引き下げました。欧州中央銀行(ECB)も6月から6回の利下げを実施して、政策金利を4.5%から2.65%まで切り下げました。

株式市場では、日経平均株価は円安による企業業績の伸長などを期待して、7月11日に終値で42,224円と過去最高値を更新しました。しかし、日本銀行の利上げや米国の景気減速懸念を背景に急激な円高が進行し、8月5日に過去最大の下落幅(△4,451円)を記録して31,458円まで下落しました。その後、再度円安が進行し、日経平均株価は4万円台を回復しましたが、2025年に入ると米国半導体株式の下落や米国トランプ大統領の関税政策が影響して大幅に下落し、2024年3月末比12%安の35,617円で終えました。

米国株式市場では、NYダウ平均株価はFRBの利下げと好調な個人消費に支えられ、12月4日に45,014ドルの過去最高値を更新しました。しかし、関税政策によるインフレ懸念や景気の腰折れ懸念が高まり、NYダウ平均株価は3月末にかけて下落し、2024年3月末比6%高の42,001ドルで終えました。

債券市場では、日本の10年国債利回りは日本銀行による利上げ観測の高まりを受け、7月には一時1.1%まで上昇しました。その後、一旦、0.7%台に低下しましたが、堅調な国内景気を背景に1%台を回復しました。2025年に入ると、春闘で昨年に続き高い賃上げが実施される見通しが強まり、再度、日本銀行の利上げ観測が強まりました。その結果、日本の10年国債利回りは3月には1.59%まで上昇し、当期末は1.48%となりました。米国の10年国債利回りは、トランプ大統領の政策による景気拡大期待から、1月には4.81%まで上昇しました。しかし、関税発動によるインフレと景気後退の懸念が広がり、米国の10年国債利回りは当期末に4.20%まで低下しました。

外国為替市場では、ドル円相場は円安が進み、7月初旬に約37年半ぶりとなる1ドル=162円に迫りました。その後、日本銀行の利上げとFRBの利下げによる日米金利差の縮小などを背景に、9月中旬には1ドル=139円台まで円高が進行しました。1月中旬には米国で景気拡大期待に伴う長期金利の上昇により1ドル=158円台まで円安が進みましたが、トランプ大統領の就任後は関税による景気の後退懸念が高まり、当期は1ドル=149.93円で終えました。

こうした環境の中、当社及び連結子会社は、お客さまの多様なニーズにお応えするため、「特色ある旬の商品」の提供に努めました。また、株主資本の効率的運用の観点から、積極的な財務運営も行ってまいりました。

当期の業績につきましては、営業収益79億89百万円(前期比103.3%)、純営業収益79億8百万円(同103.0%)、営業利益26億91百万円(同91.2%)、経常利益34億53百万円(同93.2%)、親会社株主に帰属する当期純利益44億46百万円(同102.4%)となりました。

② 財政状態の状況

当期末の資産合計は、預託金や投資有価証券の減少等により、785億97百万円と前期末に比べ49億36百万円減少いたしました。

当期末の負債合計は、預り金や繰延税金負債の減少等により、269億88百万円と前期末に比べ28億70百万円減少いたしました。

当期末の純資産合計は、その他有価証券評価差額金の減少等により、516億9百万円と前期末に比べ20億65百万円減少いたしました。

③ キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に記載しております。

 

④ トレーディング業務の状況

トレーディング商品:連結会計年度末のトレーディング商品の残高は以下のとおりです。

商品有価証券等(売買目的有価証券)

種類

2024年3月31日現在

2025年3月31日現在

資産(百万円)

負債(百万円)

資産(百万円)

負債(百万円)

株式

8

569

債券

16,418

20,986

受益証券

1,132

1,229

その他

 

デリバティブ取引の契約額等及び時価

種類

2024年3月31日現在

2025年3月31日現在

契約額

(百万円)

契約額の

うち1年超

(百万円)

時価

(百万円)

評価損益

(百万円)

契約額

(百万円)

契約額の

うち1年超

(百万円)

時価

(百万円)

評価損益

(百万円)

株価指数先物取引

 

 

 

 

 

 

 

 

売建

810

2

2

買建

為替予約取引

 

 

 

 

 

 

 

 

売建

2,112

△19

△19

752

6

6

買建

市場リスクについては、取締役会が半期ごとにポジション・リスク限度額を各トレーディング部門に配分し、各トレーディング部門は、その範囲内で運用することとしております。リスク管理体制としては、各部門が、日々のポジション・リスク額及び損益の状況をチェックのうえ、経営陣に報告しております。更に、総合的な牽制機能として、リスク管理部が、適正な自己資本規制比率維持の観点から、全社的なリスクの状況を把握し、日々、取締役、執行役員及び監査役に報告するほか、毎月末の自己資本規制比率及びその詳細を取締役会に報告しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当期末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(経営成績の分析)

当社グループの収益の中心は、証券市場における仲介業者として得られる手数料収入等でありますが、これらは市場環境の変化の影響を大きく受けやすいものとなっております。そのため、当社グループは、健全な財務基盤のもと自己資本による積極的な投資も行うことで、持続的な成長を図ることを目指しております。

当期における経営成績は、お客さま向け外国債券販売が伸び悩んだことや自己保有債券の時価が下落したことなどから債券トレーディング損益が減少した一方で、投資信託の販売が好調であったことから受入手数料が増加しました。これらの結果、前期に比べ増収となりました。それらの内訳及び要因は、以下のとおりであります。

営業収益

 当期の株式市場では、日経平均株価は円安による企業業績の伸長などを期待して、7月11日に終値で42,224円と過去最高値を更新しました。しかし、日本銀行の利上げや米国の景気減速懸念を背景に急激な円高が進行し、8月5日に過去最大の下落幅(△4,451円)を記録して31,458円まで下落しました。その後、再度円安が進行し、日経平均株価は4万円台を回復しましたが、2025年に入ると米国半導体株式の下落や米国トランプ大統領の関税政策が影響して大幅に下落し、2024年3月末比12%安の35,617円で終えました。これらに伴い、株式市場における売買取引は低調に推移いたしました。一方で、投資信託の顧客販売については年間を通して好調でありました。その結果、「受入手数料」は、30億78百万円(前期比109.1%、2億56百万円増加)となりました。その内訳は以下のとおりであります。

 「株券委託手数料」は、11億66百万円(同77.1%、3億46百万円減少)となり、「受益証券(上場投資信託)委託手数料」を加えた「委託手数料」は、11億93百万円(同77.8%、3億40百万円減少)となりました。

 主にアンダーライティング(引受)業務に係る手数料で構成される「引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料」は、当社が参入したIPO件数及び大型案件が増加したことから、18百万円(同121.3%、3百万円増加)となりました。

 投資信託受益証券の募集・売出しの取扱手数料などによって構成される「募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料」は、受益証券(投資信託)の販売の増加により、12億18百万円(同139.5%、3億45百万円増加)となりました。

 主に受益証券(投資信託)の代行手数料からなる「その他の受入手数料」は、6億48百万円(同162.1%、2億48百万円増加)となりました。

 「トレーディング損益」につきましては、「債券等トレーディング損益」が減少したことから、32億49百万円の利益(同95.5%、1億53百万円減少)となりました。内訳は以下のとおりであります。

 「株券等トレーディング損益」は、日本株の売買を中心に92百万円の損失(前期は39百万円の利益)となりました。

 「債券等トレーディング損益」は、「多様な商品によるマーケット変化を捉えた機動的な運用提案」を行うことで、お客さまからの信頼を獲得するとともに、お客さまの投資パフォーマンスの向上を目指しましたが、お客さま向け外国債券販売が伸び悩んだこと、また、自己保有債券の時価が下落したことなどから、34億96百万円の利益(前期比94.1%、2億19百万円減少)となりました。

 外貨建債券の為替ヘッジ目的で行っている為替デリバティブ取引を中心とした「その他のトレーディング損益」は1億53百万円の損失(前期は3億52百万円の損失)となりました。

 「金融収益」につきましては、主にトレーディング商品として保有する債券等から得られる受取債券利子や収益分配金で構成されます。「金融収益」は16億65百万円(前期比112.1%、1億79百万円増加)となりました。

 「その他の営業収入」は、4百万円の損失(前期は19百万円の利益)となりました。

 以上の結果、「営業収益」は、79億89百万円(前期比103.3%、2億58百万円増加)となりました。

純営業収益

 「金融費用」は支払利息が増加したことにより、80百万円(同150.3%、27百万円増加)となりました。「営業収益」からこの「金融費用」を差し引いた「純営業収益」は79億8百万円(同103.0%、2億31百万円増加)となりました。

営業損益

 「販売費・一般管理費」は、取引関係費、人件費、不動産関係費、租税公課等の増加等により、52億17百万円(同110.4%、4億91百万円増加)となりました。

 「純営業収益」から「販売費・一般管理費」を控除した「営業損益」は、26億91百万円の利益(同91.2%、2億60百万円減少)となりました。

経常損益

 「営業外収益」は、受取配当金等合計で9億90百万円(同85.7%、1億65百万円減少)、「営業外費用」は、投資事業組合運用損等合計で2億28百万円(同56.9%、1億73百万円減少)を計上いたしました。

 この結果、「営業外損益」は、7億62百万円の利益(同101.0%、7百万円増加)となりました。

 「営業利益」に当該利益を加味した「経常損益」は、34億53百万円の利益(同93.2%、2億52百万円減少)となりました。

税金等調整前当期純損益

 「特別利益」は、投資有価証券売却益で36億8百万円(同129.8%、8億28百万円増加)、「特別損失」は、投資有価証券評価損等合計で5億63百万円(同238.4%、3億27百万円増加)を計上いたしました。

 この結果、「特別損益」は、30億45百万円の利益(同119.7%、5億1百万円増加)となりました。

 「経常利益」に当該利益を加味した「税金等調整前当期純損益」は、64億99百万円の利益(同104.0%、2億48百万円増加)となりました。

親会社株主に帰属する当期純損益

 「法人税等合計」は、法人税、住民税及び事業税の増加により、20億52百万円(同107.5%、1億43百万円増加)となりました。

 この結果、「親会社株主に帰属する当期純損益」は、44億46百万円の利益(同102.4%、1億5百万円増加)となりました。

(財政状態の分析)

当期末の財政状態は、前期末に比べ資産、負債及び純資産が減少いたしました。これらの内訳及び要因は、以下のとおりであります。

資産

 「流動資産」は、462億95百万円となり、前期末に比べ19億66百万円減少いたしました。これは主にトレーディング商品が52億39百万円増加(当期末227億92百万円)した一方で、現金・預金が36億21百万円減少(当期末107億67百万円)、顧客預り金の分別保管を主な目的とする預託金が34億40百万円減少(当期末95億73百万円)したことによるものであります。

 「固定資産」は、323億2百万円となり、前期末に比べ29億69百万円減少いたしました。これは主に長期純投資のために保有する投資有価証券が27億46百万円減少(当期末289億3百万円)したことによるものであります。

 この結果、「資産合計」は、785億97百万円となり、前期末に比べ49億36百万円減少いたしました。

負債

 「流動負債」は、245億42百万円となり、前期末に比べ21億63百万円減少いたしました。これは主に短期借入金が14億20百万円増加(当期末110億円)、未払金が5億29百万円増加(当期末6億40百万円)した一方、お客さまからの現金の預りを中心とした預り金が42億41百万円減少(当期末100億78百万円)したことによるものであります。

 「固定負債」は、24億25百万円となり、前期末に比べ7億9百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が5億円増加(当期末10億円)した一方で、繰延税金負債が12億15百万円減少(当期末8億92百万円)したことによるものであります。

 この結果、「負債合計」は、269億88百万円となり、前期末に比べ28億70百万円減少いたしました。

純資産

 「純資産」は、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上により、「利益剰余金」が2億99百万円増加(当期末405億75百万円)した一方で、投資有価証券を売却したことにより、「その他有価証券評価差額金」が23億50百万円減少(当期末18億74百万円)いたしました。

 この結果、「純資産合計」は、516億9百万円となり、前期末に比べ20億65百万円減少いたしました。

(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営環境及び中期事業計画、対処すべき課題 ②経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しております。

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況)

 当期における営業活動によるキャッシュ・フローは、40億98百万円の使用(前期は26百万円の使用)となりました。税金等調整前当期純利益(64億99百万円)から投資活動によるキャッシュ・フローに計上される投資有価証券売却益(36億8百万円)及び投資有価証券評価損(5億57百万円)を控除した獲得(34億47百万円)等があった一方で、お客さま向け債券販売に伴い取得したトレーディング商品の純増(52億66百万円)及び法人税等の支払い(25億99百万円)等の使用があったことによります。

 当期における投資活動によるキャッシュ・フローは、46億87百万円の獲得(前期は40億21百万円の使用)となりました。純投資目的で保有している投資有価証券の売買等に伴う増加(25億82百万円の獲得)及び定期預金の払い戻しに伴う増加(23億円の獲得)等があったことによります。

 当期における財務活動によるキャッシュ・フローは、22億24百万円の使用(前期は29億55百万円の使用)となりました。短期借入金の増加(14億20百万円の獲得)並びに長期借入金がネットで増加(5億円の獲得)となった一方で、配当金の支払い(41億41百万円の使用)等があったことによります。

 これらの結果、当期末における現金及び現金同等物は、前期末に比べ16億49百万円減少し、104億68百万円となりました。

 

(財務戦略の基本的な考え方)

 当社グループの財務戦略の基本的な考え方は、自己資本を充実させることにより強固な財務基盤を構築するとともに、自己資本を効率的に運用することによって収益性を高め、企業価値の向上を目指すものであります。

 金融商品取引業者は、その業務の性格上、自己勘定に基づいて有価証券等の保有や売買取引を行う場合があります。それら保有有価証券の価格変動リスクなどの各種リスクを十分にカバーできる「固定化されていない自己資本の額」を維持し、財務の健全性を表す「自己資本規制比率」を一定の水準以上に維持することが法令等により義務付けられております。当社は、「自己資本規制比率」を高水準に維持することを経営の基本方針といたしますが、上記のとおり、自己資本を効率的に活用して、収益性を高めるために一定のリスク(主に市場リスク)をとる必要もあると考えております。このため、これらリスク額及び自己資本規制比率につきましては、適切なリスク管理体制の下で監視しております。

 当社は、財務体質や収益性を測る指標として「信用格付け」を取得しております。当社グループとして、近い将来に新株式や債券の発行による資金調達を行うことは想定しておりませんが、運転資金の安定的な調達を可能とするため、「信用格付け」の水準を安定的に維持することに努めることといたします。

(手許流動性)

 当社は、半期ごとに実施する流動性コンティンジェンシープランの検証過程において、緊急事態発生時に、借入金等の返済やお客さまへの預り金の返還などを円滑に行うために当初必要と考えられる手許現預金の水準を決定しております。また、その後必要となる現金需要を賄うために、短期間で現金化が可能となる市場性のある有価証券の保有に努めております。

 また、当社グループはお客さま向け販売や自己勘定での取引を目的として、外貨建て有価証券を取り扱っております。これら外貨建て有価証券取引の清算決済においては、期限までに当該外貨を遅滞なく支払う必要があります。しかしながら、外国為替市場の動向によっては決済のための外貨調達が困難になることも想定されます。このような外貨調達リスクを避けるため、市場の状況や取引高を勘案しながら、必要と思われる外貨の種別及び金額をその都度検証し、十分な金額を手許に維持するよう心がけております。

(成長分野への投資活動)

 上記目的で必要とされる手許流動性の水準を超える現預金については成長分野や有望市場への投資活動に振り向けることが可能な資金と位置付け、積極的に投資活動を行ってまいります。これによって、新たな収益源の開拓や収益性が向上し、企業価値向上につながると考えております。

 

(株主還元-利益配分に関する基本方針及び当期の配当)

 当社は、株主価値向上の一環として、株主の皆さまに対し積極的な利益還元を図ることを経営の重要な政策の一つとしております。配当金額は、連結配当性向70%及び連結純資産配当率(DOE)2%の両基準で算出した数値のいずれか高い金額を基準とし、当社の自己資本の水準及び中長期的な業績動向並びに株価等を総合的に判断し、決定する旨を基本方針としております。

 当期の期末配当につきましては、上記の連結配当性向基準で算出した金額に基づき総合的に判断し、1株当たり60円の普通配当(年間110円)を支払うことといたしました。なお、配当原資は利益剰余金であります。

 配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。

(資金需要と資金調達)

 当社グループの資金需要につきまして、営業活動に係る資金利用といたしましては、お客さま向け販売商品等のトレーディング商品の買付け、信用取引に係るお客さま向けの融資、証券取引サービスを提供するためのインフラ維持に係る費用、人件費などがあります。また、投資活動に係る資金利用といたしましては、投資有価証券の買付け、お客さま向けサービスの向上と取引の安全性を確保するために必要なシステム投資、金融商品取引業者として法令遵守のために必要な制度整備やシステム投資などがあります。

 一方、当社グループの運転資金につきましては、自己資金の利用又は借入による資金調達によって賄っております。自己勘定によるトレーディング商品や投資有価証券の買付けにつきましては、原則として自己資金を利用することとしております。借入による資金調達に関しましては、短期借入金及び長期借入金で調達しております。短期借入金については、銀行借入に加えて、コールマネーの調達も行っております。また、当社は運転資金の効率的な調達を行うため取引銀行を含む合計8行との間で、総額46億円のシンジケート方式によるコミットメントライン契約を締結しております。この契約に基づく当期末の借入実行残高は20億円であります。

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において、一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、有価証券の評価、固定資産の減損、繰延税金資産の計上、減価償却資産の償却、貸倒引当金、賞与引当金、退職給付等の会計処理については、会計関連諸法規をベースに、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる基準により見積り及び判断を行っております。会計処理については、真実性の原則は勿論のこと、特に健全性と継続性の原則に配慮しております。しかしながら、実際の結果は、見積り作成時点での不確実性があることから、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社の連結営業収益は、証券市場に係る受入手数料及びトレーディング損益を柱としており、その大半が株式市場及び債券市場を源泉としております。株式・債券市場の好・不調による業績への影響を緩和するため、収益源の多様化を通じて収益の安定性確保に努めておりますが、それでもなお、業績が証券市場の動向に左右され、大きく変動する可能性があります。また、国内外の金融商品市場の急激な変動により、当社が保有している金融商品の評価損益が多額になる可能性もあります。

 一般的に、証券市場や外国為替市場は、内外の政治・経済情勢、金利、企業収益等、様々な要因を反映して変動します。したがって、当社グループの連結経営成績についても、証券市場に係るこれらの要因が多大な影響を及ぼす可能性があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。